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特許7173097ろう付構造体の製造方法、および、ろう付構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ろう付構造体の製造方法、および、ろう付構造体
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/18 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
B23K1/18 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020098466
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191581
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】望月 美代
(72)【発明者】
【氏名】石原 章博
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
【審査官】梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-169576(JP,A)
【文献】特開2018-187656(JP,A)
【文献】特開2015-110236(JP,A)
【文献】特開昭58-065564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろう付構造体の製造方法であって、
貫通孔を有する第1の部材と、前記貫通孔に挿入された第2の部材と、を準備する準備工程と、
前記準備工程の後、金属粉末とバインダとの混合物を、前記貫通孔に挿入された前記第2の部材と前記第1の部材との間に配置する第1配置工程と、
前記第1配置工程の後、接合ろう材を前記混合物に隣接させて配置する第2配置工程と、
前記第2配置工程の後、前記混合物と前記接合ろう材とを加熱し、前記第1の部材と前記第2の部材との間の前記金属粉末の集合体に前記接合ろう材を含侵させて複合ろう材を形成し、前記複合ろう材によって前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合工程と、を備え、
前記複合ろう材における前記金属粉末の体積比は、50%より大きい、
ろう付構造体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のろう付構造体の製造方法であって、
前記複合ろう材は、前記金属粉末に対する前記接合ろう材の体積比が、25%以上50%以下である、
ろう付構造体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のろう付構造体の製造方法であって、
前記第1の部材が有する前記貫通孔の内側と、前記第2の部材の外側との隙間の大きさは、0.2mmより大きく、5mm以下である、
ろう付構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のろう付構造体の製造方法は、さらに、
前記第1配置工程の後であって前記第2配置工程の前に、前記第1の部材と前記第2の部材との間の前記混合物を乾燥させる第1乾燥工程と、
前記第2配置工程の後であって前記接合工程の前に、前記混合物に隣接して配置された前記接合ろう材を乾燥させる第2乾燥工程と、を備える、
ろう付構造体の製造方法。
【請求項5】
ろう付構造体であって、
貫通孔を有する第1の部材と、
前記貫通孔に挿入された第2の部材と、
前記貫通孔に挿入された前記第2の部材と前記第1の部材との間に配置される複合ろう材と、を備え、
前記複合ろう材は、接合ろう材と、前記接合ろう材を含浸した金属粉末の集合体と、を含み、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合し、
前記複合ろう材における前記金属粉末の体積比は、50%より大きい、
ろう付構造体。
【請求項6】
請求項5に記載のろう付構造体であって、
前記複合ろう材は、前記金属粉末に対する前記接合ろう材の体積比が、25%以上50%以下である、
ろう付構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう付構造体の製造方法、および、ろう付構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一方の部材が有する貫通孔に挿入された他方の部材と、一方の部材とが、ろう付によって固定されるろう付構造体が知られている。例えば、特許文献1には、一方の管体と、一方の管体の内部に端部が挿入されている他方の管体とを組み合わせたろう付構造体において、一方の管体と他方の管体との隙間にろう材を配置させることで2つの管体をろう付する技術が開示されている。また、特許文献2には、内壁面が凸状に形成されている貫通孔を有する平板形状の一方の部材に対して、貫通孔に挿通される他方の部材を加圧して貫通孔内で変形させたのち、一方の部材と他方の部材との隙間にろう材を流入させることで2つの部材をろう付する技術が開示されている。また、特許文献3には、アルミニウム製の平板形状の部材に形成されている貫通孔に挿入されるアルミニウム製の管形状の部材の周囲にマグネシウムを含む置きろうを配置し、平板形状の部材と管形状の部材とをろう付する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-169576号公報
【文献】特開2000-271675号公報
【文献】特開2011-230128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術によっても、ろう付構造体の製造方法において、製造コストを低減しつつ、2つの部材の接合強度を向上するためには、なお改善の余地があった。例えば、特許文献1の技術では、一方の管体と他方の管体との隙間が大きいと、ろう材が管体の壁面に沿って流れてしまうため、他方の管体の外周全部を一方の管体に接合できないおそれがあり、接合強度が低下する。このため、ろう材が流れない程度に、一方の管体の内径と他方の管体の外径とを高精度に加工する必要があり、製造コストが増加するおそれがある。また、特許文献2の技術でも、加圧によって変形させた他方の部材と一方の部材の内壁面との隙間が大きいと、ろう材が壁面に沿って流れてしまうため、高精度に変形させる必要がある。このため、製造に手間がかかり、製造コストが増加するおそれがある。また、特許文献3の技術では、ろう材に添加するマグネシウムの量によってろう材による平板形状の部材と管形状の部材との間の充填性を変更するため、隙間の大きさによってマグネシウム含有量が異なるろう材を複数準備する必要がある。このため、製造コストが増加するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ろう付構造体の製造方法において、製造コストを低減しつつ、2つの部材の接合強度を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、ろう付構造体の製造方法が提供される。このろう付構造体の製造方法では、貫通孔を有する第1の部材と、前記貫通孔に挿入された第2の部材と、を準備する準備工程と、前記準備工程の後、金属粉末とバインダとの混合物を、前記貫通孔に挿入された前記第2の部材と前記第1の部材との間に配置する第1配置工程と、前記第1配置工程の後、接合ろう材を前記混合物に隣接させて配置する第2配置工程と、前記第2配置工程の後、前記混合物と前記接合ろう材とを加熱し、前記第1の部材と前記第2の部材との間の前記金属粉末の集合体に前記接合ろう材を含侵させて複合ろう材を形成し、前記複合ろう材によって前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する接合工程と、を備える。
【0008】
この構成によれば、接合工程において、混合物と接合ろう材とを加熱すると、混合物においてバインダが蒸発する。これにより、貫通孔に挿入された第2の部材と第1の部材との間に配置されている混合物は、金属粉末の集合体となる。さらに、溶融する接合ろう材が金属粉末の間に流れ込むことで、金属粉末の集合体に接合ろう材が含侵する。これにより、第1の部材と第2の部材との間に金属粉末と接合ろう材とからなる複合ろう材が形成される。複合ろう材は、金属粉末の集合体がスペーサとなって、第1の部材と第2の部材との隙間を埋めるため、この隙間がろう材のみによって2つの部材を接合する場合に比べ大きい場合でも第1の部材と第2の部材とを接合することができる。これにより、第1の部材の貫通孔の大きさや第2の部材の太さなどの製作公差を大きくすることができるため、ろう付構造体の製造コストを低減しつつ、2つの部材の接合強度を向上することができる。
【0009】
(2)上記形態のろう付構造体の製造方法において、前記複合ろう材は、前記金属粉末に対する前記接合ろう材の体積比が、25%以上50%以下であってもよい。この構成によれば、複合ろう材は、金属粉末に対する接合ろう材の体積比が、25%以上50%以下となっている。これにより、金属粉末と接合ろう材との共晶結合の不足による接合強度の低下を抑制しつつ、複合ろう材内での組成偏析に起因する接合ろう材の添加物の析出による接合強度の低下を抑制することができる。したがって、2つの部材の接合強度を一定程度以上に維持することができる。
【0010】
(3)上記形態のろう付構造体の製造方法において、前記第1の部材が有する前記貫通孔の内側と、前記第2の部材の外側との隙間の大きさは、0.2mmより大きく、5mm以下であってもよい。この構成によれば、第1の部材が有する貫通孔の内側と、第2の部材の外側との隙間の大きさは、0.2mmより大きく、5mm以下となっている。これにより、2つの部材間の隙間が、ろう材のみによって2つの部材を接合する場合での2つの部材間の最大の距離である0.2mmより大きい場合でも、金属粉末の集合体を含む複合ろう材によって2つの部材を接合することができる。したがって、第1の部材の貫通孔の大きさや第2の部材の太さなどの製作公差を大きくすることができるため、ろう付構造体の製造コストを低減しつつ、2つの部材の接合強度を向上することができる。
【0011】
(4)上記形態のろう付構造体の製造方法において、前記第1配置工程の後であって前記第2配置工程の前に、前記第1の部材と前記第2の部材との間の前記混合物を乾燥させる第1乾燥工程と、前記第2配置工程の後であって前記接合工程の前に、前記混合物に隣接して配置された前記接合ろう材を乾燥させる第2乾燥工程と、を備えてもよい。この構成によれば、第1乾燥工程において、第1の部材と第2の部材との間の混合物を乾燥させる。これにより、混合物に含まれるバインダの一部を蒸発させることができるため、接合工程において、溶融した接合ろう材が金属粉末の間に流れ込みやすくなる。これにより、2つの部材の接合強度をさらに向上することができる。また、上述した構成によれば、第2乾燥工程において、混合物に隣接して配置された接合ろう材を乾燥させる。これにより、接合ろう材に含まれるフラックスを蒸発させることができるため、残留フラックスによる部材の腐食を防止することができる。
【0012】
(5)本発明の別の形態によれば、ろう付構造体が提供される。このろう付構造体は、貫通孔を有する第1の部材と、前記貫通孔に挿入された第2の部材と、前記貫通孔に挿入された前記第2の部材と前記第1の部材との間に配置される複合ろう材と、を備え、前記複合ろう材は、接合ろう材と、前記接合ろう材を含浸した金属粉末の集合体と、を含み、前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する。この構成によれば、第1の部材と第2の部材とは、複合ろう材によって接合されている。複合ろう材は、接合ろう材と、接合ろう材を含浸した金属粉末の集合体とを含んでおり、接合される第1の部材と第2の部材との隙間が比較的広い場合でも、金属粉末の集合体がスペーサとなって、第1の部材と第2の部材とを接合することができる。これにより、第1の部材の貫通孔の大きさや第2の部材の太さなどの製作公差を大きくすることができるため、ろう付構造体の製造コストを低減しつつ、2つの部材の接合強度を向上することができる。
【0013】
(6)上記形態のろう付構造体において、前記複合ろう材は、前記金属粉末に対する前記接合ろう材の体積比が、25%以上50%以下であってもよい。この構成によれば、複合ろう材は、金属粉末に対する接合ろう材の体積比が、25%以上50%以下となっている。これにより、金属粉末と接合ろう材との共晶結合の不足による接合強度の低下を抑制しつつ、複合ろう材内での組成偏析に起因する接合ろう材の添加物の析出による接合強度の低下を抑制することができる。したがって、2つの部材の接合強度を一定程度以上に維持することができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ろう付構造体を含む装置、ろう付構造体を含む装置の制御方法、ろう付構造体の製造方法を実行させるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態のろう付構造体の概略構成を示す模式図である。
図2】ろう付構造体の部分拡大図である。
図3】ろう付構造体の製造方法のフローチャートである。
図4】ろう付構造体の製造方法を説明する第1の図である。
図5】ろう付構造体の製造方法を説明する第2の図である。
図6】ろう付構造体の製造方法を説明する第3の図である。
図7】第2実施形態のろう付構造体の概略構成を示す模式図である。
図8】第3実施形態のろう付構造体の概略構成を示す模式図である。
図9】第4実施形態のろう付構造体の概略構成を示す模式図である。
図10】第5実施形態のろう付構造体の概略構成を示す模式図である。
図11】第6実施形態のろう付構造体の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のろう付構造体1の概略構成を示す模式図である。図2は、ろう付構造体1の部分拡大図である。第1実施形態のろう付構造体1は、例えば、化学蓄熱材における放熱反応と吸熱反応を利用した化学蓄熱システムに適用される。具体的には、化学蓄熱システムにおいて、化学蓄熱材での蓄熱時に発生する水蒸気を凝縮して水にするととともに、化学蓄熱材での放熱時に水蒸気を化学蓄熱材に供給する蒸発凝縮器に適用される。ろう付構造体1は、第1の部材11と、第2の部材12と、複合ろう材20とを備える。
【0017】
第1の部材11は、ステンレス鋼などの金属から形成されている平板形状の部材である。第1の部材11は、上述した蒸発凝縮器では、例えば、蒸発凝縮器の外装パネルの一部であって、SUS316などのステンレス鋼から形成されている。第1の部材11は、第2の部材12が挿通される貫通孔11aを有する。本実施形態では、貫通孔11aは、図1(a)のA-A線断面図である図1(b)に示すように、円形状に形成されている。
【0018】
第2の部材12は、ステンレス鋼などの金属から形成されている円管状部材であって、ろう付構造体1が上述した蒸発凝縮器に適用される場合、水や水蒸気を流れる流路12aを有する。本実施形態では、流路12aの断面は、図1(b)に示すように、円形状である。第2の部材12は、外径が貫通孔11aの内径より小さく、第1の部材11の貫通孔11aに挿通される。第1の部材11における貫通孔11aの内壁面11bと、第2の部材12の外壁面12bとの間の距離L1は、0.2mmより大きく、5mm以下となっている。本実施形態では、第2の部材12は、中心軸C12が第1の部材11の貫通孔11aの中心軸C11に重なるように配置されている。
【0019】
複合ろう材20は、貫通孔11aに挿入された第2の部材12と第1の部材11との間に配置される。複合ろう材20は、複数の金属粉末21と、接合ろう材22とを有する。複合ろう材20は、第1の部材11の貫通孔11aの内壁面11bと、第2の部材12の外壁面12bとに接合し、第1の部材11の一方の側と他方の側との気密を保つ。
【0020】
複数の金属粉末21は、例えば、SUS316から形成されている粉末であって、複合ろう材20の内部において分散して配置される。本実施形態では、複合ろう材20における金属粉末21の体積比は、50%より大きい。複数の金属粉末21は、特許請求の範囲の「金属粉末の集合体」に相当する。
【0021】
接合ろう材22は、本実施形態では、ステンレス鋼を接合可能なニッケルろうであり、ニッケル(Ni)、B(ホウ素)、リン(P)を主成分とし、Siなどが添加されている。接合ろう材22は、複数の金属粉末21に含浸している。本実施形態では、複合ろう材20における金属粉末21に対する接合ろう材22の体積比は、25%以上50%以下となっている。
【0022】
図3は、ろう付構造体1の製造方法を示すフローチャートである。図4は、ろう付構造体1の製造方法を説明する第1の図である。図5は、ろう付構造体1の製造方法を説明する第2の図である。図6は、ろう付構造体の製造方法を説明する第3の図である。次に、本実施形態のろう付構造体1の製造方法の詳細を説明する。
【0023】
最初に、準備工程として、貫通孔11aを有する第1の部材11と、貫通孔11aに挿入された第2の部材12と、を準備する(ステップS11)。具体的には、貫通孔11aが形成されている第1の部材11と、外径が貫通孔11aの内径より小さい第2の部材12とを準備する。第2の部材12を第1の部材11の貫通孔11aに挿通し、図4(a)に示す状態の第1の部材11と第2の部材12とにする。
【0024】
次に、第1配置工程として、金属粉末21とバインダ23との混合物24を、貫通孔11aに挿入された第2の部材12と第1の部材11との間に配置する(ステップS12)。具体的には、図4(a)に示すように、貫通孔11aに挿通されている第2の部材12の外壁面12bと貫通孔11aの内壁面11bとの間に混合物24を充填する(図4(a)の白抜き矢印F1)。混合物24は、複数の金属粉末21と金属粉末21どうしを結合するバインダ23とが混合されて形成されている(図4(a)参照)。バインダ23は、加熱によって蒸発する、例えば、熱可塑性樹脂や、ワックスなどから形成されている。
【0025】
次に、第1乾燥工程として、第1の部材11と第2の部材12との間の混合物24を乾燥させる(ステップS13)。具体的には、第1配置工程において第1の部材11と第2の部材12との間に配置された混合物24を乾燥し、混合物24に含まれるバインダ23の一部を蒸発させる。
【0026】
次に、第2配置工程として、接合ろう材22を混合物24に隣接させて配置する(ステップS14)。具体的には、図5に示すように、第1の部材11上において、混合物24に接触するように接合ろう材22を配置する。このとき、接合ろう材22が配置される位置は、混合物24に直接接触しない位置であってもよい。混合物24から離れていてもよく、接合工程において加熱され溶融する接合ろう材22が流れることで複数の金属粉末21の間に流れ込み、金属粉末21の集合体に含浸することが可能な位置であればよい。
【0027】
次に、第2乾燥工程として、混合物24に隣接して配置された接合ろう材22を乾燥させる(ステップS15)。具体的には、第2配置工程において混合物24に隣接させて配置された接合ろう材22を乾燥し、接合ろう材22に含まれるフラックスを蒸発させる。
【0028】
次に、接合工程として、混合物24と接合ろう材22とを加熱し複合ろう材20を形成することで、複合ろう材20によって第1の部材11と第2の部材12とを接合する(ステップS16)。具体的には、図5に示す状態の第1の部材11と第2の部材12を減圧加熱炉30の内部にセットする。減圧加熱炉30は、内部を減圧しつつ内部にセットされた部材を加熱することが可能な装置である。減圧加熱炉30の内部にセットされた図5に示す状態の第1の部材11と第2の部材12は、混合物24が加熱されることで、混合物24のバインダ23が揮発する(図6参照)。揮発したバインダ23は、減圧加熱炉30の内部を減圧することで吸引され、減圧加熱炉30の外部に排出される(図6の実線矢印F2)。さらに、接合ろう材22が加熱されることで溶融し、バインダ23の揮発によって隙間となった複数の金属粉末21の間に流れ込む(図6の白抜き矢印F3)。これにより、複数の金属粉末21が接合ろう材22によって含浸されるため、第1の部材11と第2の部材12との間に、金属粉末21と接合ろう材22とからなる複合ろう材20が形成される。形成された複合ろう材20は、第1の部材11の内壁面11bと第2の部材12の外壁面12bとに接合する。このようにして、第1の部材11と第2の部材12とが複合ろう材20によって接合された、ろう付構造体1が作製される。
【0029】
以上説明した、本実施形態のろう付構造体1の製造方法によれば、接合工程において、混合物24と接合ろう材22とを加熱すると、混合物24においてバインダ23が蒸発する。これにより、貫通孔11aに挿入された第2の部材12と第1の部材11との間に配置されている混合物24は、金属粉末21の集合体となる。さらに、溶融する接合ろう材22が複数の金属粉末21の間に流れ込むことで、金属粉末21の集合体に接合ろう材22が含侵する。これにより、第1の部材11と第2の部材12との間に金属粉末21と接合ろう材22とからなる複合ろう材20が形成される。複合ろう材20は、金属粉末21の集合体がスペーサとなって、第1の部材11と第2の部材12との隙間を埋めるため、この隙間がろう材のみによって2つの部材を接合する場合に比べ大きい場合でも第1の部材11と第2の部材12とを接合することができる。これにより、第1の部材11の貫通孔11aの大きさや第2の部材12の太さなどの製作公差を大きくすることができるため、ろう付構造体1の製造コストを低減しつつ、2つの部材11、12の接合強度を向上することができる。
【0030】
また、ろう付構造体1の製造方法によれば、第1の部材11と第2の部材12とを接合するとき、第1の部材11と第2の部材12との間の金属粉末21の集合体を加熱によって溶融された接合ろう材22で含侵させる。これにより、ろう材のみによって2つの部材を接合する場合に比べ、2つの部材を接合するろう材にボイドが形成されにくくなる。したがって、2つの部材11、12の接合強度をさらに向上することができる。
【0031】
また、ろう付構造体1の製造方法によれば、複合ろう材20は、金属粉末21に対する接合ろう材22の体積比が、25%以上50%以下となっている。これにより、金属粉末21と接合ろう材22との共晶結合の不足による接合強度の低下を抑制しつつ、複合ろう材20の内部での組成偏析に起因する接合ろう材22に含まれるSiなどの添加物の析出による接合強度の低下を抑制することができる。したがって、2つの部材11、12の接合強度を一定程度以上に維持することができる。
【0032】
また、ろう付構造体1の製造方法によれば、第1の部材11が有する貫通孔11aの内壁面11bと、第2の部材12の外壁面12bとの隙間の大きさは、0.2mmより大きく、5mm以下となっている。これにより、2つの部材間の隙間が、ろう材のみによって2つの部材を接合する場合での2つの部材間の最大の距離である0.2mmより大きい場合でも、金属粉末21の集合体を含む複合ろう材20によって2つの部材11、12を接合することができる。したがって、第1の部材11の貫通孔11aの大きさや第2の部材12の太さなどの製作公差を大きくすることができるため、ろう付構造体1の製造コストを低減しつつ、2つの部材11、12の接合強度を向上することができる。
【0033】
また、ろう付構造体1の製造方法によれば、第1乾燥工程において、第1の部材11と第2の部材12との間の混合物24を乾燥させる。これにより、混合物24に含まれるバインダ23の一部を蒸発させることができるため、接合工程において、溶融した接合ろう材22が金属粉末21の間に流れ込みやすくなる。これにより、2つの部材11、12の接合強度をさらに向上することができる。また、ろう付構造体1の製造方法によれば、第2乾燥工程において、混合物24に隣接して配置された接合ろう材22を乾燥させる。これにより、接合ろう材22に含まれるフラックスを蒸発させることができるため、残留フラックスによる2つの部材11、12の腐食を防止することができる。
【0034】
また、ろう付構造体1によれば、第1の部材11と第2の部材12とは、接合ろう材22と、接合ろう材22を含浸した金属粉末21の集合体とを含む複合ろう材20によって接合されている。これにより、第1の部材11と第2の部材12との隙間が比較的広い場合でも、金属粉末21の集合体がスペーサとなって、第1の部材11と第2の部材12とを接合することができるため、第1の部材11や第2の部材12の製作公差を大きくすることができる。したがって、ろう付構造体1の製造コストを低減しつつ、2つの部材11、12の接合強度を向上することができる。
【0035】
また、ろう付構造体1によれば、金属粉末21に対する接合ろう材22の体積比が、25%以上50%以下となっている。これにより、2つの部材11、12の接合強度を一定程度以上に維持することができる。
【0036】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態のろう付構造体2の概略構成を示す模式図である。第2実施形態のろう付構造体2は、第1実施形態のろう付構造体1(図1)と比較すると、第1の部材11に対する第2の部材12の位置が異なる。
【0037】
本実施形態のろう付構造体2は、第1実施形態のろう付構造体1と同じ構成であって、第1の部材11と、第2の部材12と、複合ろう材20と、を備える。ろう付構造体2では、図7(a)のB-B線断面図である図7(b)に示すように、貫通孔11aにおける第2の部材12の位置が、貫通孔11aの中心に対してずれている。具体的には、図7(b)に示すように、第2の部材12は、中心軸C12が第1の部材11の貫通孔11aの中心軸C11からずれた位置に配置されている。このため、第1の部材11における貫通孔11aの内壁面11bと、第2の部材12の外壁面12bとの間の距離が、場所によって異なっている。具体的には、図7(b)に示すように、貫通孔11aの内壁面11bと第2の部材12の外壁面12bとの距離L22が、別の位置での貫通孔11aの内壁面11bと第2の部材12の外壁面12bとの距離L21より長い。この場合、距離L22は、5mm以下となっている。
【0038】
以上説明した、本実施形態のろう付構造体2によれば、第1の部材11と第2の部材12とは、接合ろう材22と、接合ろう材22を含浸した金属粉末21の集合体とを含む複合ろう材20によって接合されている。これにより、第1の部材11と第2の部材12との隙間が0.2mm以上であっても、金属粉末21の集合体がスペーサとなって、第1の部材11と第2の部材12とを接合することができるため、第1の部材11や第2の部材12の製作公差を大きくすることができる。したがって、ろう付構造体2の製造コストを低減しつつ、2つの部材11、12の接合強度を向上することができる。
【0039】
また、ろう付構造体2によれば、第2の部材12は、中心軸C12が第1の部材11の貫通孔11aの中心軸C11からずれた位置に配置されている。ろう付構造体2では、このように、2つの部材11、12の組み付け位置が所定の位置からずれていても、貫通孔11aの内壁面11bと第2の部材12の外壁面12bとの距離が5mm以下となっているため、複合ろう材20によって第1の部材11と第2の部材12とを接合することができる。したがって、第1の部材11と第2の部材12との接合における自由度が高めることができるため、製造コストをさらに低減することができる。
【0040】
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態のろう付構造体3の概略構成を示す模式図である。第3実施形態のろう付構造体3は、第1実施形態のろう付構造体1(図1)と比較すると、第2の部材の形状が異なる。
【0041】
本実施形態のろう付構造体3は、第1の部材11と、第2の部材32と、複合ろう材20とを備える。第2の部材32は、ステンレス鋼などの金属から形成されている管状部材であって、図8のろう付構造体3の断面図に示すように、中心軸C32に垂直な断面が矩形状に形成されている。第2の部材32は、中心軸C32に垂直な断面が矩形状に形成されている流路32aを有する。第2の部材32は、外径が貫通孔11aの内径より小さく、第1の部材11の貫通孔11aに挿通される。本実施形態では、図8に示すように、第1の部材11における貫通孔11aの内壁面11bと、第2の部材32の外壁面32bとの間の距離L31、L32、L33は、0.2mmより大きく、5mm以下となっている。これにより、複合ろう材20によって、第2の部材32の外側全てが、第1の部材11の貫通孔11aの内壁面11bに接合されている。
【0042】
以上説明した、本実施形態のろう付構造体3によれば、中心軸C32に垂直な断面が矩形状の第2の部材32と第1の部材11とは、接合ろう材22と、接合ろう材22を含浸した金属粉末21の集合体とを含む複合ろう材20によって接合されている。これにより、第1の部材11と第2の部材32との隙間が0.2mm以上であっても、金属粉末21の集合体がスペーサとなって、第1の部材11と第2の部材32とを接合することができるため、第1の部材11や第2の部材32の製作公差を大きくすることができる。したがって、ろう付構造体3の製造コストを低減しつつ、2つの部材11、32の接合強度を向上することができる。
【0043】
また、ろう付構造体3によれば、第2の部材32は、中心軸C32に垂直な断面が矩形状に形成されているため、円形状に形成されている貫通孔11aの内壁面11bと第2の部材32の外壁面12bとの隙間の大きさは、位置によって異なっている。しかしながら、ろう付構造体3では、接合前に第1の部材11と第2の部材32との間に充填される混合物24の金属粉末21が分散して配置されるため、隙間の大きさが変化しても接合することができる。これにより、貫通孔11aの形状と第2の部材32の形状とが同じような形状でなくても接合できるため、貫通孔11aの形状や第2の部材32の形状の自由度を向上することができる。
【0044】
<第4実施形態>
図9は、第4実施形態のろう付構造体4の概略構成を示す模式図である。第4実施形態のろう付構造体4は、第1実施形態のろう付構造体1(図1)と比較すると、第2の部材の形状が異なる。
【0045】
本実施形態のろう付構造体4は、第1の部材11と、第2の部材42と、複合ろう材20と、を備える。第2の部材42は、ステンレス鋼などの金属から形成されている管状部材であって、流路42aを有する。第2の部材42は、図9のろう付構造体4の断面図に示すように、中心軸C42に平行な断面が一方の端部43から他方の端部44にかけて幅が広くなるように形成されている。これにより、貫通孔11aにおいて、第1の部材11における貫通孔11aの内壁面11bと、第2の部材42の外壁面42bとの間の距離は、第2の部材42の一方の端部43側から他方の端部44側に向かうにしたがって狭くなっている。本実施形態では、貫通孔11aにおける、第1の部材11の貫通孔11aの内壁面11bと、第2の部材42の外壁面42bとの間の距離L41、L42は、0.2mmより大きく、5mm以下となっている。第2の部材42の外側全ては、複合ろう材20によって、第1の部材11の貫通孔11aの内壁面11bに接合されている。
【0046】
以上説明した、本実施形態のろう付構造体4によれば、第1の部材11と第2の部材42とは、接合ろう材22と、接合ろう材22を含浸した金属粉末21の集合体とを含む複合ろう材20によって接合されている。これにより、第1の部材11と第2の部材42との間の距離が、図9に示すように第2の部材42の中心軸C42に沿う方向において変化しても、金属粉末21の集合体がスペーサとなって、第1の部材11と第2の部材42とを接合することができる。したがって、第1の部材11や第2の部材42の製作公差を大きくすることができるため、ろう付構造体4の製造コストを低減しつつ、2つの部材11、42の接合強度を向上することができる。
【0047】
<第5実施形態>
図10は、第5実施形態のろう付構造体5の概略構成を示す模式図である。第5実施形態のろう付構造体5は、第1実施形態のろう付構造体1(図1)と比較すると、第2の部材の形状が異なる。
【0048】
本実施形態のろう付構造体5は、第1の部材11と、第2の部材52と、複合ろう材20とを備える。第2の部材52は、ステンレス鋼などの金属から形成されている管状部材であって、中心軸C52に沿って形成されている流路52aを有する。第2の部材52は、貫通孔11aに挿通されている状態において、貫通孔11aに位置する部位がくびれた形状をなしている。具体的には、図10に示すように、第2の部材52の一方の端部53と他方の端部54とは、幅がほぼ同じ大きさとなっている。第2の部材52は、一方の端部53から他方の端部54に向かうにしたがって幅が小さくなるように形成されており、他方の端部54から一方の端部53に向かうにしたがっても幅が小さくなるように形成されている。すなわち、第2の部材12において、貫通孔11aに位置する中央部55の幅は、一方の端部53および他方の端部54の幅より小さい。これにより、第1の部材11の貫通孔11aの内壁面11bと第2の部材52の中央部55の外壁面52bとの間の距離L51は、第1の部材11の内壁面11bと第2の部材52の他の部分の外壁面52bとの間の距離L52より大きい。距離L51は、5mm以下となっている。
【0049】
以上説明した、本実施形態のろう付構造体5によれば、貫通孔11aにおいて中央部55がくびれている第2の部材52と第1の部材11とは、接合ろう材22と、接合ろう材22を含浸した金属粉末21の集合体とを含む複合ろう材20によって接合されている。これにより、第1の部材11と第2の部材52との隙間が第2の部材52の形状によって変化しても、金属粉末21の集合体がスペーサとなって、第1の部材11と第2の部材52とを接合することができるため、第1の部材11や第2の部材52の製作公差を大きくすることができる。したがって、ろう付構造体5の製造コストを低減しつつ、2つの部材11、52の接合強度を向上することができる。
【0050】
また、ろう付構造体5によれば、図10に示すように、くびれている中央部55が貫通孔11aにおいて複合ろう材20によって第1の部材11に接合されている。これにより、第2の部材52の中心軸C52に沿う方向への第2の部材52の移動を規制することができる。したがって、第2の部材52が第1の部材11から抜けにくくなるため、ろう付構造体5の破損を抑制することができる。
【0051】
<第6実施形態>
図11は、第6実施形態のろう付構造体6の概略構成を示す模式図である。第6実施形態のろう付構造体6は、第1実施形態のろう付構造体1(図1)と比較すると、第1の部材と第2の部材の形状が異なる。
【0052】
本実施形態のろう付構造体6は、第1の部材61と、第2の部材62と、2つの複合ろう材20とを備える。
【0053】
第1の部材61は、ステンレス鋼などの金属から形成されている管状部材である。第1の部材61は、SUS316などのステンレス鋼から形成されている。第1の部材61は、第2の部材62が挿通される貫通孔61aを有する。
【0054】
第2の部材62は、ステンレス鋼などの金属から形成されている管状部材であって、大径部63と、小径部64とを有する。第2の部材62は、中心軸C62が第1の部材61の貫通孔61aの中心軸C61に重なるように配置されている。
【0055】
大径部63は、第1の部材61の一方の端部61bの内側において、貫通孔61aに挿入されている。大径部63には、第2の部材62の流路の一部となる流路63aが内側に形成されている。第1の部材61における貫通孔61aの内壁面61cと、大径部63の外壁面63bとの間の距離L61は、0.2mmより大きく、5mm以下となっている。
【0056】
小径部64は、第1の部材61の他方の端部61dの内側において、貫通孔61aに挿入されている。小径部64の外径は、大径部63の外径より小さい。小径部64には、第2の部材62の流路の一部となる流路64aが内側に形成されている。小径部64は、貫通孔61aにおいて、大径部63と接続されており、流路64aは、流路63aと連通する。第1の部材61における貫通孔61aの内壁面61cと、小径部64の外壁面64bとの間の距離L62は、0.2mmより大きく、5mm以下となっている。
【0057】
複合ろう材20は、貫通孔61aにおいて、第1の部材61の一方の端部61bと大径部63との間、および、第1の部材61の他方の端部61dと小径部64との間に配置される。第1の部材61の一方の端部61bの内側に配置される複合ろう材20は、第1の部材61の貫通孔61aの内壁面61cと、大径部63の外壁面63bとに接合し、第1の部材61の一方の端部61b側における貫通孔61aの内側と外側との気密を保つ。第1の部材61の他方の端部61dの内側に配置される複合ろう材20は、第1の部材61の貫通孔61aの内壁面61cと、小径部64の外壁面64bとに接合し、第1の部材61の他方の端部61d側における貫通孔61aの内側と外側との気密を保つ。
【0058】
以上説明した、本実施形態のろう付構造体6によれば、第1の部材61と第2の部材62とは、接合ろう材22と、接合ろう材22を含浸した金属粉末21の集合体とを含む複合ろう材20によって接合されている。これにより、第1の部材61と第2の部材62との隙間が、第1の部材61と小径部64との間のように広くなっても、金属粉末21の集合体がスペーサとなって、第1の部材61と第2の部材62とを接合することができるため、第1の部材61や第2の部材62の製作公差を大きくすることができる。したがって、ろう付構造体6の製造コストを低減しつつ、2つの部材61、62の接合強度を向上することができる。
【0059】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0060】
[変形例1]
上述の実施形態では、ろう付構造体は、化学蓄熱材における放熱反応と吸熱反応とを利用した化学蓄熱システムに適用されるとした。しかしながら、ろう付構造体が適用される分野はこれに限定されない。また、第1の部材は、平板形状または管形状でなくてもよいし、第2の部材も管形状でなくてもよい。第1の部材が有する貫通孔に挿入されている第2の部材がろう付によって接合されている構造体であればよい。
【0061】
[変形例2]
上述の実施形態では、複合ろう材20における、金属粉末21に対する接合ろう材22の体積比は、25%以上50%以下となっているとした。しかしながら、金属粉末21に対する接合ろう材22の体積比は、これに限定されない。25%より低くてもよいし、50%より高くてもよい。ただし、25%より低くなると、金属粉末21と接合ろう材22との共晶結合が不足するため接合強度が低下しやすくなり、50%より高くなると、接合ろう材22のSiなどの添加物の析出によって接合強度が低下しやすくなるため、25%以上50%以下が望ましい。
【0062】
[変形例3]
上述の実施形態では、第1の部材における貫通孔の内壁面と、貫通孔に挿入される第2の部材の外壁面との間の距離は、0.2mmより大きく、5mm以下となっているとした。この距離は、一般的なろう付において設定される隙間の大きさである0.2mm以下であってもよいし、5mmより大きくてもよい。
【0063】
[変形例4]
上述の実施形態では、ろう付構造体の製造方法は、第1の部材11と第2の部材12との間の混合物24を乾燥させる第1乾燥工程と、混合物24に隣接して配置された接合ろう材22を乾燥させる第2乾燥工程とを備えるとした。いずれか一方であってもよいし、2つの乾燥工程はなくてもよい。
【0064】
[変形例5]
上述の実施形態では、ろう付構造体の製造方法は、減圧加熱炉30を用いて、内部を減圧しつつ、混合物24と接合ろう材22とを加熱し、複合ろう材20を形成するとした。しかしながら、混合物24と接合ろう材22とから複合ろう材20を形成する方法は、これに限定されない。
【0065】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0066】
1,2,3,4,5,6…ろう付構造体
11,61…第1の部材
11a,61a…貫通孔
11b,61c…内壁面
12,32,42,52,62…第2の部材
12b,32b,42b,52b,63b,64b…外壁面
20…複合ろう材
21…金属粉末
22…接合ろう材
23…バインダ
24…混合物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11