IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

特許7173103感光性樹脂組成物、電子デバイスの製造方法および電子デバイス
<>
  • 特許-感光性樹脂組成物、電子デバイスの製造方法および電子デバイス 図1
  • 特許-感光性樹脂組成物、電子デバイスの製造方法および電子デバイス 図2
  • 特許-感光性樹脂組成物、電子デバイスの製造方法および電子デバイス 図3
  • 特許-感光性樹脂組成物、電子デバイスの製造方法および電子デバイス 図4
  • 特許-感光性樹脂組成物、電子デバイスの製造方法および電子デバイス 図5
  • 特許-感光性樹脂組成物、電子デバイスの製造方法および電子デバイス 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、電子デバイスの製造方法および電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/037 20060101AFI20221109BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20221109BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20221109BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221109BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221109BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G03F7/037 501
G03F7/027 502
G03F7/075 501
G03F7/004 501
G03F7/004 504
G03F7/20 521
G03F7/20 501
C08G73/10
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020117282
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2021162834
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2020061942
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕馬
(72)【発明者】
【氏名】川浪 卓士
(72)【発明者】
【氏名】川崎 律也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊誠
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-087541(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139407(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/097580(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/037
G03F 7/027
G03F 7/075
G03F 7/004
G03F 7/20
C08G 73/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミド環構造を有するポリイミド(A)と、
多官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、
感光剤(C)と、
エポキシ樹脂(E)と、
溶剤(J)と、
を含み、
前記ポリイミド(A)は、その末端に、エポキシ基と反応して結合形成可能な基を有し、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、以下一般式で表される7官能以上の(メタ)アクリレート化合物(B1)を含む、感光性樹脂組成物。
【化1】
上記一般式中、R'は水素原子またはメチル基、nは2または3、Rは水素原子または(メタ)アクリロイル基を表す。
【請求項2】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)中に含まれるイミド基のモル数をIMとし、
前記ポリイミド(A)中に含まれるアミド基のモル数をAMとしたとき、
{IM/(IM+AM)}×100(%)で表されるイミド化率が90%以上である、感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)が下記一般式(a)で表される構造を含む、感光性樹脂組成物。
【化2】
一般式(a)中、
Xは2価の有機基であり、
Yは4価の有機基であり、
XおよびYの少なくとも一方は、フッ素原子含有基である。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)は、フッ素原子を含むポリイミドを含む、感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)は、その末端に、酸無水物基を有する、感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)は、その末端に、マレイミド構造を有しない、感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)100質量部に対する前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の量が50~150質量部である、感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)100質量部に対する前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の量が70~120質量部である、感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記感光剤(C)が、光ラジカル発生剤を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、熱ラジカル開始剤(D)を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記熱ラジカル開始剤(D)が、有機過酸化物を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項10または11に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)100質量部に対する前記熱ラジカル開始剤(D)の量が0.1~20質量部である、感光性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、前記エポキシ樹脂(E)の硬化触媒(F)を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、シランカップリング剤(G)を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記シランカップリング剤(G)が、環状無水物構造を有するシランカップリング剤を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、界面活性剤(H)を含む、感光性樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
組成物全体中の、前記ポリイミド(A)および前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の割合が、20~50質量%である、感光性樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
少なくとも前記ポリイミド(A)および前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、前記溶剤(J)に溶解したワニス状である、感光性樹脂組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
電子デバイスにおける絶縁層の形成に用いられる、感光性樹脂組成物。
【請求項20】
基板上に、請求項1~19のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する膜形成工程と、
前記感光性樹脂膜を露光する露光工程と、
露光された前記感光性樹脂膜を現像する現像工程と、
を含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の電子デバイスの製造方法であって、
前記現像工程の後に、露光された前記感光性樹脂膜を加熱して硬化させる熱硬化工程を含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項22】
請求項1~19のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化膜を備える電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物および電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子分野においては、絶縁層などの硬化膜を形成するために、ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂を含む感光性樹脂組成物が用いられることがある。そのため、ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂を含む感光性樹脂組成物がこれまで検討されてきている。
【0003】
一例として、特許文献1には、約20,000ダルトン~約70,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する少なくとも1種の完全イミド化ポリイミドポリマー;少なくとも1種の溶解度スイッチング化合物;少なくとも1種の光開始剤;および少なくとも1種の溶剤を含み、シクロペンタノンを現像剤として使用した場合に約0.15μm/秒を超える溶解速度を示すフィルムを形成することができる感光性組成物が記載されている。
【0004】
特許文献2、3などにも、ポリアミド樹脂および/またはポリイミド樹脂を含む感光性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/172092号
【文献】国際公開第2007/047384号
【文献】特開2018-070829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
感光性樹脂組成物を用いて電子デバイス中に硬化膜を形成するにあたっては、通常、熱による硬化処理が行われる。具体的には、まず、感光性樹脂組成物を基板上に塗布して膜形成し、その膜を露光や現像によりパターニングする。そして、そのパターニングされた膜を熱処理することで、硬化膜を形成する。
上記のような加熱による硬化膜の形成においては、加熱による膜の収縮が抑えられていることが好ましい。特に、段差を有する基板上に平坦な硬化膜を形成することが近年求められている。しかし、膜が大きく収縮してしまうと、膜の平坦性が損なわれるなどの問題が生じることがある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的の1つは、加熱による収縮が小さく、平坦性が良好な硬化膜を形成可能な感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0009】
本発明によれば、
イミド環構造を有するポリイミド(A)と、
多官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、
感光剤(C)と、
溶剤(J)と、
を含む、感光性樹脂組成物
が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、
基板上に、上記の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する膜形成工程と、
前記感光性樹脂膜を露光する露光工程と、
露光された前記感光性樹脂膜を現像する現像工程と、
を含む、電子デバイスの製造方法
が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、
上記の感光性樹脂組成物の硬化膜を備える電子デバイス
が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱による収縮が小さく、平坦性が良好な硬化膜を形成可能な感光性樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電子デバイスの構成の一例を示す縦断面図である。
図2図2は、図1の鎖線で囲まれた領域の部分拡大図である。
図3図1に示す電子デバイスを製造する方法を示す工程図である。
図4図1に示す電子デバイスを製造する方法を説明するための図である。
図5図1に示す電子デバイスを製造する方法を説明するための図である。
図6図1に示す電子デバイスを製造する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に図2以降において、図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
【0015】
本明細書中、「略」という用語は、特に明示的な説明の無い限りは、製造上の公差や組立て上のばらつき等を考慮した範囲を含むことを表す。
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0016】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本明細書における「有機基」の語は、特に断りが無い限り、有機化合物から1つ以上の水素原子を除いた原子団のことを意味する。例えば、「1価の有機基」とは、任意の有機化合物から1つの水素原子を除いた原子団のことを表す。
本明細書における「電子装置」の語は、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池など、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する意味で用いられる。
【0017】
<感光性樹脂組成物>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、イミド環構造を有するポリイミド(A)と、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、感光剤(C)と、溶剤(J)と、を含む。
【0018】
従来のポリアミド/ポリイミド系の感光性樹脂組成物の多くは、使用前(硬化膜を形成する前)においてはポリアミドを含み、ポリイミドを含まない。すなわち、従来は、ポリアミドを含む感光性樹脂組成物を用いて基板上に膜を形成し、その膜を典型的には加熱して、ポリアミドを閉環させてポリイミドとすることが多かった。
しかし、この場合、閉環反応やそれに伴う脱水などにより膜が収縮し、平坦性が良好な硬化膜を得にくい場合があった。
【0019】
一方、本実施形態の感光性樹脂組成物は、使用前(硬化膜を形成する前)において、既にイミド環構造を有するポリイミド(A)を含む。また、本実施形態においては、硬化のメカニズムとして、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の重合反応を採用した(この重合反応は、原理的に脱水を伴わない)。これら事項により、本実施形態の感光性樹脂組成物を用いて硬化膜を形成することで、加熱による収縮が小さく、平坦性が良好な硬化膜を形成可能である。特に、段差を有する基板上にも、平坦性が良好な硬化膜を形成可能である。
【0020】
また、本実施形態の感光性樹脂組成物を用いることで、耐熱性が良好で、機械特性(例えば引張り伸び率)が良好な硬化膜を形成しやすい。
電子デバイス中の硬化膜には、しばしば、高い耐熱性や、良好な機械特性が良好であることが求められる。しかし、従来、耐熱性を高めようとして樹脂を剛直に設計すると、樹脂の柔軟性が失われ、機械特性が低下する場合があった。
詳細は不明であるが、本実施形態の感光性樹脂組成物においては、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、硬化(重合)の際に、イミド環構造を有するポリイミド(A)と複雑に絡み合う結果として、従来の硬化膜とは異なる硬化膜が形成されると考えられる。この「環状構造を有するポリイミドと多官能(メタ)アクリレートとの絡み合い構造」が、良好な耐熱性と良好な機械特性に関係していると考えられる。
【0021】
上記のような事項から、本実施形態の感光性樹脂組成物は、電子デバイスにおける絶縁層の形成に好ましく用いられる。
【0022】
本実施形態の感光性樹脂組成物が含むことができる成分や、本実施形態の感光性樹脂組成物の性状、物性などについて説明を続ける。
【0023】
(イミド環構造を有するポリイミド(A))
本実施形態の感光性樹脂組成物は、イミド環構造を有するポリイミド(A)を含む。以下、イミド環構造を有するポリイミド(A)のことを、単に「ポリイミド(A)」とも表記する。
既に述べたが、本実施形態の感光性樹脂組成物は、硬化前においてイミド環構造を有するポリイミドを用いることで、硬化(加熱)が小さい傾向がある。
【0024】
ポリイミド(A)中に含まれるイミド基のモル数をIMとし、ポリイミド(A)中に含まれるアミド基のモル数をAMとしたとき、{IM/(IM+AM)}×100(%)で表されるイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。要するに、ポリイミド(A)は、開環しているアミド構造が無いまたは少なく、閉環しているイミド構造が多い樹脂であることが好ましい。このようなポリイミドを用いることで、加熱による収縮を一層抑えることができ、そして平坦性がより良好な硬化膜を形成することができる。
イミド化率は、一例として、NMRスペクトルにおける、アミド基に対応するピークの面積やイミド基に対応するピークの面積などから知ることができる。別の例として、イミド化率は、赤外吸収スペクトルにおける、アミド基に対応するピークの面積やイミド基に対応するピークの面積などから知ることができる。
【0025】
ポリイミド(A)は、フッ素原子を含むポリイミドを含むことが好ましい。本発明者らの知見として、フッ素原子を含むポリイミドは、フッ素原子を含まないポリイミドよりも、有機溶剤溶解性が良好な傾向がある。このため、フッ素原子を含むポリイミドを用いることで、感光性樹脂組成物の性状をワニス状としやすい。
フッ素原子を含むポリイミド中のフッ素原子の量(質量比率)は、例えば1~30質量%、好ましくは3~28質量%、より好ましくは5~25質量%である。ある程度多くの量のフッ素原子がポリイミド中に含まれることで、十分な有機溶剤溶解性を得やすい。一方、他の性能とのバランスの観点からは、フッ素原子の量が多すぎないことが好ましい。
【0026】
ポリイミド(A)の末端を様々に設計することで、例えば硬化物の機械物性(引張り伸びなど)を一層向上させうる。
【0027】
一例として、ポリイミド(A)は、その末端に、エポキシ基と反応して結合形成可能な基を有することが好ましい。このような基としては、酸無水物基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基などが挙げられる。
【0028】
好ましくは、ポリイミド(A)は、その末端に、酸無水物基を有する。本実施形態の感光性樹脂組成物においては、酸無水物基とエポキシ基は十分に結合形成しやすい。
酸無水物基は、好ましくは、環状構造の酸無水物骨格を有する基である。ここでの「環状構造」は、好ましくは5員環または6員環、より好ましくは5員環である。
【0029】
末端構造に関して補足すると、ポリイミド(A)は、その末端に、マレイミド構造を有しないことが好ましい。
【0030】
ポリイミド(A)は、下記一般式(a)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0031】
【化1】
【0032】
一般式(a)中、
Xは2価の有機基であり、
Yは4価の有機基であり、
XおよびYの少なくとも一方は、フッ素原子含有基である。
【0033】
Xの2価の有機基および/またはYの4価の有機基は、芳香環構造を含むことが好ましく、ベンゼン環構造を含むことがより好ましい。これにより耐熱性が一層高まる傾向がある。
有機溶剤溶解性の観点では、XおよびYの両方が、フッ素原子含有基であることが好ましい。
Xの2価の有機基および/またはYの4価の有機基は、好ましくは、2~6個のベンゼン環が、単結合または2価の連結基を介して結合した構造を有する。ここでの2価の連結基としては、アルキレン基、フッ化アルキレン基、エーテル基などを挙げることができる。アルキレン基およびフッ化アルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
Xの2価の有機基の炭素数は、例えば6~30である。
Yの4価の有機基の炭素数は、例えば6~20である。
一般式(a)中の2つのイミド環は、それぞれ、5員環であることが好ましい。
【0034】
ポリイミド(A)は、下記一般式(aa)で表される構造単位を含むことが、さらに好ましい。
【0035】
【化2】
【0036】
一般式(aa)において、
Y'は、単結合またはアルキレン基を表し、
Xは、一般式(a)におけるXと同義である。
Y'のアルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。Y'のアルキレン基の水素原子の一部または全部は、フッ素原子で置換されていることが好ましい。Y'のアルキレン基の炭素数は、例えば1~6、好ましくは1~4、さらに好ましくは1~3である。
【0037】
ポリイミド(A)は、典型的には、(i)まず、ジアミンと酸二無水物とを反応(縮重合)させてポリアミドを合成し、(ii)その後、そのポリアミドをイミド化させ(閉環反応させ)、(iii)必要に応じてポリマー末端に所望の官能基を導入すること、により得ることができる。具体的な反応条件については、後掲の実施例や、前掲の特許文献1の記載などを参考とすることができる。
【0038】
最終的に得られるポリイミド(A)において、ジアミンは、一般式(a)における2価の有機基Xとしてポリマー中に組み込まれる。また、酸二無水物は、一般式(a)における4価の有機基Yとしてポリマー中に組み込まれる。
ポリイミド(A)の合成においては、1または2以上のジアミンを用いることができ、また、1または2以上の酸二無水物を用いることができる。
【0039】
原料のジアミンとしては、例えば、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル(3,4'-ODA)、4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'ジメチルベンジジン、3,3'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2'-ビス(p-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(トリフルオロメトキシ)ベンジジン(TFMOB)、2,2'-ビス(ペンタフルオロエトキシ)ベンジジン(TFEOB)、2,2'-トリフルオロメチル-4,4'-オキシジアニリン(OBABTF)、2-フェニル-2-トリフルオロメチル-ビス(p-アミノフェニル)メタン、2-フェニル-2-トリフルオロメチル-ビス(m-アミノフェニル)メタン、2,2'-ビス(2-ヘプタフルオロイソプロポキシ-テトラフルオロエトキシ)ベンジジン(DFPOB)、2,2-ビス(m-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6-FmDA)、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,6-ビス(トリフルオロメチル)-1,4-ジアミノベンゼン(2TFMPDA)、1-(3,5-ジアミノフェニル)-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンタン、3,5-ジアミノベンゾトリフルオリド(3,5-DABTF)、3,5-ジアミノ-5-(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、3,5-ジアミノ-5-(ヘプタフルオロプロピル)ベンゼン、2,2'-ジメチルベンジジン(DMBZ)、2,2',6,6'-テトラメチルベンジジン(TMBZ)、3,6-ジアミノ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテン(6FCDAM)、3,6-ジアミノ-9-トリフルオロメチル-9-フェニルキサンテン(3FCDAM)、3,6-ジアミノ-9,9-ジフェニルキサンテン
【0040】
原料の酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸無水物(PMDA)、ジフェニルエーテル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(ODPA)、ベンゾフェノン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジフェニルスルホン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(DSDA)、ジフェニルメタン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)プロパン、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(6FDA)等を挙げることができる。もちろん、使用可能な酸二無水物はこれらのみに限定されない。酸二無水物は1種または2種以上使用可能である。
【0041】
ジアミンと酸二無水物との使用比率は、基本的にはモル比で1:1である。ただし、所望の末端構造を得るために、一方を過剰に用いてもよい。具体的には、ジアミンを過剰に用いることで、ポリイミド(A)の末端(両末端)はアミノ基となりやすい。一方、酸二無水物を過剰に用いることで、ポリイミド(A)の末端(両末端)は酸無水物基となりやすい。前述のように、本実施形態において、ポリイミド(A)は、その末端に、酸無水物基を有することが好ましい。よって、本実施形態において、ポリイミド(A)の合成の際には、酸二無水物を過剰に用いることが好ましい。
【0042】
縮重合により得られたポリイミドの末端のアミノ基および/または酸無水物基に、何らかの試薬を反応させて、ポリイミド末端が所望の官能基を有するようにしてもよい。
【0043】
ポリイミド(A)の重量平均分子量は、例えば5000~100000、好ましくは7000~75000、より好ましくは10000~50000である。ポリイミド(A)の重量平均分子量がある程度大きいことにより、例えば硬化膜の十分な耐熱性を得ることができる。また、ポリイミド(A)の重量平均分子量が大きすぎないことにより、ポリイミド(A)を有機溶剤に溶解させやすくなる。
重量平均分子量は、通常、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。
【0044】
(多官能(メタ)アクリレート化合物(B))
本実施形態の感光性樹脂組成物は、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を含む。多官能(メタ)アクリレート化合物(B)としては、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するものを特に制限なく挙げることができる。
【0045】
前述の「環状構造を有するポリイミドと多官能(メタ)アクリレートとの絡み合い構造」を実現する観点や、強固で耐薬品性が良好な硬化膜を得る観点からは、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、3官能以上であることが好ましい。多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の官能基数の上限は特に無いが、原料入手の容易性などから、官能基数の上限は例えば11官能である。
大まかな傾向として、官能基((メタ)アクリロイル基)の数が多い多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を用いた場合、硬化膜の耐薬品性が高まる傾向がある。一方、官能基((メタ)アクリロイル基)の数が少ない多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を用いた場合、硬化膜の引張り伸びなどの機械物性が良好となる傾向がある。
【0046】
一例として、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、7官能以上の(メタ)アクリレート化合物(B1)を含むことが好ましい。
【0047】
一例として、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、5~6官能の(メタ)アクリレート化合物(B2)を含むことが好ましい。
【0048】
一例として、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、3~4官能の(メタ)アクリレート化合物(B3)を含むことが好ましい。
【0049】
一例として、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、以下一般式で表される化合物を含むことができる。以下一般式において、R'は水素原子またはメチル基、nは0~3、Rは水素原子または(メタ)アクリロイル基である。
【0050】
【化3】
【0051】
多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の具体例としては、以下を挙げることができる。もちろん、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)はこれらのみに限定されない。
【0052】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート等のエポキシアクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレートなど。
【0053】
アロニックスM-400、アロニックスM-460、アロニックスM-402、アロニックスM-510、アロニックスM-520(東亜合成株式会社製)、KAYARAD T-1420、KAYARAD DPHA、KAYARAD DPCA20、KAYARAD DPCA30、KAYARAD DPCA60、KAYARAD DPCA120(日本化薬株式会社製)、ビスコート#230、ビスコート#300、ビスコート#802、ビスコート#2500、ビスコート#1000、ビスコート#1080(大阪有機化学工業株式会社製)、NKエステルA-BPE-10、NKエステルA-GLY-9E、NKエステルA-9550、NKエステルA-DPH(新中村化学工業株式会社製)などの市販品。
【0054】
感光性樹脂組成物は、1のみの多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を含んでもよいし、2以上の多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を含んでもよい。後者の場合、官能基数が異なる多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を併用することが好ましい。官能基数が異なる多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を併用することで、より複雑な「環状構造を有するポリイミドと多官能(メタ)アクリレートとの絡み合い構造」ができ、より良好な耐熱性や機械特性が得られると考えられる。
ちなみに、市販の多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の中には、官能基数が異なる(メタ)アクリレートの混合物もある。
【0055】
ポリイミド(A)100質量部に対する多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の量は、例えば50~200質量部、好ましくは60~150質量部、より好ましくは50~150質量部、さらに好ましくは70~120質量部である。
多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の使用量は特に限定されないが、上述のように使用量を適切に調整することで、諸性能のうち1または2以上をより高めうる。前述のように、本実施形態の感光性樹脂組成物においては、硬化により「環状構造を有するポリイミドと多官能(メタ)アクリレートとの絡み合い構造」が形成されると考えられるが、ポリイミド(A)に対する多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の使用量を適切に調整することで、ポリイミド(A)と多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が十分に絡み合い、また、絡み合いに関与しない余分な成分が少なくなり、結果、性能が一層良化すると考えられる。
【0056】
(感光剤(C))
本実施形態の感光性樹脂組成物は、感光剤(C)を含む。感光剤(C)は、光により活性種を発生して感光性樹脂組成物を硬化させることが可能なものである限り、特に限定されない。
【0057】
感光剤(C)は、好ましくは光ラジカル発生剤を含む。光ラジカル発生剤は、特に、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を重合させるのに効果的である。
【0058】
用いることができる光ラジカル発生剤は特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。
例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-〔(4-メチルフェニル)メチル〕-1-〔4-(4-モルホリニル)フェニル〕-1-ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテ等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシカルボキニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2-トリクロロメチル-5-(2′-ベンゾフリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2′-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-フリル-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2′-ビス(2-クロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)フェニル〕-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9-フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;等を挙げることができる。これらの中でも、特にオキシムエステル系化合物を好ましく用いることができる。
【0059】
感光性樹脂組成物は、感光剤(C)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
感光剤(C)の使用量は、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)100質量部に対して、例えば1~30質量部であり、好ましくは5~20質量部である。
【0060】
(熱ラジカル開始剤(D))
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは、熱ラジカル開始剤(D)を含む。熱ラジカル開始剤(D)を用いることにより、例えば硬化膜の耐熱性をより高める、かつ/または、硬化膜の耐薬品性(有機溶剤などに対する耐性)を高めることができる。これは、熱ラジカル開始剤(D)を用いることにより、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の重合反応がさらに促進されるためと考えられる。
【0061】
熱ラジカル開始剤(D)は、好ましくは、有機過酸化物を含む。有機過酸化物としては、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、シュウ酸パーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、m-トルイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、アセチルパーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t-ブチルパーベンゾエート、パラクロロベンゾイルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、などを挙げることができる。
【0062】
熱ラジカル開始剤(D)を用いる場合、1のみの熱ラジカル開始剤(D)を用いてもよいし、2以上の熱ラジカル開始剤(D)を用いてもよい。
熱ラジカル開始剤(D)を用いる場合、その量は、多官能(メタ)アクリレート化合物(B)100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~20質量部である。
【0063】
(エポキシ樹脂(E))
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは、エポキシ樹脂(E)を含む。詳細は不明であるが、エポキシ樹脂(E)は、例えばポリイミド(A)と反応(結合形成)すると考えられる。そして、おそらくは反応により形成されるエーテル構造の柔軟性により、硬化膜の機械物性(引張り伸びなど)がより高まる傾向がある。
【0064】
エポキシ樹脂(E)としては、1分子内に1以上(好ましくは2以上)のエポキシ基を有する化合物全般を適宜用いることができる。
エポキシ樹脂(E)の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2~4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂;N,N,N',N'-テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類や、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物;ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物;フェノール類のグリシジルエーテル化物などが挙げられる。
また、エポキシ樹脂としては、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エトキシヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA(又はF)のグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン)カルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタンジエンオキサイド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルや、ダイセル社製のセロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド8000、エポリードGT401などの脂環式エポキシ樹脂、2,2'-(((((1-(4-(2-(4-(オキシラン-2-イルメトキシ)フェニル)プロパン-2-イル)フェニル)エタン-1,1-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))ビス(オキシ))ビス(メチレン))ビス(オキシラン))(例えば、プリンテック社製のTechmore VG3101L)、エポライト100MF(共栄社化学工業社製)、エピオールTMP(日油株式会社製)などの脂肪族ポリグリシジルエーテル、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス(3-(オキシラン-2-イルメトキシ)プロピル)トリ・シロキサン(例えば、DMS-E09(ゲレスト社製))なども挙げることができる。
【0065】
エポキシ樹脂としては、1分子中に2~4個のエポキシ基を有するものが好ましく、1分子中に2~3個のエポキシ基を有するものがより好ましい。エポキシ樹脂の官能基数を調整することで、例えば硬化膜の耐熱性や硬化膜の機械物性などをバランスよく向上させやすい。
別観点として、エポキシ樹脂としては、芳香環構造および/または脂環構造を有するものが好ましい。このようなエポキシ樹脂を用いることは、特に耐熱性の観点で好ましい。
【0066】
エポキシ樹脂(E)を用いる場合、1のみのエポキシ樹脂を用いてもよいし、2以上のエポキシ樹脂を併用してもよい。
エポキシ樹脂(E)を用いる場合、その量は、ポリイミド(A)100質量部に対して、例えば0.5~30質量部、好ましくは1~20質量部、さらに好ましくは3~15質量部である。
【0067】
(硬化触媒(F))
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは、硬化触媒(F)を含む。この硬化触媒(F)は、エポキシ樹脂(E)の反応を促進する働きを有する。硬化触媒(F)を用いることにより、エポキシ樹脂(E)が関与する反応が十分に進行し、例えば硬化膜の引張り伸び率を一層向上させることができる。
【0068】
硬化触媒(F)としては、エポキシ樹脂の硬化触媒(しばしば、硬化促進剤とも呼ばれる)として知られている化合物を挙げることができる。例えば、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物;2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・4,4'-スルフォニルジフェノラート等のテトラ置換ホスホニウム塩;ベンゾキノンをアダクトしたトリフェニルホスフィン等が挙げられる。なかでも、有機ホスフィン類が好ましく挙げられる。
【0069】
硬化触媒(F)を用いる場合、その量は、エポキシ樹脂(E)100質量部に対して、例えば1~80質量部、好ましくは5~50質量部、より好ましくは5~30質量部である。
【0070】
(シランカップリング剤(G))
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは、シランカップリング剤(G)を含む。シランカップリング剤(G)を用いることにより、例えば基板と硬化膜との密着性をより高めることができる。
【0071】
シランカップリング剤(G)としては、例えば、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、ビニル基含有シランカップリング剤、ウレイド基含有シランカップリング剤、スルフィド基含有シランカップリング剤、環状無水物構造を有するシランカップリング剤、などのシランカップリング剤を用いることができる。
【0072】
アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えばビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノ-プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシジルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤としては、例えばγ-((メタ)アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-((メタ)アククリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ-((メタ)アクリロイルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えばビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ウレイド基含有シランカップリング剤としては、例えば3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
スルフィド基含有シランカップリング剤としては、例えばビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等が挙げられる。
環状無水物構造を有するシランカップリング剤としては、例えば3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシシリルプロピルコハク酸無水物、3-ジメチルメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0073】
本実施形態においては、特に、環状無水物構造を有するシランカップリング剤が好ましく用いられる。詳細は不明だが、環状無水物構造は、ポリイミド(A)の主鎖、側鎖および/または末端と反応しやすく、そのために特に良好な密着性向上効果が得られると推測される。
【0074】
シランカップリング剤(G)が用いられる場合、単独で用いられてもよいし、2種以上の密着助剤が併用されてもよい。
シランカップリング剤(G)が用いられる場合、その使用量は、ポリイミド(A)の使用量を100質量部としたとき、例えば0.1~20質量部、好ましくは0.3~15質量部、より好ましく0.4~12質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。
【0075】
(界面活性剤(H))
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは、界面活性剤(H)を含む。これにより、感光性樹脂組成物の塗布性や、膜の平坦性を一層高めうる。
界面活性剤(H)としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルキル系界面活性剤、アクリル系界面活性剤などが挙げられる。
別観点として、界面活性剤は、非イオン性であることが好ましい。非イオン性の界面活性剤の使用は、例えば、組成物中の他成分との非意図的な反応を抑え、組成物の保存安定性を高める点で好ましい。
【0076】
界面活性剤(H)は、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを含む界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、均一な樹脂膜を得られること(塗布性の向上)や、現像性の向上に加え、接着強度の向上にも寄与する。このような界面活性剤としては、例えば、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかを含むノニオン系界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤(H)として使用可能な市販品としては、例えば、DIC株式会社製の「メガファック」シリーズの、F-251、F-253、F-281、F-430、F-477、F-551、F-552、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-562、F-563、F-565、F-568、F-569、F-570、F-572、F-574、F-575、F-576、R-40、R-40-LM、R-41、R-94等の、フッ素を含有するオリゴマー構造の界面活性剤、株式会社ネオス製のフタージェント250、フタージェント251等のフッ素含有ノニオン系界面活性剤、ワッカー・ケミー社製のSILFOAM(登録商標)シリーズ(例えばSD 100 TS、SD 670、SD 850、SD 860、SD 882)等のシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
また、スリーエム社製のFC4430やFC4432なども、好ましい界面活性剤として挙げることができる。
【0077】
本実施形態の感光性樹脂組成物が界面活性剤(H)を含む場合、1または2以上の界面活性剤を含むことができる。
本実施形態の感光性樹脂組成物が界面活性剤(H)を含む場合、その量は、ポリイミド(A)の含有量を100質量部としたとき、例えば0.001~1質量部、好ましくは0.005~0.5質量部である。
【0078】
(水(I))
本実施形態の感光性樹脂組成物は、水を含んでもよい。水の存在により、例えば、シランカップリング剤(G)の加水分解反応が進行しやすくなり、基板と硬化膜との密着性がより高まる傾向がある。
【0079】
本実施形態の感光性樹脂組成物が水を含む場合、その量は、感光性樹脂組成物の全固形分(不揮発成分)100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部である。
【0080】
感光性樹脂組成物の水分量は、カールフィッシャー法により定量することができる。
【0081】
(溶剤(J)/組成物の性状)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは溶剤(J)を含む。これにより、基板(特に、段差を有する基板)に対して塗布法により感光性樹脂膜を容易に形成することができる。
溶剤(J)は、通常、有機溶剤を含む。上述の各成分を溶解または分散可能で、かつ、各構成成分と実質的に化学反応しないものである限り、有機溶剤は特に限定されない。
【0082】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロプレングリコールメチルーn-プロピルエーテル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。これらは単独で用いられても複数組み合わせて用いられてもよい。
【0083】
本実施形態の感光性樹脂組成物が溶剤(J)を含む場合、本実施形態の感光性樹脂組成物は、通常、ワニス状である。より具体的には、本実施形態の感光性樹脂組成物は、好ましくは、少なくともポリイミド(A)および多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、溶剤(J)に溶解した、ワニス状の組成物である。本実施形態の感光性樹脂組成物がワニス状であることにより、塗布による均一な膜形成を行うことができる。また、ポリイミド(A)および多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、溶剤(J)に「溶解」していることで、均質な硬化膜を得ることができる。
【0084】
溶剤(J)を用いる場合は、感光性樹脂組成物中の全固形分(不揮発成分)の濃度が、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~45質量%となるように用いられる。この範囲とすることで、各成分を十分に溶解または分散させることができる。また、良好な塗布性を担保することができ、ひいてはスピンコート時の平坦性の良化にもつながる。さらに、不揮発成分の含有量を調整することにより、感光性樹脂組成物の粘度を適切に制御できる。
別観点として、組成物全体中の、ポリイミド(A)および多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の割合は、好ましくは20~50質量%である。ある程度多量のポリイミド(A)および多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を用いることで、適度な厚さの膜を形成しやすい。
【0085】
(その他の成分)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記の成分に加えて、必要に応じて、上掲の成分以外の成分を含んでもよい。そのような成分としては、例えば、酸化防止剤、シリカ等の充填材、増感剤、フィルム化剤等が挙げられる。
【0086】
<電子デバイスの製造方法、電子デバイス>
本実施形態の電子デバイスの製造方法は、
基板上に、上述の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する膜形成工程と、
感光性樹脂膜を露光する露光工程と、
露光された感光性樹脂膜を現像する現像工程と、
を含む。
また、本実施形態の電子デバイスの製造方法は、上述の現像工程の後に、露光された感光性樹脂膜を加熱して硬化させる熱硬化工程を含むことが好ましい。これにより、耐熱性が十二分な硬化膜を得ることができる。
以上のようにして、本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化膜を備える電子デバイスを製造することができる。
【0087】
本実施形態の電子デバイスの製造方法や、本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物を備える電子デバイスの構造などについて、以下、図面を交えつつより詳細に説明する。
【0088】
図1は、本実施形態の電子デバイスの一例を示す縦断面図である。また、図2は、図1の鎖線で囲まれた領域の部分拡大図である。
以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0089】
図1に示す電子デバイス1は、貫通電極基板2と、その上に実装された半導体パッケージ3と、を備えた、いわゆるパッケージオンパッケージ構造を有する。
【0090】
貫通電極基板2は、絶縁層21と、絶縁層21の上面から下面を貫通する複数の貫通配線221と、絶縁層21の内部に埋め込まれた半導体チップ23と、絶縁層21の下面に設けられた下層配線層24と、絶縁層21の上面に設けられた上層配線層25と、下層配線層24の下面に設けられた半田バンプ26と、を備えている。
【0091】
半導体パッケージ3は、パッケージ基板31と、パッケージ基板31上に実装された半導体チップ32と、半導体チップ32とパッケージ基板31とを電気的に接続するボンディングワイヤー33と、半導体チップ32やボンディングワイヤー33が埋め込まれた封止層34と、パッケージ基板31の下面に設けられた半田バンプ35と、を備えている。
【0092】
そして、貫通電極基板2上に半導体パッケージ3が積層されている。これにより、半導体パッケージ3の半田バンプ35と、貫通電極基板2の上層配線層25と、が電気的に接続されている。
【0093】
このような電子デバイス1では、貫通電極基板2においてコア層を含む有機基板のような厚い基板を用いる必要がないため、低背化を容易に図ることができる。このため、電子デバイス1を内蔵する電子機器の小型化にも貢献することができる。
【0094】
また、互いに異なる半導体チップを備えた貫通電極基板2と半導体パッケージ3とを積層しているため、単位面積当たりの実装密度を高めることができる。このため、小型化と高性能化との両立を図ることができる。
【0095】
以下、貫通電極基板2および半導体パッケージ3についてさらに詳述する。
図2に示す貫通電極基板2が備える下層配線層24および上層配線層25は、それぞれ絶縁層、配線層および貫通配線等を含んでいる。これにより、下層配線層24および上層配線層25は、内部や表面に配線を含むとともに、絶縁層21を貫通する貫通配線221を介して相互の電気的接続が図られる。
【0096】
下層配線層24に含まれる配線層は、半導体チップ23や半田バンプ26と接続されている。このため、下層配線層24は半導体チップ23の再配線層として機能するとともに、半田バンプ26は半導体チップ23の外部端子として機能する。
【0097】
図2に示す貫通配線221は、前述したように、絶縁層21を貫通するように設けられている。これにより、下層配線層24と上層配線層25との間が電気的に接続され、貫通電極基板2と半導体パッケージ3との積層が可能になるため、電子デバイス1の高機能化を図ることができる。
【0098】
図2に示す上層配線層25に含まれる配線層253は、貫通配線221や半田バンプ35と接続されている。このため、上層配線層25は、半導体チップ23と電気的に接続されることとなり、半導体チップ23の再配線層として機能するとともに、半導体チップ23とパッケージ基板31との間に介在するインターポーザーとしても機能する。本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化膜を、再配線層の絶縁層を構成するために用いることができる。
【0099】
本実施形態によれば、半導体チップ23と、半導体チップ23の表面上に設けられた再配線層(上層配線層25)と、を備え、再配線層中の絶縁層が、本実施形態の感光性樹脂組成物の硬化物で構成される、電子デバイスを実現できる。
【0100】
貫通配線221が絶縁層21を貫通していることにより、絶縁層21を補強する効果が得られる。このため、下層配線層24や上層配線層25の機械的強度が低い場合でも、貫通電極基板2全体の機械的強度の低下を避けることができる。その結果、下層配線層24や上層配線層25のさらなる薄型化を図ることができ、電子デバイス1のさらなる低背化を図ることができる。
【0101】
また、図1に示す電子デバイス1は、貫通配線221の他に、半導体チップ23の上面に位置する絶縁層21を貫通するように設けられた貫通配線222も備えている。これにより、半導体チップ23の上面と上層配線層25との電気的接続を図ることができる。
【0102】
絶縁層21は、半導体チップ23を覆うように設けられている。これにより、半導体チップ23を保護する効果が高められる。その結果、電子デバイス1の信頼性を高めることができる。また、本実施形態に係るパッケージオンパッケージ構造のような実装方式にも容易に適用可能な電子デバイス1が得られる。
【0103】
貫通配線221の直径W(図2参照)は、特に限定されないが、1~100μm程度であるのが好ましく、2~80μm程度であるのがより好ましい。これにより、絶縁層21の機械的特性を損なうことなく、貫通配線221の導電性を確保することができる。
【0104】
図1に示す半導体パッケージ3は、いかなる形態のパッケージであってもよい。例えば、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、LF-BGA(Lead Flame BGA)等の形態が挙げられる。
【0105】
半導体チップ32の配置は、特に限定されないが、一例として図1では複数の半導体チップ32が積層されている。これにより、実装密度の高密度化が図られている。なお、複数の半導体チップ32は、平面方向に併設されていてもよく、厚さ方向に積層されつつ平面方向にも併設されていてもよい。
【0106】
パッケージ基板31は、いかなる基板であってもよいが、例えば図示しない絶縁層、配線層および貫通配線等を含む基板とされる。このうち、貫通配線を介して半田バンプ35とボンディングワイヤー33とを電気的に接続することができる。
【0107】
封止層34は、例えば公知の封止樹脂材料で構成されている。このような封止層34を設けることにより、半導体チップ32やボンディングワイヤー33を外力や外部環境から保護することができる。
【0108】
貫通電極基板2が備える半導体チップ23と半導体パッケージ3が備える半導体チップ32は、互いに近接して配置されることになる。これにより、相互通信の高速化や低損失化等のメリットを享受することができる。かかる観点から、例えば、半導体チップ23と半導体チップ32のうち、一方をCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、AP(Application Processor)等の演算素子とし、他方をDRAM(Dynamic Random Access Memory)やフラッシュメモリー等の記憶素子等にすれば、同一装置内においてこれらの素子同士を近接して配置することができる。これにより、高機能化と小型化とを両立した電子デバイス1を実現することができる。
【0109】
次に、図1に示す電子デバイス1を製造する方法について説明する。
【0110】
図3は、図1に示す電子デバイス1を製造する方法を示す工程図である。また、図4図6は、それぞれ図1に示す電子デバイス1を製造する方法を説明するための図である。
【0111】
電子デバイス1の製造方法は、基板202上に設けられた半導体チップ23および貫通配線221、222を埋め込むように絶縁層21を得るチップ配置工程S1と、絶縁層21上および半導体チップ23上に上層配線層25を形成する上層配線層形成工程S2と、基板202を剥離する基板剥離工程S3と、下層配線層24を形成する下層配線層形成工程S4と、半田バンプ26を形成し、貫通電極基板2を得る半田バンプ形成工程S5と、貫通電極基板2上に半導体パッケージ3を積層する積層工程S6と、を有する。
【0112】
このうち、上層配線層形成工程S2は、絶縁層21上および半導体チップ23上に感光性樹脂ワニス5(ワニス状の感光性樹脂組成物)を配置し、感光性樹脂層2510を得る第1樹脂膜配置工程S20と、感光性樹脂層2510に露光処理を施す第1露光工程S21と、感光性樹脂層2510に現像処理を施す第1現像工程S22と、感光性樹脂層2510に硬化処理を施す第1硬化工程S23と、配線層253を形成する配線層形成工程S24と、感光性樹脂層2510および配線層253上に感光性樹脂ワニス5を配置し、感光性樹脂層2520を得る第2樹脂膜配置工程S25と、感光性樹脂層2520に露光処理を施す第2露光工程S26と、感光性樹脂層2520に現像処理を施す第2現像工程S27と、感光性樹脂層2520に硬化処理を施す第2硬化工程S28と、開口部424(貫通孔)に貫通配線254を形成する貫通配線形成工程S29と、を含む。
【0113】
以下、各工程について順次説明する。以下の製造方法は一例であり、これに限定されるものではない。
【0114】
[1]チップ配置工程S1
まず、図4(a)に示すように、基板202と、基板202上に設けられた半導体チップ23および貫通配線221、222と、これらを埋め込むように設けられた絶縁層21と、を備えるチップ埋込構造体27を用意する。
【0115】
基板202の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、金属材料、ガラス材料、セラミック材料、半導体材料、有機材料等が挙げられる。また、基板202には、シリコンウェハのような半導体ウエハー、ガラスウエハー等を用いるようにしてもよい。
【0116】
半導体チップ23は、基板202上に接着されている。本製造方法では、一例として、複数の半導体チップ23を互いに離間させつつ同一の基板202上に併設する。複数の半導体チップ23は、互いに同じ種類のものであってもよいし、互いに異なる種類のものであってもよい。また、ダイアタッチフィルムのような接着剤層(図示せず)を介して基板202と半導体チップ23との間を固定するようにしてもよい。
【0117】
必要に応じて、基板202と半導体チップ23との間にインターポーザー(図示せず)を設けるようにしてもよい。インターポーザーは、例えば半導体チップ23の再配線層として機能する。したがって、インターポーザーは、後述する半導体チップ23の電極と電気的に接続させるための図示しないパッドを備えていてもよい。これにより、半導体チップ23のパッド間隔や配列パターンを変換することができ、電子デバイス1の設計自由度をより高めることができる。
インターポーザーには、例えば、シリコン基板、セラミック基板、ガラス基板のような無機系基板、樹脂基板のような有機系基板等が用いられる。
【0118】
絶縁層21は、例えば感光性樹脂組成物の成分として挙げたような熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を含む樹脂膜(有機絶縁層)であってもよく、半導体の技術分野で用いる通常の封止材であってもよい。
【0119】
貫通配線221、222の構成材料としては、例えば銅または銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、金または金合金、銀または銀合金、ニッケルまたはニッケル合金等が挙げられる。
【0120】
なお、上記とは異なる方法で作製したチップ埋込構造体27を用意するようにしてもよい。
【0121】
[2]上層配線層形成工程S2
次に、絶縁層21上および半導体チップ23上に、上層配線層25を形成する。
【0122】
[2-1]第1樹脂膜配置工程S20
まず、図4(b)に示すように、絶縁層21上および半導体チップ23上に感光性樹脂ワニス5を塗布する(配置する)。これにより、図4(c)に示すように、感光性樹脂ワニス5の液状被膜が得られる。感光性樹脂ワニス5は、本実施形態の感光性樹脂組成物である。
【0123】
感光性樹脂ワニス5の塗布は、例えば、スピンコーター、バーコーター、スプレー装置、インクジェット装置等を用いて行われる。
【0124】
感光性樹脂ワニス5の粘度は、特に限定されないが、10cP~6000cP、好ましくは20cP~5000cP、より好ましくは30cP~4000cPである。感光性樹脂ワニス5の粘度が前記範囲内であることにより、より薄い感光性樹脂層2510(図4(d)参照)を形成することができる。その結果、上層配線層25をより薄くすることができ、電子デバイス1の薄型化が容易になる。
感光性樹脂ワニス5の粘度は、例えば、コーンプレート型粘度計(TV-25、東機産業製)を用い、回転速度100rpmの条件で測定された値とされる。
【0125】
次に、感光性樹脂ワニス5の液状被膜を乾燥させる。これにより、図4(d)に示す感光性樹脂層2510を得る。
【0126】
感光性樹脂ワニス5の乾燥条件は、特に限定されないが、例えば80~150℃の温度で、1~60分間加熱する条件が挙げられる。
【0127】
本工程では、感光性樹脂ワニス5を塗布するプロセスに代えて、感光性樹脂ワニス5をフィルム化してなる感光性樹脂フィルムを配置するプロセスを採用するようにしてもよい。感光性樹脂フィルムは、本実施形態の感光性樹脂組成物であって、感光性を有する樹脂フィルムである。
【0128】
感光性樹脂フィルムは、例えば感光性樹脂ワニス5を各種塗布装置によってキャリアーフィルム等の下地上に塗布し、その後、得られた塗膜を乾燥させることによって製造される。
【0129】
このようにして感光性樹脂層2510を形成した後、必要に応じて、感光性樹脂層2510に対して露光前加熱処理を施す。露光前加熱処理を施すことにより、感光性樹脂層2510に含まれる分子が安定化して、後述する第1露光工程S21における反応の安定化を図ることができる。また、その一方、後述するような加熱条件で加熱されることで、加熱による光酸発生剤への悪影響を最小限に留めることができる。
【0130】
露光前加熱処理の温度は、好ましくは70~130℃、より好ましくは75~120℃、さらに好ましくは80~110℃である。露光前加熱処理の温度が前記下限値を下回ると、露光前加熱処理による分子の安定化という目的が果たされないおそれがある。一方、露光前加熱処理の温度が前記上限値を上回ると、光酸発生剤の動きが活発になりすぎ、後述する第1露光工程S21において光が照射されても酸が発生しにくくなるという影響が広範囲化してパターニングの加工精度が低下するおそれがある。
【0131】
露光前加熱処理の時間は、露光前加熱処理の温度に応じて適宜設定されるが、前記温度において好ましくは1~10分間とされ、より好ましくは2~8分間とされ、さらに好ましくは3~6分間とされる。露光前加熱処理の時間が前記下限値を下回ると、加熱時間が不足するため、露光前加熱処理による分子の安定化という目的が果たされないおそれがある。一方、露光前加熱処理の時間が前記上限値を上回ると、加熱時間が長すぎるため、露光前加熱処理の温度が前記範囲内に収まっていたとしても、光酸発生剤の作用が阻害されてしまうおそれがある。
【0132】
加熱処理の雰囲気は、特に限定されない。不活性ガス雰囲気や還元性ガス雰囲気等であってもよいが、作業効率等を考慮すれば大気下とされる。
【0133】
雰囲気圧力は、特に限定されない。減圧下や加圧下であってもよいが、作業効率等を考慮すれば常圧とされる。なお、常圧とは、30~150kPa程度の圧力のことをいい、好ましくは大気圧である。
【0134】
[2-2]第1露光工程S21
次に、感光性樹脂層2510に露光処理を施す。
【0135】
まず、図4(d)に示すように、感光性樹脂層2510上の所定の領域にマスク412を配置する。そして、マスク412を介して光(活性放射線)を照射する。これにより、マスク412のパターンに応じて感光性樹脂層2510に露光処理が施される。
【0136】
図4(d)では、感光性樹脂層2510がいわゆるネガ型の感光性を有している場合を図示している。この例では、感光性樹脂層2510のうち、マスク412の遮光部に対応する領域は、現像液に溶解する。
【0137】
一方、マスク412の透過部に対応する領域では、光カチオン重合開始剤から活性化学種が発生する。活性化学種は、硬化反応の触媒として作用する。
【0138】
露光処理における露光量は、特に限定されない。100~2000mJ/cmが好ましく、200~1000mJ/cmがより好ましい。これにより、感光性樹脂層2510における露光不足および露光過剰を抑制することができる。その結果、最終的に高いパターニング精度を実現することができる。
その後、必要に応じて、感光性樹脂層2510に露光後加熱処理を施す。
【0139】
露光後加熱処理の温度は、特に限定されない。好ましくは50~150℃、より好ましくは50~130℃、さらに好ましくは55~120℃、特に好ましくは60~110℃とされる。このような温度で露光後加熱処理を施すことにより、発生した酸の触媒作用が十分に増強され、熱硬化性樹脂をより短時間でかつ十分に反応させることができる。温度を前記範囲内とすることにより、酸拡散の促進によるパターニングの加工精度の低下を抑制できる。
露光後加熱処理の温度を上記下限値以上とすることにより、熱硬化性樹脂の反応率を高められ、生産性を高めることができる。一方、露光後加熱処理の温度を上記上限値以下とすることにより、酸拡散の促進によるパターニングの加工精度の低下を抑制できる。
【0140】
露光後加熱処理の時間は、露光後加熱処理の温度に応じて適宜設定される。上記温度において、好ましくは1~30分間、より好ましくは2~20分間、さらに好ましくは3~15分間とされる。このような時間で露光後加熱処理を施すことにより、熱硬化性樹脂を十分に反応させることができるとともに、酸の拡散を抑えてパターニングの加工精度が低下するのを抑制することができる。
【0141】
露光後加熱処理の雰囲気は、特に限定されない。不活性ガス雰囲気や還元性ガス雰囲気等であってもよいが、作業効率等を考慮すれば大気下とされる。
【0142】
露光後加熱処理の雰囲気圧力は、特に限定されない。減圧下や加圧下であってもよいが、作業効率等を考慮すれば常圧とされる。これにより、比較的容易に露光前加熱処理を施すことができる。なお、常圧とは、30~150kPa程度の圧力のことをいい、好ましくは大気圧である。
【0143】
[2-3]第1現像工程S22
次に、感光性樹脂層2510に現像処理を施す。これにより、マスク412の遮光部に対応した領域に、感光性樹脂層2510を貫通する開口部423が形成される(図5(e)参照)。
【0144】
現像液としては、例えば、有機系現像液、水溶性現像液等が挙げられる。本実施形態においては、現像液は、有機溶剤を含有することが好ましい。より具体的には、現像液は、有機溶剤を主成分とする現像液(成分の95質量%以上が有機溶剤である現像液)であることが好ましい。有機溶剤を含有する現像液で現像することにより、アルカリ現像液(水系)で現像する場合よりも、現像液によるパターンの膨潤を抑えること等が可能になる。つまり、よりファインなパターンを得やすい。
【0145】
現像液に使用可能な有機溶剤として具体的には、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)や酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、等が挙げられる。
現像液としては、有機溶剤のみからなり、不可避的に含まれる不純物以外は含まない有機溶剤現像液を使用してもよい。不可避的に含まれる不純物としては、金属元素や水分があるが、電子デバイスの汚染防止などの観点からは不可避的に含まれる不純物は少ないに越したことは無い。
【0146】
現像液を感光性樹脂層2510に接触させる方法は特に限定されない。一般的に知られている、浸漬法、パドル法、スプレー法などを適宜適用することができる。
【0147】
現像工程の時間は、通常5~300秒程度、好ましくは10~120秒程度の範囲で、樹脂膜の膜厚や形成されるパターンの形状などに基づき適宜調整される。
【0148】
[2-4]第1硬化工程S23
現像処理の後、感光性樹脂層2510に対して硬化処理(現像後加熱処理)を施す。硬化処理の条件は、特に限定されないが、160~250℃程度の加熱温度で、30~240分程度の加熱時間とされる。これにより、半導体チップ23に対する熱影響を抑えつつ、感光性樹脂層2510を硬化させ、有機絶縁層251を得ることができる。
【0149】
[2-5]配線層形成工程S24
次に、有機絶縁層251上に配線層253を形成する(図5(f)参照)。配線層253は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法等の気相成膜法を用いて金属層を得た後、フォトリソグラフィー法およびエッチング法によりパターニングされることによって形成される。
配線層253の形成に先立ち、プラズマ処理のような表面改質処理を施すようにしてもよい。
【0150】
[2-6]第2樹脂膜配置工程S25
次に、図5(g)に示すように、第1樹脂膜配置工程S20と同様にして感光性樹脂層2520を得る。感光性樹脂層2520は、配線層253を覆うように配置される。
その後、必要に応じて、感光性樹脂層2520に対して露光前加熱処理を施す。処理条件は、例えば第1樹脂膜配置工程S20で記載した条件とされる。
【0151】
[2-7]第2露光工程S26
次に、感光性樹脂層2520に露光処理を施す。処理条件は、例えば第1露光工程S21で記載した条件とされる。
その後、必要に応じて、感光性樹脂層2520に対して露光後加熱処理を施す。処理条件は、例えば第1露光工程S21で記載した条件とされる。
【0152】
[2-8]第2現像工程S27
次に、感光性樹脂層2520に現像処理を施す。処理条件は、例えば第1現像工程S22で記載した条件とされる。これにより、感光性樹脂層2510、2520を貫通する開口部424が形成される(図5(h)参照)。
【0153】
[2-9]第2硬化工程S28
現像処理の後、感光性樹脂層2520に対して硬化処理(現像後加熱処理)を施す。硬化条件は、例えば第1硬化工程S23で記載した条件とされる。これにより、感光性樹脂層2520を硬化させ、有機絶縁層252を得る(図6(i)参照)。
【0154】
本実施形態では、上層配線層25が有機絶縁層251と有機絶縁層252の2層を有しているが、3層以上を有していてもよい。この場合、第2硬化工程S28の後、配線層形成工程S24から第2硬化工程S28までの一連の工程を繰り返し追加するようにすればよい。
【0155】
[2-10]貫通配線形成工程S29
次に、開口部424に対し、図6(i)に示す貫通配線254を形成する。
【0156】
貫通配線254の形成には、公知の方法が用いられるが、例えば以下の方法が用いられる。
【0157】
まず、有機絶縁層252上に、図示しないシード層を形成する。シード層は、開口部424の内面(側面および底面)とともに、有機絶縁層252の上面に形成される。
シード層としては、例えば、銅シード層が用いられる。また、シード層は、例えばスパッタリング法により形成される。
シード層は、形成しようとする貫通配線254と同種の金属で構成されていてもよいし、異種の金属で構成されていてもよい。
【0158】
次いで、図示しないシード層のうち、開口部424以外の領域上に図示しないレジスト層を形成する。そして、このレジスト層をマスクとして、開口部424内に金属を充填する。この充填には、例えば電解めっき法が用いられる。充填される金属としては、例えば銅または銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、金または金合金、銀または銀合金、ニッケルまたはニッケル合金等が挙げられる。このようにして開口部424内に導電性材料が埋設され、貫通配線254が形成される。
【0159】
次いで、図示しないレジスト層を除去する。さらに、有機絶縁層252上の図示しないシード層を除去する。これには、例えばフラッシュエッチング法を用いることができる。
貫通配線254の形成箇所は、図示の位置に限定されない。
【0160】
[3]基板剥離工程S3
次に、図6(j)に示すように、基板202を剥離する。これにより、絶縁層21の下面が露出することとなる。
【0161】
[4]下層配線層形成工程S4
次に、図6(k)に示すように、絶縁層21の下面側に下層配線層24を形成する。下層配線層24は、いかなる方法で形成されてもよく、例えば上述した上層配線層形成工程S2と同様にして形成されてもよい。
このようにして形成された下層配線層24は、貫通配線221を介して上層配線層25と電気的に接続される。
【0162】
[5]半田バンプ形成工程S5
次に、図6(L)に示すように、下層配線層24に半田バンプ26を形成する。また、上層配線層25や下層配線層24には、必要に応じてソルダーレジスト層のような保護膜を形成するようにしてもよい。
以上のようにして、貫通電極基板2が得られる。
【0163】
図6(L)に示す貫通電極基板2は、複数の領域に分割可能になっている。したがって、例えば図6(L)に示す一点鎖線に沿って貫通電極基板2を個片化することにより、複数の貫通電極基板2を効率よく製造することができる。なお、個片化には、例えばダイヤモンドカッター等を用いることができる。
【0164】
[6]積層工程S6
次に、個片化した貫通電極基板2上に半導体パッケージ3を配置する。これにより、図1に示す電子デバイス1が得られる。
【0165】
このような電子デバイス1の製造方法は、大面積の基板を用いたウエハーレベルプロセスやパネルレベルプロセスに適用することが可能である。これにより、電子デバイス1の製造効率を高め、低コスト化を図ることができる。
【0166】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.イミド環構造を有するポリイミド(A)と、
多官能(メタ)アクリレート化合物(B)と、
感光剤(C)と、
溶剤(J)と、
を含む、感光性樹脂組成物。
2.
1.に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)中に含まれるイミド基のモル数をIMとし、
前記ポリイミド(A)中に含まれるアミド基のモル数をAMとしたとき、
{IM/(IM+AM)}×100(%)で表されるイミド化率が90%以上である、感光性樹脂組成物。
3.
1.または2.に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)が前掲の一般式(a)で表される構造を含む、感光性樹脂組成物。
一般式(a)中、
Xは2価の有機基であり、
Yは4価の有機基であり、
XおよびYの少なくとも一方は、フッ素原子含有基である。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)は、フッ素原子を含むポリイミドを含む、感光性樹脂組成物。
5.
1.~4.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)は、その末端に、エポキシ基と反応して結合形成可能な基を有する、感光性樹脂組成物。
6.
1.~5.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)は、その末端に、酸無水物基を有する、感光性樹脂組成物。
7.
1.~6.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)は、その末端に、マレイミド構造を有しない、感光性樹脂組成物。
8.
1.~7.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、7官能以上の(メタ)アクリレート化合物(B1)を含む、感光性樹脂組成物。
9.
1.~8.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、5~6官能の(メタ)アクリレート化合物(B2)を含む、感光性樹脂組成物。
10.
1.~9.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、3~4官能の(メタ)アクリレート化合物(B3)を含む、感光性樹脂組成物。
11.
1.~10.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)100質量部に対する前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の量が50~150質量部である、感光性樹脂組成物。
12.
1.~11いずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド(A)100質量部に対する前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の量が70~120質量部である、感光性樹脂組成物。
13.
1.~12.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記感光剤(C)が、光ラジカル発生剤を含む、感光性樹脂組成物。
14.
1.~13.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、熱ラジカル開始剤(D)を含む、感光性樹脂組成物。
15.
14.に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記熱ラジカル開始剤(D)が、有機過酸化物を含む、感光性樹脂組成物。
16.
14.または15.に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)100質量部に対する前記熱ラジカル開始剤(D)の量が0.1~20質量部である、感光性樹脂組成物。
17.
1.~16.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、エポキシ樹脂(E)を含む、感光性樹脂組成物。
18.
17.に記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、前記エポキシ樹脂(E)の硬化触媒(F)を含む、感光性樹脂組成物。
19.
1.~18.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、シランカップリング剤(G)を含む、感光性樹脂組成物。
20.
19.に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記シランカップリング剤(G)が、環状無水物構造を有するシランカップリング剤を含む、感光性樹脂組成物。
21.
1.~20.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、界面活性剤(H)を含む、感光性樹脂組成物。
22.
1.~21.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
組成物全体中の、前記ポリイミド(A)および前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の割合が、20~50質量%である、感光性樹脂組成物。
23.
1.~22.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
少なくとも前記ポリイミド(A)および前記多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が、前記溶剤(J)に溶解したワニス状である、感光性樹脂組成物。
24.
1.~23.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
電子デバイスにおける絶縁層の形成に用いられる、感光性樹脂組成物。
25.
基板上に、1.~24.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂膜を形成する膜形成工程と、
前記感光性樹脂膜を露光する露光工程と、
露光された前記感光性樹脂膜を現像する現像工程と、
を含む、電子デバイスの製造方法。
26.
25.に記載の電子デバイスの製造方法であって、
前記現像工程の後に、露光された前記感光性樹脂膜を加熱して硬化させる熱硬化工程を含む、電子デバイスの製造方法。
27.
1.~24.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の硬化膜を備える電子デバイス。
【実施例
【0167】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
以下で、「DMAc」はジメチルアセトアミドの略号である。その他略号については文中で適宜説明する。
【0168】
<ポリマーの合成>
(ポリマー(A-1)の合成)
攪拌装置と撹拌翼を備えたガラス製の3Lのセパラブルフラスコに、TFMB<2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル>64.1g(0.20モル)、6FDA<4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物>97.7g(0.22モル)およびDMAc500gを仕込んで撹拌し、TFMBと6FDAをDMAcに溶解させた。さらに窒素気流下で、12時間室温で撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液を得た。
【0169】
得られたポリアミド酸溶液にピリジン16gを添加した後、室温で無水酢酸82gを滴下しながら投入した。その後、更に液温を20~100℃に保って24時間撹拌を続けてイミド化反応を行い、ポリイミド溶液を得た。
【0170】
得られたポリイミド溶液を、5Lの容積の容器中で、撹拌しながら1,000gのメタノール中に投入して、ポリイミド樹脂を析出させた。その後、吸引濾過装置を用いて固体のポリイミド樹脂を濾別し、さらに1,000gのメタノールを用いて洗浄を行った。そして、真空乾燥機を用いて、100℃で24時間乾燥を行い、更に200℃で3時間乾燥させた。以上により、末端に酸無水物基を有するポリイミド粉体であるポリマー(A-1)を得た。
ポリマー(A-1)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は25,000であった。
また、ポリマー(A-1)をH-NMR測定し、ポリイミドの芳香環のピークに対するアミドピークの定量値から、イミド化率(定義は前述)を計算した。イミド化率は99%以上であった。
【0171】
(ポリマー(A-2)の合成)
TFMB64.1g(0.20モル)の代わりに、TFMB56.4g(0.176モル)及びBAPP-F<2,2,-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン>12.4g(0.024モル)を用いた以外は実施例1と同様にポリマー合成を行った。そして、末端に酸無水物基を有するポリイミド粉体であるポリマー(A-2)を得た。
ポリマー(A-2)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は26,000であった。また、ポリマー(A-2)のNMR測定によるイミド化率は99%以上であった。
【0172】
(ポリマー(A-3)の合成)
6FDA97.7g(0.22モル)の代わりに、6FDA78.2g(0.176モル)およびODPA<4,4'-オキシジフタル酸二無水物>13.7g(0.044モル)を用いた以外は実施例1と同様にポリマー合成を行った。そして、末端に酸無水物基を有するポリイミド粉体であるポリマー(A-3)を得た。
ポリマー(A-3)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は24,000であった。また、ポリマー(A-3)のNMR測定によるイミド化率は99%以上であった。
【0173】
(ポリマー(A-4)の合成)
6FDA97.7g(0.22モル)の代わりに、6FDA83.1g(0.187モル)およびBPDA<3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物>9.71g(0.033モル)を用いた以外は実施例1と同様にポリマー合成を行った。そして、末端に酸無水物基を有するポリイミド樹脂(A-4)を得た。
ポリマー(A-4)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は24,000であった。また、ポリマー(A-4)のNMR測定によるイミド化率は99%以上であった。
【0174】
(ポリマー(A-5)(比較用)の合成)
2Lのセパラブルフラスコに、γ-ブチロラクトン428g、4,4'-オキシジフタル酸二無水物155.11gおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレート130.14gを入れ、室温でフラスコ内の成分を撹拌し完全に溶解させた。続いて室温下で攪拌しながらピリジン79.1gを加えて、更に室温で16時間撹拌した。
【0175】
上記のようにして得られた溶液を氷冷下で冷却攪拌しながら、その溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド206.3gをγ-ブチロラクトン206gに溶解した溶液を30分かけて加えた。続いて4,4'-ジアミノジフェニルエーテル120.1gおよびγ-ブチロラクトン240gを加え、更に室温で2時間攪拌を継続した。
反応終了後、エタノール30gを加えて1時間攪拌した。その後、γ-ブチロラクトン400gを加え更に撹拌し、生じた沈殿物をろ過により取り除いた。これによりポリアミド酸エステルの反応液を得た。
得られた反応液を、室温下で、大量の30質量%メタノール水溶液に撹拌しながら滴下し、ポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾取し、真空乾燥することにより、ポリc(A-5)を得た。
ポリマー(A-5)のGPC測定による重量平均分子量(Mw)は18,000であった。また、ポリマー(A-5)のNMR測定によるイミド化率は1%以下であった。
【0176】
<感光性樹脂組成物の調製>
後掲の表1に従い配合された各原料を、室温下で原料が完全に溶解するまで撹拌し、溶液を得た。その後、その溶液を孔径0.2μmのナイロンフィルターで濾過した。このようにして、ワニス状の感光性樹脂組成物を得た。
【0177】
表1における各成分の原料の詳細は下記のとおりである。
【0178】
<(A)ポリイミド>
(A-1)上記で合成したポリマー(イミド環構造含有ポリイミド樹脂)
(A-2)上記で合成したポリマー(イミド環構造含有ポリイミド樹脂)
(A-3)上記で合成したポリマー(イミド環構造含有ポリイミド樹脂)
(A-4)上記で合成したポリマー(イミド環構造含有ポリイミド樹脂)
(A-5)上記で合成したポリマー(ポリアミド酸エステル樹脂(比較例用))
【0179】
上記の各ポリマーの構造を以下に示す。
【0180】
【化4】
【0181】
<(B)多官能(メタ)アクリレート化合物>
(B-1)ビスコート#802 (大阪有機工業株式会社製)
(アクリロイル基を5~10個有する化合物の混合物)
(B-2)A-9550 (新中村化学株式会社製)
(アクリロイル基を5~6個有する化合物の混合物)
(B-3)ビスコート#300 (大阪有機工業株式会社製)
(アクリロイル基を3~4個有する化合物の混合物)
(B-4)ビスコート#230 (大阪有機工業株式会社製)
(アクリロイル基を2個有する化合物)
【0182】
上記(B-1)~(B-4)の構造を以下に示す。
【0183】
【化5】
【0184】
<(C)感光剤>
(C-1)Irugacure OXE01(BASF社製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)
(C-2)アデカアークルズ NCI-730(株式会社ADEKA製、オキシムエステル型光ラジカル発生剤)
【0185】
<(D)熱ラジカル発生剤>
(D-1)パーカドックスBC(化薬ヌーリオン株式会社製、有機過酸化物、クミルパーオキサイド)
【0186】
<(E)エポキシ樹脂>
(E-1)TECHMORE VG3101L(株式会社プリンテック製)
(E-2)セロキサイド2021P(株式会社ダイセル製)
【0187】
<(F)硬化触媒>
(F-1)テトラフェニルホスホニウム・4,4'-スルフォニルジフェノラート
上記硬化触媒(F-1)の合成方法は以下の通りである。
撹拌装置付きのセパラブルフラスコに、4,4'-ビスフェノールS 37.5g(0.15mol)、メタノール100mLを仕込み、室温で撹拌溶解し、更に攪拌しながら予め50mLのメタノールに水酸化ナトリウム4.0g(0.1mol)を溶解した溶液を添加した。次いで予め150mLのメタノールにテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9g(0.1mol)を溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mLのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に撹拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥した。以上により白色結晶の目的物を得た。
【0188】
<(G)シランカップリング剤>
(G-1)KBM-503(信越化学工業株式会社製)
(G-2)X-12-967C(信越化学工業株式会社製)
【0189】
<(H)界面活性剤>
(H-1)FC4432(3M社製、フッ素系)
【0190】
<(J)(溶剤)>
(J-1)乳酸エチル(EL)
(J-2)γ-ブチロラクトン(GBL)
【0191】
<硬化収縮率の評価>
感光性樹脂組成物を、8インチシリコンウェハ上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにスピンコートした。続いて120℃で3分間加熱を行って、感光性樹脂膜を得た。
得られた感光性樹脂膜に、高圧水銀灯にて300mJ/cmの露光を行った。その後、シクロペンタノン中に30秒浸漬した後、スピンドライにて乾燥を行い、感光性樹脂組成物の現像後膜を得た。この現像後膜の膜厚を測定し、膜厚Aとした。
さらにその後、窒素雰囲気下、170℃で90分間熱処理して現像後膜を硬化させた。以上により、感光性樹脂組成物の硬化膜を得た。この硬化膜の膜厚を測定し、膜厚Bとした。
膜厚A及び膜厚Bを下記式に代入して、硬化収縮率を算出した。硬化収縮率は、配線上への塗布後の平坦性を保つために小さい方が好ましい。
硬化収縮率[%]={(膜厚A-膜厚B)/膜厚A}×100
【0192】
<塗布時の平坦性の評価(段差埋め込み平坦性)>
酸化膜付きシリコンウェハ上に、幅5μm/ピッチ5μm、高さ5μmのCu配線を形成したCu配線基板を作製した。このCu配線基板上に、感光性樹脂組成物を、スピンコートによって、乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、120℃で3分乾燥して感光性樹脂膜を形成した。
得られた感光性樹脂膜に、高圧水銀灯にて、300mJ/cmの露光を行った。その後、シクロペンタノン中に30秒浸漬した。さらにその後、窒素雰囲気下、170℃で90分間熱処理して、基板上に硬化膜を形成した。
得られた硬化膜付き基板を割って、その断面を研磨し、断面SEM観察により、感光性樹脂膜の表面の凹凸を評価した。表面の凹凸が1μm以下のものを○(良い)、表面の凹凸が1~3μmのものを△(使用できるレベル)3μmを超えたものを×(悪い)として評価した。
【0193】
<耐熱性:ガラス転移温度(Tg)の評価>
(ガラス転移温度(Tg)の測定用試験片の作成)
感光性樹脂組成物を、8インチシリコンウェハ上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにスピンコートし、続いて120℃で3分間加熱することで感光性樹脂膜を得た。
得られた感光性樹脂膜に、高圧水銀灯にて、300mJ/cmの露光を行った。その後、露光された樹脂膜をシリコンウェハごとシクロペンタノン中に30秒浸漬した。さらにその後、窒素雰囲気下、170℃で90分間熱処理した。以上により、感光性樹脂組成物の硬化物を得た。
得られた硬化物を幅5mmになるようにシリコンウェハごとダイシングソーにてカットし、その後、2質量%フッ酸水溶液中に浸漬することで基板より剥離した。剥離したフィルムを60℃で10時間乾燥して、試験片(30mm×5mm×10μm厚)を得た。
【0194】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
熱機械分析装置(セイコーインスツルメンツ社製、TMA/SS6000)を用いて、得られた試験片を、10℃/分の昇温速度で300℃まで加熱し、得られた試験片の熱膨張率を測定した。
次いで、得られた測定結果に基づき、熱膨張率の変曲点から硬化物のガラス転移温度(Tg)を算出した。Tgの単位は、℃である。熱膨張率に変曲点が観察されなかったものについては、Tg>300℃として評価した。
【0195】
<引張り伸び率の測定>
まず、上記「ガラス転移温度(Tg)の測定用試験片の作成」と同様にして試験片を作成した。
得られた試験片について、引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンRTC-1210A)を用い、23℃雰囲気下、JIS K 7161に準拠した方法で引張試験を実施し、試験片の引張伸び率を測定した。引張試験における延伸速度は、5mm/分とした。引張伸び率の単位は、%である。
【0196】
<パターニング性の評価>
感光性樹脂組成物を、8インチシリコンウェハ上に、スピンコーターを用いて、乾燥後の膜厚が5μmになるように塗布した。その後、ホットプレートにて100℃で3分間乾燥し、感光性樹脂膜(感光性樹脂膜A)を得た。
この感光性樹脂膜に、凸版印刷社製マスク(テストチャートNo.1:幅0.5~50μmの残しパターン及び抜きパターンが描かれている)を通して、i線ステッパー(ニコン社製・NSR-4425i)を用いて、露光量を変化させながらi線を照射した。
その後、現像液としてシクロペンタノンを用いて30秒間現像し、2500回転で10秒間スピンし乾燥し、現像後膜(ネガ型パターン)を得た。
7μmΦのビアホールが開口したものを◎(とても良い)、10μmΦのビアホールが開口したものを○(良い)、10μmのビアホールが開口しなかったものを×(悪い)として評価した。
【0197】
<常温粘度変化率の評価>
配合直後の感光性樹脂組成物の粘度を、E型粘度計(TVE-25L)にて測定した。この時の粘度をAとした。その後、感光性樹脂組成物のワニスを23℃にて7日間保管を行い、再度粘度を測定した。この時の粘度をBとした。
粘度A及び粘度Bを下記式に代入して、粘度変化率を算出した。粘度変化率が5%以下のものを◎(とても良い)、5から10%のものを○(良い)、10%を超えたものを×(悪い)として評価した。粘度変化率は、安定した膜厚を得るために、低いほうが好ましい。
粘度変化率[%]={(粘度A-粘度B)/粘度A}×100
【0198】
<耐薬品性の評価>
感光性樹脂組成物を、8インチシリコンウェハ上に、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにスピンコートし、続いて120℃で3分間加熱することで感光性樹脂膜を得た。
得られた感光性樹脂膜に、高圧水銀灯にて、300mJ/cmの露光を行った。その後、シクロペンタノン中に30秒浸漬した。さらにその後、窒素雰囲気下、170℃で90分間熱処理して硬化させて感光性樹脂組成物の硬化物を得た。得られた硬化膜の膜厚を測定した。このときの膜厚を膜厚Aとした。
続いて、得られた硬化膜を50℃のジメチルスルホキシド中に30分間浸漬した。その後、イソプロパノールで洗浄し、エアブローにて乾燥した。続いて170℃のホットプレート上で5分間加熱処理をした。このようにして耐薬品性試験後膜を得た。得られた硬化膜の膜厚を測定した。このときの膜厚を膜厚Bとした。
膜厚A及び膜厚Bを下記式に代入して、膜厚変化率を算出した。膜厚変化率が5%以下のものを◎(とても良い)、5から10%のものを○(良い)、10%を超えたものを×(悪い)として評価した。膜厚変化率は、プロセスでの薬品耐性の面から小さいほうが好ましい。
膜厚変化率[%]={(膜厚A-膜厚B)/膜厚A}×100
【0199】
<絶縁信頼性の評価>
(絶縁信頼性用サンプルの作製)
酸化膜付きシリコンウェハ上に、幅5μm/ピッチ5μm、高さ5μmの櫛歯型のCu配線を形成したCu配線基板を作製した。
感光性樹脂組成物を、上記Cu配線基板上に、スピンコートによって、乾燥後の膜厚(配線がない部分の厚み)が10μmになるように塗布し、120℃で3分乾燥して感光性樹脂膜を形成した。
得られた感光性樹脂膜に、高圧水銀灯を用いて、300mJ/cmの露光を行った。その後、シクロペンタノン中に30秒浸漬した。その後、窒素雰囲気下、170℃で90分間熱処理して硬化膜を得た。これを絶縁信頼性評価用サンプルとした。
【0200】
(絶縁信頼性評価)
上記(絶縁信頼性用サンプル作製)で作製した基板のCu配線の端部(Cu電極)と電極配線とを半田接続した、評価用の模擬的な電子デバイスを作製した。これを、B-HAST装置にて3.5Vのバイアスを掛けながら、130℃/85%RHの環境下に置いた。
6分間隔でCu配線基板のCu配線間における絶縁抵抗値を自動的に計測し、絶縁抵抗値が1.0×10Ω以下になった場合を絶縁破壊とした。そして、試験開始から絶縁破壊までの時間(h)を測定した。後掲の表には、この時間が210時間以上の場合を◎(とても良い)、50時間から210時間の場合を○(良い)、50時間未満の場合を×(悪い)と記載した。
【0201】
各組成物の原料の配合や上記評価結果について、表1にまとめて示す。
【0202】
【表1】
【0203】
表1に示されるとおり、実施例1~17の感光性樹脂組成物の評価において、硬化収縮率は小さかった。そして、実施例1~17の感光性樹脂組成物を用いることで、段差を有する基板上に、平坦性が良好な硬化膜を形成することができた。また、実施例1~17の感光性樹脂組成物は、その他の種々の性能についても良好な結果を示した。
一方、比較例1の感光性樹脂組成物の硬化収縮率は極めて大きく、平坦性が良好な硬化膜を形成することができなかった。これは、比較例1の感光性樹脂組成物の硬化メカニズムは、ポリアミド樹脂を閉環して硬化させるものであり、硬化の際に脱水があったためと推察される。
【0204】
実施例をより細かく見ると、以下のことが理解される。
・実施例15とその他の実施例との対比より、引張り伸び率の良化の観点からは、硬化触媒の使用が好ましい。硬化触媒がエポキシ樹脂を十分に反応させることが引張り伸び率の良化に効いていると考えられる。
・実施例16とその他の実施例との対比より、水の存在により、おそらくは密着助剤がよく働き、密着性が向上すると考えられる。
・実施例17とその他の実施例との対比より、多官能(メタ)アクリレートとしては、2官能のものよりも3官能以上のものが好ましいと考えられる。
・実施例7~9より、官能基数が多い多官能(メタ)アクリレートを用いることで耐薬品性が高まり、能基数が少ない多官能(メタ)アクリレートを用いることで引張伸び率が高まることが理解される。
【符号の説明】
【0205】
1 電子デバイス
1A 電子デバイス
1B 電子デバイス
2 貫通電極基板
3 半導体パッケージ
5 感光性樹脂ワニス
21 絶縁層
23 半導体チップ
24 下層配線層
24A 下層配線層
24B 下層配線層
25 上層配線層
26 半田バンプ
27 チップ埋込構造体
31 パッケージ基板
32 半導体チップ
33 ボンディングワイヤー
34 封止層
35 半田バンプ
202 基板
221 貫通配線
222 貫通配線
231 ランド
240 有機絶縁層
241 有機絶縁層
242 有機絶縁層
243 配線層
245 バンプ密着層
251 有機絶縁層
252 有機絶縁層
253 配線層
254 貫通配線
412 マスク
423 開口部
424 開口部
2510 感光性樹脂層
2520 感光性樹脂層
S1 チップ配置工程
S2 上層配線層形成工程
S20 第1樹脂膜配置工程
S21 第1露光工程
S22 第1現像工程
S23 第1硬化工程
S24 配線層形成工程
S25 第2樹脂膜配置工程
S26 第2露光工程
S27 第2現像工程
S28 第2硬化工程
S29 貫通配線形成工程
S3 基板剥離工程
S4 下層配線層形成工程
S5 半田バンプ形成工程
S6 積層工程
W 直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6