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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】光出力制御ユニット、及び光投射装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/02 20060101AFI20221109BHJP
   H01S 5/062 20060101ALI20221109BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20221109BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20221109BHJP
   H04N 9/31 20060101ALI20221109BHJP
   H01S 5/022 20210101ALN20221109BHJP
   G02B 27/01 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
G09G3/02 A
H01S5/062
H01S5/40
H04N5/74 H
H04N9/31 290
H04N9/31 820
H01S5/022
G02B27/01
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020168572
(22)【出願日】2020-10-05
(62)【分割の表示】P 2016187061の分割
【原出願日】2016-09-26
(65)【公開番号】P2021006928
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2015197625
(32)【優先日】2015-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015197629
(32)【優先日】2015-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 充由
(72)【発明者】
【氏名】清水 真弥
(72)【発明者】
【氏名】水野 貴夫
【審査官】橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-154236(JP,A)
【文献】特開2011-112654(JP,A)
【文献】特開2009-244797(JP,A)
【文献】特開2011-039324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/02
H01S 5/062
H01S 5/40
H04N 5/74
H04N 9/31
H01S 5/022
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光波長の異なる複数の発光素子の光出力を制御する光出力制御部を備え、
前記複数の発光素子は、
最も長い光応答時間を有する第1発光素子と、
前記第1発光素子よりも短い光応答時間を有する第2発光素子と、
印加にされる駆動電流の電流値に対応する光量で直ちに発光する第3発光素子と、
を有し、
前記複数の発光素子によって光量が0の状態から表示を行う場合、前記光出力制御部は、前記第1発光素子に第1駆動電流を印加する時点を前記第2発光素子に第2駆動電流を印加する時点及び前記第3発光素子に第3駆動電流を印加する時点よりも早くし、
前記光応答時間は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子において、前記表示をするための前記駆動電流が印加された時点から前記駆動電流に対応する光量の光が出力されるまでに要する時間であって、
前記第1駆動電流は、前記第1発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記第2駆動電流は、前記第2発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記第3駆動電流は、前記第3発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子の前記駆動電流に対応する光量はそれぞれ前記第1発光素子及び前記第2発光素子の発光開始時の光量よりも大きく、
前記光出力制御部は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子の各々の前記光応答時間の時間差に基づく前記光出力の制御により、各々の前記発光素子の光量が前記動電流に対応する光量に達する時点同じにする光出力制御ユニット。
【請求項2】
発光波長の異なる複数の発光素子の光出力を制御する光出力制御部を備え、
前記複数の発光素子は、
最も長い光応答時間を有する第1発光素子と、
前記第1発光素子よりも短い光応答時間を有する第2発光素子と、
印加にされる駆動電流の電流値に対応する光量で直ちに発光する第3発光素子と、
を有し、
前記複数の発光素子によって光量が0の状態から表示を行う場合、前記光出力制御部は、前記第1発光素子に第1駆動電流を印加する時点を前記第2発光素子に第2駆動電流を印加する時点及び前記第3発光素子に第3駆動電流を印加する時点よりも早くし、
前記光応答時間は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子において、前記表示をするための前記駆動電流が印加された時点から前記駆動電流に対応する光量の光が出力されるまでに要する時間であって、
前記第1駆動電流は、前記第1発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記第2駆動電流は、前記第2発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記第3駆動電流は、前記第3発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記光出力制御部は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子の各々の前記光応答時間の時間差に基づいて、前記第1発光素子の光量が前記第1駆動電流に対応する光量に対して所定割合に達する時点と、前記第2発光素子の光量が前記第2駆動電流に対応する光量に対して前記所定割合に達する時点と、前記第3発光素子に前記第3駆動電流を印加する時点と、を同じにし、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子において、前記駆動電流に対応する光量に対して前記所定割合に達する時点の光量はそれぞれ前記第1発光素子及び前記第2発光素子の発光開始時の光量よりも大きい光出力制御ユニット。
【請求項3】
前記所定割合が50%である請求項2に記載の光出力制御ユニット。
【請求項4】
発光波長の異なる複数の発光素子の光出力を制御する光出力制御部を備え、
前記複数の発光素子は、
最も長い光応答時間を有する第1発光素子と、
前記第1発光素子よりも短い光応答時間を有する第2発光素子と、
印加にされる駆動電流の電流値に対応する光量で直ちに発光する第3発光素子と、
を有し、
前記複数の発光素子によって光量が0の状態から表示を行う場合、前記光出力制御部は、前記第1発光素子に第1駆動電流を印加する時点を前記第2発光素子に第2駆動電流を印加する時点、及び前記第3発光素子に第3駆動電流を印加する時点よりも早くし、
前記光応答時間は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子において、前記表示をするための前記駆動電流が印加された時点から前記駆動電流に対応する光量の光が出力されるまでに要する時間であって、
前記第1駆動電流は、前記第1発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記第2駆動電流は、前記第2発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記第3駆動電流は、前記第3発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子の前記駆動電流に対応する光量はそれぞれ前記第1発光素子及び前記第2発光素子の発光開始時の光量よりも大きく、
前記光出力制御部は、
前記表示をするための光量未満の光量の光出力を前記第2発光素子にさせる第1電流値の前記第2駆動電流を前記第2発光素子に印加するとともに、前記表示をするための光量未満の光量の光出力を前記第3発光素子にさせる第2電流値の前記第3駆動電流を前記第3発光素子に印加した後、
前記表示をするための光量の光出力を前記第2発光素子にさせる第電流値の前記第2駆動電流を前記第2発光素子に印加するとともに、前記表示をするための光量の光出力を前記第3発光素子にさせる第4電流値の前記第3駆動電流を前記第3発光素子に印加する光出力制御ユニット。
【請求項5】
発光波長の異なる複数の発光素子の光出力を制御する光出力制御部を備え、
前記複数の発光素子は、
最も長い光応答時間を有する第1発光素子と、
前記第1発光素子よりも短い光応答時間を有する第2発光素子と、
印加にされる駆動電流の電流値に対応する光量で直ちに発光する第3発光素子と、
を有し、
前記複数の発光素子によって光量が0の状態から表示を行う場合、前記光出力制御部は、前記第1発光素子に第1駆動電流を印加する時点を前記第2発光素子に第2駆動電流を印加する時点、及び前記第3発光素子に第3駆動電流を印加する時点よりも早くし、
前記光応答時間は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子において、前記表示をするための前記駆動電流が印加された時点から前記駆動電流に対応する光量の光が出力されるまでに要する時間であって、
前記第1駆動電流は、前記第1発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記第2駆動電流は、前記第2発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記第3駆動電流は、前記第3発光素子から前記表示をするための光量の光を出力させるための前記駆動電流であって、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子の前記駆動電流に対応する光量はそれぞれ前記第1発光素子及び前記第2発光素子の発光開始時の光量よりも大きく、
前記光出力制御部は、前記第2発光素子の前記第2駆動電流及び前記第3発光素子の前記第3駆動電流それぞれ、前記表示をするための光量の光を前記第2発光素子及び前記第3発光素子から出力させる電流値まで複数の段階に分けて増加させる光出力制御ユニット。
【請求項6】
前記光出力制御部は、
前記第2駆動電流に対応する光量未満の光量の光出力を前記第2発光素子にさせる第1電流値の前記第2駆動電流を前記第2発光素子に印加するとともに、前記第3駆動電流に対応する光量未満の光量の光出力を前記第3発光素子にさせる第2電流値の前記第3駆動電流を前記第3発光素子に印加した後、
前記駆動電流に対応する光量の光出力を前記第2発光素子にさせる第電流値の前記第2駆動電流を前記第2発光素子に印加するとともに、前記駆動電流に対応する光量の光出力を前記第3発光素子にさせる第4電流値の前記第3駆動電流を前記第3発光素子に印加する請求項1~請求項3のいずれかに記載の光出力制御ユニット。
【請求項7】
前記光出力制御部は、前記第2発光素子の前記第2駆動電流及び前記第3発光素子の前記第3駆動電流それぞれ、前記第2駆動電流に対応する光量の光を前記第2発光素子及び前記第3発光素子から出力させる電流値まで複数の段階に分けて増加させる請求項1~請求項3いずれかに記載の光出力制御ユニット。
【請求項8】
前記複数の発光素子の各々の光量を検出する光検出部の検出結果に基づいて、前記第1発光素子及び前記第2発光素子の各々の前記光応答時間を算出する算出部をさらに備える請求項1~請求項7のいずれかに記載の光出力制御ユニット。
【請求項9】
前記複数の発光素子の前記光出力により形成される映像の映像情報を格納するメモリをさらに備え、
前記光出力制御部は、前記映像情報を解析し、該解析の結果に基づいて前記複数の発光素子の光出力を制御する請求項1~請求項8のいずれかに記載の光出力制御ユニット。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれかに記載の光出力制御ユニットと、
複数の発光素子と、を備える光投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光出力制御ユニット、及び光投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光投射によって投射面に映像を形成する光投射装置では、たとえば赤色、緑色、及び青色といった複数種類の半導体レーザ素子を用いて希望の色の光を投射している。ところが、半導体レーザ素子に駆動電流を印加しても、レーザ発振が可能な濃度のキャリアが生成されるまでに一定の時間を必要とする。そのため、発光遅延が生じて、駆動電流に対応する光量の光が出力されるまでの立ち上がり時間がかかる場合がある。なお、発光遅延とは、駆動電流の印加当初には半導体レーザ素子から低い光量の光しか出力されず、印加した駆動電流の電流値に対応する定常の光量の光が出力されるまでに時間がかかる現象である。特に、近年では、600[nm]の赤色半導体レーザ素子、及び500[nm]の緑色半導体レーザ素子などを用いたシステムが実用化されている。これらの半導体レーザ素子では、従来の1.3μm帯、1.5μm帯、又は780nm帯の半導体レーザ素子に比べて立ち上がり時間が生じ易い。これは、レーザ発振が可能な濃度のキャリアが生成されるまでにさらに時間を必要とする特性をこれらの半導体レーザ素子が有しているためである。
【0003】
そのため、たとえば特許文献1では、発光開始時の駆動電流に補助電流を上乗せして印加することにより、半導体レーザ素子の発光遅延を補っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-209380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の半導体レーザ素子を備える光投射装置では、半導体レーザ素子の種類によって立ち上り時間がかかる程度が異なる。そのため、各半導体レーザ素子に異なる程度の発光遅延が発生すると、駆動電流に応じた光量の光が各半導体レーザ素子から出力されるタイミングがずれて、投射面に表示される映像のエッジ部分に色ムラが発生してしまう。たとえば複数種類の半導体レーザ素子のうち、赤色及び緑色の半導体レーザ素子には発光遅延が発生し易い傾向にある。そのため、各半導体レーザ素子を同時に発光して真白な映像を投射する場合、青色の半導体レーザ素子には発光遅延が生じないため、投射光に色ムラが発生し、特に映像のエッジ部分が青みがかった色になってしまう。
【0006】
このような問題に対して、特許文献1では、程度が異なる複数種類の半導体レーザ素子の発光遅延を補うことについては何ら言及していない。また、特許文献1では、発光開始時の駆動電流に補助電流を上乗せするため、光量がオーバーシュートし易く、発光開始時の光量を調整することが難しい。さらに、補助電流分の電力消費が増えるという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、光源の発光遅延に起因する問題の発生を抑制又は防止することができる光出力制御ユニット、及び光投射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一の態様による光出力制御ユニットは、複数の発光素子の光出力を制御する光出力制御部を備え、前記複数の発光素子によって光量が0の状態から白色表示を行う場合、前記光出力制御部は、前記複数の発光素子のうち、前記白色表示の光量を出力するまでに要する光応答時間が最も長い第1発光素子から前記白色表示の光量の光を出力させる駆動電流を該第1発光素子に印加する時点を他の第2発光素子から前記白色表示の光量の光を出力させる駆動電流を該第2発光素子に印加する時点よりも早くする構成(第1の構成)とされる。
【0009】
上記第1の構成の光出力制御ユニットは、前記光出力制御部は、前記複数の発光素子の各々の前記光応答時間の時間差に基づく前記光出力の制御により、前記第1発光素子の光量が前記白色表示の光量に達する時点と、前記第2発光素子の光量が前記白色表示の光量に達する時点とを同じにする構成(第2の構成)とされてもよい。
【0010】
上記第1の構成の光出力制御ユニットは、前記光出力制御部は、前記複数の発光素子の各々の前記光応答時間の時間差に基づいて、前記第1発光素子の光量が前記白色表示の光量に対して所定割合に達する時点と、前記第2発光素子の光量が前記白色表示の光量に対して前記所定割合に達する時点とを同じにする構成(第3の構成)とされてもよい。
【0011】
上記第3の構成の光出力制御ユニットは、前記所定割合が50%である構成(第4の構成)とされてもよい。
【0012】
上記第1~第4のいずれかの構成の光出力制御ユニットは、前記光出力制御部は、前記白色表示の光量未満の光量の光出力を前記第2発光素子にさせる第1電流値の前記駆動電流を前記第2発光素子に印加した後、前記白色表示の光量の光出力を前記第2発光素子にさせる第2電流値の前記駆動電流を前記第2発光素子に印加する構成(第5の構成)とされてもよい。
【0013】
上記第1~第5のいずれかの構成の光出力制御ユニットは、前記光出力制御部は前記第2発光素子の前記駆動電流を前記白色表示の光量の光を前記第2発光素子から出力させる電流値まで複数の段階に分けて増加させる構成(第6の構成)とされてもよい。
【0014】
上記第1~第6のいずれかの構成の光出力制御ユニットは、前記複数の発光素子の各々の光量を検出する光検出部の検出結果に基づいて、前記複数の発光素子の各々の前記光応答時間を算出する算出部をさらに備える構成(第7の構成)とされてもよい。
【0015】
上記第7の構成の光出力制御ユニットは、前記光出力制御部は、投射面に投射及び走査されて該投射面上に映像を形成する走査光を前記複数の発光素子から出力させ、前記映像が形成されない前記投射面上の無効投射領域を前記走査光が走査する際、前記光出力制御部は前記複数の発光素子を発光させ、前記算出部は前記走査光が前記無効投射領域を走査する際の前記光検出部の検出結果に基づいて前記光応答時間を算出する構成(第8の構成)とされてもよい。
【0016】
上記第1~第8のいずれかの構成の光出力制御ユニットは、前記複数の発光素子の前記光出力により形成される映像の映像情報を格納するメモリをさらに備え、前記光出力制御部は、前記映像情報を解析し、該解析の結果に基づいて前記複数の発光素子の光出力を制御する構成(第9の構成)とされてもよい。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の一の態様による光投射装置は、上記第1~第9のいずれか構成の光出力制御ユニットと、複数の発光素子と、を備える構成(第10の構成)とされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光源の発光遅延に起因する問題の発生を抑制又は防止することができる光出力制御ユニット、及び光投射装置を提供することができる。たとえば、複数の発光素子が光出力を行う際、発光素子毎の発光遅延の発生の違いにより発生する光の色ムラを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】HUD装置の概略図である。
図2】プロジェクタユニットの構成例を示すブロック図である。
図3】LDの駆動電流に対する光出力特性を示すグラフである。
図4A】赤色LDの光出力の応答特性を示すグラフである。
図4B】緑色LDの光出力の応答特性を示すグラフである。
図4C】青色LDの光出力の応答特性を示すグラフである。
図5】コンバイナの投射面上で走査レーザ光の走査状況を示す図である。
図6】第1実施形態に係るLDの光出力制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図7】全てのLDが同時に光出力を行う場合の走査レーザ光の光出力を示す模式図である。
図8】第1実施形態に係るLDの光出力制御の一例を示すグラフである。
図9】第1実施形態に係る光出力制御をする場合の走査レーザ光の光出力の一例を示す模式図である。
図10】第2実施形態に係るLDの光出力制御の一例を示すグラフである。
図11】第3実施形態に係るLDの光出力制御の一例を示すグラフである。
図12】第3実施形態に係るLDの光出力制御の他の一例を示すグラフである。
図13】連続して往復走査される走査光の走査範囲を局所的に示す模式図である。
図14】第4実施形態における赤色LDの光出力制御の一例を示すグラフである。
図15A】第4実施形態において第1走査位置から第2走査位置に走査される往路の走査光の光出力変化を示す図である。
図15B】第4実施形態において第2走査位置から第1走査位置に走査される復路の走査光の光出力変化を示す図である。
図15C】第4実施形態における第1走査位置及び第2走査位置間の走査光の見た目の光量変化を示す図である。
図16】第4実施形態に係るLDの光出力制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図17】定常の光量の光出力を行う場合でのLDの理想の光出力変化と往路及び復路の走査レーザ光での実際の光出力変化とを示す図である。
図18】第1走査位置側での立上走査範囲で光出力をなだらかに立ち上げる場合でのLDの理想の光出力変化と往路及び復路での実際の光出力変化とを示す図である。
図19】第2走査位置側での立上走査範囲で光出力をなだらかに立ち上げる場合でのLDの理想の光出力変化と往路及び復路での実際の光出力変化とを示す図である。
図20】第5実施形態における赤色LDの光出力制御の一例を示すグラフである。
図21A】第5実施形態において第1走査位置から第2走査位置に走査される往路の走査光の光出力変化を示す図である。
図21B】第5実施形態において第2走査位置から第1走査位置に走査される復路の走査光の光出力変化を示す図である。
図21C】第5実施形態における第1走査位置及び第2走査位置間の走査光の見た目の光量変化を示す図である。
図22】第6実施形態における緑色LDの光出力制御の一例を示すグラフである。
図23A】第6実施形態において第1走査位置から第2走査位置に走査される往路の走査光の光出力変化を示す図である。
図23B】第6実施形態において第2走査位置から第1走査位置に走査される復路の走査光の光出力変化を示す図である。
図23C】第6実施形態における第1走査位置及び第2走査位置間の走査光の見た目の光量変化を示す図である。
図24】赤色LDの駆動電流に対する光出力特性を示すグラフである。
図25】第7実施形態における赤色LDの光出力制御の一例を示すグラフである。
図26A】第7実施形態において第1走査位置から第2走査位置に走査される往路の走査光の光出力変化を示す図である。
図26B】第7実施形態において第2走査位置から第1走査位置に走査される復路の走査光の光出力変化を示す図である。
図26C】第7実施形態における第1走査位置及び第2走査位置間の走査光の見た目の光量変化を示す図である。
図27】第7実施形態に係るLDの光出力制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照し、車両用のヘッドアップディスプレイ装置100を例に挙げて説明する。なお、以下では、ヘッドアップディスプレイ装置100をHUD(Head-Up Display)装置100と呼ぶ。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、HUD装置100の概略図である。本実施形態のHUD装置100は、車両200に搭載されている。HUD装置100は、プロジェクタユニット101(光投射装置)からコンバイナ102に向けて走査レーザ光300(走査光)を投射し、その投射像をユーザの視野内に重ねて表示する表示装置である。なお、図1において、一点鎖線の矢印400は車両200の運転席に座っているユーザの視線を示している。また、HUD装置100は、車両に限らず、他の乗り物(例えば航空機等)に搭載されてもよい。
【0022】
コンバイナ102は、図1に示すように、車両200のフロントガラス201の内面に貼り付けられている。このコンバイナ102は、プロジェクタユニット101の投射像をユーザの視野内に表示するための投射部材であり、たとえばハーフミラーなどの半透過性の反射材料を用いて形成されている。プロジェクタユニット101からコンバイナ102に走査レーザ光300が投射されることによって、コンバイナ102の投射面102aの所定領域に虚像(映像)が形成される。このために、車両200の前方(すなわち視線400の方向)を見ているユーザは、車両200の前方の外界像とプロジェクタユニット101から投射される投射画像とを同時に視認することができる。
【0023】
次に、プロジェクタユニット101について説明する。図2は、プロジェクタユニット101の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、第1実施形態において、プロジェクタユニット101は、ハウジング1と、光学エンジン部2と、MEMSエンジン部3とを備えている。
【0024】
ハウジング1は光学エンジン部2及びMEMSエンジン部3を搭載している。また、ハウジング1には、MEMSエンジン部3から出射される走査レーザ光300を外部に出射するための窓部1a(光透過窓)が形成されている。窓部1aは、たとえば、ガラス又は透光性の樹脂材料などを用いて形成されている。なお、ハウジング1のより詳細な構成については後に詳述する。
【0025】
光学エンジン部2は、複数のレーザダイオード21a~21cと、光学系22と、フォトディテクタ23a~23cとを含んで構成され、MEMSエンジン部3に光を出射する。なお、以下では、レーザダイオード21a~21cをそれぞれLD(Laser Diode)21a~21cと呼び、フォトディテクタ23a~23cをそれぞれPD(Photo Detector)23a~23cと呼ぶ。なお、光学エンジン部2の構成は図2の例示に限定されない。たとえば、光学エンジン部2は、フォトディテクタ23a~23cに代えて、光学系22とMEMSエンジン部3との間に配置されるハーフミラー(たとえば透過率99%)と、ハーフミラーの反射光の光出力を検出するPD(光検出部)を含んでいてもよい。
【0026】
LD21aは赤色レーザ光を出射する発光素子である。LD21bは緑色レーザ光を出射する発光素子である。LD21cは青色レーザ光を出射する発光素子である。
【0027】
ここで、LD11a~11cの駆動電流に対する光出力特性について説明しておく。なお、ここでは、LD11aを例に挙げて説明するが、他のLD11b、11cの駆動電流に対する光出力特性も同様であるため、それらの説明は割愛する。図3は、LD11aの駆動電流に対する光出力特性を示すグラフである。LD11aの光出力及びLD11aに印加される駆動電流が図3において色付けした四角形状の範囲Ag内になると、LD11aはレーザ発振モードとLED発光モードとが混在した状態で発光する。従って、LD11aの光出力は不安定となる。また、グラフ上の点GA、GBはそれぞれ範囲Ag内のグラフの下限、上限である。光出力及び駆動電流が下限点GAに対応する光出力PA及び電流値IA未満になると、LD11aはLED発光モードで発光する。この場合、LD11aは、波長及び位相がレーザ発振モードよりも不揃いな出射光を出力するが、範囲Ag内での発光よりも安定した発光を行う。また、光出力及び駆動電流が上限点GBに対応する光出力PB及び電流値IBよりも大きくなると、LD11aはLD発振モードで発光する。この場合、LD11aは、安定したレーザ発振動作により、比較的波長及び位相の揃ったコヒーレント光を出力する。
【0028】
次に、LD11a~11cの光応答特性を説明する。図4A図4Cは一定の駆動電流Ia1~Ic1を印加した各LD21a~21cの光出力の応答特性を示すグラフである。図4Aは、赤色LD21aの光出力の応答特性を示すグラフである。図4Bは、緑色LD21bの光出力の応答特性を示すグラフである。図4Cは、青色LD21cの光出力の応答特性を示すグラフである。なお、図4A図4Cにおいて、時刻tSは駆動電流の印加を開始(すなわち発光を開始)する時刻を示し、時刻tEは駆動電流の印加を終了(すなわち発光を終了)する時刻を示す。これらは他の図でも同様である。
【0029】
図4A図4Cに示すように、各LD21a~21cの光出力の応答特性は異なる。たとえば、各LD21a~21cはそれぞれ駆動電流の印加開始時に発光遅延を生じる。発光遅延とは、各LD21a~21cへの駆動電流の印加開始時には低い光量の光しか出力されず、印加した駆動電流の電流値Ia1、Ib1、Ic1に対応する定常の光量Pa1、Pb1、Pc1の光が出力されるまでに立ち上がり時間TA、TB、TCがかかる現象である。立ち上がり時間TA、TB、TCは、発光開始(駆動電流の印加開始)から駆動電流の電流値Ia1、Ib1、Ic1に対応する光量Pa1、Pb1、Pc1に光出力に達するまでの光応答時間であり、それらの時間長は各LD21a~21cで異なる。以下に、LD21a~21cが光量0の状態(すなわち光出力が0の状態)から白色表示を行う場合でのLD21a~21cの光出力の応答特性を説明する。
【0030】
赤色LD21aでは、図4Aに示すように、時刻ta0(=tS)にて一定の駆動電流Ia1が印加されると、該駆動電流Ia1に対応する定常の光量Pa1で発光するまでに立ち上がり時間TA(=ta1-ta0)を要する。すなわち、赤色LD21aの光出力は時刻ta0から徐々に増加し、時刻ta2にて定常の光量の半分0.5Pa1となり、時刻ta1にて定常の光量Pa1となる。なお、定常の光量Pa1はたとえばLD21a~21cが白色表示を行う場合のLD21aの光量Pa1である。このように、赤色LD21aは、LD21a~21cのうち、光量が0の状態から定常の光量Pa1の光を出力するまでに要する立ち上がり時間TAが最も長い発光素子である。
【0031】
また、緑色LD21bでは、図4Bに示すように、時刻tb0(=tS)にて一定の駆動電流Ib1が印加されると、該駆動電流Ib1に対応する定常の光量Pb1で発光するまでに立ち上がり時間TB(=tb1-tb0)を要する。すなわち、緑色LD21aの光出力は、時刻tb0から増加して、時刻tb2にて定常の光量の半分0.5Pb1となり、時刻tb1にて定常の光量Pb1となる。なお、定常の光量Pb1はたとえばLD21a~21cが白色表示を行う場合のLD21bの光量Pb1である。但し、緑色LD21bの立ち上がり時間TBは、赤色LD21aの立ち上がり時間TAよりも早い(0<TB<TA)。
【0032】
一方、青色LD21cでは、図4Cに示すように光出力の応答特性が非常に良好であり、時刻tc0(=tS)にて一定の駆動電流Ic1が印加されると、直ちに該駆動電流Ic1に対応する定常の光量Pc1で発光する。すなわち、青色LD21cは、立ち上がり時間TCをほとんど要しない(TC≒0)。なお、定常の光量Pc1はたとえばLD21a~21cが白色表示を行う場合のLD21cの光量Pc1である。
【0033】
次に、図2に戻って、光学エンジン部2について説明する。光学系12は、コリメータレンズ221a~221cと、ビームスプリッタ222a~222cと、集光レンズ223と、を含んで構成されている。コリメータレンズ221a~221cは、各LD21a~21cから出射されるレーザ光を平行光に変換する光学素子である。また、ビームスプリッタ222a~222cは、たとえばダイクロイックミラーなどの光学素子であり、特定の波長の光を反射し、他の波長の光を透過する。さらに、ビームスプリッタ222a~222cはそれぞれコリメータレンズ221a~221cから入射する光の一部を反射して残りの一部を透過する。PD23a~23cはそれぞれ、ビームスプリッタ222a~222cから入射する光の光出力を検出する光検出部であり、その検出結果に基づく光検出信号を後述するCPU58に出力する。
【0034】
LD21aから出射される赤色レーザ光は、コリメータレンズ221aにより平行光に変換される。赤色レーザ光の一部は、ビームスプリッタ222aで反射され、ビームスプリッタ222cを透過して集光レンズ223に至る。赤色レーザ光の残りの一部はビームスプリッタ222aを透過してPD23aに入射する。また、LD21bから出射される緑色レーザ光は、コリメータレンズ221bにより平行光に変換される。緑色レーザ光の一部は、ビームスプリッタ222bで反射され、ビームスプリッタ222a及び222cを透過して集光レンズ223に至る。緑色レーザ光の残りの一部はビームスプリッタ222bを透過してPD23bに入射する。また、LD21cから出射される青色レーザ光はコリメータレンズ221cにより平行光に変換される。青色レーザ光の一部は、ビームスプリッタ222cで反射され、集光レンズ223に至る。青色レーザ光の残りの一部はビームスプリッタ222cを透過してPD23cに入射する。集光レンズ223は、各LD21a~21cからコリメータレンズ221a~221c及びビームスプリッタ222a~222cを経て入射する各レーザ光をMEMSミラー31の光反射面に収束させる。
【0035】
MEMSエンジン部3は、MEMSミラー31を含んで構成され、LD21a~21cからコンバイナ102の投射面102aに投射される走査レーザ光300及びその光軸を揺動駆動して投射面102a上を走査させる走査光学ユニットである。MEMSミラー31は、集光レンズ223により収束されるレーザ光を反射する光学反射素子である。MEMSミラー31は、各レーザ光を走査レーザ光300として反射する。この走査レーザ光300は、ハウジング1の窓部1a及び後述する光出射口50aを通過してプロジェクタユニット101の外部に出射され、コンバイナ102上の投射面102aに投射される。また、MEMSミラー31は、2軸方向に揺動駆動して走査レーザ光300の光軸を変化させることにより、走査レーザ光300を投射面102a上で走査する。このように、MEMSミラー31は、走査レーザ光300の光軸をコンバイナ102の水平方向及び垂直方向に揺動駆動することによって、投射面102a上に投射される走査レーザ光300を走査する。
【0036】
図5は、コンバイナ102の投射面102a上での走査レーザ光300及びその光軸の走査状況を示す図である。以下では、投射面102aにおいて、投射面102aの右側に向かう水平方向をX方向と呼び、投射面102aの下側に向かう垂直方向をY方向と呼ぶことがある。これらは他の図でも同様である。
【0037】
走査レーザ光300は、投射面102a上において、MEMSミラー31の揺動駆動により、たとえば図5に示すように垂直方向Yの方向範囲を有して水平方向Xに往復走査される。すなわち、走査レーザ光300の光軸は、Y方向に向かうジグザグの往復走査と、-Y方向に向かうジグザグの往復走査とを交互に行う。なお、以下では、図5の最も上側から最も下側に向かうY方向のジグザグの往復走査をトレースと呼ぶ。また、図5の最も下側から最も上側に向かう-Y方向のジグザグの往復走査をリトレースと呼ぶ。
【0038】
トレースでは、垂直方向Yに方向範囲を有して水平方向Xに往復走査される一群の走査レーザ光300によって、映像が投射面102a上に形成される。すなわち、この映像は、所定のY方向成分を有する-X方向の走査と、所定のY方向成分を有するX方向の走査とが交互に行われた一群の走査レーザ光300によって形成されている。なお、以下では、所定のY方向成分を有して-X方向に走査される走査レーザ光300を往路の走査レーザ光300aと呼ぶ。また、所定のY方向成分を有してX方向に走査される走査レーザ光300を復路の走査レーザ光300bと呼ぶ。各走査レーザ光300a、300bの所定のY方向成分は、各走査レーザ光300a、300bのY方向の走査ピッチ(すなわち走査間隔)に応じて決定される。
【0039】
図5において、投射面102aのうちの一点鎖線で囲まれた領域は有効投射領域102bである。また、投射領域102b以外の領域は無効投射領域102cである。有効投射領域102bは、トレース期間中に走査レーザ光300による映像が形成可能な領域である。なお、リトレース期間中に映像は形成されない。また、無効投射領域102cは、トレース期間及びリトレース期間に映像が形成されない領域である。この領域102cでは、走査レーザ光300の光軸は走査されるが、映像を形成するための走査レーザ光300自身は投射されない。
【0040】
次に、図2に戻ってプロジェクタユニット101の更なる構成を説明する。プロジェクタユニット101はさらに、本体筐体50と、MEMSミラードライバ51と、LDドライバ52と、電源53と、電源制御部54と、操作部55と、入出力I/F56と、記憶部57と、CPU58と、を備えている。
【0041】
本体筐体50はハウジング1、MEMSミラードライバ51、LDドライバ52、電源53、電源制御部54、操作部55、入出力I/F56、記憶部57、及びCPU58を搭載している。また、本体筐体50には、光出射口50aが形成されている。MEMSエンジン部3からハウジング1の窓部1aを通過した走査レーザ光300はさらに光出射口50aを通ってコンバイナ102に出射される。なお、この光出射口50aは開口であってもよいが、たとえばガラス又は透光性の樹脂材料などを用いて形成されることが望ましい。こうすれば、本体筐体50の内部への塵埃及び水分(たとえば水滴、水気を含む空気)などの侵入を防止することができる。
【0042】
MEMSミラードライバ51は、CPU58から入力される制御信号に基づいて、MEMSミラー31の駆動を制御する駆動制御部である。たとえば、MEMSミラードライバ51は、CPU58からの水平同期信号に応じてMEMSミラー31を揺動駆動し、MEMSミラー31によるレーザ光の反射方向を投射面102aの水平方向に偏向させる。また、MEMSミラードライバ51は、CPU58からの垂直同期信号に応じてMEMSミラー31を揺動駆動し、MEMSミラー31によるレーザ光の反射方向を投射面102aの垂直方向に偏向させる。
【0043】
LDドライバ52は、各LD21a~21cに駆動電流を供給する光源駆動部であり、各LD21a~21cの発光及び光出力などの駆動制御を行う。LDドライバ52は、光出力制御ユニットの一部であり、たとえば、発振閾値電流値(たとえば右3の電流値IB)以上の駆動電流をLD21a~21cに供給してレーザ光を出力させる。電源53は、たとえば車両200の蓄電池(不図示)などの電力源から電力の供給を受ける電力供給部である。電源制御部54は、電源53から供給される電力をプロジェクタユニット101の各構成部に応じた所定の電圧値及び電流値に変換し、変換された電力を各構成部に供給する。操作部55は、ユーザの操作入力を受け付ける入力ユニットである。入出力I/F56は外部装置と有線通信又は無線通信するための通信インターフェースである。
【0044】
記憶部57は、不揮発性の記憶媒体であり、たとえば、プロジェクタユニット101の各構成部により用いられるプログラム及び制御情報を格納している。また、記憶部57は、コンバイナ102に投射する映像情報、LD21a~21cの動作特性及び光量補正(たとえば後述する光出力の応答特性)に関する情報なども格納している。
【0045】
CPU58は、記憶部57に格納されたプログラム及び制御情報などを用いて、プロジェクタユニット101の各構成部を制御する制御部である。CPU58は、図2に示すように映像処理部581と、光出力制御部582と、算出部583と、を有している。このCPU58は、光出力制御ユニットの一部である。
【0046】
映像処理部581は、記憶部57に格納されたプログラム、入出力I/F56から入力される情報、及び記憶部57に格納された情報などに基づく映像情報を生成する。さらに、映像処理部581は、生成した映像情報を赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の映像データに変換する。変換された3色の映像データは光出力制御部582に出力される。
【0047】
光出力制御部582は、LD21a~21cの光出力制御を行う。たとえば、光出力制御部582は、映像処理部581から出力される映像データ(すなわち投射面102a上に形成される映像の映像情報)をメモリ(不図示)に取り込んで画像解析を行う。すなわち、投射面102aに形成する映像の色情報、及び輝度情報などを解析する。また、光出力制御部582は、この解析結果、及び、LD21a~21cの動作特性に関する情報などに基づいて複数のLD21a~21cの光出力を制御する。光出力制御部582は、たとえば、3色の映像データを画像解析した結果に基づいて各LD21a~21cの光制御信号を生成し、LDドライバ52に出力する。各光制御信号に基づいて各LD21a~21cから出射される各レーザ光がMEMSミラー31の駆動によって2次元的に走査されることにより、映像情報に基づく映像(投射画像)がフロントガラス201上のコンバイナ102に投射される。
【0048】
算出部583は、LD21a~21cの光出力の応答特性などに基づいて様々な演算を行う。たとえば、算出部583は、PD23a~23cの検出結果に基づいて、LD21a~21cの各々の立ち上がり時間TA、TB、TCを算出する。そして、算出部583は、立ち上がり時間TA、TB、TCを用いて、各LD21a~21cに駆動電流Ia1、Ib1、Ic1を印加する時刻(発光開始時刻)ta0、tb0、tc0及びこれらの時間差などを算出する。
【0049】
次に、LD21a~21cの光出力制御処理について説明する。図6は、第1実施形態に係るLD21a~21cの光出力制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、下記のS101~S106はリトレース期間中に行われ、S107はトレース期間中に行われる。なお、図6に例示される光出力制御処理は、後述する第2及び第3実施形態にも適用される。
【0050】
まず、リトレース期間において走査レーザ光300の光軸が無効投射領域102cを走査する際に、光出力制御部582は各LD21a~21cに所定の駆動電流Ia1~Ic1を所定時間印加する。すなわち、光出力制御部582は、各LD21a~21cに所定の光量(たとえばPa1、Pb1、Pc1)の光出力を行わせる(S101)。なお、駆動電流Ia1~Ic1の印加時間はそれぞれ、各LD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCよりも長い時間長であればよい。そして、PD23a~23cが各LD21a~21cの光出力を検出する(S102)。算出部583は、PD23a~23cの検出結果に基づいて、各LD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCを算出する(S103)。そして、算出部583は、最も長い立ち上がり時間TAと他の立ち上がり時間TB、TCとの時間差TB1(=TA-TB)、TC1(=TA-TC≒TA)を算出する(S104)。さらに、算出部583は、時間差TB1、TC1に基づいてLD21b、21cの発光開始時刻tb0、tc0を求める(S105)。光出力制御部582は、映像処理部581から出力される映像データをメモリ(不図示)に取り込み、該映像データに基づいてトレース期間にて投射面102aに投射する映像の画像解析を行う(S106)。すなわち、トレース期間で形成する映像の色情報、及び輝度情報などを解析する。
【0051】
次に、トレース期間において、光出力制御部582は、画像解析の結果、算出部583の算出結果、及び記憶部57に格納されている情報などに基づいてLD21a~21cの光出力制御を行う(S106)。
【0052】
なお、上述の光出力制御処理においてS104は、光出力制御部582が最も立ち上がり時間が長いLDを特定した後に行われてもよい。この場合、特定されたLDと他のLDとの時間差が求められる。通常、赤色LD21aの立ち上がり時間TAが最も長いが、LD21a~21cの立ち上がり時間Tb、TCが素子の状態(温度変換、劣化など)に起因して変化することがある。従って、上述のように光出力制御部582が最も立ち上がり時間が長いLDを特定する素子特定部として機能すれば、LD21bの立ち上がり時間TB又はLD21cの立ち上がり時間TCが最も長くなった場合であっても、光出力制御部582は同様の光出力制御を行うことができる。すなわち、LD21a~21cがそれぞれ定常の光量Pa1、Pb1、Pc1となる時刻ta1、tb1、tc1が同じ時刻となるように、光出力制御を行うことができる。
【0053】
次に、光量が0の状態(すなわち光出力が0の状態)から白色表示を行う場合でのLD21a~21cの光出力制御について、比較例と実施例とを挙げて詳述する。
【0054】
<比較例>
まず、比較例を説明する。上述のように、発光開始時の立ち上がり時間TA、TB、TCは各LD21a~21cによって異なる(図4A図4C参照)。従って、LD21a~21cが同時に光出力を行うと発光開始時刻tSから所定期間において明確な色ムラが生じる。図7は、全てのLD21a~21cが同時に光出力を行う場合の走査レーザ光300の光出力を示す模式図である。図7において、位置LS、Lb、La、LEは走査レーザ光300の走査方向における該走査レーザ光300の光スポット300cの中心位置を示している。位置LSはLD21a~21cの発光開始時刻tSにおける光スポット300cの中心位置である。位置LbはLD21bの時刻tb1における光スポット300cの中心位置である。位置LaはLD21aの時刻ta1における光スポット300cの中心位置である。位置LEはLD21a~21cの発光停止時刻tEにおける光スポット300cの中心位置である。なお、これらは後述する図9でも同様である。
【0055】
投射面102aに投射される走査レーザ光300は、図7のように、位置LS~La間において明確な色ムラが生じる。なお、位置LS~La間は、各LD21a~21cの発光開始時刻tSから赤色LD21aの立ち上がり時間TAを経た時刻ta1までの期間TAに対応している。すなわち、発光開始時刻tSでの位置LSでは、走査レーザ光300はほとんど青色成分しかない。位置LSから位置Lbまでの間では、走査レーザ光300の赤色成分及び緑色成分が徐々に増加するが、青色成分は定常の光量Pc1である。位置Lbになると、緑色成分は駆動電流Ib1に応じた定常の光量Pb1となるが、走査レーザ光300の赤色成分の光量はまだ小さく定常の光量Pa1未満である。そして、位置Lbから位置Laまでの間では走査レーザ光300の赤色成分が増加し、位置Laにおいて赤色成分は駆動電流Ia1に応じた定常の光量Pa1となる。
【0056】
<実施例>
次に、実施例を説明する。図8は、第1実施形態に係るLD21a~21cの光出力制御の一例を示すグラフである。また、図9は、第1実施形態に係る光出力制御をする場合の走査レーザ光300の光出力の一例を示す模式図である。
【0057】
図8に示すように、本実施形態では、LD21a~21cの光出力により映像を形成する際、LD21a~21cがそれぞれ駆動電流Ia1、Ib1、Ic1に応じた定常の光量Pa1、Pb1、Pc1となる時刻ta1、tb1、tc1(≒tc0)が同じ時点となるように、LD21a~21cに駆動電流Ia1、Ib1、Ic1が印加される。すなわち、光出力制御部582は、LD21a~21cの各々の立ち上がり時間TA、TB、TCの時間差に基づいて、LD21a~21cのうち、立ち上がり時間TAが最も長いLD21aへの駆動電流の印加を開始する時点ta0を他のLD21b、21cへの駆動電流の印加を開始する時点tb0、tc0よりも早くする。また、光出力制御部582は、立ち上がり時間TA、TB、TCの時間差に基づいて、LD21aから定常の光量Pa1の光を出力させる駆動電流Ia1をLD21aに印加する時点ta0を他のLD21b、21cからそれぞれ定常の光量Pb1、Pc1の光を出力させる駆動電流Ib1、Ic1を該LD21b、21cにそれぞれ印加する時点tb0、tc0よりも早くする。そして、光出力制御部582は、LD21aの光量が定常の光量Pa1に達する時点ta1と、LD21b、21cの光量がそれぞれ定常の光量Pb1、Pc1に達する時点tb1、tc1とを同じ時点にする。
【0058】
この場合、時点ta0が光出力制御の開始時刻tSに設定される。緑色LD21bには、赤色LD21aの発光開始時刻ta0(すなわち時点tS)から時間差TB1(=TA-TB)後の時点tb0に駆動電流Ib1が印加されて、緑色LD21bの発光が開始される。また、青色LD21cには、発光開始時刻tSから時間差TC1(=TA)後の時点tc1(=ta1)に駆動電流Ic1が印加されて、青色LD21cの発光が開始される。
【0059】
こうすれば、図9のように、位置LS~Laにおいて走査レーザ光300に生じる色ムラは、各LD21a~LD21cを同時発光する場合(図7参照)と比較して大幅に軽減される。すなわち、発光開始時刻tS直後の位置LSから位置Lbまでの間において、走査レーザ光300は少ない赤色成分しか有していないため、その色ムラは目立たない。また、位置Lbになると、緑色LD21bが発光を開始するが、走査レーザ光300の赤色成分及び緑色成分はまだ少ない。そして、位置Lbから位置Laまでの間では走査レーザ光300の赤色成分及び緑色成分が増加する。位置Laでは青色LD21cが発光を開始し、赤色成分、緑色成分、及び青色成分は、各LD21a~21cに印加される駆動電流Ia1、Ib1、Ic1に対応する定常の光量Pa1、Pb1、Pc1となる。
【0060】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、LD21a~21cがそれぞれ定常の光量の半分0.5Pa1、0.5Pb1、0.5Pc1となる時刻ta2、tb2、tc2(≒tc0)が同じ時刻となるように、光出力制御部582はLD21a~21cの光出力制御を行う。それ以外は第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と異なる構成について説明する。また、第1実施形態と同様の構成部には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
図10は、第2実施形態に係るLD21a~21cの光出力制御の一例を示すグラフである。なお、図10は、たとえばLD21a~21cが光量0の状態から白色表示を行う場合でのLD21a~21cの光出力の応答特性を示している。図10に示すように、LD21aから定常の光量Pa1の光を出力させる駆動電流Ia1をLD21aに印加する時点ta0は、立ち上がり時間の半分(TA/2)、(TB/2)、(TC/2)に基づいて、他のLD21b、21cからそれぞれ定常の光量Pb1、Pc1の光を出力させる駆動電流Ib1、Ic1を該LD21b、21cにそれぞれ印加する時点tb0、tc0よりも早くなっている。
【0062】
また、図10に示すように、駆動電流Ia1、Ib1、Ic1はそれぞれ、時刻ta2、tb2、tc2が同じ時刻となるようにLD21a~21cに印加される。すなわち、光出力制御部582は、LD21a~21cの各々の立ち上がり時間TA、TB、TCの時間差に基づいて、LD21aが定常の光量の半分0.5Pa1に達する時点ta2と、LD21bが定常の光量の半分0.5Pb1に達する時点tb2と、時点tc2(=tc0)とを同じにする。言い換えると、光出力制御部582は、LD21a~21cの各々の立ち上がり時間TA、TBの時間差に基づいて、LD21aの光量が定常の光量Pa1に対して50%の割合に達する時点ta2と、LD21bの光量が定常の光量Pb1に対して50%の割合に達する時点tb2とを同じにする。なお、LD21cは立ち上がり時間TCをほぼ有しないため、LD21cの定常の光量の半分が0.5Pc1に達する時点tc2(すなわち定常の光量Pc1に対する割合が50%に達する時点)は時刻tc0と同じであるとみなせる。
【0063】
この場合、まず、最も立ち上がり時間が長いLD21aの発光開始時刻ta0が光出力の制御開始時刻tSに設定される。そして、赤色LD21aに駆動電流Ia1が印加されて発光が開始される。緑色LD21bには、赤色LD21aの発光開始時刻ta0から時間TB2(=(TA-TB)/2)後の時刻tb0に駆動電流Ib1が印加されて、緑色LD21bの発光が開始される。青色LD21cは立ち上がり時間TCをほとんど要しない(すなわちTC≒0)である。そのため、青色LD21cには、発光開始時刻tSから時間TC2(=TA/2)後の時刻ta2に駆動電流Ic1が印加されて、青色LD21cの発光が開始される。
【0064】
なお、本実施形態では時刻ta2、tb2、tc2を同じ時点にした例を説明したが、本発明はこの例示に限定されない。時刻tb2、tc2は、時刻ta2よりも遅く且つ時刻ta1よりも早い時点としてもよい。すなわち、立ち上がり時間TA、TB、TCの時間差に基づいて、LD21aの光量が第1光量Pa1に対して所定割合に達する時点と、LD21b、21cの光量がそれぞれ第1光量Pb1、Pc1に対して上記所定割合に達する時点とを同じにしてもよい。
【0065】
このようにしても、LD21aの発光開始時刻ta0から時刻ta1までの期間TAにおいて走査レーザ光300に生じる色ムラは、各LD21a~LD21cを同時発光する場合(図7参照)と比較してより大幅に軽減できる。
【0066】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、立ち上がり時間TAが最も長い赤色LD21a以外の緑色LD21b、青色LD21cに印加する駆動電流Ib1、Ic1を段階的に増加させることによって、走査レーザ光300に生じる色ムラを軽減する。それ以外は第1実施形態と同様である。以下では、第1及び第2実施形態と異なる構成について説明する。また、第1及び第2実施形態と同様の構成部には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図11は、第3実施形態に係るLD21a~21cの光出力制御の一例を示すグラフである。なお、図11は、たとえばLD21a~21cが光量0の状態から白色表示を行う場合でのLD21a~21cの光出力の応答特性を示している。また、図11では、駆動電流Ia1、Ib1、Ic1の印加開始時刻ta0、tb0、tc0はそれぞれ同じ時刻tSである。時刻tS~tEまでの期間において赤色LD21aには、一定の駆動電流Ia1が印加される。一方、同期間において緑色LD21b及び青色LD21cには2段階に分けて増加する駆動電流が印加される。ただし、この場合も、LD21aから定常の光量Pa1の光を出力させる駆動電流Ia1をLD21aに印加する時点ta0は、他のLD21b、21cからそれぞれ定常の光量Pb1、Pc1の光を出力させる駆動電流Ib1、Ic1を該LD21b、21cにそれぞれ印加する時点tb2a、tc2aよりも早くされる。
【0068】
すなわち、光出力制御部582は緑色LD21bに対し、時刻tb0(=tS)にて定常の光量Pb1未満の光量(たとえば0.5Pb1)に対応する電流値(たとえば0.5Ib1)の駆動電流を印加する。その後、光出力制御部582はLD21bに対し、LD21aの光量が定常値の半分0.5Pa1となる時刻tb2a(=ta0+TA/2)において、定常の光量Pb1に対応する電流値Ib1の駆動電流を印加する。
【0069】
同様に、光出力制御部582はLD21cに対し、時刻tc0(=tS)にて定常の光量Pc1未満の光量(たとえば0.5Pc1)に対応する電流値(たとえば0.5Ic1)の駆動電流を印加する。その後、光出力制御部582はLD21cに対し、LD21aの光量が定常値の半分0.5Pa1となる時刻tc2a(=ta0+TA/2)において、定常の光量Pc1に対応する電流値Ic1の駆動電流を印加する。
【0070】
なお、駆動電流Ib1、Ic1を2段階で増加させる場合、図11のように、LD21b、LD21cに印加する電流値を増加させる時刻tb2a、tc2aはLD21aが定常の光量の半分0.5Pa1となる時刻ta2(=tS+TA/2)と同じ時刻またはその前後であることが望ましい。こうすれば、LD21aの立ち上がり時間TA(すなわち時刻ta0から時刻ta1までの期間)におけるLD21b、LD21cの光出力変化をLD21aの光出力変化に近づけることができる。
【0071】
<第3実施形態の変形例>
図12は、第3実施形態の変形例に係るLD21a~21cの光出力制御の一例を示すグラフである。なお、図12は、たとえばLD21a~21cが光量0の状態から白色表示を行う場合でのLD21a~21cの光出力の応答特性を示している。図12に示すように、緑色LD21bに印加する駆動電流は電流値Pb1まで3以上の複数の段階に分けて増加してもよい。同様に、青色LD21cに印加する駆動電流も電流値Pc1まで3以上の複数の段階に分けて増加してもよい。ただし、この場合も、LD21aから定常の光量Pa1の光を出力させる駆動電流Ia1をLD21aに印加する時点ta0は、他のLD21b、21cからそれぞれ定常の光量Pb1、Pc1の光を出力させる駆動電流Ib1、Ic1を該LD21b、21cにそれぞれ印加する時点tb1、tc1よりも早くされる。
【0072】
さらに、図11及び図12のように、LD21b、LD21cに印加する電流値を複数の段階に分けて増加させる場合、各段階における電流値の増加量は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、増加するタイミングの間隔は一定であってもよいし異なっていてもよい。これらの増加量及び増加するタイミングは、立ち上がり時間TA間におけるLD21aの光出力変化(すなわち光量の増加傾向)に近似させて設定することが好ましい。このようにすれば、LD21aの立ち上がり時間TAにおけるLD21b、LD21cの光出力変化をLD21aの光出力変化により近づけて近似させることができる。従って、LD21a~21cの発光開始から全てのLD21a~21cが定常の光量となる期間において走査レーザ光300に生じる色ムラ(たとえばホワイトバランスの崩れ)の発生を大幅に抑制或いは防止することができる。
【0073】
<第1~第3実施形態のまとめ>
以上に説明した第1~第3実施形態によれば、プロジェクタユニット1は、複数のLD21a~21cと、光出力制御ユニットと、を備える。光出力制御ユニットは、複数のLD21a~21cの光出力を制御する光出力制御部582を備える。複数のLD21a~21cによって光量が0の状態から白色表示を行う場合、光出力制御部582は、複数のLD21a~21cのうち、白色表示の光量Pa1を出力するまでに要する立ち上がり時間TAが最も長いLD21aから白色表示の光量Pa1の光を出力させる駆動電流Ia1を該LD21aに印加する時点ta0を他のLD21b、21cから白色表示の光量Pb1、Pc1の光を出力させる駆動電流Ib1、Ic1を該LD21b、21cに印加する時点(たとえば図8及び図10のtb0、tc0、図11のtb2a、tc2a、図12のtb1、tc1)よりも早くする。(第11の構成)
【0074】
上記第11の構成によれば、LD21a~21cのうち、白色表示の光量Pa1を出力するまでに要する立ち上がり時間TAが最も長いLD21aから白色表示の光量Pa1の光を出力させる駆動電流Ia1を該LD21aに印加する時点ta0は、他のLD21b、21cから白色表示の光量Pb1、Pc1の光を出力させる駆動電流Ib1、Ic1を該LD21b、21cに印加する時点(たとえば図8及び図10のtb0、tc0、図11のtb2a、tc2a、図12のtb1、tc1)よりも早くされる。そのため、LD21aが白色表示の光量Pa1の光を出力する時点ta1をLD21b、21cが白色表示の光量Pb1、Pc1の光を出力する時点tb1、tc1に近づけることができる。従って、複数のLD21a~21cが白色表示を行う際、LD21a~21c毎の発光遅延の違いにより発生する色ムラを改善することができる。
【0075】
また、発光色の異なる複数のLD21a~21cの上記立ち上がり時間TAにおける光300の色ムラを改善できるので、該光300の色調のバランス(たとえばホワイトバランス)の劣化も抑制できる。
【0076】
また、上記第11の構成のプロジェクタユニット1の上記光出力制御ユニットにおいて、光出力制御部582は、LD21a~21cの各々の立ち上がり時間TA、TB、TCの時間差に基づく光出力の制御により、LD21aの光量が白色表示の光量Pa1に達する時点ta1と、他のLD21b、21cの光量が白色表示の光量Pb1、Pc1に達する時点tb1,tc1とを同じにしてもよい。(第12の構成)
【0077】
上記第12の構成によれば、LD21aが白色表示の光量Pa1の光を出力する時点ta1と、LD21b、21cが白色表示の光量Pb1、Pc1の光を出力する時点tb1、tc1とが同じになるように光出力制御される。そのため、LD21a~21cから出力される光300の立ち上がり時間TAにおける色ムラをより改善することができる。
【0078】
或いは、上記第11の構成のプロジェクタユニット1の上記光出力制御ユニットにおいて、光出力制御部582は、複数のLD21a~21cの各々の立ち上がり時間TA、TB、TCの時間差に基づいて、LD21aの光量が白色表示の光量Pa1に対して所定割合に達する時点と、LD21b、21cの光量がそれぞれ白色表示の光量Pb1、Pc1に対して上記所定割合に達する時点とを同じにしてもよい。(第13の構成)
【0079】
さらに、上記第13の構成において、上記所定割合は50%であってもよい。(第14の構成)
【0080】
上記第13、及び第14の構成によれば、LD21aの立ち上がり時間TAにおける時間平均的な色ムラを改善することができる。従って、複数のLD21a~21cから出力される光300の色調のバランス(たとえばホワイトバランス)の劣化も抑制できる。
【0081】
また、上記第11~第14のいずれかの構成のプロジェクタユニット1の上記光出力制御ユニットにおいて、光出力制御部582は、白色表示の光量Pb1、Pc1未満の光量(たとえば0.5Pb1、0.5Pc1)の光出力をLD21b、21cにさせる第1電流値(たとえば0.5Ib1、0.5Ic1)の駆動電流をLD21b、21cに印加した後、白色表示の光量Pb1、Pc1の光出力をLD21b、21cにさせる第2電流値Ib1、Ic1の駆動電流をLD21b、21cに印加してもよい。(第15の構成)
【0082】
上記第15の構成によれば、LD21b、21cは、白色表示の光量Pb1、Pc1よりも低い光量(たとえば0.5Pb1、0.5Pc1)の光出力を行った後、白色表示の光量Pb1、Pc1の光出力を行う。従って、発光開始から白色表示の光量Pb1、Pc1の光出力を行うまでの期間TB、TCにおけるLD21b、21cの光量変化を上記立ち上がり時間TAにおけるLD21aの光量変化に近づけることができる。よって、複数のLD21a~21cから出力される光300の色ムラ及び色調のバランス劣化をより低減することができる。
【0083】
また、上記第11~第15のいずれかの構成のプロジェクタユニット1の上記光出力制御ユニットにおいて、光出力制御部582はLD21b、21cの駆動電流を白色表示の光量Pb1、Pc1の光をLD21b、21cから出力させる電流値Ib1、Ic1まで複数の段階に分けて増加させる構成としてもよい(図11図12参照)。(第16の構成)
【0084】
上記第16の構成によれば、発光開始から白色表示の光量Pb1、Pc1の光出力を行うまでの期間TB、TCにおけるLD21b、21cの光量変化を上記立ち上がり時間TAにおけるLD21aの光量変化にさらに近づけることができる。従って、複数のLD21a~21cから出力される光300の色ムラ及び色調のバランス劣化をさらに低減することができる。
【0085】
また、上記第11~第16のいずれかの構成のプロジェクタユニット1の上記光出力制御ユニットは、複数のLD21a~21cの各々の光量を検出するPD23a~23cの検出結果に基づいて複数のLD21a~21cの各々の立ち上がり時間TA、TB、TCを算出する算出部583をさらに備えてもよい。(第17の構成)
【0086】
上記第17の構成によれば、複数のLD21a~21cの各々の光量を適宜検出でき、光出力制御部582は該検出結果に基づく立ち上がり時間TA、TB、TCを用いて複数のLD21a~21cの光出力を制御できる。従って、たとえば素子温度の変化又は素子の劣化などによって、各LD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCが変化しても、光出力制御部582は該変化に応じた光出力制御を行うことができる。
【0087】
さらに、上記第17の構成のプロジェクタユニット1の上記光出力制御ユニットにおいて、光出力制御部582は、投射面102aに投射及び走査されて該投射面102a上に映像を形成する走査レーザ光300を複数のLD21a~21cから出力させ、映像が形成されない投射面102a上の無効投射領域102cを走査レーザ光300が走査する際、光出力制御部582は複数のLD21a~21cを発光させ、算出部583は走査レーザ光300が無効投射領域102cを走査する際のPD23a~23cの検出結果に基づいて立ち上がり時間TA、TB、TCを算出させてもよい。(第18の構成)
【0088】
上記第18の構成によれば、走査レーザ光300が投射面102a上の無効投射領域102cを走査する際に複数のLD21a~21cの各々の光量を適宜検出でき、その結果に基づいて各LD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCを算出できる。従って、各LD21a~21cの実際の状態に適した光出力の制御を行うことによって、走査レーザ光300の色ムラを改善でき、投射面102aに形成される映像の品質を向上させることができる。
【0089】
また、上記第11~第18のいずれかの構成のプロジェクタユニット1の上記光出力制御ユニットにおいて、複数のLD21a~21cの光出力により形成される映像の映像情報を格納するメモリ(不図示)をさらに備え、光出力制御部582は、映像情報を解析し、該解析の結果に基づいて複数のLD21a~21cの光出力を制御する構成としてもよい。(第19の構成)
【0090】
上記第19の構成によれば、投射面102a上に形成される映像の映像情報の解析結果に基づいてLD21a~21cの光出力を制御できる。
【0091】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態では、第1実施形態と異なり、往路の走査レーザ光300aにおいて複数のLD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCに起因して光量が不足する部分を、復路の走査レーザ光300bの光量で補完する。以下では、第1実施形態と異なる構成について説明する。また、第1~第3実施形態と同様の構成部には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0092】
図13は、連続して往復走査される走査レーザ光300の走査範囲を局所的に示す模式図である。図13は、たとえば図5の実線Aで囲まれた投射面102a上の範囲を示している。図13に示すように、各走査レーザ光300のY方向の走査ピッチ(すなわち走査間隔)は、往路の走査レーザ光300aのスポット径302a、及び、復路の走査レーザ光300bのスポット径302bよりも小さい。そのため、連続して往復走査される走査レーザ光300a、300bの一部は互いに重なる。
【0093】
図13の斜線部はそれぞれ往路の走査レーザ光300aの走査範囲301a、復路の走査レーザ光300bの走査範囲301bであり、両者は重複走査範囲301cで重なっている。また、以下では、各走査レーザ光300a、300bのビームスポット302a、302bのX方向における中心位置を走査位置と呼ぶ。第1走査位置H1は、往路の走査レーザ光300aの発光開始時点での走査位置であり、復路の走査レーザ光300bの発光停止時点での走査位置である。また、第2走査位置H2は、往路の走査レーザ光300aの発光停止時点での走査位置であり、復路の走査レーザ光300bの発光開始時点での走査位置である。
【0094】
ここで、前述のように複数のLD21a~21cはそれぞれ発光開始時に立ち上がり時間TA、TB、TCを有している。そのため、走査レーザ光300には発光時の走査位置から立ち上がり時間経過後の所定位置までの間で色ムラが発生する。本発明では、連続して往復走査される走査レーザ光300a、300bの一部が重なり合う領域(すなわち重複走査範囲301c)において低下している光量を互いに補完して、このような色ムラを軽減又は防止する。すなわち、往路の走査レーザ光300aにおいて複数のLD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCに起因して光量が不足する部分を、復路の走査レーザ光300bの光量で補完する。同様に、復路の走査レーザ光300bにおいて複数のLD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCに起因して光量が不足する部分を、往路の走査レーザ光300aの光量で補完する。
【0095】
以下では、光量の平均化を利用して走査レーザ光300aの不足光量を補う原理を説明するが、この原理を理解し易くするため、走査レーザ光300の赤色成分(すなわち赤色LD21a)の光出力制御について主に説明する。但し、走査レーザ光300の他の色成分(すなわち緑色LD21b、青色LD21c)の光出力制御も同様に行われる。
【0096】
まず、往路及び復路の走査レーザ光300a、300bの光出力は第1走査位置H1及び第2走査位置H2間において同様に制御される。図14は、第4実施形態における赤色LD21aの光出力制御の一例を示すグラフである。図14は、往路及び復路の走査レーザ光300a、300bの発光開始から発光停止までの間の赤色LD21aの光出力制御を示している。
【0097】
図14において、時点tSは、投射面102に映像情報に基づく投射画像を形成するための走査レーザ光300の赤色成分の投射(すなわちLD21aの発光)が開始される時点である。時点tSは、往路の走査レーザ光300aのビームスポット302aのX方向の中心位置が第1走査位置H1にある時点に対応し、復路の走査レーザ光300bのビームスポット302bのX方向の中心位置が第2走査位置H2にある時点に対応する。また、時点tEはLD21aの発光を停止する時点である。時点tEは、往路のビームスポット302aのX方向の中心位置が第2走査位置H2にある時点に対応し、復路のビームスポット302bのX方向の中心位置が第1走査位置H1にある時点に対応する。
【0098】
また、時点ta1は、時点tSから立ち上がり時間TA後の時点であり、LD21aの光出力が一定の駆動電流Ia1に対応する定常の光量Pa1に達する時点である。時点ta3は時点tEよりも立ち上がり時間TAと同じ時間前の時点である。時点ta4は、時点tEよりも補光時間ΔTa前の時点であり、光量Pa1よりも補光光量ΔPa大きい光量Pa2の光をLD21aから出力させる時点である。LD21aには、時点tS~ta4間において電流値Ia1の駆動電流が印加され、時点ta4~tE間において電流値Ia2の駆動電流が印加される。図14では、補光時間ΔTaをたとえば0.5TAとし、補正光量ΔPaをたとえば0.5Pa1としている。ただし、これらの例示に限定されず、補光時間ΔTaは立ち上がり時間TA以下であればよく(0<ΔTa≦TA)、光量Pa2は光量Pa1の2倍以下であればよい(すなわち、ΔPa=Pa2-Pa1において0<ΔPa≦Pa1)。
【0099】
次に、図14のような光出力制御を行った場合に投射面102aを見た人間が感じる第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量を説明する。なお、以下では、図14と同様に走査レーザ光300の赤色成分の見た目の光量について説明するが、他の色成分(すなわち緑色成分、青色成分)の見た目の光量も同様に感じられることは言うまでもないであろう。
【0100】
図15A図15Cは、第4実施形態における第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量を説明するための図である。図15Aは、第4実施形態において第1走査位置H1から第2走査位置H2に走査される往路の走査レーザ光300aの光出力変化を示す図である。図15Bは、第4実施形態において第2走査位置H2から第1走査位置H1に走査される復路の走査レーザ光300bの光出力変化を示す図である。図15Cは、第4実施形態における第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量変化を示す図である。
【0101】
なお、図15A図15Cにおいてグラフの横軸は、図14とは異なり、走査レーザ光300の走査位置を示していることに注意すべきである。そのため、往路の走査レーザ光300aに係る図15Aの光出力及び駆動電流のグラフ形状、及び横軸の方向は、復路の走査レーザ光300bに係る図15Bのそれらとは反転している。また、図15Cのグラフは、前述の光量の平均化の効果によって人間が感じる第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の重複走査範囲301C(図13参照)における見た目の光量を表している。
【0102】
走査位置H3は、第1走査位置H1での発光開始から立ち上がり時間TA後での往路の走査レーザ光300aの走査位置を示す。また、走査位置H6は、第2走査位置H2での発光停止よりも補光時間ΔTa前での往路の走査レーザ光300aの走査位置を示す。往路の走査レーザ光300aにおいて、走査位置H1~H3間は立ち上げ時間TAにおける走査範囲HA(以下、立上走査範囲HAと呼ぶ)に対応し、走査位置H2~H6間は発光停止前の補光時間ΔTaにおける走査範囲(以下、補光走査範囲ΔHaと呼ぶ)に対応している。
【0103】
また、走査位置H4は、第2走査位置H2での発光開始から立ち上がり時間TA後での復路の走査レーザ光300bの走査位置を示す。また、走査位置H5は、第1走査位置H1での発光停止よりも補光時間ΔTa前での復路の走査レーザ光300bの走査位置を示す。復路の走査レーザ光300bにおいて、走査位置H2~H4間は立上走査範囲HAに対応し、走査位置H1~H5間は補光走査範囲ΔHaに対応している。
【0104】
往路及び復路の走査レーザ光300a、300bにおいて、補光走査範囲ΔHaでの光量Pa2は駆動電流Ia1に対応する光量Pa1よりも補光光量ΔPa大きくなっている。また、往路の走査レーザ光300aでの走査位置H1~H3間、及び、復路の走査レーザ光300bでの走査位置H2~H4間の距離は同じHAである。また、往路の走査レーザ光300aでの走査位置H2~H6間、及び、復路の走査レーザ光300bでの走査位置H1~H5間のX方向の距離は同じΔHaである。前述のように0<ΔTa≦TAであるため、距離ΔHaは距離HA以下とされる(0<ΔHa≦HA)。
【0105】
往路及び復路の走査レーザ光300a、300bが走査されると、人間の視覚では、走査位置H1~H2間の光量は図15Cのグラフのように感じられる。すなわち、往路の走査レーザ光300aの立上走査範囲HA(走査位置H1~H3間)で不足する光量は復路の走査レーザ光300bの補光走査範囲ΔHa(走査位置H1~H5間)の補正光量ΔPaで補われる。また、復路の走査レーザ光300bの立上走査範囲HA(走査位置H2~H4間)で不足する光量は往路の走査レーザ光300aの補光走査範囲ΔHa(走査位置H2~H6間)の補正光量ΔPaで補われる。従って、走査位置H1~H3間と走査位置H2~H4間とにおいて人間が視覚で感じる光量を、定常の光量Pa1に近づけることができる。よって、LD21aの発光開始時の発光遅延に起因する光量の低下を改善することができる。
【0106】
まず、LD21a~21cの光出力制御処理について説明する。図16は、第4実施形態に係るLD21a~21cの光出力制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、下記の処理において、S201~S204はリトレース期間中に行われ、S205はトレース期間中に行われる。なお、図16に例示される光出力制御処理は、後述する第5及び第6実施形態にも適用される。
【0107】
まず、リトレース期間において、走査レーザ光300の光軸が無効投射領域102cを走査する際に、光出力制御部582は駆動電流Ia1~Ic1の印加によりLD21a~21cを所定の光量(たとえばPa1、Pb1、Pc1)で発光させる(S201)。なお、駆動電流Ia1~Ic1の印加時間はそれぞれ、各LD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCよりも長い時間長であればよい。各LD21a~21cの光出力はそれぞれPD23a~23cで検出される(S202)。算出部583は、PD23a~23cの検出結果に基づいて、各LD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCを算出する(S203)。また、光出力制御部582は、映像処理部581から出力される映像データをメモリ(不図示)に取り込み、該映像データに基づいてトレース期間にて投射面102aに投射する投射画像の画像解析を行う(S204)。すなわち、トレース期間で形成する投射画像の色情報、及び輝度情報などを解析する。
【0108】
次に、トレース期間において、光出力制御部582は、画像解析の結果、算出部583の算出結果、及び記憶部57から読みだした複数のLD21a~21cの光出力補正情報などに基づいて、複数のLD21a~21cの光出力制御を行う(S205)。なお、光出力補正情報は、記憶部57に格納されており、複数のLD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCにおける光量不足を補償するために用いられるデータ(たとえば、後述する補光時間ΔTa及び補正光量ΔPaなど)を格納している情報である。そして、処理はS201に戻る。
【0109】
以上では、往路及び復路の走査レーザ光300a、300bの光出力が重複走査範囲301c(図13参照)にて平均化されることにより、定常の光量Pa1、Pb1、Pc1を有する理想の光出力が行われる場合について説明した。図17は、定常の光量Pa1の光出力を行う場合でのLD21aの理想の光出力変化と往路及び復路の走査レーザ光300a、300bでの実際の光出力変化とを示す図である。なお、図17はLD21aの走査レーザ光300の光出力変化を示している。LD21b、LD21cの場合も同様であるため、これらの説明は割愛する。また、図17の上段のグラフは理想の光出力における光量変化を示し、中段のグラフは第1走査位置H1から第2走査位置H2に走査される往路の走査レーザ光300aでの実際の光出力変化を示し、下段のグラフは第2走査位置H2から第1走査位置H1に走査される復路の走査レーザ光300bでの実際の光出力変化を示す。
【0110】
図17の上段のグラフに示すように、第1及び第2走査位置H1、H2における理想の光出力の立ち上がりはどちらも急激に増加している。このような光出力を行う場合、第1及び第2走査位置H1、H2における実際の光出力での発光開始の際の立ち上りを急激に増加させ且つ発光停止の際の立ち下りを急激に減少させる必要がある。すなわち、発光開始の際には、発振閾値電流Is以上の駆動電流(後述の図24参照)をLD21aに供給して、走査レーザ光300を光量Pa1にまで急激に増加させる。また、発光停止の際には、LD21aに供給する駆動電流を発振閾値電流Is以上の電流値から発振閾値電流Is未満の電流値に減少させて、走査レーザ光300を光量Pa1から急激に減少させる。
【0111】
しかしながら、発光開始時に光量を急激に増加させると、発光遅延に起因する光量の低下(所謂、立ちなまり)が生じる。そのため、往路の走査レーザ光300aの立上走査範囲HA(走査位置H1~H3間)での光出力の光量は図17の中段のグラフに示すように不足して光量Pa1よりも低くなる。同様に、復路の走査レーザ光300bの立上走査範囲HA(走査位置H2~H4間)での光量も図17の下段のグラフに示すように不足して光量Pa1よりも低くなる。従って、往路の走査レーザ光300aの補光走査範囲ΔHa(走査位置H2~H6間)では光量Pa2=(Pa1+ΔPa)で光出力を行い、復路の走査レーザ光300bの補光走査範囲ΔHa(走査位置H1~H5間)では光量Pa2で光出力を行う。このような光出力を行うことにより、往路の走査レーザ光300aの立上走査範囲HA(走査位置H1~H3間)で不足する光量は、復路の走査レーザ光300bの補正光量ΔPaと平均化されることにより補われる。また、復路の走査レーザ光300bの立上走査範囲HA(走査位置H2~H4間)で不足する光量は、往路の走査レーザ光300aの補正光量ΔPaと平均化されることにより補われる。従って、図17の上段のグラフに示す理想の光出力は、重複走査範囲301c(図13参照)における往路及び復路の走査レーザ光300a、300bの光出力の平均化により実現される。
【0112】
なお、図17の例示とは異なり、第1及び第2走査位置H1、H2のうちの少なくとも一方での理想の光出力の立ち上がりが実際の光出力で発光遅延が発生しない程度になだらかであれば、該一方の走査位置で発光が開始される実際の走査レーザ光300では発光遅延が発生しない。従って、該一方の走査位置での発光停止の際の立ち下り(光量の減少)も同程度になだらかにできる。以下に、これらの場合について説明する。
【0113】
<第4実施形態の変形例>
まず、第1走査位置H1側での理想の光出力の立ち上がりがなだらかになる場合について説明する。図18は、第1走査位置H1側での立上走査範囲HA1(走査位置H1~H0a間)で光出力をなだらかに立ち上げる場合でのLD21aの理想の光出力変化と往路及び復路での実際の光出力変化とを示す図である。なお、図18は、走査レーザ光300の投射面102上の走査方向での走査位置に対するLD21aの光出力の光量変化を示している。LD21b、LD21cの場合も同様であるため、これらの説明は割愛する。また、図18の上段のグラフは理想の光出力における光量変化を示し、中段のグラフは第1走査位置から第2走査位置に走査される往路の走査レーザ光300aでの実際の光出力変化を示し、下段のグラフは第2走査位置から第1走査位置に走査される復路の走査レーザ光300bでの実際の光出力変化を示す。
【0114】
図18の上段のグラフに示すように、走査位置H1側での理想の光出力の立ち上がりは、その光量が0から定常の光量Pa1に達するまでの立上走査範囲HA1(走査位置H1~H0a間)ではなだらかに変化する。すなわち、立上走査範囲HA1の幅(走査距離)は実際の走査レーザ光300で発光遅延が発生した場合での立上走査範囲HAの幅よりも広い。言い換えると、第1走査位置H1側において、理想の光出力の立ち上がりは実際の光出力での発光遅延に起因する立ち上がり時間TAよりも遅くなっている。このような場合、往路の走査レーザ光300aの立ち上がり(走査位置H1~H0a間の光出力変化)では、発光遅延が発生せず、それに起因する光量の不足も発生しない。そのため、往路の走査レーザ光300aの発光開始時の光出力は理想の光出力と同程度になだらかに変化する。また、復路の走査レーザ光300bの発光停止前の走査位置H1~H0a間での光出力も理想の光出力と同様になだらかに変化する。
【0115】
一方、図18において、第2走査位置H2での理想の光出力の立ち上がりは図17と同様に急激に増加している。このような場合、往路の走査レーザ光300aの立ち下がりを急激に減少させる。また、復路の走査レーザ光300bの立ち上がりは急激に増加させこととなるが、発光遅延に起因する光量の低下(所謂、立ちなまり)が生じる。そのため、復路の走査レーザ光300bの立上走査範囲HA(走査位置H2~H4間)での光量は図18の下段のグラフに示すように不足して光量Pa1よりも低くなる。従って、往路の走査レーザ光300aの発光停止直前の補光走査範囲ΔHa(走査位置H2~H6間)では光量Pa2=(Pa1+ΔPa)で光出力を行うことにより、復路の走査レーザ光300bの立上走査範囲HA(走査位置H2~H4間)で不足する光量を往路の走査レーザ光300aの補正光量ΔPaで補う。すなわち、図18の上段のグラフに示す第2走査位置H2での理想の光出力は、重複走査範囲301c(図13参照)における往路の走査レーザ光300aの発光停止直前の走査範囲H2~H4での光出力と復路の走査レーザ光300bの発光開始直後の走査範囲H2~H4での光出力との平均化により実現される。
【0116】
<第4実施形態の他の変形例>
次に、第2走査位置H2側での理想の光出力の立ち上がりがなだらかになる場合について説明する。図19は、第2走査位置H2側での立上走査範囲HA2(走査位置H2~H0b間)で光出力をなだらかに立ち上げる場合でのLD21aの理想の光出力変化と往路及び復路での実際の光出力変化とを示す図である。なお、図19は、走査レーザ光300の投射面102上の走査方向での走査位置に対するLD21aの光出力の光量変化を示している。LD21b、LD21cの場合も同様であるため、これらの説明は割愛する。また、図19の上段のグラフは理想の光出力における光量変化を示し、中段のグラフは第1走査位置から第2走査位置に走査される往路の走査レーザ光300aでの実際の光出力変化を示し、下段のグラフは第2走査位置から第1走査位置に走査される復路の走査レーザ光300bでの実際の光出力変化を示す。
【0117】
図19の上段のグラフに示すように、第1走査位置H1での理想の光出力の立ち上がりは図17と同様に急激に増加している。このような場合、往路の走査レーザ光300aの立ち上がりは急激に増加させることとなるが、発光遅延に起因する光量の低下(所謂、立ちなまり)が生じる。そのため、往路の走査レーザ光300aの立上走査範囲HA(走査位置H1~H3間)での光量は図19の中段のグラフに示すように不足して光量Pa1よりも低くなる。従って、復路の走査レーザ光300bの発光停止直前の補光走査範囲ΔHa(走査位置H1~H5間)では光量Pa2=(Pa1+ΔPa)で光出力を行うことにより、往路の走査レーザ光300aの立上走査範囲HA(走査位置H1~H3間)で不足する光量を復路の走査レーザ光300bの補正光量ΔPaで補う。すなわち、図19の上段のグラフに示す第1走査位置H1での理想の光出力は、重複走査範囲301c(図13参照)における往路の走査レーザ光300aの発光開始直後の走査範囲H1~H3での光出力と復路の走査レーザ光300bの発光停止直前の走査範囲H1~H3での光出力との平均化により実現される。
【0118】
一方、図19において、走査位置H2側での理想の光出力の立ち上がりは、その光量が0からレーザ発振モードでの一定の光量Pa1に達するまでの立上走査範囲HA2(走査位置H2~H0b間)ではなだらかに変化する。すなわち、立上走査範囲HA2の幅(走査距離)は実際の走査レーザ光300で発光遅延が発生した場合での立上走査範囲HAの幅よりも広い。言い換えると、第2走査位置H2側において、理想の光出力の立ち上がりは実際の光出力での発光遅延に起因する立ち上がり時間TAよりも遅くなっている。このような光出力を行う場合、復路の走査レーザ光300bの立ち上がり(走査位置H2~H0b間の光出力変化)では、発光遅延が発生せず、それに起因する光量の不足も発生しない。そのため、復路の走査レーザ光300bの発光開始時の光出力は理想の光出力と同程度になだらかに変化する。また、往路の走査レーザ光300aの発光停止前の走査位置H2~H0b間での光出力も理想の光出力と同様になだらかに変化する。
【0119】
なお、第1走査位置H1側及び第2走査位置H2側の両方での理想の光出力の立ち上がりがなだらかになる場合には、実際の光出力での発光開始の際に発光遅延は生じない。そのため、往路及び復路の走査レーザ光300a、300bの光出力変化は理想の光出力変化と同じになる。
【0120】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態では、補正光量ΔPa及び補光時間ΔTaが、LD21a~21bの立ち上がり時間TA、TB、TCにおいて不足する光量の累積量S1に応じて決定される。以下では、第4実施形態と異なる構成について説明する。また、第1~第4実施形態と同様の構成部には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0121】
図20は、第5実施形態における赤色LD21aの光出力制御の一例を示すグラフである。なお、以下では、LD21aの光出力制御を例に挙げて説明をしているが、他のLD21b、21cも同様に制御できる。
【0122】
図20では、往路及び復路の走査レーザ光300a、300bの発光開始から発光停止までの間の赤色LD21aの光出力制御を示している。図20において、不足量S1は立ち上がり時間TAにおいて発光遅延により不足(低下)した光量の累積量である。すなわち、不足量S1は、駆動電流Ia1に対応する定常の光量Pa1と実際の光量Paとの光量差(Pa1-Pa)の立ち上がり時間TAにおける時間積分量である。また、補正量S2は、補光時間ΔTaにおける補正光量ΔPaを時間積分した累積光量である。
【0123】
図20に示すように、LD21aの光出力は、補正量S2が不足量S1と同じになるように制御される。言い換えると、S1=S2=ΔPa×ΔTaを満たすように、補正光量ΔPa及び補光時間ΔTaが設定される。なお、その設定方法は特に限定しない。たとえば、この条件を満たす範囲内で補正光量ΔPa及び補光時間ΔTaを設定してもよい。或いは、補正光量ΔPa及び補光時間ΔTaのうちの一方を固定値とし、他方を上記条件に基づいて適宜決定してもよい。
【0124】
次に、図20のような光出力制御を行った場合に投射面102aを見た人間が感じる第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量を説明する。なお、以下では、図20と同様に走査レーザ光300の赤色成分の見た目の光量について説明するが、他の色成分(すなわち緑色成分、青色成分)の見た目の光量も同様に感じられることは言うまでもないであろう。
【0125】
図21A図21Cは、第5実施形態における第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量を説明するための図である。図21Aは、第5実施形態において第1走査位置H1から第2走査位置H2に走査される往路の走査レーザ光300aの光出力変化を示す図である。図21Bは、第5実施形態において第2走査位置H2から第1走査位置H1に走査される復路の走査レーザ光300bの光出力変化を示す図である。図21Cは、第5実施形態における第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量変化を示す図である。
【0126】
なお、図21A図21Cにおいてグラフの横軸は、図20とは異なり、走査レーザ光300のX方向の位置を示していることに注意すべきである。そのため、往路の走査レーザ光300aに係る図21Aの光出力及び駆動電流のグラフ形状、及び横軸の方向は、復路の走査レーザ光300bに係る図21Bのそれらとは反転している。また、図21Cのグラフは、前述の光量の平均化の効果によって人間が感じる第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の重複走査範囲301C(図13参照)における見た目の光量を表している。
【0127】
図21A及び図21Bにおいて、不足量s1は、立ち上がり時間TAにおいて発光遅延により不足した光量の走査距離HAに対する積分量であり、図20の不足量S1に対応している。また、補正量s2は、補光時間ΔTaにおける補正光量ΔPaの走査距離ΔHaに対する積分量であり、図20の補正量S2に対応している。
【0128】
往路及び復路の走査レーザ光300a、300bが走査されると、人間の視覚では、走査位置H1~H2間の光量は図21Cのグラフのように感じられる。すなわち、往路の走査レーザ光300aの立上走査範囲HA(すなわち走査位置H1~H3間)での不足量s1は復路の走査レーザ光300bの補光走査範囲ΔHa(すなわち走査位置H1~H5間)での補正量s2で補われる。また、復路の走査レーザ光300bの立上走査範囲HA(すなわち走査位置H2~H4間)での不足量s1は往路の走査レーザ光300aの補光走査範囲ΔHa(すなわち走査位置H2~H6間)での補正量s2で補われる。従って、走査位置H1~H3間と走査位置H2~H4間とにおいて人間が視覚で感じる光量を、定常の光量Pa1に近づけることができる。よって、LD21aの発光開始時の発光遅延に起因する光量の低下を改善することができる。
【0129】
なお、上述の例示では、図20における不足量S1が補正量S2と同じになるように、LD21aを制御しているが本発明はこの例示に限定されない。図21A図21Cにおける不足量s1が補正量s2と同じになるように、LD21aを制御してもよい。また、前述したように、緑色LD21b及び青色LD21cも同様に光出力制御される。従って、上述の光出力制御によって、往路及び復路の走査レーザ光300a、300bが重複する重複走査範囲301cのX方向のエッジ部分、すなわち、走査位置H1~H3間の走査範囲と走査位置H2~H5間の走査範囲における各LD21a~21cの発光遅延に起因する色ムラを軽減又は防止することができる。
【0130】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について説明する。なお、第6実施形態は、緑色LD21bを例示して説明するが、他のLD21a、21cについても同様である。図22は、第6実施形態における緑色LD21bの光出力制御の一例を示すグラフである。図22に示すように、第6実施形態では、緑色LD21bの立ち上がり時間TBを3つの分割時間ΔTbに等分割し、各分割時間ΔTbにおいて不足する光量を3段階の補正光量ΔPb1~ΔPb3に分けて補償する。以下では、第4及び第5実施形態と異なる構成について説明する。また、第1~第5実施形態と同様の構成部には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0131】
図22において、各分割時間ΔTbの時間長は同じである。時点tb5は時点tSからΔTb後の時点であり、光量Pb3の光がLD21bから出力される。時点tb6は時点tSから2ΔTb後の時点であり、光量Pb2の光がLD21bから出力される。時点tb1は時点tSから立ち上がり時間TB(=3ΔTb)後の時点であり、一定の駆動電流Ib1に対応する定常の光量Pb1の光がLD21bから出力される。なお、各光量は0<Pb3<Pb2<Pb1である。
【0132】
時点tb3は時点tEよりも3ΔTb前の時点であり、時点tb7は時点tEよりも2ΔTb前の時点であり、時点tb8は時点tEよりもΔTb前の時点である。時点tb3~時点tb7において光出力制御部582は、LD21bに駆動電流Ib2を印加し、光量Pb4(=Pb1+ΔPb1)の光をLD21bから出力させる。また、時点tb7~時点tb8において光出力制御部582は、LD21bに駆動電流Ib3を印加し、光量Pb5(=Pb4+ΔPb2)の光をLD21bから出力させる。また、時点tb8~時点tEでは、LD21bに駆動電流Ib4を印加し、光量Pb6(=Pb5+ΔPb3)の光をLD21bから出力させる。なお、各光量はPb1<Pb4<Pb5<Pb6である。
【0133】
また、各補正光量ΔPb1~ΔPb3はLD21bの立ち上がり時間TBにおける光出力変化に応じて決定される。特に、これらは各補正光量ΔPb1~ΔPb3の階段状の変化を立ち上がり時間TBにおける光出力変化に近づけることが好ましい。たとえば、時点tb3~時点tb7間の補正光量ΔPb1は、時点tb6~時点tb1間の光出力変化に応じて0<ΔPb1≦|Pb1-Pb2|の範囲内の数値に設定され、図22では|Pb1-Pb2|/2に設定されている。また、時点tb7~時点tb8間の補正光量ΔPb2は、時点tb5~時点tb6間の光出力変化に応じて0<ΔPb2≦|Pb2-Pb3|の範囲内の数値に設定され、図22では|Pb2-Pb3|/2に設定されている。また、時点tb8~時点tE間の補正光量ΔPb3は、時点tS~時点tb5間の光出力変化に応じて0<ΔPb3≦Pb3の範囲内の数値に設定され、図22では(Pb3)/2に設定されている。
【0134】
次に、図22のような光出力制御を行った場合に投射面102aを見た人間が感じる第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量を説明する。なお、以下では、図22と同様に走査レーザ光300の緑色成分の見た目の光量について説明するが、他の色成分(すなわち赤色成分、青色成分)の見た目の光量も同様に感じられることは言うまでもないであろう。
【0135】
図23A図23Cは、第6実施形態における第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量を説明するための図である。図23Aは、第6実施形態において第1走査位置H1から第2走査位置H2に走査される往路の走査レーザ光300aの光出力変化を示す図である。図23Bは、第6実施形態において第2走査位置H2から第1走査位置H1に走査される復路の走査レーザ光300bの光出力変化を示す図である。図23Cは、第6実施形態における第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量変化を示す図である。
【0136】
なお、図23A図23Cにおいてグラフの横軸は、図22とは異なり、走査レーザ光300のX方向の位置を示していることに注意すべきである。そのため、往路の走査レーザ光300aに係る図23Aの光出力及び駆動電流のグラフ形状、及び横軸の方向は、復路の走査レーザ光300bに係る図23Bのそれらとは反転している。また、図23Cでは、前述の光量の平均化の効果によって人間が感じる第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の重複走査範囲301C(図13参照)における見た目の光量を表している。
【0137】
第1走査位置H1は、LD21bの往路の走査レーザ光300aの発光開始時点での走査位置であり、LD21bの復路の走査レーザ光300bの発光停止時点での走査位置でもある。また、第2走査位置H2は、LD21bの往路の走査レーザ光300aの発光停止時点での走査位置であり、LD21bの復路の走査レーザ光300bの発光開始時点での走査位置でもある。走査位置H3は、往路の走査レーザ光300aにおいて第1走査位置H1での発光開始から立ち上がり時間TB後での走査位置であり、復路の走査レーザ光300bにおいて第1走査位置H1での発光停止よりも3ΔTb(=TB)前での走査位置でもある。また、走査位置H4は、往路の走査レーザ光300aにおいて第2走査位置H2での発光停止よりも3ΔTb(=TB)前での走査位置であり、復路の走査レーザ光300bにおいて第1走査位置H1での発光開始から立ち上がり時間TB後での走査位置でもある。
【0138】
LD21bの往路の走査レーザ光300aにおいて、走査位置H8は、第2走査位置H2での発光停止よりも2ΔTb前での走査位置を示す。走査位置H10は、第2走査位置H2での発光停止よりも分割時間ΔTb前での走査位置を示す。往路の走査レーザ光300aにおいて、走査位置H1~H3間は立上走査範囲HBに対応し、走査位置H2~H4間は補光走査範囲ΔHbに対応している。
【0139】
また、LD21bの復路の走査レーザ光300bにおいて、走査位置H7は、第1走査位置H1での発光停止よりも2ΔTb前での走査位置を示す。走査位置H10は、第2走査位置H2での発光停止よりも分割時間ΔTb前での走査位置を示す。復路の走査レーザ光300bにおいて、走査位置H2~H4間は立上走査範囲HBに対応し、走査位置H1~H3間は補光走査範囲ΔHbに対応している。
【0140】
往路の走査レーザ光300aでの走査位置H1~H3間、及び、復路の走査レーザ光300bでの走査位置H2~H4間の距離は同じHBである。また、往路の走査レーザ光300aでの走査位置H2~H10間、走査位置H8~H10間、及び走査位置H4~H8間と、復路の走査レーザ光300bでの走査位置H3~H7間、走査位置H7~H9間、及び走査位置H1~H9間とでのX方向の距離はいずれも同じΔHbである。
【0141】
往路及び復路の走査レーザ光300a、300bが走査されると、人間の視覚では、走査位置H1~H2間の光量は図23Cのグラフのように感じられる。すなわち、走査位置H1~H3間において、往路の走査レーザ光300aの立上走査範囲HBで不足する光量は復路の走査レーザ光300bの補光走査範囲ΔHbでの補正光量ΔPb1~ΔPb3によって均一に補われる。また、走査位置H2~H4間において、復路の走査レーザ光300bの立上走査範囲HBで不足する光量は往路の走査レーザ光300aの補光走査範囲ΔHbでの補正光量ΔPb1~ΔPb3によって均一に補われる。従って、走査位置H1~H3間と走査位置H2~H4間とにおいて人間が視覚で感じる光量を、一定の駆動電流Ib1に対応する定常の光量Pb1に近づけることができる。よって、LD21bの発光開始時の発光遅延に起因する光量の低下を改善することができる。
【0142】
また、前述したように、赤色LD21a及び青色LD21cも同様に光出力制御される。従って、上述の光出力制御によって、往路及び復路の走査レーザ光300a、300bが重複する重複走査範囲301cのX方向のエッジ部分、すなわち、走査位置H1~H3間の走査範囲と走査位置H2~H4間の走査範囲における各LD21a~21cの発光遅延に起因する色ムラを軽減又は防止することができる。
【0143】
なお、補正光量ΔPb1~ΔPb3は、図22及び図23A図23Cでは3段階に分割したが、この例示に限定されず、2又は4以上の複数の段階に分割してもよい。分割数が多くなるほど処理数は増えるが色ムラをより均一に精度良く改善することができる。
【0144】
<第7実施形態>
次に、第7実施形態について説明する。第7実施形態では、定常の光量Pa1~Pc1に対応する電流値Ia1、Ib1、Ic1の駆動電流を各LD21a~21cに印加する前に、各LD21a~21cの発振閾値電流Is未満の微小電流値Ipの予備電流を印加する。以下では、第4~第6実施形態と異なる構成について説明する。また、第1~第6実施形態と同様の構成部には同じ符号を付し、その説明を省略する。また、以下では、第7実施形態について、赤色LD21aの光出力制御を例に挙げて説明するが、他のLD21b、21cの光出力制御も同様に行うことができる。
【0145】
まず、赤色半導体レーザ素子21aの電流-光出力特性について説明する。図24は、赤色LD21aの駆動電流に対する光出力特性を示すグラフである。図24に示すように、素子温度が25度の場合、赤色LD21aは実線のグラフで描かれた電流-光出力特性に示す。実線のグラフの屈曲点に対応する電流値Isは赤色LD21aの発振閾値電流Isを示す。発振閾値電流Isは、赤色LD21aがレーザ発振モードのみで発光する電流値の下限を示す電流値であり、図3の電流値IBに対応する。すなわち、赤色LD21aは、発振閾値電流Is以上の電流値が印加されると、安定したレーザ発振動作により、比較的波長及び位相の揃ったコヒーレント光を出力する。一方、赤色LD21aは、発振閾値電流Is未満の電流値が印加されると、発光モードは変化して出射光の波長及び位相も不揃いになっていく。ただし、LD21aに発振閾値電流Is以上の駆動電流を印加する前に、発振閾値電流Is未満の電流値IpをLD21aに印加しておくと、発光遅延が抑制されて立ちあがり時間TAが格段に速くなる。本実施形態では、この現象を利用して、LD21a~LD21cの発光開始時の発光遅延に起因する光量の低下を改善している。すなわち、図5のような走査範囲での走査レーザ光300a、300bの発光開始直後の所定期間(後述する印加時間Tp)において、発振閾値電流Is未満の電流値Ipの予備電流をLD21a~21cに印加する。
【0146】
なお、電流値Ipは発振閾値電流Isから大きく離す必要はなく、僅かに小さい電流値であればよい。また、図24に示すように、LD21aの電流-光出力特性は素子温度、素子の劣化に起因して変化する。そのため、予備電流の電流値Ipはこれらの条件に対応する電流-光出力特性(特に発振閾値電流Is)に応じて決定される。
【0147】
図25は、第7実施形態における赤色LD21aの光出力制御の一例を示すグラフである。図25では、往路及び復路の走査レーザ光300a、300bの発光開始から発光停止までの間の赤色LD21aの光出力制御を示している。図25において、時点ta9は、時点tSから印加時間Tp後の時点であり、光量Pa1の光をLD21aから出力させる時点である。また、時点ta10は、時点tEよりも補光時間ΔTa(=Tp)前の時点であり、光量Pa1よりも補光光量ΔPa大きい光量Pa2の光をLD21aから出力させる時点である。
【0148】
LD21aには、発光開始直後の時点tS~ta9間の所定期間Tpにおいて電流値Ipの予備電流が印加される。また、時点ta9~ta10間では電流値Ia1の駆動電流が印加され、時点ta3~tE間では電流値Ia2の駆動電流が印加される。なお、電流値Ipの予備電流をLD21aに印加する印加時間Tpは、LD21aの立ち上がり時間TA以上であればよい。Tp≧TAであれば、時刻ta2において電流値Ia1(≫Ip)の駆動電流をLD21aに印加しても、発光遅延を大幅に抑制又は防止することができる。一方、Tp<TAにすると、時点ta2において発光遅延が発生してしまう。
【0149】
次に、図25のような光出力制御を行った場合に投射面102aを見た人間が感じる第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量を説明する。なお、以下では、図25と同様に走査レーザ光300の赤色成分の見た目の光量について説明するが、他の色成分(すなわち緑色成分、青色成分)の見た目の光量も同様に感じられることは言うまでもないであろう。
【0150】
図26A図26Cは、第7実施形態における第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量を説明するための図である。図26Aは、第7実施形態において第1走査位置H1から第2走査位置H2に走査される往路の走査レーザ光300aの光出力変化を示す図である。図26Bは、第7実施形態において第2走査位置H2から第1走査位置H1に走査される復路の走査レーザ光300bの光出力変化を示す図である。図26Cは、第7実施形態における第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の走査レーザ光300の見た目の光量変化を示す図である。
【0151】
なお、図26A図26Cにおいてグラフの横軸は、図25とは異なり、走査レーザ光300のX方向の位置を示していることに注意すべきである。そのため、往路の走査レーザ光300aに係る図26Aの光出力及び駆動電流のグラフ形状、及び横軸の方向は、復路の走査レーザ光300bに係る図26Bのそれらとは反転している。また、図26Cでは、前述の光量の平均化の効果によって人間が感じる第1走査位置H1及び第2走査位置H2間の重複走査範囲301C(図13参照)における見た目の光量を表している。
【0152】
走査位置H11は、往路の走査レーザ光300aにおいて第1走査位置H1での発光開始から印加時間Tp後での走査位置であり、復路の走査レーザ光300bにおいて第1走査位置H1での発光停止よりも補光時間ΔTa(=Tp)前での走査位置でもある。また、走査位置H12は、往路の走査レーザ光300aにおいて第2走査位置H2での発光停止よりも補光時間ΔTa前での走査位置であり、復路の走査レーザ光300bにおいて第2走査位置H2での発光開始から印加時間Tp後での走査位置でもある。往路の走査レーザ光300aにおいて、走査位置H1~H11間は印加時間Tpにおける走査範囲(以下、印加走査範囲と呼ぶ)に対応し、走査位置H2~H12間は発光停止前の補光時間ΔTaにおける走査範囲(すなわち補光走査範囲ΔHp)に対応している。また、復路の走査レーザ光300bにおいて、走査位置H2~H12間は印加時間Tpにおける印加走査範囲に対応し、走査位置H1~H11間は発光停止前の補光時間ΔTaにおける補光走査範囲ΔHpに対応している。
【0153】
往路及び復路の走査レーザ光300a、300bにおいて、補光走査範囲ΔHpでの光量Pa2は駆動電流Ia1に対応する光量Pa1よりも補光光量ΔPa大きくなっている。また、前述のようにΔTa=Tpである。そのため、往路の走査レーザ光300aでの走査位置H1~H11間、及び、復路の走査レーザ光300bでの走査位置H2~H12間の距離は同じHpである。また、往路の走査レーザ光300aでの走査位置H2~H12間、及び、復路の走査レーザ光300bでの走査位置H1~H11間のX方向の距離も同じHpである。
【0154】
往路及び復路の走査レーザ光300a、300bが走査されると、人間の視覚では、走査位置H1~H2間の光量は図26Cのグラフのように感じられる。すなわち、往路の走査レーザ光300aの印加走査範囲で不足する光量は復路の走査レーザ光300bの補光走査範囲ΔHpの補正光量ΔPaで補われる。また、復路の走査レーザ光300bの印加走査範囲で不足する光量は往路の走査レーザ光300aの補光走査範囲ΔHpの補正光量ΔPaで補われる。従って、走査位置H1~H11間と走査位置H2~H12間とにおいて人間が視覚で感じる光量を一定の駆動電流Ia1に対応する定常の光量Pa1に近づけることができ、走査位置H1~H3間における見た目の光量をPa1とすることも可能である。
【0155】
なお、本実施形態では、印加時間Tpにて電流値Ipの予備電流を印加する構成を全てのLD21a~21cに適用しているが、本発明はこの例示に限定されない。この構成は、複数のLD21a~21cのうちの少なくとも1つ(特に立ち上がり時間が最も長い赤色LD21a)に適用されてもよい。
【0156】
次に、LD21a~21cの光出力制御処理について説明する。図27は、第7実施形態に係るLD21a~21cの光出力制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、下記のS301~S305はリトレース期間中に行われ、S306はトレース期間中に行われる。
【0157】
まず、リトレース期間において、走査レーザ光300の光軸が無効投射領域102cを走査する際に、光出力制御部582は各LD21a~21cに所定の駆動電流Ia1~Ic1を印加して、LD21a~21cを所定の光量(たとえばPa1、Pb1、Pc1)で発光させる(S301)。なお、駆動電流Ia1~Ic1の印加時間はそれぞれ、各LD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCよりも長い時間長であればよい。各LD21a~21cの光出力はそれぞれPD23a~23cで検出される(S302)。算出部583は、PD23a~23cの検出結果に基づいて、各LD21a~21cの立ち上がり時間TA、TB、TCを算出する(S303)。さらに、算出部583は、S303の結果に基づいて各LD21a~21cに印加する電流値Ipの予備電流の印加時間Tpを設定する(S304)。また、光出力制御部582は、映像処理部581から出力される映像データをメモリ(不図示)に取り込み、該映像データに基づいてトレース期間にてコンバイナ102に投射する投射画像の画像解析を行う(S305)。すなわち、トレース期間で形成する投射画像の色情報、及び輝度情報などを解析する。
【0158】
次に、トレース期間において、光出力制御部582は、画像解析の結果、算出部583の算出結果、及び記憶部57から読みだした光出力補正情報などに基づいて、複数のLD21a~21cの光出力制御を行う(S306)。
【0159】
<第4~第7実施形態のまとめ>
以上に説明した第4~第7実施形態によれば、プロジェクタユニット101は、光量Pa1、Pb1、Pc1(第1光量)の走査レーザ光300を出力するLD21a~LD21cと、投射面102a上にて方向範囲を有して所定方向(たとえばX方向)に走査レーザ光300を往復走査するMEMSエンジン部3と、LD21a~LD21cの光出力を制御する光出力制御部582と、を備え、光出力制御部582は、発光停止の際に走査レーザ光300の光量を急激に減少させる場合、発光開始から発光停止までの間に走査レーザ光300が走査される走査範囲301a、301bのうちの発光停止位置直前の補光走査範囲ΔHaでの第2光量(Pa2、Pb4~6など)を光量Pa1、Pb1、Pc1よりも大きくする構成とされる。(第20の構成)
【0160】
上記第20の構成によれば、投射面102a上にて往復走査される走査レーザ光300において、発光停止の際に走査レーザ光300の光量を急激に減少させる場合、発光開始から発光停止までの間に走査レーザ光300が走査される走査範囲301a、301bのうちの発光停止位置直前の補光走査範囲ΔHaにおける光量Pa2、Pb4~6など(第2光量)が光量Pa1、Pb1、Pc1(第1光量)よりも大きくされる。ここで、走査レーザ光300は往復走査されるため、発光停止の際に走査レーザ光300の光量を急激に減少させる場合、通常、次の走査レーザ光300では発光開始の際に光量を急激に増加させることとなり、発光遅延に起因する光量の低下(所謂、立ちなまり)が生じる。一方、上記構成によれば、往路及び復路のうちの一方の走査レーザ光300a又は300bにて発光開始の際に発光遅延に起因して光量Pa1、Pb1、Pc1よりも低下した光量を他方の走査レーザ光300b又は300aの発光停止位置直前の補光走査範囲ΔHaでの光量Pa2、Pb4~6など(第2光量)で補うことができる。従って、人間が視覚で感じる走査レーザ光300の光量低下を軽減することができる。よって、LD21a~21cの発光開始時の発光遅延に起因する光量の低下を改善することができる。
【0161】
また、上記第20の構成のプロジェクタユニット101において、投射面102a上に形成される画像情報(映像データ)を格納するメモリ(不図示)をさらに備え、光出力制御部582は、画像情報を解析し、該解析の結果に基づいて光出力を制御する構成としてもよい。(第21の構成)
【0162】
上記第21の構成によれば、投射面102a上に形成される画像情報の解析結果に基づいてLD21a~21cの光出力を制御できる。
【0163】
また、上記第20又は第21の構成の上記構成のプロジェクタユニット101において、光出力制御部582は、発光開始から光量Pa1、Pb1、Pc1(第1光量)の光出力に達するまでの立ち上り時間TAよりも走査レーザ光300の光量の減少開始から発光停止までの立ち下り時間が短い場合、光量Pa2、Pb4~6など(第2光量)を光量Pa1、Pb1、Pc1よりも大きくする構成としてもよい。(第22の構成)
【0164】
上記第22の構成によれば、発光開始の際の立ち上り時間TAよりも発光停止の際の立ち下り時間が短い場合、発光停止の際に走査レーザ光300a又は300bの光量が急激に減少している。そのため、通常、次の走査レーザ光300b又は300aの発光開始の際には発光遅延に起因する光量の低下が発生するが、この光量の低下を光量Pa2、Pb4~6など(第2光量)で補うことができる。
【0165】
また、上記第20~第22のいずれかの構成のプロジェクタユニット101において、光出力制御部582は、往路の走査レーザ光300aでの走査範囲301aの発光開始位置及び発光停止位置をそれぞれ復路の走査レーザ光300bでの走査範囲301bの発光停止位置及び発光開始位置に対応させる構成としてもよい。(第23の構成)
【0166】
上記第23の構成によれば、往路及び復路のうちの一方の走査レーザ光300a又は300bにて発光開始の際に発光遅延に起因して光量Pa1、Pb1、Pc1(第1光量)よりも低下した光量を他方の走査レーザ光300b又は300aの第2光量(Pa2、Pb4~6など)でより確実に補うことができる。
【0167】
また、上記第23の構成のプロジェクタユニット101において、方向範囲を有する所定方向(たとえばX方向)において、往路の走査レーザ光300aでの補光走査範囲ΔHaは、復路の走査レーザ光300bにおいて発光開始から光量Pa1、Pb1、Pc1(第1光量)の光出力に達までの間に復路の走査レーザ光300bが走査される立上走査範囲HA、HBと重複する構成としてもよい。さらに、復路の走査レーザ光300bでの補光走査範囲ΔHaは、往路の走査レーザ光300aにおいて発光開始から光量Pa1、Pb1、Pc1の光出力に達までの間に往路の走査レーザ光300aが走査される立上走査範囲HA、HBと重複する構成としてもよい。(第24の構成)
【0168】
上記第24の構成によれば、補光走査範囲ΔHaを立上走査範囲HA、HBに重複させることができる。なお、補光走査範囲ΔHaでは走査レーザ光300の光量が光量Pa1、Pb1、Pc1(第1光量)よりも大きくなり、立上走査範囲HA、HBでは、発光遅延に起因して走査レーザ光300の光量が光量Pa1、Pb1、Pc1よりも低下する。従って、立上走査範囲HA、HBに光量Pa1、Pb1、Pc1よりも大きい光量の走査レーザ光300を確実に投射することができる。
【0169】
また、上記第23又は第24の構成のプロジェクタユニット101において、方向範囲を有する所定方向(たとえばX方向)において、往路の走査レーザ光300aでの補光走査範囲ΔHaでの走査距離は、復路の走査レーザ光300bでの立上走査範囲HA、HBでの走査距離以下である構成としてもよい。さらに、復路の走査レーザ光300bでの補光走査範囲ΔHaでの走査距離は、往路の走査レーザ光300aの立上走査範囲HA、HBでの走査距離以下である構成としてもよい。(第25の構成)
【0170】
上記第25の構成によれば、走査範囲301a、301bのうち、発光遅延に起因して光量が低下する立上走査範囲HA、HB以外の走査範囲に光量Pa1、Pb1、Pc1(第1光量)よりも大きい光量Pa2、Pb4~6など(第2光量)の走査レーザ光300を投射しないようにすることができる。
【0171】
また、上記第23~第25のいずれかの構成のプロジェクタユニット101において、光出力制御部582は、往路及び復路の走査レーザ光300a、300bにおける補光走査範囲ΔHaでの累積光量S2、s2をLD21a~21cの発光遅延に起因して低下した光量の累積量S1、s1と同じにさせる構成としてもよい。(第26の構成)
【0172】
上記第26の構成によれば、発光遅延に起因して低下した光量の累積量S1、s1を補光走査範囲ΔHaでの累積光量S2、s2で補完することによって、人間が視覚で感じる発光遅延に起因する走査レーザ光300a、300bの光量低下をより効果的に改善又は解消することができる。
【0173】
また、上記第20~第26のいずれかの構成のプロジェクタユニット101は、LD21a~21cに駆動電流を供給するLDドライバ52をさらに備え、LD21a~21cは半導体レーザ素子であって、LDドライバ52は、発光停止の際に走査レーザ光300の光量を急激に減少させる場合、LD21a~21cがレーザ発振モードのみで発光する電流値の下限を示す発振閾値電流Is以上の第1電流値から該発振閾値電流Is未満の第2電流値に駆動電流を減少させる構成としてもよい。(第27の構成)
【0174】
上記第27の構成によれば、レーザ発振モードのみで発光するLD21a~21cから出射される走査レーザ光300の光量を急激に減少させることができる。
【0175】
また、上記第20~第27のいずれかの構成のプロジェクタユニット101において、光出力制御部582は、補光走査範囲ΔHaでの光量Pb4~6(たとえば図22参照)を複数の段階に分けて増加させる構成としてもよい。(第28の構成)
【0176】
上記第28の構成によれば、発光遅延に起因して低下した光量の分布に応じて走査レーザ光300を投射することができる。従って、LD21a~21cの発光開始時の発光遅延に起因する光量の低下をより均一に改善することができる。
【0177】
また、上記第20~第28のいずれかの構成のプロジェクタユニット101において、LD21a~21cは半導体レーザ素子であって、走査範囲301a、301bでの走査レーザ光300a、300bの発光開始直後の所定期間Tpにおいて、LD21a~21cがレーザ発振モードのみで発光する電流値の下限を示す発振閾値電流Is未満の電流値Ipの予備電流がLD21a~21cに印加される構成としてもよい。(第29の構成)
【0178】
上記第29の構成によれば、発振閾値電流Is未満の電流値Ipの予備電流を予めLD21a~21cに印加しておくことによって、LD21a~21cの発光遅延を抑制又は防止することができる。
【0179】
さらに、上記第29の構成の上記構成のプロジェクタユニット101は、予備電流(電流値Ip)の印加時間Tpは、LD21a~21cが発光開始してから光量Pa1、Pb1、Pc1(第1光量)の光出力に達するまでに要する立ち上がり時間TA、TB、TC以上である構成としてもよい。(第30の構成)
【0180】
上記第30の構成によれば、電流値Ipの予備電流の印加時間Tpを立ち上がり時間TA、TB、TC以上とするので、LD21a~21cの発光遅延を防止することができる。
【0181】
また、第4~第7実施形態によれば、プロジェクタユニット101は、レーザ光300を放射するLD21a~21cと、レーザ光300を走査するMEMSエンジン部3と、前記LD21a~21cの光量を制御する光出力制御部582と、を備え、前記光出力制御部582は、往路及び復路において前記LD21a~21cの発光の開始及び停止を行い、往路及び復路の少なくとも一方のLD21a~21cの発光の開始から停止までの間の走査範囲は、前記発光の開始から前記光量が第1光量Pa1、Pb1、Pc1になるまでの間の立上走査範囲HAと、前記光量が前記第1光量Pa1、Pb1、Pc1で走査される往路のH3~H6間、復路のH4~H5間と、前記光量が前記第1光量Pa1、Pb1、Pc1よりも大きい第2光量(Pa2、Pb4~6など)になってから前記発光の停止までの間の補光走査範囲ΔHaと、を含み、前記補光走査範囲ΔHaの長さは立上走査範囲HAの長さ以下である構成とされる。(第31の構成)
【0182】
また、上記第31の構成のプロジェクタユニット101は、上記投射画像の画像情報を格納する記憶部57をさらに備え、前記光出力制御部582は、前記画像情報を解析し、前記解析の結果に基づいて前記光量を制御する構成とされる。(第32の構成)
【0183】
また、上記第31又は第32の構成のプロジェクタユニット101は、往路の立上走査範囲HAにおける発光開始位置及び発光停止位置はそれぞれ復路の前記補光走査範囲ΔHaにおける前記発光停止位置及び前記発光開始位置に対応する構成とされる。(第33の構成)
【0184】
また、上記第33の構成のプロジェクタユニット101は、往路の前記レーザ光300aの前記立上走査範囲HAは、復路の前記レーザ光300bの前記補光走査範囲ΔHaと重複する構成とされる。(第34の構成)
【0185】
また、上記第33又は第34の構成のプロジェクタユニット101は、往路の前記レーザ光300aの前記補光走査範囲ΔHaの長さは、復路の前記レーザ光300bの前記立上走査範囲HAの長さ以下である構成とされる。(第35の構成)
【0186】
また、上記第33~第35の構成のプロジェクタユニット101は、前記光出力制御部582は、前記少なくとも一方の前記レーザ光300での前記補光走査範囲ΔHaにおける累積光量を、前記少なくとも一方の前記レーザ光300を出力する発光素子の発光遅延に起因して低下した光量の累積量と同じにさせる構成とされる。(第36の構成)
【0187】
また、上記第36の構成のプロジェクタユニット101は、前記レーザ光300を出力する発光素子に駆動電流を供給するLDドライバ52をさらに備え、前記発光素子は半導体レーザ素子であって、前記LDドライバ52は、前記少なくとも一方の前記レーザ光300での前記補光走査範囲ΔHaにおいて、前記半導体レーザ素子がレーザ発振モードのみで発光する電流値の下限を示す発振閾値電流Is以上の第1電流値から該発振閾値電流Is未満の第2電流値に前記駆動電流を減少させる構成とされる。(第37の構成)
【0188】
また、上記第36又は第37の構成のプロジェクタユニット101は、前記発光素子は半導体レーザ素子であって、前記立上走査範囲HAでの前記レーザ光300の発光が開始された後の所定期間Tpにおいて、前記半導体レーザ素子がレーザ発振モードのみで発光する電流値の下限を示す発振閾値電流Is未満の電流値Ipの予備電流が前記半導体レーザ素子に印加される構成とされる。(第38の構成)
【0189】
また、上記第38の構成のプロジェクタユニット101は、前記予備電流(電流値Ip)の印加時間Tpは、前記半導体レーザ素子の発光開始から前記光量が前記第1光量Pa1、Pb1、Pc1に達するまでに要する時間TA、TB、TC以上である構成とされる。(第39の構成)
【0190】
また、上記第31~第39の構成のプロジェクタユニット101は、前記光出力制御部582は、前記補光走査範囲ΔHaでの前記第2光量(Pa2、Pb4~6など)を複数の段階に分けて増加させる構成とされる。(第40の構成)
【0191】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、上述の実施形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせに色々な変形が可能であり、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0192】
たとえば、上述の第1~第7実施形態において、CPU58が有する構成要素581~583の一部又は全ては、機能的構成要素であってもよいし、電気回路、装置、デバイスなどの物理的な構成要素であってもよい。また、構成要素581~583の少なくとも一部はCPU58から独立する構成要素であってもよい。
【0193】
また、上述の第1~第7実施形態では、HUD装置100のレーザプロジェクタ101を挙げて説明しているが、本発明の適用範囲はこれらの例示に限定されない。本発明は、発光波長の異なる複数の光源の光出力制御を行う装置であれば広く適用可能である。
【符号の説明】
【0194】
100 ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)
101 プロジェクタユニット
102 コンバイナ
200 車両
201 フロントガラス
300 走査レーザ光
400 ユーザの視線
1 ハウジング
1a 窓部
2 光学エンジン部
21a~21c レーザダイオード(LD)
22 光学系
221a~221c コリメータレンズ
222a~222c ビームスプリッタ
223 集光レンズ
23a~23c フォトディテクタ(PD)
3 MEMSエンジン部
31 MEMSミラー
50 本体筐体
50a 光出射口
51 MEMSミラードライバ
52 LDドライバ
53 電源
54 電源制御部
55 操作部
56 入出力I/F
57 記憶部
58 CPU
581 映像処理部
582 光出力制御部
583 算出部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図22
図23A
図23B
図23C
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図27