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特許7173137立体造形用重合性組成物、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形物
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  • 特許-立体造形用重合性組成物、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】立体造形用重合性組成物、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/124 20170101AFI20221109BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20221109BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221109BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20221109BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20221109BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20221109BHJP
【FI】
B29C64/124
B29C64/314
B33Y10/00
B33Y40/20
B33Y70/00
B33Y80/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020521143
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2019018436
(87)【国際公開番号】W WO2019225318
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018098627
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米▲崎▼ 有由見
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127984(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043231(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/044381(WO,A1)
【文献】特表2016-509962(JP,A)
【文献】特表2016-532579(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182681(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスペクト比が5以上であり、表面に水酸基を有するチューブ状の無機フィラーと、
分散剤と、
光重合性化合物と、
熱重合性化合物と、
を含む、立体造形用重合性組成物。
【請求項2】
前記無機フィラーの含有量が、5質量%以上60質量以下である、
請求項1に記載の立体造形用重合性組成物。
【請求項3】
前記熱重合性化合物が、エポキシ基またはイソシアネート基を有する、
請求項1または2に記載の立体造形用重合性組成物。
【請求項4】
前記無機フィラーが、同心円状に複数の層が重なった構造を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の立体造形用重合性組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の立体造形用重合性組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、前記光重合性化合物の硬化物を含む一次硬化物を形成する光造形工程と、
前記一次硬化物を熱硬化させる熱硬化工程と、を含む、
立体造形物の製造方法。
【請求項6】
前記光造形工程後、前記熱硬化工程前に、前記一次硬化物を洗浄する洗浄工程を含む、
請求項に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項7】
前記光造形工程が、
前記立体造形用重合性組成物および酸素を含み、酸素により前記立体造形用重合性組成物の硬化が阻害されるバッファ領域、ならびに前記立体造形用重合性組成物を少なくとも含み、前記バッファ領域より酸素濃度が低く、前記光重合性化合物の硬化が可能な硬化用領域を、造形物槽内に隣接して形成する第1の工程と、
前記バッファ領域側から前記立体造形用重合性組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、前記硬化用領域で前記光重合性化合物を硬化させる第2の工程と、
を含み、
前記第2の工程では、形成された硬化物を前記バッファ領域とは反対側に移動させながら、前記硬化用領域に活性エネルギーを照射し、前記一次硬化物を形成する、
請求項またはに記載の立体造形物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の立体造形用重合性組成物の硬化物である、立体造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形用重合性組成物、およびこれを用いた立体造形物の製造方法、ならびに立体造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複雑な形状の立体造形物を比較的容易に製造できる様々な方法が開発されている。例えば、液体状の光重合性組成物に紫外線を選択的に照射して造形物層を形成し、当該造形物層を積み重ねることで、所望の立体造形物を得る方法(以下、「SLA法」とも称する)が知られている(特許文献1等)。
【0003】
また近年、液体状の光重合性組成物を連続して硬化させる方法(以下、「CLIP法」とも称する)が提案されている(特許文献2、3)。当該方法では、まず造形物槽内に、活性エネルギーを照射しても光重合性組成物が硬化しないバッファ領域と、活性エネルギーの照射によって光重合性組成物が硬化する硬化用領域とを設ける。このとき、バッファ領域が造形槽底部側、硬化用領域が造形槽上部側に位置するよう、それぞれの領域を形成する。そして、硬化用領域に立体造形の基点となるキャリアを配置し、バッファ領域(造形槽底部)側から硬化用領域に活性エネルギーを選択的に照射する。これにより、キャリア表面に立体造形物の一部(光重合性組成物の硬化物)が形成される。そしてさらに、当該キャリアを造形槽上部側に引き上げながら、活性エネルギーを照射することで、キャリアの下方に、光重合性組成物の硬化物が連続的に形成され、継ぎ目のない立体造形物が作製される。
【0004】
また、得られる立体造形物の機械的強度を高める目的で、光重合性組成物に、アルミナやシリカ等のフィラーを、多量に添加することも提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-174680号公報
【文献】特表2016-509962号公報
【文献】国際公開第2017/044381号
【文献】国際公開第2017/066584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4のように、フィラーを多量に添加すると、立体造形物の曲げ弾性率が高くなり、立体造形物の剛性が高まる。しかしながら、剛性が高くなるほど脆くなり、立体造形物が衝撃を受けた際に破壊されやすい。つまり、衝撃強度が低くなりやすい。一方で、立体造形物の衝撃強度を高めるために、例えばエラストマーやゴム等を添加すると、曲げ弾性率が低くなる。つまり、曲げ弾性率および耐衝撃性はトレードオフの関係にあり、これらを両立させることが難しかった。
【0007】
また、立体造形物の機械的強度を高めるため、光重合性組成物に熱重合性化合物を加えること等も検討されている。光重合性化合物および熱重合性化合物が含まれる立体造形用重合性組成物から立体造形物を作製する場合、まず、活性エネルギーの照射により光重合性化合物を硬化させて、一次硬化物を得る。その後、一次硬化物を加熱し、熱重合性化合物を熱硬化させる。当該方法では、不要な光重合性化合物の除去を目的として、一次硬化物を洗浄することがある。しかしながら、このような洗浄工程を行うと、余剰の光重合性化合物だけでなく、熱重合性化合物も洗い流されやすく、得られる立体造形物の寸法精度が低下しやすい、との課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものである。すなわち本発明は、曲げ弾性率および衝撃強度が高く、さらには寸法精度が高い立体造形物を製造するための立体造形用重合性組成物、およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の立体造形用重合性組成物を提供する。
[1]アスペクト比が5以上である無機フィラーと、分散剤と、光重合性化合物と、熱重合性化合物と、を含む、立体造形用重合性組成物。
【0010】
[2]前記無機フィラーの含有量が、5質量%以上60質量以下である、[1]に記載の立体造形用重合性組成物。
[3]前記無機フィラーが、表面に水酸基を有する、[1]または[2]に記載の立体造形用重合性組成物。
[4]前記熱重合性化合物が、エポキシ基またはイソシアネート基を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の立体造形用重合性組成物。
【0011】
[5]前記無機フィラーが、チューブ状である、[1]~[4]のいずれかに記載の立体造形用重合性組成物。
[6]前記無機フィラーが、同心円状に複数の層が重なった構造を有する、[5]に記載の立体造形用重合性組成物。
【0012】
本発明は、以下の立体造形用重合性組成物の製造方法、および立体造形物も提供する。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の立体造形用重合性組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、前記光重合性化合物の硬化物を含む一次硬化物を形成する光造形工程と、前記一次硬化物を熱硬化させる熱硬化工程と、を含む、立体造形物の製造方法。
[8]前記光造形工程後、前記熱硬化工程前に、前記一次硬化物を洗浄する洗浄工程を含む[7]に記載の立体造形物の製造方法。
【0013】
[9]前記光造形工程が、前記立体造形用重合性組成物および酸素を含み、酸素により前記立体造形用重合性組成物の硬化が阻害されるバッファ領域、ならびに前記立体造形用重合性組成物を少なくとも含み、前記バッファ領域より酸素濃度が低く、前記光重合性化合物の硬化が可能な硬化用領域を、造形物槽内に隣接して形成する第1の工程と、前記バッファ領域側から前記立体造形用重合性組成物に活性エネルギーを選択的に照射して、前記硬化用領域で前記光重合性化合物を硬化させる第2の工程と、を含み、前記第2の工程では、形成された硬化物を前記バッファ領域とは反対側に移動させながら、前記硬化用領域に活性エネルギーを照射し、前記一次硬化物を形成する、[7]または[8]に記載の立体造形物の製造方法。
【0014】
[10]上述の[1]~[6]のいずれかに記載の立体造形用重合性組成物の硬化物である、立体造形物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の立体造形用重合性組成物によれば、曲げ弾性率および衝撃強度が高く、さらには寸法精度が高い立体造形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る立体造形物の製造装置の模式図である。
図2図2は、本発明の他の実施形態に係る立体造形物の製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.立体造形用重合性組成物
本発明の立体造形用重合性組成物は、SLA法やCLIP法等の立体造形に用いられる液状の組成物である。当該立体造形用重合性組成物に活性エネルギーを照射し、さらに加熱することで立体造形物を作製することができる。
【0018】
前述のように、SLA法やCLIP法で作製される立体造形物には、高い曲げ弾性率と高い衝撃強度との両立が求められている。しかしながら、これらはトレードオフの関係にあり、従来の立体造形用重合性組成物ではこれらを同時に高めることが難しかった。また立体造形用重合性組成物に、光重合性化合物と共に熱重合性化合物が含まれる場合、活性エネルギー照射による一次硬化物の作製後、当該一次硬化物をさらに熱硬化させる。このとき、一次硬化物を洗浄し、余剰の光重合性化合物を除去してから熱硬化を行うことがある。しかしながら、洗浄によって、光重合性化合物だけでなく、熱重合性化合物も洗い流されやすく、得られる立体造形物の寸法精度が低下しやすい、という課題があった。
【0019】
加熱硬化前の一次硬化物では、光重合性化合物の硬化物と、未硬化の熱重合性化合物とが絡み合った状態で、形状が保持されている。しかしながら、これらの絡み合いが不十分であったり、密着度合いが低かったりすると、余剰の光重合性化合物だけでなく熱重合性組成物まで除去されやすかったと考えられる。
【0020】
これに対し、本発明の立体造形用重合性組成物には、光重合性化合物および熱重合性化合物と共に、アスペクト比が5以上である無機フィラーが含まれる。当該無機フィラーは、立体造形物や、その製造過程で形成される一次硬化物において、樹脂どうしをつなぐ役割(以下、「橋かけ補強」とも称する)を果たす。そのため、一次硬化物を洗浄したとしても、熱重合性化合物が洗い流され難くなり、得られる立体造形物の寸法精度が高くなる。また、当該無機フィラーが含まれると、立体造形物においても、無機フィラーによって樹脂どうしが橋かけ補強されるため、機械的強度が高まり、曲げ弾性率が高くなる。さらに、立体造形物の一部に微細なクラックが生じたとしても、無機フィラーによってクラックの広がりが抑制される。そして、無機フィラーが樹脂どうしをつなぐ役割を果たすため、立体造形物が破壊され難くなる。すなわち、立体造形物の耐衝撃性が高まる。
【0021】
以上のことから、当該立体造形用重合性組成物によれば、曲げ弾性率および衝撃強度が高く、さらには寸法精度が高い立体造形物を製造することができる。以下、当該立体造形用重合性組成物に含まれる各成分について具体的に説明する。
【0022】
1-1.光重合性化合物
立体造形用重合性組成物に含まれる光重合性化合物は、活性エネルギーの照射によって重合し、硬化可能な化合物であればよい。例えば、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、プレポリマーであってもよく、これらの混合物であってもよい。また、光重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であってもよく、カチオン重合性化合物であってもよい。ただし、後述するように、立体造形用重合性組成物に酸素等の重合禁止剤を添加しながら、立体造形物を作製する方法(以下、「CLIP法」とも称する)に用いる立体造形用重合性組成物では、光重合性化合物がラジカル重合性化合物である必要がある。
【0023】
立体造形用重合性組成物には、光重合性化合物が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。また、光重合性化合物を硬化させる活性エネルギーの例には、紫外線、X線、電子線、γ線、可視光線等が含まれる。
【0024】
光重合性化合物の一つである、ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合開始剤等の存在下、活性エネルギーの照射によってラジカル重合可能な基を有していればその種類は特に制限されない。光重合性化合物は、例えば、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、アセチルビニル基、ビニルアミド基、(メタ)アクリロイル基、等を分子内に1つ以上有する化合物とすることができる。
【0025】
これらの中でも、分子内に不飽和カルボン酸エステル構造を1つ以上含む不飽和カルボン酸エステル化合物、または分子内に不飽和カルボン酸アミド構造を1つ以上含む不飽和カルボン酸アミド化合物であることが好ましい。より具体的には、後述の、(メタ)アクリロイル基を含む(メタ)アクリレート系化合物および/または(メタ)アクリルアミド系化合物であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」との記載は、メタクリルおよび/またはアクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」との記載は、メタクリロイルおよび/またはアクリロイルを表し、「(メタ)アクリレート」との記載は、メタクリレートおよび/またはアクリレートを表す。
【0026】
上記ラジカル重合性化合物の一つである「アリルエーテル基を有する化合物」や、「ビニルエーテル基を有する化合物」、「ビニルフェニル基を有する化合物」、「マレイミド基を有する化合物」としては、公知のものを用いることができる。
【0027】
上記「(メタ)アクリルアミド基を有する化合物」の例には、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ビスメチレンアクリルアミド、ジ(エチレンオキシ)ビスプロピルアクリルアミド、およびトリ(エチレンオキシ)ビスプロピルアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が含まれる。
【0028】
一方、上述の「(メタ)アクリロイル基を有する化合物」の例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等を含む単官能の(メタ)アクリレートモノマー;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等を含む2官能の(メタ)アクリレートモノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等を含む3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー;
およびこれらのオリゴマー等が含まれる。
【0029】
また、「(メタ)アクリロイル基を有する化合物」は、各種(メタ)アクリレートモノマーやそのオリゴマーをさらに変性したもの(変性物)であってもよい。変性物の例には、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートモノマー;トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート等のプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレートモノマー;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性(メタ)アクリレートモノマー;カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレートモノマー;等が含まれる。
【0030】
「(メタ)アクリロイル基を有する化合物」はさらに、各種オリゴマーを(メタ)アクリレート化した化合物(以下、「変性(メタ)アクリレート系化合物」とも称する)であってもよい。このような変性(メタ)アクリレート系化合物の例には、ポリブタジエン(メタ)アクリレート系化合物、ポリイソプレン(メタ)アクリレート系化合物、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、シリコーン(メタ)アクリレート系化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート系化合物、および直鎖(メタ)アクリル系化合物等が含まれる。
【0031】
これらの中でも特に、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、およびシリコーン(メタ)アクリレート系化合物を好適に用いることができる。立体造形用重合性組成物にエポキシ(メタ)アクリレート系化合物や、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、シリコーン(メタ)アクリレート系化合物が含まれると、得られる立体造形物の強度が高まりやすい。
【0032】
エポキシ(メタ)アクリレート系化合物は、一分子内にエポキシ基と、(メタ)アクリレート基とをそれぞれ1つ以上含む化合物であればよく、その例には、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェニル型エポキシ(メタ)アクリレート、トリフェノールメタン型エポキシ(メタ)アクリレートや、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等のノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が含まれる。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、2つのイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート化合物または2つのイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体等とを反応させて得られる、ウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を有する化合物とすることができる。
【0034】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の原料となるイソシアネート化合物の例には、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が含まれる。
【0035】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の原料となるイソシアネート化合物の例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も含まれる。
【0036】
一方、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートやジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシアクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート等が含まれる。
【0037】
上記構造のウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、市販されているものであってもよく、その例には、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600(いずれも東亞合成社製)、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260(いずれもダイセル・オルネクス社製)、アートレジンUN-330、アートレジンSH-500B、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-9000H(いずれも根上工業社製)、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6HA、U-6LPA、U-10H、U-15HA、U-108、U-108A、U-122A、U-122P、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4000、UA-4100、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A(いずれも新中村化学工業社製)、AH-600、AI-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T(いずれも共栄社化学社製)等が含まれる。
【0038】
一方、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、イソシアネートもしくはポリイソシアネートのイソシアネート基を(メタ)アクリレート基を有するブロック剤によりブロック化して得られるブロックイソシアネートであってもよい。
【0039】
ブロックイソシアネートを得るために用いられるイソシアネートは、前述の「イソシアネート化合物」であってもよく、ポリイソシアネートは、当該「イソシアネート化合物」の重合体等であってもよく、これらの化合物とポリオールやポリアミンとを反応させた化合物等であってもよい。ポリオールの例には、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、植物油ポリオール、さらには含リンポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等が含まれる。これらのポリオールは、ブロックイソシアネート中に1種のみ含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0040】
イソシアネート等と反応させる上記ポリエーテルポリオールの例には、少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物(具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;エチレンジアミン等のアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類;等)とアルキレンオキサイド(具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)との付加反応により調製される化合物が含まれる。ポリエーテルポリオールの調製方法は、例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985) Hanser Publishers社(ドイツ),p.42-53に記載の方法とすることができる。
【0041】
上記ポリエステルポリオールの例には、アジピン酸、フタル酸等の多価カルボン酸と、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の多価アルコールとの縮合反応物や、ナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が含まれる(例えば、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987)日刊工業新聞社 p.117の記載参照)。
【0042】
上記ポリマーポリオールの例には、上記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)とをラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールが含まれる。ポリマーポリオールは、分子量が5000~12000程度であることがより好ましい。
【0043】
植物油ポリオールの例には、ひまし油、やし油等のヒドロキシル基含有植物油等が含まれる。また、ひまし油又は水添ひまし油を原料として得られるひまし油誘導体ポリオールも好適に用いることができる。ひまし油誘導体ポリオールとしては、ひまし油、多価カルボン酸及び短鎖ジオールの反応で得られるひまし油ポリエステル、ひまし油やひまし油ポリエステルのアルキレンオキシド付加物等が含まれる。
【0044】
難燃ポリオールの例には、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られるリン含有ポリオール;エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られるハロゲン含有ポリオール;芳香環を有する活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加して得られる芳香族系エーテルポリオール;芳香環を有する多価カルボン酸と多価アルコールの縮合反応で得られる芳香族系エステルポリオール;等が含まれる。
【0045】
イソシアネート等と反応させるポリオールの水酸基価としては、5~300mgKOH/gであることが好ましく、10~250mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価は、JIS-K0070に規定された方法で測定できる。
【0046】
また、イソシアネート等と反応させるポリアミンの例には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンペンタアミン、ビスアミノプロピルピペラジン、トリス(2-アミノエチル)アミン、イソホロンジアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が含まれる。
【0047】
一方、ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロックするためのブロック剤としては、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、イソシアネート基と反応し、加熱により脱離できるものであればよい。
【0048】
このようなブロック剤の具体例には、t-ブチルアミノエチルメタクリレート(TBAEMA)、t-ペンチルアミノエチルメタクリレート(TPAEMA)、t-ヘキシルアミノエチルメタクリレート(THAEMA)、t-ブチルアミノプロピルメタクリレート(TPAEMA)、t-ヘキシルアミノエチルメタクリレート(THAEMA)、t-ブチルアミノプロピルメタクリレート(TBAPMA)等が含まれる。
【0049】
ポリイソシアネートのブロック化反応は、一般に-20~150℃で行うことができるが、好ましくは0~100℃である。150℃以下であれば副反応を防止することができ、他方、-20℃以上であれば反応速度を適度な範囲とすることができる。ポリイソシアネート化合物とブロック剤のブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず、行うことができる。溶剤を用いる場合は、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いるのが好ましい。ブロック化反応においては、反応触媒を使用することができる。具体的な反応触媒の例には、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、金属アルコラート、及び3級アミン等が含まれる。
【0050】
上述のように調製されるブロックイソシアネートをラジカル重合性化合物として用いる場合、まず、活性エネルギー照射によりアクリロイル基部分を重合させる。その後、加熱によってブロック剤を外すことで、生成したイソシアネート化合物を新たにポリオールやポリアミン等と重合させることができ、ポリウレタンやポリウレアまたはこれらの混合物を含む立体造形物を得ることができる。
【0051】
一方、シリコーン(メタ)アクリレート系化合物は、主鎖にポリシロキサン結合を有するシリコーンの末端および/または側鎖に(メタ)アクリル酸を付加した化合物とすることができる。シリコーン(メタ)アクリレート系化合物の原料となるシリコーンは、公知の1官能、2官能、3官能、または4可能のシラン化合物(例えばアルコキシシラン等)が任意の組み合わせで重合したオルガノポリシロキサンとすることができる。シリコーンアクリレート系化合物の具体例には、市販のTEGORad2500(商品名:テゴケミーサービスGmbH社製)の他、X-22-4015(商品名:信越化学工業社製)の様な-OH基を有する有機変性シリコーンとアクリル酸とを酸触媒下でエステル化させたもの;KBM402、KBM403(商品名:いずれも信越化学工業社製)の様なエポキシシラン等の有機変性シラン化合物とアクリル酸を反応させたもの;等が含まれる。
【0052】
一方、光重合性化合物の他の例である、カチオン重合性化合物は、酸触媒の存在下、活性エネルギーの照射によってカチオン重合可能な基を有していれば、その種類は特に制限されない。その例には、環状ヘテロ化合物が含まれ、環状エーテル基を有する化合物であることが、その反応性等の観点から好ましい。
【0053】
カチオン重合性化合物の具体例には、オキシラン、メチルオキシラン、フェニルオキシラン、1,2-ジフェニルオキシラン等のオキシラン化合物類、あるいは、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン等のオキシラン環の水素原子がメチレン結合基やメチン結合基で置換されているエポキシ基含有化合物;2-(シクロヘキシルメチル)オキシラン、2-エトキシ-3-(シクロヘキシルメチル)オキシラン、[(シクロヘキシルオキシ)メチル]オキシラン、1,4-ビス(オキシラニルメトキシメチル)シクロヘキサン、等のシクロアルカン環を有するエポキシ基含有化合物;7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、3-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-イルメタノール、7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-メトキシメチル等の芳香環を有さない脂環族系エポキシ基含有化合物;3-フェニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレート、4-エチルフェニル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、ベンジル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレート、4-エチルフェニル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレート等の芳香環を有する脂環族系エポキシ基含有化合物;
3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、ジ(1-エチル-3-オキセタニル)メチルエーテル、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、3‐エチル-{(3-トリエトキシシリルプロポキシ)メチル}オキセタン等のオキセタニル基含有化合物;
2-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジエトキシテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン-2,2-ジメタノール3-メチル-2,4(3H、5H)-フランジオン、2,4-ジオキソテトラヒドロフラン-3-カルボキシラート、プロパン酸1,5-ジ(テトラヒドロフラン-2-イル)ペンタン-3-イル、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、メトキシテトラヒドロピラン等の5員環以上の環状エーテル化合物等が含まれる。
【0054】
立体造形用重合性組成物に含まれる光重合性化合物の総量は、立体造形用重合性組成物に対して10~90質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることがさらに好ましい。光重合性化合物の量が当該範囲であると、一次硬化物の硬化性が良好になる。なお、本明細書において、立体造形用重合性組成物に対する含有量は、立体造形用重合性組成物の「固形分量」に対する量を表す。「固形分量」は、立体造形用重合性組成物を硬化させたときに残存する成分の合計量とし、立体造形用重合性組成物中で液状である成分の量も含むものとする。
【0055】
1-2.熱重合性化合物
立体造形用重合性組成物に含まれる熱重合性化合物は、加熱によって重合し、硬化可能な化合物であればよい。通常、熱重合性化合物は、後述の硬化剤と組み合わせて用いられる。
【0056】
このような熱重合性化合物の例には、シアネートエステル系化合物、ウレタン樹脂またはその前駆体、エポキシ樹脂またはその前駆体、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびフェノール樹脂等が含まれる。これらの中でも特に、エポキシ基またはイソシアネート基を有する化合物、すなわちエポキシ樹脂またはその前駆体、ウレタン樹脂の前駆体が好ましい。
【0057】
熱重合性化合物であるシアネートエステル系化合物の例には、1,3-または1,4-ジシアナトベンゼン;1,3,5-トリシアナトベンゼン;1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-、または2,7-ジシアナトナフタレン;1,3,6-トリシアナトナフタレン;2,2’-または4,4’-ジシアナトビフェニル;ビス(4-シアナトフェニル)メタン;2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ジブロモ-4-ジシアナトフェニル)プロパン;ビス(4-シアナトフェニル)エーテル;ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル;ビス(4-シアナトフェニル)スルホン;トリス(4-シアナトフェニル)フォスファイト;トリス(4-シアナトフェニル)フォスフェート;ビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン:4-シアナトビフェニル;4-クミルシアナトベンゼン;2-t-ブチル-1,4-ジシアナトベンゼン;2,4-ジメチル-1,3-ジシアナトベンゼン;2,5-ジ-t-ブチル-l,4-ジシアナトベンゼン;テトラメチル-1,4-ジシアナトベンゼン;4-クロロ-1,3-ジシアナトベンゼン;3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’ジシアナトジフェニルビス(3-クロロ-4-シアナトフェニル)メタン:1,1,1-トリス(4-シアナトフェニル)エタン;1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアナトフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-シアナトフェニル)プロパン;ビス(p-シアノフェノキシフェノキシ)ベンゼン;ジ(4-シアナトフェニル)ケトン;シアン酸化ノボラック;シアン酸化ビスフェノールポリカーボネートオリゴマー等が含まれる。
【0058】
熱重合性化合物であるウレタン樹脂またはその前駆体の例には、分子内に1つまたは2つ以上のウレタン結合を有する公知のウレタン樹脂、またはその前駆体が含まれる。具体的には、ウレタン樹脂の例には、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等が含まれる。一方ウレタン樹脂の前駆体の例には、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等が含まれる。
【0059】
また、熱重合性化合物であるエポキシ樹脂またはその前駆体の例には、分子内に1つまたは2つ以上のエポキシ基を有する公知のエポキシ樹脂またはその前駆体が含まれる。エポキシ樹脂の例には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等の変性フェノール型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環含有エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ等が含まれる。
【0060】
また、熱重合性化合物であるシリコーン樹脂は、オルガノポリシロキサン構造を有する樹脂であればよく、公知の付加硬化型のシリコーン樹脂が含まれる。
【0061】
典型的な付加硬化型の液状シリコーン樹脂は、ビニルシリル基を含有するシリコーンと、ヒドロシリル基を含有するシリコーンと、付加反応触媒とを必須成分として含有しており、加熱するとビニルシリル基とヒドロシリル基との間で生じる付加反応により架橋構造が形成されて硬化する。
【0062】
ビニルシリル基を有するシリコーンの例には、各末端ケイ素原子にビニル基が置換されたポリジメチルシロキサン、各末端ケイ素原子にビニル基が置換されたジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、各末端ケイ素原子にビニル基が置換されたポリフェニルメチルシロキサン、各末端にトリメチルシリル基を有するビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーなどが用いられる。
【0063】
ヒドロシリル基を含有するシリコーンの例には、各末端にトリメチルシリル基を有するメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー等が含まれる。また、各末端に水素原子が結合したポリジメチルシロキサンを併用することもできる。
【0064】
付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が主に使用される。
【0065】
さらに、熱重合性化合物である、不飽和ポリエステル樹脂の例には、商品名PC-740、PC-184-C、PC-350-C(いずれもDICマテリアル社製)等が含まれる。
【0066】
また、熱重合性化合物である、フェノール樹脂の例には、商品名MEH-8000H、MEH-8005(いずれも明和化成社製)等が含まれる。
【0067】
上記の中でも、熱重合性化合物は、取り扱いが容易であるという観点から、エポキシ樹脂またはその前駆体、もしくはウレタン樹脂またはその前駆体であることが好ましい。
【0068】
上記熱重合性化合物は、立体造形用重合性組成物の固形分量に対して10~90質量%含まれることが好ましく、30~70質量%含まれることがより好ましく、40~60質量%含まれることがさらに好ましい。熱重合性化合物が当該範囲含まれると、得られる立体造形物の耐熱性等が高まりやすくなる。
【0069】
1-3.無機フィラー
立体造形用重合性組成物に含まれる無機フィラーは、アスペクト比が5以上である形状を有する無機化合物である。立体造形用重合性組成物には、無機フィラーが一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
【0070】
立体造形用重合性組成物に含まれる無機フィラーの形状は、アスペクト比が5以上であれば特に制限されず、アスペクト比は5以上100以下であることが好ましく、10以上50以下であることがより好ましい。アスペクト比が5以上であると、無機フィラーが上述の橋かけ構造を形成しやすくなり、得られる立体造形物の曲げ弾性率や耐衝撃性が高まりやすくなる。無機フィラーのアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により特定することができる。なお、無機フィラーのアスペクト比に幅がある場合、任意の100個の無機フィラーについてアスペクト比を特定し、その平均をアスペクト比として採用してもよい。この場合、当該アスペクト比(平均値)が5以上であるか判断する。
【0071】
このような無機フィラーは、例えば円柱状や角柱状等であってもよく、扁平状や針状、繊維状等であってもよく、中空状(チューブ状)であってもよもよい。また、当該無機フィラーは複数の層が積層された積層構造を有していてもよい。また、コアシェル構造等を有していてもよい。無機フィラーが積層構造やコアシェル構造を有すると、例えば外部からの応力によって外側の層が破断したとしても、内側の層によって、樹脂どうしを橋かけ補強することができる。そのため、得られる立体造形物の曲げ弾性率や曲げ強度、衝撃強度等が格段に高まりやすくなる。
【0072】
そしてさらに、無機フィラーがチューブ状であると、中空部分によって、外部からの衝撃を吸収できる。したがって、特に複数層が同心円状に積層されたチューブ状の構造を有することが好ましい。
【0073】
無機フィラーの例には、ソーダ石灰ガラス、珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等からなるガラスフィラー;アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フェライト、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化スズ、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等からなるセラミックフィラー;鉄、チタン、金、銀、銅、スズ、鉛、ビスマス、コバルト、アンチモン、カドミウム等の金属単体、あるいはこれらの合金等からなる金属フィラー;グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等からなるカーボンフィラー;チタン酸カリウムウィスカー、シリコーンカーバイトウィスカー、シリコンナイトライドウィスカー、α-アルミナウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、水酸化マグネシウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、ケイ酸カルシウムウィスカー等からなるウィスカー状無機化合物(上記セラミックフィラーの針状の単結晶も含む);タルク、マイカ、クレイ、ワラストナイト、ゾノトライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ハイデライト、モンモリロナイト、ノントライト、ベントナイト、ハイドロタルサイト、イモゴライト、ハロイサイト、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母、バーミキュラライト等からなる粘土鉱物;等が含まれる。
【0074】
これらの中でも、表面に水酸基(OH基)を有するものが好ましい。無機フィラーの表面に水酸基が含まれると、無機フィラーと後述の分散剤もしくは熱重合性化合物や光重合性化合物とが相互作用しやすくなり、無機フィラーの分散性が高まりやすくなる。また特に、表面に水酸基を有し、かつ複数層が同心円状に積層されたチューブ状の構造を有することから、イモゴライトまたはハロイサイトが好ましい。
【0075】
立体造形用重合性組成物に含まれる無機フィラーの量は、立体造形用重合性組成物の固形分量に対して5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。立体造形用重合性組成物に含まれる無機フィラーの量が過度に多くなると、立体造形用重合性組成物の粘度が高まり、立体造形用重合性組成物内に入り込んだ空気が抜け難くなる。その結果、得られる立体造形物に空洞が生じやすく、立体造形物の引張強度等が低下しやすくなる。一方、立体造形用重合性組成物に含まれる無機フィラーの量が過度に少ないと、上述の補強効果が得られ難くなる。
【0076】
1-4.分散剤
立体造形用重合性組成物に含まれる分散剤は、上述の無機フィラーの熱重合性化合物や光重合性化合物に対する分散性を高めるための化合物である。分散剤は一般的に、高分子型分散剤と低分子型分散剤に大別される。高分子型分散剤は、無機フィラーに吸着するための吸着性基と、無機フィラー吸着後に表面に配向する配向基とを含み、配向基どうしの立体障害反発や、静電反発によって無機フィラーを分散させる化合物である。一方、低分子型分散剤は、無機フィラーの熱重合性化合物や光重合性化合物に対する界面張力を低下させる化合物であり、無機フィラーと熱重合性化合物や光重合性化合物とを親和しやすくすることで、無機フィラーの分散性を高める。立体造形用重合性組成物には、低分子型分散剤および高分子型分散剤のいずれか一方のみが含まれていてもよく、両方が含まれていてもよい。
【0077】
立体造形用重合性組成物に含まれる分散剤の例には、第4級カチオンポリマー、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウム等の高分子型分散剤、ホスホン酸アミン塩、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等の低分子型分散剤が含まれる。
【0078】
立体造形用重合性組成物に含まれる分散剤の量は、立体造形用重合性組成物の固形分量に対して2質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。立体造形用重合性組成物に含まれる分散剤の量が2質量%以上であると、立体像形用重合性組成物中における無機フィラーの分散性が良好になりやすい。一方、分散剤の量が過剰になると、得られる立体造形物表面に分散剤が浮き出たりすることがあるが、40質量%以下であれば、立体造形用重合性組成物が十分に分散剤となじみ、浮き出ることはない。
【0079】
1-5.その他の成分
立体造形用重合性組成物には通常、上述の熱重合性化合物を重合させるための熱硬化剤や熱硬化促進剤、上述の光重合性化合物を重合させるための光重合開始剤、さらには立体造形用重合性組成物の物性を調整するための各種添加剤が含まれる。
【0080】
(熱硬化剤および熱硬化促進剤)
熱硬化剤や熱硬化促進剤の種類は、上述の熱重合性化合物の種類等に応じて適宜選択される。熱硬化剤や熱硬化促進剤の例には、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、N,N-ジメチル-n-オクチルアミン、ジシアノジアミド等のアミノ類;アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物を含む酸無水物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類;ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)、アセチルアセトナート亜鉛等の有機金属塩が含まれる。立体造形用重合性組成物には熱硬化剤や熱硬化促進剤が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。当該熱硬化剤や熱硬化促進剤の量は、熱重合性化合物の種類や量に合わせて適宜選択される。
【0081】
熱硬化剤や熱硬化促進剤の量は、上述の熱重合性化合物の量に合わせて適宜選択されるが、例えば熱重合性化合物100質量部に対して、30~100質量部であることが好ましく、40~90質量部であることがより好ましく、50~80質量部であることがさらに好ましい。
【0082】
(光重合開始剤)
光重合開始剤の種類は、光重合性化合物の種類に応じて適宜選択され、例えば光重合性化合物がラジカル重合性化合物である場合には、ラジカル重合開始剤が含まれる。一方、光重合性化合物がカチオン重合性化合物である場合には、光酸発生剤等のカチオン重合開始剤が含まれる。
【0083】
ラジカル重合開始剤は、活性エネルギーの照射によってラジカルを発生させることが可能な化合物であれば特に制限されず、公知のラジカル重合開始剤とすることができる。
【0084】
ラジカル重合開始剤の例には、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(BASF社製、IRGACURE 1173(「IRGACURE」は同社の登録商標)等)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチループロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(BASF社製、IRGACURE 127等)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(BASF社製、IRGACURE 2959等)、2,2-ジメトキシー1,2-ジフェニルエタンー1-オン(BASF社製、IRGACURE 651等)、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、ミヒラ-ケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノンおよび2,4-ジエチルオキサンテン-9-オン等が含まれる。
【0085】
ラジカル重合開始剤は、光重合性化合物(ラジカル重合性化合物)の総量に対して0.01~10質量%含まれることが好ましく、0.1~5質量%含まれることがより好ましく、0.5~3質量%含まれることがさらに好ましい。ラジカル重合開始剤が当該範囲含まれると、上述の光重合性化合物を十分に効率よく重合させることが可能となる。
【0086】
一方、カチオン重合開始剤は、活性エネルギーの照射によって、酸を発生させ、光重合性化合物(カチオン重合性化合物)を重合させることが可能な化合物であれば特に制限されず、公知の光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤の例には、スルホニウム塩系、またはヨードニウム塩系等のオニウム塩系光酸発生剤が含まれる。
【0087】
上記オニウム塩系光酸発生剤におけるアニオン成分としては、例えば、PF 、PF(CFCF 等のリン酸イオン、SbF 等のアンチモン酸イオン、トリフルオロメタンスルホナート等のフルオロアルキルスルホン酸イオン、パーフルオロアルキルスルホンアミド、パーフルオロアルキルスルホンメチド等が含まれる。
【0088】
一方、上記オニウム塩系光酸発生剤におけるカチオン成分としては、例えば、芳香族スルホニウム等のスルホニウム、芳香族ヨードニウム等のヨードニウム、芳香族ホスホニウム等のホスホニウム、芳香族スルホキソニウム等のスルホキソニウム等が含まれる。
【0089】
このようなオニウム塩系光酸発生剤の例には、アニオン成分をカウンターアニオンとして有する、芳香族スルホニウム塩等のスルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩等のヨードニウム塩、芳香族ホスホニウム塩等のホスホニウム塩、芳香族スルホキソニウム塩等のスルホキソニウム塩等が含まれる。
【0090】
光酸発生剤は、光重合性化合物(カチオン重合性化合物)の総量に対して0.01~10質量%含まれることが好ましく、0.1~5質量%含まれることがより好ましく、0.5~3質量%含まれることがさらに好ましい。光酸発生剤が当該範囲含まれると、上述の光重合性化合物(カチオン重合性化合物)を十分に効率よく重合させることが可能となる。
【0091】
(添加剤)
立体造形用重合性組成物には、活性エネルギーの照射による立体造形物の形成を可能にし、かつ得られる立体造形物に強度のムラを顕著に生じさせない限りにおいて、光増感剤、重合阻害剤、酸化防止剤、染料および顔料等の色材、消泡剤ならびに界面活性剤等の任意の添加剤がさらに含まれていてもよい。
【0092】
1-6.立体造形用重合性組成物の物性
本発明の立体造形用重合性組成物は、JIS K-7117-1に準拠する方法で、回転式粘度計を用いて測定される、25℃の粘度が0.2~100Pa・sであることが好ましく、1~10Pa・sであることがより好ましい。立体造形用重合性組成物の粘度が当該範囲であると、後述の立体造形物の製造方法において適度な流動性が得られる。その結果、造形速度を向上させることができる。また、粘度が上記範囲であると、立体造形用重合性組成物内で無機フィラーが沈降し難くなり、ひいては立体造形物の強度が高まりやすくなる。
【0093】
1-7.立体造形用重合性組成物の調製方法
本発明の立体造形用重合性組成物は、上述の光重合性化合物、熱重合性化合物、無機フィラー、および分散剤と、熱硬化剤や熱硬化促進剤、光重合開始剤、各種添加剤等とを、任意の順で混合することで調製できる。また立体造形用重合性組成物の調製の際には、必要に応じて、溶媒を添加してもよい。
【0094】
特に、上記無機フィラーの分散性を高めるため、予め無機フィラーと分散剤とを溶媒中で混合しておき、無機フィラー表面に分散剤を吸着もしくは結合させた後、当該無機フィラー等を他の成分と混合することが好ましい。具体的には、溶媒に無機フィラーを十分に分散させた後、当該溶液に分散剤を添加し、十分に攪拌する。これにより、分散剤が無機フィラー表面に吸着もしくは結合する。そして、このような無機フィラーの分散液を、他の成分と混合することで、立体造形用重合性組成物内に無機フィラーが均一に分散されやすくなる。なお、上記分散時に添加した溶媒は適切なタイミングで揮発させることが好ましく、例えば、全ての成分の混合が終了した後、加熱によって揮発させてもよい。
【0095】
ここで、立体造形用重合性組成物の混合に用いられる装置としては公知のものを使用できる。例えば、ウルトラタラックス(IKAジャパン社製)、TKホモミクサー(プライミクス社製)、TKパイプラインホモミクサー(プライミクス社製)、TKフィルミックス(プライミクス社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)、クレアSS5(エム・テクニック社製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工社製)のようなメディアレス撹拌機、ビスコミル(アイメックス製)、アペックスミル(寿工業社製)、スターミル(アシザワ、ファインテック社製)、DCPスーパーフロー(日本アイリッヒ社製)、エムピーミル(井上製作所社製)、スパイクミル(井上製作所社製)、マイティーミル(井上製作所社製)、SCミル(三井鉱山社製)などのメディア攪拌機等やアルティマイザー(スギノマシン社製)、スターバースト(スギノマシン社製)、ナノマイザー(吉田機械社製)、NANO 3000(美粒社製)などの高圧衝撃式分散装置が挙げられる。
【0096】
また、あわとり練太郎(シンキー社製)やカクハンター(写真化学社製)等の自転公転ミキサーや、ハイビスミックス(プライミクス社製)、ハイビスディスパー(プライミクス社製)等の遊星式混合機、Nanoruptor(ソニック・バイオ社製)等の超音波分散装置も好適に用いることが可能である。
【0097】
2.立体造形物の製造方法
上述した液体状の立体造形用重合性組成物は、活性エネルギーを選択的に照射して、前記光重合性化合物の硬化物を含む一次硬化物を形成する工程を含む、立体造形物の製造方法に使用することができる。
【0098】
上述の立体造形用重合性組成物を用いた立体造形物の製造方法では、まず立体造形用重合性組成物に選択的に活性エネルギーを照射し、上述の光重合性化合物を所望の形状に硬化させて、一次硬化物を形成する光造形工程を行う。そして一次硬化物の形成後、当該一次硬化物内に含まれる熱重合性化合物を熱重合させる熱硬化工程を行い、立体造形物を得る。なお、一次硬化物の作製後、さらに活性エネルギーを照射する活性エネルギー照射工程を行ってもよい。また、一次硬化物の作製後、一次硬化物を洗浄し、余剰の光重合性化合物を除去する洗浄工程を行ってもよい。当該洗浄工程は、活性エネルギー照射工程の前に行ってもよく、後に行ってもよい。
【0099】
このような立体造形物の製造方法の例には、以下の2つの実施形態が含まれるが、本発明の方法は、これらの方法に限定されない。
【0100】
2-1.積層造形法(SLA法)
図1は、積層造形法により一次硬化物を作製するための装置(立体造形物の製造装置)の一例を示す模式図である。製造装置500は、液体状の立体造形用重合性組成物550を貯留可能な造形槽510と、造形槽510の内部で上下方向(深さ方向)に往復移動可能な造形ステージ520と、造形ステージ520を支持するベース521と、活性エネルギーの照射源530と、活性エネルギーを造形槽510の内部に導くガルバノミラー531等を有する。
【0101】
造形槽510は、製造しようとする一次硬化物を収容可能な大きさを有していればよい。また、活性エネルギーを照射するための光源530には、公知のものを使用することができる。例えば紫外線を照射する光源530の例には、半導体レーザー、メタルハライドランプ、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、蛍光ランプ、炭素アークランプ、タングステン-ハロゲン複写ランプ、および太陽光等が含まれる。
【0102】
当該方法ではまず、立体造形用重合性組成物550を造形槽510内に充填する。またこのとき、立体造形用重合性組成物550の液面から、作製する造形物層(第1造形物層)の厚み分だけ下方に造形ステージ520を配置する。この状態で、照射源530から出射された活性エネルギーを、ガルバノミラー531等で導いて走査し、造形ステージ520上の立体造形用重合性組成物550に照射する。このとき、第1造形物層を形成する領域にのみ選択的に活性エネルギーを照射することで、所望の形状に第1造形物層が形成される。
【0103】
その後、造形ステージ520を1層分の厚み(次に作製する第2造形物層の厚み分)だけ降下(深さ方向へ移動)させて、第1造形物層を立体造形用重合性組成物550の中に沈下させる。これにより、上記第1造形物層上に立体造形用重合性組成物が供給される。続いて上記と同様に、照射源530から出射された活性エネルギーを、ガルバノミラー531等で導き、第1造形物層より上方に位置する立体造形用重合性組成物550に照射する。このときも、第2造形物層を形成する領域にのみ選択的に活性エネルギーを照射する。これにより、前述の第1造形物層上に第2造形物層が積層される。
【0104】
その後、造形ステージ520の降下(立体造形用重合性組成物の供給)、および活性エネルギーの照射、を繰り返すことで、所望の形状に一次硬化物が形成される。なお、上記方法で作製する一次硬化物の形状は、最終的に作製する立体造形物の形状と同様とする。
【0105】
得られた一次硬化物に対し、必要に応じて、さらに活性エネルギーを照射してもよい(活性エネルギー照射工程)。活性エネルギーの照射は、所望の範囲のみ行ってもよく、一次硬化物全体に対して行ってもよい。このような活性エネルギーの照射を行うと、一次硬化物の内部まで重合性が高まり、得られる立体造形物の反りが抑制されやすくなる。
【0106】
また、得られた一次硬化物を洗浄する洗浄工程を行ってもよい。例えば、一次硬化物や熱重合性化合物を溶解させず、光重合性化合物を溶解可能な溶媒に一次硬化物を一定時間浸漬したり、当該溶媒を一次硬化物に吹き付けたりすること等によって、未硬化の光重合性化合物を洗浄(除去)することができる。溶媒の種類は、光重合性化合物や熱重合性化合物の種類により適宜選択される。またこのとき、溶媒の温度は、常温であってもよく、常温より高い温度であってもよい。本発明の立体造形用重合性組成物には、アスペクト比が5以上である無機フィラーが含まれることから、このような洗浄工程を行ったとしても熱重合性化合物が洗い流されず、得られる立体造形物の寸法精度を良好にすることができる。
【0107】
その後、一次硬化物を公知の方法で加熱し、当該一次硬化物に含まれる熱重合性化合物を重合させる。上記一次硬化物の加熱は、一次硬化物が変形しない温度で行うことが好ましく、例えば光重合性化合物の硬化物のガラス転移温度(Tg)より低い温度とすることが好ましい。
【0108】
2-2.連続造形法(CLIP法)
図2は、連続造形法により一次硬化物を作製するための装置(立体造形物の製造装置)の一例を示す模式図である。図2に示すように、製造装置600は、液体状の立体造形用重合性組成物を貯留可能な造形槽610と、上下方向(深さ方向)に往復移動可能なステージ620と、活性エネルギーを照射するための光源660等と、を有する。造形槽610は、その底部に、立体造形用重合性組成物644を透過させず、活性エネルギーおよび酸素は透過させる窓部615を有する。なお、造形槽610は、製造しようとする立体造形物よりも広い幅を有し、かつ立体造形用重合性組成物644と相互作用しないものであれば、その材質等は特に制限されない。また、窓部615の材質も、本実施形態の目的および硬化を損なわない範囲であれば特に制限されない。
【0109】
また、活性エネルギーを照射するための光源660は公知のものを使用することができ、積層造形法に用いる光源と同様とすることができる。また、光源660に液晶パネルやデジタルミラーデバイス(DMD)等の空間光変調器(Spatial Light Modulator:SLM)を有するSLM投影光学系を用いることで、活性エネルギーを所望の領域に面照射してもよい。
【0110】
当該方法では、まず、造形槽610に上述の立体造形用重合性組成物644を充填する。そして、造形槽610の底部に設けられた窓部615から、造形槽610の底部側に酸素を導入する。酸素の導入方法は特に制限されず、例えば造形槽610の外部を酸素濃度が高い雰囲気とし、当該雰囲気に圧力をかける方法等とすることができる。
【0111】
このように窓部615から造形槽610内に酸素を供給することにより、窓部615側の領域では、酸素濃度が上昇し、活性エネルギーを照射されても光重合性化合物が硬化しないバッファ領域642が形成される。一方で、バッファ領域642より上側の領域では、酸素の濃度がバッファ領域642より十分に低くなり、活性エネルギーの照射によって、光重合性化合物が硬化可能な硬化用領域となる。
【0112】
続いて、前記バッファ領域側642から活性エネルギーを選択的に照射して、硬化用領域で光重合性化合物の硬化物を形成する工程を行う。具体的には、一次硬化物作製の基点となるステージ620を、硬化用領域とバッファ領域642との界面近傍に配置する。そして、バッファ領域642側に配置された光源630からステージ620の底面側に、選択的に活性エネルギーを照射する。これにより、ステージ620の底面近傍(硬化用領域)の光重合性化合物が硬化して、一次硬化物の最上部が形成される。
【0113】
その後、ステージ620を上昇(バッファ領域642から離れる方向に移動)させる。これにより、硬化物651より造形槽610底部側の硬化用領域に、未硬化の立体造形用重合性組成物644が新たに供給される。そして、ステージ620および硬化物651を連続的または断続的に上昇させながら、光源660から活性エネルギーを連続的または断続的に、かつ選択的(硬化させる領域)に照射する。これにより、ステージ620底面から造形槽610の底部側にかけて硬化物651が連続して形成され、継ぎ目がなく、強度の高い一次造形物が製造される。なお、本実施形態においても、一次硬化物の形状は、最終的に作製する立体造形物の形状と同様とする。
【0114】
その後、得られた一次硬化物に対し、必要に応じて、さらに活性エネルギーを照射してもよい。活性エネルギーの照射は、所望の範囲のみ行ってもよく、一次硬化物全体に対して行ってもよい。上述のように、このような活性エネルギー照射を行うと、一次硬化物内部の光重合性化合物の重合性が高まり、得られる立体造形物の反りが抑制されやすくなる。またさらに、上述の積層造形法と同様に、得られた一次硬化物を洗浄する洗浄工程を行ってもよい。洗浄は、一次硬化物や熱重合性化合物を溶解させず、光重合性化合物を溶解可能な溶媒に一次硬化物を浸漬したり、当該溶媒を一次硬化物に吹き付けたりする方法とすることができる。上述のように、立体造形用重合性組成物には、アスペクト比が5以上である無機フィラーが含まれることから、このような洗浄工程を行ったとしても熱重合性化合物が洗い流されず、得られる立体造形物の寸法精度を良好にすることができる。
【0115】
その後、一次硬化物を、公知の方法で加熱し、当該一次硬化物に含まれる熱重合性化合物を重合させる。上記一次硬化物の加熱は、一次硬化物が変形しない温度で行うことが好ましく、例えば光重合性化合物の硬化物のガラス転移温度(Tg)より低い温度とすることが好ましい。
【実施例
【0116】
以下において、本発明の具体的な実施例を説明する。なお、これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0117】
[実施例1]
チタン酸カリウム(大塚化学社製、ティスモD、チタン酸カリウム繊維、アスペクト比20~40)800gおよびアセトン3000gをスターラーで撹拌しながら、分散剤(ビックケミー社製、BYK102)を200g添加した。その後、密閉容器中において1000rpmで30分間撹拌を続け、チタン酸カリウム分散アセトン溶液を作製した。
【0118】
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600、ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)3.0g、熱重合性化合物(信越シリコーン社製、X-40-2756、1液付加反応型シリコーン樹脂)200g、および上述のチタン酸カリウム分散アセトン溶液(20質量%)45gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で40分スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0119】
[実施例2]
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(信越シリコーン社製、X-40-2756)200g、および上述のチタン酸カリウム分散アセトン溶液(20質量%)110gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で40分スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0120】
[実施例3]
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(信越シリコーン社製、X-40-2756)200g、および上述のチタン酸カリウム分散アセトン溶液(20質量%)860gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0121】
[実施例4]
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(信越シリコーン社製、X-40-2756)200g、および上述のチタン酸カリウム分散アセトン溶液(20質量%)2000gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で6時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0122】
[実施例5]
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(信越シリコーン社製、X-40-2756)200g、および上述のチタン酸カリウム分散アセトン溶液(20質量%)3700gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で6時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0123】
[実施例6]
硫酸マグネシウム(宇部マテリアルズ社製、モスハイジ、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維、アスペクト比10~30)800gおよびアセトン3000gをスターラーで撹拌しながら、分散剤(ビックケミー社製、BYK102)を200g添加した。その後、密閉容器中において1000rpmで30分間撹拌を続け、硫酸マグネシウム分散アセトン溶液を作製した。
【0124】
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(信越シリコーン社製、X-40-2756)200g、および上述の硫酸マグネシウム分散アセトン溶液(20質量%)860gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0125】
[実施例7]
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(三菱ケミカル社製、jER806、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)140g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113、変性脂環式アミン)70g、および上述の硫酸マグネシウム分散アセトン溶液(20質量%)870gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0126】
[実施例8]
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(サンユレック社製、UF-110-1A、ウレタン樹脂A剤)70g、熱重合性化合物(サンユレック社製、UF-110-1B;ウレタン樹脂B剤)140g、および上述の硫酸マグネシウム分散アセトン溶液(20質量%)870gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0127】
[実施例9]
イモゴライト(アスペクト比5~40)800gおよびアセトン3000gをスターラーで撹拌しながら、分散剤(ビックケミー社製、BYK102)を200g添加した。その後、密閉容器中において1000rpmで30分間撹拌を続け、イモゴライト分散アセトン溶液を作製した。
【0128】
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(三菱ケミカル社製、jER806)140g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)70g、および上述のイモゴライト分散アセトン溶液(20質量%)870gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0129】
[実施例10]
ハロイサイト(ファイマテック社製、Dragonite-HP、アスペクト比5~40)800gおよびアセトン3000gをスターラーで撹拌しながら、分散剤(ビックケミー社製、BYK102)を200g添加した。その後、密閉容器中において1000rpmで30分間撹拌を続け、ハロイサイト分散アセトン溶液を作製した。
【0130】
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(三菱ケミカル社製、jER806)140g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)70g、および上述のハロイサイト分散アセトン溶液(20質量%)870gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0131】
[比較例1]
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)400g、および光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)6.0gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。
【0132】
[比較例2]
光重合性組成物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(三菱ケミカル社製、jER806)140g、および硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)70gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。
【0133】
[比較例3]
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)400g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)6.0g、および上述の硫酸マグネシウム分散アセトン溶液(20質量%)860gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0134】
[比較例4]
熱重合性化合物(三菱ケミカル社製、jER806)270g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)135g、および硫酸マグネシウム分散アセトン溶液(20質量%)860gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0135】
[比較例5]
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(三菱ケミカル社製、jER806)140g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)70g、および硫酸マグネシウム175gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を室温環境下で1時間スターラー撹拌した。
【0136】
[比較例6]
シリカ(日本触媒社製、シーホスターKE、KE-P250、シリカ微粒子、アスペクト比1.5未満)800gおよびアセトン3000gをスターラーで撹拌しながら、分散剤(ビックケミー社製、BYK102)を200g添加した。その後、密閉容器中において1000rpmで30分間撹拌を続け、シリカ分散アセトン溶液を作製した。
【0137】
光重合性化合物(ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL 600)200g、光重合開始剤(BASF社製、IRGACURE TPO)3.0g、熱重合性化合物(三菱ケミカル社製、jER806)140g、硬化促進剤(三菱ケミカル社製、jERキュア113)70g、およびシリカ分散アセトン溶液(20質量%)870gを混合し、立体造形用重合性組成物を調製した。得られた立体造形用重合性組成物を55℃の環境下で3時間スターラー撹拌し、アセトンを十分に揮発させた。
【0138】
[評価]
実施例および比較例で得られた立体造形用重合性組成物について、それぞれ以下のように評価した。結果を表1に示す。なお、無機フィラーの含有量は、立体造形用重合性組成物の総量に対する量(質量%)である。
【0139】
<硬化性>
(1)第1の立体造形方法(SLA法)
図1に示す立体造形物の製造装置(XYZprinting社製NOBEL1.0)の造形槽510に立体造形用重合性組成物550をそれぞれ投入した。そして、光源530からの半導体レーザ光(出力100mW、波長405nm)の照射および造形ステージ520の降下を繰り返して、JIS K7161-2(ISO 527-2) 1A形の試験片形状の一次硬化物を得た。その後、洗浄用溶媒に一定時間浸漬させ、余分な未硬化物や溶媒を圧縮空気で吹き飛ばした。そして熱処理オーブン(エスペック社製PHH-102)でそれぞれの熱重合性化合物に適した加熱条件にて熱硬化処理を施した。なお、作製の際には、引張試験片の長手方向が造形方向(ステージ520の降下方向)となるようにした。
【0140】
なお、熱重合性化合物としてシリコーン樹脂を用いた場合には、120℃で8時間加熱した。また、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を用いた場合には、80℃で2時間、100℃で2時間、120℃で2時間、140℃で1時間、160℃で1時間、180℃で1時間、200℃で1時間、220℃で1時間、計11時間加熱した。熱重合性化合物としてウレタン樹脂を用いた場合には、120℃で8時間加熱した。
【0141】
(2)第2の立体造形方法(CLIP法)
図2に示す製造装置600の造形槽610に立体造形用重合性組成物644をそれぞれ投入した。当該造形槽610の底部には、重合阻害剤である酸素の透過が可能なBiogeneral社製の0.0025インチ厚のTeflon(登録商標)AF2400フィルム(窓部615)が配置されている。そして、造形槽610の外側の雰囲気を酸素雰囲気としたうえで、適度に加圧を行った。これにより、造形槽610の底部側に、立体造形用重合性組成物644および酸素を含むバッファ領域642が形成され、バッファ領域642より上部は、バッファ領域より酸素濃度が低い硬化用領域が形成された。
【0142】
そして、紫外線源:LEDプロジェクタ(Texas Instruments社製のDLP(VISITECH LE4910H UV-388))から光を面状に照射しながらステージ620を上昇させた。このとき、紫外線の照射強度は5mW/cmとした。また、ステージの引き上げ速度は、50mm/hrとした。そして、JIS K7161-2(ISO 527-2) 1A形の試験片形状の一次硬化物を作製した。その後、洗浄用溶媒に一定時間浸漬させ、余分な未硬化物や溶媒を圧縮空気で吹き飛ばした。そして熱処理オーブン(エスペック社製PHH-102)でそれぞれの熱重合性化合物に適した加熱条件(SLA法と同様の温度および加熱時間)にて熱硬化処理を施した。なお、作製の際には、引張試験片の長手方向が造形方向(ステージ620の引き上げ方向)となるようにした。
【0143】
(3)評価
それぞれの方法で作製した立体造形物について、硬化の程度を確認し、以下の基準でそれぞれ評価した。
○:十分に硬化した
×:硬化しなかった
【0144】
<曲げ弾性率>
各立体造形物について、JIS K7171に準拠して曲げ試験を実施した。具体的には、インストロン5566型によって得られた測定結果より曲げ弾性率を算出し、以下のように評価した。△以上が、実用上問題のない評価である。
◎:曲げ弾性率が5000MPa以上の場合
〇:曲げ弾性率が4000MPa以上5000MPa未満である場合
△:曲げ弾性率が3000MPa以上4000MPa未満である場合
×:曲げ弾性率が3000MPa未満である場合
【0145】
<曲げ強度>
各立体造形物について、JIS K7171に準拠して曲げ試験を実施した。具体的には、インストロン5566型によって得られた測定結果より曲げ強度を算出し、以下のように評価した。△以上が、実用上問題のない評価である。
◎:曲げ強度が150MPa以上である場合
○:曲げ強度が100MPa以上150MPa未満である場合
△:曲げ強度が50MPa以上100MPa未満である場合
×:曲げ強度が50MPa未満である場合
【0146】
<衝撃強度>
各立体造形物について、JIS K7111に準拠してシャルピー衝撃試験を実施した。具体的には、デジタル衝撃試験機DG-UB型によって得られた測定結果より衝撃強度を算出し、以下のように評価した。△以上が、実用上問題のない評価である。
◎:衝撃強度が12kJ/m以上の場合
〇:衝撃強度が8kJ/m以上12kJ/m未満の場合
△:衝撃強度が6kJ/m以上8kJ/m未満の場合
×:衝撃強度が6kJ/m未満の場合
【0147】
<寸法精度>
立体造形物の寸法精度の評価は、各立体造形物の寸法を測定して行った。具体的には、JIS K7161-2(ISO 527-2)1A形の試験片のつかみ部の幅(b2)の左右寸法差の絶対値をBとし、つかみ部の厚さ(h)の左右寸法差の絶対値をHとし、以下のように評価した。△以上が、実用上問題のない評価である。
◎:BおよびHが、それぞれ0.1mm未満である場合
〇:BおよびHのうち、いずれか一方が0.1mm未満であり、他方が0.1mm以上0.2mm未満である場合
△:BおよびHの両方が、0.1mm以上0.2mm未満である場合
×:BおよびHのうちいずれかが0.2mm以上となる場合、もしくは造形物が得られなかった場合
【0148】
【表1】
【0149】
上記表1に示されるように、光重合性化合物と、熱重合性化合物と、アスペクト比が5以上である無機フィラーと、分散剤とを含む立体造形用重合性組成物を用いた場合、曲げ弾性率、曲げ強度、衝撃強度、および寸法精度がいずれも実用上問題ないレベルになった(実施例1~10)。アスペクト比が高い無機フィラーが、樹脂を橋かけ補強するため、例えば外部の応力によって立体造形物にクラック等が生じたとしても、クラックが広がり難く、曲げ弾性率や曲げ強度、衝撃強度が高まったと考えられる。また、立体造形物の作製時に洗浄工程を行ったが、いずれも寸法精度が良好であった。
【0150】
また特に、熱重合性化合物として、エポキシ基またはイソシアネート基を有する化合物を用いた場合(実施例7~10)、衝撃強度が高まりやすかった。エポキシ基またはイソシアネート基が、フィラー表面の水酸基等と相互作用しやすく、熱重合性化合物とフィラーとが結合しやすかったと考えられる。その結果、立体造形物の衝撃強度が高まったと考えられる。
【0151】
またさらに、無機フィラーとして、同心円状に複数の層が重なったチューブ構造のイモゴライトやハロイサイトを用いた場合、曲げ弾性率や曲げ強度、衝撃強度が特に高まりやすかった。イモゴライトやハロイサイトでは、複数の層が重なっていることから、例えば外部からの応力によって外側の層が破断したとしても、内側の層によって、樹脂どうしを橋かけ補強することができる。そのため、曲げ弾性率、曲げ強度、および衝撃強度が格段に高まったと考えられる。
【0152】
一方、立体造形用重合性組成物が、光重合性化合物を含まない場合には、立体造形物が得られなかった(比較例4)。また、立体造形用重合性組成物が、熱重合性化合物を含まない場合、衝撃強度が低くなりやすく、さらに寸法精度も低かった(比較例1および3)。
【0153】
さらに、立体造形用重合性組成物がアスペクト比5以上の無機フィラーを含まない場合、衝撃強度が低かった(比較例2および6)。上述の橋かけ構造が形成されず、立体造形物が脆くなったと推察される。
【0154】
また、立体造形用重合性組成物が、無機フィラーを含んでいたとしても、分散剤を含まない場合には、無機フィラーが十分にその効果を発揮できず、曲げ弾性率や衝撃強度が低くなりやすかった(比較例5)。
【0155】
本出願は、2018年5月23日出願の特願2018-098627号に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明に係る立体造形用重合性組成物によれば、SLA法、およびCLIP法のいずれの方法によっても、精度よく立体造形物を形成することが可能である。またこれにより得られる立体造形物は、耐衝撃性と高い弾性率とを兼ね備える。したがって、本発明は、立体造形法のさらなる普及に寄与するものと思われる。
【符号の説明】
【0157】
500、600 製造装置
510、610 造形槽
615 窓部
520、620 ステージ
521 ベース
530、660 光源
531 ガルバノミラー
642 バッファ領域
550、644 立体造形用重合性組成物
651 硬化物
図1
図2