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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】導電層付基板及びタッチパネル用部材
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20221109BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20221109BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221109BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20221109BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20221109BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/027 502
G03F7/004 501
G06F3/041 495
G06F3/041 400
G06F3/044 122
C08F290/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020533159
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2020022327
(87)【国際公開番号】W WO2020250825
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2019108462
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】此島 陽平
(72)【発明者】
【氏名】三井 博子
(72)【発明者】
【氏名】山舖 有香
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-153834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
G03F 7/027
G03F 7/004
G06F 3/041
G06F 3/044
C08F 290/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に導電層と絶縁層が形成された導電層付基板であって、前記絶縁層が(A)側鎖に脂環式骨格およびアルカリ可溶性基を有するアクリルポリマー、(B)光重合開始剤および(C)不飽和二重結合を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜であり、該(C)不飽和二重結合を有する化合物が下記一般式(1)で表される構造を有する化合物(C-1)を含み、前記感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合に、前記化合物(C-1)を全固形分中0.4~5質量%含有する導電層付基板:
【化1】
一般式(1)中、R~Rタクリロイル基またはアクリロイル基を示す;R~Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい;た、nは1または2である。
【請求項2】
前記感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合に、前記化合物(C-1)を全固形分中0.4~3質量%含有する請求項1記載の導電層付基板。
【請求項3】
前記導電層が銀を含有する請求項1または2記載の導電層付基板。
【請求項4】
前記導電層中に前記銀を60~95質量%含有する請求項3記載の導電層付基板。
【請求項5】
前記導電層中にアルカリ可溶性基を有する有機成分を含有する請求項1~4いずれか一項記載の導電層付基板。
【請求項6】
前記アクリルポリマー(A)が、側鎖に脂環式骨格を有する繰り返し単位を全繰り返し単位中、2~10モル%有する請求項1~5いずれか一項記載の導電層付基板。
【請求項7】
前記側鎖に脂環式骨格を有する繰り返し単位が下記一般式(2)で表される繰り返し単位である請求項1~6いずれか一項記載の導電層付基板:
【化2】
一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。
【請求項8】
前記アクリルポリマー(A)が、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有する請求項1~7いずれか一項記載の導電層付基板:
【化3】
一般式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を示す;R~R13は水素原子、炭素数1~6の有機基またはヒドロキシル基を示す;R~R13はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【請求項9】
前記アクリルポリマー(A)の全繰り返し単位中、上記一般式(3)で表される繰り返し単位を20~50モル%有する請求項8記載の導電層付基板。
【請求項10】
前記アクリルポリマー(A)が、下記一般式(4)で表される繰り返し単位および(5)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位中、合計40~60モル%有する請求項1~9いずれか一項記載の導電層付基板:
【化4】
一般式(4)中、R14は水素原子またはメチル基を示す;
【化5】
一般式(5)中、R15~R16は水素原子またはメチル基を示す;R15~R16はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【請求項11】
前記絶縁層が、さらに着色剤(D)を含有する請求項1~10いずれか一項記載の導電層付基板。
【請求項12】
導電層付基板が複数の導電層を有し、該複数の導電層間に前記絶縁層を有する請求項1~11いずれか一項記載の導電層付基板。
【請求項13】
請求項1~12いずれか一項記載の導電層付基板を有するタッチパネル用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電層付基板、タッチパネル用部材およびタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のスマートフォンやタブレット端末の多くは静電容量式タッチパネルが使用されている。静電容量式タッチパネルのセンサー基板は、ガラス上にITO(Indium Ti Oxide)や金属(銀、モリブデン、アルミニウム等)がパターニングされた配線を有し、配線の交差部が絶縁膜で絶縁され、さらに配線の表面に保護膜が形成された多層配線構造が一般的である。一般に、保護膜や絶縁膜は感光性材料によって形成される場合が多い。また、タッチパネルの大型化に伴う高感度化、高解像度化の観点から、配線部を金属で形成する方式の開発が進められているとともに、微細なパターンを形成できる感光性材料が求められている。
【0003】
感光性透明材料として、アルカリ可溶性樹脂、重合性モノマー、光重合開始剤およびその他添加剤を含有するUV硬化型コーティング組成物が知られており、タッチパネルの絶縁膜用感光性樹脂組成物が開示されている。(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0004】
これらの組成物の特性向上の手法として、特許文献3では特定の比率のカルド樹脂とアクリルポリマーの混合が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-27033号公報
【文献】特開2013-140229号公報
【文献】国際公開第2017/159543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多層金属配線は、高温高湿下で層間の絶縁層中を金属イオンが移動するマイグレーション現象が生じ短絡しやすいことから、絶縁層には、高解像度化に加え、高温高湿下でのマイグレーション耐性が求められている。特許文献1や2には、得られた硬化膜が透明性に優れていることが記載されている。しかしながら、パターン加工性や、高温高湿下におけるマイグレーション耐性を満足するものではなかった。また、特許文献3に記載の硬化膜は、マイグレーション耐性を満足するものではなかった。
【0007】
本発明は、透明基板上に導電層と絶縁層が形成された導電層付基板であって、前記絶縁層を形成する感光性樹脂組成物が、解像度に優れるとともに、高温高湿下におけるマイグレーション耐性に優れる導電層付基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、側鎖に脂環式骨格およびアルカリ可溶性基を有するアクリルポリマーと、特定の構造を有する化合物とを組み合わせた感光性樹脂組成物を用いて、導電層付基板に絶縁層を形成することによって、本発明の目的を達成できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明の導電層付基板は、透明基板上に導電層と絶縁層が形成された導電層付基板であって、前記絶縁層が(A)側鎖に脂環式骨格およびアルカリ可溶性基を有するアクリルポリマー、(B)光重合開始剤および(C)不飽和二重結合を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜であり、該(C)不飽和二重結合を有する化合物が下記一般式(1)で表される構造を有する化合物(C-1)を含む導電層付基板である。
【0010】
【化1】
【0011】
一般式(1)中、R~Rは水素原子、メタクリロイル基、アクリロイル基または有機基を示す。R~Rのうち3つ以上は、メタクリロイル基またはアクリロイル基である。また、n=0~10である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導電層付基板は、透明基板上に導電層と絶縁層が形成された導電層付基板であって、前記絶縁層が、解像度に優れるとともに、高温高湿下におけるマイグレーション耐性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例におけるマイグレーション耐性の評価に用いる積層基板の構成を示す上面図である。
図2】実施例におけるマイグレーション耐性の評価に用いる積層基板の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の導電層付基板は、透明基板上に導電層と絶縁層が形成された導電層付基板であって、前記絶縁層が(A)側鎖に脂環式骨格およびアルカリ可溶性基を有するアクリルポリマー、(B)光重合開始剤および(C)不飽和二重結合を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜であり、該(C)不飽和二重結合を有する化合物が前記一般式(1)で表される構造を有する化合物(C-1)を含む導電層付基板である:
[アクリルポリマー(A)]
前記絶縁層を形成する感光性樹脂組成物は、(A)側鎖に脂環式骨格およびアルカリ可溶性基を有するアクリルポリマー(以下、アクリルポリマー(A)と呼ぶ)を含有する。
【0015】
アクリルポリマー(A)が脂環式骨格を有することにより、絶縁層に疎水性を付与し、高温高湿下におけるマイグレーション耐性を向上させることができる。
【0016】
ここで、脂環式骨格とは、芳香環構造を含まない炭化水素基であり、単環の脂環式骨格および多環の脂環式骨格を含む。単環の脂環式骨格および多環の脂環式骨格を両方含んでも構わない。ただし、脂環式骨格のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。マイグレーション耐性を向上させる観点から、多環脂環式骨格であることが好ましい。
【0017】
アクリルポリマー(A)は、側鎖に脂環式骨格を有する繰り返し単位として、一般式(2)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0018】
【化2】
【0019】
一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。
【0020】
アクリルポリマー(A)は、全繰り返し単位中、一般式(2)で表される繰り返し単位を0.1~10モル%有することが好ましい。一般式(2)で表される繰り返し単位の含有量が0.1モル%以上であると、絶縁層の疎水性が向上し、高温高湿下におけるマイグレーション耐性がより向上する。一般式(2)で表される繰り返し単位を、1モル%以上有することがより好ましく、2モル%以上有することがさらに好ましい。一方、一般式(2)で表される繰り返し単位が10モル%以下であると、より微細なパターンを形成することができる。
【0021】
また、アクリルポリマー(A)は、一般式(3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0022】
【化3】
【0023】
一般式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を示す。R~R13は水素原子、炭素数1~6の有機基またはヒドロキシル基を示す。R~R13はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0024】
アクリルポリマー(A)が一般式(3)で表される繰り返し単位を有することにより、アルカリ現像時の膜荒れを防ぎ、絶縁層に高い透明性を付与することができる。アクリルポリマー(A)は、全繰り返し単位中、一般式(3)で表される繰り返し単位を20~50モル%有することが好ましい。一般式(3)で表される繰り返し単位の含有量が20モル%以上有することにより、現像特性が向上し、より微細なパターンを形成することができる。一般式(3)で表される繰り返し単位を、25モル%以上有することがより好ましく、30モル%以上有することがさらに好ましい。一方、一般式(3)で表される繰り返し単位が50モル%以下有することにより、絶縁層の耐光性が向上する。アクリルポリマー(A)が一般式(3)で表される繰り返し単位を、45モル%以下有することがより好ましい。
【0025】
一般式(3)中、R~R13の有機基は炭素数1~6のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられるが、これに限定されない。
【0026】
アクリルポリマー(A)がアルカリ可溶性基を有することにより、感光性樹脂組成物にパターン加工性を付与し、解像度に優れる絶縁層を得ることができる。
【0027】
ここで、アルカリ可溶性基とは、カルボキシル基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基および酸無水物基から選ばれた基である。特に反応性と汎用性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
【0028】
前記アクリルポリマー(A)は、側鎖にアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0029】
【化4】
【0030】
一般式(4)中、R14は水素原子またはメチル基を示す。
【0031】
アクリルポリマー(A)が一般式(4)で表される繰り返し単位を有することにより、アルカリ現像によるパターン加工性を付与することができる。アクリルポリマー(A)は、全繰り返し単位中、一般式(4)で表される繰り返し単位を5~60モル%有することが好ましい。一般式(4)で表される繰り返し単位の含有量が5モル%以上有することにより、現像特性が向上し、より微細なパターンを形成することができる。一般式(4)で表される繰り返し単位を、10モル%以上有することがより好ましい。一方、一般式(4)で表される繰り返し単位が60モル%以下有することにより、樹脂組成物の親水性が低下し、アルカリ現像によるパターン加工が容易となる。アクリルポリマー(A)が一般式(4)で表される繰り返し単位を、45モル%以下有することがより好ましい。
【0032】
前記アクリルポリマー(A)は、下記一般式(5)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0033】
【化5】
【0034】
一般式(5)中、R15~R16は水素原子またはメチル基を示す。R15~R16はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0035】
アクリルポリマー(A)が一般式(5)で表される繰り返し単位を有することにより、ネガ型の感光性を呈し、微細パターンの形成が可能となる。アクリルポリマー(A)は、全繰り返し単位中、一般式(5)で表される繰り返し単位を5~60モル%有することが好ましい。一般式(5)で表される繰り返し単位の含有量が5モル%以上有することにより、露光部の硬化度が向上するため、露光部と未露光部におけるアルカリ現像液への溶解性の差が大きくなり、パターン形成が容易となる。一般式(5)で表される繰り返し単位を、15モル%以上有することがより好ましい。一方、一般式(5)で表される繰り返し単位が60モル%以下有することにより、露光による感度を適度に抑え、微細パターンの形成が容易となる。アクリルポリマー(A)が一般式(5)で表される繰り返し単位を、40モル%以下有することがより好ましい。
【0036】
アクリルポリマー(A)中に、一般式(4)で表される繰り返し単位および(5)で表される繰り返し単位を両方有することにより、親水性を付与し、より微細なパターンの形成が可能となるので好ましい。上記一般式(4)で表される繰り返し単位および(5)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位中、合計40~60モル%有することが好ましい。一般式(4)で表される繰り返し単位および(5)で表される繰り返し単位を合計40モル%以上有することにより、構造中の水酸基の寄与により現像特性が向上し、より微細なパターンを形成することができる。一方、一般式(4)で表される繰り返し単位および(5)で表される繰り返し単位を合計60モル%以下有することにより、より微細なパターンを形成可能であることに加え、高温高湿下のマイグレーション耐性がより向上する。
【0037】
前記アクリルポリマー(A)は、前記一般式(2)~(5)のいずれかで表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有してもよい。そのような繰り返し単位としては、例えばスチレン、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクル酸グリシジル等が挙げられる。
【0038】
前記アクリルポリマー(A)は、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体をラジカル重合させることにより得られる。一般式(2)~(4)で表される繰り返し単位は、それぞれの構造を形成する単量体をラジカル重合することにより得られる。また、一般式(5)で表される繰り返し単位は、一般式(4)で表される繰り返し単位を含むアクリルポリマーに対し、(メタ)アクリル酸グリシジルを付加反応させることにより得られる。
【0039】
ラジカル共重合の触媒に特に制限はなく、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物等が一般的に用いられる。
【0040】
また、(メタ)アクリル酸グリシジルの付加反応に用いる触媒に特に制限はなく、公知の触媒を用いることができるが、例えば、ジメチルアニリン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルベンジルアミン等のアミノ系触媒、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリン酸ジブチル錫等の錫系触媒、2-エチルヘキサン酸チタン(IV)等のチタン系触媒、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒およびアセチルアセトネートクロム、塩化クロム等のクロム系触媒等が用いられる。
【0041】
アクリルポリマー(A)は、多官能(メタ)アクリレート化合物と多価メルカプト化合物とを、マイケル付加(カルボニル基に関しβ位)により重合したものを用いることもできる。
【0042】
アクリルポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算で、5,000~15,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)を5,000以上とすることにより、感度が向上し、また、ポリマー分子末端の酸化劣化を抑制でき、色特性が向上する。重量平均分子量(Mw)はより好ましくは、7,000以上である。一方、重量平均分子量(Mw)を15,000以下とすることにより、より微細なパターンを形成することができ、透明な絶縁層を形成することが可能となる。重量平均分子量(Mw)はより好ましくは12,000以下である。
【0043】
絶縁層を形成するための感光性樹脂組成物において、アクリルポリマー(A)の含有量に特に制限はなく、目的とする絶縁層の膜厚や用途により任意に選ぶことができるが、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合に、アクリルポリマー(A)の含有量を10質量%以上70質量%以下とすることが一般的である。
【0044】
[光重合開始剤(B)]
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物は、光重合開始剤(B)を含有する。光重合開始剤(B)は、光(紫外線、電子線を含む)により分解および/または反応し、ラジカルを発生させるものである。具体例としては、1,2-プロパンジオン-3-シクロペンタン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、3-シクロペンチルエタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。これらを1種類または複数種類組み合わせて用いることができる。
【0045】
光重合開始剤(B)の含有量は、特に制限はないが、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合に、0.1~20質量%であることが好ましい。光重合開始剤(B)の含有量が0.1質量%以上であると感光特性を付与でき、より微細なパターンを形成することができる。光重合開始剤(B)の含有量は、より好ましくは0.5質量%以上である。一方、光重合開始剤(B)の含有量が20質量%以下であると、光重合開始剤の残基による黄変を抑制できるため、透明な絶縁層を形成することができる。光重合開始剤(B)の含有量は、より好ましくは15質量%以下である。
【0046】
[不飽和二重結合を有する化合物(C)]
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物は、不飽和二重結合を有する化合物(C)を含有し、不飽和二重結合を有する化合物(C)としてペンタエリスリトール骨格を有する化合物を含む。不飽和二重結合およびペンタエリスリトール骨格を有する化合物とは、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物(C-1)である。化合物(C-1)を含有することで、微細なパターンを形成することができる。
【0047】
【化6】
【0048】
一般式(1)中、R~Rは水素原子、メタクリロイル基、アクリロイル基または有機基を示す。R~Rのうち3つ以上は、メタクリロイル基またはアクリロイル基である。また、n=0~10である。R~Rの有機基は炭素数1~6のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられるが、これに限定されない。
【0049】
化合物(C-1)は、一般式(1)中、nが1以上であることが好ましい。一般式(1)中、nが1以上であることで、主鎖骨格に柔軟性が付与され、分子同士の接触確率向上によりラジカル重合性が向上し、露光量が少ない場合にも微細パターン形成が可能となる。上記化合物(C-1)の具体例を以下に挙げるが、これに限定されない。
【0050】
上記一般式(1)中、nが0である化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、メトキシ化ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ化ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、メトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、メトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ブトキシ化ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシ化ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ブトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ブトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0051】
上記一般式(1)中、nが1である化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0052】
上記一般式(1)中、nが2以上である化合物としては、例えば、トリペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらを1種類または複数種類組み合わせて用いることができる。
【0053】
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物において、化合物(C-1)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合に、0.01~5質量%以下であることが好ましい。化合物(C-1)の含有量が0.01質量%以上であると、感光特性の観点から、良好な微細パターンを得ることが容易となる。一方、化合物(C-1)の含有量が5質量%以下であると、絶縁層の親水性が低くなるため、高温高湿下でのマイグレーション耐性がより向上する。化合物(C-1)の含有量は、解像度の観点から、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0054】
また、感光性樹脂組成物は、不飽和二重結合を有する化合物(C)として、化合物(C-1)以外の不飽和二重結合を有する化合物(以下、その他の化合物(C)と呼ぶ)を含有してもよく、樹脂組成物の感度を調整することができる。
【0055】
その他の化合物(C)の含有量は、特に制限はなく、所望の用途により任意に選ぶことができるが、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合に、1~30質量%が好ましい。その他の化合物(C)の含有量を1質量%以上とすることにより、感度をより向上させることができる。その他の化合物(C)の含有量は5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。一方、その他の化合物(C)の含有量を30質量%以下とすることにより、より微細なパターンを形成することが可能となる。その他の化合物(C)の含有量はより好ましくは20質量%以下である。
【0056】
不飽和二重結合を2つ有する化合物としては、例えば、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを1種類または複数種類組み合わせて用いることができる。
【0057】
さらに、不飽和二重結合を有する化合物(C)として、多官能アリル化合物を含有していてもよい。多官能アリル化合物を含有することにより、絶縁層の高温高湿下でのマイグレーション耐性をさらに向上させることができるほか、更なる微細パターンを有する絶縁層を得られ、積層加工時の見栄え向上に寄与する。多官能アリル化合物としては、イソシアヌレート骨格を有する下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0058】
【化7】
【0059】
一般式(6)中、l、m、nはそれぞれ独立に0~8の整数を表す。XおよびXはアリル基を表し、Xは水素原子、アリル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、カルボキシル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基またはアルコキシ基を表す。
【0060】
一般式(6)で表される多官能アリル化合物として例えば、以下の化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0061】
【化8】
【0062】
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物において、多官能アリル化合物の含有量は、特に制限はなく、所望の用途により任意に選ぶことができるが、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合に、1~30質量%以下が好ましい。多官能アリル化合物の含有量が1質量%以上であると、露光によるパターン太りを抑制し、より微細なパターンを形成することができる。多官能アリル化合物の含有量はさらに好ましくは5質量%以上である。一方、多官能アリル化合物の含有量が30質量%以下であると、加熱による熱硬化を促進し、硬化度の高い膜を得ることができる。多官能アリル化合物の含有量はより好ましくは20質量%以下である。これらを1種類または複数種類組み合わせて用いることができる。
【0063】
[着色剤(D)]
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物は、着色剤(D)を含有することが好ましく、絶縁層のb値を調整することができる。なお、b値とは国際照明委員会1976に規定されるL表色系による値である。着色剤(D)を含有することにより、絶縁層絶縁層の黄色味を低減し、色目を向上させることができる。L表色系におけるL値、a値、b値は、広く知られているように、L値が明度、a値とb値とが、色相と彩度を表している。具体的には、a値が正の値であれば赤色の色相、負の値であれば緑色の色相を示す。また、b値が正の値であれば黄色の色相、負の値であれば青色の色相を示す。また、a値とb値とも、絶対値が大きいほどその色の彩度が大きく鮮やかな色であることを示し、絶対値が小さいほど彩度が小さいことを示す。bの測定値は、0の近傍がニュートラルであるため、観察したときの色調は、視覚上、無色と視認しやすくなり好ましい。絶縁層のb*値は、JIS-Z8729:1994に規定される方法のうち、反射による測定方法によって測定することができる。より具体的には、後述のように、ガラス基板上に絶縁層を形成する感光性樹脂組成物を硬化させて硬化膜を形成し、該硬化膜を分光光度計(CM-2600d;コニカミノルタ(株)製)を用いて全反射光の反射率を測定し、反射色度b*を測定することにより算出することができる。
【0064】
着色剤(D)としては、顔料、染料などが挙げられる。なかでも、耐熱性および耐光性の観点から、顔料が好ましい。絶縁層の黄色味を低減する観点から、青色着色剤が好ましい。
【0065】
前記着色剤(D)は、金属錯体を含有することが好ましい。金属錯体を用いることにより、微量添加で絶縁層の黄色味をより低減することができる。金属錯体としては、例えば、ポルフィリンまたはフタロシアニン、少なくとも一部に置換基を有するフタロシアニンに金属が配位した化合物などが挙げられる。前記置換基としては、例えば、塩素などのハロゲン、スルホン酸基、アミノ基などが挙げられる。配位する金属としては、例えば、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、アルミニウムなどが挙げられる。これらの金属錯体を二種以上含有していてもよい。金属錯体としては、着色剤と他の有機成分との反応を抑制し、かつ、工程での高温処理時に退色せずに、色目をより向上させることができることから、フタロシアニンの銅錯体が好ましい。より好ましくは銅フタロシアニンスルホン酸アンモニウム塩、銅フタロシアニン3級アミン化合物、銅フタロシアニンスルホン酸アミド化合物である。着色剤(D)は、MASSスペクトル分析等により検出できる。
【0066】
フタロシアニンの銅錯体の例としては、Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6、Pigment Blue 16などが挙げられる。なかでも、耐光性を向上し、太陽光に当たっても変色が発生せず、良好な外観を維持できるという観点から、ε型、α型の構造を有する銅フタロシアニンブルー顔料であるPigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:6などが好ましい。
【0067】
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物において、着色剤(D)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合に、0.01~0.5質量%以下であることが好ましい。着色剤(D)の含有量を0.01質量%以上とすることにより着色剤(D)の効果を十分なものとし、絶縁層の色目をより向上させることができる。着色剤(D)の含有量はより好ましくは0.05質量%以上である。また、着色剤(D)の含有量を0.5質量%以下とすることにより、着色剤(D)の吸収を抑制して全光線透過率を向上できる。着色剤(D)の含有量はより好ましくは0.4質量%以下である。着色剤(D)の含有量は、TG-MASSにより定量できる。
【0068】
[多官能エポキシ化合物]
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物は、多官能エポキシ化合物を含有してもよい。多官能エポキシ化合物を含有することで、絶縁層の高温高湿下でのマイグレーション耐性をさらに向上させることができるほか、硬化時の膜収縮を抑制することにより、より平滑な絶縁層を得られ、積層加工時の見栄え向上に寄与する。多官能エポキシ化合物としては、イソシアヌレート骨格を有する多官能エポキシ化合物および/または芳香環を3つ以上有する多官能エポキシ化合物が好ましい。
【0069】
イソシアヌレート骨格を有する多官能エポキシ化合物として例えば、下記一般式(7)~(12)のいずれかで表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0070】
【化9】
【0071】
17~R22は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシル基、フェニル基、フェノキシ基、炭素数2~6のアルキルカルボニルオキシ基またはそれらの置換体を表す。
【0072】
芳香環を3つ以上有する多官能エポキシ化合物としては例えば、下記一般式(13)~(17)のいずれかで表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0073】
【化10】
【0074】
23~R28、R29~R32、R33~R36、R37~R40、R41~R44は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基を表す。o、pは0~15の整数を表す。
【0075】
これらの中でも特に高温高湿下でのマイグレーション耐性の向上に効果があるのは前記構造式(7)、(10)、(11)、(13)および(14)で表される構造を有する化合物である。
【0076】
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物において、多官能エポキシ化合物の含有量は、特に制限はなく、所望の用途により任意に選ぶことができるが、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合に、1質量%以上、30質量%以下が好ましく、さらに好ましくは5質量%以上、20質量%以下である。これらを1種類または複数種類組み合わせて用いることができる。
【0077】
[ヒンダードアミン系光安定剤]
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含有してもよい。ヒンダードアミン系光安定剤を含有することで、絶縁層の着色を低減できるとともに、耐光性を向上させることができる。
【0078】
ヒンダードアミン系光安定剤として例えば、下記一般式(18)~(22)のいずれかで表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0079】
【化11】
【0080】
q、r、sおよびtはそれぞれ0~15の整数を表す。
【0081】
これらの中でも、反応性が高く硬化に作用することから、ヒンダードアミン系光安定剤が不飽和二重結合を有することが好ましい。例えば、不飽和二重結合を有する上記構造式(18)または(19)で表される構造を有する化合物が特に好ましい。
【0082】
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物において、ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、特に制限はないが、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合に、0.01質量%以上、10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、5質量%以下である。これらを1種類または複数種類組み合わせて用いることができる。
【0083】
[シランカップリング剤]
絶縁層を形成する感光性組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤を含有することで、基板と絶縁層の密着性がより向上する。
【0084】
シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、N-t-ブチル-3-(3-トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミド等が挙げられる。
【0085】
これらの中でも、基板との密着性向上の観点から、シランカップリング剤は窒素を含有することが好ましい。窒素がシランカップリング剤と基板表面との縮合反応の触媒として作用するため、密着性が大きく向上する。
【0086】
窒素を含有するシランカップリング剤の具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N-(ビニルベンジル)-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン塩酸塩、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、N-t-ブチル-3-(3-トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミド、N-t-ブチル-3-(3-トリエトキシシリルプロピル)コハク酸イミド等が挙げられる。
【0087】
この中でも保存安定性の観点から特に、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシランなどが好ましい。
【0088】
シランカップリング剤の添加量は、特に制限は無いが、感光性樹脂組成物の固形分全体を100質量%とした場合に、0.1質量%以上、10質量%以下が好ましい。添加量が0.1質量%より少ないと密着性向上の効果が低い。添加量が10質量%より多いと保管中にシランカップリング剤同士が縮合反応し、現像時の溶け残りの原因となる。
【0089】
[硬化剤]
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物は、樹脂組成物の硬化を促進させる、あるいは硬化を容易ならしめる各種の硬化剤を含有してもよい。硬化剤としては特に限定はなく公知のものが使用できるが、具体例としては、窒素含有有機物、シリコーン樹脂硬化剤、各種金属アルコレート、各種金属キレート化合物、イソシアネート化合物およびその重合体、メチロール化メラミン誘導体、メチロール化尿素誘導体等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。なかでも、硬化剤の安定性、得られた塗布膜の加工性等から金属キレート化合物、メチロール化メラミン誘導体、メチロール化尿素誘導体などが好ましく用いられる。
【0090】
[紫外線吸収剤]
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤を含有することで、得られる絶縁層の耐光性が向上し、パターン加工を必要とする用途では現像後の解像度が向上する。紫外線吸収剤としては特に限定はなく公知のものが使用できるが、透明性、非着色性の面から、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物が好ましく用いられる。
【0091】
[重合禁止剤]
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤を適量含有することで、現像後の解像度が向上する。重合禁止剤としては特に限定はなく公知のものが使用でき、たとえば、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン、ハイドロキノン、4-メトキシフェノール、1,4-ベンゾキノン、t-ブチルカテコールが挙げられる。また、市販の重合禁止剤としては、「IRGANOX1010」、「IRGANOX245」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX565」(以上、BASF製)等が挙げられる。
【0092】
[界面活性剤]
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物は、塗布時のフロー性向上のために、各種のフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の各種界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の種類に特に制限はなく、例えば、“メガファック”(登録商標)「F477(商品名)」(以上、大日本インキ化学工業(株)製)等のフッ素系界面活性剤、「BYK-333(商品名)」、(ビックケミー・ジャパン(株)製)等のシリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤等を用いることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0093】
[溶剤]
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物は、溶剤を含有してもよい。溶剤は、好ましくは大気圧下の沸点が110~250℃であり、さらに好ましくは200℃以下である。なお、これらの溶剤を複数種類用いてもよい。沸点が200℃より高いと、塗布膜形成時に膜中の残存溶剤量が多くなりキュア時の膜収縮が大きくなり、良好な平坦性が得られなくなる。一方、沸点が110℃より低いと、塗布膜形成時の乾燥が速すぎて膜表面が荒れる等、塗膜性が悪くなる。そのため、大気圧下の沸点が200℃以下の溶剤が感光性樹脂組成物中における、溶剤全体の50質量%以上であることが好ましい。
【0094】
溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸メトキシメチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1-メトキシプロピル-2-アセテート、乳酸メチル、シクロペンタノン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、酢酸2-エトキシエチル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、乳酸ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルが挙げられる。
【0095】
溶剤の含有量に特に制限はなく、塗布方法等に応じて任意の量用いることができる。例えば、スピンコーティングにより膜形成を行う場合には、感光性樹脂組成物全体の50質量%以上、95質量%以下とすることが一般的である。
【0096】
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物には、必要に応じて、溶解抑止剤、安定剤、消泡剤等の添加剤を含有することもできる。
【0097】
絶縁層を形成する感光性樹脂組成物の固形分濃度に特に制限はなく、塗布方法等に応じて任意の量の溶媒や溶質を用いることができる。例えば、後述のようにスピンコーティングにより膜形成を行う場合には、固形分濃度を5質量%以上、50質量%以下とすることが一般的である。ここで、固形分とは、感光性樹脂組成物から溶剤を除いたものである。
【0098】
次に、絶縁層を形成する感光性樹脂組成物の代表的な製造方法について説明する。例えば、アクリルポリマー(A)、光重合開始剤(B)、不飽和二重結合を有する化合物(C)、着色剤(D)および必要によりその他の添加剤を任意の溶剤に加え、撹拌して溶解させた後、得られた溶液を濾過し、感光性樹脂組成物が得られる。
【0099】
本発明の導電層付基板に形成された絶縁層は、上記感光性樹脂組成物を硬化させてなるものである。上記感光性樹脂組成物は後述する方法により硬化させることができる。
【0100】
絶縁層の膜厚は、特に制限はないが、0.1~15μmが好ましい。絶縁層の膜厚を0.1μm以上とすることにより、高温高湿下のマイグレーション耐性がより向上する。絶縁層の膜厚はより好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上である。一方、絶縁層の膜厚を15μm以下とすることにより、黄色味を帯びることなく、無色透明な膜を形成できる。絶縁層の膜厚はより好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5.0μm以下である。また、絶縁層は、膜厚2.0μmあたりの透過率が85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、95%以上、97%以上である。ここで、透過率とは波長400nmの光の透過率を指す。透過率は、露光量および熱硬化温度の選択によって調整することができる。
【0101】
感光性樹脂組成物を用いた絶縁層の製造方法について、例を挙げて説明する。
【0102】
上記の感光性樹脂組成物を、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティング等の公知の方法によって基板上に塗布し塗布膜を形成する。
【0103】
上記塗布膜をホットプレート、オーブン等の加熱装置でプリベークする。プリベークは、50~150℃の範囲で30秒~30分間行い、プリベーク後の膜厚は、0.1~15μmとすることが好ましい。
【0104】
プリベーク後、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、パラレルライトマスクアライナー(PLA)等の露光機を用いて塗布膜を露光する。露光強度は10~4000J/m程度(波長365nm露光量換算)で、この光を所望のマスクを介してあるいは介さずに照射する。露光光源に制限はなく、g線、h線、i線等の紫外線や、KrF(波長248nm)レーザー、ArF(波長193nm)レーザー等を用いることができる。
【0105】
次に、現像により塗布膜の未露光部を溶解させ、ネガ型のパターンを得ることができる。現像方法としては、シャワー、ディッピング、パドル等の方法で現像液に塗布膜を5秒~10分間浸漬することが好ましい。現像液としては、公知のアルカリ現像液を用いることができる。具体例としてはアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩等の無機アルカリ;2-ジエチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、コリン等の4級アンモニウム塩を1種あるいは2種以上含む水溶液等が挙げられる。現像後、塗布膜を水でリンスすることが好ましい。つづいて50~130℃の範囲で塗布膜を乾燥ベークすることもできる。
【0106】
その後、この塗布膜をホットプレート、オーブン等の加熱装置で、好ましくは140~300℃の範囲で15分~90分程度加熱し、硬化膜を得る。加熱温度は、200~250℃がより好ましい。
【0107】
本発明の導電層付基板は導電層と絶縁層を有する。本発明の導電層付基板は、絶縁層を感光性樹脂組成物から前述の方法により形成した上に導電層を形成することにより製造してもよいし、基板上に導電層を形成した上に、絶縁層を感光性樹脂組成物から前述の方法により形成することにより製造してもよい。なお、導電層は、後述する導電材料を含む溶液を用いて、前述した絶縁層の製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0108】
本発明の導電層付基板は複数の導電層を有し、該複数の導電層間に絶縁層を有することが好ましい。前述の通り、本発明の導電層付基板に形成された絶縁層は、高温高湿下でのイオンマイグレーション耐性を有することから、複数の導電層間の層間絶縁膜として特に好適に用いることができる。
【0109】
金属配線の材料、すなわち導電層に含まれる導電材料に特に制限はないが、たとえば、銅、銀、金、アルミニウム、クロム、モリブデン、チタン、ITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)、AZO(アルミニウム添加酸化亜鉛)、ZnO等が挙げられる。この中でも、比抵抗値が最も低い銀が好ましい。さらに、比抵抗値の低い導電層を形成するため、前記導電層は、銀を60~95質量%含有することが好ましい。比抵抗値が低いと、高感度なタッチパネルを作製することができる。一方、銀は高温高湿下でのイオンマイグレーションが特に進行しやすいが、本発明においては、上記の絶縁層を用いることにより、導電層間のイオンマイグレーションを防止できる。また、より精細な配線パターンを形成することができるため、銀の一次粒子径が10~200nmであることが好ましい。また、導電層中に、少なくともアルカリ可溶性基を有する有機成分を5~35質量%含有することが好ましい。アルカリ可溶性基を有する有機成分を含有することで、配線パターンにフレキシブル性を付与することが可能となり、フレキシブルタッチパネルを作製することができる。アルカリ可溶性基としては、特に制限はないが、カルボキシル基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基、酸無水物基等を挙げることができる。特に反応性と汎用性の観点から、カルボキシル基が好ましい。アルカリ可溶性基を有する有機成分としては、特に制限はないが、たとえば、上記のアルカリ可溶性基を有するアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、カルド系樹脂、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール等を挙げることができる。
【0110】
本発明の導電層付基板の透明基板とは、表面にSiO層を設けたガラス基板、無アルカリガラス基板、ならびにポリイミドフィルムポリイミド、ポリイミドシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリベンゾオキサゾール、アラミド、ポリスルホンおよびエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂からなるフィルムからなる群から選ばれた基板である。
【0111】
透明基板として表面にSiO層が設けられたガラス基板を用いることにより、前記絶縁層との密着性が向上する。
【0112】
透明基板として無アルカリガラス基板を用いることにより、前記絶縁層との密着性が向上する。
【0113】
透明基板として上記フィルムを用いることにより、前記絶縁層との密着性が向上する。フィルムの表面にSiO層が設けられていてもよい。上記フィルムは前記絶縁層を形成するのに必要な耐熱性を有し、かつフレキシブル性を有するため、フレキシブルタッチパネルを作製することができる。なかでも耐熱性をより向上させる観点から、ポリイミド、ポリイミドシロキサン、ポリベンゾオキサゾールおよびポリスルホンからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂からなるフィルムを用いることが好ましい。
【0114】
本発明の導電層付基板は、タッチパネル用部材として用いることができる。ここでタッチパネル用部材とは、少なくとも前記導電層付基板を有する。
【0115】
本発明のタッチパネルは、本発明の導電層付基板とディスプレイ装置とを含有するものである。タッチパネルは、必要に応じて、さらに偏光板、カバー基材、光学粘着シートなどを構成要素として有してもよい。
【0116】
ディスプレイ装置としては、液晶や有機エレクトロルミネッセンス、マイクロLEDなどが挙げられる。カバー基材としては、ガラス、フィルムが挙げられる。
【0117】
タッチパネルの構成順序としては、下部からディスプレイ表示装置、光学粘着シート、導電層付基板、光学粘着シート、偏光板、光学粘着シート、カバー基材で構成されるが、これに限定されない。
【実施例
【0118】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例16は、現在は比較例であり、実施例1-15、17-30が本発明の実施例である。合成例および実施例に用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DAA:ジアセトンアルコール
TMAH;テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド
まず、実施例および比較例で用いた材料について説明する。
【0119】
[アクリルポリマー(A)]
合成例1:アクリルポリマー(a1-1)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を34.4g、ベンジルメタクリレートを56.4g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを17.1g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-1)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは10,600であった。
【0120】
合成例2:アクリルポリマー(a1-2)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を39.9g、ベンジルメタクリレートを56.4g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを3.5g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを37.5g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-2)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは10,000であった。
【0121】
合成例3:アクリルポリマー(a1-3)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を31.0g、ベンジルメタクリレートを63.4g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを20.5g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-3)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは9,700であった。
【0122】
合成例4:アクリルポリマー(a1-4)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を41.3g、ベンジルメタクリレートを28.2g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g、メタクリル酸メチルを8.0g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを34.2g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-4)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは9,800であった。
【0123】
合成例5:アクリルポリマー(a1-5)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を51.6g、ベンジルメタクリレートを52.8g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを22.0g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを28.6g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-5)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは10,200であった。
【0124】
合成例6:アクリルポリマー(a1-6)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を31.0g、ベンジルメタクリレートを63.4g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを15.4g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-6)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは10,200であった。
【0125】
合成例7:アクリルポリマー(a1-7)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を67.1g、ベンジルメタクリレートを35.2g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを4.4g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを42.2g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-7)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは9,400であった。
【0126】
合成例8:アクリルポリマー(a1-8)
500mlのフラスコにAIBNを0.5g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を34.4g、ベンジルメタクリレートを56.4g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で2時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを17.1g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-8)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは3,000であった。
【0127】
合成例9:アクリルポリマー(a1-9)
500mlのフラスコにAIBNを0.5g、PGMEAを100g仕込んだ。その後、メタクリル酸を34.4g、ベンジルメタクリレートを56.4g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で4時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを17.1g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-9)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは5,100であった。
【0128】
合成例10:アクリルポリマー(a1-10)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを70g仕込んだ。その後、メタクリル酸を34.4g、ベンジルメタクリレートを56.4g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で4時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを17.1g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-10)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは8,000であった。
【0129】
合成例11:アクリルポリマー(a1-11)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を34.4g、ベンジルメタクリレートを56.4g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で6時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを17.1g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-11)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは11,800であった。
【0130】
合成例12:アクリルポリマー(a1-12)
500mlのフラスコにAIBNを1.5g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を34.4g、ベンジルメタクリレートを56.4g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを17.1g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-12)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは14,500であった。
【0131】
合成例13:アクリルポリマー(a1-13)
500mlのフラスコにAIBNを2.0g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を34.4g、ベンジルメタクリレートを56.4g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを17.1g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-13)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは20,000であった。
合成例14:アクリルポリマー(a1-14)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を34.4g、ベンジルメタクリレートを42.3g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを35.2g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを17.1g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-14)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは9,700であった。
【0132】
合成例15:アクリルポリマー(a1-15)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を34.4g、スチレンを33.3g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを17.1g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-15)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは10,000であった。
【0133】
合成例16:アクリルポリマー(a1-16)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を34.4g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g、メタクリル酸メチルを32.0g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを17.1g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-16)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは11,500であった。
【0134】
合成例17:アクリルポリマー(a1-17)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を13.8g、ベンジルメタクリレートを98.7g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを17.6g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを11.4g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1-17)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは9,400であった。
【0135】
合成例18:カルド系樹脂(a1-18)
エチレン性不飽和基およびカルボキシル基を含有するカルド系樹脂PGMEA溶液である新日鐵住金化学(株)製「V-259ME(商品名)」は固形分濃度45.6wt%、GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwが3,500の製品である。「V-259ME」を100g計量し、PGMEAを14.0g添加攪拌した。このようにして固形分濃度が40wt%のカルド系樹脂(a1-18)の溶液を得た。
【0136】
合成例19:アクリルポリマー(a1’-1)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸を34.4g、ベンジルメタクリレートを70.5g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを17.1g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g、PGMEAを100g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1’-1)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは10,500であった。
【0137】
合成例20:アクリルポリマー(a1’-2)
500mlのフラスコにAIBNを1g、PGMEAを50g仕込んだ。その後、メタクリル酸メチルを50.1g、ベンジルメタクリレートを70.5g、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン-8-イルメタクリレートを22.0g仕込んだ。室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌し、得られたアクリルポリマー溶液に固形分濃度が40wt%になるようにPGMEAを加え、アクリルポリマー(a1’-2)の溶液を得た。GPC法により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量Mwは10,000であった。
【0138】
[光重合開始剤(B)]
1,2-プロパンジオン-3-シクロペンタン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](強力電子社製「PBG-305(商品名)」、以下「PBG-305」という。)
3-シクロペンチルエタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(強力電子社製「PBG-304(商品名)」、以下「PBG-304」という。)。
【0139】
[不飽和二重結合を有する化合物(C)]
デンドリマー型多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製「SIRIUS-501(商品名)」、以下「SIRIUS-501」という。)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製「“カヤラッド”(登録商標)DPHA(商品名)」、以下「DPHA」という。)
トリペンタエリスリトールオクタアクリレート(大阪有機化学工業(株)製「ビスコート#802(商品名)」、以下「ビスコート#802」という。)
フルオレンジアクリレート(大阪ガスケミカル(株)製)「EA-0250P(商品名)」、以下「EA-0250P」という。)
トリアクリルイソシアヌレート(共栄社(株)製「M-315(商品名)」、以下「M-315」という。)
トリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製「TAIC(商品名)」、以下「TAIC」という。)。
【0140】
[着色剤(D)]
フタロシアニン銅化合物“Pigment Blue 15:6”(大日精化工業株式会社製)
フタロシアニン銅化合物“Pigment Blue 15:1”(大日精化工業株式会社製)
スルホ珪酸アルミノナトリウム(Holiday社製)。
【0141】
[多官能エポキシ化合物]
9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製「オグソールPG-100(商品名)」、以下「PG-100」という。)
1,3,5-トリス(4,5-エポキシペンチル)イソシアヌル酸(日産化学工業(株)製「“TEPIC”(登録商標)-VL(商品名)」、以下「TEPIC-VL」)
3官能エポキシ化合物((株)プリンテック製「TECHMORE VG3101L(商品名)」、以下「VG3101L」という。)。
【0142】
[ヒンダードアミン系光安定剤]
2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンメタクリレート((株)ADEKA製「アデカスタブ LA-87(商品名)」、以下「LA-87」という。)。
【0143】
[シランカップリング剤]
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM-403(商品名)」、以下「KBM-403」という。)
[重合禁止剤]
t-ブチルカテコール(東京化成工業(株)製、以下「TBC」という。)
[界面活性剤]
シリコーン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK-333(商品名)」、以下「BYK-333」という。)
[溶剤]
PGMEA(クラレトレーディング(株)製「PGM-AC(商品名)」)
DAA(三菱化学(株)製「DAA」)。
【0144】
次に、実施例および比較例に用いた感光性銀インク材料について説明する。
【0145】
[感光性銀インク材料]
下記の感光性銀インク材料を用いて、導電層との積層加工性、および高温高湿時のマイグレーション耐性について評価を行った。感光性銀インク材料の製造方法について、下記に示す。
【0146】
<感光性銀インク材料の作製>
まず、炭素単体物および/または炭素化合物で表面被覆された導電性微粒子(日清エンジニアリング(株)製)80.00g、DISPERBYK21116(ビックケミー・ジャパン(株)製)4.06g、PGMEA196.14gに対し、ホモジナイザーにて、1200rpm、30分の混合処理を施した。さらに、その混合液を、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、銀粒子分散体を得た。この銀微粒子分散体63.28gに対し、アクリルポリマー(a1-2)を4.40g、OXE-02を0.41g、DPHAを1.30g混合したものに、PGMEA7.31g、DAA23.25gを添加し、撹拌することにより、感光性銀インク(α)を作製した。
【0147】
次に、実施例および比較例で行った硬化膜/基板の作製および各評価方法について説明する。
【0148】
<感光性樹脂組成物のパターン加工および硬化膜作製>
感光性樹脂組成物を、基板上にスピンコーター(ミカサ(株)製「1H-360S(商品名)」)を用いて任意の回転数でスピンコートして塗布膜を形成した。塗布膜が形成された基板をホットプレート(大日本スクリーン製造(株)製「SCW-636(商品名)」)を用いて100℃で2分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナー(キヤノン(株)製「PLA-501F(商品名)」)を用いて超高圧水銀灯を光源とし、所望のマスクを介してプリベーク膜を露光した。この後、自動現像装置(滝沢産業(株)製「AD-2000(商品名)」)を用いて、0.07wt%TMAH水溶液で60秒間シャワー現像してプリベーク膜の未露光部を除去し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。
【0149】
必要に応じ、パターン加工された基板を、オーブン(エスペック(株)製「IHPS-222(商品名)」)を用いて、230℃で60分間(空気中)ポストベークし、硬化膜を作製した。
【0150】
<銀インク材料(α)の導電パターン作製>
銀インク材料(α)を、基板上にスピンコーターを用いて所定の回転数でスピンコートした後、ホットプレートを用いて100℃で2分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナーを用いて超高圧水銀灯を光源とし、所望のマスクを介してプリベーク膜を露光した。この後、自動現像装置を用いて、0.07wt%TMAH水溶液で60秒間シャワー現像してプリベーク膜の未露光部を除去し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。
【0151】
パターン加工した基板を、オーブンを用いて、230℃で60分間(空気中)ポストベークし、導電膜を作製した。
【0152】
<積層基板の作製>
感光性樹脂組成物および銀インク材料(α)を用いて、図1および図2に示す積層基板を作製した。基材1は、表面にSiOをスパッタリングしたガラス基板、無アルカリガラス基板、もしくはポリイミドフィルムである。導電パターン層2および4は銀インク材料(α)を用いて、上記の方法により形成された導電パターン層である。絶縁層3および5は感光性樹脂組成物を用いて、上記の方法により形成された絶縁層である。基材1上に、導電パターン2が形成され、該導電パターン2を保護するように、その上面に絶縁層3が形成されている。該絶縁層3の上に、前記導電パターン2と直行するように導電パターン層4が形成され、さらにその上に該導電パターン4を保護するように、絶縁層5が形成されている。導電パターン2および4はそれぞれ30μm×長さ4cmの導電パターン5本ずつであり、両末端には抵抗値測定用の端子が設けられている。該端子がむき出しになるように、絶縁層3および5の形成時に、導電パターン2および4の端子の上部の絶縁層3および5は除去されるようにパターニングされている。なお、導電パターン層2および4、絶縁層3および5の各層はそれぞれオーブンを用いてポストベークを施した。
【0153】
(1)パターン加工性評価
基材として無アルカリガラス基板(OA-10;日本電気硝子株式会社製)を用い、その上に上記<感光性樹脂組成物のパターン加工および硬化膜作製>に従って感光性樹脂組成物のパターンを形成することにより、感光性樹脂組成物のパターン加工性評価を行った。なお、感光性樹脂組成物の塗布膜の膜厚がプリベーク後2.5μmとなるようにした。露光時のマスクとしては、感度測定用のグレースケールマスクを用いた。露光量を変えてテストを行い、現像後、30μmのラインアンドスペースパターンが1対1の幅に形成される露光量(以下、これを最適露光量という)を感度とした。また、最適露光量における現像後の最小パターン寸法を解像度とした。感度および解像度の値が小さいほど、パターン加工性が良好であることを示す。
【0154】
(2)硬化膜特性評価
上記<積層基板の作製>において、基材として表面にSiOをスパッタリングしたガラス基板を用い、絶縁層3までを形成した積層基板を用い、積層基板の光透過率および無色透明性(b)を測定した。
【0155】
紫外可視分光光度計(「MultiSpec-1500(商品名、(株)島津製作所製)」)を用いて、まず基材1のみを測定し、得られた紫外可視吸収スペクトルをリファレンスとした。次に積層基板の絶縁層3のベタ膜部分をシングルビームで測定し、波長400nmにおける絶縁層3の膜厚2.0μmあたりの光透過率を求め、リファレンスとの差異を絶縁層3の光透過率とした。
【0156】
また、分光光度計(CM-2600d;コニカミノルタ(株)製)を用いて、ブランクとして基材1のみの測定を行ったうえで、JIS-Z8729:1994、JIS-Z8781-4:2013に基づき、積層基板のガラス基板側から各サンプルの全反射光の反射率を測定し、CIE(L,a,b)色空間における色特性bを中心および4隅の計5点ずつ測定し、その平均値を色目とし、以下の基準に従って評価した。2以上を合格とした。
5:-1.5≦b≦0.5
4:-2.0≦b<-1.5、あるいは、0.5<b≦1.0
3:-2.5≦b<-2.0、あるいは、1.0<b≦1.5
2:-3.0≦b<-2.5、あるいは、1.5<b≦2.0
1:b<-3.0あるいはb>2.0 。
【0157】
(3)信頼性評価
上記<積層基板の作製>において、基材として表面にSiOをスパッタリングしたガラス基板を用い、高温高湿下でのマイグレーション耐性を評価した。測定には絶縁劣化特性評価システム“ETAC SIR13”(楠本化成(株)製)を用いた。導電パターン2および4の端子部分にそれぞれ電極を取り付け、85℃85%RH条件に設定された高温高湿槽内にサンプルを入れた。槽内環境が安定してから5分間経過後、導電パターン2および4の電極間に電圧を印加し、絶縁抵抗の経時変化を測定した。なお、導電パターン2を正極、導電パターン4を負極として、5Vの電圧を印加し、抵抗値を5分間隔で1000時間測定した。測定した抵抗値が10の5乗Ω以下に達したとき絶縁不良のため短絡と判断して印圧を停止し、それまでの試験時間を短絡時間とした。以下の評価基準に従ってマイグレーション耐性を評価した。2以上を合格とした。
5:短絡時間が1000時間以上
4:短絡時間が700時間以上1000時間未満
3:短絡時間が400時間以上700時間未満
2:短絡時間が200時間以上400時間未満
1:短絡時間が200時間未満
また、上記の積層基板を用い、以下の方法により耐光性を評価した。耐光性試験機(「Q-SUN Xenon Test Chamber Model Xe-1(商品名、Q-Lab Corporation製)」)を用い、45℃の環境下、340nmでの照射量が0.60W/mの光を48時間連続照射したときの、bの変化量(以下、Δbとする)を以下の基準に従い評価した。bの測定は、上記「(2)硬化膜特性評価」と同様に行った。2以上を合格とした。
5:Δb≦1.0
4:1.0<Δb≦2.0
3:2.0<Δb≦3.0
2:3.0<Δb≦5.0
1:5.0<Δb
(実施例1)
黄色灯下にて、光重合開始剤(B)としてPBG-305:0.50g、ヒンダードアミン系光安定剤としてLA-87:0.50g、重合禁止剤としてTBC:0.04gを、溶剤としてPGMEA:20.70g、DAA:37.50gに溶解させ、界面活性剤としてBYK-333:0.01gを加え、撹拌した。そこへ、化合物(C-1)として、SIRIUS-501:1.25g、その他の不飽和二重結合を有する化合物(C)として、EA-0250P:1.25g、M-315:2.90g、TAIC:4.40g、多官能エポキシ化合物としてPG-100:2.70gおよびシランカップリング剤としてKBM-403:0.25g、アクリルポリマー(A)として40wt%PGMEA溶液(a1-1):28.00gを加え、撹拌した。次いで0.20μmのフィルターでろ過を行い、感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物について、(1)パターン加工性、(2)硬化膜特性、(3)信頼性を評価した。組成を表1に評価結果を表4に記載した。
【0158】
(実施例2~18、24~30、比較例1、2、参考例1)
実施例1と同様の方法で、表1~3記載の組成の感光性樹脂組成物を得て、それぞれの感光性樹脂組成物について実施例1と同様の評価をした。評価結果を、表4~6に示す。なお、比較例2においては、「(1)パターン加工性評価」においてパターンを形成することができなかった。
【0159】
(実施例19)
黄色灯下にて、光重合開始剤(B)としてPBG-305:0.50g、ヒンダードアミン系光安定剤としてLA-87:0.50g、重合禁止剤としてTBC:0.04gを、溶剤としてPGMEA:20.70g、DAA:37.50gに溶解させ、界面活性剤としてBYK-333:0.01gを加え、撹拌した。そこへ、化合物(C-1)として、SIRIUS-501:1.25g、その他の不飽和二重結合を有する化合物(C)として、EA-0250P:1.25g、M-315:2.90g、TAIC:4.40g、多官能エポキシ化合物としてPG-100:2.70g、およびシランカップリング剤としてKBM-403:0.25g、アクリルポリマー(A)として40wt%PGMEA溶液(a1-1):28.00g、着色剤(D)としてPigment Blue 15:6:0.01gを加え、撹拌した。次いで0.20μmのフィルターでろ過を行い、感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物について、(1)パターン加工性、(2)硬化膜特性、(3)信頼性を評価した。組成を表2に評価結果を表5に記載した。
【0160】
(実施例20~23)
実施例19と同様の方法で、表2、3記載の組成の感光性樹脂組成物を得て、それぞれの感光性樹脂組成物について実施例19と同様の評価をした。評価結果を、表5、6に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
【表3】
【0164】
【表4】
【0165】
【表5】
【0166】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の導電層付基板の用途は特に限定されないが、例えば、タッチパネル用部材、ディスプレイ用部材、透明アンテナ用部材等として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0168】
1:基材
2:導電パターン
3:絶縁層
4:導電パターン
5:絶縁層
図1
図2