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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/675 20180101AFI20221109BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20221109BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20221109BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20221109BHJP
   F21S 41/36 20180101ALI20221109BHJP
   F21S 41/27 20180101ALI20221109BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20221109BHJP
   F21W 102/165 20180101ALN20221109BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221109BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20221109BHJP
【FI】
F21S41/675
F21S41/151
F21S41/147
F21S41/16
F21S41/36
F21S41/27
F21W102:155
F21W102:165
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020549315
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037702
(87)【国際公開番号】W WO2020067213
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2018183822
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 和則
(72)【発明者】
【氏名】大久保 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 千治
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-224039(JP,A)
【文献】特開2018-073485(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013447(WO,A1)
【文献】特開2008-117561(JP,A)
【文献】特開2012-119219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/675
F21S 41/151
F21S 41/147
F21S 41/16
F21S 41/36
F21S 41/27
F21W 102/155
F21W 102/165
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具であって、
前記車両用灯具は、
鉛直方向の回動軸を中心に前記回動軸に沿ったミラー面を回動可能なミラーと、
前記ミラーよりも車両幅方向横側に配置される複数の発光素子と、
前記ミラーより広い範囲に前記発光素子からの光を照射するレンズと、を備え、
それぞれの前記発光素子は、前記ミラー面で反射された光の配光像が車両幅方向に並ぶように、離間して設けられており、
前記ミラーが回動していない状態のときは、それぞれの前記発光素子からの光で形成される前記配光像は、離隔した状態で前記車両幅方向に並び、
前記ミラーが回動する状態のときは、前記ミラーが隣り合う前記離隔した状態の前記配光像を繋げてメイン配光パターンを形成するように回動することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記車両用灯具は、前記発光素子の鉛直方向下側に配置され、前記発光素子からの光を上方に反射し、前記配光像を鉛直方向に広げる配光像拡張部を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ミラーは、回動していない状態から前記ミラー面を±5°以内の範囲で回動可能であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記車両用灯具は、前記回動軸を中心とする回動角の情報と前記メイン配光パターン内に設定される遮光範囲の情報に基づいて、前記遮光範囲に光が照射されないように前記発光素子の駆動を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
少なくとも一部の前記発光素子は、隣り合う前記発光素子間の離間距離が異なる距離となるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記ミラーの外側に配置された少なくとも1つ以上の反射部を更に備え、
前記レンズは、前記反射部にも光を照射するために、前記ミラーより広い範囲に前記発光素子からの光を照射し、
前記反射部がサブ配光パターンを形成し、
前記反射部は、
前記ミラーの一方の横外側に配置された第1反射部と、
前記ミラーの他方の横外側に配置された第2反射部と、を備え、
前記第1反射部又は前記第2反射部の一方が前記メイン配光パターンの車両幅方向外側に付加される前記サブ配光パターンを形成し、
前記第1反射部又は前記第2反射部のもう一方が前記メイン配光パターンの鉛直方向上側に設けられる前記サブ配光パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記反射部は、前記ミラーの鉛直方向上側に配置され、前記メイン配光パターンの鉛直方向上側に設けられる前記サブ配光パターンを形成する上側反射部を備えることを特徴とする請求項6に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、比較的少数の発光素子で車両前方の広範囲を照明できるとともに、配光パターンの照射範囲や照度分布を周囲環境や道路状況に合わせて多様に変化させるために、複数の発光素子からなる光源と、光源が出射した光を車両前方に反射するミラーと、ミラーの大きさに合わせて光源からの出射光を成形する成形用光学系と、ミラーを往復回動しミラーの反射光により車両前方の照明領域をスキャンする走査用アクチュエータとを備えた車両用前照灯(以下、車両用灯具ともいう。)が開示されている。
【0003】
具体的には、複数の発光素子を直接接するように配置して、スクリーン上の照射領域の鉛直方向の幅に対応した発光領域を形成するようにし、その発光領域を回動するミラーで照射領域の水平方向の一方側の端から他方側の端までスキャンさせるようにすることで照射領域に配光パターンを形成するようにしている。
【0004】
そして、成形用光学系としての平凸レンズがミラーの大きさに合わせて光源からの出射光を成形することで、複数の発光素子の光を有効に利用して、ミラーの反射光を明るくすることができることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-224039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、比較的少数の発光素子で車両前方の広範囲を照明できるようにするために、上述のように、発光素子を直接接触するように隣接させ、照射領域の鉛直方向の幅をカバーできるだけの発光領域を形成することに留め、その発光領域をミラーで照射領域の水平方向の一方側の端から他方側の端までスキャンさせることが行われている。
【0007】
このため、ミラーは、発光領域を照射領域の水平方向の一方側の端から他方側の端までスキャンさせるように大きな回動角で回動することになり、発光領域の残像が消える前にスキャンを繰り返す必要があることから、回動速度が速いものを用いる必要がある。
【0008】
そして、大きな回動角範囲を高速で制御できるミラーは高価になる傾向があり、かつ、制御の難易度も高くなるという問題がある。
【0009】
また、特許文献1では、鉛直方向下側に光源を配置し、その光源からの光を受けて車両前方に光を照射するためにミラーの光を反射するミラー面が前方斜め下向きに傾いた状態になっているため、ミラーの回動によって形成される配光パターンは、照射領域の端に向かって鉛直方向上側に現れることになるという問題もある。
【0010】
そこで、本開示は、このような事情に鑑み、ミラーの回動角を小さく抑えるとともに、照射領域の端で配光が鉛直方向上側に現れることを抑制することが可能である車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一局面によれば、車両用灯具であって、
前記車両用灯具は、
鉛直方向の回動軸を中心に前記回動軸に沿ったミラー面を回動可能なミラーと、
前記ミラーよりも車両幅方向横側に配置される複数の発光素子と、
前記ミラーより広い範囲に前記発光素子からの光を照射するレンズと、を備え、
それぞれの前記発光素子は、前記ミラー面で反射された光の配光像が車両幅方向に並ぶように、離間して設けられており、
前記ミラーが隣り合う前記配光像を繋げてメイン配光パターンを形成するように回動することを特徴とする車両用灯具が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ミラーの回動角を小さく抑えるとともに、照射領域の端で配光が鉛直方向上側に現れることを抑制することが可能である車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の車両用灯具を備えた車両の平面図である。
図2】第1実施形態の灯具ユニットを鉛直方向上側から見た平面図である。
図3】第1実施形態の灯具ユニットを車両前方側の車両幅方向内側から見た斜視図である。
図4】第1実施形態のミラー部が回動していない初期状態のときのスクリーン上での配光パターンを説明するための図である。
図5】第1実施形態のミラー部を回動させたときのスクリーン上での配光パターンを説明するための図である。
図6】第1実施形態のADB制御を説明するための図である。
図7】第2実施形態の灯具ユニットの斜視図である。
図8】第2実施形態の灯具ユニットをレンズの側方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。
【0015】
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0016】
また、実施形態及び図中において、特に断りがない場合、「前」、「後」は、各々、車両102の「前進方向」、「後進方向」を示し、「上」、「下」、「左」、「右」は、各々、車両102に乗車する運転者から見た方向を示す。
【0017】
なお、言うまでもないが「上」、「下」は鉛直方向での「上」、「下」でもあり、「左」、「右」は水平方向での「左」、「右」でもある。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の車両用灯具を備えた車両102の平面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の車両用灯具は、車両102の前方の左右のそれぞれに設けられる車両用の前照灯(101L、101R)であり、以下では単に車両用灯具と記載する。
【0020】
本実施形態の車両用灯具は、車両前方側に開口したハウジング(図示せず)と開口を覆うようにハウジングに取り付けられるアウターレンズ(図示せず)を備え、ハウジングとアウターレンズとで形成される灯室内に灯具ユニット1(図2及び図3参照)等が配置されている。
【0021】
図2は本実施形態の灯具ユニット1を鉛直方向上側から見た平面図であり、図3は本実施形態の灯具ユニット1を車両前方側の車両幅方向外側から見た斜視図である。
【0022】
なお、図2及び図3では、灯具ユニット1の主要な構成部分だけを示すようにしている。
【0023】
また、図2では、後述するミラー面11Aで反射され、車両前方側に照射される光の方向、及び、範囲を太矢印で示し、同様に、後述する反射部20(第1反射部21、第2反射部22)で反射され、車両前方側に照射される光の方向、及び、範囲を太矢印で示している。
【0024】
図2及び図3に示すように、灯具ユニット1は、ミラー10と、ミラー10の車両幅方向の外側に配置された少なくとも1つ以上の反射部20(第1反射部21、第2反射部22)と、ミラー10よりも車両幅方向横側に配置された複数の発光素子31を有する光源30と、光源30が配置されるヒートシンク40と、発光素子31からの光をミラー10及び反射部20に向けて照射するレンズ50と、発光素子31からの光を上方に反射し、発光素子31の光で形成される配光像を鉛直方向に広げる配光像拡張部60と、を備えている。
【0025】
(ミラー10)
ミラー10は、後述するように、それぞれの発光素子31からの光が形成する複数の配光像を繋げてメイン配光パターンを形成するための部材であり、ミラー部11と、ミラー部11の鉛直方向に沿った回動軸RAを回動可能に支持(支持機構は図示せず)し、回動軸RAを中心にミラー部11を回動させる回動アクチュエータ12と、を備えている。
【0026】
なお、ミラー10によって、どのようにメイン配光パターンが形成されるのかについては、後ほど詳細に説明する。
【0027】
また、ミラー部11を回動させるための回動アクチュエータ12の構造は、特段限定される必要はなく、一般的な構造であってよい。
【0028】
そして、ミラー部11の発光素子31からの光を反射する反射面となる、ほぼ平らな面として形成されたミラー面11Aは、回動軸RAに沿ったものとなっており、ミラー部11が回動することで、鉛直方向の回動軸RAを中心に回動軸RAに沿ったミラー面11Aを回動させることができるようになっている。
【0029】
このように、ミラー面11Aが鉛直方向に沿った面になっていることで、ミラー部11の回動に伴う、ミラー面11Aによって反射される光によるスキャンは、水平方向に対してだけ行われる。
【0030】
このため、ミラー面を前方斜め下側に傾けた状態として行われるスキャンのときに発生する照射範囲の外側ほど、配光方向が上向きになる現象が起きず、配光パターンが外側ほど鉛直方向上側に現れることがない。
【0031】
なお、図2及び図3では、ミラー10のミラー部11が回動していない初期状態の位置に位置する状態を示している。
【0032】
そして、上述のように、ミラー面11Aを前方斜め下側に傾けた状態とすることなく、発光素子31からの光を受けることができるように、ミラー10は、ミラー部11が回動していない初期状態において、ミラー面11Aが、灯具光軸Z1に対して、光源30側となる車両幅方向横側に傾いた向きとなるように配置されている。
【0033】
(反射部20)
反射部20は、後述するように、ミラー10が複数の配光像を繋げて形成するメイン配光パターンに付加するように設けられるサブ配光パターンを形成するための部材であり、本実施形態では、反射部20は、ミラー10の一方の横外側に配置された第1反射部21と、ミラー10の他方の横外側に配置された第2反射部22と、を備えている。
【0034】
なお、反射部20によって、どのようなサブ配光パターンが形成されるのかについては、後ほど詳細に説明する。
【0035】
(光源30)
光源30は、複数の発光素子31と、その発光素子31が配置される基板32と、基板32に設けられ、発光素子31に供給する電力等を外部から受け入れるためのコネクタ33と、を備えている。
【0036】
そして、発光素子31は、それぞれミラー面11Aで反射された発光素子31の光の配光像が車両幅方向に並ぶように、離間して基板32上に設けられている。
【0037】
なお、本実施形態では5つの発光素子31を設けたものとなっているが、発光素子31の数は5つに限定される必要はなく、本実施形態では、発光素子31にLEDチップを用いているが、発光素子31はLEDチップに限定される必要はなく、LDチップ(レーザーダイオードチップ)等であってもよい。
【0038】
また、発光素子31は隣り合う発光素子31間の離間距離が等距離となるように配置されている必要はなく、図2に示すように、少なくとも一部の発光素子31が隣り合う発光素子31間の離間距離が異なる距離となるように設けられていてもよい。
【0039】
なお、光源30は、ミラー10及び反射部20で車両前方側に反射される発光素子31からの光を遮ることがないように、ミラー10及び反射部20よりも車両幅方向内側となる車両幅方向横側であって、発光素子31からの光が車両幅方向外側の斜め後方側に照射されるように配置されている。
【0040】
(ヒートシンク40)
ヒートシンク40は、光源30を冷却するための部材であり、光源30の基板32が配置されるベース部41と、光源30が配置される側の反対側になるベース部41の裏面に設けられた複数の放熱フィン42と、を備え、本実施形態では、ベース部41と放熱フィン42を一体成形したアルミダイカスト製のヒートシンク40を用いている。
【0041】
しかし、アルミダイカスト製に限定される必要はなく、ヒートシンク40は、放熱性の高い金属又は樹脂で形成されていればよい。
【0042】
(レンズ50)
レンズ50は、発光素子31からの光が入射する入射面51と、入射した光が出射する出射面52と、を備えており、本実施形態では、入射面51及び出射面52が共にレンズ50の外側に突出する方向に湾曲した自由曲面で形成された両凸レンズになっている。
【0043】
なお、図2に示すように、レンズ50は、レンズ光軸Z2がミラー部11の回動軸RA上に位置するように配置されているとともに、レンズ光軸Z2と灯具光軸Z1の間の角度が鋭角になるように配置されている。ただし、他の実施形態では、レンズ50は、レンズ光軸Z2がミラー部11の回動軸RAに対してオフセットするように配置されてもよい。
【0044】
そして、図2では、複数の発光素子31が放射する光の範囲全体、及び、レンズ50から照射される光の範囲全体を模式的に点線で示しており、図2に示すように、レンズ50は、反射部20(第1反射部21、第2反射部22)にも光を照射するために、ミラー10よりも広い範囲に発光素子31からの光を照射するものになっている。
【0045】
なお、図2及び図3では、レンズ50の光学制御を行う部分だけを図示しているが、例えば、レンズ50は、図2及び図3に示す光学制御を行う本体部の一方及び他方の横側に一体に形成されたフランジ部を備え、ヒートシンク40に取り付けられる図示しないレンズホルダによって、そのフランジ部が保持されることで、光源30よりミラー10及び反射部20側となる所定の位置に配置される。
【0046】
(配光像拡張部60)
配光像拡張部60は、発光素子31の鉛直方向下側に配置され、レンズ50側に向けて下側に延在する自由曲面で形成された反射面61を備えている。
【0047】
そして、複数の発光素子31から鉛直方向下側に放射される光の一部を反射面61で鉛直方向上側(以下、上方ともいう。)に反射させるようにして、レンズ50にその反射した光を入射させ、複数の発光素子31からの光が形成する配光像を鉛直方向に広げる役目を果たす。
【0048】
このように、配光像拡張部60によって、各配光像を鉛直方向に拡張することで、発光素子31を鉛直方向に多段に配置することなく、メイン配光パターンの鉛直方向に必要な鉛直幅に配光像の鉛直幅を近づけることができる。
【0049】
なお、図2及び図3では、固定構造の図示を省略しているが、配光像拡張部60は、光源30の基板32に対して固定されるものであってもよく、基板32とともにヒートシンク40のベース部41に共止めされるものであってもよい。
【0050】
次に、主に図2図4、及び、図5を参照しながら上述の構成からなる灯具ユニット1によって形成される配光パターンについて説明する。
【0051】
図4はミラー部11が回動していない初期状態のときのスクリーン上での配光パターンを説明するための図であり、図5はミラー部11を回動させたときのスクリーン上での配光パターンを説明するための図である。
【0052】
なお、図4及び図5において、VU-VL線はスクリーン上での鉛直基準線であり、HL-HR線はスクリーン上での水平基準線であり、水平方向、及び、垂直方向に設けられている目盛り線は、5°刻みの目盛り線になっており、以降の図においてもスクリーン上での配光パターンを説明するための図示においては同様である。
【0053】
また、図4ではミラー面11Aで反射された光による配光像の等光度線を実線で示し、反射部20(第1反射部21、第2反射部22)で反射された光による配光像の範囲を点線で示しており、図5ではミラー面11Aで反射された光、及び、反射部20(第1反射部21、第2反射部22)で反射された光の両方の光を合わせて形成されるメイン配光パターンを等光度線で示している。
【0054】
メイン配光パターンの水平方向をできるだけ網羅するようにミラー面11Aで反射された発光素子31からの光の配光像が現れるように、発光素子31を先に説明したように離間させて配置しているため、図4に示すように、ミラー10(ミラー面11A)を回動させていない状態のときには、それぞれの発光素子31からの光で形成される配光像は、高光度帯が離間した状態でスクリーン上に現れている。
【0055】
また、本実施形態では、メイン配光パターンがハイビーム配光パターンである場合について示しているが、ハイビーム配光パターンの場合、鉛直方向で10°程度上側まで配光範囲が存在することが好ましいが、ミラー10で反射された配光像では、鉛直方向で10°の範囲まで光が届いていないものとなっている。
【0056】
さらに、車両幅方向で外側となる水平方向外側(図4の右側)においても、もう少し(例えば5°から10°程度)、外側まで光が届いていることが好ましい。
【0057】
そこで、第1反射部21又は第2反射部22の一方がメイン配光パターンの車両幅方向外側に付加されるように設けられるサブ配光パターンを形成するように光を反射し、第1反射部21又は第2反射部22のもう一方がメイン配光パターンの鉛直方向上側に付加されるように設けられるサブ配光パターンを形成するように光を反射するようにしている。
【0058】
具体的には、本実施形態では、図2に示すように、第1反射部21がミラー部11で反射される光の車両幅方向外側となる水平方向外側に光を反射させるようになっており、第2反射部22がミラー部11で反射される光の鉛直方向上側に光を反射させるようになっている。
【0059】
なお、第2反射部22によって反射される光は、スクリーン上に到達するときに、図4に示す鉛直基準線(VU-VL線参照)を含む位置で、ミラー面11Aで反射される光よりも上方側に位置していればよいため、若干、内向きに反射されるだけのため、図2では、ミラー面11Aで反射される光とほぼ平行に反射されているように見えるものとなっているが、実際には、若干、内向きに向かう光線群となっている。
【0060】
そして、図4に示す配光像を繋げてメイン配光パターンを形成するようにミラー10(ミラー部11)を回動させると、図5に示す良好なハイビーム配光パターンを形成することができる。
【0061】
具体的に図2を参照して説明すると、図2では、ミラー部11の回動軸RAからミラー面11Aの法線方向に延びる軸線Z3を併せて描いているが、ミラー10(ミラー部11)は、隣り合う配光像を繋げてメイン配光パターンを形成するように、軸線Z3に対して±2.5°の回動を行い、回動していない状態からミラー面11Aが±2.5°回動するようにしている。
【0062】
そして、このような回動が行われることで、配光像が繋がって、図5に示すハイビーム配光パターンとしての良好なメイン配光パターンが形成される。
【0063】
このように、本実施形態では、配光像を繋げることが可能な範囲でミラー10(ミラー部11)の回動が行なえればよいため、ミラー部11が軸線Z3に対して±5°以内の範囲で回動し、ミラー面11Aが±5°以内で回動可能になっていれば、十分であることから、ミラー10の回動角を極めて小さく抑えることができる。
【0064】
特に、ミラー面11Aに対して斜め入射で光が入射するため、先行技術文献のように回動角と同じ範囲で光を反射させるのではなく、ミラー面11Aで反射される光は回動角の倍の角度範囲に照射されるため、配光像を繋げるために必要な回動角を極めて小さく抑えることができる。
【0065】
ところで、近年、運転者の前方視認性を保ちながら、先行車や対向車等へのグレア光を抑制するために、ハイビーム配光パターンを変化させる可変ハイビーム(Adaptive Driving Beam)制御を行うことが求められるようになっている。
【0066】
そこで、回動アクチュエータ12の駆動、及び、発光素子31の点消灯を司る図示しない制御部が、ADB制御を行うものとすることが好ましい。
【0067】
具体的に、ADB制御を説明するための図である図6を参照して説明すると、ADB制御では、例えば、先行車(図示せず)に対するグレア光を抑制するために、ハイビーム配光パターン中の先行車が存在する領域だけ遮光範囲Aとする制御を行うことになる。
【0068】
このため、図示しない制御部は、回動軸RAを中心とする回動角の情報とメイン配光パターン内に設定される遮光範囲Aの情報に基づいて、遮光範囲Aに光が照射されないように発光素子31の駆動を制御する。
【0069】
つまり、制御部は、発光素子31のうち、遮光範囲Aに光を照射することになる発光素子31について、回動角の情報から遮光範囲Aに光を照射することになる直前までは、その発光素子31の点灯を行い、遮光範囲Aの境界線から内側に光を照射することになるところでは、その発光素子31を消灯させる制御を行う。
【0070】
(第2実施形態)
次に、図7、及び、図8を参照しながら、第2実施形態の灯具ユニット1について説明する。
【0071】
なお、第2実施形態でも、具体的な構成は、第1実施形態と類似しているため、以下では、主に異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する場合がある。
【0072】
図7は本実施形態の灯具ユニット1の斜視図であり、図8は本実施形態の灯具ユニット1をレンズ50の側方から見た平面図である。
【0073】
なお、図7及び図8では、図2及び図3と同様に、灯具ユニット1の主要な構成部分だけを示すようにしている。
【0074】
また、図8では、図2と同様に、複数の発光素子31が放射する光の範囲全体、及び、レンズ50から照射される光の範囲全体を模式的に点線で示している。
【0075】
図7及び図8に示すように、本実施形態では、反射部20がミラー10の鉛直方向上側に配置され、メイン配光パターンの鉛直方向上側に付加するように設けられるサブ配光パターンを形成する上側反射部23を備えるものとし、第1実施形態の第1反射部21及び第2反射部22を省略したものになっている。
【0076】
つまり、第2反射部22に対応する構成として上側反射部23を設け、例えば、ミラー10(ミラー部11)の回動角を第1実施形態より、若干、大きめにすることで、第1反射部21を設けなくても、メイン配光パターンに求められる水平方向の配光幅を得るようにして、第1反射部21を省略したものになっている。
【0077】
そして、第1実施形態と同様に、本実施形態でも、図8に示すように、レンズ50は、反射部20である上側反射部23にも光を照射するために、ミラー10よりも広い範囲に発光素子31からの光を照射し、ミラー10(ミラー部11)を回動させることで、図5で示したのと類似のメイン配光パターンが得られるものになっている。
【0078】
以上、具体的な実施形態の説明を行ってきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0079】
例えば、反射部20が、第1実施形態で説明した第1反射部21、第2反射部22を備えるとともに、第2実施形態で説明した上側反射部23も備えるものとしてもよい。また、反射部20が、省略されてもよい。
【0080】
この場合、第1反射部21、及び、第2反射部22は、第1実施形態で説明したのと同様に、メイン配光パターンに付加するように設けられるサブ配光パターンを形成するものとし、上側反射部23をメイン配光パターンの鉛直方向上側に設けられる、例えば、オーバーヘッド配光パターンとなるサブ配光パターンを形成するものとしてもよい。
【0081】
また、第1実施形態において、第2実施形態のように、ミラー10(ミラー部11)の回動角でメイン配光パターンに求められる水平方向の配光幅を得るようにし、第1反射部21を利用して、メイン配光パターンの鉛直方向上側に設けられるオーバーヘッド配光パターンとなるサブ配光パターンを形成するものとしてもよい。
【0082】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、技術的思想を逸脱することのない変更や改良を行ったものも発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0083】
1 灯具ユニット
10 ミラー
11 ミラー部
11A ミラー面
12 回動アクチュエータ
20 反射部
21 第1反射部
22 第2反射部
23 上側反射部
30 光源
31 発光素子
32 基板
33 コネクタ
40 ヒートシンク
41 ベース部
42 放熱フィン
50 レンズ
51 入射面
52 出射面
60 配光像拡張部
61 反射面
A 遮光範囲
Z1 灯具光軸
Z2 レンズ光軸
Z3 軸線
101L、101R 車両用の前照灯
102 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8