(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】シールドテープの製造方法及びシールドテープ
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20221109BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20221109BHJP
B32B 37/10 20060101ALI20221109BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20221109BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20221109BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B15/08 K
B32B37/10
C09J7/29
C09J9/02
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2021025928
(22)【出願日】2021-02-22
(62)【分割の表示】P 2016039621の分割
【原出願日】2016-03-02
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2015040725
(32)【優先日】2015-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 大輔
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-124684(JP,A)
【文献】特開2010-149428(JP,A)
【文献】特開2014-58108(JP,A)
【文献】特開2015-196741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 15/08
B32B 37/10
C09J 7/29
C09J 9/02
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と接着剤層と
絶縁性樹脂フィルムと粘着層とがこの順序で積層され、粘着層側を内周側にしてカールしているシールドテープの製造方法であって、
絶縁性樹脂フィルムと、フィルム状の金属箔とを接着剤層を介して重ね、一対のローラ間で挟持するととも
に金属箔及
び絶縁性樹脂フィルムに張力を掛けながら搬送することにより
、金属箔
と絶縁性樹脂フィルムとが積層されたフィルム積層体を形成する工程と、
フィルム積層体
の絶縁性樹脂フィルムに、剥離フィルムに支持された粘着層を積層する工程と、
剥離フィルムを剥離する工程と、
を有し、
金属箔
と絶縁性樹脂フィルムとの積層工程において
、絶縁性樹脂フィルムの降伏値未満の張力を掛けるシールドテープの製造方法。
【請求項2】
金属箔
と絶縁性樹脂フィルムとの積層工程において
、絶縁性樹脂フィルムの降伏値の14~75%の張力を掛ける請求項1記載のシールドテープの製造方法。
【請求項3】
金属箔はアルミニウム箔であり
、絶縁性樹脂フィルムはポリエステルフィルムであり、
アルミニウム箔の弾性率が45~200GPaで、厚みが5~25μmであり、
ポリエステルフィルムの弾性率が0.3~15GPaで、厚みが7~30μmである請求項1又は2記載のシールドテープの製造方法。
【請求項4】
ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレートである請求項3記載のシールドテープの製造方法。
【請求項5】
ポリエチレンテレフタレートは、幅1000~1500mmで、厚さが5~16μmである請求項4記載のシールドテープの製造方法。
【請求項6】
粘着層が、導電性粘着層である請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
絶縁性樹脂フィルムと、
接着剤層を介し
て絶縁性樹脂フィルムの一方の面に接着された金属箔と、
絶縁性樹脂フィルムの他方の面に積層された、剥離フィルムに支持された粘着層とを有し、
剥離フィルムを剥離して使用されると共に
、粘着層側を内周側にしてカールするシールドテープ。
【請求項8】
粘着層が、導電性粘着層である請求項7記載のシールドテープ。
【請求項9】
絶縁性樹脂フィルムと、フィルム状の金属箔とを接着剤層を介して重ね、一対のローラ間で挟持するととも
に金属箔及
び絶縁性樹脂フィルムに張力を掛けながら搬送することにより
、金属箔
と絶縁性樹脂フィルムとが積層されたフィルム積層体を形成する工程と、
フィルム積層体
の絶縁性樹脂フィルムに、剥離フィルムに支持された粘着層を積層する工程と、
剥離フィルムを剥離する工程と、
を有し
、絶縁性樹脂フィルムに掛けた張力が除去される
と粘着層側を内周側にしてカールするシールドテープの製造方法であって、
金属箔
と絶縁性樹脂フィルムとの積層工程において
、絶縁性樹脂フィルムの降伏値未満の張力を掛けるシールドテープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層と導電性粘着層とを有し、電子機器筐体等に貼着されることにより電磁波シールド材として用いられるシールドテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁波シールドテープとして、アルミニウムや銅などの金属箔の一方の面に導電性粘着層を設けたシールドテープが提案されている(特許文献1)。
図4(A)に示すように、この種のシールドテープ100では、他の導電体との接触などによるショートが発生してしまうことを防止するため、金属箔101の導電性粘着層102が形成されていない面に、絶縁性樹脂層としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム103を積層することにより、シールドテープ100の片面に絶縁性を付与する改良が行われている。また、導電性粘着層102には、図示しない剥離フィルムを貼付してハンドリング性を向上させることも行われている。
【0003】
ところで、近年、スマートフォン、携帯ゲーム機、切符販売機等には表示面操作パネル(いわゆるタッチパネル)が適用されており、その表示面操作面からその背面に導通をとるためにシールドテープが使用されている。このようなシールドテープにおいても、金属筐体等の他の導電体との意図していない接触によりショートが発生してしまうことを防止するために、金属箔の他方の面に接着剤層を介して絶縁性樹脂フィルムを積層することで当該他方の面に絶縁性を付与することも提案されている。このようなシールドテープで表示面操作パネルの表示面操作面からその背面に導通を取る場合、表示面操作パネルの外縁部が、シールドテープの絶縁性樹脂フィルムが外側となるように巻き付けるように貼着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属箔101と接着剤層が積層されたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム103とを積層しながらピンチローラーで挟み込み搬送する際に、このフィルム積層体には金属箔101及びPETフィルム103のそれぞれに張力が掛かる。そして、張力が取り除かれると、PETフィルム103はもとに戻ろうとする応力が働くのに対して、金属箔101は延伸したまま戻ろうとする応力が働かず、その結果、
図4(B)に示すように、PETフィルム103側にカールする現象が生じる。
【0006】
このように、カールが生じたシールドテープ100をPETフィルム103が外側となるように巻き付けたり、段差部や角部に張り付けたりすると、カール方向と反対方向に貼着されることから、剥離が生じるおそれがある。また、金属箔101やPETフィルム103の厚さを厚くすることでカールをある程度抑制することはできるが、シートのコシが強くなってしまうため、シールドテープ100を異なる2平面にわたって貼着したり、3平面にわたって巻き付けるように貼着したりした場合には、剥離するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、金属箔と絶縁性樹脂フィルムとの積層体にカールが生じた場合にも、貼着部への優れた追従性を有し、剥離が防止できるシールドテープの製造方法及びシールドテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係るシールドテープの製造方法は、絶縁性樹脂フィルムと、フィルム状の金属箔とを接着剤層を介して重ね、一対のローラ間で挟持するとともに上記金属箔及び上記絶縁性樹脂フィルムに張力を掛けながら搬送することにより、上記金属箔と上記絶縁性樹脂フィルムとが積層されたフィルム積層体を形成し、上記フィルム積層体の上記絶縁性樹脂フィルムに粘着層を積層する工程を有し、上記金属箔と上記絶縁性樹脂フィルムとの積層工程において、上記絶縁性樹脂フィルムの降伏値未満の張力を掛けるものである。
【0009】
本発明のシールドテープの製造方法は、以下のように表現することもできる。
即ち、本発明は、絶縁性樹脂フィルムと接着剤層と金属箔と導電性粘着層とがこの順序で積層されているシールドテープの製造方法であって、
絶縁性樹脂フィルムと金属箔とを接着剤層を介して重ね、金属箔及び絶縁性樹脂フィルムに張力を掛けながら積層してフィルム積層体を形成する工程、及び
上記フィルム積層体の上記絶縁性樹脂フィルムに導電性粘着層を積層する工程、
を有し、
フィルム積層体を形成する工程において、上記絶縁性樹脂フィルムの降伏値未満の張力を掛けるシールドテープの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明に係るシールドテープは、絶縁性樹脂フィルムと、接着剤層を介して上記絶縁性樹脂フィルムの一方の面に接着された金属箔と、上記絶縁性樹脂フィルムの他方の面に積層された粘着層とを有し、上記粘着層側を内周側にしてカールするものである。この粘着層としては導電性粘着層が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、張力によって伸張されていた絶縁性樹脂フィルムが弾性復帰する方向に働く応力によって、粘着層を内周側とするように貼着方向と同方向にカールする。このため、本発明に係るシールドテープは、作業性に優れ、また、剥がれが生じず、耐反発性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明が適用されたシールドテープを示す断面図である。
【
図2】
図2は、絶縁性樹脂フィルムと、金属箔とを接着剤層を介して重ね、一対のローラ間で挟持するとともに張力を掛けながら搬送する工程を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明が適用されたシールドテープの製造工程を示す断面図であり、(A)はフィルム積層体と導電性粘着フィルムとを貼り合わせる工程を示し、(B)はフィルム積層体と導電性粘着フィルムとを貼り合わせた状態を示し、(C)は導電性粘着層を内周側とするようにカールするシールドテープを示す。
【
図4】
図4(A)は従来のシールドテープを示す断面図であり、
図4(B)は導電性粘着層を外周側とするようにカールするシールドテープを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用されたシールドテープの製造方法及びシールドテープについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
図1は本発明が適用されたシールドテープ1を示す断面図である。シールドテープ1は、絶縁性樹脂フィルム2と、絶縁性樹脂フィルム2の一面に接着剤層3を介して積層されたフィルム状の金属箔4と、絶縁性樹脂フィルム2の金属箔4が積層された一面と反対側の他面に形成された粘着層、好ましくは導電性粘着層5とを有する。
【0015】
[絶縁性樹脂フィルム]
絶縁性樹脂フィルム2としては、シールドテープのベースフィルムとして使用されている公知の樹脂フィルムを好ましく適用することができる。このような絶縁性樹脂フィルム2としては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリスチレンフィルム等を挙げることができる。中でも、入手容易性、機械的強度、耐熱性、コスト、防さび性等の観点からポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムを好ましく適用することができる。
【0016】
絶縁性樹脂フィルム2としてポリエステルフィルムを用いる場合、シールドテープ1の機械的強度を保持し、また、良好な形状追随性並びに形状安定性を確保するために、弾性率が0.3~15GPaで、厚みは好ましくは7~30μm、より好ましくは12~25μmのものを使用する。特に好ましいポリエステルフィルムとしては、幅1000~1500mmで、厚さが5~16μmのポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0017】
[金属箔]
金属箔4としては、従来のシールドテープに使用されている金属材料を適用することができる。このような金属箔4の材料としては、アルミニウム、銅、ニッケル、金、銀等を挙げることができる。これらの中でも、入手容易性、機械的強度、耐熱性、コスト、防さび性等の点からアルミニウムを好ましく適用することができる。
【0018】
金属箔4としてアルミニウム箔を用いる場合、シールドテープ1の機械的強度を保持し、また、良好な形状追随性並びに形状安定性を確保するために、弾性率が45~200GPaで、厚みは5~25μmとすることが好ましく、より好ましくは7~20μmである。
【0019】
[接着剤層]
絶縁性樹脂フィルム2と金属箔4とを接着する接着剤層3としては、例えばイソシアネート系架橋剤等を含有するポリエステル系接着剤やポリウレタン系接着剤等のドライ接着剤から形成される接着剤を用いることができる。
【0020】
後述するように、PETフィルム等の絶縁性樹脂フィルム2の片面に接着剤層3が塗布された後、絶縁性樹脂フィルム2の塗布面とアルミニウム箔等の金属箔4とが重ねられ、一対のローラ間で挟持されることにより、接着剤層3を介して絶縁性樹脂フィルム2と金属箔4とが積層されたフィルム積層体10が形成される。
【0021】
[粘着層、好ましくは導電性粘着層]
粘着層、好ましくは導電性粘着層5としては、従来、シールドテープの粘着層として、あるいは導電性粘着剤として用いられている導電性フィラーを含有した公知の導電性粘着剤を用いることができる。粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤やウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤やポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤やポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられ、一般にはゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤などが用いられる。
【0022】
また、導電性フィラーとしては、導電性接着剤に一般的に使用されている公知の導電性フィラーやカーボンブラックを使用することができる。例えば、ニッケル、銀、銅などの金属粉、銀コート銅粉等の金属コート金属粉、扁平スチレン粒子コアのNiコート、Auフラッシュメッキ物等の金属コート樹脂粉等、あるいは異方性導電接着剤において使用されているような球状の導電性粒子も使用することが可能である。また、両者を混合して使用してもよい。
【0023】
導電性粘着層5の層厚は、薄すぎると意図した粘着性が得られなくなる傾向があり、厚すぎると意図した導通特性が得られなくなる傾向があるので、好ましくは10~35μm、より好ましくは15~25μmである。
【0024】
なお、導電性粘着層5は、剥離処理されたPETフィルム等の剥離フィルム6に積層、支持されることにより導電性粘着フィルム7が形成された後、この導電性粘着フィルム7の導電性粘着層5がフィルム積層体10の絶縁性樹脂フィルム2に貼り合わされる(
図3(A)(B)参照)。そして、シールドテープ1の使用時には、剥離フィルム6が剥離され、導電性粘着層5側が貼着対象物に貼り付けられる(
図3(C)参照)。なお、シールドテープ1は、導電性粘着層5に代えて、導電性フィラーを含有しない絶縁性粘着層を設けてもよい。
【0025】
ここで、本発明が適用されたシールドテープ1は、後述する製造工程を経て製造されることにより、絶縁性樹脂フィルム2に積層された導電性粘着層5側を内周側にしてカールする。すなわち、シールドテープ1は、電子機器の縁部や段差部にカール方向と同方向に貼着されることから、貼着部位より剥離する危険がなく、接続信頼性を向上することができる。なお、カールの有無とその方向は、短冊状(例えば、15mm×150mm)に裁断したシールドテープの試験片を、平坦なステンレス製の定盤に試験片の両端部が定盤から離れる向きに載置することで、目視にて判定することができる。また、カールの程度は、定盤上に載置した短冊状の試験片の一方の端部を定盤に接触させ、定盤から浮き上がった部分の定盤平面方向の長さを測定することにより判定することができる。カールの程度は、好ましくは0より大7cm以下、より好ましくは0より大5cm以下である。
【0026】
[シールドテープの製造工程]
次いで、シールドテープ1の製造工程について説明する。PETフィルム等の絶縁性樹脂フィルム2の片面にイソシアネート硬化剤を含有するウレタン系接着剤等のドライ接着剤を塗布することにより、絶縁性樹脂フィルム2の片面に接着剤層3を積層する。
図2に示すように、この接着剤層3が積層された絶縁性樹脂フィルム2がロール状に巻回されたフィルム原反11を形成する。また、アルミニウム箔等の金属箔4がロール状に巻回された金属箔原反12を形成する。
【0027】
次いで、フィルム原反11から巻き出された絶縁性樹脂フィルム2に積層された接着剤層3と、金属箔原反12から巻き出された金属箔4とを重ね、搬送方向の上流及び下流にそれぞれ配置した上下一対のニップローラ20,21によって所定の張力を掛けながら搬送する。これにより、接着剤層3を介して絶縁性樹脂フィルム2と金属箔4とが積層されたフィルム積層体10が形成される。
【0028】
その後、
図3(A)(B)に示すように、剥離フィルム6に支持された導電性粘着層5を、フィルム積層体10の絶縁性樹脂フィルム2側に接着することによりシールドテープ1が形成される。
【0029】
ここで、絶縁性樹脂フィルム2に掛ける張力は、絶縁性樹脂フィルム2の降伏値より低くし、好ましくは絶縁性樹脂フィルム2の降伏値の14~75%とし、より好ましくは絶縁性樹脂フィルム2の降伏値の23~50%とする。当該範囲内の張力で引っ張ることにより、絶縁性樹脂フィルム2は長手方向に弾性変形させた状態で金属箔4と接着される。一方、金属箔4には、掛けた張力に応じて長手方向に塑性変形する。
【0030】
このようなシールドテープ1は、張力が除去されると、絶縁性樹脂フィルム2には弾性復帰する内部応力が働き、金属箔4は塑性変形されているため、
図3(C)に示すように、導電性粘着層5を内周側とするようにカールする。そして、シールドテープ1は、絶縁性樹脂フィルム2に導電性粘着層5を積層させているため、カール方向と電子機器の縁部や段差部への貼着方向とが同方向となり、貼りやすく、かつ剥がれ難くすることができる。
【0031】
したがって、シールドテープ1は、導通させる部位が起伏のある平面に配置されている画像表示モジュールや、導通させる部位が同一の平面には存在しない配置となっている画像表示モジュールに適用された場合にも、良好な接続信頼性を実現することができる。
【0032】
前者の例としては、ノートパソコンなどのような表示パネルを、シールドテープで任意屈曲部と段差を隔てて別途設けられた基板へ接続するように配置された画像表示モジュールを挙げることができる。
【0033】
また、後者の例としては、タッチパネルなどの表示面操作パネルの表面外縁部に設けられた表面電極と、裏面外縁部に設けられた裏面電極とを、シールドテープで表示面操作パネルの外縁部を包むように配置して接続された表示面操作パネルを、その操作対象となる液晶表示パネル等の画像表示パネルと組み合わせた画像表示モジュールを挙げることができる。
【0034】
なお、絶縁性樹脂フィルム2に掛ける張力が、絶縁性樹脂フィルム2の降伏値の14%未満であると、変位量が不足し、弾性復帰する内部応力によってもカールの度合いが小さくなり、絶縁性樹脂フィルム2や金属箔4の厚さ、貼着箇所の屈曲の度合い等によっては剥離する恐れがある。また、絶縁性樹脂フィルム2に掛ける張力が、絶縁性樹脂フィルム2の降伏値の75%を超えると、塑性変形を与える変位量となる箇所が生じる恐れもある。
【0035】
また、絶縁性樹脂フィルム2及び金属箔4に掛ける張力は、搬送方向に離間して配置したニップローラ20,21の回転速度差や材質に応じた絶縁性樹脂フィルム2又は金属箔4との摩擦係数を調節すること等により、適宜設定することができる。
【0036】
絶縁性樹脂フィルム2としてPETフィルムを用いた場合、引張による降伏応力は、PETフィルムの構造(結晶化度、結晶の配向性等)にもよるが、概ね単位断面積あたり48~73MPaである。また、搬送方向の上流及び下流にそれぞれ配置した上下一対のニップローラ20,21によって絶縁性樹脂フィルム2を搬送しながら掛ける最大張力は、20~30kg(196~294N)である。
【0037】
これらニップローラ20,21による最大張力(20~30kg)を、幅1100mm、厚さ5μmの絶縁性樹脂フィルム2(降伏応力(N):264~401.5N)における単位断面積あたりに掛かる張力(MPa)に換算すると、35.6~53.5MPaであり、これは、PETフィルムの引張降伏応力(48~73MPa)の約75%に相当する。
【0038】
同様に、ニップローラ20,21による最大張力(20~30kg)を、幅1100mm、厚さ7μmの絶縁性樹脂フィルム2(降伏応力(N):369.6~562.1N)における単位断面積あたりに掛かる張力(MPa)に換算すると、25.5~38.2MPaであり、これは、PETフィルムの引張降伏応力(48~73MPa)の約50%に相当する。
【0039】
同様に、ニップローラ20,21による最大張力(20~30kg)を、幅1100mm、厚さ12μmの絶縁性樹脂フィルム2(降伏応力(N):633.6~963.6N)における単位断面積あたりに掛かる張力(MPa)に換算すると、14.8~22.3MPaであり、これは、PETフィルムの引張降伏応力(48~73MPa)の約30%に相当する。
【0040】
同様に、ニップローラ20,21による最大張力(20~30kg)を、幅1100mm、厚さ16μmの絶縁性樹脂フィルム2(降伏応力(N):844.8~1284.8N)における単位断面積あたりに掛かる張力(MPa)に換算すると、11.1~16.7MPaであり、これは、PETフィルムの引張降伏応力(48~73MPa)の約23%に相当する。
【0041】
同様に、ニップローラ20,21による最大張力(20~30kg)を、幅1100mm、厚さ20μmの絶縁性樹脂フィルム2(降伏応力(N):1056~1606N)における単位断面積あたりに掛かる張力(MPa)に換算すると、8.9~13.4MPaであり、これは、PETフィルムの引張降伏応力(48~73MPa)の約18%に相当する。
【0042】
同様に、ニップローラ20,21による最大張力(20~30kg)を、幅1100mm、厚さ25μmの絶縁性樹脂フィルム2(降伏応力(N):1320~2007.5N)における単位断面積あたりに掛かる張力(MPa)に換算すると、7.1~10.7MPaであり、これは、PETフィルムの引張降伏応力(48~73MPa)の約14%に相当する。
【0043】
【0044】
絶縁性樹脂フィルム2は、引張降伏応力より低い張力が掛かると、張力が大きくなるほど弾性変位量が大きく、張力が取り除かれたときの弾性復帰する応力も大きくなる。したがって、表1に示す絶縁性樹脂フィルム2においては、厚さ5μmの絶縁性樹脂フィルム2に対する張力の引張降伏応力に対する割合が最も大きいことからカールの度合いが最も大きく、厚さが増すにつれて絶縁性樹脂フィルム2に対する張力の引張降伏応力に対する割合が下がり、カールの度合いが小さくなる。
【0045】
そして、上述したように、絶縁性樹脂フィルム2に対する張力の引張降伏応力に対する割合を14~75%とすることで、絶縁性樹脂フィルム2を塑性変形させることなく適切な変位量で弾性変形させ、張力が除去されることによりシールドテープ1を適度にカールさせることができる。これにより、シールドテープ1は、板状体の表裏面にわたる巻き付けや、段差部への貼着等、2以上の平面にわたって貼付する際に、貼り付け方向にカールすることで、作業性を向上するとともに、剥離の危険もなく、接続信頼性を向上することができる。
【実施例】
【0046】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、アルミニウム箔と、PETフィルムと、アルミニウム箔とPETフィルムとを接着する接着剤層と、導電性粘着層とを有するシールドテープの積層構造、アルミニウム箔及びPETフィルムの厚さを変えたサンプルを用意し、それぞれカール方向及び被着体に貼着した際の耐反発性について評価した。なお、導電性粘着層を内周側とするようにカールした以下の実施例のサンプルのカールの程度は、いずれも0より大5cm以下の範囲にあり、実用上問題のないカールの程度であった。
【0047】
[シールドテープサンプル]
実施例及び比較例に係るシールドテープのサンプルに用いる金属箔として、幅1100mmのアルミニウム箔(IN30-O:東洋アルミニウム(株)製)を使用した。また、実施例及び比較例に係るシールドテープのサンプルに用いる絶縁性樹脂フィルムとして、幅1100mmのPETフィルムを使用した。
【0048】
アルミニウム箔とPETフィルムとを接着する接着剤として、東洋モートン(株)製AD502に、硬化剤として東洋モートン(株)製CAT10Lを5部添加したものを使用した。この接着剤をアルミニウム箔に塗布し、乾燥させた後、PETフィルムと積層させ、上下一対のニップローラで挟み込むことにより貼り合わせるともに、搬送方向の上流及び下流にそれぞれ配置した上下一対のニップローラ間にわたって20~30kgの張力を掛けながら搬送することによりフィルム積層体を得た。その後、50℃雰囲気下で24時間放置することで、接着剤を硬化させた。
【0049】
シールドテープのサンプルに用いる導電性粘着層は、粘着剤としてアクリル酸ブチル、アクリル酸、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルの共重合体(水酸基価0.9mgKOH/g)を使用し、導電性フィラーとしてニッケルパウダー(255;ヴァーレ社製)を使用した。導電性粘着剤の調整は、粘着剤100phrに対し、イソシアネート、導電性フィラー20phr添加し、導電性粘着剤を作成した。イソシアネートはポリエステル樹脂の水酸基当量に対しイソシアネート基当量が1.2倍になるように調整した。
【0050】
この導電性粘着剤を剥離ライナーに20μm厚に塗布することにより導電性粘着フィルムを作成した。この導電性粘着フィルムの導電性粘着層を、各実施例及び比較例に係るフィルム積層体にラミネートすることによりシールドテープのサンプルを作成した。
【0051】
[カール方向の評価]
15×150mmの短冊状に切断した実施例及び比較例に係るシールドテープについて、剥離ライナーを剥してカール方向を確認し、導電性粘着層を内周側とするようにカールする場合を良好「○」、導電性粘着層を外周側とするようにカールする場合を不良「×」とした。
【0052】
[耐反発性の評価]
耐反発性については、15×10mmの短冊状に切断した各導電性粘着テープの短辺の片側が2mm突き出るように、厚さ1mmのアルミ板の平面に貼り付け、次いで、導電性粘着テープの突き出た部分をU字状に折り曲げ、アルミ板の反対面に1mmラップするように貼り付けた。60℃90%RH240時間放置した後、導電性粘着テープの剥離状態を確認し、剥がれがない場合を良好「〇」、剥がれが発生している場合を不良「×」と評価した。
【0053】
[総合判定]
カール方向及び耐反発性の評価がいずれも良好「〇」の場合を総合的に良好「○」と判定し、カール方向又は耐反発性の評価のいずれかが不良「×」の場合を総合的に不良「×」と判定した。
【0054】
[実施例1]
実施例1では、厚さ7μmのアルミニウム箔と、厚さ12μmのPETフィルムとを貼り合わせ、厚さ19μmのフィルム積層体を形成した。このフィルム積層体のPETフィルムに導電性粘着フィルムの導電性粘着層をラミネートすることにより、厚さ39μmのシールドテープを得た。実施例1におけるフィルム積層体に掛かった張力はPETフィルムの降伏応力の約30%である。
【0055】
実施例1に係るシールドテープは、導電性粘着層が設けられた側を内周側とするようにカールし(カール方向の評価は良好「○」)、また、耐反発性試験においても剥がれは生じることなく(耐反発性の評価は良好「○」)、総合判定結果も良好「○」であった。
【0056】
[実施例2]
実施例2では、厚さ7μmのアルミニウム箔と、厚さ25μmのPETフィルムとを貼り合わせ、厚さ32μmのフィルム積層体を形成した。このフィルム積層体のPETフィルムに導電性粘着フィルムの導電性粘着層をラミネートすることにより、厚さ52μmのシールドテープを得た。実施例2におけるフィルム積層体に掛かった張力はPETフィルムの降伏応力の約14%である。
【0057】
実施例2に係るシールドテープは、導電性粘着層が設けられた側を内周側とするようにカールし(カール方向の評価は良好「○」)、また、耐反発性試験においても剥がれは生じることなく(耐反発性の評価は良好「○」)、総合判定結果も良好「○」であった。
【0058】
[実施例3]
実施例3では、厚さ12μmのアルミニウム箔と、厚さ16μmのPETフィルムとを貼り合わせ、厚さ28μmのフィルム積層体を形成した。このフィルム積層体のPETフィルムに導電性粘着フィルムの導電性粘着層をラミネートすることにより、厚さ48μmのシールドテープを得た。実施例3におけるフィルム積層体に掛かった張力はPETフィルムの降伏応力の約23%である。
【0059】
実施例3に係るシールドテープは、導電性粘着層が設けられた側を内周側とするようにカールし(カール方向の評価は良好「○」)、また、耐反発性試験においても剥がれは生じることなく(耐反発性の評価は良好「○」)、総合判定結果も良好「○」であった。
【0060】
[実施例4]
実施例4では、厚さ12μmのアルミニウム箔と、厚さ25μmのPETフィルムとを貼り合わせ、厚さ37μmのフィルム積層体を形成した。このフィルム積層体のPETフィルムに導電性粘着フィルムの導電性粘着層をラミネートすることにより、厚さ57μmのシールドテープを得た。実施例4におけるフィルム積層体に掛かった張力はPETフィルムの降伏応力の約14%である。
【0061】
実施例4に係るシールドテープは、導電性粘着層が設けられた側を内周側とするようにカールし(カール方向の評価は良好「○」)、また、耐反発性試験においても剥がれは生じることなく(耐反発性の評価は良好「○」)、総合判定結果も良好「○」であった。
【0062】
[実施例5]
実施例5では、厚さ20μmのアルミニウム箔と、厚さ25μmのPETフィルムとを貼り合わせ、厚さ45μmのフィルム積層体を形成した。このフィルム積層体のPETフィルムに導電性粘着フィルムの導電性粘着層をラミネートすることにより、厚さ65μmのシールドテープを得た。実施例5におけるフィルム積層体に掛かった張力はPETフィルムの降伏応力の約14%である。
【0063】
実施例5に係るシールドテープは、導電性粘着層が設けられた側を内周側とするようにカールし(カール方向の評価は良好「○」)、また、耐反発性試験においても剥がれは生じることなく(耐反発性の評価は良好「○」)、総合判定結果も良好「○」であった。
【0064】
[比較例1]
比較例1では、厚さ7μmのアルミニウム箔と、厚さ12μmのPETフィルムとを貼り合わせ、厚さ19μmのフィルム積層体を形成した。このフィルム積層体のアルミニウム箔に導電性粘着フィルムの導電性粘着層をラミネートすることにより、厚さ39μmのシールドテープを得た。比較例1におけるフィルム積層体に掛かった張力はPETフィルムの降伏応力の約30%である。
【0065】
比較例1に係るシールドテープは、導電性粘着層が設けられた側を外周側とするようにカールしたため作業性が悪く(カール方向の評価は不良「×」)、耐反発性試験においては剥がれは生じることがなかったが(耐反発性の評価は良好「○」)、総合判定結果は不良「×」であった。
【0066】
[比較例2]
比較例2では、厚さ7μmのアルミニウム箔と、厚さ25μmのPETフィルムとを貼り合わせ、厚さ32μmのフィルム積層体を形成した。このフィルム積層体のアルミニウム箔に導電性粘着フィルムの導電性粘着層をラミネートすることにより、厚さ52μmのシールドテープを得た。比較例2におけるフィルム積層体に掛かった張力はPETフィルムの降伏応力の約14%である。
【0067】
比較例2に係るシールドテープは、導電性粘着層が設けられた側を外周側とするようにカールしたため作業性が悪く(カール方向の評価は不良「×」)、耐反発性試験においても厚さ25μmのPETフィルムが剥離方向にカールしているため、剥がれが生じ(耐反発性の評価は不良「×」)、総合判定結果は不良「×」であった。
【0068】
[比較例3]
比較例3では、厚さ12μmのアルミニウム箔と、厚さ16μmのPETフィルムとを貼り合わせ、厚さ28μmのフィルム積層体を形成した。このフィルム積層体のアルミニウム箔に導電性粘着フィルムの導電性粘着層をラミネートすることにより、厚さ48μmのシールドテープを得た。比較例3におけるフィルム積層体に掛かった張力はPETフィルムの降伏応力の約23%である。
【0069】
比較例3に係るシールドテープは、導電性粘着層が設けられた側を外周側とするようにカールしたため作業性が悪く(カール方向の評価は不良「×」)、耐反発性試験においては剥がれは生じることがなかったが(耐反発性の評価は良好「○」)、総合判定結果は不良「×」であった。
【0070】
[比較例4]
比較例4では、厚さ12μmのアルミニウム箔と、厚さ25μmのPETフィルムとを貼り合わせ、厚さ37μmのフィルム積層体を形成した。このフィルム積層体のアルミニウム箔に導電性粘着フィルムの導電性粘着層をラミネートすることにより、厚さ57μmのシールドテープを得た。比較例4におけるフィルム積層体に掛かった張力はPETフィルムの降伏応力の約14%である。
【0071】
比較例4に係るシールドテープは、導電性粘着層が設けられた側を外周側とするようにカールしたため作業性が悪く(カール方向の評価は不良「×」)、耐反発性試験においても厚さ25μmのPETフィルムが剥離方向にカールしているため、剥がれが生じ(耐反発性の評価は不良「×」)、総合判定結果は不良「×」であった。
【0072】
【0073】
表2に示すように、フィルム積層体のPETフィルムに導電性粘着フィルムの導電性粘着層をラミネートした実施例1~5に係るシールドテープは、ニップローラによる張力によって伸張されていたPETフィルムが弾性復帰する方向に働く応力によって、導電性粘着層を内周側とするように貼着方向と同方向にカールする。このため、実施例1~5に係るシールドテープは、作業性に優れ、また、厚さ1mmのアルミ板の表裏面にU字状に折り曲げて貼り付け、高温高湿環境下に長時間放置した場合にも、剥がれが生じず、耐反発性にも優れることが分かる。
【0074】
一方、比較例1~4に係るシールドテープは、PETフィルムと反対側のアルミニウム箔に導電性粘着層をラミネートしているため、導電性粘着層が外周側となるように貼着方向と反対方向にカールする。このため、比較例1~4に係るシールドテープは、作業性が悪く、またPETフィルムが弾性復帰する際に働く応力が剥離方向に作用し、PETフィルムの厚さが厚くなるほど耐反発性が悪化した。
【0075】
なお、実施例1~5のなかでは、PETフィルムの厚さが薄いほどPETフィルムの降伏値に対するPETフィルムに掛かる張力の割合が高く、変位量も大きくなり、カールの度合いも大きくなる。したがって、実施例1が最もカールの度合いが大きく、次いで実施例2,3が大きくカールする。PETフィルムの厚さが25μmと厚い実施例4,5が実施例1~3に比してカールの度合いは小さい。また、実施例4,5の中では、アルミニウム箔の厚さが薄い実施例4が比較的カールの度合いが大きくなった。
【符号の説明】
【0076】
1 シールドテープ、2 絶縁性樹脂フィルム、3 接着剤層、4 金属箔、5 導電性粘着層、6 剥離フィルム、7 導電性粘着フィルム、10 フィルム積層体、11 フィルム原反、12 金属箔原反、20,21 ニップローラ