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特許7173241重合体、電極、蓄電デバイス及び重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】重合体、電極、蓄電デバイス及び重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/02 20060101AFI20221109BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20221109BHJP
   H01G 11/48 20130101ALI20221109BHJP
【FI】
C08G73/02
H01G11/06
H01G11/48
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021129005
(22)【出願日】2021-08-05
(62)【分割の表示】P 2018547538の分割
【原出願日】2017-10-11
(65)【公開番号】P2021181581
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2016208057
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭一
(72)【発明者】
【氏名】相田 一成
(72)【発明者】
【氏名】増田 香奈
(72)【発明者】
【氏名】末政 大地
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-200618(JP,A)
【文献】特開2004-43528(JP,A)
【文献】特開平5-323635(JP,A)
【文献】特開2007-214364(JP,A)
【文献】特開2011-102355(JP,A)
【文献】KANBARA, Takaki et al.,Preparation of Soluble Poly(iminoarylene)s by Palladium-Catalyzed Polycondensation of Aryl Dibromides with Aryl Primary Diamines,Polymer Journal,vol.31, no.2,1999年,pp.206-209
【文献】SAKAMAKI, Daisuke et al.,A Polymacrocyclic Oligoarylamine with a Pseudobeltane Motif: Towards a Cylindrical Multispin System,Angew. Chem. Int. Ed.,2012年,51,pp.12776-12781
【文献】SPETSERIS, Nikolaos et al.,Linear and Hyperbranched m-Polyaniline: Synthesis of Polymers for the Study of Magnetism in Organic Systems,Macromolecules,1998年,31,pp.3158-3161
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2)で表される構造の少なくとも1つを有する重合体:
【化1】
式(2)において、Ar2は相互に独立に芳香環を含む基を示し、但し、複数のAr2の全てがビフェニル-4,4'-ジイルである場合を除き、aは1~10の整数を示し、Ar3は相互に独立に芳香環を含む基を示し、bは相互に独立に1又は2を示し、-Ar3-(N)b=のNに結合する基がAr2に結合して環を形成していてもよい。
【請求項2】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000~100,000である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
電極材料用である、請求項1または2に記載の重合体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の重合体を含有する電極。
【請求項5】
請求項4に記載の電極を正極として備える蓄電デバイス。
【請求項6】
塩基および触媒の存在下、下記式(9)で表される化合物と下記式(10)で表される化合物とを、これらの化合物の使用割合(下記式(9)で表される化合物のモル:下記式(10)で表される化合物のモル)が50:90~50:110となるように反応させる工程を含
前記触媒が、下記群(c)に記載の化合物、及び、トリアルキルホスフィンとパラジウム化合物とからなる触媒から選ばれる少なくとも1種の触媒である、
重合体の製造方法:
【化2】
式(9)において、Ar5は芳香環を含む基を示し;
【化3】
式(10)において、Ar6は芳香環を含む基を示し、Xは相互に独立にハロ基を示し;
【化4】
群(c) 群(c)における、「Ms」はメシラート基を示し、「Cy」はシクロへキシル基を示し、「L」は配位子を示し、「iprO」はイソプロポキシ基を示す。
【請求項7】
前記式(9)で表される化合物が、芳香環のパラ位にアミノ基が結合した化合物であり、
前記式(10)で表される化合物が、芳香環のパラ位にハロ基が結合した化合物である、
請求項6に記載の重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、電極、蓄電デバイス及び重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリン等の芳香族アミン系重合体は導電性高分子として知られており、有機EL、有機トランジスタ、太陽電池等に用いられる正孔輸送材料やリチウムイオン二次電池等の電極材料としての展開が期待されている。このような芳香族アミン系重合体としては、ポリアニリンの他、例えば、特許文献1で提案されている直鎖型のポリアリーレンアミンが知られている。
【0003】
また、N,N,N’,N’-テトラメチル-ベンジジン等の芳香族ジアミン化合物が蓄電デバイスの電極活物質として有用であることが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-45142号公報
【文献】特開2014-222590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来提案されているポリアリーレンアミンは、有機溶剤に対する溶解性に乏しいため、液相プロセスに適用し難く、正孔輸送材料として使用することができない等の問題があった。また、従来提案されている芳香族ジアミン化合物を蓄電デバイスの電極活物質として用いた場合、満足な特性が得られない場合があった。
【0006】
したがって、本発明の一実施形態は、有機溶剤に対する溶解性に優れる新規な芳香族アミン系重合体及びその製造方法を提供する。また、本発明の別の実施形態は、蓄電デバイスの電極活物質として用いた場合、満足な特性を与える新規な芳香族アミン系重合体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情に鑑み、本発明者が鋭意研究を行ったところ、分岐鎖構造又はネットワーク構造を有する特定の芳香族アミン系重合体を用いることで前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下のとおりである。
【0008】
本発明の一実施形態は、
下記式(1)及び(2)で表される構造の少なくとも1つを有する重合体(以下「本重合体1」ともいう。)、
下記式(3)及び(R')で表される構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上である重合体(以下「本重合体2」ともいう。)、又は、
下記式(1)及び(6)で表される構造を有する重合体(以下「本重合体3」ともいう。)を提供する。
なお、これら本重合体1~3をまとめて、本重合体Aともいう。
【0009】
また、本発明の一実施形態は、前記本重合体Aを含有する電極を提供し、更に、該電極を正極として備える蓄電デバイスを提供する。
【0010】
さらに本発明の一実施形態は、
塩基の存在下、下記式(7)で表される化合物と下記式(8)で表される化合物とを反応させる工程を含む、重合体の製造方法(以下「本方法I」ともいう。)、又は
塩基の存在下、下記式(9)で表される化合物と下記式(10)で表される化合物とを反応させる工程を含む、重合体の製造方法(以下「本方法II」ともいう。)を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、有機溶剤に対する溶解性に優れる芳香族アミン系重合体が得られる。したがって、該重合体は、液相プロセスに適用される正極輸送材料等として極めて有用である。また、該重合体を用いることで、満足な特性、具体的には、高放電容量、高サイクル特性、高レート特性を満たす蓄電デバイスを容易に得ることができる。したがって、該重合体は、蓄電デバイスの電極材料として極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本重合体A
本重合体Aは、以下の本重合体1~3のいずれかである。
本重合体1は、下記式(1)で表される構造(以下「構造(1)」ともいう。他の構造についても同様に表現する場合がある。)及び下記式(2)で表される構造の少なくとも1つを有する重合体である。
【0013】
構造(1)を有する本重合体1(以下「本重合体1a」ともいう。)は、有機溶剤に対する溶解性に特に優れ、液相プロセスに適用される正極輸送材料等として極めて有用である。また、該本重合体1aを、電極材料、特に、活物質として用いた場合、サイクル特性に優れる蓄電デバイスを容易に得ることができる。
【0014】
【化1】
【0015】
式(1)において、Ar1は相互に独立に置換又は非置換の芳香族炭化水素基であり、Ar1に結合する結合手はNと結合する。
芳香族炭化水素基を構成する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ビフェニル環等が挙げられ、ベンゼン環が好ましい。
置換基としては、炭素数1~12、好ましくは炭素数1~6の炭化水素基、炭素数1~6、好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基、フルオロ基、カルボキシ基等が挙げられる。
Ar1としては、非置換の芳香族炭化水素基が好ましく、より好ましくはp-フェニレン基である。
【0016】
Yは独立に単結合、2価の連結基又は2個あるAr1各々に結合する2個の水素原子若しくは置換基を示す。
該連結基としては、-O-、-NR-(Rは水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基である)、-S-、-CO-、炭素数1~4のアルキレン基等が挙げられ、該置換基としては、Ar1における置換基と同様の基等が挙げられる。
Yは、単結合、-S-又はAr1各々に結合する2個の水素原子であることが好ましい。
式(1)中の複数のYは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。本明細書における同様の記載は、同様の意味を示す。
【0017】
nは4以上の整数を示し、得られる重合体の重量平均分子量が下記範囲となるような整数であることが好ましく、より好ましくは10~100である。
【0018】
本重合体1aの具体例としては、例えば、下記重合体が挙げられる。下記重合体中のnは、式(1)中のnと同義である。
【0019】
【化2】
【0020】
本重合体1aとしては、有機溶剤に対する溶解性により優れる重合体が得られる等の点から、前記式(1)及び下記式(6)で表される構造を有する本重合体3であることが好ましい。なお、下記式(6)における「*」は、前記式(1)におけるAr1と結合する結合手を示す。
【0021】
【化3】
【0022】
式(6)において、Ar4は相互に独立に置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。Ar4における芳香族炭化水素基を構成する芳香環及び置換基の例示、並びに好ましい基は、Ar1と同様である。
【0023】
2は相互に独立に水素原子、ハロ基、ニトロ基、水酸基、スルホ基、アミノ基又は有機基を示す。
該有機基としては、炭素数1~6、好ましくは炭素数1~4の炭化水素基、炭素数1~6、好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基等が挙げられる。
該ハロ基としては、フルオロ基又はブロモ基が好ましく、フルオロ基がより好ましい。
【0024】
2が、ハロ基、ニトロ基、水酸基、スルホ基、アミノ基又はアルコキシ基等の極性基であると、一般的な電解液に膨潤可能な重合体が得られるため、該重合体を電極材料、特に、活物質として用いた場合、高レート特性や優れたサイクル特性を示す蓄電デバイスを容易に得ることができる。
2が水素原子又は炭素数1~4のアルコキシ基、特に水素原子又はメトキシ基である本重合体3を、電極材料、特に、活物質として用いた場合、サイクル特性に優れる蓄電デバイスを容易に得ることができる。
2が水素原子、フルオロ基又は炭化水素基、特にフルオロ基又はメチル基である本重合体3を、電極材料、特に、活物質として用いた場合、高い放電容量を有する蓄電デバイスを容易に得ることができる。
2としては、水素原子、フルオロ基、ブロモ基、メチル基、メトキシ基であることが好ましい。
【0025】
Zは単結合、2価の連結基又は2個あるAr4各々に結合する2個の水素原子若しくは置換基を示す。Zにおける連結基及び置換基の例示、並びに好ましい基は、Yと同様である。
【0026】
構造(6)の具体例としては、例えば、下記構造が挙げられる。下記構造中のRは、式(6)中のR2と同義であり、好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、フルオロ基又はブロモ基である。
【0027】
【化4】
【0028】
また、前記構造(1)は、下記式(R)で表される構造(R1-N=)を有することが、本重合体1aや3の製造し易さ等の点から好ましい。
なお、式(6)は、前記式(1)のNにR1が結合することを示す。
【0029】
【化5】
[式(R)において、R1は水素原子、ハロ基、ニトロ基、水酸基、スルホ基、アミノ基又は有機基を示す。]
【0030】
1における有機基としては、R2における有機基と同様の基の他、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基等が挙げられ、該有機基としては、「=N-Ar-**」[Arは置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示し、**は前記構造(1)におけるNと結合する結合手を示す。]で表される構造を含む基以外の基であることが好ましい。
1としては、好ましくは水素原子又は置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0031】
本重合体1a及び/又は本重合体3の具体例としては、例えば、下記群(a1)~(a4)の重合体が挙げられる。下記重合体中のnは、式(1)中のnと同義である。
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
本重合体1は、下記式(2)で表される構造を有する重合体(以下「本重合体1b」ともいう。)であってもよい。
本重合体1bを、電極材料、特に、活物質として用いた場合、放電容量及びレート特性にバランスよく優れる蓄電デバイスを容易に得ることができる。
【0037】
【化10】
【0038】
前記式(2)において、Ar2は相互に独立に芳香環を含む基を示し(但し、複数のAr2の全てがビフェニル-4,4'-ジイルである場合を除く)、Ar3は相互に独立に芳香環を含む基を示す。
Ar2及びAr3における芳香環を含む基としては、Ar1で例示した芳香族炭化水素基の他、複数の当該芳香族炭化水素基が2価の連結基により連結された基等が挙げられる。該2価の連結基としては、-O-、-S-、-SO2-、-NH-、-NHCO-、-COO-、置換又は非置換の2価の炭化水素基、-N(C65)-等が挙げられる。該置換基としては、Ar1における置換基と同様の基等が挙げられる。
Ar2及びAr3としては、非置換のベンゼン環を含む基が好ましく、特に非置換のベンゼン環を1~5個含む基であることが好ましい。
なお、-Ar3-(N)b=のNに結合する基がAr2に結合して環を形成していてもよい。
【0039】
aは1~10の整数を示す。
bは相互に独立に1又は2を示す。
【0040】
本重合体1bとしては、放電容量及びレート特性にバランスよく優れ、特に放電容量の大きい蓄電デバイス等を容易に得ることができる等の点から、下記式(2')で表される構造を有する重合体が好ましい。
【0041】
【化11】
〔式(2')におけるAr2及びAr3は相互に独立に、前記式(2)中のAr2及びAr3と同義である。〕
【0042】
本重合体1bの具体例としては、例えば、以下の重合体が挙げられる。
【0043】
【化12】
【0044】
本重合体2は、下記式(3)及び(R')で表される構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が2,000以上である。
このような本重合体2は、有機溶剤に対する溶解性に特に優れ、液相プロセスに適用される正極輸送材料等として極めて有用であり、また、該本重合体2を、電極材料、特に、活物質として用いた場合、サイクル特性に優れる蓄電デバイスを容易に得ることができる。
【0045】
【化13】
【0046】
式(3)において、Ar1及びYは相互に独立に、前記Ar1及びYと同義である。
mは2以上の整数を示す。
【0047】
【化14】
【0048】
式(R')において、R1は水素原子、ハロ基、ニトロ基、水酸基、スルホ基、アミノ基又は有機基(但し、該有機基から、「=N-Ar-**」[Arは置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示し、**は下記式(3)におけるNと結合する結合手を示す。]で表される構造を含む基を除く)を示し、式(R')は、前記式(3)のNにR1が結合することを示す。
1における有機基としては、R2における有機基と同様の基の他、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基等が挙げられ、R1としては、好ましくは水素原子又は置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0049】
本重合体2は、有機溶剤に対する溶解性により優れる重合体が得られる等の点から、下記式(3-1)で表される繰り返し単位及び前記式(6)で表される構造を有することが好ましい。なお、式(6)における「*」は、下記式(3-1)におけるAr1と結合する結合手を示す。
下記式(3-1)で表される繰り返し単位とは、R1-で表される本重合体2のコアと、前記式(6)で表される本重合体2の末端との間に位置する、単量体由来の繰り返し単位を意味する。
本重合体2は、下記式(3-1)で表される繰り返し単位間に、下記式(3-2)で表される構造単位を1個又は複数個有することが好ましい。
【0050】
【化15】
【0051】
【化16】
【0052】
式(3-1)~(3-2)において、Ar1、Ar4、R2、Y及びZは相互に独立に、前記Ar1、Ar4、R2、Y及びZと同義である。また、式(3-2)において、*1は式(3-1)で表される繰り返し単位におけるN又は構造(3-2)におけるNと結合する結合手を示す。また、式(3-2)において、*2は式(3-1)で表される繰り返し単位におけるAr1の少なくとも一方又は構造(3-2)におけるAr1と結合する結合手を示す。
【0053】
本重合体2は、前記式(3-1)で表される繰り返し単位を10~100個含んでいることが好ましい。
本重合体2の具体例としては、例えば、前記群(a1)~(a3)で表される重合体において、nが2以上の重合体の他、前記群(a1)~(a3)で表される構造式において、繰り返し単位(括弧で括られている構造単位)と繰り返し単位との間に、前記式(3-2)で表される構造単位を1個又は複数個有する重合体が挙げられる。
【0054】
本重合体AのMwは、該重合体Aを電極材料、特に、活物質として用いた場合、レート特性及びサイクル特性に優れる蓄電デバイスを容易に得ることができる等の点から、好ましくは2,000~100,000、より好ましくは3,000~100,000、特に好ましくは5,000~60,000である。
Mwは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定される。
【0055】
重合体の製造方法
本重合体Aの製造方法は特に制限されないが、所望の構造の重合体を容易に製造することができる等の点から、本重合体Aは、下記本方法I又は本方法IIにより製造することが好ましい。
【0056】
本方法Iは、塩基の存在下、下記式(7)で表される化合物(以下「化合物(7)」ともいう。他の化合物についても同様に表現する場合がある。)と下記式(8)で表される化合物とを反応させる工程を含む方法である。
この方法によれば、本重合体1a、本重合体2及び本重合体3のような分岐鎖構造を有する重合体、特にハイパーブランチポリマーを容易に製造することができる。
【0057】
【化17】
【0058】
式(7)において、Ar1及びYは相互に独立に前記式(1)中のAr1及びYと同義である。
Xは相互に独立にクロロ基、ブロモ基又はヨード基を示し、より容易に反応が進行する等の点から、ブロモ基が好ましい。
本方法Iで用いる化合物(7)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0059】
化合物(7)は、市販品を用いてもよく、従来公知の方法で合成して得てもよい。
化合物(7)としては、下記化合物が好ましい。
【0060】
【化18】
【0061】
【化19】
【0062】
式(8)において、Ar4、R2及びZは相互に独立に前記式(6)中のAr4、R2及びZと同義である。
本方法Iで用いる化合物(8)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0063】
化合物(8)としては、下記化合物が好ましい。
【0064】
【化20】
【0065】
化合物(8)は市販品を用いてもよく、従来公知の方法で合成して得てもよい。
該従来公知の方法としては、例えば、R2-Ar4-NH2(R2及びAr4は式(8)中のR2及びAr4と同義である。)で表される化合物と、R2-Ar4-X(R2及びAr4は式(8)中のR2及びAr4と同義であり、Xはハロ基である。)で表される化合物とを下記Pd(P(t-Bu)32等の触媒の存在下で反応させる方法等が挙げられる。
なお、本方法Iでは、化合物(8)の代わりに、その前駆体である前記R2-Ar4-NH2で表される化合物と、前記R2-Ar4-Xで表される化合物とを用いてもよい。
【0066】
前記塩基としては、特に制限されず、従来公知の塩基を用いることができるが、強塩基であることが好ましく、求核性の低い塩基であることがより好ましく、具体的には、金属アルコキシド、金属アミドが挙げられ、好ましくはナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等が挙げられる。
本方法Iで用いる塩基は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0067】
本方法Iにおける反応の際には、触媒を用いることが好ましい。該触媒としては、従来公知の触媒を用いることができ、具体的には、下記化合物等が挙げられる。中でも、トリアルキルホスフィン類とパラジウム化合物からなる触媒が好ましい。
本方法Iで触媒を用いる場合、該触媒は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0068】
【化21】
[前記化合物における、「Ms」はメシラート基を示し、「Cy」はシクロへキシル基を示し、「L」は配位子を示し、「iprO」はイソプロポキシ基を示す。]
【0069】
本方法Iにおける反応は、通常、溶媒の存在下で行われる。該溶媒としては、従来公知の溶媒を用いることができ、特に制限されないが、化合物(7)及び(8)を溶解可能な溶媒が好ましく、具体的には、THF(テトラヒドロフラン)などのエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
本方法Iで溶媒を用いる場合、該溶媒は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0070】
本方法Iにおける反応条件も特に制限されないが、反応温度は、好ましくは25~150℃であり、反応時間は、好ましくは0.5~10時間である。また、本方法Iにおいて、化合物(7)と化合物(8)の使用割合(化合物(7):化合物(8))は、モル比で100:100~90:100の範囲内にあることが好ましい。
【0071】
本方法Iでは、以上の方法で得られた重合体中の「NH」と、R1X(Xはハロ基である。)などの前記R1を含む化合物とを反応させることで、前記構造(1)、(3)のNにR1が結合した重合体を得ることができる。前記R1Xで表される化合物としては、例えば、クロロベンゼン、ブロモナフタレン、ブロモアントラセン、ブロモ安息香酸等が挙げられる。
【0072】
本方法IIは、塩基の存在下、下記式(9)で表される化合物と下記式(10)で表される化合物とを反応させる工程を含む方法である。
この方法によれば、本重合体1bのようなネットワークポリマーを容易に製造することができる。
【0073】
【化22】
【0074】
式(9)において、Ar5は芳香環を含む基を示す。Ar5における芳香環を含む基の例示、並びに好ましい基は、Ar2及びAr3と同様である。
化合物(9)としては、得られる重合体を電極に用いた場合、放電容量及びレート特性にバランスよく優れ、特に放電容量の大きい蓄電デバイス等を容易に得ることができる等の点から、芳香環のパラ位にアミノ基が結合した化合物が好ましい。
【0075】
本方法IIで用いる化合物(9)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
化合物(9)は、市販品を用いてもよく、従来公知の方法で合成して得てもよい。
化合物(9)としては、下記化合物が好ましい。
【0076】
【化23】
【0077】
【化24】
【0078】
式(10)において、Ar6は式(9)のAr5と同義であり、Xは相互に独立にハロ基を示す。
化合物(10)としては、得られる重合体を電極に用いた場合、放電容量及びレート特性にバランスよく優れ、特に放電容量の大きい蓄電デバイス等を容易に得ることができる等の点から、芳香環のパラ位にハロ基が結合した化合物が好ましい。
【0079】
本方法IIで用いる化合物(10)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
化合物(10)は、市販品を用いてもよく、従来公知の方法で合成して得てもよい。
化合物(10)としては、下記化合物が好ましい。
【0080】
【化25】
【0081】
本方法IIで用いる塩基としては、特に制限されず、従来公知の塩基を用いることができるが、本方法Iで用いる塩基と同様の塩基が挙げられる。
本方法IIで用いる塩基は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0082】
本方法IIにおける反応の際には、本方法Iと同様の触媒及び溶媒を用いることが好ましい。なお、これらの触媒及び溶媒は、それぞれ、1種でもよく、2種以上でもよい。
本方法IIにおける反応条件も、本方法Iと同様の条件が挙げられる。また、本方法IIにおいて、化合物(9)と化合物(10)の使用割合(化合物(9):化合物(10))は、モル比で50:90~50:110の範囲内にあることが好ましい。
【0083】
本重合体Aは、蓄電デバイス、有機EL、有機トランジスタ、太陽電池等の正孔輸送材料として、好適に使用することができるが、本重合体の効果がより発揮される等の点から、蓄電デバイスにより好適に使用され、さらには、電極材料として好適に使用され、特に、正極材料、具体的には正極活物質として好適に使用される。
【0084】
電極
本発明の一実施形態に係る電極(以下「本電極」ともいう。)は、1種又は2種以上の本重合体Aを含有すれば特に制限されないが、集電体上に本重合体A及びバインダー等を含有する活物質層を有する電極が好ましい。
本電極に用いられる本重合体Aは、そのまま電極材料として使用することもできるが、活性炭や無機物質等と複合化した後、電極材料として使用することもできる。また、本重合体Aを、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リン酸鉄リチウム等の公知の正極活物質と共に電極材料として使用することもできる。
なお、以下では、本重合体A、本重合体Aと活性炭等と複合化したもの、又は本重合体Aと公知の正極活物質を混合したものを、本活物質ともいう。
【0085】
前記活物質層は、例えば、本活物質及びバインダー等を含有するスラリーを調製し、これを集電体上に塗布し、乾燥させることにより製造してもよいし、本活物質及びバインダー等を含む混合物から、予めフィルムを形成し、該フィルムを(熱)プレスや接着剤により、集電体上に配置することにより製造してもよい。
【0086】
本電極は、本活物質を正極活物質として含む、非水電解質二次電池の正極であることが好ましく、本重合体Aを活性炭と複合化させた正極活物質を含む、リチウムイオンキャパシタ又は電気二重層キャパシタの正極であることも好ましい。
【0087】
本電極における本活物質の含有量は、特に制限されないが、得られる活物質層100質量%に対し、好ましくは10~90質量%である。
なお、本発明の一実施形態の電極に含まれる本活物質は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0088】
前記集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルなどが挙げられるが、本発明の一実施形態に係る電極が正極である場合、アルミニウム、ステンレス等が好ましい。集電体の厚みは、通常10~50μmである。
【0089】
前記バインダーとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)等のゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレンの他、特開2009-246137号公報等に開示されているフッ素変性(メタ)アクリル系バインダーを挙げることができる。
前記バインダーは、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0090】
前記バインダーの含有量は、特に制限されないが、得られる活物質層100質量%に対し、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。
【0091】
前記活物質層には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、黒鉛、気相成長炭素繊維(VGCF)、高表面積活性炭(MAXSORB)、カーボンナノチューブ(SWNT、MWNT等)、金属粉末等の導電剤;カルボキシルメチルセルロース、そのNa塩若しくはアンモニウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ又はカゼイン等の増粘剤などの任意成分を含有してもよい。
前記任意成分はそれぞれ、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0092】
前記活物質層の厚さは、特に限定されないが、通常5~500μm、好ましくは10~200μm、特に好ましくは10~100μmである。
【0093】
蓄電デバイス
本発明の一実施形態に係る蓄電デバイス(以下「本蓄電デバイス」ともいう。)は、本電極を正極として備えてなる。蓄電デバイスとしては、例えば、非水電解質二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタを挙げることができる。本蓄電デバイスは、通常、正極として用いられる本電極の他、少なくとも負極及び電解質を備える。
正極として用いられる本発明の一実施形態に係る電極の構成及び製造方法は、前記「電極」において説明した通りである。
【0094】
前記負極の基本的な構成及び製造方法は、従来公知の構成及び製造方法であればよく、活物質の種類を除いて、前記「電極」において説明したものと同様であってもよい。
用いられる負極活物質としては、金属リチウム、リチウムをドープした炭素系材料(黒鉛、活性炭等)、リチウム合金などが挙げられる。これらの負極活物質は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0095】
前記電解質は、通常、溶媒中に溶解された電解液の状態で用いられる。前記電解質としては、特に制限されないが、リチウムイオンを生成することのできるものが好ましく、具体的には、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO22、LiN(FSO22などが挙げられる。これらの電解質は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0096】
電解質を溶解させるための溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒が好ましく、具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、1-(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジグライム、テトラグライム、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等を挙げることができる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0097】
電解質は、前記のように通常は液状に調製されて使用されるが、漏液や活物質の溶出を防止する目的でゲル状又は固体状のものを使用してもよい。
【0098】
電解質が電解液の状態で用いられる場合、正極と負極の間には、通常、正極と負極が物理的に接触しないようにするためにセパレータが設けられる。前記セパレータとしては従来公知のものを使用すればよく、例えば、セルロースレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド等を原料とする不織布又は多孔質フィルムの他、紙、ガラスフィルター等が挙げられる。
【実施例
【0099】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0100】
参考例1]
100mlナスフラスコに、ビス(4-ブロモフェニル)アミン(BPA)を3.27g、ジフェニルアミン(DPA)を1.69g、ナトリウムt-ブトキシド(NaOtBu)を2.88g、触媒としてビス(トリ-tBuホスフィン)パラジウム(0)を5mg及びトルエンを10ml加え、100℃で6時間加温した。内容物をメタノールに投入し、得られた白色粉末をメタノール及びアセトンで洗浄し、ポリマーA-1を3.3g得た。1H-NMR(CDCl3)において6.9ppm(芳香族)にのみピークが存在した。GPC(装置名:HCL-8320GPC(東ソー(株)製)、カラム:TSKgelsuperHM-H(東ソー(株)製)、移動相:THF)により測定したポリスチレン換算のMwは10,000であった。また、MALDI-TOFMS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)による分析を行った結果、下記式(A)~(D)においてR2が水素原子である構造の存在を示すマススペクトルが得られ、前記式(1)、(3)、(3-1)~(3-2)及び(6)で表される構造を有することが確認された。
【0101】
【化26】
【0102】
【化27】
【0103】
【化28】
【0104】
【化29】
【0105】
参考例2]
100mlナスフラスコに、BPAを3.27g、p,p'-ジトリルアミン(MPA)を1.97g、NaOtBuを2.88g、触媒としてビス(トリ-tBuホスフィン)パラジウム(0)を51mg及びトルエンを10ml加え、100℃で6時間加温した。内容物をメタノールに投入し、得られた白色粉末をメタノール及びアセトンで洗浄し、ポリマーA-2を3.6g得た。1H-NMR(CDCl3)において6.9ppm(芳香族)及び2.5ppm(メチル基)にピークが存在した。前記と同様の条件で測定したポリスチレン換算のMwは9,000であった。また、MALDI-TOFMSによる分析を行った結果、前記式(A)~(D)においてR2がメチル基である構造の存在を示すマススペクトルが得られ、前記式(1)、(3)、(3-1)~(3-2)及び(6)で表される構造を有することが確認された。
【0106】
参考例3]
100mlナスフラスコに、BPAを3.27g、ビス(メトキシフェニル)アミン(MOPA)を2.29g、NaOtBuを2.88g、触媒としてビス(トリ-tBuホスフィン)パラジウム(0)を51mg及びTHFを10ml加え、70℃で6時間加温した。内容物をメタノールに投入し、得られた白色粉末をメタノール及びアセトンで洗浄し、ポリマーA-3を3.7g得た。1H-NMR(CDCl3)において6.7ppm及び6.9ppm(芳香族)及び3.8ppm(メトキシ基)にピークが存在した。前記と同様の条件で測定したポリスチレン換算のMwは11,000であった。また、MALDI-TOFMSによる分析を行った結果、前記式(A)~(D)においてR2がメトキシ基である構造の存在を示すマススペクトルが得られ、前記式(1)、(3)、(3-1)~(3-2)及び(6)で表される構造を有することが確認された。
【0107】
参考例4]
100mlナスフラスコに、BPAを3.27g、ビス(4-フルオロフェニル)アミン(FPA)を2.05g、NaOtBuを2.88g、触媒としてビス(トリ-tBuホスフィン)パラジウム(0)を51mg及びTHFを10ml加え、70℃で6時間加温した。内容物をメタノールに投入し、得られた白色粉末をメタノール及びアセトンで洗浄し、ポリマーA-4を3.7g得た。1H-NMR(CDCl3)において6.7ppm及び6.9ppm(芳香族)にピークが存在した。前記と同様の条件で測定したポリスチレン換算のMwは8,000であった。また、MALDI-TOFMSによる分析を行った結果、前記式(A)~(D)においてR2がフルオロ基である構造の存在を示すマススペクトルが得られ、前記式(1)、(3)、(3-1)~(3-2)及び(6)で表される構造を有することが確認された。
【0108】
[実施例5]
(構造(2)を有する重合体の製造)
100mlナスフラスコに、パラフェニレンジアミン(PDA)を0.54g、1,4-ジブロモベンゼンを2.35g、NaOtBuを2.88g、触媒としてビス(トリ-tBuホスフィン)パラジウム(0)を51mg及びトルエンを10ml加え、100℃で6時間加温した。内容物をメタノールに投入し、得られた白色粉末をメタノール及びアセトンで洗浄し、ポリマーB-1を1.3g得た。FT-IRでN-H及びC-Brの結合由来の振動が無いことを確認した。
【0109】
[実施例6]
(構造(2)を有する重合体の製造)
100mlナスフラスコに、メタフェニレンジアミン(MDA)を0.54g、1,3-ジブロモベンゼンを2.35g、NaOtBuを2.88g、触媒としてビス(トリ-tBuホスフィン)パラジウム(0)を51mg及びトルエンを10ml加え、100℃で6時間加温した。内容物をメタノールに投入し、得られた白色粉末をメタノール及びアセトンで洗浄し、ポリマーB-2を1.3g得た。FT-IRでN-H及びC-Brの結合由来の振動が無いことを確認した。
【0110】
[実施例7]
(構造(2)を有する重合体の製造)
100mlナスフラスコに、PDAを0.54g、4,4’-ジブロモビフェニルを1.56g、1,4-ジブロモベンゼンを1.2g、NaOtBuを2.88g、触媒としてビス(トリ-tBuホスフィン)パラジウム(0)を51mg及びトルエンを10ml加え、100℃で6時間加温した。内容物をメタノールに投入し、得られた白色粉末をメタノール及びアセトンで洗浄し、ポリマーB-3を1.8g得た。FT-IRでN-H及びC-Brの結合由来の振動が無いことを確認した。
【0111】
[実施例8]
(構造(2)を有する重合体の製造)
100mlナスフラスコに、2,4-ジブロモアニリンを2.48g、NaOtBuを2.88g、触媒としてビス(トリ-tBuホスフィン)パラジウム(0)を51mg及びトルエンを10ml加え、100℃で6時間加温した。内容物をメタノールに投入し、得られた白色粉末をメタノール及びアセトンで洗浄し、ポリマーB-4を0.88g得た。FT-IRでN-H及びC-Brの結合由来の振動が無いことを確認した。
【0112】
[比較例1]
(直鎖型のポリアリーレンアミンの製造)
100mlナスフラスコに、パラメトキシアニリンを1.23g、1,4-ジブロモベンゼンを1.2g、NaOtBuを2.88g、触媒としてビス(トリ-tBuホスフィン)パラジウム(0)を51mg及びトルエンを10ml加え、100℃で6時間加温した。内容物をメタノールに投入し、得られた白色粉末をメタノール及びアセトンで洗浄し、ポリマーCを1.9g得た。FT-IRでN-H及びC-Brの結合由来の振動が無いことを確認した。
【0113】
<有機溶剤への溶解性>
ポリマーA-1~A-4及びポリマーCの収率及び各種溶媒に対する25℃での溶解性を確認した。その結果を表1に示す。表1において、◎は溶媒100gに対してポリマーが99g以上溶解したことを意味し、△は溶媒100gに対してポリマーが20~80g溶解したことを意味し、×は溶媒100gに対してポリマーが20g未満しか溶解しなかったことを意味する。
【0114】
<サイクル特性>
ポリマーA-1~A-4及びポリマーCを用いて以下のようにしてサイクル特性を評価した。
ポリエチレン製容器に、活物質として各ポリマーを0.4g、導電剤としてアセチレンブラックを0.5g、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のNMP溶液を固形分換算で0.1g及びNMPを2g投入し、混合撹拌した。得られた黒色スラリーを、アプリケーターを用いてアルミニウム集電体上に塗工した。その際、ドクターブレードのギャップは150μmとした。その後、100℃のホットプレート上で10分乾燥し、真空乾燥機中100℃で3時間乾燥し、電極シートを得た。得られた電極シートを円形にカットし、電池の正極として用いた。CR2032型コインセルに、得られた正極、GA-100(ガラス製セパレータ)及びリチウム箔(負極)をセットし、LiPF6の1Mエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=30/70(体積比)溶液(電解液)を加え、かしめ機を用いて封止しコインセルを作製した。
作製したコインセルについて、充放電試験機として東洋システム(株)製TOSCAT-3100を用い、室温下、0.1Cの電流値で、表1に記載のカットオフ電位で充放電試験を行った。50サイクル充放電した後の容量維持率(1サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の割合)を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
<放電容量及びレート特性>
ポリマーB-1~B-4及びポリマーCを用いて以下のようにして放電容量及びレート特性を評価した。
ポリマーA-1~A-4の代わりに、ポリマーB-1~B-4を用いた以外は前記<サイクル特性>と同様にして、コインセルを作製した。
作製したコインセルについて、充放電試験機として東洋システム(株)製TOSCAT-3500Uを用い、室温下、0.1C及び10Cの電流値で、表2に記載のカットオフ電位で充放電試験を行った。0.1Cでの放電容量と、レート特性(10Cでの放電容量×100/0.1Cでの放電容量)を表2に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
[実施例9]
ポリマーA-1~A-4の代わりに、ポリマーA-3を0.08gとリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を0.32g用いたこと以外は前記<サイクル特性>と同様にして、コインセルを作製した。作製したコインセルについて、前記<サイクル特性>並びに<放電容量及びレート特性>と同様にして、サイクル特性及び放電容量を評価した。この際、カットオフ電位は3.8~2.8Vとした。その結果、50サイクル後容量維持率は99%、5000サイクル後容量維持率は84%であり、放電容量は150mAh/gであった。
【0119】
[比較例2]
ポリマーA-1~A-4の代わりに、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を0.4g用いたこと以外は前記<サイクル特性>と同様にして、コインセルを作製した。作製したコインセルについて、前記<サイクル特性>並びに<放電容量及びレート特性>と同様にして、サイクル特性及び放電容量を評価した。この際、カットオフ電位は3.8~2.8Vとした。その結果、50サイクル後容量維持率は95%、5000サイクル後容量維持率は34%であり、放電容量は150mAh/gであった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本重合体は、電極活物質、電極バインダー等の蓄電デバイスの電極材料の他、有機EL、有機トランジスタ、太陽電池等に用いられる正孔輸送材料等として極めて有用であると考えられる。