(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2252 20180101AFI20221109BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20221109BHJP
H01J 37/252 20060101ALI20221109BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G01N23/2252
H01J37/28 B
H01J37/252 A
H01J37/22 502A
H01J37/22 502Z
(21)【出願番号】P 2021503389
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(86)【国際出願番号】 JP2019031802
(87)【国際公開番号】W WO2020179102
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2019039605
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 丈寛
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-192843(JP,A)
【文献】特開2010-107334(JP,A)
【文献】特開2001-236913(JP,A)
【文献】特開昭63-266745(JP,A)
【文献】特開平08-124510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - 23/2276
H01J 37/00 - 37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを試料に照射し、前記試料から放出される信号を検出するように構成された荷電粒子ビーム照射装置と、
第1入力機器と通信可能に構成され、前記第1入力機器によって指定された分析条件に従って、前記荷電粒子ビーム照射装置の検出信号に基づいて前記試料を分析するように構成された第1処理部と、
第2入力機器および前記第1処理部と通信可能に構成され、前記荷電粒子ビーム照射装置の検出信号から前記試料の観察画像を生成するとともに、前記第2入力機器からの信号に応じて前記荷電粒子ビーム照射装置を制御するように構成された第2処理部と、
前記第1処理部と通信可能に構成され、前記分析条件を示すためのアイコンを表示するための第1ディスプレイと、
前記第2処理部と通信可能に構成され、前記分析条件および前記第2処理部により生成された前記観察画像と、前記荷電粒子ビーム照射装置を制御するためのアイコンとを表示するための第2ディスプレイとを備え、
前記第1入力機器は、前記第1ディスプレイに表示されるアイコンおよび前記第2ディスプレイに表示されるアイコンを操作するための操作入力を受け付け可能に構成され、
前記第2入力機器は、前記荷電粒子ビーム照射装置の制御に特化した制御用ポインティングデバイスを含み、
前記第2処理部は、前記制御用ポインティングデバイスに対する操作入力を前記荷電粒子ビーム照射装置の制御信号に変換する、分析装置。
【請求項2】
前記荷電粒子ビーム照射装置は、前記試料上の分析対象領域において前記荷電粒子ビームを走査させるように構成された走査部を含み、
前記制御用ポインティングデバイスは、複数の操作入力を受け付け可能に構成され、
前記第2処理部は、前記複数の操作入力を前記走査部の制御信号に変換するように構成される、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記複数の操作入力は、前記制御用ポインティングデバイスに加えられる前記走査部の制御のための複数の動きのそれぞれによる入力であり、
前記第2処理部は、前記制御用ポインティングデバイスに対応するポインタを前記第1
ディスプレイおよび前記第2ディスプレイのどちらにも表示しない状態で、前記複数の操作入力を前記走査部の制御信号に変換する、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記第1入力機器は、前記第1ディスプレイおよび前記第2ディスプレイに表示されるアイコンを操作するための操作用ポインティングデバイスを含み、
前記操作用ポインティングデバイスに対応するポインタは、前記第1ディスプレイおよび前記第2ディスプレイに表示可能であり、
前記操作用ポインティングデバイスに対応するポインタが前記第1ディスプレイに表示されるときには、前記第1処理部は、
前記操作用ポインティングデバイスに対する操作入力を前記第1ディスプレイに表示されたポインタの操作に変換し、
前記第1ディスプレイに表示されたポインタの操作を、前記第1ディスプレイに表示されたアイコンの操作に変換し、
前記操作用ポインティングデバイスに対応するポインタが、前記第1ディスプレイの端部を超えて、前記第2ディスプレイに移動すると、前記第1処理部は、
前記操作用ポインティングデバイスに対する操作入力を前記第2ディスプレイに表示されたポインタの操作に変換し、
前記第2ディスプレイに表示されたポインタの操作を、前記第2ディスプレイに表示されたアイコンの操作に変換する、請求項1~3のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項5】
前記第2処理部は、前記複数の操作入力のそれぞれと、前記走査部の制御信号との対応づけを変更することが可能である、請求項2に記載の分析装置。
【請求項6】
前記第2処理部は、前記第2入力機器からの信号に応じた前記荷電粒子ビーム照射装置の制御と、前記第1処理部を介して伝送された前記第1入力機器からの信号に応じた前記荷電粒子ビーム照射装置の制御とを切り換え可能に構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子プローブマイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)および走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)などの分析装置は、電子ビームおよびイオンビーム等の荷電粒子ビームを試料に照射し、この照射によって試料から発生する信号(二次電子線、反射電子線および特性X線など)を検出することによって、試料の観察および分析が可能に構成されている。
【0003】
特開2015-17971号公報(特許文献1)には、分光顕微鏡を用いて試料を観察する分光測定装置が開示される。特許文献1に記載の分光測定装置は、分光顕微鏡で取得された分光データを表示部に表示させる画像処理装置を有している。画像処理装置は、マウス等のポインティングデバイスからの指示に従って表示画像を変更するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分析装置においては、近年、試料の観察および分析のための全ての操作をポインティングデバイスで行なうことができる構成が提案されている。この構成によれば、分析者はディスプレイ上に表示されたアイコン等をポインティングデバイスにより操作することで、試料の像観察(二次電子像、反射電子像およびX線像)、観察画像に基づいた試料の分析位置探し、および分析位置に含まれる元素の定性・定量分析を行なうことができる。
【0006】
例えば、EPMAにて試料の分析位置探しを行なう場合、ディスプレイには、観察画像が表示されるとともに、試料ステージの位置、電子ビームのフォーカスおよび倍率等を調整するためのアイコンが表示される。分析者が観察画像を見ながらアイコンをポインティングデバイスにより操作すると、この操作に応じて電子ビーム照射装置が制御されることにより、視野を試料上の所望の分析位置に設定することができる。
【0007】
なお、試料の分析位置探しは、試料を変更する都度行なわれるため、その他の操作に比べて実行頻度が相対的に高くなる。しかしながら、上記構成では、分析者によっては必ずしも操作性が高くない場合があるものの、ポインティングデバイスを他の操作と併用する必要があるため、ポインティングデバイスを電子ビーム照射装置の制御に特化させることは困難である。
【0008】
一方、分析装置の別の構成として、電子ビーム照射装置の制御に特化した専用の操作機器を電子ビーム照射装置に付属させる構成が存在する。例えば、電子ビーム照射装置と一体的にパネル状の操作機器を設け、この操作機器に試料ステージの位置、電子ビームのフォーカスおよび倍率等を調整するための操作スイッチ(ボタン、ダイヤルおよびスイッチ等)を設ける。分析者が観察画像を見ながら操作スイッチを手動で操作することで、電子ビーム照射装置を制御することができる。しかし、このように電子ビーム照射装置の制御に特化した操作機器においても、分析者によって使い勝手が異なるため、全ての分析者にとって操作性の良い操作機器を提供することが難しいという問題がある。
【0009】
また、専用の操作機器と電子ビーム照射装置のコントローラとの間の通信には電子ビーム照射装置に固有の通信が用いられるため、装置メーカでは装置毎に設計が必要となり、製造コストが嵩むという問題がある。
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、分析装置において、簡易な構成で分析者の作業効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、分析装置は、荷電粒子ビーム照射装置と、第1処理部と、第2処理部と、ディスプレイとを備える。荷電粒子ビーム照射装置は、荷電粒子ビームを試料に照射し、試料から放出される信号を検出するように構成される。第1処理部は、第1入力機器と通信可能に構成され、第1入力機器によって指定された分析条件に従って、荷電粒子ビーム照射装置の検出信号に基づいて試料を分析するように構成される。第2処理部は、第2入力機器および第1処理部と通信可能に構成され、荷電粒子ビーム照射装置の検出信号から試料の観察画像を生成するとともに、第2入力機器からの信号に応じて荷電粒子ビーム照射装置を制御するように構成される。ディスプレイは、第1処理部および第2処理部と通信可能に構成され、分析条件および第2処理部により生成された観察画像を表示するように構成される。第2入力機器は、ポインティングデバイスを含む。第2処理部は、ポインティングデバイスに対する操作入力を荷電粒子ビーム照射装置の制御信号に変換する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分析装置において、簡易な構成で分析者の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に従う分析装置の構成例を説明する概略図である。
【
図2】
図1に示した電子ビーム照射装置の構成例を概略的に示す図である。
【
図3】第1コンピュータおよび第2コンピュータの構成を概略的に示す図である。
【
図4】第1ディスプレイおよび第2ディスプレイの表示例ならびに、第1PDおよび第2PDの構成例を示す図である。
【
図5】第2PDの各操作に対応する電子ビーム照射装置の制御内容を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に従う分析装置の構成例を説明する概略図である。本実施の形態に従う分析装置100は、荷電粒子ビームを試料に照射し、試料から発生する信号を検出して試料の観察および分析を行なうように構成される。分析装置100は、例えば、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA: Electron Probe Micro Analyzer)である。
【0016】
図1を参照して、本実施の形態に従うEPMA100は、電子ビーム照射装置50、第1コンピュータ10、第2コンピュータ20、第1ディスプレイ12、第2ディスプレイ22、第1ポインティングデバイス(以下、「第1PD」とも称する)11、および第2ポインティングデバイス(以下、「第2PD」とも称する)21を備える。
【0017】
電子ビーム照射装置50は、電子ビームを試料表面に照射し、試料表面から放出される信号を検出するように構成される。検出信号には、試料表面に含まれる元素に特有のエネルギーを有する特性X線、二次電子および反射電子等が含まれる。EPMA100では、検出された特性X線のエネルギーおよび強度を分析することにより、試料表面の分析位置に存在する元素の同定および定量を行なうことができる。電子ビーム照射装置50は「荷電粒子ビーム照射装置」の一実施例に対応する。
【0018】
また、検出された二次電子および反射電子により、試料表面の形状および組成像、凸凹形状を観察することができる。分析者は二次電子像または反射電子像を観察しながら、試料表面上の分析位置を探すことができる。具体的には、分析者は電子像を観察しながら、試料表面上の電子線の照射位置(すなわち試料表面の測定位置)を設定するとともに、試料表面上の分析対象領域を指定することができる。
【0019】
EPMAでは、一般的に、電子ビーム照射装置の制御に関する処理、および電子ビーム照射装置で検出された特性X線の分析に関する処理の各々で扱われる情報量および演算量が多くなる傾向がある。よって、本実施の形態に従う分析装置100では、電子ビーム照射装置50の制御に関する処理と、特性X線の分析に関する処理とを別々の処理部で実行する構成としている。
【0020】
具体的には、第1コンピュータ10は、電子ビーム照射装置50で検出された特性X線を分析するための分析用コンピュータである。第1コンピュータ10は「第1処理部」の一実施例に対応する。第2コンピュータ20は、電子ビーム照射装置50を制御するための制御用コンピュータである。第2コンピュータ20は「第2処理部」の一実施例に対応する。
【0021】
図1に示すように、第1コンピュータ10および第2コンピュータ20は通信可能に接続されている。第2コンピュータ20はさらに、電子ビーム照射装置50と通信可能に接続される。第2コンピュータ20は、電子ビーム照射装置50の各部の動作を制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号を電子ビーム照射装置50へ出力する。また、第2コンピュータ20は、電子ビーム照射装置50により検出された信号(特性X線、二次電子および/または反射電子)を受信する。第2コンピュータ20は、電子ビーム照射装置50から二次電子および/または反射電子を受信し、分析位置の観察画像(二次電子像および/または反射電子像)を生成する。また、第2コンピュータ20は、試料表面の分析位置における電子線の位置走査に応じて、分析位置における元素の分布画像(X線像)を生成する。
【0022】
第1コンピュータ10は、第2コンピュータ20から特性X線を受信し、受信した特性X線に基づいて、試料表面の分析位置に含まれる元素の定性・定量分析を行なう。具体的には、第1コンピュータ10は、特性X線の波長走査に応じたX線スペクトルを作成し、これに基づく定性分析および定量分析を行なう。
【0023】
EPMA100は、生成した観察画像および分析結果などの各種情報を分析者に提供するための出力機器としてディスプレイを有する。上述したように、電子ビーム照射装置50の制御に関する処理および特性X線の分析に関する処理の各々の情報量が多いことから、本実施の形態では、2つのディスプレイ12,22を用いる。第1ディスプレイ12は、第1コンピュータ10に接続されており、第1表示画面120を有する。第1ディスプレイ12は、特性X線の分析に関する処理の情報を表示するための表示部を構成する。第1表示画面120には、X線スペクトルならびにこれに基づく定性分析および定量分析の結果などが表示される。
【0024】
第2ディスプレイ22は、第2コンピュータ20に接続されており、第2表示画面220を有する。第2ディスプレイ22は、電子ビーム照射装置50の制御に関する処理の情報を表示するための表示部を構成する。第2表示画面220には、試料の分析位置を設定する際に分析者が観察する画像(X線像、二次電子像および/または反射電子像)が表示される。
【0025】
図1に示すように、分析者の操作性のために、第1ディスプレイ12と第2ディスプレイ22とは近接して配置されている。
図1の例では、第1表示画面120は紙面左側に配置され、第2表示画面第220は紙面右側に配置されている。
【0026】
第1PD11は、第1コンピュータ10に接続されている。第1PD11は、第1コンピュータ10および第2コンピュータ20と通信可能に構成されている。第1PD11は、分析者の指令を第1コンピュータ10に入力するための「第1入力機器」を構成する。第1入力機器は、例えばポインティングデバイス(以下、PDとも称する)、キーボードおよびタッチパネル等である。
図1の例では、第1操作部はポインティングデバイスである。ポインティングデバイスは、例えばマウス、ジョイスティックまたはトラックボールである。
【0027】
分析者は、第1PD11を用いて、第1表示画面120上の位置をポインタP1で指定することにより、その指定された位置の座標の読み出し、および当該位置への入力操作を行なうことができる。具体的な例として、第1表示画面120には、定性分析または定量分析等の分析項目を示すアイコンが表示されている。分析者は、第1PD11を用いて、所望の分析項目に対応するアイコンをポインタP1で指定する。第1コンピュータ10は、第1PD11に対する操作入力を、第1表示画面120に表示されたポインタP1の操作に変換する。これにより、分析者は、第1PD11を用いて、分析項目、および、分析項目の詳細な設定等の分析条件等を指定することができる。なお、アイコンは、第1および第2表示画面に表示される、分析装置100の操作または分析装置100による分析(たとえば物質の同定または定量)に使用されるための画像であれば、特に限定されない。
【0028】
なお、第1PD11に対応するポインタP1は、通常、第1表示画面120上で機能するが、ポインタP1が矢印A1に示すように、第1表示画面120の端部(
図1では第1表示画面120の右端)を超えて、第2表示画面220の端部(
図1では第2表示画面220の左端)に移動すると、第2表示画面220で機能するように構成される。すなわち、ポインタP1は、第1表示画面120の右端と第2表示画面220の左端とが仮想的に繋がっているように機能する。
【0029】
これによると、分析者は、第1PD11を用いて、第2表示画面200上の位置をポインタP1で指定することにより、その指令された位置の座標の読み出し、および当該位置への入力操作を行なうことができる。具体的には、第2表示画面220には、電子ビーム照射装置50の制御項目を示すアイコンが表示されている。分析者は、第1PD11を用いて、所望の制御項目に対応するアイコンをポインタP1で指定する。第1コンピュータ10は、第1PD11に対する操作入力を、第2表示画面220に表示されたポインタP1の操作に変換する。これにより、分析者は、第1PD11を用いて、所望の制御項目の条件等を指定することができる。
【0030】
第2PD21は、第2コンピュータ20に接続されている。第2PD21は、第2コンピュータ20と通信可能に構成されている。第2PD21は、分析者の指令を第2コンピュータ20に入力するための「第2入力機器」を構成する。第2入力機器は、ポインティングデバイスである。ポインティングデバイスは、例えばマウス、ジョイスティックまたはトラックボールである。分析者は、第2PD21を用いて、電子ビーム照射装置50の制御に関する指令を第2コンピュータ20に入力することができる。ただし、第2PD21に対応するポインタは、第1表示画面120および第2表示画面220には表示されない。第2PD21については後に詳述する。
【0031】
図2は、
図1に示した電子ビーム照射装置50の構成例を概略的に示す図である。
図2を参照して、電子ビーム照射装置50は、電子銃1と、偏向コイル2と、対物レンズ3と、試料ステージ4と、試料ステージ駆動部5と、複数の分光器6a,6bと、偏向コイル制御部7と、電子検出器8とを備える。電子銃1、偏向コイル2、対物レンズ3、試料ステージ4、分光器6a,6bおよび電子検出器8は図示しない計測室内に設けられる。X線の計測中は、計測室内は排気されて真空に近い状態とされる。
【0032】
電子銃1は、試料ステージ4上の試料Sに照射される電子線Eを発生する励起源であり、収束レンズ(図示せず)を制御することによって電子線Eのビーム電流を調整することができる。偏向コイル2は、偏向コイル制御部7から供給される駆動電流により磁場を形成する。偏向コイル2により形成される磁場によって、電子線Eを偏向させることができる。
【0033】
対物レンズ3は、偏向コイル2と試料ステージ4上に載置される試料Sとの間に設けられ、偏向コイル2を通過した電子線Eを微小径に絞る。試料ステージ4は、試料Sを載置するためのステージであり、試料ステージ駆動部5により水平面内で移動可能に構成される。
【0034】
電子ビーム照射装置50では、試料ステージ駆動部5による試料ステージ4の駆動、および/または偏向コイル制御部7による偏向コイル2の駆動により、試料S上における電子線Eの照射位置を2次元的に走査することができる。偏向コイル2および/または試料ステージ4は、試料S上において電子線Eを走査させる「走査部」を構成する。通常は、走査範囲が比較的狭いときは、偏向コイル2による走査が行なわれ、走査範囲が比較的広いときは、試料ステージ4の移動による走査が行なわれる。
【0035】
分光器6a,6bは、電子線Eが照射された試料Sから放出される特性X線を検出するための機器である。なお、
図2では、2つの分光器6a,6bのみが示されているが、実際には、電子ビーム照射装置50には、試料Sを取り囲むように全部で4つの分光器が設けられている。各分光器の構成は、分光結晶を除いて同じであり、以下では、各分光器を単に「分光器6」と称する場合がある。
【0036】
分光器6aは、分光結晶61aと、検出器63aと、スリット64aとを含む。試料S上の電子線Eの照射位置と分光結晶61aと検出器63aとは、図示しないローランド円上に配置される。分光結晶61aは、図示しない駆動機構によって、直線62a上を移動しつつ傾斜される。検出器63aは、図示しない駆動機構によって、分光結晶61aに対する特性X線の入射角と回折X線の出射角とがブラッグの回折条件を満たすように、分光結晶61aの移動に応じて図示のように回動する。これにより、試料Sから放出される特性X線の波長走査を行なうことができる。
【0037】
分光器6bは、分光結晶61bと、検出器63bと、スリット64bとを含んで構成される。分光器6bおよび図示されない分光器の構成は、分光結晶を除いて分光器6aと同様であるので、説明を繰り返さない。なお、各分光器の構成は、上記のような構成に限られるものではなく、従来より知られている各種の構成を採用することができる。
【0038】
電子検出器8は、電子線Eが照射された試料Sから放出される電子線を検出するための機器である。電子検出器8は二次電子を検出する。電子検出器8の検出信号は第2コンピュータ20に送られる。
【0039】
また、図示しない電子検出器によって、反射電子も検出される。反射電子の検出信号も第2コンピュータ20に送られる。
【0040】
偏向コイル制御部7は、第2コンピュータ20からの指示に従って、偏向コイル2へ供給される駆動電流を制御する。予め定められた駆動電流パターン(大きさ及び変更速度)に従って駆動電流を制御することにより、試料S上において電子線Eの照射位置を所望の走査速度で走査することができる。
【0041】
第2コンピュータ20は、内蔵するプログラム及びテーブルに従って、電子ビーム照射装置50の制御に関する各種処理を実行する。また、第2コンピュータ20は、試料S上の分析対象領域における電子線Eの位置走査に応じて、分析対象領域における観察画像を生成する。具体的には、第2コンピュータ20は、電子検出器8により検出された二次電子に基づいて、試料Sの分析対象領域の二次電子像を生成する。また、第2コンピュータ20は、4つの分光器6により検出された特性X線に基づいて、試料Sの分析対象領域における分析対象元素の分布画像(X線像)を生成する。
【0042】
第1コンピュータ10は、第2コンピュータ20から分析対象のX線の波長走査を受信すると、受信した波長走査に基づいてX線スペクトルを作成する。第1コンピュータ10は、X線スペクトルに基づく定性分析および/または定量分析等を行なう。
【0043】
図3は、第1コンピュータ10および第2コンピュータ20の構成を概略的に示す図である。
【0044】
図3を参照して、第1コンピュータ10は、CPU13と、メモリ14と、入力インターフェイス(以下、入力I/Fとも称する)15と、表示コントローラ16と、通信インターフェイス(以下、通信I/Fとも称する)17とを備える。
【0045】
第1コンピュータ10は、メモリ14に格納されるプログラムに従って動作するように構成される。メモリ14は、図示しないROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびHDD(Hard Disk Drive)を含む。
【0046】
ROMは、CPU13にて実行されるプログラムを格納することができる。プログラムには、電子ビーム照射装置50で検出され、第2コンピュータ20を経由して受信した特性X線を分析する処理に関するプログラムが含まれる。RAMは、CPU13におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納するとともに、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能することができる。HDDは、不揮発性の記憶装置であり、第2コンピュータ20から受信した特性X線、および特性X線の分析結果等を格納することができる。HDDに加えて、あるいは、HDDに代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
【0047】
CPU13は、第1コンピュータ10を制御する。CPU13は、メモリ14のROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。
【0048】
入力I/F15は、第1PD11に接続される。入力I/F15は、第1コンピュータ10が第1PD11と通信するためのインターフェイスであり、第1PD11から各種信号を受信する。
【0049】
表示コントローラ16は、第1ディスプレイ12に接続される。表示コントローラ16は第1ディスプレイ12に、第1表示画面120における表示内容を指令する信号を出力する。第1ディスプレイ12がタッチパネルを備えるディスプレイである場合、表示コントローラ16は第1ディスプレイ12から、分析者のタッチ操作を示す信号を受信する。
【0050】
通信I/F17は、第2コンピュータ20の通信I/F27に接続される。通信I/F17は、第1コンピュータ10が第2コンピュータ20と通信するためのインターフェイスであり、第2コンピュータ20との間で各種信号を入出力する。
【0051】
第1コンピュータ10は、一般的な機能を持つコンピュータに、特性X線の分析に関するソフトウェアをインストールし、メモリ14に専用のプログラムおよびデータを格納することで実現される。具体的には、第1コンピュータ10ではオペレーティングシステム(OS)と呼ばれる基本ソフトウェアプログラムが常時動作している。この基本ソフトウェアプログラムは、第1ディスプレイ12への表示、第1PD11に対する操作入力の処理、メモリ14へのアクセス等を受け持ち、並列的に処理可能である。
【0052】
一方、特性X線の分析に関するソフトウェアプログラムは、基本ソフトウェアプログラムの上で実行される。特性X線の分析に関するソフトウェアプログラムは、第1コンピュータ10のメモリ14に外部から供給され、供給されたプログラムコードをCPU13が読み出して実行することにより実現される。
【0053】
第2コンピュータ20は、CPU23と、メモリ24と、入力I/F25と、表示コントローラ26と、通信I/F27とを備える。第2コンピュータ20は、メモリ24に格納されるプログラムに従って動作するように構成される。メモリ24は、図示しないROM、RAMおよびHDDを含む。
【0054】
ROMは、CPU23にて実行されるプログラムを格納することができる。プログラムには、電子ビーム照射装置50の制御に関する処理のプログラムが含まれる。RAMは、CPU23におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能することができる。HDDは、不揮発性の記憶装置であり、電子ビーム照射装置50による検出信号および、第2コンピュータ20で生成された情報を格納することができる。HDDに加えて、あるいは、HDDに代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
【0055】
CPU23は、電子ビーム照射装置50および分析装置100全体を制御する。CPU23は、メモリ24のROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。
【0056】
入力I/F25は、第2PD21に接続される。入力I/F25は、第2コンピュータ20が第2PD21と通信するためのインターフェイスであり、第2PD21から各種信号を受信する。
【0057】
表示コントローラ26は、第2ディスプレイ22に接続される。表示コントローラ26は第2ディスプレイ22に、第2表示画面220の表示内容を指令する信号を出力する。第2ディスプレイ22がタッチパネルを備えるディスプレイである場合、表示コントローラ26は第2ディスプレイ22から、第2表示画面220への分析者のタッチ操作を示す信号を受信する。
【0058】
通信I/F27は、電子ビーム照射装置50および第1コンピュータ10の通信I/F17に接続される。通信I/F27は、第2コンピュータ20が電子ビーム照射装置50および第1コンピュータ10と通信するためのインターフェイスであり、電子ビーム照射装置50および第1コンピュータ10との間で各種信号を入出力する。
【0059】
第2PD21は、電子ビーム照射装置50の制御に特化したPDである。第2PD21については後に詳述する。
【0060】
第2コンピュータ20は、一般的な機能を持つコンピュータに、電子ビーム照射装置50の制御に関するソフトウェアをインストールし、メモリ24に専用のプログラムおよびデータを格納することで実現することができる。具体的には、第2コンピュータ20ではOSと呼ばれる基本ソフトウェアプログラムが常時動作している。この基本ソフトウェアプログラムは、第2ディスプレイ22への表示、第2PD21への操作入力の処理およびメモリ24へのアクセス等を受け持ち、並列的に処理可能である。
【0061】
一方、電子ビーム照射装置50の制御に関するソフトウェアプログラムは、基本ソフトウェアプログラムの上で実行される。電子ビーム照射装置50の制御に関するソフトウェアプログラムは、第2コンピュータ20のメモリ24に外部から供給され、CPU23が該供給されたプログラムコードを読み出して実行することにより実現される。
【0062】
図4は、第1ディスプレイおよび第2ディスプレイの表示例ならびに、第1PDおよび第2PDの構成例を示す図である。
【0063】
図4を参照して、第2ディスプレイ22は、電子ビーム照射装置50の制御に関する情報を表示する。分析者は、該表示に基づいて電子ビーム照射装置50を制御するための各種指示を第2コンピュータ20に与えることができる。例えば、第2ディスプレイ22の第2表示画面220には、電子ビーム照射装置50における観察条件を示す数値、および、観察画像(二次電子像および/または反射電子像およびX線像)を表示することができる。
図4の例では、第2表示画面220には、電子ビーム照射装置50から第2コンピュータ20に送信された特性X線に基づいて生成された観察画像であるX線像I1と、X線像I1の観察条件を示す数値M1~M4とが表示されている。分析者は、X線像I1を見ながら、数値M1~M4の各々を調整することができる。アイコン221~224については後述する。
【0064】
一方、第1ディスプレイ12の第1表示画面120には、第2コンピュータ20から第1コンピュータ10へ伝送された特性X線を処理および分析するためのアイコン121~123と、分析結果を示すウィンドウW1と、第2ディスプレイ
22に表示されたX線像I1を画像処理した画像I2が表示されている。分析者は第1PD11を用いて、分析対象とする観察画像を選択し、アイコン121~123等で分析内容を選択し、ウィンドウW1および画像I2等で分析および処理の結果を確認することが可能である。なお、
図4の画像I2では、X線像I1のコントラストを上げる処理を行ない、分析者の視認性を上げた例が示されている。
【0065】
上記のように、分析装置における試料観察では、観察対象の試料Sを変更する場合に、試料Sの位置合わせ、電子ビームのフォーカスおよび倍率の変更等、電子ビーム照射装置50の各部に対する制御が行なわれる。電子ビーム照射装置50からの情報は、電子ビーム照射装置50を制御する制御コンピュータに送信され、制御に関する情報を表示する第2ディスプレイ22に表示される。分析者は第2ディスプレイ22に表示された情報を基に、第2コンピュータ20に対し、電子ビーム照射装置50の各部の制御に関する指示を与える。第2コンピュータ20は、分析者の指示を電子ビーム照射装置50の制御に反映する。
【0066】
ここで、この分析者による電子ビーム照射装置50の制御に関する各種指示は、試料Sを変更する毎に与えられるため、他の操作に比べて頻度が高い。したがって、分析者が容易にアクセスできる入力機器を用いて行なわれることが好ましい。このような入力機器を用いた各種指示の第1の典型的な方法としては、マウス、キーボードまたは上述のタッチパネルを備えるディスプレイ等を用いて、第2ディスプレイ22の第2表示画面220に表示される各種制御を示すアイコンを操作するという方法がある。
【0067】
以下に、マウスを用いた各種指示の方法を例示する。まず、制御コンピュータおよび制御コンピュータと通信するコンピュータ(たとえば分析コンピュータ)の少なくとも一方にマウスを接続する。次に、第2ディスプレイ22に表示される情報を基に、分析者はマウスを操作することにより、マウスの操作と連動するポインタを操作することで、制御コンピュータに指令を出力することができる。例えば、第2表示画面220上の所定のアイコンを右クリックすることで試料ステージを上下させるための指令を出すことができる。制御コンピュータは、該指令に基づいて電子ビーム照射装置50を制御する。
【0068】
なお、キーボードによる各種指令の入力も、上述したマウスによる各種指令の入力と同様にして行なわれることが可能である。ただし、制御コンピュータへの指令が、キーボードでは、分析者が手指でキーを押すことで制御コンピュータへ信号などを送信することで実現される。例えば、所定のキーと下向き矢印とを同時に押すことで、試料ステージを下げるための指令を出力することができる。
【0069】
あるいは、タッチパネルを備えるディスプレイによる各種指令の入力は、ディスプレイ上に表示されるアイコン等を分析者が手指で触れるもしくは軽く押す等の操作を行ない、制御コンピュータが該操作を所定の指令に変換することで実現される。例えば、表示画面上の所定のボタンに触れることで試料ステージを上下させるための指令を出力することができる。
【0070】
具体例として、
図4では、分析用のPDである第1PD11を、制御用のPDとして併用する構成が示されている。
図4の第2ディスプレイ22の第2表示画面220には、X線像I1の観察条件の入力および変更を行なうためのアイコン221~224が表示されている。分析者は第1PD11を用いて、アイコン221~224を操作することで、所望の制御を行なうための指令を電子ビーム照射装置50に出力することができる。なお、分析者による指令の出し方は上記の例に限らず、たとえば、第1PD11および図示しないキーボードの少なくとも一方を用いて、数値M1~M4を直接変更することで実現してもよい。または、数値M1~M4の代わりにスライドバーを操作する構成としてもよい。第2ディスプレイ22を、分析者が操作可能なタッチパネルを備えるディスプレイとし、分析者が触れることで電子ビーム照射装置50への指令を出力する構成としてもよい。数値M1~M4(もしくはスライドバー)およびアイコン221~224は「アイコン」の一実施例に対応する。
【0071】
しかし、このようにマウス、キーボードまたはタッチパネル等の入力機器を用いて表示画面上のアイコンを操作するという方法では、これらの入力機器は表示画面上で実現される他の多くの操作と併用される必要がある。例えばコンピュータの基本設定の変更および文書作成等、電子ビーム照射装置50の制御以外のソフトウェアの使用にも入力機器が用いられる。よって、入力機器を、他の多くの操作と併用しつつ、頻度の高い電子ビーム照射装置50の制御に特化した直感的な操作を実現するように構成することが難しい。
【0072】
次に、入力機器を用いた電子ビーム照射装置50の制御に関する各種指示の第2の典型的な方法としては、電子ビーム照射装置50の制御に対応するよう開発された、専用の入力機器を用いる方法がある。具体的には、電子ビーム照射装置50の側面に操作パネルを設け、操作パネル上に、各種制御に対応するボタンおよびスイッチ等を配置することができる。分析者は、当該ボタンおよびスイッチ等を操作することで、電子ビーム照射装置50について所望の制御を実現できる。あるいは、専用の入力機器として、電子ビーム照射装置50と有線等で通信可能に構成された、該装置付属のジョイスティック等を使用することも可能である。
【0073】
しかし、このように電子ビーム照射装置50に付属された専用の入力機器を用いる方法では、分析者によって操作性の良し悪しが変わりやすいため、作業効率が低下する虞がある。
【0074】
したがって、本実施の形態に従う分析装置100では、簡易な構成で分析者の嗜好に合った入力機器を用いて電子ビーム照射装置50の制御のための指令を入力できるようにすることで、分析者の作業効率を向上する。
【0075】
図4を参照して、第2PD21は、第2コンピュータ20に対して電子ビーム照射装置50の制御に関する各種指示を与えるという目的に特化したPDである。第2PD21は、第1PD11とは異なり、ポインティングデバイスに対応するポインタがディスプレイ上に表示されない。第2PD21に対する操作入力は、第2コンピュータ20において、電子ビーム照射装置50を制御するための制御信号に変換される。すなわち、第2PD21は、本来のPDとしての機能を有していない点が、第1PD11とは異なる。なお、第2PD21は、第1コンピュータ10および第2コンピュータ20への指令を入力するために用いられる第1PD11とは異なり、第2コンピュータ20のみに指令を入力するために用いられる。第2コンピュータ20は、第2PD21から与えられる指令に基づいて、電子ビーム照射装置50を制御する。
【0076】
ここで、第2PD21としては、マウス、ジョイスティックまたはトラックボール等の一般的なPDを使用することができる。マウス、ジョイスティックおよびトラックボール等のPDは通常、互いに操作性が異なる。分析者は、自身が操作性が良いと感じるPDを選択し、第2PD21として使用することが可能である。これら一般的なPDは分析者にとって容易に入手できるので、分析者に余計なコストおよび手間をかけないという利点がある。
【0077】
図4では、第2PD21として、トラックボール215、スクロール216、Lボタン213、Rボタン214、ボタン211およびボタン212を搭載したマウスを例示している。本実施の形態では、第2PD21の上記各部の所定の操作が、それぞれ、電子ビーム照射装置50の走査部(偏向コイル2および/または試料ステージ4)を駆動するための制御に対応付けられている。
【0078】
図5は、第2PD21の各操作に対応する、電子ビーム照射装置50の制御内容を例示する図である。
図5を参照して、例えばトラックボール215が動かされると、トラックボール215を動かした方向に試料ステージ4(
図2参照)が水平(XY)方向に移動する。
【0079】
一方、スクロール216を回されると、試料ステージ4が鉛直(Z)方向に移動する。
図5にはさらに、第2PD21の各部(
図5の表では、トラックボール215、スクロール216、Lボタン213、Rボタン214)を操作することで、フォーカス変更、非点補正および倍率変更といった制御が行なわれる例が示されている。
【0080】
分析者によって第2PD21が操作されると、第2コンピュータ20は、
図5に示す第2PD21の操作と電子ビーム照射装置50の制御との関係に従って、第2PD21からの信号を電子ビーム照射装置50の制御信号に変換するように構成される。なお、
図5に示す関係が記されたプログラムは予め第2コンピュータ20に内蔵されるROMに格納されている。
【0081】
図4および
図5に示した方法は、分析者の手の動きをそのまま電子ビーム照射装置50の動作に変換できるので、第1PD11を用いてアイコン221~224を操作する方法、および、第1PD11および/またはキーボード等を用いて数値M1~M4を変更する方法と比較して、直感的に操作できるという利点がある。
【0082】
一方、分析者によっては、
図4に示したマウスによる操作が直感に合わない場合が考えられる。その場合、分析者は第2PD21を、自身がより操作性が良いと感じる別のPD(例えばジョイスティック等)に変更することが可能である。この場合、分析者は、自身の嗜好に合ったPDの各操作と電子ビーム照射装置50の制御とを対応付けるように、第2コンピュータ20のROMに格納されるプログラムをカスタマイズすることが可能である。
【0083】
以上により、分析者は操作性が良いと感じる入力機器を使用して、電子ビーム照射装置を制御できるため、分析者の操作性を向上させることができる。また、入力機器ごとに対応するプログラムを作成する必要が無いので、実現も簡便である。
【0084】
なお、第2コンピュータ20は、第2PD21からの信号に応じた電子ビーム照射装置50の制御と、第1コンピュータ10を介して伝送された第1PD11からの信号に応じた電子ビーム照射装置50の制御とを切り換え可能に構成される。具体的には、第2コンピュータ20は、第1PD11を用いてアイコン221~224が操作された場合には、その操作入力に従って電子ビーム照射装置50を制御する。一方、
図5に例示したように第2PD21が操作された場合には、第2コンピュータ20はその操作入力に従って電子ビーム照射装置50を制御する。これによれば、分析者は2つの入力機器を選択的に使用することができるため、操作性の幅を広げることができる。
【0085】
また、
図1では、第1PD11および第2PD21はそれぞれ、第1コンピュータ10および第2コンピュータ20と通信可能に接続される構成例を示した。しかし、第1PD11および第2PD21のコンピュータへの接続態様はこれに限定されず、第1PD11は第1コンピュータ10および第2コンピュータ20に、第2PD21は第2コンピュータ20に有線または無線で信号を送信できればよい。たとえば、第1PD11および第2PD21を共に第1コンピュータ10に接続し、第2PD21の信号を第1コンピュータ10を介して第2コンピュータ20に送信する構成としてもよい。
【0086】
同様にして、第1ディスプレイ12および第2ディスプレイ22はそれぞれ、第1コンピュータ10および第2コンピュータ20に通信可能に接続される構成例を示したが、第1ディスプレイ12および第2ディスプレイ22のコンピュータへの接続態様はこれに限定されない。第1ディスプレイ12は第1コンピュータ10から有線または無線で信号を受信できればよく、第2ディスプレイ22は第2コンピュータ20から有線または無線で信号を受信できればよい。
【0087】
また、
図1では、電子ビーム照射装置50の制御用の第2コンピュータ20と、分析用の第1コンピュータ10とを、独立した2つのコンピュータとして示した。しかし、第2コンピュータ20および第1コンピュータ10の構成および台数はこれに限定されず、コンピュータの制御に関する処理を担う処理部(第2処理部)および分析に関する処理を担う処理部(第1処理部)があればよい。例えば、第2コンピュータ20および第1コンピュータ10は、1つのコンピュータ内の制御に関する処理を担う処理部(第2処理部)と、分析に関する処理を担う処理部(第1処理部)で構成されてもよい。この場合、第1処理部と第2処理部とは、一部その構成要素および機能がオーバーラップしていてもよい。また、第1処理部と第2処理部とをそれぞれ仮想ドライブとしてもよい。この場合、制御と分析の両方を担うコンピュータに、第1PD11および第2PD21の両方が有線または無線で接続される構成が可能である。
【0088】
同様にして、制御用の第2ディスプレイ22と分析用の第1ディスプレイ12とは、制御用の情報を表示する部分と、分析用の情報を表示する部分であればよい。たとえば、制御用の第2ディスプレイ22と分析用の第1ディスプレイ12とは、一体化された単体のディスプレイであってもよい。同様にして、第1表示画面120および第2表示画面220も、2つの画面に限定されず、1つのディスプレイの2つの表示領域であってもよい。第1表示画面120と第2表示画面220は、それぞれ「第1の表示領域」と「第2の表示領域」に対応する。また、第1ディスプレイ12と第2ディスプレイ22は、「ディスプレイ」に対応する。
【0089】
また、上記実施の形態は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。具体的には、上記実施の形態では分析装置としてEPMAを例示したが、電子線に代えてイオンビームを励起源として用いることもできる。また、上記実施の形態では二次電子および反射電子を検出して二次電子像および反射電子像を作成し、特性X線を検出して特定の元素の二次元分布像(X線像)を生成する構成としたが、観察画像の生成に用いる信号として、他の信号(たとえば蛍光)を検出することも可能であり、種々の走査型荷電粒子顕微鏡において本発明の構成を用いることができる。
【0090】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 電子銃、2 偏向コイル、3 対物レンズ、4 試料ステージ、5 試料ステージ駆動部、6,6a,6b 分光器、7 偏向コイル制御部、8 電子検出器、10 第1コンピュータ(第1処理部)、12 第1ディスプレイ、14,24 メモリ、15,25 入力インターフェイス(入力I/F)、16,26 表示コントローラ、17,27 通信インターフェイス(通信I/F)、20 第2コンピュータ(第2処理部)、22 第2ディスプレイ、50 電子ビーム照射装置、61a,61b 分光結晶、63a,62b 検出器、64a,64b スリット、100 分析装置、120 第1表示画面、121~123,221~224 アイコン、221~214 ボタン、215 トラックボール、216 スクロール、220 第2表示画面、E 電子線、I1 X線像、I2 画像、P1 ポインタ、S 試料、W1 ウィンドウ。