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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】複合構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 29/04 20060101AFI20221109BHJP
   B62D 25/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B62D29/04 B
B62D25/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021504584
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 IB2019000221
(87)【国際公開番号】W WO2020183208
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】鳥垣 俊和
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直哉
(72)【発明者】
【氏名】蒋 ジアヤ
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-128676(JP,A)
【文献】特開平01-127332(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115647(WO,A1)
【文献】特表2003-514693(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0133517(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 29/04
B62D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第1金属部材と、板状の第2金属部材と、前記第1及び第2の金属部材を一体化する樹脂部材とを備え、
前記樹脂部材が、前記第1及び第2の金属部材に跨がって夫々の一方の主面を被覆する第1樹脂層と、前記第1及び第2の金属部材に跨がって夫々の他方の主面を被覆する第2樹脂層と、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とを繋ぐ連結部とを有し、
前記第1及び第2の金属部材のいずれか一方の金属部材が、他方の金属部材の端部形状に合わせて形成した凹状の結合部を有し、前記一方の金属部材の前記結合部に、前記他方の金属部材の端部を差し込むように組み合わせていることを特徴とする複合構造体。
【請求項2】
前記第1及び第2の金属部材は、夫々の主面同士が互いに連なるように配置してあ ることを特徴とする請求項1に記載の複合構造体。
【請求項3】
前記樹脂部材が、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の少なくとも一方に、前記金属部材同士の境界位置で突出する補強部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合構造体。
【請求項4】
前記金属部材同士の境界が、互いに組み合わされる凹凸形状を成していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の複合構造体。
【請求項5】
前記第1及び第2の金属部材の少なくとも一方の金属部材が、前記結合部に、表裏両面に連通する開口部を有しており、
前記開口部内に、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とを繋ぐ前記連結部が形成してあることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の複合構造体。
【請求項6】
前記金属部材同士の境界が、当該複合構造体における応力集中箇所を避けて配置してあることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の複合構造体。
【請求項7】
前記第1及び第2の金属部材は、樹脂部材で被覆される主面に、微細凹凸が形成してあることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の複合構造体。
【請求項8】
前記第1及び第2の金属部材は、互いの少なくとも一部が重なり合う重合領域と、前記重合領域に貫通状態に形成した連通穴とを有し、
前記連通穴内に前記第1樹脂層と前記第2樹脂層とを繋ぐ前記連結部が形成してあることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の複合構造体。
【請求項9】
前記第1樹脂層が、前記第1及び第2の金属部材の一方の主面に形成してあると共に、前記第2樹脂層が、前記第1及び第2の金属部材の他方の主面の局部範囲に形成してあり、前記第1樹脂層を形成した範囲は、前記第2樹脂層を形成した前記局部範囲よりも広範囲であることを特徴とする請求項1に記載の複合構造体。
【請求項10】
前記第1及び第2の金属部材の少なくとも一方に、前記樹脂部材により一体化される第3の金属部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の複合構造体。
【請求項11】
請求項に記載の複合構造体を製造する方法であって、
前記第1及び第2の金属部材及び前記樹脂部材に対応する成形空間を備えた成形型を用い、
前記成形空間内に、前記第1及び第2の金属部材を配置するとともに双方の間に隙間を設け、
前記第1及び第2の金属部材の一方の主面側から前記成形空間内に前記樹脂部材の材料である溶融樹脂を充填し、
前記第1及び第2の金属部材同士の隙間を通して溶融樹脂を前記第1及び第2の金属部材の他方の主面側に流入させることにより、
前記第1及び第2の樹脂層と、前記隙間内に形成された前記連結部とを有する前記樹脂部材を形成し、
前記第1及び第2の金属部材と前記樹脂部材とを一体化させることを特徴とする複合構造体の製造方法。
【請求項12】
記第1及び第2の金属部材は、互いに重なる部分がなく、樹脂部材で被覆される主面に、微細凹凸が形成してあることを特徴とする請求項1に記載の複合構造体。
【請求項13】
前記樹脂部材が、前記第1及び第2の金属部材に跨がる局部範囲を形成してあることを特徴とする請求項12に記載の複合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の複数の金属部材と、金属部材同士を一体化する樹脂部材とを備えた複合構造体に関し、例えば、車体等の構造物に用いるのに好適な複合構造体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の複合構造体としては、自動車の車体構造の枠側部材という名称で特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の複合構造体は、金属製の外枠と金属製の内枠との間に形成された空間に、樹脂製の補強構造物を備えている。
【0003】
上記の複合構造体は、自動車のサイドパネルを構成するものである。金属製の外枠は、一体物として製造され、片側に開放された凹状の断面形状を有している。他方、金属製の内枠は、好ましくは単一部品として製造され、外枠の開放部分を閉塞する断面形状を有している。そして、複合構造体は、外枠の内側に、樹脂製の補強構造物を成形した後、この外枠の開放部分に内枠を連結した構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5523849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記したような従来の複合構造体では、一体物である断面凹状の外枠を製造するには、金属板の深絞りを行う必要がある。この場合、外枠は、低強度で且つ伸びる材料に限定されるので、車体パネル等のように所定の強度が要求される構造物への適用が困難になるおそれがある。また、複合構造体の強度を確保するために、金属部材の接合部分や分岐部分に複合構造体を構成する樹脂部材とは別の部材を新たに介在させることも考えられるが、この場合には、作業工数や製造コストが増えるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、成形性が良好であると共に、充分な強度を確保することができ、車体等の構造物の構成要素として好適な複合構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる複合構造体は、板状の第1金属部材と、板状の第2金属部材と、第1及び第2の金属部材を一体化する樹脂部材とを備えている。そして、複合構造体は、樹脂部材が、第1及び第2の金属部材に跨がって夫々の一方の主面を被覆する第1樹脂層と、第1及び第2の金属部材に跨がって夫々の他方の主面を被覆する第2樹脂層と、第1樹脂層と第2樹脂層とを繋ぐ連結部とを有し、
前記第1及び第2の金属部材のいずれか一方の金属部材が、他方の金属部材の端部形状に合わせて形成した凹状の結合部を有し、前記一方の金属部材の前記結合部に、前記他方の金属部材の端部を差し込むように組み合わせていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係わる複合構造体の製造方法は、上記の樹脂部材が、第1樹脂層と第2樹脂層とを繋ぐ連結部を有している複合構造体を製造する方法である。この製造方法は、第1及び第2の金属部材及び樹脂部材に対応する成形空間を備えた成形型を用い、成形空間内に、第1及び第2の金属部材を配置するとともに双方の間に隙間を設け、第1及び第2の金属部材の一方の主面側から成形空間内に樹脂部材の材料である溶融樹脂を充填し、第1及び第2の金属部材同士の隙間を通して溶融樹脂を第1及び第2の金属部材の他方の主面側に流入させる。これにより、上記製造方法は、第1及び第2の樹脂層と、隙間内に形成された連結部とを有する樹脂部材を形成し、第1及び第2の金属部材と樹脂部材とを一体化させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係わる複合構造体は、板状の第1及び第2の金属部材と、両金属部材を一体化する樹脂部材とを備え、樹脂部材が、第1樹脂層と第2樹脂層と連結部とを有し、第1及び第2の金属部材のいずれか一方の金属部材の凹状の結合部に、他方の金属部材の端部を差し込むように組み合わせたことにより、仮に、第1及び第2の金属部材を一体物として成形する場合に比べると、第1及び第2の金属部材の形状を簡素化することが可能である。このため、第1及び第2の金属部材は、プレス加工等の塑性加工により適宜の形状に成形することが容易であると共に、樹脂のインサート成形により、第1樹脂層及び第2樹脂層を有する樹脂部材により一体化することで、金属部材同士の接合強度や、構造体としての剛性を得ることが可能である。
【0010】
また、複合構造体は、別の複合構造体と組み合わせて構造物を形成することが可能である。換言すれば、構造物を複数に分割し、各々の分割部分を当該複合構造体で構成することが可能である。このようにして、複合構造体は、成形性が良好であると共に、充分な強度を確保することができ、車体等の構造物の構成要素として好適なものとなる。
【0011】
本発明に係わる複合構造体の製造方法は、上記構成を採用したことにより、成形性が良好であると共に、充分な強度を有し且つ車体等の構造物の構成要素として好適な複合構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係わる複合構造体の第1実施形態を示す斜視図である。
図2図2に示す複合構造体を底面側から見た状態で示す斜視図である。
図3】第1及び第2の金属部材の接合前の状態を示す斜視図である。
図4】第1及び第2の金属部材の接合要領を示す斜視図である。
図5】複合構造体の要部を示す正面図である。
図6図5中のA-A線矢視に基づく断面図である。
図7】本発明に係わる複合構造体の第2実施形態において、複合構造体の要部を示す正面図である。
図8図7中のA-A線矢視に基づく断面図である。
図9図7及び図8に示す複合構造体の製造過程を示す図であって、成形型内に第1及び第2の金属部材を配置した状態を示す断面図である。
図10図9に続いて成形型に溶融樹脂を供給した状態を示す断面図である。
図11図10に続いて製造した複合構造体の要部を示す断面図である。
図12】本発明に係わる複合構造体の第3実施形態において、複合構造体の要部を示す正面図である。
図13】本発明に係わる複合構造体の第4実施形態において、複合構造体の要部を示す断面図である。
図14】本発明に係わる複合構造体の第5実施形態において、複合構造体の要部を示す正面図である。
図15】本発明に係わる複合構造体の第6実施形態において、複合構造体の要部を示す正面図である。
図16】本発明に係わる複合構造体の第7実施形態において、複合構造体の要部を示す正面図である。
図17】本発明に係わる複合構造体の第8実施形態において、複合構造体を示す斜視図である。
図18】本発明に係わる複合構造体の第9実施形態において、金属部材の接合前の状態を示す斜視図である。
図19図18に示す金属部材の接合後の状態を示す斜視図である。
図20】本発明に係わる複合構造体の第10実施形態を示す斜視図である。
図21】本発明に係わる複合構造体の第11実施形態を示す断面図である。
図22】本発明に係わる複合構造体の第12実施形態を示す要部の正面図である。
図23図22中のA-A線矢視に基づく断面図である。
図24】本発明に係わる複合構造体の第13実施形態を示す図であって、自動車のフロアパネルを複数の金属部材に分割した状態を示す平面図である。
図25図24に示す金属部材を成形型内に配置した状態を示す平面図である。
図26図25に続いて成形型に溶融樹脂を供給した状態を示す平面図である。
図27図26に続いて製造後のフロアパネルを示す平面図である。
図28】本発明に係わる複合構造体の第14実施形態を示す図であって、自動車のサイドパネルを構成する複合構造体を示す正面図である。
図29】複合構造体の強度試験の要領を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
図1図6は、本発明に係わる複合構造体の第1実施形態を説明する図である。なお、以下の各実施形態では、便宜上、各構成部位の上下左右関係を図面上の姿勢で説明する。よって、各構成部位の上下左右関係は、実際に使用する際の姿勢とは限らない。
【0014】
図1及び図2に示す複合構造体Aは、板状の第1金属部材M1と、板状の第2金属部材M2と、第1及び第2の金属部材M1,M2を一体化する樹脂部材Rとを備えている。樹脂部材Rは、第1及び第2の金属部材M1,M2に跨がって夫々の一方の主面を被覆する第1樹脂層R1と、第1及び第2の金属部材M1,M2に跨がって夫々の他方の主面を被覆する第2樹脂層R2とを有している。
【0015】
上記の主面とは、板状である金属部材M1,M2において、互いに表裏関係にある一方の面及び他方の面であり、板厚として表れる端面ではない。そして、複合構造体Aは、第1及び第2の金属部材M1,M2を、夫々の主面同士が互いに連なるように配置して、樹脂部材Rにより一体化する。この際、第1及び第2の金属部材M1,M2は、互いに接触していても良いし、適当な隙間を介して離間していても良い。
【0016】
第1及び第2の金属部材M1,M2は、その材料がとくに限定されるものではないが、例えばアルミニウム合金を用いることができる。なお、板状の第1及び第2の金属部材M1,M2は、平板状の部材に限らず、塑性加工により平板状の素材を適宜の立体形状に成形した部材を含むものである。また、樹脂部材Rは、その材料がとくに限定されるものではないが、例えば、不連続の炭素繊維を強化材とした熱可塑性樹脂(CFRTP)を用いることができる。
【0017】
この実施形態の第1及び第2の金属部材M1,M2は、図3及び図4に示すように、いずれも同等のハット形の断面形状を有しており、いわゆるハット材である。これにより、両金属部材M1,M2は、頂部Ma、一対の側部Mb,Mb、及び一対の鍔部Mc,Mcを夫々有している。このような両金属部材M1,M2は、例えば、高強度の材料を用いた場合でも、材料である金属板に折り曲げや深絞り等の塑性加工を施すことで容易に成形することができ、材料の選択肢も増える。
【0018】
そして、第1及び第2の金属部材M1,M2は、頂部Maを上側にして、第1金属部材M1の側部Mbの中間に、第2金属部材M2の端部を接合して、樹脂部材Rにより一体化され、T形状の複合構造体Aを構成する。
【0019】
また、複合構造体Aは、及び第2の金属部材M1、M2のいずれか一方の金属部材が、他方の金属部材の端部形状に合わせて形成した凹状の結合部を有し、一方の金属部材の端部を他方の金属部材の凹状の結合部に組み合わせる。この実施形態では、第1金属部材M1が、凹状の結合部J1を有すると共に、第2金属部材M2が、その端部に結合部J2を有し、第1金属部材M1の結合部J1に、第2金属部材M2結合部J2を差し込むように組み合わせている。
【0020】
より詳細には、第1金属部材M1の結合部J1は、頂部Ma、一方の側部Mb及び一方の鍔部Mcの夫々の一部を切除することにより凹状に形成してある。これに対して、第2金属部材M2の結合部(端部)J2は、頂部Maの延出片Jaと、側部Mb及び鍔部Mcに対して垂直な一対の竪片Jb,Jbとを有している。竪片Jbは、側部Mbの端部を横方向に折り曲げるとともに鍔部Mcの端部を切除、若しくは、鍔部Mcの端部を上方向に折り曲げるとともに側部Mbの端部を切除することにより形成され、これにより頂部Maの端部が残って延出片Jaとなる。
【0021】
そして、第1及び第2の金属部材M1,M2は、図4に示すように、第1金属部材M1の結合部J1において、頂部Ma、側部Mb及び鍔部Mcの各切除部分に、第2金属部材M2の延出片Ja、竪片Jb及び鍔部Mcが夫々配置される。これにより、第1及び第2の金属部材M1,M2は、結合部J1,J2同士において互いに重なる部分がなく、三次元的に連続する境界により区切られている。
【0022】
樹脂部材Rは、製造方法について後記するが、成形型内に第1及び第2の金属部材M1,M2を配置し、成形型内に溶融樹脂を充填することにより成形される。この実施形態の樹脂部材Rは、第1及び第2の金属部材M1,M2の一方の主面、すなわち、頂部Ma及び側部Mbの内側面、並びに鍔部Mcの底面の全域を被覆する第1樹脂層R1を有する。この第1樹脂層R1は、頂部Ma及び側部Mbの内側に、トラス構造のように配置した複数のリブRbを有している。これにより、第1樹脂層R1は、第1及び第2の金属部材M1,M2の機械的強度や複合構造体Aの剛性を確保する。
【0023】
また、樹脂部材Rは、第1及び第2の金属部材M1,M2の他方の主面、すなわち、頂部Ma及び側部Mbの外側面と、鍔部Mcの上面とを被覆する第2樹脂層R2を有する。ここで、第2樹脂層R2は、図5及び図6に示すように、第1及び第2の金属部材M1,M2に跨がる局部範囲、すなわち双方の境界全体を含む局部範囲に形成してある。このとき、両金属部材M1,M2の一方の主面において第1樹脂層R1を形成した範囲は、両金属部材M1,M2の他方の主面において第2樹脂層R2を形成した局部範囲よりも広範囲である。上記の第1樹脂層R1を形成した範囲は、任意の範囲であって、とくに限定されるものではなく、例えば、金属部材の被溶接部分などを除く範囲でも良いし、全範囲でも構わない。
【0024】
上記構成を備えた複合構造体Aは、第1及び第2の金属部材M1,M2と、両金属部材M1,M2を一体化する樹脂部材Rとを備えたことにより、仮に、第1及び第2の金属部材を一体物として成形する場合に比べると、図示の如く第1及び第2の金属部材M1,M2の形状を簡素化することが可能である。
【0025】
このため、第1及び第2の金属部材M1,M2は、高強度の材料を用いても、プレス加工等の塑性加工により適宜の形状に成形することが容易であると共に、樹脂のインサート成形により樹脂部材Rと一体化することで、金属部材M1,M2同士の充分な接合強度や、構造体としての剛性を得ることが可能である。
【0026】
また、複合構造体Aは、別の複合構造体と組み合わせて構造物を形成することが可能である。換言すれば、構造物を複数に分割し、各々の分割部分を当該複合構造体Aで構成することが可能である。このようにして、複合構造体Aは、成形性が良好であると共に、充分な強度を確保することができ、車体等の構造物の構成要素として好適なものとなる。
【0027】
さらに、上記の複合構造体Aは、第1及び第2の金属部材M1,M2のいずれか一方の金属部材(第1金属部材M1)が、他方の金属部材(第2金属部材M2)の端部形状に合わせて形成した凹状の結合部J1を有している。これにより、複合構造体Aは、上記した効果に加えて、両結合部J1,J2が三次元的な形状の組み合せになるので、接合力が向上すると共に、力の伝達を分散することが可能になり、強度や剛性のさらなる向上を実現する。
【0028】
さらに、上記の複合構造体Aは、樹脂部材Rの第1樹脂層R1が、第1及び第2の金属部材M1,M2の一方の主面を被覆すると共に、第2樹脂層R2が、第1及び第2の金属部材M1,M2の他方の主面の局部範囲に形成してある。この際、第1樹脂層R1を形成した範囲は、第2樹脂層R2を形成した局部範囲よりも広範囲である。これにより、複合構造体Aは、樹脂量を最小限にしつつ、金属部材M1,M2同士を確実に一体化すると共に、充分な強度及び剛性を確保することができる。
【0029】
上記の複合構造体Aは、第1及び第2の樹脂層R1,R2の配列方向(図6中で左右方向)に外力が加わった場合、第1及び第2の金属部材M1,M2の広範囲を被覆する充分な樹脂量の第1樹脂層R1があるので、構造体としての剛性が高くなり、その分変形量が抑制されることから、壊れ難いものになる。とくに、複合構造体Aは、入力方向の反対側に広範囲である第1樹脂層R1を配置すると、全体が曲がる状態に変形するのに対して戻す方向の抵抗力が働くこととなり、壊れ難いものとなる。
【0030】
このような複合構造体Aは、例えば、自動車のサイドパネルを構成するのに好適である。サイドパネルは、側面衝突を考慮して強度設定をするので、第1樹脂層R1を内側に配置することで、外力による変形に抗する上記効果が得られる。この複合構造体Aは、サイドパネルを含む様々な構造物を構成する際、構造物に対して想定される外力を考慮して第1及び第2の樹脂層R1,R2の配置を選択すれば、より一層優れた効果を発揮する。
【0031】
以下、図面に基づいて第2以下の各実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態において、第1実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0032】
<第2実施形態>
図7及び図8に示す複合構造体Aは、板状の第1金属部材M1と、板状の第2金属部材M2と、第1及び第2の金属部材M1,M2を一体化する樹脂部材Rとを備えている。また、複合構造体Aは、樹脂部材Rが、第1樹脂層R1と第2樹脂層R2とを繋ぐ連結部R3を有している。この実施形態の複合構造体Aは、第1及び第2の金属部材M1,M2同士の間に、隙間Sを設け、この隙間S内に連結部R3を形成している。
【0033】
上記構成を備えた複合構造体Aは、連結部R3により第1及び第2の樹脂層R1,R2を一体化させた樹脂部材Rが得られると共に、第1及び第2の金属部材M1,M2と樹脂部材Rとの接触面積を大きく確保することで、両金属部材M1,M2同士の接合部における強度及び剛性をより向上させることができる。
【0034】
また、上記の複合構造体Aは、成形型を用いて樹脂部材Rを成形する際、第1及び第2の樹脂層R1,R2の各成形空間が、隙間Sを介して連通する。これにより、上記複合構造体Aは、両金属部材M1,M2の片側から溶融樹脂を充填すれば、樹脂部材Rの全体を成形することができ、成形型の簡略化に貢献し得る。
【0035】
図9図11は、第2実施形態で説明した複合構造体Aの製造方法を工程順に説明する図である。図9に示す成形型1は、下側の固定型2と、昇降可能な上側の可動型3との間に、複合構造体Aに対応する成形空間4を形成しており、固定型2には、図外の射出機に連通する射出孔5が設けてある。
【0036】
複合構造体の製造方法は、上記の成形型1を用い、成形空間4内に、第1及び第2の金属部材M1,M2を配置すると共に、双方の間に隙間Sを設ける。この際、固定型2側には、第1及び第2の金属部材M1,M2の一方の主面に対応する第1樹脂層R1の成形空間41が形成される。また、可動型3側には、第1及び第2の金属部材M1,M2の他方の主面の局部範囲に対応する第2樹脂層R2の成形空間42が形成される。そして、両成形空間41,42は、隙間Sを介して連通している。
【0037】
次に、複合構造体の製造方法は、図10に示すように、第1及び第2の金属部材M1,M2の一方の主面側(固定型2側)の射出孔5から、成形空間4(41,42)内に樹脂部材Rの材料である溶融樹脂Rmを加圧充填する。この際、溶融樹脂Rmは、第1及び第2の金属部材M1,M2同士の隙間Sを通して、第1及び第2の金属部材M1,M2の他方の主面側(可動型3側)の成形空間42に流入する。
【0038】
このようにして、複合構造体の製造方法は、溶融樹脂Rmの硬化に伴って、第1及び第2の樹脂層R1,R2と、隙間S内に形成された連結部R3とを有する樹脂部材Rを形成し、図11に示すように、第1及び第2の金属部材M1,M2と樹脂部材Rとを一体化させた複合構造体Aを製造する。
【0039】
上記の複合構造体の製造方法は、成形性が良好であると共に、充分な強度及び剛性を有し且つ車体等の構造物の構成要素として好適な複合構造体Aを提供することができる。
【0040】
なお、上記の複合構造体の製造方法では、成形型に溶融樹脂を射出して樹脂部材Rを成形する場合を説明したが、樹脂部材Rをプレスにより成形することも可能である。この場合、製造方法としては、例えば、射出孔5の無い固定型2と可動型3とを備えた成形型1を用い、固定型2に第1及び第2の金属部材M1,M2を位置決めして、固定型2上に所定量の溶融樹脂を供給する。その後、製造方法は、可動型3を下降させ、可動型3と固定型2との間で溶融樹脂を加圧して、溶融樹脂を成形空間4の全体に押し広げるように充填することにより、図示と同様の樹脂部材Rを成形することができる。
【0041】
<第3実施形態>
図12に示す複合構造体Aは、第1実施形態と同様に、第1及び第2の金属部材M1.M2のいずれか一方の金属部材(第1金属部材M1)が、他方の金属部材(第2金属部材M2)の結合部J2である端部の形状に合わせて形成した結合部J1を有している。なお、第1実施形態では、第1金属部材M1の側部Mbの中間に、第2金属部材M2の端部を接合した構成を説明したが、この実施形態では、第1金属部材M1の側部Mbの端部に、第2金属部材M2の端部を接合している。
【0042】
上記の複合構造体Aは、先の実施形態と同様の効果を有するうえに、両結合部J1,J2が三次元的な形状の組合せになるので、接合力が向上すると共に、力の伝達を分散することが可能になり、強度や剛性のさらなる向上を実現する。
【0043】
<第4実施形態>
図13に示す複合構造体Aは、樹脂部材Rが、第1樹脂層R1及び第2樹脂層R2の少なくとも一方に、金属部材M1,M2同士の境界位置で突出する補強部R4を有している。図示例の複合構造体Aでは、樹脂部材Rの第1樹脂層R1に補強部R4が設けてある。
【0044】
上記の複合構造体Aは、厚み方向において、第1及び第2の金属部材M1,M2の境界部分が樹脂だけで形成されているので、外力を受けた際に、樹脂部材Rに応力集中が生じるおそれがある。そこで、複合構造体Aは、金属部材M1,M2の境界部分、すなわち厚み方向において金属部材が存在しない部分に補強部R4を設ける。これにより、複合構造体Aは、外力を受けた際に、樹脂部材Rに発生する応力を低減して変形を抑制し得る。
【0045】
<第5実施形態>
図14に示す複合構造体Aは、金属部材M1,M2同士の境界が、互いに組み合わされる凹凸形状を成している。図示例の金属部材M1,M2同士の境界は、矩形の凹凸を連続させたもので、第1金属部材M1の境界の凹部(又は凸部)に、第2金属部材M2の境界の凸部(又は凹部)が配置される。なお、複合構造体Aは、先の実施形態のように、金属部材M1,M2同士の間に、樹脂部材Rの連結部(R3)を形成する隙間(S)を設けても良い。
【0046】
上記の複合構造体Aは、金属部材M1,M2同士の境界を凹凸形状にすることで接合面積を拡大させている。これにより、複合構造体Aは、外力を受けた際に、金属部材M1,M2同士の接合部において面積当たりの応力を抑えると共に、接合部の力の伝達を分散させることができ、強度や剛性のさらなる向上を実現する。
【0047】
<第6実施形態>
図15に示す複合構造体Aは、第1及び第2の金属部材M1,M2の少なくとも一方の金属部材が、結合部J1,J2に、表裏両面に連通する開口部10を有している。この実施形態の複合構造体Aは、両方の金属部材M1,M2において、互いに対応する複数の位置(図示例では4箇所)に開口部10が設けてある。図示例の開口部10は、金属部材M1,M2の縁部に対して直角であり且つ縁部で一端を開放したスリットである。そして、複合構造体Aは、開口部10内に、第1樹脂層R1と第2樹脂層R2とを繋ぐ連結部R3が形成してある。
【0048】
上記の複合構造体Aは、図9図11に基づいて説明した製造方法において、開口部10が溶融樹脂の通路になるので、溶融樹脂の流動性がより向上して樹脂部材Rの成形性が良好になる。また、複合構造体Aは、複数の開口部10内に連結部R3が形成されるので、金属部材M1,M2と樹脂部材Rとの接合に加えて、複数の連結部R3による機械的な接合構造が得られ、強度や剛性のさらなる向上を実現する。
【0049】
図16に示す複合構造体Aは、第1及び第2の金属部材M1,M2の少なくとも一方の金属部材が、結合部J1,J2に、表裏両面に連通する開口部11を有している。この実施形態の複合構造体Aは、両方の金属部材M1,M2に開口部11が設けてある。図示例の開口部11は、金属部材M1,M2の縁部に対して平行なスリットであり、いずれも縁部に沿って点線状に所定間隔で配置してある。そして、複合構造体Aは、開口部11内に、第1樹脂層R1と第2樹脂層R2とを繋ぐ連結部R3が形成してある。
【0050】
上記の複合構造体Aは、第6実施形態と同様に、製造時において、開口部11が溶融樹脂の通路になって、樹脂部材Rの成形性がより一層良好になり、また、複数の開口部11内に連結部R3が形成されて、機械的な接合構造が得られ、強度や剛性のさらなる向上を実現する。
【0051】
<第8実施形態>
図17に示す複合構造体Aは、第1及び第2の金属部材M1,M2同士の境界Lが、当該複合構造体Aにおける応力集中箇所Qを避けて配置してある。複合構造体Aは、T形状を成しているので、外力に対して、両金属部材M1,M2の接合部分、とくに、リブRbの端部(Q)に応力集中が生じる。つまり、複合構造体Aは、金属部材M1,M2同士の境界Lが応力集中箇所Qを避けるように、金属部材M1,M2の結合部J1,J2の位置や形状を設定するのが望ましい。
【0052】
具体例として、この実施形態の複合構造体Aは、自動車のサイドパネルにおいて、センタピラーの下部とサイドシルの中間部とを構成する。つまり、図17に示す複合構造体Aは、第1金属部材M1がサイドシルの一部を構成し、第2金属部材M2がセンタピラーの一部を構成する。ここで、自動車のサイドパネルは、先述したように、側面衝突を想定した強度設定をする。側面衝突では、センタピラーとサイドシルとの交差部、すなわち、複合構造体Aでは第1及び第2の金属部材M1,M2の交差部に応力が集中する。
【0053】
複合構造体Aは、上記のような応力集中を想定して、第1及び第2の金属部材M1,M2の境界Lが、応力集中部Qである上記交差部を避ける配置にしている。これにより、上記の複合構造体Aは、金属部材M1,M2同士の接合部に発生する応力自体が抑えられ、補強するための別の手段を設けなくても接合部の強度及び剛性を確保し得る。
【0054】
<第9実施形態>
図18及び図19に示す複合構造体Aは、第1及び第2の金属部材M1,M2の少なくとも一方に、樹脂部材Rにより一体化される第3の金属部材M3を備えている。この実施形態の複合構造体Aは、第1金属部材M1の中間に第2金属部材M2の一方の端部を接合すると共に、第2金属部材M2の他方の端部に、第3金属部材M3の中間が接合してある。
【0055】
樹脂部材Rは、第1~第3の金属部材M1,M2,M3に跨って夫々の一方の主面を被覆する第1樹脂層(図示せず)と、第1及び第2の金属部材M1,M2の他方の主面に跨る局部範囲に形成した第2樹脂層R2と、第2及び第3の金属部材M2,M3の他方の主面に跨がる局部範囲を被覆する別の第2樹脂層R2とを備えている。
【0056】
先述したように、複合構造体Aの各金属部材M1~M3は、例えば、高強度の材料を用いた場合でも、材料である金属板に折り曲げや深絞り等の塑性加工を施すことで容易に成形することができる。そして、複合構造体Aは、先述した製造方法に基づいて、各金属部材M1~M3と樹脂部材Rとを一体化することができる。
【0057】
よって、複合構造体Aは、第3の金属部材M3若しくはそれ以上の数の金属部材と組合せて所定の構造物を構成することができる。換言すれば、所定の構造物を複数の分割体に分割し、各分割体を当該複合構造体Aで形成することができる。
【0058】
これにより、複合構造体Aは、例えば、一体物の金属部材を用いる場合に比べて、大規模な設備や別の部品を用いることなく、金属部材と樹脂部材とを有する構造物を形成することが可能になり、作業工数や製造コストを大幅に低減することができる。また、複合構造体Aは、一体物の金属部材を使用する場合に比べて、各金属部材M1,M2,M3の成形性が良好であるから、材料の選択肢が増え、高強度の材料を使用することも可能であるから、軽量化も実現し得る。
【0059】
<第10実施形態>
図20に示す複合構造体Aは、第1及び第2の金属部材M1,M2の少なくとも一方に、樹脂部材Rにより一体化される第3の金属部材M3を備えている。図示例の複合構造体Aは、第1金属部材M1における一方の側部の中間に第2金属部材M2の端部を接合すると共に、第1金属部材M1における他方の側部の中間に、第3金属部材M3の端部が接合してある。
【0060】
樹脂部材Rは、第1~第3の金属部材M1,M2,M3に跨って夫々の一方の主面を被覆する第1樹脂層(図示せず)と、第1~第3の金属部材M1,M2,M3の他方の主面に跨る局部範囲に形成した第2樹脂層R2を備えている。このように、複合構造体Aは、3つの金属部材M1,M2,M3に跨る第2樹脂層R2を有する。
【0061】
上記の複合構造体Aは、第9実施形態と同様に、一体物の金属部材を用いる場合に比べて、大規模な設備や別の部品を用いることなく、金属部材と樹脂部材とを有する構造物を形成することが可能になり、作業工数や製造コストを大幅に低減することができる。また、上記の複合構造体Aは、材料の選択肢が増え、高強度の材料を使用することも可能であるから、軽量化も実現し得る。
【0062】
<第11実施形態>
図21に一部を示す複合構造体Aは、金属部材M1(M2)の樹脂部材Rで被覆される主面に、微細凹凸12を形成したものである。微細凹部12は、例えば、ブラスト処理、レーザ加工、及び化成処理等により形成することができる。
【0063】
上記の複合構造体Aは、微細凹部12により、金属部材M1(M2)と樹脂部材Rとの接触面積が拡大され、双方の間で機械的な接合が得られるので、接合力を高めることができる。
【0064】
<第12実施形態>
図22及び図23に示す複合構造体Aは、第1及び第2の金属部材M1,M2が、互いの少なくとも一部が重なり合う重合領域13と、重合領域13に貫通状態に形成した連通穴14とを有している。図示例の複合構造体Aは、互いの結合部J1,J2に、重合領域13及び連通穴14を有する。そして、複合構造体Aは、連通穴14内に第1樹脂層R1と第2樹脂層R2とを繋ぐ連結部R3が形成してある。
【0065】
上記の複合構造体Aは、重合領域13と、連通穴14に形成した連結部R3とにより、金属部材M1,M2と樹脂部材Rとの接合力がさらに向上し、強度及び剛性をより高めることができる。
【0066】
<第13実施形態>
図24図27は、複合構造体の応用例として、自動車のフロアパネルを製造する工程を示す図である。つまり、この実施形態の複合構造体は、構造物であるフロアパネルFPの構成要素として用いられる。
【0067】
図24は、フロアパネルFPを複数の金属部材に分解した状態を示す図であり、フロアパネルFPは、金属部材として、左右のフロントサイドメンバ21,21、左右のリアサイドメンバ22,22、フロントクロスメンバ23、センタクロスメンバ24、リアクロスメンバ25、及びセンタメンバ(いわゆるトンネル)26に分割してある。
【0068】
これにより、各メンバ21~26は、比較的簡単な形状の金属部材として分割することができるので、金属板に折り曲げや深絞り等の塑性加工を施すことで、所定の立体形状に容易に成形し得る。なお、この実施形態では、フロアパネルFPの主要部品を例示しており、実際にはより多くの部品を含むことがある。
【0069】
上記の各金属部材(各メンバ21~26)は、図25に示すように、成型型30の成型空間31内に位置決めされる。この際、各金属部材の結合部には、第1~第12の実施形態で説明した構成を採用することができる。なお、成型空間31は、各金属部材と後に成形される樹脂部材の大きさ及び形状に対応している。
【0070】
次に、図26に示すように、成型型30の成型空間31に溶融樹脂Rmを射出する。なお、成形型30の閉動作(プレス)により溶融樹脂Rmの充填を行うこともできる。これにより、図27に示すように、各金属部材(各メンバ21~26)と樹脂部材Rとを一体化したフロアパネルFPを得ることができる。
【0071】
<第14実施形態>
図28は、複合構造体の応用例として、自動車のサイドパネルSPを示す図である。このサイドパネルSPは、センタピラー部41と、フロントピラー部42と、シル及びルーフサイドを含むリアピラー部43とに分割してあり、夫々を複合構造体で構成することができる。この際、サイドパネルSPには、各部同士の間(複合構造体同士の間)に、切断線Kが存在するが、これらの切断線Kをドアやフェンダーの内側等の目立たない部分に配置すれば、外観体裁を損なう心配は全くない。
【0072】
図29は、複合構造体の強度試験を行う要領を説明する図である。複合構造体Aは、第1実施形態で説明したように、第1金属部材M1と第2金属部材M2とをT形状に配置して樹脂部材Rで一体化したものである。試験では、支持台50上に、複合構造体Aの第1金属部材M1の両端を固定具51,51で固定し、第2金属部材M2の端部に、第2金属部材M2の軸線方向(矢印X方向)、第2金属部材M2の軸線に直交する水平方向(矢印Y方向)及び垂直方向(矢印Z方向)の夫々の方向から負荷を与えて変位を測定した。
【0073】
また、従来例として、第1金属部材及び第2金属部材を一体化した金属部材を成形し、この金属部材の内側に樹脂部材を充填したT形状の複合構造体を作成し、同様の試験を行った。その結果、本発明の複合構造体Aは、いずれの方向の負荷に対しても、従来例と同等若しくはそれ以上の強度及び剛性を確保し得ることを確認した。このように、複合構造体Aは、成形性が良好であるうえに、従来例に何ら劣らない強度及び剛性を有するのであるから、自動車等の構造物の構成要素として非常に利用価値の高いものである。
【0074】
本発明に係わる複合構造体は、その構成が上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更したり、各実施形態の構成を組み合わせたりすることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
J1 結合部
J2 結合部
L 境界
M1 第1金属部材
M2 第2金属部材
M3 第3金属部材
Q 応力集中箇所
R 樹脂部材
R1 第1樹脂層
R2 第2樹脂層
R3 連結部
R4 補強部
1 成形型
4 成形空間
10,11 開口部
12 微細凹凸
13 重合領域
14 連通穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29