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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】搬送車システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221109BHJP
【FI】
G05D1/02 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021508187
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2020004398
(87)【国際公開番号】W WO2020195200
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2019055166
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-132332(JP,A)
【文献】特開2016-083980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた搬送経路を複数の搬送車が走行する搬送車システムであって、
前記搬送経路に連続する経路の一部に設けられる測定部であって、前記連続する経路上に位置する前記搬送車に含まれる測定対象箇所を測定する測定部と、
前記測定部によって前記測定対象箇所が測定された前記搬送車を特定する特定部と、
前記測定部によって測定された測定結果と前記特定部によって特定された特定結果とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記測定結果と基準値とに基づいて判定される前記測定対象箇所の状態に関する情報を報知する報知部と、を備え、
前記搬送経路は、前記搬送車が有する走行部を走行させる軌道であり、
前記軌道は、前記走行部を前記軌道の延在方向に直交する幅方向に押し付ける検査板を備えており、
前記測定部は、前記検査板で押し当てられた状態の前記搬送車の前記測定対象箇所を測定する、搬送車システム。
【請求項2】
前記報知部は、前記測定結果が所定値を超えたときにその旨を報知する、請求項1記載の搬送車システム。
【請求項3】
前記記憶部は、前記搬送車ごとの前記測定結果が時系列で記憶されており、
前記報知部は、前記記憶部に記憶された前記測定結果に基づいて算出される変化率が所定値を超えたときにその旨を報知する、請求項1又は2記載の搬送車システム。
【請求項4】
前記搬送経路は、所定のエリアを一方向に巡回する本線経路と、前記本線経路に前記搬送車を導入させる導入経路と、を有しており、
前記測定部は、前記導入経路に設けられている、請求項1~3の何れか一項記載の搬送車システム。
【請求項5】
前記測定部は、前記検査板までの距離を測定する、請求項1~4の何れか一項記載の搬送車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、搬送車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
予め定められた経路を走行し、物品を搬送する搬送車システムが知られている。このような搬送車システムでは、走行する搬送車の搬送状態を取得することが従来から行われている。例えば、特許文献1には、走行経路中に設けられ、台車により搬送される荷の荷姿を荷に接触することなく検出する検出装置を備える荷姿検出システムが開示されている。この荷姿検出システムによれば、台車によって搬送中の荷の荷姿を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平5-61106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、労働力の不足に対処する目的等のため、より一層の省人化が求められている。搬送経路を複数の搬送車が走行している上記のような搬送車システムでは、各搬送車の状態を点検したり調整したりするメンテナンスに多大な時間を要する。したがって、これらのメンテナンス作業等を効率化できれば、省人化の効果は大きい。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、複数の搬送車が走行する搬送車システムにおいて、各搬送車のメンテナンス作業等を効率化することができる搬送車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る搬送車システムは、予め定められた搬送経路を複数の搬送車が走行する搬送車システムであって、搬送経路に連続する経路の一部に設けられる測定部であって、連続する経路上に位置する搬送車に含まれる測定対象箇所を測定する測定部と、測定部によって測定対象箇所が測定された搬送車を特定する特定部と、測定部によって測定された測定結果と特定部によって特定された特定結果とを関連付けて記憶する記憶部と、測定結果と基準値とに基づいて判定される測定対象箇所の状態に関する情報を報知する報知部と、を備える。
【0007】
この構成の搬送車システムには、搬送経路に連続する経路の一部にこの経路上に位置する搬送車に含まれる測定対象箇所を測定する測定部が設けられているので、製造現場等において稼働中(走行中)の搬送車の測定対象箇所を測定することができる。すなわち、人手を介することなく測定対象箇所の測定値を入手できる。また、搬送車システムには複数の搬送車が走行しているが、測定対象箇所が測定された搬送車が特定部によって特定されるので、その測定結果は搬送車ごとに記憶される。これにより、作業者は、搬送車ごとに記憶された測定値に基づいて、搬送車ごとに適切なタイミングでメンテナンス等を行なうことができる。この結果、各搬送車のメンテナンス作業等を効率化することができる。
【0008】
本発明の一側面に係る搬送車システムでは、報知部は、測定結果が所定値を超えたときにその旨を報知してもよい。この構成では、例えば、部品交換が必要となる所定値又は調整が必要となる所定値を予め設定することによって、部品交換が必要となる搬送車又は調整が必要となる搬送車が存在することを報知することができるようになる。
【0009】
本発明の一側面に係る搬送車システムでは、記憶部は、搬送車ごとの測定結果が時系列で記憶されており、報知部は、記憶部に記憶された測定結果に基づいて算出される変化率が所定値を超えたときにその旨を報知してもよい。この構成では、搬送車ごとに測定対象箇所の初期値が異なる場合であっても、例えば、部品交換が必要となる変化率又は調整が必要となる変化率を予め設定することによって、部品交換が必要となる搬送車又は調整が必要となる搬送車が存在することを報知することができる。
【0010】
本発明の一側面に係る搬送車システムでは、搬送経路は、所定のエリアを一方向に巡回する本線経路と、本線経路に搬送車を導入させる導入経路と、を有しており、測定部は、導入経路に設けられていてもよい。導入経路に測定部が設けられる構成では、稼働前の搬送車の初期値を測定でき、本線経路において搬送車を稼働させることができない初期不良又は整備不良等を事前に検知できる。
【0011】
本発明の一側面に係る搬送車システムでは、搬送経路は、搬送車が有する走行部を走行させる軌道であり、軌道は、走行部を軌道の延在方向に直交する幅方向に押し付ける検査板を備えており、測定部は、検査板で押し当てられた状態の搬送車の測定対象箇所を測定してもよい。この構成では、走行部を同じ体勢に維持した状態で、測定対象箇所を測定することができるので、測定精度を高めることができる。
【0012】
本発明の一側面に係る搬送車システムでは、測定部は、検査板までの距離を測定してもよい。この構成では、測定部から見て測定対象箇所が測定しにくい箇所にあっても、間接的に測定対象箇所を測定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、複数の搬送車が走行する搬送車システムにおいて、各搬送車のメンテナンス作業等を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る搬送車システムを示す概略平面図である。
図2図2は、図1の天井搬送車を走行方向から見た正面概略図である。
図3図3は、搬送車の走行部を拡大して示した斜視図である。
図4図4は、搬送車システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
図5図5は、専用軌道の構成を示した斜視図である。
図6図6は、測定ユニットが測定する測定対象箇所を示した図である。
図7図7は、変形例に係る専用軌道を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一側面の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1及び図4を除く図では、説明の便宜のため「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」方向を定義する。
【0016】
図1及び図2に示されるように、搬送車システム1は、軌道(予め定められた走行経路)4に沿って移動可能な天井搬送車6を用いて、物品10を載置部9,9間で搬送するためのシステムである。物品10には、例えば、複数の半導体ウェハを格納するFOUP(Front Opening Unified Pod)及びガラス基板を格納する容器、レチクルポッド等のような容器、並びに一般部品等が含まれる。ここでは、例えば、工場等において、天井搬送車6(以下、単に「搬送車6」と称する。)が、工場の天井等に敷設された一方通行の軌道4に沿って走行する搬送車システム1を例に挙げて説明する。搬送車システム1は、軌道4、複数の搬送車6、複数の載置部9、測定ユニット160、及び制御装置80(図4参照)を備える。
【0017】
軌道4は、例えば、作業者の頭上スペースである天井付近に敷設されている。軌道4は、例えば天井から吊り下げられている。軌道4は、搬送車6を走行させるための予め定められた走行路である。軌道4は、支柱40A,40Aにより支持される。搬送車システム1の軌道4は、所定のエリアを一方向に巡回する本線軌道(本線経路)4Aと、本線軌道4Aに合流(連続)するように設けられ、搬送車6を導入させる導入軌道(導入経路)4Bと、を有している。
【0018】
軌道4は、一対の下面部40Bと一対の側面部40C,40Cと天面部40Dとからなる筒状の本体部40と、給電部40Eと、磁気プレート40Fと、を有している。下面部40Bは、搬送車6の走行方向に延在し、本体部40の下面を構成する。下面部40Bは、搬送車6の走行ローラ51を転動させて走行させる板状部材である。側面部40Cは、搬送車6の走行方向に延在し、本体部40の側面を構成する。一対の側面部40C,40Cの内面間の距離W1は、走行方向に直交する幅方向(左右方向)における搬送車6のサイドローラ52間の外周面同士の距離W2よりも長い。天面部40Dは、搬送車6の走行方向に延在し、本体部40の上面を構成する。
【0019】
給電部40Eは、搬送車6の給電コア57に電力を供給すると共に、搬送車6と信号の送受信(重畳通信)を行なう部位である。給電部40Eは、一対の側面部40C,40Cのそれぞれに固定され、走行方向に沿って延在している。給電部40Eは、給電コア57に対して非接触の状態で電力を供給する。磁気プレート40Fは、搬送車6のLDM(Linear DC Motor)59(図3参照)に走行又は停止のための磁力を発生させる。磁気プレート40Fは、天面部40Dに固定され、走行方向に沿って延在している。
【0020】
搬送車6は、軌道4に沿って走行し、物品10を搬送する。搬送車6は、物品10を移載可能に構成されている。搬送車6は、天井走行式無人搬送車である。搬送車システム1が備える搬送車6の台数は、特に限定されず、複数である。搬送車6は、本体部7と、走行部50と、制御部35と、を有する。本体部7は、本体フレーム22と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、前後フレーム33と、を有する。
【0021】
横送り部24は、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降台30を一括して、軌道4の走行方向と直角な方向に横送りする。θドライブ26は、昇降駆動部28及び昇降台30の少なくとも何れかを水平面内で所定の角度範囲内で回動させる。昇降駆動部28は、昇降台30をベルト、ワイヤ及びロープ等の吊持材の巻取りないし繰出しによって昇降させる。昇降台30には、チャックが設けられており、物品10の把持又は解放が自在とされている。前後フレーム33は、例えば搬送車6の走行方向の前後に一対設けられている。前後フレーム33は、図示しない爪等を出没させて、搬送中に物品10が落下することを防止する。
【0022】
走行部50は、搬送車6を軌道4に沿って走行させる。図3及び図6に示されるように、走行部50は、走行ローラ51、サイドローラ52、分岐ローラ53、補助ローラ54、傾斜ローラ55、給電コア57及びLDM59を有している。図2では、分岐ローラ53、補助ローラ54、及び傾斜ローラ55の図示は省略する。
【0023】
走行ローラ51は、外輪51A及び内輪51Bからなるローラ対である。走行ローラ51は、走行部50の前後の左右両端に配置されている。走行ローラ51は、軌道4の一対の下面部40B,40B(又は後述する図5の下方支持部43)を転動する。サイドローラ52は、走行ローラ51の外輪51Aのそれぞれを前後方向に挟むように配置されている。サイドローラ52は、軌道4の側面部40C(又は後述する図5の側方支持部45)に接触可能に設けられている。分岐ローラ53は、サイドローラ52のそれぞれを上下方向に挟むように配置されている。サイドローラ52は、軌道4の接続部又は分岐部等に配置されているガイド(図示せず)に接触可能に設けられている。
【0024】
補助ローラ54は、走行部50の前後に設けられている、三つ一組のローラ群である。補助ローラ54は、走行部50が加減速等により走行中に前後に傾いたときに、LDM59及び給電コア57等が軌道4の上面に配置された磁気プレート40F(又は後述する図5の磁気プレート49)に接触することを防止するために設けられている。傾斜ローラ55は、LDM59の四隅に設けられている。傾斜ローラ55は、前後方向から傾いた状態で配置されている。傾斜ローラ55は、走行部50がカーブ区間を走行する際の遠心力による傾きを防止するために設けられている。
【0025】
給電コア57は、走行部50の前後に、左右方向にLDM59を挟むように配置されている。軌道4に配置された給電部40Eとの間で非接触による給電と、非接触による各種信号の送受信を行う。給電コア57は制御部35との間で信号をやりとりする。LDM59は、走行部50の前後に設けられている。LDM59は、電磁石によって軌道4の上面に配置された磁気プレート49との間で、走行又は停止のための磁力を発生させる。
【0026】
図1に示されるように、載置部9は、軌道4に沿って配置され、搬送車6との間で物品10の受け渡し可能な位置に設けられている。載置部9には、バッファ及び受渡ポートが含まれる。バッファは、物品10が一時的に載置される載置部である。バッファは、例えば、目的とする受渡ポートに他の物品10が載置されている等の理由により、搬送車6が搬送している物品10をその受渡ポートに移載できない場合に、物品10が仮置きされる載置部である。受渡ポートは、例えば洗浄装置、成膜装置、リソグラフィ装置、エッチング装置、熱処理装置、平坦化装置をはじめとする半導体の処理装置(図示せず)に対して物品10の受渡を行うための載置部である。なお、処理装置は、特に限定されず、種々の装置であってもよい。
【0027】
例えば、バッファとなる載置部9は、軌道4の側方に配置されている。この場合、搬送車6は、図2に示される横送り部24で昇降駆動部28等を横送りし、昇降台30を僅かに昇降させることにより、載置部9との間で物品10を受け渡しする。なお、図示はしないが載置部9は、軌道4の直下に配置されてもよい。この場合、搬送車6は、昇降台30を昇降させることにより、載置部9との間で物品10を受け渡しする。
【0028】
制御部35は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。制御部35は、搬送車6における各種動作を制御する。具体的には、制御部35は、走行部50と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降台30と、を制御する。制御部35は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。制御部35は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。制御部35は、軌道4の給電部40E(給電線)等を利用して、コントローラ90(図1参照)と通信を行う。
【0029】
コントローラ90は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。コントローラ90は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。コントローラ90は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。コントローラ90は、搬送車6に物品10を搬送させる搬送指令を送信する。
【0030】
図1に示されるように、測定ユニット160は、軌道4の一部に設けられ、搬送車6に含まれる走行ローラ51等の測定対象箇所を測定するユニットである。測定ユニット160は、本線軌道4Aと、導入軌道4Bとにそれぞれ配置されている。測定ユニット160は、専用軌道140(図5参照)と測定部60(図4参照)とを備えている。図5及び図6に示されるように、専用軌道140は、搬送経路に沿って等間隔に配列されるフレーム41と、一対の下方支持部43と、一対の側方支持部(検査板)45と、給電部47と、磁気プレート49と、を有している。なお、導入軌道4Bの走行端等の軌道4の一部に地上側に下降可能な昇降レールを設け、この昇降レールに連続するように地上側に設けられた地上側軌道に測定ユニット160を設けてもよい。このような構成とすることにより、測定及びその後のメンテナンス作業等を地上側で容易に行なうことができる。
【0031】
フレーム41は、一対の側面部41A,41Aと、天面部41Bと、を有している。一対の側面部41Aは、左右方向に対向して配置され、鉛直方向に延在する板状部材である。側面部41Aには、開口部41Cが設けられている。また、側面部41Aは、ブラケット(図示せず)及び支柱(図示せず)を介して天井に固定される。天面部41Bは、一対の側面部41A,41Aを、一対の側面部41A,41Aの上端にて接続する板状部材である。天面部41Bは、配列方向に隣り合う複数の側面部41Aに跨がるように配置されてもよい。
【0032】
下方支持部43は、搬送車6の走行ローラ51を転動させて走行させる部材である。下方支持部43は、フレーム41の側面部41Aに固定され、走行方向に沿って配列されるフレーム41に掛け渡されている。下方支持部43の上面(すなわち、走行ローラ51の転動面)は、軌道4に接続される部位において、軌道4の下面部40B(図2参照)の上面と面一に接続される。
【0033】
側方支持部45は、搬送車6のサイドローラ52が接触する部材である。側方支持部45は、フレーム41の側面部41Aに固定され、走行方向に沿って配列されるフレーム41に掛け渡されている。一対の側方支持部45,45間の左右方向における距離W3は、左右方向における搬送車6のサイドローラ52間の外周面同士の距離W2(図2参照)と等しい。すなわち、搬送車6のサイドローラ52,52は、一対の側方支持部45,45を転動しながら走行する。これにより、走行部50の姿勢を安定的(一定)に維持することができる。なお、ここでいうサイドローラ52は、摩耗がない状態のローラを指す。側方支持部45の内面(すなわち、サイドローラ52の転動面)は、軌道4と接続される部位において、軌道4の側面部40C(図2参照)の内面と滑らかに接続するテーパ部45aを介して接続されている。すなわち、テーパ部45aは、一対の側面部40C,40C間の距離W1を緩やかに一対の側方支持部45,45間の距離W3に狭め、一対の側方支持部45,45間の距離W3を緩やかに一対の側面部40C,40C間の距離W1に広げる。
【0034】
給電部47は、搬送車6の給電コア57に電力を供給すると共に、給電コア57と信号の送受信を行う。給電部47は、フレーム41の側面部41Aに固定され、走行方向に沿って配列されるフレーム41に掛け渡されている。給電部47は、給電コア57に対して非接触の状態で電力を供給する。
【0035】
磁気プレート49は、搬送車6のLDM59に走行又は停止のための磁力を発生させる。磁気プレート49は、フレーム41の天面部41Bに固定され、走行方向に沿って配列されるフレーム41に掛け渡されている。
【0036】
図4に示される測定部60には、走行ローラ用センサ61と、サイドローラ用センサ62と、分岐ローラ用センサ63と、補助ローラ用センサ64と、傾斜ローラ用センサ65と、第一給電コア用センサ67Aと、第二給電コア用センサ67Bと、LDM用センサ68と、誘導コア用センサ69と、が含まれる。これらのセンサは、それぞれの目的に応じて専用軌道140の適宜な位置に固定されている。また、これらのセンサが取得した測定値は、適宜のタイミングで制御装置80によって取得される。
【0037】
走行ローラ用センサ61は、走行部50の左側に設けられる走行ローラ51と右側に設けられる走行ローラ51とをそれぞれ測定するために二つ設けられている。走行ローラ用センサ61は、走行ローラ51の摩耗量を監視するために設けられる。走行ローラ用センサ61は、固定位置から走行ローラ51の外周面までの距離を測定することにより、走行ローラ51の外径H51(図6参照)を取得する。
【0038】
サイドローラ用センサ62は、走行部50の左側に設けられるサイドローラ52と右側に設けられるサイドローラ52とをそれぞれ測定するために二つ設けられている。サイドローラ用センサ62は、サイドローラ52の摩耗量及び左右のサイドローラ52,52間距離を監視するために設けられている。サイドローラ用センサ62は、固定位置からサイドローラ52の外周面までの距離を測定することにより、サイドローラ52の外径H521(図6参照)及びサイドローラ52,52間の距離W522(図6参照)を取得する。
【0039】
分岐ローラ用センサ63は、走行部50の左側に設けられる分岐ローラ53と右側に設けられる分岐ローラ53とをそれぞれ測定するために二つ設けられている。また、分岐ローラ用センサ63は、上下の分岐ローラ53ごとに設けられてもよい。分岐ローラ用センサ63は、分岐ローラ53の摩耗量及び左右の分岐ローラ53,53間距離を監視するために設けられている。分岐ローラ用センサ63は、固定位置から分岐ローラ53の外周面までの距離を測定することにより、分岐ローラ53の外径H531(図6参照)及び分岐ローラ53,53間の距離W532(図6参照)を取得する。
【0040】
補助ローラ用センサ64は、補助ローラ54の摩耗量及び補助ローラ54の下方支持部43を基準とする高さを監視するために設けられている。補助ローラ用センサ64は、固定位置から補助ローラ54の外周面までの距離を測定することにより、補助ローラ54の外径H541(図6参照)及び補助ローラ54の下方支持部43を基準とする高さ位置H542(図6参照)を取得する。
【0041】
傾斜ローラ用センサ65は、傾斜ローラ55の摩耗量及び傾斜ローラ55の下方支持部43を基準とする高さを監視するために設けられている。傾斜ローラ用センサ65は、固定位置から傾斜ローラ55の外周面までの距離を測定することにより、傾斜ローラ55の外径H551(図6参照)及び傾斜ローラ55の下方支持部43を基準とする高さ位置H552(図6参照)を取得する。
【0042】
第一給電コア用センサ67Aは、給電コア57の上面57aの下方支持部43を基準とする高さを監視するために設けられている。第一給電コア用センサ67Aは、固定位置から給電コア57の上面57aまでの距離を測定することにより、給電コア57の上面57aの下方支持部43を基準とする高さ位置H571(図6参照)を取得する。
【0043】
第二給電コア用センサ67Bは、給電コア57におけるコアの有無及びコアの浮きを監視するために設けられている。第二給電コア用センサ67Bは、例えば、コアの有無を確認するために限定反射センサが用いられ、コアの浮きを確認するために測距センサが用いられる。
【0044】
LDM用センサ68は、LDM59の下方支持部43を基準とする高さを監視するために設けられている。LDM用センサ68は、固定位置からLDM59の上面59aまでの距離を測定することにより、LDM59の下方支持部43を基準とする高さ位置H592(図6参照)を取得する。
【0045】
誘導コア用センサ69は、搬送車6の本体部7に設けられた誘導コア37が通信可能な状態であるのか否かを監視するために設けられている。誘導コア用センサ69は、例えば、通信線が内蔵されたプレート状のセンサであり、内蔵された通信線で誘導コア37からの信号が正常に受信できるかを確認する。
【0046】
制御装置80は、測定ユニット160における各測定部60(すなわち上述した各センサ)と通信可能に設けられている。制御装置80は、CPUと、RAM及びROM等の主記憶部と、ハードディスク、フラッシュメモリ等に例示される補助記憶部としての記憶部83と、キーボード及びマウス等の入力部(図示せず)と、出力部の一例としての表示装置(報知部)85と、を有する。CPUと、RAM及びROM等の主記憶部とからなる特定部81A及び判定部81Bは、CPU、主記憶部等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもと実行される。
【0047】
特定部81Aは、測定部60としての上記センサによって測定対象箇所が測定された搬送車6を特定する。搬送車6が通常運転中であれば、コントローラ90は各搬送車6からの報告を受けて各搬送車6の現在位置を常に把握している。このため、コントローラ90は、測定対象箇所が測定された搬送車6を容易に特定することができる。また、例えば、昇降レールを介して地上側軌道で測定する場合には、測定された搬送車6の号車番号シール等をカメラで読み取ったり、測定された搬送車6のIDタグ等をリーダーで読み取って搬送車6を特定するようにしてもよい。
【0048】
判定部81Bは、測定部60によって取得された測定結果と、記憶部83に記憶された基準値とに基づいて測定対象箇所の状態に関する情報を判定する。例えば、判定部81Bは、測定結果が所定値を超えたときにその旨を表示装置85に表示させる。また、判定部81Bは、記憶部83に記憶された測定結果に基づいて算出される変化率が所定値を超えたときにその旨を表示装置85に表示させる。
【0049】
判定部81Bは、導入軌道4Bに配置された測定ユニット160から取得された測定結果が所定値を超えているときにその旨を表示装置85に表示させるだけでなく、測定ユニット160において当該搬送車6の走行を停止させる。
【0050】
記憶部83は、測定部によって測定された測定結果と特定部81Aによって特定された特定結果とを関連付けて記憶する。また、記憶部83は、搬送車6ごとの測定結果が時系列で記憶する。例えば、走行ローラ用センサ61によって取得された走行ローラ51の測定値は、記憶部83によって時系列で記憶されている。
【0051】
表示装置85は、判定部81Bによって測定結果と基準値とに基づいて判定される測定対象箇所の状態に関する情報を表示させる。具体的には、表示装置85は、判定部81Bによって、測定結果が所定値を超えたと判定されたとき、その旨を表示する。また、表示装置85は、判定部81Bによって、測定結果の変化率が所定値を超えたと判定されたとき、その旨を表示する。
【0052】
上述した構成の測定ユニット160は、搬送車6が通過する都度、搬送車6の測定対象箇所を測定し、測定データを取得してもよいし、例えば、所定期間ごとに測定データを取得してもよい。また、測定ユニット160は、所定の走行距離を走行した搬送車6のみから測定データを取得してもよい。また、導入軌道4Bに配置された測定ユニット160では、搬送車6の使用を開始するときに搬送車6における各測定箇所の初期値を取得することができる。
【0053】
次に、上記実施形態の搬送車システム1の作用効果について説明する。上記実施形態の搬送車システム1には、軌道4沿いの一部に搬送車6の走行ローラ51等の測定対象箇所を測定する走行ローラ用センサ61等の測定部が設けられているので、製造現場において稼働中(走行中)の搬送車6から測定対象箇所を測定することができる。すなわち、人手を介することなく測定対象箇所の測定値を入手できる。また、搬送車システム1には複数の搬送車6が走行しているが、測定対象箇所が測定された搬送車6が特定部81Aによって特定されるので、その測定結果は搬送車6ごとに記憶される。これにより、作業者は、搬送車6ごとの測定値に基づいて、搬送車6ごとに適切なタイミングでメンテナンスすることができる。この結果、各搬送車6のメンテナンス作業を効率化することができる。
【0054】
上記実施形態の搬送車システム1では、測定結果が所定値を超えたときにその旨を報知する。例えば、部品交換又は調整が必要となる所定値を予め設定すれば、部品交換又は調整が必要となる搬送車6が自動的に報知される。
【0055】
上記実施形態の搬送車システム1では、記憶部83は、測定値の変化率が所定値を超えたときにその旨を報知する。例えば、部品交換又は調整が必要となる変化率を予め設定すれば、部品交換又は調整が必要となる搬送車6が自動的に報知される。これにより、搬送車6ごとに測定対象箇所の初期値が異なる場合であっても、搬送車6に異常が有ることを適切に判定することができる。
【0056】
上記実施形態の搬送車システム1では、本線軌道4Aに測定ユニット160が設けられるので、製造現場において稼働中(走行中)の搬送車6から測定対象箇所を測定することができる。更に、導入軌道4Bに測定ユニット160が設けられるので、稼働前の搬送車6の初期値を測定できたり、導入軌道4Bにおいて搬送車6を稼働させることができない初期不良又は整備不良等を事前に検知できたりする。
【0057】
上記実施形態の搬送車システム1の専用軌道140は、走行部50を左右方向に押し付ける。すなわち、一対の側方支持部45,45は、走行する搬送車6のサイドローラ52,52の両方に接触する。この構成では、走行部50を同じ体勢に維持した状態で、測定対象箇所を測定することができるので、測定精度を高めることができる。
【0058】
上記実施形態の搬送車システム1では、専用軌道140が、通常の軌道4とは異なり、下方支持部43、側方支持部45、給電部47、及び磁気プレート49がフレーム41に掛け渡されるような構成となっている(フレーム状に構成されている)ので、専用軌道140の内側を走行する走行部50を視認しやすい。すなわち、上記実施形態の搬送車システム1では、各測定対象箇所を測定する各測定部60を適切な位置に設置し易い。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の一側面は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
上記実施形態の測定ユニット160では、測定ユニット160において走行部50の体勢を安定させる例として、軌道4の一対の側面部40C,40Cの左右方向の距離W1よりも短く設定された、一対の側方支持部45、45を設ける例を挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、図7に示されるように、一対の側方支持部(検査板)245,245は、左右方向に移動可能に設けられると共に、一対の側方支持部245,245のそれぞれを内側に向かって荷重を作用させるバネ部材246,246が設けられていてもよい。この構成では、上記実施形態と同様に、走行部50の体勢を安定させることができる。更に、本変形例の構成では、サイドローラ52が摩耗している場合であっても、安定的に走行部50の体勢を安定させることができる。
【0061】
また、変形例に係る測定ユニット160において、一対の側方支持部245,245によって押圧されるサイドローラ52を測定するときには、サイドローラ用センサ62によってサイドローラ52の外周面を測定する方法に代えて、サイドローラ52を押圧する一対の側方支持部245,245の位置をサイドローラ用センサ62に計測させてもよい。この場合であっても、サイドローラ52の摩耗量を間接的に計測することができる。更に、この方法では、サイドローラ用センサ62から見て計測し難い、部品が複雑に配置される走行部50であっても、確実な計測が可能になる。
【0062】
また、バネ部材246,246によって一対の側方支持部245,245を左右方向に移動させる構成に代えて、移動機構(図示しない)によって一対の側方支持部245,245を左右方向に移動させる構成としてもよい。この場合は、移動機構のモータの回転数等に基づいて、一対の側方支持部245,245の移動量を取得し、当該移動量からサイドローラ52の摩耗量を間接的に計測してもよい。
【0063】
また、上記実施形態及び変形例では、一対の側方支持部45、45(245,245)は、サイドローラ52の外周面を押圧することによって走行部50を安定させたが、他の部材、例えば、分岐ローラ53の外周面を押圧したり、走行ローラ51の側面を押圧したりしてもよい。
【0064】
上記実施形態及び変形例では、測定ユニット160を構成する軌道として専用軌道140を採用した例を挙げて説明したが、通常の軌道4であってもよい。
【0065】
上記実施形態及び変形例では、測定部60と専用軌道140とがユニット化された測定ユニット160を例として説明したが、既設の軌道4に測定部60を設置する構成としてもよい。
【0066】
上記実施形態及び変形例では、走行部50の測定対象箇所を測定するために各種センサを採用した例を挙げて説明したが、例えば、これに代えて又は加えてカメラ等の撮像装置を用いてもよい。また、上記測定部60は、測定対象箇所ごとに専用のセンサが設けられる例を挙げて説明したが、一つのセンサが複数の測定対象箇所を測定する構成としてもよい。
【0067】
上記実施形態では、搬送車6を吊り下げて走行させるための軌道4に適用した例を説明したが、本発明の一側面は、地面に配置される軌道を搬送車が走行する搬送車システムにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…搬送車システム、4…軌道、4A…本線軌道(本線経路)、4B…導入軌道(導入経路)、6…搬送車(天井搬送車)、35…制御部、43…下方支持部、45…側方支持部、47…給電部、49…磁気プレート、50…走行部、60…測定部、80…制御装置、81A…特定部、81B…判定部、83…記憶部、85…表示装置(報知部)、140…専用軌道、160…測定ユニット、245…側方支持部、246…バネ部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7