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  • 特許-内燃機関の制御方法および制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】内燃機関の制御方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20221109BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20221109BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20221109BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20221109BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/44 ZHV
B60K6/46
B60W20/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021513014
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 IB2019000415
(87)【国際公開番号】W WO2020208391
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】木村 容康
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014071(JP,A)
【文献】特開2010-168916(JP,A)
【文献】特表2010-531957(JP,A)
【文献】特開2010-162920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量コンプレッサを用いたターボチャージャを有する内燃機関によって発電用モータジェネレータを発電し、この発電による電力で走行用モータジェネレータを駆動して走行するハイブリッド車両における、内燃機関の制御方法であって、
始動要求があったときに、前記発電用モータジェネレータによって内燃機関を目標回転数までモータリングし、
前記モータリング中に、前記可変容量コンプレッサの下流側に位置する流量制限手段によって、吸気系から排気系へと通流する吸気の量を減少補正し、
前記可変容量コンプレッサを小容量に制御する、内燃機関の制御方法。
【請求項2】
前記可変容量コンプレッサの上流側に設けられた流量検出手段によって、前記可変容量コンプレッサを通過する吸入空気量を検出し、
前記可変容量コンプレッサの下流側に設けられた圧力検出手段によって、前記可変容量コンプレッサの下流側の吸気圧力を検出し、
前記吸入空気量および前記吸気圧力に基づいて前記可変容量コンプレッサを小容量に制御する、請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項3】
前記可変容量コンプレッサの下流側に設けられた温度検出手段によって、前記可変容量コンプレッサの下流側の吸気温度を検出し、
前記吸気温度が高いほど前記可変容量コンプレッサの容量が小さくなるように前記可変容量コンプレッサを制御する、請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項4】
前記可変容量コンプレッサの容量を、制御可能な最小の容量に制御する、請求項に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項6】
内燃機関によって発電用モータジェネレータを発電し、この発電による電力で走行用モータジェネレータを駆動して走行するハイブリッド車両において、吸気系と排気系との間に配置され、容量を変更可能な可変容量コンプレッサが前記吸気系に設けられたターボチャージャと、前記容量を変更する可変機構と、前記可変容量コンプレッサの下流側に位置する流量制限機構と、を有した内燃機関の制御装置であって、
始動要求があったときに前記発電用モータジェネレータによって内燃機関を目標回転数までモータリングし、該モータリング中に、前記吸気系から前記排気系へ通流する吸気の量を前記流量制限機構によって減少補正し、前記可変容量コンプレッサを前記可変機構によって小容量に制御する、内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両において、ターボチャージャのコンプレッサが可変容量である内燃機関の制御方法および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行用駆動源として内燃機関および電動機を有したハイブリッド車両が開示されている。このハイブリッド車両では、内燃機関をモータリングするための所定の条件が成立したときに、電動機は、内燃機関の運転時に目標となる回転数である目標回転数まで内燃機関をモータリングしている。
【0003】
特許文献2は、吸気系と排気系との間に配置され、容量を変更可能な可変容量コンプレッサが吸気系に設けられたターボチャージャを開示している。なお、特許文献2は、内燃機関のモータリング時に可変容量コンプレッサを制御することは開示していない。
【0004】
特許文献1のように内燃機関のモータリングを実施すると、排気系に設けられた排気触媒に、吸気が大量に流入し、該吸気中の酸素が排気触媒に蓄積する。このため、内燃機関の運転直後の触媒性能が低下し、排気触媒の温度も低下することから、排気組成が一時的に悪化する虞があった。
【0005】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、内燃機関の運転直後における排気組成の一時的な悪化を抑制することが可能な内燃機関の制御方法および制御装置を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-203324号公報
【文献】特開2006-112323号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ハイブリッド車両において、ターボチャージャのコンプレッサが可変容量である内燃機関の制御方法に関し、始動要求があったときに、発電用モータジェネレータによって内燃機関を目標回転数までモータリングし、該モータリング中に、可変容量コンプレッサの下流側に位置する流量制御手段によって、吸気系から排気系へと通流する吸気の量を減少補正し、可変容量コンプレッサを小容量に制御する。
【0008】
本発明によれば、内燃機関のモータリング中に吸気中の酸素が排気触媒に蓄積し難くなり、内燃機関の運転直後における排気組成の一時的な悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施例のシリーズハイブリッド車両の構成説明図である。
図2】内燃機関の構成説明図である。
図3】一実施例の可変容量コンプレッサの容量のフィードバック制御を示すタイムチャートである。
図4】一実施例の可変容量コンプレッサの容量のフィードバック制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施例について説明する。
【0011】
図1は、一実施例のシリーズハイブリッド車両1の構成を概略的に示している。このシリーズハイブリッド車両1は、主に発電機として動作する発電用モータジェネレータ2と、この発電用モータジェネレータ2を発電要求に応じて駆動する発電用内燃機関として用いられる内燃機関3と、主にモータとして動作して駆動輪4,4を駆動する走行用モータジェネレータ5と、発電した電力を一時的に蓄えるバッテリ6と、該バッテリ6とモータジェネレータ2,5との間で電力変換を行うインバータ装置7と、を備えて構成されている。発電用モータジェネレータ2は、種々のギア等を有する減速機8を介して内燃機関3に接続されている。内燃機関3が発電用モータジェネレータ2を駆動することによって得られた電力は、インバータ装置7を介してバッテリ6に蓄えられる。走行用モータジェネレータ5は、種々のギア等から構成される減速機9を介して、駆動輪4,4用の駆動シャフト10に接続されている。走行用モータジェネレータ5は、バッテリ6の電力を用いてインバータ装置7を介して駆動制御される。走行用モータジェネレータ5の回生時の電力は、やはりインバータ装置7を介してバッテリ6に蓄えられる。なお、インバータ装置7は、発電用モータジェネレータ2用のインバータと走行用モータジェネレータ5用のインバータとを含んで構成されている。
【0012】
インバータ装置7は、車両の走行を司る車両側コントローラ11によって制御される。つまり、車両側コントローラ11によるインバータ装置7の制御を介してモータジェネレータ2,5の動作が制御される。車両側コントローラ11には、車両のアクセル開度や車速、ブレーキ操作量等の信号が入力され、かつバッテリ6の充電状態(いわゆるSOC)を示す信号が入力されている。なお、充電状態(SOC)は、バッテリ6の端子電圧等に基づいて検出される。
【0013】
また、内燃機関3は、エンジンコントローラ12によって制御される。このエンジンコントローラ12と車両側コントローラ11とは車両内ネットワーク13を介して接続されており、互いの信号の授受を行っている。発電用モータジェネレータ2を駆動する内燃機関3は、エンジンコントローラ12を介して、バッテリ6の充電状態(SOC)等を含む車両側からの発電要求に応じて運転される。つまり、車両のアクセルペダル開度や車速等に応じて車両側コントローラ11からエンジンコントローラ12が発電要求を受けると、その発電要求に応じて内燃機関3が制御される。なお、車両側コントローラ11とエンジンコントローラ12とが一つのコントローラとして統合された構成であっても良い。
【0014】
図2は、内燃機関3のシステム構成を示した構成説明図である。この内燃機関3は、4つの気筒14を有した筒内直噴型内燃機関であって、気筒14内に燃料を噴射する図示せぬ燃料噴射弁と点火プラグ15が気筒14毎に設けられている。上記燃料噴射弁の噴射量および噴射時期、並びに点火プラグ15の点火時期は、エンジンコントローラ12からの制御信号によって制御される。各気筒14は、図示せぬ一対の吸気弁によって開閉作動される吸気ポート16と、図示せぬ一対の排気弁によって開閉作動される排気ポート17とを有している。吸気弁および排気弁の開閉時期は、吸気側および排気側にそれぞれ設けられた図示せぬ可変バルブタイミング機構(VTC)によって制御される。また、内燃機関3は、過給機としてターボチャージャ18を備えている。
【0015】
内燃機関3には、吸気通路19と排気通路20とが接続されている。
【0016】
吸気ポート16に接続される吸気通路19には、吸入空気量を制御するスロットルバルブ21が設けられている。このスロットルバルブ21は、例えば電動モータ等のアクチュエータを有しており、エンジンコントローラ12からの制御信号によって、その開度が制御されている。吸気通路19のスロットルバルブ21よりも上流側には、ターボチャージャ18の可変容量コンプレッサ18aが介装されている。可変容量コンプレッサ18aには、例えば電動モータ等のアクチュエータを有した可変機構22が設けられており、この可変機構22の制御によって可変容量コンプレッサ18aの入口側の通路面積を拡大または縮小することで、可変容量コンプレッサ18aの容量を変更する。つまり、可変容量コンプレッサ18aは、可変機構22の制御によって、トリム(可変容量コンプレッサ18aの入口径の2乗を可変容量コンプレッサ18aの外径(コンプレッサホイールの外径)の2乗で除算したもの)の大小で示される容量を変更する。可変機構22は、エンジンコントローラ12へ送信される後述する吸入空気量Qの信号、吸気圧力Pの信号や吸気温度Tの信号によって制御される。
【0017】
また、吸気通路19の可変容量コンプレッサ18aよりも上流側には、吸入空気量Qを検出するエアフロメータ(流量検出手段)23が設けられている。エアフローメータ23によって検出された吸入空気量Qの信号は、エンジンコントローラ12へ送信される。また、吸気通路19の可変容量コンプレッサ18aよりも下流側で、かつスロットルバルブ21よりも上流側には、可変容量コンプレッサ18aにより圧縮された吸入空気の吸気圧力Pおよび吸気温度Tを検出するT-MAPセンサ(圧力検出手段、温度検出手段)24が設けられている。T-MAPセンサ24によって検出された吸気圧力Pの信号および吸気温度Tの信号は、エンジンコントローラ12へ送信される。また、吸気通路19のスロットルバルブ21よりも下流側には、可変容量コンプレッサ18aにより圧縮された吸入空気を冷却するインタークーラ25が設けられている。
【0018】
排気ポート17に接続される排気通路20には、三元触媒からなる排気触媒26が設けられている。排気通路20の排気触媒26よりも上流側には、ターボチャージャ18のタービン18bが設けられている。さらに、排気通路20には、タービン18bを迂回してタービン18bの上流側と下流側とを接続する排気バイパス通路27が設けられている。排気バイパス通路27の下流側端部は、排気触媒26よりも上流側の位置で排気通路20に接続されている。
【0019】
排気バイパス通路27には、タービン18bへ導かれる排気量を調整する電動のウエストゲートバルブ28が設けられている。ウエストゲートバルブ28の開度は、エンジンコントローラ12からの制御信号によって制御される。
【0020】
排気通路20のタービン18bよりも下流側で、かつ排気触媒26よりも上流側には、排気の空燃比を検出する空燃比センサ29が設けられている。空燃比センサ29によって検出された空燃比は、エンジンコントローラ12へ送信される。
【0021】
次に、図3のタイムチャートを参照して、内燃機関3の始動に際して発電用モータジェネレータ2によって所定の目標回転数まで内燃機関3のモータリングを行うときに実施される、可変容量コンプレッサ18aの容量のフィードバック制御を説明する。このタイムチャートは、始動要求から内燃機関3のモータリング中における、機関回転数Nと、スロットルバルブ(THV)21の開度と、ウエストゲートバルブ(WGV)28の開度と、可変バルブタイミング機構(VTC)による吸気弁閉時期と、可変容量コンプレッサ18aの下流側の吸気圧力Pと、吸入空気量Qと、可変容量コンプレッサ18aのトリムの大きさの変化を示している。なお、可変バルブタイミング機構(VTC)により吸気弁閉時期を制御する代わりに、排気弁閉時期を制御しても良い。また、吸気弁閉時期および排気弁閉時期の双方を制御するようにしても良い。
【0022】
時間t1において、例えば充電状態(SOC)の低下による発電要求が生じ、内燃機関3のモータリングの開始の基準となるフラグが立つと、発電用モータジェネレータ2によって所定の目標回転数へ向けて内燃機関3のモータリングを開始する。これにより、機関回転数Nがゼロから所定の目標回転数へ向かって増加し、吸気(新気)が吸気通路19から排気通路20へ通流する。そして、この吸気の通流に伴い、T-MAPセンサ24によって検出される吸気圧力Pと、エアフロメータ23によって検出される吸入空気量Qとが増加し始める。また、吸気は、排気通路20に設けられた空燃比センサ29を通過し、排気触媒26に流入する。
【0023】
なお、内燃機関3のモータリング中に空燃比センサ29に流れる吸気つまり新気の状態を学習するようにしても良い。これにより、実際に学習した吸気の状態を空燃比の算出の基準とした空燃比制御が可能となり、内燃機関3の目標空燃比と実空燃比との誤差を小さくすることができる。
【0024】
さらに、時間t1では、モータリングの開始と実質的に同時に、可変容量コンプレッサ18aよりも下流側に設けられた流量制限機構(流量制限手段)、つまりスロットルバルブ21、ウエストゲートバルブ28および可変バルブタイミング機構の作動を開始する。より詳細には、スロットルバルブ21の開度を小さくし、ウエストゲートバルブ28の開度を小さくし、さらに、可変バルブタイミング機構により吸気弁閉時期を早閉じにする。これにより、排気触媒26に流入する吸気が減少する。スロットルバルブ21、ウエストゲートバルブ28および可変バルブタイミング機構の作動を開始したら、可変機構22の動作により、可変容量コンプレッサ18aの入口側の通路面積を狭くしてトリムをある程度小さくする。つまり、可変機構22の動作により、可変容量コンプレッサ18aをある程度小さい容量に制御する。スロットルバルブ21およびウエストゲートバルブ28の開度および可変バルブタイミング機構による吸気弁閉時期は、所定の目標値に維持される。なお、スロットルバルブ21、ウエストゲートバルブ28および可変バルブタイミング機構は、吸入空気量Qの制限のために必ずしも3つ全てを作動する必要はなく、スロットルバルブ21等のうち任意の1つまたは2つを作動するようにしても良い。
【0025】
次に、時間t1から僅かに遅れた時間t2において、吸気圧力Pおよび吸入空気量Qに基づいて、可変容量コンプレッサ18aの容量のフィードバック制御を開始する。より詳細には、吸入空気量Qに対して吸気圧力Pが過度に高い、つまり可変容量コンプレッサ18aの上流側と下流側との圧力差が過度に大きい場合には、可変容量コンプレッサ18aのインペラから空気流が剥離し、サージが生じる。可変容量コンプレッサ18aの容量のフィードバック制御では、吸入空気量Qおよび吸気圧力Pに基づいて、サージが生じない程度に可変容量コンプレッサ18aのトリムを小さくする。つまり、吸入空気量Qに対して吸気圧力Pが高い場合には、サージが生じない程度に可変容量コンプレッサ18aの容量をより小さい容量に変更する。このフィードバック制御は、例えば吸入空気量Qおよび吸気圧力Pと可変容量コンプレッサ18aのトリムとの相関関係を示す図示せぬマップを参照して可変機構22を駆動することにより行われる。吸気圧力Pおよび吸入空気量Qは、例えば外乱等の要因により変動しており、このような変動が生じる毎に、可変容量コンプレッサ18aの容量のフィードバック制御によってトリムが変更される。また、スロットルバルブ21等の作動に伴い可変容量コンプレッサ18a下流側の吸気圧力Pが上昇するから、吸気圧力Pに応じて可変容量コンプレッサ18aの基準となるトリムを決定し、吸気圧力Pが高くなるほど可変容量コンプレッサ18aのトリムを小さくするようにしても良い。
【0026】
また、吸気圧力Pや吸入空気量Qを用いる代わりに、T-MAPセンサ24によって検出される吸気温度Tを用いて、可変容量コンプレッサ18aの容量のフィードバック制御を行うようにしても良い。この場合には、吸気温度Tが高いほど、可変容量コンプレッサ18aのトリムを小さくする。
【0027】
さらに、吸気圧力P、吸入空気量Qや吸気温度Tを用いて可変容量コンプレッサ18aの容量のフィードバック制御を行う代わりに、スロットルバルブ21、ウエストゲートバルブ28および可変バルブタイミング機構の作動時に、可変容量コンプレッサ18aのトリムを、スロットルバルブ21等による流量制限を行っていないときよりも小さい所定の大きさのトリムに変更しても良い。また、所定の大きさのトリムに変更する代わりに、可変容量コンプレッサ18aのトリムを、可変機構22によって制御可能な最小のトリムに変更しても良い。つまり、可変容量コンプレッサ18aの容量を可変機構22によって制御可能な最小の容量に変更しても良い。
【0028】
そして、図3には図示していないがフィードバック制御開始後、機関回転数Nが目標回転数に到達した後の適宜な時期に、各気筒14内に燃料を噴射し、かつ点火することで、内燃機関3の始動が行われる。
【0029】
次に、図4のフローチャートを参照して、内燃機関3のモータリング中の可変容量コンプレッサ18aの容量のフィードバック制御を説明する。ステップS1において、エンジンコントローラ12は、内燃機関3の始動要求があるか否かを判定する。ここで、上記始動要求としては、充電状態(SOC)の低下や、電力負荷による発電要求等が挙げられる。この始動要求の判定は、繰り返し行われている。
【0030】
ステップS1において始動要求がある場合には、ステップS2に進み、発電用モータジェネレータ2によって内燃機関3のモータリングを開始する。これにより、機関回転数Nがゼロから所定の目標回転数に向けて増加し、吸気が吸気通路19から排気通路20へ通流する。
【0031】
そして、ステップS3において、エンジンコントローラ12から出力された制御信号によって、スロットルバルブ(THV)21、ウエストゲートバルブ(WGV)28および可変バルブタイミング機構(VTC)を作動する。つまり、スロットルバルブ21およびウエストゲートバルブ28の開度を絞り、可変バルブタイミング機構により吸気弁を早閉じにする。これにより、吸気通路19から排気通路20へ通流する吸気の量が減少補正される。このため、可変容量コンプレッサ18aの下流側において、吸気圧力Pが上昇する。
【0032】
次に、ステップS4において、エンジンコントローラ12から出力された制御信号によって、可変機構22を動作し、可変容量コンプレッサ18aのトリムをある程度小さく変更する。
【0033】
そして、ステップS5において、T-MAPセンサ24によって吸気圧力Pを検出し、エアフロメータ23によって吸入空気量Qを検出する。
【0034】
吸気圧力Pおよび吸入空気量Qの検出後には、ステップS6において、吸気圧力Pおよび吸入空気量Qと可変容量コンプレッサ18aのトリムとの相関関係を示す上述のマップを参照して、可変容量コンプレッサ18aの容量のフィードバック制御を行う。このフィードバック制御では、吸入空気量Qに対して吸気圧力Pが大きくなるほど可変容量コンプレッサ18aのトリムを小さくする。これにより、可変容量コンプレッサ18aに取り込まれる吸入空気の流速が上昇するため、サージが抑制される。
【0035】
上記フィードバック制御の開始後、ステップS7において、各気筒14内に燃料を噴射し、空気と燃料との混合気体に点火することで、内燃機関3を始動する。
【0036】
また、ステップS1において、始動要求が無い場合には、ステップS2~S7を経由せずに、フローを終了する。
【0037】
上記のように、本実施例では、内燃機関3のモータリング中に、スロットルバルブ21およびウエストゲートバルブ28の開度が絞られ、さらに、可変バルブタイミング機構により吸気弁を閉じるタイミングが早閉じにされる。このため、吸気の流れが可変容量コンプレッサ18aの下流側において制限され、排気触媒26へ流入する吸気の量が減少する。これにより、吸気中の酸素が排気触媒26に堆積し難くなる。このため、内燃機関の運転直後の触媒性能の低下が生じ難くなり、排気触媒の温度の低下も生じ難くなる。従って、排気組成の一時的な悪化を抑制することができる。
【0038】
また、本実施例では、発電用モータジェネレータ2によって所定の目標回転数まで内燃機関3をモータリングした後に、燃料噴射および点火を行い、内燃機関3を始動する。
【0039】
仮に、一般的な内燃機関のように、例えばスターターモータにより内燃機関をクランキングした後に点火し燃焼を行うようにすると、内燃機関の燃焼状態が安定するまでに比較的長い時間がかかってしまう。
【0040】
しかし、本実施例のように目標回転数までモータリングした状態で内燃機関3を始動することにより、短時間で内燃機関3の燃焼状態を安定させることができる。
【0041】
また、本実施例では、スロットルバルブ21等を作動して可変容量コンプレッサ18aの下流側の吸気の量を減少補正するときに、可変容量コンプレッサ18aが可変機構22によって小さい容量に制御される。すなわち、スロットルバルブ21等により吸気の流れを制限すると、可変容量コンプレッサ18aの下流側の吸気圧力Pが上昇し、この結果、可変容量コンプレッサ18aの上流側と下流側との間の圧力差が大きくなる。これにより、可変容量コンプレッサ18aのインペラから空気流が剥離し、サージが生じてしまう。このサージを抑制するために、本実施例では、吸気の量の減少補正に伴って可変容量コンプレッサ18aの入口の通路面積を小さくすることで、可変容量コンプレッサ18aの上流側と下流側の圧力差を小さくする。従って、空気流の剥離による可変容量コンプレッサ18aのサージを抑制することができる。
図1
図2
図3
図4