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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ボイラ及びファウリング抑制方法
(51)【国際特許分類】
   F23J 7/00 20060101AFI20221109BHJP
   F23C 1/00 20060101ALI20221109BHJP
   F22B 37/48 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
F23J7/00
F23C1/00 301
F22B37/48 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021514157
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2020016370
(87)【国際公開番号】W WO2020213587
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2019078547
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】和田 知歌子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 俊一朗
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04706579(US,A)
【文献】特許第5713813(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/48-37/56
F23J 3/00,7/00
F23C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉とスピネル族化合物供給部とを備えるボイラであって、
前記ボイラは、前記火炉中でバイオマス固体燃料を含むバイオマス含有燃料を燃焼させたとき、前記ボイラ内のガス温度が400~1000℃の酸化雰囲気下で、伝熱管表面温度が300~650℃で発生するファウリングを抑制
前記バイオマス含有燃料の燃焼の際に前記スピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給され
前記スピネル族化合物は、MgAl 、FeAl 、ZnAlO 、MnAl 、FeFe 3+ 、MgFe 3+ 及びMnFe 3+ より選択される少なくとも1種の金属酸化物であるボイラ。
【請求項2】
前記火炉は、
前記バイオマス含有燃料の燃焼で生成する燃焼ガスが上昇する縦型の火炉本体と、
前記火炉本体の側面に設けられたバーナー部と、
前記火炉本体の側面でかつ前記バーナー部より上方に設けられ、前記火炉本体内に空気を供給するオーバーエアポート部と、
を備え、
前記ボイラは、さらに、
前記バイオマス含有燃料を粉砕するミルと、
前記ミルに前記バイオマス含有燃料を供給するミル供給ラインと、
前記ミルから排出されたバイオマス含有燃料を前記バーナー部に供給するバーナー部用燃料供給ラインと、
前記オーバーエアポート部に空気を供給するOAP供給ラインと、
を備え、
前記火炉本体は、頂部を備え、
前記スピネル族化合物供給部は、前記ミル供給ライン、前記バーナー部用燃料供給ライン、前記OAP供給ライン、及び前記火炉本体の頂部より選択される1種以上の部分に設けられる請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記火炉に供給される前記バイオマス含有燃料の単位時間当たり質量Mv[kg/Hr]と、前記火炉に供給される前記スピネル族化合物の単位時間当たり質量Ms[kg/Hr]との比率Mv:Msが100:10~0.01の範囲内にある請求項1又は2に記載のボイラ。
【請求項4】
火炉を備えたボイラを用い、前記火炉中でバイオマス固体燃料を含むバイオマス含有燃料を燃焼させたとき、前記ボイラ内のガス温度が400~1000℃の酸化雰囲気下で、伝熱管表面温度が300~650℃で発生するファウリングを抑制するファウリング抑制方法であって、
前記ボイラは、スピネル族化合物供給部をさらに備え、
前記バイオマス含有燃料の燃焼の際に前記スピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給され
前記スピネル族化合物は、MgAl 、FeAl 、ZnAlO 、MnAl 、FeFe 3+ 、MgFe 3+ 及びMnFe 3+ より選択される少なくとも1種の金属酸化物であるファウリング抑制方法。
【請求項5】
前記火炉に供給される前記バイオマス含有燃料の単位時間当たり質量Mv[kg/Hr]と、前記火炉に供給される前記スピネル族化合物の単位時間当たり質量Ms[kg/Hr]との比率Mv:Msが100:0.01~10の範囲内にある請求項に記載のファウリング抑制方法。
【請求項6】
前記火炉は、
前記バイオマス含有燃料の燃焼で生成する燃焼ガスが上昇する縦型の火炉本体と、
前記火炉本体の側面に設けられたバーナー部と、
前記火炉本体の側面でかつ前記バーナー部より上方に設けられ、前記火炉本体内に空気を供給するオーバーエアポート部と、
を備え、
前記ボイラは、さらに、
前記バイオマス含有燃料を粉砕するミルと、
前記ミルに前記バイオマス含有燃料を供給するミル供給ラインと、
前記ミルから排出されたバイオマス含有燃料を前記バーナー部に供給するバーナー部用燃料供給ラインと、
前記オーバーエアポート部に空気を供給するOAP供給ラインと、
を備え、
前記火炉本体は、頂部を備え、
前記スピネル族化合物供給部は、前記ミル供給ライン、前記バーナー部用燃料供給ライン、前記OAP供給ライン、及び前記火炉本体の頂部より選択される1種以上の部分に設けられる請求項4又は5に記載のファウリング抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボイラ及びファウリング抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭を含む固体燃料を用いたボイラが知られている。このボイラでは、燃焼した石炭から灰が発生し、灰が燃焼ガスによって流動する。このため、上記ボイラでは、灰が、火炉の壁面、及び火炉上方から下流にわたって配置された伝熱管群等に付着して堆積し、スラッギング、ファウリング等が生じる。
【0003】
ここで、スラッギングとは、火炎からの輻射を受ける伝熱面に生じる灰粒子の付着である。スラッギングは、通常、還元雰囲気中、ガス温度が1000℃以上の高温域で生じる。また、ファウリングとは、燃焼時に一旦揮発した灰分が凝縮することにより、伝熱面に生じる灰粒子の付着である。ファウリングは、通常、酸化雰囲気中、ガス温度400~1000℃の範囲で発生する。
【0004】
これに対し、特許文献1には、ボイラの灰付着抑制方法が開示されている。特許文献1に開示された灰付着抑制方法は、固体燃料の灰成分の組成と添加剤の組成とを予め測定し、固体燃料と添加剤との適切な混合比率を決定し、決定された混合比率の混合物をボイラに供給する方法である。
【0005】
例えば、特許文献1の各実施例では、微粉炭と添加剤との混合物について、N:80%、O:1%、CO:19%の比較的不活性な雰囲気中、1300℃で燃焼させ、灰の付着率を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5713813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された灰付着抑制方法は、実施例の雰囲気及び燃焼温度に鑑みると、スラッギングの抑制方法を開示するものと解される。このため、特許文献1には、ファウリングの効率的な抑制方法は開示されていない。
【0008】
本開示は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。本開示の目的は、ファウリングの発生を効率的に抑制する、ボイラ及びファウリング抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様に係るボイラは、火炉中でバイオマス固体燃料を含むバイオマス含有燃料を燃焼させたとき、ガス温度が400~1000℃の酸化雰囲気下で、伝熱管表面温度が300~650℃で発生するファウリングを抑制するボイラであって、前記ボイラは、火炉とスピネル族化合物供給部とを備え、前記バイオマス含有燃料の燃焼の際に前記スピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給される。
【0010】
本開示の第2の態様に係るボイラは、第1の態様に係るボイラにおいて、前記火炉は、前記バイオマス含有燃料の燃焼で生成する燃焼ガスが上昇する縦型の火炉本体と、前記火炉本体の側面に設けられたバーナー部と、前記火炉本体の側面でかつ前記バーナー部より上方に設けられ、前記火炉本体内に空気を供給するオーバーエアポート部と、を備え、前記ボイラは、さらに、前記バイオマス含有燃料を粉砕するミルと、前記ミルに前記バイオマス含有燃料を供給するミル供給ラインと、前記ミルから排出されたバイオマス含有燃料を前記バーナー部に供給するバーナー部用燃料供給ラインと、前記オーバーエアポート部に空気を供給するOAP供給ラインと、を備え、前記火炉本体は、頂部を備え、前記スピネル族化合物供給部は、前記ミル供給ライン、前記バーナー部用燃料供給ライン、前記OAP供給ライン、及び前記火炉本体の頂部より選択される1種以上の部分に設けられる。
【0011】
本開示の第3の態様に係るボイラは、第1又は第2の態様に係るボイラにおいて、前記スピネル族化合物は、MgAl、FeAl、ZnAlO、MnAl、FeFe3+ 、MgFe3+ 、MnFe3+ 、FeCr及びMgCrより選択される少なくとも1種の金属酸化物である。
【0012】
本開示の第4の態様に係るボイラは、第1~第3のいずれかの態様に係るボイラにおいて、前記火炉に供給される前記バイオマス含有燃料の単位時間当たり質量Mv[kg/Hr]と、前記火炉に供給される前記スピネル族化合物の単位時間当たり質量Ms[kg/Hr]との比率Mv:Msが100:10~0.01の範囲内にある。
【0013】
本開示の第5の態様に係るファウリング抑制方法は、火炉を備えたボイラを用い、前記火炉中でバイオマス固体燃料を含むバイオマス含有燃料を燃焼させたとき、ガス温度が400~1000℃の酸化雰囲気下で、伝熱管表面温度が300~650℃で発生するファウリングを抑制するファウリング抑制方法であって、前記ボイラは、スピネル族化合物供給部をさらに備え、前記バイオマス含有燃料の燃焼の際に前記スピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給される。
【0014】
本開示の第6の態様に係るファウリング抑制方法は、第5の態様に係るファウリング抑制方法において、前記スピネル族化合物は、MgAl、FeAl、ZnAlO、MnAl、FeFe3+ 、MgFe3+ 、MnFe3+ 、FeCr及びMgCrより選択される少なくとも1種の金属酸化物である。
【0015】
本開示の第7の態様に係るファウリング抑制方法は、第5又は第6の態様に係るファウリング抑制方法において、前記火炉に供給される前記バイオマス含有燃料の単位時間当たり質量Mv[kg/Hr]と、前記火炉に供給される前記スピネル族化合物の単位時間当たり質量Ms[kg/Hr]との比率Mv:Msが100:10~0.01の範囲内にある。
【0016】
本開示の第8の態様に係るファウリング抑制方法は、第5~第7のいずれかの態様に係るファウリング抑制方法において、前記火炉は、前記バイオマス含有燃料の燃焼で生成する燃焼ガスが上昇する縦型の火炉本体と、前記火炉本体の側面に設けられたバーナー部と、前記火炉本体の側面でかつ前記バーナー部より上方に設けられ、前記火炉本体内に空気を供給するオーバーエアポート部と、を備え、前記ボイラは、さらに、前記バイオマス含有燃料を粉砕するミルと、前記ミルに前記バイオマス含有燃料を供給するミル供給ラインと、前記ミルから排出されたバイオマス含有燃料を前記バーナー部に供給するバーナー部用燃料供給ラインと、前記オーバーエアポート部に空気を供給するOAP供給ラインと、を備え、前記火炉本体は、頂部を備え、前記スピネル族化合物供給部は、前記ミル供給ライン、前記バーナー部用燃料供給ライン、前記OAP供給ライン、及び前記火炉本体の頂部より選択される1種以上の部分に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るボイラを示す図である。
図2】実施例1で用いた縦型加熱炉試験システムを示す図である。
図3図2の範囲Bを拡大した図である。
図4図2に示す縦型加熱炉試験システムを構成する縦型加熱炉における燃焼時の温度分布を模式的に示すグラフである。
図5】灰、又は灰と添加剤との混合物の供給量と、灰付着量との関係を示すグラフである。
図6】灰粒子の粒子径と積算個数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて実施形態に係るボイラ及びファウリング抑制方法について詳細に説明する。
【0019】
[ボイラ]
はじめに、ボイラについて説明する。図1は、実施形態に係るボイラを示す図である。
【0020】
図1に示すボイラ1は、火炉10中でバイオマス固体燃料を含むバイオマス含有燃料を燃焼させたとき、ガス温度が400~1000℃の酸化雰囲気下で、伝熱管表面温度が300~650℃で発生するファウリングを抑制する装置である。ここで、伝熱管表面温度とは、火炉内に設置された蒸気の流れる配管の燃焼ガスと接する側の表面の温度を意味する。また、ボイラ1は、バイオマス含有燃料の燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給されることにより、上記ファウリングを抑制する装置である。
【0021】
ボイラ1の構成については後に詳述するが、簡単に説明する。ボイラ1は、火炉10とスピネル族化合物供給部とを備える。ここで、スピネル族化合物供給部とは、火炉10内にスピネル族化合物が供給される部分である。スピネル族化合物供給部は、ミル供給ライン75、バーナー部用燃料供給ライン85、OAP供給ライン15、及び火炉本体11の頂部12より選択される1種以上の部分に設けられる。
【0022】
このように、ボイラ1は、上記ファウリングを抑制するボイラであって、火炉10とスピネル族化合物供給部とを備え、前記バイオマス含有燃料の燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給される装置である。
【0023】
なお、図1では、ボイラ1が、ミル供給ライン75、バーナー部用燃料供給ライン85、OAP供給ライン15、及び火炉本体11の頂部12の4種の部分にスピネル族化合物供給部が設けられる一例を示している。しかし、ボイラ1の変形例として、これら4種の部分のうちの1種以上3種以下の部分にスピネル族化合物供給部が設けられる装置とすることが可能である。
【0024】
また、ボイラ1は、好ましくは、火炉10中でバイオマス含有燃料50を燃焼させたとき、ガス温度が800~900℃の酸化雰囲気下で、伝熱管表面温度が500~650℃のボイラ後伝部で発生するファウリングを抑制する装置である。以下、ボイラ1について詳述する。
【0025】
(バイオマス含有燃料)
はじめに、ボイラ1での燃焼に用いられるバイオマス含有燃料50について説明する。バイオマス含有燃料50は、バイオマス固体燃料を含む燃料である。バイオマス含有燃料50は、通常、バーナー部13での燃焼用の燃料として用いられる。
【0026】
バイオマス固体燃料としては、例えば、木質チップ、EFB、PKS、及びバークより選択される1種以上の燃料が用いられる。ここで、EFB(Empty Fruits Bunch)とは、パーム椰子空果房である。PKS(Palm Kemel Shell)とは、パーム椰子殻である。バークとは、樹皮である。
【0027】
本実施形態において、バイオマス含有燃料50は、バイオマス固体燃料のみからなる場合と、バイオマス固体燃料に加え微粉炭を含む場合とがある。上記のバイオマス含有燃料50の微粉末の大きさは、バイオマス含有燃料50がバイオマス固体燃料のみからなる場合と、バイオマス含有燃料50がバイオマス固体燃料に加え微粉炭を含む場合とのいずれの場合にも適用される。バイオマス固体燃料は、ボイラ1に設けられたミル80等での粉砕により微粉末化された後、バーナー部13に供給される。
【0028】
ボイラ1の通常運転時において、微粉末状のバイオマス含有燃料50は、バーナー部13より火炉10内に供給され、供給とほぼ同時に燃焼される。バイオマス含有燃料50は、燃焼により燃焼ガスを生成し、生成した燃焼ガスは縦型の火炉本体11内を上昇する。実施形態に係るボイラ1は、バイオマス含有燃料50の燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給されることができる構造になっている。
【0029】
(スピネル族化合物)
次に、スピネル族化合物について説明する。スピネル族化合物とは、スピネル型結晶構造を有する化合物である。実施形態に係るボイラ1では、バイオマス含有燃料50の燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給されることにより、ファウリングの発生を抑制することが可能である。
【0030】
スピネル族化合物としては、例えば、MgAl、FeAl、ZnAlO、MnAl、FeFe3+ 、MgFe3+ 、MnFe3+ 、FeCr及びMgCrより選択される少なくとも1種の金属酸化物が用いられる。
【0031】
なお、スピネル族化合物は、ボイラ1の複数個所のスピネル族化合物供給部から火炉10に供給されることがある。具体的には、スピネル族化合物を供給するスピネル族化合物供給部は、ミル80、ミル供給ライン75、バーナー部用燃料供給ライン85、OAP供給ライン15、及び火炉本体11の頂部12より選択される1種以上の部分に設けられることがある。スピネル族化合物がボイラ1の複数個所のスピネル族化合物供給部から火炉10に供給される場合は、火炉10に供給される各個所のスピネル族化合物の微粉末の積算分布径D50が、上記スピネル族化合物の微粉末の積算分布径D50の範囲内になるようにする。
【0032】
火炉10に供給されるバイオマス含有燃料の単位時間当たり質量Mv[kg/Hr]と、火炉10に供給されるスピネル族化合物の単位時間当たり質量Ms[kg/Hr]との比率Mv:Msが、通常100:10~0.01の範囲内にある。
【0033】
スピネル族化合物がボイラ1の複数個所のスピネル族化合物供給部から火炉10に供給される場合、上記Msは、複数個所のスピネル族化合物供給部から火炉10に供給されるスピネル族化合物の単位時間当たりの合計質量[kg/Hr]である。
【0034】
ボイラ1では、バイオマス含有燃料50は複数個のバーナー部13から火炉10に供給される。この場合、上記Mvは、複数個のバーナー部13から火炉10に供給されるバイオマス含有燃料50の単位時間当たりの合計質量[kg/Hr]である。
【0035】
(ボイラの構成)
次に、ボイラ1の構成について説明する。なお、ボイラ1において、スピネル族化合物を供給するスピネル族化合物供給部は、ミル供給ライン75、バーナー部用燃料供給ライン85、OAP供給ライン15、及び火炉本体11の頂部12より選択される1種以上の部分に設けられる。
【0036】
具体的には、ミル供給ライン75に設けられるスピネル族化合物供給部は、スピネル族化合物ミル上流供給部77であり、火炉10外に設けられる。また、バーナー部用燃料供給ライン85に設けられるスピネル族化合物供給部は、スピネル族化合物ミル下流供給部87であり、火炉10外に設けられる。さらに、OAP供給ライン15に設けられるスピネル族化合物供給部は、スピネル族化合物OAP供給部17であり、火炉10外に設けられる。また、火炉本体11の頂部12に設けられるスピネル族化合物供給部は、頂部供給部19であり、火炉10内に設けられる。各スピネル族化合物供給部については、火炉10内に設けられる構成と火炉10外に設けられる構成とに分けて後述する。
【0037】
ボイラ1は、火炉10と、火炉10の下流側に設けられた燃焼ガス水平移動部20と、燃焼ガス水平移動部20の下流側に設けられた燃焼ガス下降部30と、を備える。また、ボイラ1は、バイオマス含有燃料50を粉砕するミル80等を備える。
【0038】
<火炉>
火炉10は、バイオマス固体燃料を含むバイオマス含有燃料50を燃焼させることが可能な装置である。火炉10は、縦型の火炉本体11と、バーナー部13と、オーバーエアポート部14とを備える。また、火炉本体11は頂部12を備え、火炉本体11の頂部12には、スピネル族化合物供給部としての頂部供給部19が設けられる。
【0039】
なお、図1に示すボイラ1は、火炉10が水平部や下降部を有する一例であり、ボイラ1の構造は図1に示すボイラ1の構造に限定されない。例えば、ボイラ1は、火炉10が水平部や下降部を有さない、タワー型ボイラとすることができる。
【0040】
火炉本体11は、火炉本体11の内部の鉛直方向の長さが水平方向の幅より長い縦型構造を有する筒状構造体である。火炉本体11は、火炉本体11の内部において、バイオマス含有燃料50の燃焼で生成する燃焼ガスが火炉本体11の内部形状に沿って上昇する構造になっている。火炉本体11の頂部12には、バイオマス含有燃料50の燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給される頂部供給部19及び火炉頂部水管群41が設けられる。ここで、火炉本体11の頂部12とは、火炉本体11の天井を構成する部分を意味する。
【0041】
バーナー部13は、火炉本体11内においてバイオマス含有燃料50を燃焼させる装置である。具体的には、バーナー部13は、バイオマス含有燃料50の微粉末と空気とを含む混合物である燃料微粉末含有ガスを燃焼させることができる構造になっている。バーナー部13は、火炉本体11の側面に設けられ、火炉本体11の内部に燃料微粉末含有ガスを供給することができるようになっている。
【0042】
なお、バーナー部13は、燃料微粉末含有ガスに代えて、燃料微粉末含有ガスとスピネル族化合物の微粉末との混合物である燃料-スピネル含有ガスを供給することができるようになっている。燃料-スピネル含有ガスは、バイオマス含有燃料50の微粉末と空気とスピネル族化合物の微粉末とを含む混合物である。
【0043】
バーナー部13から供給される燃料微粉末含有ガス及び燃料-スピネル含有ガスの燃焼温度は、通常1200~1400℃と高温である。このため、400~1000℃で生じるファウリングは、火炉本体11内のバーナー部13の近傍では、通常、発生しない。ファウリングは、ガス温度が400~1000℃の酸化雰囲気下で、伝熱管表面温度が300~650℃である、バーナー部13よりも下流のボイラ後伝部で発生する。
【0044】
オーバーエアポート部14は、二段燃焼用の空気の供給口である。オーバーエアポート部14は、火炉本体11の側面でかつバーナー部13より上方に設けられ、火炉本体11内に空気を供給する。また、オーバーエアポート部14は、空気に代えて、スピネル族化合物の微粉末と空気とを含むスピネル微粉末含有ガスを供給することができるようになっている。
【0045】
<火炉10内に設けられるスピネル族化合物供給部>
[頂部供給部]
火炉10内において、火炉本体11の頂部12には、頂部供給部19が設けられる。頂部供給部19は、スピネル族化合物を火炉本体11の頂部12から火炉本体11内に供給するスピネル族化合物供給部である。すなわち、スピネル族化合物供給部としての頂部供給部19は、火炉本体11の頂部12に設けられている。
【0046】
スピネル族化合物供給部として頂部供給部19が用いられる場合、通常、バイオマス含有燃料の燃焼の際に、頂部供給部19から火炉本体11内にスピネル族化合物が供給される。火炉本体11内では、バイオマス含有燃料の燃焼で生じた灰と、スピネル族化合物とが反応して、アルミナシリケート塩やシリケート塩等を生成することにより、大きな粒径の灰が形成される。この大きな粒径の灰により、生成した灰の火炉10内への付着が抑制される。
【0047】
頂部供給部19は、スピネル族化合物を、スピネル族化合物のみの形態で、又はスピネル族化合物の微粉末と空気とを混合して得られたスピネル族化合物混合ガスの形態で、火炉10内に供給することができるようになっている。頂部供給部19の上流側には、通常、ミル等の粉砕手段が備えられない。このため、頂部供給部19を介してスピネル族化合物が供給される場合は、通常、微粉末状のスピネル族化合物が供給される。
【0048】
なお、頂部供給部19の上流側にミル等の粉砕部を備えてもよい。この場合、この粉砕部に供給されるスピネル族化合物としては、微粉末に限定されず、塊状のスピネル族化合物を用いることができる。なお、微粉末よりも大きな塊状等のスピネル族化合物を用いる場合、粉砕部から排出されて頂部供給部19に供給されるスピネル族化合物が微粉末になるように粉砕部で処理を行う。
【0049】
火炉本体11の頂部12でかつ頂部供給部19よりも下流側には、複数の水管40からなる火炉頂部水管群41が設けられる。ここで、下流とは、ボイラ1の通常運転時の燃焼ガスの流れ方向における下流を意味する。火炉頂部水管群41は、具体的には、火炉本体11の頂部12の内、頂部供給部19よりも燃焼ガス水平移動部20に近い部分に設けられる。火炉頂部水管群41は、通常、過熱器として用いられる。なお、図1に示すボイラ1は火炉頂部水管群41を1個備えるが、ボイラの変形例として、火炉頂部水管群41を複数個備える構成としてもよい。
【0050】
なお、スピネル族化合物を添加しない場合、ファウリングは、火炉10の中では、火炉頂部水管群41の水管40の表面で生じやすい。このため、ファウリングの発生を抑制するスピネル族化合物を火炉10内に供給する頂部供給部19は、火炉頂部水管群41よりも上流側に設けられる。なお、ファウリングは、火炉10中の火炉頂部水管群41よりも、下流の燃焼ガス水平移動部20及び燃焼ガス下降部30中の部材で発生しやすい。
【0051】
<燃焼ガス水平移動部>
燃焼ガス水平移動部20は、火炉10の下流側に設けられ、火炉10から排出された燃焼ガスが水平方向に移動する部分である。燃焼ガス水平移動部20は、内部に水平移動部水管群42を備える。水平移動部水管群42は、複数の水管40からなり、通常、過熱器又は再熱器として用いられる。なお、図1に示すボイラ1は水平移動部水管群42を1個備えるが、ボイラの変形例として、水平移動部水管群42を複数個備える構成としてもよい。水平移動部水管群42を複数個備えるボイラの変形例では、水平移動部水管群42の一部を過熱器とし、水平移動部水管群42の残部を再熱器とする構成としてもよい。
【0052】
スピネル族化合物を添加しない場合、ボイラ1でのファウリングは、火炉10よりも、燃焼ガス水平移動部20、及び後述の燃焼ガス下降部30で生じやすい。具体的には、ファウリングは、火炉10の火炉頂部水管群41の水管40の表面よりも、燃焼ガス水平移動部20の水平移動部水管群42の水管40の表面、及び後述の燃焼ガス下降部30の下降部水管群43の水管40の表面で生じやすい。ボイラ1では、燃焼ガス水平移動部20より上流の火炉本体11に、頂部供給部19、スピネル族化合物ミル上流供給部77等のスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給されることにより、ファウリングの発生を抑制することができる。
【0053】
<燃焼ガス下降部>
燃焼ガス下降部30は、燃焼ガス水平移動部20の下流側に設けられ、燃焼ガス水平移動部20から排出された燃焼ガスが下降する部分である。燃焼ガス下降部30は、内部に下降部水管群43を備える。下降部水管群43は、複数の水管40からなり、通常、過熱器又は再熱器として用いられる。ボイラ1は下降部水管群43として、下降部水管群43a、43b及び43cを備える。これらの下降部水管群43a、43b及び43cは、例えば、それぞれ、過熱器又は再熱器として用いられる。なお、図1に示すボイラ1は下降部水管群43として下降部水管群43a、43b及び43cの3個を備えるが、ボイラの変形例として、下降部水管群43を3個以外の個数で備える構成としてもよい。
【0054】
スピネル族化合物を添加しない場合、ボイラ1でのファウリングは、火炉10よりも、燃焼ガス下降部30、及び燃焼ガス水平移動部20で生じやすい。具体的には、ファウリングは、火炉10の火炉頂部水管群41の水管40の表面よりも、燃焼ガス下降部30の下降部水管群43の水管40の表面、及び燃焼ガス水平移動部20の水平移動部水管群42の水管40の表面で生じやすい。ボイラ1では、燃焼ガス下降部30より上流の火炉本体11に、頂部供給部19、スピネル族化合物ミル上流供給部77等のスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給されることにより、ファウリングの発生を抑制することができる。
【0055】
ミル80は、微粉末よりも大きなバイオマス含有燃料50を粉砕する装置である。微粉末よりも大きなバイオマス含有燃料50は、ミル80で処理されることにより、微粉末状のバイオマス含有燃料50になる。
【0056】
ボイラ1では、微粉末状のバイオマス含有燃料50を火炉10のバーナー部13に供給することにより、バイオマス含有燃料50を燃焼させる。一方、未加工のバイオマス含有燃料50は、微粉末よりも大きな物質を含むことがある。例えば、未加工のバイオマス含有燃料50に含まれるバイオマス固体燃料が直径1~3mm程度のペレットであることがある。ミル80は、主に、このような微粉末よりも大きなバイオマス含有燃料50を粉砕し、微粉末化する装置である。
【0057】
<火炉10外に設けられるスピネル族化合物供給部>
火炉10外には、スピネル族化合物供給部が3種類設けられる。火炉10外に設けられるスピネル族化合物供給部は、ミル供給ライン75、バーナー部用燃料供給ライン85、又はOAP供給ライン15に設けられる。なお、火炉10外にスピネル族化合物供給部が設けられる場合、ボイラ1の変形例として、これら3種の部分のうちの1種以上2種以下の部分にスピネル族化合物供給部が設けられる装置とすることが可能である。
【0058】
ボイラ1では、具体的には、ミル供給ライン75に設けられるスピネル族化合物供給部は、スピネル族化合物ミル上流供給部77である。また、バーナー部用燃料供給ライン85に設けられるスピネル族化合物供給部は、スピネル族化合物ミル下流供給部87である。さらに、OAP供給ライン15に設けられるスピネル族化合物供給部は、スピネル族化合物OAP供給部17である。以下、これらのスピネル族化合物供給部について説明する。
【0059】
[スピネル族化合物ミル上流供給部]
ミル80の上流側にはミル80にバイオマス含有燃料50を供給するミル供給ライン75が設けられる。また、ミル供給ライン75の上流側にはミル供給ライン75にバイオマス含有燃料50を供給する燃料供給部70が設けられる。このため、燃料供給部70に供給されたバイオマス含有燃料50は、ミル供給ライン75を介してミル80に移送され、ミル80での粉砕により微粉末化されるようになっている。
【0060】
ミル供給ライン75の途中には、スピネル族化合物ミル上流供給部77が設けられる。スピネル族化合物ミル上流供給部77は、スピネル族化合物をミル供給ライン75に供給するスピネル族化合物供給部である。すなわち、スピネル族化合物供給部としてのスピネル族化合物ミル上流供給部77は、ミル供給ライン75に設けられている。
【0061】
スピネル族化合物供給部としてスピネル族化合物ミル上流供給部77が用いられる場合、通常、バイオマス含有燃料の燃焼の際に、スピネル族化合物ミル上流供給部77から火炉本体11内にスピネル族化合物が供給される。火炉本体11内では、バイオマス含有燃料の燃焼で生じた灰と、スピネル族化合物とが反応して、アルミナシリケート塩やシリケート塩等を生成することにより、大きな粒径の灰が形成される。この大きな粒径の灰により、生成した灰の火炉10内への付着が抑制される。
【0062】
ミル供給ライン75はミル80の上流側に位置するため、スピネル族化合物ミル上流供給部77を介して供給されたスピネル族化合物をミル80で粉砕することが可能である。このため、スピネル族化合物ミル上流供給部77を介してスピネル族化合物が供給される場合、微粉末よりも大きな塊状等のスピネル族化合物をそのまま供給することが可能である。微粉末よりも大きなスピネル族化合物をそのままミル供給ライン75に供給する場合、得られる微粉末状のスピネル族化合物を微粉化するためミル80を設定する。
【0063】
[スピネル族化合物ミル下流供給部]
ミル80の下流側にはミル80から排出されたバイオマス含有燃料50をバーナー部13に供給するバーナー部用燃料供給ライン85が設けられる。ミル80から排出されたバイオマス含有燃料50が微粉末状である場合、このバイオマス含有燃料50を、このまま、バーナー部13に供給することが可能である。バーナー部用燃料供給ライン85は、ミル80の下流側でバーナー部13の個数に相当する数に分岐される。微粉末状のバイオマス含有燃料50は、必要により空気と共にバーナー部13に移送される。
【0064】
バーナー部用燃料供給ライン85の途中には、スピネル族化合物ミル下流供給部87が設けられる。スピネル族化合物ミル下流供給部87は、スピネル族化合物をバーナー部用燃料供給ライン85に供給するスピネル族化合物供給部である。すなわち、スピネル族化合物供給部としてのスピネル族化合物ミル下流供給部87は、バーナー部用燃料供給ライン85に設けられている。
【0065】
スピネル族化合物供給部としてスピネル族化合物ミル下流供給部87が用いられる場合、通常、バイオマス含有燃料の燃焼の際に、スピネル族化合物ミル下流供給部87から火炉本体11内にスピネル族化合物が供給される。火炉本体11内では、バイオマス含有燃料の燃焼で生じた灰と、スピネル族化合物とが反応して、アルミナシリケート塩やシリケート塩等を生成することにより、大きな粒径の灰が形成される。この大きな粒径の灰により、生成した灰の火炉10内への付着が抑制される。
【0066】
バーナー部用燃料供給ライン85はミル80の下流側に位置するため、バーナー部用燃料供給ライン85を介して供給されたスピネル族化合物を粉砕することはできない。このため、スピネル族化合物ミル下流供給部87を介してスピネル族化合物が供給される場合は、微粉末状のスピネル族化合物が供給される。
【0067】
[スピネル族化合物OAP供給部]
火炉本体11に設けられるオーバーエアポート部14は二段燃焼用の空気の供給口である。ボイラ1では、オーバーエアポート部14に空気を供給するOAP供給ライン15が設けられる。ここで、OAPとはオーバーエアポート(Over Air Port)を意味する。なお、オーバーエアポート部14は、空気に代えて、空気とスピネル族化合物との混合物を供給することができるようになっている。オーバーエアポート部14から供給されるスピネル族化合物としては微粉末状のスピネル族化合物が用いられる。
【0068】
OAP供給ライン15の途中には、スピネル族化合物OAP供給部17が設けられる。スピネル族化合物OAP供給部17は、スピネル族化合物をOAP供給ライン15に供給するスピネル族化合物供給部である。すなわち、スピネル族化合物供給部としてのスピネル族化合物OAP供給部17は、OAP供給ライン15に設けられている。
【0069】
スピネル族化合物供給部としてスピネル族化合物OAP供給部17が用いられる場合、通常、バイオマス含有燃料の燃焼の際に、スピネル族化合物OAP供給部17から火炉本体11内にスピネル族化合物が供給される。火炉本体11内では、バイオマス含有燃料の燃焼で生じた灰と、スピネル族化合物とが反応して、アルミナシリケート塩やシリケート塩等を生成することにより、大きな粒径の灰が形成される。この大きな粒径の灰により、生成した灰の火炉10内への付着が抑制される。
【0070】
OAP供給ライン15にはミル等の粉砕手段がないため、OAP供給ライン15を介して供給されたスピネル族化合物を粉砕することはできない。このため、スピネル族化合物OAP供給部17を介してスピネル族化合物が供給される場合は、微粉末状のスピネル族化合物が供給される。
【0071】
ボイラ1では、バイオマス含有燃料50の800~900℃の酸化雰囲気下での燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給されることにより、ファウリングを抑制することができる。酸化雰囲気としては、例えば、酸素Oが1~19vol%、又は二酸化炭素COが1~19vol%の雰囲気が用いられる。
【0072】
(作用)
ボイラ1の作用について説明する。ボイラ1では、微粉末状のバイオマス含有燃料50をボイラ1のバーナー部13から火炉10内に供給して燃焼させる。なお、バーナー部13から火炉10内に供給されるバイオマス含有燃料50は、通常、バイオマス含有燃料50の微粉末と空気とを含む混合物である燃料微粉末含有ガスの形態で供給される。この場合、火炉10内で燃料微粉末含有ガスが燃焼する。
【0073】
実施形態に係るボイラ1では、バイオマス含有燃料50の燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給されることによりファウリングの発生を抑制することができる。以下、ボイラ1の作用について説明する。
【0074】
ボイラ1では、バイオマス含有燃料50の燃焼の際に、スピネル族化合物が、ミル供給ライン75、バーナー部用燃料供給ライン85、OAP供給ライン15及び頂部供給部19等のスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給される。なお、スピネル族化合物が、ミル供給ライン75又はバーナー部用燃料供給ライン85に供給されるときは、バイオマス含有燃料50とスピネル族化合物との混合物が、バーナー部13から火炉10内に供給され、バイオマス含有燃料50が燃焼する。
【0075】
バイオマス含有燃料50がバーナー部13の近傍で燃焼する際の燃焼温度は、通常1200~1400℃と高温である。このため、800~900℃で生じるファウリングは、火炉本体11内のバーナー部13の近傍では、通常、発生しない。ファウリングは、ガス温度が400~1000℃の酸化雰囲気下で、伝熱管表面温度が300~650℃である、バーナー部13よりも下流のボイラ後伝部で発生する。
【0076】
具体的には、スピネル族化合物を添加しない場合、ファウリングは、火炉10の火炉頂部水管群41、燃焼ガス水平移動部20の水平移動部水管群42、及び燃焼ガス下降部30の下降部水管群43、の水管40の表面で生じやすい。より具体的には、ファウリングは、火炉10の火炉頂部水管群41の水管40の表面よりも、燃焼ガス水平移動部20の水平移動部水管群42の水管40の表面、及び燃焼ガス下降部30の下降部水管群43の水管40の表面で生じやすい。
【0077】
これに対し、ボイラ1では、バイオマス含有燃料50の燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給されるため、ファウリングの発生が抑制される。
【0078】
例えば、スピネル族化合物供給部が、ミル供給ライン75、バーナー部用燃料供給ライン85、OAP供給ライン15等に設けられる場合、バイオマス含有燃料50の燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給される。これらの場合、火炉本体11内では、バイオマス含有燃料の燃焼で生じた灰と、スピネル族化合物とが反応して、アルミナシリケート塩やシリケート塩等を生成することにより、大きな粒径の灰が形成される。この大きな粒径の灰により、生成した灰の火炉10内への付着が抑制されるため、ファウリングの発生が効率的に抑制される。
【0079】
一方、スピネル族化合物供給部としての頂部供給部19が、火炉本体11の頂部12に設けられる場合、バイオマス含有燃料50の燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給される。この場合、火炉本体11内では、バイオマス含有燃料の燃焼で生じた灰と、スピネル族化合物とが反応して、アルミナシリケート塩やシリケート塩等を生成することにより、大きな粒径の灰が形成される。この大きな粒径の灰により、生成した灰の火炉10内への付着が抑制されるため、ファウリングの発生が効率的に抑制される。
【0080】
また、ボイラ1では、スピネル族化合物が、ファウリングが発生しやすい火炉頂部水管群41よりも上流で火炉10内に供給されるため、ファウリングの発生が効率的に抑制される。
【0081】
[ファウリング抑制方法]
次に、実施形態に係るファウリング抑制方法について説明する。実施形態に係るファウリング抑制方法は、実施形態に係るボイラ1を用いるファウリング抑制方法である。
【0082】
実施形態に係るファウリング抑制方法は、火炉10を備えたボイラ1を用い、火炉10中でバイオマス固体燃料を含むバイオマス含有燃料50を燃焼させたときに発生するファウリングを抑制するファウリング抑制方法である。具体的には、実施形態に係るファウリング抑制方法は、火炉10中でバイオマス含有燃料50を燃焼させたとき、ガス温度が400~1000℃の酸化雰囲気下で、伝熱管表面温度が300~650℃で発生するファウリングを抑制するファウリング抑制方法である。好ましくは、実施形態に係るファウリング抑制方法は、火炉10中でバイオマス含有燃料50を燃焼させたとき、ガス温度が800~900℃の酸化雰囲気で、伝熱管表面温度が500~650℃のボイラ後伝部で発生するファウリングを抑制する方法である。実施形態に係るファウリング抑制方法は、バイオマス含有燃料50の燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給される方法である。
【0083】
実施形態に係るファウリング抑制方法で用いられるボイラ1、バイオマス含有燃料50及びスピネル族化合物は、実施形態に係るボイラ1での説明と同様である。このため、これらの説明を省略する。
【0084】
実施形態に係るファウリング抑制方法では、バイオマス含有燃料50の800~900℃の酸化雰囲気下での燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給される。実施形態に係るファウリング抑制方法における酸化雰囲気は、実施形態に係るボイラ1における酸化雰囲気と同じであるため説明を省略する。
【0085】
実施形態に係るファウリング抑制方法における、上記Msと上記Mvとの比率Mv:Ms及びその数値範囲は、実施形態に係るボイラ1におけるMv:Ms及びその範数値囲と同じであるため説明を省略する。
【0086】
実施形態に係るファウリング抑制方法では、スピネル族化合物は、ミル供給ライン75、バーナー部用燃料供給ライン85、OAP供給ライン15、及び火炉本体11の頂部12より選択される1種以上の部分に設けられる。
【0087】
(作用)
実施形態に係るファウリング抑制方法の作用は、バイオマス含有燃料50の燃焼の際にスピネル族化合物供給部からスピネル族化合物が供給される場合のボイラ1の作用と同じであるため、説明を省略する。
【実施例
【0088】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
【0089】
[実施例1](スピネル添加)
(試験装置)
【0090】
上記ボイラ1と同様な環境を再現する試験装置として、図2に示す縦型加熱炉試験システムを用いた。図2は、実施例1で用いた縦型加熱炉試験システムを示す図である。図2に示す縦型加熱炉試験システム2は、ボイラ1の火炉10に相当する縦型加熱炉200と、ボイラ1のミル80に相当する燃料供給器100と、を備える。
【0091】
<燃料供給器>
燃料供給器100は、微粉末状のバイオマス含有燃料50と空気110とを含む混合物である燃料微粉末含有ガスを縦型加熱炉200に供給する装置である。なお、燃料供給器100は、上記燃料微粉末含有ガスに代えて、燃料微粉末含有ガスとスピネル族化合物の微粉末との混合物である燃料-スピネル含有ガスを縦型加熱炉200に供給することが可能になっている。
【0092】
<縦型加熱炉>
縦型加熱炉200は、火炉本体11に相当するセラミック管210と、セラミック管210の上端部を閉塞する縦型加熱炉頂部220と、セラミック管210の下端部を閉塞する縦型加熱炉底部230と、セラミック管210を加熱するヒーター240とを備える。
【0093】
縦型加熱炉頂部220の径方向の中央部には、燃料供給器100から供給される燃料微粉末含有ガスをセラミック管210内に導入する導入管が設けられる。縦型加熱炉底部230は、セラミック管210の下端部と密着するリング状上端部と、リング状上端部の内周側端部から下方に凹設された有底筒状部とを備える。この有底筒状部の径方向の中央部にはプローブ300が挿脱自在に挿入される。
【0094】
<プローブ>
図3を参照してプローブ300を説明する。図3は、図2の範囲Bを拡大した図である。図3に示すように、プローブ300は、筒状のプローブ本体310と、プローブ本体310の上方に形成された半球状のプローブ先端部320とを有する。プローブ300の内部340は空洞になっており、プローブ300の内部340にはプローブ300の長手方向に沿って管状の冷却ノズル350が挿入される。
【0095】
冷却ノズル350は、先端部が半球状のプローブ先端部320と離間するように挿入される。これにより、冷却ノズル350の内側を上昇した冷却媒体360がプローブ先端部320の内面で反射して、冷却ノズル350の外側、すなわち冷却ノズル350とプローブ本体310との間の空間、を下降することができるようになっている。冷却媒体360の流れ方向CFのうち、冷却ノズル350の内側を上昇する冷却媒体360の流れ方向をCF、プローブ先端部320の内面で反射する冷却媒体360の流れ方向をCFで示す。冷却媒体360としては冷却水及び空気が用いられ、冷却水に空気の気泡が混合されることにより、冷却媒体360が冷却ノズル350の内側を効率よく上昇することができるようになっている。プローブ先端320の表面は冷却ノズル350に流れる冷却水と空気の量を調整することによって、所望の温度に制御できる。
【0096】
図2に示すように、プローブ300は、縦型加熱炉底部230の有底筒状部の径方向の中央部に挿脱自在に挿入される。このため、プローブ300は、セラミック管210内の長手方向の任意の位置に、挿入可能である。
【0097】
プローブ300を、縦型加熱炉底部230に挿脱自在に挿入する理由を図4を参照して説明する。図4は、図2に示す縦型加熱炉試験システム2を構成する縦型加熱炉200におけるセラミック管210内のガス温度分布を模式的に示すグラフである。具体的には、図4は、ヒーター240でセラミック管210を加熱した際の、セラミック管210内の長手方向の部位と、ガス温度との関係を模式的に示すグラフである。図4の縦軸は、セラミック管210内の長手方向の部位を示す。具体的には、縦軸の上端は縦型加熱炉頂部220に接するセラミック管210の部位を示し、縦軸の下端は縦型加熱炉底部230に接するセラミック管210の部位を示す。図4の横軸は、セラミック管210内の径方向の中央部のガス温度を示す。
【0098】
縦型加熱炉200においてヒーター240でセラミック管210を加熱すると、図4に示すように、セラミック管210内の上側ほどガス温度が高く、セラミック管210内の下側ほどガス温度が低くなる。このため、プローブ300を、セラミック管210内の長手方向の任意の位置に挿入させることにより、プローブ300を、所望のガス温度におくことが可能である。
【0099】
具体的には、燃料微粉末含有ガスを図2に示す燃焼炎250を生じるように燃焼させると、図3に示すように灰260が生成する。生成した灰260は図3のAFの方向に降下するため、プローブ先端部320の表面330に付着する。この時、所望の温度に制御したプローブ先端320を所望のガス温度の位置まで縦型加熱炉200に挿入し、燃焼試験後にプローブ300を引き抜きプローブ先端部の表面330に付着した灰260を回収する。これにより、所定のガス温度及びプローブ表面温度で付着した灰260の付着量を測定することができる。
【0100】
このように、縦型加熱炉試験システム2によれば、燃焼時の雰囲気とプローブ300の挿入高さ及びプローブ先端表面温度とを調整することにより、ボイラ1のファウリング発生環境を再現できるようになっている。具体的には、縦型加熱炉試験システム2によれば、ファウリングが発生しやすい、ガス温度が800~900℃の酸化雰囲気下及び水管表面を模擬したプローブ表面温度が500~650℃で燃焼試験をし、付着した灰260を回収することができる。
【0101】
なお、縦型加熱炉試験システム2では、上記燃料微粉末含有ガスに代えて、燃料微粉末含有ガスとスピネル族化合物の微粉末との混合物である燃料-スピネル含有ガスを燃焼炎250を生じるように燃焼させることが可能である。この場合、縦型加熱炉試験システム2によれば、ファウリングが発生しやすい、ガス温度が800~900℃の酸化雰囲気下及び水管表面を模擬したプローブ表面温度が500~650℃で燃焼試験をし、付着した灰260を回収することができる。
【0102】
<ガス分析>
図2に示すように、縦型加熱炉試験システム2では、縦型加熱炉200での燃焼試験で生成した燃焼ガス及び灰260が、縦型加熱炉200の縦型加熱炉底部230から排出され、排出路370を介してろ過器400に送られるようになっている。ろ過器400は、円筒ろ紙410を備えており、灰260を捕捉して燃焼ガスのみを通過させることができるようになっている。ろ過器400から排出された燃焼ガスは、排気路450を介してガス冷却器500に送られ、さらにポンプ600を介してガス分析器700に送られるようになっている。これにより、縦型加熱炉試験システム2によれば、ボイラ1に近いファウリングの生成環境で生成した燃焼ガスを分析することができるようになっている。
【0103】
(バイオマス含有燃料)
バイオマス含有燃料として、積算分布径D50が75μmの微粉末状のバイオマス含有燃料を用意した。
【0104】
(添加剤)
ファウリングを抑制するための添加剤として、微粉末状のスピネルMgAlを用意した。
【0105】
(燃焼試験)
縦型加熱炉試験システム2での燃焼試験は、バイオマス含有燃料とスピネル族化合物との混合物を、短時間で縦型加熱炉200のセラミック管210内に連続的に投入して燃焼させる試験とした。
【0106】
はじめに、セラミック管内のガス温度800~900℃の位置にプローブ300の先端表面320が位置するように挿入した。また、プローブ先端320の表面温度は500℃に制御した。
【0107】
次に、燃料供給器100において、バイオマス含有燃料とスピネルMgAlとを混合し混合物を作製した。混合物におけるバイオマス含有燃料とスピネルMgAlとの混合割合は、バイオマス含有燃料970gに対してスピネルMgAl30gとした。この混合比率は、縦型加熱炉200に投入するバイオマス含有燃料の単位時間当たり質量Mv[kg/Hr]とスピネルMgAlの単位時間当たり質量Ms[kg/Hr]との比率Mv:Msが97:3になるようにしたものである。
【0108】
次に、燃料供給器100内のバイオマス含有燃料とスピネルMgAlとの混合物を約0.7g/分の投入速度で縦型加熱炉200のセラミック管210内に投入し、混合物を燃焼させた。
【0109】
燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含有燃料とスピネルMgAlとの混合物が供給され、燃焼によて生成された灰の合計量が1.1g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。以上の実験例を実施例1-1とする。
【0110】
さらに、セラミック管210内に供給されるバイオマス含有燃料とスピネルMgAlとの混合物が供給され、燃焼によて生成された灰の合計量が異なる場合は、実施例1-1と同様にして燃焼試験を行った(実施例1-2及び実施例1-3)。
【0111】
実施例1-2では、燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含有燃料とスピネルMgAlとの混合物が供給され、燃焼によて生成された灰の合計量が2.1g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。
【0112】
実施例1-3では、燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含有燃料とスピネルMgAlとの混合物が供給され、燃焼によて生成された灰の合計量が 3.2g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。
【0113】
(評価)
<灰付着量の評価>
実施例1-1~実施例1-3につき、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260の付着量を測定した。実施例1-1~実施例1-3の結果の集合体を実施例1として図5に示す。
<灰の粒子径の評価>
実施例1につき、プローブ先端部320の表面330に付着した灰の粒子径と積算個数との関係を測定した。結果を図6に示す。
【0114】
[比較例1](添加剤なし)
添加剤としてのスピネルMgAlを混合しない以外は実施例1と同様にして燃焼試験を行った。
【0115】
(燃焼試験)
縦型加熱炉試験システム2での燃焼試験は、バイオマス含有燃料とスピネル族化合物との混合物を、短時間で縦型加熱炉200のセラミック管210内に連続的に投入して燃焼させる試験とした。
【0116】
また、燃料供給器100内のバイオマス含有燃料を約0.7g/分の投入速度で縦型加熱炉200のセラミック管210内に投入し、バイオマス含有燃料を燃焼させた。
【0117】
燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含有燃料が供給され、燃焼によて生成された灰が1.1g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。以上の実験例を比較例1-1とする。
【0118】
さらに、セラミック管210内に供給されるバイオマス含有燃料が燃焼によて生成された灰量が異なる以外は、比較例1-1と同様にして燃焼試験を行った(比較例1-2、比較例1-3及び比較例1-4)。
【0119】
比較例1-2では、燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含有燃料が供給され、燃焼によて生成された灰が1.6g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。
【0120】
比較例1-3では、燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含有燃料が供給され、燃焼によて生成された灰が2.1g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。
【0121】
比較例1-4では、燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含有燃料が供給され、燃焼によて生成された灰が3.0g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。
【0122】
(評価)
<灰付着量の評価>
比較例1-1~比較例1-4につき、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260の付着量を測定した。比較例1-1~比較例1-4の結果の集合体を比較例1として図5に示す。
【0123】
<灰の粒子径の評価>
比較例1につき、プローブ先端部320の表面330に付着した灰の粒子径と積算個数との関係を測定した。結果を図6に示す。
【0124】
[比較例2](Al添加)
添加剤として、スピネルMgAlに代えてAlを用いた以外は実施例1と同様にして燃焼試験を行った。
【0125】
(燃焼試験)
縦型加熱炉試験システム2での燃焼試験では、バイオマス含有燃料とAlとの混合物を、短時間で縦型加熱炉200のセラミック管210内に連続的に投入して燃焼させる試験とした。
【0126】
次に、燃料供給器100において、バイオマス含有燃料とAlとを混合し混合物を作製した。混合物におけるバイオマス含有燃料とAlとの混合割合は、バイオマス含有燃料970gに対してAlを30gとした。この混合比率は、縦型加熱炉200に投入するバイオマス含有燃料の単位時間当たり質量Mv[kg/Hr]とAlの単位時間当たり質量Ms[kg/Hr]との比率Mv:Msが97:3になるようにしたものである。
【0127】
次に、燃料供給器100内のバイオマス含有燃料とAlとの混合物を約0.7g/分の投入速度で縦型加熱炉200のセラミック管210内に投入し、混合物を燃焼させた。
【0128】
燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含有燃料とAl2O3の混合物が供給され、燃焼によて生成された灰の合計量が1.1g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。以上の実験例を比較例2-1とする。
【0129】
さらに、セラミック管210内に供給されるバイオマス含有燃料とAlの混合物が供給され、燃焼によて生成された灰の合計量が異なる以外、比較例2-1と同様にして燃焼試験を行った(比較例2-2及び比較例2-3)。
【0130】
比較例2-2では、燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含有燃料とAl2O3の混合物が供給され、燃焼によて生成された灰の合計量が2.1g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。
【0131】
比較例2-3では、燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含有燃料とAl2O3の混合物が供給され、燃焼によて生成された灰の合計量が3.2g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。
【0132】
(評価)
<灰付着量の評価>
比較例2-1~比較例2-3につき、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260の付着量を測定した。比較例2-1~比較例2-3の結果の集合体を比較例2として図5に示す。
【0133】
<灰の粒子径の評価>
比較例2につき、プローブ先端部320の表面330に付着した灰の粒子径と積算個数との関係を測定した。結果を図6に示す。
【0134】
[比較例3](CaO添加)
添加剤として、スピネルMgAlに代えてCaOを用いた以外は実施例1と同様にして燃焼試験を行った。
【0135】
(燃焼試験)
縦型加熱炉試験システム2での燃焼試験では、バイオマス含有燃料とCaOとの混合物を、短時間で縦型加熱炉200のセラミック管210内に連続的に投入して燃焼させる試験とした。
【0136】
また、燃料供給器100において、バイオマス含有燃料とCaOとを混合し混合物を作製した。混合物におけるバイオマス含有燃料とCaOとの混合割合は、バイオマス含有燃料970gに対してCaO30gとした。この混合比率は、縦型加熱炉200に投入するバイオマス含有燃料の単位時間当たり質量Mv[kg/Hr]とCaOの単位時間当たり質量Ms[kg/Hr]との比率Mv:Msが97:3になるようにしたものである。
【0137】
次に、燃料供給器100内のバイオマス含有燃料とCaOとの混合物を約0.7g/分の投入速度で縦型加熱炉200のセラミック管210内に投入し、混合物を燃焼させた。
【0138】
燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含羞燃料とCaOの混合物が供給され、燃焼によて生成された灰の合計量が1.1g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。以上の実験例を比較例3-1とする。
【0139】
さらに、セラミック管210内に供給されるバイオマス含有燃料とCaOとの合計量が異なる以外は、比較例3-1と同様にして燃焼試験を行った(比較例3-2及び比較例3-3)。
【0140】
比較例3-2では、燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含羞燃料とCaOの混合物が供給され、燃焼によて生成された灰の合計量が2.1g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。
【0141】
比較例3-3では、燃料供給器100からセラミック管210内に、バイオマス含羞燃料とCaOの混合物が供給され、燃焼によて生成された灰の合計量が3.2g供給された時点で、プローブ300をセラミック管210から取り出した。プローブ300の放冷後、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260を採取した。
【0142】
(評価)
<灰付着量の評価>
比較例3-1~比較例3-3につき、プローブ先端部320の表面330に付着した灰260の付着量を測定した。比較例3-1~比較例3-3の結果の集合体を比較例3として図5に示す。
【0143】
<灰の粒子径の評価>
比較例3-3につき、プローブ先端部320の表面330に付着した灰の粒子径と積算個数との関係を測定した。結果を図6に示す。
【0144】
図5より、実施例1は、比較例1~3に比較して、灰付着量が少ないことが分かった。また、図6より、実施例1は、比較例1、比較例2及び比較例3に比較して、粒子径が大きくなることが分かった。
図5及び図6の結果より、添加剤としてスピネルMgAlを用いた場合の効果は、灰260の粒子径の増加による脱落性の向上によるものと推測される。
【0145】
特願2019-078547号(出願日:2019年4月17日)の全内容は、ここに援用される。
【0146】
以上、実施例に沿って本実施形態の内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本開示によれば、ファウリングの発生を効率的に抑制する、ボイラ及びファウリング抑制方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0148】
1 ボイラ
10 火炉
11 火炉本体
12 火炉本体の頂部
13 バーナー部
14 オーバーエアポート部
15 OAP供給ライン
17 スピネル族化合物OAP供給部(スピネル族化合物供給部)
19 頂部供給部(スピネル族化合物供給部)
20 燃焼ガス水平移動部
30 燃焼ガス下降部
40 水管
41 火炉頂部水管群
42 水平移動部水管群
43、43a、43b、43c 下降部水管群
50 バイオマス含有燃料
60 スピネル族化合物
70 燃料供給部
75 ミル供給ライン
77 スピネル族化合物ミル上流供給部(スピネル族化合物供給部)
80 ミル
85 バーナー部用燃料供給ライン
87 スピネル族化合物ミル下流供給部(スピネル族化合物供給部)
2 縦型加熱炉試験システム
100 燃料供給器
110 空気
200 縦型加熱炉
210 セラミック管
220 縦型加熱炉頂部
230 縦型加熱炉底部
240 ヒーター
250 燃焼炎
260 灰
AF 灰の流れ方向
300 プローブ
310 プローブ本体
320 プローブ先端部
330 プローブ先端部の表面
340 プローブの内部
350 冷却ノズル
360 冷却媒体(水、空気)
370 排出路
CF、CF、CF 冷却媒体の流れ方向
400 ろ過器
410 円筒ろ紙
450 排気路
500 ガス冷却器
600 ポンプ
700 ガス分析器
図1
図2
図3
図4
図5
図6