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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】清掃装置及びコークス炉の炉頂清掃方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 43/04 20060101AFI20221109BHJP
   B08B 1/04 20060101ALI20221109BHJP
   A47L 11/24 20060101ALI20221109BHJP
   A47L 11/283 20060101ALI20221109BHJP
   E01H 1/05 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C10B43/04
B08B1/04
A47L11/24
A47L11/283
E01H1/05
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021520633
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2021004820
(87)【国際公開番号】W WO2021199691
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2020061412
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】福地 良太
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】石田 匡平
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-014211(JP,U)
【文献】特開平01-207509(JP,A)
【文献】中国実用新案第202023168(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0047653(KR,A)
【文献】特開平05-300860(JP,A)
【文献】特開平10-118597(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01895056(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 1/00-57/18
B08B 1/00
A47L 11/00
E01H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上を走行し、該路面に堆積した堆積物をかき集める清掃装置であって、
走行台車(1)と、該走行台車(1)の前面部に設けられ、前記走行台車(1)が前進することで前記走行台車(1)前方の前記路面に堆積している前記堆積物をかき集めるかき集め手段(2)と、前記走行台車(1)に設けられ、前記走行台車(1)側方の路面に堆積している前記堆積物を前記走行台車(1)前方にかき寄せるかき寄せ手段(3)とを備え
前記かき集め手段(2)が、下端が路面に接地するドーザー(20)であり、
前記ドーザー(20)は、支持アーム(5)を介して前記走行台車(1)に支持され、前記支持アーム(5)の途中に前記かき集め手段(2)にかかる負荷を計測するための負荷センサ(4)を備え、
前記ドーザー(20)は前記支持アーム(5)を介して上方に回動可能であり、前記負荷センサ(4)が過負荷を検出したときに、上方に回動するようにしたことを特徴とする清掃装置。
【請求項2】
前記かき寄せ手段(3)は、前記走行台車(1)の車幅方向に移動可能な回転ブラシ(30)を備えることを特徴とする請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記かき寄せ手段(3)は、前記走行台車(1)に車幅方向に沿って設けられたレール(31)と、該レール(31)に沿ってスライド移動可能な保持アーム(32)と、該保持アーム(32)を前記レール(31)に沿ってスライド移動させる駆動手段(33)とを備え、前記回転ブラシ(30)が前記保持アーム(32)に保持されていることを特徴とする請求項2に記載の清掃装置。
【請求項4】
前記保持アーム(32)には、前記回転ブラシ(30)の後方位置で前記堆積物のかき集めを行うかき集め板(34)が付設されていることを特徴とする請求項3に記載の清掃装置。
【請求項5】
前記回転ブラシ(30)は、前記走行台車(1)の車長方向における先端側部分のみが前記路面に接地するように、傾斜した状態に保持されていることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の清掃装置。
【請求項6】
前記ドーザー(20)は、下端部にブラシ(21)を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の清掃装置。
【請求項7】
前記ドーザー(20)には、前記走行台車(1)の車幅方向に沿って設けられたドーザー本体部(20a)の一方の端部に、前記かき寄せ手段(3)により車幅方向の一方側からかき寄せられた前記堆積物を囲い込んで前記車幅方向の他方側に逃さないようにするためのサイドドーザー部(20b)が連設されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の清掃装置。
【請求項8】
前記ドーザー本体部(20a)は、前記サイドドーザー部(20b)が連設された前記一方の端部側が、他方の端部側よりも前記走行台車(1)に近くなるように、前記走行台車(1)の車幅方向に傾斜することを特徴とする請求項に記載の清掃装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の清掃装置をコークス炉の炉頂部を前記路面として走行させ、前記路面に堆積した前記堆積物をかき集めることで前記コークス炉の前記炉頂部を清掃する方法であって、
前記走行台車(1)を前進させ、前記かき寄せ手段(3)により前記走行台車(1)側方の前記路面に堆積している前記堆積物を前記走行台車(1)前方にかき寄せつつ、前記かき集め手段(2)により前記走行台車(1)前方の前記路面に堆積している前記堆積物をかき集め、
所定の領域で前記堆積物をかき集めた後、前記走行台車(1)をそのまま石炭装入孔の近傍までに移動させ、その場所に前記堆積物を集積させ
前記負荷センサ(4)が過負荷を検出したときに、障害物により前記清掃装置の前進が困難であると判断し、前記走行台車(1)の前記障害物に対する回避動作を採ることを特徴とするコークス炉の炉頂清掃方法。
【請求項10】
前記かき寄せ手段(3)が前記走行台車(1)の車幅方向に移動可能な回転ブラシ(30)を備えた前記清掃装置を用いて、前記コークス炉の前記炉頂部に設けられる装炭車用レール脇を清掃するに際し、
前記走行台車(1)を前記装炭車用レールに沿って前進させ、前記回転ブラシ(30)を前記走行台車(1)側方に移動させた状態で回転駆動させることにより、前記走行台車(1)側方の前記装炭車用レール近傍の路面に堆積している前記堆積物を前記走行台車(1)前方に掃き寄せつつ、前記ドーザー(20)により前記走行台車(1)前方の前記路面に堆積している前記堆積物をかき集め、
前記走行台車(1)が前記装炭車用レール脇の障害物を通過する際には、前記回転ブラシ(30)を前記走行台車(1)の車幅方向に移動させて前記障害物を回避しつつ、前記回転ブラシ(30)により前記障害物周りの前記路面に堆積している前記堆積物を前記走行台車(1)前方に掃き寄せすることを特徴とする請求項に記載のコークス炉の炉頂清掃方法。
【請求項11】
光学式の測距センサを搭載した前記清掃装置を清掃すべき領域で走行させることにより、前記測距センサにより前記障害物の位置を計測して地図データを取得し、該地図データに基づき前記走行台車(1)の移動経路と前記回転ブラシ(30)の動きをプログラムし、該プログラムに従い前記清掃装置による自動清掃がなされるようにしたことを特徴とする請求項10に記載のコークス炉の炉頂清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉などにおける粉塵飛散防止及び炉体保護などを目的として、例えばコークス炉の炉頂部などの路面に堆積した石炭粉(堆積物)を清掃除去するための清掃装置及びこの装置を用いた炉頂清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス工場では、炉内に石炭を装入する装炭車からの石炭粉の漏れや、石炭貯蔵庫からの石炭粉の漏れなどにより、コークス炉の炉頂部に石炭粉などの落粉(堆積物)が堆積している。このため、粉塵飛散防止や炉体保護を目的として、この炉頂部に堆積した落粉(堆積物)の清掃除去が行われる。しかし、炉頂部における落粉の清掃除去作業は、高温・粉塵環境下で行われる重筋作業であり、熱中症や粉塵吸引の恐れがある危険な作業でもある。
【0003】
コークス炉の炉頂部を清掃する方法として、特許文献1には、石炭を炉内に装入する装炭車に吸引式のクリーナー(吸引ノズル)を備えさせ、石炭装入後にこのクリーナーで吸引清掃を実施する方法が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、広く床面を清掃できる清掃車両として、車両の底部中央部にて回転し、床面の塵埃をダストボックス内に掃きあげるメインブラシと、車両の底部側部で回転し、メインブラシの清掃領域の外縁部を含む床面の側部にある塵埃を底部中央部にかき集めるサイドブラシを備えた清掃車両が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-311456号公報
【文献】特開平3-144004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来技術には、以下のような問題がある。
【0007】
まず、特許文献1の方法では、下記(i)~(iii)などの問題がある。(i)クリーナーは装炭車に備えられるものであるため、装炭車の稼働中であって且つ装炭を実施する窯上の清掃しかできない。(ii)装炭車の稼働中でのクリーナーのメンテナンスが困難である。(iii)吸引式のクリーナーであるため、バグフィルタ詰まりやモルタル水吸入によるノズルの詰まりなどのトラブルが生じやすい。
【0008】
また、特許文献2の清掃車両をコークス炉の炉頂部の清掃に利用した場合、下記(i)、(ii)などの問題がある。(i)塵埃を車体内部のホッパーに蓄積させる分車体が大きくなるため、コークス炉の炉頂部の清掃には適さない。(ii)ホッパーから塵埃を人手で排出する必要がある。
【0009】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、コークス炉の炉頂部などの路面の清掃を行う自走式の清掃装置であって、障害物がある炉頂部を適切且つ効率的に清掃することができるとともに、装炭車の稼働中か否かに関わりなく清掃を行うことができ、また、構造が単純で且つコンパクトであり、メンテナンスも容易であって、装炭車稼働中でもメンテナンスを行うことができる清掃装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、そのような清掃装置を用いて炉頂部を適切かつ効率的に清掃することができる清掃方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 路面上を走行し、該路面に堆積した堆積物をかき集める清掃装置であって、走行台車(1)と、該走行台車(1)の前面部に設けられ、前記走行台車(1)が前進することで前記走行台車(1)前方の前記路面に堆積している前記堆積物をかき集めるかき集め手段(2)と、前記走行台車(1)に設けられ、前記走行台車(1)側方の路面に堆積している前記堆積物を前記走行台車(1)前方にかき寄せるかき寄せ手段(3)とを備えることを特徴とする清掃装置。
[2] 前記かき寄せ手段(3)は、前記走行台車(1)の車幅方向に移動可能な回転ブラシ(30)を備えることを特徴とする[1]に記載の清掃装置。
[3] 前記かき寄せ手段(3)は、前記走行台車(1)に車幅方向に沿って設けられたレール(31)と、該レール(31)に沿ってスライド移動可能な保持アーム(32)と、該保持アーム(32)を前記レール(31)に沿ってスライド移動させる駆動手段(33)とを備え、前記回転ブラシ(30)が前記保持アーム(32)に保持されていることを特徴とする[2]に記載の清掃装置。
[4] 前記保持アーム(32)には、前記回転ブラシ(30)の後方位置で前記堆積物のかき集めを行うかき集め板(34)が付設されていることを特徴とする[3]に記載の清掃装置。
[5] 前記回転ブラシ(30)は、前記走行台車(1)の車長方向における先端側部分のみが前記路面に接地するように、傾斜した状態に保持されていることを特徴とする[2]~[4]のいずれかに記載の清掃装置。
[6] 前記かき集め手段(2)にかかる負荷を計測するための負荷センサ(4)を備えることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の清掃装置。
[7] 前記かき集め手段(2)が、下端が路面に接地するドーザー(20)であることを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載の清掃装置。
[8] 前記ドーザー(20)は、下端部にブラシ(21)を備えることを特徴とする[7]に記載の清掃装置。
[9] 前記ドーザー(20)には、前記走行台車(1)の車幅方向に沿って設けられたドーザー本体部(20a)の一方の端部に、前記かき寄せ手段(3)により車幅方向の一方側からかき寄せられた前記堆積物を囲い込んで前記車幅方向の他方側に逃さないようにするためのサイドドーザー部(20b)が連設されていることを特徴とする[7]又は[8]に記載の清掃装置。
[10] 前記ドーザー本体部(20a)は、前記サイドドーザー部(20b)が連設された前記一方の端部側が、他方の端部側よりも前記走行台車(1)に近くなるように、前記走行台車(1)の車幅方向に傾斜することを特徴とする[9]に記載の清掃装置。
[11] 前記ドーザー(20)は、支持アーム(5)を介して前記走行台車(1)に支持され、前記支持アーム(5)の途中に前記かき集め手段(2)にかかる負荷を計測するための負荷センサ(4)を備えることを特徴とする[7]~[10]のいずれかに記載の清掃装置。
[12] 前記ドーザー(20)は前記支持アーム(5)を介して上方に回動可能であり、前記負荷センサ(4)が過負荷を検出したときに、上方に回動するようにしたことを特徴とする[11]に記載の清掃装置。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載の清掃装置をコークス炉の炉頂部を前記路面として走行させ、前記路面に堆積した前記堆積物をかき集めることで前記コークス炉の前記炉頂部を清掃する方法であって、前記走行台車(1)を前進させ、前記かき寄せ手段(3)により前記走行台車(1)側方の前記路面に堆積している前記堆積物を前記走行台車(1)前方にかき寄せつつ、前記かき集め手段(2)により前記走行台車(1)前方の前記路面に堆積している前記堆積物をかき集め、所定の領域で前記堆積物をかき集めた後、前記走行台車(1)をそのまま石炭装入孔の近傍までに移動させ、その場所に前記堆積物を集積させることを特徴とするコークス炉の炉頂清掃方法。
[14] 前記かき集め手段(2)が下端が前記路面に接地するドーザー(20)であり、前記かき寄せ手段(3)が前記走行台車(1)の車幅方向に移動可能な回転ブラシ(30)を備えた前記清掃装置を用いて、前記コークス炉の前記炉頂部に設けられる装炭車用レール脇を清掃するに際し、前記走行台車(1)を前記装炭車用レールに沿って前進させ、前記回転ブラシ(30)を前記走行台車(1)側方に移動させた状態で回転駆動させることにより、前記走行台車(1)側方の前記装炭車用レール近傍の路面に堆積している前記堆積物を前記走行台車(1)前方に掃き寄せつつ、前記ドーザー(20)により前記走行台車(1)前方の前記路面に堆積している前記堆積物をかき集め、前記走行台車(1)が前記装炭車用レール脇の障害物を通過する際には、前記回転ブラシ(30)を前記走行台車(1)の車幅方向に移動させて前記障害物を回避しつつ、前記回転ブラシ(30)により前記障害物周りの前記路面に堆積している前記堆積物を前記走行台車(1)前方に掃き寄せすることを特徴とする[13]に記載のコークス炉の炉頂清掃方法。
[15] 光学式の測距センサを搭載した前記清掃装置を清掃すべき領域で走行させることにより、前記測距センサにより前記障害物の位置を計測して地図データを取得し、該地図データに基づき前記走行台車(1)の移動経路と前記回転ブラシ(30)の動きをプログラムし、該プログラムに従い前記清掃装置による自動清掃がなされるようにしたことを特徴とする[14]に記載のコークス炉の炉頂清掃方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の清掃装置によれば、障害物があるコークス炉の炉頂部などを適切かつ効率的に清掃することができるとともに、装炭車の稼働中か否かに関わりなく清掃を行うことができる。また、堆積物の吸引手段やホッパーを有しないため、構造が単純で且つコンパクトであり、また、メンテナンスも容易であり、装炭車稼働中でもメンテナンスを行うことができる。
【0012】
また、かき寄せ手段が走行台車の車幅方向に移動可能な回転ブラシを備える清掃装置では、走行台車が直進したままでも障害物の回避が可能であり、より効率的な清掃作業を行うことができる。
【0013】
また、本発明の炉頂清掃方法によれば、上記のような清掃装置を用いてコークス炉の炉頂部を適切かつ効率的に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の清掃装置の一実施形態を示す全体斜視図である。
図2図2は、図1の実施形態の清掃装置の平面図である。
図3図3は、図1の実施形態の清掃装置の側面図である。
図4図4は、図1の実施形態の清掃装置において、かき寄せ手段を部分的に示す平面図である。
図5図5は、図1の実施形態の清掃装置において、かき寄せ手段を構成する回転ブラシと保持アームを部分的に示す側面図である。
図6図6は、図1の実施形態の清掃装置において、かき集め手段を構成するドーザーの支持構造を模式的に示す説明図である。
図7図7は、図1の実施形態の清掃装置について、ドーザーが備えるブラシの構成と路面へのブラシ毛先押付の有無が落粉回収率に与える影響を調査するために使用した実験装置を示すものであって、図7(a)は平面図、図7(b)は側面図である。
図8図8は、本発明の清掃装置の他の実施形態であって、ドーザーの動作を示す説明図である。
図9図9は、本発明の清掃装置の他の実施形態を示す平面図である。
図10図10は、図1の実施形態の清掃装置により装炭車用レール脇の所定の領域を清掃する場合における装置の動作(稼動手順)の一例を示す説明図である。
図11図11は、図10に示す装置の一連の動作(稼動手順)に続いて、堆積物集積場所まで堆積物を移送する動作(稼動手順)を示す説明図である。
図12図12は、図1の実施形態の清掃装置において、走行台車の側方位置(装炭車用レールの近傍領域)の路面に堆積した堆積物を回転ブラシで走行台車の前方に掃き寄せている状況を示す説明図である。
図13図13は、図1の実施形態の清掃装置において、負荷センサによりドーザーへの異常負荷が確認された場合における走行台車の回避動作の一例を示す説明図である。
図14図14は、図9の実施形態の清掃装置による装炭車用レール脇の清掃作業状況を示す説明図である。
図15図15は、図9の実施形態の清掃装置による装炭車用レール脇の清掃作業状況(図15(b))を、図1の実施形態の清掃装置による清掃作業状況(図15(a))と比較して示す説明図である。
図16図16は、炉頂部の地図データを取得するために光学式の測距センサを搭載した清掃装置を炉頂部の路面を走行させ、測距センサで周囲環境の計測をした結果を示すものであって、図16(a)は、2つの上昇管の実寸位置と測距センサで周囲環境の計測を行った計測位置(1)~(4)を示す説明図、図16(b)は、各計測位置(1)~(4)における計測結果を示す説明図である。
図17図17は、実施例で使用したコークス炉の炉頂部の模擬設備と清掃装置の動きを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の清掃装置(以下、「炉頂清掃装置」と呼ぶ。)は、一例としてコークス炉の炉頂部を路面として走行(自走)し、その路面に堆積した石灰粉などの落粉(堆積物)をかき集めることでコークス炉頂を清掃する清掃装置である。炉頂清掃装置は、走行台車1と、この走行台車1に搭載される落粉かき集め手段2(かき集め手段)及び落粉かき寄せ手段3(かき寄せ手段)などから構成される。
【0016】
図1図6は、本発明の炉頂清掃装置の一実施形態を示すものであり、図1は全体斜視図である。図2は平面図、図3は側面図、図4は落粉かき寄せ手段3を部分的に示す平面図、図5は落粉かき寄せ手段3を構成する回転ブラシ30と保持アーム32を部分的に示す側面図、図6は落粉かき集め手段2を構成するドーザー20の支持構造を模式的に示す説明図である。
【0017】
落粉かき集め手段2は、走行台車1の前面部に設けられ、走行台車1が前進することで走行台車1前方の路面に堆積している落粉をかき集める手段である。本実施形態では、落粉かき集め手段2は、ドーザー20(ブレード)で構成されている。なお、落粉かき集め手段2は、ドーザー以外にブラシ体、スクレーパーなどで構成してもよい。
【0018】
落粉かき寄せ手段3は、走行台車1の前部側に設けられ、走行台車1の側方の路面に堆積している落粉(すなわち落粉かき集め手段2ではかき集められない落粉)を走行台車1の前方にかき寄せるものである。このように、落粉かき寄せ手段3によって走行台車1の前方にかき寄せられた落粉も、落粉かき集め手段2でかき集められる。本実施形態の落粉かき寄せ手段3は、走行台車1の車幅方向に移動可能な回転ブラシ30を備えている。
【0019】
走行台車1は自走式の台車であり、車体10と走行用の車輪11a、11b(車輪11aが駆動輪)を備える。その車体10には、落粉かき集め手段2(ドーザー20)と落粉かき寄せ手段3(回転ブラシ30など)のほかに、駆動・操舵機構(図示せず)と、この駆動・操舵機構や回転ブラシ30の動作を制御する制御装置(図示せず)などが搭載されている。走行台車1は、その制御装置が駆動・操舵機構を制御することにより、予め決められたプログラムに従い或いは制御室からの指令に従い、コークス炉の炉頂部の路面を任意のタイミングで任意の方向に自走できる。通常は、予めプログラムされたコースを自動運転され、その間に路面の清掃が行われる。
【0020】
落粉かき集め手段2を構成するドーザー20は、下端が路面に接地することで路面上に堆積した落粉のかき集めを行うものであり、下端部に落粉かき集め用のブラシ21を備えている。ドーザー20がこのようなブラシ21を備えるのは、ドーザー20が路面に接地する箇所でドーザーと路面との密着性を高め、落粉のかき集め漏れが生じないようにするためである。
【0021】
ドーザー20(ドーザー本体部)は、走行台車1の車幅方向に沿って設けられる。本実施形態では、ドーザー20は、走行台車1の車幅方向に沿って設けられたドーザー本体部20aの一方の端部に、落粉かき寄せ手段3(回転ブラシ30)により車幅方向の一方側からかき寄せられた落粉を囲い込んで(せき止めて)車幅方向の他方側に逃さないようにするためのサイドドーザー部20bが連設されている。すなわち、ドーザー20は、ドーザー本体部20aとこれに連成されたサイドドーザー部20bによって、上から見下ろしたときの平面形状がL字状となるように構成されている。ドーザー20は、走行台車1の前部に設けられた1対の支持アーム5を介して、走行台車1の前面部に支持されている。
【0022】
ドーザー本体部20aの幅(走行台車1の車幅方向での幅)は特に制限はないが、あまり大きくなるとかき集める落粉による負荷が大きくなり過ぎるため、走行台車1の車体幅と同等~車体幅の3倍程度の範囲とすることが好ましい。また、サイドドーザー部20bの幅(走行台車1の車長方向での幅)も特に制限はないが、ドーザー本体部20aの幅の10%~50%程度が適当である。
【0023】
また、本実施形態では、ドーザー20(落粉かき集め手段2)にかかる負荷を計測するための負荷センサ4を備えている。そして、この負荷センサ4により計測される負荷が異常値(異常負荷検出)、すなわち過負荷の場合に、障害物により炉頂清掃装置の前進が困難であると判断し、走行台車1の障害物に対する回避動作が採られるようにしてある。ここで、障害物としては、「炉設備の一部」のほかに過剰な量の堆積物や路面の凹凸なども含まれる場合がある。
【0024】
負荷センサ4はロードセルなどで構成され、図6に示すようにドーザー20を支持する1対の支持アーム5(支持アーム5の途中)にそれぞれ取り付けられている。図6の例では、ドーザー20に負荷Fが作用した場合に、各負荷センサ4により負荷F/2が検出される。
【0025】
落粉かき寄せ手段3が備える回転ブラシ30は、移動機構により走行台車1の車幅方向に移動可能である。回転ブラシ30は、走行台車1の側方位置まで移動し、ドーザー20が届かない(ドーザー20がかき集めすることができない)の側方位置に堆積した落粉をドーザー20の前方位置まで掃き寄せる(ドーザー20の側方位置から前方位置に掃き出す)役目をする。また、回転ブラシ30を走行台車1の車幅方向に移動可能とすることにより、車幅方向での回転ブラシ30の位置調整を行うことで、走行台車1が直進したまま、障害物の回避や障害物周りの路面の清掃ができるようにしている。
【0026】
図4に示すように、落粉かき寄せ手段3は、回転ブラシ30の移動機構として、走行台車1にその車幅方向に沿って設けられたレール31と、このレール31に沿ってスライド移動可能な保持アーム32と、この保持アーム32をレール31に沿ってスライド移動させる駆動手段33を備えている。回転ブラシ30は保持アーム32に保持されることにより、走行台車1の車幅方向に移動可能となっている。
【0027】
駆動手段33としては、保持アーム32を一軸方向に移動させ得るものであれば種類を問わないが、本実施形態ではリニアアクチュエーターで構成されている。
【0028】
保持アーム32は、走行台車1の前方に延出した水平部320と、この水平部320の先端に連成された垂下部321とからなる逆L字形状を有する。保持アーム32の水平部320にはレール31に沿ってスライド移動するスライド部材35が取り付けられている。駆動手段33であるリニアアクチュエーターは、その本体330が走行台車1に固定され、駆動ロッド331がスライド部材35に連結されている。そして、保持アーム32(垂下部321)の下端に回転ブラシ30が保持されている。この回転ブラシ30は、回転駆動用のモータ300を備えている。また、回転ブラシ30のON-OFF制御及び駆動手段33(リニアアクチュエーター)による回転ブラシ30の位置制御も、予め決められたプログラムに従い或いは制御室からの指令に従い、上述した制御装置(走行台車1に搭載された制御装置)によりなされる。
【0029】
回転ブラシ30は、ドーザー20が届かない(ドーザー20がかき集めすることができない)の側方位置の路面に堆積した落粉をドーザー20の前方位置まで掃き寄せる(ドーザー20の側方位置から前方位置に掃き出す)役目をするものである。このため、回転ブラシ30の中心の移動端(移動可能範囲の端部)は、ドーザー20の幅方向の端部よりも装置外方に位置することが好ましい。具体的には、図2に示す回転ブラシ30の中心の移動端e1(移動可能範囲の端部)とドーザー20の幅方向の端部e2間の距離Lが300~1000mm程度であることが好ましい。
【0030】
また、回転ブラシ30は、路面に堆積した落粉が効率よく掃き出されるようにするために、図5に示すように、走行台車1の車長方向における先端側部分のみが路面に接地するように傾斜した状態で保持アーム32(垂下部321)の下端に保持されている。この場合の回転ブラシ30の傾斜角度α(水平方向に対する傾斜角度)は5~30°程度が好ましい。
【0031】
回転ブラシ30の回転方向は、走行台車1の側方位置の路面に堆積した落粉を走行台車1の前方位置に掃き寄せる(ドーザー20の側方位置から前方位置に掃き出す)ことができる回転方向である。したがって、本実施形態のように回転ブラシ30が台車進行(前進)方向に向かって右側の側方位置に移動した状態で落粉を走行台車1の前方位置に掃き寄せるようにした装置の場合には、回転ブラシ30は反時計回りに回転する。一方、回転ブラシ30が台車進行(前進)方向に向かって左側の側方位置に移動した状態で落粉を走行台車1の前方位置に掃き寄せるようにした装置の場合には、回転ブラシ30は時計回りに回転する。
【0032】
走行台車1には、レーザー距離計などのような光学式の測距センサ(図示せず)が搭載されている。この測距センサは、(i)事前に清掃領域の地図データを取得する際に炉頂清掃装置を走行させて障害物の位置を計測すること、(ii)炉頂清掃装置(走行台車1)を自動走行させる際に障害物の位置を計測すること、などのために用いられる。
【0033】
次に、ドーザー20が下端部に備える落粉かき集め用のブラシ21の好ましい条件について説明する。
【0034】
ブラシ21の構成や材質に特別な制限はないが、路面に堆積した落粉を特に効率的にかき集めての高い落粉清掃率(落粉回収率)得るためには、ブラシ丈長さ(毛足長さ)40~60mm、ブラシ厚さ10~100mm程度とすることが好ましい。また、ブラシ21は、その毛先を路面に押し付けるように設けられることが好ましい。また、ブラシ21の材質には特別な制限はないが、一般には、鋼線や銅線などの金属製繊維、カーボンファイバー、耐熱樹脂、耐熱ゴムなどのような耐熱性のある繊維状材料が好ましい。
【0035】
図7に示すような実験装置(図7(a)は平面図、図7(b)は側面図)を用いた実験により、ドーザー20が備えるブラシ21のブラシ丈長さ及び厚さと路面へのブラシ毛先押付の有無が落粉回収率に与える影響を調査した。なお、図7の実験装置のドーザー20の両側には、落粉を押し出す際に横方向に漏れないようにするためのサイドドーザー部200が備えられている。この実験では、実験装置のドーザー20に取り付けるブラシ21のブラシ丈長さ(毛足長さ)を20mm、40mm、60mmの3水準とするとともに、ブラシ厚さを変更するためにブラシ厚さ10mmのブラシ枚数を1~3枚の間でそれぞれ変化させ(例えば、図7(a)ではブラシ枚数3枚、図7(b)ではブラシ枚数1枚)、ブラシ毛先の路面への押し付け有り・無し(押し付け無し:ブラシが自重で路面と接触している状態、押し付け有り:ブラシが自重で路面と接触している状態から、さらに10mm程度の押込み量でブラシを路面に押し付けた状態)の両方で実験を行い、落粉回収率を調べた。その結果を表1及び表2に示す。これによれば、ブラシ丈長さ(毛足長さ)やブラシ厚さに関わりなく、さらにブラシ毛先の路面への押し付けの有無に関わりなく、一定の落粉回収率が得られているが、なかでも、ブラシ丈長さ(毛足長さ)40~60mm、ブラシ厚さ10~30mm程度のブラシ21を路面に押し付けた場合に、特に高い落粉回収率(75%以上)が得られていることが判る。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
図8は、本発明装置の他の実施形態を模式的に示す説明図(ドーザーの動作を示す説明図)である。この実施形態では、ドーザー20は支持アーム5を介して上方に回動可能であり、支持アーム5に設けられた負荷センサ4(図6参照)が過負荷(異常負荷)を検出したとき、例えば、図8(a)に示すように落粉fが大量過ぎて負荷センサ4が過負荷(異常負荷)を検出したときに、ドーザー20を上方に回動させて過負荷状態を回避できるようにしてある。この場合、ドーザー20を支持する支持アーム5は、走行台車1の側部に回転可能に軸支部50により軸支されている。なお、ドーザー20の上方への回動は、負荷センサ4が過負荷(異常負荷)を検出した時に自動的に行われるようにしてもよい。
【0039】
図9は、本発明装置の他の実施形態を示す平面図である。
【0040】
この実施形態では、ドーザー本体部20aは、走行台車1の車幅方向に対して、サイドドーザー部20bが連設された一端部側が、他端部側よりも走行台車1に近くなるような傾きを有している。このようにドーザー本体部20aを車幅方向と平行ではなく、斜めに配置することにより、回転ブラシ30の横に落粉を滞留させることなく、落粉をドーザー本体部20aの前方により円滑に移動させることができる。走行台車1の車幅方向に対するドーザー本体部20aの傾きθは、小さすぎると効果が十分でなく、大きすぎると装置サイズが長大となるため20~45°程度が好ましい。
【0041】
また、回転ブラシ30を保持する保持アーム32には、回転ブラシ30の後方位置で落粉の補助的なかき集めを行う落粉かき集め板34が付設されている。この落粉かき集め板34を設けることにより、回転ブラシ30の後方に落粉のかき集め漏れが生じることを防止することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、走行台車1の車幅方向における回転ブラシ30とサイドドーザー部20bの位置関係が図1図6の実施形態とは逆になっているが、この回転ブラシ30とサイドドーザー部20bの位置関係は、清掃すべきコークス炉の炉頂部のレイアウトなどに応じて適宜選択される。また、本実施形態では、図面を簡略化し、回転ブラシ30を走行台車1の車幅方向に移動させるためのレール31やスライド部材35の図示は省略してある。本実施形態のその他の構成は、図1図6の実施形態と同様であるので、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0043】
次に、本発明の炉頂清掃装置による清掃作業について、上記実施形態の装置を例に説明する。上記実施形態の清掃装置によるコークス炉の炉頂部の清掃は、基本的には、走行台車1を前進させ、走行台車1の前方の路面に堆積している落粉を落粉かき集め手段2であるドーザー20でかき集め、そのまま所定の場所に集積させるものであるが、より詳細には、次のような清掃作業が行われる。
(i)走行台車1を前進(直進)させ、走行台車1の前方の路面に堆積している落粉をドーザー20でかき集めるとともに、回転ブラシ30を走行台車1の側方位置(車幅方向における一方の側方位置)に移動させた状態で回転駆動させ、ドーザー20が届かない(ドーザー20がかき集めすることができない)の側方位置の路面に堆積した落粉をドーザー20の前方位置まで掃き寄せ(ドーザー20の側方位置から前方位置に掃き出す)、この落粉もドーザー20でかき集められる。
(ii)上記(i)の清掃中に回転ブラシ30が通過できない障害物があった場合には、回転ブラシ30を走行台車1の車幅方向で適宜移動させることにより、障害物を回避しつつ、障害物周りの路面の清掃(回転ブラシ30による落粉の掃き出し)を行う。
(iii)上記(i)及び(ii)により、所定領域の路面に堆積した落粉をドーザー20でかき集めたら、走行台車1をそのまま所定の落粉集積場所まで移動させ、その場所に落粉を集積させる。集積された落粉は作業者が石炭装入孔に投入することで処理することができるので、通常、落粉集積場所は石炭装入孔の近傍である。
【0044】
図10(a)~(e)は、本実施形態の炉頂清掃装置により装炭車用レール脇の所定の領域を清掃する場合の装置の動作(稼動手順)の一例を示している。図において、Rが装炭車用レール、xが装炭車用レール脇の障害物(例えば、装炭車位置決めのためのセンサー)である。
(a)走行台車1を装炭車用レール脇に沿って前進(直線状に走行)させ、走行台車1の前方の路面に堆積している落粉fをドーザー20でかき集める。このドーザー20による落粉のかき集めは、下記(b)~(e)でも同様に行われる。さらに、回転ブラシ30を装炭車用レールRの近傍(走行台車1の側方位置)に移動させた状態で回転駆動させ、装炭車用レールRの近傍の路面に堆積している落粉fをドーザー20の前方位置まで掃き寄せ(ドーザー20の側方位置から前方位置に掃き出す)、この落粉fもドーザー20でかき集める。
(b)走行台車1がさらに前進して回転ブラシ30が装炭車用レール脇の障害物xに接近又は接触したら、走行台車1を停止させるとともに、回転ブラシ30の回転駆動も停止させる。次いで、回転ブラシ30を走行台車1の車幅方向に移動させて、障害物xが避けられる位置まで退避させる。
(c)走行台車1を再び前進させ、回転ブラシ30が障害物xを通過した位置で走行台車1を停止させる。
(d)退避していた回転ブラシ30を走行台車1の車幅方向に移動させ、装炭車用レールRの近傍まで移動させる。
(e)再び、上記(a)と同様に走行台車1を前進させ、走行台車1の前方の路面に堆積している落粉fをドーザー20でかき集めるとともに、回転ブラシ30で装炭車用レールRの近傍の路面に堆積している落粉fをドーザー20の前方位置まで掃き寄せ(ドーザー20の側方位置から前方位置に掃き出す)、この落粉fもドーザー20でかき集める。
【0045】
以上の(a)~(e)の動作を繰り返すことで、複数の障害物xを回避しつつ落粉fのかき集めを行い、図11に示すように、所定領域(例えば3~5窯(5~10m)程度の領域)の落粉fのかき集めを行った毎に、走行台車1の進路を変えて石炭装入孔pの近傍まで移動させ、かき集めた落粉fを石炭装入孔pの近傍に置く。しかる後、走行台車1をレール近傍までバックさせ、さらに車体を90°旋回させ、上記(a)~(e)の清掃作業に戻る。石炭装入孔pの近傍に集められた落粉は、適時作業者により石炭装入孔pに投入される。
【0046】
図12は、走行台車1の側方位置(装炭車用レールRの近傍領域)の路面上に堆積した落粉fを回転ブラシ30で走行台車1の前方位置に掃き出している状況を示しているが、回転ブラシ30は、走行台車1の車長方向における先端側部分のみが路面に接地するように傾斜した状態で保持されているため、路面に堆積した落粉fが効率よく掃き出されている。
【0047】
また、図13は、負荷センサ4によりドーザー20への過負荷(異常負荷)が検出された場合における走行台車1の回避動作の一例を示しており、前進する炉頂清掃装置のドーザー20が障害物xに当たり(或いは過剰な量の落粉をかき集めたり、路面の凹凸に引っ掛かったりする場合もある)、負荷センサ4により過負荷(規定値を上回る異常負荷)が検出された場合(図13(a))、走行台車1が略車長分の距離だけバックし(図13(b))、次いで90°旋回(図13(c))した後、走行を再開し、さらに旋回を繰り返して障害物xを迂回した後、元の走行ルートに戻って前進を続ける(図13(d))。なお、以上のような走行台車1の回避動作を予めプログラムしておき、負荷センサ4によりドーザー20への過負荷(異常負荷)が検出された場合に、このプログラムに従い回避動作が自動的に行われるようにしてもよい。
【0048】
また、図8に示すような実施形態の炉頂清掃装置の場合には、さきに述べたように、負荷センサ4が過負荷(異常負荷)を検出したときドーザー20を上方に回動させて過負荷状態を回避することもできる
図14は、図9の実施形態の炉頂清掃装置による装炭車用レール脇の清掃作業状況を示しており、この実施形態ではドーザー20(ドーザー本体部20a)が走行台車1の車幅方向に対して傾きを有しているため、回転ブラシ30で掃き出された落粉fが走行台車1の前進とともにドーザー20の前面を回転ブラシ30から遠ざかる方向に移動する。このため、回転ブラシ30の横に落粉fが滞留しにくくなり、ドーザー20による落粉fのかき集めがより適切になされ、回転ブラシ30の横に落粉fが滞留することによる回転ブラシ30の後方への落粉fのかき集め漏れも抑えることができる。さらに、保持アーム32に付設された落粉かき集め板34が、回転ブラシ30の後方位置で落粉fの補助的なかき集めを行うため、回転ブラシ30の後方への落粉fのかき集め漏れがより確実に防止される。
【0049】
これを図15に基づいてより具体的に説明すると、図15(a)は図1図3の実施形態の装置、図15(b)は図9の実施形態の装置による装炭車用レール脇の清掃作業状況をそれぞれ示している。図15(a)の場合には、回転ブラシ30の横の楕円(仮想線)で囲んだ領域に落粉fが滞留し、この落粉fの滞留に邪魔されて落粉fが前方に移動できず、回転ブラシ30の後方への落粉fのかき集め漏れが生じる場合がある。これに対して図15(b)の場合には、上述したようにドーザー20(ドーザー本体部20a)が傾きを有しているため、回転ブラシ30で掃き出された落粉fが走行台車1の前進とともにドーザー20の前面を回転ブラシ30から遠ざかる方向に移動するので、回転ブラシ30の横に落粉fが滞留しにくくなり、ドーザー20による落粉fのかき集めがより適切になされるとともに、図15(a)に示すような回転ブラシ30の後方への落粉fのかき集め漏れの発生を確実に抑制できる。しかも、保持アーム32に付設された落粉かき集め板34が、回転ブラシ30の後方位置で落粉の補助的なかき集めを行うため、回転ブラシ30の後方への落粉fのかき集め漏れがより確実に防止される。
【0050】
本発明の炉頂清掃装置による清掃作業(例えば、図10(a)~(e)及び図11に示すような清掃作業)は、制御室からのリアルタイムの指令で実行されるようにしてもよいが、コークス炉の炉頂部の路面には図10(a)~(e)及び図11に示すような装炭車用レール脇の障害物のほかに上昇管などの障害物もあるため、事前に清掃すべき領域の地図を作成し、その地図に基づき走行台車1の移動経路と回転ブラシ30の動き(移動パターン及び回転駆動のON-OFFなど)をプログラムし、そのプログラムに従い炉頂清掃装置による清掃作業が自動的に行われるようにすることが好ましい。この場合、炉頂清掃装置に光学式の測距センサ(例えばレーザー距離計)を搭載し、事前に地図作成のためだけに清掃すべき領域で炉頂清掃装置を走行させ、搭載した測距センサにより障害物の位置を計測して地図データ(障害物位置を含む地図データ)を取得し、その地図データに基づき上記プログラムを作成することが好ましい。また、炉頂清掃装置(走行台車1)の自動走行時に、搭載された光学式測距センサで周囲環境を計測し、この計測した周囲環境のデータと地図データを照らし合わせて、現在の位置を推定する制御が行われることが好ましい。
【0051】
図16は、地図データを取得するために光学式の測距センサ(レーザー距離計)を搭載した炉頂清掃装置を炉頂部の路面を走行させ、測距センサで周囲環境(障害物の位置)を計測した結果を示したものである。図16(a)は、2つの上昇管G、Gの実寸位置と、測距センサで周囲環境の計測を行った計測位置(1)~(4)を示すものであり、また、図16(b)は、各計測位置(1)~(4)における計測結果を示すものである。この図16(b)において、各計測位置(1)~(4)における●(プロット)が測距センサにより得られた2つの上昇管G、Gの位置の座標を示しており、仮想線の円が●(プロット)から求められた上昇管G、Gの位置を示している。この2つの上昇管G、Gの計測による位置データを、実寸の位置データとともに表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3には、実寸データに対する計測データの最大誤差、最小誤差を示してあるが、これらがいずれも50mm以下であれば、走行台車1が上昇管G、G間を問題なく移動できるような移動経路の生成が可能であると考えられる。表3によれば、計測位置(1)~(4)に関わらず、実寸データに対する計測データの最大誤差、最小誤差はいずれも50mm以下であり、上昇管G、Gの位置が概ね正しく計測(検出)されていることが判る。以上のことから、炉頂清掃装置に搭載した光学式の測距センサによる計測により、障害物の位置が正確に把握された地図データを取得でき、炉頂清掃装置の移動経路の生成が可能であることが判る。
【0054】
以上述べたように、本発明の炉頂清掃装置は、障害物があるコークス炉の炉頂部を適切かつ効率的に清掃することができ、また、装炭車とは無関係に炉頂部を自走するものであるため、装炭車の稼働中か否かに関わりなく清掃を行うことができる利点がある。また、落粉の吸引手段やホッパーを有しないため、構造が単純で且つコンパクトであり、また、メンテナンスも容易であり、装炭車稼働中でもメンテナンスを行うことができる利点がある。
【0055】
なお、上記実施形態では、清掃装置によってコークス炉の炉頂部に堆積する落粉を清掃する場合について説明したが、本発明の清掃装置は、堆積物が存在する様々な場所の清掃に用いることができ、また、様々な堆積物を清掃対象とすることができる。
【実施例
【0056】
図17に示すような模擬設備において、装炭車用レール脇の幅500mm、長さ4500mmの領域に落粉に見立てて石炭粉を散布し、本発明の図1の炉頂清掃装置と、図9の炉頂清掃装置と、回転ブラシのない炉頂清掃装置をそれぞれ用いて清掃試験を行った。石炭粉の散布量は0.8kg/m、1.5kg/m、4.5kg/mの3水準とした。
【0057】
炉頂清掃装置をマニュアル操作し、それぞれ図10(a)~(e)及び図11に示すような清掃作業を行い、落粉回収率を調べた。この結果を表4に示すが、回転ブラシのない炉頂清掃装置よりも本発明の炉頂清掃装置(図1の装置、図9の装置)の方が、炉頂部を効率的に清掃できることが判る。また、図1の炉頂清掃装置に較べて図9の炉頂清掃装置の方が、清掃の効率がさらに高められることが判る。
【0058】
【表4】
【符号の説明】
【0059】
1 走行台車
2 落粉かき集め手段(かき集め手段)
3 落粉かき寄せ手段(かき寄せ手段)
4 負荷センサ
5 支持アーム
10 車体
11a、11b 車輪
20 ドーザー
20a ドーザー本体部
20b サイドドーザー部
21 ブラシ
30 回転ブラシ
31 レール
32 保持アーム
33 駆動手段
34 落粉かき集め板
35 スライド部材
50 軸支部
300 モータ
320 水平部
321 垂下部
330 本体
331 駆動ロッド
p 石炭装入孔
f 落粉(堆積物)
e1 移動端
e2 端部
x、x 障害物
R 装炭車用レール
、G 上昇管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17