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特許7173330ダッシュボード用透孔構造体、それに関連するクロスメンバ、及び、それに対応するダッシュボード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ダッシュボード用透孔構造体、それに関連するクロスメンバ、及び、それに対応するダッシュボード
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20221109BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20221109BHJP
   B62D 25/14 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B60K37/00 G
B62D25/08 J
B62D25/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021525596
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2019080729
(87)【国際公開番号】W WO2020099273
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】1860516
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ロイック ベゾー
(72)【発明者】
【氏名】ロビン ロー
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507818(JP,A)
【文献】特開2007-161131(JP,A)
【文献】特開平09-249048(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006040624(DE,A1)
【文献】特表2022-507159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00
B62D 25/00
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の横方向搭載位置に搭載される自動車用ダッシュボード本体を形成する構造体であって、
前記構造体は、三次元プリントによって製造された網糸と結節とを形成する網状部材の形態を有する単一体の透孔構造を有しており、
前記透孔構造が、
前記構造体全体に渡って形成され、前記構造体が搭載位置にあるときに横方向に延在し、一定の曲率半径で湾曲されたクロスメンバを受ける形状を有し、前記クロスメンバに固定される少なくとも二つの固定材を有する、第一内部通路と、
前記構造体が前記搭載位置にあるときに前記構造体の車両後方に向けられた表面に前記第一内部通路を接続させ、ステアリングコラム固定支持材を固定する少なくとも一つの固定材を有する、第二内部通路と、を規定している、構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の構造体であって、
前記第二内部通路が、前記第一内部通路の一端の近傍において前記第一内部通路に接続されており、前記第一内部通路の前記固定材が、前記第二内部通路と前記第一内部通路の他端との間に位置されている、構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の構造体であって、
前記構造体が、前記構造体の体積を少なくとも部分的に定める外皮を備えた、透孔構造の単一体の内部骨格を有しており、かつ、前記外皮が、透孔表面、孔無し表面、並びに、一つ以上の透孔領域及び孔無し領域を有する表面から選ばれた外面を有している、構造体。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の構造体であって、
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリプロピレン及びポリ乳酸から選ばれた高分子材料で形成されている、構造体。
【請求項5】
特に金属で形成され、請求項1~4の何れか一項に記載の構造体内に挿入され得るダッシュボード用クロスメンバであって、
中空の、一定の曲率を有する湾曲した管と、
前記管に固定された少なくとも二つの固定材と、を備えている、クロスメンバ。
【請求項6】
請求項5に記載のダッシュボード用クロスメンバであって、
前記管は、その各端部にフランジを備えており、前記フランジの少なくとも1つは取り外し可能な状態で前記管に接続されている、クロスメンバ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のダッシュボード用クロスメンバであって、
前記固定材が、前記管の中心軸に平行な、前記管の表面上の単一の長手方向に沿って設けられている、クロスメンバ。
【請求項8】
車両の内部に横方向に取り付けられる自動車用ダッシュボードであって、
各端部にフランジを備え、前記フランジの少なくとも一方が取り外し可能に結合されている、一定曲率半径の湾曲した管を備えたクロスメンバと、
前記クロスメンバに固定されるための少なくとも1つの固定材を有するステアリングコラム固定支持材と、
特に三次元プリントによって製造された、ダッシュボード本体を形成する網糸と結節とを形成する網状部材の形態を有する単一体の透孔構造を有する構造体と、を備えており、
前記構造体が、
前記構造体全体に渡って形成され、前記ダッシュボードが車両内に取り付けられた際に前記車両に対して横方向に延在し、前記クロスメンバを受ける形状を有し、前記クロスメンバに固定されるための少なくとも二つの固定材を有する、第一内部通路と、
前記ダッシュボードが前記車両内に取り付けられた際に前記構造体の車両後方に向けられた面に前記第一内部通路を接続させ、前記ステアリングコラム固定支持材に固定されるための少なくとも一つの固定材を有する、第二内部通路と、を規定しており、
前記ステアリングコラム固定支持材が前記第二内部通路内で前記構造体に固定されており、かつ、前記クロスメンバが前記第一内部通路内で前記構造体に固定されていると共に前記ステアリングコラム固定支持材に固定されている、自動車用ダッシュボード。
【請求項9】
自動車であって、
構造的ボディシェルと、請求項8に記載のダッシュボードと、を備えており、
前記ダッシュボードは、(1)前記クロスメンバの二つの前記フランジのそれぞれ、(2)前記ステアリングコラム固定支持材の後部、及び、(3)前記構造体の底部領域それぞれ配された少なくとも四つの固定領域を介して前記ボディシェルに固定される、自動車。
【請求項10】
請求項8に係るダッシュボードの取付方法であって、
前記ステアリングコラム固定支持材を前記第二内部通路内に導入して前記構造体に固定し、
前記第一内部通路の端部の一方を介してスライドさせて前記クロスメンバを、前記フランジが設けられてない端部から、前記第一通路内に導入し、
前記クロスメンバを前記ステアリングコラム固定支持材及び前記構造体に固定し、
前記構造体内へと導入された前記クロスメンバの前記端部に前記フランジを固定する、ダッシュボードの取付方法。
【請求項11】
請求項10に記載のダッシュボードの取付方法であって、
(1)前記ステアリングコラム固定支持材が前記クロスメンバの下方に取り付けられている、(2)前記クロスメンバが実質的に水平な面内に延在する、及び、(3)前記クロスメンバの凹面が、前記ダッシュボードが前記車両内に取り付けられた際に前記車両の前方に向けられている、の何れか一つの特徴を備えている、ダッシュボードの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダッシュボード本体を形成する透孔構造[structure lacunaire / openwork structure]を備えた構造体に関する。また、上記構造体に導入されて固定されるような形状を持たされたクロスメンバに関すると共に、上記構造体及び上記クロスメンバを備えたダッシュボードに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の分野において、ダッシュボードは、運転者及び前席助手席乗員用シートの前方の車室内に横方向に搭載される。ダッシュボード本体は、ダッシュボードの骨格を構成する。それは、ダッシュボード外壁を形成するトリムや表皮によって覆われる。ダッシュボード本体は、具体的に、インストルメントパネル、ドライビングインジケータ、並びに、例えば空調・カーラジオ及びナビゲーション装備をコントロールするためのいろいろなコントロール手段など、様々な装備アイテムを支持している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、ダッシュボード本体は、互いに結合された多くの要素で構成されている。これらは、一般に、高分子材料又は複合材料によって成形された後にリベット止めやボルト止め等によって結合されることで作られた部品である。従って、ダッシュボード本体の組み立ては、比較的複雑で、組み立てられたものは重い。
【0004】
本発明の目的は、特に、「3Dプリント」とも呼ばれる「三次元プリント」として知られる更なる製造工程によって単一体として製造されるダッシュボード本体を提案することでこれらの欠点を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明の主題は、車室内の横方向搭載位置に搭載されることを意図された自動車用ダッシュボード本体を形成する構造体に関する。本発明によれば、前記構造体は、三次元プリントによって製造された網糸と結節とを形成する網状部材の形態を有する単一体の透孔構造を有しており、前記透孔構造が、
前記構造体全体に渡って形成され、前記構造体が搭載位置にあるときに横方向に延在し、一定の曲率半径で湾曲されたクロスメンバを受ける形状を有し、前記クロスメンバに固定されることを意図された少なくとも二つの固定材を有する、第一内部通路と、
前記構造体が前記搭載位置にあるときに前記構造体の車両後方に向けられた表面に前記第一内部通路を接続させ、ステアリングコラム固定支持材を固定することを意図された少なくとも一つ、好ましくは二つの固定材を有する、第二内部通路と、を規定している。
【0006】
「透孔構造」は、材料の量を制限することを意図された孔、穿孔及び/又は空洞を有する構造として理解される。その用いられる材料の量は、想定される使用に対して当該構造の機構的に完全な状態にとって必要な材料の最小量に相当し得る。この材料の量は、例えば、その重量を自身で支えるためや、車両のボディシェルに固定されるためや補助的要素の統合(締結構造、HVAC[heating,ventilation及びair-conditioning]ユニットの統合、収納部の統合など)によってその表面に作用する力に当該構造が耐えなければならない力を計算することで決定され得る。
【0007】
従って、本発明に係る構造体の透孔構造は、網糸と結節とを形成する網状部材の形態を有している。そのような網状形態は、中空導管、半中実導管(内部構造は格子とも呼ばれる)又は相互結合中実導管[vaisseaux creux, semi pleins (structure interieure appelee aussi latice) ou pleins interconnectes]に似た部分によって形成され得る。
【0008】
クロスメンバを固定するための構造体の固定材は、構造体の搭載位置において、クロスメンバの上部又は下部領域に固定されるように配置され得る。クロスメンバの下部領域への固定は、クロスメンバの保持を向上させる。
【0009】
第二内部通路は、車両のステアリングホイールが取り付けられるステアリングコラム固定支持材を受け止める。結果、構造体の搭載位置において、それは運転者に対向して配置される。
【0010】
従って、前記第二内部通路は、前記第一内部通路の一端の近傍において前記第一内部通路に接続されており、前記第一内部通路の前記固定材は、前記第二内部通路と前記第一内部通路の他端との間に位置されている。これにより、クロスメンバを第一内部通路に導入させやすくできる。
【0011】
前記構造体が、前記構造体の体積を少なくとも部分的に定める外皮を備えた、透孔構造の単一体の内部骨格を有しており、かつ、前記外皮が、透孔表面、孔無し表面、並びに、一つ以上の透孔領域及び孔無し領域を有する表面から選ばれた外面を有していてもよい。特に、外皮は、構造体が搭載位置に搭載されたときに車室内部の目に見える部分に相当し得る。従って、第二内部通路は、この外皮を備えた構造体の表面上に開口される。
【0012】
本発明に係る構造体は、三次元プリントによって形成されることが好ましく、例えば、熱溶解フィラメント積層(熱溶解積層モデリング又は熱溶解フィラメント造形)や選択的レーザー焼結によって形成される。このため、この技術を用いてプリントされ得るどのような材料も使用することができる。
【0013】
好ましくは、前記材料が、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)及びポリ乳酸(PLA)から選ばれた高分子材料でもよい。高分子材料には、ガラスやカーボンの粒子も充填され得る。
【0014】
本発明は、上記発明にかかる構造体に挿入され得るダッシュボード用クロスメンバにも関する。前記クロスメンバは、好ましくは中空な、一定の曲率半径を有する湾曲した管を有している。従って、クロスメンバは、ごく簡単に製造され得るもので、特に、管は、単一体であり得るもので、かつ/又は、実質的のその全長に渡って実質的に一定部分を有している。さらに、管の当該部分は、例えば円形などの単純な幾何学的形状を有しているが、他の形状も有し得る(楕円、長円、正方形、長方形などの部分)。
【0015】
管は、例えば鉄などの金属製であり得る。
【0016】
一実施形態においては、前記クロスメンバは、前記管に固定された、前記構造体に固定されることを意図された少なくとも二つの固定材を備えていてもよい。
【0017】
そして、前記固定材は、前記管の中心軸に平行な、前記管の表面上の単一の長手方向に沿って設けられ得る。これにより、クロスメンバを構造体の第一内部通路に導入しやすくできる。
【0018】
これらの固定材は、クロスメンバがそれらの凹面を塞ぐように、例えば溶接によってクロスメンバに固定されたU字状片であり得る。従って、それらは、簡単に製造され得るもので、それらによる固定は堅牢になる。さらに、この構成によって、ナットの上記片の凹面の内部のU字状部の底部への(特に溶接による)固定を可能とし、ボルトをナットの中心に位置する孔に挿通させることを可能とする。
【0019】
一実施形態においては、前記クロスメンバの前記管は、その各端部にフランジを備えており、前記フランジの少なくとも1つは取り外し可能な状態で前記管に接続されている。従って、クロスメンバは、フランジを有していない端部から構造体に導入されることができ、このようにすれば、構造体の第一内部通路に導入させやすくでき、また、第一内部通路の内部寸法を小さくすることもできる。
【0020】
この取り外し可能な固定は、フランジに固定されて管の一端にフィットするスリーブによって実現され得る。好ましくは、スリーブは、管の端部の平坦部に適合する少なくとも1つの平坦部を有し得る。これにより、スリーブ、そのためにフランジも、管に対して正確に位置決めされることができ、また、これにより、フランジを車両のボディシェル上にマウントしやすくすることができる。平坦部があることで、管が円形部を有している場合に管に対するスリーブの回転を防止することができる。
【0021】
本発明は、車両内部に横方向に搭載されることを意図された自動車用ダッシュボードにも関する。
【0022】
本発明によれば、前記ダッシュボードは、
一定曲率半径の湾曲した管を備えたクロスメンバと、
前記クロスメンバに固定されるための少なくとも1つの固定材を有するステアリングコラム固定支持材と、
特に三次元プリントによって製造された、ダッシュボード本体を形成する網糸と結節とを形成する網状部材の形態を有する単一体の透孔構造を有する構造体と、を備えており、
前記構造体が、
前記構造体全体に渡って形成され、前記ダッシュボードが車両内に取り付けられた際に前記車両に対して横方向に延在し、前記クロスメンバを受ける形状を有し、前記クロスメンバに固定されるための少なくとも二つの固定材を有する、第一内部通路と、
前記ダッシュボードが前記車両内に取り付けられた際に前記構造体の車両後方に向けられた面に前記第一内部通路を接続させ、前記ステアリングコラム固定支持材に固定されるための少なくとも一つ、好ましくは二つの固定材を有する、第二内部通路と、を規定している。
【0023】
さらに、前記ステアリングコラム固定支持材は前記第二内部通路内で前記構造体に固定されており、かつ、前記クロスメンバは前記第一内部通路内で前記構造体に固定されていると共に前記ステアリングコラム固定支持材に固定されている。
【0024】
このようにして得られたアッセンブリは、限定された数の部品と固定材とを有しており、このため、その重量を低減できると共にその取り付けは簡略化される。
【0025】
特に、構造体及び/又はクロスメンバは、上述したようにされ得る。
【0026】
特に、クロスメンバの管は各端部にフランジを備え得るものであり、フランジの少なくとも一方は取り外し可能に管に結合されている。この結合は、上述した管の一端にフィットするスリーブによって実現され得る。
【0027】
構造体は、ダッシュボードが車両の内部に取り付けられた際に、クロスメンバの下方でステアリングコラム固定支持材に受け止められる形状を有し得る。特に、ステアリングコラム固定支持材は、構造体の搭載位置においてクロスメンバの手前に部分的に配置され得る。
【0028】
ステアリングコラム固定支持材は、例えばクロスメンバを補完する形状を備えることができ、クロスメンバを受ける部分も備え得る。これにより、その受部がクロスメンバを案内するのでクロスメンバを導入しやすくでき、特にステアリング固定支持材がクロスメンバの可能にある場合はクロスメンバの保持も改善され得る。
【0029】
本発明のさらなる主題は、構造的ボディシェルと上述した全て又はいくつかの特徴を有するダッシュボードとを備えた自動車に関し、前記ダッシュボードは以下の箇所に配された少なくとも四つの固定領域を介して前記ボディシェルに固定される:
前記クロスメンバの二つの前記フランジのそれぞれ、
前記ステアリングコラム固定支持材の後部、及び、
前記構造体の底部領域。
【0030】
最後に、本発明は、本発明に係るダッシュボードの取付方法であって、
前記ステアリングコラム固定支持材を前記第二内部通路内に導入して前記構造体に固定し、
前記第一内部通路の端部の一方を介してスライドさせて前記クロスメンバを、必要であれば前記フランジが設けられてない端部から、前記第一内部通路内に導入し、
前記クロスメンバを前記ステアリングコラム固定支持材及び前記構造体に固定し、
任意に、前記構造体内へと導入された前記クロスメンバの前記端部に前記フランジを取り付けると共に、前記フランジを溶接、ボルト、リベット等により前記クロスメンバに固定する、方法に関する。
【0031】
これにより、アッセンブリは素早くかつ簡単に取り付けられ得る。
【0032】
前記ステアリングコラム固定支持材は、前記クロスメンバの下方に取り付けられ得るもので、これにより、その保持が改善され得る。車両の前後方向に対してクロスメンバの手前に部分的に配され得る。
【0033】
変形例又は組み合わせとして、前記クロスメンバの凹面は、前記ダッシュボードが前記車両内に取り付けられた際に前記車両の前方に向けられ得る。これにより、クロスメンバは、特にステアリングコラム固定支持材に固定された位置において、できるだけ車両後方に配置し得る。このようなクロスメンバとステアリングコラム固定支持材との近接位置は、ステアリングホイールに伝達される振動を制限することができる。
【0034】
何れの場合も、前記クロスメンバは、水平又は実質的に水平な面内においても延在し得る。このように水平に近い位置によって、ステアリング固定支持材とクロスメンバとを隔てる距離を減らすことができる。
【0035】
本発明は、発明を限定しない以下の図面を参照しつつ説明される:
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る透孔構造体の斜視図である。
図2図2は、ステアリングコラム固定支持材が固定された図1の透孔構造体の斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るクロスメンバが上記構造体の内部に取り付けられている、図2相当図である。
図4図4は、二つのフランジを備えた上記クロスメンバの図3相当図である。
図5図5は、図1に示される上記構造体の側面図である。
図6図6は、ステアリングコラム固定支持材に固定された、本発明の一実施形態に係るクロスメンバの斜視図である。
図7図7は、図6に示されるクロスメンバのフランジの一つを示している。
図8図8は、図7中のフランジと協働する上記クロスメンバの一端を示している。
図9図9は、前記構造体への固定点における上記クロスメンバの断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示において、前、後、上及び下の語は、構造体及びクロスメンバを備えたダッシュボードが車両に搭載された状態での車両の前、後、上及び下方向を指す。X、Y及びZ軸はそれぞれ車両の長手軸(前から後ろ)、横軸及び垂直軸に対応する。
【0038】
実質的に、水平、長手又は垂直とは、それぞれ、水平、長手又は垂直方向/面に対して、±20°、更には10°又は5°の範囲の角度を形成する方向/面を意味するものであると理解される。
【0039】
実質的に、平行、直角とは、それぞれ、平行、直角方向/角度に対して、±20°、更には10°又は5°の範囲を意味するものであると理解される。
【0040】
図1は、自動車用ダッシュボード本体を形成する構造体10を示している。この構造体
10は、車室内の(Y軸に沿った)横装着位置に装着されることを意図されている。
【0041】
本発明によれば、この構造体10は、この場合は三次元プリント(「3Dプリント」とも呼ばれる)によって製造された、単一体の透孔構造を有している。
【0042】
図1(及び図2図5)から分かるように、導管12に似た相互結合部による網状部分が特徴的である。これらの導管12それぞれの厚み及び形状は、例えば、機構的成立性や剛性等の条件を達成する所望の使用状態で用いることができる構造を得るように選択され得る。同様に、これらの導管12の相互結合領域は、様々な形状及び様々な寸法を持ち得る。最後に、これらの導管は中空でも中実でもよい。なお、中空導管は、材料量を制限しつつ当該導管の構造を補強する網(格子形態又は多孔質形態の構造)を形成する内部構造を有し得る。
【0043】
本発明によれば、前記透孔構造10は、
前記構造体10全体に渡って形成され、前記構造体10がその搭載位置にあるときに横方向に延在する第一内部通路14(図1及び5参照)と、
前記構造体10が前記搭載位置にあるときに前記構造体10の車両後方に向けられた表面11bに前記第一通路14を接続させる第二内部通路16、とを規定している。
【0044】
第二通路16は、この場合、第一通路14の一端15aの近傍で第一通路14に接続されている。第二通路16の位置は、車両内の運転者の位置に対応している。この第二通路16は、この場合、実質的に第一通路14に対して直角である。
【0045】
第一通路14も、クロスメンバ20に固定されることを意図された少なくとも2つの固定材を有しており、四つの固定材141、142、143、144が設けられている。ただし、本発明は固定材の数には制限されない。二つ又は三つの固定材のみが設けられてもよく、固定材の数は四つを超えてもよい。
【0046】
本実施形態では、四つの固定材141、142、143、144が第二通路16と第一通路の他端15bとの間に配置されている(図1参照)。図9に示されるように、例えば、それらは、L字状片の形態でボルト26aが挿通されてナット26bによりクロスメンバ20の固定材221に取り付けられる。しかし、例えば、クロスメンバ20をステアリングコラム固定支持材30に固定するために用いられる環状部材32のように、他の形式の固定材が設けられてもよい。
【0047】
第一通路14は、図6及び9を参照しつつより詳しく説明されるように、一定の曲率半径で湾曲されたクロスメンバ20を受けるような形状も有している。
【0048】
第二通路16は、ステアリングコラムのための固定支持材30を固定することを意図された少なくとも一つの固定材を有している。本実施形態では、二つの固定材161及び162が第二通路16の各側部に設けられている。これらは、二つの対向する平面であり、第二通路16の横方向の下記側部に配置され、それぞれボルトやリベット等を貫通させるための小孔によって穿孔されている。またここでも、固定材の数やそれらの形状は、制限されない。
【0049】
示された実施形態では、構造体10は、構造体10の体積を部分的に定める外皮10bを備えた、透孔構造の単一体の内部骨格10aを有している。
【0050】
本実施形態では、外皮10bは、実質的に、車両内部に装着されたときに車室内から見える構造体10の表面に相当する。それは、ウィンドシールド下方に位置する上面11a、と、運転者及び助手席乗員と対面して配置されて車両後方に向けられた正面11bも有している(図2参照)。なお、第二通路16は、正面11bに開口されている。
【0051】
本実施形態では、外皮10bそれ自身が透孔構造を有している。したがって、それは、透孔領域[zone lacunaires]及び孔無し領域[zone pleines]を有する外面11を有しており、目の粗いメッシュのファブリックや網に似ている。なお、内部骨格10aは、全体として、外皮10bを構成する導管12よりも太い導管12を有している。
【0052】
したがって、このような孔開きの外皮10bは、図示されないが例えばテキスタイルなどの(孔の無い)連続面技法で任意にカバーされてもよい。
【0053】
変形例として、外皮10bは、中実表面、又は、一つ以上の透孔及び中実の領域を有する表面を有していてもよい。
【0054】
図4は、特に、構造体10、クロスメンバ20及びステアリング固定支持材30を有するダッシュボード40を示している。
【0055】
図6~9を参照してクロスメンバ20を説明する。それは、好ましくは単一体の、一定の曲率半径の湾曲した管22を備えている。この管22は、好ましくは中空であり、そのため、材料を節約でき、好ましくは、例えばスチールなどの金属のような、強い材料で形成される。本実施形態では、それは、実質的にその全長、即ち、その端部22a及び22bを除いた全長にわたって一定の円形断面を有している。例えば、スチールが用いられた場合、管は1.5mmの肉厚と50mmの半径とを有し得る。
【0056】
クロスメンバ20にステアリングホイールをできるだけ近くに位置させるような湾曲半径が選択されてもよく、クロスメンバ20はその凹面を車両前方に向けて実質的に水平面内で構造体10に取り付けられる。実施形態では、およそ2500mmの湾曲半径が用いられ得る。
【0057】
実施形態によれば、管22は、構造体10への固定のための少なくとも2つの固定材を有し得る。この場合、四つの固定材221、222、223、224が設けられている。それらは、クロスメンバ20の第一通路14への導入を容易にするために、好ましくは、管の表面で管22の中心線Xに平行な単一の長手線Lに沿って設けられている
【0058】
示された実施形態では、四つの固定材は同一である。それらは、図9に示されるように、U字状片の形態である。この図において、固定材221は、底部221cで繋がれた二つの翼部221a及び221bを有しており、それらの自由縁は例えば溶接によって管22に固定されている。したがって、管22は、固定材221の凹面を閉じている。底部221cは、ボルト-ナット16a、26bによって構造体10の固定材141に固定され、図示されるように、ボルト26aは底部及び固定材141を貫通している。特に、ナット26bは、ボルトを締結しやすいように、凹面の内部で底部221cに固定され得る。
【0059】
示された実施形態では、管22はその端部22a、22bにフランジ23、24をそれぞれ備えている。これらのフランジ23、24は、クロスメンバ20を車両のボディシェルに固定することを意図するものである。一般に、クロスメンバは車両のボディシェルのフロントヒンジピラーに固定される。
【0060】
示された実施形態では、一方のフランジ23は、管の端部22a周囲にフィットするスリーブ231によって管22に接続されている。スリーブ231は、端部22aの平坦部22c及び22dにそれぞれ適合する二つの平行な平坦部232及び233を備えている。フランジ23は、スリーブ231及び端部22aの小孔を貫通するボルト-ナット25a、25bによって管22に固定される。図に示されるように、取り付けを容易にするため、ナット25bはスリーブ231に溶接され得る。他方のフランジ24は、この場合は溶接によって、管22に取り外せないように固定されている。しかし、スリーブによって管22に固定されてもよい。
【0061】
フランジ23の構造によって、管22を構造体内に導入した後に管に取り付けやすくできる。なお、フランジは、管22が構造体内に導入された後に例えば溶接等によって取り外せないように固定されてもよい。
【0062】
変形例として、スリーブ231は、管22の内周にフィットされてもよい。他の固定材でも同様である。
【0063】
最後に、ダッシュボード40は、ステアリングホイールを支持することを意図されたステアリングコラム固定支持材30を備えている。
【0064】
固定支持材30は、クロスメンバ20への固定のための少なくとも一つの部材32を備えている。本実施形態では、図6に詳しく示されているように、二つの固定材32が設けられている。これらの固定材32は、この場合、クロスメンバ20の管22の全周をつかむ環状部材である。
【0065】
固定支持材30は、構造体10への固定のための二つの部材34も備えている。この場合、これらの固定材は、ボルト35によって固定されるように構造体10の平坦面161、162に押し付けられるL字状片の形態である(図6)。なお、構造体の形状に応じて、任意に単一の固定点とされてもよい。
【0066】
本実施形態では、固定支持材30は、クロスメンバ20の下面に固定されるように、第一通路14の下方に固定される。固定支持材30は、クロスメンバを支持可能で受け止めるが、その第一通路14への導入時にはそれも案内する部品36を有し得る。
【0067】
固定支持材30の後部には、構造10の後面に固定されると共に車両のフロントバルクヘッド(図示せず)の内面に固定されるために、少なくとも一つの固定材37が設けられている。この固定材は、例えば、固定支持材30の小孔を貫通するボルト-ナットによって実現される。
【0068】
したがって、アッセンブリは、フランジ23及び24、固定材37によって固定支持材30の後部、並びに、構造体10の底部13が接続される、四つの固定領域でボディシェルに固定される。
【0069】
その取り付け形態は、全体的には、従来技術のダッシュボードのそれと原則的に似ている。
【0070】
ダッシュボード40の取り付けを図1~4を参照しつつ説明する。
【0071】
まず最初に、ステアリングコラム固定支持材30が第二通路16内で透孔構造体10に結合される。このため、片34が構造体10の面161、162に接触し、ボルト35によって固定される。固定支持材30は、図2に示されるように、第一通路14の下方に位置される。
【0072】
そして、クロスメンバ20が、端部15bを通して第一通路14内に導入される。このため、フランジ23は、最初に構造体10内に挿入される管22の端部22aにはまだ固定されていない。クロスメンバの固定材221~224は第二通路と構造体の端部15bとの間に配されるので、それらはステアリングコラムのための固定支持材30のクロスメンバへの導入経路を阻害しない。クロスメンバ20の固定材221~224が構造体の対応する固定材121~144と接触する位置まで、クロスメンバはスライドされて導入される。さらに、管22の一部は、ステアリングコラム固定支持材30の受け部品36上に載る(図3)。図5に示されるように、第一通路14は、クロスメンバの断面よりも大きな内部寸法を有しており、クロスメンバの収納部を規定し、クロスメンバは収納部の壁部と接触しつつ収納部内をスライドする。
【0073】
そして、クロスメンバ20は、固定材32によってステアリングコラム固定支持材30に固定されると共に、固定材221~224によって構造体10に固定される。
【0074】
フランジ23が、例えば、溶接によって取り外せないように、あるいは、ボルト-ナット25a、25bによって取り外し可能に、クロスメンバ20の端部22aに取り付けられる(図4)。
【0075】
構造体10の底部13(図1)は、センターフロアパン(図示せず)として知られるボディシェル下部に固定される。このセンターフロアパンへの結合は、ボルト-ナット形式の一つ又は複数の固定材によって行われる。
【0076】
したがって、本発明に係るダッシュボードの取り付け方法は、少ない部品数でのために素早くかつ簡単に行うことができる。特に、複数部品が互いに結合された23kgを超える従来のダッシュボード本体に対して、約13kgの重量の構造体の製造が可能になる。
【0077】
さらに、構造体の形状及び配置は、固定材によって大きく制約されることがなく、固定材の数も削減できる。
【0078】
3Dプリントによって、グローブボックス、エアバッグハウジング、空調ダクト等を収容する収容部42のような他の機能をダッシュボード本体に統合することもできる。
【0079】
図6~9において説明された実施形態では、第一通路14は一定の曲率半径で湾曲されたクロスメンバ20を受けるような形状とされた。発明範囲を逸脱することなく、本発明の説明されていない他の実施形態では、第一通路は、実質的に真っ直ぐなクロスメンバを受けるように実質的に直線的に形成されてもよい。本発明の説明されていないさらに他の実施形態では、第一通路は、一定の曲率半径を有していない湾曲したクロスメンバを受けるように形成されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9