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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/12 20060101AFI20221109BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20221109BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B60K17/12
B60L15/00 H
H02K7/116
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021566827
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036902
(87)【国際公開番号】W WO2021131204
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2019237142
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】神内 直也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 望
(72)【発明者】
【氏名】三治 広明
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/017373(WO,A1)
【文献】特開2001-354040(JP,A)
【文献】国際公開第2007/049808(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/12
B60L 15/00
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
一対の車輪にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材と、
前記回転電機と一対の前記出力部材との間で駆動力を伝達する伝達機構と、
前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、を備え、
前記回転電機と一対の前記出力部材とは、互いに平行な2つの軸に分かれて配置され、
前記伝達機構は、一対の前記出力部材の少なくとも一方に駆動連結される出力ギヤを、一対の前記出力部材と同軸に備え、
軸方向に沿う軸方向視で前記回転電機と前記インバータ装置とが並ぶ方向を第1方向とし、前記軸方向及び前記第1方向の双方に直交する方向を第2方向として、
一対の前記出力部材の一方である第1出力部材は、前記回転電機及び前記インバータ装置の双方が配置される前記第2方向の位置において、前記回転電機と前記インバータ装置との前記第1方向の間に挟まれて配置され、
前記出力ギヤは、前記軸方向視で、前記回転電機と前記インバータ装置とのそれぞれと重複するように配置され
前記第1出力部材は、前記第2方向に沿う方向視で、前記インバータ装置と重複するように配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
車両に搭載された状態において、前記インバータ装置の少なくとも一部が、前記第1出力部材の回転軸心よりも下側に配置される、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第1出力部材は、前記第2方向に沿う方向視で、前記回転電機と重複するように配置されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記出力ギヤは、前記回転電機及び前記インバータ装置に対して前記軸方向の一方側に配置されている、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記伝達機構は、前記回転電機と前記出力ギヤとの間の動力伝達経路に、カウンタギヤ機構を備え、
前記カウンタギヤ機構の回転軸心は、前記軸方向視で、前記出力ギヤの回転軸心に対して前記第1方向における前記インバータ装置側とは反対側に配置されている、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記出力ギヤの回転軸心と前記カウンタギヤ機構の回転軸心とは、前記軸方向視で、前記回転電機の回転軸心に対して前記第2方向における同じ側に配置されている、請求項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
車両に搭載された状態において、前記出力ギヤの回転軸心は、前記軸方向視で、前記回転電機の回転軸心と前記インバータ装置の中心とを通る仮想直線に対して下側に配置される、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記回転電機を収容するケースを備え、
前記回転電機と前記第1出力部材とが、前記ケースが備える共通の収容室に収容されている、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項9】
前記収容室を第1収容室として、
前記ケースは、前記第1収容室と、前記インバータ装置が収容される第2収容室と、前記第1収容室と前記第2収容室とを区画する隔壁と、を備え、
前記第1収容室と前記第2収容室とが、前記ケースに一体的に形成されている、請求項に記載の車両用駆動装置。
【請求項10】
前記回転電機及び前記インバータ装置を収容するケースを備え、
前記ケースは、前記回転電機が収容される第1収容室と、前記インバータ装置が収容される第2収容室と、前記第1収容室と前記第2収容室とを区画する隔壁と、を備え、
前記回転電機と前記インバータ装置とを接続する配線が挿通される貫通孔が、前記隔壁を貫通して形成され、
車両に搭載された状態において、前記貫通孔が、前記出力ギヤの回転軸心よりも上側であって前記回転電機及び前記インバータ装置の双方が配置される高さにおいて、前記軸方向視で前記回転電機と前記インバータ装置との前記第1方向の間に配置される、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項11】
車両に搭載された状態において、前記インバータ装置が、前記回転電機よりも車両前後方向の中央側に配置される、請求項1から10のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項12】
前記伝達機構は、差動歯車機構を備え、
前記差動歯車機構は、前記回転電機の側から伝達される駆動力を、一対の前記出力部材に分配する、請求項1から11のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項13】
前記差動歯車機構は、一対の前記出力部材と同軸に配置され、前記回転電機の側から前記出力ギヤに伝達される駆動力を一対の前記出力部材に分配する、請求項12に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と、回転電機と出力部材との間で駆動力を伝達する伝達機構と、回転電機を駆動制御するインバータ装置と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置の一例が、国際公開第2019/154685号(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術や課題の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。特許文献1の車両用の電気駆動ユニット(1)は、電気モータ(3)と、電気モータ(3)に連結された伝動装置(4)と、パワーエレクトロニクス装置(5)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/154685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図1及び図6に示されているように、特許文献1の電気駆動ユニット(1)では、パワーエレクトロニクス装置(5)が、電気モータ(3)及び伝動装置(4)の図中上側に跨って配置されている。そのため、特許文献1の電気駆動ユニット(1)では、電気駆動ユニット(1)全体の軸方向視での寸法が、電気モータ(3)、伝動装置(4)、及びパワーエレクトロニクス装置(5)のそれぞれの軸方向視での配置領域の総和に応じた、比較的大きなものとなりやすい。
【0005】
そこで、車両用駆動装置の軸方向視での寸法の小型化を図ることが可能な技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両用駆動装置は、回転電機と、一対の車輪にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材と、前記回転電機と一対の前記出力部材との間で駆動力を伝達する伝達機構と、前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、を備え、前記回転電機と一対の前記出力部材とは、互いに平行な2つの軸に分かれて配置され、前記伝達機構は、一対の前記出力部材の少なくとも一方に駆動連結される出力ギヤを、一対の前記出力部材と同軸に備え、軸方向に沿う軸方向視で前記回転電機と前記インバータ装置とが並ぶ方向を第1方向とし、前記軸方向及び前記第1方向の双方に直交する方向を第2方向として、一対の前記出力部材の一方である第1出力部材は、前記回転電機及び前記インバータ装置の双方が配置される前記第2方向の位置において、前記回転電機と前記インバータ装置との前記第1方向の間に挟まれて配置され、前記出力ギヤは、前記軸方向視で、前記回転電機と前記インバータ装置とのそれぞれと重複するように配置されている。
【0007】
本構成では、第1出力部材が、回転電機及びインバータ装置の双方が配置される第2方向の位置において、回転電機とインバータ装置との第1方向の間に挟まれて配置されている。よって、回転電機、インバータ装置、及び第1出力部材と同軸に配置される出力ギヤのそれぞれの第2方向の配置領域を重複させて、車両用駆動装置の第2方向における小型化を図ることができる。そして、本構成では、出力ギヤが、軸方向視で、回転電機とインバータ装置とのそれぞれと重複するように配置されている。そのため、上記のように第1出力部材が回転電機とインバータ装置との第1方向の間に挟まれて配置される構成としつつ、軸方向視で出力ギヤと重複する空間を有効に利用することで、回転電機とインバータ装置とを第1方向に近づけて配置することができる。これにより、車両用駆動装置の第1方向における小型化を図ることもできる。
【0008】
以上のように、本構成によれば、車両用駆動装置の第1方向及び第2方向のそれぞれにおける小型化を図ること、すなわち、車両用駆動装置の軸方向視での寸法の小型化を図ることができる。なお、本構成では、回転電機とインバータ装置とが、出力ギヤと同軸に配置される第1出力部材に対して第1方向の両側に分かれて配置されている。そのため、回転電機が軸方向視で出力ギヤと重複する割合と、インバータ装置が軸方向視で出力ギヤと重複する割合との双方を高めやすくなっており、これにより、車両用駆動装置の軸方向視での寸法の小型化を図りやすくなっている。
【0009】
車両用駆動装置の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る車両用駆動装置が搭載された車両の模式図
図2】実施形態に係る車両用駆動装置の斜視図
図3】実施形態に係る車両用駆動装置の断面図
図4】実施形態に係る車両用駆動装置の各部品の軸方向視での配置関係を示す図
図5】実施形態に係る車両用駆動装置の各部品の軸方向視での配置関係を示す図
図6】その他の実施形態に係る車両用駆動装置の断面図
図7】その他の実施形態に係る車両用駆動装置の各部品の軸方向視での配置関係を示す図
図8】その他の実施形態に係る車両用駆動装置の各部品の軸方向視での配置関係を示す図
図9】その他の実施形態に係る車両用駆動装置の各部品の軸方向視での配置関係を示す図
図10】その他の実施形態に係る車両用駆動装置の各部品の軸方向視での配置関係を示す図
図11】その他の実施形態に係る車両用駆動装置の断面図
図12】その他の実施形態に係る車両用駆動装置の各部品の軸方向視での配置関係を示す図
図13】その他の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
【発明を実施するための形態】
【0011】
車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、鉛直方向V(図4等参照)は、車両用駆動装置100の使用状態での鉛直方向、すなわち、車両用駆動装置100をその使用状態での向きに配置した場合の鉛直方向を意味する。車両用駆動装置100は車両200(図1参照)に搭載されて使用されるため、鉛直方向Vは、車両用駆動装置100が車両200に搭載された状態(以下、「車両搭載状態」という)での鉛直方向、より具体的には、車両搭載状態であって車両200が平坦路(水平面に沿う道路)に停止している状態での鉛直方向と一致する。そして、上側V1及び下側V2は、この鉛直方向Vにおける上側及び下側を意味する。また、以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置100に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
【0012】
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等)が含まれていてもよい。
【0013】
本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向の配置領域が重複する」とは、一方の部材の特定方向の配置領域内に、他方の部材の特定方向の配置領域の少なくとも一部が含まれることを意味する。
【0014】
図3に示すように、車両用駆動装置100は、回転電機1と、一対の車輪W(図1参照)にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材6と、回転電機1と一対の出力部材6との間で駆動力を伝達する伝達機構3と、回転電機1を駆動制御するインバータ装置90と、を備えている。車両用駆動装置100は、更に、回転電機1及びインバータ装置90を収容するケース2を備えている。ケース2は、一対の出力部材6及び伝達機構3も収容している。
【0015】
一対の出力部材6の一方である第1出力部材61は、一対の車輪Wの一方である第1車輪W1に駆動連結され、一対の出力部材6の他方である第2出力部材62は、一対の車輪Wの他方である第2車輪W2に駆動連結される。図1に示すように、車両用駆動装置100が搭載される車両200は、第1車輪W1と一体的に回転する第1ドライブシャフト63と、第2車輪W2と一体的に回転する第2ドライブシャフト64と、を備えている。第1ドライブシャフト63は、例えば等速ジョイントを介して第1車輪W1に連結され、第2ドライブシャフト64は、例えば等速ジョイントを介して第2車輪W2に連結される。そして、第1出力部材61は、第1ドライブシャフト63と一体的に回転するように第1ドライブシャフト63に連結され、第2出力部材62は、第2ドライブシャフト64と一体的に回転するように第2ドライブシャフト64に連結される。
【0016】
車両用駆動装置100は、回転電機1の出力トルクを、一対の出力部材6を介して一対の車輪Wに伝達させて、車両用駆動装置100が搭載された車両200を走行させる。すなわち、回転電機1は、一対の車輪Wの駆動力源である。一対の車輪Wは、車両200における左右一対の車輪(例えば、左右一対の前輪、又は左右一対の後輪)である。本実施形態では、回転電機1は、3相交流(多相交流の一例)で駆動される交流回転電機である。回転電機1は、直流電力と交流電力との間の電力変換を行うインバータ装置90を介して、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置と電気的に接続されており、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、車両200の慣性力等により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。
【0017】
図3に示すように、回転電機1と一対の出力部材6とは、互いに平行な2つの軸(具体的には、第1軸C1及び第2軸C2)に分かれて配置されている。具体的には、回転電機1が、第1軸C1上に配置され、一対の出力部材6が、第1軸C1とは異なる第2軸C2上に配置されている。第1軸C1及び第2軸C2は、互いに平行に配置される軸(仮想軸)である。伝達機構3は、一対の出力部材6の少なくとも一方に駆動連結される出力ギヤ30を、一対の出力部材6と同軸に(すなわち、第2軸C2上に)備えている。本実施形態では、第1軸C1が「回転電機の回転軸心」に相当し、第2軸C2が「出力ギヤの回転軸心」及び「第1出力部材の回転軸心」に相当する。
【0018】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、軸方向Aが車両左右方向に沿う向きで車両200に搭載される。軸方向Aは、第1軸C1及び第2軸C2に平行な方向、言い換えれば、第1軸C1及び第2軸C2の間で共通する軸方向である。すなわち、軸方向Aは、回転電機1の回転軸心が延びる方向であり、一対の出力部材6の回転軸心が延びる方向でもある。ここで、軸方向Aの一方側を軸方向第1側A1とし、軸方向Aの他方側(軸方向Aにおける軸方向第1側A1とは反対側)を軸方向第2側A2とする。軸方向第1側A1は、軸方向Aにおける伝達機構3に対して回転電機1が配置される側である。図3に示すように、第1出力部材61は、一対の出力部材6のうちの軸方向第1側A1に配置される方の出力部材6であり、第2出力部材62は、一対の出力部材6のうちの軸方向第2側A2に配置される方の出力部材6である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、軸方向第1側A1が車両右側となり、軸方向第2側A2が車両左側となる向きで、車両200に搭載される。よって、第1出力部材61が駆動連結される第1車輪W1は、右輪であり、第2出力部材62が駆動連結される第2車輪W2は、左輪である。図1では、車両用駆動装置100が、左右一対の前輪を駆動する前輪駆動方式の駆動装置である場合を想定している。よって、図1に示す例では、第1車輪W1は右前輪であり、第2車輪W2は左前輪である。
【0020】
図3に示すように、回転電機1は、ロータ10及びステータ11を備えている。ステータ11は、ケース2に固定され、ロータ10は、ステータ11に対して回転可能にケース2に支持されている。本実施形態では、ステータ11は、締結ボルト等の締結部材14を用いてケース2に固定されている。また、本実施形態では、回転電機1は、インナロータ型の回転電機であり、ロータ10は、ステータ11に対して径方向の内側に、径方向に沿う径方向視でステータ11と重複するように配置されている。ここでの径方向は、第1軸C1を基準とする径方向、言い換えれば、回転電機1の回転軸心を基準とする径方向である。
【0021】
ステータ11は、ステータコア12と、ステータコア12から軸方向Aに突出するコイルエンド部13と、を備えている。ステータコア12にはコイルが巻装されており、コイルにおけるステータコア12から軸方向Aに突出する部分がコイルエンド部13を形成している。コイルエンド部13は、ステータコア12に対して軸方向Aの両側に形成されている。本実施形態では、ステータコア12は、軸方向Aに延びる円筒状に形成された本体部に加えて、本体部に対して径方向(第1軸C1を基準とする径方向)の外側に突出するように形成された突出部を備えている。突出部には、ステータコア12をケース2に固定するための締結部材14が挿通される挿通孔が形成されている。
【0022】
図3に示すように、伝達機構3は、回転電機1に駆動連結される入力部材16を、回転電機1と同軸に(すなわち、第1軸C1上に)備えている。本実施形態では、入力部材16は、ロータ10と一体的に回転するようにロータ10に連結されている。図3に示す例では、車両用駆動装置100は、ロータ10が固定されるロータ軸15を備えており、入力部材16は、ロータ軸15と一体的に回転するようにロータ軸15に連結されている。具体的には、入力部材16における軸方向第1側A1の部分が、ロータ軸15における軸方向第2側A2の部分に連結(ここでは、スプライン連結)されている。このような構成とは異なり、車両用駆動装置100がロータ軸15を備えず、ロータ10が入力部材16(具体的には、入力部材16における軸方向第1側A1の部分)に固定される構成とすることもできる。
【0023】
図3に示すように、本実施形態では、伝達機構3は、差動歯車機構5を備えている。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、一対の出力部材6に分配する。本実施形態では、差動歯車機構5は、一対の出力部材6と同軸に(すなわち、第2軸C2上に)配置されており、回転電機1の側から出力ギヤ30に伝達される駆動力を一対の出力部材6に分配する。すなわち、本実施形態では、出力ギヤ30は、差動歯車機構5を介して、一対の出力部材6の双方に駆動連結されている。本実施形態では、差動歯車機構5は、傘歯車式の差動歯車機構であり、出力ギヤ30は、差動歯車機構5が備える差動ケース部と一体的に回転するように当該差動ケース部に連結されている。そして、差動歯車機構5は、出力ギヤ30の回転を、第1サイドギヤ51と第2サイドギヤ52とに分配する。差動歯車機構5は、回転電機1に対して軸方向第2側A2に配置されている。
【0024】
第1サイドギヤ51は、第1出力部材61と一体的に回転し、第2サイドギヤ52は、第2出力部材62と一体的に回転する。本実施形態では、第1サイドギヤ51は、第1出力部材61を構成する部材(ここでは、軸部材)とは別の部材に形成されており、第1出力部材61と一体的に回転するように第1出力部材61に連結(ここでは、スプライン連結)されている。第1出力部材61における少なくとも軸方向第1側A1の部分は、軸方向Aに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されており、第1ドライブシャフト63(図1参照)は、第1出力部材61の内部(内周面に囲まれる空間)に、軸方向第1側A1から挿入される。また、本実施形態では、第2サイドギヤ52は、第2出力部材62を構成する部材(ここでは、軸部材)に形成されている。具体的には、第2サイドギヤ52は、第2出力部材62における軸方向第1側A1の端部に形成されている。第2出力部材62における少なくとも軸方向第2側A2の部分は、軸方向Aに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されており、第2ドライブシャフト64(図1参照)は、第2出力部材62の内部(内周面に囲まれる空間)に、軸方向第2側A2から挿入される。
【0025】
図3に示すように、本実施形態では、伝達機構3は、回転電機1と出力ギヤ30との間の動力伝達経路に、カウンタギヤ機構4を備えている。カウンタギヤ機構4は、第1軸C1及び第2軸C2とは異なる第3軸C3上に配置されている。第3軸C3は、第1軸C1及び第2軸C2に平行な軸(仮想軸)である。本実施形態では、カウンタギヤ機構4は、入力部材16と一体的に回転する入力ギヤ17に噛み合うカウンタ入力ギヤ40aと、出力ギヤ30に噛み合うカウンタ出力ギヤ40bと、カウンタ入力ギヤ40aとカウンタ出力ギヤ40bとを連結するカウンタ軸40と、を備えている。入力ギヤ17は、回転電機1に対して軸方向第2側A2に配置され、カウンタギヤ機構4は、回転電機1に対して軸方向第2側A2に配置されている。本実施形態では、カウンタ入力ギヤ40aは、カウンタ出力ギヤ40bに対して軸方向第2側A2に配置されている。本実施形態では、第3軸C3が「カウンタギヤ機構の回転軸心」に相当する。
【0026】
本実施形態では、カウンタ入力ギヤ40aは入力ギヤ17よりも大径に形成され、カウンタ出力ギヤ40bは出力ギヤ30よりも小径に形成されている。よって、入力部材16の回転は、入力ギヤ17とカウンタ入力ギヤ40aとの歯数比に応じて減速されると共に、カウンタ出力ギヤ40bと出力ギヤ30との歯数比に応じて更に減速されて(すなわち、二段減速されて)、出力ギヤ30に伝達される。
【0027】
図2及び図3に示すように、本実施形態では、ケース2は、第1ケース部21と、第2ケース部22と、第3ケース部23と、を備えている。第2ケース部22は、第1ケース部21の軸方向第2側A2に接合され、第3ケース部23は、第1ケース部21の軸方向第1側A1に接合されている。第1ケース部21と第3ケース部23とに囲まれる空間に回転電機1が収容され、第1ケース部21と第2ケース部22とに囲まれる空間に伝達機構3が収容されている。このように、ケース2は、回転電機1が収容される第1収容室S1と、伝達機構3が収容される収容室と、を備えている。収容室は、収容対象物が収容される収容空間を形成している。本実施形態では、第1出力部材61は、第1収容室S1に収容されている。具体的には、第1出力部材61における少なくとも回転電機1と軸方向Aに重複する部分(軸方向Aの配置領域が重複する部分)が、第1収容室S1に収容されている。このように、本実施形態では、回転電機1と第1出力部材61とが、ケース2が備える共通の収容室(具体的には、第1収容室S1)に収容されている。本実施形態では、第1収容室S1が「収容室」に相当する。
【0028】
本実施形態では、ケース2は、更に、インバータ装置90が収容される第2収容室S2を備えている。具体的には、ケース2は、第1ケース部21に接合される第4ケース部24を備えており、第1ケース部21と第4ケース部24とに囲まれる空間(第2収容室S2)にインバータ装置90が収容されている。インバータ装置90は、ボルト等によってケース2に固定された状態で、第2収容室S2に収容されている。本実施形態では、第2収容室S2は、後述する第1方向第2側X2(図2参照)に開口するように第1ケース部21に形成されており、第4ケース部24は、当該開口部を塞ぐように第1ケース部21に接合されている。詳細は省略するが、インバータ装置90は、インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子を備えたスイッチング素子ユニット(パワーモジュール)と、インバータ回路を制御する制御装置が実装された制御基板と、インバータ回路の直流側の正負両極間電圧を平滑化する平滑コンデンサと、を備えており、これらのスイッチング素子ユニット、制御基板、及び平滑コンデンサが、第2収容室S2に収容されている。このように、本実施形態では、第1収容室S1と第2収容室S2とが1つのケース2に一体的に形成されている。
【0029】
図3に示すように、ケース2は、第1収容室S1と第2収容室S2とを区画する隔壁25(区画壁)を備えている。本実施形態では、第1収容室S1と第2収容室S2とが、ケース2(ここでは、第1ケース部21)に一体的に形成されている。具体的には、第1収容室S1と第2収容室S2とは、一部材(例えば、ダイカスト法によって形成された、材質を共通とする1つの部材)に形成されている。そして、本実施形態では、第1収容室S1と第2収容室S2とは、1枚の隔壁25によって区画されている。
【0030】
図2に示すように、本実施形態では、ケース2には、第1コネクタ81及び第2コネクタ82が設けられている。ここでは、第1コネクタ81及び第2コネクタ82は、低電圧コネクタである。例えば、インバータ装置90が備える制御基板に電力を供給するための電源線や、当該制御基板に制御信号を伝達するための信号線が、第1コネクタ81や第2コネクタ82に接続される。図示は省略するが、ケース2には、インバータ装置90が備えるインバータ回路に電力を供給するための電源線が接続される、高電圧コネクタも設けられている。
【0031】
ここで、図4に示すように、軸方向Aに沿う軸方向視で回転電機1とインバータ装置90とが並ぶ方向を第1方向Xとし、軸方向A及び第1方向Xの双方に直交する方向を第2方向Yとする。また、第1方向Xの一方側を第1方向第1側X1とし、第1方向Xの他方側(第1方向Xにおける第1方向第1側X1とは反対側)を第1方向第2側X2とし、第2方向Yの一方側を第2方向第1側Y1とし、第2方向Yの他方側(第2方向Yにおける第2方向第1側Y1とは反対側)を第2方向第2側Y2とする。第1方向第1側X1は、第1方向Xにおけるインバータ装置90に対して回転電機1が配置される側である。なお、図4や後に参照する図7図10、及び図12では、ステータコア12(具体的には、上述した本体部)の外周面を破線で示し、各ギヤの歯底円及び歯先円を一点鎖線で示し、第1出力部材61の外周面(具体的には、第1出力部材61における回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれて配置される部分の外周面)を実線で示している。
【0032】
本実施形態では、車両用駆動装置100は、第2方向第1側Y1が上側V1となり、第2方向第2側Y2が下側V2となる向きで、車両200に搭載される。また、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1方向第1側X1が前側L1(車両前後方向Lの前側)となり、第1方向第2側X2が後側L2(車両前後方向Lの後側)となる向きで、車両200に搭載される。図1に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、車両200における車両前後方向Lの中央部よりも前側L1に搭載される。そのため、第1方向Xにおける回転電機1に対してインバータ装置90が配置される側であって、本実施形態では後側L2となる第1方向第2側X2は、車両前後方向Lの中央側となる。よって、本実施形態では、車両搭載状態において、インバータ装置90は、回転電機1よりも車両前後方向Lの中央側に配置される。なお、車両用駆動装置100が、車両200における車両前後方向Lの中央部よりも後側L2に搭載される場合には、車両用駆動装置100を、第1方向第1側X1が後側L2となり、第1方向第2側X2が前側L1となる向きで車両200に搭載することで、インバータ装置90が回転電機1よりも車両前後方向Lの中央側に配置される構成とすることができる。このように車両用駆動装置100が車両200における車両前後方向Lの中央部よりも後側L2に搭載される場合、車両用駆動装置100により駆動される一対の車輪Wは、例えば左右一対の後輪とされる。
【0033】
車両200が、左右一対の前輪及び左右一対の後輪を備える場合に、左右一対の前輪及び左右一対の後輪のうちの車両用駆動装置100により駆動されない方(図1に示す例では、左右一対の後輪)が、車両用駆動装置100以外の駆動装置により駆動される構成とすることもできる。車両用駆動装置100以外の駆動装置は、例えば、内燃機関(回転電機以外の駆動力源の一例)の出力トルクを駆動対象の一対の車輪に伝達させる構成の駆動装置、回転電機(車両用駆動装置100が備える回転電機1とは別の回転電機)の出力トルクを駆動対象の一対の車輪に伝達させる構成の駆動装置、或いは、内燃機関及び回転電機(車両用駆動装置100が備える回転電機1とは別の回転電機)の双方の出力トルクを駆動対象の一対の車輪に伝達させる構成の駆動装置とされる。車両用駆動装置100以外の駆動装置を、車両用駆動装置100と同じ構成の駆動装置とすることもできる。
【0034】
図4に示すように、本実施形態では、回転電機1とインバータ装置90とは、それぞれの鉛直方向Vの配置領域が重複するように配置されている。そのため、一例として、軸方向Aに直交する水平方向H(言い換えれば、軸方向A及び鉛直方向Vに直交する方向)を、第1方向Xとして定義することができる。この場合、図4に示すように、第2方向Yは鉛直方向Vに平行な方向となる。また、別例として、軸方向視で、第1軸C1とインバータ装置90の中心90aとを通る仮想直線Eに沿う方向を、第1方向Xとして定義することもできる。ここで、軸方向視でのインバータ装置90の中心90aは、インバータ装置90の軸方向視での外形(外縁)を成す図形の重心とすることができる。図4に示す例では、インバータ装置90の軸方向視での外形を成す図形は、長方形状の図形であり、この長方形の重心(具体的には、対角線の交点)を軸方向視でのインバータ装置90の中心90aとすることができる。図4に示す例では、軸方向Aに直交する水平方向Hと、軸方向視で仮想直線Eに沿う方向とは、互いに平行な方向となる。すなわち、図4に示す例では、上記2つの定義のいずれによっても、第1方向Xは同じ方向に定義される。
【0035】
図4に示すように、第1出力部材61は、回転電機1及びインバータ装置90の双方が配置される第2方向Yの位置において、回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれて配置されている。第1出力部材61における回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれる部分は、回転電機1と軸方向Aの配置領域が重複すると共に、インバータ装置90と軸方向Aの配置領域が重複するように配置されている(図3参照)。そして、図4に示すように、出力ギヤ30は、軸方向視で、回転電機1とインバータ装置90とのそれぞれと重複するように配置されている。具体的には、出力ギヤ30における第1方向第1側X1の部分が軸方向視で回転電機1と重複し、出力ギヤ30における第1方向第2側X2の部分が軸方向視でインバータ装置90と重複するように、出力ギヤ30が配置されている。図3に示すように、出力ギヤ30は、回転電機1及びインバータ装置90に対して軸方向Aの一方側(具体的には、軸方向第2側A2)に配置されている。そして、回転電機1及びインバータ装置90は、それぞれの軸方向Aの配置領域が重複するように配置されている。本実施形態では、車両搭載状態において、インバータ装置90の少なくとも一部(図4に示す例では、一部のみ)が、第2軸C2よりも下側V2に配置される。なお、車両搭載状態において、インバータ装置90の全体が、第2軸C2よりも上側V1に配置される構成とすることもできる。
【0036】
図4に示すように、本実施形態では、第3軸C3は、軸方向視で、第2軸C2に対して第1方向Xにおけるインバータ装置90側とは反対側(すなわち、第1方向第1側X1)に配置されている。本実施形態では、第3軸C3は、軸方向視で、第1軸C1に対しても第1方向第1側X1に配置されている。また、本実施形態では、第2軸C2と第3軸C3とは、軸方向視で、第1軸C1に対して第2方向Yにおける同じ側(ここでは、第2方向第2側Y2)に配置されている。すなわち、第2軸C2は、軸方向視で、第1軸C1に対して第2方向第2側Y2に配置されている。ここでは、第2軸C2は、車両搭載状態において、軸方向視で、仮想直線Eに対して下側V2に配置される。また、第3軸C3は、軸方向視で、第1軸C1に対して第2方向第2側Y2に配置されている。ここでは、第3軸C3は、車両搭載状態において、軸方向視で、仮想直線Eに対して下側V2に配置される。また、本実施形態では、第3軸C3は、軸方向視で、第1軸C1と第2軸C2とを通る仮想直線に対してインバータ装置90の中心90a側とは反対側に配置されている。
【0037】
図4に示すように、本実施形態では、第1出力部材61は、第2方向Yに沿う方向視で、回転電機1と重複するように配置されている。すなわち、第1出力部材61は、回転電機1と第1方向Xの配置領域が重複するように配置されている。ここでは、第1出力部材61における第1方向第1側X1の部分が第2方向Yに沿う方向視で回転電機1と重複するように、第1出力部材61が配置されている。一方、本実施形態では、第1出力部材61は、第2方向Yに沿う方向視で、インバータ装置90と重複しないように配置されている。なお、図4に示す各部品の軸方向視での配置構成は一例であり、この配置構成は適宜変更することができる。例えば、図4の配置構成を第1方向Xに反転させた構成、図4の配置構成を第2方向Yに反転させた構成、或いは、図4の配置構成を第1方向X及び第2方向Yの双方に反転させた構成とすることができる。
【0038】
図5に示すように、回転電機1とインバータ装置90とを接続する配線91が挿通される貫通孔26が、隔壁25を貫通して形成されている。なお、図4は、車両用駆動装置100を軸方向第2側A2から見た場合の、車両用駆動装置100の各部品の軸方向視での配置関係を示しているのに対して、図5は、車両用駆動装置100を軸方向第1側A1から見た場合の、車両用駆動装置100の各部品の軸方向視での配置関係を示している。貫通孔26には、端子93を備えた端子台が取り付けられており、当該端子93を介して、コイルエンド部13から引き出された動力線92とインバータ装置90に接続された電源線(図示せず)とが電気的に接続されている。これらの電源線、端子93、及び動力線92が、回転電機1とインバータ装置90との間で電力(回転電機1を駆動するための電力や回転電機1が発電した電力)を伝達するための配線91を構成している。本実施形態では、回転電機1を駆動する交流電力の相数が“3”であることに対応して、3つの動力線92が設けられており、3つの貫通孔26が隔壁25に形成されている。
【0039】
図5に示すように、本実施形態では、車両搭載状態において、貫通孔26(ここでは、3つの全ての貫通孔26)が、第2軸C2よりも上側V1であって回転電機1及びインバータ装置90の双方が配置される高さ(鉛直方向Vの位置)において、軸方向視で回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に配置される。なお、ここでは、回転電機1が配置される高さには、ステータコア12の上述した突出部が配置される高さを含めている。図5に示す例では、車両搭載状態において、貫通孔26(ここでは、3つの全ての貫通孔26)が、第1軸C1よりも上側V1であって回転電機1及びインバータ装置90の双方が配置される高さにおいて、軸方向視で回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に配置される。
【0040】
〔その他の実施形態〕
次に、車両用駆動装置のその他の実施形態について説明する。
【0041】
(1)上記の実施形態では、図3に示すように、カウンタ入力ギヤ40aがカウンタ出力ギヤ40bに対して軸方向第2側A2に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、図6に示す例のように、カウンタ入力ギヤ40aがカウンタ出力ギヤ40bに対して軸方向第1側A1に配置される構成とすることもできる。図6に示す例では、インバータ装置90は、カウンタ入力ギヤ40aと軸方向Aの配置領域が重複するように配置されている。この場合、例えば、インバータ装置90が、車両前後方向Lに沿う方向視で、カウンタ入力ギヤ40aと重複するように配置される構成とすることができる。このように、インバータ装置90の少なくとも一部が伝達機構3と軸方向Aの配置領域が重複するように配置される構成とすることで、インバータ装置90の搭載スペースを大きく確保しやすくなる。
【0042】
(2)上記の実施形態では、第1出力部材61が、第2方向Yに沿う方向視で、回転電機1と重複するように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、図7に示す例のように、第1出力部材61が、第2方向Yに沿う方向視で、回転電機1と重複しないように配置される構成とすることもできる。
【0043】
(3)上記の実施形態では、第1出力部材61が、第2方向Yに沿う方向視で、インバータ装置90と重複しないように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、図8に示す例のように、第1出力部材61が、第2方向Yに沿う方向視で、インバータ装置90と重複するように配置される構成とすることもできる。また、例えば図10に示す例のように、第1出力部材61が、第2方向Yに沿う方向視で、回転電機1とインバータ装置90とのそれぞれと重複するように配置される構成とすることもできる。
【0044】
(4)上記の実施形態では、第2軸C2と第3軸C3とが、軸方向視で、第1軸C1に対して第2方向Yにおける同じ側(図4に示す例では、第2方向第2側Y2)に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2軸C2と第3軸C3とが、軸方向視で、第1軸C1に対して第2方向Yにおける互いに反対側に配置される構成とすることもできる。例えば、図9に示す例のように、軸方向視で、第2軸C2が第1軸C1に対して第2方向第2側Y2に配置され、第3軸C3が第1軸C1に対して第2方向第1側Y1に配置される構成とすることができる。図9に示す例では、第3軸C3は、軸方向視で、第1軸C1と第2軸C2との第1方向Xの間に配置されている。また、図9に示す例では、第3軸C3は、軸方向視で、第1軸C1と第2軸C2とを通る仮想直線に対してインバータ装置90の中心90a側と同じ側に配置されている。
【0045】
(5)上記の実施形態では、伝達機構3が、回転電機1と出力ギヤ30との間の動力伝達経路に、カウンタギヤ機構4を備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、図10に示す例のように、伝達機構3がカウンタギヤ機構4を備えず、入力ギヤ17と出力ギヤ30とが噛み合う構成とすることもできる。
【0046】
(6)上記の実施形態では、伝達機構3が1つのカウンタギヤ機構4を備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、図11及び図12に示す例のように、伝達機構3が2つのカウンタギヤ機構4を備える構成とすることもできる。図11及び図12に示す例では、伝達機構3は、第1カウンタギヤ機構4a及び第2カウンタギヤ機構4bの2つのカウンタギヤ機構4を備えている。第1カウンタギヤ機構4aは、第3軸C3上に配置され、第2カウンタギヤ機構4bは、第1軸C1、第2軸C2、及び第3軸C3とは異なる第4軸C4上に配置されている。第4軸C4は、第1軸C1、第2軸C2、及び第3軸C3に平行な軸(仮想軸)である。図11及び図12に示す例では、第3軸C3及び第4軸C4のそれぞれが「カウンタギヤ機構の回転軸心」に相当する。
【0047】
第1カウンタギヤ機構4aは、入力ギヤ17に噛み合う第1カウンタ入力ギヤ41aと、第1カウンタ出力ギヤ41bと、第1カウンタ入力ギヤ41aと第1カウンタ出力ギヤ41bとを連結する第1カウンタ軸41と、を備え、第2カウンタギヤ機構4bは、第1カウンタ出力ギヤ41bに噛み合う第2カウンタ入力ギヤ42aと、出力ギヤ30に噛み合う第2カウンタ出力ギヤ42bと、第2カウンタ入力ギヤ42aと第2カウンタ出力ギヤ42bとを連結する第2カウンタ軸42と、を備えている。図11及び図12に示す例では、車両用駆動装置100が、軸方向第2側A2が車両右側となり、軸方向第1側A1が車両左側となる向きで、車両200に搭載される場合を想定している。
【0048】
図12に示す例では、第3軸C3及び第4軸C4は、軸方向視で、第2軸C2に対して第1方向Xにおけるインバータ装置90側とは反対側(すなわち、第1方向第1側X1)に配置されている。また、図12に示す例では、第2軸C2と第3軸C3と第4軸C4とは、軸方向視で、第1軸C1に対して第2方向Yにおける同じ側(ここでは、第2方向第2側Y2)に配置されている。また、図12に示す例では、第3軸C3及び第4軸C4は、軸方向視で、第1軸C1と第2軸C2とを通る仮想直線に対してインバータ装置90の中心90a側とは反対側に配置されている。
【0049】
(7)上記の実施形態では、差動歯車機構5が、一対の出力部材6と同軸に(すなわち、第2軸C2上に)配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、図13に示す例のように、カウンタギヤ機構4に代えて差動歯車機構5が第3軸C3上に配置される構成とすることもできる。図13に示す例では、差動歯車機構5は、遊星歯車式の差動歯車機構である。具体的には、差動歯車機構5は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構であり、リングギヤ55の回転を、サンギヤ53とキャリヤ54とに分配する。伝達機構3は、第1出力部材61と一体的に回転する出力ギヤ30である第1出力ギヤ31と、第2出力部材62と一体的に回転する出力ギヤ30である第2出力ギヤ32と、を備えている。そして、キャリヤ54と一体的に回転する第1ギヤ71が、第1出力ギヤ31に噛み合い、サンギヤ53と一体的に回転する第2ギヤ72が、第2出力ギヤ32に噛み合い、リングギヤ55と一体的に回転する第3ギヤ73が、入力ギヤ17に噛み合っている。
【0050】
(8)上記の実施形態では、伝達機構3が、回転電機1の側から伝達される駆動力を一対の出力部材6に分配する差動歯車機構5を備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、伝達機構3が差動歯車機構5を備えない構成とすることもできる。この場合、一対の出力部材6の差動が許容されず、一対の出力部材6が常時同じ速度で回転する構成となる。
【0051】
(9)上記の実施形態では、車両搭載状態において、貫通孔26が、第2軸C2よりも上側V1であって回転電機1及びインバータ装置90の双方が配置される高さにおいて、軸方向視で回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、車両搭載状態において、貫通孔26が、回転電機1及びインバータ装置90の少なくともいずれかよりも上側V1に配置される構成とすることもできる。
【0052】
(10)上記の実施形態では、車両搭載状態において、インバータ装置90が、回転電機1よりも車両前後方向Lの中央側に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、車両搭載状態において、回転電機1が、インバータ装置90よりも車両前後方向Lの中央側に配置される構成とすることもできる。
【0053】
(11)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0054】
〔本実施形態のまとめ〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置の概要について説明する。
【0055】
車両用駆動装置(100)は、回転電機(1)と、一対の車輪(W)にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材(6)と、前記回転電機(1)と一対の前記出力部材(6)との間で駆動力を伝達する伝達機構(3)と、前記回転電機(1)を駆動制御するインバータ装置(90)と、を備え、前記回転電機(1)と一対の前記出力部材(6)とは、互いに平行な2つの軸(C1,C2)に分かれて配置され、前記伝達機構(3)は、一対の前記出力部材(6)の少なくとも一方に駆動連結される出力ギヤ(30)を、一対の前記出力部材(6)と同軸に備え、軸方向(A)に沿う軸方向視で前記回転電機(1)と前記インバータ装置(90)とが並ぶ方向を第1方向(X)とし、前記軸方向(A)及び前記第1方向(X)の双方に直交する方向を第2方向(Y)として、一対の前記出力部材(6)の一方である第1出力部材(61)は、前記回転電機(1)及び前記インバータ装置(90)の双方が配置される前記第2方向(Y)の位置において、前記回転電機(1)と前記インバータ装置(90)との前記第1方向(X)の間に挟まれて配置され、前記出力ギヤ(30)は、前記軸方向視で、前記回転電機(1)と前記インバータ装置(90)とのそれぞれと重複するように配置されている。
【0056】
本構成では、第1出力部材(61)が、回転電機(1)及びインバータ装置(90)の双方が配置される第2方向(Y)の位置において、回転電機(1)とインバータ装置(90)との第1方向(X)の間に挟まれて配置されている。よって、回転電機(1)、インバータ装置(90)、及び第1出力部材(61)と同軸に配置される出力ギヤ(30)のそれぞれの第2方向(Y)の配置領域を重複させて、車両用駆動装置(100)の第2方向(Y)における小型化を図ることができる。そして、本構成では、出力ギヤ(30)が、軸方向視で、回転電機(1)とインバータ装置(90)とのそれぞれと重複するように配置されている。そのため、上記のように第1出力部材(61)が回転電機(1)とインバータ装置(90)との第1方向(X)の間に挟まれて配置される構成としつつ、軸方向視で出力ギヤ(30)と重複する空間を有効に利用することで、回転電機(1)とインバータ装置(90)とを第1方向(X)に近づけて配置することができる。これにより、車両用駆動装置(100)の第1方向(X)における小型化を図ることもできる。
【0057】
以上のように、本構成によれば、車両用駆動装置(100)の第1方向(X)及び第2方向(Y)のそれぞれにおける小型化を図ること、すなわち、車両用駆動装置(100)の軸方向視での寸法の小型化を図ることができる。なお、本構成では、回転電機(1)とインバータ装置(90)とが、出力ギヤ(30)と同軸に配置される第1出力部材(61)に対して第1方向(X)の両側に分かれて配置されている。そのため、回転電機(1)が軸方向視で出力ギヤ(30)と重複する割合と、インバータ装置(90)が軸方向視で出力ギヤ(30)と重複する割合との双方を高めやすくなっており、これにより、車両用駆動装置(100)の軸方向視での寸法の小型化を図りやすくなっている。
【0058】
ここで、車両(200)に搭載された状態において、前記インバータ装置(90)の少なくとも一部が、前記第1出力部材(61)の回転軸心(C2)よりも下側(V2)に配置されると好適である。
【0059】
本構成によれば、第1出力部材(61)の周りのデッドスペースを有効に利用してインバータ装置(90)を配置することができ、車両用駆動装置(100)の大型化を抑制することができる。
【0060】
また、前記第1出力部材(61)は、前記第2方向(Y)に沿う方向視で、前記回転電機(1)と重複するように配置されていると好適である。
【0061】
本構成によれば、第1出力部材(61)が第2方向(Y)に沿う方向視で回転電機(1)と重複しないように配置される場合に比べて、車両用駆動装置(100)の第1方向(X)における小型化を図ることができる。
【0062】
また、前記第1出力部材(61)は、前記第2方向(Y)に沿う方向視で、前記インバータ装置(90)と重複するように配置されていると好適である。
【0063】
本構成によれば、第1出力部材(61)が第2方向(Y)に沿う方向視でインバータ装置(90)と重複しないように配置される場合に比べて、車両用駆動装置(100)の第1方向(X)における小型化を図ることができる。
【0064】
また、前記出力ギヤ(30)は、前記回転電機(1)及び前記インバータ装置(90)に対して前記軸方向(A)の一方側に配置されていると好適である。
【0065】
本構成によれば、回転電機(1)とインバータ装置(90)とのそれぞれの軸方向(A)の配置領域が重複する割合を高めることが容易となり、車両用駆動装置(100)の軸方向(A)における小型化を図ることができる。
【0066】
また、前記伝達機構(3)は、前記回転電機(1)と前記出力ギヤ(30)との間の動力伝達経路に、カウンタギヤ機構(4)を備え、前記カウンタギヤ機構(4)の回転軸心(C3,C4)は、前記軸方向視で、前記出力ギヤ(30)の回転軸心(C2)に対して前記第1方向(X)における前記インバータ装置(90)側とは反対側に配置されていると好適である。
【0067】
本構成によれば、伝達機構(3)がカウンタギヤ機構(4)を備えない場合に比べて、回転電機(1)と出力ギヤ(30)との間の変速比を所望の値とすることが容易となる。そして、本構成では、カウンタギヤ機構(4)の回転軸心(C3,C4)が、軸方向視で、出力ギヤ(30)の回転軸心(C2)に対して第1方向(X)におけるインバータ装置(90)側とは反対側に配置されている。そのため、インバータ装置(90)の少なくとも一部をカウンタギヤ機構(4)と軸方向(A)の配置領域が重複するように配置する場合に、カウンタギヤ機構(4)との干渉を避けつつインバータ装置(90)を第1方向(X)における回転電機(1)側に寄せて配置しやすくなっている。よって、カウンタギヤ機構(4)の回転軸心(C3,C4)が、軸方向視で、出力ギヤ(30)の回転軸心(C2)に対して第1方向(X)におけるインバータ装置(90)側と同じ側に配置される場合に比べて、回転電機(1)とインバータ装置(90)とを第1方向(X)に近づけて配置して、車両用駆動装置(100)の第1方向(X)における小型化を図りやすくなっている。
【0068】
上記のように、前記カウンタギヤ機構(4)の回転軸心(C3,C4)が、前記軸方向視で、前記出力ギヤ(30)の回転軸心(C2)に対して前記第1方向(X)における前記インバータ装置(90)側とは反対側に配置される構成において、前記出力ギヤ(30)の回転軸心(C2)と前記カウンタギヤ機構(4)の回転軸心(C3,C4)とは、前記軸方向視で、前記回転電機(1)の回転軸心(C1)に対して前記第2方向(Y)における同じ側に配置されていると好適である。
【0069】
本構成によれば、出力ギヤ(30)の回転軸心(C2)とカウンタギヤ機構(4)の回転軸心(C3,C4)とが、軸方向視で、回転電機(1)の回転軸心(C1)に対して第2方向(Y)における互いに反対側に配置される場合に比べて、カウンタギヤ機構(4)を第1方向(X)においてインバータ装置(90)から離して配置しやすくなる。よって、インバータ装置(90)の少なくとも一部をカウンタギヤ機構(4)と軸方向(A)の配置領域が重複するように配置する場合に、カウンタギヤ機構(4)との干渉を避けつつインバータ装置(90)を第1方向(X)における回転電機(1)側に寄せて配置することが容易となる。
【0070】
上記の各構成の車両用駆動装置(100)において、車両(200)に搭載された状態において、前記出力ギヤ(30)の回転軸心(C2)は、前記軸方向視で、前記回転電機(1)の回転軸心(C1)と前記インバータ装置(90)の中心(90a)とを通る仮想直線(E)に対して下側(V2)に配置されると好適である。
【0071】
車両用駆動装置(100)のケース(2)の内部には、潤滑や冷却のための油が封入される場合が多い。本構成によれば、回転電機(1)を上側(V1)に寄せて配置しつつ、出力ギヤ(30)を下側(V2)に寄せて配置することができる。そのため、回転電機(1)の回転による油の攪拌損失の低減を図りつつ、出力ギヤ(30)或いはそれと同軸に配置される部材を適切に潤滑することができる。
【0072】
また、前記回転電機(1)を収容するケース(2)を備え、前記回転電機(1)と前記第1出力部材(61)とが、前記ケース(2)が備える共通の収容室(S1)に収容されていると好適である。
【0073】
本構成によれば、回転電機(1)と第1出力部材(61)とが互いに別の収容室に収容される場合に比べて、回転電機(1)と第1出力部材(61)とを近づけて配置することが容易となり、車両用駆動装置(100)の大型化を抑制することができる。
【0074】
上記のように前記回転電機(1)と前記第1出力部材(61)とが共通の前記収容室(S1)に収容される構成において、前記収容室(S1)を第1収容室(S1)として、前記ケース(2)は、前記第1収容室(S1)と、前記インバータ装置(90)が収容される第2収容室(S2)と、前記第1収容室(S1)と前記第2収容室(S2)とを区画する隔壁(25)と、を備え、前記第1収容室(S1)と前記第2収容室(S2)とが、前記ケース(2)に一体的に形成されていると好適である。
【0075】
本構成によれば、第1収容室(S1)と第2収容室(S2)とを区画する壁を1枚の隔壁(25)とすることができ、車両用駆動装置(100)の大型化を抑制することができる。
【0076】
上記の各構成の車両用駆動装置(100)において、前記回転電機(1)及び前記インバータ装置(90)を収容するケース(2)を備え、前記ケース(2)は、前記回転電機(1)が収容される第1収容室(S1)と、前記インバータ装置(90)が収容される第2収容室(S2)と、前記第1収容室(S1)と前記第2収容室(S2)とを区画する隔壁(25)と、を備え、前記回転電機(1)と前記インバータ装置(90)とを接続する配線(91)が挿通される貫通孔(26)が、前記隔壁(25)を貫通して形成され、車両(200)に搭載された状態において、前記貫通孔(26)が、前記出力ギヤ(30)の回転軸心(C2)よりも上側(V1)であって前記回転電機(1)及び前記インバータ装置(90)の双方が配置される高さにおいて、前記軸方向視で前記回転電機(1)と前記インバータ装置(90)との前記第1方向(X)の間に配置されると好適である。
【0077】
本構成では、隔壁(25)に形成されて配線(91)が挿通される貫通孔(26)が、出力ギヤ(30)の回転軸心(C2)よりも上側(V1)に配置されている。そのため、回転電機(1)が収容される第1収容室(S1)に潤滑や冷却のための油が貯留されている場合に、貫通孔(26)を油面に対して上側(V1)に離れた位置に配置しやすくなる。よって、貫通孔(26)のシール性能を確保することが容易となっている。また、本構成では、回転電機(1)とインバータ装置(90)とを接続する配線(91)が挿通される貫通孔(26)が、軸方向視で、当該配線(91)による接続対象の第1方向(X)の間に配置されるため、配線(91)の長さを短く抑えることも容易となっている。
【0078】
また、車両(200)に搭載された状態において、前記インバータ装置(90)が、前記回転電機(1)よりも車両前後方向(L)の中央側に配置されると好適である。
【0079】
本構成によれば、車両(200)の前部衝突時や後部衝突時の衝突荷重からインバータ装置(90)を保護することが容易となる。
【0080】
また、前記伝達機構(3)は、差動歯車機構(5)を備え、前記差動歯車機構(5)は、前記回転電機(1)の側から伝達される駆動力を、一対の前記出力部材(6)に分配すると好適である。
【0081】
本構成によれば、一対の出力部材(6)の差動を許容することで、車両(200)の旋回性能を適切に確保することができる。
【0082】
上記のように前記伝達機構(3)が前記差動歯車機構(5)を備える構成において、前記差動歯車機構(5)は、一対の前記出力部材(6)と同軸に配置され、前記回転電機(1)の側から前記出力ギヤ(30)に伝達される駆動力を一対の前記出力部材(6)に分配すると好適である。
【0083】
本構成によれば、伝達機構(3)が回転電機(1)の回転を減速して一対の出力部材(6)に伝達するように構成される場合に、差動歯車機構(5)を構成する回転部材の回転速度域を低く抑えることができる。これにより、差動歯車機構(5)の耐久性の確保が容易となる。
【0084】
本開示に係る車両用駆動装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0085】
1:回転電機、2:ケース、3:伝達機構、4:カウンタギヤ機構、5:差動歯車機構、6:出力部材、25:隔壁、26:貫通孔、30:出力ギヤ、61:第1出力部材、90:インバータ装置、90a:インバータ装置の中心、91:配線、100:車両用駆動装置、200:車両、A:軸方向、C1:第1軸(回転電機の回転軸心)、C2:第2軸(出力ギヤの回転軸心、第1出力部材の回転軸心)、C3:第3軸(カウンタギヤ機構の回転軸心)、C4:第4軸(カウンタギヤ機構の回転軸心)、E:仮想直線、L:車両前後方向、S1:第1収容室、S2:第2収容室、V1:上側、V2:下側、W:車輪、X:第1方向、Y:第2方向
図1
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