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  • 特許-貼付剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20221109BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/12
A61K47/32
A61K31/496
A61P25/18
A61K31/381
A61P25/16
A61K31/155
A61P25/14
A61K47/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022540626
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2021030188
(87)【国際公開番号】W WO2022039195
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2020138958
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208889
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 教子
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】寺島 寛人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】星野 友美
(72)【発明者】
【氏名】薦田 俊一
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0117585(US,A1)
【文献】特開2016-069287(JP,A)
【文献】特表2018-518502(JP,A)
【文献】WOLFF, H.M., et al.,Investigations on the Viscoelastic Performance of Pressure Sensitive Adhesives in Drug-in-Adhesive T,Pharm. Res.,2014年,Vol.31,p.2186-2202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-33/44
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、上記支持体の一面に積層一体化された粘着層とを含み、
上記粘着層が、
ブロナンセリン、ロチゴチン、及びグアンファシンよりなる群から選択される少なくとも一種を含む薬物と、
レブリン酸と、
溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上、15(cal/cm 3 1/2 以下であるビニル系モノマー(I)部分と、溶解度パラメーターが7(cal/cm 3 1/2 以上、9(cal/cm31/2未満であるビニル系モノマー(II)部分とを含み、且つ上記ビニル系モノマー(I)部分及び上記ビニル系モノマー(II)部分の総含有量が70質量%以上であるアクリル系重合体(A)を含むアクリル系粘着剤と、を含有することを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
薬物に対するレブリン酸の質量比[(レブリン酸の質量)/(薬物の質量)]が、0.2以上であり且つ4以下であることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
ビニル系モノマー(I)部分が、N-ビニル-2-ピロリドン部分、ジアセトンアクリルアミド部分、メチルアクリレート部分、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート部分よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
ビニル系モノマー(II)部分が、エチルアクリレート部分、2-エチルヘキシルアクリレート部分、2-エチルヘキシルメタクリレート部分、n-オクチルアクリレート部分、及びドデシルメタクリレート部分よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の貼付剤。
【請求項5】
ビニル系モノマー(I)部分が、N-ビニル-2-ピロリドン部分、ジアセトンアクリルアミド部分、メチルアクリレート部分、2-ヒドロキシエチルアクリレート部分、及びアクリル酸部分よりなる群から選択される少なくとも一種を含み、且つ
ビニル系モノマー(II)部分が、エチルアクリレート部分、2-エチルヘキシルアクリレート部分、2-エチルヘキシルメタアクリレート部分、n-オクチルアクリレート部分、及びドデシルメタクリレート部分よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項4に記載の貼付剤。
【請求項6】
アクリル系重合体(A)が、
溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上、15(cal/cm 3 1/2 以下であり、且つN-ビニル-2-ピロリドン部分、メチルアクリレート部分、2-ヒドロキシエチルアクリレート部分、及びアクリル酸部分よりなる群から選択される少なくとも一種であるビニル系モノマー(I)部分、及び
溶解度パラメーターが7(cal/cm 3 1/2 以上、9(cal/cm31/2未満であり、且つエチルアクリレート部分、2-エチルヘキシルアクリレート部分、及びn-オクチルアクリレート部分よりなる群から選択される少なくとも一種であるビニル系モノマー(II)部分のみからなる共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
【請求項7】
薬物が、ロチゴチン、又はグアンファシンであることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の貼付剤。
【請求項8】
粘着層が、ミリスチン酸イソプロピルをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の経皮吸収性及び皮膚に対する粘着性の双方に優れている貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬物は、錠剤、カプセル剤、シロップ剤などの経口剤の形態として、口を介して人体へ投与されている。しかしながら、経口剤は、肝臓での初回通過効果による分解、消化管障害の発生、及び血中濃度の急激な変動による副作用の発生などの問題を生じる場合がある。
【0003】
そこで、薬物を含有する貼付剤を皮膚に貼付することにより、薬物を皮膚を介して人体へ投与する方法が提案されている。貼付剤は、一般的に、支持体と、粘着性ポリマー及び薬物を含む粘着層とを含む。貼付剤によれば薬物を皮膚から徐々に吸収させることができるので、過度な薬物血中濃度の上昇によって引き起こされる副作用を軽減することができる。また、耐え難い副作用の発現時に、貼付剤を皮膚から取り除くことで薬物の経皮投与を直ちに停止することもできる。さらに、薬物の嚥下が困難な患者に対して、貼付剤を貼るだけで容易に投薬することもできる。
【0004】
一方、化学物質や細菌が皮膚を通じて体内へ侵入するのを防止するために、皮膚はバリア機能を有している。そのため、従来の貼付剤では、薬物の経皮吸収性を十分に発揮することができず、期待する薬物の経皮吸収量が得られないといった問題を有している。このような問題を解決するために、貼付剤について、種々の研究が行われている。
【0005】
薬物の経皮吸収性を向上させるためには、粘着層中に含まれている薬物を溶解させた状態とし、この溶解させた状態の薬物を皮膚表面へ移行させる必要がある。しかしながら、薬物は、粘着層中で容易に結晶化し易く、粘着層中に溶解させた状態で安定的に薬物を含ませるのは困難であった。
【0006】
そこで、特許文献1では、薬物の一種であるブプレノルフィン、カルボン酸、及びポリシロキサン粘着剤を含む粘着層を有する貼付剤が開示されている。この粘着層は、カルボン酸中にブプレノルフィンを溶解させた溶液が、ポリシロキサン粘着剤中に液滴として分散されている構造を有している。カルボン酸の具体例としては、オレイン酸、レブリン酸、リノール酸、及びリノレン酸が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2010-510259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の貼付剤では、カルボン酸の使用によって粘着層の凝集力が不足して、皮膚に対する粘着性が低いという問題があった。このように、従来の貼付剤では、薬物の経皮吸収性と、皮膚に対する粘着性とを両立させることが困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、薬物の経皮吸収性及び皮膚に対する粘着性の双方に優れている貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の貼付剤は、支持体と、上記支持体の一面に積層一体化された粘着層とを含み、上記粘着層が、薬物と、レブリン酸と、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上であるビニル系モノマー(I)部分を含むアクリル系重合体(A)を含むアクリル系粘着剤と、を含有する。
【0011】
即ち、本発明の貼付剤は、
支持体と、
上記支持体の一面に積層一体化され、且つ薬物と、レブリン酸と、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上であるビニル系モノマー(I)部分を含むアクリル系重合体(A)を含むアクリル系粘着剤とを含有する粘着層とを含む。
【0012】
[粘着層]
貼付剤は、支持体の一面に積層一体化された粘着層を含んでいる。粘着層は、薬物、レブリン酸、及びアクリル系粘着剤を含有している。
【0013】
(薬物)
粘着層は、薬物を含んでいる。薬物としては、レブリン酸に溶解できるものが好ましい。例えば、液温が35℃であるレブリン酸1mLに対して薬物が0.1g以上溶解できることが好ましい。
【0014】
薬物の溶解性は、具体的には、以下のようにして判断する。試験管にレブリン酸1mLを入れ、35℃に保温し、レブリン酸を液体とする。液体としたレブリン酸に薬物0.1gを添加して混合液を得る。混合液を35℃に保温しながら、超音波洗浄機(例えば、メガネ洗浄機)を用いて、試験管内の混合液を10分間振動させる。超音波洗浄機から取り出した試験管を35℃の環境下で4時間静置した後、試験管内の混合液を目視で観察し、薬物の残存や析出の有無を確認する。混合液中に薬物の残存や析出が認められない場合、液温が35℃であるレブリン酸1mLに対して薬物が0.1g以上溶解できると判断する。また、混合液中に薬物の残存や析出が認められた場合は、液温が35℃であるレブリン酸1mLに対して薬物が0.1g以上溶解できないと判断する。
【0015】
薬物としては、例えば、酸性薬物、塩基性薬物、及び両性薬物が挙げられ、塩基性薬物が好ましい。酸性薬物は、粘着層中でプロトンを放出してアニオン(陰イオン)になることができるものである。酸性薬物は、粘着層中でプロトンを放出してアニオン(陰イオン)になる分子構造を有していることが好ましい。酸性薬物としては、例えば、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、又は下記化学式(1)で示されるリン酸基(H2PO4-)などの酸性官能基(アニオン性官能基)を有する薬物が挙げられる。塩基性薬物は、粘着層中でプロトンを受容してカチオン(陽イオン)になることができるものである。塩基性薬物は、粘着層中でプロトンを受容してカチオン(陽イオン)になる分子構造を有していることが好ましい。塩基性薬物としては、例えば、アミン構造などを有する薬物が挙げられる。両性薬物は、粘着層中でプロトンを放出及び受容して、カチオンにもアニオンにもなることができるものである。両性薬物としては、例えば、酸性官能基及びアミン構造の双方を有する化合物などが挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
酸性薬物は、粘着層中でプロトンを放出してアニオン(陰イオン)になる分子構造、及び粘着層中でプロトンを受容してカチオン(陽イオン)になる分子構造のうち、粘着層中でプロトンを放出してアニオン(陰イオン)になる分子構造のみを有していることが好ましい。すなわち、酸性薬物は、粘着層中でプロトンを受容してカチオン(陽イオン)になる分子構造を有していないことが好ましい。
【0018】
塩基性薬物は、粘着層中でプロトンを放出してアニオン(陰イオン)になる分子構造、及び粘着層中でプロトンを受容してカチオン(陽イオン)になる分子構造のうち、粘着層中でプロトンを受容してカチオン(陽イオン)になる分子構造のみを有していることが好ましい。すなわち、塩基性薬物は、粘着層中でプロトンを放出してアニオン(陰イオン)になる分子構造を有していないことが好ましい。
【0019】
両性薬物は、粘着層中でプロトンを放出してアニオン(陰イオン)になる分子構造、及び粘着層中でプロトンを受容してカチオン(陽イオン)になる分子構造の双方を有していることが好ましい。
【0020】
粘着層中でプロトンを放出してアニオン(陰イオン)になる分子構造としては、例えば、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、又は上記化学式(1)で示されるリン酸基(H2PO4-)などの酸性官能基(アニオン性官能基)が挙げられる。粘着層中でプロトンを受容してカチオン(陽イオン)になる分子構造としては、例えば、アミン構造などが挙げられる。アミン構造としては、塩基性薬物における下記アミン構造と同様のものが挙げられる。
【0021】
塩基性薬物としては、アミン構造を有する薬物が挙げられる。アミン構造としては、例えば、1級アミン構造、2級アミン構造、及び3級アミン構造が挙げられる。1級アミン構造とは、-NH2で示される構造を意味する。2級アミン構造とは、-NHR1(式中、R1はNと結合する一価の有機基である)で示される構造を意味する。3級アミン構造とは、-NR23で示される構造を意味する。3級アミン構造とは、下記化学式(A)で示される構造を意味する。R2及びR3は、それぞれ独立してNと結合している。R2及びR3は、一価の有機基であってもよい。R2及びR3は、直接、又は他の1個若しくは複数個の原子を介して結合していてもよい。この場合、R2及びR3は、窒素原子とともに環式構造を形成する。なお、有機基とは、少なくとも炭素原子を含む原子団を意味する。
【0022】
【化2】
【0023】
上記環式構造の環員数は、特に制限されないが、4~20が好ましく、5~8がより好ましい。なお、環員数とは、環式構造中の基本環を構成する原子数を意味する。また、基本環とは、環式構造において置換基を除いた骨格環を意味する。環式構造において、基本環を構成する原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0024】
酸性薬物としては、例えば、サリチル酸、アスピリン、サザピリン、アルクロフェナク、スプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェンブフェン、グリチルレチン酸、スリンダク、ジフルニサル、及びチアプロフェン酸などが挙げられる。
【0025】
両性薬物としては、トルフェナム酸、メフェナム酸、フルフェナム酸、インドメタシン、アセメタシン、メチアジン酸、プロチジン酸、及びプラノプロフェンなどが挙げられる。
【0026】
薬物としては、ブロナンセリン、ブプレノルフィン、ロチゴチン、及びグアンファシンなどが挙げられ、ブロナンセリン、ロチゴチン、及びグアンファシンが好ましい。これらは、アミン構造を有することで塩基性薬物である。そのため、レブリン酸に対する溶解性が高く、薬物の経皮吸収性を向上させることが可能となる。薬物は、一種単独でも用いても、二種以上を併用してもよい。
【0027】
液温が35℃であるレブリン酸1mLに対して、ブロナンセリン、ブプレノルフィン、ロチゴチン、及びグアンファシンは、それぞれ、0.1g以上溶解することができる。
【0028】
薬物には、遊離型の薬物と、この薬物の生理学的に許容される塩が含まれる。粘着層は、遊離型の薬物及び塩型の薬物のうち少なくとも一方を含んでいればよい。なかでも、遊離型(フリー体)の薬物が好ましい。遊離型の薬物によれば、薬物の経皮吸収性がより優れる貼付剤を提供することができる。遊離型の薬物としては、例えば、薬物が塩基性薬物である場合には遊離塩基型薬物が挙げられ、薬物が酸性薬物である場合には遊離酸型薬物が挙げられる。
【0029】
塩基性薬物の場合には、遊離塩基型の薬物と、この薬物の生理学的に許容される酸付加塩が含まれる。生理学的に許容される酸付加塩としては、特に制限されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩;ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、グルタル酸塩、カンファー酸塩、アジピン酸塩、ソルビン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)、フタル酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、コハク酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、パモ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシレート)、ベンゼンスルホン酸塩(ベシレート)などの有機酸塩が挙げられる。なかでも、塩基性薬物としては、遊離塩基型(フリー体)の薬物が好ましい。遊離塩基型の薬物によれば、薬物の経皮吸収性がより優れる貼付剤を提供することができる。
【0030】
粘着層中における薬物の含有比率は、薬物、レブリン酸、及びアクリル系粘着剤の総量100質量部中、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がより好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が特に好ましい。また、粘着層中における薬物の含有比率は、薬物、レブリン酸、及びアクリル系粘着剤の総量100質量部中、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、35質量部以下がより好ましく、30質量部以下がより好ましく、25質量部以下がより好ましい。薬物の含有比率が0.1質量部以上であると、薬物の血中濃度を所望の範囲まで速やかに上昇させることができる。薬物の含有比率が50質量部以下であると、過剰量の薬物が粘着層中に結晶として過剰に析出するのを低減し、薬物の経皮吸収性や粘着層の粘着性を向上させることができる。
【0031】
特に、本発明の貼付剤は薬物の経皮吸収性が優れていることから、粘着層中の薬物の含有量を低くしても、治療に有効な薬物の血中濃度を達成することができる。このような観点から、粘着層中における薬物の含有比率は、薬物、レブリン酸、及びアクリル系粘着剤の総量100質量部中、35質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下が特に好ましい。
【0032】
なお、本発明の貼付剤において、粘着層中に含まれる各構成成分の含有比率、及び、粘着層中に含まれる構成成分の質量割合(例えば、質量比など)を算出するにあたっては、薬物として遊離型薬物ではなく薬物の塩を用いる場合、薬物の塩の質量として、薬物の塩を遊離型に換算して得られる薬物の質量を用いる。薬物の塩を遊離型に換算して得られる薬物の質量は、薬物の塩と等モル量の遊離型の薬物の質量とする。
【0033】
(レブリン酸)
粘着層は、レブリン酸を含む。レブリン酸は、薬物を良好に溶解させることができる。したがって、レブリン酸を用いることにより、粘着層中に薬物を溶解させた状態で含有させることができる。レブリン酸によって溶解させた薬物は、粘着層中を容易に拡散移行することができ、皮膚透過性にも優れる。したがって、レブリン酸を用いることにより、薬物の経皮吸収性に優れる貼付剤を提供することが可能となる。
【0034】
薬物として、塩基性薬物を用いることが好ましい。塩基性薬物は、粘着層中でプロトンを受容してカチオンになることができる。一方で、レブリン酸はカルボキシ基を有しており、粘着層中でレブリン酸が有するカルボキシ基は電離してアニオン(-COO-)となる。塩基性薬物が、プロトンを受容してカチオンとなる一方、レブリン酸が有するカルボキシ基が電離してアニオンを生成し、塩基性薬物に由来したカチオンと、レブリン酸に由来するアニオンとがイオン結合を形成し、これにより塩基性薬物の脂溶性がさらに向上して、塩基性薬物が皮膚を透過し易くなり、塩基性薬物の経皮吸収性をさらに向上させることが可能となる。
【0035】
本発明によれば、薬物の経皮吸収性を向上させることができるので、貼付剤中の薬物の含有量を低くすることができる。これにより過剰量の薬物が体内に吸収されることによる予期せぬ副作用の発生を低減することができる。さらに、貼付剤の貼付面積を小さくすることもでき、貼付剤の貼付中に患者に与える違和感を低減したり、貼付剤の張り替え時に同じ部位に貼付剤が繰り返し貼付されるのを低減したりすることができる。
【0036】
粘着層中におけるレブリン酸の含有比率は、薬物、レブリン酸、及びアクリル系粘着剤の総量100質量部中、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が特に好ましい。また、粘着層中におけるレブリン酸の含有比率は、薬物、レブリン酸、及びアクリル系粘着剤の総量100質量部中、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。レブリン酸の含有比率を1質量部以上とすることにより、粘着層中に十分な量の薬物を効率的に溶解させて、薬物の経皮吸収性を向上させることができる。レブリン酸の含有比率を25質量部以下とすることにより、過剰量のレブリン酸が粘着層表面に滲み出る(ブリードする)のを低減し、これにより貼付剤の優れた粘着性を維持することができる。
【0037】
粘着層中における、薬物に対するレブリン酸の質量比[(レブリン酸の質量)/(薬物の質量)]は、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.4以上が特に好ましい。一方、粘着層中における、薬物に対するレブリン酸の質量比[(レブリン酸の質量)/(薬物の質量)]は、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2.5以下がより好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下がより好ましい。上記質量比を0.2以上とすることにより、粘着層中に十分な量の薬物を効率的に溶解させて、薬物の経皮吸収性を向上させることができる。上記質量比を4以下とすることにより、粘着層中で過剰量のレブリン酸が薬物の拡散移行を抑制するのを低減し、貼付剤から薬物を安定的に放出させることができる。
【0038】
(アクリル系粘着剤)
粘着層は、アクリル系粘着剤を含む。このアクリル系粘着剤は、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上であるビニル系モノマー(I)部分を含むアクリル系重合体(A)を含む。
【0039】
なお、ビニル系モノマーとは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを意味する。
【0040】
本発明では、粘着層においてレブリン酸を用いることにより薬物を溶解状態として存在させることができる。しかしながら、レブリン酸は粘着剤との親和性が低いため、粘着層表面に過剰に滲み出て、粘着層の粘着性を低下させる場合がある。したがって、レブリン酸を用いた粘着層では、薬物の経皮吸収性と、粘着性とを両立させることが困難な場合がある。しかしながら、アクリル系重合体(A)は、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上であるビニル系モノマー(I)部分を含むことにより、レブリン酸に対する親和性が適度に向上されている。このアクリル系重合体(A)をアクリル系粘着剤として用いることにより、粘着層中にレブリン酸を適度に保持して、レブリン酸が粘着層表面に過剰に滲み出るのを低減することができ、粘着層が優れた粘着性を発揮することができる。したがって、本発明によれば、レブリン酸とアクリル系重合体(A)を組み合わせて用いることにより、薬物の経皮吸収性と粘着性とが両立された貼付剤を提供することが可能となる。
【0041】
粘着層中で薬物は溶解している状態で存在しているが、薬物の一部が結晶として析出していてもよい。貼付剤の保存中に保存温度が変化することがあるが、貼付剤の保存温度が変化したとしても、粘着層中における薬物の溶解状態及び析出状態が保存前後で変化せずに維持されていることが好ましい。薬物の溶解状態及び析出状態が変化すると、薬物の経皮吸収性も変化し、予定していた薬効が得られずに治療に影響を与える可能性があるからである。特に、貼付剤の保存温度の変化によって、薬物の結晶が過剰に析出すると、薬物の経皮吸収性が不均一となったり低下したりする可能性がある。
【0042】
本発明では、上述した通り、アクリル系重合体(A)を含むアクリル系粘着剤を用いることにより、粘着層中にレブリン酸を適度に保持することができる。これにより粘着層中で薬物の溶解状態を安定して維持することができる。したがって、貼付剤の保存温度が変化したとしても、粘着層中における薬物の溶解状態及び析出状態が変化するのを低減して、これにより薬物の経皮吸収性が変化するのも低減することができる。このように本発明によれば、薬物の保存安定性にも優れる貼付剤を提供することが可能となる。
【0043】
(ビニル系モノマー(I))
アクリル系重合体(A)は、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上であるビニル系モノマー(I)に由来する部分(単に、「ビニル系モノマー(I)部分」ともいう)を含んでいる。具体的には、アクリル系重合体(A)は、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上であるビニル系モノマー(I)を含むモノマーの重合体である。なお、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上であるビニル系モノマー(I)を単に「ビニル系モノマー(I)」ということがある。
【0044】
ビニル系モノマー(I)は、薬物に対して親和性を有する官能基を有していても有していなくてもよいが、薬物に対して親和性を有する官能基を有していないことが好ましい。これにより薬物の経皮吸収性を向上させることができる。ビニル系モノマー(I)における薬物に対して親和性を有する官能基としては、アクリル系重合体(A)について後述する薬物に対して親和性を有する官能基と同様のものが挙げられる。
【0045】
ビニル系モノマー(I)の溶解度パラメーターは、9(cal/cm31/2以上であるが、9.2(cal/cm31/2以上が好ましく、9.4(cal/cm31/2以上がより好ましく、9.5(cal/cm31/2以上が特に好ましい。ビニル系モノマー(I)の溶解度パラメーターは、15(cal/cm31/2以下が好ましく、14(cal/cm31/2以下がより好ましく、11(cal/cm31/2以下が特に好ましい。ビニル系モノマー(I)の溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上であると、アクリル系重合体(A)のレブリン酸に対する親和性を向上させることができる。これにより粘着層中にレブリン酸を適度に保持して、レブリン酸が粘着層表面に過剰に滲み出るのを低減することができ、粘着層の優れた粘着性を維持することができる。ビニル系モノマー(I)の溶解度パラメーターが15(cal/cm31/2以下であると、アクリル系重合体(A)とレブリン酸との親和性が高くなり過ぎることを低減することができる。これにより、貼付後に粘着層からレブリン酸を徐々に放出させることができ、これに伴い粘着層から薬物も徐々に放出させることができ、結果として、優れた粘着性を維持しつつ薬物の経皮吸収性をより向上させることができる。
【0046】
ビニル系モノマー(I)としては、N-ビニル-2-ピロリドン(SP値:9.7(cal/cm31/2)、ジアセトンアクリルアミド(SP値:9.8(cal/cm31/2)、メチルアクリレート(SP値:9.4(cal/cm31/2)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(SP値:12.1(cal/cm31/2)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(SP値:11.3(cal/cm31/2)、及びアクリル酸(11.7(cal/cm31/2)などが挙げられる。ビニル系モノマー(I)としては、N-ビニル-2-ピロリドン、ジアセトンアクリルアミド、メチルアクリレート、及び2-ヒドロキシエチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。なお、括弧内の数値は、各ビニル系モノマー(I)の溶解度パラメーターである。なかでも、ビニル系モノマー(I)は、N-ビニル-2-ピロリドン、メチルアクリレート、及び2-ヒドロキシエチルアクリレートが好ましく、N-ビニル-2-ピロリドンがより好ましい。ビニル系モノマー(I)は、N-ビニル-2-ピロリドンを含むことが好ましい。ビニル系モノマー(I)は、メチルアクリレート、及び2-ヒドロキシエチルアクリレートを含むことが好ましい。これらによれば薬物の経皮吸収性及び粘着性がより優れる貼付剤を提供できる。ビニル系モノマー(I)は、一種単独でも用いても、二種以上を併用してもよい。
【0047】
溶解度パラメーター(solubility parameter)の定義及び計算方法は、文献「Hansen Solubility Parameters: A User’s Handbook」(Charles M. Hansen著、CRC Press、2007年6月15日)の第28頁~第30頁に記載されている。
【0048】
ビニル系モノマー(I)、及び後述するビニル系モノマー(II)などのビニル系モノマーの溶解度パラメーターは、上記文献「Hansen Solubility Parameters: A User’s Handbook」に記載されている値を用いることができる。また、上記文献に溶解度パラメーターの値が記載されていないビニル系モノマーについては、Hansenにより提唱された下記式(i)に基づいて溶解度パラメーターを算出することができる。
δ=(δd 2+δp 2+δh 21/2 (i)
(式(i)中、δは溶解度パラメーターであり、δdはLondonの分散力(ファンデルワールス力)による項(分散項)であり、δpは分子の極性による項(極性項)であり、δhは水素結合による項(水素結合項)である。)
【0049】
また、上記式(i)におけるδd、δp、及びδhは、Van Krevelen及びHoftyzer法に基づく下記式(ii)~(iv)により求めることができる。
δd=ΣFdi/V (ii)
δp=(ΣFpi 21/2/V (iii)
δh=(ΣEhi/V)1/2 (iv)
(式(ii)におけるFdiは、Londonの分散力に起因するモル引力定数であり、式(iii)におけるFpiは双極子間力に起因するモル引力定数であり、式(iv)におけるEhiは水素結合エネルギーであり、式(ii)~(iv)におけるVは、ビニル系モノマーのモル体積である。)
【0050】
なお、本発明において、モル引力定数Fdi、Fpi、及びEhiは、Van Krevelen及びHoftyzer法により定められた値を用いる。また、モル体積Vは、ビニル系モノマーのモル質量を、このビニル系モノマーの密度で除して算出された値とする。
【0051】
アクリル系重合体(A)中におけるビニル系モノマー(I)部分の含有量は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。アクリル系重合体(A)中におけるビニル系モノマー(I)部分の含有量は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がより好ましく、27質量%以下が特に好ましい。ビニル系モノマー(I)部分の含有量を5質量%以上とすることにより、レブリン酸に対するアクリル系重合体(A)の親和性を向上させることができ、これにより粘着層中にレブリン酸を適度に保持して、レブリン酸が粘着層表面に過剰に滲み出るのを低減することができる。一方、ビニル系モノマー(I)部分の含有量を35質量%以下とすることにより、粘着層の凝集力を適度に維持し、粘着層の優れた粘着性を維持することができる。
【0052】
(ビニル系モノマー(II))
アクリル系重合体(A)は、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2未満であるビニル系モノマー(II)に由来する部分(単に、「ビニル系モノマー(II)部分」ともいう)を含むことが好ましい。具体的には、アクリル系重合体(A)は、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上であるビニル系モノマー(I)、及び溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2未満であるビニル系モノマー(II)を含むモノマーの共重合体であることが好ましい。ビニル系モノマー(II)を用いることにより、粘着層により優れた粘着力を付与することができる。なお、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2未満であるビニル系モノマー(II)を単に「ビニル系モノマー(II)」ということがある。
【0053】
ビニル系モノマー(II)は、薬物に対して親和性を有する官能基を含有していても有していなくてもよいが、薬物に対して親和性を有する官能基を含有していないことが好ましい。これにより薬物に対して親和性を有する官能基による薬物の経皮吸収性の低下を抑制しつつ、粘着層により優れた粘着力を付与することができる。ビニル系モノマー(II)における薬物に対して親和性を有する官能基とは、アクリル系重合体(A)について後述する、薬物に対して親和性を有する官能基と同様のものが挙げられる。
【0054】
ビニル系モノマー(II)の溶解度パラメーターは、9(cal/cm31/2未満が好ましく、8.8(cal/cm31/2以下がより好ましく、8.6(cal/cm31/2以下が特に好ましい。ビニル系モノマー(II)の溶解度パラメーターは、7(cal/cm31/2以上が好ましく、7.5(cal/cm31/2以上がより好ましい。溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2未満であるビニル系モノマー(II)を用いると、粘着層中でのレブリン酸とアクリル系重合体(A)との親和性を適度な範囲にすることができ、これにより、貼付後に粘着層からレブリン酸を徐々に放出させることができ、これに伴い粘着層から薬物も徐々に放出させることができ、結果として、優れた粘着性を維持しつつ薬物の経皮吸収性を向上させることができる。ビニル系モノマー(II)の溶解度パラメーターが7(cal/cm31/2以上であると、レブリン酸とアクリル系重合体(A)との親和性が向上して、レブリン酸が粘着層表面から過剰に滲み出るのを低減し、皮膚粘着性を向上させることができる。
【0055】
ビニル系モノマー(II)としては、アルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、α-オレフィン、及びスチレンなどが挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。なかでも、ビニル系モノマー(II)は、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートによれば、粘着層に適度な凝集力を付与し、粘着層の粘着性を向上させることができる。ビニル系モノマー(II)は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0056】
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、-Cn2n+1(式中、nは、正の整数である。)で示される基である。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、1~16が好ましく、1~14がより好ましく、2~12がより好ましく、2~10が特に好ましい。
【0057】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチルアクリレート(SP値:8.8(cal/cm31/2)、n-プロピルアクリレート(SP値:8.7(cal/cm31/2)、イソプロピルアクリレート(SP値:8.5(cal/cm31/2)、n-ブチルアクリレート(SP値:8.6(cal/cm31/2)、イソブチルアクリレート(SP値:8.5(cal/cm31/2)、ヘキシルアクリレート(SP値:8.4(cal/cm31/2)、n-オクチルアクリレート(SP値:8.2(cal/cm31/2)、イソオクチルアクリレート(SP値:8.2(cal/cm31/2)、2-エチルヘキシルアクリレート(SP値:7.8(cal/cm31/2)、デシルアクリレート(SP値:8.3(cal/cm31/2)、ドデシルアクリレート(SP値:8.3(cal/cm31/2)、トリデシルアクリレート(SP値:8.3(cal/cm31/2)、ヘキサデシルアクリレート(SP値:8.2(cal/cm31/2)、及びシクロヘキシルアクリレート(SP値:8.8(cal/cm31/2)、メチルメタクリレート(SP値:8.8(cal/cm31/2)、n-プロピルメタクリレート(SP値:8.8(cal/cm31/2)、イソプロピルメタクリレート(SP値:8.3(cal/cm31/2)、n-ブチルメタクリレート(SP値:8.9(cal/cm31/2)、イソブチルメタクリレート(SP値:8.3(cal/cm31/2)、ヘキシルメタクリレート(SP値:8.2(cal/cm31/2)、n-オクチルメタクリレート(SP値:8.4(cal/cm31/2)、2-エチルヘキシルメタクリレート(SP値:8.3(cal/cm31/2)、デシルメタクリレート(SP値:8.3(cal/cm31/2)、ドデシルメタクリレート(SP値:8.2(cal/cm31/2)、トリデシルメタクリレート(SP値:8.3(cal/cm31/2)、及びシクロヘキシルメタクリレート(SP値:8.8(cal/cm31/2)などが挙げられる。なお、括弧内の数値は、各アルキル(メタ)アクリレートの溶解度パラメーターである。アルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
なかでも、アルキル(メタ)アクリレートとしては、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルアクリレート、ドデシルメタクリレートが好ましく挙げられる。
【0059】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルアクリレート及びドデシルメタクリレートよりなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0060】
ビニル系モノマー(II)は、2-エチルヘキシルアクリレート、及び2-エチルヘキシルメタアクリレートのうち少なくとも一種を含むことが好ましい。ビニル系モノマー(II)は、n-オクチルアクリレート、及びエチルアクリレートを含むことが好ましい。
【0061】
ビニル系モノマー(II)中におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。すなわち、ビニル系モノマー(II)は、アルキル(メタ)アクリレートのみからなることが特に好ましい。
【0062】
アクリル系重合体(A)中におけるビニル系モノマー(II)部分の含有量は、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が特に好ましい。アクリル系重合体(A)中におけるビニル系モノマー(II)部分の含有量は、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がより好ましく、73質量%以上がより好ましく、75質量%以上が特に好ましい。ビニル系モノマー(II)部分の含有量を95質量%以下とすることにより、アクリル系重合体(A)中に上述したビニル系モノマー(I)部分を十分な量で含ませることができる。ビニル系モノマー(II)部分の含有量を60質量%以上とすることにより、粘着層の凝集力を適度な範囲として、粘着層の粘着性を向上させることができる。
【0063】
アクリル系重合体(A)は、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2以上であるビニル系モノマー(I)と、溶解度パラメーターが9(cal/cm31/2未満であるビニル系モノマー(II)とを含むモノマーの共重合体であることが好ましい。上記共重合体中におけるビニル系モノマー(I)部分及びビニル系モノマー(II)部分の総含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。ビニル系モノマー(I)部分及びビニル系モノマー(II)部分の総含有量を70質量%以上とすることにより、薬物の経皮吸収性及び粘着性の双方に優れている貼付剤が得られる。
【0064】
ところで、アクリル系重合体(A)は、経皮吸収性の点からは薬物に対して親和性を有する官能基を有していないことが好ましい。
【0065】
薬物に対して親和性を有する官能基とは、粘着層中で電離してアニオン又はカチオンとなり、薬物とイオン結合を形成することが可能な官能基である。アクリル系重合体(A)が薬物に対して親和性を有する官能基を有している場合、この官能基の親和性によって、粘着層中で薬物が拡散移行し難くなって粘着層中に薬物が留まってしまい、薬物の経皮吸収性を低下させる可能性がある。したがって、本発明では、アクリル系重合体(A)は薬物に対して親和性を有する官能基を有していないことが好ましい。すなわち、アクリル系重合体(A)中において、薬物に対して親和性を有する官能基を含有するモノマー部分の含有量が0質量%であることが特に好ましい。
【0066】
アクリル系重合体(A)が、薬物に対して親和性を有する官能基を含有しないことによって、粘着層中で薬物の拡散移行が抑制されず、薬物の経皮吸収性をより向上させることができる。
【0067】
上述の通り、経皮吸収性の点からは、アクリル系重合体(A)は、薬物に対して親和性を有する官能基を有していないことが好ましいが、貼付剤の製造中や保存中における、薬物の揮発および分解の抑制の点からは、アクリル系重合体(A)として薬物に対して親和性を有する官能基を有するものを選択することもできる。
【0068】
薬物の種類、貼付剤の製造条件や保存条件に応じて、アクリル系重合体(A)中における薬物に対して親和性を有する官能基を含有するモノマー部分の含有量は適宜決めることができる。しかし、貼付剤としての基本的な要求性能である経皮吸収性とのバランスの点から、アクリル系重合体(A)が薬物に対して親和性を有する官能基を有する場合、アクリル系重合体(A)中における薬物に対して親和性を有する官能基を含有するモノマー部分の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下より好ましく、0.05質量%以下が特に好ましい。
【0069】
薬物に対して親和性を有する官能基を含有するモノマー部分の含有量が10質量%以下であれば、アクリル系重合体(A)が薬物に対して親和性を有する官能基を有している場合であっても、上記官能基の親和性によって粘着層中で薬物の拡散移行が抑制されるのを低減することができ、薬物の経皮吸収性を向上させることができる。
【0070】
薬物に対して親和性を有する官能基として、具体的には、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基、及びリン酸基などのアニオン性官能基、アミノ基(-NH2)、アミノ基が有する水素原子の一個が他の原子又は一価の有機基で置換されたモノ置換アミノ基などのカチオン性官能基が挙げられる。
【0071】
薬物には酸性薬物、塩基性薬物、及び中性薬物が挙げられる。これらの薬物は、粘着層中でプロトン(H+)を受容又は放出することによってカチオン又はアニオンとなる。一方、アクリル系重合体(A)が薬物に対して親和性を有する官能基を有している場合、薬物に対して親和性を有する官能基が粘着層中で電離すると、アクリル系重合体(A)のポリマー鎖に結合して残っている上記官能基の残基部分がアニオン又はカチオンとなる。そうすると、薬物におけるカチオン又はアニオン部分と、アクリル系重合体(A)の官能基の残基部分との間にイオン結合が生じて、アクリル系重合体(A)に薬物が捕捉され、粘着層中で薬物が拡散移行し難くなる。
【0072】
例えば、アクリル系重合体(A)が、薬物に対して親和性を有する官能基として、カルボキシ基、スルホン酸基、又はリン酸基などのアニオン性官能基を有している場合、これらのアニオン性官能基は、電離後に、アクリル系重合体(A)のポリマー鎖に結合して残っている残基部分として、-COO-、-SO3 -、又は下記化学式(2)で示される構造(-OPO3 2-)生じ、アニオンとなる。また、例えば、アクリル系重合体(A)が、薬物に対して親和性を有する官能基として、アミノ基、又はモノ置換アミノ基などのカチオン性官能基を有している場合、これらのカチオン性官能基は、電離後に、アクリル系重合体(A)のポリマー鎖に結合して残っている残基部分として、-NH3 +、又は下記化学式(3)で示される構造を生じ、カチオンとなる。
【0073】
【化3】

但し、上記化学式(3)において、R4は、窒素原子に結合するものであり且つ水素原子以外の他の原子又は一価の有機基である。
【0074】
特に、アミン構造を有する薬物などの塩基性薬物は、粘着層中でプロトンを受容してカチオンとなる。一方、アクリル系重合体(A)が、薬物に対して親和性を有する官能基として上述したアニオン性官能基を有している場合、アニオン性官能基がプロトンを放出してアニオンとなる。そうすると、塩基性薬物のカチオンとなった部分と、アクリル系重合体(A)のポリマー鎖に結合して残っているアニオン性官能基の残基部分からなるアニオン部分との間にイオン結合を生じて、薬物がアクリル系重合体(A)に捕捉されて、粘着層中で薬物が拡散移行し難くなる。
【0075】
薬物に対して親和性を有する官能基において、「モノ置換アミノ基」とは、アミノ基が有する水素原子の1個が他の原子又は一価の有機基によって置換された官能基をいう。具体的には、-NHR4(R4は、窒素原子に結合するものであり且つ水素原子以外の他の原子又は一価の有機基である。)で示される官能基である。モノ置換アミノ基としては、例えば、アミノ基(-NH2)が有している一個の水素原子がアルキル基によって置換されたモノアルキル置換アミノ基などが挙げられる。アルキル基は、-Cn2n+1(式中、nは、正の整数である。)で示される基である。モノアルキル置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、及びプロピルアミノ基などが挙げられる。
【0076】
薬物に対して親和性を有する官能基を含有するモノマーとしては、薬物に対して親和性を有する官能基を含有するビニル系モノマーが挙げられる。薬物に対して親和性を有する官能基を含有するビニル系モノマーとしては、例えば、
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、ブチルマレイン酸などのカルボキシ基含有ビニル系モノマー;
3-スルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート;
2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどのリン酸基含有(メタ)アクリレート;及び、
アミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミドなどのアミノ基又はモノアルキル置換アミノ基含有(メタ)アクリレート;
などが挙げられる。
【0077】
アクリル系重合体(A)を形成する方法としては、従来公知の方法にて行なえばよい。例えば、重合開始剤の存在下で、上述したモノマーを重合する方法が挙げられる。具体的には、所定量のモノマー、重合開始剤、及び重合溶媒を反応器に供給し、60~80℃の温度で4~48時間に亘って加熱して、モノマーをラジカル重合させる。
【0078】
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4’-ジメチルバレロニトリル)などのアゾビス系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド(LPO)、ジ-tert-ブチルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、シクロヘキサンやトルエンなどが挙げられる。更に、重合反応は、窒素ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0079】
アクリル系重合体(A)は、架橋されていてもよい。アクリル系重合体(A)の架橋方法としては、有機過酸化物、架橋助剤や架橋剤などを用いる化学的架橋方法、電離性放射線を照射する物理的架橋方法等が挙げられる。なお、電離性放射線としては、例えば、電子線、α線、β線、γ線などが挙げられる。
【0080】
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、クメンヒドロパーオサイド、及びt-ブチルヒドロパーオサイドなどが挙げられる。
【0081】
架橋助剤としては、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、シアノエチルアクリレート、及びビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0082】
架橋剤としては、イソシアネート系化合物(例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの三量体付加物等);アジリジン系化合物(例えば、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオン酸]、4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等);有機金属化合物(例えば、ジルコニウムおよび亜鉛アラニネート、酢酸亜鉛、グリシンアンモニウム亜鉛、チタン化合物等);金属アルコラート(例えば、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec-ブチレート等);及び金属キレート化合物(例えば、ジプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、テトラオクチレングリコールチタン、アルミニウムイソプロピレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等)が挙げられる。
【0083】
化学的架橋方法によりアクリル系重合体(A)の架橋を行う場合、有機過酸化物、架橋助剤又は架橋剤の存在下で、アクリル系重合体(A)を、架橋反応が進行する温度に加熱することにより、アクリル系重合体(A)を架橋させることができる。また、架橋助剤を用いる場合には、上述したアクリル系重合体(A)の重合時に、反応器に、アクリル系重合体(A)のモノマー、重合開始剤、及び重合溶媒の他、さらに架橋助剤を供給し、ラジカル重合を行うことにより、架橋助剤によって架橋されたアクリル系重合体(A)を得ることもできる。
【0084】
アクリル系重合体(A)は、上述した通り、架橋されていてもよい。しかしながら、アクリル系重合体(A)が架橋されていると、粘着層の凝集力が過剰に増大して粘着層中における薬物の拡散移行を抑制してしまうことがあり、これにより薬物の経皮吸収性を低下させることがある。したがって、アクリル系重合体(A)は架橋されていないことが好ましい。
【0085】
粘着層中に含まれているアクリル系重合体(A)が架橋されていない場合、粘着層のゲル分率は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0086】
粘着層のゲル分率は下記の要領で測定された値をいう。粘着層の質量[W0(g)]を測定し、これを120℃のキシレン中に24時間浸漬して不溶解分を200メッシュの金網で濾過し、金網上の残渣を真空乾燥する。得られた乾燥残渣の質量[W1(g)]を測定し、下記式により粘着層のゲル分率を算出する。
ゲル分率(質量%)=(W1/W0)×100
【0087】
アクリル系粘着剤中におけるアクリル系重合体(A)の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。すなわち、アクリル系粘着剤はアクリル系重合体(A)のみからなることが特に好ましい。アクリル系重合体(A)の含有量を80質量%以上とすることにより、粘着性及び薬物の経皮吸収性に優れた貼付剤を提供することができる。
【0088】
粘着層中におけるアクリル系粘着剤の含有比率は、薬物、レブリン酸、及びアクリル系粘着剤の総量100質量部中、45質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、55質量部以上がより好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上が特に好ましい。粘着層中におけるアクリル系粘着剤の含有比率は、薬物、レブリン酸、及びアクリル系粘着剤の総量100質量部中、95質量部以下が好ましく、90質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましく、80質量部以下が特に好ましい。アクリル系粘着剤の含有比率が45質量部以上であると、粘着層の皮膚への粘着性を向上させることができる。アクリル系粘着剤の含有比率を95質量部以下とすることにより、必要な量で薬物や他の添加剤を粘着層に添加することができる。
【0089】
(可塑剤)
粘着層は、可塑剤を含んでいることが好ましい。可塑剤によれば、粘着層の粘着性を向上させることができる。可塑剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、アジピン酸イソプロピルなどのエステル類、ミリスチルアルコール、セタノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、ステアリルアルコールなどの1価アルコール類、オクタンジオールなどの2価アルコール類、及び流動パラフィンなどが挙げられる。なかでも、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、及びオクチルドデカノールが好ましく、ミリスチン酸イソプロピルがより好ましい。可塑剤は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0090】
粘着層中における可塑剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が特に好ましい。粘着層中における可塑剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましい。可塑剤の含有量が1質量部以上であると、可塑剤によって粘着層の粘着性を向上させることができる。可塑剤の含有量が50質量部以下であると、粘着層の優れた凝集力を維持することができる。
【0091】
粘着層に含まれる薬物が、遊離塩基型のグアンファシン又はその生理学的に許容される塩を含んでいる場合、粘着層中における可塑剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が特に好ましい。粘着層に含まれる薬物が、遊離塩基型のグアンファシン又はその生理学的に許容される塩を含んでいる場合、粘着層中における可塑剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。可塑剤の含有量が1質量部以上であると、可塑剤によって粘着層の粘着性を向上させることができる。可塑剤の含有量が50質量部以下であると、粘着層の優れた凝集力を維持することができる。
【0092】
粘着層に含まれる薬物が、遊離塩基型のロチゴチン又はその生理学的に許容される塩を含んでいる場合、粘着層中における可塑剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がより好ましい。粘着層に含まれる薬物が、遊離塩基型のロチゴチン又はその生理学的に許容される塩を含んでいる場合、粘着層中における可塑剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、35質量部以下がより好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がより好ましい。可塑剤の含有量が1質量部以上であると、可塑剤によって粘着層の粘着性を向上させることができる。可塑剤の含有量が50質量部以下であると、粘着層の優れた凝集力を維持することができる。
【0093】
粘着層は、貼付剤の皮膚刺激性に影響を与えない範囲であれば、粘着付与剤、及び充填剤などの他の添加剤を含んでいてもよい。
【0094】
(粘着付与剤)
粘着付与剤としては、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン、水素添加ロジン、ロジンエステル、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂などが挙げられる。粘着付与剤は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。粘着層中における粘着付与剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、20~80質量部が好ましく、30~70質量部がより好ましい。
【0095】
(充填剤)
充填剤は、粘着層の形状保持性を調整するために用いられる。充填剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機充填剤;炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの有機金属塩類;乳糖、結晶セルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;架橋ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。充填剤は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。粘着層中における充填剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
【0096】
粘着層の厚みは、20~200μmが好ましく、30~150μmがより好ましく、50~120μmが特に好ましい。粘着層の厚みが20μm以上であると、所望する薬効を得るために必要な量の薬物を粘着層中に含有させることができる。粘着層の厚みが200μm以下であると、粘着層中の残存溶剤を低減するために製造時に強い乾燥条件を必要としないため、粘着層中の薬物の揮散又は分解を抑制することができる。
【0097】
[支持体]
本発明の貼付剤では、支持体の一面に粘着層が積層一体化される。支持体は、粘着層中の薬物の損失を防ぎ、貼付剤に自己保持性を付与するための強度を有することが求められる。このような支持体としては、樹脂フィルム、不織布、織布、編布、アルミニウムシートなどが挙げられる。
【0098】
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、酢酸セルロース、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート、可塑化酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ナイロン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。なかでも、揮散性のある薬物であっても粘着層からの薬物の損失を防げることから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0099】
不織布を構成する素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、SIS共重合体、SEBS共重合体、レーヨン、綿などが挙げられ、ポリエステルが好ましい。なお、これらの素材は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
支持体は、単層であっても、複数層が積層一体化された積層シートであってもよい。積層シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートシートと、不織布や柔軟な樹脂フィルムとが積層一体化された積層シートが挙げられる。
【0101】
支持体の厚みは、特に制限されないが、2~200μmが好ましく、2~100μmがより好ましい。
【0102】
[剥離ライナー]
本発明の貼付剤では、粘着層の一面に、剥離ライナーが剥離可能に積層一体化されていてもよい。剥離ライナーは、粘着層中の薬物の損失防止や粘着層を保護するために用いられる。
【0103】
剥離ライナーとしては、例えば、紙及び樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。剥離ライナーの粘着層と対向させる面には離型処理が施されていることが好ましい。
【0104】
[貼付剤の製造方法]
本発明の貼付剤の製造方法としては、例えば、(1)薬物、レブリン酸、アクリル系粘着剤、及び溶剤、並びに、必要に応じて他の添加剤を含む粘着層形成溶液を、支持体の一面に塗工した後に乾燥して溶剤を除去することにより、支持体の一面に粘着層を積層一体化し、必要に応じて、粘着層に剥離ライナーを、剥離ライナーの離型処理が施された面が粘着層に対向した状態となるように積層する方法、(2)上記粘着層形成溶液を剥離ライナーの離型処理が施された面上に塗工し、乾燥させることにより、剥離ライナー上に粘着層を形成し、この粘着層に支持体を積層一体化させる方法などが挙げられる。
【0105】
粘着層形成溶液は、薬物、レブリン酸、アクリル系粘着剤、及び溶剤、並びに、必要に応じて他の添加剤を均一に撹拌することにより得られる。溶剤としては、例えば、トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、及び酢酸エチルなどが挙げられる。溶剤は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0106】
本発明の貼付剤は、上述した通り、粘着性に優れた粘着層を含んでいることから、この粘着層を皮膚に直接貼着することにより、貼付剤を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0107】
本発明の貼付剤は、上述した構成を有するので、薬物の経皮吸収性及び皮膚に対する粘着性の双方に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】プローブタック試験における円柱状プローブの移動距離と荷重との関係を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0109】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例
【0110】
(アクリル系重合体(A1)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート75質量部、及びN-ビニル-2-ピロリドン25質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル50質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド1.2質量部を酢酸エチル30質量部及びシクロヘキサン20質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を24時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A1)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A1)溶液を得た。
【0111】
(アクリル系重合体(A2)の調製)
n-オクチルアクリレート40質量部、エチルアクリレート50質量部、及びN-ビニル-2-ピロリドン10質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル50質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド1質量部を酢酸エチル30質量部及びシクロヘキサン20質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を24時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A2)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A2)溶液を得た。
【0112】
(アクリル系重合体(A3)の調製)
ドデシルメタクリレート13質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート78質量部、及び2-エチルヘキシルアクリレート9質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル50質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にベンゾイルパーオキサイド0.5質量部を酢酸エチル10質量部とシクロヘキサン10質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を24時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A3)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A3)溶液を得た。
【0113】
(アクリル系重合体(A4)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート71質量部、メチルアクリレート24質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート5質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル50質量部からなる反応液を重合機へ投入し、重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にベンゾイルパーオキサイド0.5質量部をn-ヘキサン10質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を24時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A4)の含有量が40質量%のアクリル系重合体(A4)溶液を得た。
【0114】
(アクリル系重合体(A5)の調製)
n-オクチルアクリレート50質量部、エチルアクリレート45質量部、及びN-ビニル-2-ピロリドン5質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル140質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド0.4質量部を酢酸エチル20質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を14時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A5)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A5)溶液を得た。
【0115】
(アクリル系重合体(A6)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート65質量部、及びN-ビニル-2-ピロリドン35質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル185質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド0.6質量部を酢酸エチル17質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を14時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A6)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A6)溶液を得た。
【0116】
(アクリル系重合体(A7)の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート75質量部、アクリル酸3質量部、及びN-ビニル-2-ピロリドン22質量部を含むモノマー、並びに酢酸エチル150質量部からなる反応液を重合機に供給して重合機内を80℃の窒素雰囲気とした。そして、上記反応液にラウロイルパーオキサイド0.6質量部を酢酸エチル17質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を14時間かけて加えながら上記モノマーを共重合させ、重合完了後に上記反応液に更に酢酸エチルを加えて、アクリル系重合体(A7)の含有量が30質量%のアクリル系重合体(A7)溶液を得た。
【0117】
アクリル系重合体(A1)~(A7)の調製に用いたモノマーの溶解度パラメーターをそれぞれ表1に示した。
【0118】
【表1】
【0119】
(実施例1)
粘着層において、遊離塩基型ブロナンセリン、レブリン酸、及びアクリル系重合体(A1)が、それぞれ表2に示した配合量となるように、遊離塩基型ブロナンセリン、レブリン酸、及びアクリル系重合体(A1)溶液を混合し、粘着層形成溶液を作製した。次に、シリコーン離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを離型ライナーとして用意した。このポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に、粘着層形成溶液を塗布し、60℃で30分間乾燥させることにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に厚さ80μmの粘着層が形成された積層体を作製した。そして、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体として用意し、この支持体の一面と、上記積層体の粘着層とが対向するように重ね合わせて、積層体の粘着層を支持体に転写させて積層一体化させることによって貼付剤を製造した。粘着層のゲル分率を表2に示す。
【0120】
なお、液温が35℃であるレブリン酸1mLに対して、遊離塩基型ブロナンセリンは0.1g以上溶解することができた。
【0121】
(実施例2)
粘着層において、遊離塩基型ブロナンセリン、レブリン酸、及びアクリル系重合体(A2)が、それぞれ表2に示した配合量となるように、遊離塩基型ブロナンセリン、レブリン酸、及びアクリル系重合体(A2)溶液を混合し、粘着層形成溶液を作製した以外は、実施例1と同様にして貼付剤を製造した。粘着層のゲル分率を表2に示す。
【0122】
(実施例3)
粘着層において、遊離塩基型ブロナンセリン、レブリン酸、及びアクリル系重合体(A4)が、それぞれ表2に示した配合量となるように、遊離塩基型ブロナンセリン、レブリン酸、及びアクリル系重合体(A4)溶液を混合し、粘着層形成溶液を作製した以外は、実施例1と同様にして貼付剤を製造した。粘着層のゲル分率を表2に示す。
【0123】
(比較例1)
粘着層において、遊離塩基型ブロナンセリン、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A2)が、それぞれ表2に示した配合量となるように、遊離塩基型ブロナンセリン、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A2)溶液を混合し、粘着層形成溶液を作製した以外は、実施例1と同様にして貼付剤を製造した。粘着層のゲル分率を表2に示す。
【0124】
(比較例2)
粘着層において、遊離塩基型ブロナンセリン、レブリン酸、及びアクリル系重合体(A3)が、それぞれ表2に示した配合量となるように、遊離塩基型ブロナンセリン、レブリン酸、及びアクリル系重合体(A3)溶液を混合し、粘着層形成溶液を作製した以外は、実施例1と同様にして貼付剤を製造した。粘着層のゲル分率を表2に示す。しかしながら、比較例2の貼付剤では、製造直後に、レブリン酸と思われる液体成分が粘着層表面に過剰に滲み出て、粘着層の粘着性が低下したため、比較例2の貼付剤については後述する経皮吸収性の評価は行わなかった。
【0125】
(実施例4)
粘着層において、遊離塩基型グアンファシン、レブリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A2)が、それぞれ表3に示した配合量となるように、遊離塩基型グアンファシン、レブリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A2)溶液を混合し、粘着層形成溶液を作製した。次に、シリコーン離型処理が施された厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを離型ライナーとして用意し、このポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に、粘着層形成溶液を塗布し、60℃で30分間乾燥させることにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に厚さ70μmの粘着層が形成された積層体を作製した。そして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体として用意し、この支持体の一面と、上記積層体の粘着層とが対向するように重ね合わせて、積層体の粘着層を支持体に転写させて積層一体化させることによって貼付剤を製造した。粘着層のゲル分率を表3に示す。
【0126】
なお、液温が35℃であるレブリン酸1mLに対して、遊離塩基型グアンファシンは0.1g以上溶解することができた。
【0127】
(比較例3)
粘着層において、遊離塩基型グアンファシン、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A2)が、それぞれ表3に示した配合量となるように、遊離塩基型グアンファシン、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A2)溶液を混合し、粘着層形成溶液を作製した以外は、実施例4と同様に貼付剤を製造した。粘着層のゲル分率を表3に示す。
【0128】
なお、表3において、粘着層中における遊離塩基型グアンファシン、レブリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A2)の各配合量は、括弧で囲まれていない数値で示した。また、粘着層中における、遊離塩基型グアンファシン、レブリン酸、及びアクリル系重合体(A2)の総量100質量部中、遊離塩基型グアンファシン、レブリン酸、及びアクリル系重合体(A2)の各含有比率を、表3の各成分の欄において、括弧で囲まれた数値で示した。さらに、粘着層中における、アクリル系重合体(A2)100質量部に対するミリスチン酸イソプロピルの含有量を、表3のミリスチン酸イソプロピルの欄において、括弧で囲まれた数値で示した。
【0129】
(実施例5)
粘着層において、遊離塩基型ロチゴチン、レブリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A2)が、それぞれ表4に示した配合量となるように、遊離塩基型ロチゴチン、レブリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A2)溶液を混合し、粘着層形成溶液を作製した。次に、シリコーン離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを離型ライナーとして用意し、このポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に、粘着層形成溶液を塗布し、60℃で30分間乾燥させることにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理面に厚さ45μmの粘着層が形成された積層体を作製した。そして、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体として用意し、この支持体の一面と、上記積層体の粘着層とが対向するように重ね合わせて、積層体の粘着層を支持体に転写させて積層一体化させることによって貼付剤を製造した。粘着層のゲル分率を表4に示す。
【0130】
なお、液温が35℃であるレブリン酸1mLに対して、遊離塩基型ロチゴチンは0.1g以上溶解することができた。
【0131】
(比較例4)
粘着層において、遊離塩基型ロチゴチン、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A2)が、それぞれ表4に示した配合量となるように、遊離塩基型ロチゴチン、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A2)溶液を混合し、粘着層形成溶液を作製した以外は、実施例5と同様に貼付剤を製造した。粘着層のゲル分率を表4に示す。
【0132】
(比較例5)
粘着層において、遊離塩基型ロチゴチン、レブリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A3)が、それぞれ表4に示した配合量となるように、遊離塩基型ロチゴチン、レブリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、及びアクリル系重合体(A3)溶液を混合し、粘着層形成溶液を作製した以外は、実施例5と同様に貼付剤を製造した。しかしながら、比較例5の貼付剤では、製造直後に、レブリン酸と思われる液体成分が粘着層表面に過剰に滲み出て、粘着層の粘着性が低下したため、比較例5の貼付剤については後述する経皮吸収性の評価は行わなかった。粘着層のゲル分率を表4に示す。
【0133】
(実施例6~16、及び比較例6~8)
粘着層において、遊離塩基型ロチゴチン、レブリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、アクリル系重合体(A1)~アクリル系重合体(A3)、及び、アクリル系重合体(A5)~アクリル系重合体(A7)が、それぞれ表4に示した配合量となるように、遊離塩基型ロチゴチン、レブリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、アクリル系重合体(A1)溶液~アクリル系重合体(A3)溶液、及び、アクリル系重合体(A5)溶液~アクリル系重合体(A7)溶液を混合し、粘着層形成溶液を作製した以外は、実施例5と同様に貼付剤を製造した。粘着層のゲル分率を表4に示す。
【0134】
なお、表4において、粘着層中における遊離塩基型ロチゴチン、レブリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、アクリル系重合体(A)の各配合量は、括弧で囲まれていない数値で示した。また、粘着層中における、遊離塩基型ロチゴチン、レブリン酸、アクリル系重合体(A)の総量100質量部中、遊離塩基型ロチゴチン、レブリン酸、アクリル系重合体(A)の各含有比率を、表4の各成分の欄において、括弧で囲まれた数値で示した。さらに、粘着層中における、アクリル系重合体(A)100質量部に対するミリスチン酸イソプロピルの含有量を、表4のミリスチン酸イソプロピルの欄において、括弧で囲まれた数値で示した。
【0135】
(貼付剤の性能評価)
実施例及び比較例の貼付剤について、下記手順に従って、経皮吸収性を評価した。また、実施例及び比較例の貼付剤について、下記手順に従って、粘着性を評価した。
【0136】
(経皮吸収性)
貼付剤から面積が3cm2の平面正方形状の試験片を5枚打ち抜いた。試験片3枚の粘着層をそれぞれ溶媒に溶解させて、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)を用いて、薬物量を測定し、これらの相加平均値を「試験前の薬物量(μg/cm2)」とした。残りの試験片2枚それぞれから剥離ライナーを剥離して粘着層を全面的に露出した状態とした後、それぞれの試験片を背部を剃毛したWistar系ラット(7週齢)の背部に24時間に亘って貼着した。試験片をラット背部から剥離した後、粘着層をそれぞれ溶媒に溶解させて、HPLCを用いて、薬物量を測定し、これらの相加平均値を「試験後の薬物量(μg/cm2)」とした。「試験前の薬物量」から「試験後の薬物量」を引いた値を「経皮吸収量(μg/cm2)」とし、これを表2~4に示した。
【0137】
なお、HPLCを用いた薬物量の測定のために粘着層を溶解させた溶媒としては、粘着層に含まれる薬物が遊離塩基型ブロナンセリン又は遊離塩基型ロチゴチンである場合にはテトラヒドロフランを用い、粘着層に含まれる薬物が遊離塩基型グアンファシンである場合にはジメチルホルムアミドを用いた。
【0138】
(粘着性の試験)
貼付剤から試験片(縦1.7mm×横1.7mm)を切り出した。試験片から剥離ライナーを剥離除去して粘着層を露出させ、試験片をその粘着層が上となるように水平面上に載置した。第十七改正日本薬局方の一般試験法「6.13 粘着力試験法」の「3.4 プローブタック試験法」に準じて、粘着層表面に円柱状のプローブを接触させた後、粘着層表面から垂直方向に円柱状のプローブを移動させて引き剥がし、この引き剥がす際に、円柱状のプローブが粘着層表面の粘着力により受ける抵抗力を荷重(N/cm2)として測定した。なお、荷重の測定は、粘着層表面に接触させた円柱状プローブの移動距離ごとに測定間隔を変えながら複数回行った。
【0139】
具体的には、粘着層表面に接触させた円柱状プローブの移動距離が0.12mmとなるまでは円柱状プローブが0.01mm移動する毎に荷重を測定した(測定回数n:1~12回目)。円柱状プローブの移動距離が0.12mmを超えてから0.48mmとなるまでは円柱状プローブが0.02mm移動する毎に荷重を測定した(測定回数n:13~30回目)。円柱状プローブの移動距離が0.48mmを超えてから1.02mmとなるまでは円柱状プローブが0.03mm移動する毎に荷重を測定した(測定回数n:31~48回目)。円柱状プローブの移動距離が1.02mmを超えてから1.98mmとなるまでは円柱状プローブが0.04mm移動する毎に荷重を測定した(測定回数n:49~72回目)。その後は、円柱状プローブが0.05mm移動する毎に荷重を測定した(測定回数n:73回目以降)。そして、円柱状プローブを引き剥がすのに要した最大荷重(N/cm2)及び荷重面積[(N/cm2)×mm]を表2~4に示した。
【0140】
なお、荷重面積は、粘着層表面に接触させた円柱状のプローブの移動距離が27mmとなるまで測定した荷重について、n回目に測定した荷重をLn(N/cm2)として、下記式(1)に基づいて算出した。なお、荷重面積の説明を以下に記載する。先ず、上記の通りに測定した荷重の測定値を、X軸を円柱状のプローブの移動距離(mm)とし、Y軸を荷重(N/cm2)としたグラフにプロットして曲線を描く。上記グラフの模式図を図1に示す。荷重面積は、上記グラフにおいて、上記曲線と、X軸と、X=27mmとなる時のX軸上の点を通り且つY軸に平行な直線Lとによって囲まれた部分(図1における斜線部分)の面積に近似した値である。すなわち、荷重面積は、粘着層表面に接触させた円柱状のプローブの移動距離が27mmとなるまでの荷重の積分値に相当する。
【0141】
【数1】
【0142】
プローブタック試験法における最大荷重は、23N/cm2以上が好ましい。最大荷重が23N/cm2以上であれば、粘着層が優れた粘着性を有しており、貼付中に貼付剤が皮膚から剥がれるのを低減して、貼付剤を皮膚に安定的に貼り付けることができる。なお、最大荷重が高すぎると、貼付剤を皮膚から剥離する際に皮膚を損傷させる可能性がある。したがって、プローブタック試験法における最大荷重は、100N/cm2以下が好ましい。
【0143】
また、プローブタック試験法における荷重面積は、20(N/cm2)×mm以上が好ましい。荷重面積が20(N/cm2)×mm以上であれば、粘着層がより優れた粘着性を有しており、貼付中に貼付剤が皮膚から剥がれるのをより高く低減して、貼付剤を皮膚により安定的に貼り付けることができる。なお、荷重面積が高すぎると、貼付剤を皮膚から剥離する際に皮膚を損傷させる可能性がある。したがって、プローブタック試験法における荷重面積は、120(N/cm2)×mm以下が好ましい。
【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【0146】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明によれば、薬物の経皮吸収性及び皮膚に対する粘着性の双方に優れている貼付剤を提供することができる。
【0148】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年8月19日に出願された日本国特許出願第2020-138958号に基づく優先権を主張し、この出願の開示はこれらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
図1