(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び光学フィルムの選定方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221109BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20221109BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221109BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20221109BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/111
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2022551238
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2021038887
(87)【国際公開番号】W WO2022085751
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2020176687
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 翔生
(72)【発明者】
【氏名】堀田 光
(72)【発明者】
【氏名】田中 佳子
(72)【発明者】
【氏名】黒田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】牛山 章伸
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/100926(WO,A1)
【文献】特開2020-79884(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152691(WO,A1)
【文献】特開2011-112928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 1/10- 1/18
H01L27/32
H01L51/50
H05B33/02
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する光学フィルムであって、
前記プラスチックフィルムは、面内で屈折率が最も大きい軸である遅相軸と、前記プラスチックフィルムの面内で前記遅相軸と直交する軸である進相軸とを有し、
前記低屈折率層は前記光学フィルムの表面に位置し、
前記光学フィルムは、下記測定条件1から算出したΣ
Tが0.04超0.20未満を満たす領域を有する、光学フィルム。
<測定条件1>
前記光学フィルムの前記低屈折率層とは反対側の面から直線編光を入射する。前記入射光である直線偏光を光L1と定義する。前記光L1が前記光学フィルムを透過した透過光を光L2と定義する。
前記光L1は、前記遅相軸と前記光L1の振動方向との成す角を45度に固定した上で、前記光学フィルムの平面を基準とした前記光L1の振動方向の仰角が50度以上70度以下となる角度で前記光学フィルムに対して入射させる。前記仰角を50度以上70度以下の範囲で2度刻みで変動させ、11通りの仰角において前記光L2を測定する。前述した測定により、11の測定点において前記光L2が測定される。
前記光L2を、C光源及び視野角2度の条件に換算する。11の測定点のうちのn番目の測定点の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n及びb*nと定義する。また、11の測定点のうちのn+1番目の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n1及びb*n1と定義する。
前記11の測定点の測定に基づいて、隣接する測定点のa*の差の2乗と、隣接する測定点のb*の差の2乗との和を算出する。前記和を10の隣接点でそれぞれ算出し、前記和の総和を示すΣ
Tを算出する。前記Σ
Tは下記式1で表すことができる。
Σ
T=Σ[{a*n-a*n1}
2 +{b*n-b*n1}
2 ] (式1)
【請求項2】
前記11の測定点の測定に基づいて、a*の最大値をa*max、a*の最小値をa*min、b*の最大値をb*max、b*の最小値をb*minと定義した際に、下記式2-1及び式2-2を満たす、請求項1に記載の光学フィルム。
a*max-a*min≦0.250 (式2-1)
b*max-b*min≦0.350 (式2-2)
【請求項3】
前記11の測定点の測定に基づいて、隣接する測定点のa*の差の2乗と、隣接する測定点のb*の差の2乗との和を算出する。前記和をSと定義した際に、Sは下記式3で表すことができる。Sを10の隣接点でそれぞれ算出し、10点のSの最大値をS
MAXと定義した際に、S
MAXが0.010以上0.050以下である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
S={a*n-a*n1}
2 +{b*n-b*n1}
2 (式3)
【請求項4】
前記光学フィルムの視感反射率Y値をR(%)と定義した際に、前記Rと前記Σ
Tとの積が0.05以上0.25以下である、請求項1~3の何れかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記低屈折率層の平均屈折率をn1、前記低屈折率層に隣接する層の平均屈折率をn2と定義した際に、n2/n1が1.23未満である、請求項1~4の何れかに記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記低屈折率層の平均屈折率をn1、前記低屈折率層に隣接する層の平均屈折率をn2と定義した際に、n2/n1が1.05以上1.23未満である、請求項1~4の何れかに記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記プラスチックフィルムの面内位相差が2500nm以下である、請求項1~6の何れかに記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記プラスチックフィルムが下記の条件Aを満たす、請求項1~7の何れかに記載の光学フィルム。
<条件A>
前記プラスチックフィルムから縦50mm×横50mmの大きさのサンプルを切り出す。前記サンプルの中央部の1箇所、及び、前記サンプルの四隅からそれぞれ前記中央部に向かって10mm進んだ4箇所、の合計5箇所を、測定箇所とする。
前記サンプルの前記5箇所で遅相軸の方向を測定する。前記サンプルの任意の1辺と、各測定箇所の遅相軸の方向とが成す角度を、それぞれD1、D2、D3、D4、D5と定義する。D1~D5の最大値と、D1~D5の最小値との差が1.5度以上を示す。
【請求項9】
前記プラスチックフィルムと前記低屈折率層との間に、ハードコート層及び防眩層から選ばれる1種以上の層を有する、請求項1~8の何れかに記載の光学フィルム。
【請求項10】
偏光子と、前記偏光子の一方の側に位置する第1の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に位置する第2の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第1の透明保護板及び前記第2の透明保護板の少なくとも一方が請求項1~9の何れかに記載の光学フィルムであり、前記光学フィルムの前記低屈折率層側の面が前記偏光子とは反対側を向いてなる、偏光板。
【請求項11】
表示素子と、前記表示素子の光出射面側に配置されてなる偏光子及び光学フィルムとを有する画像表示装置であって、前記光学フィルムが請求項1~9の何れかに記載の光学フィルムであり、かつ、前記光学フィルムの前記低屈折率層側の面が前記表示素子とは反対側を向いてなる、画像表示装置。
【請求項12】
表示素子の光出射面上に、偏光子及び光学フィルムを有してなる画像表示装置の光学フィルムの選定方法であって、下記(1)~(4)の判定条件を満たす光学フィルムXを前記光学フィルムとして選定する、画像表示装置の光学フィルムの選定方法。
(1)プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する光学フィルムXであること;
(2)前記プラスチックフィルムは、面内で屈折率が最も大きい軸である遅相軸と、前記プラスチックフィルムの面内で前記遅相軸と直交する軸である進相軸とを有すること;
(3)前記低屈折率層が前記光学フィルムXの表面に位置してなること;及び
(4)前記光学フィルムXが、下記測定条件1から算出したΣ
Tが0.04超0.20未満を満たす領域を有すること。
<測定条件1>
前記光学フィルムの前記低屈折率層とは反対側の面から直線編光を入射する。前記入射光である直線偏光を光L1と定義する。前記光L1が前記光学フィルムを透過した透過光を光L2と定義する。
前記光L1は、前記遅相軸と前記光L1の振動方向との成す角を45度に固定した上で、前記光学フィルムの平面を基準とした前記光L1の振動方向の仰角が50度以上70度以下となる角度で前記光学フィルムに対して入射させる。前記仰角を50度以上70度以下の範囲で2度刻みで変動させ、11通りの仰角において前記光L2を測定する。前述した測定により、11の測定点において前記光L2が測定される。
前記光L2を、C光源及び視野角2度の条件に換算する。11の測定点のうちのn番目の測定点の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n及びb*nと定義する。また、11の測定点のうちのn+1番目の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n1及びb*n1と定義する。
前記11の測定点の測定に基づいて、隣接する測定点のa*の差の2乗と、隣接する測定点のb*の差の2乗との和を算出する。前記和を10の隣接点でそれぞれ算出し、前記和の総和を示すΣ
Tを算出する。前記Σ
Tは下記式1で表すことができる。
Σ
T=Σ[{a*n-a*n1}
2 +{b*n-b*n1}
2 ] (式1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び光学フィルムの選定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等の光学部材には、種々の光学用のプラスチックフィルムが用いられる場合が多い。例えば、表示素子上に偏光板を有する画像表示装置には、偏光板を構成する偏光子を保護するためのプラスチックフィルムが用いられている。本明細書において、「偏光子を保護するためのプラスチックフィルム」のことを「偏光子保護フィルム」と称する場合がある。
【0003】
偏光子保護フィルム等として使用される画像表示装置用のプラスチックフィルムは、機械的強度が優れるものが好ましい。このため、画像表示装置用のプラスチックフィルムとしては、延伸プラスチックフィルムが好ましく用いられている。
【0004】
偏光子上に延伸プラスチックフィルムを配置する場合、偏光子を通過した直線偏光の偏光状態を延伸プラスチックフィルムが乱すことを原因として、虹模様のムラ(rainbow pattern unevenness)が観察されるという問題がある。虹ムラの問題を解決するため、特許文献1~3等の技術が提案されている。以下、本明細書において、「虹模様のムラ(rainbow pattern unevenness)」のことを「虹ムラ(rainbow unevenness)」と称する場合がある。
【0005】
特許文献1には、画像表示装置の光源を特定の白色光源とすること、延伸プラスチックフィルムの面内位相差(リタデーション)を3000nm以上30000nm以下と高くすること、及び、偏光子の吸収軸と延伸プラスチックフィルムの遅相軸とを略45度で配置することにより、偏光サングラスを介して画像を視認した際の虹ムラを解消し得る液晶表示装置が示されている。
しかし、特許文献1の手段は、面内位相差の大きい延伸プラスチックフィルムを用いる必要がある。そして、面内位相差の大きい延伸プラスチックフィルムは、通常は一軸延伸であるため、延伸方向に裂けやすい等の問題がある。
【0006】
特許文献2には、ブリュースター角での反射率が特定範囲の偏光板保護フィルムが開示されている。特許文献3には、入射角50度でのP波の反射率と、S波の反射率との差が20%以下である偏光板保護フィルムが開示されている。
特許文献2及び3の偏光板保護フィルムは、画像表示装置の内部から視認者側に向かう光の偏光成分であるP波とS波との反射率差を小さくすることにより、特許文献1のようにフィルムの面内位相差を大きくすることなく、裸眼で視認した際の虹ムラ解消を狙ったものである。
【0007】
特許文献2及び3の偏光板保護フィルムは、裸眼で視認した際の虹ムラはある程度改善することができる。しかし、特許文献2及び3の偏光板保護フィルムは、視認する角度によって色味が変化するという問題があった。すなわち、特許文献2及び3の偏光板保護フィルムは、斜め視認時の色味の均一性を満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-107198号公報
【文献】特開2009-14886号公報
【文献】特開2010-204630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、裸眼で視認した際の虹ムラを解消するとともに、斜め視認時の色味の均一性が良好である、光学フィルム、並びに、前記光学フィルムを用いた偏光板及び画像表示装置を提供することを課題とする。本開示は、裸眼で視認した際の虹ムラを解消するとともに、斜め視認時の色味の均一性が良好である、光学フィルムの選定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、以下の[1]~[12]を提供する。
[1]プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する光学フィルムであって、
前記プラスチックフィルムは、面内で屈折率が最も大きい軸である遅相軸と、前記プラスチックフィルムの面内で前記遅相軸と直交する軸である進相軸とを有し、
前記低屈折率層は前記光学フィルムの表面に位置し、
前記光学フィルムは、下記測定条件1から算出したΣTが0.04超0.20未満を満たす領域を有する、光学フィルム。
<測定条件1>
前記光学フィルムの前記低屈折率層とは反対側の面から直線編光を入射する。前記入射光である直線偏光を光L1と定義する。前記光L1が前記光学フィルムを透過した透過光を光L2と定義する。
前記光L1は、前記遅相軸と前記光L1の振動方向との成す角を45度に固定した上で、前記光学フィルムの平面を基準とした前記光L1の振動方向の仰角が50度以上70度以下となる角度で前記光学フィルムに対して入射させる。前記仰角を50度以上70度以下の範囲で2度刻みで変動させ、11通りの仰角において前記光L2を測定する。前述した測定により、11の測定点において前記光L2が測定される。
前記光L2を、C光源及び視野角2度の条件に換算する。11の測定点のうちのn番目の測定点の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n及びb*nと定義する。また、11の測定点のうちのn+1番目の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n1及びb*n1と定義する。
前記11の測定点の測定に基づいて、隣接する測定点のa*の差の2乗と、隣接する測定点のb*の差の2乗との和を算出する。前記和を10の隣接点でそれぞれ算出し、前記和の総和を示すΣTを算出する。前記ΣTは下記式1で表すことができる。
ΣT=Σ[{a*n-a*n1}2 +{b*n-b*n1}2 ] (式1)
【0011】
[2]前記11の測定点の測定に基づいて、a*の最大値をa*max、a*の最小値をa*min、b*の最大値をb*max、b*の最小値をb*minと定義した際に、下記式2-1及び式2-2を満たす、[1]に記載の光学フィルム。
a*max-a*min≦0.250 (式2-1)
b*max-b*min≦0.350 (式2-2)
[3]前記11の測定点の測定に基づいて、隣接する測定点のa*の差の2乗と、隣接する測定点のb*の差の2乗との和を算出する。前記和をSと定義した際に、Sは下記式3で表すことができる。Sを10の隣接点でそれぞれ算出し、10点のSの最大値をSMAXと定義した際に、SMAXが0.010以上0.050以下である、[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
S={a*n-a*n1}2 +{b*n-b*n1}2 (式3)
[4]前記光学フィルムの視感反射率Y値をR(%)と定義した際に、前記Rと前記ΣTとの積が0.05以上0.25以下である、[1]~[3]の何れかに記載の光学フィルム。
[5]前記低屈折率層の平均屈折率をn1、前記低屈折率層に隣接する層の平均屈折率をn2と定義した際に、n2/n1が1.23未満である、[1]~[4]の何れかに記載の光学フィルム。
[6]前記低屈折率層の平均屈折率をn1、前記低屈折率層に隣接する層の平均屈折率をn2と定義した際に、n2/n1が1.05以上1.23未満である、[1]~[4]の何れかに記載の光学フィルム。
[7]前記プラスチックフィルムの面内位相差が2500nm以下である、[1]~[6]の何れかに記載の光学フィルム。
【0012】
[8]前記プラスチックフィルムが下記の条件Aを満たす、[1]~[7]の何れかに記載の光学フィルム。
<条件A>
前記プラスチックフィルムから縦50mm×横50mmの大きさのサンプルを切り出す。前記サンプルの中央部の1箇所、及び、前記サンプルの四隅からそれぞれ前記中央部に向かって10mm進んだ4箇所、の合計5箇所を、測定箇所とする。
前記サンプルの前記5箇所で遅相軸の方向を測定する。前記サンプルの任意の1辺と、各測定箇所の遅相軸の方向とが成す角度を、それぞれD1、D2、D3、D4、D5と定義する。D1~D5の最大値と、D1~D5の最小値との差が1.5度以上を示す。
[9]前記プラスチックフィルムと前記低屈折率層との間に、ハードコート層及び防眩層から選ばれる1種以上の層を有する、[1]~[8]の何れかに記載の光学フィルム。
【0013】
[10]偏光子と、前記偏光子の一方の側に位置する第1の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に位置する第2の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第1の透明保護板及び前記第2の透明保護板の少なくとも一方が[1]~[9]の何れかに記載の光学フィルムであり、前記光学フィルムの前記低屈折率層側の面が前記偏光子とは反対側を向いてなる、偏光板。
[11]表示素子と、前記表示素子の光出射面側に配置されてなる偏光子及び光学フィルムとを有する画像表示装置であって、前記光学フィルムが[1]~[7]の何れかに記載の光学フィルムであり、かつ、前記光学フィルムの前記低屈折率層側の面が前記表示素子とは反対側を向いてなる、画像表示装置。
【0014】
[12]表示素子の光出射面上に、偏光子及び光学フィルムを有してなる画像表示装置の光学フィルムの選定方法であって、下記(1)~(4)の判定条件を満たす光学フィルムXを前記光学フィルムとして選定する、画像表示装置の光学フィルムの選定方法。
(1)プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する光学フィルムXであること;
(2)前記プラスチックフィルムは、面内で屈折率が最も大きい軸である遅相軸と、前記プラスチックフィルムの面内で前記遅相軸と直交する軸である進相軸とを有すること;
(3)前記低屈折率層が前記光学フィルムXの表面に位置してなること;及び
(4)前記光学フィルムXが、上記測定条件1から算出したΣTが0.04超0.20未満を満たす領域を有すること。
【発明の効果】
【0015】
本開示の光学フィルム、並びに、前記光学フィルムを用いた偏光板及び画像表示装置は、裸眼で視認した際の虹ムラを解消するとともに、斜め視認時の色味の均一性を良好にすることができる。本開示の光学フィルムの選定方法は、裸眼で視認した際の虹ムラを解消するとともに、斜め視認時の色味の均一性を良好にすることができる光学フィルムを効率よく選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の光学フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】測定条件1で実施する測定の一例を示す模式図である。
【
図3】本開示の偏光板の一実施形態を示す断面図である。
【
図4】本開示の画像表示装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図5】サンプルから面内位相差等を算出する際における、サンプル内の5箇所の測定位置を説明するための平面図である。
【
図6】連続折り畳み試験の様子を模式的に示した図である。
【
図7】エロージョン率の測定装置の概略断面図である。
【
図8】噴射部から噴射した純水及び球形シリカを含む試験液により、プラスチックフィルムが摩耗される状態のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の光学フィルムの実施形態を説明する。
[光学フィルム]
本開示の光学フィルムは、プラスチックフィルム上に低屈折率層を有してなり、前記プラスチックフィルムは、面内で屈折率が最も大きい軸である遅相軸と、前記プラスチックフィルムの面内で前記遅相軸と直交する軸である進相軸とを有し、前記低屈折率層は前記光学フィルムの表面に位置し、前記光学フィルムは下記測定条件1から算出したΣTが0.04超0.20未満を満たす領域を有する、ものである。
【0018】
<測定条件1>
前記光学フィルムの前記低屈折率層とは反対側の面から直線編光を入射する。前記入射光である直線偏光を光L1と定義する。前記光L1が前記光学フィルムを透過した透過光を光L2と定義する。
前記光L1は、前記遅相軸と前記光L1の振動方向との成す角を45度に固定した上で、前記光学フィルムの平面を基準とした前記光L1の振動方向の仰角が50度以上70度以下となる角度で前記光学フィルムに対して入射させる。前記仰角を50度以上70度以下の範囲で2度刻みで変動させ、11通りの仰角において前記光L2を測定する。前述した測定により、11の測定点において前記光L2が測定される。
前記光L2を、C光源及び視野角2度の条件に換算する。11の測定点のうちのn番目の測定点の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n及びb*nと定義する。また、11の測定点のうちのn+1番目の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n1及びb*n1と定義する。
前記11の測定点の測定に基づいて、隣接する測定点のa*の差の2乗と、隣接する測定点のb*の差の2乗との和を算出する。前記和を10の隣接点でそれぞれ算出し、前記和の総和を示すΣTを算出する。前記ΣTは下記式1で表すことができる。
ΣT=Σ[{a*n-a*n1}2 +{b*n-b*n1}2 ] (式1)
【0019】
本明細書において、前記測定条件1における測定、並びに、後述する測定(面内位相差、厚み方向の位相差、遅相軸の方向、視感反射率Y値等の測定)は、特に断りのない限り、温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下の雰囲気で実施するものとする。また、各測定の前に、前記雰囲気に測定サンプルを30分以上60分以下晒すものとする。
【0020】
本明細書において、a*値及びb*値は、1976年に国際照明委員会(CIE)により規格化されたL*a*b*表色系に基づくものである。L*a*b*表色系は、JIS Z8781-4:2013において採用されている。
【0021】
図1は、本開示の光学フィルム100の実施の形態を示す断面図である。
図1に示すように、本開示の光学フィルム100は、プラスチックフィルム10上に低屈折率層30を有している。
本開示の光学フィルム100は、プラスチックフィルム10及び低屈折率層30以外の層を有していてもよい。プラスチックフィルム10及び低屈折率層30以外の層としては、ハードコート層、防眩層及び高屈折率層等が挙げられる。
図1の光学フィルム100は、プラスチックフィルム10と低屈折率層30との間にハードコート層20を有している。
【0022】
本明細書において、「プラスチックフィルムの面内」とは、特に断りのない限り、「プラスチックフィルムの厚み方向と直交する方向の面内」を意味する。
図1の場合、プラスチックフィルムのXY面が、プラスチックフィルムの面内に相当する。
【0023】
《測定条件1について》
図2は、測定条件1で実施する測定の一例を示す模式図である。
条件1では、光学フィルムの低屈折率層とは反対側の面から直線編光である光L1を入射する。
図2(a)では、光源A1と検出器A2との間に光学フィルム100を配置している。そして、
図2(a)では、光源から直線偏光である光L1を出射し、光学フィルム100の低屈折率層30とは反対側の面に前記光L1を入射している。
検出器A2は、光L1の正透過光を検出できるものを用いる。
【0024】
測定条件1においては、光L1は、プラスチックフィルムの遅相軸と光L1の振動方向との成す角を45度に固定した上で、光学フィルム100に入射する。
図2(b)は、プラスチックフィルムの遅相軸である「S」と、光L1の振動方向である「V」とを、
図2(a)をXY面方向から視認した際の図である。
図2(b)において、θ1は、プラスチックフィルムの遅相軸である「S」と、光L1の振動方向である「V」との成す角を示している。測定条件1では、θ1を45度に固定している。なお、光L1の振動方向である「V」は、実際にはZ軸方向に傾いている。
測定条件1においては、θ1を45度に固定した上で、光学フィルムの平面を基準とした光L1の振動方向の仰角が50度以上70度以下となる角度で、前記光学フィルムに対して光L1を入射させる。
図2(a)において、θ2は、光学フィルムの平面を基準とした光L1の振動方向である「V」の仰角を示している(光学フィルムの平面を、基準である0度とする。)。
図2(a)において、「F」は、光学フィルムの進相軸を示している。
図2(a)において、進相軸である「F」は、
図2(a)のY軸方向に延伸している。
測定条件1では、前記仰角を50度以上70度以下の範囲で2度刻みで変動させ、11通りの仰角において光L2を測定する。前述した測定により、11の測定点において前記光L2が測定される。前記仰角を50度以上70度以下の範囲で2度刻みで変動させる手段としては、例えば、進相軸である「F」を旋回中心として光学フィルム100を傾ける手段が挙げられる。
測定条件1において、仰角を50度以上70度以下としているのは、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムのブリュースター角を考慮したためである。プラスチックフィルムの裸眼の虹ムラは、ブリュースター角の近傍で強く視認されやすい。
【0025】
測定条件1では、光L2を、C光源及び視野角2度の条件に換算する。前記換算により、得られるa*値及びb*値から光源の影響を排除することができる。
11の測定点のうちのn番目の測定点の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n及びb*nと定義する。また、11の測定点のうちのn+1番目の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n1及びb*n1と定義する。a*n、b*n、a*n1及びb*n1は、前記換算後の光L2から算出したものである。
以上の測定及び算出は、例えば、日本分光社(JASCO Corporation)の分光光度計の品番「V-7100」で実施することができる。
【0026】
測定条件1では、前記11の測定点の測定に基づいて、隣接する測定点のa*の差の2乗と、隣接する測定点のb*の差の2乗との和を算出する。前記和を10の隣接点でそれぞれ算出し、前記和の総和を示すΣTを算出する。前記ΣTは下記式1で表すことができる。
ΣT=Σ[{a*n-a*n1}2 +{b*n-b*n1}2 ] (式1)
【0027】
本開示の光学フィルムは、前記ΣTが0.04超0.20未満を満たす領域を有することを要件としている。
前記ΣTは、光学フィルムを50度以上70度以下の角度で視認した際の、透過色相の変動量を示している。本発明者らは、前記ΣTは、プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する光学フィルムにおける虹ムラの見えやすさの指標になることを突き止めた。また、本発明者らは、プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する光学フィルムの反射率を低くするほど、前記ΣTが小さくなり、虹ムラが見えにくくなる傾向があることを突き止めた。虹ムラは透過光に基づくものである。
上述した本発明者らの知見に基づけば、前記ΣTを小さくするほど視認性を良好にできると考えられる。しかし、本発明者らは、前記ΣTを小さくするほど、斜めから視認した際に色味が変化しやすくなり、色味の均一性が低下する問題が生じることを突き止めた。また、本発明者らは、色味の均一性が低下する主原因が、透過光ではなく反射光にあることを突き止めた。そして、本発明者らは、前記ΣTを所定の範囲とすることにより、裸眼で視認した際の虹ムラを解消するとともに、斜め視認時の色味の均一性を良好にできることを突き止めた。前記ΣTを所定の値以上にすることは、低屈折率層を有する光学フィルムの反射率を高くすることを意味する。すなわち、本発明者らは、低屈折率層を有する光学フィルムの反射率をあえて高くすることによって、裸眼で視認した際の虹ムラを解消するとともに、斜め視認時の色味の均一性を良好にするという課題を解決できることを突き止めた。前記ΣTを所定の値以上にすることによって、低屈折率層を有する光学フィルムの反射光の干渉が抑制され、斜め視認時の色味の均一性を良好にしやすくできると考えられる。(ΣTが大きくなると、低屈折率層の屈折率が高くなりやすい。そして、低屈折率層の屈折率が高くなると、低屈折率層と低屈折率層に接する層との屈折率差が小さくなりやすくなるため、光学フィルムの反射光の干渉が抑制される。その結果、斜め視認時の色味の均一性を良好にしやすくできると考えられる。)
【0028】
ΣTが0.04以下の場合、反射光の干渉が強くなり、斜め視認時の色味の均一性を良好にすることができない。ΣTが0.20以上の場合、裸眼で視認した際の虹ムラを解消することができない。前述したように、虹ムラは透過光に基づくものである。よって、ΣTを0.04超0.20未満とすることにより、透過光及び反射光の両方の影響を抑制することができ、視認性を極めて良好にすることができる。
ΣTは0.05以上であることが好ましく、0.06以上であることがより好ましい。ΣTは0.15以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましく、0.09以下であることがさらに好ましい。
【0029】
本開示の光学フィルムにおいて、前記ΣTの好ましい範囲は、0.04超0.15以下、0.04超0.10以下、0.04超0.09以下、0.05以上0.20未満、0.05以上0.15以下、0.05以上0.10以下、0.05以上0.09以下、0.06以上0.20未満、0.06以上0.15以下、0.06以上0.10以下、0.06以上0.09以下等が挙げられる。
低屈折率層の屈折率を高くすると、ΣTは大きくなる傾向がある。低屈折率層の屈折率を低くすると、ΣTは小さくなる傾向がある。低屈折率層の屈折率を低くすると、低屈折率層の機械的強度が低下する傾向がある。低屈折率層の屈折率を高くすると、光学フィルムの反射率が高くなりやすい。光学フィルムの反射率を適切な範囲として、かつ、低屈折率層の機械的強度を良好にするため、前記ΣTは、0.05以上0.09以下であることが好ましい。
【0030】
前記ΣTは、「プラスチックフィルムの面内位相差を低くすること」及び「屈折率に関するパラメータであるn2/n1を小さくすること」等により、前記範囲にしやすくできる。プラスチックフィルムと低屈折率層との間にハードコート層を有する場合、ハードコート層を形成する電離放射線硬化性化合物として、所定範囲の分子量の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることにより、前記ΣTを前記範囲にしやすくできる。
【0031】
光学フィルム内において、ΣTが0.04超0.20未満を満たす領域の割合は、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であることがよりさらに好ましい。
同様に、ΣT以外の各種のパラメータ(式2-1、式2-2、面内位相差、厚み方向の位相差等)を満たす領域の割合も、光学フィルム内において、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であることがよりさらに好ましい。
【0032】
本開示の光学フィルムは、前記11の測定点の測定に基づいて、a*の最大値をa*max、a*の最小値をa*min、b*の最大値をb*max、b*の最小値をb*minと定義した際に、下記式2-1及び式2-2を満たすことが好ましい。
a*max-a*min≦0.250 (式2-1)
b*max-b*min≦0.350 (式2-2)
【0033】
式2-1及び式2-2を満たすことにより、50度以上70度以下の範囲における透過色相の変化をより感じにくくすることができる。このため、式2-1及び式2-2を満たすことにより、裸眼で視認した際の虹ムラをより解消しやすくできる。
ΣTが小さくなりすぎると、式2-1及び式2-2の左辺が大きくなる傾向がある。この原因は、ΣTが小さくなると、色変化は低屈折率層の光学距離の変化が支配的になるためと考えられる。より具体的には、低屈折率層の光学距離は角度に応じてリニアに変化するため、a*値及びb*値が単調増加又は単調減少するためと考えられる。このため、式2-1及び式2-2を満たすことにより、斜め視認時の色味の均一性も良好にしやすくなる傾向がある。
式2-1のa*max-a*minは、0.230以下であることがより好ましく、0.210以下であることがさらに好ましく、0.200以下であることがよりさらに好ましい。式2-1のa*max-a*minの下限は特に制限されないが、0.070程度である。a*max-a*minを0.070以上とすることにより、ΣTが大きくなり過ぎることを抑制しやすくできる。
式2-2のb*max-b*minは、0.300以下であることがより好ましく、0.250以下であることがより好ましく、0.230以下であることがより好ましく、0.210以下であることがより好ましく、0.200以下であることがより好ましい。式2-2のb*max-b*minの下限は特に制限されないが、0.070程度である。b*max-b*minを0.070以上とすることにより、ΣTが大きくなり過ぎることを抑制しやすくできる。
【0034】
式2-1のa*max-a*minの好ましい範囲は、0.070以上0.250以下、0.070以上0.230以下、0.070以上0.210以下、0.070以上0.200以下等が挙げられる。
式2-2のb*max-b*minの好ましい範囲は、0.070以上0.350以下、0.070以上0.300以下、0.070以上0.250以下、0.070以上0.230以下、0.070以上0.210以下、0.070以上0.200以下等が挙げられる。
【0035】
式2-1及び式2-2は、「プラスチックフィルムの面内位相差を低くすること」及び「屈折率に関するパラメータであるn2/n1を小さくすること」等により、満たしやすくできる。プラスチックフィルムと低屈折率層との間にハードコート層を有する場合、ハードコート層を形成する電離放射線硬化性化合物として、所定範囲の分子量の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることにより、式2-1及び式2-2を満たしやすくできる。
【0036】
a*maxは、-1.0以上0以下が好ましく、-0.8以上-0.1以下がより好ましい。
b*maxは、0以上2.0以下が好ましく、0.2以上1.8以下がより好ましい。
【0037】
本開示の光学フィルムは、下記の構成を満たすことが好ましい。
前記11の測定点の測定に基づいて、隣接する測定点のa*の差の2乗と、隣接する測定点のb*の差の2乗との和を算出する。前記和をSと定義した際に、Sは下記式3で表すことができる。Sを10の隣接点でそれぞれ算出し、10点のSの最大値をSMAXと定義した際に、SMAXが0.010以上0.050以下であることが好ましい。
S={a*n-a*n1}2 +{b*n-b*n1}2 (式3)
【0038】
SMAXを0.050以下とすることにより、50度以上70度以下の範囲における透過色相の変化をより感じにくくすることができる。このため、SMAXを0.050以下とすることにより、裸眼で視認した際の虹ムラをより解消しやすくできる。
低屈折率層を有する光学フィルムの反射率が低くなると、SMAXが小さくなる傾向がある。すなわち、SMAXを小さくし過ぎると、低屈折率層を有する光学フィルムの反射光の干渉が抑制されにくくなる傾向がある。このため、SMAXを0.010以上とすることにより、斜め視認時の色味の均一性をより良好にしやすくできる。
SMAXは、下限が0.011以上であることがより好ましく、0.012以上であることがさらに好ましい。SMAXは、上限が0.040以下であることがより好ましく、0.030以下であることがさらに好ましく、0.025以下であることがよりさらに好ましい。
【0039】
SMAXの好ましい範囲は、0.010以上0.040以下、0.010以上0.030以下、0.010以上0.025以下、0.011以上0.050以下、0.011以上0.040以下、0.011以上0.030以下、0.011以上0.025以下、0.012以上0.050以下、0.012以上0.040以下、0.012以上0.030以下、0.012以上0.025以下等が挙げられる。
SMAXを0.010以上0.040以下とすることにより、b*が大きくなることを抑制し、画像表示装置の高級感が損なわれることを抑制できる。
【0040】
SMAXは、「プラスチックフィルムの面内位相差を低くすること」、「屈折率に関するパラメータであるn2/n1を小さくすること」等により、前記範囲にしやすくできる。プラスチックフィルムと低屈折率層との間にハードコート層を有する場合、ハードコート層を形成する電離放射線硬化性化合物として、所定範囲の分子量の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることにより、SMAXを前記範囲にしやすくできる。
【0041】
本開示の光学フィルムは、光学フィルムの視感反射率Y値をR(%)と定義した際に、前記Rと前記ΣTとの積が0.05以上0.25以下であることが好ましい。
前記積を0.05以上0.25以下とすることにより、前記ΣTに基づく効果をより発揮しやすくできる。
【0042】
前記積は、0.06以上であることがより好ましく、0.07以上であることがさらに好ましい。前記積は、0.19以下であることがより好ましく、0.13以下であることがさらに好ましく、0.11以下であることがよりさらに好ましい。特に、前記積が0.11以下であると、画像表示装置の高級感を良好にしやすい。
【0043】
前記積の好ましい範囲は、0.05以上0.19以下、0.05以上0.13以下、0.05以上0.11以下、0.06以上0.25以下、0.06以上0.19以下、0.06以上0.13以下、0.06以上0.11以下、0.07以上0.25以下、0.07以上0.19以下、0.07以上0.13以下、0.07以上0.11以下等が挙げられる。
【0044】
<プラスチックフィルム>
プラスチックフィルムに含まれる樹脂成分としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン、トリアセチルセルロース(TAC)及び非晶質オレフィン(Cyclo-Olefin-Polymer:COP)等が挙げられる。
【0045】
プラスチックフィルムは、ブリュースター角が50度以上70度以下のものが好ましく、55度以上65度以下のものがより好ましい。本開示の光学フィルムは、測定条件1の仰角が50度以上70度以下である。よって、プラスチックフィルムのブリュースター角を50度以上70度以下とすることにより、本開示の効果を発揮しやすくすることができる。
ブリュースター角が50度以上70度以下の樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル、ポリエステル、TAC及びCOP等が挙げられる。これらの中でもポリエステルは、機械的強度を良好にしやすい点で好ましい。
【0046】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。これらの中でも、固有複屈折が低く面内位相差を低くしやすい点で、PETが好ましい。
【0047】
プラスチックフィルムは、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、ゲル化防止剤、無機粒子、有機粒子、顔料、染料、防汚剤、架橋剤及び界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。
【0048】
プラスチックフィルムは、機械的強度を良好にするために、延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。二軸延伸フィルムは、一軸延伸フィルムに比べて、耐引裂き性が良好である点でも好ましい。したがって、プラスチックフィルムは、二軸延伸プラスチックフィルムが好ましい。
本明細書では、プラスチックフィルムの好ましい実施形態として、「面内位相差」、「厚み方向の位相差」、「D1~D5の最大値と、D1~D5の最小値との差」等の様々な実施形態を挙げている。本開示の光学フィルムは、プラスチックフィルムが二軸延伸プラスチックフィルムの場合において、面内位相差等の好ましい実施形態を満たすことがより好ましい。
【0049】
虹ムラを抑制しやすくするために、プラスチックフィルムの面内位相差は2500nm以下であることが好ましい。また、プラスチックフィルムの面内位相差を小さくすると、前記ΣTを小さくしやすくできる。
プラスチックフィルムの面内位相差は、2000nm以下であることがより好ましく、1500nm以下であることがより好ましく、1400nm以下がより好ましく、1250nm以下がより好ましく、1150nm以下がより好ましく、1100nm以下がより好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、950nm以下がより好ましく、850nm以下がより好ましく、600nm以下であることがより好ましい。プラスチックフィルムの面内位相差を2000nm以下とすることにより、前記ΣTを小さくしやすくできる。また、プラスチックフィルムの遅相軸方向と進相軸方向とで屈折率が異なると、光学フィルムの反射率が遅相軸方向と進相軸方向とで異なることになる。方向による反射率の差異を抑制するためには、プラスチックフィルムの遅相軸方向と進相軸方向との屈折率差を小さくすることが好ましい。このため、プラスチックフィルムの面内位相差は1250nm以下であることが好ましい。
【0050】
プラスチックフィルムは、機械的強度を良好にするために、面内位相差が20nm以上であることが好ましい。プラスチックフィルムの面内位相差は、100nm以上であることがより好ましく、300nm以上であることがより好ましく、400nm以上であることがより好ましく、520nm以上であることがより好ましい。
【0051】
プラスチックフィルムの面内位相差の好ましい範囲は、20nm以上2000nm以下、20nm以上1500nm以下、20nm以上1400nm以下、20nm以上1250nm以下、20nm以上1150nm以下、20nm以上1100nm以下、20nm以上1000nm以下、20nm以上950nm以下、20nm以上850nm以下、20nm以上600nm以下、100nm以上2000nm以下、100nm以上1500nm以下、100nm以上1400nm以下、100nm以上1250nm以下、100nm以上1150nm以下、20nm以上1100nm以下、100nm以上1000nm以下、100nm以上950nm以下、100nm以上850nm以下、100nm以上600nm以下、300nm以上2000nm以下、300nm以上1500nm以下、300nm以上1400nm以下、300nm以上1250nm以下、300nm以上1150nm以下、300nm以上1100nm以下、300nm以上1000nm以下、300nm以上950nm以下、300nm以上850nm以下、300nm以上600nm以下、400nm以上2000nm以下、400nm以上1500nm以下、400nm以上1400nm以下、400nm以上1250nm以下、400nm以上1150nm以下、400nm以上1100nm以下、400nm以上1000nm以下、400nm以上950nm以下、400nm以上850nm以下、400nm以上600nm以下、520nm以上2000nm以下、520nm以上1500nm以下、520nm以上1400nm以下、520nm以上1250nm以下、520nm以上1150nm以下、520nm以上1100nm以下、520nm以上1000nm以下、520nm以上950nm以下、520nm以上850nm以下、520nm以上600nm以下が挙げられる。
プラスチックフィルムの面内位相差を上記範囲とするためには、縦方向(流れ方向)の延伸倍率と、横方向(幅方向)の延伸倍率とを近づけることが好ましい。
プラスチックフィルムの面内位相差が520nm以上1400nm以下の範囲では、虹ムラの抑制及び前記ΣTの低減を実現しやすく、かつ、プラスチックフィルムの機械的強度を良好にしやすくできる。また、プラスチックフィルムの面内位相差が1250nm以下では、方向による反射率の差異を抑制しやすくできる。
プラスチックフィルムの面内位相差を50nm以上とすることにより、ブラックアウトを抑制しやすくできる。この原因は、面内位相差の平均が50nm未満のプラスチックフィルムは、直線偏光を殆ど乱すことができず、直線偏光をそのまま透過してしまう一方で、面内位相差の平均が50nm以上のプラスチックフィルムは、直線偏光を乱し得るためである。ブラックアウトとは、偏光子及びプラスチックフィルムをこの順で通過した光を偏光サングラスを介して視認した際に、全面が暗くなる現象を意味する。
【0052】
プラスチックフィルムは、厚み方向の位相差(Rth)が、2000nm以上であることが好ましく、3000nm以上であることがより好ましく、4000nm以上であることがさらに好ましく、5000nm以上であることがよりさらに好ましい。Rthの上限は10000nm程度であり、好ましくは8000nm以下、より好ましくは7000nm以下である。Rthを前記範囲とすることにより、虹ムラをより抑制しやすくできる。虹ムラを抑制するためには、特に、Rthが5000nm以上であることが好ましい。さらに、プラスチックフィルムの鉛筆硬度を良好にするためには、Rthが5000nm以上であることが好ましい。プラスチックフィルムの破断を抑制しやすくするためには、Rthが10000nm以下であることが好ましい。
【0053】
プラスチックフィルムのRthの好ましい範囲は、2000nm以上10000nm以下、2000nm以上8000nm以下、2000nm以上7000nm以下、3000nm以上10000nm以下、3000nm以上8000nm以下、3000nm以上7000nm以下、4000nm以上10000nm以下、4000nm以上8000nm以下、4000nm以上7000nm以下、5000nm以上10000nm以下、5000nm以上8000nm以下、5000nm以上7000nm以下が挙げられる。
プラスチックフィルムのRthを上記範囲とするためには、縦方向(流れ方向)及び横方向(幅方向)の延伸倍率を大きくすることが好ましい。流れ方向及び幅方向の延伸倍率を大きくすることにより、プラスチックフィルムの厚み方向の屈折率が小さくなるため、Rthを大きくしやすくできる。
【0054】
面内位相差及び厚み方向の位相差を上記範囲とすることにより、プラスチックフィルムの延伸の程度を均等な二軸性に近づけ、プラスチックフィルムの機械的強度を良好にしやすくできる。
【0055】
プラスチックフィルムの面内位相差(Re)及び厚み方向の位相差(Rth)は、遅相軸方向の屈折率をnx、進相軸方向の屈折率をny、プラスチックフィルムの厚み方向の屈折率をnz、プラスチックフィルムの厚みをT[nm]と定義した際に、下記式i及び式iiによって表わすことができる。なお、本明細書において、屈折率、面内位相差、及び厚み方向の位相差は、波長590nmにおける値を意味するものとする。
Re=(nx-ny)×T[nm] (式i)
Rth=((nx+ny)/2-nz)×T[nm] (式ii)
【0056】
遅相軸の方向、面内位相差及び厚み方向の位相差は、例えば、大塚電子社(Otsuka Electronics Co.,Ltd.)の商品名「RETS-100」により測定できる。
大塚電子社(Otsuka Electronics Co.,Ltd.)の商品名「RETS-100」を用いて面内位相差等を測定する場合には、以下の手順(A1)~(A4)に沿って測定の準備をすることが好ましい。
【0057】
(A1)まず、RETS-100の光源を安定させるため、光源をつけてから60分以上放置する。その後、回転検光子法を選択するとともに、θモード(角度方向位相差測定およびRth算出のモード)選択する。このθモードを選択することにより、ステージは傾斜回転ステージとなる。
(A2)次いで、RETS-100に以下の測定条件を入力する。
(測定条件)
・リタデーション測定範囲:回転検光子法
・測定スポット径:φ5mm
・傾斜角度範囲:0°
・測定波長範囲:400nm以上800nm以下
・プラスチックフィルムの平均屈折率。例えば、PETフィルムの場合には、N=1.617とする。なお、プラスチックフィルムの平均屈折率Nは、nx、ny及びnzを元に、(N=(nx+ny+nz)/3)の式で算出できる。
・厚み:SEM又は光学顕微鏡で別途測定した厚み
(A3)次いで、この装置にサンプルを設置せずに、バックグラウンドデータを得る。装置は閉鎖系とし、光源を点灯させる毎にこれを実施する。
(A4)その後、装置内のステージ上にサンプルを設置して、測定する。
【0058】
面内位相差及び厚み方向の位相差、並びに、遅相軸の方向は、プラスチックフィルムから縦50mm×横50mmの大きさのサンプルを切り出し、前記サンプルの5か所の測定値の平均値とすることが好ましい。5つの測定箇所は、サンプルの中央部の1箇所、及び、サンプルの四隅からそれぞれサンプルの中央部に向かって10mm進んだ4箇所である(
図5の黒丸の5箇所)。
【0059】
上記サンプルの5箇所で測定した面内位相差をそれぞれRe1、Re2、Re3、Re4及びRe5と定義し、上記サンプルの5箇所で測定した厚み方向の位相差をそれぞれRth1、Rth2、Rth3、Rth4、及びRth5と定義する。
プラスチックフィルムは、Re1/Rth1、Re2/Rth2、Re3/Rth3、Re4/Rth4及びRe5/Rth5の平均が0.20以下であることが好ましい。
【0060】
面内位相差と厚み方向の位相差との比(Re/Rth)が小さいことは、プラスチックフィルムの二軸の延伸が均等な二軸性に近づくことを意味する。したがって、Re/Rthを0.20以下とすることにより、プラスチックフィルムの機械的強度を良好にすることができる。Re/Rthは0.18以下であることがより好ましく、0.16以下であることがさらに好ましい。Re/Rthの下限は0.01程度である。
完全な一軸性の延伸プラスチックフィルムのRe/Rthは2.0である。汎用の一軸延伸プラスチックフィルムは、流れ方向にも若干延伸されている。このため、汎用の一軸延伸プラスチックフィルムのRe/Rthは1.0程度である。
【0061】
Re1/Rth1、Re2/Rth2、Re3/Rth3、Re4/Rth4及びRe5/Rth5は、それぞれ0.20以下であることが好ましく、0.18以下であることがより好ましく、0.16以下であることがさらに好ましい。これらの比の下限は0.01程度である。
【0062】
プラスチックフィルム上に、面内位相差及び厚み方向の位相差の値に影響を与える層及びフィルムを有する場合には、これらの層及びフィルムを剥離した後に、プラスチックフィルムの面内位相差及び厚み方向の位相差を測定すればよい。なお、コーティングにより形成される層は、通常は、面内位相差及び厚み方向の位相差の値差に影響を与えない。
面内位相差及び厚み方向の位相差の値に影響を与える層及びフィルムを剥離する手段としては、下記の手段が挙げられる。
<剥離の手段>
5cm角以上のサンプルを、80℃以上90℃以下の温水に5分浸す。その後、温水からサンプルを取り出し、室温で10分以上放置する。その後、更に5分温水に浸す。温水からサンプルを取り出す。サンプルにカッター等で切れ込みを入れる。そして、切れ込みをきっかけとして、層及びフィルムを剥離する手段が挙げられる。
【0063】
上記の手段において、サンプルの縁を金属枠等に貼り付けた状態で、サンプルを温水に浸すことが好ましい。
【0064】
プラスチックフィルムは、下記の条件Aを満たすことが好ましい。
<条件A>
前記サンプルの5箇所で遅相軸の方向を測定する。前記サンプルの任意の1辺と、各測定箇所の遅相軸の方向とが成す角度を、それぞれD1、D2、D3、D4、D5と定義した際に、D1~D5の最大値と、D1~D5の最小値との差が1.5度以上。
【0065】
プラスチックフィルムの遅相軸がきれいに配向していると、前記ΣTが大きくなりやすくなり、虹ムラが視認されやすくなる傾向がある。一方、プラスチックフィルムの遅相軸にはらつきを付与すると、虹ムラがぼやけて視認されにくくなる。このため、条件Aを満たすことにより、裸眼での虹ムラが視認されることを抑制しやすくできる。言い換えると、条件Aを満たすことにより、前記ΣTが前記範囲を満たしやすくすることができる。
汎用の延伸プラスチックフィルムは、遅相軸の方向がずれないように設計している。しかし、上記のように、あえてプラスチックフィルムの遅相軸の方向をずらすことにより、虹ムラを抑制しやすくできる。また、大きな領域で遅相軸がバラついても虹ムラの抑制効果は小さいが、縦50mm×横50mmという比較的小さい領域において遅相軸がバラつくことにより、虹ムラを抑制しやすくできる。
【0066】
本明細書において、「前記ΣTを算出する際の遅相軸の方向」は、「前記サンプルの5箇所で遅相軸の方向の平均」を意味する。
【0067】
条件Aにおいて、遅相軸の方向との成す角の基準となるサンプルの任意の1辺は、D1~D5で全て同じ辺を基準とする限り、サンプルの縦及び横の何れの辺でもよい。
【0068】
さらに、条件Aを満たすプラスチックフィルムは、プラスチックフィルムの耐折り曲げ性を良好にすることができる点で好ましい。
一方、条件Aを満たさずに遅相軸が揃っている汎用の配向フィルムは、屈曲試験後にフィルムが破断したり、曲げ癖が強く残ったりしてしまう。具体的には、特許文献1のような一軸延伸フィルムは、遅相軸に沿って屈曲試験した場合には破断してしまい、遅相軸と直交する方向で屈曲試験した場合には曲げ癖が強く残ってしまう。また、汎用の二軸延伸フィルムは、遅相軸と直交する方向で屈曲試験した場合には曲げ癖が強く残ってしまう。
条件Aを満たすプラスチックフィルムは、折り曲げの方向に関わらず、屈曲試験後に曲げ癖が残ったり、破断したりすることを抑制できる点で好ましい。
さらに、条件Aを満たすプラスチックフィルムは、屈曲試験後のプラスチックフィルムのマイクロクラックを抑制しやすくできる点で好ましい。
また、条件Aを満たすプラスチックフィルムは、鉛筆硬度が高くても、プラスチックフィルムの耐折り曲げ性を良好にしやすい点で好ましい。
【0069】
D1~D5の最大値と、D1~D5の最小値との差は、2.0度以上であることが好ましく、3.0度以上であることがより好ましく、3.5度以上であることがさらに好ましい。
なお、D1~D5の最大値と、D1~D5の最小値との差が大きすぎると、プラスチックフィルムの配向性が低くなり、機械的強度が低下する傾向がある。このため、前記差は20.0度以下であることが好ましく、17.0度以下であることがより好ましく、15.0度以下であることがより好ましく、10.0度以下であることがより好ましく、9.0度以下であることがより好ましく、8.0度以下であることがより好ましい。
【0070】
条件Aにおいて、D1~D5の最大値と最小値との差の好ましい範囲は、例えば、1.5度以上20.0度以下、2.0度以上20.0度以下、3.0度以上20.0度以下、3.5度以上20.0度以下、1.5度以上17.0度以下、2.0度以上17.0度以下、3.0度以上17.0度以下、3.5度以上17.0度以下、1.5度以上15.0度以下、2.0度以上15.0度以下、3.0度以上15.0度以下、3.5度以上15.0度以下、1.5度以上10.0度以下、2.0度以上10.0度以下、3.0度以上10.0度以下、3.5度以上10.0度以下、1.5度以上9.0度以下、2.0度以上9.0度以下、3.0度以上9.0度以下、3.5度以上9.0度以下、1.5度以上8.0度以下、2.0度以上8.0度以下、3.0度以上8.0度以下、3.5度以上8.0度以下が挙げられる。
【0071】
プラスチックフィルムは、D1~D5が、それぞれ、5度以上30度以下又は60度以上85度以下であることが好ましく、7度以上25度以下又は65度以上83度以下であることがより好ましく、10度以上23度以下又は67度以上80度以下であることがさらに好ましい。
D1~D5を、それぞれ、5度以上又は85度以下とすることにより、偏光サングラスで視認した際のブラックアウトを抑制しやすくできる。また、D1~D5を、それぞれ、30度以下又は60度以上とすることにより、プラスチックフィルムの配向性が低くなることによる機械的強度の低下を抑制しやすくできる。
【0072】
プラスチックフィルムは、例えば、シート状の形態である場合と、ロール状の形態である場合とがある。シート状及びロール状の何れの場合においても、下記の基準に従う限り、縦50mm×横50mmの大きさのサンプルは、プラスチックフィルムのどの場所から切り出してもよい。
但し、シート及びロールの縦及び横の方向性を確認できる場合には、確認した縦及び横の方向に沿ってサンプルを切り出すものとする。例えば、ロールの場合、ロールの流れ方向(MD方向)を縦方向、ロールの幅方向(TD方向)を横方向とみなすことができる。シートの流れ方向及び幅方向を確認できる場合には、流れ方向を縦方向、幅方向を横方向とみなすことができる。シートの流れ方向及び幅方向の確認が困難な場合において、シートが長方形又は正方形の場合は、長方形又は正方形を構成する四辺で縦及び横の方向性を確認すればよい。シートの流れ方向及び幅方向の確認が困難な場合において、シートが長方形又は正方形以外の形状(円、三角形等)の場合、シートの外枠形状からはみ出さない面積が最大となる長方形又は正方形を描き、描いた長方形又は正方形が有する辺で縦及び横の方向性を確認すればよい。
サンプルは、シート及びロールの隅から10mmを除外して切り出すものとする。シートの形態の場合、縦50mm×横50mmのサンプルは、シートの四隅を最優先して切り出し、次いでシートの中央部を優先して切り出すものとする。そして、四隅及び中央部からサンプルを切り出した後、縦50mm×横50mmを超える領域が残存している場合には、残存領域から縦50mm×横50mmのサンプルが最も多く切り出せるようにしてサンプリングすればよい。
なお、シート状のプラスチックフィルムから縦50mm×横50mmの大きさのサンプルを複数採取できる場合には、複数のサンプルの中で条件Aを満たすサンプルの割合が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であることがよりさらに好ましい。面内位相差、厚み方向の位相差、Re/Rth等の他のパラメータも同様である。
ロール状のプラスチックフィルムは、幅方向においては諸物性が変化しやすいが、流れ方向では諸物性が殆ど同一である。このため、ロールの幅方向の所定の位置から採取したサンプルが条件A等の所定の物性を満たす場合には、幅方向の位置が同一である箇所については、ロールの流れ方向の全体において所定の物性を満たすものと擬制できる。
【0073】
プラスチックフィルムは、実施例に示す折り畳み試験を10万回行った後(より好ましくは30万回行った後)に、割れまたは破断が生じないことが好ましい。また、プラスチックフィルムは、実施例に示す折り畳み試験を10万回行った後(より好ましくは30万回行った後)に、測定サンプルを水平な台に置いた際に、台からサンプルの端部が浮き上がる角度が20度以下であることが好ましく、15度以下であることがより好ましい。サンプルの端部から浮き上がる角度が15度以下であることは、折り畳みによる癖がつきにくいことを意味している。また、プラスチックフィルムの遅相軸の方向の平均、及び、進相軸の方向の平均の、何れの方向についても、前述の結果(割れ、破断及び折り畳みによる癖が生じないこと。試験後のサンプルの端部の浮き上がる角度が20度以下であること。)を示すものが好ましい。
なお、一軸延伸プラスチックフィルムは、折り畳み試験を行うと、延伸方向では破断が生じ、延伸方向に直交する方向では曲げ癖が強く残ってしまう。このため、延伸フィルムの中でも二軸延伸プラスチックフィルムが好ましい。
【0074】
プラスチックフィルムの厚みは、下限は好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、より好ましくは21μm以上、より好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上であり、上限は好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下である。
厚みを10μm以上とすることにより、機械的強度を良好にしやすくすることができる。また、透湿度を低減し、偏光板を長寿命化させるため、厚みは21μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。また、パネルサイズが50インチ以上の大型になると、パネルを垂直に立てた際にプラスチックフィルムの自重による歪みが発生しやすくなる。前述した歪みを抑制するため、プラスチックフィルムの厚みは30μm以上であることが好ましい。
厚みを200μm以下とすることにより、プラスチックフィルムの面内位相差を2500nm以下としやすくできる。また、パネル及び画像表示装置の薄型化のため、プラスチックフィルムの厚みは60μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0075】
プラスチックフィルムの厚みの好ましい範囲は、例えば、10μm以上200μm以下、15μm以上200μm以下、21μm以上200μm以下、25μm以上200μm以下、30μm以上200μm以下、10μm以上180μm以下、15μm以上180μm以下、21μm以上180μm以下、25μm以上180μm以下、30μm以上180μm以下、10μm以上150μm以下、15μm以上150μm以下、21μm以上150μm以下、25μm以上150μm以下、30μm以上150μm以下、10μm以上100μm以下、15μm以上100μm以下、21μm以上100μm以下、25μm以上100μm以下、30μm以上100μm以下、10μm以上80μm以下、15μm以上80μm以下、21μm以上80μm以下、25μm以上80μm以下、30μm以上80μm以下、10μm以上60μm以下、15μm以上60μm以下、21μm以上60μm以下、25μm以上60μm以下、30μm以上60μm以下、10μm以上50μm以下、15μm以上50μm以下、21μm以上50μm以下、25μm以上50μm以下、30μm以上50μm以下である。
【0076】
プラスチックフィルムは、JIS K7136:2000のヘイズが3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましく、1.0%以下であることがよりさらに好ましい。
プラスチックフィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0077】
<エロージョン率>
プラスチックフィルムは、プラスチックフィルムの表面から深さ20μmまでのエロージョン率の平均をE0-20と定義した際に、E0-20が1.4μm/g以上であることが好ましい。
【0078】
本明細書において、E0-20は、下記の測定条件で測定したものとする。
<測定条件>
純水と、分散液と、平均粒子径が4.2μmを基準として±8%以内である球形シリカとを、質量比968:2:30で混合してなる試験液を容器に収納する。前記容器内の前記試験液をノズルに送る。前記ノズル内に圧縮空気を送り、前記ノズル内で前記試験液を加速させ、前記ノズルの先端の噴射孔から所定量の前記試験液を前記プラスチックフィルムの第1面に対して垂直に噴射し、前記試験液中の球形シリカを前記プラスチックフィルムに衝突させる。前記ノズルの横断面形状は1mm×1mmの正方形として、前記噴射孔と前記プラスチックフィルムとの距離は4mmとする。また、前記ノズルに供給される前記試験液及び前記圧縮空気の流量、前記圧縮空気の圧力、前記ノズル内の前記試験液の圧力は、後述する校正により調整した所定の値とする。
所定量の前記試験液を噴射した後、前記試験液の噴射を一旦停止する。
前記試験液の噴射を一旦停止した後、前記プラスチックフィルムの前記試験液中の前記球形シリカが衝突した箇所について、断面プロファイルを測定する。
前記噴射口から所定量の前記試験液を噴射するステップ、所定量の前記試験液を噴射した後に前記試験液の噴射を一旦停止するステップ、及び、前記試験液の噴射を一旦停止した後に前記断面プロファイルを測定するステップ、の3つのステップを1サイクルとする操作を、断面プロファイルの深さが20μmを超えるまで実行する。そして、断面プロファイルの深さが20μmまでの各サイクルにおいて、プラスチックフィルムのエロージョン率(μm/g)を算出する。断面プロファイルの深さが20μmまでの各サイクルのプラスチックフィルムのエロージョン率を平均して、前記E0-20を算出する。
【0079】
<校正>
前記試験液を前記容器に収納する。前記容器内の前記試験液を前記ノズルに送る。前記ノズル内に圧縮空気を送り、前記ノズル内で前記試験液を加速させ、前記ノズルの先端の噴射孔から任意の量の前記試験液を厚2mmのアクリル板に対して垂直に噴射し、前記試験液中の球形シリカを前記アクリル板に衝突させる。前記ノズルの横断面形状は1mm×1mmの正方形として、前記噴射孔と前記アクリル板との距離は4mmとする。
任意の量の前記試験液を噴射した後、前記試験液の噴射を一旦停止する。前記試験液の噴射を一旦停止した後、前記アクリル板の前記試験液中の前記球形シリカが衝突した箇所について、断面プロファイルを測定する。
断面プロファイルの深さ(μm)を、前記任意の量(g)で除してなる、アクリル板のエロージョン率(μm/g)を算出する。
前記アクリル板のエロージョン率が、1.88(μm/g)を基準として±5%の範囲を合格条件として、前記アクリル板のエロージョン率が前記範囲となるように、前記試験液及び前記圧縮空気の流量、前記圧縮空気の圧力、前記ノズル内の前記試験液の圧力を調整し、校正する。
【0080】
以下、エロージョン率の測定条件及び前記測定条件により算出されるエロージョン率の技術的意義について、
図7を引用しながら説明する。
図7のようなエロージョン率の測定装置としては、例えば、パルメソ社(Palmeso Co., Ltd.)のMSE試験装置の品番「MSE-A203」等が挙げられる。
【0081】
本開示のエロージョン率の測定条件では、まず、純水と、分散剤と、平均粒子径が4.2μmを基準として±8%以内である球形シリカとを、質量比968:2:30で混合してなる試験液を容器(11)に収納する。容器(11)内において、試験液は攪拌することが好ましい。
分散剤は、球形シリカを分散できるものであれば特に制限されない。分散剤としては、例えば、和光純薬工業社の商品名「デモールN(Demol N)」 が挙げられる。
「平均粒子径が4.2μmを基準として±8%以内」とは、言い換えると、平均粒子径が3.864μm以上4.536μm以下であることを意味する。
本明細書のエロージョン率の測定条件において、「球形シリカの平均粒子径」は、レーザー光回折法による粒度分布測定における体積平均値d50として測定したものである(いわゆる「メディアン径」である。)。
前記球形シリカは、前記粒度分布測定の結果において、頻度が最大を示す粒子径の頻度を100に規格化した際に、頻度が50を示す粒子径の幅が、4.2μmを基準として±10%以内であることが好ましい。「頻度が50を示す粒子径の幅」は、「頻度が50を示す粒子径であって、頻度が100を示す粒子径よりもプラス方向に位置する粒子径をX」、「頻度が50を示す粒子径であって、頻度が100を示す粒子径よりもマイナス方向に位置する粒子径をY」と定義した際に、「X-Y(μm)」で表されるものである。なお、本明細書において、「頻度が50を示す粒子径の幅」のことを「粒度分布の半値全幅」と称する場合がある。
【0082】
平均粒子径が4.2μmを基準として±8%以内である球形シリカとしては、パルメソ社(Palmeso Co., Ltd.)が指定する型番「MSE-BS-5-3」が挙げられる。パルメソ社(Palmeso Co., Ltd.)が指定する型番「MSE-BS-5-3」に該当する球形シリカとしては、例えば、ポッターズ・バロティーニ社(Potters-Ballotini Co., Ltd.)の品番「BS5-3」が挙げられる。
【0083】
容器内の試験液はノズル(51)に送り込まれる。試験液は、例えば、試験液用配管(21)を通してノズルに送ることができる。容器(11)とノズル(51)との間には、試験液の流量を測定するための流量計(31)が配置されていることが好ましい。試験液の流量は、前記校正により調整した値とする。
図7では、ノズル(51)は、噴射部(50)を構成する筐体(52)内に配置されている。
【0084】
ノズル(51)内には圧縮空気を送る。圧縮空気は、例えば、圧縮空気用配管(22)を通してノズルに送られる。ノズル内において、圧縮空気が送り込まれる位置は、試験液が送り込まれる位置よりも上流側とすることが好ましい。上流側とは、ノズルの噴射孔から遠い側をいう。
圧縮空気がノズル(51)に到達するまでに、圧縮空気の流量を測定するための流量計(32)、及び、圧縮空気の圧力を測定する圧力計(42)が配置されていることが好ましい。圧縮空気は、図示しないエアコンプレッサ等で供給することができる。
圧縮空気の流量及び圧力は、前記校正により調整した値とする。
【0085】
ノズル(51)内に圧縮空気が送られると、圧縮空気によって試験液がミキシングされながら加速される。そして、加速した試験液は、ノズル(51)の先端の噴射孔から噴射され、プラスチックフィルム(70)に対して垂直に衝突する。プラスチックフィルムは、主として、試験液中の球形シリカ粒子により摩耗される。
ノズル(51)内には、ノズル内の試験液の圧力を測定する圧力計(41)が配置されていることが好ましい。圧力計(41)は、圧縮空気が送りこまれる位置、及び、試験液が送り込まれる位置よりも下流側とすることが好ましい。
ノズル(51)内の試験液の圧力は、前記校正により調整した値とする。
【0086】
ノズル(51)の先端の噴射孔から噴射される試験液は、空気と混合して霧状に噴射される。このため、球形シリカ粒子のプラスチックフィルムに対する衝突圧力を低くすることができる。よって、1個の球形シリカ粒子によるプラスチックフィルムの摩耗量を微量に抑えることができる。
図8は、噴射部(50)から噴射した、純水(A1)及び球形シリカ(A2)を含む試験液により、プラスチックフィルム(70)が摩耗される状態のイメージ図である。
図8中、符号A3は空気、符号A4は摩耗されたプラスチックフィルムを示している。
また、試験液には冷却効果に優れる水が含まれているため、衝突時の熱を起因とするプラスチックフィルムの変形及び変質を実質的に排除することができる。すなわち、プラスチックフィルムの異常な摩耗を実質的に排除することができる。また、水は、摩耗されたプラスチックフィルムの表面を洗浄し、安定した摩耗を実現する役割もある。また、水は、球形シリカ粒子を加速したり、試験液の流体を制御したりする役割を有する。
また、プラスチックフィルムには、膨大な数の球形シリカが衝突することになるため、個々の球形シリカ粒子の微妙な物性の違いによる影響を排除することができる。
さらに、本開示の測定条件は、ノズルに供給される試験液の流量、ノズルに供給される圧縮空気の流量、ノズルに供給される圧縮空気の圧力、及びノズル内の試験液の圧力を前記校正で調整した値とするとともに、ノズルの横断面形状を1mm×1mmの正方形に特定し、噴射孔とプラスチックフィルムとの距離を4mmに特定することによって、プラスチックフィルムの摩耗量に影響を与える要素を特定している。前記距離は、
図7の「d」で示される距離であり、ノズルの先端である噴射孔と、プラスチックフィルムとの垂直距離を意味する。
以上のことから、本開示の測定条件は、プラスチックフィルムに対して統計学的に安定した摩耗痕を形成できる測定条件であるといえる。
【0087】
プラスチックフィルム(70)は、測定装置(100)の試料取付台(81)に取り付ければよい。プラスチックフィルム(70)は、ステンレス板等の支持体(82)を介して、試料取付台(81)に取り付けることが好ましい。
【0088】
プラスチックフィルム(70)に噴射した試験液は、受容器(12)で回収し、返送配管(23)を通して、容器(11)に戻すことが好ましい。受容器(12)と返送配管(23)との間には、リターンポンプ(24)が配置されていることが好ましい。
【0089】
本開示の測定条件では、所定量の試験液を噴射した後、試験液の噴射を一旦停止すること、及び、試験液の噴射を一旦停止した後、プラスチックフィルムの試験液中の球形シリカが衝突した箇所の断面プロファイルを測定すること、を要件としている。
断面プロファイルは、試験液により摩耗されたプラスチックフィルムの断面形状を意味する。プラスチックフィルムは、主として、試験液中の球形シリカ粒子により摩耗される。
断面プロファイルは、例えば、触針式の表面形状測定装置及びレーザー干渉式の表面形状測定装置等の断面プロファイル取得部(60)により測定することができる。なお、断面プロファイル取得部(60)は、通常、試験液の噴射時は、プラスチックフィルム(70)とは離れた位置に配置されている。このため、プラスチックフィルム(70)及び断面プロファイル取得部(60)の少なくとも何れかが可動できることが好ましい。
パルメソ社(Palmeso Co., Ltd.)のMSE試験装置の品番「MSE-A203」は、断面プロファイルの測定手段は触針式である。
【0090】
さらに、本開示の測定条件では、噴射口から所定量の試験液を噴射するステップ、所定量の試験液を噴射した後に試験液の噴射を一旦停止するステップ、及び、試験液の噴射を一旦停止した後に断面プロファイルを測定するステップ、の3つのステップを1サイクルとする操作を、断面プロファイルの深さが20μmを超えるまで実行する。
上記操作を実行することにより、各サイクルにおけるプラスチックフィルムのエロージョン率を測定することができ、さらには、プラスチックフィルムのエロージョン率のばらつきを算出することができる。
上記サイクルは、断面プロファイルの深さが20μmを超えた後も継続してもよいが、断面プロファイルの深さが20μmを超えた時点で終了することが好ましい。「プラスチックフィルムの表面から深さ20μm」までの測定としている理由は、プラスチックフィルムの物性は、表面近傍は変動しやすい一方で、内部に向かうほど安定する傾向があることを考慮したためである。
【0091】
本明細書において、各サイクルのエロージョン率は、各サイクルで進行した断面プロファイルの深さ(μm)を、各サイクルの試験液の噴射量(g)で除することにより算出できる。各サイクルの断面プロファイルの深さ(μm)は、各サイクルの断面プロファイルの最深位置の深さとする。
【0092】
各サイクルの試験液の噴射量は原則として「定量」であるが、各サイクルで若干の変動があっても構わない。
各サイクルの試験液の噴射量は特に制限されないが、下限は好ましくは0.5g以上、より好ましくは1.0g以上であり、上限は好ましくは3.0g以下、より好ましくは2.0g以下である。
【0093】
本開示の測定条件では、断面プロファイルの深さが20μmまでの各サイクルにおいてエロージョン率(μm/g)を算出する。そして、断面プロファイルの深さが20μmまでの各サイクルのエロージョン率を平均して、E0-20を算出する。
上記サイクルは、断面プロファイルの深さが20μmを超えるまで実施するが、断面プロファイルの深さが20μmを超えたサイクルのデータは、E0-20を算出するデータから外れることになる。
【0094】
一般的に、プラスチックフィルムは、柔らかい方が傷つきやすく、硬い方が傷つきにくいものである。本発明者らは、ピコデンターによる深さ方向を含む評価で得られた値(マルテンス硬さ、インデンテーション硬さ、弾性回復仕事量等)を鉛筆硬度の指標とすることを検討した。しかし、前述のマルテンス硬さ、インデンテーション硬さ、弾性回復仕事量等のパラメータは、鉛筆硬度の指標とすることはできない場合があった。
また、プラスチックフィルムは延伸すると強度が増す傾向がある。具体的には、未延伸のプラスチックフィルムより一軸延伸プラスチックフィルムの方が鉛筆硬度が良好な傾向があり、一軸延伸プラスチックフィルムより二軸延伸プラスチックフィルムの方が鉛筆硬度が良好な傾向がある。しかし、二軸延伸プラスチックフィルムでも鉛筆硬度が十分ではない場合があった。
本発明者らはプラスチックフィルムの鉛筆硬度の指標として、エロージョン率に関して検討した。上述したように、プラスチックフィルムは、柔らかい方が傷つきやすく、硬い方が傷つきにくいものであるため、エロージョン率が小さい方が鉛筆硬度を良好にし得るように考えられる。しかし、本発明者らは、逆に、エロージョン率(E0-20)を1.4μm/g以上と大きくすることにより、プラスチックフィルムが鉛筆硬度を良好にし得ることを見出した。また、本発明者らは、プラスチックフィルムのエロージョン率は、一軸延伸プラスチックフィルムより二軸延伸プラスチックフィルムの方が大きい値を示しやすいこと、及び、二軸延伸プラスチックフィルムにおける鉛筆硬度の良否をエロージョン率により判別し得ることを見出した。
【0095】
プラスチックフィルムのエロージョン率が鉛筆硬度に相関する理由は、以下のように考えられる。
上述したように、本開示の測定条件では、水及び球形シリカを含む試験液は空気と混合して霧状に噴射される。このため、球形シリカ粒子のプラスチックフィルムに対する衝突圧力は低く抑えられる。よって、プラスチックフィルムが柔らかい場合、球形シリカがプラスチックフィルムに衝突した際の応力が分散されやすくなるため、プラスチックフィルムが摩耗されにくくなり、エロージョン率が低くなると考えられる。一方、プラスチックフィルムが硬い場合、球形シリカがプラスチックフィルムに衝突した際の応力が分散されにくいため、プラスチックフィルムが摩耗されやすくなり、エロージョン率が高くなると考えられる。
また、二軸延伸プラスチックフィルムにおけるエロージョン率の違いは、分子鎖の伸び具合の違い、及び、分子の配向度の違いなどに生じていると考えられる。例えば、二軸延伸プラスチックフィルムは、原則として、面内で分子は延ばされているが、面内で局所的に十分に伸びていない分子も存在することがある。このように、面内で局所的に十分に伸びていない分子の割合が多くなると、二軸延伸プラスチックフィルムは局所的に柔らかくなり、エロージョン率が低下すると考えられる。
また、面内位相差が同等の二軸延伸プラスチックフィルムであっても、局所的な分子の配向の違いにより、異なるエロージョン率を示すと考えられる。逆に、エロージョン率の値が同等の二軸延伸プラスチックフィルムであっても、流れ方向の延伸倍率と幅方向の延伸倍率との比の違い等により、異なる面内位相差を示す場合がある。
【0096】
プラスチックフィルムの鉛筆硬度を良好にするため、E0-20は、1.4μm/g以上であることが好ましく、1.6μm/g以上であることがより好ましく、1.8μm/g以上であることがより好ましく、1.9μm/g以上であることがより好ましく、2.0μm/g以上であることがより好ましい。
上述したように、面内で局所的に十分に伸びていない分子の割合が多くなると、エロージョン率が低下すると考えられる。言い換えると、エロージョン率が高いと、面内で局所的に十分に伸びていない分子の割合が少なくなると考えられる。このため、E0-20を1.4μm/g以上とすることにより、高温環境下において、プラスチックフィルムに皺が生じることを抑制しやすくできる。
E0-20は、プラスチックフィルムを割れにくくするために、3.0μm/g以下であることが好ましく、2.5μm/g以下であることがより好ましく、2.2μm/g以下であることがさらに好ましい。
E0-20の値が同じでも、面内位相差等が異なる場合には、プラスチックフィルムの特性が異なる場合がある。例えば、E0-20の値が同じでも、面内位相差が1450nmを超える場合には、プラスチックフィルムを折り畳んだ際に、プラスチックフィルムに曲げ癖が残ったり、プラスチックフィルムが破断したりする場合がある。
また、E0-20が1.4μm/g未満のプラスチックフィルムは、プラスチックフィルム上に硬度の高い硬化膜を形成しても、プラスチックフィルムの硬度不足のため、硬化膜の鉛筆硬度を良好にできない場合がある。
【0097】
E0-20の好ましい数値範囲の実施形態は、例えば、1.4μm/g以上3.0μm/g以下、1.4μm/g以上2.5μm/g以下、1.4μm/g以上2.2μm/g以下、1.5μm/g以上3.0μm/g以下、1.5μm/g以上2.5μm/g以下、1.5μm/g以上2.2μm/g以下、1.6μm/g以上3.0μm/g以下、1.6μm/g以上2.5μm/g以下、1.6μm/g以上2.2μm/g以下、1.8μm/g以上3.0μm/g以下、1.8μm/g以上2.5μm/g以下、1.8μm/g以上2.2μm/g以下、1.9μm/g以上3.0μm/g以下、1.9μm/g以上2.5μm/g以下、1.9μm/g以上2.2μm/g以下、2.0μm/g以上3.0μm/g以下、2.0μm/g以上2.5μm/g以下2.0μm/g以上2.2μm/g以下が挙げられる。
【0098】
プラスチックフィルムは、表面及び裏面の2つの平面を有する。プラスチックフィルムは、一方の平面側から測定したE0-20、及び、他方の平面側から測定したE0-20、の何れもが、上述した値であることが好ましい。通常のプラスチックフィルムは、一方の平面側から測定したエロージョン率と、他方の平面側から測定したエロージョン率とは、略同一である。
【0099】
上述したエロージョン率を測定する前には、前記校正を行うものとする。
例えば、校正は以下のように行うことができる。
【0100】
<校正>
前記試験液を前記容器に収納する。前記容器内の前記試験液を前記ノズルに送る。前記ノズル内に圧縮空気を送り、前記ノズル内で前記試験液を加速させ、前記ノズルの先端の噴射孔から任意の量の前記試験液を厚み2mmのアクリル板に対して垂直に噴射し、前記試験液中の球形シリカを前記アクリル板に衝突させる。前記ノズルの横断面形状は1mm×1mmの正方形として、前記噴射孔と前記アクリル板との距離は4mmとする。
任意の量の前記試験液を噴射した後、前記試験液の噴射を一旦停止する。前記試験液の噴射を一旦停止した後、前記アクリル板の前記試験液中の前記球形シリカが衝突した箇所について、断面プロファイルを測定する。
断面プロファイルの深さ(μm)を、前記任意の量(g)で除してなる、アクリル板のエロージョン率(μm/g)を算出する。
前記アクリル板のエロージョン率が、1.88(μm/g)を基準として±5%の範囲を合格条件として、前記アクリル板のエロージョン率が前記範囲となるように、前記試験液及び前記圧縮空気の流量、前記圧縮空気の圧力、前記ノズル内の前記試験液の圧力を調整し、校正する。
【0101】
校正で用いる試験液は、後に実施する測定条件で用いる試験液と同じものとする。
また、校正で用いる測定装置は、後に実施する測定条件で用いる測定装置と同じものとする。
校正と、後に実施する測定条件とで異なる点は、例えば、校正では試料として標準試料である厚み2mmのアクリル板を用いるのに対して、測定条件では試料としてプラスチックフィルムを用いる点である。
【0102】
標準試料である厚み2mmのアクリル板は、ポリメチルメタクリレート板(PMMA板)であることが好ましい。また、標準試料である厚み2mmのアクリル板は、下記の測定条件Aで測定してなるアクリル板のエロージョン率の平均をAcEと定義した際に、AcEが1.786μm/g以上1.974μm/g以下であるものが好ましい。また、下記の測定条件Aにおける球形シリカとしては、パルメソ社(Palmeso Co., Ltd.)が指定する型番「MSE-BS-5-3」が挙げられる。パルメソ社(Palmeso Co., Ltd.)が指定する型番「MSE-BS-5-3」に該当する球形シリカとしては、例えば、ポッターズ・バロティーニ社(Potters-Ballotini Co., Ltd.)の品番「BS5-3」が挙げられる。
<測定条件A>
純水と、分散剤と、平均粒子径が4.2μmを基準として±8%以内である球形シリカとを、質量比968:2:30で混合してなる試験液を容器に収納する。前記容器内の前記試験液をノズルに送る。前記ノズル内に圧縮空気を送り、前記ノズル内で前記試験液を加速させ、前記ノズルの先端の噴射孔から所定量の前記試験液を前記アクリル板に対して垂直に噴射し、前記試験液中の球形シリカを前記アクリル板に衝突させる。前記ノズルの横断面形状は1mm×1mmの正方形として、前記噴射孔と前記アクリル板との距離は4mmとする。また、前記ノズルに供給される前記試験液及び前記圧縮空気の流量、前記圧縮空気の圧力、前記ノズル内の前記試験液の圧力は、試験液の流量が100ml/分以上150ml/分以下、圧縮空気の流量が4.96L/分以上7.44L/分以下、圧縮空気の圧力が0.184MPa以上0.277MPa以下、ノズル内の試験液の圧力が0.169MPa以上0.254MPa以下とする。
前記試験液を4g噴射した後、前記試験液の噴射を一旦停止する。
前記試験液の噴射を一旦停止した後、前記アクリル板の前記試験液中の前記球形シリカが衝突した箇所について、断面プロファイルを測定する。
そして、断面プロファイルの深さ(μm)を、試験液の噴射量(4g)で除してなる、アクリル板のエロージョン率であるAcE(単位は「μm/g」)を算出する。
【0103】
校正では、前記アクリル板のエロージョン率が、1.88(μm/g)を基準として±5%の範囲を合格条件として、前記アクリル板のエロージョン率が前記範囲となるように、前記試験液及び前記圧縮空気の流量、前記圧縮空気の圧力、前記ノズル内の前記試験液の圧力を調整する作業を実施する。
「エロージョン率が、1.88(μm/g)を基準として±5%」とは、言い換えると、エロージョン率が1.786(μm/g)以上1.974(μm/g)以下であることを
【0104】
<σ0-20/E0-20>
プラスチックフィルムは、前記プラスチックフィルムの表面から深さ20μmまでのエロージョン率から算出してなるエロージョン率のばらつきをσ0-20と定義した際に、σ0-20/E0-20が0.100以下であることが好ましい。
本明細書において、σ0-20は、前記測定条件において、断面プロファイルの深さが20μmまでの各サイクルのエロージョン率から算出することができる。
【0105】
σ0-20/E0-20は、エロージョン率の変動係数を示しており、σ0-20/E0-20が小さいことは、プラスチックフィルムの厚み方向においてエロージョン率が変動しにくいことを意味している。σ0-20/E0-20を0.100以下とすることにより、厚み方向のエロージョン率が安定し、鉛筆硬度をより良好にしやすくできる。
【0106】
σ0-20/E0-20は、上限はより好ましくは0.080以下、さらに好ましくは0.070以下、さらに好ましくは0.060以下、さらに好ましくは0.055以下である。
σ0-20/E0-20の下限は特に制限されないが、通常は0超であり、好ましくは0.020以上、より好ましくは0.035以上である。また、σ0-20/E0-20の値が低い場合、プラスチックフィルムの延伸が弱い場合がある。延伸の弱いプラスチックフィルムは、耐溶剤性が悪く、破断しやすく、熱及び湿度に対する安定性が低い、という傾向がある。このため、σ0-20/E0-20は0.020以上が好ましい。
【0107】
σ0-20/E0-20の好ましい数値範囲の実施形態は、例えば、0超0.100以下、0超0.080以下、0超0.070以下、0超0.060以下、0超0.055以下、0.020以上0.100以下、0.020以上0.080以下、0.020以上0.070以下、0.020以上0.060以下、0.020以上0.055以下、0.035以上0.100以下、0.035以上0.080以下、0.035以上0.070以下、0.035以上0.060以下、0.035以上0.055以下が挙げられる。
【0108】
プラスチックフィルムは、表面及び裏面の2つの平面を有する。プラスチックフィルムは、一方の平面側から測定したσ0-20/E0-20、及び、他方の平面側から測定したσ0-20/E0-20、の何れもが、上述した値であることが好ましい。
【0109】
プラスチックフィルムの鉛筆硬度は、HB以上が好ましく、F以上がより好ましい。
プラスチックフィルムの鉛筆硬度が高すぎると、プラスチックフィルムの面内位相差が大きくなる傾向がある。このため、プラスチックフィルムの鉛筆硬度は、2H以下が好ましい。
【0110】
本明細書において、鉛筆硬度は、下記(1)~(6)の手順で測定及び判定する。
(1)プラスチックフィルムを5cm×10cmの大きさに切断したサンプルを作製する。
(2)プラスチックフィルムを100℃で10分加温する。加温後、プラスチックフィルムを、24℃、相対湿度40%以上60%以下の環境に、30分以上60分以下静置する。
(3)プラスチックフィルムに対して、JIS K 5600-5-4:1999のひっかき硬度(鉛筆法)に準拠して、鉛筆硬度を測定する。具体的には、所定の硬度を有する鉛筆を、プラスチックフィルムの表面に対して45°の角度であて、100g荷重で3.0mm/secの速度で動かすことにより、プラスチックフィルムに荷重をかける。
(4)プラスチックフィルムに荷重をかけた後、再度、サンプルを100℃で10分加温する。
(5)再加温の直後に、プラスチックフィルムの傷を目視で評価する。目視評価する環境は、24℃、相対湿度40%以上60%以下とする。
(6)上記(1)~(5)の操作を5回実施する。そして、5回中4回以上傷つかなかった鉛筆の内、最も硬いものを、評価対象のプラスチックフィルムの鉛筆硬度とする。
【0111】
上記の鉛筆硬度の測定及び判定手法では、硬度Bで5回中4回傷つかず、硬度Fで5回中3回傷つかなかった場合には、硬度Bの判定となる。
【0112】
プラスチックフィルムが遅相軸及び進相軸を有する場合、遅相軸方向及び進相軸方向の何れにおいても、鉛筆硬度がB以上であることが好ましい。プラスチックフィルムの遅相軸とは、プラスチックフィルムの面内において、屈折率の最も高い方向である。プラスチックフィルムの進相軸とは、プラスチックフィルムの面内において、前記遅相軸と直交する方向である。
【0113】
プラスチックフィルムの積層構成は、単層構造及び多層構造が挙げられる。この中でも単層構造であることが好ましい。
プラスチックフィルムは、機械的強度を良好にしつつ虹ムラを抑制するために、面内位相差が小さい二軸延伸プラスチックフィルムであることが好ましい。そして、延伸プラスチックフィルムの面内位相差を小さくするためには、流れ方向及び幅方向の延伸を均等に近づけることが好ましい。また、プラスチックフィルムのエロージョン率を上記範囲とするためには、プラスチックフィルムの面内で分子を均等に伸ばすことが好ましい。よって、プラスチックフィルムの面内位相差及びエロージョン率の平均を上述した範囲とするためには、延伸の制御が肝要となる。延伸制御に関して、多層構造では各層の物性の違い等により細かな延伸制御が難しいが、単層構造は細かな延伸制御を行いやすい点で好ましい。
【0114】
《プラスチックフィルムの製造例》
以下、プラスチックフィルムの製造例について、二軸延伸プラスチックフィルムを代表例として説明する。
二軸延伸プラスチックフィルムは、プラスチックフィルムを構成する成分を含む樹脂層を延伸することによって得ることができる。延伸の手法は、逐次二軸延伸及び同時二軸延伸が挙げられる。
【0115】
-逐次二軸延伸-
逐次二軸延伸では、キャスティングフィルムを流れ方向に延伸した後に、フィルムの幅方向の延伸を行う。
流れ方向の延伸は、通常は、一対の延伸ロールの周速の差により施される。流れ方向の延伸は、1段階で行ってもよいが、複数の延伸ロール対を使用して多段階に行っても良い。面内位相差等の光学特性の過度なはらつきを抑制するために、延伸ロールには複数のニップロールを近接させることが好ましい。流れ方向の延伸倍率は、通常は2倍以上15倍以下であり、面内位相差等の光学特性の過度なはらつきを抑制するために、好ましくは2倍以上7倍以下、より好ましくは3倍以上5倍以下、さらに好ましくは3倍以上4倍以下である。
延伸温度は、面内位相差等の光学特性の過度なはらつきを抑制するために、樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+100℃以下が好ましい。PETの場合、70℃以上120℃以下が好ましく、80℃以上110℃以下がより好ましく、95℃以上110℃以下がさらに好ましい。前記延伸温度は、装置の設定温度を意味する。なお、装置の設定温度を前記の範囲に設定しても、温度が安定するまで時間を要する。このため、前記の範囲に温度を設定して、さらに温度が安定した後に、プラスチックフィルムを製造することが好ましい。本明細書においては、装置の設定温度を複数の箇所で説明している。他の箇所の設定温度も、前述と同様に、温度が安定した後にプラスチックフィルムを製造することが好ましい。
延伸温度に関して、フィルムを速く昇温するなどして、低温での延伸区間を短くすることにより、面内位相差の平均値が小さくなる傾向がある。一方、フィルムを遅く昇温するなどして、低温での延伸区間を長くすることにより、配向性が高まり、面内位相差の平均値が大きくなるとともに、遅相軸のはらつきが小さくなる傾向がある。
延伸時の加熱の際、乱流を生じるヒーターを用いることが好ましい。乱流を含む風で加熱することにより、フィルム面内の微細な領域で温度差が生じ、前記温度差によって配向軸に微細なズレが生じ、条件Aを満たしやすくできる。プラスチックフィルムが条件Aを満たすことにより、光学フィルムのΣTを前記範囲にしやすくできる。
【0116】
また、流れ方向の延伸において、延伸時間を短くするとエロージョン率が低下し、延伸時間を長くするとエロージョン率が上昇する傾向がある。この理由は、延伸時間が短いとプラスチックフィルムの面内で分子が均等に伸ばされにくい一方で、延伸時間が長いとプラスチックフィルムの面内で分子が均等に伸ばされやすくなるためだと考えらえる。すなわち、E0-20を1.4μm/g以上とするためには、延伸時間を長くすることが好ましい。さらに、物性がバラつかない程度に延伸倍率を適度に大きくしつつ、延伸時間を長くすることで、よりE0-20を1.4μm/g以上にしやすくできる。
【0117】
流れ方向に延伸したフィルムに、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティング又はオフラインコーティングにより付与してもよい。インラインコーティング又はオフラインコーティングの前に、必要に応じてコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施してもよい。
本明細書では、インラインコーティング又はオフラインコーティングにより形成する層は、プラスチックフィルムを構成する層の数としてカウントしないものとする。
【0118】
幅方向の延伸は、通常は、テンター法を用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。幅方向の延伸倍率は、通常は2倍以上15倍以下であり、面内位相差等の光学特性の過度なはらつきを抑制するために、好ましくは2倍以上5倍以下、より好ましくは3倍以上5倍以下、さらに好ましくは3倍以上4.5倍以下である。縦延伸倍率よりも幅延伸倍率を高くすることが好ましい。
延伸温度は、樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+110℃以下が好ましく、上流から下流に行くに従って温度が高くなっていくことが好ましい。前記延伸温度は、装置の設定温度を意味する。上流側とは、幅方向の延伸を開始する地点に近い側である。下流側とは、幅方向の延伸を終了する地点に近い側である。具体的には、横延伸区間を、長さ基準で2分割した場合、上流の温度と下流の温度の差は好ましくは20℃以上であり、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは35℃以上、よりさらに好ましくは40℃以上である。PETの場合、1段目の延伸温度は80℃以上120℃以下が好ましく、90℃以上110℃以下がより好ましく、95℃以上105℃以下がさらに好ましい。幅方向の延伸区間を2分割し、かつ、1段階目と2段階目との延伸温度に差を設けることで、1段階目の延伸時のフィルムの表面温度と、2段階目の延伸時のフィルムの表面温度とを異なる温度に制御できる。このため、各延伸段階において、配向及び配向結晶化が進み過ぎず、プラスチックフィルムが脆くなることを防止できるため、鉛筆硬度を向上しやすくできる。
【0119】
上記のように逐次二軸延伸されたプラスチックフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点未満の熱処理を行うのが好ましい。前記熱処理温度は、装置の設定温度を意味する。具体的には、PETの場合、140℃以上240℃以下の範囲で熱固定を行うことが好ましく、200℃以上250℃以下がより好ましい。面内位相差等の光学特性の過度なはらつきを抑制するために、熱処理前半で1%以上10%以下の追延伸を行うことが好ましい。
プラスチックフィルムを熱処理した後は、室温まで徐冷した後に巻き取られる。必要に応じて、熱処理及び徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。熱処理時の弛緩率は、面内位相差等の光学特性の過度なはらつきを抑制するために、0.5%以上5%以下が好ましく、0.5%以上3%以下がより好ましく、0.8%以上2.5%以下がさらに好ましく、1%以上2%以下がよりさらに好ましい。徐冷時の弛緩率は、面内位相差等の光学特性の過度なはらつきを抑制するために、0.5%以上3%以下が好ましく、0.5%以上2%以下がより好ましく、0.5%以上1.5%以下がさらに好ましく、0.5%以上1.0%以下がよりさらに好ましい。徐冷時の温度は、平面性を良好にするために、80℃以上140℃以下が好ましく、90℃以上130℃以下がより好ましく、100℃以上130℃以下がさらに好ましく、100℃以上120℃以下がよりさらに好ましい。前記徐冷時の温度は、装置の設定温度を意味する。
【0120】
-同時二軸延伸-
同時二軸延伸は、キャスティングフィルムを同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、流れ方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。
【0121】
同時二軸延伸の倍率は、面積倍率として通常は6倍以上50倍以下である。面積倍率は、面内位相差等の光学特性の過度なはらつきを抑制するために、好ましくは8倍以上30倍以下、より好ましくは9倍以上25倍以下、さらに好ましくは9倍以上20倍以下、よりさらに好ましくは10倍以上15倍以下である。同時二軸延伸では、流れ方向の延伸倍率及び幅方向の延伸倍率が2倍以上15倍以下の範囲内において、前記の面積倍率となるように調整することが好ましい。
同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、流れ方向及び幅方向の延伸倍率をほぼ同一とするとともに、流れ方向及び幅方向の延伸速度もほぼ同一とすることが好ましい。
【0122】
同時二軸延伸の延伸温度は、面内位相差等の光学特性の過度なはらつきを抑制するために、樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+120℃以下が好ましい。PETの場合、80℃以上160℃以下が好ましく、90℃以上150℃以下がより好ましく、100℃以上140℃以下がさらに好ましい。前記延伸温度は、装置の設定温度を意味する。
【0123】
同時二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内の熱固定室で延伸温度以上融点未満の熱処理を行うのが好ましい。前記熱処理の温度は、装置の設定温度を意味する。前記熱処理の条件は、逐次二軸延伸後の熱処理条件と同様である。
【0124】
<低屈折率層>
低屈折率層は、光学フィルムの反射防止性を高めるとともに、裸眼で視認した際の虹ムラを抑制しやすくする役割を有する。低屈折率層は、プラスチックフィルムを基準として低屈折率層を有する側の光学フィルムの表面に位置することが好ましい。本開示の光学フィルムの効果を阻害しない範囲において、低屈折率層上に、防汚層及び帯電防止層等の機能層を有していてもよい。
【0125】
画像表示装置の内部から視認者側に向かう光は、偏光子を通過した段階では直線偏光であるが、プラスチックフィルムを通過した後には、直線偏光の偏光状態が乱れて、P波及びS波が混在した光となる。そして、P波の反射率とS波の反射率とには差があり、かつ、反射率差には波長依存性があるため、裸眼で虹ムラが視認されると考えられる。ここで、プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する場合には、前述の反射率差を小さくすることができるため、虹ムラを抑制しやすくできると考えられる。
【0126】
但し、上述したように、低屈折率層を有する光学フィルムの反射率を低くした場合、斜め視認時の色味の均一性を良好にしにくくなる。この原因は、低屈折率層を有する光学フィルムの反射光の干渉によるものと考えられる。
このため、低屈折率層の平均屈折率をn1、低屈折率層に隣接する層の平均屈折率をn2と定義した際に、n2/n1が1.23未満であることが好ましい。n2/n1を1.23未満とすることにより、反射光の干渉を抑制し、斜め視認時の色味の均一性を良好にしやすくできる。
【0127】
n2/n1は、1.20以下であることがより好ましく、1.15以下であることがさらに好ましく、1.13以下であることがよりさらに好ましい。特に、n2/n1を1.05以上1.15以下とすることにより、反射率の波長依存性を抑制しやすくできる。また、n2/n1を1.05以上1.15以下とすることにより、低屈折率層が脆くなることを抑制しやすくできる。
n2/n1を小さくし過ぎると、光学フィルムの視感反射率Y値が高くなりやすい。このため、n2/n1は1.05以上であることが好ましく、1.07以上であることがより好ましい。
【0128】
n2/n1の好ましい範囲は、1.05以上1.23未満、1.05以上1.20以下、1.05以上1.15以下、1.05以上1.13以下、1.07以上1.23未満、1.07以上1.20以下、1.07以上1.15以下、1.07以上1.13以下等が挙げられる。
【0129】
n2/n1を上記範囲にしやすくするためには、n2の値を低くすることが好ましい。このため、低屈折率層に隣接する層は、プラスチックフィルム又はハードコート層であることが好ましく、ハードコート層がより好ましい。
【0130】
各層の平均屈折率は、例えば、積層体の断面写真から各層の厚みが780nmを超えるか780nm以下であるかを特定した上で、下記の手法で測定又は算出することができる。
【0131】
―厚みが780nmを超える層の平均屈折率―
厚みが780nmを超える層の平均屈折率は、前記層のバインダー成分の屈折率を、前記層の屈折率とみなす。厚みが780nmを超える層の平均屈折率は、例えば、下記のベッケ法で算出することができる。プラスチックフィルム、ハードコート層及び防眩層の屈折率は、ベッケ法で算出することが好ましい。
《ベッケ法》
屈折率の測定対象となる層をカッターなどで削り取り、バインダー成分を粉状態としたサンプルを作製し、JIS K7142:2008のB法(粉体または粒状の透明材料用)に従ったベッケ法により算出する手法。
【0132】
―厚みが780nm以下の層の平均屈折率―
厚みが780nm以下の層は、バインダー成分を採取することが難しい。このため、厚みが780nm以下の層の平均屈折率は、例えば、厚みが780nm以下の層を有する積層体1を作製し、下記(Y1)、(Y2)の手順で算出することができる。低屈折率層の屈折率n1は、下記(Y1)、(Y2)の手順で算出することが好ましい。
(Y1)積層体1を構成する層のうち、厚みが780nmを超える層の平均屈折率を上記のベッケ法で算出する。さらに、積層体の断面写真から、厚みが780nmを超える層の厚み、並びに厚みが780nm以下の層の厚みを算出する。
(Y2)前記(Y1)で算出した、厚みが780nmを超える層の平均屈折率及び厚みの情報、並びに厚みが780nm以下の層の厚みの情報を用いて、下記のフィッティング法により、厚みが780nm以下の層の平均屈折率を算出する。低屈折率層の平均屈折率n1は後述する範囲であることが好ましい。
《フィッティング法》
反射光度計により測定した反射スペクトルと、フレネル係数を用いた多層薄膜の光学モデルから算出した反射スペクトルとのフィッティングにより算出する手法。
【0133】
低屈折率層に隣接する層の平均屈折率n2は、低屈折率層の平均屈折率n1よりも大きいことが好ましい。n2は、n1を後述する範囲としつつ、かつ、n2/n1が前記範囲を満たす範囲とすることが好ましい。n2は、1.42以上1.60以下であることが好ましく、1.45以上1.58以下であることがより好ましい。
【0134】
低屈折率層の屈折率は、虹ムラ抑制の観点から、1.45以下が好ましく、1.43以下がより好ましく、1.40以下がより好ましい。
低屈折率層の屈折率を低くし過ぎると、光学フィルムのΣTの値が前記範囲を満たしにくくなる傾向がある。このため、低屈折率層の屈折率は、1.30以上が好ましく、1.33以上がより好ましく、1.35以上がさらに好ましい。
【0135】
低屈折率層の厚みは、60nm以上200nm以下が好ましく、80nm以上120nm以下がより好ましく、85nm以上110nm以下がさらに好ましく、90nm以上105nm以下がよりさらに好ましい。低屈折率層の厚みは、中空粒子等の低屈折率粒子の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。
【0136】
低屈折率層を形成する手法としては、ウェット法とドライ法とに大別できる。ウェット法としては、金属アルコキシド等を用いてゾルゲル法により形成する手法、フッ素樹脂のような低屈折率の樹脂を塗工して形成する手法、樹脂組成物に低屈折率粒子を含有させた低屈折率層形成用塗布液を塗工して形成する手法が挙げられる。ドライ法としては、後述する低屈折率粒子の中から所望の屈折率を有する粒子を選び、物理気相成長法又は化学気相成長法により形成する手法が挙げられる。
ウェット法は、生産効率、斜め反射色相の抑制、及び耐薬品性の点で、ドライ法よりも優れている。ウェット法の中でも、密着性、耐水性、耐擦傷性及び低屈折率化のために、バインダー樹脂組成物に低屈折率粒子を含有させた低屈折率層形成用塗布液により形成することが好ましい。
【0137】
低屈折率粒子は、中空粒子及び非中空粒子が挙げられる。低屈折率粒子としては、中空粒子及び非中空粒子の何れか一方のみを含んでいてもよいが、中空粒子及び非中空粒子の両方を含むことが好ましい。中空粒子及び非中空粒子の両方を含むことにより、塗膜強度の低下を抑制しつつ、低屈折率層の屈折率を適度に下げやすくできる。一方、中空粒子のみを含む場合、低屈折率層の屈折率が過度に低下し、光学フィルムのΣTが前記範囲を満たしにくくなる。
中空粒子及び非中空粒子の材質は、シリカ及びフッ化マグネシウム等の無機化合物、有機化合物のいずれであってもよいが、低屈折率化及び強度のためにシリカが好ましい。以下、中空シリカ粒子及び非中空シリカ粒子を中心として説明する。
【0138】
中空シリカ粒子とは、シリカからなる外殻層を有し、外殻層に囲まれた粒子内部が空洞であり、空洞の内部に空気を含む粒子をいう。中空シリカ粒子は、空気を含むことにより、シリカ本来の屈折率に比べて気体の占有率に比例して屈折率が低下する粒子である。非中空シリカ粒子とは、中空シリカ粒子のように内部が空洞となっていない粒子である。非中空シリカ粒子は、例えば中実のシリカ粒子である。
中空シリカ粒子及び非中空シリカ粒子の形状は、特に限定はなく、真球状、回転楕円体状、及び、球体に近似できる多面体形状等の略球状などであってもよい。なかでも、耐擦傷性を考慮すると、真球状、回転楕円体状または略球状であることが好ましい。
【0139】
中空シリカ粒子は、内部に空気を含むことから、低屈折率層全体の屈折率を低下させる役割を果たす。空気の比率を高めた粒子径の大きい中空シリカ粒子を用いることにより、低屈折率層の屈折率をより低下させることができる。一方で、中空シリカ粒子は、機械的強度に劣る傾向がある。特に、空気の比率を高めた粒子径の大きい中空シリカ粒子を用いた場合、低屈折率層の耐擦傷性を低下させやすい傾向がある。
非中空シリカ粒子は、バインダー樹脂中に分散することにより、低屈折率層の耐擦傷性を向上させる役割を果たす。
【0140】
中空シリカ粒子及び非中空シリカ粒子を高濃度でバインダー樹脂中に含有させつつ、粒子を樹脂内で膜厚方向に均一に分散させるためには、中空シリカ粒子の間を近接させること、及び、中空シリカ粒子の平均粒子径及び非中空シリカ粒子の平均粒子径を所定の範囲に設定することにより、中空シリカ粒子の間に非中空粒子が入り込めるようにすること、が重要である。中空シリカ粒子の平均粒子径に対する非中空シリカ粒子の平均粒子径の比(非中空シリカ粒子の平均粒子径/中空シリカ粒子の平均粒子径)は、0.29以下であることが好ましく、0.27以下であることがより好ましい。前記平均粒子径の比は、0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。
中空シリカ粒子の平均粒子径は、低屈折率層の厚みより小さいものが好ましく、例えば、1nm以上150nm以下が挙げられる。中空シリカ粒子の平均粒子径は、35nm以上100nm以下であることが好ましく、50nm以上100nm以下であることがより好ましく、60nm以上80nm以下であることがさらに好ましい。
非中空シリカ粒子の平均粒子径は、低屈折率層の厚みより小さいものが好ましく、例えば、0.5nm以上100nm以下が挙げられる。非中空シリカ粒子の平均粒子径は、1nm以上30nm以下であることが好ましく、5nm以上20nm以下であることがより好ましく、10nm以上15nm以下であることがさらに好ましい。
【0141】
低屈折率粒子の平均粒子径は、以下の(y1)~(y3)の作業により算出できる。
(y1)低屈折率層の断面をSTEMで撮像する。STEMの加速電圧は10kv以上30kV以下、倍率は5万倍以上30万倍以下とすることが好ましい。
(y2)観察画像から任意の10個の粒子を抽出し、個々の粒子の粒子径を算出する。粒子径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、前記2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。粒子が凝集している場合、凝集した粒子を一個の粒子とみなして測定する。
(y3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を、低屈折率粒子の平均粒子径とする。
【0142】
中空シリカ粒子及び非中空シリカ粒子は、表面がシランカップリング剤で被覆されていることが好ましい。シランカップリング剤は汎用のものが挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
シリカ粒子にシランカップリング剤による表面処理を施すことにより、シリカ粒子とバインダー樹脂との親和性が向上し、シリカ粒子の凝集が生じにくくなる。このため、シリカ粒子の分散が均一となりやすい。
【0143】
中空シリカ粒子の含有量が多くなるほど、バインダー樹脂中の中空シリカ粒子の充填率が高くなり、低屈折率層の屈折率が低下する。このため、中空シリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して100質量部以上であることが好ましく、120質量部以上であることがより好ましい。
一方で、中空シリカ粒子の含有量が多すぎると、中空シリカ粒子が損傷したり、脱落したりしやすくなって、低屈折率層の耐擦傷性等の機械的強度が低下する傾向がある。中空シリカ粒子の含有量が多すぎると、低屈折率層の屈折率が過度に低下し、光学フィルムのΣTの値が前記範囲を満たしにくくなる傾向がある。このため、中空シリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して200質量部以下であることが好ましく、180質量部以下であることがより好ましく、160質量部以下であることがさらに好ましい。
【0144】
非中空シリカ粒子の含有量は、低屈折率層の耐擦傷性を良好にするために、バインダー樹脂100質量部に対して20質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましい。
一方で、非中空シリカ粒子の含有量が多すぎると、非中空シリカ粒子が凝集しやすくなる。このため、非中空シリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。
【0145】
低屈折率層のバインダー樹脂は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。
電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
【0146】
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
【0147】
多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
電離放射線硬化性化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0148】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、α-アミノアルキルフェノン、アントラキノン、ハロゲノケトン、チオキサンソン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0149】
低屈折率層中には、防汚性及び表面平滑性のためにレベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤は、フッ素系及びシリコーン系が挙げられるが、シリコーン系が好ましい。シリコーン系レベリング剤を含むことにより、低反射率層表面の滑り性及び防汚性を良好にすることができる。「防汚性が良好」であることの具体例としては、指紋拭き取り性が良好であること、及び、純水及びヘキサデカンに対する接触角が大きいこと、が挙げられる。
【0150】
レベリング剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。
【0151】
低屈折率層は、例えば、低屈折率層を構成する各成分を溶解又は分散してなる低屈折率層形成塗布液を塗布、乾燥することにより形成することができる。低屈折率層形成塗布液中には、粘度を調節したり、各成分を溶解または分散可能としたりするために、溶剤を含有していてもよい。
【0152】
<反射率>
本開示の光学フィルムは、低屈折率層側から測定した視感反射率Y値が4.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.7%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下であることがよりさらに好ましい。
光学フィルムの視感反射率を低くし過ぎると、ΣTの値が前記範囲を満たしにくくなる傾向がある。このため、視感反射率Y値は0.5%以上であることが好ましく、0.7%以上であることがより好ましく、1.0%以上であることがさらに好ましい。
【0153】
本明細書において、視感反射率Y値とは、CIE1931標準表色系の視感反射率Y値のことをいう。反射率は、1枚のサンプルの任意の10箇所を測定し、最大値及び最小値を除外した8箇所の値の平均値として算出することが好ましい。
本明細書において、光学フィルムの反射率は、光学フィルムの反射率測定面とは反対側に、透明粘着剤層を介して黒色板を貼り合わせたサンプルを作製し、前記サンプルの低屈折率層側から入射角5°で光を入射させて測定するものとする。反射率を測定する際の光源はC光源とすることが好ましい。
サンプルの透明粘着剤層と接する部材(例えばプラスチックフィルム)と、透明粘着剤層との屈折率差は0.15以内とすることが好ましく、0.10以内とすることがより好ましく、0.05以内とすることがより好ましく、0.01以内とすることがより好ましい。黒色板は、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が1%以下のものが好ましく、0%のものがより好ましい。黒色板を構成する樹脂の屈折率と、透明粘着剤層との屈折率差は0.15以内とすることが好ましく、0.10以内とすることがより好ましく、0.05以内とすることがより好ましく、0.01以内とすることがより好ましい。
【0154】
<ヘイズ、全光線透過率>
光学フィルムは、JIS K7136:2000のヘイズが5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。防眩性が求められる場合には、光学フィルムのヘイズの上限は90%以下であってもよく、65%以下であってもよく、40%以下であってもよい。光学フィルムは、JIS K7136:2000のヘイズが0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることがさらに好ましい。前述したヘイズは、光学フィルム全体のヘイズを意味する。
光学フィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、91%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることがよりさらに好ましい。
【0155】
<その他の層>
本開示の光学フィルムは、プラスチックフィルム及び低屈折率層以外のその他の層を有していてもよい。低屈折率層、及び、低屈折率層以外のその他の層は、光学的等方性であることが好ましい。光学的等方性を有する層とは、面内位相差が20nm未満のものを指し、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。
プラスチックフィルム及び低屈折率層以外のその他の層としては、防汚層、ハードコート層、防眩層及び高屈折率層等が挙げられ、ハードコート層及び防眩層が好ましい。すなわち、本開示の光学フィルムは、プラスチックフィルムと低屈折率層との間に、ハードコート層及び防眩層から選ばれる1種以上の層を有することが好ましい。これらの中でもハードコート層が好ましい。本開示の光学フィルムの効果を阻害しない範囲で、低屈折率層のプラスチックフィルムとは反対側に防汚層を有していてもよい。例えば、本開示の光学フィルムの効果を阻害しない範囲で、プラスチックフィルム、低屈折率層及び防汚層をこの順に有していてもよい。
【0156】
《ハードコート層》
ハードコート層は、光学フィルムの耐擦傷性を向上するために、必要に応じて形成される。ハードコート層は、プラスチックフィルムと低屈折率層との間に形成することが好ましい。光学フィルムがさらに高屈折率層を有する場合、プラスチックフィルム上に、ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順に配置することが好ましい。
【0157】
ハードコート層は、耐擦傷性を良好にするために、熱硬化性樹脂組成物又は電離放射線硬化性樹脂組成物等の硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましい。
【0158】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
ハードコート層の電離放射線硬化性樹脂組成物は、低屈折率層で例示した電離放射線硬化性樹脂組成物と同様のものが挙げられる。
【0159】
ハードコート層の電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性化合物として、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーの数平均分子量は、下限が2000以上であることが好ましく、2500以上であることがより好ましく、上限が6000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。
数平均分子量が2000以上の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む組成物から形成したハードコート層には、低屈折率層形成用塗布液の溶剤又は電離放射線硬化性化合物が浸透しやすいため、ハードコート層と低屈折率層との界面の反射を抑制できる。このため、光学フィルムの反射光の干渉を抑制しやすくでき、ΣTを上記範囲にしやすくできる。
数平均分子量が6000以下の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーを含む組成物から形成したハードコート層は、ハードコート層の硬度の低下を抑制しやすくできる。
【0160】
ハードコート層の電離放射線硬化性樹脂組成物の電離放射線硬化性化合物の全量に対して、数平均分子量が2000以上6000以下の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、12質量%以上がさらに好ましい。
【0161】
ハードコート層の厚みは、耐擦傷性を良好にするために、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましく、2.0μm以上がよりさらに好ましい。ハードコート層の厚みは、カール抑制のために、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0162】
《防眩層》
防眩層は、例えば、バインダー樹脂組成物及び粒子を含む防眩層形成用塗布液から形成することができる。前記バインダー樹脂組成物としては、例えば、ハードコート層で例示した硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0163】
粒子は、有機粒子及び無機粒子の何れも用いることができる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル-スチレン共重合体、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等からなる粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、アンチモン、ジルコニア及びチタニア等からなる粒子が挙げられる。
【0164】
防眩層中の有機粒子の平均粒子径は、防眩層の厚みにより異なるため一概には言えないが、0.5μm以上10.0μm以下が好ましく、1.0μm以上8.0μm以下であることがより好ましく、1.5μm以上6.0μm以下であることがさらに好ましい。
無機粒子は凝集しやすい。このため、無機粒子の平均粒子径は前記の限りではなく、1nm以上10μm以下であることが好ましい。
【0165】
防眩層の粒子の平均粒子径は、以下の(z1)~(z3)の作業により算出できる。
(z1)光学顕微鏡又はSTEMにて防眩層の画像を撮像する。粒子の平均粒子径がミクロンオーダーの場合は、光学顕微鏡を用いて、防眩層の平面の画像を撮像することが好ましい。その際、倍率は500倍以上2000倍以下が好ましい。粒子の平均粒子径がナノオーダーの場合は、STEMを用いて、防眩層の断面の画像を撮像することが好ましい。その際、倍率は20,000倍以上100,000倍以下が好ましい。STEMの加速電圧は10kv以上30kV以下が好ましい。
(z2)観察画像から任意の10個の粒子を抽出し、個々の粒子の粒子径を算出する。粒子径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、前記2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(z3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を防眩層中の粒子の平均粒子径とする。
【0166】
防眩層中の粒子の含有量は、目的とする防眩性の程度により異なるため一概にはいえないが、樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがさらに好ましい。
防眩層は、帯電防止性を付与したり、屈折率を制御したり、硬化性樹脂組成物の硬化による防眩層の収縮を調整したりするために、平均粒子径500nm未満の微粒子を含有してもよい。
【0167】
防眩層の厚みは、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、2.0μm以上がさらに好ましい。防眩層の厚みは、50μm以下が好ましく、30μm以上がより好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がより好ましい。防眩層の硬度を良好にするため、防眩層の厚みは、粒子の平均粒子径より厚くすることが好ましい。
【0168】
<層構成の例>
以下の(1)~(5)は、本開示の光学フィルムの層構成の例である。下記構成の中でも、(2)及び(4)が好ましい。
(1)プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する構成。
(2)プラスチックフィルム上に、ハードコート層及び低屈折率層をこの順に有する構成。
(3)プラスチックフィルム上に、高屈折率層及び低屈折率層をこの順に有する構成。
(4)プラスチックフィルム上に、防眩層及び低屈折率層をこの順に有する構成。
(5)プラスチックフィルム上に、ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順に有する構成。
【0169】
<形態、大きさ>
光学フィルムは、所定の大きさにカットした枚葉状の形態でもよいし、長尺シートをロール状に巻き取ったロール状の形態であってもよい。枚葉の大きさは特に限定されないが、最大径が2インチ以上500インチ以下程度である。本開示では、枚葉の大きさは30インチ以上100インチ以下が好ましく、40インチ以上100インチ以下がより好ましい。「最大径」とは、光学フィルムの任意の2点を結んだ際の最大長さをいうものとする。例えば、光学フィルムが長方形の場合は、長方形の領域の対角線が最大径となる。光学フィルムが円形の場合は、直径が最大径となる。
ロール状の幅及び長さは特に限定されないが、一般的には、幅は500mm以上5000mm以下、長さは100m以上5000m以下程度である。ロール状の形態の光学フィルムは、画像表示装置等の大きさに合わせて、枚葉状にカットして用いることができる。カットする際、物性が安定しないロール端部は除外することが好ましい。
枚葉の形状も特に限定されず、例えば、多角形(三角形、長方形、五角形等)、円形であってもよいし、ランダムな不定形であってもよい。光学フィルムが長方形である場合には、長方形の縦横比は、表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、横:縦=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1、5:4等が挙げられる。
【0170】
<用途>
本開示の光学フィルムは、画像表示装置用の光学フィルムとして好適に用いることができる。
また、本開示の光学フィルムは、画像表示装置の表示素子の光出射面側に配置する光学フィルムとして好適に用いることができる。この際、表示素子と、本開示の光学フィルムとの間に偏光子を有することが好ましい。
プラスチックフィルムが条件Aを満たす場合には、折り曲げの方向に関わらず、屈曲試験後に曲げ癖が残ったり、破断したりすることを抑制できる。このため、プラスチックフィルムが条件Aを満たす場合には、曲面の画像表示装置、折り畳み可能な画像表示装置のプラスチックフィルムとしてより好適に用いることができる。
また、本開示の光学フィルムは、機能性フィルムを製造する際の部材としても用いることができる。例えば、基材上に転写層を有する転写シートにおいて、前記基材として、本開示の光学フィルムを用いることができる。この場合、プラスチックフィルムの低屈折率層を有する側とは反対側に、転写層を形成すればよい。また、前記部材として、機能性フィルムの製造過程において、機能性フィルムを保護又は補強するために用いる基材が挙げられる。
【0171】
[偏光板]
本開示の偏光板は、偏光子と、前記偏光子の一方の側に位置する第1の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に位置する第2の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第1の透明保護板及び前記第2の透明保護板の少なくとも一方が上述した本開示の光学フィルムであり、前記光学フィルムの前記低屈折率層側の面が前記偏光子とは反対側を向いてなるものである。
【0172】
図3は、本開示の偏光板700の実施の形態を示す断面図である。
図3の偏光板700は、偏光子300と、前記偏光子の一方の側に配置されてなる第1の透明保護板500と、前記偏光子の他方の側に配置されてなる第2の透明保護板600とを有している。
図3の偏光板700は、第1の透明保護板500として光学フィルム100を用いている。
図3において、光学フィルム100は、光学フィルムの低屈折率層30側の面が偏光子300とは反対側を向いている。
図3の偏光板700は、偏光子300と、第1の透明保護板500及び第2の透明保護板600とが、接着剤層400を介して積層されている。
【0173】
偏光板は、例えば、λ/4位相差板との組み合わせにより反射防止性を付与するために使用される。この場合、画像表示装置の表示素子上にλ/4位相差板を配置し、λ/4位相差板よりも視認者側に偏光板が配置される。
液晶表示装置用においては、偏光板は、液晶シャッターの機能を付与するために使用される。この場合、液晶表示装置は、バックライト側から、下側偏光板、液晶表示素子、上側偏光板の順に配置され、下側偏光板の偏光子の吸収軸と上側偏光板の偏光子の吸収軸とが直交して配置される。液晶表示装置の構成では、上側偏光板及び下側偏光板として本開示の偏光板を用いることができ、上側偏光板として本開示の偏光板を用いることが好ましい。上側偏光板においては、偏光子の光出射面側の透明保護板として、本開示の光学フィルムを用いることが好ましい。下側偏光板においては、偏光子の光入射面側の透明保護板として、本開示の光学フィルムを用いることが好ましい。
【0174】
<透明保護板>
本開示の偏光板は、第1の透明保護板及び第2の透明保護板の少なくとも一方として上述した本開示の光学フィルムを用いる。第1の透明保護板及び第2の透明保護板の両方が上述した本開示の光学フィルムであることが好ましい。
【0175】
第1の透明保護板及び第2の透明保護板の一方が上述した本開示の光学フィルムである場合、他方の透明保護板は特に限定されないが、光学的等方性の透明保護板が好ましい。本明細書において、光学的等方性の透明保護板とは、面内位相差が20nm未満のものを指し、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。光学的等方性を有する透明保護板は、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、非晶質オレフィンフィルム等が挙げられる。
【0176】
<偏光子>
偏光子としては、例えば、ヨウ素等により染色したフィルムを延伸してなるシート型偏光子(ポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等)、平行に並べられた多数の金属ワイヤからなるワイヤーグリッド型偏光子、リオトロピック液晶及び二色性ゲスト-ホスト材料を塗布した塗布型偏光子、多層薄膜型偏光子等が挙げられる。これらの偏光子は、透過しない偏光成分を反射する機能を備えた反射型偏光子であってもよい。
【0177】
偏光子は、その吸収軸と、プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が、90度±5度以内となるように配置することが好ましい。前記角は、より好ましくは90度±3度以内、さらに好ましくは90度±1度以内である。
【0178】
[画像表示装置]
本開示の画像表示装置は、表示素子と、前記表示素子の光出射面側に配置されてなる偏光子及び光学フィルムとを有する画像表示装置であって、前記光学フィルムが上述した本開示の光学フィルムであり、かつ、前記光学フィルムの前記低屈折率層側の面が前記表示素子とは反対側を向いてなるものである。
【0179】
図4は、本開示の画像表示装置の実施形態を示す断面図である。
図4の画像表示装置1000は、表示素子800の光出射面側(
図4の上側)に、光学フィルム100を有している。
図4において、光学フィルム100は、光学フィルムの低屈折率層側の面が表示素子800とは反対側を向いている。
図4の画像表示装置100は、何れも、表示素子800と、光学フィルム100との間に偏光子300を有している。
【0180】
画像表示装置1000は、
図4の形態に限定されない。例えば、
図4では、画像表示装置1000を構成する各部材は所定の間隔を空けて配置されているが、各部材は接着剤層を介するなどして一体化して積層されていることが好ましい。画像表示装置は、その他の光学フィルム等の図示しない部材を有していてもよい。例えば、画像表示装置は、ガラス板及びプラスチック板等の表面板を有していてもよい。画像表示装置が表面板を有する場合、表面板に本開示の光学フィルムを貼り合わせてもよい。
【0181】
本開示の画像表示装置は、偏光子の吸収軸と光学フィルムのプラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内であることが好ましい。前記角は、より好ましくは90度±3度以内、さらに好ましくは90度±1度以内である。
【0182】
<表示素子>
表示素子としては、液晶表示素子、EL表示素子(有機EL表示素子、無機EL表示素子)、プラズマ表示素子、QD(Quantum dot)を用いた表示素子等が挙げられ、さらには、ミニLED、マイクロLED表示素子等のLED表示素子が挙げられる。
表示装置の表示素子が液晶表示素子である場合、液晶表示素子の樹脂シートとは反対側の面にはバックライトが必要である。
【0183】
画像表示装置は、タッチパネル機能を備えた画像表示装置であってもよい。
タッチパネルとしては、抵抗膜式、静電容量式、電磁誘導式、赤外線式、超音波式等の方式が挙げられる。
タッチパネル機能は、インセルタッチパネル液晶表示素子のように表示素子内に機能が付加されたものであってもよいし、表示素子上にタッチパネルを載置したものであってもよい。
【0184】
プラスチックフィルムが条件Aを満たすものであれば、光学フィルムは、屈曲試験後に曲げ癖が残ったり、破断したりすることを抑制できる。このため、プラスチックフィルムが条件Aを満たすものであれば、画像表示装置は、曲面の画像表示装置、折り畳み可能な画像表示装置であることが好ましい。
画像表示装置が、曲面の画像表示装置、折り畳み可能な画像表示装置である場合には、表示素子は有機EL表示素子であることが好ましい。画像表示装置が、曲面の画像表示装置、折り畳み可能な画像表示装置である場合には、画像表示装置に含まれるガラスは薄型ガラスであることが好ましい。薄型ガラスは、厚みが5μm以上80μm以下であることが好ましい。
【0185】
<その他のプラスチックフィルム>
本開示の画像表示装置は、本開示の効果を阻害しない範囲でその他のプラスチックフィルムを有していてもよい。
その他のプラスチックフィルムとしては、光学的等方性を有するものが好ましい。
【0186】
[画像表示装置の光学フィルムの選定方法]
本開示の画像表示装置の光学フィルムの選定方法は、表示素子の光出射面上に、偏光子及び光学フィルムを有してなる画像表示装置の光学フィルムの選定方法であって、下記(1)~(4)の判定条件を満たす光学フィルムXを前記光学フィルムとして選定する、ものである。
(1)プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する光学フィルムXであること;
(2)前記プラスチックフィルムは、面内で屈折率が最も大きい軸である遅相軸と、前記プラスチックフィルムの面内で前記遅相軸と直交する軸である進相軸とを有すること;
(3)前記低屈折率層が前記光学フィルムXの表面に位置してなること;及び
(4)前記光学フィルムXが、下記測定条件1から算出したΣTが0.04超0.20未満を満たす領域を有すること。
【0187】
<測定条件1>
前記光学フィルムの前記低屈折率層とは反対側の面から直線編光を入射する。前記入射光である直線偏光を光L1と定義する。前記光L1が前記光学フィルムを透過した透過光を光L2と定義する。
前記光L1は、前記遅相軸と前記光L1の振動方向との成す角を45度に固定した上で、前記光学フィルムの平面を基準とした前記光L1の振動方向の仰角が50度以上70度以下となる角度で前記光学フィルムに対して入射させる。前記仰角を50度以上70度以下の範囲で2度刻みで変動させ、11通りの仰角において前記光L2を測定する。前述した測定により、11の測定点において前記光L2が測定される。
前記光L2を、C光源及び視野角2度の条件に換算する。11の測定点のうちのn番目の測定点の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n及びb*nと定義する。また、11の測定点のうちのn+1番目の光L2に関して、L*a*b*表色系のa*値及びb*値を、a*n1及びb*n1と定義する。
前記11の測定点の測定に基づいて、隣接する測定点のa*の差の2乗と、隣接する測定点のb*の差の2乗との和を算出する。前記和を10の隣接点でそれぞれ算出し、前記和の総和を示すΣTを算出する。前記ΣTは下記式1で表すことができる。
ΣT=Σ[{a*n-a*n1}2 +{b*n-b*n1}2 ] (式1)
【0188】
本開示の画像表示装置の光学フィルムの選定方法において、偏光子の吸収軸と光学フィルムのプラスチックフィルムの遅相軸との成す角は90度±5度以内であることが好ましい。前記角は、より好ましくは90度±3度以内、さらに好ましくは90度±1度以内である。
【0189】
本開示の画像表示装置の光学フィルムの選定方法における測定条件1の実施形態は、上述した本開示の光学フィルムの測定条件1の実施形態と同じである。
【0190】
本開示の画像表示装置の光学フィルムの選定方法は、判定条件として、さらに追加の判定条件を有することが好ましい。追加の判定条件としては、本開示の光学フィルムの好適な実施形態(例えば、式2-1、式2-2、n2/n1、プラスチックフィルムの面内位相差等)が挙げられる。
本開示の画像表示装置の光学フィルムの選定方法は、表示素子の光出射面側の面上に偏光子を有する画像表示装置の光学フィルムの選定方法として有用である。
【実施例】
【0191】
次に、本開示を実施例により更に詳細に説明するが、本開示はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0192】
1.測定、評価
以下の測定及び評価の雰囲気は、温度23℃±5℃、相対湿度40%以上65%以下とする。また、測定及び評価の前に、前記雰囲気に測定用のサンプルを30分以上60分以下晒すものとする。測定用のサンプルは、清浄であり、かつ破損のない箇所から採取するものとする。測定及び評価は、サンプルの平面性が良好な状態で実施するものとする。
【0193】
1-1.測定条件1の測定
実験例の光学フィルムから5cm×5cmのサンプルをカットした。前記サンプルに関して、測定条件1の測定を実施した。測定装置は、日本分光社(JASCO Corporation)の分光光度計の品番「V-7100」を用いた。前記測定結果に基づき、「式1のΣT」、「式2-1の(a*max-a*min)」、「式2-2の(b*max-b*min)」、「和の最大値(SMAX)」を算出した。測定条件1では、隣接する測定点のa*の差の2乗と、隣接する測定点のb*の差の2乗との和が、10の隣接点でそれぞれ算出される。「和の最大値(SMAX)」は、10箇所の和の最大値を意味する。また、実験例の光学フィルムの視感反射率Y値を「R(%)」と定義し、「R×ΣT」を算出した(視感反射率Y値は、後述する1-6の手法で測定した。)。結果を表1に示す。
【0194】
1-2.n1及びn2
実験例の光学フィルムに関して、低屈折率層の平均屈折率n1を、明細書本文に記載したベッケ法とフィッティング法との併用により測定した。
また、実験例の光学フィルムに関して、低屈折率層に隣接する層の平均屈折率n2を測定した。低屈折率層に隣接する層がプラスチックフィルム及びハードコート層の何れの場合も、明細書本文に記載したベッケ法によりn2を測定した。結果を表1に示す。
【0195】
1-3.虹ムラ
液晶表示素子上に偏光子を有してなる液晶表示装置(EIZO社の商品名「EV2450」、横:527.0mm、縦:596.4mm、偏光子の吸収軸は画面の縦方向と平行、バックライト:白色発光ダイオードを用いたバックライト)を準備した。
前記液晶表示装置上に、接着剤層を介して実験例の光学フィルムを積層してなる積層体を作製した。この際、偏光子の吸収軸と、光学フィルムのプラスチックフィルムの遅相軸とが90度となるように配置した。そして、前記積層体を暗室環境で白表示し、積層体から30cm以上100cm以下離れた距離のあらゆる位置かつあらゆる方向から視認した。評価者は20歳台~40歳台の視力0.7以上の健康な人として、下記の基準で、裸眼で虹ムラの有無を評価した。前記の視力は矯正視力も含む。結果を表1に示す。
AA:あらゆる位置かつあらゆる方向から視認した際にも虹ムラが視認できない。
A:虹ムラがごく一部の領域に視認される位置が若干存在する、又は、虹ムラがごく一部の領域に視認される方向が若干存在する。
B:虹ムラがごく一部の領域に視認される位置が多く存在する、又は、虹ムラがごく一部の領域に視認される方向が多く存在する。
B-:虹ムラが一部の領域に視認される位置が多く存在する、又は、虹ムラが一部の領域に視認される方向が多く存在する。
C:虹ムラが大部分の領域に視認される位置が多く存在する、又は、虹ムラが大部分の領域に視認される方向が多く存在する。
【0196】
1-4.色味の均一性
1-3で作製した積層体を、電源オフの状態で、明室環境下で目視で観察した。明室の条件は、積層体の表面の明るさが1000ルクス以上1500ルクス以下となる範囲とした。積層体の正面方向、積層体に対して約50度の方向、積層体に対して約70度の方向、の3方向から観察した。積層体と評価者の目との距離は、30cm以上100cm以下とした。評価者は、20歳台~40歳台の視力0.7以上の健康な20人として、下記の基準で、斜め視認時の色味の均一性を評価した。結果を表1に示す。
A:3方向の色味を比較した際に、色味の変化が感じられないと答えた人が18人以上。
B:3方向の色味を比較した際に、色味の変化が感じられないと答えた人が15人以上17人以下。
C:3方向の色味を比較した際に、色味の変化が感じられないと答えた人が10人以上14人以下。
D:3方向の色味を比較した際に、色味の変化が感じられないと答えた人が5人以上9人以下。
E:3方向の色味を比較した際に、色味の変化が感じられないと答えた人が4人以下。
【0197】
1-5.反射光に基づく彩度
実験例の光学フィルムのプラスチックフィルム側に、厚み25μmの透明粘着剤層(パナック社(PANAC CO.,LTD.)、商品名「パナクリーンPD-S1(Panaclean PD-S1)」、屈折率1.49)を介して黒色板(クラレ社(KURARAY CO.,LTD)、商品名「コモグラス DFA2CG 502K(黒)系(COMOGLAS DFA2CG 502K(Black)type)」、全光線透過率0%、厚み2mm、屈折率1.49)を貼り合わせたサンプル(5cm×5cm)を作製した。
前記サンプルの低屈折率層側の表面に対して垂直方向を0度とした際に、5度、50度、70度の方向からサンプルに光を入射し、入射した光の正反射光に基づいて彩度を測定した。各サンプルについて10箇所の彩度を測定し、平均値を各サンプルの各角度の彩度とした。彩度(C*)は、L*a*b*表色系のa*値及びb*値に基づき、下記式で算出することができる。
C*={(a*)2+(b*)2}1/2
測定装置は、日本分光社(JASCO Corporation)の分光光度計の品番「V-7100」を用いた。前記測定装置は、380nm以上780nm以下までの波長範囲で測定し、その後、人間が目で感じる明度として換算するソフト[前記測定装置に内蔵されているソフト<日本分光社(JASCO Corporation)の品番「JASCOスペクトルマネージャ」>。反射率を算出する条件:C光源及び視野角2度]により、換算を実施するものである。結果を表1に示す。
低屈折率層を有さない光学フィルムは、彩度の測定を行わなかった。
【0198】
1-6.視感反射率Y値(反射率)
1-5で作製したサンプルの低屈折率層側の表面に対して垂直方向を0度とした際に、5度の方向からサンプルに光を入射し、入射した光の正反射光に基づいて反射率(視感反射率Y値)を測定した。
測定装置は、日本分光社(JASCO Corporation)の分光光度計の品番「V-7100」を用いた。前記測定装置は、380nm以上780nm以下までの波長範囲で測定し、その後、人間が目で感じる明度として換算するソフト[前記測定装置に内蔵されているソフト<日本分光社(JASCO Corporation)の品番「JASCOスペクトルマネージャ」>。反射率を算出する条件:C光源及び視野角2度]により、換算を実施するものである。各サンプルについて10箇所の反射率を測定し、平均値を各サンプルの視感反射率Y値とした。結果を表1に示す。
低屈折率層を有さない光学フィルムは、視感反射率Y値の測定を行わなかった。
【0199】
1-7.面内位相差(Re)、厚み方向の位相差(Rth)及び遅相軸の方向
後述の「2」で作製又は準備した実験例及び参考例で用いるプラスチックフィルムから縦50mm×横50mmのサンプルを切り出した。その際、プラスチックフィルムの流れ方向(MD方向)を縦方向、プラスチックフィルムの幅方向(TD方向)を横方向とみなした。前記サンプルの四隅から中央部に向かって10mm進んだ箇所の4箇所、及び前記サンプルの中央部の合計5箇所に関して、面内位相差、厚み方向の位相差及び遅相軸の方向を測定した。測定結果からRe1~Re5の平均等を算出した。結果を表2に示す。
測定装置は、大塚電子社(Otsuka Electronics Co.,Ltd.)製の商品名「RETS-100(測定スポット:直径5mm)」を用いた。遅相軸の方向は、プラスチックフィルムの流れ方向(MD方向)を基準の0度として、0度以上90度以下の範囲で測定した。
【0200】
1-8.耐屈曲性
<TD方向>
後述の「2」で作製又は準備した実験例及び参考例で用いるプラスチックフィルムから、幅方向(TD方向)30mm×流れ方向(MD方向)100mmの短冊状のサンプルを切り出した。耐久試験機(製品名「DLDMLH-FS」、ユアサシステム機器社(YUASA SYSTEM CO., LTD.))に、前記サンプルの短辺側(30mm側)の両端を固定した後、180度折り畳む連続折り畳み試験を10万回行った。サンプルの短辺側の両端は、サンプルの先端から10mmの領域を固定した。折り畳み速度は、1分間に120回とした。折り畳み試験のより詳細な手法を下記に示す。
折り畳み試験後に短冊状のサンプルを水平な台に置き、台からサンプルの端部が浮き上がる角度を測定した。角度が15度以下であれば合格レベルである。サンプルが途中で破断したものは「破断」とした。結果を表2に示す。この評価により、TD方向(≒遅相軸方向)の耐屈曲性を評価できる。
<MD方向>
後述の「2」で作製又は準備した実施例及び比較例で用いる二軸延伸プラスチックフィルムから、流れ方向(MD方向)30mm×幅方向(TD方向)100mmの短冊状のサンプルを切り出し、上記と同様の評価を行った。この評価により、MD方向(≒進相軸方向)の耐屈曲性を評価できる。
【0201】
<折り畳み試験の詳細>
図6(A)に示すように連続折り畳み試験においては、まず、プラスチックフィルム10の辺部10Cと、辺部10Cと対向する辺部10Dとを、平行に配置された固定部60でそれぞれ固定する。固定部60は水平方向にスライド移動可能なっている。
次に、
図6(B)に示すように、固定部60を互いに近接するように移動させることにより、プラスチックフィルム10を折り畳むように変形させる。更に、
図6(C)に示すように、プラスチックフィルム10の固定部60で固定された対向する2つの辺部の間隔が10mmとなる位置まで固定部60を移動させた後、固定部60を逆方向に移動させることにより、プラスチックフィルム10の変形を解消させる。
図6(A)~(C)に示すように固定部60を移動させることで、プラスチックフィルム10を180度折り畳むことができる。また、プラスチックフィルム10の屈曲部10Eが固定部60の下端からはみ出さないように連続折り畳み試験を行い、かつ固定部60が最接近したときの間隔を10mmに制御することにより、光学フィルム10の対向する2つの辺部の間隔を10mmにすることができる。
【0202】
1-9.鉛筆硬度
下記「2」のポリエステルフィルム1~5に関して、鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度の測定方法は、明細書本文の(1)~(6)の手順に従った。あらかじめ片面に易接着が形成された市販品のポリエステルフィルムは、易接着層が形成されていない面の鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度の測定は、遅相軸及び進相軸の両方で実施した。結果を表2に示す。
【0203】
1-10.エロージョン率
エロージョン率の測定装置(パルメソ社(Palmeso Co., Ltd.)のMSE試験装置、品番「MSE-A203」、ノズルの横断面形状は1mm×1mmの正方形、断面プロファイルの測定手段:触針式)を用いて、下記「2」のポリエステルフィルム1~5のエロージョン率を測定し、E0-20を算出した。エロージョン率の測定領域は、1mm×1mmである。
各サンプルのエロージョン率の測定は、標準アクリル板を用いた下記の校正をした後に行った。また、試験液は校正の前に調製し、校正の前に予備的に分散運転を行った。また、前記標準アクリル板は、明細書本文のAcE(測定条件Aで測定してなるアクリル板のエロージョン率の平均)が1.786μm/g以上1.974μm/g以下の範囲内のものであった。
【0204】
(0-1)試験液の調製
ビーカー内で、純水と、分散剤(和光純薬工業社の商品名「デモールN(Demol N)」 )と、平均粒子径(メディアン径)が3.94μmの球形シリカ(パルメソ社(Palmeso Co., Ltd.)が指定する型番「MSE-BS-5-3」、粒度分布の半値全幅:4.2μm)とを、質量比968:2:30で混合してなる試験液を調製し、ガラス棒で混合した。容器(ポット)内に調整した試験液、撹拌子を入れた後、ポットに蓋をしてクランプを取り付けた。次いで、測定装置にポットを収納した。本実施例では、パルメソ社(Palmeso Co., Ltd.)が指定する型番「MSE-BS-5-3」として、ポッターズ・バロティーニ社(Potters-Ballotini Co., Ltd.)の品番「BS5-3」を用いた。
(0-2)分散運転
測定装置に試験液入りのポットを収納した後、試料取付台にダミーサンプルをセットした。次いで、測定装置本体の操作パネルのボタン「エロージョン力設定」、「行う」を順次押した。次いで、試験液及び圧縮空気の流量、圧縮空気の圧力、ノズル内の試験液の圧力として、所定の値を入力し、試験液をダミーサンプルに投射した。投射を停止してから、同操作パネルのボタン「戻る」、「完了」、「確認」を順次押した。
【0205】
(1)校正
測定装置の試料取付台に、両面テープ(日東電工アメリカ社の「カプトン 両面テープ(Kapton double-stick tape)」、品番:P-223 1-6299-01)を介して、校正サンプルである厚み4mmのアクリル板を固定した。アクリル板はPMMA板である。
次いで、アクリル板を固定した試料取付台を測定装置にセットした。
次いで、マイクロゲージのロックを外し、高さゲージで試料取付台の高さ調整をした。測定装置の噴射孔とアクリル板との距離は4mmに調整した。
次いで、測定装置本体の操作パネルのボタン「処理条件入力画面へ」を押した後、「Step数:1、指定投射量g×1回」に設定した。噴射量は4gとした。
次いで、同操作パネルのボタン「設定完了」、「運転開始」、「はい」を順次押した。試験液及び圧縮空気の流量、圧縮空気の圧力、ノズル内の試験液の圧力は、「(0-2)分散運転」で入力した値を維持した。
次いで、データ処理PCの操作画面の「オンライン」をクリックし、オンラインを解除し、オフラインに変更した。
次いで、同操作画面の「下降」をクリックし、断面プロファイル取得部の触針式段差計の触針を下降させた。
次いで、マイクロゲージのロックが解除されていることを確認し、マイクロゲージを上昇へ回した。この際、モニターの赤矢印が中央にくるように調整した。前記調整により、触針式段差計の触針と、校正サンプルの表面とが接触し、高さ方向であるz軸の0点を調整することができる。
次いで、マイクロゲージのロックを解除(オフ)からオンに切り替えた。
次いで、「上昇」をクリックし、断面プロファイル取得部の触針式段差計の触針を上昇させた。
次いで、データ処理PCの操作画面の「オフライン」をクリックし、オフラインを解除し、オンラインに変更した。
次いで、測定装置本体のカバーを閉じ、測定装置本体の操作パネルのボタン「確認」を押し、試験液を4g噴射した。
試験液の噴射を停止した後、「行う」をクリックし、エロージョン率を算出した。エロージョン率が、1.88(μm/g)を基準として±5%の範囲であれば校正を終了した。エロージョン率が前記範囲から外れた場合、試験液の流量、圧縮空気の流量、圧縮空気の圧力、及びノズル内の試験液の圧力を調整し、エロージョン率が前記範囲になるまで校正を繰り返した。
【0206】
(2)各サンプルのエロージョン率の測定
(2-1)サンプルの取り付け
サンプル(下記「2」のポリエステルフィルム1~5)をステンレス板に貼り合わせた積層体を作製し、前記積層体を両面テープ(日東電工アメリカ社の「カプトン 両面テープ(Kapton double-stick tape)」、品番:P-223 1-6299-01)を介して試料取付台に固定した。前記サンプルは、1cm×1cmの大きさとした。
次いで、試料取付台を測定装置にセットした。ついて、マイクロゲージのロックを解除、高さゲージで試料取付台を高さ調整した。測定装置の噴射孔とプラスチックフィルムとの距離は4mmに調整した。
次いで、測定装置本体の操作パネルのボタン「処理条件入力画面へ」を押した後、ステップ数を入力し、ステップごとに試験液の噴射量(g/回)を入力した。ステップごとの噴射量は0.5g以上3.0g以下の範囲とした。試験液及び圧縮空気の流量、圧縮空気の圧力、ノズル内の試験液の圧力は、「(1)校正」で合格した条件を維持した。
次いで、同操作パネルのボタン「設定完了」、「運転開始」、「はい」を順次押した。
次いで、データ処理PCの操作画面の「オンライン」をクリックし、オンラインを解除し、オフラインに変更した。
次いで、同操作画面の「下降」をクリックし、断面プロファイル取得部の触針式段差計の触針を下降させた。
次いで、マイクロゲージのロックが解除されていることを確認し、マイクロゲージを上昇へ回した。この際、モニターの赤矢印が中央にくるように調整した。前記調整により、触針式段差計の触針と、校正サンプルの表面とが接触し、高さ方向であるz軸の0点を調整することができる。
次いで、マイクロゲージのロックを解除(オフ)からオンに切り替えた。
次いで、「上昇」をクリックし、断面プロファイル取得部の触針式段差計の触針を上昇させた。
次いで、データ処理PCの操作画面の「オフライン」をクリックし、オフラインを解除し、オンラインに変更した。
【0207】
(2-2)測定開始
測定装置本体のカバーを閉じ、測定装置本体の操作パネルのボタン「確認」を押し、試験液の噴射と、断面プロファイルの測定とを1サイクルとする測定を、断面プロファイルの深さが20μmを超えるまで実施した。具体的には、断面プロファイルの深さが25μm以上30μm以下の深さまで実行した。
測定後、付属ソフトの「MseCalc」を起動し、「解析方法」をクリックした。次いで、「平均値解析」をクリックした。次いで、平均値解析の画面の「追加」を2回クリックし、解析名の欄に、「A-1」及び「A-2」を表示させた。「A-1」の「基準」の欄をダブルクリックし、基準の欄に「〇」を表示させた。
次いで、平均値解析の画面の「A-1」をクリックしてアクティブにし、X軸位置バーの位置を操作する。前記位置バーの位置は、断面プロファイルの画面内のプラスチックフィルムが摩耗されていない箇所に決定する。
次いで、平均値解析の画面のA-2をクリックしてアクティブにし、X軸位置バーの位置を操作する。前記位置バーの位置は、断面プロファイルの画面内のプラスチックフィルムが摩耗されている最深部に決定する。
次いで、各ステップの断面プロファイル及びエロージョン率のデータをcsv出力し、エロージョン率E0-20を算出した。具体的には、csv出力されたデータのうち、深さが0μm以上20μm以下である「エロージョン率(補正)」を平均し、エロージョン率E0-20を算出した。結果を表2に示す。
【0208】
2.プラスチックフィルムの作製及び準備
[ポリエステルフィルム1]
1kgのPET(融点258℃、吸収中心波長:320nm)と、0.1kgの紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)とを、混練機で280℃にて溶融混合することにより、紫外線吸収剤を含有したペレットを作製した。そのペレットと、融点258℃のPETを単軸押出機に投入し280℃で溶融混練した後、Tダイから押出することにより、25℃に表面温度を制御したキャストドラム上にキャストしてキャスティングフィルムを得た。キャスティングフィルム中の紫外線吸収剤の量はPET100質量部に対して1質量部であった。
得られたキャスティングフィルムを、95℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間400mmの250mmの地点でのフィルム温度が103℃となるように、フィルムの表裏両側をラジエーションヒーターにより加熱しながら、フィルムを流れ方向に3.3倍延伸した後、一旦冷却し、一軸延伸フィルムを得た。前記延伸区間は、始点が延伸ロールA、終点が延伸ロールBであり、延伸ロールA及びBは、それぞれ2本のニップロールを有している。ラジエーションヒーターでの加熱時に、ラジエーションヒーターのフィルムの反対側から、92℃、4m/sの風をフィルムに向けて送風することで、フィルムの表裏に乱流を生じさせることにより、フィルムの温度均一性が乱れるようにした。
続いて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施すことにより、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとした。次いで、フィルム両面のコロナ放電処理面に、「ガラス転移温度18℃のポリエステル樹脂、ガラス転移温度82℃のポリエステル樹脂、及び平均粒径100nmのシリカ粒子を含む易滑層塗布液」をインラインコーティングし、易滑層を形成した。
次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、95℃の熱風で予熱後、1段目105℃、2段目140℃の温度でフィルム幅方向に4.5倍延伸した。ここで、幅方向の延伸区間を2分割した場合、幅方向の延伸区間中間点におけるフィルムの延伸量は、幅方向の延伸区間終了時の延伸量の80%となるように2段階で延伸した。前述した「延伸量」は、計測地点でのフィルム幅と、延伸前フィルム幅との差分を意味する。幅方向に延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で熱風にて熱処理を行った。熱風の温度は、180℃から245℃まで段階的に上げた。続いて、同温度条件で幅方向に1%の弛緩処理を行い、さらに100℃まで急冷した後に、幅方向に1%の弛緩処理を施した。その後、巻き取り、厚み40μmの二軸延伸ポリエステルフィルム1を得た。
ポリエステルフィルム1は、実験例3のプラスチックフィルムとして用いた。
【0209】
[ポリエステルフィルム2]
幅方向の延伸倍率を4.5倍から5.1倍に変更した以外は、二軸延伸ポリエステルフィルム1と同様にして、厚み40μmの二軸延伸ポリエステルフィルム2を得た。ポリエステルフィルム2は、実験例2のプラスチックフィルムとして用いた。
【0210】
[ポリエステルフィルム3]
ポリエステルフィルム3として、市販の二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社(TOYOBO CO., LTD.)、商品名:コスモシャインA4300(Cosmoshine A4300)、厚み:38μm)を準備した。ポリエステルフィルム3は、実験例1のプラスチックフィルムとして用いた。
【0211】
[ポリエステルフィルム4]
ポリエステルフィルム4として、市販の二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社(TOYOBO CO., LTD.)、商品名:コスモシャインA4100(Cosmoshine A4100)、厚み:50μm)を準備した。ポリエステルフィルム4は、参考例1のプラスチックフィルムとして用いた。
【0212】
[ポリエステルフィルム5]
ポリエステルフィルム5として、市販の一軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社(TOYOBO CO., LTD.)、商品名「コスモシャインTA044(Cosmoshine TA044)」、厚み:80μm)を準備した。ポリエステルフィルム5は、参考例2のプラスチックフィルムとして用いた。
【0213】
3.化合物の合成
下記の手法により、「4.塗布液の調製」で用いる化合物αを合成した。
撹拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を装備した反応容器に空気ガスを導入した。空気ガス導入時の反応容器の圧力は、1.0気圧±0.1気圧に制御した。次いで、反応容器内に、ペンタエリスリトールトリアクリレート57質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート43質量部、ジブチル錫ジラウレート0.02質量部、p-メトキシフェノール0.02質量部及び酢酸ブチル30質量部仕込み、窒素流下で60℃まで撹拌しながら昇温した。窒素流下時の反応容器の圧力は、1.2気圧±0.1気圧に制御した。(窒素流下時の圧力を常圧よりも高くすることにより、反応容器内の酸素濃度をより効率よく低減できる。)次いで、滴下容器にヘキサメチレンジイソシアネート30質量部を仕込み、1時間かけて反応容器に均一滴下した。滴下後に、反応容器温度を75℃まで昇温し、75±3℃で6時間保温した。その後メチルエチルケトンを150質量部添加し、透明な樹脂溶液を得た。最後にエバポレーターを用いて溶剤を除去し、化合物αを得た。化合物αは電離放射線硬化性化合物である。化合物αの数平均分子量は約4500であった。
【0214】
4.塗布液の調製
「5.光学フィルムの作製」で用いる塗布液を調製した。
<ハードコート層形成用塗布液A>
・電離放射線硬化性化合物1:0.6質量部
(「3」で合成した化合物α)
・電離放射線硬化性化合物2:0.2質量部
(株式会社ダイセル、商品名「EBECRYL230」、固形分100%)
・電離放射線硬化性化合物3:0.2質量部
(共栄社化学株式会社、商品名「ライトアクリレートIAA」、固形分100%)
・レベリング剤:0.01質量部
(大日精化工業社、商品名「10-28(TL)」、固形分10質量%)
・光重合開始剤:0.1質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名「Omnirad 184」)
・溶剤
(メチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンとの5:5の混合溶剤。溶剤は、塗布液の固形分が35質量%となる量で使用。)
【0215】
<ハードコート層形成用塗布液B>
・電離放射線硬化性化合物1:1質量部
(「3」で合成した化合物α)
・アクリル樹脂粒子:0.1質量部
(平均粒子径:2μm、屈折率:1.535)
・レベリング剤:0.01質量部
(大日精化工業社、商品名「10-28(TL)」、固形分10質量%)
・光重合開始剤:0.1質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名「Omnirad 184」)
・溶剤
(メチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンとの5:5の混合溶剤。溶剤は、塗布液の固形分が35質量%となる量で使用。)
【0216】
<ハードコート層形成用塗布液C>
・電離放射線硬化性化合物1:0.625質量部
(「3」で合成した化合物α)
・電離放射線硬化性化合物4:0.375質量部
(荒川化学工業社、商品名「オプスターZ7415」、固形分100%)
・レベリング剤:0.01質量部
(大日精化工業社、商品名「10-28(TL)」、固形分10質量%)
・光重合開始剤:0.1質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名「Omnirad 184」)
・溶剤
(メチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンとの5:5の混合溶剤。溶剤は、塗布液の固形分が35質量%となる量で使用。)
【0217】
<低屈折率層形成用塗布液i>
・紫外線硬化型アクリレート含有組成物:1質量部
(日本化薬株式会社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)、商品名「KAYARAD PET-30」、固形分100%)
・光重合開始剤:0.1質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名「Omnirad 127」)
・中空シリカ粒子:1.3質量部
(平均一次粒子径60nm)
・中実シリカ粒子:0.7質量部
(平均一次粒子径15nm)
・レベリング剤:0.1質量部
(信越化学工業社、商品名「X-22-164E」)
・溶剤
(メチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンとの5:5の混合溶剤。溶剤は、塗布液の固形分が2質量%となる量で使用。)
【0218】
<低屈折率層形成用塗布液ii>
・紫外線硬化型アクリレート含有組成物:1質量部
(日本化薬株式会社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)、商品名「KAYARAD PET-30」、固形分100%)
・光重合開始剤:0.1質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名「Omnirad 127」)
・中空シリカ粒子:1.55質量部
(平均一次粒子径60nm)
・中実シリカ粒子:0.45質量部
(平均一次粒子径15nm)
・レベリング剤:0.1質量部
(信越化学工業社、商品名「X-22-164E」)
・溶剤
(メチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンとの5:5の混合溶剤。溶剤は、塗布液の固形分が2質量%となる量で使用。)
【0219】
<低屈折率層形成用塗布液iii>
・紫外線硬化型アクリレート含有組成物:1質量部
(日本化薬株式会社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)、商品名「KAYARAD PET-30」、固形分100%)
・光重合開始剤:0.1質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名「Omnirad 127」)
・中空シリカ粒子:2質量部
(平均一次粒子径60nm)
・レベリング剤:0.1質量部
(信越化学工業社、商品名「X-22-164E」)
・溶剤
(メチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンとの5:5の混合溶剤。溶剤は、塗布液の固形分が2質量%となる量で使用。)
【0220】
5.光学フィルムの作製
[実験例1-1]
実験例1-1の光学フィルムとして、「2」で準備したポリエステルフィルム3を準備した。実験例1-1の光学フィルムは、ポリエステルフィルム3上にハードコート層及び低屈折率層を有していない。
【0221】
[実験例1-2]
「2」で準備したポリエステルフィルム3上に、ハードコート層形成用塗布液Aを塗布し、その後70℃×1分で乾燥し溶剤を揮発させた。続いて紫外線照射(100mJ/cm2)し、ハードコート層(ドライ厚み10μm)を形成した。
ハードコート層上に低屈折率層形成用塗布液iを塗布し、その後60℃×1分で乾燥し溶剤を揮発させた。続いて紫外線照射(200mJ/cm2)し、低屈折率層(ドライ厚み100nm)を形成し、実験例1-2の光学フィルムを得た。
【0222】
[実験例1-3、1-4]
ハードコート層形成用塗布液及び低屈折率層形成用塗布液として表1に記載のものを用いた以外は、実験例1-2と同様にして、実験例1-3、1-4の光学フィルムを得た。
【0223】
[実験例1-5]
ハードコート層を形成せず、ポリエステルフィルム上に直接低屈折率層を形成するように変更し、さらに、低屈折率層形成用塗布液として表1に記載のものを用いた以外は、実験例1-2と同様にして、実験例1-5の光学フィルムを得た。
【0224】
[実験例2-1]
実験例2-1の光学フィルムとして、「2」で作製したポリエステルフィルム2を準備した。実験例2-1の光学フィルムは、ポリエステルフィルム2上にハードコート層及び低屈折率層を有していない。
【0225】
[実験例2-2]
ポリエステルフィルム3をポリエステルフィルム2に変更した以外は、実験例1-2と同様にして、実験例2-2の光学フィルムを得た。
【0226】
[実験例2-3、2-4]
ハードコート層形成用塗布液及び低屈折率層形成用塗布液として表1に記載のものを用いた以外は、実験例2-2と同様にして、実験例2-3、2-4の光学フィルムを得た。
【0227】
[実験例2-5、2-6]
ハードコート層を形成せず、ポリエステルフィルム上に直接低屈折率層を形成するように変更し、さらに、低屈折率層形成用塗布液として表1に記載のものを用いた以外は、実験例2-2と同様にして、実験例2-5、2-6の光学フィルムを得た。
【0228】
[実験例3-1、3-2]
ポリエステルフィルム3をポリエステルフィルム1に変更し、さらに、ハードコート層形成用塗布液及び低屈折率層形成用塗布液として表1に記載のものを用いた以外は、実験例1-2と同様にして、実験例3-1、3-2の光学フィルムを得た。
【0229】
[実験例3-3]
ポリエステルフィルム3をポリエステルフィルム1に変更し、ハードコート層を形成せず、ポリエステルフィルム上に直接低屈折率層を形成するように変更し、さらに、低屈折率層形成用塗布液として表1に記載のものを用いた以外は、実験例1-2と同様にして、実験例3-3の光学フィルムを得た。
【0230】
【0231】
【0232】
表1の結果から、ΣTが0.04超0.20未満の光学フィルムは、裸眼で視認した際の虹ムラを解消できるとともに、斜め視認時の色味の均一性を良好にできることが確認できる。表1の実験例のうち、実施例に相当するものは、実験例1-2、1-3、1-4、2-2、2-3、2-4、2-6、3-1、3-2である。
また、表1及び表2の結果から、「プラスチックフィルムの面内位相差が小さいもの」及び「プラスチックフィルムの遅相軸の方向の最大値と最小値との差が大きいもの」が、ΣTの値を適正な値にしやいすことが確認できる。
また、表2の結果から、ポリエステルフィルム1及び2は、折り曲げの方向に関わらず、屈曲試験後に曲げ癖が残ったり、破断したりすることを抑制できることが確認できる。ポリエステルフィルム1及び2は、「プラスチックフィルムの遅相軸の方向の最大値と最小値との差が大きいもの」である。
また、ポリエステルフィルム1及び2は、屈曲試験後にマイクロクラックが確認できないものであった。マイクロクラックは、下記のように観察することができる。
【0233】
マイクロクラックは、デジタルマイクロスコープで観察することができる。デジタルマイクロスコープとしては、例えば、キーエンス株式会社製の商品名「VHX-5000」が挙げられる。
マイクロクラックは、デジタルマイクロスコープの照明として、リング照明を選択するとともに、暗視野および反射光で観察するものとする。具体的には、まず、屈曲試験後のサンプルをゆっくり広げた後、マイクロスコープのステージ上にテープでサンプルを固定する。このとき、折り癖が強い場合には、観察する領域がなるべく平らになるようにする。前述した作業の際に、評価対象の領域となるサンプルの屈曲部には手で触れないようにして、かつ屈曲部に力が加わらないように注意する。そして、屈曲試験時に内側となる部分および外側となる部分の両方を評価するものとする。
マイクロクラックの観察は、白色照明の明室(照度1000ルクス~2000ルクス)で実施する。
【符号の説明】
【0234】
10:プラスチックフィルム
20:ハードコート層
30:低屈折率層
100:光学フィルム
200:面光源
300:偏光子
400:接着剤層
500:第1の透明保護板
600:第2の透明保護板
700:偏光板
800:表示素子
1000:画像表示装置
A1:光源
A2:検出器
S:遅相軸
F:進相軸
V:光L1の振動方向
11:容器
12:受容器
21:試験液用配管
22:圧縮空気用配管
23:返送配管
24:リターンポンプ
31、32:流量計
41、42:圧力計
50:噴射部
51:ノズル
52:筐体
60:断面プロファイル取得部
70:プラスチックフィルム
81:試料取付台
82:支持体
90:エロージョン率測定装置
A1:水
A2:球形シリカ
A3:空気
A4:摩耗されたプラスチックフィルム