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特許7173447ポリマー組成物、送達デバイス、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ポリマー組成物、送達デバイス、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20221109BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20221109BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61M5/315 500
A61M5/28
A61M5/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020517467
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 US2018058500
(87)【国際公開番号】W WO2019089787
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】62/581,453
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(73)【特許権者】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】バリー, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】サンダーズ, ポール
(72)【発明者】
【氏名】シン, ラフル
(72)【発明者】
【氏名】パーマー, クリシュナクマルシン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】コー, ベン
(72)【発明者】
【氏名】クランク, ステファニー
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0375202(US,A1)
【文献】特表2001-521417(JP,A)
【文献】特表2003-501215(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0048670(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/28
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャ及び胴部を含み、前記プランジャが、前記胴部の内面に沿って係合及び並進するように構成される、シリンジと、
前記シリンジの前記胴部内に配置された送達すべき粉末状物質と、
送達デバイスと、を備え、
前記送達デバイスが、
リテーナリングと、
キャップと、
前記リテーナリングと前記キャップとの間に配置されたばねと、を含み、
前記リテーナリング及び前記キャップが、前記ばねの両端を捕捉するように構築され、したがって前記ばねが、前記リテーナリング及び前記キャップによって保持され、前記キャップ、前記ばね、及び前記リテーナリングが、一体アセンブリを形成し、前記ばねが、圧縮ばねであり、したがって前記ばねが、前記キャップを前記リテーナリングから離れる方へ付勢し、
前記キャップが、
前記シリンジの前記プランジャ内へ延びて係合するように構成されたポストと、
前記キャップの内面から延びるように構成された複数のラッチアームとを含み、前記複数のラッチアームのそれぞれの端部が、傾斜カム面及び掛止ショルダを含み、前記掛止ショルダが、前記キャップの前記内面に対向するラッチ面を画定し、前記キャップが、前記キャップの前記内面から突出する隆起ステップ面をさらに含み、前記ラッチ面と前記隆起ステップ面との間で前記プランジャのフランジ付き端部を協働してロックし、
前記ポストが、前記ばねの軸線に沿って前記リテーナリングの方へ延び、前記ばね内に同心円状に配置され、前記プランジャの近位端が、前記ポストを受け取って係合するように設置及び配置されたレセプタクルを画定し、
前記リテーナリング及び前記キャップが、それぞれ、前記ばねの前記両端のうちの一方を捕捉するように設置及び配置された複数の内方へ延びるクリップを含み、
前記送達デバイスが、
前記キャップが前記リテーナリングの方へ動かされ、前記ばねが圧縮され、以て前記プランジャを前記シリンジの遠位端の方へ並進させる圧縮位置と、
前記キャップが前記リテーナリングから離れる方へ動かされ、前記ばねが弛緩され、以て前記プランジャを前記シリンジの近位端の方へ並進させる弛緩位置と
の間で可動である、送達システム。
【請求項2】
前記シリンジ胴部が、前記胴部の遠位端にオリフィス、吐出し口、又はアパーチャを画定し、前記シリンジが、前記オリフィスから材料を放出するように構成される、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
放出される前記材料が、血液に露出されるとヒドロゲルを形成する生物学的に適合しているポリマーである、請求項2に記載の送達システム。
【請求項4】
架橋牛ゼラチン及び非架橋牛ゼラチンの乾燥微粒子を含む事前充填シリンジと、
送達デバイスとを備え、
前記送達デバイスが、
リテーナリングと、
キャップと、
前記リテーナリングと前記キャップとの間に配置されたばねとを含み、
前記リテーナリング及び前記キャップが、前記ばねの両端を捕捉するように構築され、したがって前記ばねが、前記リテーナリング及び前記キャップによって保持され、前記キャップ、前記ばね、及び前記リテーナリングが、一体アセンブリを形成し、前記ばねが、圧縮ばねであり、したがって前記ばねが、前記キャップを前記リテーナリングから離れる方へ付勢し、
前記キャップが、
前記シリンジのプランジャ内へ延びて係合するように構成されたポストと、
前記キャップの内面から延びるように構成された複数のラッチアームとを含み、前記複数のラッチアームのそれぞれの端部が、傾斜カム面及び掛止ショルダを含み、前記掛止ショルダが、前記キャップの前記内面に対向するラッチ面を画定し、前記キャップが、前記キャップの前記内面から突出する隆起ステップ面をさらに含み、前記ラッチ面と前記隆起ステップ面との間で前記プランジャのフランジ付き端部を協働してロックし、
前記ポストが、前記ばねの軸線に沿って前記リテーナリングの方へ延び、前記ばね内に同心円状に配置され、前記プランジャの近位端が、前記ポストを受け取って係合するように設置及び配置されたレセプタクルを画定し、
前記リテーナリング及び前記キャップが、それぞれ、前記ばねの前記両端のうちの一方を捕捉するように設置及び配置された複数の内方へ延びるクリップを含み、
前記送達デバイスが、前記事前充填シリンジに結合されるように構成され、したがって、
前記キャップを押下したことに応答して、
前記送達デバイスの前記ばねが圧縮し、
前記プランジャが、前記事前充填シリンジの遠位端の方へ並進し、
前記事前充填シリンジの前記遠位端から、架橋牛ゼラチン及び非架橋牛ゼラチンの乾燥微粒子が放出され、
前記キャップを解放したことに応答して、
前記送達デバイスの前記ばねが伸張し、
前記プランジャが前記事前充填シリンジの近位端の方へ並進する、
キット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(優先権の主張)
[0001]本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれており依拠される、2017年11月3日出願の「Polymeric Compositions,Delivery Devices,and Methods」という名称の米国仮特許出願第62/581,453号に対する優先権を主張する。
【0002】
(背景)
[0002]多くの医療用途において、過度の出血を防止することが重要である。過度の出血を防止し、心臓血管手術を含む手術中の輸血率及び軽い合併症を低減させるために、多数の処置及び材料が提案されている。そのような処置は、金属、ポリマー、及び天然材料などのバリア材を出血部位へ導入することを含む。しかしこれらの生成物は、下の組織にうまく適合しないことがある。実施された他の材料には、ナイロン、セロハン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シロキサン、エラストマ、及びポリ乳酸コポリマー膜が含まれる。しかし残念ながら、これらの材料の多くは生分解性ではなく、したがって体内に残り、予測できない、場合により望ましくない結果をもたらす可能性がある。
【0003】
[0003]加えて、多くの場合、移植片を出血部位へ適切に配置して不動化することは困難である。非固形の癒着防止材の使用はまた、そのような材料が多くの場合、治療されている領域に入って適合するのに十分な流動性を有しながら、同時に組織が治癒するまで出血部位に留まるのに十分な粘性を有するべきであるため、問題となる可能性がある。これらの目的はまた、生体適合性及び吸収性の要件と均衡させなければならない。
【0004】
[0004]過度の出血を防止するために現在使用されている特定の組成物は、水性キャリアを実施する。たとえば、組成物は、生体適合性のある粉末の形態で送達することができ、解放率、組成物持続性、薬物運搬能力、生成物送達特性(注入可能性など)などを含む解放特性の最適化を可能にすることができる。しかし、水性キャリア又はヒドロゲル組成物の最初の調製は、追加のステップを必要とし、これは緊急医療の状況などの特定の環境では望ましくない可能性がある。さらに、水性キャリアは、トロンビンなどの活性剤を必要とする可能性があり、これは望ましくない追加の調製及び送達ステップを必要とする。
【0005】
[0005]体又は体内の出血部位へ出血防止組成物が送達され、それには高度のユーザ制御が必要である。これらの組成物は、治療効果部位、たとえば出血部位を標的として、制御された形で送達される。組成物は物理的特性が変わることもある。たとえば、粘性の組成物は、固体の組成物とは異なる送達デバイスを必要とする可能性がある。したがって、送達される組成物のタイプにより、その送達デバイス及び送達モードが決まる。
【0006】
[0006]上記の理由のため、手術及び他の外傷後の過度の出血を防止するための改善されたポリマー組成物及び関連方法を提供することが望ましい。同様に、ポリマー組成物の精密な投与のための送達デバイス、送達システム、及び関連方法を提供することが望ましい。それに応じて、改善されたポリマー組成物、送達デバイス、及び方法が必要とされている。
【0007】
(概要)
[0007]治療を改善するために、特に過度の出血を防止するために、ポリマー組成物、送達デバイス、送達システム、及び送達方法が本明細書に記載される。本開示は、材料の粘性、水性キャリア要件、活性剤要件など、現在の組成物の望ましくない特徴をなくすポリマー組成物を実施することを求めている。本開示は、一実施形態において粉末状材料を創部に局所的に投与することによって出血を抑制する方法について記載する。粉末状材料は、水性キャリア、又はトロンビンなどの活性剤を必要としない。本開示はまた、送達箇所及び送達率の両方に関して高度のユーザ制御によってポリマー組成物を患者へ送達するデバイス及び方法について記載している。本開示は、粉末状材料を創部に局所的に送達するデバイス、システム、及び方法をさらに提供する。
【0008】
[0008]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第1の態様では、出血を抑制する方法が、粉末状又は乾燥材料を創部に局所的に投与することを含む。材料は、生物学的に適合しているポリマー(架橋若しくは非架橋とすることができ、又は架橋成分と非架橋成分の両方を有することができる)を含み、血液に露出されるとヒドロゲルを形成し、活性剤を含まない。
【0009】
[0009]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第2の態様では、ヒドロゲルは、乾燥した架橋ゼラチンポリマー微粒子を含む。別法として、ヒドロゲルは、乾燥した非架橋ゼラチンポリマー微粒子を含むことができる。
【0010】
[0010]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第3の態様では、生物学的に適合しているポリマーは、傷の治癒のための時間に対応する長い期間にわたって体内に留まり、傷が治癒すると完全に分解すると予期することができる。たとえば、分解時間は、1か月以下、若しくは15~30日、若しくは6週~8週とすることができ、又は2か月以上とすることができる。
【0011】
[0011]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第4の態様では、生物学的に適合しているポリマーは、ポリマーが0.01mm~1mm、又はより具体的には0.01mm~0.1mmの範囲内のサブユニット又は微粒子サイズを有するヒドロゲルを形成するようなサイズ及び寸法である。たとえば、生物学的に適合しているポリマーは、ポリマーが溶液中に溶解するようにより小さい切片から作られたマットを形成することができる。サブユニット又は微粒子は、不規則な形状とすることができる。
【0012】
[0012]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第5の態様では、生物学的に適合しているポリマーは、30重量%~1000重量%の範囲内の平衡膨潤を有する。
【0013】
[0013]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第6の態様では、生物学的に適合しているポリマーは、材料の50重量パーセント~100重量パーセント、又は材料の80重量%~90重量%で存在する。
【0014】
[0014]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第7の態様では、材料は、材料の1重量パーセント~20重量パーセント、又は材料の5重量%~15重量%で存在する添加物をさらに含む。たとえば、添加物に応じて、100~1000ミリグラム、好ましくは500~1050ミリグラムの添加物を使用することができる。添加物は、ポリビニルピロリドン、デキストラン、ポリエチレングリコール、又は類似の薬剤とすることができる。これらの添加物は、潅注若しくは他の類似の手段によって最終生成物から除去することができ、又はいかなる添加物もなしで、生物学的に適合している生成物を生成することができる。
【0015】
[0015]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第8の態様では、添加物は、ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリビニルピロリドン、又は他の高重量ポリマー、ソルビトール、及びグリセロール、並びにこれらの組合せ、好ましくはポリエチレングリコール、デキストラン、及び/又はポリビニルピロリドンからなる群から選択される。
【0016】
[0016]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第9の態様では、生物学的に適合しているポリマーは、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、ヘモグロビン、フィブリノゲン、フィブロイン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチン、ラミニン、カゼイン、及びフィブロネクチン領域又はコラーゲン断片などのこれらの部分、並びに上記のいずれか2つ以上の混合物からなる群から選択された架橋タンパク、好ましくはゼラチンである。生物学的に適合しているポリマーは、完全架橋、部分架橋、又は非架橋とすることができる。
【0017】
[0017]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第10の態様では、生物学的に適合しているポリマーは、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、及び/又は他の細胞外マトリックスタンパクを含むグリコサミノグリカン、デンプン、セルロース、ヘミセルロース、キシラン、アガロース、アルギン酸、並びにキトサンからなる群から選択された架橋炭水化物又は炭水化物誘導体である。
【0018】
[0018]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第11の態様では、生物学的に適合しているポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールポリマー、ポリラクチド-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、及びこれらのコポリマーからなる群から選択された架橋の非生物ヒドロゲル形成ポリマー又はコポリマーである。
【0019】
[0019]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第12の態様では、材料は、非架橋の生物学的に適合しているポリマーをさらに含み、このポリマーは、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、エラスチン、及びケラチンからなる群から選択されたタンパク、好ましくはゼラチンを含む。
【0020】
[0020]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第13の態様では、材料は、非架橋の生物学的に適合しているポリマーをさらに含み、このポリマーは、グリコサミノグリカン、アルギン酸、デンプン、セルロース、及びこれらの誘導体からなる群から選択された炭水化物又は炭水化物誘導体を含む。
【0021】
[0021]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第14の態様では、材料は、ゼラチン顆粒の形態であり、血液に接触すると直径が約30%~約80%膨潤する。
【0022】
[0022]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第15の態様では、材料に存在しない活性剤は、抗生物質、抗がん剤、静菌剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、麻酔剤、抗炎症剤、ホルモン、抗血管新生剤、抗体、酵素、酵素抑制剤、及び神経伝達物質からなる群から選択される。
【0023】
[0023]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第16の態様では、材料に存在しない活性剤は、追加の止血物質である。
【0024】
[0024]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第17の態様では、材料に存在しない活性剤は、凝固因子である。
【0025】
[0025]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第18の態様では、材料に存在しない活性剤は、トロンビンである。
【0026】
[0026]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第19の態様では、送達デバイスは、リテーナリングと、キャップと、リテーナリングとキャップとの間に配置されたばねとを含み、リテーナリング及びキャップは、ばねの両端を捕捉するように構築され、したがってばねは、リテーナリング及びキャップによって保持され、キャップ、ばね、及びリテーナリングは、一体アセンブリを形成する。
【0027】
[0027]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第20の態様では、キャップは、シリンジのプランジャにロック係合するように位置決めされた複数の依存係合構造を含む。
【0028】
[0028]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第21の態様では、複数の依存係合構造は、シリンジのプランジャ内へ延びて係合するように構成されたポストを含み、ポストは、キャップと一体形成される。
【0029】
[0029]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第22の態様では、ポストは、ばねの軸線に沿ってリテーナリングの方へ延び、ばね内に同心円状(concentrically)に配置される。
【0030】
[0030]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第23の態様では、複数の依存係合構造は、複数のラッチアームを含み、複数のラッチアームは、キャップと一体形成され、シリンジのプランジャにロック係合するように適合される。
【0031】
[0031]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第24の態様では、複数のラッチアームは、キャップの内面から延び、複数のラッチアームのそれぞれの端部は、傾斜カム面及び掛止ショルダを含み、掛止ショルダは、キャップの内面に対向するラッチ面を画定し、キャップは、キャップの内面から突出する隆起ステップ面をさらに含み、ラッチ面と隆起ステップ面との間でプランジャのフランジ付き端部に協働してロックする。
【0032】
[0032]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第25の態様では、キャップは、ばねの両端のうちの一方を捕捉するように設置及び配置された複数の内方へ延びるクリップを含む。
【0033】
[0033]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第26の態様では、リテーナリングは、ばねの両端のうちの一方を捕捉するように設置及び配置された複数の内方へ延びるクリップを含む。
【0034】
[0034]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第27の態様では、ばねは圧縮ばねであり、したがってばねは、キャップをリテーナリングから離れる方へ付勢する。
【0035】
[0035]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第28の態様では、ばねは、1~10重量ポンドの範囲内のばね定数を有する。
【0036】
[0036]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第29の態様では、送達システムが、シリンジと、送達すべき粉末状物質と、送達デバイスとを含む。シリンジは、プランジャ及び胴部を含み、プランジャは、胴部の内面に沿って係合及び並進するように構成される。粉末状物質は、シリンジの胴部内に配置される。送達デバイスは、リテーナリングと、キャップと、リテーナリングとキャップとの間に配置されたばねとを含み、リテーナリング及びキャップは、ばねの両端を捕捉するように構築され、したがってばねは、リテーナリング及びキャップによって保持される。キャップはポストを含み、ポストは、シリンジのプランジャ内へ延びて係合するように構成される。キャップは、キャップの内面から延びるように構成された複数のラッチアームを含み、複数のラッチアームのそれぞれの端部は、傾斜カム面及び掛止ショルダを含み、掛止ショルダは、キャップの内面に対向するラッチ面を画定し、キャップは、キャップの内面から突出する隆起ステップ面をさらに含み、ラッチ面と隆起ステップ面との間でプランジャのフランジ付き端部を協働してロックする。送達デバイスは、圧縮位置と弛緩位置との間で可動である。圧縮位置で、キャップはリテーナリングの方へ動かされ、ばねは圧縮され、以てプランジャをシリンジの遠位端の方へ並進させる。弛緩位置で、キャップはリテーナリングから離れる方へ動かされ、ばねは弛緩され、以てプランジャをシリンジの近位端の方へ並進させる。
【0037】
[0037]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第30の態様では、シリンジ胴部は、胴部の遠位端にオリフィス、吐出し口、又はアパーチャを画定し、シリンジは、オリフィスから材料を放出するように構成される。
【0038】
[0038]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第31の態様では、放出される材料は、血液に露出されるとヒドロゲルを形成する生物学的に適合しているポリマーである。
【0039】
[0039]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第32の態様では、胴部は、第1の材料を第2の材料に隣り合って保持する。
【0040】
[0040]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第33の態様では、ポストは、ばねの軸線に沿ってリテーナリングの方へ延び、ばね内に同心円状(concentrically)に配置される。
【0041】
[0041]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第34の態様では、プランジャの近位端は、ポストを受け取って係合するように設置及び配置されたレセプタクルを画定する。
【0042】
[0042]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第35の態様では、ばねは圧縮ばねであり、したがってばねは、キャップをリテーナリングから離れる方へ付勢する。
【0043】
[0043]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第36の態様では、リテーナリング及びキャップはそれぞれ、ばねの両端のうちの一方を捕捉するように設置及び配置された複数の内方へ延びるクリップを含む。
【0044】
[0044]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第37の態様では、送達デバイスの使用を可能にする方法が、送達デバイスのキャップをシリンジのプランジャに結合することを可能にするステップを含み、これはキャップのポストをプランジャの近位端へ挿入することを含む。この方法は、送達デバイスのキャップを押下することを可能にするステップを含み、キャップを押下したことに応答して、送達デバイスのばねが圧縮し、プランジャはシリンジの遠位端の方へ並進する。この方法は、送達デバイスのキャップを解放することを可能にするステップを含み、キャップを解放したことに応答して、送達デバイスのばねが伸張し、プランジャはシリンジの近位端の方へ並進する。この方法は、キャップの押下及び解放を繰り返すことを可能にして、圧縮行程ごとに所望の量の材料をシリンジの遠位端から順次断続的に放出するステップを含む。
【0045】
[0045]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第38の態様では、材料は乾燥材料である。
【0046】
[0046]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第39の態様では、乾燥粉末止血剤が、架橋牛ゼラチン及び非架橋牛ゼラチンの乾燥微粒子を含む。乾燥微粒子は、250μm~500μm、又は325~450μm、又は300~400μmのサイズとすることができる。そのような微粒子は、止血に使用される他の微粒子より高密度である。乾燥粉末止血剤は、追加のトロンビンを実質上含まない。乾燥粉末止血剤は、出血している傷の部位に直接加えられると、血液及び傷滲出液を吸収し、微粒子の浮遊なく傷の底部に留まり、乾燥状態から70%の膨潤を呈し、止血を促進する。
【0047】
[0047]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる本開示の第40の態様では、キットが、架橋牛ゼラチン及び非架橋牛ゼラチンの乾燥微粒子を含む事前充填シリンジと、送達デバイスとを含む。送達デバイスは、リテーナリングと、キャップと、リテーナリングとキャップとの間に配置されたばねとを含む。送達デバイスは、事前充填シリンジに結合されるように構成される。キャップを押下したことに応答して、送達デバイスのばねが圧縮し、プランジャは事前充填シリンジの遠位端の方へ並進し、事前充填シリンジの遠位端から、架橋牛ゼラチン及び非架橋牛ゼラチンの乾燥微粒子が放出される。キャップを解放したことに応答して、送達デバイスのばねが伸張し、プランジャは事前充填シリンジの近位端の方へ並進する。
【0048】
[0048]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる第41の態様では、システムは、プランジャの押下ごとに圧搾される粉末又は材料の量を増大させるように修正することができる。医療用途に応じて、システムは、シリンジプランジャが押下されたとき、比較的より多量の材料又は粉末が事前充填シリンジを出ることを可能にする修正されたオリフィスを含むことができる。システムはまた、プランジャの長さを増大させることによって、プランジャの押下ごとに圧搾される粉末又は材料の量の増大を実現することができる。
【0049】
[0049]別段の指定がない限り本明細書に挙げる任意の他の態様と組み合わせることができる第42の態様では、システムは、プランジャの押下ごとに圧搾される粉末又は材料の量を減少させるように修正することができる。医療用途に応じて、システムは、シリンジプランジャが押下されたとき、比較的より少量の材料又は粉末が事前充填シリンジを出ることを可能にする修正されたオリフィスを含むことができる。システムはまた、プランジャの長さを減少させることによって、プランジャの押下ごとに圧搾される粉末又は材料の量の減少を実現することができる。システムはまた、シリンジを逆止め弁に動作可能に結合することを含むことによって、プランジャの押下ごとに圧搾される粉末又は材料の量の減少を実現することができる。
【0050】
[0050]第43の態様では、図1図15のいずれかに関連して論じる構造、機能、及び代替のいずれかを、図1図15の他のいずれかに関連して論じる構造、機能、及び代替と組み合わせることができる。
【0051】
[0051]開示するデバイス、システム、及び方法の追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図に説明され、詳細な説明及び図から明らかになるであろう。本明細書に記載する特徴及び利点は包括的ではなく、特に図及び説明を考慮すれば多くの追加の特徴及び利点が当業者には明らかになるであろう。また、いずれの特定の実施形態も、本明細書に挙げる利点のすべてを有する必要はない。さらに、本明細書で使用される言語は、開示する主題の範囲を限定するためではなく、主に読みやすさ及び有益な目的で選択されていることに留意されたい。
【0052】
[0052]これらの図は本開示の典型的な実施形態のみを示し、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことを理解した上で、本開示は、添付の図の使用によって追加の特定性及び詳細とともに記載及び説明されている。それらの図を以下に挙げる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本開示の例示的な実施形態による送達デバイス及びシリンジを含む送達システムの斜視図である。
図2】本開示の例示的な実施形態による送達デバイスの側面図である。
図3】本開示の例示的な実施形態によるキャップの側面図である。
図4】本開示の例示的な実施形態によるシリンジの斜視図である。
図5A】本開示の例示的な実施形態によるキャップ及びシリンジプランジャの側面図である。
図5B】本開示の例示的な実施形態によるキャップ及びシリンジプランジャの側面図である。
図5C】本開示の例示的な実施形態によるキャップ及びシリンジプランジャの側面図である。
図6A】本開示の例示的な実施形態による送達デバイス及びシリンジの側面図である。
図6B】本開示の例示的な実施形態による送達デバイス及びシリンジの側面図である。
図6C】本開示の例示的な実施形態による送達デバイス及びシリンジの側面図である。
図7A】本開示の例示的な実施形態によるキャップ及びばねの斜視図である。
図7B】本開示の例示的な実施形態によるキャップ及びばねの斜視図である。
図8A】本開示の例示的な実施形態によるリテーナリング及びばねの斜視図である。
図8B】本開示の例示的な実施形態によるリテーナリング及びばねの斜視図である。
図9】本開示の例示的な実施形態による送達デバイス、シリンジ、及び延長チップを含む送達システムの側面図である。
図10】本開示の例示的な実施形態による送達デバイス、シリンジ、及びラップを含む送達システムの側面図である。
図11A】本開示の例示的な実施形態によるフランジ付きカラーを有する送達デバイスとシリンジとを含む送達システムの斜視図である。
図11B】本開示の例示的な実施形態によるフランジ付きカラーを有する送達デバイスとシリンジとを含む送達システムの側面図である。
図12】本開示の例示的な実施形態による送達デバイス及び2つの胴部を有するシリンジを含む送達システムの側面図である。
図13】本開示の例示的な実施形態による2つのばねを有する送達デバイス及びシリンジを含む送達システムの斜視図である。
図14A】本開示の例示的な実施形態による事前充填シリンジ及び送達デバイスを含む送達キットの斜視図である。
図14B】本開示の例示的な実施形態による事前充填シリンジ及び送達デバイスを含む送達キットの斜視図である。
図14C】本開示の例示的な実施形態による事前充填シリンジ及び送達デバイスを含む送達キットの側面図である。
図15】本開示の1つの例示的な実施形態に対する累積的粉末送達を圧搾の数とともに示すグラフである。
【0054】
(例示的な実施形態の詳細な説明)
[0068]上記で簡単に論じたように、本開示は、様々な実施形態において、粉末状材料を創部に局所的に投与することによって出血を抑制するシステム、方法、及びデバイス、並びにそのような粉末状材料自体を対象とする。粉末状材料は、トロンビンなどの活性剤を含んでおらず、すぐに使用できる効果的な粉末止血剤である。同様に、本開示は、粉末止血剤などのポリマー組成物の精密な投与のための送達デバイス、送達システム、及び関連方法を対象とする。
【0055】
ポリマー組成物
[0069]本明細書に開示する材料は、架橋又は非架橋の生物学的に適合しているポリマーを含むことができ、そのような材料は、比較的持続性があり、通常はたとえば10日~120日の範囲内の傷の治癒のための時間と同等の分解時間を有する。比較として、本開示の非架橋の生物学的に適合しているポリマーは断片化されており、すなわち個別の乾燥微粒子として材料内に存在し、したがって水和されると(たとえば、血液中)、ポリマーは、0.01mm~5mm、たとえば0.05mm~1mmの範囲内のサブユニットサイズを有するヒドロゲルを形成する。いくつかの場合、生物学的に適合しているポリマーは膨潤性があり、完全に水和されると、200%~5,000%の範囲内、たとえば400%~5,000%及び/又は500%~1000%の範囲内の平衡膨潤を有する。
【0056】
[0070]百分比として表される平衡膨潤は、架橋ポリマーの平衡湿潤重量と乾燥重量の差の、ポリマーの乾燥重量に対する比として、次のように定義することができる。
【0057】
【数1】
【0058】
[0071]平衡湿潤重量は、ポリマーが長い期間にわたって湿潤剤に接触した後、ポリマーが有意の追加の湿潤剤を取り込む又は吸収することができなくなった後に測定することができる。たとえば、平衡状態において水中でその乾燥重量の5倍を取り込む又は吸収する架橋ポリマーは、水中で500%の平衡膨潤を有するということができる。水を取り込まない又は吸収しない架橋ポリマー(すなわち、その平衡湿潤重量がその乾燥重量と同じである)は、水中で0%の平衡膨潤を有するということができる。
【0059】
[0072]架橋ポリマーは、材料の主要成分とすることができ、典型的には、材料の総重量の50重量%~100重量%、たとえば材料の総重量の80重量%~100重量%、50重量%~95重量%、及び/又は80重量%~95重量%で存在する。任意選択的な非架橋材料は、存在する場合、材料のはるかに小さい部分を形成することができ、典型的には材料の総重量の50重量%~1重量%、たとえば20重量%~1重量%で存在する。任意選択で、材料中には添加物が含まれ、たとえば材料の総重量の1重量%~20重量%、たとえば材料の3重量%~15重量%で存在する。たとえば、添加物に応じて、100~1000ミリグラム、好ましくは500~1050ミリグラムの添加物を使用することができる。
【0060】
[0073]好適な添加物は、ポリビニルピロリドン、デキストラン、他の高重量ポリマー、ポリエチレングリコール、若しくは類似の薬剤、又はこれらの組合せとすることができる。これらの添加物は、潅注若しくは他の類似の手段によって最終生成物から除去することができ、又は生物学的に適合している生成物は、いかなる添加物も使わず生成することができる。
【0061】
[0074]架橋されたポリマーは、タンパク、炭水化物若しくは炭水化物誘導体、非生物ヒドロゲル形成ポリマー若しくはコポリマー、又はヒドロゲルを形成することができる他の生物学的に適合しているポリマー若しくはポリマーの組合せとすることができる。好適なポリマーには、それだけに限定されるものではないが、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、ヘモグロビン、フィブロネクチン、フィブリノゲン、フィブロイン、エラスチン、ケラチン、ラミニン、カゼインなどのタンパクが含まれ、フィブロネクチン領域又はコラーゲン断片などのこれらの部分を含む。好適な炭水化物及び炭水化物誘導体ポリマーには、それだけに限定されるものではないが、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、及び/又は他の細胞外マトリックスタンパクを含むグリコサミノグリカン、デンプン、セルロース、ヘミセルロース、キシラン、アガロース、アルギン酸、キトサンなどが含まれる。例示的な非生物ヒドロゲル形成ポリマー及びコポリマーには、それだけに限定されるものではないが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルポリマー、ポリラクチド-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、及びこれらのコポリマーが含まれる。架橋ポリマーの架橋度は、上述した範囲内で所望の膨潤性を提供するように選択することができる。表面の変化は、凝固をさらに誘起することがある。
【0062】
[0075]いくつかの場合、生物学的に適合しているポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルポリマー、ポリラクチド-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリオキシエチレン、及びこれらのコポリマーからなる群から選択された架橋の非生物ヒドロゲル形成ポリマー又はコポリマーである。
【0063】
[0076]いくつかの場合、架橋ポリマーは、任意選択的な非架橋ポリマーの乾燥マトリックス内に分散される。任意選択的な非架橋の生物学的に適合しているポリマーは、タンパク又は炭水化物(若しくは炭水化物誘導体)とすることができ、架橋されたポリマーと同じポリマーとすることができる。例示的なタンパクには、それだけに限定されるものではないが、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、エラスチン、ケラチンなどが含まれる。例示的な炭水化物及び炭水化物誘導体には、それだけに限定されるものではないが、グリコサミノグリカン、アルギン酸、デンプン、セルロース、これらの誘導体などが含まれる。非架橋ポリマーはまた、上述したヒドロゲル形成ポリマー及びコポリマーのいずれかなどの非生物の水溶性ポリマーとすることができる。本開示による例示的な血液活性材料には、非架橋ゼラチンポリマーの乾燥マトリックス、又は乾燥ゼラチンマトリックス内に分散された微粒子として存在する乾燥架橋ゼラチンポリマーが含まれる。
【0064】
[0077]本明細書に開示する材料は、シート、粉末、ペレット、プラグ、管、分割管、円筒、ふぞろいの顆粒又は微粒子などとして形成することができる。これらは、隙間のある固まっていない粉末内に固形化することなく提供することができる。そのような形態の材料は、無菌で(たとえば、無菌処理による)生成することができ、又は滅菌してキットの一部として無菌パック内に提供することができる。滅菌は、電子ビーム、γ照射、又は酸化エチレン若しくは他の化学滅菌剤などを介して行うことができる。固体形態の材料を収容する無菌パックに加えて、キットはまた、本明細書に開示したものなどの送達デバイス又は送達システムとともに、滅菌された材料を組織内の標的部位(たとえば、出血組織の傷又は他の部位)に配置することによって出血を抑制する方法を記載した使用指示を収容することができる。
【0065】
[0078]本開示のさらなる態様として、血液活性材料は、上述した架橋の生物学的に適合しているポリマーの微粒子を水性媒体内に懸濁させることによって作ることができる。次いでこの水性媒体を乾燥させて、乾燥ポリマー微粒子を含む固相を形成する。凍結乾燥(フリーズドライ)は、1つの乾燥技法である。特定の状況下では、空気乾燥、熱支援乾燥、噴霧乾燥、流動層乾燥、成形、及び他の方法を使用することもできる。
【0066】
[0079]いくつかの場合、材料は、ゼラチン顆粒の形態であり、血液に接触すると直径が約30%~約80%、たとえば約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約30%~約70%、約40%~約70%、約50%~約70%、約60%~約70%、及び/又は約70%膨潤する。
【0067】
[0080]生物学的に適合しているポリマーは、ポリマーが0.01mm~1mm、又はより具体的には0.01mm~0.1mmの範囲内のサブユニット又は微粒子サイズを有するヒドロゲルを形成するようなサイズ及び寸法である。
【0068】
[0081]いくつかの場合、活性剤は、抗生物質、抗がん剤、静菌剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、麻酔剤、抗炎症剤、ホルモン、抗血管新生剤、抗体、酵素、酵素抑制剤、及び神経伝達物質からなる群から選択される。いくつかの場合、活性剤は止血物質である。いくつかの場合、活性剤は凝固因子である。いくつかの場合、活性剤はトロンビンである。
【0069】
[0082]本開示による組成物は、架橋することができる生物学的に適合しているポリマーを含む乾燥止血材料を含むことができる。「生物学的に適合している」という用語は、材料が標準#ISO10993-1(国際標準化機構、スイス、ジュネーブ)の基準を満たすことを意味することができる。概して、生物学的に適合している材料は、発熱物質を含まず、人間の組織に投与されたときに生物学的な悪影響を引き起こさない。本開示の組成物は、再吸収可能とすることができる。「再吸収可能」という用語は、組成物が1年未満、通常は1日~120日の期間にわたって患者の体内の標的部位の上又は中に直接配置されると分解又は可溶化することを意味することができる。存在する場合、本開示の材料の非架橋ポリマー成分は、典型的に、はるかに急速に、典型的には数分以下で分解又は可溶化することができる。残りの架橋ポリマーは、配置部位にヒドロゲルを形成することができ、ヒドロゲルは時間とともに持続するが、上述したように再吸収可能である。
【0070】
[0083]本開示による好適な架橋ポリマーは、開示全体が参照により本明細書に組み込まれており依拠される、米国特許第6,066,325号に詳細に記載されている。生物学的に適合しているポリマーは、分子架橋することができる。「分子架橋」という用語は、材料が元素、基、又は化合物から構成されたブリッジによって取り付けられたポリマー分子(すなわち、個々の鎖)を含むことを意味することができ、ポリマー分子の骨格原子は、化学結合によって接合される。別法として、架橋ポリマーは、静電性、イオン性、又は疎水性などの非共有結合性の相互作用によって形成することができる。架橋は、以下により詳細に説明するように、様々な方法で得ることができる。
【0071】
[0084]「ヒドロゲル」という用語は、以下により詳細に定義するように、組成物が大量の水又は水性緩衝液を吸収する親水性の架橋された生物又は非生物ポリマーを含むことを意味することができる。ヒドロゲルは、自由水をほとんど又は全く有しておらず、すなわち簡単な濾過によってヒドロゲルから水を除去することはできない。
【0072】
[0085]「膨潤パーセント」という用語は、湿潤重量から乾燥重量を引いて乾燥重量で割り、100を掛けた値を意味し、湿潤重量は、たとえば濾過によって、湿潤剤が材料の外部から可能な限り完全に除去された後に測定され、乾燥重量は、湿潤剤を蒸発させるのに十分な時間にわたって高温に露出された後、たとえば120℃に2時間露出された後に測定される。
【0073】
[0086]「平衡膨潤」という用語は、水分が一定になるのに十分な期間、典型的には18~24時間にわたって、ポリマー材料が湿潤剤内に浸漬された後の平衡状態の膨潤パーセントと定義することができる。
【0074】
[0087]「標的部位」という用語は、治療作用のために止血材料が送達されるべき箇所、たとえば出血部位とすることができる。通常、標的部位は、当該組織箇所である。しかし、いくつかの場合、たとえば材料がその場で膨潤して当該箇所を覆うとき、止血材料を当該箇所付近の箇所に投与又は分注することもできる。
【0075】
[0088]本開示の生物学的に適合しているポリマーは、生物及び非生物ポリマーから形成することができる。好適なポリマーは、たとえば、開示全体が参照により本明細書に組み込まれており依拠される、米国特許第6,063,061号、第6,066,325号、第6,706,690号、第7,435,425号、第7,547,446号、第8,092,820号、第8,303,981号、第8,357,378号、第8,512,729号、第8,603,511号、第8,940,335号、第9,084,728号、及び第9,408,945号に記載されている。好適な生物ポリマーには、ゼラチン、可溶性コラーゲン、アルブミン、ヘモグロビン、カゼイン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチン、ラミニン、並びにこれらの誘導体及び組合せなどのタンパクが含まれる。1つの好ましい使用は、ゼラチン又は可溶性の非線維性コラーゲン、より好ましくはゼラチンの使用であり、例示的なゼラチン配合は、以下に述べる。他の好適な生物ポリマーには、グリコサミノグリカン(たとえば、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸)、デンプン誘導体、キシラン、セルロース誘導体、ヘミセルロース誘導体、アガロース、アルギン酸、キトサン、並びにこれらの誘導体及び組合せなどの多糖類が含まれる。好適な非生物ポリマーは、2つの機構、すなわち(1)ポリマー骨格の分解又は(2)水溶性をもたらす側鎖の分解のいずれかによって分解可能になるように選択される。例示的な非生物ヒドロゲル形成ポリマーには、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニル樹脂、ポリラクチド-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、並びにこれらの誘導体及び組合せなどの合成物が含まれる。
【0076】
[0089]ポリマー分子は、本開示による止血材料を形成するのに好適な任意の方法で架橋することができる。たとえば、2つ以上のポリマー分子鎖に共有結合する二官能又は多官能架橋剤を使用して、ポリマー分子を架橋することができる。例示的な二官能架橋剤には、アルデヒド、エポキシ、スクシンイミド、カルボジイミド、マレイミド、アジド、炭酸塩、イソシアネート、ジビニルスルホン、イミデート、無水物、ハロゲン化物、シラン、ジアゾ酢酸エチル、アジリジンなどが含まれる。別法として、架橋は、ポリマー上の側鎖又は部分を活性化し、したがって他の側鎖又は部分と反応して架橋結合を形成することができる過ヨウ素酸塩などの酸化剤及び他の薬剤を使用することによって、実現することができる。追加の架橋方法は、ポリマーをγ放射などの放射に露出させて側ポリマーを活性化し、架橋反応を可能にすることを含む。別法として、TEMPO、TEMD、ハロゲン、アゾ化合物、有機又は無機過酸化物、ATRPなどのラジカル形成剤を、単独で使用することができ、又はアルケン官能基化とともに使用することができる。脱水過熱架橋方法も好適である。架橋程度の増大は、保持温度を上昇させること、保持時間の持続時間を延ばすこと、又は両方の組合せによって実現することができる。減圧下での動作は、架橋反応を加速させることができる。ゼラチン分子を架橋する好適な方法は、以下に説明する。
【0077】
[0090]本開示の材料は、使用中に結果として得られるヒドロゲル組成物の可鍛性、可撓性、及び水和率を増大させるための添加物を含むことができる。いくつかの場合、添加物は、非架橋の生物学的に適合しているポリマー内に存在する。添加物は、ポリエチレングリコール、ソルビトール、又はグリセロールなどのアルコールとすることができ、好ましい実施形態では、約20~2000Dの範囲の分子量を有するポリエチレングリコールであり、この分子量は約400Dとすることができる。添加物は、製造中の組成物において、組成物の固体の約0.1重量%~固体の30重量%、通常は固体の1重量%~固体の20重量%、固体の3重量%~固体の15重量%、及び/又は固体の1重量%~固体の5重量%で存在する。添加物は、典型的には組成物の10重量%(添加物なし)を上回る高い固形分を有する材料とともに使用するのに特に有益である。添加物は、最終組成物内で完全に除去することができる。好都合には、添加物は、乾燥前の架橋ポリマーの懸濁液に加えることができる。
【0078】
[0091]分子架橋ゼラチンを生成する例示的な方法は、次のとおりである。ゼラチンを得て(標的サイズに事前に研削しておくことができる)、水性緩衝液内に配置し、典型的には1重量%~70重量%、通常は3重量%~10重量%の固形分を有する非架橋ヒドロゲルを形成する。ゼラチンは、典型的には、グルタルアルデヒド(たとえば、0.01w/w%~0.5w/w%、少なくとも一晩、好ましくは15~25時間、理想的には17~21時間にわたって、9~9.5のpHを維持しながら水性緩衝液中で0~15℃)、過ヨウ素酸ナトリウム(たとえば、0.05M、48時間にわたって0~15℃で保持)、若しくは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(「EDC」)(たとえば、0.5w/w%~1.5w/w%、室温で一晩)のいずれかへの露出によって、又は約0.3~3メガラドのγ若しくは電子ビーム放射への露出によって架橋される。架橋剤への露出の前に、ゼラチンは、15~25分にわたって30~35℃に加熱することによって事前に温められ、次いで10~20℃を下回るまで冷却され、理想的には、添加物を含む組成物の場合、20分にわたって35℃まで加熱され、又は添加物のない組成物の場合、27℃で1時間にわたって加熱され、次いで冷却される。別法として、ゼラチン微粒子は、1重量%~70重量%、通常は3重量%~10重量%の固形分を有することができ、架橋剤、典型的にはグルタルアルデヒド(たとえば、0.01w/w%~0.5w/w%、室温で一晩)への露出によって架橋することができる。アルデヒドの場合、pHは約6~11、1つの好ましい実施形態では7~10で保持することができる。グルタルアルデヒドによって架橋するとき、架橋は、シッフ塩基又は別の反応を介して形成されると考えられ、これは後の還元、たとえば水素化ホウ素ナトリウムによる処理によって安定させることができる。架橋後、結果として得られる顆粒を水で洗い、任意選択でアルコールですすいで、乾燥させることができる。次いで、結果として得られる架橋ゼラチンは、以下により詳細に説明するように使用することができる。別法として、ゼラチンは、同じく以下により詳細に説明するように、架橋の前又は後に機械的に破壊することができる。
【0079】
[0092]直径約30%~約1000%、好ましくは約30%~80%、又は400%~約500%、約500%~約1000%、又は約600%~約950%の範囲内の平衡膨潤パーセントを有する分子架橋ゼラチン組成物を生成する例示的な方法は、次のとおりである。ゼラチンを得て、溶液中に架橋剤を含有する水性緩衝液(典型的には6~11のpH、1つの好ましい実施形態では7~10のpH)内に配置し(典型的には、グルタルアルデヒド、好ましくは0.01w/w%~0.5w/w%の濃度)、典型的には1重量%~70重量%、通常は3重量%~10重量%の固形分を有するヒドロゲルを形成する。ヒドロゲルをよく混合し、架橋が生じるように0~15℃で一晩保持する。次いで脱イオン水で3回すすぎ、任意選択でアルコール(好ましくは、メチルアルコール、エチルアルコール、又はイソプロピルアルコール)で2回すすぎ、室温で乾燥させる。任意選択で、ヒドロゲルを水素化ホウ素ナトリウムで処理して、架橋をさらに安定させることができる。
【0080】
[0093]任意選択的な非架橋の生物学的に適合しているポリマーを含むことができ、架橋成分に関して上述した同じポリマーのうちの多くから形成することができる。しかし、非架橋形態でポリマーを使用することによって、これらのポリマーは概して、血液又は他の水性媒体の存在下で持続性が低く、したがって本開示の架橋材料をともに保持する接着剤として好適である。別法として、添加ポリマーは、製造プロセスの一部として完全に除去することができる。特に好適なタンパクの非架橋ポリマーには、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、アルブミン、ケラチンなどが含まれる。他の好適な非架橋の炭水化物及び炭水化物誘導体のポリマーには、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、及び/又は他の細胞外マトリックスタンパクを含むグリコサミノグリカン、アルギン酸、デンプン、セルロース、これらの誘導体などが含まれる。本開示の組成物を調製する際、非架橋ポリマーは、典型的にはまず、好適な緩衝液、2次接着剤、添加物、防腐剤、酸化防止剤、生物活性剤などが添加された好適な媒体、典型的には水性媒体内に懸濁される。非架橋ポリマーが典型的には0.2重量%~10重量%、1つの好ましい実施形態では0.25重量%~2重量%の範囲内の好適な濃度で懸濁した後、架橋ポリマーは、典型的には乾燥微粒子の形態で添加される。架橋ポリマーの分散が非架橋ポリマーの溶液内に十分に混合された後、任意の従来の技法によって懸濁液を乾燥させることができる。たとえば、媒体は、媒体中の固体濃度に応じて、典型的には1mm~50mmの薄い層に広げることができ、これを凍結乾燥して、乾燥材料(たとえば、スポンジ状の材料)を生成することができ、次いで本明細書に以下に説明する方法で滅菌及び使用することができる。別法として、非架橋ポリマーの溶液を無菌濾過し、他の手段によって滅菌された架橋ポリマーと無菌環境内で組み合わせて、無菌状態で実施される処理にかけることができる。滅菌は、電子ビーム、γ照射、又は酸化エチレン若しくは他の化学滅菌剤などを介して行うことができる。好ましい好適な乾燥技法には、空気乾燥、加熱乾燥、噴霧乾燥、流動層乾燥、成形などが含まれる。材料は、特有の用途に対して粉末顆粒、ペレット、プラグ、円筒、半円筒、管、球、回転楕円体、ふぞろいの顆粒又は微粒子などの様々な幾何形状の微粒子に形成することができる。本開示の組成物は、ステアリン酸亜鉛、炭水化物、及びアルコール、及び再吸収率の制御などの他の目的を意図した他の材料など、他の材料及び成分、たとえば固化防止剤、流れ促進剤、帯電防止剤などとさらに組み合わせることができる。
【0081】
[0094]本開示の組成物は、トロンビンなどの活性剤を含有しない。例示的な活性剤には、それだけに限定されるものではないが、酵素、酵素抑制剤、抗生物質、抗悪性腫瘍剤、静菌剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、止血剤(たとえば、トロンビン、フィブリノゲン、及び凝固因子)、局所麻酔剤、抗炎症剤、ホルモン、抗血管新生剤、抗体、神経伝達物質、向精神剤、生殖器官に影響を及ぼす薬物、並びにアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチド、又はヒドロキシアパタイト及び塩化第二鉄などの無機成分などの無機及び有機生物活性分子を含むことができる。
【0082】
[0095]本開示の生物学的に適合しているポリマー組成物は、最終使用又は送達の前に機械的に破壊することができる。ポリマー組成物のポリマー鎖の分子架橋は、その機械的破壊の前又は後に実行することができる。たとえば、生成物は、ゼラチン抽出後に研削することができ、架橋後に再研削することができる。ポリマー組成物は、ポリマー組成物が上述した0.01mm~5.0mmの範囲内のサイズを有するサブユニットに分解される限り、混合などのバッチ動作で機械的に破壊することができる。ポリマー組成物が使用前に破壊されるとき、ポリマー粒子又は顆粒は、たとえばスパチュラ、スプーンなどを使用して、シリンジオリフィスからの押出し又は噴霧以外の技法によって適用又は投与することができる。他のバッチ機械破壊プロセスは、ヒドロゲルの破砕降伏応力を超過するレベルにヒドロゲルを圧縮、伸張、若しくは剪断するホモジナイザ若しくはミキサ、又はポンプによって圧送することを含む。いくつかの場合、ポリマー組成物の押出しにより、実質上連続するネットワーク、すなわち元のヒドロゲル塊の寸法に及ぶネットワークから、上述した範囲内の寸法を有する1群のサブネットワーク又はサブユニットへ、ヒドロゲルを変換する。他の場合、シリンジ又は他のアプリケータ内に包装する前に、ヒドロゲル組成物を部分的に破壊することが望ましい。そのような場合、ヒドロゲル材料は、最終押出しの前に所望のサブユニットサイズを実現する。
【0083】
[0096]一実施形態では、ポリマーは、最初に調製すること(たとえば、噴霧乾燥による)、及び/又は架橋前、多くの場合通常はヒドロゲルを形成する水和前に機械的に破壊することができる。ポリマーは、微細に分割又は粉末化された乾燥固体として提供することができ、この乾燥固体をさらなる粉砕によって破壊して、所望のサイズを有する微粒子を提供することができ、微粒子は通常、小さい範囲内に狭く閉じ込められる。ふるい分け、サイクロン分類などのさらなるサイズ選択及び修正ステップを実行することもできる。以下に説明する例示的なゼラチン材料の場合、乾燥微粒子サイズは、0.01mm~1.5mm、1つの好ましい実施形態では0.05mm~1.0mmの範囲内とすることができる。例示的な微粒子サイズ分布は、微粒子の95重量%超が0.05mm~0.7mmの範囲に入るようになっている。ポリマー開始材料を粉砕する方法には、均質化、研削、コアセルベーション、ミリング、ジェットミリングなどが含まれる。粉末状ポリマー開始材料はまた、噴霧乾燥によって形成することができる。微粒子サイズ分布は、ふるい分け、凝集、さらなる研削などの従来の技法によってさらに制御及び改良することができる。
【0084】
[0097]次いで、この乾燥粉末状の固体は、本明細書に別途説明するように、水性緩衝液に懸濁させて架橋することができる。他の場合、ポリマーは、水性緩衝液に懸濁させ、架橋し、次いで乾燥させることができる。次いで、架橋された乾燥ポリマーを破壊することができ、次に、破壊された材料を水性緩衝液に再懸濁させることができる。一実施形態では、結果として得られる材料は、典型的には上述した寸法を有する個別のサブネットワークを有する架橋ヒドロゲルを含む。
【0085】
[0098]本開示の組成物は、擦過又は損傷された組織表面、たとえば肝臓、脾臓、心臓、腎臓、腸、血管、血管器官などを含む任意の臓器表面で出血を抑制する(止血を引き起こす)のに特に好適である。顆粒又は他の形態の乾燥材料が、活動性出血部位が材料によって完全に覆われるように投与される。たとえば、粉末顆粒を収容する本明細書に記載する送達デバイス又は送達システムを使用して、活動性出血部位に材料を投与することができる。材料を投与する好適な方法には、それだけに限定されるものではないが、シリンジから直接、又はアプリケータチップを使用して、材料を分注することが含まれる。粉末顆粒を投与する前に、概して出血組織を吸い取り、又はそっと吸引して、余分の血液を除去し、粉末顆粒を活動性出血の部位へすぐに直接投与することができるようにする。湿潤表面に対するシリンジ又はアプリケータチップの接触を最小にすることによって、シリンジ及び/若しくはアプリケータチップ又は他のデバイスの詰まりを低減させることができる。同様に、送達デバイス又は送達システムの特定の構成が、詰まりを防止する働きをすることができる。粉末顆粒が投与された後、典型的には、湿らせたガーゼなどの非付着性基材を使用して、傷口に適当な穏やかな隣接が、処置された部位の上に与えられる。出血が持続する場合、追加の粉末顆粒を投与することができる。非付着性基材が創部に付着する場合、非ヘパリン化生理的食塩水による穏やかな潅注を使用して、凝血への最小の破壊で基材の除去を支援することができる。出血が止まった後、凝血に組み込まれていない余分の顆粒が、穏やかな潅注及び吸引によって、治療部位から慎重に除去される。
【0086】
[0099]神経及び他の敏感な身体構造を取り囲む領域内で使用されるときは、完全に水和されたヒドロゲル(すなわち、平衡膨潤で95%を超える水和)を用いて、囲まれた環境における膨潤による神経への損傷のリスクを低減させることができる。
【0087】
[00100]本開示によるキットは、ペレット、粉末など、本開示の顆粒又は他の形態の乾燥ポリマー材料を含むことができる。これらの材料は、無菌で形成され、又は好ましくはγ照射、酸化エチレン、電子ビーム照射などを使用して最終滅菌によって滅菌される。まだ無菌状態にある間に、材料は袋、管、トレー、箱などの無菌パッケージに包装される。血液が存在する組織の上、たとえば傷口又は手術部位に材料を配置する方法を記載した使用指示を、キットの一部として提供することもできる。例示的なキットは、シリンジ内に存在する乾燥ポリマー材料(たとえば、乾燥した牛由来ゼラチンマトリックス(顆粒))と、アプリケータチップと、シリンジとともに使用されるように構成された本明細書に記載する送達デバイスと、使用指示とを含む。
【0088】
送達デバイス及び送達システム
[00101]図1を次に参照すると、上記で論じた組成物のいずれかを正確に送達するための1つの好適な送達システム、並びに関連する方法及びデバイスが、システム100によって示されている。送達システム100は、シリンジ110と、シリンジ110に動作可能に結合されたばねキャップアセンブリ120とを含む。本開示の場合、本明細書のばねキャップアセンブリ120を区別なく送達デバイスと呼ぶことができる。シリンジ110は、プランジャ112及び胴部114を含む。プランジャ112は、胴部114の円筒形内面に同心円状(concentrically)に係合して封止するように位置し、したがってプランジャ112は、胴部114の長さに沿って並進することができる。プランジャ112及び胴部114はそれぞれ、ポリプロピレン、PVC、非DEHPのPVC、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン混合物、又は他の類似の材料などの任意の好適なプラスチック材料から構築することができる。プランジャ112及び胴部114はそれぞれ、ポリプロピレンから構築されることが好ましい。
【0089】
[00102]シリンジ胴部114は、その遠位端にオリフィス116を画定する。例示的な実施形態では、オリフィス116は、メスルアーコネクタ又はオスルアーコネクタなどのルアーチップを含む。シリンジ110は、オリフィス116を通って材料を放出するように構成される。たとえば、シリンジ110は、上述したように、血液に露出されるとヒドロゲルを形成する生物学的に適合しているポリマーを放出するように構成される。図9を参照すると、例示的な実施形態では、シリンジ110は、たとえばルアー接続を介してシリンジ胴部114のオリフィス116に係合するように構成された延長管115をさらに含むことができる。延長管115は、たとえば創部へのアクセスが制限されている場合、開放手術及び腹腔鏡手術の両方で送達精度を改善することができる。様々な実施形態では、延長管115は、剛性の延長チップ、切断可能な延長チップ、可撓性チップ、可鍛性チップなどとすることができる。
【0090】
[00103]ばねキャップアセンブリ120は、リテーナリング122、キャップ124、及びばね126を含む。ばね126は、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、及びこれらの合金から形成することができ、リテーナリング122とキャップ124との間に配置することができ、したがってばね126は、リテーナリング122及びキャップ124によって保持される。ばね126は、1~10重量ポンドの範囲内のばね力定数を有することができる。ばね126は、3.46重量ポンドのばね力定数を有することができることがより好ましい。一実施形態では、ばね126は、1.2インチの直径、1.75インチの自由長さを有し、直径0.0625インチのステンレス鋼ワイアから構築される。図示の実施形態では、ばね126は圧縮ばねであり、したがってばね126は、キャップ124をリテーナリング122から離れる方へ付勢する。
【0091】
[00104]図7A図7B図8A、及び図8Bを次に参照すると、キャップ124(図7A図7B)及びリテーナリング122(図8A図8B)の内側詳細斜視図が図示及び論じられている。リテーナリング122は、ばね126の一端を保持するようにばね126の1つのリング円を受け取るための複数のクリップ200、202を含む。様々な実施形態では、クリップ200、202は、成形されたリテーナリング122の特徴であり、ばね126を保持するようにリテーナリング122の内周壁から軸線方向内方へ延びる。リテーナリング122に形成されたとき、クリップ200、202は、ばね126が受け取られる開口を画定する。図8A及び図8Bに示すように、ばね126が受け取られる開口は、クリップ200、202によってばね126の頂部及び側部に画定され、開口はまた、下面201及び203を含み、それにより、それぞれクリップ200、202に対向して、ばね126が位置するための下部静止面を画定することを理解されたい。様々な実施形態では、クリップは、ばね126が受け取られる開口の1つ、2つ、又はそれ以上の側面を画定する。たとえば、図8Bに示す部材204は、リテーナリング122の内周壁に対してばね126を保持する単一保持押出し部のみを示すが、ばね126自体を受け取るための実質上囲まれた開口を画定しない。リテーナリング122は、任意の適当な数のクリップ200、202又は部材204をその周囲に含むことができることを理解されたい。図示の実施形態は、リテーナリング122の円周に隔置された1つの部材204並びに200及び202に類似の3つのクリップを含む。
【0092】
[00105]様々な実施形態では、複数のクリップ200、202はそれぞれ、ばね126の端部にスナップ嵌めするように構成することができる。ばね126の軸線方向ピッチ角により、クリップ200、202とリテーナリング122のそれぞれの下面201、203との間に干渉が生じ、周囲クリップ200、202又は部材204のそれぞれによって受け取られた後、ばねの摩擦嵌めがその回転変位を抑制することを理解されたい。
【0093】
[00106]図7A及び図7Bに見られるように、図8A及び図8Bのリテーナリング122に関連して上記で論じた特徴と同様に、キャップ124もまた、ばね126の他端を保持するようにばね126の両端にリング円を受け取るための複数のクリップ180、182、184を含む。複数のクリップ180、182、184はそれぞれ、ばね126のそれぞれの端部にスナップ嵌めするように構成すること、及び/又はばね126の一部分を受け取ってばね126を保持するように構成された少なくとも1つの凹部若しくは空隙を含むことができる。図8A及び図8Bのクリップ200、202と同様に、複数のクリップ180、182、184はそれぞれ、機械的プレス嵌めなどのばね126との摩擦嵌め若しくは追加の機械的係合、又は超音波溶接を含むことができる。図7Aに見られるように、クリップ180は、ばね126の頂部が受け取られる開口又は通路を画定する。開口は、クリップ180並びに上面181によって画定され、上面181は、キャップ124の頂部の内面から延びる。同様に、クリップ182及び184もそれぞれ開口を画定し、それぞれの上面183、185が、キャップ124の頂部の内面から延びる。上面181、183、185はそれぞれ、クリップ180、182、184によって画定される開口によって受け取られたばね126が静止する当接面を提供する。キャップ124はまた、キャップ124の頂部の内面から下方へ(組み立てられたばね126の軸線方向に沿って)延びる部材186を含むことを理解されたい。様々な実施形態では、図7Bの部材186の機能は、図8Bに示して上記で論じた部材204の機能に類似している。
【0094】
[00107]キャップ124及びリテーナリング122のそれぞれに対して、複数のそれぞれの図示のクリップ及び部材(180、182、184、186、200、202、204)はそれぞれ、ばね126の2つの端部のそれぞれを保持するように協働し、ばね126がリテーナリング122及びキャップ124のそれぞれに機械的に取り付けられることを確実にするように構成される。上記で論じたように、任意の好適な数のクリップ又は部材を用いて、滑り嵌めを確実にすることができ、本開示は、本明細書に図示及び論じられる厳密な数、設計、及び構成にこれらの特徴を限定することを意味しない。複数のクリップ及び部材(180、182、184、186、200、202、204)はそれぞれ、それぞればね126の両端をリテーナリング122及びキャップ124のそれぞれにしっかりと取り付けることによって、使用中のばね126の回転を防止するようにともに働く。ばね126をリテーナリング122及びキャップ124のそれぞれに取り付けることによって、ばねキャップアセンブリ120全体を軸線方向の回転及び偶発的な分解から防止することができる。一実施形態では、概してリテーナリング122及びキャップ124が軸線方向の回転から制限される。これは、たとえばより剛性の強いばねキャップアセンブリ120を確実にすることができ、これはばねキャップアセンブリ120をシリンジ110に取り付けるときに有益である。
【0095】
[00108]図10を参照すると、一実施形態では、ばね126は、可撓性のプラスチックラップ、可撓性の布ラップなどのラップ125を含む。様々な実施形態では、ラップ125は、ばね126の一部分又はばね126全体を環境への露出から防止するように、ばね126を覆うことができる。たとえば、ラップ125は、ばね126の外周及び長さ全体を覆うことができ、したがってラップ125、リテーナリング122、及びキャップ124が圧縮性の円筒を形成し、ばね126が圧縮性の円筒内に配置される。図10に示すラップ125は、内側に配置されたばね126を示すために半透明である。様々な実施形態では、ラップ125は、透明、半透明、又は不透明とすることができる。
【0096】
[00109]図2は、ポスト128がキャップ124から延びることを示す。ポスト128は、シリンジ110のプランジャ112のキャップ付きの近位端に係合するように構成される。一実施形態では、プランジャ112の近位端は、ポスト128の受取り及び/又はポスト128へのスナップ嵌めのためのレセプタクルを備えることができる。ポスト128は、ばねキャップアセンブリ120とプランジャ110との間の横方向の動き、振動などを低減させるために、たとえば緩い干渉嵌めを介して、安定性を提供することができる。例示的な実施形態では、ポスト128は、キャップ124内に一体形成される。たとえば、ポスト128及びキャップ124は、ポリプロピレン、PVC、非DEHPのPVC、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン混合物、又は他の類似の材料などの1片の材料として射出成形することができる。図2に示すように、ポスト128は、ばね126の中心軸線に沿ってリテーナリング122の方へ延びる。一実施形態では、ポスト128は、ばね126内に同心円状(concentrically)に配置される。
【0097】
[00110]図3は、ポスト128を含むキャップ124をより詳細に示す。前述したように、一実施形態では、プランジャ112の近位端は、ポスト128を受け取るように構成されたレセプタクルを含む。レセプタクルは、承認されたシリンジ(たとえば、シリンジ110)のみをばねキャップアセンブリ120とともに使用することができることを確実にする。レセプタクルを含まない非コンプライアントのシリンジは、ポスト128を受け取ることができず、したがってばねキャップアセンブリ120とともに使用することができない。
【0098】
[00111]図3及び図5A図5Cを具体的に参照すると、キャップ124は、複数のラッチアーム130をさらに含む。たとえば、複数のラッチアーム130はそれぞれ、キャップ124の内面から延びる。複数のラッチアーム130はそれぞれ、傾斜カム面132を含む。たとえば、ラッチアーム130はそれぞれ、下方(たとえば、キャップ124の内面の方)及び内方(たとえば、キャップ124の中心点の方)へ傾斜する表面を有することができる。この傾斜カム面132は、複数のラッチアーム130がシリンジ110のプランジャ112に係合するとき、たとえば適切な撓みを確実にすることができる。複数のラッチアーム130はそれぞれ、掛止ショルダ134を含む。たとえば、掛止ショルダ134は、キャップ124の内面に対向するラッチ面を画定する。キャップは、キャップ124の内面から突出する表面138(たとえば、隆起ステップ面)を有する部材131をさらに含むことができる。これらの部材131は、掛止ショルダ134のラッチ面と部材131の表面138との間でプランジャ112(たとえば、プランジャ112のフランジ付き端部)の協働ロックを提供することができる。このようにして、複数のラッチアーム130は、キャップ124をシリンジ110のプランジャ112にしっかりと係合することができる。キャップ124内でプランジャ112のフランジ付き端部118をしっかりと保持することを実現するために、掛止ショルダ134と隆起した部材表面138との間で測定される軸線方向距離は、プランジャ112のフランジ付き端部118の厚さ118Aとほぼ同じであり、適度な公差に対応することを理解されたい。
【0099】
[00112]たとえば、プランジャ112のフランジ付き端部118が複数のラッチアーム130に当接する(たとえば、傾斜カム面132に当接する)とき、複数のラッチアーム130は、外方(たとえば、キャップ124の中心点から離れる方)へ曲がる。プランジャ112のフランジ付き端部118が掛止ショルダ134を通過した後、複数のラッチアーム130は内方(たとえば、キャップ124の中心点の方)へ曲がる。複数のラッチアーム130が内方へ曲がっている間に、使用者は、触覚「スナップ」を経験することができる。同様に、使用者は、可聴「スナップ」を経験することができる。これらのスナップは、プランジャ112のフランジ付き端部118が複数のラッチアーム130によってキャップ124内に保持されていることを使用者に示す働きをする。この時点で、プランジャ112のフランジ付き端部118は、複数のラッチアーム130の掛止ショルダ134とキャップ124の部材131の部材表面138(たとえば、隆起ステップ面)との間にしっかりと保持される。
【0100】
[00113]例示的な実施形態では、ラッチアーム130は、キャップ124と一体形成される。たとえば、ラッチアーム130及びキャップ124は、ポリプロピレン、PVC、非DEHPのPVC、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン混合物、又は他の類似の材料などの1片の材料として射出成形することができる。複数のラッチアーム130はそれぞれ、プランジャ112の近位端に係合してスナップ嵌めするように構成される。たとえば、プランジャ112のキャップ付き端部の外縁部を複数のラッチアーム130内にスナップ嵌めすることができ、したがってプランジャ112の近位端118が複数のラッチアーム130内に保持される。記載及び図示の実施形態では、4つのラッチアーム130を用いてプランジャ112の近位端118を固定しているが、本明細書に記載する所望のプランジャ保持機能を実現するために、任意の好適な複数のラッチアーム130を実施することができることを理解されたい。キャップ124は、使用者の指の把持を改善し、滑り及び誤った取扱いを防止するように構成されたくぼみ、突起、把持部、又は他の特徴をさらに含むことができる。
【0101】
[00114]図4は、ばねキャップアセンブリ120との係合前のシリンジ110の分解図を示す。シリンジ110は、プランジャ112と、胴部114と、オリフィス116を有するコネクタとを含む。図4は、プランジャ112の円形近位端118をさらに示す。前述したように、一実施形態では、プランジャ112の厚さ118Aの円形近位端118の外縁部は、複数のラッチアーム130内にプランジャ112の近位端118を保持するように、ばねキャップアセンブリ120の複数のラッチアーム130によって受け取られる。
【0102】
[00115]図4に示すように、プランジャ112の遠位端は、本開示の組成物をオリフィス116から押し出すために胴部114の円筒形内壁を封止する医療グレードのストッパ119、たとえばシリコーンのストッパと嵌合している。一実施形態では、医療グレードのストッパ119は、サントプレーン、又は別法として任意の他の好適な材料から構築される。プランジャ112が医療グレードのストッパ119を含むのに対して、特定の実施形態では、胴部114内に生成される空気圧の増大によって、組成物を物理的に押し出す。同様に、特定の実施形態では、胴部114内に生成される空気圧の減少により、胴部に空気を吸い込んで、オリフィス116の詰まりを除く。
【0103】
[00116]図5A図5Cは、キャップ124とプランジャ112との間の係合の一実施形態を示す。プランジャ112のフランジ付き近位端118は、レセプタクル136を含み又は画定する。キャップ124は、レセプタクル136によって受け取られるように構成されたポスト128を含む。一実施形態では、ポスト128及びレセプタクル136は、緩い干渉嵌めで互いに係合するように、同じ断面形状を有する。同様に、複数のラッチアーム130はそれぞれ、たとえば図5Bに示す外方へ屈曲するばね状の変形を介して、プランジャ112の近位端118に係合してスナップ嵌めするように構成され、したがってプランジャ112の近位端118は、図5Cによって示し、本明細書に前述したように、複数のラッチアーム130内に保持される。図5Cで、プランジャ112の近位端118がキャップ124の部材131及び部材表面138に当接し、したがってプランジャ112は、キャップ124によって両方向に束縛されることに留意されたい(たとえば、プランジャ112は、ばねキャップアセンブリ120とともに使用するために定位置でロックされる)。
【0104】
[00117]図5Cによって示すように、キャップ124は、ばね126とプランジャ112の近位端118との両方を保持するように構成される。前述したように(また図7A図7Bに示し上記で論じたように)、キャップ124は、ばね126の端部を保持するようにばね126の端部でリング円を受け取る複数のクリップ180、182、184を含む。同様に、リテーナリング122上の複数のクリップ200、202(図8A図8Bに示す)が、ばね126の他端を保持するようにばね126の他端でリング円を受け取る。
【0105】
[00118]図11A及び図11Bを参照すると、代替実施形態では、ばねキャップアセンブリ120は、シリンジ110に係合して保持するための異なる又は追加の特徴を含むことができる。たとえば、ばねキャップアセンブリ120のリテーナリング122は、フランジ付きカラー300を含むことができる。フランジ付きカラー300は、シリンジ110の胴部114の端部308(たとえば、シリンジ110上の指保持部)に係合するように構成される。たとえば、胴部114の近位端308の外縁部は、フランジ付きカラー300によってプレス嵌めで受け取ることができ、したがって胴部114の近位端308は、フランジ付きカラー300内に保持される。フランジ付きカラー300は、プランジャ112などのシリンジの特定の部分がフランジ付きカラー300の中心を途切れなく通過することができることを確実にするために、空隙301を含む。
【0106】
[00119]別法又は追加として、フランジ付きカラー300は、スナップ嵌め係合のための複数のフランジアーム302(たとえば、上述したように、キャップ124上の複数のラッチアーム130に類似して)を含むことができる。複数のフランジアーム302はそれぞれ、傾斜カム面304を含む。たとえば、複数のフランジアーム302はそれぞれ、下方(たとえば、フランジ付きカラー300の内面309の方)及び内方(たとえば、フランジ付きカラー300の中心点の方)へ傾斜する表面を有することができる。この傾斜カム面304は、複数のフランジアーム302がシリンジ110の胴部114の端部308に係合するとき、たとえば適切な撓みを確実にすることができる。複数のフランジアーム302はそれぞれ、掛止ショルダ306を含む。たとえば、掛止ショルダ306は、フランジ付きカラー300の内面309に対向するラッチ面を画定する。一実施形態では、胴部114の近位端308は、掛止ショルダ306のラッチ面とフランジ付きカラー300の内面309との間に協働してロックされる。このようにして、複数のフランジアーム302は、フランジ付きカラー300及びリテーナリング122をシリンジ110の胴部114にしっかりと係合することができる。フランジ付きカラー300は、リテーナリング122と一体形成することができる。リテーナリング122は、別法又は追加として、胴部114の近位端308から延び、たとえば一体形成された部材をスナップ嵌めで受け取るアパーチャを含むことができる。
【0107】
[00120]図12を参照すると、代替実施形態では、シリンジ110の胴部114は、少なくとも、第1の区画114A及び第2の区画114Bを含む(たとえば、2つの胴部を有するシリンジ)。たとえば、胴部114は、第1の区画114A内に第1の材料を保持し、第2の区画114B内に第2の材料を保持することができる。第1の区画114A及び第2の区画114Bはそれぞれ、平行に位置合わせすることができ、したがって第1の区画114A及び第2の区画116Bのそれぞれに、オリフィス116A、116Bが提供される。別法として、区画114A、114Bはどちらも、単一のオリフィス(図示せず)と連通して流れることができる。同様に、プランジャ112又は別個のプランジャ112A、112Bは、第1の区画114A、第2の区画114B、及びばねキャップアセンブリ120のそれぞれに係合することができる。この実施形態では、ばねキャップアセンブリ120は、各プランジャ112A、112Bとともに個々に使用することができる。たとえば、ばねキャップアセンブリ120を第1の区画114Aに対するプランジャ112Aに取り付け、これを使用して第1の区画114Aから材料を送達することができ、第1の区画114Aに対するプランジャ112Aから取り外して、第2の区画114Bに対するプランジャ112Bに取り付け、これを使用して第2の区画114Bから材料を送達することができる。
【0108】
[00121]1つのプランジャが第1の区画及び第2の区画の両方に係合する代替実施形態では、単一のばねキャップアセンブリ120を使用して、両方の材料を同時に送達することができる。この代替の例示的な実施形態では、第1の材料及び第2の材料が胴部114内で混合することを防止することができ、逆に第1の材料及び第2の材料は、オリフィス116で混合することができ、又はシリンジ110から放出された後に混合することができる。さらに別法として、第1及び第2の材料を同じ胴部114内で背中合わせに積み重ねることができ、これらの材料のうちの第1の材料がオリフィス116から流れ出てから、第2の材料がオリフィス116から流れ出る。
【0109】
[00122]図13を参照すると、別の代替実施形態では、単一のばねキャップアセンブリ120が、いくつかのばねを実施することができる。たとえば、ばねキャップアセンブリ120は、第1のばね310及び第2のばね312を含むことができ、これらのばねはそれぞれ、キャップ124とリテーナリング122との間に配置される。一実施形態では、少なくとも2つのばねのうちの1つは、プランジャ112を同心円状(concentrically)に受け取るように構成される(上述)。異なる実施形態(図13に示す)では、少なくとも2つのばね310、312はいずれも、プランジャ112を同心円状に受け取るように構成されていない。
【0110】
[00123]シリンジ110とともにばねキャップアセンブリ120を実施することによって、改善された手術結果が実現される。第1に、分散精度が改善されると考えられる。たとえば、使用者は、片手の送達を使用して、組成物を標的部位へ制御された形で送達することができる。第2に、送達効率が改善されると考えられる。たとえば、特定の現在の粉末状送達デバイスは、アコーディオンの蛇腹型の構成(たとえば、アリスタ(ARISTA)(商標)AH)を実施する。多くの場合、アコーディオンの蛇腹型の構成の結果、粉末がアコーディオンの折り目の中に閉じ込められる。アコーディオンの蛇腹の構成をなくすことによって、ばねキャップアセンブリ120及びシリンジ110は、粉末が閉じ込められるのではなく、逆にほとんど又はすべての粉末が効率的に放出されることを確実にするのを助ける。たとえば、圧搾又は圧送のたびに、より多くの粉末が分注される。一実施形態では、シリンジ110の数回(たとえば、10回)の圧送によって、すべての粉末が分散される。代替実施形態では、シリンジ110の1回の圧送で、すべての粉末が分散される。第3に、ばねキャップアセンブリ120は、いくつかのシリンジとの使用を提供する。たとえば、ばねキャップアセンブリ120を第1のシリンジに取り付けて、第1のシリンジとともに使用することができ、第1のシリンジから除去し、第2のシリンジに取り付けて、第2のシリンジとともに使用することができる。これは、手術効率を増大させ、コストを減少させることなどができる。
【0111】
ポリマー組成物を投与する方法
[00124]図6A図6Cは、ばねキャップアセンブリ120を使用する1つの例示的な方法を示す。図6A及び図6Bは、改善された粉末止血剤送達システム100を作製するためのシリンジ110のプランジャ112に対する送達デバイスのキャップ124の結合を示す。図6A及び図6Bの両方に示すように、シリンジ110の胴部114は、粉末状材料602が事前に装填された状態でくる。
【0112】
[00125]前述したように、キャップ124は、ポスト128を含むことができる。使用者は、キャップ124のポスト128をプランジャ112の近位端118へスナップ嵌めで挿入する。図示のように、使用者は、リテーナリング122及びばね126を通ってプランジャ112を摺動させることができる。使用者は、ポスト128をプランジャ端部118の嵌合受取りアパーチャに位置合わせする。次いで使用者は、キャップ124がプランジャ112にスナップ嵌めされるまで、キャップ124をプランジャ112の端部118へ堅く押す。図6Bは、ばねキャップアセンブリ120がシリンジ110に結合されていることを示し、使用者は、可聴クリックを聞くこと、クリックに関係する触覚フィードバックを感じること、又は両方ができる。
【0113】
[00126]ばね126の伸張によってプランジャ112が後退するとき、ばねキャップアセンブリ120はシリンジ110に適切に接続される。図6Cに示すように、胴部114内に止血微粒子などの粉末状材料602を有するシリンジ110と、ばねキャップアセンブリ120とを含む改善された止血剤送達システム100は、使用できる準備が整っている。次いで使用者は、ばねキャップアセンブリ120のキャップ124を押下して、粉末状材料602(たとえば、上述した組成物のうちのいずれか1つ又は複数)を送達することができる。キャップ124を押下したことに応答して、ばねキャップアセンブリ120のばね126が圧縮され、プランジャ112が、シリンジ110の遠位端にあるコネクタ116の方へ並進する。キャップ124を押下することで、粉末状材料602がシリンジ110から吸い込まれる(たとえば、胴部114内の空気圧の増大による)。一実施形態では、キャップ124を完全に押下してばね126を完全に圧縮するには、約5ポンドの力を必要とする。たとえば、使用者は、片手でキャップ124を完全に押下してばね126を完全に圧縮することが可能である。
【0114】
[00127]次いで使用者は、ばねキャップアセンブリ120のキャップ124を解放することができる。キャップ124を解放したことに応答して、ばねキャップアセンブリ120のばね126が伸張する。同様に、プランジャ112は、シリンジ110の近位端の方へ並進する。使用者は、粉末状材料602がシリンジ110の遠位端から放出されるにつれて、キャップ124を連続的に押下及び解放することができる。これは、粉末状材料602がシリンジから制御された形で送達されることを確実にすることができる。これは、粉末状材料602がシリンジ110の遠位端で詰まらないことをさらに確実にすることができる。たとえば、ばねキャップアセンブリ120のばね126が伸張したとき、胴部114への空気の流れ(たとえば、胴部114内の空気圧の低減による)を介して、シリンジ110自体を「再充填」することができる。一実施形態では、粉末状材料602は、シリンジ110の10回の圧送によって分散される。
【0115】
[00128]一実施形態では、使用者は、粉末状材料602のすべてがシリンジ110の遠位端から放出されるまで、キャップ124を連続的に押下及び解放することができる。関連する実施形態では、使用者は次に、ばねキャップアセンブリ120をシリンジ110から取り外し、ばねキャップアセンブリ120を新しいシリンジに取り付けて、新しいシリンジから材料を放出することができる。このようにして、ばねキャップアセンブリ120を、いくつかのシリンジにわたるいくつかの量の材料の送達及び/又はいくつかのシリンジにわたるいくつかのタイプの材料の送達に使用することができる。代替実施形態では、使用者は、ばねキャップアセンブリ120及びシリンジ110を断続的に実施することができる。たとえば、使用者は、ばねキャップアセンブリ120を使用して、第1の時間に粉末状材料602の第1の部分をシリンジ110から放出することができるが、第1の時間にはシリンジ110内の粉末状材料602のすべてを必要としない可能性がある。ばねキャップアセンブリ120によって、使用時間の制約がなくなる。したがって、使用者は次に、ばねキャップアセンブリ120を使用して、第2の時間に粉末状材料602の第2の部分をシリンジ110から放出することができる。
【0116】
[00129]例示的な実施形態では、シリンジ110は、送達すべき材料(たとえば、粉末状材料602)が事前に装填された状態でくる。典型的には、これは、粉末状材料602が固形の形態(たとえば、固形化された粉末)であることを意味することができる。シリンジ110が事前に装填された状態でくるとき、シリンジ110は最初、オリフィス116のルアーチップに締結されたプラグを含むことができる。この実施形態では、使用者は、ばねキャップアセンブリ120のキャップ124をシリンジのプランジャ112に結合することができる(上述)。ばねキャップアセンブリ120がプランジャ112に取り付けられた後、ばねキャップアセンブリ120は、ばね126の伸張により、プランジャ112を後退させる。これにより、胴部114内に、真空又は負圧の空気間隙である最初の空気間隙が生じる。使用者は次いで、プラグをオリフィス116から除去することができる。プラグをオリフィス116から除去することによって、空気はすぐに胴部114内へ流れ、空気間隙を充填する(たとえば、環境と真空又は負圧の空気間隙との間の差圧による)。この最初の空気の流れは、いくつかの目的を担うことができる。たとえば、最初の空気の流れは、固形化された粉末を分解する働きをすることができる。また、たとえば最初の空気の流れは胴部114内へ誘導され、したがって最初の空気の流れにより、不用意に粉末がオリフィス116からこぼれることを防止することができる。次いで使用者は、キャップ124の押下及び解放を開始して、シリンジ110の遠位端から粉末状材料602を放出することができる(上述)。
【0117】
[00130]典型的な医療シリンジ内のシリンジプランジャ112及びそのストッパ119のサブアセンブリの長さは、胴部114の長さにほぼ等しいことを理解されたい。使用者がプランジャ112を胴部114に対して前進させると、ストッパ119は胴部114の内容物をオリフィス116から押し出し、ストッパ119は、最大送達量を確実にし、停滞廃棄物を最小にするために、オリフィス116に隣り合う台座117(図6B参照)に完全に当接する点まで進むことが望ましい。キャップ124/ばね126/リテーナリング122のアセンブリを含むここに論じるシリンジ構成では、典型的なシリンジから修正されない限り、プランジャ112の長さは、キャップ124が最大量だけ押下されたとき、ストッパ119がオリフィス116に隣り合う内部台座117に完全に当接することを可能にするには不十分なはずであることを理解されたい。所望される場合、ばねキャップアセンブリ120(キャップ124と、リテーナリング122と、圧縮されたばね126とを含む)の軸線方向幅により、プランジャの移動長さ距離121を使用して、したがってストッパ119が台座117との当接に到達することが防止される。ばねキャップアセンブリ120によって決定される幅121によって占有されるプランジャ112の失われた移動距離121を補償するために、いくつかの企図される実施形態は、ばねキャップ124の最大押下点におけるストッパ119と台座117との当接を確実にするために、より長いプランジャ112を含む(図6Bに示す)。記載及び図示のように組み立てられたとき、距離121は、ばねキャップアセンブリ120の全体的な実際の軸線方向幅に等しいのではなく、逆にばねキャップ124及びばね126の係合及び最大押下によって占有されるプランジャ112の全体的な追加の長さに等しいことが企図されることを理解されたい。
【0118】
[00131]システム100に対する様々な医療用途は、プランジャの押下のたびに異なる量の材料が圧搾されることから利益を得ることができることを理解されたい。以下に実施例3で論じるように、試験により、一実施形態では、所望の全材料の95%超が5回の圧搾以内に送達されたことが判定された。しかし、いくつかの状況では、材料の総量を5回未満、6回未満、7回未満、又はそれ以上の圧搾で送達することが有利である又は好ましい可能性もある。そのような状況では、実施例3の記載より速すぎる材料の量全体の送達を意図的に抑制するように、システム100(又はその様々な部分構成要素)を修正することができることが企図される。他の状況では、実施例3の記載より急速な材料の量全体の送達を可能にするように、システム100(又はその様々な部分構成要素)を修正することができる。
【0119】
[00132]いくつかのそのような実施形態では、プランジャの押下のたびにより多くの材料が通過することを可能にし、以てより少ない回数の同等の圧搾で全体的な送達を実現するように、オリフィス116が修正(拡大)される。他の実施形態では、プランジャの圧搾のたびにより少ない材料が通過することを可能にし、以てより多い回数の同等の圧搾で全体的な送達を実現するように、オリフィス116が修正(制限)される。システム100はまた、プランジャ112の長さを延ばすこと、及びオリフィス付近で逆止め弁を使用することによって、材料を完全に送達するためにより多くの圧搾を必要とするように修正することもできる。システム100の特定の実施形態で標的量の材料を送達するために必要とされる必要な圧搾の量をより正確に制御するために、様々な代替技法を用いることができることを理解されたい。
【0120】
[00133]様々な実施形態では、以下に実施例3及び図15に関して具体的に論じるように、圧搾ごとに送達される粉末又は材料は、1cm~5cmの範囲の面積を覆うことができ、平均被覆面積は3cmである。出血部位の中心に位置するとき、平均被覆面積が3cmであっても、粉末又は材料の局所的な送達は、出血部位自体に集中されることを理解されたい。様々な実施形態では、送達の焦点は、より高密度の送達された粉末又は材料を含み(送達面積の中心へ)、送達面積の周辺は、比較的低密度の送達された粉末又は材料を含む。いくつかの代替では、オリフィスの幾何形状又は圧搾ごとに送達される材料の量を変える技法を用いることで、特定の医療用途の要件に応じて、送達される粉末又は材料の密度をより均一又はより不均一にすることができる。
【0121】
送達デバイスキット
[00134]図14A図14Cに示すように、送達デバイスは、送達キット400内に提供することができる。送達キット400は、ばねアセンブリキット402及び粉末状顆粒キット404の両方を含むことができる。一実施形態では、ばねアセンブリキット402はばねキャップアセンブリ120を含み、粉末状顆粒キット404はシリンジ110を含み、シリンジ110には粉末状顆粒(たとえば、架橋牛ゼラチン及び非架橋牛ゼラチンの乾燥微粒子)が事前充填されている。異なる実施形態では、ばねアセンブリキット402は、ばねキャップアセンブリ120及び事前充填シリンジ110の両方を含み、粉末状顆粒キット404は、追加の事前充填シリンジ、シリンジ110を再充填するための追加の粉末状顆粒、シリンジ110を介して分注すべき他の材料などを含む。ばねキャップアセンブリ120、事前充填シリンジ110、及び粉末状顆粒を含む送達キット400の構成要素は、上記でより詳細に説明したように構成される。
【0122】
[00135]以下の実施例は、限定ではなく説明を目的として提供される。
(実施例)
【0123】
実施例1-粉末止血剤の止血効果
[00136]ヘパリン化されたオスの豚の外科的に誘発された肝臓外傷を治療するための粉末止血剤架橋ゼラチンの止血効果について評価した。
【0124】
[00137]治療後10分間における止血の成功の評価のために、肝臓の正方形の出血モデルを使用した。投与後10分の止血の成功は、粉末止血剤と、ヒト由来トロンビン溶液と組み合わせた牛由来ゼラチンマトリックスであるフロシール(FLOSEAL)(登録商標)VH S/D(フロシール(登録商標)ヘモスタティックマトリックス(HEMOSTATIC MATRIX)VH S/D、フロシール(登録商標)ヘモスタティックマトリックス、及びフロシール(登録商標)としても知られている)(Baxter Healthcare Corporation)との間の非劣性に関して評価した。投与後10分の止血の成功はまた、精製された植物デンプンから導出されたトロンビンを含まない止血粉末であるアリスタ(商標)AHの吸収性止血微粒子に対する粉末止血剤の優越性に関して評価した。加えて、粉末止血剤とフロシール(登録商標)VH S/Dとの間及び粉末止血剤とアリスタ(商標)AHとの間の止血に対する区間打ち切り時間の差を判定した。
【0125】
[00138]粉末止血剤架橋ゼラチンは、フロシール(登録商標)内に存在するものと同じ乾燥した牛由来ゼラチンマトリックス(顆粒)からなる。
【0126】
[00139]フロシール(登録商標)VH S/Dは、製造者の使用指示(Baxter Healthcare Corporation、2014)に従って調製した。トロンビン溶液は、塩化ナトリウム溶液が事前に充填されたシリンジをバイアルアダプタのルアーコネクタに取り付けることによって調製した。次いで、トロンビンバイアルのゴムストッパに穿孔し、塩化ナトリウム溶液のすべての内容物をトロンビンバイアルへ移した。次いで、トロンビンバイアルを通気し、トロンビンが完全に溶解するまで回転させた。フロシール(登録商標)VH S/Dは、空の10mLシリンジに表示マーク(8mL)までトロンビン溶液を充填し、次いでトロンビン溶液を含有するシリンジにゼラチンマトリックスシリンジを連結することによって調製した。次いで、トロンビン溶液をゼラチンマトリックスシリンジに入れ、混合物を少なくとも20回、シリンジ間で前後に移動させた。結果として得られた材料は、調製後30秒~20分で使用した。投与前、1mL分の調製されたフロシール(登録商標)材料を3mLのシリンジに分注し、約1mLの投与体積を提供した。
【0127】
[00140]供給されたアリスタ(商標)AH(1グラムのサイズ)を使用した。
【0128】
[00141]鋭的剥離を使用して、肝臓表面に一連の2つの正方形の外傷(約1.0cm×1.0cm、深さ0.2~0.3cm)を生成した。金属ダイ(1.0cm×1.0cm)を使用して、切るべき外傷の輪郭をマークした。鉗子によって1つの隅部を剥ぎ取りながら、肝臓の表面を切開し、周囲の切れ目の深さに近似する厚さを維持した。肝葉上の同じ相対的な箇所から、各組の外傷を得た。最初に、肝葉の遠位領域から外傷セットを得てから、肝葉のアクセス可能な組織面積が尽きるまで肝葉上を近位へ動かした。肝葉のアクセス可能な組織面積が尽きた時点で、別の肝葉を利用した。各組の外傷及び外傷観察期間を完了まで実行してから、別の対の外傷を開始した。
【0129】
[00142]Lewisら、Surgery、vol.161.no.3、771~781頁(2017)に記載されている0~4のスケール(0=出血なし、1=滲出又は断続的な流れ、2=連続する流れ、3=制御可能な噴出及び/又は圧倒的な流れ、4=未確認又はアクセス不能の噴出又は奔出)を使用して、治療前の各外傷に対して出血の定性的評価を実行した。
【0130】
[00143]外傷の重症度の潜在的な差に関連するバイアスを除去するために、外傷に物品を適用する人は、両方の外傷を生成して評価した後まで、任意の所与のセット内のどの外傷を粉末止血剤、フロシール(登録商標)VH S/D、又はアリスタ(商標)AHによって治療すべきかが分からなかった。
【0131】
[00144]各外傷を吸い取り(必要な場合)、出血等級の評価を支援した。粉末止血剤、フロシール(登録商標)VH S/D、及びアリスタ(商標)AHを適当な外傷に直接投与し、生理的食塩水で湿らせたガーゼを約2分間隣接させた。0.6546±0.1196g(平均±SD)の粉末止血剤、約1mLの調製されたフロシール(登録商標)VH S/D、及び0.7627±0.0551gのアリスタ(商標)AHで、外傷を処置した。
【0132】
[00145]粉末止血剤、フロシール(登録商標)VH S/D、又はアリスタ(商標)AHが指定の外傷に投与されたとき、タイマを開始した。指圧を除去した後、上記で論じた事前定義された得点システムを使用して、投与後2、3、4、5、6、7、及び10分の止血に関して各外傷を評価した。10分間の止血評価後、外傷部位を潅注した。次いで、余分の粉末止血剤、フロシール(登録商標)VH S/D、又はアリスタ(商標)AH材料(血栓内に組み込まれていない材料)が外傷部位からうまく潅注されたかどうか、外傷部位を評価した。
【0133】
[00146]この研究の1つの1次エンドポイントは、投与後10分の止血の成功であり、粉末止血剤とフロシール(登録商標)VH S/Dとの間の非劣性、並びにアリスタ(商標)AHに対する粉末止血剤の優越性として評価した。粉末止血剤とフロシール(登録商標)VH S/Dとの間の非劣性、及びアリスタ(商標)AHに対する粉末止血剤の優越性は、階層的に評価した。粉末止血剤/フロシール(登録商標)VH S/Dのオッズ比の90%両側信頼区間を計算して、粉末止血剤とフロシール(登録商標)VH S/Dとの間の非劣性を評価した。優越性を試験するための粉末止血剤/アリスタ(商標)AHのオッズ比の95%両側信頼区間は、前のステップで非劣性が判断されたとき且つそのときに限り計算した。それぞれ非劣性及び優越性の評価に対する90%及び95%両側信頼区間の選択は、個々の比較ごとに5%のαレベルに対応する。階層的試験の原理は、全体的なαレベルが5%を超過しないことを保証する。この研究の2次エンドポイントは、止血時間であり、これは止血の成功が実現しなかった最新の時点と、止血の成功が実現及び維持された次の時点との間の区間打ち切りとした。
【0134】
[00147]PASS版15.0.1のオッズ比及び割合変換ツールを使用した計算に基づいて、有効性15%の最大許容損失及び96%の成功率を仮定し、非劣性マージンを0.1776に設定した。成功オッズ比の信頼区間(「CI」)の90%の下限0.1824は、非劣性マージン0.1776より大きいため、粉末止血剤の止血効果は、治療後10分のフロシール(登録商標)VH S/Dに対して非劣性であった。同時に、成功オッズ比のCIの95%下限7.3724は、1より大きいため、粉末止血剤はアリスタ(商標)AHに優越することが分かった。止血時間は、粉末止血剤を用いた場合、フロシール(登録商標)VH S/Dと比較すると2.75倍長く(95%CI:1.589対4.773、両側p値<0.001)、アリスタ(商標)AHを用いた場合、粉末止血剤と比較すると9.23倍長かった(95%CI:6.985対12.188、両側p値<0.001)。
【0135】
[00148]したがって、この研究の条件下で、ヘパリン化された豚肝臓の正方形の出血モデルにおいて、粉末止血剤の止血効果は、フロシール(登録商標)VH S/Dに対して非劣性であり、アリスタ(商標)AHに対して優越性であった。粉末止血剤によって提供される止血時間は、フロシール(登録商標)VH S/Dによって提供される止血時間より2.75倍長く、アリスタ(商標)AHによって提供される止血時間より9.23倍短かかった。
【0136】
実施例2-粉末止血剤の膨潤度
[00149]実施例1に記載した粉末止血剤顆粒の膨潤度を判定した。血液又は他の流体に接触すると、微粒子は直径が最高70%まで膨潤し、最大膨潤体積が約10分で実現された。対照的に、フロシール(登録商標)VH S/D微粒子(トロンビンと組み合わせたゼラチンを含有する)は、血液又は他の流体に接触すると、直径が約10~20%膨潤し、最大膨潤体積は約10分で実現された。粉末止血剤顆粒によって実証された膨潤度の改善により、周辺組織に力を加えることによって止血を容易にし、以て強化された機械的タンポン作用を提供することが有利である。
【0137】
実施例3-粉末圧搾
[00150]ばねキャップアセンブリ120を使用する前述の方法の1つ又は複数を使用して、順次圧搾における粉末圧搾の効率及び予測可能性を評価した。
【0138】
[00151]システム100を使用して、粉末ポリマー剤の機能圧搾を5回の圧搾にわたって示した。シリンジ110には、0.5g~2.5gの粉末ポリマー剤が事前に充填されており、好ましい充填は1.3g~1.4gの範囲内であった。粉末圧搾試験の結果が、図15に示すグラフに示されている。順次圧搾において一貫した粉末圧搾を制御するために、システム100は90~45度の送達角度に向けられており、好ましい角度は90度(垂直)であった。
【0139】
[00152]図15を次に参照すると、累積的にグラム単位で圧搾される粉末の量を、圧搾ごとに測定した。圧搾される全グラム量を垂直軸線に沿ってグラフ化し、水平軸線によって順次圧搾に沿ってグラフ化した。破線は、上記で論じた好ましい充填範囲(1.3g~1.4g)の下限を示す。圧搾される粉末の累積的な量が破線を超過したとき、許容できる全材料圧搾が実現された。図示の実施例では、システム100は、95%超の粉末を5回以内の圧搾で送達する。
【0140】
[00153]上記で論じたように、システム100は、使用者が送達すべき生成物の量をより柔軟に制御することを可能にするように修正することができることを理解されたい。様々な実施形態では、システム100は、プランジャ押下のたびに、制御可能により少量の材料を圧搾するように、逆止め弁によって修正することができる。他の様々な実施形態では、システム100は、材料の全量を送達するために必要な圧搾の回数を変えるように、拡大若しくは制限されたオリフィス又は修正されたプランジャ長さを装備することができる。送達される材料の量は、1cm~5cmの面積を覆うことができ、平均面積は3cmである。
【0141】
[00154]特許請求の範囲を含む本明細書で使用されるとき、「及び/又は」という用語は、包括的又は排他的な接続詞である。したがって、「及び/又は」という用語は、1群に2つ以上のものが存在すること、又は1群の選択肢から1つの選択を行うことができることを示す。
【0142】
[00155]本開示の多くの特徴及び利点が記載の説明から明らかであり、したがって添付の特許請求の範囲は、本開示のそのような特徴及び利点をすべて包含することを意図している。さらに、多数の修正及び変更が当業者には容易に相当され、本開示は図示及び記載の厳密な構造及び動作に限定されるものではない。したがって、記載の実施形態は、限定ではなく例示であると解釈されるべきであり、本開示は、本明細書に記載の詳細に限定されるべきではなく、現在又は将来予見可能であるか否かにかかわらず、以下の特許請求の範囲及びその全均等範囲によって定義されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A-7B】
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15