(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/14 20060101AFI20221109BHJP
B23F 21/28 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B23B27/14 C
B23F21/28
(21)【出願番号】P 2019009441
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徂徠 義章
(72)【発明者】
【氏名】沖田 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】桜谷 健治
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-234619(JP,A)
【文献】特開昭52-103081(JP,A)
【文献】特開平10-230402(JP,A)
【文献】特開2017-196692(JP,A)
【文献】特開2004-017216(JP,A)
【文献】特表2016-520434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/14
B23F 21/28
B23F 19/06
B23F 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有する被削材の外周面を、前記中心軸に平行な断面において、曲線形状に形成するスカイビング加工用の切削工具であって、
基材と、
焼結体と、
前記基材と前記焼結体との間に配置され、かつ、前記基材と前記焼結体とを接合する接合層とを備え、
前記焼結体は、すくい面と、前記すくい面に連なる逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との稜線に形成される切れ刃とを
有し、
前記切削工具は、
前記すくい面に直交する方向から見た場合において多角形形状を有しており、
前記切れ刃は、前記多角形形状の辺に沿って形成されており、
前記切れ刃は、
前記すくい面に直交する方向から見た場合において、曲率半径が900mm以上12000mm以下の円弧形状となって
おり、
前記切れ刃は、前記すくい面に直交する方向から見た場合において、第1端と、前記第1端の反対側の端である第2端とを有しており、
前記切削工具は、前記スカイビング加工において、前記切れ刃と前記被削材との接触点が前記切れ刃上を前記第1端側から前記第2端側に向かって移動するように構成されている、切削工具。
【請求項2】
前記円弧形状は、
前記すくい面に直交する方向から見た場合において、前記切削工具の外側に向かって凸となっている、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記円弧形状は、
前記すくい面に直交する方向から見た場合において、前記切削工具の内側に向かって凸となっている、請求項1に記載の切削工具。
【請求項4】
中心軸を有する被削材の外周面を、前記中心軸に平行な断面において、曲線形状に形成するスカイビング加工用の切削工具であって、
基材と、
焼結体と、
前記基材と前記焼結体との間に配置され、かつ、前記基材と前記焼結体とを接合する接合層とを備え、
前記焼結体は、すくい面と、前記すくい面に連なる逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との稜線に形成される切れ刃とを
有し、
前記切削工具は、
前記すくい面に直交する方向から見た場合において多角形形状を有しており、
前記切れ刃は、前記多角形形状の辺に沿って形成されており、
前記切れ刃は、
前記すくい面に直交する方向から見た場合において、曲線形状を有しており、
前記切れ刃は、
前記すくい面に直交する方向から見た場合において、第1端と、前記第1端の反対側の端である第2端とを有しており、
前記曲線形状の頂点と前記第1端及び前記第2端を結んだ直線との距離を前記第1端と前記第2端との間の距離で除した値は、0.0001以上0.01以下であり、
前記切削工具は、前記スカイビング加工において、前記切れ刃と前記被削材との接触点が前記切れ刃上を前記第1端側から前記第2端側に向かって移動するように構成されてい
る、切削工具。
【請求項5】
前記曲線形状は、
前記すくい面に直交する方向から見た場合において、前記切削工具の外側に向かって凸となっている、請求項4に記載の切削工具。
【請求項6】
前記曲線形状は、
前記すくい面に直交する方向から見た場合において、前記切削工具の内側に向かって凸となっている、請求項4に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具に関する。より特定的には、本発明は、スカイビング加工用の切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(特表2003-516868号公報)には、スカイビング加工用の切削工具が記載されている。特許文献1に記載の切削工具は、直線状に延在する切れ刃を有している。
【0003】
特許文献1に記載の切削工具を用いたスカイビング加工において、特許文献1に記載の切削工具は、その切れ刃が被削材の中心軸に対して傾斜して配置されるとともに、その切れ刃が被削材の中心軸を横断するように送られる。その結果、切削点が特許文献1に記載の切削工具の切れ刃上を順次移動しながら、被削材の外周面に対する切削加工が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の切削工具を用いたスカイビング加工では、断面視において曲線形状の外周面を有している部材を形成することは、困難である。このような部材は、研削加工により形成することが可能であるが、このような研削加工は総型の砥石(加工する面の形状に合わせた砥石)を用いて行う必要があるため、加工コスト及び加工時間に改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、断面視において曲線形状の外周面を有する部材を形成することが可能な切削工具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る切削工具は、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、すくい面と逃げ面との稜線に形成される切れ刃とを備えている。切削工具は、平面視において多角形形状を有している。切れ刃は、多角形形状の辺に沿って形成されている。切れ刃は、平面視において、曲率半径が900mm以上12000mm以下の円弧形状となっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る切削工具によると、被削材に断面視において曲線形状の外周面を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】切削工具100の切れ刃3近傍における平面図である。
【
図3】切削工具100を用いたスカイビング加工の模式図である。
【
図4】切削工具100を用いたスカイビング加工が行われた後の被削材Wの断面図である。
【
図6】切削工具200の切れ刃3近傍における平面図である。
【
図7】切削工具200を用いたスカイビング加工が行われた後の被削材Wの断面図である。
【
図9】切削工具300の切れ刃3近傍における平面図である。
【
図10】切削工具400の切れ刃3近傍における平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
まず、本発明の実施形態を列記して説明する。
【0011】
(1)本発明の一実施形態に係る切削工具は、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、すくい面と逃げ面との稜線に形成される切れ刃とを備えている。この切削工具は、平面視において多角形形状を有している。切れ刃は、多角形形状の辺に沿って形成されている。切れ刃は、平面視において、曲率半径が900mm以上12000mm以下の円弧形状となっている。
【0012】
上記(1)の切削工具によると、被削材に断面視において曲線形状の外周面を形成することが可能となる。
【0013】
(2)上記(1)の切削工具において、円弧形状は、平面視において、切削工具の外側に向かって凸となっていてもよい。
【0014】
上記(2)の切削工具によると、断面視における被削材の外周面の曲線形状を被削材の内側に向かって凸にすることが可能となる。
【0015】
(3)上記(1)の切削工具において、円弧形状は、平面視において、切削工具の内側に向かって凸となっていてもよい。
【0016】
上記(3)の切削工具によると、断面視における被削材の外周面の曲線形状を被削材の外側に向かって凸にすることが可能となる。
【0017】
(4)本発明の他の実施形態に係る切削工具は、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、すくい面と逃げ面との稜線に形成される切れ刃とを備えている。切削工具は、平面視において多角形形状を有している。切れ刃は、多角形形状の辺に沿って形成されている。切れ刃は、平面視において、曲線形状を有している。切れ刃は、平面視において、第1端と、第1端の反対側の端である第2端とを有している。曲線形状の頂点と第1端及び第2端を結んだ直線との距離を第1端と第2端との間の距離で除した値は、0.0001以上0.01以下である。
【0018】
上記(4)の切削工具によると、被削材に断面視において曲線形状の外周面を形成することが可能となる。
【0019】
(5)上記(4)の切削工具において、曲線形状は、平面視において、切削工具の外側に向かって凸となっていてもよい。
【0020】
上記(5)の切削工具によると、断面視における被削材の外周面の曲線形状を被削材の内側に向かって凸にすることが可能となる。
【0021】
(6)上記(4)の切削工具において、曲線形状は、平面視において、切削工具の内側に向かって凸となっていてもよい。
【0022】
上記(6)の切削工具によると、断面視における被削材の外周面の曲線形状を被削材の外側に向かって凸にすることが可能となる。
【0023】
[本発明の実施形態の詳細]
次に、本発明の実施形態の詳細を、図面を参酌しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0024】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態に係る切削工具(「切削工具100」とする)を説明する。
【0025】
<第1実施形態に係る切削工具の構成>
切削工具100の構成を説明する。
【0026】
切削工具100は、スカイビング加工用の切削工具である。
図1は、切削工具100の斜視図である。
図1に示されるように、切削工具100は、すくい面1と、逃げ面2と、切れ刃3とを有している。逃げ面2は、すくい面1に連なっている。切れ刃3は、すくい面1と逃げ面2との稜線に形成されている。
【0027】
切削工具100は、平面視において、多角形形状を有している。ここで、「平面視」とは、切削工具100をすくい面1に直交する方向から見た場合をいう。
図1に示される例においては、切削工具100は、平面視において、三角形形状を有しているが、切削工具100は、三角形形状以外の多角形形状であってもよい。この「多角形形状」は、完全な多角形形状である必要はなく、その辺に完全な直線でない部分(具体的には、曲線となっている部分)が存在している。切れ刃3は、この多角形形状の辺に沿って形成されている。なお、切れ刃3は、この多角形形状を構成する辺のうちの少なくとも1辺に形成されていればよい。
【0028】
切削工具100は、基材11と、焼結体12と、接合層13とを有している。基材11は、例えば、超硬合金で形成されている。基材11は、頂面11aと、背面11bと、側面11cとを有している。頂面11aは、すくい面1の一部を構成している。背面11bは、頂面11aの反対側の面である。側面11cは、頂面11a及び背面11bに連なっている。側面11cは、逃げ面2の一部を構成している。
【0029】
頂面11aには、座面部11dを有している。座面部11dにある頂面11aと背面11bとの距離は、座面部11d以外にある頂面11aと背面11bとの距離よりも小さくなっている。すなわち、頂面11aには、座面部11dにおいて、段差が形成されている。
【0030】
焼結体12は、硬質材料の焼結体により形成されている。この硬質材料は、例えば立方晶窒化ホウ素(CBN)の焼結体である。焼結体12は、座面部11d上に配置されている。焼結体12は、座面部11dとの間に配置された接合層13により、基材11に接合されている。
【0031】
上記においては、切削工具100が基材11、焼結体12及び接合層13により構成される場合を例として示したが、切削工具100は、基材11のみで同様の形状とすることにより構成されてもよい。
【0032】
図2は、切削工具100の切れ刃3近傍における平面図である。
図2に示されるように、切れ刃3は、平面視において円弧形状を有している。以下において、平面視における切れ刃3の一方端を第1端3aといい、平面視における切れ刃3の他方端を第2端3bという。当該円弧形状の曲率半径R1は、900mm以上12000mm以下となっている。平面視において、上記の円弧形状は、切削工具100の外側に向かって凸になっている。すなわち、平面視において、第1端3a及び第2端3bを結んだ直線Lが切削工具100上を通過している。以下において、上記の円弧形状の頂点を、頂点P1という。頂点P1は、直線Lからの距離が最大となる切れ刃3上の点である。
【0033】
<第1実施形態に係る切削工具を用いたスカイビング加工>
第1実施形態に係る切削工具(切削工具100)を用いたスカイビング加工を説明する。
【0034】
図3は、切削工具100を用いたスカイビング加工の模式図である。
図3に示されるように、被削材Wは、中心軸A周りに回転している。切削工具100は、切れ刃3が中心軸Aの方向に対して傾斜するように配置されている。切削工具100は、切れ刃3が中心軸Aを横切る方向に送られる。より具体的には、切削工具100は、中心軸Aに直交する方向又は中心軸Aに対して傾斜する方向に沿って送られる。
【0035】
その結果、切削開始時には、切れ刃3は第1端3aにおいて被削材の外周面に接触する(切れ刃3と被削材Wの外周面との接触点を切削点という)が、切削の進展に伴い、切削点が第2端3b側に向かって移動する。このように、スカイビング加工においては、切削点が切れ刃3上を順次移動していくため、摩耗が切れ刃3全体に分散される。
【0036】
<第1実施形態に係る切削工具の効果>
切削工具100の効果を説明する。
【0037】
上記のとおり、切れ刃3は、平面視において、切削工具100の外側に向かって凸の円弧形状を有している。そのため、切れ刃3の切り込み量は、第1端3aから頂点P1に向かうにつれて大きくなるとともに、頂点P1から第2端3bに向かって小さくなる。
【0038】
図4は、切削工具100を用いたスカイビング加工が行われた後の被削材Wの断面図である。
図4に示されるように、切れ刃3の切り込み量が第1端3aから頂点P1に向かうにつれて大きくなるとともに、頂点P1から第2端3bに向かって小さくなる結果、被削材Wの外周面は、断面視において(「断面視」における「断面」は、中心軸Aに平行な断面である)、被削材Wの内側に向かって凸の曲線形状となる。すなわち、被削材Wの外周面に凹部が形成される。
【0039】
一般的に、被削材Wが穴を有する他の部材に挿入された際に、被削材Wの外周面に形成された凹部があれば、被削材Wの外周面に油だまりができ、当該穴の内壁面と被削材Wの外周面との間の潤滑性が向上する結果、焼き付きが防止される一方で、油もれが懸念される。しかしながら、切削工具100を用いた加工によると、微少な凹部を被削材Wの外周面に形成することができるため、潤滑性を向上させつつ、シール性を確保することが可能になり、有効性が高い。
【0040】
なお、スカイビング加工においては、切れ刃の端部によって切削された被削材Wが削れすぎてしまう(切削ダレが生じる)場合がある。そのため、切削工具100において曲率半径R1を適宜選択して第1端3a及び第2端3bにおける切り込み量を抑制することにより、このような切削ダレを是正された被削材Wの外周面の形状を得ることも可能である。
【0041】
<実施例>
表1に、曲率半径R1と断面視における被削材Wの外周面の曲面形状の曲率半径との関係が示されている。なお、曲率半径R1及び断面視における被削材Wの外周面の曲面形状の曲率半径は、東京精密株式会社製の形状測定器を用いて測定された。
【0042】
【0043】
表1に示されるように、曲率半径R1を900mmから1100mmの範囲で変化させた場合、断面視における被削材Wの外周面の曲面形状の曲率半径は、1000mmから1500mmの範囲で変化していた。また、曲率半径R1を4000mmから6000mmの範囲で変化させた場合、断面視における被削材Wの外周面の曲面形状の曲率半径は、4000mmから10000mmの範囲で変化していた。さらに、曲率半径R1を8000mmから12000mmの範囲で変化させた場合、断面視における被削材Wの外周面の曲面形状の曲率半径は、8000mmから20000mmの範囲で変化していた。このように、曲率半径R1を900mm以上12000mm以上とすることにより、被削材Wに断面視において曲線形状の外周面を形成することが可能であることが、実験的にも確認された。
【0044】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る切削工具(「切削工具200」とする)を説明する。なお、ここでは、切削工具100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0045】
<第2実施形態に係る切削工具の構成>
切削工具200の構成を説明する。
【0046】
切削工具200は、スカイビング加工用の切削工具である。
図5は、切削工具200の斜視図である。
図5に示されるように、切削工具200は、すくい面1と、逃げ面2と、切れ刃3とを有している。逃げ面2は、すくい面1に連なっている。切れ刃3は、すくい面1と逃げ面2との稜線に形成されている。
【0047】
切削工具200は、平面視において、多角形形状を有している。切れ刃3は、この多角形形状の辺に沿って形成されている。切削工具200は、基材11と、焼結体12と、接合層13とを有している。
【0048】
図6は、切削工具200の切れ刃3近傍における平面図である。
図6に示されるように、切れ刃3は、平面視において円弧形状を有している。当該円弧形状の曲率半径R1は、900mm以上12000mm以下となっている。これらの点に関して、切削工具200の構成は、切削工具100の構成と共通している。
【0049】
しかしながら、平面視において、上記の円弧形状は、切削工具200の内側に向かって凸になっている。すなわち、平面視において、第1端3a及び第2端3bを結んだ直線Lが、切削工具200上を通過していない。この点に関して、切削工具200の構成は、切削工具100の構成と異なっている。
【0050】
<第2実施形態に係る切削工具を用いたスカイビング加工>
切削工具200を用いたスカイビング加工は、切削工具100を用いたスカイビング加工と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0051】
<第2実施形態に係る切削工具の効果>
切削工具200の効果を説明する。
【0052】
上記のとおり、切れ刃3は、平面視において、切削工具200の内側に向かって凸の円弧形状を有している。そのため、切れ刃3の切り込み量は、第1端3aから頂点P1に向かうにつれて小さくなるとともに、頂点P1から第2端3bに向かって大きくなる。
【0053】
図7は、切削工具200を用いたスカイビング加工が行われた後の被削材Wの断面図である。
図7に示されるように、切れ刃3の切り込み量が第1端3aから頂点P1に向かうにつれて小さくなるとともに、頂点P1から第2端3bに向かって大きくなる結果、被削材Wの外周面は、断面視において、被削材Wの外側に向かって凸の曲線形状となる。この場合、被削材Wの先端が相対的に細くなっているため、被削材Wを他の部材に形成された穴に挿入することが容易である。
【0054】
(第3実施形態)
以下に、第3実施形態に係る切削工具(「切削工具300」とする)を説明する。なお、ここでは、切削工具100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0055】
切削工具300の構成を説明する。
切削工具300は、スカイビング加工用の切削工具である。
図8は、切削工具300の斜視図である。
図8に示されるように、切削工具300は、すくい面1と、逃げ面2と、切れ刃3とを有している。逃げ面2は、すくい面1に連なっている。切れ刃3は、すくい面1と逃げ面2との稜線に形成されている。
【0056】
切削工具300は、平面視において、多角形形状を有している。切れ刃3は、この多角形形状の辺に沿って形成されている。切削工具300は、基材11と、焼結体12と、接合層13とを有している。これらの点に関して、切削工具300の構成は、切削工具100の構成と共通している。
【0057】
図9は、切削工具300の切れ刃3近傍における平面図である。
図9に示されるように、切れ刃3は、平面視において、曲線形状を有している。当該曲線形状は、例えば楕円弧形状である。但し、上記の曲線形状は、これに限られるものではない。例えば、当該曲線形状は、円弧形状であってもよい。上記の曲線形状における曲率半径R2は、第1端3aから第2端3bにわたって、900mm以上12000mm以下となっていることが好ましい。
【0058】
平面視において、上記の曲線形状は、切削工具300の外側に向かって凸になっている。すなわち、平面視において、第1端3aと第2端3bとを結んだ直線Lが、切削工具300上を通過している。以下においては、上記の曲線形状の頂点を、頂点P2という。頂点P2は、直線Lとの距離が最大となる切れ刃3上の点である。直線Lと頂点P2との間の距離DIS1を第1端3aと第2端3bとの間の距離DIS2で除した値は、0.0001以上0.01以下(すなわち、距離DIS1は、距離DIS2の0.01パーセント以上1パーセント以下)となっている。これらの点に関して、切削工具300の構成は、切削工具100の構成と異なっている。
【0059】
<第3実施形態に係る切削工具を用いたスカイビング加工>
切削工具300を用いたスカイビング加工は、切削工具100を用いたスカイビング加工と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0060】
<第3実施形態に係る切削工具の効果>
切削工具300の効果を説明する。
【0061】
上記のとおり、切れ刃3は、平面視において、切削工具300の外側に向かって凸の曲線形状を有している。そのため、切れ刃3の切り込み量は、第1端3aから頂点P2に向かうにつれて大きくなるとともに、頂点P2から第2端3bに向かって小さくなる。
【0062】
切れ刃3の切り込み量が第1端3aから頂点P2に向かうにつれて大きくなるとともに、頂点P2から第2端3bに向かって小さくなる結果、被削材Wの外周面は、断面視において、被削材Wの内側に向かって凸の曲線形状となる。
【0063】
<変形例>
以下に、切削工具300の変形例(「切削工具400」とする)を説明する。
【0064】
図10は、切削工具400の切れ刃3近傍における平面図である。
図10に示されるように、切削工具400においては、平面視における切れ刃3の曲線形状が、切削工具400の内側に向かって凸になっている。すなわち、平面視において、直線Lが切削工具400上を通過していない。この点を除き、切削工具400の構成は、切削工具300の構成と同一である。
【0065】
切削工具400においては、平面視における切れ刃3の曲面形状が切削工具400の内側に向かって凸になっているため、切れ刃3の切り込み量は、第1端3aから頂点P2に向かうにつれて小さくなるとともに、頂点P2から第2端3bに向かって大きくなる。その結果、被削材Wの外周面は、断面視において、被削材Wの外側に向かって凸の曲線形状となる。
【0066】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 すくい面
2 逃げ面
3 切れ刃
3a 第1端
3b 第2端
11 基材
11a 頂面
11b 背面
11c 側面
11d 座面部
12 焼結体
13 接合層
100,200,300,400 切削工具
A 中心軸
DIS1,DIS2 距離
L 直線
P1,P2 頂点
R1,R2 曲率半径
W 被削材