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特許7173464抗体提供キット、抗体含有パッチ、これを使用する免疫学的測定のための方法及びデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】抗体提供キット、抗体含有パッチ、これを使用する免疫学的測定のための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20221109BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/543 501M
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021006421
(22)【出願日】2021-01-19
(62)【分割の表示】P 2018562489の分割
【原出願日】2017-02-23
(65)【公開番号】P2021073456
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】62/298,959
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2016-0069936
(32)【優先日】2016-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0069937
(32)【優先日】2016-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0069938
(32)【優先日】2016-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0095739
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0118462
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0144551
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0024389
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518299758
【氏名又は名称】ノウル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NOUL Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リー, ドン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リム, チャン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ギョン ファン
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第95/016208(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/137860(WO,A2)
【文献】特表平09-506177(JP,A)
【文献】特開2015-197399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的タンパク質と特異的に反応する抗体;と
前記抗体が含有されたマイクロキャビティを形成するメッシュ構造で提供され、前記標的タンパク質が配置された反応領域と接触し、含有される抗体のいくつかを前記反応領域に提供するように構成されたメッシュ構造体とを含む、抗体含有パッチであって、
前記標的タンパク質が抗原であり、
前記抗体が、前記抗原と特異的に結合する一次抗体及び前記一次抗体と特異的に結合する二次抗体の結合によって形成された抗体のペアであり;
前記抗体のペアが、前記抗原と特異的に反応し、
前記パッチは、前記反応領域から分離されたときに、前記提供された抗体のうち前記標的タンパク質と特異的に反応していない抗体を前記反応領域から再び吸収する、抗体含有パッチ。
【請求項2】
複数の抗体含有パッチを含むパッチクラスターであって、前記抗体含有パッチが、標的タンパク質と特異的に反応する抗体、及び前記抗体が含有されるマイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、
前記パッチは、反応領域から分離されたときに、提供された抗体のうち前記標的タンパク質と特異的に反応していない抗体を前記反応領域から再び吸収する、パッチクラスター。
【請求項3】
前記複数の抗体含有パッチが、第1の抗体含有パッチ及び第2の抗体含有パッチを含み、前記第1の抗体含有パッチに含有される第1の抗体が特異的に反応する標的タンパク質が、第2の抗体含有パッチに含有される第2の抗体が特異的に反応する標的タンパク質と異なる、請求項2に記載のパッチクラスター。
【請求項4】
マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、マイクロキャビティに液体物質を含有するように構成されたパッチを使用することにより、診断される試料から標的タンパク質を検出することによって、診断を行うための免疫学的測定デバイスであって、
診断される試料が配置される反応領域を有するプレートをサポートするように構成されたプレートサポーター;
標的タンパク質と特異的に反応する抗体を含有する前記パッチと前記反応領域の間の接触状態を制御する接触コントロールモジュールを含むパッチコントローラー;並びに
標的の疾患を診断するために、前記抗体及び前記標的タンパク質の間の特異的反応を検出するように構成された反応検出器
を備え、
接触状態を制御することが、前記抗体が前記反応領域に提供され、前記反応領域から分離されたときに、前記提供された抗体のうち前記標的タンパク質と特異的に反応していない抗体が前記反応領域から再び吸収されるように、前記反応領域に対する前記パッチの位置を制御することを含む、免疫学的測定デバイス。
【請求項5】
マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、マイクロキャビティに液体物質を含有するように構成されたパッチを使用することにより、診断される試料から標的タンパク質を検出することによって、診断を行うための免疫学的測定方法であって、
反応領域に診断される試料を配置するステップ;
第1の標的タンパク質と特異的に反応する第1の抗体を含有するパッチを使用して、前記反応領域に前記第1の抗体を提供するステップ;及び
第2の標的タンパク質と特異的に反応する第2の抗体を含有するパッチを使用して、前記反応領域に前記第2の抗体を提供するステップ
を含み、
前記パッチは、前記反応領域から分離されたときに、前記提供された抗体のうち前記標的タンパク質と特異的に反応していない抗体を前記反応領域から再び吸収する、免疫学的測定方法。
【請求項6】
標的タンパク質と特異的に反応する抗体を含有する媒体;並びに
マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、媒体と接触して、前記媒体に含有される抗体のいくつかを吸収し、前記標的タンパク質が配置された反応領域と接触して、吸収された抗体の少なくともいくつかを前記反応領域に提供するように構成された、抗体提供パッチ
を含み、
前記パッチは、前記反応領域から分離されたときに、前記提供された抗体のうち前記標的タンパク質と特異的に反応していない抗体を前記反応領域から再び吸収する、抗体提供キット。
【請求項7】
マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、マイクロキャビティに液体物質を含有するように構成されたパッチを使用することにより、診断される試料から標的タンパク質を検出することによって、診断を行うための免疫学的測定方法であって、
前記免疫学的測定方法が、
前記標的タンパク質と特異的に反応する抗体を含有する媒体を前記パッチと接触させるステップ;及び
前記パッチを前記標的タンパク質が配置された反応領域と接触させるステップ
を含み、
前記媒体が、前記パッチと接触したときに、前記媒体に含有される前記抗体の少なくともいくつかが、前記パッチに吸収され、
前記パッチは、前記反応領域から分離されたときに、提供された抗体のうち前記標的タンパク質と特異的に反応していない抗体を前記反応領域から再び吸収する、免疫学的測定方法。
【請求項8】
前記パッチが、前記反応領域と接触したときに、前記パッチに吸収された抗体の少なくともいくつかが、前記反応領域に移動可能である、請求項7に記載の免疫学的測定方法。
【請求項9】
前記パッチと前記媒体の接触が、前記パッチと前記媒体の表面を接触させることを含み;
前記反応領域と前記パッチの接触が、前記媒体と接触していない前記パッチの表面を、前記反応領域と接触させることを含む、
請求項7に記載の免疫学的測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗体含有パッチ、これを使用する免疫学的測定方法及び免疫学的測定デバイスに関し、より詳細には、試料から免疫学的特性を使用して診断を経済的に行い、結果を迅速に得るための、抗体を含有するパッチ、並びにこれを使用して免疫学的測定を行うための方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
急速な社会の高齢化及びクオリティオブライフの必要性の増加に起因して、早期診断及び早期処置を狙った診断市場は、韓国を含む世界中で、毎年、成長しており、迅速で容易な診断が重要な問題になっている。特に、診断の形態は、患者の隣で直ぐに行われる、インビトロ診断(IVD)又はポイントオブケア検査(POCT)などの、大きな診断装置を使用せずに、診断を行うことができる形態に移行している。IVDを行うための1つの特定の診断分野である免疫化学的診断は、IVD分野において大部分を占め、広く使用されている1つの診断方法である。
【0003】
臨床免疫学的測定による診断及び化学分析による診断のための総称である免疫化学的診断は、抗原-抗体反応を使用し、様々な疾患の診断及び腫瘍マーカー、アレルギーなどの監視において使用される。免疫化学的診断によって検出可能な様々な疾患及び免疫学的診断による検出の容易さに起因して、免疫化学的診断は、POCTに特に適した診断の一形態として評価される。このような免疫化学的診断の需要は、世界中で着実に増加しており、その増加傾向は、中国において、特に顕著である。
【0004】
従来の免疫学的測定方法では、抗体を検体に適用して、診断しようとする疾患を引き起こす抗原を検出するプロセスにおいて、未結合の抗体又は検出を阻害する他の因子を除去するために、多量の洗浄液を注いでプレートなどをすすぐ洗浄プロセスが、必ず必要である。この場合において、多量の洗浄液が廃棄されるという問題がある。また、従来の免疫学的測定方法は、固定された抗体及び適用された抗原の間の有効接触表面積を増加させるために、抗体が適用される領域を設計するための別の取り組みが必要であり、かつ複雑に設計された領域が、反応の検出にも影響を及ぼすという欠点を有する。
【0005】
したがって、診断に必要な溶液の量を最小化しながら、検出を阻害する因子を効率的に除去する手段が必要である。また、診断の実施を容易にし、かつ結果を容易に検出することを可能にする、反応空間の提供が必要である。
【発明の概要】
【0006】
[開示]
〔技術的課題〕
本開示の一態様は、物質を保管する能力があるパッチを提供することである。
【0007】
本開示の一態様は、物質のための反応空間を提供する能力があるパッチを提供することである。
【0008】
本開示の一態様は、物質を提供する能力があるパッチを提供することである。
【0009】
本開示の一態様は、物質を吸収する能力があるパッチを提供することである。
【0010】
本開示の一態様は、環境を提供する能力があるパッチを提供することである。
【0011】
本開示の一態様は、抗体を含有するパッチを提供することである。
【0012】
本開示の一態様は、パッチを使用する免疫学的測定方法を提供することである。
【0013】
〔技術的解決手段〕
本開示の一態様によれば、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、マイクロキャビティに液体物質を含有するように構成されたパッチを使用することにより、診断される試料から標的タンパク質を検出することによって、診断を行うための免疫学的測定デバイスであって、免疫学的測定デバイスが、反応領域が配置され、診断される試料が反応領域に配置されたプレートをサポートするために構成されたプレートサポーターと、標的タンパク質と特異的に反応する抗体を含有するために構成されたパッチを使用し、抗体が反応領域に提供されるように、反応領域に対してパッチの位置を制御するために構成されたパッチコントローラーと、標的の疾患を診断するために、抗体と標的タンパク質との特異的反応を検出するために構成された反応検出器とを備える、免疫学的測定デバイスが提供される。
【0014】
本開示の別の態様によれば、標的タンパク質と特異的に反応する抗体、並びに抗体が含有されたマイクロキャビティを形成するメッシュ構造で提供され、標的タンパク質が配置された反応領域と接触し、含有される抗体のいくつかを反応領域に提供するように構成されたメッシュ構造体を含む、抗体含有パッチが提供される。
【0015】
標的タンパク質と特異的に反応する抗体は、標的抗原と特異的に結合する一次抗体であってもよい。
【0016】
標的タンパク質と特異的に反応する抗体は、標的抗原と特異的に結合する抗体と特異的に結合する二次抗体であってもよい。
【0017】
標的タンパク質は、抗原であってもよく、抗体は、抗原と特異的に結合する一次抗体及び一次抗体と特異的に結合する二次抗体の間の結合によって形成された抗体のペアであってもよく、抗体のペアは、抗原と特異的に反応することができる。
【0018】
複数の標的タンパク質が、存在していてもよく、複数の標的タンパク質は、第1の標的タンパク質及び第2の標的タンパク質を含んでいてもよく、抗体は、第1の標的タンパク質と特異的に反応する第1の抗体及び第2の標的タンパク質と特異的に反応する第2の抗体を含んでいてもよい。
【0019】
本開示のさらに別の態様によれば、複数の抗体含有パッチを含むパッチクラスターであって、抗体含有パッチが、標的タンパク質と特異的に反応する抗体、及び抗体が含有されるマイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含む、パッチクラスターが提供される。
【0020】
複数の抗体含有パッチは、第1の抗体含有パッチ及び第2の抗体含有パッチを含んでいてもよく、第1の抗体含有パッチに含有される第1の抗体が特異的に反応する標的タンパク質は、第2の抗体含有パッチに含有される第2の抗体が特異的に反応する標的タンパク質と異なっていてもよい。
【0021】
本開示のまた別の態様によれば、標的タンパク質と特異的に結合する抗体に付着した酵素によって触媒される化学反応によって生成物を生成する基質、並びに基質が含有されたマイクロキャビティを形成するメッシュ構造で提供され、標的タンパク質が配置された反応領域と接触し、含有される基質のいくつかを反応領域に提供するように構成されたメッシュ構造体を含む、基質含有パッチが提供される。
【0022】
本開示のまた別の態様によれば、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、マイクロキャビティに液体物質を含有するように構成されたパッチを使用することにより、診断される試料から標的タンパク質を検出することによって、診断を行う免疫学的測定方法であって、免疫学的測定方法が、反応領域に診断される試料を配置するステップ、及び抗体を含有するパッチを使用することによって、反応領域に、標的タンパク質と特異的に反応する抗体を提供するステップを含む、免疫学的測定方法が提供される。
【0023】
免疫学的測定方法は、抗体に付着した酵素によって触媒される化学反応によって生成物を生成する基質を、基質を含有するパッチを使用することによって、反応領域に提供するステップをさらに含んでいてもよい。
【0024】
免疫学的測定方法は、抗体及び標的タンパク質の間の特異的反応を検出して、標的の疾患を診断するステップをさらに含んでいてもよい。
【0025】
この場合において、特異的反応の検出は、特異的反応に起因して生じるパッチの電気的特性の変化を測定することによって、特異的反応を検出することを含んでいてもよい。
【0026】
特異的反応の検出は、標的タンパク質と特異的に結合する抗体に付着した酵素によって触媒される化学反応に起因して生じる蛍光を測定すること、化学反応に起因して生じる発光を測定すること、及び化学反応に起因して発生する色を測定することのうちの少なくともいずれか1つによって行われてもよい。
【0027】
診断される試料の配置は、試料をプレートに固定する方法、試料をプレートに塗抹する方法、及び試料をプレートに塗抹し、試料を固定する方法のうちのいずれか1つによって行われてもよい。
【0028】
パッチを使用することによる反応領域への抗体の提供は、パッチを反応領域と接触させて、抗体を反応領域に移動可能にすること、及び反応領域からパッチを分離することを含んでいてもよく、パッチが、反応領域から分離されたときに、抗体の中から、標的タンパク質と特異的に反応していない抗体が、反応領域から除去され得る。
【0029】
免疫学的測定方法は、洗浄パッチを使用することによって、提供された抗体の中から、標的タンパク質と特異的に反応していない抗体を、反応領域から吸収するステップをさらに含んでいてもよい。
【0030】
パッチを使用することによる反応領域への抗体の提供は、標的タンパク質と特異的に反応する第1の抗体を含有する第1のパッチを使用して、反応領域に第1の抗体を提供すること、並びに第1の抗体と特異的に反応する第2の抗体を含有する第2のパッチを使用して、反応領域に第2の抗体を提供することを含んでいてもよい。
【0031】
免疫学的測定方法において、反応領域はプレート上に位置してもよく、免疫学的測定方法は、反応領域への診断される試料の配置の前に、標的タンパク質と特異的に反応する抗体である、下部抗体が、反応領域に固定された、プレートを準備するステップをさらに含んでいてもよく、反応領域における診断される試料の配置は、下部抗体が固定された反応領域に、診断される試料を配置することを含んでいてもよい。
【0032】
免疫学的測定方法において、複数の標的タンパク質が、存在していてもよく、複数の標的タンパク質は、第1の標的タンパク質及び第2の標的タンパク質を含んでいてもよく、パッチは、第1の標的タンパク質と特異的に反応する第1の抗体及び第2の標的タンパク質と特異的に反応する第1の抗体を含んでいてもよい。
【0033】
免疫学的測定方法において、複数の標的タンパク質が、存在していてもよく、抗体を含有する複数のパッチが存在していてもよく、複数の標的タンパク質は、第1の標的タンパク質及び第2の標的タンパク質を含んでいてもよく、複数のパッチは、第1の標的タンパク質と特異的に反応する第1の抗体を含有する第1のパッチ及び第2の標的タンパク質と特異的に反応する第2の抗体を含有する第2のパッチを含んでいてもよい。
【0034】
本開示のまた別の態様によれば、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、マイクロキャビティに液体物質を含有するように構成されたパッチを使用することにより、診断される試料から標的タンパク質を検出することによって、診断を行うための免疫学的測定方法であって、免疫学的測定方法が、診断される試料を反応領域に配置するステップ、第1の標的タンパク質と特異的に反応する第1の抗体を含有するパッチを使用して、反応領域に第1の抗体を提供するステップ、及び第2の標的タンパク質と特異的に反応する第2の抗体を含有するパッチを使用して、反応領域に第2の抗体を提供するステップを含む、免疫学的測定方法が提供される。
【0035】
上記の実施形態において、免疫学的測定方法は、第2の抗体の提供後、第1の標的タンパク質及び第2の標的タンパク質を検出するステップをさらに含んでいてもよい。
【0036】
この場合において、第1の標的タンパク質の検出は、第1の標的タンパク質と特異的に結合する第1の抗体に付着した蛍光ラベルから検出される第1の蛍光を検出することを含んでいてもよく、第2の標的タンパク質の検出は、第2の標的タンパク質と特異的に結合する第2の抗体に付着した蛍光ラベルから検出される第2の蛍光を検出することを含んでいてもよい。ここで、第1の蛍光が検出される波長域、及び第2の蛍光が検出される波長域は、互いに異なっていてもよい。
【0037】
上記の実施形態において、免疫学的測定方法は、反応領域への第1の抗体の提供後、第1の標的タンパク質を検出するステップ、及び反応領域への第2の抗体の提供後、第2の標的タンパク質を検出するステップをさらに含んでいてもよい。
【0038】
この場合において、第1の標的タンパク質の検出は、第1の標的タンパク質と特異的に結合する第1の抗体に付着した蛍光ラベルから検出される第1の蛍光を検出することを含んでいてもよく、第2の標的タンパク質の検出は、第2の標的タンパク質と特異的に結合する第2の抗体に付着した蛍光ラベルから検出される第2の蛍光を検出することを含んでいてもよい。
【0039】
ここで、第1の蛍光が検出される波長域は、第2の蛍光が検出される波長域の少なくとも一部と重複していてもよく、第2の蛍光の検出は、第2の抗体が反応領域に提供された後に試料から検出される蛍光、及び第2の抗体が反応領域に提供される前に試料から検出される蛍光を比較することによって行ってもよい。
【0040】
本開示のまた別の態様によれば、標的タンパク質と特異的に反応する抗体を含有する媒体、並びに、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、媒体に含有される抗体のいくつかを吸収する媒体と接触し、標的タンパク質が配置された反応領域と接触して、吸収された抗体の少なくともいくつかを反応領域に提供するように構成された、抗体提供パッチを含む、抗体提供キットが提供される。
【0041】
本開示のまた別の態様によれば、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、マイクロキャビティに液体物質が扱われるように構成されたパッチを使用することにより、診断される試料から標的タンパク質を検出することによって、診断を行うための免疫学的測定方法であって、免疫学的測定方法が、標的タンパク質と特異的に反応する抗体を含有する媒体をパッチと接触させるステップ、及びパッチを標的タンパク質が配置された反応領域と接触させるステップを含み、媒体が、パッチと接触したときに、媒体に含有される抗体の少なくともいくつかが、パッチに吸収される、免疫学的測定方法が提供される。この場合において、パッチが反応領域と接触したときに、パッチに吸収された抗体の少なくともいくつかは、反応領域に移動可能であり得る。
【0042】
パッチとの媒体の接触は、パッチと媒体の表面を接触させることを含んでいてもよく、反応領域とパッチの接触は、媒体と接触していないパッチの表面を、反応領域と接触させることを含んでいてもよい。
【0043】
本開示の技術的課題を解決するための解決手段は、上述の解決手段に限定されず、他の言及されていない解決手段は、本明細書及び添付の図面から、本開示が関連する当業者によって、明確に理解されるべきである。
【0044】
[有利な効果]
本開示によれば、物質の含有、提供及び吸収は、容易に行うことができる。
【0045】
本開示によれば、物質のための反応領域を提供することができ、又は所定の環境を標的領域に提供することができる。
【0046】
本開示によれば、免疫学的測定をより好都合に行うことができ、診断結果を迅速に得ることができる。
【0047】
本開示によれば、十分な信頼性を有する診断結果を、少量の試料を使用して、得ることができる。
【0048】
本開示によれば、物質の提供及び吸収は、パッチを使用して、適切に調整することができ、診断に必要な溶液の量を、著しく減少させることができる。
【0049】
本開示によれば、診断は、複数の標的を同時に検出することによって行うことができ、結果として、患者特異的な診断を行うことができる。
【0050】
本開示の有利な効果は、上記に列挙されたものに限定されず、言及されていない有利な効果は、本明細書及び添付の図面から、本開示が関連する当業者によって、明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、本出願によるパッチの詳細な一例を示す。
図2図2は、本出願によるパッチの詳細な一例を示す。
図3図3は、本出願によるパッチの機能の一例として、反応空間の提供を示す。
図4図4は、本出願によるパッチの機能の一例として、反応空間の提供を示す。
図5図5は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
図6図6は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
図7図7は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
図8図8は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
図9図9は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
図10図10は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
図11図11は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
図12図12は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
図13図13は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の提供を示す。
図14図14は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
図15図15は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
図16図16は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
図17図17は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
図18図18は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
図19図19は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
図20図20は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
図21図21は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
図22図22は、本出願によるパッチの機能の一例として、物質の吸収を示す。
図23図23は、本出願によるパッチの機能の一例として、環境の提供を示す。
図24図24は、本出願によるパッチの機能の一例として、環境の提供を示す。
図25図25は、本出願によるパッチの機能の一例として、環境の提供を示す。
図26図26は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供の実施を示す。
図27図27は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供の実施を示す。
図28図28は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供の実施を示す。
図29図29は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供の実施を示す。
図30図30は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供の実施を示す。
図31図31は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供、並びに環境の提供の実施を示す。
図32図32は、本出願によるパッチの一実施形態として、物質の吸収及び提供、並びに環境の提供の実施を示す。
図33図33は、本出願によるパッチの一実施形態として、複数のパッチの実施を示す。
図34図34は、本出願によるパッチの一実施形態として、複数のパッチ及び複数の標的領域を有するプレートの実施を示す。
図35図35は、本出願による免疫学的測定方法の一例を説明するためのフローチャートを示す。
図36図36は、本出願による免疫学的測定方法の一例を説明するためのフローチャートを示す。
図37図37は、本出願による免疫学的測定方法の一例を説明するためのフローチャートを示す。
図38図38は、本出願の一実施形態による免疫学的測定方法において、反応領域に抗体を提供する一例を説明するためのフローチャートを示す。
図39図39は、本出願による免疫学的測定方法の一例を説明するためのフローチャートを示す。
図40図40は、本出願の一実施形態による免疫学的測定方法において、反応領域に抗体を提供する一例を説明するためのフローチャートを示す。
図41図41は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用する免疫学的測定方法を説明するためのフローチャートを示す。
図42図42は、本出願による免疫学的測定方法の一例を説明するためのフローチャートを示す。
図43図43は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法を説明するためのフローチャートを示す。
図44図44は、本出願による免疫学的測定方法の一例を説明するためのフローチャートを示す。
図45図45は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図46図46は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図47図47は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図48図48は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図49図49は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図50図50は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図51図51は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図52図52は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図53図53は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図54図54は、本出願の一実施形態による洗浄パッチを使用する洗浄の実施を示す。
図55図55は、本出願の一実施形態による洗浄パッチを使用する洗浄の実施を示す。
図56図56は、本出願の一実施形態による洗浄パッチを使用する洗浄の実施を示す。
図57図57は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、直接ELISAを使用する免疫学的測定方法を説明するためのフローチャートを示す。
図58図58は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、直接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図59図59は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、直接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図60図60は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、直接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図61図61は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、直接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図62図62は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態として、直接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図63図63は、本出願によるパッチの一実施形態として、抗体のペアを含有するパッチを示す。
図64図64は、本出願によるパッチの一実施形態として、一次抗体及び二次抗体を含有するパッチを示す。
図65図65は、本出願によるパッチの一実施形態として、抗体のペアを含有するパッチを製造するプロセスの一例の一部を示す。
図66図66は、本出願によるパッチの一実施形態として、抗体のペアを含有するパッチを製造するプロセスの一例の一部を示す。
図67図67は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法を説明するためのフローチャートを示す。
図68図68は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図69図69は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図70図70は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図71図71は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図72図72は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図73図73は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。
図74図74は、本出願による免疫学的測定方法におけるパッチの一例として、抗体を吸収及び含有するパッチを示す。
図75図75は、本出願によるパッチの一例として、抗体を吸収及び含有するパッチを示す。
図76図76は、本出願によるパッチの一例として、抗体を吸収及び含有するパッチを示す。
図77図77は、本出願によるパッチの一例として、抗体を吸収、含有及び提供するパッチを示す。
図78図78は、本出願による免疫学的測定デバイスの一実施形態を示す。
図79図79は、本出願による免疫学的測定デバイスの一実施形態におけるパッチコントローラーの一例を示す。
図80図80は、本出願による免疫学的測定方法の一例を説明するためのフローチャートを示す。
図81図81は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態を説明するためのフローチャートを示す。
図82図82は、本出願による免疫学的測定方法の一実施形態を説明するためのフローチャートを示す。
図83図83は、本出願による免疫学的測定方法において、複数の標的タンパク質が検出される場合の一部を示す。
図84図84は、本出願による免疫学的測定方法において、複数の標的タンパク質が検出される場合の一部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本明細書で説明される実施形態は、本開示が関連する当業者に、本開示の要旨を明確に説明するためのものであるので、本開示は、本明細書で説明される実施形態に限定されず、本開示の範囲は、本開示の要旨から逸脱することなく、改変例又は変形例を含むものとして、解釈されるべきである。
【0053】
現在、可能な限り広く使用されている一般用語を、本開示における機能を考慮して本明細書において使用する用語として選択しているが、この用語は、本開示に関連する当業者の意図及び慣例、又は新たな技術の出現などに従って変更することができる。しかしながら、その代わりに、特定の用語が、ある意味として定義され、使用される場合、その用語の意味は、別々に説明される。それ故に、本明細書で使用される用語は、その用語の名前に単に基づく代わりに、本明細書にわたって用語及び内容の実質的な意味に基づいて、解釈されるべきである。
【0054】
本明細書に添付する図面は、本開示を容易に説明するためのものである。図面に示された形状は、本開示の理解を助けるために必要な程度に誇張して描かれていることがあるので、本開示は、図面によって限定されるものではない。
【0055】
本開示に関する公知の配置又は機能の詳細な説明が、本明細書における本開示の主旨を曖昧にすると考えられる場合、それらに関する詳細な説明は、必要により、省略する。
【0056】
1.パッチ
1.1 パッチの意味
本出願において、液体物質を管理するためのパッチが開示される。
【0057】
液体物質は、液体状態にあって、流動することができる、物質を意味し得る。
【0058】
液体物質は、流動性を有する単一成分で形成される物質であってもよい。或いは、液体物質は、複数の成分で形成される物質を含む混合物であってもよい。
【0059】
液体物質が、単一成分で形成される物質である場合、液体物質は、単一の化学元素で形成される物質又は複数の化学元素を含む化合物であってもよい。
【0060】
液体物質が混合物である場合、複数の成分で形成される物質の一部は、溶媒としての機能を果たしてもよく、他の部分は、溶質としての機能を果たしてもよい。すなわち、混合物は溶液であってもよい。
【0061】
物質を形成する混合物を構成する複数の成分は、均一に分布していてもよい。或いは、複数の成分で形成される物質を含む混合物は、均一に混合された混合物であってもよい。
【0062】
複数の成分で形成される物質は、溶媒、及び溶媒に溶解せず、均一に分布する物質を含んでいてもよい。
【0063】
複数の成分で形成される物質の一部は、不均一に分布していてもよい。不均一に分布した物質は、溶媒中に、不均一に分布した粒子成分を含んでいてもよい。この場合において、不均一に分布した粒子成分は、固相中にあってもよい。
【0064】
例えば、パッチを使用して管理され得る物質は、1)単一成分で形成される液体、2)溶液、又は3)コロイドの状態であってもよく、状況により、4)固体粒子が、別の液体物質内に不均一に分布している状態であってもよい。
【0065】
本明細書の以下において、本出願によるパッチをより詳細に説明する。
【0066】
1.2 パッチの一般的性質
1.2.1 配置
図1及び図2は、本出願によるパッチの一例を示す図である。本出願によるパッチを、図1及び図2を参照して、以下に説明する。
【0067】
図1を参照すると、本出願によるパッチPAは、メッシュ構造体NS及び液体物質を含むことができる。
【0068】
液体物質として、塩基性物質BS及び添加物質ASを、別々に考慮に入れることができる。
【0069】
パッチPAは、ゲル状態(ゲル型)であってもよい。パッチPAは、コロイド分子が結合して、メッシュ組織を形成する、ゲル型の構造体として、実施されてもよい。
【0070】
本出願によるパッチPAは、液体物質SBを管理するための構造であり、三次元メッシュ(網様)構造体NSを含むことができる。メッシュ構造体NSは、連続的に分布した固体構造であってもよい。メッシュ構造体NSは、複数のマイクロスレッドがより合わされたメッシュ構造を有していてもよい。しかしながら、メッシュ構造体NSは、複数のマイクロスレッドがより合わされたメッシュ形態に限定されず、複数のマイクロ構造の接続によって形成される任意の三次元マトリックスの形態で実施されてもよい。例えば、メッシュ構造体NSは、複数のマイクロキャビティを含むフレーム構造体であってもよい。言い換えれば、メッシュ構造体NSは、複数のマイクロキャビティMCを形成していてもよい。
【0071】
図2は、本出願の一実施形態によるパッチの構造を示す。図2を参照すると、パッチPAのメッシュ構造体は、スポンジ構造SSを有することができる。スポンジ構造SSのメッシュ構造体は、複数のマイクロホールMHを含んでいてもよい。本明細書の以下において、マイクロホールMH及びマイクロキャビティMCという用語は、互換可能に使用することができ、他に特に言及がない限り、マイクロキャビティMCという用語は、マイクロホールMHの概念を包含するものとして定義される。
【0072】
メッシュ構造体NSは、規則的又は不規則なパターンを有していてもよい。さらにまた、メッシュ構造体NSは、規則的なパターンを有する領域、及び不規則なパターンを有する領域の両方を含んでいてもよい。
【0073】
メッシュ構造体NSの密度は、所定の範囲内の値を有していてもよい。所定の範囲は、パッチPAに捕捉された液体物質SBの形態が、パッチPAに対応する形態に維持される限度内に設定され得ることが好ましい。密度は、メッシュ構造体NSが、高密度である程度、又はメッシュ構造体NSがパッチ内で占める、質量比、体積比などとして、定義してもよい。
【0074】
本出願によるパッチは、三次元メッシュ構造を有することによって、液体物質SBを管理することができる。
【0075】
本出願によるパッチPAは、液体物質SBを含むことができ、パッチPAに含まれる液体物質SBの流動性は、パッチPAのメッシュ構造体NSの形態によって制限され得る。
【0076】
液体物質SBは、メッシュ構造体NS内で、自由に流動してもよい。言い換えれば、液体物質SBは、メッシュ構造体NSによって形成される複数のマイクロキャビティに配置される。液体物質SBの交換は、隣接するマイクロキャビティの間で生じてもよい。この場合において、液体物質SBは、液体物質SBがメッシュ組織を形成するフレーム構造体に浸透する状態で、存在することができる。このような場合において、液体物質SBが浸透することができるナノサイズの孔が、フレーム構造体に形成されていてもよい。
【0077】
さらに、液体物質SBが、メッシュ構造のフレーム構造体を満たしているか否かは、パッチPAに捕捉されている液体物質SBの分子量又は粒子径に応じて、決定することができる。比較的大きな分子量を有する物質は、マイクロキャビティに捕捉されてもよく、比較的小さな分子量を有する物質は、フレーム構造体によって捕捉されてもよく、メッシュ構造体NSのマイクロキャビティ及び/又はフレーム構造体を満たしていてもよい。
【0078】
本明細書において、「捕捉する」という用語は、液体物質SBが、メッシュ構造体NSによって形成される、複数のマイクロキャビティ及び/又はナノサイズの孔に配置されている状態として定義してもよい。上記の説明のように、液体物質SBがパッチPAに捕捉されている状態は、液体物質SBが、マイクロキャビティ及び/又はナノサイズの孔の間で流動することができる状態を含むものとして定義される。
【0079】
下記のように、塩基性物質BS及び添加物質ASは、液体物質SBとして、別々に考慮に入れることができる。
【0080】
塩基性物質BSは、流動性を有する液体物質SBであってもよい。
【0081】
添加物質ASは、塩基性物質BSと混合された、流動性を有する物質であってもよい。言い換えれば、塩基性物質BSは、溶媒であってもよい。添加物質ASは、溶媒に溶解した溶質であってもよく、又は溶媒に溶融していない粒子であってもよい。
【0082】
塩基性物質BSは、メッシュ構造体NSによって形成されたマトリックスの内部で流動する能力がある物質であってもよい。塩基性物質BSは、メッシュ構造体NSに均一に分布していてもよく、又はメッシュ構造体NSの一部の領域にのみ分布していてもよい。塩基性物質BSは、単一成分を有する液体であってもよい。
【0083】
添加物質ASは、塩基性物質BSと混合されるか、又は塩基性物質BSに溶解する物質であってもよい。例えば、塩基性物質BSが溶媒であると同時に、添加物質ASは、溶質としての機能を果たしてもよい。添加物質ASは、塩基性物質BSに均一に分布していてもよい。
【0084】
添加物質ASは、塩基性物質BSに溶解していない微粒子であってもよい。例えば、添加物質ASは、コロイド分子及び微生物などの微粒子を含んでいてもよい。
【0085】
添加物質ASは、メッシュ構造体NSによって形成されるマイクロキャビティよりも大きい粒子を含んでいていてもよい。マイクロキャビティのサイズが、添加物質ASに含まれる粒子のサイズよりも小さい場合、添加物質ASの流動性は、制限され得る。
【0086】
一実施形態によれば、添加物質ASは、パッチPAに選択的に含まれる成分を含んでいてもよい。
【0087】
添加物質ASは、上述の塩基性物質BSと比較して、量が少ないか、又は機能が劣る物質を、必ずしも指すわけではない。
【0088】
本明細書の以下において、パッチPAに捕捉された液体物質SBの特性は、パッチPAの特性と推定することができる。すなわち、パッチPAの特性は、パッチPAに捕捉された物質の特性に依存し得る。
【0089】
1.2.2 特性
上記の説明のように、本出願によるパッチPAは、メッシュ構造体NSを含むことができる。パッチPAは、メッシュ構造体NSによって、液体物質SBを管理することができる。パッチPAは、パッチPAに捕捉された液体物質SBが、その固有の特性の少なくともいくつかを維持することを、可能にし得る。
【0090】
例えば、液体物質SBが分布するパッチPAの領域において、物質の拡散が生じてもよく、表面張力などの力が作用する状態であってもよい。
【0091】
パッチPAは、標的物質の拡散が、物質の熱運動又は物質の密度若しくは濃度の相違に起因して引き起こされる、液体環境を提供することができる。一般に、「拡散」とは、物質を構成する粒子が、濃度の相違に起因して、濃度が高い側から、濃度が低い側に広がる現象を指す。このような拡散現象は、基本的に、分子の運動(気体又は液体中での並進運動、固体中での振動運動など)に起因して引き起こされる現象として、理解され得る。本出願において、粒子が、濃度又は密度の相違に起因して、濃度が高い側から、濃度が低い側に広がる現象を指すのに加えて、「拡散」とは、粒子が、濃度が均一な場合であっても生じる分子の不規則運動に起因して移動する現象も指す。「不規則運動」という表現はまた、他に特に言及がない限り、「拡散」と同じ意味を有し得る。拡散した物質は、液体物質SBに溶解した溶質であってもよく、拡散した物質は、固体、液体又は気体状態で提供されてもよい。
【0092】
より詳細には、パッチPAによって捕捉された液体物質SB中に不均一に分布した物質は、パッチPAによって提供される空間に拡散することができる。言い換えれば、添加物質ASは、パッチPAによって規定される空間に拡散することができる。
【0093】
パッチPAによって管理される液体物質SB中に不均一に分布した物質又は添加物質ASは、パッチPAのメッシュ構造体NSによって提供されるマイクロキャビティ内に拡散することができる。不均一に分布した物質又は添加物質ASが拡散し得る領域は、別の物質と、接続又は接触しているパッチPAによって、変化し得る。
【0094】
パッチPA内又はパッチPAに接続された外部領域内での不均一に分布した物質又は添加物質ASの拡散の結果として、物質又は添加物質ASの濃度が均一になった後でさえ、物質又は添加物質ASは、パッチPAの内部及び/又はパッチPAに接続された外部領域内での分子の不規則運動に起因して、絶え間なく、移動することができる。
【0095】
パッチPAは、親水性又は疎水性の性質を示すように実施されてもよい。言い換えれば、パッチPAのメッシュ構造体NSは、親水性又は疎水性の性質を有し得る。
【0096】
メッシュ構造体NS及び液体物質SBの性質が類似している場合、メッシュ構造体NSは、液体物質SBを、より効果的に管理することが可能であり得る。
【0097】
塩基性物質BSは、極性の親水性物質又は非極性の疎水性物質であってもよい。添加物質ASは、親水性又は疎水性の性質を示してもよい。
【0098】
液体物質SBの性質は、塩基性物質BS及び/又は添加物質ASに関係していてもよい。例えば、塩基性物質BS及び添加物質ASの両方が、親水性である場合、液体物質SBは、親水性であってもよく、塩基性物質BS及び添加物質ASの両方が、疎水性である場合、液体物質SBは、疎水性であってもよい。塩基性物質BS及び添加物質ASの極性が異なる場合、液体物質SBは、親水性又は疎水性であってもよい。
【0099】
メッシュ構造体NS及び液体物質SBの両方の極性が、親水性又は疎水性である場合、引力が、メッシュ構造体NS及び液体物質SBの間で作用する状態であり得る。メッシュ構造体NS及び液体物質SBの極性が正反対である場合、例えば、メッシュ構造体NSの極性が疎水性であって、液体物質SBの極性が親水性である場合、反発力が、メッシュ構造体NS及び液体物質SBの間で作用し得る。
【0100】
上述の性質に基づけば、パッチPAは、単独で使用されてもよく、複数のパッチPAが使用されてもよく、又はパッチPAは、所望の反応を誘導する別の媒体とともに使用されてもよい。本明細書の以下において、パッチPAの機能的な態様を説明する。
【0101】
しかしながら、本明細書の以下において、説明の便宜上、パッチPAを、親水性溶液を含み得るゲル型であると仮定する。言い換えれば、他に特に言及がない限り、パッチPAのメッシュ構造体NSは、親水性の性質を有すると仮定する。
【0102】
しかしながら、本出願の範囲は、親水性の性質を有するゲル型パッチPAに限定されるものと解釈されるべきではない。疎水性の性質を示す溶液を含むゲル型パッチPAに加えて、溶媒が除去されたゲル型パッチPA及び、さらにゾル型パッチPAも、本出願による機能を実施する能力がある限り、本出願の範囲に属し得る。
【0103】
2.パッチの機能
上述の特性に起因して、本出願によるパッチは、いくつかの有用な機能を有し得る。言い換えれば、液体物質SBを捕捉することによって、パッチは、液体物質SBの挙動に関与するようになり得る。
【0104】
したがって、本明細書の以下において、パッチPAに関する物質の挙動の形態に従って、物質の状態がパッチPAによって形成された所定の領域に規定されたリザーバー機能、及び物質の状態がパッチPAの外部領域を含む領域に規定されたチャネリング機能を、別々に説明する。
【0105】
2.1 リザーバー
2.1.1 意味
上記で説明するように、本出願によるパッチPAは、液体物質SBを捕捉することができる。言い換えれば、パッチPAは、リザーバーとしての機能を果たすことができる。
【0106】
パッチPAは、メッシュ構造体NSを使用して、メッシュ構造体NSに形成された複数のマイクロキャビティに、液体物質SBを捕捉することができる。液体物質SBは、パッチPAの三次元メッシュ構造体NSによって形成された微細なマイクロキャビティの少なくとも一部を占めていてもよく、又はメッシュ構造体NSに形成されたナノサイズの孔中に浸透していてもよい。
【0107】
パッチPAに配置された液体物質SBは、液体物質SBが複数のマイクロキャビティに分布している場合でさえ、液体の性質を失わない。すなわち、液体物質SBは、パッチPA中においてさえ、流動性を有し、物質の拡散は、パッチPAに分布した液体物質SBにおいて生じてもよく、適切な溶質は、物質に溶解していてもよい。
【0108】
パッチPAのリザーバー機能を、より詳細に以下で説明する。
【0109】
2.1.2 含有
本出願において、パッチPAは、上述の特性に起因して、標的物質を捕捉することができる。パッチPAは、所定の範囲内で、外部環境の変化に対する抵抗性を有していてもよい。この方法において、パッチPAは、物質が捕捉された状態を維持することができる。捕捉される標的である液体物質SBは、三次元メッシュ構造体NSを占めていてもよい。
【0110】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「含有」と称する。
【0111】
しかしながら、「液体物質を含有するパッチPA」は、液体物質が、メッシュ構造によって形成される空間に含有される場合、及び/又は、液体物質が、メッシュ構造体NSを構成するフレーム構造体に含有される場合を包含するものとして定義される。
【0112】
パッチPAは、液体物質SBを含有することができる。例えば、パッチPAは、パッチPAのメッシュ構造体NS及び液体物質SBの間で作用する引力に起因して、液体物質SBを含有することができる。液体物質SBは、所定の強度又はそれより高い引力でメッシュ構造体NSと結合することができ、パッチPAに含有され得る。
【0113】
パッチPAに含有される液体物質SBの性質は、パッチPAの性質に従って分類することができる。より詳細には、パッチPAが親水性の性質を示す場合、パッチPAは、一般に、極性である、親水性の液体物質SBと結合することができ、三次元マイクロキャビティに親水性の液体物質SBを含有することができる。或いは、パッチPAが疎水性の性質を示す場合、疎水性の液体物質SBは、三次元メッシュ構造体NSのマイクロキャビティに含有され得る。
【0114】
パッチPAに含有され得る物質の量は、パッチPAの体積に比例していてもよい。言い換えれば、パッチPAに含有される物質の量は、パッチPAの形態に寄与する支持体として機能する三次元メッシュ構造体NSの量に比例していてもよい。しかしながら、パッチPAに含有され得る物質の量及びパッチPAの体積の間に一定の比例係数は存在せず、したがって、パッチPAに含有され得る物質の量及びパッチPAの体積の間の関係は、メッシュ構造の設計又は製造方法に従って変化し得る。
【0115】
パッチPAに含有される物質の量は、時間とともに、蒸発、喪失などに起因して、減少することがある。パッチPAに含有される物質の含量を増加又は維持するために、物質を、パッチPAに追加で注入してもよい。例えば、水分の蒸発を抑制するための水分保持剤を、パッチPAに添加してもよい。
【0116】
パッチPAは、液体物質SBを保管するのに容易な形態で実施されてもよい。これは、物質が、湿度レベル、光の量及び温度などの環境要因によって影響を受ける場合に、パッチPAが、物質の変性を最小限にして、実施することができることを意味する。例えば、パッチPAが細菌などの外部要因に起因して変性するのを阻止するために、パッチPAは、細菌阻害剤で処理されてもよい。
【0117】
複数の成分を有する液体物質SBが、パッチPAに含有されていてもよい。この場合において、複数の成分で形成される物質は、基準時点の前に、パッチPAに一緒に配置されてもよく、又は、当初に注入された物質は、最初にパッチPAに含有されてもよく、次いで、二番目の物質は、所定の時間の後、パッチPAに含有されてもよい。例えば、2つの成分で形成される液体物質SBが、パッチPAに含有される場合、2つの成分は、パッチPAの製造の際にパッチPAに含有されてもよく、1つの成分のみがパッチPAの製造の際にパッチに含有され、他の成分は後でパッチPAに含有されてもよく、又は、2つの成分は、パッチPAが製造された後に、パッチPAに連続して含有されてもよい。
【0118】
上記で説明するように、パッチに含有される物質は、流動性を示してもよく、物質は、不規則に移動してもよく、又はパッチPA中での分子運動に起因して拡散してもよい。
【0119】
2.1.3 反応空間の提供
図3及び図4は、本出願によるパッチの機能の一例として、反応空間を提供することを示す図である。
【0120】
図3及び図4に示されるように、本出願によるパッチPAは、空間を提供する機能を果たすことができる。言い換えれば、パッチPAは、液体物質SBが、メッシュ構造体NSによって形成される空間及び/又はメッシュ構造体NSを構成する空間の至るところで移動することができる、空間を提供することができる。
【0121】
パッチPAは、粒子の拡散及び/又は粒子の不規則運動以外の活動(本明細書の以下において、拡散以外の活動と称する)のための空間を提供してもよい。拡散以外の活動は、限定されるものではないが、化学反応を指してもよく、物理状態の変化を指してもよい。より詳細には、拡散以外の活動としては、活動の後に物質の化学組成が変化する化学反応、物質に含まれる成分の間の特異的な結合反応、物質に含まれ、不均一に分布した溶質若しくは粒子の均質化、物質に含まれるいくつかの成分の縮合、又は物質の一部の生物学的な活動を挙げることができる。
【0122】
複数の物質が活動に関与するようになる場合、複数の物質は、基準時点の前に、パッチPAに一緒に配置されていてもよい。複数の物質は、パッチPAに、連続的に挿入されてもよい。
【0123】
パッチPAの環境条件を変更することによって、パッチPAにおける拡散以外の活動のための空間を提供する機能の効率を、増強することができる。例えば、活動は、促進されてもよく、又は活動の開始は、パッチPAの温度条件の変更又は電気的条件を加えることによって、誘発されてもよい。
【0124】
図3及び図4によれば、パッチPAに配置された第1の物質SB1及び第2の物質SB2は、パッチPAの内部で反応することができ、第3の物質SB3に変形してもよく、又は第3の物質SB3を発生させてもよい。
【0125】
2.2 チャネル
2.2.1 意味
物質の移動は、パッチPA及び外部領域の間で生じてもよい。物質は、パッチPAからパッチPAの外部領域に移動してもよく、又は外部領域からパッチPAに移動してもよい。
【0126】
パッチPAは、物質の移動経路を形成してもよく、又は物質の移動に関与していてもよい。より詳細には、パッチPAは、パッチPAに捕捉された液体物質SBの移動に関与してもよく、又はパッチPAに捕捉された液体物質SBを通じた外部物質の移動に関与してもよい。塩基性物質BS又は添加物質ASは、パッチPAから外に移動してもよく、又は外部物質は、外部領域からパッチPAに導入されてもよい。
【0127】
パッチPAは、物質の移動経路を提供することができる。すなわち、パッチPAは、物質の移動に関与してもよく、物質の移動チャネルを提供してもよい。パッチPAは、液体物質SBの固有の性質に基づいて、物質の移動チャネルを提供してもよい。
【0128】
パッチPAが、外部領域と接続されているか否かに従って、パッチPAは、液体物質SBがパッチPA及び外部領域の間で移動可能な状態であってもよく、又は液体物質SBがパッチPA及び外部領域の間で移動不可能な状態であってもよい。パッチPA及び外部領域の間でチャネリングが始まる場合、パッチPAは、固有の機能を有することができる。
【0129】
本明細書の以下において、物質が移動可能な状態及び物質が移動不可能な状態を最初に説明し、パッチPAの固有の機能を、パッチPA及び外部領域が接続されているか否かに関連して詳細に説明する。
【0130】
基本的に、物質の不規則運動及び/又は拡散は、パッチPA及び外部領域の間の液体物質SBの移動の根本的要因である。しかしながら、パッチPA及び外部領域の間の物質の移動を制御するために、外部環境要因を制御すること(例えば、温度条件を制御すること、電気的条件を制御することなど)は、既に説明されている。
【0131】
2.2.2 移動可能な状態
物質が移動可能な状態において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び/又は外部領域に配置された物質の間で、流れが生じてもよい。物質が移動可能な状態において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び外部領域の間で、物質の移動が生じてもよい。
【0132】
例えば、物質が移動可能な状態において、液体物質SB又は液体物質SBのいくつかの成分は、外部領域に拡散してもよく、又は不規則運動に起因して移動してもよい。或いは、物質が移動可能な状態において、外部領域に配置された外部物質又は外部物質のいくつかの成分は、パッチPA中の液体物質SBに拡散してもよく、又は不規則運動に起因して移動してもよい。
【0133】
物質が移動可能な状態は、接触によって引き起こされてもよい。接触は、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び外部領域の間の接続を指してもよい。接触は、液体物質SB及び外部領域の流動領域の間で少なくとも部分的に重なり合うことを指してもよい。接触は、パッチPAの少なくとも一部と接続されている外部物質を指してもよい。捕捉された液体物質SBが流動し得る範囲は、物質が移動可能な状態に拡大していることが理解され得る。言い換えれば、物質が移動可能な状態において、液体物質SBが流動し得る範囲は、捕捉された液体物質SBの外部領域の少なくとも一部を含むように拡大してもよい。例えば、液体物質SBが外部領域と接触している場合、捕捉された液体物質SBが流動し得る範囲は、接触している外部領域の少なくとも一部を含むように拡大してもよい。より詳細には、外部領域が外部プレートである場合、液体物質SBが流動し得る領域は、液体物質SBと接触している外部プレートの領域を含んで拡大してもよい。
【0134】
2.2.3 移動不可能な状態
物質が移動不可能な状態において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び外部領域の間で、物質の移動は生じなくてもよい。しかしながら、物質の移動は、パッチPAに捕捉された液体物質SBにおいて、及び外部領域に配置された外部物質において、それぞれ、生じてもよい。
【0135】
物質が移動不可能な状態は、接触が解放された状態であってもよい。言い換えれば、パッチPA及び外部領域の間で接触が解放された状態において、パッチPAに残留した液体物質SB及び外部領域又は外部物質の間で、物質の移動は不可能である。
【0136】
より詳細には、接触が解放された状態は、パッチPAに捕捉された液体物質SBが外部領域に接続されていない状態を指してもよい。接触が解放された状態は、液体物質SBが、外部領域に配置された外部物質に接続されていない状態を指してもよい。例えば、物質の移動が不可能な状態は、パッチPA及び外部領域の間の分離によって引き起こされてもよい。
【0137】
本明細書において、「移動可能な状態」は、「移動不可能な状態」と区別された意味を有するが、時間の経過、環境の変化などに起因して、状態の間で、移行が生じてもよい。言い換えれば、パッチPAは、移動可能な状態になった後に移動不可能な状態になってもよく、移動不可能な状態になった後に移動可能な状態になってもよく、又は移動可能な状態になった後、移動不可能な状態になった後に、再び移動可能な状態になってもよい。
【0138】
2.2.4 機能の区別
2.2.4.1 送達
本出願において、上述の特性に起因して、パッチPAは、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部を、所望の外部領域に送達することができる。物質の送達は、満足された所定の条件に起因する、パッチPAからの、パッチPAに捕捉された液体物質SBの一部の分離を指してもよい。液体物質SBの一部の分離は、パッチPAによって影響を受ける領域から、物質の一部の抽出、放出又は解放を指してもよい。これは、パッチPAの上述のチャネリング機能に従属する概念であり、パッチPAの外部へのパッチPAに配置された物質の移動(送達)を定義するものとして理解することができる。
【0139】
所望の外部領域は、別のパッチPA、乾燥領域又は液体領域であってもよい。
【0140】
送達が生じる所定の条件は、温度の変化、圧力の変化、電気的特性の変化及び物理的状態の変化などの環境条件として設定することができる。例えば、パッチPAが、液体物質SBに結合する力がパッチPAのメッシュ構造体NSに結合する力よりも大きい物体と接触する場合、液体物質SBは、接触した物体と化学的に結合することができ、結果として、液体物質SBの少なくとも一部が、物体に提供され得る。
【0141】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「送達」と称する。
【0142】
送達は、パッチPA及び外部領域の間で、液体物質SBが移動可能な状態、及び液体物質SBが移動不可能な状態を介して、パッチPA及び外部領域の間で生じてもよい。
【0143】
より詳細には、液体物質SBが移動可能な状態である場合、液体物質SBは、パッチPA及び外部領域の間で拡散してもよく、又は不規則運動に起因して外部領域に移動してもよい。言い換えれば、液体物質SBに含まれる塩基性溶液及び/又は添加物質ASは、パッチPAから外部領域に移動してもよい。液体物質SBが移動不可能な状態において、液体物質SBは、パッチPA及び外部領域の間で移動することは不可能である。言い換えれば、移動可能な状態から移動不可能な状態への移行に起因して、液体物質SBの拡散及び/又は不規則運動に起因してパッチPAから外部領域に移動した物質の一部は、パッチPAに戻ることは不可能になる。したがって、液体物質SBの一部は、外部領域に提供され得る。
【0144】
送達は、液体物質SB及びメッシュ構造体NSの間の引力、並びに液体物質SB及び外部領域又は外部物質の間の引力の間の相違に起因して行われてもよい。引力は、極性又は特異的な結合の関係の間で、同様に引き起こされ得る。
【0145】
より詳細には、液体物質SBが親水性であり、外部領域又は外部物質が、メッシュ構造体NSよりも親水性である場合、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部は、移動可能状態及び移動不可能状態を介して、外部領域に提供され得る。
【0146】
液体物質SBの送達は、選択的に行うこともできる。例えば、液体物質SB及び外部物質に含まれるいくつかの成分の間に特異的な結合の関係が存在する場合、いくつかの有効成分は、物質が移動可能な状態及び物質が移動不可能な状態を介して、選択的に送達され得る。
【0147】
より詳細には、パッチPAが、平板の形態である外部プレートPAに物質を提供すると仮定すると、パッチPAに捕捉された液体物質SBの一部(例えば、溶質の一部)と特異的に結合する物質を、外部プレートPLに適用することができる。この場合において、パッチPAは、移動可能状態及び移動不可能状態を介して、パッチPAからプレートPLに、外部プレートPLに適用された物質に特異的に結合する溶質の一部を、選択的に送達することができる。
【0148】
パッチPAの機能としての送達は、物質が移動される異なる領域のいくつかの例により、以下で説明する。しかしながら、詳細な説明を行うにあたり、液体物質SBの「解放」及び液体物質SBの「送達」の概念は、互換可能に使用することができる。
【0149】
ここで、液体物質SBがパッチPAから分離した外部プレートPLに提供される場合を説明する。例えば、物質がパッチPAからプレートPL、例えば、スライドガラスに移動する場合を考慮に入れてもよい。
【0150】
パッチPA及びプレートPLが接触すると、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部は、プレートPLに拡散するか、又は不規則運動に起因して移動する。パッチPA及びプレートPLの間の接触が解放されると、パッチPAからプレートPLに移動した物質の一部(すなわち、液体物質SBの一部)は、パッチPAに戻ることは不可能になる。結果として、物質の一部は、パッチPAからプレートPLに提供され得る。この場合において、提供される物質の一部は、添加物質ASであってもよい。接触及び分離によって「提供される」パッチPA中の物質のために、物質及びプレートPLの間で作用する引力並びに/又は結合力が存在しなければならず、引力及び/又は結合力は、物質及びパッチPAの間で作用する引力よりも大きくなければならない。したがって、上述の「送達条件」が満たされないと、物質の送達は、パッチPA及びプレートPLの間で生じ得ない。
【0151】
物質の送達は、温度条件又は電気的条件をパッチPAに提供することによって制御してもよい。
【0152】
パッチPAからプレートPLへの物質の移動は、パッチPA及びプレートPLの間の接触面積の範囲に依存し得る。例えば、パッチPA及びプレートPLの間の物質移動効率は、パッチPA及びプレートPLが接触する面積の範囲に従って、増加又は減少し得る。
【0153】
パッチPAが複数の成分を含む場合、いくつかの成分のみが、外部プレートPLに選択的に移動してもよい。より詳細には、複数の成分のいくつかに特異的に結合する物質は、外部プレートPLに固定されていてもよい。この場合において、外部プレートPLに固定された物質は、液体状態若しくは固体状態であってもよく、又は異なる領域に固定されていてもよい。この場合において、複数の成分の物質の一部は、プレートPLに移動し、パッチPA及び異なる領域の間での接触に起因してプレートPLに特異的に結合し、パッチPAがプレートPLから分離されると、いくつかの成分のみが、プレートPLに選択的に開放され得る。
【0154】
図5図7は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の送達の一例として、パッチPAから外部プレートPLへの物質の送達を示す。図5図7によれば、パッチPAが外部プレートPLと接触することによって、パッチPAに含有される物質の一部が、プレートPLに提供され得る。この場合において、物質の提供は、物質が移動可能なようにプレートと接触するパッチPAによって可能になり得る。この場合において、水膜WFは、プレート及びパッチPAが接触する接触面の近傍で形成されてもよく、物質は、形成された水膜WFを通して移動可能であり得る。
【0155】
ここで、液体物質SBがパッチPAから流動性を有する物質SLに提供される場合を説明する。流動性を有する物質SLは、他の含有空間に保持されるか、又は流動する、液体物質であってもよい。
【0156】
パッチPA及び流動性を有する物質が接触すると(例えば、パッチPAを、溶液中に入れる)、パッチPAに捕捉された液体物質SBの少なくとも一部は、不規則運動に起因して、流動性を有する物質SLに拡散又は移動し得る。パッチPA及び流動性を有する物質SLが分離されると、パッチPAから流動性を有する物質に移動した液体物質SBの一部は、パッチPAに戻ることが不可能になり、パッチPA中の物質の一部は、流動性を有する物質に提供され得る。
【0157】
パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物質の移動は、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の接触面積の範囲に依存し得る。例えば、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物質移動効率は、パッチPA及び流動性を有する物質SLが接触する面積の程度(例えば、パッチPAが、溶液に浸漬された深さなど)に従って、増加又は減少し得る。
【0158】
パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物質の移動は、パッチPA及び流動性を有する物質の間の物理的な分離によって制御することができる。
【0159】
液体物質SB中の添加物質ASの部分濃度及び流動性を有する物質中の添加物質ASの部分濃度は、異なっていてもよく、添加物質ASは、パッチPAから流動性を有する物質に提供されてもよい。
【0160】
しかしながら、流動性を有する物質SLに液体物質SBを提供するパッチPAにおいて、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の物理的な分離は必須ではない。例えば、パッチPAから流動性を有する液体に移動する物質が引き起こす力(推進力/偶然の力)が、消失するか、又は基準値若しくはそれより下に減少すると、物質の移動は停止し得る。
【0161】
パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の「送達」において、パッチPA及び流動性を有する物質SLの間の上述の「送達条件」は、必要ではないことがある。流動性を有する物質SLに既に移動した物質が、流動性を有する物質SL中の不規則運動に起因して拡散及び/又は移動し、移動した物質及びパッチPAの間の距離が、所定の距離より大きくなると、物質が、流動性を有する物質SLに提供されたと理解することができる。プレートPLの場合では、接触に起因して拡大した移動可能な範囲が極めて限定されており、したがって、パッチPA及びプレートPLに移動した物質の間の引力が大きな影響を与え得るので、パッチPA及び流動性を有する物質の間の関係において、パッチPA及びプレートPLの間の接触に起因して拡大した移動可能な範囲は、比較的大きくなり、したがって、パッチPA及び流動性を有する物質SLに移動した物質の間の引力は重要ではない。
【0162】
図8図10は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の送達の一例として、パッチPAから流動性を有する物質への物質の送達を示す。図8図10によれば、パッチPAは、パッチPAに含有される物質の一部を、流動性を有する外部物質に送達することができる。含有された物質の一部の送達は、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び流動性を有する物質の間で物質の移動が可能となるように、パッチPAを、流動性を有する物質に挿入又は接触させることにより、行うことができる。
【0163】
ここで、物質が、パッチPAから別のパッチPAに移動すると仮定する。パッチPA及び他のパッチPAが接触する接触領域において、パッチPAに提供された液体物質SBの少なくとも一部は、他のパッチPAに移動することができる。
【0164】
接触領域において、それぞれのパッチPAに提供された液体物質SBは、拡散して、他のパッチPAに移動することができる。この場合において、物質の移動に起因して、それぞれのパッチPAに提供された液体物質SBの濃度は変化し得る。また、本実施形態において、上記で説明するように、パッチPA及び他のパッチPAは、分離されていてもよく、パッチPA中の液体物質SBの一部は、他のパッチPAに提供され得る。
【0165】
パッチPA及び他のパッチPAの間の物質の移動は、物理的状態の変化を含む、環境条件の変化によって行うことができる。
【0166】
パッチPA及び他のパッチPAの間の物質の移動は、パッチPA及び他のパッチPAの間の接触面積の範囲に依存し得る。例えば、パッチPA及び他のパッチPAの間の物質移動効率は、パッチPAが他のパッチPAと接触する面積の範囲に従って、増加又は減少し得る。
【0167】
図11図13は、本出願によるパッチPAの機能の中で、物質の送達の一例として、パッチPA1から別のパッチPA2への物質の送達を示す。図11図13によれば、パッチPA1は、パッチPA1に含有される物質の一部を、他のパッチPA2に送達することができる。物質の一部の送達は、パッチPA1を他のパッチPA2と接触させることによって、並びにパッチPA1に捕捉された液体物質SB及び他のパッチPA2に捕捉された物質を交換可能な状態にすることによって、行うことができる。
【0168】
2.2.4.2 吸収
説明の前に、本出願によるパッチPAの機能の中で、「吸収」は、いくつかの実施形態において、上述の「送達」と同様に使用し得ることに留意すべきである。例えば、物質が、物質間の濃度の相違に起因して移動する場合において、「吸収」は、液体物質SBの濃度、特に、添加物質ASの濃度を変化させて、物質が移動する方向を制御し得る点で「送達」と同様であり得る。「吸収」は、パッチPAとの物理的な接触の解放によって、物質の移動及び選択的な吸収を制御する点で、「送達」と同様であり得、これは、本出願が関連する当業者によって、明確に理解され得る。
【0169】
上述の特性に起因して、本出願によるパッチPAは、外部物質を捕捉することができる。パッチPAは、パッチPAによって規定された領域の外側に存在する外部物質を、パッチPAによって影響を受ける領域の方向に引き込むことができる。引き込まれた外部物質は、パッチPAの液体物質SBと一緒に捕捉され得る。外部物質の引き込みは、外部物質及びパッチPAによって既に捕捉された液体物質SBの間の引力によって引き起こされてもよい。或いは、外部物質の引き込みは、外部物質及び液体物質SBによって占められていないメッシュ構造体NSの領域の間の引力によって引き起こされてもよい。外部物質の引き込みは、表面張力の力によって引き起こされてもよい。
【0170】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「吸収」と称する。吸収は、パッチPAの上述のチャネリング機能に従属する概念として理解することができ、この概念はパッチPAへの外部物質の移動を定義する。
【0171】
吸収は、物質が移動可能な状態及び物質が移動不可能な状態を介して、パッチPAによって生じ得る。
【0172】
パッチPAによって吸収可能な物質は、液体状態又は固体状態であってもよい。例えば、パッチPAが、固体状態の物質を含む外部物質と接触する場合、物質の吸収は、外部物質に含まれる固体状態の物質及びパッチPAに配置された液体物質SBの間の引力に起因して行われ得る。別の例として、パッチPAが、液体の外部物質と接触する場合、吸収は、液体の外部物質及びパッチPAに配置された液体物質SBの間の結合に起因して行われ得る。
【0173】
パッチPAに吸収された外部物質は、パッチPAを形成するメッシュ構造体NSのマイクロキャビティを通してパッチPAの内部に移動してもよく、又はパッチPAの表面に分布していてもよい。外部物質が分布する位置は、外部物質の分子量又は粒子径に基づいて設定することができる。
【0174】
吸収が行われる間に、パッチPAの形態は変化してもよい。例えば、パッチPAの体積、色などが変化してもよい。パッチPAへの吸収が行われる間、パッチPAへの吸収は、パッチPAの吸収環境に、温度の変化及び物理的状態の変化などの外部条件を加えることによって、活性化又は遅延させることができる。
【0175】
吸収を、吸収が生じるときにパッチPAに吸収される物質を提供する外部領域のいくつかの例に従って、パッチPAの機能として、以下に説明する。
【0176】
本明細書の以下において、パッチPAが、外部プレートPLから外部物質を吸収すると仮定する。外部プレートの一例として、外部物質が配置され得るが、外部物質が吸収されない、プレートPLを挙げることができる。
【0177】
物質は、外部プレートPLに適用されてもよい。特に、物質は、プレートPLに、粉末の形態で適用されてもよい。プレートPLに適用された物質は、単一成分、又は複数の成分の混合物であってもよい。
【0178】
プレートPLは、平板形状を有していてもよい。プレートPLの形状は、物質などと含有する能力を改善するために変形させてもよい。例えば、物質を含有する能力を改善するためにウェルを形成してもよく、プレートPLの表面をエッチング若しくはエンボス加工によって変形させてもよく、又はパッチPAとの接触を改善するためにパターン形成プレートPLを使用してもよい。
【0179】
本出願のパッチPAによるプレートPLからの物質の吸収は、プレートPL及びパッチPAの間の接触によって行うことができる。この場合において、プレートPL及びパッチPAの間の接触表面の近傍の接触領域において、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び/又はプレートPLに適用された物質に起因して、水膜WFが形成されてもよい。水膜(アクアプレーン、ハイドロプレーン)WFが接触領域に形成されると、プレートPLに適用された物質は、水膜WFによって捕捉されてもよい。水膜WFに捕捉された物質は、パッチPA内で自由に流動してもよい。
【0180】
パッチPAが、プレートPLから、所定の距離又はそれ以上に離れて間隔が空いて、分離されると、水膜WFは、パッチPAと一緒に移動してもよく、プレートPLに適用された物質は、パッチPAに吸収され得る。パッチPAが、プレートPLから所定の距離又はそれ以上離れて、分離されるにつれて、プレートPLに適用された物質は、パッチPAに吸収され得る。パッチPA及びプレートPLが離れて分離されると、パッチPAに提供された液体物質SBは、プレートPLに移動しなくてもよく、又はそのわずかな量のみが、パッチPAに吸収されてもよい。
【0181】
プレートPLに適用された物質の一部又はすべてが、パッチPAに捕捉された物質の一部又はすべてと、特異的に反応してもよい。この点において、パッチPAによるプレートPLからの物質の吸収は、選択的に行われ得る。特に、吸収は、パッチPAが、パッチPAに捕捉された物質の一部に関して、プレートPLよりも強い引力を有する場合に、選択的に行われ得る。
【0182】
一例として、物質の一部は、プレートPLに固定されていてもよい。言い換えれば、物質の一部は、物質の別の一部が、流動性を有するか、又は固定されないように適用されると同時に、プレートPLに固定されてもよい。この場合において、パッチPA及びプレートPLが接触及び分離される場合、プレートPLに適用された物質のプレートPLに固定された物質の一部を除いて、物質は、パッチPAに選択的に吸収されてもよい。その代わりに、物質が固定されるか否かに関わらず、プレートPLに配置された物質及びパッチPAに捕捉された物質の極性に起因して、選択的な吸収が生じてもよい。
【0183】
別の例として、パッチPAに捕捉された液体物質SBが、プレートPLに適用された物質の少なくとも一部と特異的に結合する場合、パッチPAが、プレートPLに適用された物質と接触して、次いで、分離されるときに、液体物質SBと特異的に結合したプレートPLに適用された物質の一部のみが、パッチPAに吸収され得る。
【0184】
さらに別の例として、プレートPLに適用された物質の一部は、予めプレートPLに固定された物質と特異的に反応してもよい。この場合において、プレートPLに物質が適用されるより前に、プレートPLに予め固定された物質と特異的に反応する物質を除く、残留する物質のみが、パッチPAに吸収され得る。
【0185】
図14図16は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の吸収の一例として、パッチPAによる外部プレートPLからの物質の吸収を示す。図14図16によれば、パッチPAは、外部プレートPLに配置された物質の一部を、外部プレートPLから吸収することができる。物質の吸収は、パッチPAを、外部プレートPL、外部プレートPA及びパッチPAの間の接触領域の近傍で形成される水膜WF、及び水膜WFを通じてパッチPAに移動可能な物質を、接触させることによって行うことができる。
【0186】
ここで、物質は、パッチPAに、流動性を有する物質SLから吸収されると仮定する。流動性を有する物質SLは、他の含有空間に保持されるか、又は流動する、液体の外部物質を指していてもよい。より詳細には、流動性を有する物質SL及びパッチPAに捕捉された液体物質SBが互いに流動し得る環境を有することによって、流動性を有する物質SLの一部又はすべてが、パッチPAに吸収され得る。この場合において、流動性を有する物質SL及び液体物質SBが互いに流動し得る環境は、パッチPAが、流動性を有する物質SLの少なくとも一部と、接触することによって形成され得る。
【0187】
パッチPAが、流動性を有する物質SLと接触すると、パッチPAは、物質が流動性を有する物質SLから移動可能である状態であり得る。パッチPAが、流動性を有する物質SLから分離されると、流動性を有する物質SLの少なくとも一部は、パッチPAに吸収され得る。
【0188】
流動性を有する物質SLからパッチPAへの物質の吸収は、パッチPAに捕捉された物質及び流動性を有する物質SLの間の濃度の相違に依存し得る。言い換えれば、所定の添加物質ASに対するパッチPAに捕捉された液体物質SBの濃度が、所定の添加物質ASに対する流動性を有する物質SLの濃度よりも低い場合、所定の添加物質ASは、パッチPAに吸収され得る。
【0189】
物質が、流動性を有する物質SLからパッチPAに吸収される場合、パッチPA及び流動性を有する物質SLが上記の説明のようにして接触する間の濃度の相違に応じた吸収に加えて、パッチPAへの吸収は、電気的要因の追加又は物理的状態の変化によって制御することもできる。さらに、パッチPAに捕捉された物質及び吸収される物質の間の直接的な接触がなく、物質の吸収は、媒体を介して、それらの間の間接的な接触を通して行われてもよい。
【0190】
図17図19は、本出願によるパッチPAの機能の中から物質の吸収の一例として、パッチPAによる流動性を有する物質SLからの物質の吸収を示す。図17図19によれば、パッチPAは、流動性を有する物質SLの一部を吸収することができる。物質の吸収は、パッチPAに捕捉された液体物質SB及び流動性を有する物質SLが互いに移動可能であるように、パッチPAを、流動性を有する物質SLに浸漬、又は流動性を有する物質SLと接触させることによって、行うことができる。
【0191】
ここで、パッチPAが、別のパッチPAから外部物質を吸収すると仮定する。
【0192】
パッチPAによる別のパッチPAからの外部物質の吸収は、吸収された外部物質及びパッチPAに既に捕捉された物質の間、並びに吸収された外部物質及びパッチPAに吸収されていない外部物質の間の結合力の相違に起因して、行われてもよい。例えば、吸収された物質が親水性の性質を示す場合、パッチPAは、親水性の性質を示し、吸収された物質及びパッチPAの間の引力は、他のパッチPA及び吸収された物質の間の引力よりも強く(すなわち、パッチPAが、他のパッチPAよりも親水性である場合)、外部物質の少なくとも一部は、パッチPA及び他のパッチPAが、接触後に分離されたときに、パッチPAに吸収され得る。
【0193】
図20図22は、本出願によるパッチPAの機能の中で、物質の吸収の一例として、パッチPA3による別のパッチPA4からの物質の吸収を示す。図20図22によれば、パッチPA3は、他のパッチPA4に配置された物質の一部を吸収することができる。物質の吸収は、パッチPA3を他のパッチPA4と接触させることによって、行うことができ、パッチPA3に捕捉された液体物質SB及び他のパッチPA4に捕捉された液体物質SBを交換可能にする。
【0194】
パッチPAと吸収された外部物質との結合力は、パッチPAの総体積に対する、パッチPAを構成する三次元メッシュ構造体NSのフレーム構造体の割合に従って、変化し得る。例えば、全パッチPA中、フレーム構造体によって占められている体積の割合が増加するにつれて、構造体に捕捉された物質の量が減少し得る。この場合において、パッチPA及び標的物質の間の結合力は、標的物質及びパッチPAに捕捉された物質の間の接触面積の減少などの理由に起因して、減少し得る。
【0195】
これに関して、メッシュ構造体NSを構成する原料の比率は、パッチPAの極性が制御されるように、パッチPAの製造プロセス中に、調整することができる。例えば、アガロースを使用して製造されたパッチPAの場合において、アガロースの濃度は、吸収の程度を調整するために制御することができる。
【0196】
ある領域が、パッチPAから提供される物質に対して、パッチPAよりも弱い結合力を有する場合、並びにパッチPA及び別のパッチPAが、接触して、次いで分離される場合、吸収された外部物質は、パッチPAとともに他のパッチPAから分離され得る。
【0197】
2.2.4.3 環境の提供
上述の特性に起因して、本出願によるパッチPAは、所望の領域の環境条件を調整する機能を果たすことができる。パッチPAは、所望の領域に、パッチPAに起因する環境を提供することができる。
【0198】
パッチPAに起因する環境条件は、パッチPAに捕捉された液体物質SBに依存し得る。パッチPAは、パッチPAに収容される物質の特性に基づいて、又はパッチPAに収容される物質の特性に対応する環境を作成する目的のために、外部領域に配置された物質に、所望の環境を発生させることができる。
【0199】
環境の調整は、所望の領域の環境条件を変化させるとして理解することができる。所望の領域の環境条件の変化は、パッチPAによって影響を受ける領域が、拡大して、所望の領域の少なくとも一部を含む形態、又はパッチPAの環境を所望の領域と共有する形態で、実施することができる。
【0200】
本明細書の以下において、便宜上、上述のパッチPAの機能を、「環境の提供」と称する。
【0201】
パッチPAによる環境の提供は、物質が、パッチPA及び環境が提供される外部領域の対象の間で移動可能である状態で、行われてもよい。パッチPAによる環境の提供は、接触によって行われてもよい。例えば、パッチPAが、所望の領域(例えば、外部物質、プレートPLなど)と接触すると、特定の環境が、パッチPAによって所望の領域に提供され得る。
【0202】
パッチPAは、適切なpH、浸透圧、湿度レベル、濃度、温度などを伴う環境を提供することによって、標的領域TAの環境を調整することができる。例えば、パッチPAは、標的領域TA又は標的物質に流動性(fluidity)(流動性(liquidity))を提供することができる。このような流動性の提供は、パッチPAに捕捉された物質の一部の移動に起因して生じ得る。水分環境は、パッチPAに捕捉された液体物質SB又は塩基性物質BSによって、標的領域TAに提供されてもよい。
【0203】
パッチPAによって提供される環境要因は、目的に従って、一定に維持されてもよい。例えば、パッチPAは、所望の領域に、ホメオスタシスを提供してもよい。別の例として、環境の提供の結果として、パッチPAに捕捉された物質は、所望の領域の環境条件に適応し得る。
【0204】
パッチPAによる環境の提供は、パッチPAに含まれる液体物質SBの拡散からもたらされてもよい。すなわち、パッチPA及び所望の領域が接触すると、物質は、パッチPA及び所望の領域の間の接触に起因して形成される接触領域を通して移動可能になり得る。これに関して、浸透圧に起因する環境の変化、イオン濃度の変化に起因する環境の変化、水分環境の提供及びpHレベルの変化は、物質が拡散する方向に従って、実施することができる。
【0205】
図23図25は、本出願によるパッチPAの機能の中で、環境の提供の一例として、パッチPAによる外部プレートPLへの所定の環境の提供を示す。図23図25によれば、パッチPAは、所定の環境を、第4の物質SB4及び第5の物質SB5が配置された外部プレートPLに提供することができる。例えば、パッチPAは、所定の環境を、第4の物質SB4及び第5の物質SB5が反応して、第6の物質SB6を形成するために、プレートPLに提供することができる。環境の提供は、水膜WFが、接触領域の近傍で形成され、第4の物質SB4及び第5の物質SB5が、水膜WFに捕捉されるように、パッチPAをプレートPLと接触させることによって、行うことができる。
【0206】
3.パッチの適用
本出願によるパッチPAは、上述のパッチPAの機能を適切に適用することによって、実施して、様々な機能を果たすことができる。
【0207】
本出願の技術的要旨を、いくつかの実施形態を開示することによって、以下に説明する。しかしながら、本出願によって開示されるパッチPAの機能が適用される技術的範囲は、当業者によって容易に到達され得る範囲内で、広い意味で解釈することができ、及び本出願の範囲は、本明細書に開示される実施形態によって限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0208】
3.1 パッチ内
パッチPAは、物質のために反応領域を提供することができる。言い換えれば、物質の反応は、パッチPAによって影響を受ける空間領域の少なくとも一部で起こり得る。この場合において、物質の反応は、パッチPAに捕捉された液体物質SBの間の反応並びに/又は捕捉された液体物質SB及びパッチPAの外側から提供された物質の間の反応であってもよい。物質のための反応領域の提供は、物質の反応を活性化又は促進することができる。
【0209】
この場合において、パッチPAに捕捉された液体物質SBは、パッチPAの製造の際に添加される物質、パッチPAの製造後のパッチPAへの添加物であって、パッチPAに含有される物質、及びパッチPAに一時的に捕捉された物質のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。言い換えれば、物質がパッチPAに捕捉される形態に関わらず、パッチPA内での反応が活性化される時点で、パッチPAに捕捉されたあらゆる物質が、パッチPA内で反応することができる。さらに、パッチPAの製造後に注入された物質は、反応開始剤として作用することもできる。
【0210】
パッチPAに捕捉された液体物質SBに関する反応のための反応領域の提供は、実施形態の観点で、上述の2.1.3項(すなわち、反応空間の提供)に従属する概念であってもよい。或いは、パッチPAに捕捉された液体物質SBに関する反応のための反応領域の提供は、上述の2.1.3項及び2.2.4.2項(すなわち、吸収)の組み合わされた機能を果たす、複数の概念からなっていてもよい。パッチPAに捕捉された液体物質SBに関する反応のための反応領域の提供は、限定されないが、2つ又はそれ以上の機能が組み合わされた形態で実施されてもよい。
【0211】
3.1.1 第1の実施形態
本明細書の以下において、パッチPAへの吸収の機能及び反応空間の提供の機能(本明細書の以下において、「機能の提供」と称する)が、単一のパッチPAによって果たされると仮定することによって、説明を行う。この場合において、吸収機能及び機能の提供は、同時に果たされる機能、異なる時点で果たされる機能、又は連続して果たされて、別の機能を果たす機能であってもよい。吸収及び機能の提供に加えて他の機能をさらに含むパッチPAは、本実施形態に属するものとして考えることもできる。
【0212】
上記で説明するように、パッチPAは、物質を捕捉する機能を果たしてもよく、物質は、物質が捕捉されたときでさえ、流動性を有することができる。液体物質SBのいくつかの成分が不均一に分布している場合、不均一な成分は、拡散してもよい。液体物質SBの成分が均一に分布している場合でさえ、液体物質SBは、粒子の不規則運動に起因する所定のレベルの移動性を有することができる。この場合において、物質の間の反応、例えば、物質の間の特異的な結合は、パッチPAの内部で生じてもよい。
【0213】
例えば、パッチPAにおいて、捕捉された物質の間の反応に加えて、パッチPAに新たに捕捉された流動性を有する物質、及びパッチPAに捕捉されていた物質が、互いに特異的に結合する形態での反応も、可能であり得る。
【0214】
流動性を有する物質及びパッチPAに捕捉されていた物質の間の反応は、物質パッチが、提供された空間から分離された後に、起こってもよい。例えば、パッチPAが、任意の空間から、流動性を有する物質を吸収した後、パッチPAを、任意の空間から分離することができ、吸収された物質及びパッチPAに捕捉されていた物質の間の反応が、パッチPAにおいて起こり得る。
【0215】
加えて、パッチPAは、流動性を有する物質に関して、吸収機能を果たすことによって、パッチAに捕捉された物質の反応を起こすことが可能であり得る。言い換えれば、パッチPAによる流動性を有する物質の吸収は、吸収された物質及びパッチPAに捕捉されている物質の間の反応のための引き金として作用し得る。反応は、パッチPAによって規定された空間の内部で起こってもよい。
【0216】
パッチPAに捕捉された液体物質SBの組成は、パッチPAの内部で起こる反応に起因して、変化してもよい。特に、パッチPAの内部に捕捉された物質が、化合物である場合、その化学組成は、反応の前後で変化してもよい。或いは、物質の組成分布は、パッチPA中の物質の位置に従って、変化してもよい。例えば、これは、分散又は別の物質に特異的な引力を有する粒子に起因していてもよい。
【0217】
液体物質SBの組成が、パッチPAの内部での反応に起因して変化する場合、物質の一部が、パッチPA及びパッチPAの外側の物質(パッチPAと接触する物質が存在する場合、相当する物質)の間の濃度の相違に起因して、パッチPAに吸収されてもよく、又は物質は、パッチPAから、パッチPAの外側の物質に放出されてもよい。
【0218】
3.1.2 第2の実施形態
本明細書の以下において、少なくとも所定の時間で、パッチPAの含有する機能及び物質のための反応空間の提供の機能が一緒に果たされる実施態様を説明する。より詳細には、パッチPAは、パッチPAに含有される液体物質SBの少なくとも一部が反応するための空間を提供する機能を果たすことができる。
【0219】
パッチPAは、物質を含有することができ、含有された物質のための反応空間を提供することができる。この場合において、パッチPAによって提供される反応空間は、パッチPAのメッシュ構造体NSによって形成されるマイクロキャビティ、又はパッチPAの表面領域であってもよい。特に、パッチPAに含有される物質及びパッチPAの表面に適用される物質が反応する場合、反応空間は、パッチPAの表面領域であってもよい。
【0220】
パッチPAによって提供される反応空間は、特異的な環境条件を提供する機能を果たしてもよい。反応がパッチPAに配置された液体物質SB中で起こる間に、反応の環境条件は、パッチPAによって調整されてもよい。例えば、パッチPAは、緩衝液としての機能を果たすことができる。
【0221】
メッシュ構造によって物質を含有することによって、パッチPAは、独立して、容器を必要としない。パッチPAの反応空間がパッチPAの表面である場合、反応は、パッチPAの表面を通して、容易に観察することができる。このため、パッチPAの形状を、観察を容易にする形状に変形させてもよい。
【0222】
パッチPAに含有される液体物質SBは、異なる種類の物質で、変性又は反応してもよい。パッチPAに含有される液体物質SBの組成は、時間とともに変化してもよい。
【0223】
この反応は、化学式が変化する化学反応、物理的状態の変化、又は生体反応を指してもよい。この場合において、パッチPAに含有される液体物質SBは、単一成分で形成された物質、又は複数の成分を含む混合物であってもよい。
【0224】
3.2 移動経路の提供(チャネリング)
本明細書の以下において、物質の移動経路を提供する機能を果たすパッチPAを説明する。より詳細には、上記で説明するように、パッチPAは、流動性を有する物質を、捕捉、吸収、放出及び/又は含有することができる。物質の移動経路を提供する機能を果たすパッチPAの様々な実施形態は、上述のパッチPAの機能のそれぞれ、又はこれらの組み合わせによって実施することができる。しかしながら、いくつかの実施形態を、よりよい理解のために開示する。
【0225】
3.2.1 第3の実施形態
パッチPAは、上述のパッチPAの機能の中で、2.2.4.1項(すなわち、送達に関する項)及び2.2.4.2項(すなわち、吸収に関する項)に説明された機能を果たすために実施され得る。この場合において、吸収機能及び送達機能は、一緒に提供されてもよく、又は連続して提供されてもよい。
【0226】
パッチPAは、物質の移動経路を提供するために、吸収及び送達機能を一緒に果たすことができる。特に、パッチPAは、外部物質を吸収することができ、吸収した外部物質を、外部領域に提供することができ、それによって、外部物質への移動経路が提供される。
【0227】
パッチPAによる外部物質の移動経路の提供は、外部物質の吸収及び外部物質の放出によって行うことができる。より詳細には、パッチPAは、外部物質と接触し、外部物質を吸収し、外部領域と接触し、外部物質を外部領域に送達することができる。この場合において、外部物質の捕捉及びパッチPAによって捕捉された外部物質の外部領域への送達は、上述の吸収及び送達のプロセスと同様のプロセスによって行われてもよい。
【0228】
パッチPAに吸収され、提供される外部物質は、液相又は固相であってもよい。
【0229】
この方法において、パッチPAは、外部物質の一部を、別の外部物質に提供することを可能にし得る。外部物質及び他の外部物質は、同時に、パッチPAと接触してもよい。外部物質及び他の外部物質は、異なる時点で、パッチPAと接触してもよい。
【0230】
外部物質及び他の外部物質は、異なる時点で、パッチPAと接触してもよい。外部物質が、異なる時点で、パッチPAと接触する場合、外部物質は、最初のパッチPAと接触してもよく、外部物質及びパッチPAが分離された後、パッチPA及び他の外部物質が接触してもよい。この場合において、パッチPAは、外部物質から、捕捉された物質を一時的に含有し得る。
【0231】
パッチPAは、物質の移動経路を同時に提供してもよく、さらに、時間の遅延を提供してもよい。パッチPAは、別の外部物質に提供される物質の量及びそのような提供の速度を、適切に調整する機能を果たしてもよい。
【0232】
このような一連のプロセスは、パッチPAに対して、一方向で行われてもよい。具体例として、物質の吸収は、パッチPAの表面を通して行うことができ、環境は、パッチPAの内部表面に提供され得、物質は、表面に面した別の表面を通して放出され得る。
【0233】
3.2.2 第4の実施形態
パッチPAは、パッチPAの上述の機能の中で、物質の吸収及び放出、並びに、同時に、物質のための反応空間の提供を果たすことができる。この場合において、物質の吸収及び放出、並びに反応空間の提供は、同時に又は連続して行われてもよい。
【0234】
実施形態によれば、外部物質の吸収及び放出のプロセスを行うにあたり、パッチPAは、反応空間を、吸収された外部物質に、少なくとも所定の時間、提供することができる。パッチPAは、吸収された外部物質を含む、パッチPAに捕捉された液体物質SBに、少なくともある時間、特異的な環境を提供することができる。
【0235】
パッチPAに捕捉されている液体物質SB及びパッチPAに捕捉された外部物質は、パッチPAの内部で反応してもよい。パッチPAに吸収された外部物質は、パッチPAによって提供された環境の影響を受けてもよい。パッチPAから放出された物質は、反応中に発生した物質の少なくとも一部を含んでいてもよい。外部物質は、外部物質の組成、特性などが変化した後、パッチPAから放出されてもよい。
【0236】
吸収された物質は、パッチPAから放出されてもよい。パッチPAに吸収され、パッチPAから放出された外部物質は、パッチPAを通過する外部物質として理解され得る。パッチPAを通過した外部物質は、パッチPAの内部での反応又はパッチPAによって提供された環境の影響に起因して、完全性を失ってもよい。
【0237】
上述の外部物質の吸収、物質の反応及び物質の提供のプロセスは、一方向で行われてもよい。言い換えれば、物質の吸収は、パッチPAの1つの位置で行われてもよく、環境の提供は、パッチPAの別の位置で行われてもよく、物質の放出は、パッチPAのさらに別の位置で行われてもよい。
【0238】
図26図28は、本出願によるパッチPAの一実施形態として、2つのプレートPLの間の物質の移動経路の提供を示す。図26図28によれば、パッチPAは、第7の物質SB7が適用されたプレートPL1及び第8の物質SB8が適用されたプレートPL2の間の物質の移動経路を提供することができる。具体例として、第7の物質SB7が、第8の物質と結合する能力があり、第8の物質が、プレートPL2に固定される場合、パッチPAは、第7の物質SB7が、パッチPAを通って移動し、第8の物質SB8と結合するように、プレートPL1及びPL2と接触することができる。第7の物質SB7及び第8の物質SB8は、プレートPL1及びPL2と接触しているパッチPAによって形成された水膜WFを通して、パッチPAと接続されていてもよい。
【0239】
図29及び図30は、本出願によるパッチPAの一実施形態として、2つのパッチの間の物質の移動経路の提供を示す。図29及び図30によれば、移動経路を提供するために構成されたパッチPA6は、移動する物質を含有するように構成されたパッチPA5、及び移動する物質を受け取るために構成されたパッチPA7と接触することができる。移動経路を提供するために構成されたパッチPA6は、移動する物質を含有するように構成されたパッチPA5、移動する物質を受け取るために構成されたパッチPA7と接触することができ、移動する物質は、移動する物質を受け取るために構成されたパッチPA7に移動することができる。パッチ間の物質の移動は、パッチ間の接触領域の近傍で形成される水膜WFによって行われてもよい。
【0240】
図31及び図32は、本出願によるパッチの一実施形態として、2つのパッチの間の物質の移動経路の提供を示す。図29及び図30によれば、移動経路を提供するために構成されたパッチPA9は、第9の物質SB9を含有するように構成されたパッチPA8、及び物質を受け取るために構成されたパッチPA10と接触することができる。移動経路を提供するパッチPA9は、第9の物質SB9を含有して、第9の物質SB9を吸収するために構成されたパッチPA8と接触することができる。吸収された第9の物質SB9は、移動経路を提供し、第11の物質を発生させるために構成されたパッチPA9に含有される第10の物質SB10と反応することができる。第11の物質SB11は、移動経路を提供するために構成されたパッチPA9から、物質を受け取るために構成されたパッチPA10に提供され得る。パッチPA間の物質の移動は、パッチPA間の接触領域の近傍で形成される水膜WFを通して行われてもよい。
【0241】
3.3 複数パッチ
パッチPAは、単独で使用されてもよく、又は複数のパッチPAが一緒に使用されてもよい。この場合において、一緒に使用することが可能な複数のパッチPAは、複数のパッチPAが連続的に使用される場合、及び複数のパッチPAが同時に使用される場合を含む。
【0242】
複数のパッチが同時に使用される場合、パッチPAは、異なる機能を果たしてもよい。複数のパッチPAのそれぞれのパッチPAは、同じ物質を含有していてもよいが、複数のパッチPAは、異なる物質を含有していてもよい。
【0243】
複数のパッチPAが、同時に使用される場合、パッチPAは、物質の移動が、パッチPA間で生じないように、互いに接触しなくてもよく、又は所望の機能は、パッチPAに含有された物質が交換可能である状態で果たされてもよい。
【0244】
一緒に使用される複数のパッチPAは、互いに類似の形状又は同じサイズで製造されてもよいが、複数のパッチPAは、複数のパッチPAが異なる形状を有する場合であっても、一緒に使用され得る。複数のパッチPAを構成するそれぞれのパッチPAは、メッシュ構造体NSの密度が異なるか、又はメッシュ構造体NSを構成する成分が異なるように、製造されてもよい。
【0245】
3.3.1 複数のパッチとの接触
複数のパッチPAが使用される場合、複数のパッチPAは、単一の標的領域TAと接触してもよい。複数のパッチPAは、単一の標的領域TAと接触し、所望の機能を果たすことができる。
【0246】
複数の標的領域TAが存在する場合、複数のパッチPAは、異なる標的領域TAと接触してもよい。複数の標的領域TAが存在する場合、複数のパッチPAは、それぞれ、対応する標的領域TAと接触し、所望の機能を果たすことができる。
【0247】
複数のパッチPAは、標的領域TAに適用された物質と接触してもよい。この場合において、標的領域TAに適用される物質は、固定されていてもよく、又は流動性を有していてもよい。
【0248】
所望の機能は、物質を提供又は吸収する機能であり得る。しかしながら、それぞれのパッチPAは、必ずしも、同じ物質を提供せず、又は同じ物質を吸収せず、パッチPAは、標的領域TAに異なる物質を提供してもよく、又は標的領域TAに配置された物質とは異なる成分を吸収してもよい。
【0249】
所望の機能は、複数のパッチPAを構成するそれぞれのパッチPAについて、異なっていてもよい。例えば、1つのパッチPAは、標的領域TAに物質を提供する機能を果たすことができ、別のパッチPAは、標的領域TAから物質を吸収する機能を果たすことができる。
【0250】
複数のパッチPAは、異なる物質を含んでいてもよく、異なる物質は、単一の標的領域TAに提供されて、所望の反応を引き起こすために使用することができる。複数の物質の成分が、所望の反応を起こすために必要である場合、複数の成分は、複数のパッチPAに、それぞれ含有され、標的領域TAに提供され得る。複数のパッチPAのそのような使用は、反応のために必要な物質が、単一のパッチPAに含有されるなどの理由のために混合されるときに、所望の反応のために必要な物質の性質が喪失又は変化する場合、特に有用であり得る。
【0251】
一実施形態によれば、複数のパッチPAが、異なる成分で形成される物質を含み、異なる成分で形成される物質が、異なる特異的な結合の関係を有する場合、異なる成分で形成される物質は、標的領域TAに提供され得る。複数のパッチPAは、異なる成分を含む物質を提供することによって、標的領域TAに適用された物質から、複数の特異的な結合を検出するために使用することができる。
【0252】
別の実施形態によれば、複数のパッチPAは、同じ成分で形成される物質を含んでいてもよいが、それぞれのパッチPAは、同じ成分で形成される物質に関して、異なる濃度を有していてもよい。同じ成分で形成される物質を含む複数のパッチPAは、標的領域TAと接触し、複数のパッチPAに含まれる物質の濃度に従って、影響を決定するために使用することができる。
【0253】
複数のパッチPAが、上記の説明のように使用される場合、パッチPAは、より効率的な形態にグループ化し、使用されてもよい。言い換えれば、使用される複数のパッチPAの配置は、複数のパッチPAが使用されるたびに変更することができる。複数のパッチPAは、カートリッジの形態で製造され、使用されてもよい。この場合において、使用されるそれぞれのパッチPAの形態は、適切に、規格化及び製造され得る。
【0254】
カートリッジの形態の複数のパッチPAは、複数の種類の物質を含有するように構成されたパッチPAが、製造され、必要により選択されることによって使用される場合に、適切であり得る。
【0255】
特に、複数の種類の物質を使用して、標的領域TAから、それぞれの物質の特異的な反応を検出しようとする場合、検出される特異的な反応の組み合わせは、検出が行われるたびに変更することができる。
【0256】
図33は、本出願によるパッチPAの実施形態として、複数のパッチPAが一緒に使用される場合を示す。図33によれば、本出願の実施形態による複数のパッチPAは、プレートPLに配置された標的領域TAと、同時に接触することができる。複数のパッチPAを構成するパッチPAは、規格化された形態を有していてもよい。複数のパッチPAは、第1のパッチ及び第2のパッチを含むことができ、第1のパッチに含有される物質は、第2のパッチに含有される物質と異なっていてもよい。
【0257】
図34は、複数のパッチPAが使用され、プレートPLが複数の標的領域TAを含む場合を示す。図34によれば、本出願の一実施形態による複数のパッチPAは、プレートPLに配置された複数の標的領域TAと、同時に接触することができる。複数のパッチPAは、第1のパッチPA及び第2のパッチPAを含むことができ、複数の標的領域TAは、第1の標的領域及び第2の標的領域を含むことができ、第1のパッチは、第1の標的領域と接触することができ、第2のパッチは第2の標的領域と接触することができる。
【0258】
3.3.2 第5の実施形態
複数のパッチPAは、複数の機能を果たすことができる。上記で説明するように、パッチPAは、複数の機能を同時に果たすことができ、パッチPAは、異なる機能を同時に果たすこともできる。しかしながら、実施形態は、上記に限定されず、機能を、組み合わせることもでき、複数のパッチPA中で果たすこともできる。
【0259】
最初に、パッチPAが、複数の機能を同時に果たす場合において、パッチPAは、物質の含有及び放出の両方を行うことができる。例えば、パッチPAは、異なる物質を含有し、標的領域TAに含有される物質を放出することができる。この場合において、含有される物質は、同時又は連続して、放出されてもよい。
【0260】
次に、パッチPAが、異なる機能を同時に果たす場合において、パッチPAは、別々に、物質の含有及び放出を行うことができる。この場合において、いくつかのパッチPAのみが、標的領域TAと接触し、標的領域TAに物質を放出してもよい。
【0261】
3.3.3 第6の実施形態
複数のパッチPAが使用される場合、上記で説明するように、複数のパッチPAは、複数の機能を果たすことができる。最初に、パッチPAは、物質の含有、放出及び吸収を同時に行ってもよい。或いは、パッチPAはまた、物質の含有、放出及び吸収を、別々に行ってもよい。しかしながら、実施形態は、これらに限定されず、機能を、組み合わせることもでき、複数のパッチPA中で果たすこともできる。
【0262】
例えば、複数のパッチPAの少なくともいくつかは、物質を含有することができ、含有された物質を、標的領域TAに放出することができる。この場合において、複数のパッチPAの少なくとも残りは、標的領域TAから物質を吸収することができる。複数のパッチPAのいくつかは、標的領域TAに配置された物質と特異的に結合する物質を放出することができる。この場合において、特異的な結合は、別のパッチPAを使用して、標的領域TAに配置された物質からの、特異的な結合を形成しない物質の吸収によって検出することができる。
【0263】
3.3.4 第7の実施形態
複数のパッチPAが使用される場合、パッチPAは、物質の含有及び放出、並びに環境の提供を、同時に行ってもよい。或いは、パッチPAは、物質の含有及び放出、並びに環境の提供を、別々に行ってもよい。しかしながら、実施形態は、これらに限定されず、機能は、複数のパッチPAを組み合わせて、果たすこともできる。
【0264】
例えば、複数のパッチPAの中で、パッチPAは、含有されている物質を、標的領域TAに放出することができる。この場合において、別のパッチPAは、標的領域TAに環境を提供することができる。ここで、環境の提供は、他のパッチPAに含有される物質の環境条件が、標的領域TAに提供される形態で、実施することができる。より詳細には、反応する物質は、パッチPAによって、標的領域TAに提供することができ、他のパッチPAは、標的領域TAと接触し、緩衝する環境を提供することができる。
【0265】
別の例として、複数のパッチPAは、互いに接触していてもよい。この場合において、少なくとも1つのパッチPAは、物質を含有し、含有されている物質を、環境を提供するために構成された別のパッチPAに、放出することができる。本実施形態において、環境を提供するために構成されたパッチPAは、物質を放出し、環境を提供するために構成されたパッチPAと接触していない少なくとも1つの他のパッチPAと接触し、パッチPAから物質を吸収することができる。
【0266】
4.免疫学的測定
4.1 意味
本出願のパッチは、免疫学的測定において使用することができる。免疫学的測定は、免疫学的手法によって得られる試験結果に従って診断を行うことを指す。免疫学的測定の一例として、酵素結合免疫吸着アッセイ(本明細書の以下において、「ELISA」)が主に使用される。
【0267】
本明細書の以下において、他に特に言及がない限り、本明細書における説明は、診断の目的のための免疫分析に関するものであると仮定する。しかしながら、本開示の技術的要旨及び本明細書に説明する実施形態が、診断目的の実施に適用されることに加えて、抗原-抗体反応を使用する分析(すなわち、免疫分析)の分野全体にわたって適用することができることは明らかである。
【0268】
本出願のパッチを免疫学的測定に適用する際、上述の塩基性物質BS及び添加物質ASは、パッチが適用される部位に従って、適切に変更することができる。
【0269】
特定の実施形態を検討する前に、免疫学的測定の種類及び免疫学的測定を行う方法を検討する。
【0270】
4.1.1 免疫学的測定の分類
免疫学的測定は、様々な標準に従って分類することができる。
【0271】
免疫学的測定は、免疫学的測定を行う方法に従って、1)抗原をプレートPLに固定し、酵素を、抗原と反応する抗体と直接結合させて、抗原の量を検出する、直接法(又は直接ELISA);2)抗原をプレートに固定し、抗原と反応する一次抗体、及び一次抗体と結合し、それと結合する酵素を有する二次抗体を使用して、抗原の量を検出する、間接法(又は間接ELISA);3)最初に、抗原に関する抗体をプレートPLに固定し、抗原を抗体と結合させ、直接法又は間接法を使用して、抗原を検出する、サンドイッチ法(又はサンドイッチELISA);並びに4)抗体の同じ結合部分について競合する2つの抗原を使用して、抗原の濃度を測定する、競合定量法(又は競合ELISA)に、分類することができる。
【0272】
免疫学的測定は、標的試料に従って分類することもできる。免疫学的測定は、標的試料が、体液である場合、免疫化学法として、試料が細胞である場合、免疫細胞化学法として、及び試料が組織である場合、免疫組織化学法として分類することができる。体液に対する免疫学的測定は、浮遊している抗原などの標的タンパク質の検出によって、診断に使用することができる。細胞に対する免疫学的測定は、細胞の表面又は内部に存在する抗原などの標的タンパク質の検出に使用することができる。組織に対する免疫学的測定は、細胞の表面若しくは内部に存在する標的タンパク質を検出すること、又は組織中の標的タンパク質の分布を決定することによって、行うことができる。
【0273】
免疫学的測定は、検出方法に従って分類することもできる。酵素-基質反応の生成物に起因する発色を観察する方法(比色分析)、化学反応に起因する発光を検出する方法(化学発光)、及び蛍光を検出する方法(化学蛍光)がある。発色を測定する場合、分光光度計が主に使用される。蛍光を測定する場合、フィルターが取り付けられた蛍光光度計が主に使用され、発光を測定する場合、発光光度計が主に使用される。
【0274】
4.1.2 ELISA
ELISAは、免疫学的測定の一例であり、物質、特に、抗原を検出するための診断方法を指す。より詳細には、ELISAは、抗体又は抗原が酵素に付着し、酵素の活性を測定して、抗原-抗体反応の強さ及びその量を定量的に測定する方法を指す。抗体又は抗原は、固相の目的物に付着することができ、遊離の未結合の抗原又は抗体は、ELISAに従って、洗浄によって除去することができるので、ELISAは、所望の結果の検出を容易にする。本明細書の以下において、他に特に言及がない限り、免疫学的測定は、ELISAを使用する免疫学的測定を指すと仮定する。
【0275】
4.2 免疫学的測定の実施
4.2.1 試料の調製
4.2.1.1 試料の種類
免疫学的測定に使用される試料は、体液、細胞及び組織に主に分類することができ、このそれぞれは、使用のために適切に処理するプロセスが必要であってもよい。
【0276】
免疫学的測定に使用される体液試料としては、血液、尿、唾液等を挙げることができる。特に、血液については、全血を使用することができるが、血液は、血清、血漿、血球等に分離することもでき、血液のそれぞれの成分を、検出に使用することができる。
【0277】
免疫学的測定に使用される細胞試料としては、全血、培養細胞、細胞懸濁液などを挙げることができる。
【0278】
本明細書の以下において、他に特に言及がない限り、試料は、本出願による免疫学的測定において、組織であると仮定する。
【0279】
4.2.1.2 それぞれの種類の試料の調製
免疫学的測定に使用される試料の調製を説明する。診断に使用される試料を調製する方法は、診断を行う方法に従って、異なっていてもよい。本明細書の以下において、本出願のパッチPAを使用して、プレートPLに位置する試料に対して診断を行う場合を説明する。
【0280】
ここで、「プレートPL」は、一般的なスライドガラス、又はポリスチレン、ポリプロピレンなどで製造されたプレートなどの固体プレートを指し得る。プレートPLの底部の形態又は透明度は、検出方法に従って、異なっていてもよい。例えば、光を検出しようとする場合において、白色プレート又は黒色プレートを、プレートPLとして使用することができる。また、例えば、発色を検出しようとする場合において、平らな底部を有する透明プレートを、プレートPLとして使用することができる。プレートPLは、パッチPAと接触する反応領域、又は所望の反応を引き起こすことができる反応領域を含むことができる。
【0281】
免疫学的測定が、体液に対して行われる場合、体液は、体液がプレートPLに固定された状態で、診断に使用することができる。言い換えれば、体液は、体液がプレートPLに塗抹され、プレートPLに固定された状態で、使用することができる。或いは、体液は、体液がプレートPLに塗抹された状態で、使用することができる。例えば、体液は、抗体が固定されたプレートPLに塗抹され得る。
【0282】
免疫学的測定が細胞に対して行われる場合、血液又は細胞の懸濁液を、プレートPLに塗抹し、乾燥して、診断を行うことができる。或いは、血液又は細胞の懸濁液は、プレートPLに塗抹され、使用され得る。例えば、血液又は細胞の懸濁液は、抗体が固定されたプレートPLに塗抹され得、診断を行うことができる。免疫学的測定が細胞に対して行われる場合、診断は、細胞溶解が行われた細胞、又は細胞溶解が行われていない細胞に対して行うことができる。
【0283】
免疫学的測定が組織に対して行われる場合、組織の切片又は薄片をプレートPLに配置することができ、診断を行うことができる。組織の切片は、パラフィンで満たされた組織の切片、又は凍結された組織の切片であってもよい。
【0284】
4.2.2 パッチの調製
本出願において免疫学的測定を行うにあたり、上述のパッチPAを使用することができる。
【0285】
パッチPAは、抗原を含有し、プレートPLに抗原を提供することができる。パッチPAは、抗原を含む、生検標本、すなわち、試料を含有し、プレートPLに生検標本を提供することもできる。
【0286】
パッチPAは、抗体ABを含有し、プレートPLに抗体ABを送達することができる。間接法が使用される場合、パッチPAに含有される抗体ABは、一次抗体AB又は二次抗体ABであり得る。言い換えれば、パッチPAは、一次抗体AB又は二次抗体ABを含有することができる。さらに、パッチPAは、一次抗体AB及び二次抗体ABを同時に含有することもでき、プレートPLに一次抗体AB及び二次抗体ABを提供することができる。抗体ABはまた、粒子に付着した状態でパッチに含有されていてもよい。
【0287】
パッチPAは、酵素によって触媒される反応を行う基質SUを含有し、プレートPLに基質SUを提供することができる。使用される基質SUは、使用される酵素及び検出手段に従って変更することができる。基質SUは、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS))、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)などであってもよい。
【0288】
パッチPAは、洗浄液を含有し、プレートPLから残留物を吸収することができる。プレートPL上の不純物又は特異的に結合していない抗体ABは、洗浄液を含有するパッチPAをパッチPAと接触させ、次いで、そこから分離することによって、プレートPLから、吸収及び除去することができる。上記で使用される洗浄液は、Twee20を含むトリス緩衝食塩水(TBS)又はリン酸緩衝食塩水(PBS)であってもよい。
【0289】
パッチPAは、緩衝液を含有し、プレートPLに環境を提供することができる。この場合において、緩衝液は、免疫学的測定のそれぞれのステップを容易にする役割を果たすことができる。したがって、それぞれのステップで使用される緩衝液は、異なる成分を含有することができる。緩衝液の例としては、化学発光を検出する場合、過酸化物緩衝液を使用することができる。
【0290】
パッチPAは、基質SU-酵素反応を妨害するために、妨害液を含有することができる。すなわち、反応妨害パッチPAを製造することができ、妨害液は、反応妨害パッチPAを使用して、プレートPLに提供され、適切な時点で、基質SU-酵素反応を妨害することができる。
【0291】
パッチPAを使用する免疫学的測定の実施を、以下、詳細に説明する。
【0292】
4.2.3 免疫学的測定の方法
上記で説明する、本出願のパッチPA及びプレートPLを使用する免疫学的測定を行う方法のいくつかの典型例を説明する。
【0293】
しかしながら、本開示の免疫学的測定方法は、以下に説明する例に限定されるものではなく、複数の変形された検出方法が存在し得るので、パッチPAを使用して行われるあらゆる免疫学的測定方法を、本開示の免疫学的測定方法として適用することができる。
【0294】
4.2.3.1 直接の場合
直接法による免疫学的測定は、本出願のパッチPA及びプレートPLを使用して行うことができる。
【0295】
パッチPA及びプレートPLを使用する直接法による免疫学的測定は、プレートPLに試料(抗原)を固定するステップ、検出しようとする抗原に特異的に結合し、識別ラベルとしてそこに付着した酵素を有する抗体ABを適用するステップ、特異的に結合していない抗体ABを除去するステップ、及び酵素によって触媒される基質SUの反応を検出するステップによって行われるものとして理解することができる。この場合において、本出願によるパッチPAは、抗体ABの適用及び特異的に結合していない抗体ABの除去において使用することができる。
【0296】
上記の検出方法は、「免疫学的測定の検出方法」の項において、以下、詳細に説明する。
【0297】
4.2.3.2 間接の場合
間接法による免疫学的測定は、本出願のパッチPA及びプレートPLを使用して行うことができる。
【0298】
パッチPA及びプレートPLを使用する間接法による免疫学的測定は、プレートPLに試料(又は抗原)を固定するステップ、検出しようとする抗原に特異的に結合する抗体AB(すなわち、一次抗体AB)を適用するステップ、特異的に結合していない一次抗体ABを除去するステップ、一次抗体ABと特異的に結合し、識別ラベルとしてそこに付着した酵素を有する抗体AB(すなわち、二次抗体)を適用するステップ、一次抗体ABと特異的に結合していない二次抗体ABを除去するステップ、及びプレートPL上で、酵素によって触媒される反応を検出するステップによって、行われるものとして理解することができる。この場合において、本出願によるパッチPAは、抗体ABの適用及び特異的に結合していない抗体ABの除去において使用することができる。
【0299】
上記の検出方法は、「免疫学的測定の検出方法」の項において、以下、詳細に説明する。
【0300】
4.2.3.3 サンドイッチの場合
サンドイッチ法による免疫学的測定は、本出願のパッチPA及びプレートPLを使用して行うことができる。
【0301】
パッチPA及びプレートPLを使用するサンドイッチ法による免疫学的測定は、プレートPLに抗体ABを固定するステップ、プレートPL上に試料(又は抗原)を適用するステップ、検出しようとする抗原に特異的に結合する抗体ABを適用するステップ、及び特異的に結合していない抗原又は抗体ABを除去するステップによって行うことができる。この場合において、抗原に特異的に結合する抗体ABの適用は、上述の直接法又は間接法によって行うことができる。言い換えれば、抗原に特異的に結合する抗体ABの適用は、抗原に特異的に結合し、そこに付着した酵素を有する抗体ABの適用によって行うことができる。或いは、抗原に特異的に結合する抗体ABの適用は、抗原に特異的に結合する一次抗体ABを適用すること、及び一次抗体ABと特異的に反応し、識別ラベルとしてそこに付着した酵素を有する抗体ABを適用することを含んでいてもよい。本出願によるパッチPAは、抗体ABの適用において使用することができる。
【0302】
上記の検出方法は、「免疫学的測定の検出方法」の項において、以下、詳細に説明する。
【0303】
4.2.4 免疫学的測定の検出方法
本出願のパッチPA及びプレートPLを使用する免疫学的測定の診断結果の検出は、様々な検出方法を使用して行うことができる。
【0304】
検出方法は、酵素及び基質SUの間の反応に起因して生成する生成物に従って、選択して使用することができる。言い換えれば、酵素は、直接法において抗体ABに、又は間接法において二次抗体ABにラベルとして付着することができ、抗体ABに付着した酵素は、基質SUの化学反応を触媒し、生成物を発生させることができ、使用される検出方法は、この場合において発生した生成物に従って、検出することができる。
【0305】
発生する生成物に起因して発色が検出される場合、発色を測定して、特異的結合を定量的に測定することができる。発色の測定は、光源から放射され、プレートPLを通過する光を検出することによって行うことができる。言い換えれば、発色の測定は、光吸収を測定することによって行うことができる。発色を測定する場合、分光光度計を使用することができる。この場合において、平らで透明なプレートをプレートPLとして使用し得ることが好ましい。
【0306】
発生する生成物に起因する発光を検出しようとする場合において、発光を測定して、特異的結合を定量的に測定することができる。発光の測定は、プレートPLの下部又はその上の溶液から放射された光を検出することによって行うことができる。発光を測定する場合、発光光度計を使用することができる。発光を測定する場合、不透明な黒色プレート又は不透明な白色プレートを、プレートPLとして使用することができる。
【0307】
発生する生成物に起因する蛍光を検出しようとする場合において、蛍光を測定して、特異的結合を定量的に測定することができる。蛍光の測定は、光をプレートPLに入射させること、及びプレートPLから放射された蛍光を測定することによって行うことができる。蛍光を測定する場合、フィルターが取り付けられた蛍光光度計を使用することができる。蛍光を測定する場合、不透明な黒色プレート又は不透明な白色プレートを、プレートPLとして使用することができる。
【0308】
発色画像、発光画像又は蛍光画像を取得することができる。画像の部分画像を、別々に取得することができ、取得された部分画像は、単一画像に組み合わせることができる。標的抗原/抗体ABが分布している位置、細胞の形状、組織中の標的タンパク質の分布などを、取得した画像から得ることができる。また、取得した画像を解析することによって、標的タンパク質、標的抗原/抗体ABなどの位置、及び標的の部分画像を取得することができる。
【0309】
免疫学的測定の診断結果の検出は、電気化学的方法を使用して行うこともできる。例えば、プレートPLに生じる電気化学的特性の変化を、プレートPLに固定された試料に特異的に結合する抗体ABを使用して、測定することができる。或いは、プレートPLへ抗体ABを移動させるパッチPAに起因して生じるパッチPAの電気化学的特性の変化を測定することもできる。
【0310】
4.3 免疫化学の実施形態
図35は、本出願による免疫学的測定方法の一例を説明するためのフローチャートを示す。本出願の一実施形態による免疫学的測定方法は、反応領域に診断される試料を配置するステップ(S200)、及び標的タンパク質TPと特異的に反応する抗体ABを含有するパッチPAを使用して、反応領域に、抗体ABを提供するステップ(S300)を含むことができる。
【0311】
診断される試料の配置は、試料をプレートPLに固定する方法、試料をプレートPLに塗抹する方法、又は試料をプレートに塗抹し、試料を固定する方法のうちのいずれか1つによって行うことができる。
【0312】
試料の配置(S200)及び反応領域への抗体ABの提供(S300)に加えて、免疫学的測定方法は、抗体ABに付着した酵素によって触媒される化学反応によって生成物を発生する基質SUを含有するパッチPAを使用して、反応領域に基質SUを提供する(S400)ステップをさらに含んでいてもよい(図36を参照のこと)。
【0313】
試料の配置(S200)及び反応領域への抗体ABの提供(S300)に加えて、免疫学的測定方法は、標的の疾患を診断するために、抗体AB及び標的タンパク質TPの間の特異的反応を検出するステップをさらに含んでいてもよい(図37を参照のこと)。
【0314】
この場合において、特異的反応の検出は、特異的反応に起因して生じるパッチPAの電気的特性の変化を測定することを含んでいてもよい。或いは、特異的反応の検出は、標的タンパク質TPと特異的に結合する抗体ABに付着した酵素によって触媒される化学反応に起因して生じる蛍光を測定すること、化学反応に起因して生じる発光を測定すること、及び化学反応に起因して発生する色を測定することのうちのいずれか1つによって行われてもよい。
【0315】
反応領域への抗体ABの提供(S300)は、パッチPAを反応領域と接触させて、抗体ABを反応領域に移動可能にすること(S310)、及び反応領域からパッチPAを分離すること(S330)を含むことができ、パッチPAが反応領域から分離されたときに、抗体ABの中から、標的タンパク質TPと特異的に反応していない抗体ABが、反応領域から除去され得る(図38を参照のこと)。
【0316】
試料の配置(S200)及び反応領域への抗体ABの提供(S300)に加えて、免疫学的測定方法は、洗浄パッチPAを使用することによって、提供された抗体ABの中から、標的タンパク質TPと特異的に反応していない抗体ABを、反応領域から吸収するステップ(S600)をさらに含んでいてもよい(図39を参照のこと)。
【0317】
免疫学的測定方法において、反応領域への抗体ABの提供(S300)は、標的タンパク質TPと特異的に反応する第1の抗体ABを含有する第1のパッチPAを使用して、反応領域に第1の抗体ABを提供すること(S320)、並びに、第1の抗体ABと特異的に反応する第2の抗体ABを含有する第2のパッチPAを使用して、反応領域に第2の抗体ABを提供すること(S340)を含むことができる(図40を参照のこと)。
【0318】
反応領域への診断される試料の配置(S200)の前に、免疫学的測定方法は、標的タンパク質TPと特異的に反応する抗体ABである下部抗体BABが反応領域に固定されたプレートPLを準備するステップ(S100)をさらに含んでいてもよく、反応領域への診断される試料の配置は、下部抗体BABが固定された反応領域に、診断される試料を配置することを含むことができる(図41を参照のこと)。
【0319】
試料の配置(S200)、反応領域への抗体ABの提供(S300)及び反応領域への基質SUの提供(S400)に加えて、免疫学的測定方法は、基質SUの化学反応を妨害するステップ(S700)をさらに含んでいてもよい(図42を参照のこと)。
【0320】
パッチPA及びプレートPLを使用して免疫学的測定を行うための特定の方法についてのいくつかの実施形態を以下に説明する。
【0321】
4.3.1 参照実施形態1-間接ELISA
図43は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法を説明するためのフローチャートを示す。
【0322】
本出願の一実施形態による、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法は、反応領域に試料SAを配置するステップ(S200)、反応領域に第1の抗体ABを提供するステップ(S320)、反応領域に第2の抗体ABを提供するステップ(S340)、反応領域に基質SUを提供するステップ(S400)、並びに抗体AB及び標的タンパク質TPの間の特異的反応を検出するステップ(S500)を含むことができる。
【0323】
本出願の一実施形態による間接ELISAを使用する免疫学的測定方法は、反応領域に試料SAを配置するステップ(S200)、反応領域に第1の抗体ABを提供するステップ(S320)、標的タンパク質TPと特異的に反応していない第1の抗体ABを、反応領域から吸収するステップ(S610)、反応領域に第2の抗体ABを提供するステップ(S340)、第1の抗体ABと特異的に反応していない第2の抗体ABを、反応領域から吸収するステップ(S630)、及び反応領域に基質SUを提供するステップ(S400)を含むことができる(図44を参照のこと)。
【0324】
本出願の一実施形態による免疫学的測定は、プレートPL及びパッチPAを使用し、間接ELISAによって行うことができる。
【0325】
本開示の一実施形態による免疫学的測定方法は、プレートPLに試料SAを固定するステップ、第1のパッチPAを使用することによって、プレートPLに一次抗体ABを提供するステップ、及び第2のパッチPAを使用することによって、プレートPLに二次抗体ABを提供するステップを含むことができる。
【0326】
プレートPLへの試料SAの固定は、プレートPLに診断される試料SAを固定することを含むことができる。プレートPLへの試料SAの固定は、プレートPL上の診断される体液試料SAを乾燥すること、及びプレートPLに体液試料SAを固定することを含むことができる。プレートPLへの診断される試料SAの固定は、組織の切片を固定することを含むことができる。
【0327】
パッチPAを使用することによるプレートPLへの一次抗体ABの提供は、一次抗体ABを含有する第1のパッチPAをプレートPLと接触させること、及びプレートPLに一次抗体ABを提供することを含むことができる。プレートPLとの第1のパッチPAの接触は、プレートPLに固定された試料SAと第1のパッチPAを接触させることを含むことができる。プレートPLとの第1のパッチPAの接触は、試料SAが固定されたプレートPLの領域と第1のパッチPAを接触させることを含むことができる。一次抗体ABは、検出しようとする抗原に従って変更することができる。一次抗体ABは、検出しようとする抗原と特異的に結合する抗体ABであってもよい。
【0328】
第1のパッチPAを使用することによる一次抗体ABの提供は、プレートPLと第1のパッチPAを接触させること、及びプレートPLから第1のパッチPAを分離することを含むことができる。プレートPLと第1のパッチPAの接触、及び続くプレートPLからの第1のパッチPAの分離は、一次抗体ABが選択的に移動することを可能にし得る。言い換えれば、一次抗体ABが特異的に結合する抗原が、プレートPLに固定されると、一次抗体ABは、第1のパッチPAから選択的に移動することができる。ここで、プレートPLに移動するが、特異的に結合しない一次抗体AB(本明細書の以下において、「残留一次抗体」)は、第1のパッチPAに吸収され、第1のパッチPAがプレートPLから分離されると、プレートPLから除去され得る。
【0329】
パッチPAへの残留一次抗体ABの吸収は、残留一次抗体ABが、第1のパッチPA及びプレートPLの間の接触に起因して形成される水膜WFに溶解すること、及び第1のパッチPAがプレートPLから分離されたときに、水膜WFが、第1のパッチPAと一緒に移動することによって、行うことができる。本出願の全体を通して、パッチ及び試料などの間の接触に起因して発生する水膜は、接触領域の近傍における薄い液体の膜を指し得る。この場合において、形成される膜は、必ずしも平らな形状を有する必要はない。しかしながら、水膜はこれらに限定されず、本出願において、水膜は、パッチ及び試料などの間の接触に起因して物質の移動が可能である領域、又はパッチが試料などと接触した後に物質が移動性を有する領域を指すものとして理解され得る。
【0330】
上記で説明するように、残留一次抗体ABは、第1のパッチPAの分離だけによってプレートPLから除去されるので、従来のELISAを行うのに実質的に必要である洗浄プロセスを省略することができる。言い換えれば、本出願の一次パッチPAを使用する一次抗体ABを結合する手段によって、洗浄液を使用して、特異的に結合していない一次抗体ABをプレートPLから除去するプロセスは、省略することができる。
【0331】
図45~47は、間接ELISAによる免疫学的測定の実施において、パッチPAを使用する一次抗体AB1の提供を示す。図45及び46によれば、パッチPAは、一次抗体AB1を含有することができ、プレートPL上に位置する試料SA又は試料SAが位置する反応領域に、一次抗体AB1を提供することができる。パッチPAによるプレートPLへの一次抗体AB1の提供は、接触領域の近傍で形成される水膜WFによって、一次抗体AB1が、プレートPL又はプレートPL上の反応領域に移動が可能であるように、パッチPAをプレートPLと接触させることによって行うことができる。プレートPLへの一次抗体AB1の提供は、一次抗体AB1及び試料SA,特に、試料SAに含まれる標的タンパク質TPの間の特異的結合に起因し得る。
【0332】
パッチPAを使用するプレートPLへの二次抗体ABの提供は、二次抗体ABを含有する第2のパッチPAをプレートPLと接触させること、及びプレートPLに二次抗体ABを提供することを含むことができる。プレートPLと接触する第2のパッチPAの接触は、プレートPLに固定された試料SAと第2のパッチPAを接触させることを含むことができる。プレートPLとの第2のパッチPAの接触は、試料SAが固定されたプレートPLの領域と第2のパッチPAを接触させることを含むことができる。二次抗体ABは、一次抗体ABと特異的に結合する抗体ABであってもよい。二次抗体ABは、使用される一次抗体ABに従って変更することができる。この場合において、二次抗体ABは、酵素が付着している抗体ABであってもよい。抗体に付着する酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)又はアルカリホスファターゼ(AP)であってもよい。
【0333】
第2のパッチPAを使用することによる二次抗体ABの提供は、プレートPLと第2のパッチPAを接触させること、及びプレートPLから第2のパッチPAを分離することを含むことができる。プレートPLと第2のパッチPAの接触、及び続くプレートPLからの第2のパッチPAの分離は、二次抗体ABがプレートPLに選択的に移動することを可能にし得る。言い換えれば、一次抗体ABが特異的に結合する抗原がプレートPLに固定され、固定された抗原に結合する一次抗体ABが存在する場合、一次抗体ABと特異的に結合する二次抗体ABは、プレートPLに選択的に送達され得る。ここで、プレートPLに移動するが、特異的に結合しない二次抗体AB(本明細書の以下において、「残留二次抗体」)は、第2のパッチPAに吸収され、第2のパッチPAがプレートPLから分離されると、プレートPLから除去され得る。したがって、プレートPLから特異的に結合していない抗体ABを除去する洗浄液を使用するプロセスを省略することができる。第2のパッチPAへの残留二次抗体ABの吸収は、残留二次抗体ABが、第2のパッチPA及びプレートPLの間の接触に起因して形成される水膜WFに溶解すること、及び第2のパッチPAがプレートPLから分離されたときに、水膜WFが、第のパッチPAと一緒に移動することによって、行うことができる。
【0334】
上述の一次パッチPAを使用する残留一次抗体ABの除去と同様に、残留二次抗体ABは、第2のパッチPAの分離だけによって、プレートPLから除去することができる。したがって、従来のELISAの実施において実質的に必要なプロセスである、特異的に結合していない二次抗体ABをプレートPLから除去する洗浄液を使用するプロセスを省略することができる。
【0335】
図48~50は、間接ELISAによる免疫学的測定の実施において、パッチPAを使用する二次抗体AB2の提供を示す。図48~50によれば、パッチPAは、二次抗体ABを含有し、プレートPL上に位置する試料SA又は試料SAが位置する反応領域に、二次抗体ABを提供することができる。パッチPAによるプレートPLへの二次抗体ABの提供は、接触領域の近傍で形成される水膜WFによって、二次抗体AB2が、プレートPL又はプレートPL上の反応領域に移動が可能であるように、プレートPLと接触するパッチPAを接触させることによって行うことができる。プレートPLへの二次抗体AB2の提供は、二次抗体AB2及び試料SA、特に、試料SAに含まれる標的タンパク質TPと結合する一次抗体AB1の間の特異的結合に起因し得る。
【0336】
本実施形態による免疫学的測定方法は、パッチPAを使用することによって、基質SUを提供するステップをさらに含んでいてもよい。パッチPAを使用するプレートPLへの基質SUの提供は、プレートPLと接触している基質SUを含有する第3のパッチと接触させること、及びプレートPLに基質SUを提供することを含むことができる。基質SUは、ABTS又はTMBであってもよい。基質SUは、酵素によって触媒され、生成物PDを発生させることができ、生成物PDは、検出しようとする特異的結合のラベルとしての機能を果たすことができる。
【0337】
また、上述の第3のパッチPAを使用する基質SUの提供は、第3のパッチPAをプレートPLと接触させること、及びプレートPLから第3のパッチPAを分離することを含むことができる。プレートPLと第3のパッチPAの接触、及び続くプレートPLからの第3のパッチPAの分離は、第3のパッチ及びプレートPLの間の接触を維持するための時間の制御を可能にし得る。言い換えれば、第3のパッチPAは、最適な時点で、プレートPLから分離することができる。
【0338】
免疫学的測定は、酵素によって触媒される基質SUの化学反応によって発生する生成物PDを検出することによって行うことができる。この場合において、反応が、最適な時点で終了していない場合、過剰量の生成物PDが生成し得、生成物PDの定量的測定を行うことが難しくなり得る。この場合において、本出願の一実施形態によれば、上記で説明するように、基質SUパッチPAを分離すると、反応は最適な時点で停止し得るので、過剰反応に起因する上述の測定誤差の問題は解決することができる。上記で説明するように、基質SUパッチPAが、最適な時点で除去されると、特異的結合は、基質SUパッチPAが除去される時点まで、生成物PDを測定することによって、検出することができる。
【0339】
図51~53は、間接ELISAによる免疫学的測定の実施において、パッチPAを使用する基質SUの提供を示す。図51~53によれば、パッチPAは、基質SUを含有し、プレートPLに位置する試料SA又は試料SAが位置する反応領域に、基質SUを提供することができる。パッチPAによるプレートPLへの基質SUの提供は、接触領域の近傍で形成される水膜WFによって、基質SUが、プレートPL又はプレートPL上の反応領域に移動が可能であるように、パッチPAをプレートPLと接触させることによって行うことができる。基質SUは、プレートPLに位置する二次抗体ABに付着する酵素によって触媒される化学反応に起因して、生成物PDを生成又は生成物PDに変換され得る。
【0340】
本実施形態による免疫学的測定方法は、洗浄パッチPAを使用する残留物を吸収するステップをさらに含んでいてもよい。洗浄パッチPAを使用する残留物の吸収は、洗浄パッチPAをプレートPLと接触させて、残留物を吸収することを含むことができる。洗浄パッチPAを使用する残留物の吸収は、プレートPLと接触する洗浄パッチPAを接触させて、固定された試料SAの少なくとも一部と特異的に結合していない第1の抗体ABを吸収することを含むことができる。洗浄パッチPAを使用する残留物の吸収は、プレートPLと接触する洗浄パッチPAを接触させて、第1の抗体ABの少なくともいくつかと特異的に結合していない第2の抗体ABを吸収することを含むことができる。
【0341】
洗浄パッチPAを使用する残留物の吸収は、第1のパッチPAを使用することによるプレートPLへの一次抗体ABの提供の後、第2のパッチPAを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供の前に行うことができる。或いは、洗浄パッチPAを使用する残留物の吸収は、第2のパッチPAを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供の後、パッチPAを使用することによるプレートPLへの基質SUの提供の前に行うことができる。
【0342】
洗浄パッチPAを使用する残留物の吸収は、従来の免疫学的測定方法における洗浄液を使用する洗浄の実施と置き換えることができる。従来の洗浄方法は、主に、プレートPL上に洗浄液を注いで、プレートPLをすすぎ、特異的に結合することなくプレートPL上に位置する基質を除去することによって行われるので、従来の洗浄方法では、過剰量の溶液が消費される。しかしながら、本出願におけるように、パッチPAを使用して、プレートPLから残留物を吸収する場合、消費される洗浄液の量は、従来の方法と比較して著しく減少し、したがって、経済的な実施可能性が改善される。
【0343】
図54~56は、本出願による免疫学的測定の一実施形態における洗浄の実施を示す。図54~56によれば、パッチPAは、プレートPLから残留物質を吸収することができる。残留物質は、標的タンパク質TPと特異的に結合していない抗体AB4であってもよい。この場合において、標的タンパク質TPが特異的に結合している抗体AB3は、パッチに吸収されなくてもよい。パッチPAは、洗浄液を含有する洗浄パッチPAであってもよい。
【0344】
本実施形態による免疫学的測定方法は、特異的結合の検出を阻害する物質を取り去るステップを含むことができる。特に、本出願の免疫学的測定方法の実施において、特異的結合の検出を阻害する物質を、プレートPLから容易に除去するための界面活性剤パッチPAを使用することができる。
【0345】
本実施形態による免疫学的測定方法は、プレートPLに所定の環境を提供するステップをさらに含んでいてもよい。所定の環境の提供は、緩衝パッチPAを使用して行うことができる。所定の環境の提供は、免疫学的測定のそれぞれのステップを容易にする、緩衝液を含有する緩衝パッチPAを使用することによって、環境を提供することを含むことができる。例えば、化学発光を検出する場合、過酸化物緩衝液を含有する緩衝パッチPAを使用することができる。
【0346】
本実施形態による免疫学的測定方法は、プレートPL上の反応を妨害するステップを含んでいてもよい。反応の妨害は、妨害パッチPAを使用して行うことができる。反応の妨害は、化学反応、すなわち、酵素によって触媒される基質SUの生成物PDを生成する反応を妨害することを含むことができる。反応の妨害は、反応を停止することを含み得る。
【0347】
本実施形態による免疫学的測定方法は、特異的反応を検出するステップをさらに含むことができ、これは、基質SUの生成物PDを生成する反応を検出することを含むことができる。生成反応の検出は、一次抗体ABが特異的に結合している抗原を検出することを含むことができる。一次抗体ABが特異的に結合している抗原の検出は、一次抗体ABと結合している二次抗体ABに付着する酵素によって触媒される基質SUの反応に起因して発生する生成物PDを検出することを含むことができる。この場合において、生成物PDの検出は、反応に起因する発色を測定すること、反応に起因する発光を測定すること、又は反応に起因する蛍光を測定することによって、実施することができる。
【0348】
生成反応の検出は、基質SUを含有するパッチPAをプレートPLと接触させること、及びリアルタイムで基質SUの化学反応を検出することによって行うことができる。生成反応の検出は、基質SUを含有するパッチPAをプレートPLと接触させること、及び所定の時間の後、反応の結果を検出することによって行うことができる。この場合において、基質SUを含有するパッチPAは、分離され得、反応の結果は、所定の時点の後に検出することができる。
【0349】
生成反応の検出は、接触への妨害液を含有するパッチPAをプレートPLと接触させること、及び妨害液を含有するパッチPAをプレートPLと接触させながら反応の結果を検出すること、又は妨害液を含有するパッチPAをプレートPLから分離した後、反応の結果を検出することを含むことができる。
【0350】
本実施形態において、基質SUの提供又は一次抗体AB若しくは二次抗体ABの提供は、必ずしもパッチPAを使用して行う必要はなくてもよい。基質SUの提供又は一次抗体AB若しくは二次抗体ABの提供のうちの1つは、液体又は溶液状態である、基質SU、一次抗体AB又は二次抗体ABをプレートPLに提供することによって置き換えることができる。
【0351】
本実施形態による免疫学的測定において使用され得るパッチPAの実施形態を以下に説明する。それぞれのパッチPAはいくつかの成分を含有するものとして説明し、それぞれの成分は、上述の塩基性物質BS又は添加物質ASとして理解され得る。しかしながら、それぞれのパッチPAに含有され得るとして以下に説明する成分は、それぞれのパッチPAに含有されるすべての成分でなくてもよく、それぞれのパッチPAは、他の特定されていない成分を含有することもできる。
【0352】
4.3.1.1 一次抗体パッチ
本出願の免疫学的測定は、一次抗体を含有するパッチPAを使用して行うことができる。言い換えれば、パッチPAは、一次抗体を含有し、プレートPLに一次抗体ABを提供することができる。
【0353】
一次抗体ABは、パッチPAに含有される添加物質ASであってもよい。言い換えれば、パッチPAは、一次抗体ABを含む溶液を含有することができる。また、一次抗体AB又は一次抗体ABの溶液に加えて、一次抗体ABを含有するパッチPAは、一次抗体ABが、検出される抗原と容易に結合することを可能にする、別の塩基性物質SB又は添加物質ASを含有することもできる。
【0354】
一次抗体ABは、標的タンパク質TPと特異的に結合する抗体ABであってもよい。言い換えれば、一次抗体ABは、検出しようとする標的抗原と特異的に結合する抗体ABであってもよい。
【0355】
一次抗体ABを含有するパッチPAは、検出しようとする抗原と特異的に結合する一次抗体ABを、溶液の形態で含有することができる。一次抗体ABは、パッチPAの全体にわたり均一に分布していてもよい。一次抗体ABは、別の媒体からパッチPAに吸収され、パッチPAに含有されてもよい。一次抗体ABは、一次抗体ABが微粒子に付着している状態で、パッチPAに含有されていてもよい。
【0356】
本実施形態におけるように、一次抗体ABがパッチPAに含有され、プレートPLに提供される場合、プレートPLに固定された物質の一部と特異的に結合していない一次抗体ABは、パッチPAに再吸収され得る。したがって、一次抗体ABを洗浄するプロセスは省略することができ、パッチPAは、いくつかの場合において、再利用することができ、迅速で効率的な診断を実現することができる。
【0357】
本出願の一実施形態によるパッチPAは、標的タンパク質TPと特異的に反応する抗体ABと、抗体ABが含有されたマイクロキャビティを形成するメッシュ構造で提供されるメッシュ構造体NSとを含み、かつ含有される抗体ABのいくつかを反応領域に提供するように標的タンパク質TPが配置されている反応領域と接触するために構成された、抗体AB含有パッチであってもよい。この場合において、標的タンパク質TPと特異的に反応する抗体ABは、標的抗原と特異的に結合する一次抗体ABであってもよい。
【0358】
4.3.1.2 二次抗体パッチ
本出願の免疫学的測定は、二次抗体ABを含有するパッチPAを使用して行うことができる。言い換えれば、パッチPAは、二次抗体を含有し、プレートPLに二次抗体ABを提供することができる。
【0359】
二次抗体ABは、パッチPAに含有される添加物質ASであってもよい。パッチPAは、二次抗体ABを含む溶液を含有することができる。また、二次抗体AB又は二次抗体ABの溶液に加えて、二次抗体ABを含有するパッチPAは、二次抗体ABが、標的の一次抗体ABと容易に結合することを可能にする、別の塩基性物質SB又は添加物質ASを含有することもできる。二次抗体ABは、一次抗体ABと特異的に結合する抗体ABであってもよい。この場合において、一次抗体AB及び二次抗体ABの間の特異的結合は、エピトープ特異的結合に代わる種特異的結合であってもよい。一次抗体ABに種特異的に結合する二次抗体ABが使用される場合、異なるタンパク質を検出することを意図する一次抗体ABが使用される場合であっても、そこに付着した識別ラベルを有する二次抗体ABは、一次抗体ABが同じ種を起源とする限り、一般的に使用することができる。
【0360】
酵素は、二次抗体ABに付着していてもよい。二次抗体ABに付着した酵素は、特異的結合を検出するための識別子としての機能を果たすことができる。特に、酵素は、抗体ABに付着し、抗体ABと特異的に結合する抗原、若しくは抗体ABと特異的に結合する抗体ABと特異的に結合する抗原(間接法の場合において)を検出する、ラベル又はレポーターとしての機能を果たすことができる。酵素は、抗体ABが分子の結晶性断片(FC)領域と結合するように結合することによって、使用することができる。
【0361】
一般に、AP又はHRPを、酵素として、主に使用することができる。
【0362】
二次抗体ABを含有するパッチPAが、上記に説明するように使用される場合であっても、プレートPLに固定された物質の一部と特異的に結合していない二次抗体ABがパッチPAに再吸収され得るので、迅速で効率的な免疫学的測定を行うことができる。
【0363】
本出願の一実施形態によるパッチPAは、標的タンパク質TPと特異的に反応する抗体ABと、抗体ABが含有されたマイクロキャビティを形成するメッシュ構造で提供されるメッシュ構造体NSとを含み、かつ含有される抗体ABのいくつかを反応領域に提供するように標的タンパク質TPが配置されている反応領域と接触するように構成された、抗体含有パッチPAであってもよい。この場合において、標的タンパク質TPと特異的に反応する抗体ABは、標的抗原と特異的に結合する二次抗体ABであってもよい。
【0364】
4.3.1.3 基質パッチ
本出願の免疫学的測定は、基質SUを含有するパッチPAを使用して行うことができる。言い換えれば、パッチPAは、基質SUを含有し、プレートPLに基質SUを提供することができる。
【0365】
基質SUは、パッチPAに含有される添加物質ASであってもよい。パッチPAは、基質SUを含む溶液を含有することができる。また、基質SUを含有するパッチPSは、基質SUの生成物PDを生成する反応を助ける、塩基性物質BS又は添加物質ASを含有することもできる。
【0366】
特に、二次抗体ABに付着した酵素は、基質SUの化学反応を触媒することができる。上述の特異的結合は、酵素によって触媒される反応に起因して発生する生成物PDから検出することができる。言い換えれば、基質SUは、酵素によって触媒され、生成物PDを発生させることができ、生成物PDは、特異的結合を検出するために検出することができる。
【0367】
基質SUは、ABTS、TMBなどであってもよい。使用される基質SUは、使用される酵素及び検出手段に従って変更することができる。例えば、使用される酵素がAPである場合、基質SUとして、パラ-ニトロフェニルホスフェート(pNPP)を使用することによって、発色を検出することができる。別の例として、使用される酵素がHRPである場合、基質SUとして、TMBなどを使用することによって、発色を検出することができる。
【0368】
基質SUが、上述の基質SUパッチPAを使用することによって提供される場合、消費される基質SU溶液の量は、基質SU溶液をプレートPLの反応溶液に注いで、反応を検出する、従来のELISA法と比較して、著しく減少する。したがって、診断を経済的に行うことができる。また、基質SUパッチPAは、過剰反応を防ぐために適切な時点で分離することができるので、より正確な検出結果を取得することができる。
【0369】
4.3.1.4 洗浄パッチ
本実施形態による免疫学的測定方法は、残留物を吸収する洗浄パッチPAを使用して行うことができる。言い換えれば、本実施形態による免疫学的測定方法において、残留物は、洗浄パッチPAをプレートPLと接触させること、続いてプレートPLから洗浄パッチPAを分離することによって、吸収され得る。上述の一次抗体ABパッチPA、二次抗体ABパッチPA又は基質SUパッチPAが、プレートPLと接触し、続いてプレートPLから分離される場合、残留物は、それぞれのパッチに吸収されず、除去されていない残留物を指し得る。
【0370】
洗浄パッチPAは、洗浄液を含有することができる。洗浄液は、その部分に添加されたTween20を有するTBS又はPBSを含むことができる。洗浄液は、吸収される残留物に従って、残留物を溶解することができる溶液として提供され得る。洗浄液を含有するパッチPAは、洗浄を助ける塩基性物質BS又は添加物質ASをさらに含有していてもよい。
【0371】
パッチPAが洗浄液を含有し、プレートPLと接触し、続いてプレートPLから分離されることによって、プレートPL上の不純物又は残留物、例えば、未結合の抗体ABなどは、洗浄パッチPAに吸収され、除去することができる。残留物は、試料SAに含まれる検出される抗原と特異的に結合していない第1の抗体AB、又は第1の抗体ABと特異的に結合していない第2の抗体ABを含んでいてもよい。
【0372】
洗浄パッチPAへの残留物の吸収において、洗浄パッチPAは、水膜WFが形成されるように、プレートPL、すなわち、試料SAが位置するプレートPLの領域と接触し、残留物を、水膜WFに溶解することができる。水膜WFに溶解した残留物は、洗浄パッチPAがプレートPLから分離されるときに、水膜WFが、洗浄パッチPAと一緒に移動することによって、洗浄パッチPAに吸収され得る。
【0373】
プレートPL上の残留物が、上述の洗浄パッチPAを使用することによって除去される場合、消費される洗浄液の量は、従来のELISA法と比較して、著しく減少する。したがって、診断を経済的に行うことができる。また、基質SUパッチPAは、過剰反応を防ぐために適切な時点で分離することができるので、より正確な検出結果を取得することができる。
【0374】
4.3.1.5 界面活性剤パッチ
本実施形態による免疫学的測定方法は、取り去りを行う界面活性剤パッチPAを使用して行うことができる。言い換えれば、界面活性剤パッチPAは、界面活性剤溶液を含有し、パッチPAに界面活性剤溶液を提供することができる。
【0375】
特に、本出願の免疫学的測定方法の実施において、特異的結合の検出を阻害する物質を、プレートPLから単に除去するための界面活性剤パッチPAを使用することができる。特に、界面活性剤パッチPAは、容易に除去される、試料SAに含まれる検出される抗原と特異的に結合していない第1の抗体AB、又は第1の抗体ABと特異的に結合していない第2の抗体などの物質が、特異的結合の検出を阻害することを可能にする、界面活性剤物質を含有し、物質を除去するのに使用することができる。
【0376】
この場合において、界面活性剤パッチPAは、阻害する物質を容易に除去するための界面活性剤物質の少なくともいくつかを含有することができる。界面活性剤物質は、Tween 20、Triton X-100及びCHAPSのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0377】
4.3.1.6 緩衝パッチ
本実施形態による免疫学的測定方法は、緩衝パッチPAを使用して行うことができる。言い換えれば、緩衝パッチPAは、緩衝溶液を含有し、プレートPLに所定の環境を提供することができる。緩衝パッチPAは、免疫学的測定のそれぞれのステップを容易にする緩衝液を含有することができる。緩衝液の例としては、化学発光を検出する場合、過酸化物緩衝液を使用することができる。
【0378】
4.3.1.7 妨害パッチ
本実施形態による免疫学的測定方法は、反応妨害パッチPAを使用して行うことができる。言い換えれば、反応妨害パッチは、酵素によって触媒される基質SUの反応を妨害する妨害液を含有し、プレートPLに妨害液を提供することができる。
【0379】
パッチPAは、基質SUの反応を妨害するために、妨害液を含有することができる。すなわち、反応妨害パッチPAを製造することができ、反応妨害パッチPAは、プレートPLに妨害液を提供し、適切な時点で基質SUの反応を妨害するために使用することができる。
【0380】
妨害液は、基質SUの反応を妨害するための妨害物質の少なくとも一部を含有することができる。妨害物質は、硫酸であってもよい。
【0381】
本実施形態による免疫学的測定方法の実施において、妨害パッチPAの使用及びプレートPLからの上述の基質SUパッチPAの分離から選択されるいずれか1つを行うことができる。例えば、基質SUの反応を妨害するために、プレートPLと接触するように停止パッチPAを接触させること、プレートPLと接触している基質SUパッチPAと接触するように停止パッチPAを接触させること(例えば、プレートPLと接触している基質SUパッチの上面と接触するように停止パッチPAと接触させること)、及びプレートPLから基質SUパッチPAを分離することから選択されるいずれか1つを行うことができる。
【0382】
4.3.1.8 ABペアパッチ
図63は、本出願によるパッチPAの一実施形態として、抗体ABのペアを含有するパッチPAを示す。図63によれば、パッチPAは、一次抗体AB及び二次抗体ABの間の結合によってそれぞれ形成される抗体ABのペア、又は抗体AB複合体を含有することができる。
【0383】
本実施形態による免疫学的測定方法において、一次抗体AB6及び二次抗体AB7は、一緒にプレートPLに提供され得る。言い換えれば、パッチPAは、一次抗体AB6及び二次抗体AB7を同時に含有及び提供することができる(図64を参照のこと)。単一のパッチPAに含有され、一緒にプレートPLに提供される一次抗体AB6及び二次抗体AB7に起因して、診断を行うための手順は、より迅速で便利になり得る。
【0384】
一次抗体AB及び二次抗体ABを含有するパッチPAは、一次抗体AB及び二次抗体ABを含むように製造することができる。或いは、一次抗体AB及び二次抗体ABを含有するパッチPAは、一次抗体ABを含有するパッチPAを、二次抗体ABを含有するパッチPAと接触させることにより、製造することができる。
【0385】
この場合において、本実施形態による免疫学的測定方法において、第1のパッチPAを使用することによるプレートPLへの一次抗体ABの提供及び第2のパッチを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供は、第1のパッチPAを使用することによるプレートへの一次抗体AB及び二次抗体ABの提供に置き換えることができる。
【0386】
言い換えれば、本開示の一実施形態による免疫学的測定方法は、プレートPLに試料SAを固定するステップ、パッチPAを使用することによって、プレートPLに一次抗体AB及び二次抗体ABを提供するステップを含むことによって実施することができる。この場合において、二次抗体ABは、一次抗体ABと特異的に結合することができる。二次抗体AB及び一次抗体ABは、互いに結合した状態で、パッチPAに含有され、プレートPLに提供され得る。
【0387】
上記の実施形態によれば、上述の洗浄パッチPAによって吸収された物質は、検出されるタンパク質又は抗原と結合していない、一次抗体AB及び二次抗体ABの複合体であってもよい。また、上記の実施形態によれば、界面活性剤パッチPAによって除去が容易になる物質は、検出されるタンパク質又は抗原と結合していない、一次抗体AB及び二次抗体ABの複合体であってもよい。また、上記の実施形態によれば、パッチPAがプレートPLから分離されたときにプレートPLから除去される物質は、検出されるタンパク質又は抗原と結合していない、一次抗体AB及び二次抗体ABの複合体であってもよい。
【0388】
図65及び66は、本出願によるパッチPAの一実施形態として、抗体のペアを含有するパッチPAを製造する一例を示す。図65及び66によれば、抗体ABのペアを含有するパッチPAは、一次抗体AB6を含有するパッチPA及び二次抗体AB7を含有するパッチPAを接触させ、続いて2つを分離することによって、取得することができる。抗体ABのペアを含有するパッチPAの取得は、一次抗体AB6を含有するパッチPA及び二次抗体AB7を含有するパッチPAを接触させて、含有される物質を交換可能にすること、拡散を生じさせて、一次抗体AB6及び二次抗体AB7をそれぞれのパッチPAに位置させること、並びに一次抗体AB6及び二次抗体AB7を互いに結合させることによって、行うことができる。
【0389】
本出願の一実施形態によるパッチPAは、標的タンパク質TPと特異的に反応する抗体ABと、抗体ABを含有するメッシュ構造体NSとを含み、かつ含有される抗体ABのいくつかを反応領域に提供するように標的タンパク質TPが配置されている反応領域と接触する、抗体AB含有パッチPAであってもよい。この場合において、標的タンパク質TPは、抗原であってもよく、抗体ABは、抗原と特異的に結合する一次抗体AB及び一次抗体ABと特異的に結合する二次抗体ABの間の結合によって形成された抗体ABのペアであってもよく、抗体ABのペアは、抗原と特異的に反応することができる。
【0390】
4.3.1.9 吸収及び含有パッチ
本出願によるパッチPAは、上記で説明するように、抗体AB、基質SU、洗浄液、及び塩基性物質BS及び添加物質ASなどの免疫学的測定に必要な他の物質を含有することができる。上述の物質、特に、添加物質ASは、パッチPAの製造のステップからパッチPAに含有されていてもよく、又は異なる媒体で保持され、続いて診断が行われるときに、パッチPAに吸収及びパッチPAに含有されてもよい。言い換えれば、パッチPAは、別の媒体から、抗体AB及び基質SUなどの物質を吸収し、物質をパッチPAに含有することができる。
【0391】
この場合において、異なる媒体は、プレートPL又は紙であってもよい。異なる媒体に保持されるとは、プレートPLの表面に適用されること、プレートPLの表面上に適用及び乾燥されること、紙に吸収されること、又は紙に吸収及び乾燥されることを指し得る。
【0392】
これは、抗体ABを含有するパッチPAに適用することが特に有用であり得る。抗体ABが上記で説明する異なる媒体に保持される場合、抗体ABを含有する能力は著しく改善され、診断が行われる場合、所定のレベル又はそれよりも高い品質を、使用される抗体ABについて保証することができる。
【0393】
図74~76は、本出願によるパッチPAの一実施態様として、媒体から物質を吸収し、パッチPAに物質を含有する、パッチPAの一例を示す。図74~76によれば、本出願によるパッチPAは、プレートPLに適用された抗体ABを吸収し、パッチPAに抗体ABを含有することができる。プレートPLに適用された抗体ABの吸収は、抗体ABが、パッチPA及びプレートPLの間の接触に起因して形成される水膜WFに捕捉されること、及びパッチPAが、水膜WFがパッチPAと一緒に移動するようにプレートPLから分離されることによって、行うことができる。
【0394】
本出願によるパッチPAの一実施形態として、図77は、媒体から分離された抗体ABを吸収し、そこに抗体ABを含有する、パッチPAが、抗体ABをプレートPLに提供する場合を示す。図77によれば、本出願によるパッチPAは、抗体ABが適用されたプレートPL3から、抗体ABを吸収し、試料SAが適用されたプレートPL4に吸収された抗体ABを提供することができる。これは、抗体ABが適用されたプレートPL3が、パッチPAの上面と接触している状態で、パッチPAの下面を、試料SAが適用されたプレートPL4と接触させることによって、行うことができる。
【0395】
4.3.1.10 移動パッチ
本出願によるパッチPAは、媒体(すなわち、媒体)に含有される物質(すなわち、移動される物質)を、プレート又は別の外部領域に提供することができる。例えば、パッチPAは、媒体に保持された抗体AB及び基質SUなどの物質を、別途提供されたプレートに提供することができる。
【0396】
パッチは、媒体に含有される、移動される物質を溶解することができる液体物質を含有することができる。例えば、移動される物質が水溶性である場合、パッチは、水又は水溶液を含有することができる。この場合において、パッチは、水又は水溶液を、媒体に提供することができる。水溶液などが提供されると、媒体に含有される物質は、プレートに提供され得る。このような機構によって、湿潤環境が、パッチによって、媒体及びプレートに提供されると理解することができる。
【0397】
本実施形態において、パッチPAの表面は、物質が含有される外部媒体と接触させることができる。パッチと接触している表面の反対側の媒体の表面は、プレート又は別の外部領域と接触させることができる。この場合において、パッチは、媒体中に含有される物質をプレートに移動させることができる。
【0398】
本実施形態において、媒体は、吸収する能力又は伝達する能力を有する物質であり得る。媒体は紙であってもよい。媒体は、メッシュ形態の物質含有媒体であってもよい。
【0399】
本出願の一実施形態として、移動パッチを使用する免疫学的測定方法を提供することができる。特に、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、マイクロキャビティに液体基質を含有するように構成されたパッチを使用することにより、診断される試料から標的タンパク質を検出することによって診断を行うための免疫学的測定方法であって、標的タンパク質と特異的に反応する抗体を含有する媒体をパッチと接触するように接触させるステップ、及びパッチを、標的タンパク質が配置された反応領域と接触するように接触させるステップを含み、媒体が、パッチと接触すると、媒体に含有される抗体の少なくとも一部が、パッチに吸収される、免疫学的測定方法を提供することができる。この場合において、パッチが、反応領域と接触すると、パッチに吸収された抗体の少なくとも一部は、反応領域に移動可能であり得る。
【0400】
上記の実施形態において、パッチとの媒体の接触は、パッチと媒体の表面を接触させることを含むことができ、反応領域とパッチの接触は、反応領域と接触している、媒体と接触していないパッチの表面を接触させることを含むことができる。
【0401】
本出願の一実施形態によれば、移動パッチを使用する抗体提供キットを提供することができる。特に、標的タンパク質と特異的に反応する抗体を含有する媒体、並びに、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体を含み、媒体と接触して、媒体に含有される抗体の一部を吸収し、標的タンパク質が配置された反応領域と接触して、吸収された抗体の少なくとも一部を反応領域に提供するように構成された、抗体送達パッチを含む、抗体提供キットを提供することができる。
【0402】
4.3.2 参照実施形態2-直接ELISA
図57は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、直接ELISAを使用する免疫学的測定方法を説明するためのフローチャートを示す。
【0403】
本出願の一実施形態による直接ELISAを使用する免疫学的測定方法は、反応領域に試料SAを配置するステップ(S200)、反応領域に第1の抗体ABを提供するステップ(S300)、反応領域に基質SUを提供するステップ(S400)、並びに抗体AB及び標的タンパク質TPの間の特異的反応を検出するステップ(S500)を含むことができる。
【0404】
本実施形態による免疫学的測定は、プレートPL及びパッチPAを使用し、直接ELISAによって行うことができる。
【0405】
本実施形態による免疫学的測定方法は、プレートPLに試料SAを固定するステップ、及びパッチPAを使用することによって、プレートPLに抗体ABを提供するステップを含むことができる。
【0406】
プレートPLへの試料SAの固定は、プレートPL上の診断される試料SAを乾燥すること、及びプレートPLに試料SAを固定することを含むことができる。プレートPLへの診断される試料SAの固定は、体液試料SA又は診断される組織の切片をプレートPLに固定することを含むことができる。
【0407】
パッチPAを使用することによるプレートPLへの抗体ABの提供は、抗体ABを含有するパッチPAをプレートPLに接触させて、プレートPLに抗体ABを提供することを含むことができる。プレートPLと接触するパッチPAの接触並びに抗原及び抗体ABに関する詳細は、間接ELISAに関して上記で説明した。本実施形態は、直接ELISAによって行われるので、酵素は抗体ABに付着され得る。抗体ABに付着する酵素は、HRP又はAPであってもよい。
【0408】
パッチPAを使用することによる抗体ABの提供は、プレートPLと接触するパッチPAを提供すること、及びプレートPLからパッチPAを分離することを含むことができる。プレートPLと接触するパッチPAの提供、及び続いて、プレートPLからのパッチPAの分離は、抗体ABが選択的に提供されることを可能にし得る。言い換えれば、抗体が特異的に結合する抗原が、プレートPLに固定されると、抗体ABは、パッチPAからプレートPLに選択的に提供され得る。ここで、プレートPLに移動するが、特異的に結合しない抗体AB(本明細書の以下において、「残留抗体」)は、パッチPAに吸収され得、パッチPAがプレートPLから分離されると、プレートPLから除去され得る。パッチPAへの残留抗体ABの吸収は、残留抗体ABが、パッチPA及びプレートPLの間の接触によって形成される水膜WFに溶解すること、及び水膜WFが、パッチPAがプレートPLから分離されたときにパッチPAと一緒に移動することによって、行うことができる。
【0409】
上記で説明するように、残留抗体ABは、パッチPAの分離だけによってプレートPLから除去することができるので、従来のELISAを行うのに実質的に必要である残留物質(例えば、残留抗体AB)のための洗浄プロセスを省略することができる。従来行われている残留物質のための洗浄プロセスでは、プレートPL上に多量の洗浄液を注いで、プレートPLをすすぎ、プレートPLから、特異的結合に関与していない残留物質を除去する。しかしながら、本出願のパッチPAは、プレートPLを接触させ、続いてプレートPLから分離するだけによって、残留物質を捕捉及び分離することができるので、洗浄プロセスは必要ではない。それ故に、試薬をより効率的に使用することができ、ELISAを単純に行うことができる。
【0410】
図58~60は、本出願による免疫学的測定の一実施形態として、直接ELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。図58~60によれば、パッチPAは、抗体AB5を反応領域に提供することができる。酵素などの識別ラベルは、抗体ABに付着させることができる。パッチPAによるプレートPLへの抗体AB5の提供は、抗体AB5が、接触領域の近傍で形成される水膜WFによって、プレートPL又はプレートPL上の反応領域に移動可能であるように、パッチPAをプレートPLと接触させることによって、行うことができる。プレートPLへの抗体AB5の提供は、抗体AB5及び試料SA、特に、試料SAに含まれる標的タンパク質TPの間の特異的結合に起因し得る。
【0411】
本実施形態による免疫学的測定方法は、パッチPAを使用することによって、プレートPLに基質SUを提供するステップをさらに含むことができる。パッチPAを使用することによる基質SUの提供は、基質SUを含有するパッチPAをプレートPLと接触させて、プレートPLに基質SUを提供することを含むことができる。基質SUは、ABTS又はTMBであってもよい。基質SUは、酵素によって触媒され、生成物PDを発生させることができ、生成物PDは、検出しようとする特異的結合のラベルとしての機能を果たすことができる。
【0412】
また、基質SUを含有するパッチPAを使用することによるプレートPLへの基質SUの提供は、プレートPLと接触する基質SUを含有するパッチPAを接触させること、及びプレートPLから、基質SUを含有するパッチPAを分離することを含むことができる。プレートPLと接触する基質SUを含有するパッチPAの接触、及び続いて、プレートPLからの基質SUを含有するパッチPAの分離は、基質SUを含有するパッチ及び接触しているプレートPLの間の接触を維持するための時間の制御を可能にし得る。言い換えれば、基質SUを含有するパッチPAは、最適な時点で、プレートPLから分離することができる。
【0413】
免疫学的測定は、酵素によって触媒される基質SUの化学反応により発生する生成物PDを検出する手段によって、行うことができる。この場合において、反応が、最適な時点で停止しない場合、過剰量の生成物PDが生成し得、生成物PDの定量的測定を行うことが難しくなり得る。本出願のパッチPAを使用する免疫学的測定方法によれば、上記で説明するように、基質SUを含有するパッチPAをプレートPLから分離すると、反応は最適な時点で停止し得るので、過剰反応に起因する上述の測定誤差の問題は解決することができる。上記で説明するように、基質SUを含有するパッチPAが、最適な時点でプレートPLから除去されると、特異的結合は、最適な時点まで、生成物PDを測定することによって、定量的に検出することができる。
【0414】
図61及び62は、直接ELISAによる免疫学的測定の実施において、パッチPAを使用する基質SUの提供を示す。図61及び62によれば、パッチPAは、基質SUを含有し、プレートPL上に位置する試料SA又は試料SAが位置する反応領域に、基質SUを提供することができる。パッチPAによるプレートPLへの基質SUの提供は、接触領域の近傍で形成される水膜WFによって、基質SUが、プレートPL又はプレートPL上の反応領域に移動が可能であるように、パッチPAをプレートPLと接触させることによって、行うことができる。基質SUは、プレートPLに位置する抗体ABに付着する酵素によって触媒される化学反応に起因して、生成物PDを生成又は生成物PDに変換され得る。
【0415】
本実施形態による免疫学的測定方法は、洗浄パッチPAを使用する、残留物を吸収するステップをさらに含むことができる。洗浄パッチPAを使用する残留物の吸収は、プレートPLと接触している洗浄パッチPAを接触させて、残留物を吸収することを含むことができる。洗浄パッチPAを使用する残留物の吸収は、プレートPLに接触している吸収パッチPAを接触させて、固定された試料SAの少なくとも一部と特異的に結合していない抗体ABを吸収することを含むことができる。言い換えれば、標的の特異的結合の検出において、洗浄パッチPAは、特異的結合に関与していない残留物質を吸収することができる。
【0416】
洗浄パッチPAを使用する残留物の吸収は、パッチPAを使用することによるプレートPLへの抗体ABの提供の後、パッチPAを使用することによるプレートPLへの基質SUの提供の前に行うことができる。
【0417】
洗浄パッチPAを使用する残留物の吸収は、従来の免疫学的プロセスにおいて洗浄液を使用する洗浄の実施と置き換えることができる。従来の洗浄プロセスは、大量の洗浄液を直接使用して、残留物質を除去する、人により行われ、したがって、溶液が廃棄される、人手が必要である、及び形成された特異的結合にも悪影響を及ぼし得るという問題を有している。しかしながら、洗浄を本出願のパッチPAを使用して行う場合、溶液を流すことによって行わないので、形成されている特異的結合への影響が少なく、洗浄液の消費が著しく減少するという利点がある。
【0418】
本実施形態による免疫学的測定方法は、特異的結合の検出を阻害する物質を取り去るステップを含んでいてもよい。
【0419】
本実施形態による免疫学的測定方法は、プレートPLに所定の環境を提供するステップをさらに含んでいてもよい。
【0420】
本実施形態による免疫学的測定方法は、プレートPL上の反応を妨害するステップを含んでいてもよい。
【0421】
取り去り、環境の提供及び反応の妨害の詳細は、間接ELISAを参照して、上記に説明したものと同様であり得る。
【0422】
本実施形態による免疫学的測定方法は、提供された抗体ABと特異的に結合している抗原を検出するステップをさらに含んでいてもよい。抗体ABと特異的に結合している抗原の検出は、抗体ABと結合する基質SU及び酵素の間の反応に起因して生じる生成物PDを検出することを含んでいてもよい。この場合において、生成物PDの検出は、反応に起因する発色を測定すること、反応に起因する発光を測定すること、又は反応に起因する蛍光を測定することによって、実施することができる。
【0423】
加えて、他に特に言及がない限り、間接ELISAにおいて使用される、上述のパッチPA、診断を行う方法などは、直接ELISAによる免疫学的測定の実施に、同様に適用することもできる。
【0424】
本実施形態において、基質SUの提供又は一次抗体AB若しくは二次抗体ABの提供は、パッチPAを使用して必ずしも行う必要はなくてもよい。基質SUの提供又は一次抗体AB若しくは二次抗体ABの提供のうちの1つは、液体又は溶液状態である、基質SU、一次抗体AB又は二次抗体ABのプレートPLへの提供と置き換えることができる。
【0425】
4.3.3 参照実施形態3-サンドイッチELISA
図67は、本出願による免疫学的測定方法の一例として、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法を説明するためのフローチャートを示す。
【0426】
本出願の一実施形態によるサンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法は、反応領域に下部抗体BABを配置するステップ(S100)、反応領域に試料SAを配置するステップ(S200)、反応領域に抗体ABを提供するステップ(S300)、反応領域に基質SUを提供するステップ(S400)、並びに抗体AB及び標的タンパク質TPの間の特異的反応を検出するステップ(S500)を含むことができる。
【0427】
本実施形態による免疫学的測定は、プレートPL及びパッチPAを使用し、サンドイッチELISAによって行うことができる。
【0428】
本実施形態による免疫学的測定方法は、プレートPLに抗体ABを固定するステップ、プレートPLに試料SAを適用するステップ、及びパッチPAを使用することによって、プレートPLに抗体ABを提供するステップを含むことができる。
【0429】
プレートPL上への抗体ABの固定は、乾燥された抗体ABを固定することを含むことができる。プレートPL上への抗体ABの固定は、コーティング緩衝液を使用して行うことができる。プレートPL上への抗体ABの固定は、プレートPL上に薄膜を形成することを含むことができる。薄膜は、予め製造して、プレートPLに付着させることによって固定されていてもよい。抗体ABの固定は、抗体ABのFC領域がプレートPLと接触するように、抗体ABを固定することを含むことができる。固定された抗体ABは、検出される標的抗原と特異的に結合する抗体ABであってもよい。
【0430】
プレートPLへの試料SAの適用は、液相の体液を適用することを含むことができる。例えば、プレートPLへの試料SAの適用は、血液、尿、及び細胞の懸濁液のうちのいずれか1つを適用することを含むことができる。
【0431】
図68及び69は、本出願の一実施形態による、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。図68及び69によれば、サンドイッチELISAによる免疫学的測定は、プレートPLに、標的タンパク質TPに特異的に結合する抗体(すなわち、下部抗体BAB)を固定するステップ、及び試料SAを適用するステップを含むことができる。下部抗体BABの固定は、抗体ABのFC領域がプレートPLと接触するように、下部抗体BABを固定することを含むことができる。プレートPLに試料SAを適用することによって、試料SAに含まれる標的タンパク質TPは、下部抗体BABと結合することができる。本出願のそれぞれの図面において、標的タンパク質などが示す形状は、標的タンパク質などのある性質を意味するものではない。
【0432】
パッチPAを使用することによるプレートPLへの抗体ABの提供は、直接法又は間接法を使用して行うことができる。言い換えれば、パッチPAを使用することによるプレートPLへの抗体ABの提供は、検出しようとする抗原と特異的に結合し、そこに付着する酵素を有する抗体ABを提供することを含むことができる。パッチPAを使用することによるプレートPLへの抗体ABの提供は、パッチPAを使用することによって、プレートPLに一次抗体ABを提供すること、及びパッチPAを使用することによって、プレートPLに二次抗体ABを提供することを含むことができる。
【0433】
したがって、本実施形態のプレートPLへの抗体ABの提供において、間接ELISAを参照して上記で説明した第1のパッチPAを使用することによるプレートPLへの一次抗体ABの提供及び第2のパッチPAを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供、又は直接ELISAを参照して上記で説明したパッチPAを使用することによる抗体ABの提供を適用することができる。
【0434】
図70及び71は、本出願の一実施形態による、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。図70及び71によれば、サンドイッチELISAによる免疫学的測定は、酵素などの識別ラベルが付着した抗体AB8を含有するパッチPAを使用することによって、プレートPLに抗体AB8を提供するステップを含むことができる。プレートPLへの抗体AB8の提供は、パッチPAを、プレートPLを接触させること、及び続いて、プレートPLからのパッチPAを分離することによって、行うことができる。この場合において、パットPAをプレートPLと接触させること、及び続いて、プレートPLからパッチPAを分離することによって、試料SAに含まれる非標的タンパク質(NTP)をパッチPAに吸収することができる。パッチPAへの非標的タンパク質NTPの吸収は、水膜WFが接触領域の近傍で形成され、非標的タンパク質NTPが水膜WFへの捕捉を引き起こすように、パッチPAをプレートPL又は試料SAと接触させることによって、行うことができる。
【0435】
本実施形態による免疫学的測定方法は、パッチPAを使用することによるプレートPLへの基質SUを提供するステップ、洗浄パッチPAを使用して残留物を吸収するステップ、特異的結合の検出を妨害する物質を取り去るステップ、プレートPLに所定の環境を提供するステップ、プレートPL上の反応を妨害するステップ、及び提供された抗体ABに特異的に結合している抗原を検出するステップの中で、少なくともいくつかを含むことができる。それぞれのステップの詳細は、間接ELISAを参照して上記で説明したものと同様であり得る。
【0436】
図72及び73は、本出願の一実施形態による、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法の一部を示す。図72及び73によれば、サンドイッチELISAによる免疫学的測定は、基質SUパッチPAを使用することによって、プレートPLに基質SUを提供するステップを含むことができる。基質SUの提供は、接触領域の近傍で形成される水膜WFによって、基質SUが、プレートPLに移動が可能であるように、基質SUを含有するパッチPAをプレートPLと接触させることによって、行うことができる。基質SUは、プレートPLに位置する抗体ABに付着する酵素によって触媒される化学反応によって、生成物PDを生成又は生成物PDに変換され得る。
【0437】
4.3.4 複数標的
本出願の免疫学的測定は、複数の標的を同時に検出するために行うことができる。言い換えれば、単一の疾患を引き起こす複数の標的を、同時に検出することができ、又は複数の疾患を引き起こす複数の標的を同時に検出することができる。例えば、白血病の診断において、白血病に関わる複数の抗原を同時に検出することができる。また、例えば、白血病及びジカウイルスなどの複数の異なる疾患を引き起こす標的タンパク質TPを同時に検出することができる。
【0438】
ここで、同時検出は、単一のプレートPLから複数の標的の検出、及び部分的に重複する時間域におけるそれぞれの標的の検出を指し得る。
【0439】
複数の標的の同時検出は、上述の免疫学的測定方法を行う手段に従って、別々に行うことができる。上述の免疫学的測定方法を行う手段に従う、複数の標的を検出する方法を以下に説明する。上記の実施形態を参照して上記で説明した内容の説明は省略する。
【0440】
4.3.4.1 間接+複数標的
本出願の一実施形態による免疫学的測定方法は、反応領域に試料SAを配置するステップ(S200)、及び反応領域に、抗体ABを提供するステップ(S300)を含むことができる。この場合において、複数の標的タンパク質TPが存在していてもよく、複数の標的タンパク質TPは、第1の標的タンパク質TP及び第2の標的タンパク質TPを含むことができ、パッチPAは、第1の標的タンパク質と特異的に反応する第1の抗体AB及び第2の標的タンパク質TPと特異的に反応する第1の抗体ABを含有することができる。
【0441】
或いは、標的タンパク質TPの種類は、1つ又は複数であってもよく、抗体ABを含有するパッチPAは、1つ又は複数であってもよく、標的タンパク質TPは、第1の標的タンパク質TP及び第2の標的タンパク質TPを含んでいてもよく、複数のパッチPAは、第1の標的タンパク質TPと特異的に反応する第1の抗体ABを含有する第1のパッチPA及び第2の標的タンパク質TPと特異的に反応する第2の抗体ABを含有する第2のパッチを含むことができる。
【0442】
本開示の一実施形態によれば、上記で説明する間接ELISAを使用する複数の標的を検出するための免疫学的測定方法は、プレートPLに試料SAを固定するステップ、プレートPLに複数の種類の一次抗体ABを提供するステップ、及びパッチPAを使用することによって、プレートPLに二次抗体ABを提供するステップを含むことができる。
【0443】
プレートPLへの試料SAの固定は、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の上述の実施形態におけるものと同様であり得る。しかしながら、複数の標的を検出するための免疫学的測定が、本実施形態におけるように間接ELISAによって行われる場合、試料SAは、プレートPLの単一の領域全体にわたって分布していてもよく、又は複数の分割された領域全体にわたって分布していてもよい。
【0444】
プレートPLへの複数の種類の一次抗体ABの提供は、複数の異なる種類の抗原と特異的に結合する複数の種類の一次抗体ABをプレートPLに提供することを含むことができる。
【0445】
プレートPLへの複数の種類の一次抗体ABの提供は、単一のパッチPAに含有される複数の種類の一次抗体ABをプレートPLに提供することを含むことができる。プレートPLへの複数の種類の一次抗体ABの提供は、複数のパッチPAを使用することによって、複数の種類の一次抗体ABをプレートPLに提供することを含むことができる。複数の種類の一次抗体ABの提供は、第1の一次抗体ABを含有する第1のパッチPA及び第2の一次抗体ABを含有する第2のパッチを使用して、第1の一次抗体AB及び第2の一次抗体ABをプレートPLに提供することを含むことができる。言い換えれば、複数の種類の一次抗体ABの提供は、複数の種類の一次抗体ABを含有する複数のパッチPAを使用して、一次抗体ABを提供することを含むことができる。
【0446】
パッチPAを使用することによるプレートPLへの一次抗体ABの提供は、単一のパッチPAによって、プレートPLの複数の分割された領域に、一次抗体ABを提供することを含むことができる。複数の領域は、第1の領域及び第2の領域を含むことができ、複数の領域への一次抗体ABの提供は、第1の領域に第1の一次抗体ABを提供すること、及び第2の領域に第2の一次抗体ABを提供することを含むことができる。言い換えれば、複数の領域への一次抗体ABの提供は、複数のパッチPAによって、異なる一次抗体ABを、複数の領域のそれぞれに提供することを含むことができる。
【0447】
複数のパッチPAを使用することによるプレートPLへの複数の種類の一次抗体ABの提供は、それぞれのパッチPAに含有される一次抗体ABがプレートPLに提供されるように、少なくともある時間、複数のパッチPAをプレートPLと同時に接触させることを含むことができる。複数のパッチPAを使用することによるプレートPLへの複数の種類の一次抗体ABの提供は、複数のパッチPAと少なくとも部分的に重複して連続して接触するプレートPLの領域及びそれぞれのパッチPAに含有される一次抗体ABがプレートPLに提供されるように、複数のパッチPAをプレートPLと連続して接触させることを含むことができる。
【0448】
パッチPAを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供は、第1の種類の一次抗体ABと特異的に結合する第1の二次抗体AB、及び第2の種類の一次抗体ABと特異的に結合する第2の二次抗体ABを、パッチPAを使用することによって、プレートPLに提供することを含むことができる。例えば、パッチPAを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供は、複数の異なる種類の一次抗体ABと特異的に結合する性質を有する、複数の種類の二次抗体ABをプレートPLに提供することを含むことができる。パッチPAを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供は、複数の種類の一次抗体ABと、一般に、特異的に結合する性質を有する、単一の種類の二次抗体ABをプレートPLに提供することを含むことができる。言い換えれば、二次抗体ABは、診断に使用される複数の種類の一次抗体ABのそれぞれと特異的に結合する性質を有する複数の種類の二次抗体ABであってもよく、又は診断に使用される複数の種類の一次抗体ABと、一般に、種特異的に結合する性質を有する単一の種類の二次抗体ABであってもよい。
【0449】
パッチPAを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供は、単一のパッチPAに含有される、複数の種類の二次抗体AB又は単一の種類の二次抗体ABを、プレートPLに提供することを含むことができる。パッチPAを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供は、複数のパッチPAに含有される、複数の種類の二次抗体AB又は単一の種類の二次抗体ABを、プレートPLに提供することを含むことができる。
【0450】
パッチPAを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供は、単一のパッチPAによって、プレートPLの複数の分割された領域に、二次抗体ABを提供することを含むことができる。複数の領域への二次抗体ABの提供は、複数の領域のそれぞれに、複数の種類の二次抗体ABを提供することを含むことができる。
【0451】
複数のパッチPAを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供は、それぞれのパッチPAに含有される二次抗体ABがプレートPLに提供されるように、少なくとも所定の時間、複数のパッチPAをプレートPLと同時に接触させることを含むことができる。複数のパッチPAを使用することによるプレートPLへの二次抗体ABの提供は、複数のパッチPAと連続して接触するプレートPLの領域が、少なくとも部分的に重複し、それぞれのパッチPAに含有される二次抗体ABがプレートPLに提供されるように、複数のパッチPAをプレートPLと連続して接触させることを含むことができる。
【0452】
本実施形態による複数の標的を検出するための免疫学的測定を行う方法は、パッチPAを使用することによって、基質SUを提供するステップを含んでいてもよい。パッチPAを使用することによる基質SUの提供の詳細は、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の実施形態を参照して上記に説明するものと同様である。しかしながら、2つ以上の種類の基質SUを使用することができる。言い換えれば、単一の種類の二次抗体ABが使用される場合、単一の種類の基質SUを使用することができ、複数の種類の二次抗体ABが使用される場合、単一の種類の基質SU又は複数の種類の基質SUを使用することができる。
【0453】
本実施形態による複数の標的を検出するための免疫学的測定を行う方法は、プレートPLから複数の標的のそれぞれの存在を決定するステップを含んでいてもよい。この詳細は、間接ELISAを使用する免疫学的測定方法の実施形態を参照して上記に説明するものと同様である。
【0454】
本実施形態による複数の標的を検出するための免疫学的測定を行ういくつかの実施形態を以下に説明する。
【0455】
複数の標的を検出するための免疫学測定を行う方法の具体例として、異なる一次抗体ABが、複数のパッチPAによって、プレートPLのそれぞれの領域に提供される場合、二次抗体ABの提供は、単一のパッチPAによって、それぞれの領域に二次抗体ABを同時に提供するステップを含んでいてもよい。複数の種類の一次抗体ABがプレートPLの複数の分割された領域に提供される場合、単一の種類の二次抗体ABは、複数の領域に提供されてもよい。この場合において、複数の領域への二次抗体ABの提供は、それぞれの領域に対応する、単一のパッチPA又は複数の小さいパッチPAを使用して、行うことができる。単一のパッチPAが使用される場合、診断の実施は簡素化されるが、複数の小さいパッチPAが使用される場合、パッチPAによる望ましくない物質の移動の危険性がなく、それぞれの領域について検出が行われるのに十分なので、より正確な検出が可能であり得る。
【0456】
別の具体例として、複数の種類の一次抗体ABがパッチPAに含有されるように、少なくとも部分的に重複して、複数のパッチPAと連続して接触する単一のプレートPLの領域がプレートPLに提供される場合、二次抗体ABの提供は、複数の種類の一次抗体ABと特異的に結合する性質を有する、複数の種類の二次抗体ABを、単一のパッチPAによって、プレートPLに提供することを含むことができる。この場合において、複数の種類の一次抗体ABと特異的に結合する性質を有する複数の種類の二次抗体ABは、異なる識別ラベルに従って、検出することができる。
【0457】
或いは、二次抗体ABの提供は、複数の種類の一次抗体ABと特異的に結合する性質を有する、単一の種類の二次抗体ABを、単一のパッチPAによって、プレートPLに提供することを含むことができる。このような方法は、複数の種類の一次抗体ABが特異的に反応する抗原が、対応する疾患の原因である場合、疾患の存在を決定するのに使用することができる。
【0458】
或いは、二次抗体ABは、第1の種類の一次抗体ABと特異的に結合する性質を有する第1の二次抗体AB、及び第2の種類の一次抗体ABと特異的に結合する性質を有する第2の二次抗体ABを含むことができ、二次抗体ABの提供は、プレートPLに位置する第1の領域に、第1の二次抗体ABを提供すること、及びプレートPLに位置する第2の領域に、第2の二次抗体ABを提供することを含むことができる。例えば、二次抗体ABの提供は、複数の種類の一次抗体ABと特異的にそれぞれ結合する性質を有する、複数の種類の二次抗体ABを、プレートPLに位置する複数の分割された領域に提供することを含むことができる。この場合において、検出される標的は、分割された領域に従って変更することができ、結果の取得を容易にすることができる。
【0459】
4.3.4.2 直接+複数標的
本開示の一実施形態によれば、上記に説明する直接ELISAを使用する複数の標的を検出するための免疫学的測定方法は、プレートPLに試料SAを固定するステップ、及びパッチPAを使用することによって、プレートPLに複数の種類の抗体ABを提供するステップを含むことができる。
【0460】
プレートPLへの試料SAの固定は、直接ELISAによって免疫学的測定を行う上述の方法におけるものと同様であり得る。しかしながら、本実施形態におけるような、複数の標的を検出するための免疫学的測定を、直接ELISAによって行う場合、試料SAは、プレートPL上の単一の領域全体にわたって分布していてもよく、又は複数の分割された領域全体にわたって分布していてもよい。
【0461】
複数の種類の抗体ABが、パッチPAを使用することによってプレートPLに提供される場合、複数の種類の抗体ABは、第1の抗原と特異的に結合する性質を有する第1の抗体AB、及び第2の抗原と特異的に結合する性質を有する第2の抗体ABを含むことができる。第1の抗体ABに付着する第1の酵素、及び第2の抗体ABに付着する第2の酵素は、異なる種類の酵素であってもよい。
【0462】
パッチPAを使用することによるプレートPLへの複数の種類の抗体ABの提供は、パッチPAを使用することによって、複数の種類の抗体ABをプレートPLに提供することを含むことができる。複数の種類の抗体ABの提供は、第1の抗原と特異的に結合する性質を有する第1の抗体AB、及び第2の抗原と特異的に結合する性質を有する第2の抗体ABを提供することを含むことができる。また、複数の種類の抗体ABの提供は、複数の異なる抗原(すなわち、複数の検出される標的)と特異的にそれぞれ結合する性質を有する複数の種類の抗体ABを提供することを含むことができる。異なる種類の識別要素は、複数の種類の抗体ABに付着することができる。複数の種類の酵素は、複数の種類の抗体ABにそれぞれ付着することができる。
【0463】
複数の種類の抗体ABの提供は、単一のパッチPAに含有される複数の種類の抗体ABをプレートPLに提供することを含むことができる。複数の種類の抗体ABの提供は、複数のパッチPAを使用することによって、複数の種類の抗体ABをプレートPLに提供することを含むことができる。複数のパッチPAは、第1のパッチPA及び第2のパッチPAを含むことができ、複数のパッチPAを使用することによる複数の種類の抗体ABの提供は、第1のパッチPAを使用することによって、第1の抗体ABを提供すること、及び第2のパッチPAを使用することによって、第2の抗体ABを提供することを含むことができる。この場合において、第1の抗体AB及び第2の抗体ABは、互いに異なっていてもよい。複数のパッチPAを使用することによる複数の種類の抗体ABの提供は、複数の種類の抗体ABをそれぞれ含有する複数のパッチPAを使用して行うことができる。
【0464】
パッチPAを使用することによるプレートPLへの抗体ABの提供は、単一のパッチPAによって、プレートPLの複数の分割された領域に、抗体ABを提供することを含んでいてもよい。複数の領域は、第1の領域及び第2の領域を含むことができ、複数の領域への抗体ABの提供は、第1の抗体ABを含有する第1のパッチPAを使用することによって、第1の領域に第1の抗体ABを提供すること、及び第2の抗体ABを含有する第2のパッチPAを使用することによって、第2の領域に第2の抗体ABを提供することを含むことができる。複数の領域への抗体ABの提供は、複数のパッチPAによって、複数の領域に異なる抗体ABを提供することを含むことができる。
【0465】
複数のパッチPAを使用することによるプレートPLへの複数の種類の抗体ABの提供は、それぞれのパッチPAに含有される抗体ABがプレートPLに提供されるように、少なくともある時間、複数のパッチPAをプレートPLと同時に接触させることを含むことができる。複数のパッチPAを使用することによるプレートPLへの複数の種類の抗体ABの提供は、プレートPLの領域が、少なくとも部分的に重複する複数のパッチPAと、連続して接触し、それぞれのパッチPAに含有される抗体ABがプレートPLに提供されるように、複数のパッチPAをプレートPLと連続して接触させることを含むことができる。
【0466】
直接ELISAによって複数の標的を検出するための免疫学的測定を行う方法は、パッチPAを使用することによって、基質SUを提供するステップ、又はプレートPLから複数の標的のそれぞれの存在を決定するステップを含んでいてもよい。それぞれのステップの詳細は、直接ELISAを使用する免疫学的測定方法の実施形態を参照して上記で説明したものと同様であり得る。
【0467】
4.3.4.3 サンドイッチ+複数標的
本開示の一実施形態によれば、上記に説明するサンドイッチELISAを使用する複数の標的を検出するための免疫学的測定方法は、プレートPLに抗体ABを固定するステップ、プレートPLに試料SAを適用するステップ、及びパッチPAを使用することによって、プレートPLに抗体ABを提供するステップを含むことができる。
【0468】
プレートPLへの抗体ABの固定は、プレートPLに複数の種類の抗体ABを固定することを含むことができる。複数の種類の抗体ABは、検出される第1の抗原と特異的に結合する性質を有する第1の抗体AB、及び検出される第2の抗原と特異的に結合する性質を有する第2の抗体ABを含むことができる。複数の種類の抗体ABは、検出される複数の種類の抗原と特異的にそれぞれ結合する性質を有する複数の種類の抗体ABであってもよい。
【0469】
第1の抗体ABは、プレートPLに位置する第1の領域に固定されていてもよく、第2の抗体ABは、プレートPLに位置する第2の領域に固定されていてもよい。複数の種類の抗体ABは、プレートPLに位置する複数の分割された領域にそれぞれ固定されていてもよい。複数の種類の抗体ABは、プレートPLに位置する単一の領域に固定されていてもよい。
【0470】
プレートPLへの試料SAの適用は、抗体ABが固定されたプレートPLの領域に試料SAを適用することを含むことができる。試料SAの適用は、液相の試料SAを適用することを含むことができる。この場合において、免疫学的測定は、液相の試料SAが適用される間に行うことができ、又は液相の試料SAが適用及び固定された後に行うことができる。
【0471】
プレートPLへの試料SAの適用は、プレートPLに位置する単一の領域に試料SAを適用すること、又はプレートPLに位置する第1の領域及び第2の領域に試料SAを適用することを含むことができる。プレートPLへの試料SAの適用は、プレートPLに位置する単一の領域に試料SAを適用すること、又はプレートPLに位置する複数の分割された領域のそれぞれに試料SAを適用することを含んでいてもよい。
【0472】
パッチを使用することによるプレートPLへの抗体ABの適用は、上述の、直接ELISAを使用することによって複数の標的を検出するための免疫学的測定方法及び間接ELISAを使用することによって複数の標的を検出するための免疫学的測定方法におけるものと同様であり得る。言い換えれば、パッチを使用することによるプレートPLへの抗体ABの適用は、上述の直接ELISAを使用する複数の標的を検出するための免疫学的測定方法において、パッチPAを使用することによる、プレートPLへの複数の種類の抗体ABの提供と同様であり得る。或いは、パッチを使用するプレートPLへの抗体ABの適用は、上述の間接ELISAを使用することによって複数の標的を検出するための免疫学的測定方法において、パッチPAを使用することによる、プレートPLへの複数の種類の一次抗体ABの提供及びプレートPLへの二次抗体ABの提供と同様であり得る。
【0473】
サンドイッチELISAによって複数の標的を検出するための免疫学的測定を行う方法は、パッチPAを使用することによって基質SUを提供するステップ、又はプレートPLから複数の標的のそれぞれの存在を決定するステップを含んでいてもよい。それぞれのステップの詳細は、サンドイッチELISAを使用する免疫学的測定方法、又は間接ELISA若しくは直接ELISAによって複数の標的を検出するための免疫学的測定方法の実施形態を参照して上記で説明したものと同様であり得る。
【0474】
上記で説明するように、本出願による免疫学的測定を行う方法によれば、複数の標的を一度に検出することができる。この場合において、検出される複数の標的は、所定の標的セットを構成してもよく、又は診断を行うたびに選択的に構成してもよい。複数の標的が、所定のセットを構成する場合、診断が迅速になり得、様々な対照群を取得することができる。複数の標的が、診断を行うたびに選択的に構成される場合、患者特異的な診断が可能であり、1回の診断で検査することができる疾患の範囲がさらに広がると期待される。
【0475】
4.3.4.4 プレート:複数の領域
本実施形態による免疫学的測定を行う方法は、複数の単位領域を有するプレートPLを使用して行うことができる。言い換えれば、プレートPLは、複数の単位領域を有し、それぞれの単位領域によってパッチPAから物質を受け取ることができる。
【0476】
プレートPLは、複数の分割された領域、すなわち、複数の単位領域を含むことができる。単位領域は、プレートPL上に市松模様の形態で配置されていてもよい。単位領域は、プレートPL上に、一方向に平行に並べられていてもよい。単位領域は、複数のパッチPA又はパッチPAクラスターに対応する形態で並べられていてもよい。
【0477】
複数の単位領域は、区分化されていてもよい。単位領域は、第1の領域及び第2の領域を含むことができる。この場合において、第1の領域及び第2の領域は、同様の極性を有していてもよく、第1の領域の極性が、第1の領域又は第2の領域以外の第3の領域の極性と異なっていてもよい。したがって、第1の領域及び第2の領域は、互いに区分化されていてもよい。プレートPLの下面からの第1の領域及び第2の領域の高さは、プレートPLの下面からの第3の領域の高さと異なっていてもよく、したがって、第1の領域及び第2の領域は、互いに区分化されていてもよい。
【0478】
異なる物質が、異なる単位領域に適用又は固定されてもよい。単位領域は、第1の単位領域及び第2の単位領域を含むことができ、第1の抗原と特異的に結合する抗体ABは、第1の単位領域に固定されていてもよく、第2の抗原と特異的に結合する抗体ABは、第2の単位領域に固定されていてもよい。第1の抗原及び第2の抗原は、互いに異なっていてもよい。異なる抗原に特異的に結合する抗体ABは、単位領域に固定されていてもよい。異なる抗体ABが結合する単位領域は、サンドイッチELISAによる異なる抗原の検出において使用することができる。
【0479】
免疫学的測定が複数のパッチPA又はパッチPAクラスターを使用して行われる場合、単位領域は、第1の単位領域及び第2の単位領域を含むことができ、第1のパッチは、第1の単位領域と接触することができ、第2のパッチPAは、第2の単位領域と接触することができる。第1のパッチPA及び第2のパッチPAは、互いに異なっていてもよい。異なるパッチPAは、単位領域と接触していてもよい。言い換えれば、パッチPAクラスターを構成する単位パッチPAの配置、形態など、及びプレートPLに位置する単位領域は互いに対応していてもよい。パッチPA及び単位領域は、所望の結果を取得するために、適切に一致させることができる。
【0480】
4.3.4.5 パッチ:クラスター
本実施形態による免疫学的測定を行う方法は、複数のパッチPAを使用して行うことができる。複数のパッチPAは、物質を含有し、プレートPLに物質を提供することができる。
【0481】
複数のパッチPAは、異なる物質を含有し、プレートPLにパッチPAに含有される物質を提供することができる。例えば、複数のパッチPAは、異なる抗原と特異的に結合する抗体ABを含有することができる。別の例として、複数のパッチPAは、異なる一次抗体ABと特異的に結合する二次抗体ABを含有することができる。さらに別の例として、複数のパッチPAは、基質SUを含有することができ、基質SUの反応は、異なる酵素によって誘導される。
【0482】
複数のパッチPAは、パッチPAクラスターを形成していてもよい。例えば、複数のパッチPAは、異なる物質を含有する単位パッチPAのクラスターであってもよい。クラスターは、プレートPLに物質を同時に提供するために使用することができる。パッチPAクラスターを構成する複数の単位パッチPAは、規格化された形態で製造されてもよい。
【0483】
パッチPAクラスターは、カートリッジの形態で製造されてもよい。言い換えれば、パッチPAクラスターを構成する複数の単位パッチPAの配置は、目的に従って変更することができる。パッチカートリッジは、それぞれの個人について診断される標的の疾患が変わる個別診断の実施が望まれる場合に、特に有用であり得る。
【0484】
パッチPAクラスターを構成する単位パッチPAは、市松模様の形態で配置されていてもよい。パッチPAクラスターを構成する単位パッチPAは、一方向に平行に並べられていてもよい。
【0485】
本出願の一実施形態によれば、複数のパッチPAを含むパッチPAクラスターを提供することができる。詳細には、複数の抗体AB含有パッチPAを含むパッチPAクラスターを提供することができる。
【0486】
複数の抗体AB含有パッチPAを含むパッチPAクラスターにおいて、抗体AB含有パッチPAは、標的タンパク質TPと特異的に反応する抗体AB、及び抗体ABを含有するマイクロキャビティを形成するメッシュ構造体NSを含むことができる。
【0487】
この場合において、複数の抗体AB含有パッチPAは、第1の抗体AB含有パッチPA及び第2の抗体AB含有パッチPAを含むことができ、第1の抗体AB含有パッチPAに含有される第1の抗体ABが特異的に反応する標的タンパク質TPは、第2の抗体AB含有パッチPAに含有される第2の抗体ABが特異的に反応する標的タンパク質TPと異なっていてもよい。
【0488】
4.3.4.6 パッチ:ブレンドパッチ
本実施形態による免疫学的測定を行う方法は、複数の種類の物質を含有するパッチPAを使用して行うことができる。パッチPAは、複数の種類の物質を含有し、プレートPLに複数の種類の物質を提供することができる。
【0489】
パッチPAは、第1の抗原と特異的に結合する第1の抗体AB及び第2の抗原と特異的に結合する第2の抗体ABを含有することができる。また、パッチPAは、第1の一次抗体ABと特異的に結合する第1の抗体AB及び第2の一次抗体ABと特異的に結合する第2の抗体ABを含むことができる。例えば、パッチPAは、複数の種類の抗原とそれぞれ特異的に結合する複数の種類の抗体ABを含有することができる。また、例えば、パッチPAは、複数の種類の一次抗体ABとそれぞれ特異的に結合する複数の種類の抗体ABを含有することができる。
【0490】
本出願の一実施形態による抗体AB含有パッチPAは、標的タンパク質TPと特異的に反応する抗体AB、並びに含有される抗体ABのいくつかを反応領域に提供するように、標的タンパク質TPが位置する反応領域と接触するように構成されたメッシュ構造体NSとして提供されるメッシュ構造体NSを含むことができる。この場合において、複数の標的タンパク質TPが、存在していてもよく、複数の標的タンパク質TPは、第1の標的タンパク質TP及び第2の標的タンパク質TPを含むことができ、抗体ABは、第1の標的タンパク質TPと特異的に反応する第1の抗体AB及び第2の標的タンパク質TPと特異的に反応する第2の抗体ABを含むことができる。
【0491】
4.3.5 塗抹
本出願の免疫学的測定を行う方法は、プレートPLに試料SAを適用するステップ、又はプレートPLに試料SAを適用及び固定するステップを含むことができる。
【0492】
プレートPLへの試料SAの適用は、試料SAを、単層又は単層に類似の薄層の形態に塗抹することを含むことができる。プレートPLへの試料SAの適用及び固定は、試料SAを、単層又は単層に相当する薄層の形態に塗抹し、試料SAを固定することを含むことができる。
【0493】
診断が、上記で説明するように、単層に相当する形態に塗抹された試料SAによって行われる場合、プレートPLに塗抹された試料SA及びプレートPLと接触するパッチPAの間の有効表面積は、最大化され得る。言い換えれば、試料SAを塗抹すること、及びパッチPAを試料SAと接触させて、標的の検出を行うことによって、少量の試料SAであっても、有効な結果を取得することができる。反応領域は、試料SAが分布する領域が、有効表面積を拡大するために複雑に設計される、従来の免疫学的測定方法と比較して、非常に単純に実施することができる。
【0494】
4.3.6 反応の検出
本出願による免疫学的測定方法は、試料SAから標的タンパク質TPの存在を検出するステップを含むことができる。本出願による免疫学的測定方法は、試料SAから標的抗原の存在を検出するステップを含むことができる。標的タンパク質TP又は標的抗原の存在の検出は、試料SAに含まれる、標的タンパク質TP又は標的抗原の量を定量的に測定することを指し得る。
【0495】
本出願による免疫学的測定方法は、抗体ABが特異的に結合する抗原(すなわち、標的抗原)を検出するステップを含むことができ、抗原の検出は、抗体AB若しくは抗体ABと特異的に結合する他の抗体ABに付着した酵素によって触媒される基質SUの化学反応、又は化学反応に起因する生成物PDを検出することを含むことができる。
【0496】
4.3.6.1 比色測定
本出願の免疫学的測定方法において、抗体ABに付着した抗体によって触媒される基質SUの化学反応の検出は、比色測定を行う方法によって、行うことができる。
【0497】
特に、比色法による生成物PDの検出は、以下のように理解され得る。抗体ABに付着した酵素(間接法では、二次抗体ABに付着した酵素)は、色を示す沈殿に基質SUを変換することができる。沈殿が蓄積すると、ステインが形成され得、形成されたステインの色を測定して、生成物PDを検出することができる。
【0498】
酵素がHRPであり、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)が基質SUとして使用される場合、DABは、HRPに起因する茶色の沈殿を発生させることができる。また、酵素がHRPであり、基質SUが4-クロロ-1-ナフトール(4CN)である場合、4CNは、HCNに起因する紫色の沈殿を発生させることができる。酵素がAPであり、基質SUが5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)である場合、BCIPは、APに起因する紫色の沈殿を発生させることができる。この場合において、生成物PDの検出は、茶色又は紫色の沈殿を検出することによって、行うことができる。
【0499】
色の測定は、分光光度計を使用し、発色を定量的に測定することによって、行うことができる。色の測定は、光源から放射され、プレートPLを通過する光を検出することによって、行うことができる。色の測定は、光吸収を測定することによって、行うことができる。この場合において、透明で、平らな底面を有するプレートPLを使用し得ることが好ましい。
【0500】
4.3.6.2 発光の検出
本出願の免疫学的測定方法において、抗体ABに付着した酵素によって触媒される基質SUの化学反応の検出は、発光を検出することによって、行うことができる。
【0501】
発光の検出は、基質SUの化学反応に起因する発光を検出することを含むことができる。酵素がHRPである場合、発光の検出は、基質SUとしてルミノールを使用して、発生した光を検出することを含むことができる。
【0502】
発光の検出は、X線フィルム、相補型MOS(CMOS)カメラ、又は電荷結合素子(CCD)カメラを使用して、行うことができる。発光の測定は、プレートPLの底部又はプレートPLの底部の上部の溶液から放射された光を検出することによって、行うことができる。発光の測定は、発光光度計を使用して行うことができる。発光を測定する場合、不透明な黒色プレート又は不透明な白色プレートを、プレートPLとして使用し得ることが好ましい。
【0503】
4.3.6.3 蛍光の検出
本出願の免疫学的測定方法において、抗体ABに付着した酵素によって触媒される基質SUの化学反応に起因する生成物PDの検出は、蛍光を検出することによって、行うことができる。
【0504】
蛍光の検出は、抗体AB(間接法では、二次抗体AB)に付着したフルオロフォアから放射される蛍光を検出することを含むことができる。蛍光の検出は、酵素によって触媒される基質SUの化学反応に起因して生成する生成物PDから放射される蛍光を検出することを含むことができる。より詳細には、酵素は、基質SUからホスフェート基を切断し、基質SUを触媒して、蛍光生成物PDを発生させることができ、免疫学的測定は、発生した蛍光を検出することによって、行うことができる。
【0505】
蛍光の検出は、光をプレートPLに入射させること、及びプレートPLから放射された蛍光を測定することによって、行うことができる。蛍光の検出は、フィルターが取り付けられた蛍光光度計を使用して行うことができる。蛍光を測定する場合、不透明な黒色プレート又は不透明な白色プレートを、プレートPLとして使用し得ることが好ましい。
【0506】
4.3.6.4 電気化学(EC)センサー
本出願の免疫学的測定における結果の検出は、電気化学的方法を使用して行うこともできる。例えば、プレートPLに固定された試料SAに特異的に結合している抗体ABに起因してプレートPLに生じる電気化学的特性の変化を測定することができる。或いは、プレートPLに抗体ABを提供するパッチPAに起因して生じるパッチPAの電気化学的特性の変化を測定することもできる。上記で説明する電気化学的方法を使用して結果を検出する場合、基質SUは、プレートPLに選択的に提供されてもよい。
【0507】
4.3.6.5 画像解析
本出願による免疫学的測定における結果の検出は、画像取得を使用して行うことができる。言い換えれば、比色(又は発色)画像、発光画像又は蛍光画像を取得し、診断に使用することができる。画像について、全体領域の単一画像を取得してもよく、又は全体領域の部分画像を別々に取得して、取得した部分画像の画像を、単一画像に組み合わせてもよい。標的抗原/抗体ABが分布している位置、細胞の形状、組織中の標的タンパク質TPの分布などを、取得した画像からチェックすることができる。また、取得した画像を解析することによって、標的タンパク質TP、標的抗原/抗体ABなどの位置、及び標的の部分画像を取得することができる。
【0508】
4.3.7 細胞計数
本出願による免疫学的測定における結果の検出は、試料SAに含まれる特定のたんぱく質の量を測定することによって、行うことができる。言い換えれば、本出願による免疫学的測定は、抗原-抗体反応を使用することによって、診断される試料SAに含まれる標的タンパク質TPの量を測定するステップを含むことができる。例えば、本出願による免疫学的測定における結果の検出は、診断される試料SAに含まれる特定の細胞(すなわち、標的細胞)の数を計数するステップを含むことができる。
【0509】
本出願の一実施形態による免疫学的測定は、本出願のパッチを使用することによって、複数の標的タンパク質TPを検出するために行うことができる。この場合において、本出願の一実施形態による免疫学的測定方法は、反応領域に診断される試料SAを配置するステップ(S20)、反応領域に第1の抗体を提供するステップ(S30)、及び反応領域に第2の抗体を提供するステップ(S40)を含むことができる(図46を参照のこと)。
【0510】
反応領域への検出される試料SAの配置(S20)は、上記に説明した他の実施形態におけるものと同様であり得る。また、反応領域への第1の抗体又は第2の抗体の提供の詳細は、本出願の上述の他の実施形態におけるものと同様であり得る。
【0511】
反応領域への第1の抗体の提供(S30)は、第1の標的タンパク質と特異的に反応する第1の抗体を含有するパッチを使用して、反応領域に第1の抗体を提供することを含むことができる。
【0512】
反応領域への第2の抗体の提供(S40)は、第2の標的タンパク質と特異的に反応する第2の抗体を含有するパッチを使用して、反応領域に第2の抗体を提供することを含むことができる。
【0513】
本実施形態による免疫学的測定方法は、第1の標的タンパク質TP及び第2の標的タンパク質TPを検出するステップ(S50)をさらに含んでいてもよい(図81を参照のこと)。
【0514】
第1の標的タンパク質TP及び第2の標的タンパク質TPの検出(S50)において、第1の標的タンパク質の検出は、第1の標的タンパク質TPと特異的に結合する第1の抗体に付着した蛍光ラベルから検出される第1の蛍光を検出することを含むことができ、第2の標的タンパク質TPの検出は、第2の標的タンパク質と特異的に結合する第2の抗体に付着した蛍光ラベルから検出される第2の蛍光を検出することを含むことができる。
【0515】
この場合において、第1の蛍光が検出される波長域は、第2の蛍光が検出される波長域と、異なっていてもよい。
【0516】
本実施形態による免疫学的測定方法は、反応領域に診断される試料SAを配置するステップ(S20)、反応領域に第1の抗体を提供するステップ(S30)、第1の標的タンパク質TPを検出するステップ(S51)、反応領域に第2の抗体を提供するステップ(S40)、及び第2の標的タンパク質TPを検出するステップ(S52)を含むことができる(図82を参照のこと)。
【0517】
言い換えれば、本出願による免疫学的測定方法は、反応領域への第1の抗体の提供(S30)後、第1の標的タンパク質の検出(S51)をさらに含むことができ、また、反応領域への第2の抗体の提供(S40)後、第2の標的タンパク質の検出(S53)を含むことができる。
【0518】
この場合において、第1の標的タンパク質TPの検出は、第1の標的タンパク質TPと特異的に結合する第1の抗体に付着した蛍光ラベルから検出される第1の蛍光を検出することを含むことができ、第2の標的タンパク質TPの検出は、第2の標的タンパク質TPと特異的に結合する第2の抗体に付着した蛍光ラベルから検出される第2の蛍光を検出することを含むことができる。
【0519】
ここで、第1の蛍光が検出される波長域は、第2の蛍光が検出される波長域と少なくとも部分的に重複していてもよく、蛍光の検出は、第2の抗体が反応領域に提供された後に、試料SAから検出される蛍光、及び第2の抗体が反応領域に提供される前に試料SAから検出された蛍光を比較することによって、行うことができる。
【0520】
図83及び84は、本出願による免疫学的測定方法において、複数の標的タンパク質TPが検出される場合の一部を模式的に示す。図81におけるフローチャートを参照して、以下に説明を行う。
【0521】
本出願の一実施形態による免疫学的測定において、試料に含まれる標的タンパク質TPは、第1の標的タンパク質TP1及び第2の標的タンパク質TP2を含むことができる。この場合において、図82を参照して上記で説明するように、第1の抗体が反応領域に提供された(S30)後、第1の標的タンパク質TP1が検出され(S51)、第1の蛍光は、第1の標的タンパク質TP1と結合した第1の抗体に付着した蛍光ラベルから検出することができる(図83を参照のこと)。
【0522】
また、図82に示すように、第2の抗体が提供され(S40)、第2の標的タンパク質TP2が検出される(S52)場合、第2の蛍光は、第2の標的タンパク質TP2と結合した第2の抗体に付着した蛍光ラベルから検出することができる。この場合において、第1の蛍光が検出される波長域及び第2の蛍光が検出される波長域が部分的に重複する場合、第1の蛍光は、第2の蛍光の検出中に重複する方法で検出することができ、これは、第2の標的タンパク質TP2の検出を困難にする原因であり得る。このような場合において、第2の蛍光の検出は、第2の抗体が反応領域に提供された後に試料から検出される蛍光、及び第2の抗体が反応領域に提供される前に試料から検出された蛍光を比較すること、及び第2の標的タンパク質TP2の検出を行うことを含むことができる。
【0523】
上記で説明する重複する波長域から検出される蛍光物質(すなわち、同じ種類の蛍光物質)を使用することによる、複数の標的タンパク質TPの連続的な検出、及び異なる波長域から検出される蛍光物質(すなわち、異なる種類の蛍光物質)を使用することによる複数の標的タンパク質TPの同時の検出は、必ずしも独立して行う必要はなくてもよい。したがって、上述の実施形態は、組み合わせることができ、複数の標的タンパク質TPは、単一のプロセスで検出することができ、これは、様々な疾患の迅速な診断に有用に適用することができる。
【0524】
本明細書の以下において、本出願による免疫学的測定における結果の検出の一実施形態として、診断される試料SAに含まれる標的細胞の数を計数する方法を説明する。
【0525】
本実施形態による細胞を計数する方法によれば、細胞計数は、プレートPLなどの表面型反応領域を有する対象物に適用された試料SAについて、又は対象物に適用及び固定された試料SAについて行うことができる。本実施形態によれば、主に、流体力学的に設計された高性能機器に応じて従来行われていた細胞計数を、小型化した簡易装置を使用して行うこともできる。
【0526】
4.3.7.1 基本的な実施形態
本出願による免疫学的測定の一例としては、細胞計数方法は、プレートPLに試料SAを固定するステップ、標的細胞と特異的に反応する抗体ABを含有するパッチPAを使用することによって、プレートPLに抗体ABを提供するステップ、及び試料SA中に含まれる標的細胞の数を取得するステップを含むことができる。
【0527】
プレートPLへの試料SAの固定は、上述の免疫学的測定におけるものと同様であり得る。
【0528】
標的細胞と特異的に反応する抗体ABを含有するパッチPAを使用することによるプレートPLへの抗体ABの提供は、標的細胞に含まれるいくつかのタンパク質と特異的に結合する性質を有する抗体ABを含有するパッチPAを使用することによって、プレートPLに抗体ABを提供することを含むことができる。言い換えれば、標的細胞を形成するいくつかのタンパク質と特異的に結合する抗体ABは、パッチPAによってプレートPLに提供され得る。
【0529】
試料SAに含まれる標的細胞の数の取得は、抗体ABにラベルされた蛍光を検出する方法によって、行うことができる。標的細胞の数の取得は、抗体ABに付着した酵素によって触媒される基質SUの化学反応、又は化学反応に起因して生成する生成物PDを検出する方法によって、行うことができる。
【0530】
試料SAに含まれる標的細胞の数の取得は、標的細胞が分布したプレートPL上の領域の画像を取得することによって、行うことができる。標的細胞の数の取得は、試料SAが分布した領域の画像を取得すること、及び画像から標的細胞を検出することによって、行うことができる。言い換えれば、試料SAに含まれる標的細胞の数の取得は、測定されたシグナルの強度などから細胞についての数の情報のみを取得すること、又は標的細胞が分布した領域の画像若しくは標的細胞の画像を取得することを含むことができる。
【0531】
4.3.7.2 複数の標的の検出
本実施形態による細胞計数方法において、細胞の数の計数は、複数の標的細胞について同時に行うことができる。ここで、同時実施は、複数の標的細胞の数を、単一のプレートPLを使用して計数することができることを指し得る。或いは、同時実施は、単一の反応領域に位置する試料SAに対して行うことができることを指し得る。
【0532】
パッチPAは、第1の標的細胞と特異的に反応する第1の抗体AB及び第2の標的細胞と特異的に反応する第2の抗体ABを含有することができる。第1の蛍光物質は、第1の抗体ABにラベルされていてもよく、第2の蛍光物質は、第2の抗体ABにラベルされていてもよい。この場合において、第1の蛍光物質から放射される蛍光及び第2の蛍光物質から放射される蛍光は、異なる波長域から検出することができる。
【0533】
4.3.7.3 複数のパッチを使用する方法
上述の細胞計数方法は、複数のパッチPAを使用することによって、複数の標的細胞について行うことができる。
【0534】
複数のパッチPAを使用する細胞計数方法は、プレートPLに試料SAを固定するステップ、第1の標的細胞と特異的に反応する第1の抗体ABを含有する第1のパッチPAを使用して、プレートPLに第1の抗体ABを提供するステップ、及び第2の標的細胞と特異的に反応する第1の抗体ABを含有する第2のパッチPAを使用して、プレートPLに第2の抗体ABを提供するステップを含むことができる。
【0535】
細胞計数方法は、プレートPLへの第1の抗体ABの提供後、プレートPLへの第2の抗体ABの提供前に、試料SAに含まれる第1の標的細胞の数を得るステップを含んでいてもよい。
【0536】
細胞計数方法は、プレートPLへの第2の抗体ABの提供後、試料SAに含まれる第2の標的細胞の数を得るステップを含んでいてもよい。言い換えれば、第1の抗体ABがプレートPLに提供された後、第1の標的細胞の数を得ることができ、第2の抗体ABがプレートPLに提供された後、第2の標的細胞の数を得ることができる。
【0537】
細胞計数方法は、プレートPLへの第2の抗体ABの提供後、試料SAに含まれる、第1の標的細胞の数及び第2の標的細胞の数を得るステップを含んでいてもよい。言い換えれば、第1の抗体AB及び第2の抗体ABがプレートPLに提供された後、第1の標的細胞及び第2の標的細胞の数を得ることができる。
【0538】
第1の標的細胞の数又は第2の標的細胞の数の入手は、上述の細胞計数方法の実施形態における試料SAに含まれる標的細胞の数の入手と同様であり得る。
【0539】
しかしながら、細胞計数が、本実施形態におけるような複数のパッチPAを使用することによって、複数の標的細胞について行われる場合、第1の標的細胞にラベルされた蛍光物質及び第2の標的細胞にラベルされた蛍光物質は同じ種類であってもよい。言い換えれば、第1の標的細胞にラベルされた蛍光物質が検出される波長域及び第2の標的細胞にラベルされた蛍光物質が検出される波長域は、部分的に重複していてもよい。この場合において、第1の標的細胞の数が、第1の抗体ABがプレートPLに提供された後に得られる間、及び第2の標的細胞の数が、第2の抗体ABがプレートPLに提供された後に得られる間に、第2の標的細胞の数の入手は、第1の標的細胞の数を得るために検出された蛍光及び第2の標的細胞の数を得るために検出された蛍光を比較することによって、行うことができる。
【0540】
4.3.7.4 複数のパッチ
本実施形態による複数の標的細胞についての細胞計数方法は、複数のパッチPAを使用して行うことができる。
【0541】
言い換えれば、複数の標的細胞は、第1の標的細胞及び第2の標的細胞を含むことができ、複数のパッチPAは、第1の抗体ABを含有する第1のパッチPA及び第2の抗体ABを含有する第2のパッチPAを含むことができる。この場合において、第1の抗体ABは、第1の標的細胞において特異的に発現するタンパク質と特異的に結合することができ、第2の抗体ABは、第2の標的細胞において特異的に発現するタンパク質と特異的に結合することができる。
【0542】
4.3.8 免疫学的測定デバイス
本出願の免疫学的測定は、免疫学的測定方法を使用して行うことができる。
【0543】
図78は、本出願の一実施形態による免疫学的測定デバイス10を示す。
【0544】
本出願の一実施形態による免疫学的測定デバイスは、プレートPLサポーター200、パッチコントローラー300及び反応検出器400を備えることができる。本実施形態による免疫学的測定デバイスは、マイクロキャビティを形成し、マイクロキャビティに液体物質SBを含有するように構成されたメッシュ構造体NSを含むパッチを使用することにより、診断される試料SAから標的タンパク質TPを検出することによって、診断を行うことができる。
【0545】
免疫学的測定デバイスのプレートPLサポーター200は、反応領域が位置し、診断される試料SAが反応領域に位置するプレートをサポートすることができる。
【0546】
パッチコントローラー300は、標的タンパク質TPと特異的に反応する抗体ABを含有するパッチPAを使用し、抗体ABが反応領域に提供されるように、反応領域に対するパッチPAの位置を制御することができる。
【0547】
反応検出器400は、標的の疾患を診断するために、抗体AB及び標的タンパク質TPの間の特異的反応を検出することができる。
【0548】
また、免疫学的測定デバイスは、コントローラー100をさらに備えていてもよい。
【0549】
免疫学的測定デバイスは、マイクロキャビティを形成するメッシュ構造体NAを含み、マイクロキャビティに液体物質SBを含有する能力を有するパッチPAを使用して、診断される試料SAから標的タンパク質TPを検出し、診断を行うことができる。
【0550】
免疫学的測定デバイスは、反応領域が位置し、診断される試料SAが反応領域に位置するプレートPLをサポートするために構成されたプレートPLサポーターと、パッチPAを使用するために構成されたパッチコントローラーであり、抗体ABが反応領域に提供されるように、標的タンパク質TPと特異的に反応する抗体ABを含有及び反応領域に対してパッチPAの位置を制御するために構成されたパッチコントローラーと、標的の疾患を診断するために、抗体AB及び標的タンパク質TPの間の特異的反応を検出するために構成された反応検出器とを備えることができる。
【0551】
図79は、本出願による血液検査デバイス10の一実施形態におけるパッチコントローラー300の一例を示す。
【0552】
本出願の一実施形態による血液検査デバイス10において、パッチコントローラー300は、パッチ選択モジュール310及び接触コントロールモジュール330を含むことができる。
【0553】
パッチ選択モジュール310は、パッチPAを選択して、制御することができる。パッチセレクターによって制御されるパッチPAの選択は、一次抗体ABを含有するパッチPA、二次抗体ABを含有するパッチPA、基質SUを含有するパッチPA、洗浄パッチPA、又はパッチクラスターのうちの少なくとも1つを選択することを含むことができる。
【0554】
接触制御モジュール330は、選択されたパッチPA及び反応領域の間の接触の状態を制御することができる。接触状態の制御は、反応領域に対するパッチPAの位置を制御することを含むことができる。
【0555】
反応検出器400は、光学検出器及び電気化学検出器のうちのいずれか1つであり得る。
【0556】
反応検出器は、画像取得モジュールを含んでいてもよい。反応検出器は、カメラモジュールを含んでいてもよい。反応検出器は、反応領域の部分画像を取得することができる。反応検出器は、取得された部分画像を組み合わせることができる。反応検出器は、反応領域の単一画像を取得することができる。反応検出器は、反応領域の部分画像又は反応領域の単一画像を取得することができ、部分画像の組み合わせは、画像処理モジュールによって、行うことができる。
【0557】
5.臨床化学
5.1 意味
5.1.1 臨床化学
免疫学的測定は、抗原-抗体結合を使用する診断を指すが、パッチPAの適用はこれらに限定されず、パッチPAは、診断が特異的な相互作用を使用して行われる、同様の分野においても適用され得る。
【0558】
詳細には、パッチPAの適用は、診断が、特異的反応を使用することによって、試料SAとして体液に対して行われる、臨床化学診断の分野に、同様に拡大することができる。臨床化学は、医学的検査の1つの特定の分野であり、特に、体液に対して診断を行うことを指す。体液は、血液、尿、脳脊髄液(CSF)、涙液、及び鼻粘液などのヒトの身体から採取される液体成分を指し、膿汁及び滲出液も含む。
【0559】
診断に使用される特異的相互作用は、化学及び生化学反応の様々な形態を包含する。例えば、疾患の存在を示す因子は、診断試薬を使用して検出することができ、血液中の特定の成分の濃度は、正常性を決定するために測定することができる。また、例えば、酵素-基質反応を使用することができ、又は酵素の活性を測定することができる。
【0560】
診断結果は、特異的反応を検出することによって取得することができる。特異的相互作用の検出において、比色測定、発色検出、蛍光検出及び電気化学検出を、有用に、利用することができる。
【0561】
5.1.2 免疫学的測定との関係
上述のパッチPAを使用して免疫学的測定を行う方法は、臨床化学診断において、同様に行うこともできる。言い換えれば、臨床化学診断は、プレートPLに対して行うこともでき、パッチPAを使用して行うこともできるので、免疫学的測定と同様の有利な効果が期待され得る。
【0562】
例えば、診断は、臨床化学診断の実施において、プレートPLに試料SAを適用又は塗抹することによって、行うこともできる。それ故に、有効接触面積が最大化されるので、十分な信頼性を有する診断結果が、少量の試料SAであっても期待され得る。また、臨床化学診断はパッチPAを使用して行うことができるので、標的検出プロセスが行われるプレートPLに、標的検出に関わる試薬を注ぎ、プレートPLから試薬を除去することは、極めて容易である。したがって、検出に使用される試薬の量、及び診断に要する時間を節約することができる。
【0563】
5.2 臨床化学の実施形態
5.2.1 ホルモン検出
本出願の一実施形態による臨床化学診断は、ホルモン検出において使用することができる。
【0564】
本出願の一実施形態による臨床化学診断は、プレートPLに試料SAを適用するステップ、パッチPAを使用することによって、プレートPLに試薬を提供するステップ、及び試料SAから標的ホルモンを検出するステップによって行うことができる。
【0565】
プレートPLに適用される試料SAは、血液又は尿であってもよい。プレートPLへの試料SAの適用は、プレートPLに試料SAを適用すること、及び試料SAを固定することを含むことができる。ホルモン検出に関わるいくつかの試薬は、前もってプレートPLに配置されていてもよい。
【0566】
標的ホルモンの検出は、ポーターシルバー法に従って、コルチゾールを検出することを含むことができる。標的ホルモンの検出は、卵胞刺激ホルモン(FSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、成長ホルモン(GH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び甲状腺ホルモン(T4)のうちのいずれか1つを検出することを含むことができる。
【0567】
標的ホルモンの検出は、試料SA中に存在する標的ホルモン及び試料SAに提供された試薬の間の反応を検出することを含むことができる。反応の検出は、比色法、蛍光検出、発光検出及び電気化学検出のうちのいずれか1つを使用して行うことができる。
【0568】
5.2.2 コレステロール
本出願の一実施形態による臨床化学診断は、血液中のコレステロールの測定において使用することができる。この場合において、酵素法を使用することができる。
【0569】
本出願の一実施形態による臨床化学診断は、プレートPLに試料SAを適用するステップ、パッチPAを使用することによって、プレートPLに試薬を提供するステップ、及び試料SAからコレステロールの含有量を測定するステップによって、行うことができる。
【0570】
プレートPLに適用される試料SAは、血清であってもよい。プレートPLへの試料SAの適用は、プレートPLに試料SAを適用すること、及び試料SAを固定することを含むことができる。コレステロール検出に使用されるいくつかの試薬は、前もってプレートPLに配置されていてもよい。
【0571】
パッチPAを使用することによってプレートPLに提供される試薬は、酵素試薬であってもよい。酵素試薬は、4-アミノアンチピリン(4AA)、ペルオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼ、及びコレステロールオキシダーゼのうちの少なくともいくつかを含むことができる。
【0572】
コレステロール含有量の検出は、光吸収のレベルを測定することを含むことができる。
【0573】
本出願の別の実施形態による臨床化学診断は、血液中のトリグリセリドの測定において、酵素法を使用して行うことができる。
【0574】
試料SAは、プレートPLに適用され得、試薬は、パッチPAを使用することによってプレートPLに提供され得、トリグリセリド含有量は、試料SAから測定され得る。
【0575】
プレートPLに適用される試料SAは、血清であってもよい。パッチPAを使用することによってプレートPLに提供される試薬は、酵素試薬であってもよい。酵素試薬は、グリセロールキナーゼ、リパーゼ、フェノール、4-アミノアンチピリン、ペルオキシダーゼ及びピルビン酸キナーゼのうちの少なくともいくつかを含むことができる。
【0576】
コレステロールの含有量の検出は、光吸収のレベルを測定することを含むことができる。
【0577】
5.2.3 血糖測定
本出願の一実施形態による臨床化学診断は、試料SAに含有される特定の成分の濃度の測定において使用することができる。濃度が測定される特定の成分は、血糖であり得る。
【0578】
本出願の一実施形態による臨床化学診断は、プレートPLに試料SAを適用するステップ、パッチPAを使用することによって、プレートPLに試薬を提供するステップ、及び、試薬に起因する反応から、血液中に含まれるグルコース、すなわち血糖の量を測定するステップによって、行うことができる。この場合において、酵素法を使用することができる。
【0579】
プレートPLに適用される試料SAは、全血、血漿、血清、尿、CSF及び胸膜滲出液のうちのいずれか1つであってもよい。プレートPLに提供される試薬は、グルコースオキシダーゼ及びヘキソキナーゼのうちのいずれか1つを含むことができる。
【0580】
血糖の検出は、試薬に起因する反応の着色反応の結果を測定することによって、行うことができる。血糖の検出は、反射光の強度測定法又は電気化学測定器を使用して行うことができる。
【0581】
上記の説明は、本開示の技術的要旨を単に例示するものであって、本開示が関係する当業者は、本開示の実質的な特徴から逸脱しない範囲内で、様々な変形及び変更を行うことが可能であろう。したがって、上述の本開示の実施形態は、別々に、又は組み合わせて、実施することもできる。
【0582】
本明細書に開示される実施形態は、本開示の技術的要旨を、限定する代わりに、説明するためのものであって、本開示の技術的要旨の範囲は、そのような実施形態によって限定されるものではない。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲に基づいて解釈されるべきであり、均等範囲内のすべての技術的要旨は、本開示の範囲に属するものであると解釈されるべきである。
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