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特許7173466光子の多色及び空間的自己適応型ビームを発生するための装置
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  • 特許-光子の多色及び空間的自己適応型ビームを発生するための装置 図1
  • 特許-光子の多色及び空間的自己適応型ビームを発生するための装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】光子の多色及び空間的自己適応型ビームを発生するための装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20221109BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20221109BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G02F1/37
G01N21/65
G01N21/01 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018537804
(86)(22)【出願日】2017-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 FR2017050124
(87)【国際公開番号】W WO2017125691
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2019-12-26
(31)【優先権主張番号】1650525
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505351201
【氏名又は名称】セントレ ナシオナル デ ラ ルシェルシェ シエンティフィーク
(73)【特許権者】
【識別番号】517032277
【氏名又は名称】ユニベルシテ ド リモージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】クルパ カタルツィナ
(72)【発明者】
【氏名】シャラビー バドル
(72)【発明者】
【氏名】ラブルイェレ アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】トネッロ アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】クデルク ヴィンセント
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506106(JP,A)
【文献】特開平06-273816(JP,A)
【文献】特開2009-222531(JP,A)
【文献】米国特許第05028816(US,A)
【文献】特開平06-130437(JP,A)
【文献】特開2008-225480(JP,A)
【文献】特開2006-237613(JP,A)
【文献】特開2011-197349(JP,A)
【文献】奥野将成他,近赤外CARS顕微分光法による指紋領域バイオイメージング,分子科学討論会講演プログラム&要旨,3P072,日本,分子科学会,2008年09月24日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
H01S 5/00-5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子の多色ビームを発生するための装置(DG)であって、前記装置(DG)は、
少なくとも1つの波長を有する一次光子を供給することができるパルス・レーザ光源(SL)と、
前記一次光子に作用して入力ビームを供給することができる成形手段(MM)と、
前記入力ビームから、複数の波長を有する二次光子を含んだ多色出力ビームを生成するように配置された非線形結晶(CN)と、を備え、
さらに、前記非線形結晶(CN)内において、前記入力ビームと同期する少なくとも1つの電場を発生するように配置された制御手段(MC)であって、前記非線形結晶(CN)内において、前記入力ビームの前記一次光子を第2の高調波発生の繰り返しにより超連続光を形成する二次光子に変換するために、電気光学効果により位相不整合を引き起こす制御手段(MC)を備え
前記制御手段(MC)は、i)前記入力ビームを前記非線形結晶(CN)に向けられる主部分と補助部分とに分割することができるサンプリング手段(MP)、ii)前記入力ビームの各々の補助部分の受け取りにより電気パルスを発生することができるオプトエレクトロニクス手段(MO)、iii)前記非線形結晶(CN)に対向して配置され、前記非線形結晶(CN)内において、各々の発生された電気パルスの受け取りによって前記電場を発生するように配置された電極(Ej)、及び(iv)前記入力ビームの前記主部分の前記一次光子を、それらが前記非線形結晶(CN)に前記発生された電場と同期的に達するように、遅延させるように配置された遅延手段(MR)を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記制御手段(MC)は、前記非線形結晶(CN)内において、前記入力及び出力ビームの一般的方向に垂直な第1の方向に同期電場、並びに/又は、前記入力及び出力ビームの一般的方向並びに前記第1の方向に垂直な第2の方向に別の同期電場、を発生するように配置され、前記同期電場と前記別の同期電場のそれぞれは、前記入力ビームと同期していることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記非線形結晶(CN)は、入力面(F1)上及び出力面(F2)上に、前記一次光子の及び/又は前記二次光子の共振を引き起こすことできる半反射ミラー(MS)を備えることを特徴とする、請求項記載の装置。
【請求項4】
前記電極(Ej)の少なくとも1つは、前記非線形結晶(CN)内において発生された前記電場の空間的変調を引き起こすことができ、前記出力ビームの前記位相不整合の及びスペクトル・プロファイルの修正、及び/又は、波長変換軸に対する前記入力ビームの偏光ベクトルの相対的配向の修正を引き起こすことができる、空間的構造を有することを特徴とする、請求項及びのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記オプトエレクトロニクス手段(MO)は、いわゆる「フローズン ウエーブ」発生器を備えることを特徴とする、請求項1、3、4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
順々に配置された少なくとも2つの非線形結晶(CN)を備えることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記パルス・レーザ光源(SL)は、いわゆる一次波長を有する一次光子と、前記一次波長の第二高調波に等しい別の波長を有する一次光子とを供給することができること、及び、前記非線形結晶(CN)は、前記一次波長におけるいわゆる「周波数ダブラー」であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記パルス・レーザ光源(SL)は、連続波レーザ光源で置き換えることができることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記非線形結晶(CN)は希土類イオンでドープされ、このドーピングは二次光子の発生と前記一次光子の及び/又は前記二次光子の増幅とを結びつけることを可能にすることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
使用されるレーザ光源は、希土類でドープされた結晶のレーザ・ポンピングを可能にする、一次光子を発生する能力を有することを特徴とする、請求項記載の装置。
【請求項11】
前記非線形結晶(CN)は、二次及び/又は三次の非線形性を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記非線形結晶は、透明セラミックス及び/又は透明ガラス-セラミックスであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記非線形結晶は、中心対称性分子配置を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記非線形結晶は、イットリウム、エルビウム、ツリウム、ホルミウム、ネオジム、プラセオジム、又はセリウムのイオンでドープされ、単独で又は組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
試料分析システムであって、請求項1~14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの発生装置(DG)を備え、試料を分析するための多色出力ビームを供給することができることを特徴とするシステム。
【請求項16】
前記試料の分析を、多重コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱によって行うことができることを特徴とする、請求項15記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光子の多色ビームを発生するための装置、及びそのような装置を使用する分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には既知であるように、ある特定の分野、例えば試料(場合により医療試料)の分析の分野には、空間的にコヒーレントな多色レーザ光源が必要である。そのような光源は、大きなスペクトル幅、典型的には数十ナノメートルから数百ナノメートル、にわたって実質的に連続的に分布する波長を有する光子のビームを供給するので連続光源と呼ばれることが多い。
【0003】
これらの光源は、非線形効果を用いて光-物質相互作用に基づいて生産される。それらは一般に、「一次」波長を有する「一次」光子を供給する少なくとも1つの連続波又はパルス・レーザ光源([R1]参照)と、一次光子から複数の「二次」波長を有する二次光子を含んだ出力ビームを生成するように準備された微細構造光ファイバー又は非線形結晶とを備える。
【0004】
微細構造光ファイバーを使用する光源は、近紫外(又はUV)(約350nm)から中赤外(典型的には5μm)まで広がるスペクトル幅を有する安定な放射を得ることを可能にする。シリカ製の微細構造光ファイバーは、例えば、2.4μm迄の赤外に限定され、特に光量の閉じ込めを有し、それにより、光-物質相互作用を強め、多数の二次波長への一次波長の変換を高める。しかし、非線形微細構造光ファイバーは小さいコア直径を有し、それ故に、エネルギーの高い閉じ込めの存在下では、それらの材料の損傷の閾値に非常に速く達する。従って、微細構造光ファイバーを使用するこれらの光源は、高い出力エネルギーを得ることを可能にしない。さらに、それらは、全UV領域(340nmより短い)及び全赤外領域に属する波長を同時に得ることを可能にしない。最後に、それらは、異なる波長の二次光子の群速度を等しくすることを可能にせず、これが種々の波長の二次光子の時間にわたる非同期化を引き起こす。その結果、これらの光源を、ある特定の用途、例えば、特に試料内の特定の化学種の識別及び位置決めのためのイメージングの分野で使用される多重コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱(CARS)などに使用することは不可能である。
【0005】
微細構造光ファイバーの代わりに非線形結晶を使用することは、損傷の閾値に急速に達するのを防止することを可能にする。しかし、現在のところ、二次波長を得るためには、その結晶を位相整合配向で非常に正確に配向させることが必要である。従って、1つの特定の一次波長に関連する少数の特定の配向のみが、依然として主に赤外領域におけるスペクトル連続体を得ることを可能にする。また、中心対称性格子を有する結晶は、超連続光を発生することができるが、主として三次の非線形性を用いることが知られている([R2]参照)。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、特にこの状況を改善することである。
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、光子の多色ビームを発生するための装置であって、少なくとも1つの波長を有する一次光子を供給することができる連続波又はパルス・レーザ光源と、入力ビームを供給するために一次光子に作用することができる成形手段と、入力ビームから、複数の波長を有する二次光子を含んだ多色出力ビームを生成するように準備される非線形結晶とを備える、装置を提供する。
【0008】
この発生装置は、さらに、非線形結晶内に入力ビームと同位相の少なくとも1つの電場を発生するように配置され、そして、入力ビームの一次光子を超連続光に属する波長を有する二次光子に変換するために、非線形結晶の中に、電気光学効果による位相不整合を引き起こすことができる、制御手段を備えることを特徴とする。
【0009】
従って、その波長が、必要条件に応じて、群速度の変化を最小にしながら遠紫外から遠赤外までの範囲に及ぶことができる、光子の超連続光を得ることが可能である。
【0010】
本発明による装置は、別々に又は組み合わせて実施することができる他の特徴を有することができ、具体的には、
・その制御手段は、非線形結晶内に、入力及び出力ビームの一般的方向に垂直な第1の方向に同期電場、並びに/又は、入力及び出力ビームの一般的方向に及びこの第1の方向に垂直な第2の方向に別の同期電場、を発生するように準備することができ、
・その制御手段は、第1に、入力ビームを非線形結晶に向けられる主部分と補助部分とに分割することができるサンプリング手段と、第2に、入力ビームの各々の補助部分の受け取りによって電気パルスを発生することができるオプトエレクトロニクス手段と、第3に、非線形結晶に対向して配置され、非線形結晶の中に各々の発生された電気パルスの受け取りによる(各々の)電場を発生するように準備される電極と、第4に、入力ビームの主部分の一次光子を、発生された電場と同期的に非線形結晶に達するように遅延させるように準備された遅延手段と、を備えることができ、
・非線形結晶は、ビーム入力面上及びビーム出力面上に、一次光子の及び/又は二次光子の共振を引き起こすことができる半反射ミラーを備えることができ、
・少なくとも1つの電極は、非線形結晶内に発生された電場の空間的変調を引き起こすことができ、前記位相不整合及び出力ビームのスペクトル・プロファイルの修正、並びに/又は、波長変換軸に対する入力ビームの偏光ベクトルの相対的配向の修正を引き起こすことができ、
・オプトエレクトロニクス手段は、いわゆる「フローズン ウエーブ」発生器を備えることができ、
・順々に配置される少なくとも2つの非線形結晶を備えることができ、
・連続波又はパルス・レーザ光源は、一次波長と呼ばれる波長を有する一次光子、及びこの一次波長の第2高調波に等しい別の波長を有する一次光子を供給することができる。この場合、非線形結晶は、例えば、パルス光源の一次波長におけるいわゆる「周波数ダブラー」とすることができる。
【0011】
有利なことに、装置の幾つかの改良が可能であり、上記のオプションと両立可能であり、別々に又は組み合わせて実施することができ、
-非線形結晶(CN)は希土類イオンでドープされ、このドーピングが、二次光子の発生を、一次光子の及び/又は二次光子の増幅と結びつけることを可能にし、
-レーザ光源(SL)は、前記レーザ光源がパルス・レジームにおいて動作するか又は連続波レジームにおいて動作するかに関わらず、希土類ドープ結晶のレーザ・ポンピングを可能にする一次光子を発生する能力を有し、
-非線形結晶(CN)は、二次及び/又は三次の非線形性を有することができ、
-非線形結晶(CN)は、透明なセラミックス及び/又は透明なガラス-セラミックスとすることができ、
-非線形結晶(CN)は、中心対称性又は非中心対称性の分子配置を有することができ、或いは、実際には、
-非線形結晶(CN)は、イットリウム、エルビウム、ツリウム、ホルミウム、ネオジム、プラセオジム、又はセリウムでさえものイオンでドープすることができ、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0012】
本発明はさらに、上記のタイプの少なくとも1つの発生装置を備える試料分析システムであって、試料を分析するための多色出力ビームを供給することができる、システムを提供する。
【0013】
例えば、そのようなシステムは、多重コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱(又はCARS)によって試料を分析することができる。
【0014】
本発明は、単に例として与えられる以下の説明を、添付の図面を参照しながら読むことによってより良く理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による発生装置の第1の実施形態を図式的及び機能的に示す。
図2】本発明による発生装置の第2の実施形態を図式的及び機能的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の目的は、具体的には、光子FSの多色ビームを発生するための装置DGを提供することである。
【0017】
以下に、非限定的な例として、試料分析システム(オプションとして医療試料を分析するための)の部分を形成するための発生装置DG(TG)を考察する。しかし、本発明はこのタイプのシステムに限定されない。具体的には、本発明は、光子の多色ビームを発生することができる少なくとも1つの装置を備える必要がある任意のシステムに関する。
【0018】
さらに、分析システムは、以下で、非限定的な例として、多重コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱(又はCARS)を用いて試料を分析することができるものと考察されることになる。しかし、本発明はこのタイプの分析に限定されない。
【0019】
一般に、本発明は多くの分野に関係し、具体的にはバイオ・フォトニクス(及び具体的には細胞診断)、非線形マルチモーダル・イメージング、オプトジェネティックス、コヒーレンス・トモグラフィ、LIDAR、フロー・サイトメトリー、遠隔での化学元素のスクリーニング(例えば、空港警備のため)、個々人(例えば、医療分野における)の検査、爆発物の検出、及び、バクテリアの検出、に関係する。
【0020】
図1及び2は、本発明による発生装置DGの2つの非限定的な実施形態を図式的に示す。
【0021】
図示されるように、(発生)装置DGは、少なくとも1つのパルス・レーザ光源SL、成形手段MM、少なくとも1つの非線形結晶CN、及び制御手段MCを備える。
【0022】
このレーザ光源SLは連続波光源とすることもできることに留意されたい。残りの説明において、パルス・レーザ光源の場合にのみ言及されるが、種々の説明される実施形態は、連続波レーザ光源にも適用可能である。
【0023】
パルス・レーザ光源(又はポンピング・レーザ)SLは、以下で「一次波長」と呼ばれる少なくとも1つの波長を有する「一次」光子と呼ばれる光子を供給することができる。この一次(又はポンピング)波長は用途の必要条件に、従って、所望のスペクトル帯に応じて選択される。従って、波長は場合により赤外(又はIR)領域、可視領域又は紫外(又はUV)領域に属することになる。これらの一次光子はまた、例えば、赤外波長とその第2の高調波など、1つ又はそれ以上の領域に属することができる。
【0024】
例えば、このパルス・レーザ光源SLは、高いピーク出力を提供することができる。この場合、多分、例えば、10ps~2nsの範囲のパルスを有する1064nmにおける光子を生成するNd:YAGレーザの問題となるであろう。
【0025】
成形手段MMは入力ビームFEを供給するために一次光子に作用することができる。例えば、図示されるように、これらの成形手段MMは、一次光子の伝播に関してパルス・レーザ光源SLの下流に取り付けられた少なくとも1つのレンズを備えることができる。
【0026】
図1及び2に示される非限定的な例において、成形手段MMは、結晶CNを通る通過中に拡散しない(即ち、結晶CN内で各々のパルスの光子は一般的方向において互いに実質的に平行に伝播する)入力ビームFEを出力として供給するように準備されることに留意されたい。
【0027】
非線形結晶CNは、入力ビームFEから、複数の波長を有する「二次」光子と呼ばれる光子を含んだ多色出力ビームFSを生成するように準備される。この非線形性は二次であることが好ましい。
【0028】
非線形結晶CNは、用途の必要条件、従って所望のスペクトル帯及び一次(又はポンピング)波長に応じて選択されることに留意されたい。例えば、30psのパルスを有する1064nmにおける光子を生成するNd:YAGレーザの存在下において、パルス・レーザ光源SLの放射の第2高調波を発生(又は第2の高調波発生(SHG))するため、及び約50℃で動作するために製造され、15mmの長さ及び6.75μmに等しい疑似位相整合(QPM)ピッチ(QPMは基本波(例えば1064nm)及び第2高調波(例えば532nm)の位相速度をほぼ等しくするのに強誘電性領域の周期的反転が使用される技術である)を有するバルクの周期的分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)の非線形結晶CNを使用することが可能である。QPMのピッチは温度に依存することに留意されたい。従って、例えば、160℃において6.54μmのピッチを有することが可能である。
【0029】
しかし、他の非線形結晶CN、例えば、チタンリン酸カリウム(KTP)、又は周期的に分極するKTP(PPKTP)、又は三ホウ酸リチウム(LiB-又はLBO)などを、或いはベータ型ホウ酸バリウムでさえも、使用することができる。
【0030】
制御手段MCは、非線形結晶CNの中に、入力ビームFEと同期し、後者(CN)の中に電気光学効果による位相不整合を引き起こすことができる、少なくとも1つの電場を発生するように準備される。この位相不整合は、入力ビームFEの一次光子の、超連続光に属する波長を有する二次光子への変換を引き起こすことができる。
【0031】
実際には、電気光学効果は、非線形結晶CNを構成する材料の屈折率の変更を引き起こし、それにより、一次光子と二次光子との間の位相不整合の条件を変更し、これが出力二次光子のスペクトル・プロファイルを変調する。
【0032】
一次及び二次波長の伝播の軸は、電気光学効果を引き起こす電場の方向にほぼ垂直である。
【0033】
二次光子の発生を促進する位相不整合を得るために、結晶CNが初めに切断される方向及び電気光学効果が非線形結晶CN内の伝播の条件を調節するために用いられる。二次光子は非常に高い強度レジーム(非常に高い強度の一次光子)において発生され、その結果、入力ビームFEの空間的プロファイルは、周波数変換と同時に変更される。空間領域及び時間領域における同時のこのプロファイルの変更は、図1及び2の非線形結晶CNにおいて図式的に示されるように、入力ビームFEの直径を減らす効果を有する閉じ込めの増加、又は入力ビームFEの直径を増す効果を有する閉じ込めの減少のいずれか、をもたらすことができる。「断熱的自己収束伝播」と呼ばれる第1の代替物は、非線形結晶CN内に広帯域変換をより容易に達成することを可能にする。「非収束伝播」と呼ばれる第2の代替物は、非線形結晶CNを、入力ビームFEによる非常にエネルギーが高い励起の間に何らかの光学的損傷から保護することを可能にする(非線形伝播の中に統合される逆飽和吸収効果)。
【0034】
逆飽和吸収効果は、出力電力密度の限界をもたらす(電力密度は、電力とビームの面積との間の比に等しい)。従って、電力の増加がビームによって照らされる面積の増加を伴う場合に、この効果を得ることが可能である(これは、一次ビームの出力が焦点ボケを引き起こす場合である)。
【0035】
図1及び2に示されるように、制御手段MCは、非線形結晶CN内に、入力ビームFE及び出力ビームFSの一般的方向に垂直な第1の方向における第1の同期電場、及び/又は、入力ビームFE及び出力ビームFSの一般的方向に、並びにこの第1の方向に垂直な第2の方向における第2の同期電場を発生するように準備される。従って、ビームの伝播方向に垂直な2つの方向において、種々の仕方で材料の屈折率を変えることが可能である。このことは、位相不整合を得るための多くの選択を可能にする。しかし、ゼロ位相不整合の点を用いることもできる。実施することができるか又はできない、これらの種々の選択肢には、以下で戻ることになる。
【0036】
さらに図1及び2に示されるように、制御手段MCは、少なくとも1つのサンプリング手段MP、オプトエレクトロニクス手段MO、電極Ej及び遅延手段MRを備えることができる。
【0037】
サンプリング手段MPは、パルス・レーザ光源SLと非線形結晶CNとの間に設置される。それらは、入力ビームFEを、非線形結晶CNに向けられる主部分FE1とオプトエレクトロニクス手段MOに向けられる補助部分FE2とに分割することができる。
【0038】
例えば、非限定的に図示されるように、これらのサンプリング手段MPは、入力ビームFEの一般的方向に垂直な面に対して、例えば45°だけ傾けられた半反射ミラーを備えることができる。
【0039】
オプトエレクトロニクス手段MOは、入力ビームの各々の補助部分FE1の受け取りにより電気パルスを発生することができる。電極Ejに向けられた各々の電気パルスは、その電気パルスを発生する光パルス(FE1の一次光子)と同期し、高電圧であることが好ましい。オプトエレクトロニクス手段MOは、例えば、いわゆる「フローズン ウエーブ」発生器の形態を取ることができ、これは大きさが1キロボルトより高く、単極又は双極プロファイルを有する電気パルスを発生することができる(典型的には1ns~3nsの持続時間)。双極プロファイルは、結晶CNの分極が1つの方向から逆方向へ迅速に通過することを可能にし、実時間での位相整合の急速な修正に都合が良い。
【0040】
電極Ejは非線形結晶CNに対向して配置され、後者(CN)の中に、オプトエレクトロニクス手段MOによって発生された各々の電気パルスの受け取りによる(各々の)電場を発生するように準備される。電極Ejと結晶CNとの間に液体又は導電性ペーストを導入することが、結晶CN内への電場の貫通を助長する。この導電性ペーストは、例えば、銀含有樹脂のような導電性接着剤とすることができる。
【0041】
上記の第1の電場を発生するために、非線形結晶CNの2つの第1の向き合う面に対向して配置された2つの電極Ej(ここで、j=1又は2)が使用されること、及び、上記の第2の電場を発生するために、非線形結晶CNの2つの第2の向き合う面に対向して配置された2つの電極Ejが使用され、前記第2の向き合う面は第1の面に垂直であること、を理解されたい。これらの第1及び第2の面は、入力ビームFE及び出力ビームFSの一般的方向に平行であり、非線形結晶CNの入力面F1、即ち、入力ビームFEがそれを介して入る面、及び、非線形結晶CNの出力面F2、即ち、出力ビームFSがそれを介して出る面に垂直である。第1の電場及び第2の電場の両方を発生させることが望ましいとき、2つの電極Ejが非線形結晶CNの2つの第1の向き合う面に対向して配置され、2つの他の電極Ej’が非線形結晶CNの2つの第2の向き合う面に対向して配置され、前記第2の向き合う面は第1の面に垂直である。後者の代替物において、オプトエレクトロニクス手段MOは、入力ビームの各々の補助部分FE2の受け取りによって2つの電気パルスを発生し、これら2つの電気パルスを、2つの垂直方向における2つの位相不整合を引き起こすための2つの電場を生成するように、2対の電極Ejに同期的に送るか、或いは、入力ビームの各々の補助部分FE2の受け取りによって単一の電気パルスを発生し、この単一の電気パルスを1つの方向における位相不整合を引き起こす電場を生成するように、問題の一対の電極Ejに送る。
【0042】
遅延手段MRは、入口ビームFEの主部分FE1の一次光子を、非線形結晶CNに(各々の)発生された電場と同期的に達するように、遅延させるように準備される。例えば、これらの遅延手段MRは、非線形結晶CNに達する各々の光パルス(一次光子)がオプトエレクトロニクス手段MOによって発生された対応する電気パルスと同期するのを可能にする遅延線の形態を取ることができる。
【0043】
図2の第2の例において非限定的に示されるように、非線形結晶CNは、オプションとして、その入口面F1上及びその出口面F2上に、一次光子の及び/又は二次光子の共振を引き起こすことができる半反射ミラーMSを備えることができることに留意されたい。このオプションは、電気光学効果により非線形結晶CN内での広帯域スペクトルの発生を容易にするためである。この共振の効果は、結晶CNを通る通過の数を増加することにより、変換効率を向上させる(具体的には、変換されたビームの強度が、通過する非線形媒体の長さの平方に比例する)。これらの半反射ミラーMSは、例えば、誘電体、表面処理の要素を加えることができるか、又は、それらによって定めることができる。
【0044】
また、図1及び2には示されないが、電極Ejの少なくとも1つは、非線形結晶CN内に発生される電場の空間的変調を引き起こすことができる空間的構造を有することができることに留意されたい。この空間的変調は、出力ビームFSの位相不整合及びスペクトル・プロファイルの変更、及び/又は、波長変換軸に対する入力ビームFE1の偏光ベクトルの相対的配向の変更を引き起こすことができる。入力ビームFE1のこの偏光ベクトルは、図1及び2に示されるように、半波長(又はλ/2)板LDによって配向させることができ、又は実際には1/4波長(又はλ/4)板によって修正することができる。
【0045】
そのような空間的構造(又は不均一性)の存在下において、電場は不均一になり、それにより、非線形結晶CNを通る伝播の全長にわたり、広帯域非線形変換を制御することを可能にすることに留意されたい。従って、電場は、例えば、入口面F1の近傍で、出口面F2の近傍におけるよりも強くすることができる。この構造は、一次及び二次光子の速度を修正することによって位相不整合を制御するためにオプションとして周期的にすることができることに留意されたい。
【0046】
また、図1及び2には示されないが、装置DGは、オプションとして、順々に配置される少なくとも2つの非線形結晶CNを備えることができることに留意されたい。この場合、各々の結晶は特定の方向に切断される。このことは、一次光子のより広範囲の変換を得る目的で位相整合を実質的に変化させることを可能にする(このことを、電極Ejにバイアスをかけることによって行うことは可能ではなく、これは位相整合に対してより限定された効果を有する)。
【0047】
また、パルス・レーザ光源SLは、一次(又は基本)波長を有する一次光子、及び一次波長の第2高調波に等しい別の波長を有する一次光子を供給することができる可能性があることに留意されたい。この場合、非線形結晶CNは、一次光子に関するいわゆる「周波数二倍器」とすることができる。これは、次に、2つの異なる波長の光子によって同時にポンピングされ、それにより、超連続光の二次光子の波長の数を増加させることを可能にする。
【0048】
超連続光は、そのエネルギーを他の波長に変換するポンピング波の出力のおかげで結晶内に発生される。従って、一次光子が結晶を通るそれらの通過の間に再増幅される場合に、より良い発生を得ることができる。周波数変換による一次光子の減少は、レーザ増幅により補償される。より大きい出力を得るために、二次光子を増幅することもできる。
【0049】
この増幅は、1つ又はそれ以上の希土類イオンを結晶に加える(又はドーピングする)ことにより、及びそれらを、連続波又はパルス・レジームにおける1つ又はそれ以上のポンピング波でポンピングすることによって達成することができる。このタイプの増幅プロセスは、例えば、光ファイバー内で用いられている([R3]参照)。
【0050】
加えて、非線形結晶は一般に、結晶成長プロセス、例えば「チョクラルスキー」成長プロセスを用いて得られる([R4]及び[R5]参照)。成長後、結晶は特定の配向に切断され、レーザ光源及び/又は非線形変換実験において用いることができる。
【0051】
同じ結晶を、微小結晶の粉末の凝集に基づく製造プロセスを用いて得ることができることも知られている。凝集後、超高温圧縮操作(焼結と呼ばれる)によって成形体が固められる。そこで微小結晶で構成される結晶(セラミックス)が得られ、結晶成長によって得られるその同族体と同じく透明にすることができる([R6]参照)。特定の焼結温度条件に対しては、材料中に複数の相が出現し得る。そこでこの結晶はガラス相の中に含まれる。そこでガラス-セラミックスは、換言すれば、局所的にガラス相及び結晶相を有する材料と呼ばれる([R7]参照)。
【0052】
従って、装置に対する幾つかの改善が可能であり、前述のオプションと両立できる。
- 非線形結晶(CN)は希土類イオンでドープすることができ、このドーピングは、二次光子の発生と一次光子の及び/又は二次光子の増幅とを結びつけることを可能にし、
- レーザ光源(SL)は、前記レーザ光源がパルス・レジームにおいて又は連続波レジームにおいて動作するかどうかに関わらず、希土類ドープされた結晶のレーザ・ポンピングを可能する一次光子を発生する能力を有し、
- 非線形結晶(CN)は、二次及び/又は三次の非線形性を有することができ、
- 非線形結晶(CN)は、透明セラミックス及び/又は透明ガラス-セラミックスとすることができ、
- 非線形結晶(CN)は、中心対称性又は非中心対称性の分子配置を有することができ、又は実際に、
- 非線形結晶(CN)は、イットリウム、エルビウム、ツリウム、ホルミウム、ネオジム、プラセオジム、又はセリウムでさえものイオンでドープすることができ、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0053】
本発明は幾つかの利点を有し、その中で、
・ 非線形結晶の断面積が、光ファイバー・コアの断面積よりも遙かに大きいので、高いスペクトル出力密度を有する超連続光を得ることを可能にし、
・ 長さの短い非線形結晶を通る通過の後、一次光子と二次光子との間の時間的分離を最小にし、従って、よりコヒーレントな多色放射を得ることを可能にし、
・ 非線形結晶の大きな透明領域のために、遠紫外から遠赤外までの範囲の波長を有する光子を得ることを可能にし、
・ 空間的及び時間的に制御される電気励起から生じる、非線形結晶内の伝播パラメータの修正のおかげで、使用可能なパルス・レーザ光源のエネルギーに応じて、二次光子のスペクトル・プロファイルを適合させること、及びスペクトル出力密度を調節することを可能にする。
【0054】
本発明は、図面及び前述の説明において詳しく示され説明された。後者は例証であり、例として与えられ、本発明をこの説明にのみ限定するものではないと考えられるべきである。多くの異なる実施形態が可能である。
【0055】
参考文献
[R1] Mussot, A.; Kudlinski, A.; Kolobov, M.; Louvergneaux, E.; Douay, M.; Taki, M.; ”Observation of extreme temporal events in CW-pumped supercontinuum” Optics Express 17(19) 17010-7015 (2009)
[R2] F. Silva, D.R. Austin, A. Thai, M. Baudisch, M. Hemmer, D. Faccio, A. Couairon & J. Biegert; ”Multi-octave supercontinuum generation from mid-infrared filamentation in a bulk crysta” nature communications | 3:807 | DOI: 10.1038
[R3] Roy, Aude; Leproux, Philippe; Roy, Philippe; Auguste, Jean-Louis; Couderc, Vincent, ”Supercontinuum generation in a nonlinear Yb-doped, double-clad, microstructured fiber” Journal of the Optical Society of America B 24(4) 788-791(2007)
[R4] M. Spiesser, Jan Czochralski ”Methode de tirage des cristaux”, Bulletin GFCC (May 1999)
[R5] J. Czochralski, Z. Physik Chem. 92 (1918) 219
[R6] Garanin, S. G.; Rukavishnikov, N. N.; Dmitryuk, A. V.; Zhilin, A. A.; Mikhailov, M. D. Laser ceramic. 1. Production methods Journal of Optical Technology 77(9) 565-576 (2010)
[R7] Chen, Xiaobo; Song, Zengfu; Hu, Lili; Zhang, Junjie; Wen, Lei, ”Experimental study on a nonlinear photonics process of Er(0.5)Yb(3):FOV oxyfluoride nanophase vitroceramics”; Optics Letters 32(14) 2019-2021 (2007)
図1
図2