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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】チューナ装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/426 20110101AFI20221109BHJP
   H04N 21/61 20110101ALI20221109BHJP
   H04B 1/18 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H04N21/426
H04N21/61
H04B1/18 B
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019549886
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2018030927
(87)【国際公開番号】W WO2019082485
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2017208218
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊和
(72)【発明者】
【氏名】安藤 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】村山 宜弘
(72)【発明者】
【氏名】高桑 浩誠
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-105648(JP,A)
【文献】特開2016-046790(JP,A)
【文献】特開2012-156690(JP,A)
【文献】特表2017-510101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B1/06
1/16-1/24
H04H20/00-20/46
20/51-20/86
20/91-40/27
40/90-60/98
H04N7/10
7/14-7/173
7/20-7/56
21/00-21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星デジタル放送の受信信号が供給される入力端子と、
前記入力端子に接続され、前記受信信号が1.03GHzから1.49GHz及び1.6GHzから2.07GHzを含む低域側周波数領域の第1の信号と
前記受信信号が2.22GHzから2.68GHz及び2.75GHzから3.22GHzを含む高域側周波数領域の第2の信号を周波数分離する分器と、
前記第1及び第2の信号をそれぞれ増幅する第1及び第2の増幅器と、
前記第1及び第2の増幅器の出力信号が入力されるチューナとを備え
前記第1の信号から発生する2倍歪が前記第2の信号に干渉することを防ぐことを特徴とする
チューナ装置。
【請求項2】
前記第1の増幅器の出力の低域側周波数領域の第3の信号と前記第2の増幅器の出力の高域側周波数領域の第4の信号を周波数分離し、
分離された前記第3及び第4の信号を周波数多重化する多重化器と、
前記多重化器に接続された出力端子と
を有する請求項1に記載のチューナ装置。
【請求項3】
前記チューナの入力側にマッチング回路が設けられた請求項1に記載のチューナ装置。
【請求項4】
前記多重化器の入力側にマッチング回路が設けられた請求項2に記載のチューナ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のチューナ装置が実装されている回路基板が取り付けられ、ほぼ矩形の主面と、前記主面の周囲に沿って設けられた周面部材を有する金属製のチューナケースと、
前記チューナケースの外側の前記主面の4個のコーナー近傍の領域にそれぞれ取り付けられた4個のコネクタと、
前記チューナケースの内側の前記4個のコーナー近傍の領域にそれぞれ設けられた前記チューナケースと別個のシールド部とを備えた請求項1に記載のチューナ装置。
【請求項6】
前記シールド部は、一方の端面同士が接合された第1及び第2の板状部材を有し、前記第1及び第2の板状部材の他方の端面を前記チューナケースのコーナー近傍の前記周面部材の内面にそれぞれ接合するようにした請求項5に記載のチューナ装置。
【請求項7】
前記チューナケースは外部回路と接続可能である接続ピンを有し、
前記接続ピンは妨害波低減用のコンデンサを備える請求項5に記載のチューナ装置。
【請求項8】
衛星デジタル放送の受信信号が供給される入力端子と、
前記入力端子に接続され、前記受信信号が1.03GHzから1.49GHz及び1.6GHzから2.07GHzを含む低域側周波数領域の第1の信号と
前記受信信号が2.22GHzから2.68GHz及び2.75GHzから3.22GHzを含む高域側周波数領域の第2の信号を周波数分離する分器と、
前記第1及び第2の信号をそれぞれ増幅する第1及び第2の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力の低域側周波数領域の第5の信号と前記第2の増幅器の出力の高域側周波数領域の第6の信号を周波数分離し、分離された前記第5及び第6の信号を周波数多重化する多重化器と、
前記多重化器の出力信号が入力されるチューナと、
前記多重化器に接続された出力端子とを備え
前記第1の信号から発生する2倍歪が前記第2の信号に干渉することを防ぐことを特徴とする
チューナ装置。
【請求項9】
前記チューナの入力側にマッチング回路が設けられた請求項8に記載のチューナ装置。
【請求項10】
請求項8に記載のチューナ装置が実装されている回路基板が取り付けられ、ほぼ矩形の主面と、前記主面の周囲に沿って設けられた周面部材を有する金属製のチューナケースと、
前記チューナケースの外側の前記主面の4個のコーナー近傍の領域にそれぞれ取り付けられた4個のコネクタと、
前記チューナケースの内側の前記4個のコーナー近傍の領域にそれぞれ設けられた前記チューナケースと別個のシールド部とを備えた請求項8に記載のチューナ装置。
【請求項11】
前記シールド部は、一方の端面同士が接合された第1及び第2の板状部材を有し、前記第1及び第2の板状部材の他方の端面を前記チューナケースのコーナー近傍の前記周面部材の内面にそれぞれ接合するようにした請求項10に記載のチューナ装置。
【請求項12】
前記チューナケースは外部回路と接続可能である接続ピンを有し、
前記接続ピンは妨害波低減用のコンデンサを備える請求項10に記載のチューナ装置。
【請求項13】
衛星デジタル放送の受信信号が供給される入力端子と、
前記入力端子に接続され、前記受信信号が1.03GHzから1.49GHz及び1.6GHzから2.07GHzを含む低域側周波数領域の第1の信号と
前記受信信号が2.22GHzから2.68GHz及び2.75GHzから3.22GHzを含む高域側周波数領域の第2の信号を周波数分離する分波器と、
前記第1及び第2の信号をそれぞれ増幅する第1及び第2の増幅器と、
前記第1及び第2の増幅器の出力信号が入力される多重化するダイプレクサと、
前記ダイプレクサの出力信号が入力される分配器と、
前記分配器の出力信号が入力されるチューナとを備え、
隣接するチャンネル同士の周波数帯域が重なることによって発生する歪を防ぐことを特徴とする
チューナ装置。
【請求項14】
前記チューナの入力側にマッチング回路が設けられた請求項13に記載のチューナ装置。
【請求項15】
請求項13に記載のチューナ装置が実装されている回路基板が取り付けられ、ほぼ矩形の主面と、前記主面の周囲に沿って設けられた周面部材を有する金属製のチューナケースと、
前記チューナケースの外側の前記主面の4個のコーナー近傍の領域にそれぞれ取り付けられた4個のコネクタと、
前記チューナケースの内側の前記4個のコーナー近傍の領域にそれぞれ設けられた前記チューナケースと別個のシールド部とを備えた請求項13に記載のチューナ装置。
【請求項16】
前記シールド部は、一方の端面同士が接合された第1及び第2の板状部材を有し、前記第1及び第2の板状部材の他方の端面を前記チューナケースのコーナー近傍の前記周面部材の内面にそれぞれ接合するようにした請求項15に記載のチューナ装置。
【請求項17】
前記チューナケースは外部回路と接続可能である接続ピンを有し、
前記接続ピンは妨害波低減用のコンデンサを備える請求項15に記載のチューナ装置。
【請求項18】
前記衛星デジタル放送が高度BS放送である請求項1、請求項8又は請求項13に記載のチューナ装置。
【請求項19】
前記チューナが地上デジタル放送を受信可能な請求項1、請求項8又は請求項13に記載のチューナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、高度広帯域衛星デジタル放送の受信のために使用されるチューナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の衛星デジタルテレビジョン放送では、約1GHz~2.1GHzまでの中間周波数(IF(Intermediate Frequency)と適宜称する。また、IFは、中間周波数又は中間周波数信号の両者を表す語句として使用する。)にてテレビジョン信号を伝送している。ただし、2018年に実用放送が予定されている高度広帯域衛星デジタル放送(高度BS放送と適宜称する)は、4K/8Kの超高精細度テレビジョン放送を提供するために、IFが約2.1GHz~3.2GHzまで拡張される。
【0003】
一般的に周波数が高くなるほど、受信設備などにより、高周波信号は信号強度の劣化が大きくなり、低い周波数と高い周波数で信号強度の差が発生する。この問題は、チルト問題と称される。また、従来の衛星信号の受信帯域では、信号歪の主成分である2倍歪(又は2次歪)が発生する可能性はほぼなかった。しかしながら、IFが3.2GHzまでに拡張されたことにより、従来のIFによる2倍歪が拡張されたIF帯域への妨害となる。
【0004】
衛星デジタルテレビジョン放送が開始された当時もチルト問題は発生しており、歪特性を改善させることや、特許文献1のようにハイパスフィルタによって分離された衛星入力の前にPINアッテネータを入れることで対策を実施していた。PINアッテネータは、PINダイオードを使用した高周波アッテネータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-116358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、高度BS放送における周波数拡張に関しては、2倍歪のような歪成分の増加や、信号強度差の拡大により、特許文献1に記載のようなPINアッテネータによっては対策が難しくなっている。
【0007】
したがって、本技術の目的は、歪成分の増加を防止することができるチューナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術の第1の態様は、衛星デジタル放送の受信信号が供給される入力端子と、
入力端子に接続され、受信信号の低域側周波数領域の第1の信号と受信信号の高域側周波数領域の第2の信号を周波数分離する分離器と、
第1及び第2の信号をそれぞれ増幅する第1及び第2の増幅器と、
第1及び第2の増幅器の出力信号が入力されるチューナと
を備えるチューナ装置である。
本技術の第2の態様は、衛星デジタル放送の受信信号が供給される入力端子と、
入力端子に接続され、受信信号の低域側周波数領域の第1の信号と受信信号の高域側周波数領域の第2の信号を周波数分離する分離器と、
第1及び第2の信号をそれぞれ増幅する第1及び第2の増幅器と、
第1の増幅器の出力の低域側周波数領域の第5の信号と第2の増幅器の出力の高域側周波数領域の第6の信号を周波数分離し、分離された第5及び第6の信号を周波数多重化する多重化器と、
多重化器の出力信号が入力されるチューナと、
多重化器に接続された出力端子と
を備えるチューナ装置である。
本技術の第3の態様は、ほぼ矩形の主面と、主面の周囲に沿って設けられた周面部材を有する金属製のチューナケースと、
チューナケースの外側の主面の4個のコーナー近傍の領域にそれぞれ取り付けられた4個のコネクタと、
チューナケースと別個のシールド部をチューナケースの内側の4個のコーナー近傍の領域にそれぞれ設けるようにしたチューナ装置である。
【発明の効果】
【0009】
少なくとも一つの実施形態によれば、チューナに供給される信号を歪の少ないものとできる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果又はそれらと異質な効果であっても良い。また、以下の説明における例示された効果により本技術の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本技術の第1の実施の形態のブロック図である。
図2図2は本技術の第2の実施の形態のブロック図である。
図3図3は本技術を適用できるレコーダの一例の背面パネルを示す部分拡大図である。
図4図4はレコーダの接続関係の説明に用いる略線図である。
図5図5は本技術の第3の実施の形態のブロック図である。
図6図6は本技術の第4の実施の形態のブロック図である。
図7図7はチューナの構成例の説明に用いる斜視図である。
図8図8はチューナの構成例の説明に用いる斜視図である。
図9図9は従来機種での妨害波の信号端子32への通過特性を示した図である。
図10図10はシールド構造を追加した機種での妨害波の信号端子32への通過特性を示した図である。
図11図11図9に更にピン接続端子にパスコンをつけた際の妨害波の信号端子32への通過特性を示した図である。
図12図12はシールド構造を追加した機種での妨害波の信号端子11への通過特性を示した図である。
図13図13は本技術の効果を確認した信号環境の図とその結果の表である。
図14図14は本技術の既存周波数領域と新規追加周波数領域の干渉を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施の形態は、本技術の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本技術の範囲は、以下の説明において、特に本技術を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
なお、本技術の説明は、下記の順序にしたがってなされる。
<1.高度BS放送における問題点>
<2.本技術の第1の実施の形態>
<3.本技術の第2の実施の形態>
<4.本技術の第3の実施の形態>
<5.本技術の第4の実施の形態>
<6.チューナの構成例>
<7.変形例>
【0012】
<1.高度BS放送における問題点>
図13及び図14を参照して高度BS放送における問題点について説明する。図13は、高度BS放送におけるIFの周波数を示している。例えばチャンネル番号BS-1のIFの中心周波数が1049.48MHzである。BS-3,BS-5,BS-7,.....,BS-23 のチャンネルが順に配置されている。チャンネル番号BS-23 のIFの中心周波数が1471.44MHzである。このBSのIFより高い周波数帯域に、CS-IFが配置されている。例えばチャンネル番号ND-2のIFの中心周波数が1613MHzであり、ND-2,ND-4,ND-6,.....,ND-24 のチャンネルが順に配置されている。例えばチャンネル番号ND-24 のIFの中心周波数が2053MHzである。これらのBS-1~BS-23 及びND-2~ND-24 のIFは、既存のBS放送及びCS放送のチャンネルであり、電波が右旋円偏波である。
【0013】
高度BS放送では、左旋円偏波が使用される。すなわち、チャンネル番号BS-2,BS-4,....,BS-24 並びにチャンネル番号ND-1,ND-3,ND-5,.....,ND-23 のチャンネルが左旋円偏波のチャンネルである。例えばチャンネル番号BS-2の中心周波数が2241.66MHzであり、チャンネル番号BS-24 の中心周波数が2663.62MHzである。また、チャンネル番号ND-1の中心周波数が2766MHzであり、チャンネル番号ND-23 の中心周波数が3206MHzである。
【0014】
図13は、本技術に関して信号強度差耐性を確認するための試験時の信号波形である。既存周波数領域、新規追加周波数領域の下側の帯域のチャンネルに関しては信号レベルを一定(例えば-30dB)にし、新規追加周波数領域の上側のチャンネルから段階的にレベルを下げていき、最も高域のチャンネルND-23 がどこまでレベルを下げても受信できるか確認を行った。結果として市場環境にて想定されるチルトレベル20dBまでの耐性が確保できており、本技術の有効性を確認することができた。
【0015】
図14に示すように、既存の帯域に含まれる隣接するチャンネル同士のIFによって2倍歪が発生する。図14において、帯域(1.03GHz~1.49GHz)は、チャンネル番号BS-1~BS-23 の帯域を示し、帯域(1.6GHz~2.07GHz)は、チャンネル番号ND-2~ND-24 の帯域を示す。さらに、帯域(2.22GHz~2.68GHz)は、チャンネル番号BS-2~BS-24 の帯域を示し、帯域(2.75GHz~3.22GHz)は、チャンネル番号ND-1~ND-23 の帯域を示す。矢印で示すように、既存の帯域に含まれる隣接するチャンネル同士のIFによって生じた2倍歪の帯域が拡張された帯域と重なり、歪が増加することになる。一例として、(1500MHz+1600MHz=3100MHz)(1350MHz+1450MHz=2800MHz)のような2次歪が発生する。さらに、拡張された帯域の隣接するチャンネルのIF同士の差の周波数の歪が発生する。この歪が既存の帯域のIFに影響を与える問題も生じる。本技術は、かかる歪の発生を防止することができる。
【0016】
また、高度BS放送の新規追加周波数領域は、Wi-Fi(登録商標)や、電子レンジなどの日常生活で使用されている機器の周波数領域と重複しているので、従来のチューナ装置より高性能な遮蔽特性が必要とされる。特に、チューナからの不要輻射に関しては新規規格が導入され、より厳しい規制がと導入されることが確実となっている。本技術では、新規追加周波数領域の不要輻射を抑える構成が採用される。
【0017】
<2.本技術の第1の実施の形態>
図1を参照して本技術の第1の実施の形態について説明する。RF信号入力端子11からIF信号が供給される。図示しないが、BS受信アンテナによって受信されたコンバータにて周波数変換されることによってIFが形成される。IFが接続ケーブルとしての同軸ケーブルを介してRF信号入力端子11に供給される。
【0018】
RF信号入力端子11は、例えば同軸コネクタであり、例えばF型コネクタである。F型コネクタの一つのタイプは、同軸ケーブルの一端に接続されるものであり、F型コネクタプラグ等と呼ばれる。他のタイプは、F型コネクタプラグから突出している同軸ケーブルの中心導体(以下、芯線と称する)を受け入れるF型コネクタであり,F型コネクタレセプタクル等と呼ばれる。RF信号入力端子11は、F型コネクタレセプタクルである。但し、RF信号入力端子11は、F型コネクタ以外の他の構成例えばIEC(International Electrotechnical Commission) コネクタであってもよい。
【0019】
RF信号入力端子11からのIFがダイプレクサ12に供給される。ダイプレクサ12は、入力IFを異なる帯域の第1及び第2の信号に分離する。第1の信号の帯域は、図14に示すように、既存のBS放送のIFの帯域((1.03GHz~1.49GHz)及び(1.6GHz~2.07GHz))を含む帯域(例えば0.95GHz~2.15GHz)(以下、既存周波数領域(Lで示す側の出力)と適宜称する)である。第2の信号の帯域は、(2.22GHz~2.68GHz)及び(2.75GHz~3.22GHz)を含む帯域(例えば2.15GHz~3.2GHz)(以下、新規追加周波数領域(Hで示す側の出力)と適宜称する)である。
【0020】
ダイプレクサ2により分離された既存周波数領域の第1の信号が第1の増幅器例えばLNA(Low Noise Amplifier)13によって増幅されて既存のBS放送及び高度BS放送受信用のチューナ15の既存周波数領域側の入力に供給される。ダイプレクサ2により分離された新規追加周波数領域の第2の信号が第2の増幅器例えばLNA14によって増幅されて既存のBS放送及び高度BS放送受信用のチューナ15の新規追加周波数領域側の入力に供給される。
【0021】
チューナ15において、既存周波数領域と新規追加周波数領域のそれぞれに関して信号処理がなされる。チューナ15の出力に対して復号などの処理を行う信号処理部(図示せず)が接続され、最終的にTS(Transport Stream)を得るようにしている。チューナ15に対してダイプレクサ12、LNA13及びLNA14は、RF入力側回路を構成している。これらのRF入力側回路及びチューナ15からなる構成をチューナ装置と称する。また、チューナ15は、後述するRF信号出力を得るためのダイプレクサによって第1及び第2の信号を周波数多重化して一つの信号としてから処理を行う構成でもよい。さらに、チューナ15は、地上デジタル放送を受信することが可能な構成であってもよい。これらのチューナ15に関する構成は、後述する他の実施の形態においても同様である。但し、以下の説明では、簡単のため、BS放送用チューナを例に説明する。
【0022】
上述した第1の実施の形態によれば、ダイプレクサ12によって入力RF信号の帯域を既存周波数領域と新規追加周波数領域に周波数分離し、それぞれの領域の信号をLNA13及び14に供給している。したがって、LNA13において発生した2倍歪がLNA14の出力に取り出される新規追加周波数領域に混入することが防止される。一方、LNA14において発生した低域側歪がLNA13の出力に取り出される既存周波数領域に混入することが防止される。したがって、低歪のIFをチューナ15が処理することができ、受信信号の品質を良好とできる。
【0023】
<3.本技術の第2の実施の形態>
図2を参照して本技術の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、例えばブルーレイディスク(登録商標)レコーダ(以下、単にレコーダと適宜称する)、ハードディスクレコーダ又はSTB(Set-Top Box)に適用されるものである。RF信号入力端子11からのIFがダイプレクサ12に供給され、既存周波数領域と新規追加周波数領域に周波数分離され、既存周波数領域の第1の信号がLNA13に供給され、新規追加周波数領域の第2の信号がLNA14に供給される。
【0024】
LNA13及びLNA14のそれぞれの出力に対して分配器16及び17が接続される。分配器16によってLNA13の出力信号が二つの信号に分岐され、一方の信号がチューナ15の既存周波数領域側入力に供給され、他方の信号(第3の信号)がダイプレクサ18の一方の入力端子に供給される。また、分配器17によってLNA14の出力信号が二つの信号に分岐され、一方の信号がチューナ15の新規追加周波数領域側入力に供給され、他方の信号(第4の信号)がダイプレクサ18の他方の入力端子に供給される。
【0025】
ダイプレクサ18は、分配器16から受け取った第3の信号の既存周波数領域を周波数分離し、また、分配器17から受け取った第4の信号の新規追加周波数領域を周波数分離し、さらに、これらの分離した信号を周波数多重化してRF信号出力端子19に対して出力する。RF信号出力端子19は、例えばF型コネクタレセプタクルである。RF信号出力端子19の出力に取り出されたIFがテレビジョン受像機のチューナに対して供給される。ダイプレクサ12、LNA13及びLNA14、分配器16及び17、並びにダイプレクサ18は、RF入力側回路を構成している。
【0026】
図3は、レコーダ30の背面パネルの一例を示す。背面パネルには、上述したBS放送用のRF信号入力端子11及びRF信号出力端子19が設けられている。さらに、これらの端子11及び19の近傍に地上デジタル放送用のRF信号入力端子31及びRF信号出力端子32が設けられている。また、デジタル出力のためのHDMI(High-definition multimedia interface)(登録商標)出力端子33、電源入力端子34、USB(Universal Serial Bus)端子35、LAN(Local Area Network)端子36、並びに音声/映像入力端子37が設けられている。
【0027】
図4に示すように、レコーダ40に対してアンテナ入力が供給される。例えばBS/110度CS放送のIF及び地上デジタル放送のIFが混合されて部屋内のテレビジョン端子51にアンテナケーブルを介して導かれる。テレビジョン端子51に対して分波器52が接続され、UHF帯のIFとBS/CS放送のIFに分離される。
【0028】
BS/CS放送のIFがレコーダ30のRF信号入力端子11にアンテナケーブルを介して供給され、UHF帯のIFがRF信号入力端子31にアンテナケーブルを介して供給される。レコーダ30のRF信号出力端子19がアンテナケーブルを介してテレビジョン受像機のBS/CS放送のアンテナ入力端子41と接続される。レコーダ30のRF信号出力端子32がアンテナケーブルを介してテレビジョン受像機の地上デジタル放送のアンテナ入力端子42と接続される。さらに、HDMI(登録商標)出力端子33とテレビジョン受像機のHDMI(登録商標)入力端子43がHDMI(登録商標)ケーブルを介して接続される。
【0029】
このように接続することによって、BS/110度CS放送と地上デジタル放送をテレビジョン受像機40によって視聴すると共に、レコーダ30によって受信放送番組をハードディスクに記録することができる。さらに、レコーダ30及びテレビジョン受像機40が高度BS放送に対応した構成の場合には、高度BS放送(4K/8K放送)も視聴することができる。なお、図3及び図4に示すレコーダ30は、一例の構成を示し、また、図4に示す接続関係も一例である。
【0030】
上述した第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様に、チューナ15に供給されるIFを歪の少ないものとできる。さらに、RF信号出力端子19に取り出されるIFも、ダイプレクサ18によって歪が除去されたものとできる。高度BS放送の新規追加周波数領域は、Wi-Fi(登録商標)や、電子レンジなどの日常生活で使用されている機器の周波数と重複しているので、従来チューナより高性能な遮蔽特性が必要とされる。特に、チューナからの放射に関しては新規規格が導入され、より厳しい規制が入ることが確実となっている。
【0031】
<4.本技術の第3の実施の形態>
図5を参照して本技術の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、第2の実施の形態と同様に、レコーダ又はSTBに適用されるものである。さらに、3個のチューナ15a,15b,15cを備える。2個以上のチューナを備えることによって、同時に2以上の番組を録画することができる。
【0032】
RF信号入力端子11からのIFがダイプレクサ12に供給され、既存周波数領域の第1の信号と新規追加周波数領域の第2の信号に周波数分離され、既存周波数領域の第1の信号がLNA13に供給され、新規追加周波数領域の第2の信号がLNA14に供給される。LNA13の出力に分配器21が接続され、分配器21の出力に分配器22及び23が接続される。LNA14の出力に分配器24が接続され、分配器24の出力に分配器25及び26が接続される。
【0033】
分配器21によってLNA13の出力信号が二つの信号に分岐され、分岐した各信号が分配器22及び23によって、二つの信号にさらに分岐される。分配器22の一方の出力信号(第3の信号)がマッチング回路29aを介してダイプレクサ18の既存周波数領域側の入力に供給される。分配器22の他方の出力信号がマッチング回路27aを介してチューナ15aの既存周波数領域側入力に供給される。分配器23の一方の出力信号がマッチング回路27bを介してチューナ15bの既存周波数領域側入力に供給され、分配器23の他方の出力信号がマッチング回路27cを介してチューナ15cの既存周波数領域側入力に供給される。
【0034】
分配器24によってLNA14の出力信号が二つの信号に分岐され、分岐した各信号が分配器25及び26によって、二つの信号にさらに分岐される。分配器25の一方の出力信号(第4の信号)がマッチング回路29bを介してダイプレクサ18の新規追加周波数領域側の入力に供給される。分配器25の他方の出力信号がマッチング回路28aを介してチューナ15aの新規追加周波数領域側入力に供給される。分配器26の一方の出力信号がマッチング回路28bを介してチューナ15bの新規追加周波数領域側入力に供給され、分配器26の他方の出力信号がマッチング回路28cを介してチューナ15cの新規追加周波数領域側入力に供給される。
【0035】
ダイプレクサ18は、マッチング回路29aの出力信号の内の既存周波数領域を周波数分離し、また、マッチング回路29bの出力信号の内の新規追加周波数領域を周波数分離し、さらに、これらの分離した信号を周波数多重化してRF信号出力端子19に対して出力する。RF信号出力端子19は、例えばF型コネクタレセプタクルである。RF信号出力端子19の出力に取り出されたIFがテレビジョン受像機のチューナに対して供給される。
【0036】
第3の実施の形態は、図3及び図4を参照して説明したように、レコーダのBS放送又は高度BS放送用チューナに対して適用できる。上述した第3の実施の形態は、第1及び第2の実施の形態と同様に、チューナ15a,15b,15cに供給されるIFを歪の少ないものとできる。さらに、RF信号出力端子19に取り出されるIFも、ダイプレクサ18によって歪が除去されたものとできる。
【0037】
さらに、第3の実施の形態においては、チューナ15a,15b及び15cの既存周波数領域側にマッチング回路27a,27b,27cを設け、チューナ15a,15b及び15cの新規追加周波数領域側にマッチング回路28a,28b,28cを設けている。したがって、チューナの数が削減された場合(例えばチューナ15aのみを残して他のチューナ15b及び15cを削除する場合)や、RF出力端子19に接続される機器が変化する場合や、チューナ15a,15b及び15cの入力部の状態変化によって、インピーダンスが変化した場合にも、これらのマッチング回路によってインピーダンス整合をとることができるので、接続されている他端子又は他の回路に影響が出ないようにできる。
【0038】
<5.本技術の第4の実施の形態>
図6を参照して本技術の第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態は、第3の実施の形態と同様に、レコーダ又はSTBに適用されるものであり、さらに、3個のチューナ115a,115b,115cを備える。これらのチューナ115a,115b,115cは、入力が既存周波数領域側入力と新規追加周波数領域側入力に分かれていないものである。
【0039】
RF信号入力端子11からのIFがダイプレクサ12に供給され、既存周波数領域の第1の信号と新規追加周波数領域の第2の信号に分離され、既存周波数領域の第1の信号がLNA13に供給され、新規追加周波数領域の第2の信号がLNA14に供給される。LNA13の出力及びLNA14の出力がダイプレクサ118に供給される。ダイプレクサ118は、LNA13の出力の既存周波数領域の第5の信号を周波数分離し、また、LNA14の出力の新規追加周波数領域の第6の信号を周波数分離し、さらに、これらの分離した第5及び第6の信号を周波数多重化して分配器121に対して出力する。したがって、ダイプレクサ118から出力される信号は、2次歪等の帯域外の歪が除去されたものとなる。
【0040】
分配器121の出力が分配器122及び123に供給される。分配器122により分岐された二つの出力の一方がマッチング回路127aに供給され、その他方がマッチング回路129に供給される。マッチング回路129に対してRF信号出力端子19が接続されている。RF信号出力端子19は、例えばF型コネクタレセプタクルである。RF信号出力端子19の出力に取り出されたIFがテレビジョン受像機のチューナに対して供給される。マッチング回路127aの出力がチューナ115aのIF入力端子に供給される。
【0041】
分配器123により分岐された二つの出力の一方がマッチング回路127bに供給され、その他方がマッチング回路127cに供給される。マッチング回路127bの出力がチューナ115bのIF入力端子に供給され、マッチング回路127cの出力がチューナ115cのIF入力端子に供給される。
【0042】
第4の実施の形態は、図3及び図4を参照して説明したように、レコーダのBS放送用チューナ装置又は高度BS放送用チューナ装置に対して適用できる。上述した第4の実施の形態は、第1、第2及び第3の実施の形態と同様に、チューナ115a,115b,115cに供給されるIFを歪の少ないものとできる。さらに、RF信号出力端子19に取り出されるIFも、ダイプレクサ118によって歪が除去されたものとできる。
【0043】
さらに、第3の実施の形態と同様に、チューナ115a,115b及び115cの入力側にマッチング回路127a、127b及び127cを設けている。したがって、チューナの数が削減された場合や、RF出力端子19に接続される機器が変化する場合や、チューナ115a,115b及び115cの入力部の状態変化によって、インピーダンスが変化した場合にも、これらのマッチング回路によって、インピーダンス整合をとることができ、接続されている他端子又は他の回路に影響が出ないようにできる。
【0044】
上述した第4の実施の形態は、第1、第2及び第3の実施の形態と同様に、チューナ115a,115b,115cに供給されるIFを歪の少ないものとできる。さらに、RF信号出力端子19に取り出されるIFも、ダイプレクサ118によって歪が除去されたものとできる。
【0045】
<6.チューナの構成例>
上述した本技術の第2、第3及び第4の実施の形態は、ケースに対してチューナの回路部が実装されている回路基板及びコネクタを取り付け、さらに、チューナケースを蓋で覆う構成とされる。図7及び図8を参照して、シールド対策を考慮したチューナ装置の実装例について説明する。図7は、回路基板及び蓋を取り外した状態の斜視図である。図8は、回路基板及びブラケットを分離した状態の斜視図である。なお、以下の説明では、チューナケース内にBS放送及び地上デジタル放送の両方を受信することができるチューナが収納される。
【0046】
チューナケース61の主面62aに対して、シールド用のブラケット71a及び71bが取り付けられている。チューナケース61は、矩形の主面62と、主面62の4辺に沿って設けられた周面部材(上面板63a、底面板63b、側面板63c及び63d)を有する。チューナケース61は、シールドケースとして機能する金属製の箱状ケースである。例えばチューナケース61の主面62の高さ方向の幅(上面板63a及び底面板63b間の距離)が図3に示すレコーダ30の背面パネルよりやや小さいものとされており、レコーダ30に取り付けた時に、レコーダのケース内でチューナ装置の上側又は下側に無駄なスペースが発生しないようになされる。なお、チューナケース61は、90度回転させてレコーダ等の機器に対して取り付けるようにしてもよい。その場合は、上下と左右の関係が入れ替わったものとなる。
【0047】
チューナケース61の主面62の四隅の近傍にそれぞれ設けられた取り付け用の穴を使用して4個の同軸コネクタ例えばF型コネクタレセプタクルが取り付けられる。すなわち、上述した説明と対応させると、RF信号入力端子11及びRF信号出力端子19(BS/CS放送用)と、RF信号入力端子31(図7及び図8には表れていない)及びRF信号出力端子32(地上デジタル放送用)が主面に取り付けられる。コネクタの取り付け方法としては、カシメ等が使用できる。これらのコネクタの外部導体は、鉄、真鍮、亜鉛等の金属からなり、チューナケース61と機械的及び電気的に接続される。
【0048】
各コネクタに接続された同軸ケーブルの芯線(中心導体)と接続された接続片64、65、66、67がチューナケース61内に突出している。これらの接続片64、65、66、67は、回路基板(図示しない)上の信号給電部に対してそれぞれ接続される。さらに、底面板63bには、外部回路との間でデータ、信号等を送受するためのインターフェース用の接続ピン68が多数植立されている。接続ピン68は、チューナ装置が組み込まれる機器例えばレコーダの回路基板に対して取り付けられる。
【0049】
ブラケット71a及び71bは、例えばシールド効果を有する金属板を折り曲げ加工したもので、互いに同一の形状を有する。チューナケース61と別部品のブラケット71a及び71bをシールド用に設けるのは、若し、チューナケース61をシールド用の形状に加工すると、チューナケース61に隙間が発生し、チューナケース61のシールド効果が損なわれることを回避するためである。ブラケット71a及び71bは、連結部72a及び72bと、連結部72a及び72bのそれぞれの両端にそれぞれ形成されたシールド部73a、73b,74a及び74bと、連結部72a及び72bのそれぞれの中央位置付近からほぼ垂直に立ち上げられた支持壁75a及び75bを有する。シールド部73a、73b,74a及び74bは、一方の端面同士が接合された第1及び第2の板状部材を有し、第1及び第2の板状部材の他方の端面をチューナケースのコーナー近傍の周面部材の内面にそれぞれ接合する。
【0050】
シールド部73aは、チューナケース61の上面板63aとほぼ平行に設けられた壁76a及び側面板63cとほぼ平行に設けられた壁76aにより構成される。このシールド部73aが上面板63a及び側面板63cの端面同士が接合されるコーナー付近を取り囲むように配置される。したがって、接続片64の周囲がシールド部73aによって取り囲まれる。さらに、回路基板及びケースの上蓋がコーナー付近を覆うので、接続片64などから放射される電磁波をシールドすることができる。また、底面板63b及び側面板63cの端面同士が接合されるコーナー付近(接続片65が含まれる)がブラケット72bのシールド部74bによって取り囲まれる。したがって、接続片65などから放射される電磁波をシールドすることができる。
【0051】
さらに、上面板63a及び側面板63dの端面同士が接合されるコーナー付近(接続片66が含まれる)がブラケット72aのシールド部74aによって取り囲まれる。したがって、接続片66などから放射される電磁波をシールドすることができる。さらに、底面板63b及び側面板63dの端面同士が接合されるコーナー付近(接続片67が含まれる)がブラケット72bのシールド部73bによって取り囲まれる。したがって、接続片67などから放射される電磁波をシールドすることができる。
【0052】
なお、支持壁75a及び75bの先端が回路基板(図示しない)のグランド端子と接続される。これによって、回路基板を強固に支持すると共に、ブラケット71a及び71bの接地を確実とすることができる。なお、シールド対策が必要とされる箇所は、高度BS放送のIFが入力されるRF入力端子11と接続された接続片64の領域、並びに高度BS放送のIFが出力されるRF出力端子19と接続された接続片65の領域である。地上デジタル放送用のIFが入力/出力される接続片66及び67の領域をシールドする必要性が低い。しかしながら、高度BS放送用のコネクタを接続する位置を固定すると、チューナケースを回転させた場合や、メーカーによって異なる仕様に対応する場合などで、不都合が生じる。したがって、全てのコネクタの位置に対してシールド対策を施すことによって汎用性を向上させている。
【0053】
なお、シールド用のブラケット71a及び71bの形状は、一例であって、他の形状が種々可能である。例えば4個のコーナーを別々に取り囲むように、4個に分離されたブラケットを使用してもよい。
【0054】
本技術の図7及び図8に示す構成のシールド効果について図9及び図10を参照して説明する。一例として、中心周波数が2.427GHzで周波数範囲が約30MHzの新規追加周波数領域のIF信号をRF入力端子11に供給し、RF出力端子19からこのIF信号を出力する場合に、地上デジタル放送用のRF出力端子32において上述の周波数の妨害波のレベルを測定する。図9は、シールド対策を行っていない従来のチューナ装置に関する妨害波の通過特性を示し、図10は、本技術によりシールド対策がなされたチューナ装置の妨害波の通過特性を示す。これらの測定結果から本技術によれば、25dB程度の特性改善が見込まれ、遮蔽性を高めることができることが分かる。
【0055】
さらに、シールド効果を高める構成について説明する。図7及び図8における接続ピン68は、アンテナとして妨害波の輻射に寄与する。この接続ピン68の影響を抑えるために、高度BS放送の周波数帯域に効果があり、且つ各信号ラインや電源ラインへの影響の少ない容量の小さいコンデンサをパスコンとして接続ピン68に挿入する。この対策により、さらなる妨害波耐性改善を実現できる。図11は、パスコンを接続した後の妨害波の通過特性を表している。図11から分かるように、この対策を実施した結果、図9に示す従来の特性より33dB程度の改善効果が確認できた。
【0056】
図7及び図8に示す構成において、接続ピン68に対してパスコンを設けるスペースがない場合には、接続ピン68との距離が離れている二つの領域のコネクタをBS放送用のRF信号の入力端子11及び出力端子19に設定することが好ましい。すなわち、上面板63a及び側面板63cの端面同士が接合されるコーナー付近(接続片64が含まれる)と、上面板63a及び側面板63dの端面同士が接合されるコーナー付近(接続片66が含まれる)に取り付けられる二つのコネクタがBS放送用のRF信号入力端子及び出力端子として使用する。
【0057】
この接続ピン68と離れた位置のコネクタを使用した場合の妨害波の通過特性を図12に示す。入力端子11を衛星入出力端子に設定することにより、ピン端子13の影響を軽減することが可能となる。図12は接続片64の妨害波の通過特性を示しており、図12から分かるように、図9に示す従来の特性より28dB程度の改善効果が確認できた。
【0058】
上述した本技術の第1乃至第4の実施の形態、並びにチューナの構成によって、高度BS放送(4K/8K放送)に対応した新規追加周波数領域(2.1GHz~3.2GHz)まで拡張された信号環境に対しても、信号強度差による受信性能の劣化を最大限防ぐことができ、受信性能の優れたモジュールを作成することが可能となる。また、新規追加周波数領域のIFによって発生する種々の妨害波からの干渉や輻射に関しても、遮蔽効果の優れたチューナ装置を構成することができる。
さらに、チューナケースのコーナーにそれぞれコネクタを設け、各コネクタに対してシールド対策を行うことによって、高度BS放送の新規追加周波数領域のIFを扱うコネクタを自由に設定することができ、汎用性が優れた構成とできる。
【0059】
<7.変形例>
以上、本技術の実施の形態について具体的に説明したが、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。また、上述の実施の形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
11・・・RF信号入力端子、12,18・・・ダイプレクサ、13,14・・・LNA、15,15a,15b,15c,115a,115b,115c・・・チューナ、
19・・・RF信号出力端子、27a,27b,27c・・・マッチング回路、
28a,28b,28c・・・マッチング回路、29a,29b・・・マッチング回路、30・・・レコーダ、31・・・RF信号入力端子、32・・・RF信号出力端子、
40・・・テレビジョン受像機、61・・・チューナケース、
64,65,66,67・・・接続片、68・・・接続ピン、
71a,71b・・・ブラケット、73a,73b・・・シールド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14