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特許7173475気相過渡種の制御された形成による薄膜堆積のプロセス
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  • 特許-気相過渡種の制御された形成による薄膜堆積のプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】気相過渡種の制御された形成による薄膜堆積のプロセス
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/24 20060101AFI20221109BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20221109BHJP
   C23C 16/452 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C23C16/24
H01L21/285 C
H01L21/205
C23C16/452
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021502975
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019036515
(87)【国際公開番号】W WO2020027921
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/718,424
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/713,829
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508129090
【氏名又は名称】ジェレスト, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】カロエロス, アラン イー.
(72)【発明者】
【氏名】アークルズ, バリー, シー.
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-054825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0020389(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0114453(US,A1)
【文献】P. Raghunath et al,Ab Initio Chemical Kinetics for SiH2 + Si2H6 and SiH3 + Si2H5 Reactions and the Related Unimolecular Decomposition of Si3H8 under a-Si/H CVD Conditions,Journal of Physical Chemistry,2013年,117(42),P. 10811-10823
【文献】I. Brunets et al,Low-temperature LPCVD of Si nanocrystals from disilane and trisilane (Silcore(R)) embedded in ALD-alumina for non-volatile memory devices,Surface & Coatings Technoligy,NL,ELSEVIER,2007年03月30日,201,9209-9214
【文献】Ana R. Ivanova et al,The Effects of Processing Parameters in the Chemical Vapor Deposition of Cobalt from Cobalt Tricarbonyl Nitrosyl,Journal of The Electrochemical Society,米国,The Electrochemical Society,1999年,146,2139-2145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H01L 21/205
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンリッチ薄膜を基板表面に堆積させるための方法であって、
前記薄膜を構成する1種又は複数の元素を含有する原料前駆体を用意するステップと、
前記原料前駆体から1個以上のケイ素原子を含む過渡種を生成するステップであり、前記過渡種が、前記基板表面から独立して生成され、且つ室温以上の凝縮相において限られた寿命を有する反応性中間体である、ステップと、
続いて、薄膜を前記過渡種から前記基板に堆積させるステップであり、
前記膜は、基板表面とのいかなる化学的相互作用からも独立して形成され、
前記薄膜がシリコンリッチ膜である場合、前記膜を堆積するために使用される前記過渡種が、1個以上のケイ素原子を含む、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
記原料前駆体が、2~8個のケイ素原子を含有するペルヒドリドシランであり、
前記過渡種が、シリレン種である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペルヒドリドシランが、イソテトラシランであり、前記シリレン種が、ビス(トリヒドリドシリル)シリレンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シリコンリッチ膜積が、堆積チャンバーで行われ、前記堆積チャンバー内の基板堆積温度が、約250℃~約600℃で維持される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコンリッチ膜を堆積させるための前記基板温度が、約375℃~約500℃で維持される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シリレン種が、前記堆積チャンバーで直接、インサイチュで、気相又は前記基板の前記表面に、前記基板表面との相互作用から独立して、生成されるように、第1の加工ステップにおいて、前記ペルヒドリドシランが前記堆積チャンバーに供給される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記シリレン種を生成するために、前記堆積チャンバーが、約250℃~約350℃の温度で維持される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ペルヒドリドシランが、合成チャンバーに供給され、
前記シリコンリッチ膜積が、堆積チャンバーで行われ、前記合成チャンバーが、前記堆積チャンバーから離れており、且つ制御された条件下で前記堆積チャンバーに接続されており、
前記シリレン種が、前記合成チャンバーで前記ペルヒドリドシランから生成され、続いて消費及び前記シリコンリッチ膜の形成のために前記堆積チャンバーに移送される、
請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記シリコンリッチ膜が、エピタキシャル膜である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記シリコンリッチ膜が、アモルファス膜である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記薄膜前記基板表面への積が、化学蒸着、原子層堆積、分子層堆積、及び自己組織化単分子層堆積からなる群から選択される方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
コバルトリッチ薄膜を基板表面に堆積させるための方法であって、
コバルトトリカルボニルニトロシルを含有する原料前駆体を用意するステップと、
前記原料前駆体からCo(CO) NO*過渡種を生成するステップであり、前記過渡種が、前記基板表面から独立して生成され、且つ室温以上の凝縮相において限られた寿命を有する反応性中間体である、ステップと、
続いて、薄膜を前記過渡種から前記基板に堆積させるステップであり、
前記膜は、基板表面とのいかなる化学的相互作用からも独立して形成される、ステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記コバルトリッチ膜積が、堆積チャンバーで行われ、前記堆積チャンバー内の基板堆積温度が、約100℃~約500℃で維持される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コバルトリッチ膜を堆積させるための前記基板温度が、約250℃~約400℃で維持される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記Co(CO)NO*が、前記堆積チャンバーに直接、インサイチュで、気相又は前記基板の前記表面に、前記基板表面との相互作用から独立して、生成されるように、第1の加工ステップにおいて、前記コバルトトリカルボニルニトロシルが前記堆積チャンバーに供給される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記Co(CO)NO*を生成するために、前記堆積チャンバーが、約150℃~約250℃の温度で維持される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コバルトトリカルボニルニトロシルが、合成チャンバーに供給され、
前記コバルトリッチ膜積が、堆積チャンバーで行われ、前記合成チャンバーが、前記堆積チャンバーから離れており、且つ制御された条件下で前記堆積チャンバーに接続されており、
前記Co(CO)NO*が、前記合成チャンバーで前記コバルトトリカルボニルニトロシルから生成され、続いて消費及び前記コバルトリッチ膜の形成のために前記堆積チャンバーに移送される、
請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記コバルトリッチ膜が、エピタキシャル膜である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記コバルトリッチ膜が、アモルファス膜である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記過渡種が、2~8個のケイ素原子を含有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の名称]
[0001]気相過渡種の制御された形成による薄膜堆積のプロセス
【0002】
[関連出願の相互参照]
[0002]本出願は、2018年8月2日に出願された米国特許仮出願第62/713,829号、及び2018年8月14日に出願された米国特許仮出願第62/718,424号に対する優先権を主張し、これらの開示は、その全体が本明細書において参照により組み込まれる。
【0003】
[発明の背景]
[0003]本発明は、気相及び/又は表面の中間体の制御された形成によって、厳密な組成、モルフォロジー、構造、及び厚みを有する薄膜を基板上に形成することを可能にする、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、並びに分子層堆積(MLD)及び自己組織化単分子層(SAM)堆積等の他の気相堆積法を含む、薄膜堆積の方法に関する。
【0004】
[0004]より小さく高密度でより機能的な、半導体及びヘテロデバイス構造への高まり続ける推進力は、そのような構造を成長させるために必要な様々な加工ステップに関与するサーマルバジェットの大幅な低減を必要としている。そのような構造の、様々な薄膜のビルディングブロックの厚みが常に減少するという熱的に脆弱な性質だけでなく、半導体アーキテクチャー、多元素化合物、及び高度にドープされた材料における、熱的に脆弱で、その完全性が失われ、その特性及び性能が変化し、並びに/又は周囲のサブ構造と不必要に反応するおそれがある新しい元素の使用も考慮すると、この低減は要求されている。その上、プラスチック又はポリマー基板等の、より可撓性の、典型的には炭素ベースの基板の導入により、加工温度はさらに損なわれる。
【0005】
[0005]1つのそのような重要な用途において、エピタキシャルシリコン(e-Si)の化学蒸着(CVD)は、Siマトリックスに埋め込まれるゲルマニウム(Ge)の濃度を増大することによって金属酸化物半導体電界効果トランジスターにおける性能向上を達成する際に、不可欠なビルディングブロックとなっている。埋め込まれたSiGe(e-SiGe)系において歪みをさらに増強することは、縮尺されていないゲート長によって引き起こされるデバイス領域の不均衡な低減に起因するフィーチャサイズの減少に伴って、依然として必要とされる。この増強には、シリコン薄膜の堆積の構造的欠陥を排除するために、CVD e-SiGe加工温度を600℃未満に低下させ、且つトリシラン等の、より高次のペルヒドリドシラン(perhydridosilane)を用いることが必要となる。しかしながら、トリシランは、シラン及びジシランと比較してはるかに高い反応性及びより低い解離エネルギーのために、気相粒子を生成することが観察された。たとえば、この問題は、堆積プロセス中の反応帯域におけるトリシランの蒸気分圧の低下を必要とし、このことも成長速度の望ましくない低減をもたらした。n-テトラシランの堆積により、向上した成長速度で良好な膜質が得られることが見出されたが、堆積ウインドウの下限は650℃であった。
【0006】
[0006]さらに別のこのような重要な用途において、コバルト(Co)の薄膜及び超薄膜の構造のCVD又はALDには、様々な産業分野にわたる数多くの新たな用途が見出された。特に、金属コバルト膜は、エレクトロマイグレーションへの耐性がより強く、拡散する傾向がより低く、それにより、高温及び高電流密度誘導の応力の両方を含む環境において、銅(Cu)と比べて比較的高い安定性が得られるため、金属コバルト膜は、集積回路(IC)デバイスの信頼性において重要な役割を果たす。これらの特性は、従来のアーキテクチャーと、スピントロニクス及び巨大磁気抵抗(GMR)デバイス等のコバルトの磁気双極子モーメントに関連する新規のシステムとの両方のICシステムでの豊富な用途に関して、検討すべき点を有する。ICデバイス製作では、ナノスケール金属化アーキテクチャーにおけるコバルトの使用が採用されてきた。
【0007】
[0007]IC技術に対するさらなる利点は、Co薄膜が、電気めっきコバルトのためのシード層としての役割を果たし、ケイ化コバルト、硫化コバルト、酸化コバルト、及び金属合金等の、2元化合物への堆積後の化成(post-deposition conversion)ができることである。たとえば、ケイ化コバルト(CoSi)化成被膜は、より広いケイ素化ウインドウに起因して、自己整合シリサイド(サリサイド)用途におけるケイ化チタンの実用的な代替として現れてきており、このことは、より微細な線形状を生成する要件と一致している。これらの商用利用は、Co膜成長プロセス及び得られる特性を、最適化し理解することだけでなく、将来のIC製品においてそれらの使用を拡大することにおいても、多大な関心を生んでいる。金属コバルト及びコバルト含有膜(酸化物、硫化物、ケイ化物、及び窒化物等)の他の使用としては、磁気光学記録媒体、データ記憶、センサー技術、カーボンナノチューブ及び自己整合ナノワイヤーを成長させるための触媒、光学デバイス用の反射性薄膜、並びにより広くは、抗菌性、装飾的、保護用、耐摩耗性被膜としての使用が挙げられる。
【0008】
[0008]他の重要な用途としては、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、並びに、適用可能な場合、それらの窒化物、ケイ化物、酸化物、及び炭化物等の金属及び半導体のCVD及びALD、並びに誘電体膜、有機膜、及び絶縁膜のCVD、ALD、MLD、及びSAMによる堆積が挙げられる。
【0009】
[0009]したがって、厳密な膜組成、モルフォロジー、構造、及び厚みを達成するために、気相過渡種の制御された形成による薄膜の堆積のための低温プロセスを提供すれば、非常に望ましい。
【0010】
[発明の簡単な概要]
[0010]本発明によれば、様々な先進的用途のための、高品質な金属、半導体、誘電体、拡散バリア、接着及び湿潤の各層、並びに絶縁膜は、特定の所望の組成、モルフォロジー、表面組織、及び構造を有する薄膜及び層状構造の成長を可能にするように設計された気相過渡種の意図的で制御された形成により、CVD、ALD、MLD、又はSAMによる堆積によって、堆積又は成長させ得る。
【0011】
[0011]典型的な1元(単一の元素)、2元(2つの元素)、又は3元(3つの元素)の薄膜成長のCVD、ALD、MLD、又はSAMによる堆積において、1種又は複数の前駆体、及び1種又は複数の反応性又は不活性ガスを含むいくつかの反応体は、反応してターゲット材料を生じる。これに関して、前駆体は、最終の薄膜製品において、望まれる元素のうちの1種又は複数を担持し、且つ化学反応に関与して基板表面に最終ターゲット材料を生成する、化合物又は複合体と定義される。
【0012】
[0012]しかしながら、本発明によれば、過渡種が前駆体から気相で形成され、次に過渡種は、比較的低い温度で基板と反応して膜を堆積するように導かれる。基板上のこれらの過渡種の形成及び堆積は、親前駆体の移送、堆積、又は分解とは異なる別個の条件下で起こる。過渡種のこの異なる別個の生成は、熱的又はエネルギー的により低い基板環境における膜の堆積を可能にし、より低い温度での膜の堆積を可能にし、堆積膜のより高い等角性を確実にし、熱的又は化学的に脆弱な基板上での膜堆積を可能にする。過渡種は、堆積チャンバーでインサイチュで(図2)、又は堆積チャンバーとは異なるがそれに接続された合成チャンバーでエクスサイチュで(図1)、形成され得る。
【0013】
[0013]本発明に関して、「過渡」又は「一時的種」という用語は、室温以上で、凝縮相において限られた寿命を有し、且つ不活性ガス流中又は反応に関与しないガス中で、比較的安定であるか又は反応性の低い副生成物を前駆体から排除又は喪失させることによって、気相において形成される、反応性中間体を意味することが意図される。過渡種はまた、初めに形成された過渡種を、別の適切なガスと反応させることによって形成され得る。過渡種又は一時的種の自己反応は、真空、不活性ガス、又は安定剤として作用するガスの利用によって、気相における過渡種又は一時的種の濃度又はそれらの分圧を制御することによって阻止される。本発明は、過渡種の形成が良好に制御されること、及び堆積へ干渉する又は過渡種と共堆積するおそれのある他の種の生成が最小限であることを必要とする。暗黙的には、これは、過渡種を生成するために必要とされるエネルギー的条件が比較的穏やかであり、温度の上限が実用的に650℃を超えない範囲であり、電子イオン化衝突エネルギーが20eVを超えない範囲であることを必要とする。
【0014】
[0014]本発明によれば、望ましくない気相反応又は気相枯渇現象を排除し、効率的且つ制御可能な分解プロセスを確実にして、特定の所望の組成、モルフォロジー、表面組織、及び構造を有する薄膜及び層状構造の成長を可能にするために、意図的に、制御可能に、且つ目的を持って、元の前駆体構造からこれらの過渡種を作製し、これらの過渡種の反応を工学的に設計することが可能である。
【0015】
[0015]また、本発明によれば、過渡種は基板表面が過渡種の形成を駆動しないように、工学的に設計される。その代わりに、過渡種は、親前駆体よりも基板と反応性であるように工学的に設計される。これは、前駆体の堆積膜への変換が、基板温度を上昇させて、化学的相互作用させることによって駆動される、従来の熱的に駆動される薄膜堆積とは対照的である。同様に、基板に直接又は基板に近接近のいずれかの、基板のプラズマ活性化は、本発明と対照的であり、その理由は、脆弱な基板が、エネルギーの高いプラズマ環境によって変性されるか、又は損傷されるからである。
【0016】
[0016]一実施形態において、過渡種は、別個の合成チャンバー又は容器中で出発前駆体から形成され得、次いでこれらの中間体は、消費及び膜形成のために、CVD、ALD、MLD、又はSAM薄膜加工チャンバーに導入される。
【0017】
[0017]別の実施形態において、過渡種は、CVD、ALD、MLD、又はSAM薄膜堆積チャンバー中で直接に生成される。
【0018】
[0018]本発明は、安定した副生成物が存在しない熱的、プラズマ、又はイオン化条件下で形成される、同等のラジカル、分子イオン又はラジカルを形成する、ダイマーのホモリティックな「亀裂」を含まない。基本的には、ダイマーのホモリティックな亀裂は、出発ダイマー及びポリマーと平衡状態にあるのに対し、本発明において利用される前駆体は過渡種をもたらし、ここでは本来的に、堆積の熱力学が、初めの前駆体を形成するための組換えよりも好都合である。例示的な説明として、方法は、たとえば、ジ-パラ-キシリレンを非常に高温(>680℃)の第1の反応チャンバー(外部炉)で熱分解してパラ-キシリレン等のモノマーを生成し、次いで、モノマーは、第2の(堆積)チャンバーへと放出されて室温にてポリマー膜を堆積させるが、堆積膜中又は堆積膜上にダイマー前駆物質を再形成し得る、ダイマー前駆物質のエクスサイチュ熱分解の概念とは全く異なる。モノマーを形成するための熱分解反応は、所望の被膜の堆積に関連する化学反応に干渉するため、堆積チャンバーで、インサイチュで行うことはできない。
【0019】
[0019]一実施形態において、n型及びp型ドーピングが可能な高品質のエピタキシャルシリコン、並びに引張及び圧縮歪みエピタキシャルSi(e-Si)は、過渡種ビス(トリヒドリドシリル)シリレンの利用によって調製される。膜は、比較的低温で、すなわち250℃~650℃の温度で堆積され得る。たとえば、ビス(トリヒドリドシリル)シリレンは、熱分解又はプラズマ支援条件によって、堆積チャンバーから隔てられて、又は堆積チャンバー内で、親前駆体イソテトラシランから生成され得る。プロセスは、比較的低温又は低エネルギーの環境に関連する利点を有し、気相でのシリコンナノ粒子の形成がないことも示す。基板温度及び過渡種濃度等の加工条件に応じて、水素化又は非水素化アモルファスシリコンも形成され得る。アルキルシリレンも、アルキルトリヒドリドシランからの熱的に駆動される水素脱離水素によって、SAMの形成のための過渡種として生成され得る。
【0020】
[0020]別の実施形態において、純粋なCo膜は、過渡種Co(CO)NO*から成長され、ここで、「*」という表記は、満たされていない配位圏を表す。膜は、比較的低温で、すなわち250℃~500℃の温度で堆積され得る。たとえば、Co(CO)NO*は、熱分解又はプラズマ支援条件によって、堆積チャンバーから隔てられて、又は堆積チャンバー内で、親前駆体コバルトトリカルボニルニトロシルCo(CO)NOから生成され得る。水素の存在下、過渡種は、HCo(CO)NOであり得る。同様に、HCo(CO)*は、好ましい過渡種であってもよい。プロセスは、比較的低温又は低エネルギーの環境両方に関連する利点を有し、また、気相での粒子形成を排除する。
【0021】
[0021]さらに別の例において、過渡種Co(CO)*は、一酸化炭素キャリアガス中の約220~250nmの波長でのコバルトトリカルボニルニトロシルの光分解によって生成される。これらの過渡種は、二コバルトオクタカルボニル、二コバルトヘキサカルボニルt-ブチルアセチレン、及びKaloyerosら、ECS Journal of Solid State Science and Technology、8(2)P119~P152(2019)で考察されている他のコバルトカルボニル化合物等の、他のコバルトカルボニル化合物からも同様の方法で生成され得る。
【0022】
[0022]本発明の別の実施形態において、シリコン窒化膜は、過渡種を生成し、次いで過渡種を、次に過渡種が反応して堆積膜を形成し得る前駆体と組み合わせて堆積チャンバーに導入することによって、形成される。たとえば、アジ化水素は、過渡種、ナイトレン、(HN:)、を形成するように意図的に且つ制御可能に350℃超の温度に導かれ得るため、前駆体として選択され、ナイトレンは、次いで150℃~300℃の基板温度で、窒化シリコンを堆積させるトリシランと組み合わせて堆積チャンバーに導入される。アジ化水素のトリシランとの直接反応による、350℃超の温度での窒化シリコンの堆積が、2ステップではなく1ステップに単純化されて生じ得る一方で、反応が単一ステップとして許容されるためには、基板は、熱的に損傷されることなく350℃超の温度を耐えなければならない。ナイトレンの独立した形成により、熱的に誘導される、基板への損傷の可能性が低減される。同様に、ジアゾメタンは、窒素の脱離によってカルベンを形成するように意図的に且つ制御可能に導かれ、炭化シリコン膜を形成するために利用されることが予想され得る。
【0023】
[0023]前述の概要、及び以下の本発明の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとより良好に理解されるであろう。本発明を例示する目的で、本発明において好ましい実施形態が、図面に示される。しかしながら、本発明は、示される正確な配置及び手段に限定されないことが理解されるべきである。図面において:
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】[0024]図1は、過渡種のエクスサイチュ形成のための装置の概略図であり、過渡種は次いで薄膜加工チャンバーに移送され、ここで過渡種は反応して基板上に薄膜を形成する。
図2】[0025]図2は、薄膜堆積チャンバー中の、過渡種のインサイチュ形成のための装置の概略図であり、過渡種は次いで反応して基板上に薄膜を形成する。
図3】[0026]図3は、過渡種のエクスサイチュ及びインサイチュ合成のためのモジュールが装備された製造用クラスターツール(manufacturing cluster tool)の概略図であり、過渡種は次いで薄膜加工チャンバー中で反応させる。
【0025】
[発明の詳細な説明]
[0027]本発明は、CVD、ALD、MLD、又はSAMによる堆積によって様々な基板上に形成される高品質薄膜、及びそのような膜を堆積させるための方法に関する。本発明の方法は、アモルファス若しくは多結晶の薄膜、又はエピタキシャル膜のような膜を基板上に堆積させてもよい。
【0026】
[0028]一実施形態において、本発明は、親シラン前駆体から生成される過渡種から形成される、シリコンリッチ又はシリコンベースの膜に関し、そのような膜の、様々な基板でのCVD又はALDのための関連方法にさらに関する。本明細書では、「シリコンリッチ膜」は、エピタキシャル又はアモルファスシリコン、並びにゲルマニウム及び炭素とのシリコン合金、並びにドープされたシリコン薄膜を指す。たとえば、シリコン薄膜は、導電性等のシリコンの特性を改変させる少量のヒ素、リン、及びホウ素をドープされていてもよい。
【0027】
[0029]別の実施形態において、本発明は、親コバルト前駆体から生成される過渡種から形成される、コバルトリッチ又はコバルトベースの膜に関し、そのような膜の、様々な基板でのCVD又はALDのための関連方法にさらに関する。本明細書では、「コバルトリッチ膜」は、エピタキシャル及びアモルファスコバルト、並びにコバルト合金、又は酸化コバルト及び窒化コバルト等の化合物を指す。
【0028】
[0030]そのような高品質膜は、半導体及び太陽電池基板等の基板上で特に有用である。シリコンリッチ若しくはシリコンベースの膜、又はコバルトリッチ若しくはコバルトベースの膜のいずれかの形成のために利用されてもよい基板の例としては、たとえば、銅、タングステン、コバルト、ルテニウム、チタン、及びタンタル等の金属;IC及び太陽電池技術に見られる、窒化物及び炭化物、シリコン、ゲルマニウム及び炭素とのシリコン合金、並びに二酸化シリコン等の、金属化合物及び合金が挙げられる。
【0029】
[0031]本方法において使用され得る基板の種類について、本質的に限定はない。しかしながら、好ましくは、基板は、基板に膜(1つ又は複数)を堆積させるために使用される条件で、熱的且つ化学的に安定である。つまり、基板は、好ましくは、約150℃~約650℃の温度で安定である。基板の熱的安定性は、堆積される膜の種類、及び被覆される基板の意図される使用等の、様々な因子に依存してもよいことが、当業者によって理解されるであろう。
【0030】
[0032]シリコンリッチ又はシリコンベースの膜の形成に関する実施形態において、親前駆体は、好ましくはペルヒドリドシラン、より好ましくは2~8個のケイ素原子を有するペルヒドリドシランである。より好ましくは、過渡種を生成してシリコンリッチ又はシリコンベースの膜を形成するための親ペルヒドリドシラン前駆体は、イソテトラシランである。
【0031】
[0033]親ペルヒドリドシラン前駆体に対する、特定の温度、圧力、及び主要な加工条件(追加の調整された化学的、熱的、プラズマ、又はイオン化エネルギーを与えること等)を含む、制御されたCVD又はALD加工条件下で、親前駆体は、特定の組成、モルフォロジー、及び構造を有するエピタキシャル又はアモルファス膜を成長させるように設計された、特定且つ望ましいシリレン過渡種に変換される。過渡種の形成のために、基板温度は、好ましくは250°~600℃の範囲、より好ましくは375~500℃の範囲である。過渡種の形成のために、反応器の作動圧力は、好ましくは10~150トルの範囲、より好ましくは10~40トルの範囲である。
【0032】
[0034]一実施形態において、親ペルヒドリドシラン前駆体は、好ましくはイソテトラシランであり、イソテトラシランから生成されるシリレン過渡種は、ビス(トリヒドリドシリル)シリレン((HSi)Si)であり、シランが副生成物である。ビス(トリヒドリドシリル)シリレン((HSi)Si)は、様々な方法によってイソテトラシランから生成され得る。特に、ビス(トリヒドリドシリル)シリレン((HSi)Si)は、直接若しくは遠隔のプラズマ支援条件、6eV以上(好ましくは6eV~15eVであるが、70eVもの高さのエネルギーレベルを用いることができる)のエネルギーレベルの電子イオン化、化学イオン化、及び/又は250℃以上の温度での熱分解等の、制御された加工条件下でイソテトラシランから生成され得る。
【0033】
[0035]理論に束縛されることを望むものではないが、ビス(トリヒドリドシリル)シレンの形成の機構は、以下に示すように、イソテトラシランからのシランの、制御された再現可能な還元的脱離であると思われる:
【化1】
【0034】
[0036]イソテトラシラン等の分枝ペルヒドリドシランは、本発明の方法にとって好ましく、その理由は、分枝ペルヒドリドシランが、その線状類似体よりも相対的に大きい割合の、3つの水素に結合されたSi原子を必然的に有するからである。したがって、分枝ペルヒドリドシランは、解離吸着される可能性がより高い。この点において、分枝ペルヒドリドシランの、衝突数当たりの吸着分子の数と定義される付着係数εは、その線状類似体の付着係数εよりも高いことが予想される。
【0035】
[0037]したがって、本発明は、イソテトラシランが、特に、そのより低次のペルヒドリドシラン相当物と比べて、CVD e-Siの優れた候補であることを実証する。イソテトラシランの利点は、(i)膜形成のための過渡種としてのビス(トリヒドリドシリル)シリレンの生成、(ii)望ましくない気相反応の抑制に起因する反応帯域での粒子形成の低減、及び(iii)そのより高い表面付着係数に部分的に起因する分解温度の低下を含む。
【0036】
[0038]代替的には、ビス(トリヒドリドシリル)シリレンは、熱的に駆動される、ジシランのトリシランとの反応によって生成され得る。ビス(トリヒドリドシリル)シリレンの他のホモログは、たとえば、ジシランのn-テトラシランとの反応によって生成され得る。
【0037】
[0039]コバルトリッチ又はコバルトベースの膜の形成のための実施形態において、親コバルト前駆体は、好ましくはCo(0)前駆体、より好ましくは、Co酸化状態がゼロであるCo(0)前駆体である。そのような好ましい一実施形態において、満たされていない配位圏を有する過渡コバルト配位錯体を生成してコバルトベースの膜を形成するためのCo(0)親前駆体は、コバルトトリカルボニルニトロシルである。
【0038】
[0040]Co(0)親前駆体に対する、特定の温度、圧力、及び主要な加工条件(追加の調整された化学的、熱的、プラズマ、又はイオン化エネルギーを与えること等)を含む、制御されたCVD又はALD加工条件下で、親コバルト前駆体は、特定の組成、モルフォロジー、及び構造を有するエピタキシャル又はアモルファス膜を成長させるように設計された、特定且つ望ましいCo(CO)NO*過渡種に変換される。過渡種の形成のために、基板温度は、好ましくは100°~500℃の範囲、より好ましくは250~400℃の範囲である。過渡種の形成のために、反応器の作動圧力は、好ましくは5~50トルの範囲、より好ましくは5~20トルの範囲である。
【0039】
[0041]一実施形態において、Co(0)親前駆体は、好ましくはコバルトトリカルボニルニトロシルであり、コバルトトリカルボニルニトロシル前駆体から生成されるコバルト過渡種は、Co(CO)NO*である。Co(CO)NO*は、コバルトトリカルボニルニトロシルから様々な方法によって生成され、副生成物としてCO又はNOを形成し得る。特に、Co(CO)NO*は、直接若しくは遠隔のプラズマ支援条件、1eV以上(好ましくは2eV~20eV)のエネルギーレベルの電子イオン化、化学イオン化、熱分解、及び/又は光分解等の、制御された加工条件下でコバルトトリカルボニルニトロシルから生成され得る。基板温度は、好ましくは100°~500℃の範囲、より好ましくは250~400℃の範囲である。反応器の作動圧力は、好ましくは5~50トルの範囲、より好ましくは5~20トルの範囲である。
【0040】
[0042]理論に束縛されることを望むものではないが、以下に示すように、好ましい過渡Co(CO)NO*の形成のための機構は、Co(CO)NOのコバルトの配位圏からのCOの喪失であると思われる:
Co(CO)NO----->Co(CO)NO*+CO
Co(CO)*を形成するためのニトロシル基、いわゆるノンイノセント配位子のさらなる喪失は、別の好ましいコバルト過渡種である。
【0041】
[0043]図2を参照すると、一実施形態において、親前駆体、より詳細には親シラン又はコバルト前駆体、さらにより詳細には親ペルヒドリドシラン前駆体又はCo(0)親前駆体は、過渡種を気相又は基板表面のいずれかで、堆積チャンバーで直接生成するために、CVD又はALD薄膜堆積チャンバーに導入される。親前駆体は、たとえば、アルゴン、水素、又は窒素等の、不活性キャリアガスの有無にかかわらず、堆積チャンバーに導入されてもよい。利用される不活性キャリアガスは、形成される膜の種類によって決められてもよい。好ましくは、不活性キャリアガスは、ヘリウム又はアルゴンである。
【0042】
[0044]方法のそのようなインサイチュの実施形態において、堆積チャンバー内での親前駆体の過渡種への変換を可能にするために、堆積チャンバーは初めに、特に過渡種生成に適した所定のパラメーターに設定される。
【0043】
[0045]たとえば、イソテトラシランが親前駆体として利用され、イソテトラシランをシリレン過渡種、すなわちビス(トリヒドリドシリル)シリレンに変換するために熱分解が利用される場合、堆積チャンバーは、好ましくは、約250℃~約350℃の変換温度で、初め作動される。代替的には、コバルトトリカルボニルニトロシルが前駆体として利用され、コバルトトリカルボニルニトロシルをCo(CO)NO中間体(すなわち過渡種)に変換するために熱分解が利用される場合、堆積チャンバーは、好ましくは、約150℃~約250℃の変換温度で、初め作動される。
【0044】
[0046]同時に、基板は、好ましくは、過渡種の熱分解及び過渡種からの膜の形成(すなわち、過渡種の消費)を可能にするように所定の加工パラメーターに設定される(堆積反応器への基板の導入中を含む)。熱堆積プロセスにおいて、基板は、好ましくは約250℃~約650℃、より好ましくは約350℃~約550℃の堆積温度で操作される。熱堆積プロセス中の堆積チャンバー内のシリレン過渡種(たとえば、ビス(トリヒドリドシリル)シリレン)又はコバルト過渡種(たとえば、Co(CO)NO*)の蒸気分圧は、好ましくは40トル未満である。熱堆積プロセス中の、キャリアガス及び他の揮発性成分の加工圧力を含む全システム加工圧力は、好ましくは1トル~最大150トルである。
【0045】
[0047]過渡種の生成後、次いで、堆積チャンバーは任意選択で、すべての副生成物を除去するためにパージしてもよい。
【0046】
[0048]一実施形態において、水素は、個別に、又はアルゴン等の不活性ガスと組み合わせて、共反応体として使用される。
【0047】
[0049]図1を参照すると、別の実施形態において、親前駆体は最初に、別個の合成チャンバー又は容器(すなわち、堆積チャンバーから離れている)に導入され、ここで、過渡種が、親前駆体から制御可能に且つ確実に生成され、次いで、過渡種は、生成され、気相(不活性キャリアガス及び/又は水素等の共反応体の有無にかかわらない)でCVD又はALD堆積チャンバーに移送され、ここで過渡種は、薄膜堆積プロセスにおいて消費される。過渡種は、前駆体分子、並びに上述のような他のキャリアガス及び/又は反応ガスを有する堆積環境にあってもよい。
【0048】
[0050]好ましくは、過渡種合成チャンバーは、真空連結又は弁システムによる等の制御された条件下で、堆積チャンバーに接続されている。より詳細には、過渡種合成チャンバーの流出物又は生成物(すなわち、シリレン又はCo(CO)NO*中間体/過渡種)は、過渡種合成チャンバーから導管又はマニホールドシステムを介して膜堆積チャンバーへ直接移送される。したがって、過渡種合成チャンバー及び堆積チャンバーは、過渡種を空気又は周囲環境に暴露させることなく、互いと物理的に直接接続されている。
【0049】
[0051]いくつかの実施形態において、過渡種合成チャンバーが堆積チャンバーに接続されている制御された環境は、真空、不活性ガス、水素、反応ガス、又はそのようなガスの組合せのうちの1つである。
【0050】
[0052]過渡種合成チャンバーにおいて、シリレン過渡種は、直接若しくは遠隔のプラズマ支援条件、6eV以上(好ましくは6eV~15eV)のエネルギーレベルの電子イオン化、化学イオン化、及び/又は熱分解等の様々な方法で、ペルヒドリドシラン前駆体から生成され得る。イソテトラシランが親前駆体として利用され、イソテトラシランをシリレン過渡種、特にビス(トリヒドリドシリル)シリレンに変換するために熱分解が利用される一実施形態において、過渡種合成チャンバーは、好ましくは、約250℃~約350℃の変換温度で作動される。
【0051】
[0053]同様に、過渡種合成チャンバーにおいて、コバルト過渡種は、直接若しくは遠隔のプラズマ支援条件、1eV以上(好ましくは1eV~20eV)のエネルギーレベルの電子イオン化、化学イオン化、光分解、及び/又は熱分解等の様々な方法で、Co(0)親前駆体から生成され得る。コバルトトリカルボニルニトロシルが親前駆体として利用され、コバルトトリカルボニルニトロシルをCo(CO)NO過渡種に変換するために熱分解が利用される一実施形態において、合成チャンバーは、好ましくは、約150℃~約250℃の変換温度で作動される。
【0052】
[0054]一実施形態において、過渡種合成チャンバーは、選択的吸着床(たとえば活性炭)、分子ふるい、蒸気移送流から副生成物を除去する金属有機構造体、特定のチャンバー設計、又は反応中間体からの副生成物の分離を可能にする特殊なチャンバー流動力学等の、反応副生成物を分離するための機構を含有する。
【0053】
[0055]過渡種が合成チャンバーから転送される堆積チャンバーは、好ましくは約150℃~約650℃、より好ましくは約350℃~約550℃の堆積温度で作動される。熱堆積中の堆積チャンバー内の過渡種(たとえば、ビス(トリヒドリドシリル)シリレン又はCo(CO)NO*)の加工分圧は、好ましくは40トル未満である。キャリアガス及び他の揮発性成分の加工圧力を含む全システム加工圧力は、好ましくは1トル~最大150トルである。
【0054】
[0056]上で説明される実施形態に関して、堆積チャンバーは、好ましくは、適切な圧力を維持するための真空マニホールド及びポンピングシステムが装備されている。堆積チャンバーが、温度制御システム、並びに反応体、及びプロセスから得られる生成物の流れを計測し制御する、ガス又は蒸気を処理する機能を含むことも、好ましい。
【0055】
[0057]上で説明される実施形態のすべてにおいて、堆積プロセスは、典型的に約30秒~約30分、最も好ましくは約5分かかる。しかしながら、時間は、堆積される膜の種類、加工条件、及び所望の膜厚に応じて変動してもよいことが理解されるであろう。
【0056】
[0058]一実施形態において、CVD又はALD加工における特定の低温及び低い反応蒸気圧のパラメーター、並びに上述のような不活性キャリアガス又は水素流における前駆体の低い蒸気分圧下で、親イソテトラシランは、イソテトラシランからのシランの還元的脱離によって、過渡種ビス(トリヒドリドシリル)シリレンに確実に且つ制御可能に変換される。ビス(トリヒドリドシリル)シリレンは、安定で長寿命である能力を有する(すなわち、半減期が移送時間要件と一致する)。さらに、ビス(トリヒドリドシリル)シリレンは、ゲルマニウム又は炭素含有前駆体、ゲルマン、又はトリシラペンタンと組み合わせて堆積される際、リン及びホウ素等のn型及びp型ドーピングが可能な高品質のエピタキシャルシリコン膜、並びに引張及び圧縮歪みエピタキシャルSi(e-Si)を生成するために、基板と解離吸着される2つのトリヒドリドシリル基を保持する。
【0057】
[0059]別の実施形態において、シリレン過渡種は、650℃超の温度で親前駆体n-テトラシランから生成されるペンタヒドリドシリレンである。ペンタヒドリドシリレンは、600℃未満の温度での堆積プロセスのために直接使用され得るが、ペンタヒドリドシリレンはまた、好ましい過渡種であるビス(トリヒドリドシリル)シリレンに再編成するように工学的に設計され得る。
【0058】
[0060]別の実施形態において、350℃超の温度での、ジシランのトリシランとの確実で再現可能な反応によって、ビス(トリヒドリドシリル)シリレンは形成される。理論に束縛されることなく、反応は、ジシランがシリレン(HSi:)、水素、及びシランに分解することによって生じると考えられる。シリレンは、イソテトラシランを形成するトリシランに挿入し、次にビス(トリヒドリドシリル)シリレン及びシランを形成する。
【0059】
[0061]一実施形態において、CVD又はALD加工における低温及び低い反応蒸気圧、並びに上述のような不活性キャリアガス又は水素流における前駆体の低い蒸気分圧下で、親コバルトトリカルボニルニトロシル分子は、コバルトトリカルボニルニトロシルからのCOの脱離によって、過渡種Co(CO)NO*に確実に且つ制御可能に変換される。Co(CO)NO*過渡種は、安定で長寿命である能力を有する(すなわち、半減期が移送時間要件と一致する)。さらに、Co(CO)NO*は、高品質コバルト膜を生成するために、基板と解離吸着されるCO基及びNO基を保持する。
【0060】
[0062]過渡種の上述の例は、例示的なものであり、限定することを意図するものではない。当業者には、他の過渡種が、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、並びに、それらの窒化物、酸化物、及び炭化物、並びに誘電体膜、有機膜、ポリマー膜、及び絶縁膜のための薄膜堆積の用途においても、形成され使用されてもよいことが認識される。
【0061】
[0063]一実施形態において、図3に示すように、本発明のプロセスは、過渡種のエクスサイチュ及びインサイチュ合成のためのモジュールが装備された製造クラスターツールを利用してもよく、過渡種は次いで薄膜加工チャンバー中で反応させる。
【0062】
[0064]ここから以下の非限定的な実施例の観点から、本発明を説明する。
【0063】
[0065]実施例
[0066]実施例1:過渡種ビス(トリヒドロシリル)シリレンを、イソテトラシランからのシランの還元的脱離によって、インサイチュで生成した。これらの実験の結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
[0067]データは、加工パラメーターが厳密に制御されていない場合、たとえば、基板温度及び/又は親前駆体の分圧が高すぎる場合、親前駆体は、自己反応するか、又は他のシリレン若しくは揮発性種いずれかと反応し、所望の過渡種を形成する代わりに、気相粒子形成を引き起こすことを示す。
【0066】
[0068]実施例2:様々な実験を、本方法に従ってCo(CO)NO*を利用して実施した。Co(CO)NO*を、コバルトトリカルボニルニトロシルからのCOの脱離によってインサイチュで生成した。これらの実験の結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
[0069]データは、温度に伴い汚染物質が低減し、純粋なCoは350℃超で形成することを示す。意義深いことに、温度が低すぎる場合、親前駆体は、所望の中間体を形成することなく部分的に分解され、膜汚染を引き起こす。
【0069】
[0070]上述の実施形態に対し、その広い発明概念から逸脱することなく、変更が行われ得ることは、当業者に認識されるであろう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内での修正を包含することを意図することが理解される。
図1
図2
図3