(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】端子、端子を備えたパワーモジュール用射出成形体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20221109BHJP
H01R 12/58 20110101ALI20221109BHJP
【FI】
B29C45/14
H01R12/58
(21)【出願番号】P 2021134771
(22)【出願日】2021-08-20
(62)【分割の表示】P 2018063858の分割
【原出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】512229506
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】成岡 瑞尚
(72)【発明者】
【氏名】柴田 賢朗
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147295(JP,A)
【文献】特開2007-059812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製筐体と、
前記筐体に一体化されている基板と、
前記筐体に一体化されており、前記基板に接続されている端子とを含む、被接続機器に電気的に接続できるパワーモジュール用射出成形体であって、
前記端子は、2つの端部をつなげる端子本体と、前記端部のうち一方を含む第一先端部と、前記第一先端部の反対側の端部を含む第二先端部と、前記端子本体に設けられている第一本体拡張部とを含み、前記第一本体拡張部における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積は、前記端子本体における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積よりも大きく、
前記筐体から前記第二先端部が露出しているとともに、前記第一本体拡張部の少なくとも一部が露出しており、
前記樹脂製筐体には境目がな
く、
前記端子は、前記端子本体に第二本体拡張部をさらに有し、且つ、前記端子の長さ方向の中心点で、前記端子を、前記第一先端部を含む第一部と前記第二先端部を含む第二部とに分けた場合、第一部と第二部とは、同じ形状を有する、パワーモジュール用射出成形体。
【請求項2】
樹脂製筐体と、
前記筐体に一体化されている基板と、
前記筐体に一体化されており、前記基板に接続されている端子とを含む、被接続機器に電気的に接続できるパワーモジュール用射出成形体であって、
前記端子は、2つの端部をつなげる端子本体と、前記端部のうち一方を含む第一先端部と、前記第一先端部の反対側の端部を含む第二先端部と、前記端子本体に設けられている第一本体拡張部とを含み、前記第一本体拡張部における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積は、前記端子本体における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積よりも大きく、
前記筐体から前記第二先端部が露出しているとともに、前記第一本体拡張部の少なくとも一部が露出しており、
前記樹脂製筐体には境目がなく、
前記端子は、前記端子本体に第二本体拡張部をさらに有し、
前記端子は第一先端部を含む第一部と第二先端部を含む第二部を有し、
第一本体拡張部は、第二部に含まれ、第二本体拡張部は、第一部に含まれ、
前記第一部と前記第二部とは、端子の長さ方向の中心点に対して、対称の形状を有する、パワーモジュール用射出成形体。
【請求項3】
樹脂製筐体と、
前記筐体に一体化されている基板と、
前記筐体に一体化されており、前記基板に接続されている端子とを含む、被接続機器に電気的に接続できるパワーモジュール用射出成形体であって、
前記端子は、2つの端部をつなげる端子本体と、前記端部のうち一方を含む第一先端部と、前記第一先端部の反対側の端部を含む第二先端部と、前記端子本体に設けられている第一本体拡張部とを含み、前記第一本体拡張部における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積は、前記端子本体における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積よりも大きく、
前記筐体から前記第二先端部が露出しているとともに、前記第一本体拡張部の少なくとも一部が露出しており、
前記樹脂製筐体には境目がなく、
前記端子は、前記端子本体に第二本体拡張部をさらに有し、
前記第一先端部と第二先端部は同じ形状であり、
前記第一本体拡張部と第二本体拡張部は同じ形状であり、
前記第一先端部の端部から前記第二本体拡張部の第二先端部に最も近い部分までの距離が、前記第二先端部の端部から前記第一本体拡張部の第一先端部に最も近い部分までの距離と同じである、パワーモジュール用射出成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子、その端子を備えたパワーモジュール用射出成形体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の開発により、車載用パワー(半導体)モジュールが注目されている。
【0003】
車載用パワーモジュールに使用される、複数の端子を備えるパワーモジュール用射出成形体は、
図1に示すように、複数の端子1Cを一まとめにするために樹脂成形により連結部CCを形成し(
図1の(a))、連結部CCにより一まとめになった端子1Cを、樹脂成形金型4Cに配置し(
図1の(b))、樹脂5Cを金型4Cに流入し(
図1の(c))、最後に脱型(
図1の(d))することにより製造している。すなわち、これは端子1Cをブロック化(一次成形)した後、2次成形を実施する製造方法である。なお、端子がブロック化されたものは、一般的にリードフレーム、制御端子台、信号端子台等と呼ばれるが、本明細書では統一してピンブロックと呼ぶことにする。
【0004】
このような製造方法として、例えば、特許文献1には、パワー半導体モジュールを低背化及び小型化することを目的としたパワー半導体モジュールの製造方法が記載されているが、特許文献1に開示された方法も、まず、端子ブロックを製造してから、インサート成形している。すなわち、特許文献1においても、端子をブロック化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような、連結部CCを作製(一次成形)した後、連結部CCに備えられた端子1Cを樹脂成形金型4Cに配置し、射出成形(二次成形)すると、成形プロセスが2回になり高コストである。また、一次成形でわずかな寸法誤差が生じてしまうと、二次成形体にも一次成形での誤差が影響し、最終製品には大きな寸法誤差を生じさせてしまう。
【0007】
同時に、
図2の連結部CCに備えられた端子1Cが直角に折れ曲がっている形状であると、端子3Cの直下に、端子3Cの一方の先端である接続部131が配置される構造になり、パワー制御半導体が実装された本体基板との接続において極めて制限の多い機構となってしまう。
【0008】
さらに言うと、従来技術で製造したパワーモジュール射出成形体を示す
図2からもわかるように、一次成形で作製した連結部CCと、その後射出成形した部分(二次成形)とは境目ができてしまい、半導体素子の封止に使用する液状封止材料等がその境目に入り込み、その境目にできた隙間を通じて意図しない箇所へ封止材が漏れ出す場合がある。
【0009】
上記の問題を解決するために、連結部CCを製造せずに、端子等を樹脂成形金型に配置した状態で一体成形をすると、射出成形時の金型内への樹脂の流入によって端子が傾く又は倒れるなどの不都合が生じ、精密な樹脂成形が困難となってしまう。さらには、一体成形ができたとしても、従来のストレートタイプの端子は樹脂成形体から抜けてしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、発明者らは鋭意研究を重ね、新規な端子、およびその端子を基板に挿入した状態で樹脂一体成型したパワーモジュール用射出成形体、及びその製造方法を開発した。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 被接続機器に電気的に接続できるパワーモジュール用射出成形体の製造方法であって、
2つの端部をつなげる端子本体と、前記端部のうち一方を含む第一先端部と、前記第一先端部の反対側の端部を含む第二先端部と、前記端子本体に設けられている第一本体拡張部とを含み、前記第一本体拡張部における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積は、前記端子本体における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積よりも大きい端子を、前記第一先端部から基板に差し込む工程と、
前記第二先端部が樹脂成形金型内の端子挿入部に挿入されるように、前記基板を前記金型に配置する工程と、
前記金型に樹脂を流入することにより、前記基板及び前記端子を一体成形する工程とを含む、製造方法。
[2] 前記第二先端部の先端から第一本体拡張部までの長さが、前記金型の前記端子挿入部の深さよりも大きい、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記第二先端部の先端から第一本体拡張部までの長さが、前記金型の前記端子挿入部の深さと同じであるか又は小さい、[1]に記載の製造方法。
[4] 前記端子本体に第二本体拡張部がさらに設けられており、前記第二先端部の先端から第二本体拡張部までの長さが、前記金型の前記端子挿入部の深さよりも大きい、[3]に記載の製造方法。
[5] 樹脂製筐体と、
前記筐体に一体化されている基板と、
前記筐体に一体化されており、前記基板に接続されている端子とを含む、被接続機器に電気的に接続できるパワーモジュール用射出成形体であって、
前記端子は、2つの端部をつなげる端子本体と、前記端部のうち一方を含む第一先端部と、前記第一先端部の反対側の端部を含む第二先端部と、前記端子本体に設けられている第一本体拡張部とを含み、前記第一本体拡張部における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積は、前記端子本体における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積よりも大きく、前記筐体から前記第二先端部が露出している、パワーモジュール用射出成形体。
[6] 2つの端部をつなげる端子本体と、
前記端部のうち一方を含む第一先端部と、
前記第一先端部の反対側の端部を含む第二先端部と、
前記端本体に設けられている第一本体拡張部とを含み、
前記第一本体拡張部における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積は、前記端子本体における前記端子本体の長さ方向に直交する断面の面積よりも大きい、端子。
[7] 前記端子本体に第二本体拡張部がさらに設けられ、且つ、前記端子の長さ方向の中心点で前記第一先端部を含む第一部と前記第二先端部を含む第二部とに分けた場合、第一部と第二部とは、同じ形状を有する、[6]に記載の端子。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパワーモジュール用射出成形体を製造する方法は、ピンブロック化せずに端子をインサート成形により一体化、境目(継ぎ目)のない射出成形体を製造することができる。境目のない射出成形体は、液状封止材料等の他の樹脂が境目に入り込むことを防止することができる。さらに、本発明の製造方法は、端子をブロック化せずに、基板に端子を直接挿入した状態で、一回の射出成形でパワーモジュールが製造できるため、低コストである上、ピンブロック(
図1における連結部CC)の寸法誤差の影響がパワーモジュール用射出成形体に及ばないため、高い精度で製造することができる。
さらに、ピンブロックの存在を考慮することなく、射出成形(インサート成形)の圧力や温度等を設定することができるため、成形条件の自由度を高めることができる。また、端子を基板に挿入し、基板の配線パターンを任意に設けることにより、
図2で示した端子13Cの先端である接続部131Cをもう一方の先端の直下に固定させることなく、例えば、
図4で示す位置に配置できる。これにより、本体基板の実装自由度を向上させることができる。
同時に基板の厚みを変更した場合においても、ピンブロック化しない状態であるため、基板への端子の挿入量を自由に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、従来から行われている端子1Cを用いてパワーモジュール用射出成形体100Cを製造する方法の模式図である。
【
図2】
図2は、従来の方法で製造された端子1Cを備えたパワーモジュール用射出成形体100Cの斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、端子1の正面図である。
図3(b)は端子2の正面図である。
【
図4】
図4は、端子1を備えたパワーモジュール用射出成形体100の斜視図である。
【
図5】
図5は、端子1を用いてパワーモジュール用射出成形体100を製造する方法を示す模式図である。
【
図6】
図6は、プレスフィット端子3を用いてパワーモジュール用射出成形体101を製造する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
[端子]
まず、本発明のパワーモジュール用射出成形体の製造方法に用いられる端子(制御端子)について説明する。
【0015】
図3(a)では、実施例である端子1を示す。端子1は、2つの端部をつなげる端子本体11と、前記端子本体11の一方の端部121を含む第一先端部12と、前記第一先端部12の反対側の端部131を含む第二先端部13と、前記端子本体11に設けられている第一本体拡張部14を備える。
【0016】
端子本体11は、端子1の本体を構成している。端子1は、基板と他の基板等の電気的部品とを電気的に接続し、電流を流すためのものである。したがって、端子本体11は、所定の長さを有するピン形状のものであることが好ましい。
【0017】
端子本体11の長さ方向に直交する断面は長方形であるが、これはモジュールや樹脂成形金型によって適宜変更できるものであり、正方形等の多角形でもよいし、円形、楕円形などでもよい。
【0018】
第一先端部12は、基板のスルーホールに差し込むための形状を有している。したがって、基板に端子1の第一先端部12を差し込みやすくするために、第一先端部12の端部121は、テーパー状になっている。第一先端部12を基板に差し込み、基板の反対側からはんだを用いることにより、端子1と基板とを接続する。
【0019】
第二先端部13は、端子本体11の第一先端部12に対して反対側の端部131を含む部分である。端子1の第一先端部12が接続されている基板ではなく、別の回路基板等の電気部品(被接続機器)と接続する形状を有している。なお、そのため第二先端部13は、被接続機器の接続部分の形状に応じて適宜変更することが可能である。なお、端部131も端子本体11に比べて細くなっており、テーパー状である。このように細くなることで、他の基板に設けられたスルーホールに差し込みやすい。なお、端子1は他の回路基板等とも、はんだで固定することができる。
【0020】
端子1は、端子本体11に第一本体拡張部14を備える。第一本体拡張部14の端子本体11の長さ方向に対して垂直な断面は長方形であるが、樹脂成形用金型等に応じて適宜変更できる。第一本体拡張部14は、端子本体11よりも太くなっている。すなわち、第一本体拡張部14における端子本体11の長さ方向に直交する断面の面積は、前記端子本体11における端子本体11の長さ方向に直交する断面の面積よりも大きいものである。
【0021】
図3(b)には、別の態様の端子2を示す。端子2は、端子本体と21、前記端子本体21の一方の端部221を含む第一先端部22と、前記第一先端部22の反対側の端部231を含む第二先端部23と、前記端子本体21に設けられている第一本体拡張部24と、第二本体拡張部25とを備える。
【0022】
端子2は、第一本体拡張部24に加えて、第二本体拡張部25を備える。また、前記端子2の長さ方向の中心点で、第一先端部22を含む第一部と前記第二先端部23を含む第二部とに分けた場合、第一部と第二部とは、同じ形状を有している。すなわち、端子2の長さ方向の中心点に対して、左右対称の形状を有している。なお、第一本体拡張部24は、第二部に含まれ、第二本体拡張部25は、第一部に含まれる。この場合、言うまでもなく、第一本体拡張部24と、第二本体拡張部25とは、同一の形状である。
【0023】
なお、
図3(a)に示す端子1、
図3(b)に示す端子2のそれぞれの第一先端部12,22又は第二先端部13,23は、プレスフィットをするための形状にしてもよい。プレスフィットの形状にすることにより、はんだを用いなくとも、端子1又は端子2が保持され、端子1又は端子2と基板とを電気的に接続することができる。また、はんだを用いる必要がないため、はんだの融点を気にすることなく高耐熱樹脂を使用することができる。なお、第一先端部12,22及び第二先端部13,23の両方ともプレスフィットをするための形状にしてもよい。
【0024】
なお本明細書でプレスフィットとは、回路基板等の基板に設けられたスルーホールに端子の先端を押し込み、押し込んだ状態のときに発生する復元力により、端子が基板と接触し通電できる状態を保持することである。
【0025】
プレスフィットの形状は、例えば、
図6に示すように、楕円形状で、中心に楕円形状の穴があるような形状を有している。このような形状を有することにより、第一先端部を基板に設けられている特定形状のスルーホールに差し込むことで、端子と基板とを接触及び保持することができる。プレスフィットの形状において、先端は基板に差し込みやすいように、尖っている。
【0026】
[パワーモジュール用射出成形体]
次に、本発明のパワーモジュール用射出成形体について説明する。端子1を備えているパワーモジュール用射出成形体100を
図4に示す。パワーモジュール用射出成形体100は、被接続機器に電気的に接続できるパワーモジュールであって、樹脂製筐体6と、前記筐体6に一体化されている基板7と、前記筐体6に一体化されており、前記筐体6から前記第二先端部13が露出している端子1とを含む。パワーモジュール用射出成形体100は、一体成形されているため、従来の製造方法のパワーモジュール用射出成形体100Cにある樹脂と樹脂との境目がない。
【0027】
なお、
図4では図示されていないが、端子1及び基板7以外の金属製部品等も一体成形により、備えることができる。
【0028】
本発明のパワーモジュール用射出成形体100は、さらに半導体素子、リードフレームなどを備えて、パワー半導体モジュールにすることができる。当該パワー半導体モジュールは第二先端部13を介して、被接続機器に接続することができる。
【0029】
[端子1を用いたパワーモジュール用射出成形体100の製造]
次に本発明のパワーモジュール用射出成形体100の製造(一体成形)について説明する。本発明の製造方法によれば、パワーモジュール用射出成形体100を、一回の射出成形により端子1と基板7とを一体化して製造することができる。
【0030】
具体的には、本発明のパワーモジュール用射出成形体100の製造方法は、端子1の第一先端部12を基板7に差し込む工程と、第二先端部13が樹脂成形金型4内の端子挿入部41に挿入されるように、前記基板7を前記金型4に配置する工程と、前記金型4に樹脂5を流入することにより、前記基板7及び前記端子1を一体成形することを含む。
【0031】
本発明のパワーモジュール用射出成形体100の製造方法を、具体的に
図5を用いて説明する。まず、本発明の端子1の第一先端部12を基板7のスルーホールに差し込む(
図5(a)、(b))。第一先端部12は、基板7の差し込んだ反対側からはんだ8により接続される。
【0032】
基板7に端子1が保持された状態で、端子1の第二先端部13を、樹脂成形金型4の各端子1に対応した端子挿入部41に挿入する(
図5(c))。このとき、樹脂成形金型4の端子挿入部41の深さD(
図5(b)に図示)と、第二先端部13の端部131から第一本体拡張部14の最も第一先端部12に近い部分までの距離d(
図5(c)に図示)とが、d>Dの関係になっている。これにより、第一本体拡張部14が樹脂5(筐体6)の内部に位置するようになるため、端子1が樹脂5(筐体6)から摩擦抵抗により抜けにくい状態となる。
【0033】
図3(b)の端子2の場合は、第一本体拡張部24と、第二本体拡張部25との二つの本体拡張部を備える。端子2を用いたパワーモジュール用射出成形体100の製造においては、樹脂成形金型4の端子挿入部41の深さDと、第二先端部23の端部231から第一本体拡張部24の最も第一先端部22に近い部分までの距離dとが、d=D又はd<Dの関係になっている。第一本体拡張部24が、d=D又はd<Dの関係を満たす場合は、端子挿入部の中に、樹脂が流入してしまうことを防止し、成形後、端子2の先端を樹脂5から出すことができる。なお、第二本体拡張部25から、第二先端部23の端部231までの距離d’は、d’>Dの関係になっている。
【0034】
図3(b)の端子2では、第一本体拡張部24と、端子本体21との第二先端部23側の第一接続部241は、傾斜して接続しており、第一接続部241はテーパー形状を有するため、端子挿入部41に破損なくスムーズに挿入できる。
図3(b)が示すように、端子2の第二本体拡張部25も同様のテーパー形状を有することができる。
【0035】
端子1を樹脂成形金型4の端子挿入部41に挿入した状態で、樹脂5を樹脂成形金型4に流入し、一体成形する((
図5(d))。
【0036】
樹脂5が所定の固さに硬化した後、樹脂成形金型4を取り除く((
図5(e))。これらの工程により、パワーモジュール用射出成形体100の筐体6の内部で基板7に接続し、かつ、第二先端部13が、樹脂5(筐体6)から露出したパワーモジュール用射出成形体100を一体成形することができる。
【0037】
[プレスフィット端子3を用いたパワーモジュール用射出成形体101の製造]
次にプレスフィット端子3を用いたパワーモジュール用射出成形体101の製造(一体成形)について説明する。プレスフィット端子3は、プレスフィットするための形状を第一先端部32及び第二先端部33に有している。また、プレスフィット端子3は、第一本体拡張部34と、第二本体拡張部35との二つの本体拡張部を備える。
【0038】
プレスフィット端子3を用いたパワーモジュール用射出成形体101の製造方法を、
図6を用いて説明する(なお、図面において、パワーモジュール用射出成形体101の全体図は図示しない)。パワーモジュール用射出成形体101の製造方法は、
図5を用いて説明した「端子1を用いたパワーモジュール用射出成形体100の製造」と基本的には同様の工程である。
【0039】
ただし、基板7にプレスフィット端子3の第一先端部32を差し込んだときに、第一先端部32はプレスフィットするための形状を有しているため、はんだを用いずに、電気的に接続・固定することができる(
図6(b)を参照)。
第一本体拡張部34の最大幅は第二先端部33の最大幅よりも大きくなるように形成されている。プレスフィット端子の場合、先端部の形状が部分的に湾曲しているため、端子3の挿入部の断面形状と端子3の第一先端部32の形状を隙間なく一致させる事が難しい場合がある。第一本体拡張部34の最大幅を第二先端部33の最大幅よりも大きくなるように形成するとともに、第一本体拡張部34の形状を金型4の端子挿入部41の形状と略一致させることで、樹脂の金型側への流出を防止する事が可能となる。
【0040】
すなわち、端子3の第一本体拡張部34は、端子挿入部4の中に入るようにする。具体的には、
図6のように、d=D、又はd<Dにすることにより、第一本体拡張部34が端子挿入部41の蓋のような役割をして、端子挿入部41を塞ぐため、樹脂5は端子挿入部41に入り込みにくくなる。第一本体拡張部34の長さ方向に直交する断面形状を、端子挿入部41の形状に対応させることにより、端子挿入部41への樹脂5の流出をほとんど抑制することができる。これにより、第二先端部33を樹脂5からなる筐体6からきれいに露出させることができる(
図5(e))。このとき、第二本体拡張部35は、端子挿入部41の外に出ている部分に設けられている。
【0041】
このように、プレスフィット端子3を用いる場合は、基板7との接続にはんだを用いない点で端子1とは異なるが、本発明パワーモジュール用射出成形体の製造方法は実施することができる。
【0042】
本発明の製造方法で得られたパワーモジュール用射出成形体は、樹脂に境目が生じず、例えば、パワーモジュール用射出成形体に半導体を実装したのち、液状封止剤等で樹脂封入を行う場合、液状封止剤が境目に入り込まず、意図しない箇所へ封止材が漏れ出すことがない。
【0043】
以下に上記実施例の効果を、端子1を用いた場合を例にして下記する。
[効果]
[1]被接続機器に電気的に接続できるパワーモジュール用射出成形体100の製造方法であって、2つの端部をつなげる端子本体11と、端部のうち一方を含む第一先端部12と、第一先端部12の反対側の端部を含む第二先端部13と、端子本体11に設けられている第一本体拡張部14とを含み、前記第一本体拡張部14における前記端子本体11の長さ方向に直交する断面の面積は、前記端子本体における前記端子本体11の長さ方向に直交する断面の面積よりも大きい端子1を、第一先端部12から基板7に差し込む工程と、第二先端部13が樹脂成形金型4内の端子挿入部41に挿入されるように、基板7を金型4に配置する工程と、金型4に樹脂5を流入することにより、基板7及び端子1を一体成形する工程と含む、製造方法は、端子1をピンブロック化(一次成形)する必要がないため、一次成形品の寸法バラつき分及び金型クリアランス分の寸法精度が向上する。具体的には、従来技術で製造していたピンブロック(
図1における連結部CC)は樹脂成形品であるため、本発明のパワーモジュール用射出成形体のピンブロックは、樹脂の収縮や射出成形時の圧力等を考慮し一般公差でも、±0.1mmの誤差は生じてしまう。それに加えて一次成形における金型のクリアランス最小でも0.03mm、最大では0.13mmの寸法バラつきが発生する。一方、本発明の製造方法によれば、一次成形をする必要がないため、一次成形における金型のクリアランスは必要なくなり、最終的な誤差は0~0.1mm以内に収まる。このように、当該製造方法は、従来の製造方法に比べて、精度の観点から極めて優位である。
さらに、ピンブロック(連結部CC)の存在する場合は、射出成形時の樹脂の流れを阻害してしまう。一方、本発明の態様の製造方法であれば、ピンブロックがなく端子1単体であるため抵抗が少なく、成形時の圧力や温度等を設定することができ、成形条件の自由度を高めることができる。
さらには、基板の厚み等に変更があった場合は、従来製造方法の場合、端子の挿入量などの関係からピンブロック自体を変更する必要があったが、端子1を基板7に直接挿入することで、様々な変更に柔軟に対応できる。
そして、従来の方法においては、端子1の位置を変更する場合にはピンブロックごと移動する必要があり、複数のピンを同時に移動させる必要があったため、移動できる範囲に制約があったが、本発明の方法においては、端子1を1本ずつ基板7へ挿入するため、端子1の基板7上の位置を1本ずつ決める事ができるため、端子3の配置に関する基板7側の設計の自由度を向上させることができる。特にピンの数が増えた場合には、基盤の中でピンを挿入できる位置が限られるため、1本ずつ位置を調整できる事は有効である。さらに、効率的に複数の端子1を配置できるため、基板7の小型化につながり、ひいてはパワーモジュール全体の小型化へつなげることができる。
【0044】
[2]前項[1]の製造方法において、第二先端部13の先端から第一本体拡張部14までの長さが、金型4の端子挿入部41の深さよりも大きい場合は、摩擦抵抗により、樹脂5から端子1は抜けにくくなる。
[3]前項[1]の製造方法において、第二先端部13の先端から第一本体拡張部14までの長さが、金型4の端子挿入部41の深さと同じか又は小さい場合は、樹脂5の端子挿入部41への流入を防止し、第二先端部13を樹脂面(筐体6)から露出させることができる。また、成形時に樹脂が流入する圧力によって、端子1が傾くことを防止することができる。
[4]前項[3]の製造方法において、前記端子本体に第二本体拡張部25がさらに設けられており、前記第二先端部23の先端から第二本体拡張部25までの長さが、前記金型4の前記端子挿入部41の深さよりも大きい場合は、前項[3]の場合よりもさらに、端子1は抜けにくくなる。
【0045】
[5] 樹脂製筐体6と、筐体6に一体化されている基板7と、筐体6に一体化されており、基板7に接続されている端子1とを含む、被接続機器に電気的に接続できるパワーモジュール用射出成形体100であって、端子1は、2つの端部をつなげる端子本体11と、端部のうち一方を含む第一先端部12と、第一先端部の反対側の端部を含む第二先端部13と、端子本体11に設けられている第一本体拡張部14とを含み、前記第一本体拡張部14における前記端子本体11の長さ方向に直交する断面の面積は、前記端子本体11における前記端子本体11の長さ方向に直交する断面の面積よりも大きく、筐体6から第二先端部13が露出している、パワーモジュール用射出成形体は、一体成形であるため、事前に一次成形(端子をブロック化)する必要がなく、成形体の境目ができないため、半導体の封止に使用する液状封止材料等がその境目に入り込み、意図しない箇所へ封止材が漏れ出すことを防止することができる。
【0046】
[6]2つの端部をつなげる端子本体11と、端部のうち一方を含む第一先端部12と、第一先端部の反対側の端部を含む第二先端部13と、端子本体に設けられている第一本体拡張部14とを含み、前記第一本体拡張部14における前記端子本体11の長さ方向に直交する断面の面積は、前記端子本体における前記端子本体11の長さ方向に直交する断面の面積よりも大きい端子1は、寸法の誤差を小さく抑えながら、一体成形によりパワーモジュール用射出成形体を製造することができる。
[7]前項[6]に記載の端子において、端子本体21に第二本体拡張部25がさらに設けられ、且つ、端子2の長さ方向の中心点で第一先端部22を含む第一部と第二先端部23を含む第二部とに分けた場合、第一部と第二部とは、同じ形状を有する場合は、上下反転しても、端子2を使用することができる。したがって、端子2の方向を気にせず基板7にセットすることができる。
【0047】
符号の説明
1,2,3 端子(プレスフィット端子)
11,21,31 端子本体
12,22,32 第一先端部
13,23,33 第二先端部
14,24,34 第一本体拡張部
25,35 第二本体拡張部
4 樹脂成形金型
41 端子挿入部
5 樹脂
6 筐体(樹脂が硬化したもの)
7 基板
8 はんだ
100,101 パワーモジュール用射出成形体