(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】被加工野菜の皮剥き装置
(51)【国際特許分類】
A23N 7/00 20060101AFI20221109BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20221109BHJP
B26D 1/03 20060101ALI20221109BHJP
B26D 1/02 20060101ALI20221109BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A23N7/00 A
B26D3/00 603Z
B26D1/03
B26D1/02 Z
B26D7/18 E
(21)【出願番号】P 2018139220
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-04-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(1)に添付のとおり 販売した場所:発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(1)に添付のとおり 販売者:吉泉産業株式会社 物件名:被加工野菜の皮剥き装置販売先リスト 〔刊行物等〕 展示日:平成30年3月6日~平成30年3月9日 展示会名:2018年 吉泉産業 春のプライベートショー 新機種発表展示会 開催場所:吉泉産業株式会社 本社ショールーム(大阪府枚方市津田山手2丁目1番1号) 主催者:吉泉産業株式会社 物件名:2018年 吉泉産業 春のプライベートショー 新機種発表展示会のチラシ及び佐々木啓益が発明した被加工野菜の皮剥き装置の紹介チラシ 〔刊行物等〕 展示日:平成30年6月12日~平成30年6月15日 展示会名:FOOMA JAPAN 2018(国際食品工業展) 開催場所:東京ビッグサイト 東展示棟 1~8ホール(東京都江東区有明3-11-1) 主催者:一般社団法人 日本食品機械工業会 物件名:FOOMA JAPAN 2018の開催概要のプリントアウト 物件名:FOOMA JAPAN 2018の出展社情報のプリントアウト及び出展ブースマップ
(73)【特許権者】
【識別番号】392035019
【氏名又は名称】吉泉産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓益
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6174181(JP,B1)
【文献】特開2014-097005(JP,A)
【文献】特開2004-357681(JP,A)
【文献】米国特許第05857404(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 7/00
B26D 3/00
B26D 1/03
B26D 1/02
B26D 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一列に並んだ複数対のピーラー間に被加工野菜を通過させて、前記ピーラーにより前記被加工野菜の皮を剥く皮剥き装置であって、
前記各対のピーラーは、前記被加工野菜の進行方向に観音開き可能に配置されており、前方のピーラーが所定角度以上開いたときに後方のピーラーに当接して、前記後方のピーラーを押し広げる、
被加工野菜の皮剥き装置。
【請求項2】
各ピーラーは、閉じ方向に付勢されている、
請求項1に記載の被加工野菜の皮剥き装置。
【請求項3】
最も後方のピーラーは、剥かれた皮を側方に排出するガイドを有する、
請求項1又は請求項2に記載の被加工野菜の皮剥き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大根、人参、牛蒡などの棒状野菜等の被加工野菜の皮を剥く装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大根、人参、牛蒡などの被加工野菜の皮剥き装置として、一列に複数配置されたピーラー間に被加工野菜を回転させつつ進入させるものが提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の装置は、載置された被加工野菜を送る野菜供給チェーンコンベア手段と、野菜供給チェーンコンベア手段で送られてきた被加工野菜を支持する支持手段と、支持手段の両側に対向して設けられた複数個の刃物手段(ピーラー)と、支持手段の上方に設けられた野菜押しチェーンコンベアと、野菜押しチェーンコンベアのチェーンに設けられ、野菜供給チェーンコンベア手段より送られてきた野菜を刃物手段に送る野菜押し手段と、野菜供給チェーンコンベア手段のチェーンコンベアと野菜押しチェーンコンベアを同期して駆動させる駆動手段とを具える。
【0004】
野菜押し手段は、野菜押え針が固定された円板に被加工野菜を差し込んで回転する。このとき、被加工野菜は、軸心が進行方向に対して平行となるように装着されて回転しつつ進行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
刃物手段は、被加工野菜の進行方向に対して観音開き可能に配置され、夫々がばね付勢されたピーラーを具える。当該ピーラーの付勢力は、開き角度にかかわらずほぼ一定であるが、被加工野菜は、径大である程、大きな付勢力でピーラーを押し当てることが望まれる。
【0007】
本発明の目的は、ピーラーの皮剥き能力を高めることのできる皮剥き装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る被加工野菜の皮剥き装置は、
一列に並んだ複数対のピーラー間に被加工野菜を通過させて、前記ピーラーにより前記被加工野菜の皮を剥く皮剥き装置であって、
前記各対のピーラーは、前記被加工野菜の進行方向に観音開き可能に配置されており、前方のピーラーが所定角度以上開いたときに後方のピーラーに当接して、前記後方のピーラーを押し広げる。
【0009】
各ピーラーは、付勢手段により、閉じ方向に付勢することができる。
【0010】
最も後方のピーラーは、剥かれた皮を側方に排出するガイドを有することが望ましい。
【0011】
また、一列に並んだ複数対のピーラー間に被加工野菜を通過させて、前記ピーラーにより前記被加工野菜の皮を剥く皮剥き装置であって、
前記被加工野菜の進行方向に対して最も後方のピーラーは、剥かれた皮を側方に排出するガイドを有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮剥き装置によれば、ピーラーは、被加工野菜に押されて観音開きし、所定の角度以上開いたときに、後方のピーラーに当接することで、開く際の抵抗が大きくなり、大きな付勢力でピーラーが被加工野菜に当たり、皮剥き能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る皮剥き装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、皮剥き装置の一実施形態に係るブロック図である。
【
図4】
図4は、
図2を線A-Aに沿って断面し、矢印方向に見た断面図である。
【
図5】
図5は、無端状ベルトの拡大図であって、
図5(a)は載置スペースに小径の被加工野菜、
図5(b)は大径の被加工野菜を載置した状態を示している。正面側から見たブロック図である。
【
図6】
図6は、供給部の高さ調節機構及びその近傍の斜視図である。
【
図7】
図7は、
図2を線B-Bに沿って断面し、矢印方向に見た断面図である。
【
図12】
図12は、被加工野菜の皮剥きを行なっている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る皮剥き装置10について図面を参照しながら説明を行なう。本発明の皮剥き装置10により皮剥きすることのできる被加工野菜Vとして、大根、人参、牛蒡などの棒状野菜を例示できるが、これに限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る皮剥き装置10の斜視図、
図2は正面図である。皮剥き装置10は、一実施形態として、図中、前方右側に被加工野菜Vを供給する供給部20、前方左側に供給された被加工野菜Vの皮剥きを行なうピーラー部80を併設して構成され、これらの後方には、被加工野菜Vを供給部20からピーラー部80に搬送し、ピーラー部80内で進行させる搬送部40を配置している。
【0016】
<供給部>
供給部20は、被加工野菜Vを皮剥き装置10に供給する。供給部20は、本実施形態では、ピーラー部80に供給される被加工野菜Vの進行方向に対して直交する向きに配置された無端状ベルト21とすることができる。無端状ベルト21は、プーリー25,25aに張設されており、一方のプーリー25に内装又は外付けされたコンベアモーター24の駆動により周回する。図示の実施形態では、搬送部40側に近い先端側のプーリー25にコンベアモーター24を内装している。コンベアモーター24は、
図3に示すように、制御手段12に電気的に接続され、搬送部40の野菜取付部50の動作に合わせて間欠回転可能となっている。なお、制御手段12は、皮剥き装置10の適所に配置することができる。
【0017】
無端状ベルト21は、
図4に示すように外周面の幅方向に複数のガイド板22,22aが突設されており、ガイド板間に形成される保持スペースSに被加工野菜Vが載置される。ガイド板は、
図5に拡大して示すように、高さの低い一対の第1ガイド板22,22と、これらの両側に配置され、第1ガイド板22,22よりも高く突出した一対の第2ガイド板22a、22aから構成することができる。高さの異なるガイド板によって、
図5(a)中、線V1で示すように、直径の小さい被加工野菜Vは第1ガイド板22,22間に安定して保持することができ、
図5(b)中、線V2で示すように、直径の大きい被加工野菜Vは、側方を第2ガイド板22a、22a、下方を第1ガイド板22,22によって安定して保持される。なお、
図1に示すように、第1ガイド板22,22は無端状ベルト21の幅方向全長ではなく、一部のみに設けてもよい。
【0018】
無端状ベルト21は、
図1、
図2及び
図4に示すように、複数の保持スペースSが上面側に存する長さに構成され、同時に複数の被加工野菜Vを各保持スペースSに載置することができる。従って、作業者は、複数の被加工野菜Vを無端状ベルト21に載置し、これら被加工野菜Vがなくなるまで皮剥き装置10から離れることができ、作業効率を可及的に向上することができる。また、無端状ベルト21は、ピーラー部80に供給される被加工野菜Vの進行方向に対して直交する向きに配置しているから、皮剥き装置10の長手方向長さが長くなることはなく、皮剥き装置10のコンパクト化を図ることができる。
【0019】
供給部20は、被加工野菜Vの直径に応じて、搬送部40側の高さを上下に調整する高さ調節機構27を具えることが望ましい。たとえば、高さ調節機構27は、
図1及び
図4に示すカム片28aを、高さ調節モーター28(
図3、
図4参照)で作動させる構成や、アクチュエーター等から構成することができ、制御手段12により制御される。
図6は、高さ調節機構27の一実施形態を示している。図示の高さ調節機構27は、高さ調節モーター28によって、プーリー25を傾動させる構成である。高さ調節モーター28には歯車28bが連繋されており、歯車28bは、カム片28aの周面に刻設された歯と噛合している。カム片28aは、搬送部ケーシング41のフレーム41a,41a間に軸支されたシャフト28cに装着されている。また、供給部20の無端状ベルト21を支持するプーリー25は、
図6に示さない逆側の端部が傾動自在にフレーム41aに支持されており、シャフト28cから延設されたプレート28dと球面ベアリング28eを介して連繋されている。然して、高さ調節モーター28を駆動することで、歯車28bによりカム片28aがシャフト28cを中心に回転する。そして、シャフト28cの回転により球面ベアリング28eがプーリー25を押し上げ又は押し下げることで、無端状ベルト21が昇降し、供給される被加工野菜Vの高さを調節可能となる。供給される被加工野菜Vの直径は、
図2に示すように、搬送部ケーシング41にレーザーセンサー等の計測機器29を配置して測定することができる。そして、高さ調節機構27は、計測機器29により測定された直径に応じて供給部20の高さを上下動する。具体的には、高さ調節機構27は、被加工野菜Vの直径(高さ)を測定し、その中心が、次に説明する搬送部40の野菜取付部50と一致してセンタリングできるように高さ調整を行なう。
【0020】
<搬送部>
供給部20から供給された被加工野菜Vは、
図1等に示すように、搬送部40に配置された野菜取付部50に装着されて、ピーラー部80に搬送される。野菜取付部50は、
図2、
図4及び
図7に示すように、装置の後方側に配置された搬送部ケーシング41内に左右に長く周回するよう長円状に張設された無端状の搬送用チェーン44に取り付けられている。搬送用チェーン44は、
図2に示すように、両側のギア45,45aに噛合しており、一方のギア45にはたとえば搬送用駆動手段となる搬送用モーター46が連繋されている。搬送用モーター46は、
図3に示すように、制御手段12に電気的に接続され、搬送用モーター46を駆動することで、搬送用チェーン44に取り付けられた野菜取付部50は長円状に周回する。搬送部ケーシング41の前面には、
図1、
図2等に示すように、搬送用チェーン44の周回軌道の内周側に対応する位置に長円状の溝42が形成されており、野菜取付部50が前方に向けて延出している。
【0021】
また、搬送用チェーン44の下周回後方であって、後述するピーラー部80と対向する位置には、
図2、
図7に示すように、野菜取付部50の回転手段53を駆動する回転駆動手段が配置されている。回転駆動手段は、搬送用チェーン44に沿って配設された長軸ギア60と、長軸ギア60を回転させる長軸ギア駆動モーター61を具える。長軸ギア60は、長手方向周面にギア溝が刻設されている。また、長軸ギア駆動モーター61は、制御手段12に電気的に接続される(
図3)。
【0022】
野菜取付部50は、搬送用チェーン44に所定間隔で複数装着され、被加工野菜Vを供給部20からピーラー部80に搬送すると共に、ピーラー部80内で被加工野菜Vを回転させて、ピーラー部80により皮剥きを行なう。
【0023】
野菜取付部50は、
図8に示すように、先端が下方に向けて屈曲した略L字形状の搬送アーム51の基端近傍を搬送用チェーン44に取り付けて構成される。
【0024】
搬送アーム51の基端には、長軸ギア60と噛合可能な位置に、次に説明する支持手段55を回転させる回転手段53の一部を形成するギア54が支持されている。搬送アーム51は、内部が中空に形成されており、中空部には、ギア54と動力伝達可能にかさ歯車、軸等(何れも図示せず)が配備されており、搬送アーム51の下向きに屈曲した先端に進行方向に向けて装着された被加工野菜Vを保持する支持手段55を回転可能としている。すなわち、ギア54が回転すると、回転手段53を介して支持手段55が従動して回転する。
【0025】
図示の実施形態では、支持手段55は十字刃であり、被加工野菜Vは、十字刃に刺さって支持手段55に支持される。
【0026】
搬送アーム51には、支持手段55よりも上部に舟形の開き部材57が装着されており、被加工野菜Vを支持手段55に装着しない状態で野菜取付部50をピーラー81間に進入させたときに、開き部材57がピーラー81,81を押し開いて、支持手段55とピーラー81との衝突を防止する。
【0027】
また、野菜取付部50を、周回経路上で安定して進行させるために、搬送アーム51の基端にはローラー58が転動自在に装着されている。ローラー58は、
図4及び
図7に示すように、野菜取付部50の周回移行路に沿って、搬送部ケーシング41の背面側内面に設けられた長円状の案内溝47内を走行する。
【0028】
搬送用モーター46を駆動すると搬送用チェーン44が周回し、
図2に示すように、野菜取付部50は、供給部20からピーラー部80を通って旋回し、再度供給部20に戻る長円の経路を進行する。
【0029】
野菜取付部50は、支持手段55がピーラー部80を通過する間、
図2及び
図7に示すように、長軸ギア駆動モーター61により回転する長軸ギア60にギア54が噛合すると、ギア54が回転し、回転手段53を介して支持手段55が従動回転する。支持手段55の回転数は、長軸ギア駆動モーター61の回転数を制御することで、自在に調整することができる。なお、ピーラー部80を通過した後、再度供給部20を通過する間は、ギア54は長軸ギア60と噛合していないため、支持手段55が回転することなく野菜取付部50は進行する。
【0030】
<ピーラー部>
ピーラー部80は、
図1等、より詳細には、
図9乃至
図11に示すように、複数対のピーラー81,81並べて構成される。各ピーラー81,81は、平行に配置されたフレーム90,90にそれぞれ揺動可能に支持されており、被加工野菜Vの進行方向に向けて観音開き可能となっている。なお、フレーム90,90は、
図2中符号90aで示すカム片により上下方向に高さ調整可能とすることが望ましい。カム片90aは、上記した高さ調節機構27と同様の構成からなるフレーム昇降機構により作動する。また、フレーム90,90の略中央には、
図12に示すように、ピーラー81,81よりも下方に平らな支持プレート91が配備されている。支持プレート91とフレーム90,90間には、剥かれた皮が落下する隙間92が形成されている。隙間92の下には、
図1等に示すように、剥かれた皮を集めるダストボックス15を配置しておくことができる。また、ピーラー部80の下流側には、
図1、
図2等に示すように、皮剥きされた被加工野菜Vが排出される野菜排出案内板16が取り付けられている。
【0031】
ピーラー81,81は、
図9乃至
図11に示すように、フレーム90,90の中央、具体的には支持プレート91の上部で、被加工野菜Vの進行方向に向けて傾斜した状態で、先端どうしが互いに接近するよう配置されている。各ピーラー81は、ピーラーアーム83の先端にピーラー刃82を具える。ピーラー刃82は、たとえば、樹脂製のカバー部86を介してピーラーアーム83に装着することができ、刃先が被加工野菜Vの進行方向とは逆向きに配置され、ピーラー81,81間を通過する被加工野菜Vの皮を剥く。
【0032】
ピーラーアーム83は、基端にフレーム90へ枢支される軸部84を有する。ピーラー81は、フレーム90に対して付勢手段85によってそれぞれ内向きに付勢される。たとえば、付勢手段85として、
図7に示すトーションバネを例示することができ、トーションバネの一端を軸部84又はピーラーアーム83に装着し、他端をフレーム90に取り付けることで、ピーラー81を内向きに付勢している。
【0033】
ピーラー81,81は、ピーラー81,81間に被加工野菜Vが進入しピーラー81,81が付勢手段85の付勢力に抗して開いたときに、後方のピーラー81,81に当接し(
図10及び
図11のP参照)、後方のピーラー81,81を押し広げることができる間隔に配置される。たとえば、カバー部86を後方に向けて凸形状とすることで、開いたピーラー81,81のカバー部86,86が当たりとなって後方のピーラー81,81に当接し、後方のピーラー81,81を押し広げる。このように、前方のピーラー81,81が後方のピーラー81,81を押し広げる構成とすることで、各列のピーラー81,81の間隔を短くすることができ、装置の小型化を達成できる。また、前方のピーラー81は、後方のピーラー81の付勢力を利用することができるから、皮剥き能力の向上を図ることができると共に、付勢手段85の付勢力を小さくすることができ、付勢手段85の小型化、ひいてはピーラー81の小型化を達成できる。
【0034】
一番手前に配置されるピーラー81,81は、後述するとおり、被加工野菜Vを支持手段55に深く突き刺すため、また、被加工野菜Vの進行方向を規定して回転ぶれすることなく被加工野菜Vをピーラー81,81間で進行させるために、付勢手段85による付勢力は、後方のピーラー81に比して強くすることが望ましい。すべてのピーラー81に同じ付勢力の付勢手段85を採用する場合には、たとえば、一番手前のピーラー81,81の先端に磁石(図示せず)を配置し、磁力によってピーラー81,81どうしを引き寄せ合うことで、付勢力を高めるようにしてもよい。
【0035】
一番後方に配置されるピーラー81には、
図11及び
図13に示すように、ピーラー刃82の側方にガイド87を形成している。ガイド87は、剥かれた皮が被加工野菜Vに付着して下流側に引っ張られることを防止し、支持プレート91とフレーム90との間に剥かれた皮を落下させる案内の役割をなす。これにより、皮の落下位置をコントロールすることができ、フレーム90等に皮が残らず、清掃性を向上できる。たとえば、ガイド87は、カバー部86に装着され、外向きに湾曲した形状とすることができる。
【0036】
本発明の皮剥き装置10は、
図1等に示すように、搬送部ケーシング41の適所に設けられた操作部13によって操作される。操作部13や、上記したコンベアモーター24、高さ調節モーター28、計測機器29、搬送用モーター46、長軸ギア駆動モーター61、フレーム昇降機構は、
図3に示すように、制御手段12に電気的に接続されている。制御手段12は、皮剥き装置10の各種制御プログラム等が記憶されており、操作部13を操作することで、プログラムに応じて、たとえば以下の要領でモーター等が駆動する。
【0037】
供給部20では、制御手段12は、コンベアモーター24を間欠運転させて、野菜取付部50が供給部20の上を通過する際には無端状ベルト21の回転を止め、次の野菜取付部50が供給部20に到達するまでに保持スペースSが1つ進むように回転させる。
【0038】
搬送部40では、制御手段12は、搬送用モーター46を連続的に運転させて、搬送用チェーン44を走行させ、野菜取付部50を周回させる。また、制御手段12は、長軸ギア駆動モーター61を連続的に運転させて、長軸ギア60を回転させる。長軸ギア駆動モーター61は、ピーラー部80を野菜取付部50が通過する間に、長軸ギア60により回転する支持手段55が1周乃至複数周する回転速度に調整することができる。支持手段55の回転数は、被加工野菜Vの硬さ、皮の厚さ、剥く皮の量などにより決定され、たとえば、被加工野菜Vを厚く皮剥きする場合には、支持手段55が2周以上回転するように長軸ギア駆動モーター61の回転速度を調整すればよい。本発明では、支持手段55の回転数を長軸ギア駆動モーター61により任意に決定することができ、被加工野菜Vの種類、皮剥き厚さなどに合わせた加工が可能となる。
【0039】
供給部20には、作業者によって保持スペースSに順次被加工野菜Vが載置される。保持スペースSには、先端がピーラー部80側となるように被加工野菜Vを配置する。無端状ベルト21には、複数の保持スペースSが存するから、作業者は、一度に複数の被加工野菜Vを保持スペースSに載置することができ、被加工野菜Vを載置した後、装置から離れることができ、1本ずつ被加工野菜Vを載置する場合に比べて、作業効率を高めることができる。
【0040】
保持スペースSには、ガイド板22,22aが設けられているから、載置された被加工野菜Vは、
図5(a)中、線V1で示すように、直径が小さい場合には第1ガイド板22,22間に安定して保持され、直径が大きい場合には、
図5(b)中、線V2で示すように下方が第1ガイド板22,22に当接して第2ガイド板22a,22a間に安定して保持される。
【0041】
コンベアモーター24の間欠駆動により、無端状ベルト21上の保持スペースSが1つ進み、保持スペースSが野菜取付部50の移行路に到達した状態で、コンベアモーター24は停止して、計測機器29により被加工野菜Vの直径が測定される。制御手段12は、計測機器29により測定された被加工野菜Vの直径に基づき、被加工野菜Vの中心が支持手段55の中心と一致するように高さ調節モーター28を駆動し、無端状ベルト21の先端の高さを調整(センタリング)する。
【0042】
この状態で、搬送用モーター46により周回する搬送用チェーン44に装着された野菜取付部50が供給部20の先端の保持スペースS上を通過する。野菜取付部50には、支持手段55が進行方向先端に取り付けられており、この支持手段55が保持スペースS上で待機する被加工野菜Vの中心に突き刺さり、被加工野菜Vを支持した状態で野菜取付部50が前進する。支持手段55への被加工野菜Vの刺さりが浅い場合であっても、本発明では、次に説明するように、ピーラー部80の最初のピーラー81,81の付勢力を強くしているから、野菜取付部50を前進させることで、被加工野菜Vの先端がピーラー部80の最初のピーラー81,81に当たり、支持手段55は被加工野菜Vに深く突き刺さる。
【0043】
野菜取付部50は、被加工野菜Vを支持手段55に装着した状態でさらに前進する。被加工野菜Vは、基端を支持手段55に支持されているが、先端は自由であるから、その重みによって下方に垂れる。しかしながら、ピーラー部80には、被加工野菜Vの移行路下方に平らな支持プレート91が配置されているから、被加工野菜Vは、
図12に示すように、先端が支持プレート91に当接しつつ、一点鎖線Eのように、若干先端が下方に傾いた状態で進行する。なお、被加工野菜Vの直径に応じて、フレーム昇降機構によりフレーム90を昇降させることにより、直径の異なる被加工野菜Vであっても、傾き状態を良好に維持しながら進行させることができる。
【0044】
被加工野菜Vの先端が、ピーラー部80の一番手前のピーラー81,81に当たると、被加工野菜Vが付勢手段85の付勢力に抗してピーラー81,81を押し広げる。このとき、被加工野菜Vが支持手段55に深く刺さっていない場合であっても、被加工野菜Vがピーラー81,81に当たることで、支持手段55を深く突き刺すことができる。
【0045】
被加工野菜Vの先端が、ピーラー81,81に当接するのとほぼ同時に、被加工野菜取付部50は、ギア54が回転する長軸ギア60と噛合し、回転手段53を介して支持手段55が回転する。そして、支持手段55に支持された被加工野菜Vも共に回転する。被加工野菜Vが野菜取付部50により、回転しながらピーラー81,81間を進行することで、被加工野菜Vは、ピーラー刃82,82によって皮剥きされる。
【0046】
さらに被加工野菜Vが進行すると、一番手前のピーラー81,81は被加工野菜Vによりさらに開放し、開き角度が大きくなると、
図10及び
図11にPで示すように、ピーラー81,81のカバー部86が後方に位置するピーラー81,81と当接する。これにより、一番手前のピーラー81,81は、自らの付勢手段85の付勢力に加えて、当接したピーラー81,81の付勢手段85の付勢力が加わり、被加工野菜Vにより強く当接し、皮剥きが行なわれる。とくに、被加工野菜Vの直径が大きい場合ほど、ピーラー81,81の開き角度は大きくなり、後方のピーラー81,81の付勢力を利用でき、ピーラー刃82,82を被加工野菜Vに強く押し当てて皮剥き能力を高めることができる。
【0047】
被加工野菜Vの先端が、一番手前のピーラー81,81を通過すると、二番目に位置するピーラー81,81を押し広げ、これらのピーラー刃82,82によって皮剥きが進む。剥かれた皮は、ピーラー刃82,82から支持プレート91の両側の隙間92からダストボックス15に落下する。
【0048】
被加工野菜Vを、
図12に一点鎖線Eで示すように、先端が斜め下方に傾いた状態で支持プレート91に当接しながら、回転(矢印F)、進行(矢印G)させることで、被加工野菜Vがピーラー部80から浮き上がることなく、滑らかに回転ぶれすることなく安定して回転する。このため、きれいに、効率的な皮剥きを行なうことができる。とくに、被加工野菜Vは、曲がりや歪みがあるが、先端を斜め下方に傾けた状態で回転させることで、滑らかな回転を維持できる。また、被加工野菜Vが斜め下向きの状態でピーラー部80に当たることで、斜め切り効果により、ピーラー刃82,82が被加工野菜Vに食い込む抵抗を小さくすることができ、きれいに皮剥きを行なうことができる。
【0049】
被加工野菜Vを回転させつつ進行させることにより、被加工野菜Vは、順次ピーラー81,81を押し広げつつ、ピーラー刃82,82により皮剥きが行なわれる。そして、被加工野菜Vが一番後方のピーラー81,81に達する。一番後方のピーラー81,81には、ピーラー刃82にガイド87が取り付けられているから、剥かれた皮は、ガイド87に案内されて、支持プレート91とフレーム90との間の隙間92に落下する。従って、剥かれた皮が被加工野菜Vに付着したまま、皮剥きが完了することはない。
【0050】
搬送用チェーン44は、ピーラー部80の後方で上向きに周回しているから、野菜取付部50は、ピーラー部80を通過した後、支持手段55が上向きに傾動する。これにより、皮剥きが完了した被加工野菜Vは、自重によって支持手段55である十字刃から外れ、野菜排出案内板16に沿って落下する。被加工野菜Vの落下位置には、皮剥きされた被加工野菜Vが投入されるケースなどを置いておくことで、ケース内に順次被加工野菜Vが収容される。
【0051】
なお、供給部20の保持スペースSに被加工野菜Vが載置されていない場合には、空の野菜取付部50がピーラー81,81間を進行する。このとき、ピーラーアーム83に設けられた舟形の開き部材57が、ピーラー81,81を押し広げつつ進行するから、ピーラー刃82,82に支持手段55が当接することはなく、ピーラー刃82が傷むこともない。
【0052】
ピーラー部80を通過した野菜取付部50は、周回する搬送用チェーン44により、旋回し、再度、供給部20に戻る。
【0053】
本発明では、被加工野菜Vの回転数、すなわち、支持手段55の回転数を、長軸ギア駆動モーター61の回転速度により、適宜調整することができる。従って、長軸ギア駆動モーター61の回転速度を制御することで、被加工野菜Vの回転数を調整することで、皮剥き量の増減、或いは、被加工野菜Vの硬さなどに応じて、皮剥きの厚みなどに対する細かなニーズに対応することができる。
【0054】
本発明では、野菜取付部50を進行させる搬送部40、支持手段55を回転させる長軸ギア60及び長軸ギア駆動モーター61は、被加工野菜Vの進行移行路上に配置せず、進行移行路から後退した位置に設けている。従って、搬送用チェーン44や長軸ギア60等の潤滑油が被加工野菜Vに落下し付着することはない。また、剥かれた皮が搬送用チェーン44や長軸ギア60に付着することもないから、これらの動作安定性も確保できる。
【0055】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
10 皮剥き装置
20 供給部
21 無端状ベルト
40 搬送部
50 野菜取付部
80 ピーラー部
81 ピーラー
V 被加工野菜