(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20221109BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20221109BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221109BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20221109BHJP
C09D 5/20 20060101ALI20221109BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20221109BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221109BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20221109BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20221109BHJP
C08F 20/54 20060101ALI20221109BHJP
C08F 2/38 20060101ALI20221109BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20221109BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20221109BHJP
C08F 292/00 20060101ALN20221109BHJP
C08F 291/00 20060101ALN20221109BHJP
C08L 33/26 20060101ALN20221109BHJP
C08L 101/14 20060101ALN20221109BHJP
C08K 3/013 20180101ALN20221109BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D7/43
C09D7/63
C09D7/65
C09D5/20
C09J4/02
C09J11/06
C09J11/04
C09J11/08
C08F20/54
C08F2/38
C08F2/44 Z
C08F2/50
C08F292/00
C08F291/00
C08L33/26
C08L101/14
C08K3/013
(21)【出願番号】P 2019016025
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】青野 智史
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052885(JP,A)
【文献】特開平10-130309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 201/10
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合反応性モノマー(A)、連鎖移動剤(B)及び光重合開始剤(C)を含み、粘度が25℃で100~100,000mPa・sである
、マスキング用光硬化性樹脂組成物であって、成分(A)中、分子内に1つの(メタ)アクリルアミド基を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)を30~100重量%含有することを特徴とする
、マスキング用光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、水溶性高分子(d1)及び無機物を含むチキソ付与剤(d2)からなる群より選択される1種以上の更なる成分(D)を含む、請求項1記載の
マスキング用光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
成分(D)が水溶性高分子(d1)を含み、成分(d1)の重量平均分子量が300~100,000である、請求項2記載の
マスキング用光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
成分(B)が、チオール基を持つ化合物又はα-メチルスチレンダイマーである、請求項1~3のいずれか一項記載の
マスキング用光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
光硬化性樹脂組成物中、成分(B)の含有量が0.7~15重量%である、請求項1~4のいずれか一項記載の
マスキング用光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
ラジカル重合反応性モノマー(A)、連鎖移動剤(B)、光重合開始剤(C)及び水溶性高分子(d1)を含み、粘度が25℃で100~100,000mPa・sである、仮固定用光硬化性樹脂組成物であって、成分(A)中、分子内に1つの(メタ)アクリルアミド基を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)を30~100重量%含有し、成分(d1)の重量平均分子量が300~100,000である、仮固定用光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
成分(B)が、チオール基を持つ化合物又はα-メチルスチレンダイマーである、請求項6記載の仮固定用光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
光硬化性樹脂組成物中、成分(B)の含有量が0.7~15重量%である、請求項6又は7記載の仮固定用光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項記載のマスキング用光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法であって、下記工程(F)~(I)を含む、加工体の製造方法
(F)基材に、光硬化性樹脂組成物を適用して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程、
(G)光硬化性樹脂組成物層にエネルギー線を照射して、光硬化性樹脂組成物の硬化物でマスキングされた基材を得る工程、
(H)光硬化性樹脂組成物の硬化物でマスキングされた基材を加工して、粗加工体を得る工程、及び
(I)粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去して、加工体を得る工程。
【請求項10】
請求項6~8のいずれか一項記載の仮固定用光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法であって、下記工程(A)又は(B)と、(C)~(E)とを含む、加工体の製造方法
(A)(a1)一方の基材に、光硬化性樹脂組成物を適用して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程と、(a2)光硬化性樹脂組成物層の上にもう一方の基材を貼り合わせて、積層体を得る工程と、又は
(B)一方の基材の上にもう一方の基材を重ね合わせた後に、その外周周辺端部又は重ね合わせ部に光硬化性樹脂組成物を適用して、積層体を得る工程と、
(C)工程(A)又は工程(B)で得られる積層体にエネルギー線を照射して、接着体を得る工程と、
(D)接着体を加工して、粗加工体を得る工程と、
(E)粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去して、加工体を得る方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性を有するポリマー(水溶性高分子)は、様々な用途で用いられている。基材などを皮膜で一時的に保護することにより傷つき、汚れの付着、変質等を防止するマスキングや、ある部材を一時的に何か別の部材に接着させる仮固定も、そのような用途の一つである。これらは、目的の加工などの後に取り除く必要があるため、水での洗浄によって除去できるポリマーが好適とされている。
【0003】
特許文献1には、水溶性ポリエステル樹脂を含有するマスキング材を水などの溶剤に溶解させて溶液とし、必要量を塗布した後に一定時間加熱することなどによって溶剤を飛散させて、マスキング材の皮膜を形成することが開示されている。
【0004】
一方で、紫外線(UV)硬化系プラスチックは、成形の容易性、軽量等の特徴により、光学関連材料に幅広く用いられている。特許文献2には、部材を加工する際の仮固定材として、疎水性の成分を含む紫外線硬化性樹脂組成物が開示されている。特許文献2では、仮固定材の硬化膜を有する基材を80℃程の高温の水に数十分間浸漬させて、仮固定材の硬化膜を膨潤させてから、剥離することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-245255号公報
【文献】特開2010-100831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたような、溶液とした後にマスキング材の皮膜を形成する方法は、時間がかかるため大量生産に向かない。さらに、有機溶剤に溶解させて使用するマスキング材は、環境への影響が懸念される。
【0007】
特許文献2に記載されたような、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる成分として一般的に使用されるアクリル樹脂は、紫外線硬化時の酸素阻害によって空気と触れている部分が未硬化になりやすいという問題があり、硬化物の表面に残存する未硬化の液状成分によって、部材や加工装置などが汚染される恐れがある。また、特許文献2に開示された仮固定材の除去方法は、時間がかかる上に、熱に弱い部材には使用できない。
【0008】
本発明は、ディスペンサーや各種印刷法などによって塗付でき、エネルギー線の照射によって硬化して表面乾燥性に優れ、さらにその硬化物が水への高い溶解性をもつ、光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下に関する。
[1]ラジカル重合反応性モノマー(A)、連鎖移動剤(B)及び光重合開始剤(C)を含み、粘度が25℃で100~100,000mPa・sである、仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物であって、成分(A)中、分子内に1つの(メタ)アクリルアミド基を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)を30~100重量%含有することを特徴とする、仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物。
[2]さらに、水溶性高分子(d1)及び無機物を含むチキソ付与剤(d2)からなる群より選択される1種以上の更なる成分(D)を含む、[1]の光硬化性樹脂組成物。
[3]成分(D)が水溶性高分子(d1)を含み、成分(d1)の重量平均分子量が300~100,000である、[2]の光硬化性樹脂組成物。
[4]成分(B)が、チオール基を持つ化合物又はα-メチルスチレンダイマーである、[1]~[3]のいずれかの光硬化性樹脂組成物。
[5]光硬化性樹脂組成物中の成分(B)の含有量が0.7~15重量%である、[1]~[4]のいずれかの光硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ディスペンサーや各種印刷法などによって塗付でき、エネルギー線の照射によって硬化して表面乾燥性に優れ、さらにその硬化物が水への高い溶解性をもつ、光硬化性樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[用語の定義]
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方の意味を有する。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方の意味を有する。
「ラジカル重合反応性モノマー(A)」を「成分(A)」ともいう。「連鎖移動剤(B)」等についても同様である。
【0012】
[仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物]
仮固定又はマスキング用光硬化性樹脂組成物(以下、単に「光硬化性樹脂組成物」ともいう)は、ラジカル重合反応性モノマー(A)、連鎖移動剤(B)及び光重合開始剤(C)を含み、粘度が25℃で100~100,000mPa・sであり、成分(A)中、分子内に1つの(メタ)アクリルアミド基を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)を30~100重量%含有する。
【0013】
<ラジカル重合反応性モノマー(A)>
ラジカル重合反応性モノマー(A)は、ラジカル重合反応性の官能基を有するものであれば特に限定されない。ラジカル重合反応性の官能基は、不飽和二重結合含有基であれば特に限定されないが、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)又は(メタ)アクリロイル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。
【0014】
<<分子内に1つの(メタ)アクリルアミド基を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)>>
ラジカル重合反応性モノマー(A)は、分子内に1つの(メタ)アクリルアミド基を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)を含む。成分(A1)は、ラジカル重合反応性基として(メタ)アクリルアミド基を持つ化合物である。成分(A1)としては、例えば、下記式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0015】
【0016】
〔式中、
R1は、水素原子又はメチル基であり、
R2及びR3は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は、非置換もしくはヒドロキシル基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上で置換されているアリール基であるか、あるいは、
R2及びR3は、これらが結合するN原子と一緒になって、酸素原子を含むことができる脂環式基(好ましくは、モルホリノ基)を形成する〕
【0017】
式(1)において、アルキル基及びヒドロキシアルキル基のアルキル部分の炭素原子数は、1~18であることが好ましく、1~6であることが特に好ましい。アリール基の炭素原子数は6~20であることが好ましい。また、アリール基は、フェニル基であることが好ましい。また、モルホリノ基は、モルホリンの第二級アミンの部分の水素原子が除去された一価の基をいう。
【0018】
成分(A1)としては、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1~4のアルキル基を有するN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1~4のアルキル基を有するN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等の炭素数2~4のアルキル基を有するN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-メチルフェニル)(メタ)アクリルアミド等の非置換又は置換されたアリール基を有する(メタ)アクリルアミド;4-(メタ)アクリロイルモルホリン等の環状構造を有する(メタ)アクリルアミドが挙げられ、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、4-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、光硬化性樹脂組成物の硬化物の水への溶解性(水溶性)がより高まる観点からN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。
成分(A1)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0019】
<<成分(A1)以外のラジカル重合反応性モノマー(A2)>>
成分(A1)以外のラジカル重合反応性モノマー(A2)は、分子中に1つの(メタ)アクリルアミド基を持つラジカル重合反応性モノマー以外のラジカル重合反応性モノマーである。成分(A2)は、特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
【0020】
<<<(メタ)アクリレートモノマー>>
(メタ)アクリレートモノマーとしては、脂環式(メタ)アクリレートモノマー、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー、芳香族(メタ)アクリレートモノマー、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、ヘテロ環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリレートモノマーは、それぞれ、1種又は2種以上の組合せでもよい。例えば、(メタ)アクリレートモノマーは、1種又は2種以上の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーと、1種又は2種以上のヘテロ環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーとの組合せでもよい。
【0022】
脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。また、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーは、ポリオールのポリ(メタ)アクリレート(但し、水酸基を含有する)であってもよい。このようなポリオールのポリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
ヘテロ環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
芳香族(メタ)アクリレートモノマーは、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
(メタ)アクリレートモノマーは、ヘテロ環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー及び水酸基含有アクリレートモノマーからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
成分(A2)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0028】
<連鎖移動剤(B)>
連鎖移動剤(B)は、連鎖移動反応を起こす成分である。ここで、連鎖移動反応とは、ラジカル重合において、成長ラジカルが重合系中の他の化学種と反応し、成長の停止、ラジカルの移動及び成長の再開始を伴う反応をいう。成分(B)としては、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;四塩化炭素、クロロホルム等のハロゲン類;及び、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のチオール基を持つ化合物からなる群から選ばれる一種以上が挙げられ、チオール基を持つ化合物又はα-メチルスチレンダイマーが好ましい。
成分(B)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0029】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)は、エネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物であれば特に限定されない。成分(C)は、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-メチルチオ]フェニル]-2-モルホリノプロパンー1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、オリゴ2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノール、オリゴ2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、イソプロピルチオキサントン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン、2,4-ジエチルチオキサントン、2ークロロチオキサントン、ベンゾフェノン、エチルアントラキノン、ベンゾフェノンアンモニウム塩、チオキサントンアンモニウム塩、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4ジベンゾイルベンゼン、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2,2’ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)1,2’-ビイミダゾール、2,2’ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、4-ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、o-メチルベンゾイルベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル、活性ターシャリアミン、カルバゾール・フェノン系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、ベンゾイル系光重合開始剤などが挙げられる。
【0030】
成分(C)の市販品としては、DKSHジャパン製のKIP-150、BASF製の、Irgacure184、Irgacure819、Irgacure127、Irgacure1173等のIrgacure(登録商標)シリーズ、Darocur1173等のDarocur(登録商標)シリーズ、Lucirin TPO等のLucirin(登録商標)シリーズ、ESACUR日本シイベルヘグナー社のESACURE 1001M等が挙げられる。成分(A)のラジカル反応において未硬化の要因となる酸素阻害を受けにくくするという観点、さらには成分(A)及び水への溶解性の観点からIrgacure1173(イルガキュア1173)やIrgacure184(イルガキュア184)が好ましい。
成分(C)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0031】
<更なる成分(D)>
光硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、更なる成分(D)を含むことができる。成分(D)として、水溶性高分子(d1)、無機物を含むチキソ付与剤(d2)、シランカップリング剤、界面活性剤、スリップ剤、重合禁止剤、光増感剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、溶剤、充填剤(例えば、水溶性可塑剤(d3)、水溶性フィラー(d4)、又は非水溶性フィラー)等が挙げられ、水溶性高分子(d1)、無機物を含むチキソ付与剤(d2)、水溶性可塑剤(d3)、水溶性フィラー(d4)が好ましい。光硬化性樹脂組成物が水溶性高分子(d1)、無機物を含むチキソ付与剤(d2)を含む場合、光硬化性樹脂組成物の粘度を効率的に増加させることができるためさらに好ましい。
成分(D)は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0032】
<<水溶性高分子(d1)>>
水溶性高分子(d1)は、ラジカル重合反応性の官能基を有さず、水及び光硬化性樹脂組成物のいずれにも溶解する性質を有する高分子であれば特に限定されない。成分(d1)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体等のポリオキシアルキレン、ポリビニルアルコール;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;澱粉分解物、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、キサンタンガム等の多糖類;等が挙げられる。
【0033】
水溶性高分子(d1)の重量平均分子量は、300~100,000であることが好ましく、500~50,000であることがより好ましく、500~20000であることが特に好ましい。成分(d1)の重量平均分子量が前記範囲であると、光硬化性樹脂組成物の粘度を効率的に増加させることができ、且つUV硬化後の光硬化性樹脂組成物の水溶性も高い。重量平均分子量の測定方法としては、オリゴマーやポリマー等の分子量が比較的高い成分については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果を、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算する手法が一般に知られている。また、モノマーは分子量分布を有さないため、構造式から求めることができる。
【0034】
<<無機物を含むチキソ付与剤(d2)>>
無機物を含むチキソ付与剤(d2)は、少量の添加で増粘又はチキソ化効果の高いものであれば特に限定されない。成分(d2)に含まれる無機物としては、フュームドシリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、カオリン、クレー、活性白土、ケイ砂、ケイ石、ケイ藻土、無水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸マグネシウム、タルク、パーライト、ホワイトカーボン、マイカ微粉末、ベントナイト等のなどが挙げられる。また、成分(d2)は、無機物のみからなっていてもよく、脂肪酸及び/又は樹脂酸で表面処理された無機物であってもよい。
【0035】
<<水溶性可塑剤(d3)、水溶性フィラー(d4)>>
水溶性可塑剤(d3)及び/又は水溶性フィラー(d4)は、光硬化性樹脂組成物及びその硬化物の硬さ等の性質をコントロールする際に添加される成分である。
水溶性可塑剤(d3)とは、高分子ではなく、水及び光硬化性樹脂組成物のいずれにも溶解する、ラジカル反応性のない材料をいう。水溶性可塑剤の分子量は、500未満であることが好ましく、300未満であることが特に好ましい。
水溶性フィラー(d4)とは、光硬化性樹脂組成物には溶解しないが、水に溶解する、フィラーをいう。
成分(d3)及び成分(d4)は、光硬化性樹脂組成物で通常用いられている成分であれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。
【0036】
上記した成分以外の更なる成分は、光硬化性樹脂組成物で通常用いられている成分であれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。
【0037】
(組成及び特性等)
<粘度>
光硬化性樹脂組成物の粘度は、25℃で、100~100,000mPa・sである。光硬化性樹脂組成物の粘度が、25℃で、100~100,000mPa・sであるため、ディスペンサーや各種印刷法などによって塗付できる。光硬化性樹脂組成物の粘度は、25℃で、200~80,000mPa・sであることが好ましく、300~50,000mPa・sであることが特に好ましい。粘度は、E型粘度計を用い、大気圧下、25℃で、適切なコーンプレートと回転速度を選定して測定した値である。
【0038】
<組成>
光硬化性樹脂組成物において、成分(A)中、成分(A1)の含有量は、30~100重量%である。UV硬化性がより優れる観点から、成分(A)中の成分(A1)の含有量は、35~100重量%であることが好ましく、40~100重量%であることがより好ましく、80重量%~100重量%がさらに好ましく、100重量%が特に好ましい。成分(A)から成分(A1)を除いた残余は、成分(A2)である。
【0039】
成分(A)は、光硬化性樹脂組成物の主剤として、光硬化性樹脂組成物中、55重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが特に好ましい。
【0040】
成分(B)は、エネルギー線硬化性及びUV硬化後の水溶性等の観点から、光硬化性樹脂組成物中、0.7~15重量%であることが好ましく、1.0~10重量%であることがより好ましく、1.0~7.0重量%であることが特に好ましい。
【0041】
成分(C)は、エネルギー線硬化性及びUV硬化後の水溶性等の観点から、光硬化性樹脂組成物中、0.1~10重量%であることが好ましく、0.5~8.0重量%であることがより好ましく、1.0~7.0重量%であることが特に好ましい。
【0042】
光硬化性樹脂組成物が成分(D)を含む場合、成分(D)の含有量は、成分(A)及び成分(D)の合計100重量部に対して、50重量部未満であることが好ましく、1~40重量部であることがより好ましく、1~20重量部であることが特に好ましい。
【0043】
(光硬化性樹脂組成物の製造方法)
光硬化性樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び任意成分である更なる成分(成分(D)等)を混合する工程を含む製造方法により得られる。
【0044】
[用途]
光硬化性樹脂組成物は、仮固定用の光硬化性樹脂組成物(仮固定材)又はマスキング用の光硬化性樹脂組成物(マスキング材)として用いることができる。光硬化性樹脂組成物は、水晶振動子、ガラスレンズ、プラスチックレンズ及び光ディスクの加工における仮固定に適用可能である。また、光硬化性樹脂組成物は、プリント配線板、電子部品、自動車部品等のマスキングに適用可能である。
【0045】
(仮固定材)
仮固定とは、一方の部材をもう一方の部材に、光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して、一時的に接着させることをいう。光硬化性樹脂組成物の硬化物は、後に除去されて、これにより、一方の部材ともう一方の部材との光硬化性樹脂組成物の硬化物による接着性が失われ、仮固定の目的を達成する。
【0046】
<仮固定方法>
仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた部材の仮固定方法は、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いて基材を貼り合わせる、又は2つの部材を重ねてその外周部に光硬化性樹脂組成物を塗布する工程と、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を硬化させて基材を接着して、仮固定する工程と、仮固定した基材を加工する工程と、加工した基材を水系洗浄剤と接触させて、硬化した仮固定用の光硬化性樹脂組成物を除去する工程とを含む。
【0047】
また、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法としては、下記工程(A)又は(B)と、(C)~(E)とを含む方法が挙げられる。
(A)(a1)一方の基材に、光硬化性樹脂組成物を適用して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程と、(a2)光硬化性樹脂組成物層の上にもう一方の基材を貼り合わせて、積層体を得る工程と、又は
(B)一方の基材の上にもう一方の基材を重ね合わせた後に、その外周周辺端部又は重ね合わせ部に光硬化性樹脂組成物を適用して、積層体を得る工程と、
(C)工程(A)又は工程(B)で得られる積層体にエネルギー線を照射して、接着体を得る工程と、
(D)接着体を加工して、粗加工体を得る工程と、
(E)粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去して、加工体を得る方法を含む。
【0048】
工程(A)は、工程(a1)及び工程(b1)である。工程(a1)は、一方の基材に、光硬化性樹脂組成物を適用して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程である。基材の材質は、特に制限はないが、紫外線を透過できる材料からなる基材が好ましい。このような紫外線を透過できる材料としては、水晶、ガラス、プラスチック等が挙げられる。
【0049】
光硬化性樹脂組成物を基材に適用する方法は、特に限定されず、刷毛塗り法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、スプレー法、ディップ法、バーコーター、ロールコーター、スピンコーター、ダイコーター、ディスペンサー、その他の公知の塗布手段が挙げられる。光硬化性樹脂組成物を適用して形成される硬化性樹脂組成物層の厚みは、特に限定されないが、10~500μmであることが好ましく、30~350μmであることが特に好ましい。
【0050】
工程(a2)は、光硬化性樹脂組成物層の上にもう一方の基材を貼り合わせて、積層体を得る工程である。光硬化性樹脂組成物層を形成した基材の上に、硬化樹脂層に接するようにもう一方の基材を載置して、基材同士を貼り合わせることにより積層体が得られる。工程(a2)において、積層体を加圧処理する工程を含んでいてもよい。
【0051】
工程(B)は、一方の基材の上にもう一方の基材を重ね合わせた後に、その外周周辺端部又は重ね合わせ部に光硬化性樹脂組成物を適用して、積層体を得る工程である。工程(B)では、一方の基材の上に、もう一方の基材を載置し、その外周部周辺端部又は重ね合わせ部において、一方の基材ともう一方の基材とが光硬化性樹脂組成物によって固定されるように、光硬化性組成物が適用される条件であれば任意である。光硬化性樹脂組成物の適用方法は、工程(a1)で前記した方法が挙げられる。
【0052】
工程(C)は、工程(A)又は工程(B)で得られる積層体にエネルギー線を照射して、接着体を得る工程である。積層体にエネルギー線を照射することにより、一方の基材及びもう一方の基材の間の光硬化性樹脂組成物が硬化し、基材同士が接着する。
【0053】
エネルギー線は、特に限定されず、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線を使用することができる。エネルギー線は、紫外線であるのが好ましい。紫外線の光源としては、紫外線(UV)が発せられる光源を使用することができる。紫外線の光源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、ハロゲンランプ、パルスキセノンランプ、LED等が挙げられる。エネルギー線の積算光量は、例えば、365nmにおいて500~10,000mJ/cm2であることが好ましく、1,000~8,000mJ/cm2であることが特に好ましい。
【0054】
工程(D)は、接着体を加工して、粗加工体を得る工程である。加工としては、例えば、仮固定された接着体を所望の形状に切断、研削、研磨、孔開けを施すこと、塗装すること等が挙げられ、得られる加工体に応じて適宜設定される。
【0055】
工程(E)は、粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去して、加工体を得る方法である。光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去する方法は、粗加工体と水系洗浄剤とを接触させる方法が挙げられ、例えば、水系洗浄剤を光硬化性樹脂組成物の硬化物にスプレー塗布する方法、水系洗浄剤中に粗加工体を浸漬する方法等が挙げられる。粗加工体と水系洗浄剤とを接触させる方法により、粗加工体から光硬化性樹脂組成物の硬化物は、基材から剥離するか、溶解することにより除去される。
【0056】
水系洗浄剤としては、水、水と界面活性剤との混合溶媒、又は水と親水性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
界面活性剤は、非イオン性、陰イオン性、および陽イオン性からなるものが挙げられる。界面活性剤は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1,2-プロパンジオール等のアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル;シクロヘキサノン等が挙げられる。親水性有機溶媒は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
水系洗浄剤は、水もしくは水と界面活性剤との混合溶媒であることが好ましい。
【0057】
工程(E)における水系洗浄剤の温度は、特に限定されず、25~70℃であることが好ましい。また、工程(E)における粗加工体と水系洗浄剤との接触時間は、粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去できる条件であれば特に限定されず、当業者によって適宜設定できる。光硬化性樹脂組成物の硬化物の水への溶解を加速させる観点から、超音波等により水系洗浄液を振動させることが好ましい。工程(E)により、仮固定の目的は達成される。
【0058】
仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法により得られる加工体としては、水晶振動子、ガラスレンズ、プラスチックレンズ及び光ディスクが挙げられる。
【0059】
(マスキング材)
マスキングとは、基材等を光硬化性樹脂組成物の硬化物で一時的に保護することにより、当該基材の傷つき、汚れの付着、変質等を防止すること、又は成膜工程での配線上の成膜を防止すること等をいう。光硬化性樹脂組成物の硬化物は、後に除去されて、光硬化性樹脂組成物の硬化物によるマスキングの目的を達成する。光硬化性樹脂組成物は、被マスキング用の基材等(例えば、プリント配線板、電子部品)を一時的にマスキングするために用いることができる。
【0060】
<マスキング方法>
基材のマスキング方法としては、例えば、基材の表面の一部又は全部を、光硬化性樹脂組成物の硬化物で一時的に覆う方法が挙げられる。基材のマスキング方法によって、基材が取り扱われる場合や複数の基材が積み重ねられる場合などに、基材間に硬化膜が介在することで、基材が直接接触しなくなり、基材にキズ等の破損が生じること、異物が付着すること等を、抑制できる。また、自動車部品等を塗装する際、塗装されない領域をマスキング材の硬化膜で一時的に覆うことによって、塗装されない領域への塗料の飛び散りを抑制することができる。
【0061】
また、マスキング用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法としては、下記工程(F)~(I)を含む方法が挙げられる。
(F)基材に、光硬化性樹脂組成物を適用して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程、
(G)光硬化性樹脂組成物層にエネルギー線を照射して、光硬化性樹脂組成物の硬化物でマスキングされた基材を得る工程、
(H)光硬化性樹脂組成物の硬化物でマスキングされた基材を加工して、粗加工体を得る工程、及び
(I)粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去して、加工体を得る工程。
【0062】
基材への光硬化性樹脂組成物の塗布方法、光硬化性樹脂組成物の硬化方法、基材の加工方法、光硬化性樹脂組成物の硬化物の除去方法としては、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法において前記した方法が挙げられる。
【0063】
マスキング用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法により得られる加工体としては、プリント配線板、ディスプレイ等の電子部品、自動車部品等が挙げられる。
【実施例】
【0064】
本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。表における値は、特に断らない限り重量部である。
【0065】
(使用成分)
<成分(A):ラジカル重合反応性モノマー>
<<成分(A1):分子内に1つの(メタ)アクリルアミド基を持つラジカル重合反応性モノマー>>
HEAA:N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(KJケミカル製)
DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド(KJケミカル製)
DEAA:N,N-ジエチルアクリルアミド(KJケミカル製)
ACMO:4-アクリロイルモルホリン(KJケミカル製)
<<成分(A2):その他のラジカル重合反応性モノマー>>
FA-THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート(日立化成製)
HO-250:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学製)
<成分(B):連鎖移動剤>
MSD-100:α-メチルスチレンダイマー(三井化学製)
カレンズMT PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工製)
カレンズMT BD1:1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工製)
<成分(C):光重合開始剤>
イルガキュア1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(BASF製)
<成分(D):更なる成分>
<<成分(d1):水溶性高分子>>
PEG#1000:ポリエチレングリコール(ライオン製)(重量平均分子量(Mw):1,000)
PEG#300:ポリエチレングリコール(ライオン製)(重量平均分子量(Mw):300)
Klucel E:ヒドロキシプロピルセルロース(ASHLAND製)(重量平均分子量(Mw):80,000)
HPC SSL:ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製)(重量平均分子量(Mw):40,000)
アミコール1:澱粉分解物(日澱化学製)(重量平均分子量(Mw):4,500)
ペノンJE66:ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉(日澱化学製)(重量平均分子量(Mw):16,000)
<<成分(d2):無機物を含むチキソ付与剤>>
TG308F:フュームドシリカ:キャボット・スペシャリティーケミカルズ社製
【0066】
〔評価条件〕
(1)粘度
粘度は、E型粘度計(東機産業製RE-105U)を用いて25℃で測定した。
【0067】
(2)UV硬化性
スライドガラス基板上に光硬化性樹脂組成物をディスペンサー法にて15mg塗布してから、メタルハライドランプ(アイグラフィックス製、M06-L31)にて3,000mJ/cm2のUVを照射した後、指触にて硬化しているかどうかを確認した。
○:硬化している(表面が乾燥しており、液(光硬化性樹脂組成物)が指に付着しない)
×:表面が硬化していない(液(光硬化性樹脂組成物)が指に付着する)
【0068】
(3)密着性
上記の「(2)UV硬化性」にて、UV硬化した後の光硬化性樹脂組成物を24時間放置してから目視で観察し、スライドガラス基板から剥がれていないかどうかを確認した。
○:剥がれなし
×:剥がれあり
【0069】
(4)水溶性
上記の「(2)UV硬化性」を確認した試験片を2Lビーカーに入れ、温度20℃の水を200g注いだ。そのビーカーを超音波洗浄器(エスエヌディー製、US-20PS)に入れて最も弱いレベル(5段階の1段目)の超音波をかけた。その後、試験片を取り出し、目視で光硬化性樹脂組成物が残っているかどうかを確認した。
◎:光硬化性樹脂組成物が3分以内に全て溶解した
○:光硬化性樹脂組成物が3分超5分以内に全て溶解した
×:光硬化性樹脂組成物が5分以内では溶解しなかった
【0070】
〔光硬化性樹脂組成物の製造〕
表1~表2に記載の配合に従い、成分(A)~成分(D)の成分を撹拌機付きフラスコで均一になるまで30分攪拌混合した。このうち、成分(D)を含むものに関しては60℃で加熱しながらさらに30分~1時間撹拌し、固体成分を溶解させることにより、実施例及び比較例の液状の光硬化性樹脂組成物を得た。
【0071】
結果を表1~表2に示す。各成分の配合量の値は全て重量部である。
【0072】
【0073】
【0074】
表1及び表2から、実施例の光硬化性樹脂組成物は、UV硬化性に優れ、さらにその硬化物の水への溶解性が高かった。実施例1~3の結果より、成分(B)は、光硬化性樹脂組成物中、少なくとも10重量%程度まで添加しても性能に影響がないことがわかった。実施例8と実施例12との比較により、成分(B)の含有率が高くなる場合、水溶性がより良くなった。実施例1、4、6、7、17、18との比較により、成分(D)の分子量が好ましい範囲である場合、粘度が高くなり、且つ水溶性がより良くなった。一方、比較例1の組成物は、成分(B)を含まないため、得られる硬化物の水溶性が劣っていた。また、比較例2及び3の組成物は、成分(A1)を含まないため、組成物のUV硬化性が劣っていた。