IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケモマブ リミテッドの特許一覧

特許7173589肝臓病の処置における使用のための抗CCL24(エオタキシン2)抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】肝臓病の処置における使用のための抗CCL24(エオタキシン2)抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20221109BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C07K16/46
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61P43/00 111
A61P37/02
A61P1/16
A61P35/00
C12N15/13
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019548321
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 IL2018050276
(87)【国際公開番号】W WO2018163185
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】251024
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】516262000
【氏名又は名称】ケモマブ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ChemomAb Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】モル,アディ
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/132790(WO,A2)
【文献】特表2012-516150(JP,A)
【文献】Matucci-Cerinic, M., et al.,"A novel antibody blocking CCL24/CCR3 reduces chemokinesis of immune cells and the transition of fibroblasts to myofibroblasts in systemic sclerosis (SSC).",J Scleroderma Relat Disord,2016年,Vol.1, No.1,pp.37-38
【文献】Lei, J., et al.,"CCL24 contributes to HCC malignancy via RhoB- VEGFA-VEGFR2 angiogenesis pathway and indicates poor prognosis.",Oncotarget,2016年12月22日,Vol.8, No.3,pp.5135-5148
【文献】Bataller, R., et al.,"Liver fibrosis.",J Clin Invest,2005年,Vol.115, No.2,pp.209-218
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓病理の処置に用いるための医薬組成物であって、当該医薬組成物が、(i)完全ヒト化抗CCL24抗体又はその任意の抗原結合断片、及び(ii)薬学的に許容され得る担体を含み、
前記抗体が、配列番号1~6で示される6つのCDR配列と、配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含み、
前記肝臓病理が、胆汁鬱滞及び肝内胆汁鬱滞性肝疾患からなる群から選択される
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記抗原結合断片が、Fv、単鎖Fv(scFv)、Fab、F(ab)’、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物が、少なくとも1つの追加の治療薬と組み合わせて投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物が、前記少なくとも1つの追加の治療薬の投与前、投与と同時、又は投与後に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物が、少なくとも1つの追加の治療薬を更に含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の医薬組成物において、前記少なくとも1つの追加の治療薬が、ファルネソイドX受容体(FXR)作動薬、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)作動薬、抗ケモカイン又は抗サイトカインモノクローナル抗体、小分子、抗炎症剤、抗線維化剤、及びステロイドからなる群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医薬組成物において、前記肝臓病理が、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、及びPSCから生じる胆管細胞癌からなる群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓病の処置における抗CCL24(エオタキシン2)モノクローナル抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド24(CCL24又はエオタキシン2)は、特に好酸球、線維芽細胞及びT細胞の走化性を誘導することにより、細胞輸送を促進し、C-Cケモカイン受容体タイプ3(CCR3)複合体を介して炎症活性を調節するケモカインである。CCL24はいくつかの炎症性細胞により産生され、その受容体CCR3は、好酸球、T細胞、単球及び線維芽細胞上に存在する。
【0003】
CCL24は、アレルギー応答中にCCL24のレベルの有意な上昇が存在するため、アレルギー状態に関与することが知られている。
【0004】
国際公開第2010/086854号パンフレットは、心血管系、自己免疫性及び炎症性疾病の動物モデルに有効であったCCL24に指向される抗体を開示している。
【0005】
Mor et al(2013 WJCD.Vol.3 No.4:339-346)は、CCL24に対して調製されたモノクローナル抗体が、フィブロネクチンに対するリンパ球の接着を減弱させ、血管内皮増殖因子(VEGF)に向かうそれらの遊走を強力に阻害したことを示している。抗体はまた、アポリポタンパク質E(ApoE)ノックアウトマウスにおいて動脈硬化巣を有意に減少させた。Ablin et al.(2010;V161(2):276-83)及びMausner et al.(World J.Immunol.2013 Mar;3(1):7-14)に記載されているように、CCL24の阻害は、関節リウマチのラットモデル、及び実験的自己免疫性脳脊髄炎のマウスモデルにおいて保護効果を示した。
【0006】
国際公開第2015/132790号パンフレットは、ケモカインCCL24における独特のエピトープに指向される単離された多特異性抗体を開示し、ここで抗体は、追加のCCR3結合ケモカインに結合する。これらの抗体は、全身性硬化症及び突発性肺線維症(IPF)のハツカネズミモデルにおいて、線維化及び炎症性の特徴を阻害するのに有効であることが示された。
【0007】
Lei Jin et al(2017 Oncotarget,Vol.8(no.3):5135-5148)は、CCL24がRhoB-VEGFA-VEGFR2血管新生を介して肝細胞癌腫(HCC)に寄与し、予後不良を示すことを示している。しかしながら、肝炎、非アルコール性脂肪肝(NAFL)を含む非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD、胆汁うっ滞、並びに原発性硬化性胆管炎(PSC)及び原発性胆汁性肝硬変(PBC)等の肝内胆汁うっ滞性肝疾患等の肝臓病理におけるCCL24の関与は、以前に示されていなかった。
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明は、その第1の態様において、肝臓病理の処置における使用のための、単離された抗CCL24(エオタキシン2)抗体、又はその任意の抗原結合断片を提供する。
【0009】
一実施形態において、前記肝臓病理は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、胆汁うっ滞、肝内胆汁うっ滞性肝疾患、肝炎(例えばアルコール性肝炎)及び肝硬変からなる群から選択される。
【0010】
一実施形態において、前記NAFLDは、非アルコール性脂肪肝(NAFL)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0011】
一実施形態において、前記肝臓病理は、NASHから生じる肝細胞癌腫である。
【0012】
一実施形態において、前記肝内胆汁うっ滞性肝疾患は、原発性硬化性胆管炎(PSC)又は原発性胆汁性肝硬変(PBC)である。
【0013】
一実施形態において、前記肝臓病理は、PSCから生じる胆管細胞癌である。
【0014】
別の態様では、本発明は:
a.肝臓損傷による肝臓酵素の高い血清レベルの低下;
b.肝臓損傷若しくは壊死の減少;及び/又は
c.筋線維芽細胞への肝星細胞(HSC)の移行の減弱
における使用のための、単離された抗CCL24抗体、又はその任意の抗原結合断片に関する。
【0015】
一実施形態において、単離された抗CCL24抗体は、モノクローナル抗体であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、単離された抗CCL24抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト化抗体であり得る。
【0017】
更なる実施形態において、その抗原結合断片は、Fv、単鎖Fv(scFv)、抗原に結合することが可能な重鎖可変領域、抗原に結合することが可能な軽鎖可変領域、Fab、F(ab)2’及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
一実施形態において、前記抗体は:
a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1又はその変異体;
b)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2又はその変異体;及び
c)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3又はその変異体;
を含む重鎖可変領域と、
d)配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1又はその変異体;
e)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2又はその変異体;及び
f)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3又はその変異体
を含む軽鎖可変領域とを含む完全ヒト化抗体である。
【0019】
一実施形態において、前記抗体は、配列番号7で示される重鎖可変領域又はその変異体と、配列番号8で示される軽鎖可変領域又はその変異体とを含む完全ヒト化抗体である。
【0020】
一実施形態において、前記抗体は、配列番号1~6で示される6つのCDR配列、並びに配列番号7に対して少なくとも90%配列相同性を有する重鎖可変領域及び配列番号8に対して少なくとも90%配列相同性を有する軽鎖可変領域を含む完全ヒト化抗体である。
【0021】
一実施形態において、前記抗体は:
(a)NSGMN(配列番号1)を含む重鎖CDR1、WINTYNGEPTYTDDFKG(配列番号2)を含む重鎖CDR2、及びHSYGSSYAMDN(配列番号3)を含む重鎖CDR3;並びに
(b)KASQSVDYDGDSYMN(配列番号4)を含む軽鎖CDR1、VASNLKS(配列番号5)を含む軽鎖CDR2、及びQQSNEEPWT(配列番号6)を含む軽鎖CDR3を含む抗体と同じエピトープに結合する。一実施形態において、前記抗体は、少なくとも1つの追加の治療薬と組み合わせて投与される。
【0022】
一実施形態において、前記少なくとも1つの追加の治療薬は、ファルネソイドX受容体(FXR)作動薬、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)作動薬、抗ケモカイン又は抗サイトカインモノクローナル抗体、小分子、抗炎症剤、抗線維化剤、及びステロイドからなる群から選択される。
【0023】
別の態様では、本発明は:
a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1又はその変異体;
b)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2又はその変異体;及び
c)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3又はその変異体;
を含む重鎖可変領域と、
d)配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1又はその変異体;
e)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2又はその変異体;及び
f)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3又はその変異体;
を含む軽鎖可変領域とを含む完全ヒト化抗体と、
薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物を提供し;前記医薬組成物は、肝臓病理の処置に使用するためのものである。
【0024】
一実施形態において、前記完全ヒト化抗体は、配列番号7に対して少なくとも90%配列相同性を有する重鎖可変領域と、配列番号8に対して少なくとも90%配列相同性を有する軽鎖可変領域とを更に含む。一実施形態において、前記医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬と組み合わせて投与される。
【0025】
一実施形態において、前記医薬組成物は、前記少なくとも1つの追加の治療薬の投与前、投与と同時、又は投与後に投与される。
【0026】
一実施形態において、前記医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬を更に含む。
【0027】
一実施形態において、前記少なくとも1つの追加の治療薬は、ファルネソイドX受容体(FXR)作動薬、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)作動薬、抗ケモカイン又は抗サイトカインモノクローナル抗体、小分子、抗炎症剤、抗線維化剤、及びステロイドからなる群から選択される。
【0028】
別の態様では、本発明は、肝臓病理の処置方法を提供し、当該方法は、それを必要とする患者に、治療的に許容され得る量の:
a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1又はその変異体;
b)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2又はその変異体;及び
c)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3又はその変異体;
を含む重鎖可変領域と、
d)配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1又はその変異体;
e)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2又はその変異体;及び
f)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3又はその変異体
を含む軽鎖可変領域とを含む完全ヒト化抗体、又は本発明の医薬組成物を、投与することを含む。
【0029】
更なる態様では、本発明は、肝臓損傷による肝臓酵素の血清レベルを低下させる、及び/又は肝臓損傷若しくは壊死を減少させる、及び/又は筋線維芽細胞への肝星細胞(HSC)の移行を減弱させる方法を提供し、当該方法は、それを必要とする患者に、治療的に許容され得る量の:
a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1又はその変異体;
b)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2又はその変異体;及び
c)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3又はその変異体;
を含む重鎖可変領域と、
d)配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1又はその変異体;
e)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2又はその変異体;及び
f)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3又はその変異体
を含む軽鎖可変領域とを含む完全ヒト化抗体、又は本発明の医薬組成物を投与することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記完全ヒト化抗体は、配列番号7に対して少なくとも90%配列相同性を有する重鎖可変領域と、配列番号8に対して少なくとも90%配列相同性を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0031】
一実施形態において、本方法は、少なくとも1つの追加の治療薬を投与することを更に含む。
【0032】
一実施形態において、前記少なくとも1つの追加の治療薬は、ファルネソイドX受容体(FXR)作動薬、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)作動薬、抗ケモカイン又は抗サイトカインモノクローナル抗体、小分子、抗炎症剤、抗線維化剤、及びステロイドからなる群から選択される。
【0033】
別の態様では、本発明は、細胞におけるCCR5活性化を低減又は阻害する方法を提供し、当該方法は:
a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1又はその変異体;
b)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2又はその変異体;及び
c)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3又はその変異体;
を含む重鎖可変領域と、
d)配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1又はその変異体;
e)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2又はその変異体;及び
f)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3又はその変異体
を含む軽鎖可変領域とを含む完全ヒト化抗体を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本明細書に開示する主題をより深く理解するために、またそれがどのように実際に行われ得るかを例示するために、ここで実施形態を、添付の図面を参照して、非限定的な例のみとして記載する:
【0035】
図1図1Aは、酵素結合免疫吸着剤アッセイ(ELISA)により測定した、対照(20人の健康な対象)と比較した、低及び高Fib4スコアで分割した55人のNAFLD患者におけるCCL24(エオタキシン2)の循環全身レベルを示すグラフである。結果は、ピコグラム/ミリリットル(pv-P値)で示される。線維症4スコア(Fib4)計算:(年齢xAST)/(血小板x(sqr(ALT))。図1B~1Mは、健康な対照と比較した、NAFLD患者からのヒトPBMC上の代表的なCCR3発現を示すFACS画像である。図1B~1Dは、各々、3人のNAFLD患者においてPE標識抗CCR3抗体により測定したCCR3染色を表す。図1E~1Gは、各々、3人のNAFLD患者の各々に関する、対応するCCR3染色/側方散乱、即ち異なる血液細胞集団のCCR3発現のレベルを表す。図1H~1Jは、各々、3人の健康な志願者における抗CCR3抗体を使用したCCR3染色を表す。図1K~1Mは、各々、3人の健康な患者の各々に関する、対応するCCR3染色/側方散乱範囲を表す。図1Nは、FACSにより測定した、対照と比較した10人のNAFLD患者からの末梢血単核細胞におけるCCR3の発現を示すグラフである。***pv≦0.005
図2図2A~2Gは、抗CCL24抗体(即ち、ハツカネズミCCL24 mAb CM101)又は抗CCR3抗体で染色した、NASH患者から得たヒト肝臓生検の代表的な外観を示す写真である。図2A~2Cは、3人の異なる患者(各々、患者A~C)の肝臓生検を表す。図2Dは、健康な肝臓の生検を示し、陰性対照としての役割を果たす。図2Eは、健康な対象のリンパ節の生検を示し、陽性対照としての役割を果たす。図2F及び2Gは、NASH肝臓生検においてケモカイン受容体CCR3に関して染色した肝臓切片を表す。
図3図3Aは、CCL24ノックアウトマウスと比較した、野生型(WT)マウスにおける肝臓酵素ALTのレベルを示すグラフである。図3Bは、CCL24ノックアウトマウスと比較した、野生型マウスにおける肝臓酵素ALPのレベルを示すグラフである。図3Cは、CCL24ノックアウトマウスと比較した、野生型マウスにおけるビリルビンレベルを示すグラフである。図3Dは、sircolにより測定した、CCL24ノックアウトマウスと比較した、野生型マウスにおけるコラーゲン濃度を示すグラフである。図3Eは、CCL24ノックアウトマウスと比較した、野生型マウスのMCD(メチオニンコリン欠乏)誘導NASHモデルにおけるNAFLD活性化スコアを示すグラフである。図3Fは、HE染色した、通常の食餌を受容した野生型マウスの肝臓組織学的切片の規模x5(図3F)及び規模x20(図3G)における写真である。図3Hは、HE染色した、MCD食餌を受容した野生型マウスの肝臓組織学的切片の規模x5(図3H)及び規模x20(図3I)における写真である。図3Jは、HE染色した、MCD食餌を受容したCCL24ノックアウトマウスの肝臓組織学的切片の規模x5(図3J)及び規模x20(図3K)における写真である。
図4図4A~4Dは、MCD食餌を給餌し、異なる濃度の抗CCL24モノクローナル抗体(0.05、0.5及び5mg/kg CM101)又はPBS(ビヒクル)で処置したマウスにおけるAST(図4A)、ALT(図4B)、ビリルビン(図4C)又はコラーゲン(図4D)のレベルを示すグラフである。図4E及び4Fは、MCD誘導NASH実験マウスの肝臓組織学的切片の写真である。図4G及び4Hは、0.05mg/kgのCM101マウスで処置したMCD誘導NASH実験マウスの肝臓組織学的切片の写真である。図4I及び4Jは、0.5mg/kgのCM101で処置したMCD誘導NASH実験マウスの肝臓組織学的切片の写真である。図4K及び4Lは、5mg/kgのCM101で処置したMCD誘導NASH実験マウスの肝臓組織学的切片の写真である。図4Mは、異なる濃度のCM101で処置したMCD誘導NASH実験マウスにおけるNAFLD活性スコアを示すグラフである。図4Nは、異なる濃度のCM101で処置したMCD誘導NASH実験マウスの肝臓におけるCCL24のレベルを示すグラフである。**pv≦0.05。
図5図5A~5Nは、非アルコール性脂肪性肝炎のSTAMモデルにおける抗CCL24モノクローナル抗体(CM101-7.5mg/kg、n=8)又は対照IgG(n=8)を用いた処置の効果を示すグラフ及び画像である。図5A~5Dは、対照IgG(図5A及び図5B)又はCM101抗体(図5C及び図5D)で処置したH&E染色肝臓切片の代表的な画像である。図5Eは、NAFLD活性スコア(NAS)を示すグラフである。図5Fは、肝細胞風船様腫大スコアを示すグラフである。図5G及び図5Hは、対照IgGで処置後のシリウスレッド染色により評価した肝臓線維症の画像である。図5I及び図5Jは、CM101抗体で処置後のシリウスレッド染色により評価した肝臓線維症の画像である。図5Kは、CM101抗体、対、対照で処置したマウスにおける平均シリウスレッド染色を示すグラフである。図5L~5Mは、対照IgG(図5L)又はCM101抗体(図5M)で処置後の肝臓切片におけるα-SMA発現により評価した肝臓線維症の代表的な画像である。図5Nは、CM101抗体、対、対照で処置したマウスにおけるα-SMA発現を比較するグラフである。
図6図6A~6Wは、チオアセトアミド(TAA)毒性誘導肝臓線維症ラットモデル[無処置(n=5)、TAA誘導(n=10)及びTAA+CM101(2.5mg/kg)処置ラット(n=10)]における抗CCL24モノクローナル抗体(CM101)による処置の効果を示すグラフ及び画像である。図6A~6Iは、3匹の健康なラットからの対照肝臓(図6A~6C)、TAA誘導線維症を有する3匹のラットからの肝臓(図6D~6F)及びCM101抗体で処置したTAA誘導線維症を有する3匹のラットからの肝臓(図6G~6I)を含む、ラット肝臓の代表的な肉眼画像である。図6Jは、肝臓酵素ALP、AST及びALTのレベルを示すグラフである。図6K~6Tは、無処置動物(図6K~6L)、TAA誘導線維症を有する2匹の動物(図6O~6R)及びCM101抗体で処置したTAA誘導線維症を有する2匹の動物(図6S~6T)の肝臓切片におけるコラーゲン沈着に関するH&E染色及びシリウスレッド染色の代表的な画像である。図6U~6Vは、線維症(図6U)及び炎症(図6V)のレベルを示す2つのグラフである。図6Wは、sircolにより測定したコラーゲン含有率を表すグラフである。
図7図7A~7Dは、PSC患者(図7C~7D)と比較した、健康な対照(図7A~7B)からのヒトPBMC上の代表的なCCR3発現を示すFACS図である。図7Eは、健康な志願者、対、PSC患者におけるCCR3発現の百分率をまとめたグラフである。図7F~7Gは、抗CCL24抗体で染色したPSC患者からの肝臓切片を示す写真である。図7H~7Iは、抗CCR3抗体で染色したPSC患者からの肝臓切片を示す写真である。
図8図8は、ビヒクルと比較した、抗CCL24モノクローナル抗体(5mg/kgのCM101)で処置したPSC誘導実験マウスモデルにおける肝臓酵素を示すグラフ(図8A~8D)、及び代表的な写真(図8E~8N)を含む組織学的肝臓評価である。図8A~8Dは、CM101抗体で処置したPSC誘導実験マウスモデルにおけるALKホスファターゼレベル(図8A)、総ビリルビンホスファターゼレベル(図8B)、ASTレベル(図8C)及びALTレベル(図8D)を示すグラフである。図8E~8Nは、規模x10(図8E)及びx40(図8F)での健康な対照;規模x10(図8I)及びx40(図8J)でのANIT処置マウス、並びに規模x10(図8K~8M)及びx40(図8L~8N)でのCM101抗体を用いたANIT処置マウスの代表的な写真を含む組織学的肝臓切片のHE染色である。
図9図9A~9Fは、偽手術対照(図9A及び図9B)(n=5)、PBSで処置した動物(図9C及び図9D)(n=10)、及び抗CCL24モノクローナル抗体(CM101)で処置した動物(図9E及び図9F)(n=10)の胆管炎ラットモデル(BDL)における線維症に関するシリウスレッド染色の代表的な画像である。図9Gは、抗CCL24モノクローナル抗体(CM101)、PBSで処置した胆管炎ラットモデル(BDL)、又は偽手術対照(各々、n=10、10及び5)における線維症に関するシリウスレッド染色の定量化グラフである。
図10図10A~10Eは、非活性化細胞(図10A)、HCM101抗体で処置していない(図10B)又はHCM101抗体で処置後(図10C)の高CCL24レベル(NAFDL患者血清)で活性化した細胞、及びHCM101抗体で処置していない(図10D)又はHCM101抗体で処置後(図10E)の低CCL24レベル(NAFDL患者血清)で活性化した細胞におけるα-SMAの細胞内発現に対する完全ヒト化抗体HCM101の効果を示す代表的なFACSグラフである。
図11図11Aは、HCM101に対するCCL11(エオタキシン1)の代表的なBiacore結合曲線を示す。図11Bは、HCM101に対するCCL7(MCP3)の代表的なBiacore結合曲線を示す。
図12図12A~12Fは、β-アレスチン動員又はcAMP阻害のいずれかにより示される、DiscoverXシステムにおけるケモカイン受容体活性化を示す。図12Aは、増大する濃度のCCL24の結合によるCCR3受容体の活性化を示す、β-アレスチンの動員曲線を表すグラフである。RLU-相対発光量。図12Bは、HCM101によるCCL24依存的CCR3受容体活性化の阻害を示すグラフである。アッセイは、80nMの一定のCCL24濃度及び増大する濃度のHCM101にて行った。図12Cは、増大する濃度のCCL24によるCCR5ケモカイン受容体の活性化を表す曲線を有する、GPCR活性化に関するDiscoverX cAMPバイオアッセイを示すグラフである。図12Dは、CCL24によるCCR5の活性化に対する異なる濃度のHCM101の阻害効果を示すグラフである。図12Eは、増大する濃度のヒトCCL11(nM)とのインキュベーションによるCCR5の活性化(%活性として示す)を示すグラフである。図12Fは、CCL11によるCCR5の活性化に対する異なる濃度のHCM101の阻害効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、CCL24(エオタキシン2)ポリペプチドにおける立体構造エピトープに指向され、CCL24(及び追加の走化性物質、炎症誘発性CCR3結合ケモカイン:エオタキシン1、Rantes及びMCP-3/1)に結合し、その活性を阻害するモノクローナル抗体は、NASH及び胆汁うっ滞の動物モデルに示されるように、肝臓病理の処置に有用であるという驚くべき発見に基づくものである。本発明の抗CCL24抗体は、肝臓損傷により増大する様々な肝臓酵素(例えばALT、AST、アルカリホスファターゼ及びビリルビン)の血清レベルの低下に有効であった。本発明の抗体はまた、組織学的検査により評価して、様々な疾病モデルにおいて肝臓損傷又は壊死の減少に有効であり、また筋線維芽細胞への肝星細胞(HSC)の移行を減弱させた。例示される抗CCL24ハツカネズミモノクローナル抗体(本明細書でCM101と称される、米国特許第9,067,989号明細書)及びそのヒト化型HCM101(国際公開第2015/132790号パンフレット)は、線維症、自己免疫炎症性疾患、単球関連疾患又はアレルギー・アトピー性疾患の処置における使用に結びつけられた。米国特許第9,067,989号明細書及び国際公開第2015/132790号パンフレットは、両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
本発明は、初めて、肝臓疾患の処置におけるこの抗体の新規な使用を提供する。
【0038】
従って、その第1の態様において、本発明は、肝臓病理の処置における使用のための、単離された抗CCL24抗体、又はその任意の抗原結合断片を提供する。
【0039】
用語「エオタキシン2」(好酸球走化性タンパク質2)、「CCL24」(ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド24)又は「MPIF-2」(骨髄性前駆細胞阻害因子2)は、交換可能に使用され、ヒト染色体7に位置するヒトCCL24遺伝子によりコードされるCCケモカインファミリーに属するサイトカインを指す。CCL24は、ケモカイン受容体CCR3と相互作用する。CCL24活性は、好酸球、好塩基球、Tリンパ球及び好中球における走化性の誘導、並びに内皮及び平滑筋細胞における血管新生及び遊走性応答の誘導を含む。
【0040】
用語「抗体」は、抗原、即ちCCL24に特異的に結合及び認識する、免疫グロブリン遺伝子によりコードされるポリペプチドを指す。
【0041】
本発明の抗CCL24抗体は、いくつかの異なる炎症誘発性CCR3結合ケモカインを認識することが以前に示された(国際公開第2015/132790号パンフレット)。CCL24に対して生成され、追加のケモカイン(例えば、エオタキシン1、Rantes及びMCP-3)に結合し、その活性を効果的に減弱させることがその後見出された抗体。特定の一実施形態では、この抗体は、試験した他のケモカインよりも、CCL24に対して高い親和性で結合する。明らかに、本発明の抗体は、これらの炎症誘発性CCR3結合ケモカインにおける交差反応性エピトープを認識する。
【0042】
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、モノクローナル抗体である。本明細書に定義される用語「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、実質的に同種の抗体の集団を指し、即ち集団を構成する個々の抗体は、マイナーな量で存在し得る、天然に存在する可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に指向される。
【0043】
モノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の任意の方法により調製及び精製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、免疫化動物(例えばラット又はマウス)の脾臓又はリンパ節から採取したB細胞から、ハイブリッド細胞の増殖に好ましい条件下で、不死化B細胞と融合させることにより調製することができる。
【0044】
マウスの免疫化は、例えば国際公開第2010/086854号パンフレットに記載されているように行うことができる。手短には、マウスの免疫化は、例えば、完全フロイントアジュバントで乳化された、好ましくはN-ループ中の立体構造エピトープ(例えば50μg)を含む、所望の抗原、即ちCCL24、又はCCL24の断片で一次皮下(s.c.)免疫化することにより行うことができる。次いで、不完全フロイントアジュバントで乳化された抗原(例えば50μg)を用いた2回の皮下追加免疫注射を、2週間毎に投与する。最も高い中和抗体力価を有するマウスは、PBS中の抗原(例えば5μg)の更なる静脈内(i.v.)追加免疫を、脾臓除去の4日前に受ける。
【0045】
最終追加免疫(例えば4日間)後、最も高い中和抗体力価を有するマウスの脾臓を除去し、以前に記載されているように、ポリエチレングリコールを使用して、脾細胞をマウス骨髄腫細胞(例えばNS0細胞)に融合させる(Koehler、G.及びMilstein、C.(1975)Nature 256:495-497)。融合後、細胞をHAT(ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン)培地中で増殖させることにより、ハイブリドーマ細胞を選択する。次いで、例えば下記に記載するELISAアッセイを用いて、細胞クローンを特異的抗体産生に関してスクリーニングする。
【0046】
モノクローナル抗体の精製は、例えば親和性クロマトグラフィー、即ち、特異的エピトープが結合する親和性カラムの使用に基づくものでもよい。
【0047】
例示的な抗体構造単位は、当該技術分野で既知のように、四量体を含む。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は、1つの「軽鎖」及び1つの「重鎖」を有する。各鎖のN末端は、主に抗原(又はエピトープ)認識に関与する約100~110又はそれを超えるアミノ酸の可変領域を画定する。
【0048】
従って、用語「重鎖可変領域」(V)及び「軽鎖可変領域」(V)は、各々、これらの重鎖及び軽鎖を指す。より詳細には、可変領域は、超可変領域及びフレームワーク(FR)領域に細分される。超可変領域は、所定の位置におけるもっとも一般的なアミノ酸と比較して、その位置における高い比率の異なるアミノ酸を有する。より安定なアミノ酸配列を有する4つのFR領域は、超可変領域を分離する。超可変領域は、抗原の表面の部分と直接接触する。そのため、超可変領域は、本明細書では「相補性決定領域」、又は「CDR」と称される。
【0049】
軽鎖及び重鎖の両方は、N末端からC末端へ、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。CDRは、主に抗原のエピトープに対する結合に関与する。各鎖のCDRは、典型的にはCDR1、CDR2及びCDR3と称され、N末端から開始して順次番号付けされ、また典型的には特定のCDRが位置する鎖によっても特定される。
【0050】
従って、相補性決定領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3は、抗体の重鎖のN末端から開始して3つの相補性決定領域を指し、相補性決定領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、抗体の軽鎖のN末端から開始して3つの相補性決定領域を指す。
【0051】
いくつかの実施形態において、単離された抗CCL24モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト化抗体である。
【0052】
本明細書に定義される用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種に由来すると共に、鎖の残りの部分が他の種に由来する抗体を指す。
【0053】
キメラ抗体は、例えば下記に記載するように、当該技術分野で既知の任意の方法により調製することができる。
【0054】
ハツカネズミ-ヒトキメラ抗体は、抗体可変領域をコードするハツカネズミV及びV遺伝子の増幅及びクローニングと、その後のハツカネズミ-ヒトキメラ抗体発現とにより調製することができる。これを目的として、所望の特性を有する抗体を分泌することが示されたハツカネズミ抗CCL24ハイブリドーマ細胞から総RNAを単離し、oligo(dT)15プライマー、M-MLV及びAMV逆転写酵素を使用してcDNAを合成する。重鎖及び軽鎖可変遺伝子(V及びV)の増幅は、基本的にBenhar及びReiter(Benhar、I.及びReiter、Y.(2002)Curr.Protoc.Immunol.Chapter 10:Unit 10 19B)に記載されているように、各遺伝子のフレームワーク1の5’末端に、及び3’末端の定常領域(各々、C1又はC)に指向されるプライマーのパネルを使用して行われ得る。
【0055】
次いで、例えばpCMV-ベースの抗体発現ベクターへのクローニングのために両端に制限部位を導入する非退縮プライマーを使用して、可変遺伝子を再び増幅する。
【0056】
増幅された重及び軽可変遺伝子は別々に精製され、消化され、適切な哺乳動物完全長Ig発現ベクターにクローニングされ、対応するシグナルペプチド及び定常遺伝子を有する各鎖を提供し、IgG1/kハツカネズミヒトキメラ抗体発現をもたらす。
【0057】
用語「ヒト化」抗体は、伝統的に、CDR及び任意選択的に追加の関連位置において非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を有するヒト由来免疫グロブリンフレームワークを含む非ヒト(例えば、ハツカネズミ)抗体の形態を指す。殆どの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性及び活性を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0058】
本明細書で使用される用語「完全ヒト化」抗体は、ヒト配列のみを有するように設計された抗体に関する。本発明の完全ヒト化抗体は、患者において抗体の免疫原性を最小限にするComposite Human Antibodies(商標)技術を用いて調製された。このヒト化技術では、無関係のヒト抗体の可変(V)領域に由来する多数の配列セグメントが、出発抗体の相補性決定領域(CDR)のためのアクセプターとして使用される。ヒト配列セグメントの慎重な選択とインシリコツールの適用により、CD4+T細胞エピトープが回避されるため、抗体親和性及び特異性を維持しながら、標準的なヒト化抗体と比較して免疫原性のリスクが低減する。そのような抗体は、ヒト配列のみを含み、従って「完全ヒト化」と定義される。
【0059】
本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、ヒトにより生成され、及び/又は当該技術分野で既知のヒト抗体の作製の技術のいずれかを使用して作製された抗体に対応するアミノ酸配列を所有する抗体を指す。この定義は、特に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。
【0060】
ヒト化及びヒト抗体の調製は、当該技術分野で周知である。抗体は、ファージディスプレイを使用して調製することもできる。当該技術分野で既知のように、抗体ファージディスプレイ(APD)は、バクテリオファージの遺伝子操作及び抗原誘導選択とファージの増殖の循環過程の繰り返しに基づく。
【0061】
APDプロセスは、選択された細胞源(例えば、末梢血単核細胞)から良質のRNAを調製することによる、抗体ライブラリーの調製から開始する。このRNAはcDNAに逆転写され、これはコードされた抗体のVH及びVL鎖のPCRに使用される。このステップの次に、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)PCR産物のファージディスプレイベクターへのライゲーションが行われ、結果的にmAbsのクローンが分析される。
【0062】
大量の抗体(キメラ、ヒト化、完全ヒト化又はヒトのいずれか)を調製するために、抗体の重鎖及び軽鎖の両方を含むIg発現ベクターで細胞(例えばCHO細胞)をトランスフェクトすることにより、抗体を発現している安定な細胞株を調製することができる。次いで、抗体は、最先端の使い捨てのバイオリアクターシステムにて製造することができる。抗体は、確立されたモノクローナル抗体精製方法を用いて臨床等級に精製され得る。次いで、当該技術分野で既知の任意の方法、例えば本明細書で下記に詳細するCCL24特異的ELISAアッセイにより試験して、高度に抗CCL24抗体を産生するクローンが選択され得、上清中の抗体レベルに基づいて拡大され得る。特定のクローンのために開発されたマスター細胞バンクは、全ての臨床等級バッチの成長原料として機能する可能性がある。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明は、肝臓病の処置における使用のための単離された抗CCL24ハツカネズミ抗体(本明細書でCM101と称される)、又はその任意の抗原結合断片を提供し、前記抗体は:
a.配列番号9と少なくとも90%相同性を有する核酸によりコードされる重鎖と、配列番号10と少なくとも90%相同性を有する核酸によりコードされる軽鎖とを含むモノクローナル抗体、又は抗体の結合活性を保持するその断片;及び
b.ハイブリドーマD8(ECACC受入番号D 809081702)により分泌されるモノクローナル抗体、又は抗体の結合活性を保持するその断片
からなる群から選択される。
【0064】
ハツカネズミ抗体CM101重鎖をコードする核酸配列は、配列番号9として示される:
【0065】
ハツカネズミ抗体CM101軽鎖(κ)をコードする核酸配列は、配列番号10として示される:
【0066】
本発明は、抗体CM101のヒト化及び完全ヒト化型も包含する。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明は、肝臓病の処置における使用のための、単離された完全ヒト化抗CCL24抗体(本明細書でHCM101と称される)、又はその任意の抗原結合断片を提供し、前記抗体は:
a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1又はその変異体;
b)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2又はその変異体;及び
c)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3又はその変異体;
を含む重鎖可変領域と、
d)配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1又はその変異体;
e)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2又はその変異体;及び
f)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3又はその変異体
を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0068】
本発明によれば、VH CDR1は、配列番号1で示されるアミノ酸配列NSGMN、又はその変異体を含み;VH CDR2は、配列番号2で示されるアミノ酸配列WINTYNGEPTYTDDFKG、又はその変異体を含み、VH CDR3は、配列番号3で示されるアミノ酸配列HSYGSSYAMDN、又はその変異体を含み;VK CDR1は、配列番号4で示されるアミノ酸配列KASQSVDYDGDSYMN又はその変異体を含み;VK CDR2は、配列番号5で示されるアミノ酸配列VASNLKS又はその変異体を含み;VK CDR3は、配列番号6で示されるアミノ酸配列QQSNEEPWT又はその変異体を含む。
【0069】
特定の一実施形態において、本発明は、肝臓病理の処置における使用のための、配列番号3で示されるアミノ酸配列HSYGSSYAMDNを含む相補性決定領域VH CDR3を含む、単離された抗CCL24抗体、又はその任意の抗原結合断片を提供する。
【0070】
各々、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6で示される、上記のCDR配列CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2及びCDRL3は、それらの各々の重鎖及び軽鎖配列の状況によっても表される:
【0071】
本明細書に例示される単離された完全ヒト化多特異性モノクローナル抗体の重鎖のアミノ酸配列は、配列番号7により示され、アミノ酸配列:
のものである。
【0072】
本明細書に例示される単離されたヒト化多特異性モノクローナル抗体の軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号8により示され、アミノ酸配列:
のものである。
【0073】
従って、更なる実施形態において、本発明による使用のための単離された抗体は、前記抗体が、配列番号7で示される重鎖可変領域又はその変異体、及び配列番号8で示される軽鎖可変領域又はその変異体を含む完全ヒト化抗体であるものである。
【0074】
別の実施形態では、本発明による使用のための単離された抗体は、前記抗体が、配列番号1~6で示される6つのCDR配列、並びに配列番号7に対して少なくとも90%配列相同性を有する重鎖可変領域及び配列番号8に対して少なくとも90%配列相同性を有する軽鎖可変領域を含む完全ヒト化抗体であるものである。
【0075】
別の実施形態では、本発明は:
(a)NSGMN(配列番号1)を含む重鎖CDR1、WINTYNGEPTYTDDFKG(配列番号2)を含む重鎖CDR2、及びHSYGSSYAMDN(配列番号3)を含む重鎖CDR3;並びに
(b)KASQSVDYDGDSYMN(配列番号4)を含む軽鎖CDR1、VASNLKS(配列番号5)を含む軽鎖CDR2、及びQQSNEEPWT(配列番号6)を含む軽鎖CDR3
を含む抗体と同じエピトープに結合する、肝臓病理の処置における使用のための、単離されたモノクローナル抗体を提供する。
【0076】
本発明は、肝臓病理の処置を必要とする対象に、上記に定義した抗体を投与することを含む、肝臓病理の処置方法も提供する。
【0077】
別の実施形態では、本発明による使用のための単離された抗体は、前記抗体が、配列番号11で示される核酸配列によりコードされる重鎖可変領域又はその変異体、及び配列番号12で示される核酸配列によりコードされる軽鎖可変領域又はその変異体を含む完全ヒト化抗体であるものである。
【0078】
配列番号11:
【0079】
配列番号12:
CDRヌクレオチド配列は太字であり、下線が引かれている。
【0080】
本発明は、重鎖及び軽鎖可変領域の変異体も包含する。変異体は、本明細書に記載した抗体の活性を変更しない、重鎖及び軽鎖の相補性決定領域又はフレームワーク領域における変異を含み得る。
【0081】
用語「変異体」は、1つ以上のアミノ酸残基又はヌクレオチドが削除、置換又は付加された、本明細書に詳細に特定した配列とは異なるアミノ酸又はヌクレオチドの配列を意味する。
【0082】
本明細書で使用される用語「付加された」は、本明細書に記載した配列へのアミノ酸残基の任意の付加を意味することを認識するべきである。
【0083】
変異体は、様々なアミノ酸置換を包含する。アミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸が、同様の又は異なる構造的及び/又は化学的性質を有する他のアミノ酸と置き換えられた結果である。アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の性質における類似性に基づいて行われ得る。
【0084】
典型的には、変異体は、保存的アミノ酸置換を包含する。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野で周知である。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンを含み;極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンを含み;正に荷電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン及びヒスチジンを含み;負に荷電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。
【0085】
以下の8つのグループの各々は、互いに保存的置換である他の例示的なアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)。
【0086】
保存的核酸置換は、上記に定義した保存的アミノ酸置換をもたらす核酸置換である。
【0087】
本発明による変異体は、非極性アミノ酸から極性アミノ酸への置換及びその逆も包含する。
【0088】
本明細書で使用される用語「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸ミメティックを指す。
【0089】
変異体配列は、それらのアミノ酸又はヌクレオチド配列の、本明細書に記載したアミノ酸又はヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載した抗体の重鎖及び軽鎖のアミノ酸又はヌクレオチド配列)との同一性の百分率により特徴付けられ得るアミノ酸又は核酸配列を指す。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書に定義される変異体配列は、本明細書に記載した重鎖及び軽鎖可変領域の配列と比較した場合に、各々、少なくとも70%又は75%の配列同一性、およそ80%又は85%の配列同一性、およそ90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する重鎖及び軽鎖可変領域をコードする核酸配列を指す。
【0091】
用語「肝臓病理」又は「肝臓病」は、本明細書で交換可能に使用され、肝臓の任意の疾患に関する。肝臓病理は、一般に、肝臓の硬変又は瘢痕、感染(例えばB型肝炎又はC型肝炎)又は非感染原因(アルコール性脂肪性肝炎を含む化学的又は自己免疫性肝炎)により生じる炎症(肝炎)、腫瘍、良性及び悪性(肝癌)並びに代謝疾患を含む。ある特定の実施形態において、本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患(非アルコール性脂肪肝(NAFL)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含むNAFLD)、胆汁うっ滞、並びに原発性硬化性胆管炎(PSC)及び原発性胆汁性肝硬変(PBC)を含む肝内胆汁うっ滞性肝疾患等の肝臓病理の処置における使用のための抗CCL24抗体を提供する。
【0092】
本発明は:
a.肝臓損傷による肝臓酵素(例えばALT、AST、アルカリホスファターゼ及びビリルビン)の高い血清レベルの低下;
b.肝臓損傷若しくは壊死の減少;及び/又は
c.筋線維芽細胞への肝星細胞(HSC)の移行の減弱
における使用のための単離された抗CCL24抗体、又はその任意の抗原結合断片も提供する。
【0093】
いくつかの実施形態において、前記肝臓酵素の高いレベル、又は前記肝臓損傷若しくは壊死は、上述した肝臓病理により生じる。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗CCL24抗体は、ハツカネズミ抗体(本明細書でCM101と称される)、又はその任意の抗原結合断片であり、前記抗体は:
a.配列番号9と少なくとも90%相同性を有する核酸によりコードされる重鎖及び配列番号10と少なくとも90%相同性を有する核酸によりコードされる軽鎖を含むモノクローナル抗体、又は抗体の結合活性を保持するその断片;並びに
b.ハイブリドーマD8(ECACC受入番号D 809081702)により分泌されるモノクローナル抗体、又は抗体の結合活性を保持するその断片
からなる群から選択される。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗CCL24抗体は、完全ヒト化抗体(本明細書でHCM101と称される)、又はその任意の抗原結合断片であり、前記抗体は:
a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR1又はその変異体;
b)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR2又はその変異体;及び
c)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VH CDR3又はその変異体;
を含む重鎖可変領域と、
d)配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR1又はその変異体;
e)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR2又はその変異体;及び
f)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域VK CDR3又はその変異体
を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0096】
用語「抗体の活性」は、抗体がCCL24に結合する能力、及び好ましくはCCL24により仲介される生物学的機能を阻害する能力、例えば細胞動員又は走化性(例えば、好酸球又は単球又は線維芽細胞の動員又は走化性)を阻害する能力を意味する。生物学的機能は、当該技術分野で周知の方法を用いてインビボで又はインビトロで測定することができる。そのようなインビボアッセイのいくつかは、下記の実施例に記載されている。
【0097】
本発明の抗体の、その標的タンパク質に対する結合は、例えばELISAアッセイを用いて測定することができる。
【0098】
本発明は、本発明の単離された抗CCL24モノクローナル抗体の任意の抗原結合断片を更に包含する。そのような抗原結合断片は、抗原に結合することが可能な、例えばFab及びF(ab’)であってもよい。そのような断片は、当該技術分野で既知の任意の方法により、例えばパパイン(Fab断片を生成するための)又はペプシン(F(ab’)断片を生成するための)等の酵素を使用したタンパク質切断により、生成することができる。
【0099】
従って、いくつかの実施形態において、抗体断片は、Fv、単鎖Fv(scFv)、抗原に結合することが可能な重鎖可変領域、抗原に結合することが可能な軽鎖可変領域、Fab、F(ab)’及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0100】
その態様の別の1つにおいて、本発明は、本発明による抗体又はその任意の抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子を提供し、前記抗体は、肝臓病の処置における使用のためのものである。
【0101】
本明細書に定義される用語「核酸」又は「核酸分子」は、単鎖又は二本鎖のいずれかであり得、デオキシリボ核酸(DNA)、及び、適切な場合、リボ核酸(RNA)等のポリヌクレオチドであるヌクレオチドのポリマーを指す。この用語は、等価物として、ヌクレオチド類似体から作製されるRNA又はDNAの類似体、並びに、記載される実施形態に適用可能な場合、単鎖(センス又はアンチセンス等)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むことも理解するべきである。本明細書で使用される用語DNAは、逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)の作用によりRNA鋳型から生成されるcDNA、即ち相補的DNA又はコピーDNAも包含する。
【0102】
本発明は、本明細書に定義される単離された核酸分子を含む発現ベクターを更に提供する。
【0103】
時折「発現ビヒクル」又は「発現コンストラクト」と称される、本明細書で使用される「発現ベクター」は、DNA断片を宿主のゲノムに統合することが可能な、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、統合可能なDNA断片、及び他のビヒクル等のベクターを包含する。発現ベクターは、典型的には、所望の遺伝子又はその断片、及び好適な宿主細胞内で認識され、所望の遺伝子の発現をもたらす作動可能に結合した遺伝子制御エレメントを含む自己複製DNA又はRNAコンストラクトである。これらの制御エレメントは、好適な宿主内で発現をもたらすことが可能である。本発明による発現ベクターは、いくつか挙げると、細菌、酵母又は哺乳動物宿主細胞内での発現に適格であり得る。
【0104】
その態様の更なる別の1つにおいて、本発明は、本発明による単離された核酸分子又は本発明による発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。
【0105】
本明細書で使用される用語「宿主細胞」は、本発明による単離された核酸分子又は本発明による発現ベクターの導入を受けやすい細胞を指す。好ましくは、前記細胞は、哺乳動物細胞、例えばCHO細胞又はNS0細胞である。本発明による単離された核酸分子又は発現ベクターの宿主細胞へのトランスフェクションは、当該技術分野で既知の任意の方法により行うことができる。
【0106】
その態様の更なる別の1つにおいて、本発明は、本発明による抗体又はその任意の抗原結合断片と、下記にて本明細書に定義される追加の治療薬とを含む免疫複合体を提供する。
【0107】
本明細書に定義される用語「免疫複合体」は、追加の薬剤に複合(結合又は連結)している本発明による抗体又はその任意の抗原結合断片を指す。免疫複合体は、当業者に既知の任意の方法により、例えば、追加の薬剤を本発明による抗体と架橋させることにより、又は組換えDNA方法により調製することができる。
【0108】
本発明の抗CCL24抗体は、少なくとも1つの追加の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0109】
本明細書で使用される用語「追加の治療薬」は、肝臓病の処置に使用できる任意の薬剤を指す。ある特定の実施形態によれば、前記少なくとも1つの追加の治療薬は、化学療法薬、サイトカイン、ペプチド、抗体及び抗生物質からなる群から選択される。
【0110】
ある特定の実施形態において、前記追加の治療薬は、ファルネソイドX受容体(FXR)作動薬(例えばカフェストール、ケノデオキシコール酸、オベチコール酸、フェキサラミン)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)作動薬、抗ケモカイン又はサイトカインモノクローナル抗体、ケモカイン又はサイトカイン機能を阻害する小分子、ステロイドを含む抗炎症剤及び抗線維化剤、及び可溶性タンパク質抗炎症剤を含むがこれらに限定されない。
【0111】
ある特定の実施形態において、追加の治療薬は、追加の抗体である。本明細書に定義される用語「追加の抗体」は、本発明の抗体と組み合わせて使用され得る、本発明による抗体ではない抗体を指す。
【0112】
本発明は、活性成分としての、本発明の単離された抗CCL24抗体、又はその任意の抗原結合断片、又は本明細書に定義される免疫複合体、及び薬学的に許容され得る担体、賦形剤又は希釈剤を含む医薬組成物を更に提供し、前記医薬組成物は、肝臓病の処置における使用のため、及び/又は:
a.肝臓損傷による肝臓酵素(例えばALT、AST、アルカリホスファターゼ及びビリルビン)の高い血清レベルの低下;
b.肝臓損傷若しくは壊死の減少;及び/又は
c.筋線維芽細胞への肝星細胞(HSC)の移行の減弱
における使用のためのものである。
【0113】
本発明の「医薬組成物」は、一般に、本明細書に定義される抗体又はその任意の抗原結合断片、及び組成物の浸透圧を調整する薬剤である緩衝剤、並びに任意選択的に、当該技術分野で既知の1つ以上の薬学的に許容され得る担体、賦形剤及び/又は希釈剤を含む。
【0114】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容され得る担体、賦形剤又は希釈剤」は、当該技術分野で既知のように、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤等を含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒であり得る。各担体は、他の成分と適合性を有し、対象に傷害性ではないという意味で、薬学的及び生理学的の両方で許容され得る必要がある。任意の従来の培地又は薬剤が活性成分と不適合な場合を除いて、治療的組成物におけるその使用が想定される。
【0115】
別の実施形態では、本発明による医薬組成物は、追加の治療薬を更に含む。追加の治療薬の非限定的な例としては、FXR作動薬、PPAR作動薬、抗ケモカイン若しくは抗サイトカインモノクローナル抗体、又はケモカイン若しくはサイトカインの活性を阻害する任意の小分子、タンパク質若しくはペプチド、ステロイドを含む抗炎症剤及び抗線維化剤が挙げられる。
【0116】
特定の実施形態において、本発明は、単離された抗CCL24完全ヒト化抗体、又はその任意の抗原結合断片を含む医薬組成物に関し、前記抗体は、配列番号7で示されるアミノ酸配列の重鎖可変領域又はその変異体と、配列番号8で示されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域又はその変異体とを含み、前記医薬組成物は、肝臓病の処置における使用のためのものである。
【0117】
肝臓病の予防、処置又は回復方法を更に提供し、当該方法は、それを必要とする対象に、治療的有効量の単離された抗CCL24抗体又はその任意の抗原結合断片又は本発明による医薬組成物を投与することを含む。
【0118】
肝臓損傷による肝臓酵素(例えばALT、AST、アルカリホスファターゼ及びビリルビン)の高い血清レベルを低下させる方法も提供し、当該方法は、それを必要とする対象に、治療的有効量の単離された抗CCL24抗体又はその任意の抗原結合断片又は本発明による医薬組成物を投与することを含む。
【0119】
肝臓損傷又は壊死を減少させる方法も提供し、当該方法は、それを必要とする対象に、治療的有効量の単離された抗CCL24抗体又はその任意の抗原結合断片又は本発明による医薬組成物を投与することを含む。
【0120】
筋線維芽細胞への肝星細胞(HSC)の移行を減弱させる方法も提供し、当該方法は、それを必要とする対象に、治療的有効量の単離された抗CCL24抗体又はその任意の抗原結合断片又は本発明による医薬組成物を投与することを含む。
【0121】
用語「対象」又は「患者」は、交換可能に使用され、本発明から利益を受け得る対象、例えば哺乳動物(例えばイヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ又はヒト)を指す。特定の一実施形態では、患者はヒトである。
【0122】
本明細書に定義される用語「予防」は、「予防的(preventive)処置」又は「予防的(prophylactic)処置」を提供すること、即ち保護的に作用して、肝臓病の症状の出現、又は肝臓病の発症若しくは進行に対して防御する又は予防することを意味する。
【0123】
本明細書で使用される用語「処置する」、「処置している」、「処置」又はその形態は、疾病又は状態の有害効果を低減する、予防する、治癒させる、逆行させる、回復させる、減弱させる、緩和する、最小限にする、抑制する若しくは停止させること、又は本明細書に定義した肝臓病の1つ以上の臨床的徴候の発症を遅延させることを意味することを理解するべきである。
【0124】
本発明による投与は、以下の経路のいずれかにより行われ得る:経口投与、静脈内、筋内、腹腔内、くも膜下腔内(intratechal)又は皮下注射;直腸内投与;鼻腔内投与、眼投与又は局所投与。
【0125】
特定の実施形態において、本発明による投与は、静脈内で行われ得る。別の特定の実施形態では、投与は、腹腔内で行われ得る。別の特定の実施形態では、投与は、吸入により行われ得る。
【0126】
本明細書に定義される抗体若しくは抗体断片、当該抗体若しくは抗体断片又はそれらの任意の複合体を含む任意の医薬組成物は、疾病発症の前又は後に対象に投与され得る。
【0127】
従って、いくつかの実施形態において、本発明による肝臓病の予防、処置又は回復方法は、本発明による前記単離された抗CCL24抗体若しくはその任意の抗原結合断片、又は本発明による医薬組成物が、疾病発症の前又は後に、前記対象に投与される方法である。
【0128】
本明細書に定義された目的のための、本発明による単離されたモノクローナル抗体若しくはその任意の抗原結合断片、又は本発明による医薬組成物の「治療的有効量」は、医学的状態を治癒させる、抑止する又は少なくとも緩和する又は回復させるための当該技術分野で既知のもの等の考慮事項により決定される。本発明の方法に使用される任意の製剤の場合、投与量又は治療的有効量は、当初、インビトロでの細胞培養アッセイから、又は本明細書に詳細する動物モデル等の動物モデルに基づいて見積もられ得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、本発明による治療的有効量は、0.01~100mg/kgの範囲内である。
【0130】
別の実施形態では、本発明による治療的有効量は、0.01~40mg/kg、0.1~40mg/kg、1~10mg/kg、又は5~10mg/kgの範囲内である。
【0131】
別の実施形態では、本発明による単離された抗CCL24抗体若しくはその任意の抗原結合断片、又は本発明による医薬組成物は、単回用量又は多回用量として対象に投与される。
【0132】
特定の例示的な用量は、各々、1日1回用量として与えられる、0.75mg/kg、又は2.5mg/kg、又は5mg/kg、又は10mg/kgを含むがこれらに限定されない。一実施形態において、用量は、静脈内に与えられる。
【0133】
本発明の文脈における用語「それを必要とする対象」は、本明細書に定義した肝臓病を患う哺乳動物、特にヒト対象を指す。
【0134】
本発明は、本明細書に定義した肝臓病の予防、処置又は回復方法における使用のための、本発明による単離された抗CCL24抗体若しくはその任意の抗原結合断片、又は本発明による医薬組成物を更に提供する。
【0135】
特定の実施形態において、本発明は、本明細書に定義した肝臓病の予防、処置又は回復方法における使用のための、単離された完全ヒト化抗CCL24抗体、又はその任意の抗原結合断片を提供し、前記抗体は、配列番号7で示されるアミノ酸配列の重鎖可変領域又はその変異体と、配列番号8で示されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域又はその変異体とを含む。
【0136】
用語「精製された」又は「単離された」は、それらの自然環境から除去され、単離され又は分離されたアミノ酸又は核酸配列、ペプチド、ポリペプチド又は抗体等の分子を指すことが認識される。従って、「単離された抗体」は、精製された抗体である。本明細書で使用される用語「精製された」又は「精製すること」は、サンプルからの汚染物質の除去も指す。
【0137】
下記の実施例に示すように、本発明の抗体は、ケモカイン受容体CCR3及びCCR5の両方の活性化を低減又は阻害することができる。更に、本発明の抗体は、CCR5のCCL24誘導及びCCL11誘導活性化の両方を阻害することが可能であった。
【0138】
従って、別の態様では、本発明は、細胞におけるCCR5活性化の阻害方法を提供し、当該方法は、上記に定義した本発明の抗体を投与することを含む。
【0139】
従って、本発明の抗体は、CCR5活性化に関連した疾病又は疾患の処置に使用することができる。そのような疾病又は疾患の非限定的な例は、上記に定義した肝臓病理である。
【実施例
【0140】
更に詳細に述べることなく、当業者は、先行する記載により本開示を最大限に利用できると考えられる。従って、以下の好ましい特定の実施形態は、単なる例示であり、特許請求された本発明を如何様にも限定するものではないと解釈される。
【0141】
本明細書に詳細に記載しない当該技術分野で既知の標準的な分子生物学プロトコルは、一般に、基本的にSambrook & Russell、2001に従う。
【0142】
本明細書に詳細に記載しない当該技術分野で既知の標準的な医薬品化学方法は、一般に、基本的に、Pergamon Pressにより出版されている、様々な著者及び編集者による「Comprehensive Medicinal Chemistry」シリーズに従う。
【0143】
材料及び方法
ヒト対象の血清におけるケモカインレベル
NASH及び原発性硬化性胆管炎(PSC)患者と健康なドナーとの血清中のエオタキシン-2レベルを、以下のELISAキットを使用して、製造業者のプロトコルに従って決定した:QuantikineヒトCCL24(エオタキシン2)(R&D)。
【0144】
ヒト患者の肝臓生検の免疫組織化学的検査
ヒトCCL24に関する免疫組織化学染色を、NASH患者からの厚さ5μmの肝臓生検の凍結切片上で行った。メタノール及びアセトンを用いて固定化した後、切片を非免疫ウサギ及びヤギ血清でブロックし、その後CASブロッキング試薬と共にインキュベートした。続いて、一次抗体を室温で1時間加えた。洗浄後、ビオチン化親和性精製ヤギ抗マウス/ウサギ抗体(Jackson)を加えた。次いで、スライドを0.3% H2O2と共にインキュベートし、その後、更に濯ぎ、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼコンジュゲート(Jackson)と共に室温で30分間インキュベートした。スライドを3-アミノ-9エチルカルバゾール基質(Dako)で15分間現像し、ヘマトキシリンで対比染色した。ヘマトキシリンエオシン(H&E)染色は、肝臓切片におけるNAFLD活性化スコア変化の分析に使用した。
【0145】
マウスからの肝臓サンプルにおけるCCL24レベル
マウスから得た肝臓組織を秤量し、溶解緩衝液中に懸濁させた(各10mgの組織について-抗プロテアーゼを含む100μlの溶解緩衝液を加えた)。次いで、組織をPolytronで粉砕し、4℃にて14000rpmで10分間遠心分離した。ペレットを廃棄し、商業的なELISAキット(Abcam)を使用して、上清をCCL24レベルに関してアッセイした。
【0146】
マウス肝臓切片におけるH&E染色
マウスからの肝臓、動物当たり2つの肝葉を回収し、犠牲日に2.5%パラホルムアルデヒド(PFA)中で固定した。組織をトリミングし、パラフィン中に包埋し、厚さ5マイクロメートル以下で分割し、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)で染色した。顕微鏡(Olympus BX60)を使用して、倍率X10、X20及びX40で写真を撮影した。
【0147】
NASH Clinical Research NetworkのThe Pathology Committee(Kleiner et al 2015 HEPATOLOGY、Vol.41、No.6)により定義される容認可能なスコアに従って、NAFLD活性スコアの計算のために以下のパラメーターを評価した。スコアは、脂肪沈着(0~3)、小葉内炎症(0~3)、及び肝細胞風船様腫大(0~2)のスコアの非加重合計として定義する;従って、0~8の範囲である:
1.脂肪沈着(低~中-実質性病変のパワー評価)
(0≦5%、1-5~33%、2-33~66%、3≧66%)。
2.炎症(全ての炎症性病巣の全体的評価)(0=病巣なし、1 200x視野当たり≦2病巣、2:200x視野当たり2~4病巣、3:200x視野当たり≧4病巣。)
肝細胞風船様腫大(0=なし、1=数個の腫大変化、2=多数の細胞/顕著な風船様腫大)
【0148】
ラット肝臓切片におけるシリウスレッド染色
肝臓組織を10%緩衝中性ホルマリンで固定し、パラフィン中に包埋した。切片(4μm)を脱パラフィンし、ピクロシリウスレッドで室温(RT)で15分間染色し、脱水し、マウンティング培地でマウントした。Olympus光/落射蛍光顕微鏡及びビデオサブシステムとインターフェースしたOsteoMeasure画像解析ソフトウエアプログラム(OsteoMetrics、Inc.、Atlanta、GA)を使用して、肝臓線維症を染色切片中で測定した。STAMマウスのピクロシリウスレッド染色切片における線維症の評価のために、デジタルカメラ(DFC295;Leica、Germany)を使用して、染色切片の明視野画像(各スライドで40視野)によりコラーゲン沈着を可視化及び定量化し、ImageJソフトウエア(National Institute of Health、USA)を使用して分析した。
【0149】
肝臓切片における免疫蛍光染色
蛍光免疫組織化学的検査:
肝臓組織切片(厚さ5μm)を脱パラフィンし、再水和し、クエン酸ナトリウム緩衝液(10mM、pH6.0)中で10分間煮沸した。切片をPBS中で洗浄し、2mg/mlグリシン中で10分間インキュベートして、遊離アルデヒドにより生じた自家蛍光を消光した後、PBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて室温で1時間ブロックした。次いで、1% BSAを有するPBS中で希釈した以下の一次抗体と共に、切片を4℃で一晩インキュベートした:マウスモノクローナル抗ヒトCCL24(1:100希釈;Chemomab、Tel Aviv、Israel)及びラットポリクローナル抗ヒトCCR3(;1:50希釈;カタログ番号MAB155-100;R&D Systems)。翌日、スライドをPBS中で3回洗浄し、1% BSAを有するPBS中で1:200に希釈した、二次抗体としてのAlexa Fluor-488複合ヤギ抗マウスIgG又はローダミンRed-X-複合ヤギ抗ラットIgG(Invitrogen、San Diego、CA、USA)と共に、暗所内で室温で45分間インキュベートした。無関係アイソタイプ適合及び濃度適合マウス及びラットIgG(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を負の対照として使用した。二次抗体の交差反応性を、一次抗体を省略した対照実験にて試験した。核を4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI;Chemicon International、Temecula、CA、USA)で対比染色した。次いで、肝臓切片を退色防止水性マウント培地(Biomeda Gel Mount;Electron Microscopy Sciences、Foster City、CA、USA)でマウントし、完全自動化蛍光軸を備えたLeica DM4000 B顕微鏡(Leica Microsystems、Mannheim、Germany)で検査した。LeicaソフトウエアアプリケーションスイートLAS V3.8を備えたLeica DFC310 FX 1.4-メガピクセルデジタルカラーカメラ(Leica Microsystems)で蛍光画像を捕捉した。
【0150】
ALT、AST、アルカリホスファターゼ及びビリルビンの測定:
血液を遠心分離し、血清を得た。ALT、AST、アルカリホスファターゼ及びビリルビンのレベルを、COBAS 6000を使用して血清中で測定した。
【0151】
CCL24に対するノックアウトマウスの生成
CCL24ノックアウト(KO)C57BL/6マウスを、CRISPR/Cas9-仲介ゲノム操作により生成した。CCL24のためのCas9 mRNA及びgRNAを、インビトロ転写により生成し、次いでKOマウス生成のために受精卵に注入した。ファウンダーマウスの遺伝子型をPCRと、その後のDNA配列決定解析により同定した。陽性ファウンダーを次世代まで飼育し、これの遺伝子型をPCR及びDNA配列決定解析により同定した。追加の飼育を行い、PCR遺伝子型同定により解明して、CCL24に関する二重ノックアウトマウスを確立した。PCR及び配列解析により同定された潜在的なオフターゲット部位を試験し、陰性と確認した。
【0152】
誘導性NASHを有するCCL24ノックアウトマウス
C57BL背景に関するCCL24ノックアウトを、上述したようにCRISPER技術を用いて生成した。6週齢のWT C57BLマウス又はCCL24ノックアウトマウスにメチオニンコリン欠乏食餌を4週間給餌した。4週間後、マウスを犠牲にし、組織学的検査及びコラーゲン測定(Sircol(商標))のために、それらの肝臓を回収した。ALT、アルカリホスファターゼ及びビリルビンの評価のために眼窩静脈叢から血液を収集した。
【0153】
インビボでのMCD食餌誘導NASHモデル
6週齢の雌C57BLマウスにメチオニンコリン欠乏(MCD)食餌を6週間給餌した。食餌開始から10日目に開始して、マウスを5mg/kg、0.5mg/kg又は0.05mg/kgのCM-101又はPBSの100μl腹腔内注射で週に2回処置した。CM-101を用いた処置は、疾病症状の発症後に開始した。
【0154】
6週間後にマウスを犠牲にし、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ及びビリルビンレベルの評価のために、眼窩静脈叢から血液を収集した(ANITモデルに関して下記に記載するように4℃(3000×g)で遠心分離して血清を得た)。加えて、肝臓を病理組織学分析のために回収し、ヘマトキシリンエオシン(H&E染色)のためにパラフィン包埋に供した。凍結組織をコラーゲンアッセイ(Sircol(商標))及び肝臓CCL24レベルの評価に使用した。
【0155】
NASH誘導のためのSTAMマウスモデル
200μgストレプトゾトシン(STZ、Sigma-Aldrich、USA)溶液の単回皮下注射を、雄C57BL/6マウスの誕生から2日後に投与した後、4週齢から高脂肪食餌(HFD、57kcal%脂肪、Cat#HFD32、CLEA Japan、Japan)を与えた。対照IgG及びCM101(7.5mg/kg)を6~9週齢から10μl/kgの容積で週に2回、腹腔内投与した。
【0156】
α-ナフチルイソチオシアネート(ANIT)誘導胆汁うっ滞マウスモデル
雌C57BLマウスを1日目に経口経管栄養(10ml/kg)によりANIT(油に溶解、60mg/kg)で処置した。対照グループに経口経管栄養によりオリーブ油を投与した。CM101又はビヒクルをANIT処置グループに1回5mg/kgでIP投与した。ANIT投与から48時間後、マウスにイソフルランで麻酔をかけ、安楽死させた。血液サンプルを収集し、4℃(3000×g)で遠心分離して血清を得て:ALT、AST、ALP、ビリルビン(化学パネル)を試験した。加えて、肝臓をホルマリン中に収集し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色のためにパラフィン中に包埋した。
【0157】
胆管結索により誘導された胆汁うっ滞
雄Sprague Dawley(SD)ラット(8週齢)にケタミン/キシラジン(Ket 50mg/kg及びXyl 10mg/kg)を用いて腹腔内で麻酔をかけた。腹壁の手術部位を剪毛及び浄化し、肝臓を穏やかに後退させて結索のために胆管をあらわにした。対照の偽手術動物は同じ手順を経たが、結索は行わなかった。0日(結索の日)から、ラットにPBS又はHCM101 10mg/kgの容積10ml/kgの静脈内注射を週に2回投与した。実験は実験動物を14日後に犠牲にすることにより終了した。
【0158】
ラットのチオアセトアミド(TAA)誘導肝臓線維症モデル
疾病誘導のために、7~9週齢の雄Wistarラットにチオアセトアミド(250mg/kg)(Sigma、Cat#172502)を週に2回、8週間腹腔内注射した。HCM101処理動物(2.5mg/kg)は抗体の静脈内注射を週に2回、4週間受けた。
【0159】
Biacore
Biacore T200を使用して、HCM101の親和定数を評価した。この方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)電気光学現象を使用して、結合定数及び結合パートナー間のオン/オフ率を測定する。HCM101をCM-1チップの表面に固定化し、エオタキシン1(CCL11)/MCP3(CCL7)の溶液を表面上に通過させた。SPR角の変化を測定し、KD(平衡解離定数)の決定を可能にした。
【0160】
DiscoverX β-アレスチンPathHunter及びcAMP Hunter(商標)eXpress CCR5アッセイ
リガンド結合後のG-タンパク質共役受容体(GPCR)活性化を評価するために、cAMP Hunter(商標)及びβ-アレスチンPathHunterアッセイキット(DiscoverX、Fremont、United States)を製造業者のプロトコルに従って使用した。手短には、PathHunter GPCR β-アレスチンアッセイにおいて、ProLink(商標)(PK)タグ化CCR3及びEnzyme Acceptor(EA)タグ化β-アレスチンを共発現するように操作されたCHO β-アレスチンCCR3細胞を、96ウェルプレート内に蒔いた。ケモカイン受容体活性化を誘導するために、細胞を高い(0、7.8、15.6、31.25、62.5、125、500及び2000nM)レベルのCCL24に暴露した。HCM101阻害効果を、高い抗体濃度5、15、45及び135μg/mlと共に、80nMの一定のCCL24濃度で評価した。CCR3-PK受容体の活性化により誘導されたβ-アレスチン-EAの動員は、2つのβ-ガラクトシダーゼ酵素断片(EA及びPK)の補完をもたらす。次いで、PathHunter検出試薬基質を細胞に加えて暗所にて室温で60分間インキュベートし、基質のβ-ガラクトシダーゼ酵素加水分解を可能にした。生成した化学発光シグナルをVeritas(商標)Microplate Luminometer(Turner BioSystems Inc.)により評価した。CCR5活性化の評価のために、cAMP Hunter(商標)システムを使用した。cAMP Hunter(商標)eXpress CCR5 CHO-K1 Gi細胞は、受容体の作動薬刺激に応答した細胞内cAMPレベルの変化を検出するよう設計されている。細胞を96ウェルプレート内に蒔き、一晩インキュベートする。細胞を高濃度の作動薬(0.15625、0.3125、0.625、1.25、2.5及び5μM mip-1α又はCCL24)に暴露し、暗所内でcAMP Working Detection Solutionと共に1時間インキュベートする。cAMP SolutionAを添加した後、化学発光シグナルを評価する前に、追加の3時間のインキュベーション期間を行う。HCM101阻害を評価するために、一定の100nMのCCL24を、高いレベルのHCM101(1、2、7、20及び60μg/ml)と共に加えた。
【0161】
コラーゲン含有率の測定
Sircol可溶性コラーゲンアッセイ(Biocolor、Belfast、UK)を用いて、可溶性コラーゲンを定量化した。CM101(5、20又は100μg/ml)、IgG又はPBSのいずれかで処置したマウスから肝臓サンプルを得た。このサンプルを酸-ペプシン溶液中に抽出した。サンプルを製造業者のプロトコルに従って、コラーゲン含有率に関して分析した。手短には、100μlのサンプルを1mlの比色分析試薬(ピクリン酸中の染料SR)に加え、30分間撹拌した後、10,000gで10分間遠心分離した。SR染料をアルカリ試薬(1N NaOH)によりペレットから解放し、分光光度読み取りを、マイクロプレートリーダー上で555nmで獲得した。
【0162】
活性化ヒト肝星細胞におけるSMA-α測定
肝星細胞を血清フリーDMEM培地中で24時間培養した。SMA-αの基礎測定のためにベースライン細胞サンプルを0日目に得た。
【0163】
ELISAにより以前に測定して高い又は低いレベルのCCL24を含む1% NAFLD患者血清と共に、HCM101(5μg/ml)を有し又は有さずに、細胞を48時間インキュベートした。48時間後、細胞を遠心分離し、商業的なキット(Flow Cytometry Fixation & Permeabilization Buffer Kit I、R&D Systems;Anti-Human alpha-Smooth Muscle Actin PE、R&D Systems)を使用して、細胞内SMA-α蛍光検出用に染色した。蛍光シグナルをFACS(Galius)により測定し、Kaluzaソフトウエアを使用して解析を行った。
【0164】
肝臓切片のΑ-SMA染色
切片をO.C.T.中に包埋された凍結肝臓組織から切り取り、アセトン中で固定化し、0.03% H2O2で5分間処理して、内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。切片を抗α-SMA抗体(Abcam、USA 希釈1:200)と共に室温で1時間インキュベートした。二次抗体(HRP-ヤギ抗ウサギ)とのインキュベーション後、3,3’-ジアミノベンジジン/H2O2溶液(Nichirei Bioscience Inc.)を使用して酵素-基質反応を行った。α-SMA-陽性範囲の明視野画像を、デジタルカメラ(DFC295;Leica、Germany)を使用して200倍の拡大率で、中心静脈の周囲にて捕捉し、ImageJソフトウエアを使用して40視野/切片における陽性範囲を測定した。
【0165】
実施例1:高いレベルのCCL24は、NASH及びNAFLDを有する患者の血清及び肝臓生検の両方で見出される。
NASHにおけるCCL24の潜在的な関与を検討するために、NAFLD患者の血清中のCCL24のレベルを、健康な対象と比較して評価した。結果は、図1Aに示すように、高いFIB 4スコアを有する患者においてCCL24の2倍の増大(pv≦0.01)と、低いFIB 4スコアを有する患者において1.5倍の増大(pv≦0.05)とを示した。高い線維化スコアは、NASHの高い可能性の指標である。従って、NAFLD患者における高いレベルのCCL24は、健康な又はNAFLD患者のいずれかの血液サンプルから採取したPBMC上の高いCCR3発現にも関連していた(図1B~1N)。CCR3レベルは、抗CCR3抗体で染色した単離PBMCのFACS分析を用いて測定した。図1B、1Cから明らかであり得るように、健康な患者のPBMCにおける0.47%、0.54%又は0.61%と比較して、NAFLD患者のPBMCの4.88%、3.2%又は4.69%は、CCR3発現を示した。
【0166】
加えて、有意に高いCCL24の発現は、NASH患者から採取した肝臓生検にて検出されたが(図2A~C)、CCL24発現は健康な肝臓には検出されなかった(図2D、2E)。図2F及び2Gは、CCL24関連受容体CCR3も肝臓内に発現していることを示す。理論に束縛されるものではないが、CCL24はNASHの進行に重要な役割を有し得ると思われる。次の実施例では、抗CCL24モノクローナル抗体の効果をインビボで肝臓病のモデルにおいて評価した。
【0167】
実施例2:CCL24ノックアウトマウスのMCD誘導NASHモデルにおける肝臓機能の特徴付け
CCL24ノックアウト(KO)マウスを、材料及び方法の節に記載したように生成した。CCL24 KO C57BLマウスにMCDを給餌することにより、これらのマウスにNASHを誘導した。NASHは、正常な遺伝的C57BL背景を有する(「野生型」と称する)対照グループにも誘導した。様々な肝臓特性を試験して、疾病進行に対するCCL24ノックアウトの効果を示した。図3に示すように、ALT(図3A)、ALP(図3B)及びビリルビン(図3C)血清レベルは、CCL24ノックアウトマウスよりも野生型マウスで有意に高かった。同様に、図3Dに示すように、肝臓内のコラーゲン濃度は、CCL24ノックアウトマウスにおけるよりも野生型マウスにおいて遥かに高かった。また図3Eに示すように、NASスコア(NAFLD活性スコア)、治験中のNAFLDの変化を測定するツールとして開発された非アルコール性脂肪性肝疾患の特徴を点数化するシステムは、野生型におけるよりもノックアウトマウスにおいて遥かに低かった。理論に束縛されるものではないが、結果はNASH発生におけるCCL24の重要性を明らかに示している。図3F~3Kは、代表的なHE染色肝臓切片を示す。
【0168】
実施例3:抗CCL24 mAb CM101による処置は、マウスモデルにおいてNASHの特徴を低減する。
NASH進行に対するCCL24の阻害の効果を、ハツカネズミ抗CCL24抗体CM101を使用して更に評価した。ハツカネズミCM101は、ヒトCCL24に指向されるマウスモノクローナル抗体である(国際公開第2010/086854号パンフレット)。CM101を用いたNASHに対する処置の効果を評価するために、メチオニンコリン欠乏(MCD)食餌を使用してハツカネズミモデルにNASHを誘導した。
【0169】
C57BLマウスにMCD食餌を6週間給餌することによりNASHを誘導した。対照グループに通常の固形飼料食餌を給餌した。
【0170】
CM101(0.05、0.5、5mg/kg)又はPBSを10日目からMCD給餌マウスに週に2回腹腔内注射し、このとき疾病の症状が既に存在していた。食餌の開始から6週間後、マウスを犠牲にし、肝臓及び血液サンプルを全グループから得た。
【0171】
PBS又はより低い用量で処置したマウスと比較して、5mg/kg CM-101で処置したマウスにNASHパラメーターの有意な低下が観察された。図4に示すように、5mg/kg CM-101高用量は、試験したパラメーター(肝臓酵素、肝臓コラーゲンレベル及び肝臓組織学的スコア)の全ての増大を減弱させた。ALT、AST及びビリルビン(図4A~4C)は、PBS処置マウスと比較して高用量CM-101処置グループで有意に低下した(p<0.05)。CM-101の効果は、肝臓コラーゲン濃度の有意な低下においても明らかであり、5mg/kg CM-101で処置したグループにおける肝臓コラーゲンの95%低下を示し、正常な基礎コラーゲンレベルに逆戻りした(図4Dに示すように)。H&E肝臓染色(図4E~4Lの組織学的切片の写真)におけるNAFLD活性化スコアの決定により、5mg/kg CM-101で処置したグループにおける7スコアから5スコアへの有意な低下が明らかとなった(図4M)。
【0172】
最終的に、肝臓内の標的結合を検証するために、肝臓内のCCL24のレベルを評価し、CM101を用いた処置によるタンパク質発現の十分な低下を示した(図4N)。
【0173】
実施例4:CM101処置によるSTAMマウスNASHモデルにおけるNAFLD活性スコア及び線維症の回復
CM101処置の抗線維化及び抗炎症剤効果を、STAMマウスモデルにおいてNASHに対して更に評価した。STAMマウスは、ヒトにおけるNASH発生の病態生理学的プロセスを密接に模倣するモデルであり、脂肪肝からNASHを経由した線維症及び肝臓癌腫への疾病の全段階を示す。これらの動物は、誕生から2日後にストレプトゾトシンの単回皮下注射を受け、その後、肝臓損傷に似たNASHを誘導する高脂肪食餌を受けた。
【0174】
病理組織学的分析では、STAMマウスへの7.5mg/kgのCM101の投与が、H&E染色により評価して、肝臓損傷を減少させ(図5A~5D)、対照IgG処置グループと比較してNAFLD活性スコア(NASスコア)を32%、有意に減弱させることが示された(図5E)。この効果は、優勢に、65%低下した肝細胞風船様腫大の相当の改善から得られた(図5F)。CM101は、肝臓コラーゲンの蓄積及び線維症を有意に低下させ、これは対照グループと比較して低下したシリウスレッド陽性範囲により示された(図5G~5K)。線維症の確立及び肝臓内のコラーゲン沈着の大部分に関与する、肝臓肝星細胞の活性化を表すα-平滑筋アクチン(α-SMA)もSTAMマウスにて評価した。抗CCL24処置は、対照IgGグループと比較してα-SMA陽性染色範囲の有意な低下をもたらした(図5L~5N)。
【0175】
実施例5:CM101は、ラットTAA誘導肝臓線維症モデルにおいて肝臓損傷及び線維症を有意に低下させる。
線維症に対するHCM101処置の特異的な効果を決定するために、ラット毒性(TAA)誘導線維症モデルを研究した。CCL24の阻害は肝臓損傷の低下をもたらし、これは未処置対照と比較して有意に低下した肝臓酵素レベルにより示される。更に、肝臓損傷の肉眼検査により、再生結節の減少及び損傷の低下を伴う肝臓病理の顕著な回復が明らかとなった(図6A、6B)。肝臓切片のシリウス染色による線維症の評価は、未処置対照と比較してHCM101処置グループのコラーゲン沈着の平均5倍の減少と、炎症のほぼ2倍の低下を示した(図6C)。Sircol定量化によるコラーゲン沈着の更なる評価は、コラーゲン含有率における45%の有意な低下を明らかにした(図6D)。
【0176】
実施例6:CCL24及びその受容体CCR3は、PSC患者の肝臓及び循環内で過剰発現している。
商業的な抗CCR3抗体を使用して、CCR3レベルを原発性硬化性胆管炎(PSC)及び健康な志願者(各々、n=10、n=22)からのPBMCに対して評価した。図7A~7Eに示すように、健康な個人(0.68%+0.36)と比較して、PSC患者(3.94%+1.35)においてCCR3レベルの有意な増大が認められた。CCL24及びCCR3を、PSC患者の肝臓内で免疫蛍光法を用いて評価した。図7F~7Iに示すように、CCL24及びCCR3レベルは、免疫細胞、胆管細胞及び肝細胞内で有意に過剰発現していた。
【0177】
実施例7:CM101は、実験的原発性硬化性胆管炎(PSC)モデルの肝臓損傷を強く回復させる。
PSC動物モデルにおけるCM101の効果を評価するために、ANIT化合物により誘導した齧歯類胆汁うっ滞モデルを使用した。
【0178】
この疾病モデルに典型的なビリルビン、アルカリホスファターゼ、ALT及びASTの高い血清レベルは、CM101処置によって、ANIT誘導胆汁うっ滞性マウスにおいて各々87、47、33及び48%、有意に低下した(図8A)。加えて、H&E染色を用いて肝臓壊死を評価することによって、CM101の病理組織学的効果を研究した。ANIT誘導肝臓損傷は、マウスにおいてCM101処置により減弱することが認められた(図8B)。ラットにて胆管結索により誘導した胆汁うっ滞の第二のモデルで、CM101を用いた処置の効果を更に評価した。このモデルにおけるドクトラル(doctoral)反応及び肝臓損傷に関連した線維症をシリウスレッド染色により評価し、処置を受けなかった手術動物と比較して、抗CCL24 mAbで処置したラットの肝臓における損傷の有意な低下を示した(図9A、9B)。
【0179】
実施例8:完全ヒト化HCM101抗体は、筋線維芽細胞への肝星細胞(HSC)の移行を減弱させる。
多数の器官において、筋線維芽細胞は、損傷に応答した瘢痕プロセスの主な役割を担う。肝臓線維化又は硬変では、肝星細胞(HSC)は、筋線維芽細胞への前駆体集団(即ち、それらは分化転換する)と見なされる。
【0180】
筋線維芽細胞は、α平滑筋アクチン(αSMA)を有する細胞質ストレス線維により特徴付けられる、特殊化した線維芽細胞である。αSMAは筋線維芽細胞を特徴付ける因子であるため、細胞内αSMAレベルの測定は、筋線維芽細胞への肝星細胞(HSC)の移行の指標の役割を果たすことができ、従って、肝臓細胞の状態の重篤さの指標として機能する。
【0181】
CCL24仲介による筋芽細胞へのHSC移行に対する抗CCL24抗体の効果を測定するために、HSC細胞株を使用した。完全ヒト化抗CCL24抗体HCM101を使用してアッセイを行った(国際公開第2015/132790号パンフレット)。細胞を1%のNAFLD患者の血清の存在下、ヒト化HCM101(5μg/ml)を有し又は有さずに37℃で48時間インキュベートした。αSMAのレベルをFACSにより測定して、細胞活性化及び筋線維芽細胞への移行を評価した(図10)。
【0182】
対照の非活性化細胞、即ち患者の血清に暴露されなかった細胞は、細胞内染色及びFACS分析により測定して、2.7% SMA陽性染色を示した。高いCCL24レベル(ELISAにより測定して3521pg/ml)を有するNAFLD患者から得た血清で活性化した肝星細胞培養物では、34%の細胞がSMA陽性細胞であった。血清がヒト化抗CCL24抗体HCM101(10μg/ml)により37℃で1時間予備処理された場合、15%のみのSMA陽性細胞が培養物中に存在した。興味深いことに、23%のみのSMA陽性細胞が、低いCCL24レベル(193pg/ml)を有するNAFLD患者から得た血清で活性化した肝星細胞に存在した。血清がヒト化抗CCL24抗体HCM101(10μg/ml)で予備処理された場合、19%のみのSMA陽性細胞が培養物中に存在した。
【0183】
この結果は、αSMAの高い発現が、高いレベルのCCL24を含むNAFLD血清で処理したHSCにおいて、より低いレベルのケモカインを含む血清よりも強いことを示す。
【0184】
更に、ヒト化抗CCL24抗体HCM101は、高いCCL24レベルを含む血清に暴露することにより活性化された培養物において、αSMAの発現を50%低下させた。理論に束縛されるものではないが、抗CCL24抗体は、CCL24仲介による筋線維芽細胞への肝星細胞(HSC)の移行を減弱させると思われる。
【0185】
実施例9:HCM101の親和性及び結合特異性
Biacore、SPRベースの技術を用いて、CHO細胞により産生されたHCM101の、他の非CCL24ケモカインに対する結合親和性を検討した。Biacoreによってエオタキシン1(CCL11)及びMCP3(CCL7)に対する抗体の相当の結合が示され(各々、図10A及び10B)、各々、30nM及び130nMの親和定数が明らかとなった。
【0186】
実施例10:HCM101は、CCR3及びCCR5ケモカイン受容体活性化の両方を阻害する。
HCM101はCCL11及びCCL7にも結合できることを確立した後、おそらく他のケモカイン受容体に結合することによるCCL24の活性化の潜在力を評価することによって、その有効性及び効力を更に評価した。これを目的として、DiscoverXケモカイン活性化システムを使用した。このシステムは、受容体活性化により誘導される発光シグナルを生成する、操作された細胞を使用する。DiscoverX細胞の2つの異なる活性化システム、操作されたβ-アレスチンの動員によりCCR3が活性化された際にシグナルを生成するCCR3 β-アレスチンアッセイ、及び受容体活性化の開始時に低下するcAMPの細胞内濃度に比例してシグナルを与えるCCR5 cAMPアッセイを使用した。
【0187】
CCL24は、CCR3 β-アレスチンシステムにおいて用量依存性応答を誘導し、7~2000nMの範囲のリガンド(CCL24)濃度により、受容体の明白な活性化が存在した(図12A)。HCM101を異なる濃度で加えると、CCL24によるCCR3活性化の有意な用量依存的阻害がもたらされ(図12B)、活性が70%まで低下した。
【0188】
CCL24が更なるケモカイン受容体を介して細胞を活性化する能力を評価するために、第2のDiscoverXシステムを使用してCCR5ケモカイン受容体の活性化を示した。対照として、mip-1α、既知の及び確立されたCCR5リガンドを、その受容体活性化を誘導する能力に関して試験し、これはcAMPの細胞内レベルの低下により表された。実際に、cAMPの用量依存性低下が異なる濃度のmip-1αにて観察された(データは示さず)。これらのCCR5-cAMP細胞をCCL24で処理すると、0.15~5μMの範囲の濃度のcAMPレベルの低下から明らかな、受容体の用量依存的活性化がもたらされた(図12C)。HCM101補給はこの効果に対抗し、異なる(7~60μg/ml)抗体濃度でcAMP細胞内レベルを増大させ、これはCCR5活性化の70%阻害までの受容体活性化の低下を示している(図12D)。CCR5 cAMPシステムを更に、CCL11に対するHCM101の効果の検討に使用した。4nM~5μMの範囲の濃度のCCL11の投与は、CCR5の用量依存的活性化をもたらした。HCM101の投与は、CCL11誘導CCR5活性化を60%まで減弱させた(図12E及び12F)。
【0189】
実施例11:自己免疫性肝炎に対するCM101の効果
自己免疫性肝炎(AIH)は、インターフェース肝炎、血漿肝臓酵素の上昇、自己抗体の存在、及び制御性T細胞(Tregs)機能不全に関連した慢性炎症性肝臓病である。ラットのコンカナバリン(Con)-A誘導肝炎は、AIHの研究及び潜在的な治療学の評価のための動物モデルである。
【0190】
ラットモデルにおける急性肝炎の誘導のために、300μl PBSに溶解したコンカナバリンA(ConA)を用量5mg/kgで、尾静脈を介して各ラットに投与する。対照ラットは300μlのPBSのみを受容する。動物は0日目にHCM101 2.5mg/kg又は対照IgGを皮下にて受容する。動物をCon A投与から48時間後に犠牲にする。AST、ALT、TNF-α、IFN-γ及びCCL24レベルを評価する。肝臓白血球浸潤、肝臓壊死及び肝臓線維症の病理組織学分析も評価する。
【0191】
慢性肝炎の誘導のために、10mg/kg Con Aを週に1回、12週間IV投与する。2.5mg/kg CM101又はIgGを2週~12週に皮下投与する。対照グループは、コンカナバリンA(ConA)の代わりにPBSを受容する。肝臓酵素(例えばAST、ALT)、壊死及び炎症線維症及びα-SMAに関する肝臓の組織学的分析を評価する。
図1A-1G】
図1H-1N】
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A-3C】
図3D-3J】
図4A-4D】
図4E-4N】
図5A-5K】
図5L-5N】
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J-6T】
図6U-6W】
図7A-7D】
図7E-7I】
図8A-8D】
図8E-8N】
図9A-9F】
図9G
図10A-10E】
図11A-11B】
図12A-12B】
図12C-12F】
【配列表】
0007173589000001.app