(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】食品の品質改良剤
(51)【国際特許分類】
A23L 29/294 20160101AFI20221109BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20221109BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20221109BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20221109BHJP
A23C 21/08 20060101ALI20221109BHJP
A23J 3/08 20060101ALI20221109BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20221109BHJP
A23J 3/18 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A23L29/294
A23L5/00 M
A23L7/10 H
A23L11/00 A
A23C21/08
A23J3/08
A23J3/16
A23J3/18
(21)【出願番号】P 2020552437
(86)(22)【出願日】2018-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2018039541
(87)【国際公開番号】W WO2020084714
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】505306348
【氏名又は名称】有限会社サニーヘルツジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100104581
【氏名又は名称】宮崎 伊章
(72)【発明者】
【氏名】奴久妻 主芳
(72)【発明者】
【氏名】辰野 謙二
(72)【発明者】
【氏名】仲 裕子
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-130695(JP,A)
【文献】特開2005-021048(JP,A)
【文献】特開2006-304671(JP,A)
【文献】特開2006-089453(JP,A)
【文献】特開平07-313099(JP,A)
【文献】特開2004-049148(JP,A)
【文献】特開2000-135074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/294
A23C 21/08
A23L 5/00
A23L 7/10
A23L 11/00
A23J 3/08
A23J 3/16
A23J 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を焼成することによって得られるミネラル製剤用原料を有効成分として含有し、原料が植物の種皮、葉又は茎の焼成物である、タンパク質含有食品の品質改良剤であり、
前記タンパク質が、植物タンパク質又は乳清タンパク質である、
タンパク質含有食品の品質改良剤。
【請求項6】
(削除)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質食品の品質改良剤および品質改良方法に関する。さらに詳しくは、タンパク質食品を原料とし、加工した食品における食感の改良および歩留まりの向上が得られる食品の品質改良剤および品質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物タンパク質、例えば小麦タンパク質であるグルテンはドウ形成能、加熱ゲル化能等の多くの機能を有する植物タンパク質であり、パン、麺、水練り製品などの食品の主原料や副原料として広く利用されている。しかしながら、グルテンは加熱によりゲル化が促進し粘弾性が発現するものの、食肉製品と比較すると低いゲル強度であるため、食した時の歯応え感が物足りなく食肉の代替製品としては十分な性能を確保出来ていない。
非特許文献1は、タンパク質の粘弾性を向上させるため、従来から小麦タンパク質では亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を用いる方法が開示されている。
特許文献1は、酵素(トランスグルタミナーゼ)を作用させる方法により麺の歯応え感を向上させる方法が開示されている。
非特許文献2は、中華麺のようにかん水(アルカリ剤)によりグルテンを変性させて歯応え感を出す方法が開示されている(長尾精一、小麦粉の科学、朝倉書店、157、1995)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「グルテンの加熱ゲル化性について」阿武尚彦、栄養と食糧、Vol34,No.2 127-132,1981
【0004】
【文献】「小麦粉の科学」長尾精一、朝倉書店、157、1995
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1は還元剤による方法では当該グルテンが保存中に空気中の酸素により酸化されてグルテンの物性が戻り品質安定性に問題が有る。
特許文献1は酵素反応の温度や時間により物性の制御が困難な場合が多く有り安定的に使用するには作業者の熟練性が求められる。
非特許文献2は、アルカリ剤特有の風味が発生したり褐変するなど使用にあたっては制限が有り、汎用性に欠ける。以上のように改良する方法については未だ満足にいくものは無かった。
【0007】
発明の目的は、優れたゲル形成性や歯応え感を有するタンパク質の改質方法、及び当該改質タンパク質を含む食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、植物を焼成することによって得られるミネラル製剤用原料を有効成分として含有するタンパク質食品は非常に粘弾性に富んだ優れた食感となることを見出し、この発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、植物を焼成することによって得られるミネラル製剤用原料を有効成分として含有するタンパク質食品の品質改良剤である。
【0010】
すなわち、本発明は植物を焼成することによって得られるミネラル製剤用原料を含有し、ミネラル製剤用原料は特に蕎麦由来の原料が好適でありその種皮、葉又は茎を焼成することによって得られるタンパク質食品の品質改良剤である。
【0011】
本発明の改質方法の対象となるタンパク質としては、動物、植物由来のもの、例えばβ-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン等の乳清タンパク質、グルテン等の小麦タンパク質、大豆タンパク質が挙げられる。また、二種類以上からなるタンパク質、ペプチド、アミノ酸の混合物でも改質できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明のタンパク質食品の品質改良剤および品質改良方法により、タンパク質食品に添加することで、畜肉、魚介肉などの食肉加工食品、特に畜肉を原料とし加工した食品の粘弾性が改良され畜肉代替又は畜肉の使用量を大幅に削減することが可能となり産業上極めて有用である。
【発明の実施するための形態】
【0013】
植物性ミネラル製剤は、好ましくはタンパク質100重量部に対して、50重量部以下となるように添加することを特徴とする。少しでも添加すれば効果があるが、50重量部をこえて添加しても経済的効果は上がらない。
原料となる蕎麦は、タデ科の一年草で世界の温帯各地に栽培される。茎は柔軟で直立し丸く赤く、高さは40~70cmほどで、葉は三角状心臓型で長い葉をもつ。初秋、茎の先に白色の花を群生し、三陵形の皮の黒い果実を結ぶ。本発明では果実から皮を取って蕎麦の種皮のほか、葉、茎等の植物全体を含める。
【0014】
本発明は、植物を焼成することによって得られるミネラル製剤用原料を有効成分として含有するもので、種皮、茎、葉等の植物全体を焼成して得られる灰(焼成物)を用いる。焼成温度は500~900℃である。500℃未満では、有機物の分解が不十分により分解物の組成物、特にポリフェノール由来による変色等による外観および食味等の問題が発生する。一方、900℃を越える場合はアルカリ土類金属特に多価金属類を封鎖するフィチン酸などキレート能を有する有機酸化合物の分解によりその本来有する効果を減じる。
【0015】
この発明の方法において、食品タンパク質への添加は製造工程において原材料に直接添加してもよいし、製造工程中の水に予め溶解し、添加してもよい。
この発明において、食品タンパク質としては、小麦タンパクの冷凍製品、粒状加工品、粉末加工品等が挙げられる。
この発明の品質改良剤は、その効果を阻害しない限りにおいて、上記成分以外に食塩はグルタミン酸ナトリウム、みりん、料理酒などの調味料、砂糖、ブドウ糖、キシロース、水あめ、アスパルティームなどの甘味料、酸味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤や加工でん粉等を併用してよい。
【実施例】
【0016】
植物ミネラル製剤の調製(蕎麦) 1
植物である蕎麦の種皮又は葉・茎を電気炉に投入し800℃まで昇温した後、1時間焼成を行い、焼成物を得た。得られた焼成物100gを室温まで冷却した後、温水900gを加え30分間攪拌抽出を行った。次いで、加工デンプン(PB5000:日澱化学株式会社製)を抽出物300質量部に対して700質量部加え、混合後、トンネル型乾燥機にて水分含有率5%迄乾燥して粉末品を得た。
【0017】
植物ミネラル製剤の調製(胡麻) 2
植物である胡麻の種皮又は葉・茎を電気炉に投入し800℃まで昇温した後、1時間焼成を行い、焼成物を得た。得られた焼成物100gを室温まで冷却した後、温水900gを加え30分間攪拌抽出を行った。次いで、加工デンプン(PB5000:日澱化学株式会社製)を抽出物300質量部に対して700質量部加え、混合後、トンネル型乾燥機にて水分含有率5%迄乾燥して粉末品を得た。
【0018】
植物ミネラル製剤の調製(椿) 3
植物である椿の木片を電気炉に投入し800℃まで昇温した後、1時間焼成を行い、焼成物を得た。得られた焼成物100gを室温まで冷却した後、温水900gを加え30分間攪拌抽出を行った。次いで、加工デンプン(PB5000:日澱化学株式会社製)を抽出物300質量部に対して700質量部加え、混合後、トンネル型乾燥機にて水分含有率5%迄乾燥して粉末品を得た。
【0019】
試験.1
小麦タンパク質(フメリットA2 長田産業株式会社製品)50質量%に精製水100質量%および植物エキス粉末を5~50質量%加えて、フードカッター(CutterR100 robot coupe)を用いて均一になるまで混練してペースト液を得た。得られたペースト液を内径30mm×長さ150mm×厚さ0.1mmの塩化ビニリデン製チューブに充填し、恒温水槽(株式会社ぞうや製、製品名:IHユニット)を用いて、温度90℃、45分間加熱し、その後、冷却して、温度10℃で24時間保存した。保存後、物性測定機器(株式会社レオテック製、型式:FUDOレオメーターRT-3002D)を用いて、下記の条件でゲル強度として破断強度(g/cm2)を測定し、その性状を観察した。これを実施例1とする。
【0020】
試験2・3
食品タンパク質としての小麦タンパク質の代わりに、それぞれ大豆タンパク質(ソルピー4000H 日清オイリオ株式会社)、乳清タンパク質(エンラクトHG 日本新薬株式会社)、を用いること以外は実施例1と同様に実施した(実施例2~5とする)約40gを得た。
【0021】
比較例1~5
食品タンパク質(小麦タンパク質、大豆タンパク質、乳清タンパク質)に植物エキス粉末を添加せずに実施例と同様な試験を行った。
【0022】
試験4・5
食品タンパク質としての小麦タンパク質を用い、植物エキス粉末を胡麻及び椿を用いる以外は同様の試験を行った。
物性測定条件
以下の条件で物性を測定した。
・プランジャー :圧縮弾性用 Dφ10mm、・テーブルスピード:10cm/min
・感度:2kg
・レコーダー:HIOKI ・チャートスピード:180mm/min
・感度0.5V
・サンプル形状:直径48mm×高さ30mm
【0023】
【0024】
評価
得られた破断強度(g/cm2)及びその性状を次ぎの4段階の基準で区分しゲル形成性(強度)を評価した。
評価A:1400g/cm2以上の破断強度を有し、非常に硬く、弾力を有するゲルである。
評価B:1000~1200g/cm2以上の破断強度を有し、硬く、弾力を有するゲルである。
評価C:1000g/cm2以下の破断強度を有し、軟らかく弾力の弱いゲルである。
【0025】
本発明のタンパク質の改質方法により、タンパク質の有する性質を安全で効率良くしかも容易に改質することができる。植物灰原料は植物由来であれば効果を有するが、特に蕎麦由来の原料を好適に用いることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、タンパク質食品に添加することで、畜肉、魚介肉などの食肉加工食品、特に畜肉を原料とし加工した食品の粘弾性が改良され、畜肉代替又は畜肉の使用量を大幅に削減することが可能となり産業上極めて有用である。