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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20221109BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20221109BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/25
A61K8/27
A61K8/29
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/46
A61Q17/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021009649
(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公開番号】P2022113416
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】592215011
【氏名又は名称】東洋ビューティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】福岡 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】池田 素勉
(72)【発明者】
【氏名】清水 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅大
(72)【発明者】
【氏名】久間 將義
(72)【発明者】
【氏名】吉尾 公男
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070477(JP,A)
【文献】特表2008-543752(JP,A)
【文献】特開2004-250403(JP,A)
【文献】特開2005-325088(JP,A)
【文献】特開2018-100258(JP,A)
【文献】特開2016-041665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物系紫外線散乱剤(A)~20質量%と、粘土鉱物系親水性増粘剤(B)およびキサンタンガム(C)を0.05~1質量%含む親水性増粘剤と、セタノール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及び水添ナタネ油アルコールから選ばれる一種または二種以上を0.5質量%超5質量%以下含む油性成分(D)と、グリセリン重合度が5~10のポリグリセリン脂肪酸エステルである非イオン性界面活性剤(E)およびアシルメチルタウリンナトリウムであるアニオン性界面活性剤(F)を含む界面活性剤と、40質量%以上の水を含む水性成分(G)とを必須成分する水中油型乳化組成物からなる日焼け止め化粧料。
【請求項2】
前記粘土鉱物系親水性増粘剤(B)の配合割合が0.5~2質量%である請求項1に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
前記粘土鉱物系親水性増粘剤(B)がベントナイトである請求項1または2に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤(E)の配合割合が、0.1~5質量%である請求項1~3のいずれかに記載の日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属酸化物を含む乳化物からなる日焼け止め化粧料に関し、特に安定性及び使用感の改良された日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紫外線(UV)による肌へのダメージを抑えるために、様々なUVケア化粧料が開発され、日焼け止め化粧料には、紫外線から肌を防御するために紫外線散乱剤や紫外線吸収剤が配合されている。
【0003】
日焼け止め化粧料は、日焼けによる紅斑を抑えるだけでなく、日常的な肌の日光暴露によるシミやシワなどの肌トラブルを予防するためにも使われている。このような用途の日焼け止め化粧料には、SPF/PF-A値の表示があり、塗布しやすく軽い使用感の品質が求められている。
【0004】
例えば、日焼け止め化粧料に紫外線吸収剤を高配合することで、所期したSPF/PF-A値の表示は可能であるが、需要者は肌への負担を少なくしたいという安全性の観点から有機化合物からなる紫外線吸収剤の配合を避ける傾向がある。
【0005】
そこで、高いSPF/PF-A値の日焼け止め化粧料(例えばサンスクリーン用乳化製剤)には、紫外線散乱剤として酸化チタンや酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物が配合されている。
そして、そのような日焼け止め化粧料は、金属酸化物系紫外線散乱剤の分散状態を安定して維持するために、乳化状態として油中水滴(W/O)型の乳化製剤が多い。
【0006】
また、W/O型の日焼け止め化粧料は、塗布時に均一性があることに加え、できるだけ軽い使用感が得られるように様々な改良がなされている。ただし、油性成分が主成分であるW/O型乳化製剤は、その性質上、塗布時のオイル感から解放されるものではない。
【0007】
一方、水中油滴(O/W)型乳化製剤の日焼け止め化粧料は、水性成分が主要成分であるので、軽い使用感は得られるが、必須成分の増粘剤と紫外線散乱剤の金属酸化物との相性が悪く、乳化状態の安定性を確保することが困難であり、実際に安定性の低いものが多かった。
【0008】
また、乳化型化粧料の油相に多量の固形成分を配合して乳化状態を安定化させる技術が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、そのような技術を用いても乳化型化粧料の使用感は重く、塗布時に伸びの良い(薄く塗り広げ易い)化粧料は得られなかった。
【0009】
増粘剤のアクリル酸系ポリマーは、滑らかな感触をもっているために化粧品に広く使用されているが、金属酸化物と併用すると、水相へ金属酸化物が溶出し、または凝集が起こり、保存性を著しく低下させる場合がある。
【0010】
この問題に対応するために、エタノールや特定の界面活性剤を配合して改善を図ったが、昨今の化粧品市場では、消費者にエタノールの配合された製品を避ける傾向が認められたため、エタノールを配合しないで対応する必要もある(特許文献2参照)。
【0011】
また、粘土鉱物系親水性増粘剤は、親水性の板状結晶が水中に分散した状態でカードハウス構造と呼ばれる網目構造を形成することが周知であり、製剤粘度の向上や、乳化や分散状態の維持を目的として用いられている。
【0012】
しかし、粘土鉱物系親水性増粘剤は、これを単体で用いると、離水が起こり、また経時的に配合物の状態が変化し、例えば構造物の状態が経時的に変化するように粘度が変化してゲル化や流動性の低下が起こり、いわゆるエージングと呼ばれる挙動を示す場合がある。
【0013】
また近年になって、アクリル酸系メチルタウリンポリマーや分散性の高いアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体などの新規な増粘剤が上市され、汎く用いられている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許第2749677号公報
【文献】特許第4127397号公報
【文献】特許第6600455号公報
【文献】特開2018-76301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献3、4に記載される技術では、酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物系の紫外線散乱剤を配合して製剤化することが困難である。
【0016】
また、上記のように日焼け止め化粧料の粘度を高め製剤化するには、高分子増粘剤を高配合する必要があり、その場合に、僅かに粘りつくように感じる「べたつき」や伸びの悪さが引き起こされ易いので、使用感の良好なO/W型乳化物からなる化粧料は得られない。
【0017】
また近年では、敏感肌に対しても安全性が志向されることから、ポリオキシエチレンなどの石油由来の界面活性剤を忌避する傾向もある。
【0018】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して金属酸化物を多く配合したO/W型乳化組成物の製剤において、乳化状態の経日安定性に優れ、しかもO/W型乳化組成物からなる化粧料に特有の塗布時の良好な伸びがあると共に、べたつきのない軽い使用感が得られる日焼け止め化粧料とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、本願の発明者らは誠意研究を重ねた結果、金属酸化物を含み、粘土鉱物系親水性増粘剤と特定の天然多糖類系水溶性増粘剤、直鎖状高級アルコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アニオン性界面活性剤を配合することで、塗布時の良好な伸びがあると共に、べたつきのない使用感が得られて軽く、経日安定性に優れたO/W型乳化物となることを見出し、この発明を完成させるに至った。
【0020】
すなわち、この発明においては、前記課題を解決するため、金属酸化物系紫外線散乱剤(A)1~20質量%と、粘土鉱物系親水性増粘剤(B)およびキサンタンガム(C)を含む親水性増粘剤と、油性成分(D)と、非イオン性界面活性剤(E)およびアニオン性界面活性剤(F)を含む界面活性剤と、40質量%以上の水を含む水性成分(G)とを必須成分する水中油型乳化組成物からなる日焼け止め化粧料としたのである。
【0021】
上記したように構成されるこの発明の日焼け止め化粧料は、所定量の金属酸化物系の紫外線散乱剤に対し、粘土鉱物系親水性増粘剤(B)および(C)キサンタンガムを併用して配合していることにより、天然多糖類系親水性増粘剤に特有のべたつきがなく、また長期保管により適度の粘性が低下することなく、所期した使用感および乳化状態の安定性を両立できる。
【0022】
また、非イオン性界面活性剤(E)およびアニオン性界面活性剤(F)を併用することにより、上記乳化安定性が3カ月という所期した長期間に亘って確実に発揮できるものになる。アニオン性界面活性剤(F)は、アシルメチルタウリンナトリウムであることが好ましい。
【0023】
上記の安定性を損なわずに、より油性成分によるべたつきの無い軽い使用感である日焼け止め化粧料にするために、粘土鉱物系親水性増粘剤(B)の配合割合が0.5~2質量%であり、キサンタンガム(C)の配合割合が0.05~1質量%であることが好ましい。
【0024】
また、上記同様の理由により、より好ましい乳化安定性と使用感が確実に得られるように、粘土鉱物系親水性増粘剤(B)がベントナイトであることが好ましい。
また、塗布時に肌に展延性(延び)の良い日焼け止め化粧料にするために、油性成分(D)が、炭素数16~22の直鎖状高級アルコールを0.5質量%超5質量%以下含む油性成分であることが好ましい。
【0025】
塗布時に肌にべた付くことなく、乳化不良を起こさない日焼け止め化粧料にするために、非イオン性界面活性剤(E)の配合割合が、0.1~5質量%であることが好ましく、同様の理由により、非イオン性界面活性剤(E)がポリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。さらに、同様の理由により、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、脂肪酸の炭素鎖が12~22であり、グリセリン重合度が5~10のポリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
この発明は、金属酸化物系の紫外線散乱剤を所定量含む水中油型乳化組成物からなる日焼け止め化粧料において、所定の親水性増粘剤と界面活性剤を所定成分で構成したことにより、紫外線防御に充分な多量の金属酸化物の配合されたO/W型乳化組成物の経日安定性に優れており、しかもO/W型乳化組成物に特有の軽い使用感の得られる日焼け止め化粧料であるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の実施形態の日焼け止め化粧料は、金属酸化物を含むO/W型乳化物であり、粘土鉱物系親水性増粘剤と天然多糖類系親水性増粘剤としてキサンタンガム、直鎖状高級アルコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アニオン性界面活性剤を必須成分として含有している。
【0028】
この発明に用いる金属酸化物系紫外線散乱剤(A)は、化粧品に使用される紫外線散乱剤として周知の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウムなどの金属酸化物を選択的に用いることができ、それらは紫外線防御性の他に、組成物の色調調整、肌の色調調整、肌の隠蔽などの作用を目的として配合される場合もある。
【0029】
特に酸化チタンと酸化亜鉛は、紫外線散乱剤として安全で高い効果を発揮する成分であり、これらの金属酸化物は1種もしくは2種以上を任意に組み合わせることができる。
【0030】
金属酸化物系紫外線散乱剤(A)の配合割合は、日焼け止め化粧料中に1~20質量%であれば、所期した肌トラブル予防のために望ましい紫外線防除性が得られるが、より高い紫外線防除性を得るために好ましい配合割合は、5~20質量%であり、より好ましくは10~20質量%であり、さらには15~20質量%である。
金属酸化物系紫外線散乱剤(A)は、予め油剤中に分散させたものを化粧料中に配合すれば混合しやすく、より均一に分散する。
【0031】
この発明に用いる粘土鉱物系親水性増粘剤(B)は、スメクタイトと呼ばれる層状の結晶構造を有する粘土鉱物であり、水中で結晶層間に水分子を吸着し、各層が剥離してネットワークを形成し、水を増粘させる機能がある。ただし、金属酸化物系紫外線散乱剤(A)と化学反応性を有しないスメクタイトであることが好ましい。
【0032】
スメクタイトの例としては、ヘクトライト、モンモリロライト、サポライト、バイデライトが挙げられ、これらはいずれも上述のように水を増粘させる機能がある。
例えば、親水性の板状結晶粒子であり、分散している水系において、結晶表面と結晶端部を静電結合させてカードハウス構造と呼ばれる網目構造を形成するスメクタイトは好ましく、例えばモンモリロナイトを主成分とするベントナイトを採用することが、このようなメカニズムによって水性成分を増粘させるために望ましい。
【0033】
一方、好ましくない例としては、親水性増粘剤ではあるが鉱物性ではなく、合成ケイ酸塩であるケイ酸ナトリウムマグネシウムを採用すると、金属酸化物との複合体を形成して粘度が増加せず、目視可能なほどの大きさのゲル状粒子となって膨潤が不十分になる。
【0034】
同様に、合成ケイ酸塩であるケイ酸アルミニウムマグネシウムを用いると、伸びのよい乳化組成物を調製できるが、高温における保存性が悪くなるので好ましくない。
【0035】
また、ベントナイト等に代えて、アクリル酸系メチルタウリンポリマーやアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いた場合には、金属酸化物の水相への溶出による安定性不良化や凝集を引き起こす場合があるので好ましくない。
【0036】
粘土鉱物系親水性増粘剤(B)の配合割合は、0.5~2質量%であることが好ましく、0.8~1.7質量%であることがさらに望ましい。粘土鉱物系親水性増粘剤(B)を含まない系では液のチキソトロピー性が低下し、0.5質量%未満の配合であると安定性を確保することが困難になる。また、2質量%を超える配合では、液を肌に馴染ませる際に粉状の析出物が発生するので好ましくない。
【0037】
また、天然多糖類系の水溶性増粘剤であるキサンタンガム(C)が、親水性増粘剤として好ましく、その配合量は0.05~1質量%が好ましく、さらに0.1~0.8質量%がより好ましい。上記配合量が、0.05質量%未満であると安定性を確保することが困難になり、また1質量%を超えるとキサンタンガム特有のべたつきのある重い使用感の化粧料になる。
【0038】
キサンタンガム(C)は、その他の天然多糖類系の水溶性増粘剤に比べて好ましいものであり、例えばタマリンドガム、セルロースやその誘導体であるヒドロキシエチルセルロース、ローカストビーンガム、カラギーナン、グァーガムは、シュードプラスティック性がキサンタンガムより低いことや、高温での液性の変化により安定性が低下しやすく、液吐き等の状態変化が起きやすいので、キサンタンガムに比べて好ましくない。同様にアルギン酸ナトリウムは、ベントナイトや金属酸化物などの無機物とのゲル化が発現しやすいので、好ましくない。
【0039】
乳化助剤として配合される油性成分(D)としては、炭素数16~22の直鎖状高級アルコールの配合されている油性成分が好ましく、その配合量は0.5質量%超5質量%以下であることが好ましく、1~5質量%がより好ましく、さらには2~4質量%がより好ましい。
【0040】
上記配合量が1質量%未満のように、実質的に油性成分が含まれていない状態では、乳化安定性を確保することは困難であり、5質量%を超えると粘度が高くなりすぎて高い保湿力のあるクリームとしては調製できるが、塗布時の伸びが悪くなるので好ましくない。
【0041】
また、油性成分(D)は、乳化組成物の油相を構成する成分であり、化粧料に汎用される油剤や油脂剤、結合剤、分散剤などが含まれていてもよく、特に軽い使用感のO/W型乳化組成物を得るために、高級アルコール(炭素数8以上の一価アルコール)を含ませることが好ましく、特に炭素数16~22の直鎖状高級アルコールとしてセタノール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びこれらの混合物として得られる水添ナタネ油アルコールなどの植物高級アルコールなどを採用し、これらから選ばれる一種または二種以上を用いることも好ましい。
【0042】
非イオン性界面活性剤(E)としては、周知のものを採用可能であるが、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル等を採用することは好ましく、その配合量は、0.1~5質量%が好ましく、さらには0.5~4質量%がより望ましい。配合量が0.1質量%未満であると乳化不良を引き起こし、5質量%を超えるとポリグリセリン脂肪酸エステル特有のべたつきが出てくる。
【0043】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ラウリン酸ポリグリセリル、ジラウリン酸ポリグリセリル、トリラウリン酸ポリグリセリル、テトララウリン酸ポリグリセリル、ミリスチン酸ポリグリセリル、ジミリスチン酸ポリグリセリル、トリミリスチン酸ポリグリセリル、ペンタミイスチン酸ポリグリセリル、パルミチン酸ポリグリセリル、ジパルミチン酸ポリグリセリル、イソパルミチン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸ポリグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル、オレイン酸ポリグリセリル、ジオレイン酸ポリグリセリル、トリオレイン酸ポリグリセリル、テトラオレイン酸ポリグリセリル、ベヘン酸ポリグリセリル、トリベヘン酸ポリグリセリル、テトラベヘン酸ポリグリセリル等があげられ、これらの一種または二種以上を用いることもできる。
【0044】
アニオン性界面活性剤(F)としては、周知のものを採用可能であるが、アシルメチルタウリンナトリウムを採用することは望ましい。非イオン性界面活性剤(E)の単独配合であって、アニオン性界面活性剤(F)が未配合な乳化組成物からなる日焼け止め化粧料は、保存性が良好ではない。特に非イオン性界面活性剤(E)のショ糖脂肪酸エステルの単独配合では、乳化安定性が充分に得られない。
【0045】
また、この発明の組成物は化粧料に通常用いられる各種の添加成分を本発明の効果を阻害しない範囲で適宜添加してもよい。例えば保湿剤、紫外線吸収剤、高級アルコール、金属封鎖剤、被膜剤、糖、アミノ酸、ビタミン、酸化防止剤、色素、香料などが添加成分として挙げられる。
【実施例
【0046】
以下に説明する実施例及び比較例の日焼け止め化粧料は、いずれも以下の表1~6中に示す配合割合において、水溶性成分を70℃程度の条件で混合加熱撹拌させることにより溶解させた水相部と、油溶性成分を同じく70℃程度の条件で溶解させたのちに金属酸化物系の紫外線散乱剤を分散させた油相部とを配合し、ホモミキサーで油相部を微細化させて乳化し、次いで冷却することでクリーム状に製造した。
得られた実施例及び比較例の日焼け止め化粧料を以下の評価方法で評価し、その判定結果を表1~6中に示した。
【0047】
(評価方法:保存安定性)
各試料を70mLガラス製マヨネーズ瓶に充填し、40℃の恒温槽に所定の期間保管し、その期間によって保存安定性を評価した。
[評価] [判定]
3ヶ月時まで変化無し : ○
1ヶ月時で変化有り : △
調製不可 : ×
【0048】
(評価方法:使用感)
評価パネラー20名(20~40歳代の成人男女各10名)により、皮膚に塗布した際の使用感(伸び、べたつきなど)を下記基準にて5段階評価し、さらにその平均点から評価した。
【0049】
[評価]
5点:非常に良い。
4点:良い。
3点:普通。
2点:悪い。
1点:非常に悪い。
【0050】
[判定]
◎:平均点3.5点以上
○:平均点2点以上、3.5点未満
△:平均点2点未満
×:調製不可のため未実施
【0051】
【表1】
【0052】
[実施例1~3、比較例1]
表1に示される結果からも明らかなように、粘土鉱物系親水性増粘剤(B)としてモンモリロナイトを主成分とするベントナイトを使用した実施例1~3では、安定性と使用感が両立された日焼け止め化粧料(製剤)が得られ、その配合量が0.5質量%以上、2質量%以下であるものは特に良好であった。
【0053】
一方、比較例1では、粘土鉱物系親水性増粘剤(B)を配合しなかったため、クリーム状の製剤が調製できなかった。
なお、比較的多量の粘土鉱物系親水性増粘剤(B)を配合すると、分散工程と溶解工程での調製が難しく作業効率が低下して粘度の高いクリーム状の製剤となったが、調製可能であった。
【0054】
【表2】
【0055】
[比較例2、3、5]
表2に示される結果からも明らかなように、粘土鉱物系親水性増粘剤(B)のベントナイトに代えて合成ケイ酸塩やアクリル酸系のポリマーやコポリマーを増粘剤として配合した比較例2、3、5は、安定性と使用性を充分に両立させることができなかった。
ケイ酸ナトリウムマグネシウム(B’)を使用した比較例2は、金属酸化物との複合体を形成して所期した粘度が発現されず、さらに製剤中に0.5~1mm程度の大きさのゲル状不溶物が確認された。また比較例3は、粘度が著しく低く、安定性が得られなかった。
【0056】
また、増粘剤としてアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(B’’)を用いた比較例5は、金属酸化物である白色の凝集物が確認され、調製直後から好ましい化粧料ではなかった。
【0057】
【表3】
【0058】
[実施例4~6、参考例1、比較例6]
上記表3及び前記表1に示される結果からも明らかなように、親水性増粘剤であるキサンタンガム(C)の配合量は、0.1質量%の実施例2(表1参照)でも充分な安定性と使用感が得られていたことから、0%の比較例6に比べ、例えば0.05質量%という僅かでも含まれていれば相当に効果があり、実施例4,5のように0.4質量%以上配合されることがより好ましい。
また、キサンタンガムは、使用感を阻害しない限り配合量を高めてもよいが、実施例6及び参考例1の結果から、好ましくは1質量%以下の配合量であれば、安定性と使用感が充分に両立できることが分かる。参考例1は、粘稠な液性のために溶解工程に比較的多くの時間もしくは強い機械力を要した。
【0059】
【表4】
【0060】
[比較例7~12]
上記の表4に示される比較例7~11では、キサンタンガム以外の天然多糖類系親水性増粘剤として、タマリンドガム、セルロースやその誘導体であるヒドロキシエチルセルロース、ローカストビーンガム、カラギーナン、グァーガムを配合したため、調製直後の粘度がキサンタンガムより低く、さらに高温での液性の変化により安定性の低下が顕著であり、液吐き等の状態変化が確認され、比較例12ではアルギン酸ナトリウムを配合したので、ベントナイトや金属酸化物などの無機物とのゲル化が発現し、いずれも好ましい製剤が得られなかった。
一方、前記表1に記載される評価からも明らかなように、天然多糖類系親水性増粘剤としてキサンタンガム(C)を配合した実施例1~3は、安定性と使用感が両立する製剤が得られた。
【0061】
【表5】
【0062】
[実施例8~9、参考例2、実施例11~12、比較例13]
表5に示される結果からも明らかなように、乳化助剤として配合する油性成分(D)のうち、セタノール及び水添ナタネ油アルコールなどの所定の高級アルコール(炭素数16~22の直鎖状高級アルコール)の配合量が総量として1質量%以上の実施例8、同配合量が5質量%以下の実施例9では、安定性と使用性が両立された製剤が得られた。
なお、油性成分(D)のうち、所定の高級アルコールの配合量が、0.5質量%以下では粘度が低くなり、安定性はかなり低下する。また油性成分(D)のうち、所定の高級アルコールが5質量%を超える配合量の参考例2は、硬めのクリーム状になるが、安定性は良好であった。
【0063】
また、非イオン性界面活性剤(E)であるポリグリセリン脂肪酸エステルについては、ミリスチン酸ポリグリセリル―10(実施例11)やステアリン酸ポリグリセリル―10(実施例12)のように脂肪酸が異なるものを用いても安定性と使用性が両立された製剤が得られた。
【0064】
一方、アニオン性界面活性剤(F)を使用しない比較例13には分離が確認され、所期した化粧料を調製することができなかった。
【0065】
【表6】
【0066】
[実施例13]
表6に示される結果からも明らかなように、金属酸化物として酸化チタンを配合した実施例13は、酸化亜鉛を配合した実施例2(表1参照)、実施例5(表3参照)と同様に安定性と使用感に優れたクリーム状の製剤であった。
【0067】
[実施例14、比較例14]
また、金属酸化物系紫外線散乱剤(A)を増量し、実施例14のように20質量%以下であれば安定性と使用感に優れたクリーム状の製剤が調製可能であったが、比較例14のように24質量%では安定性を確保することが困難であった。
【0068】
[実施例15]
また、実施例15と比較例14の結果から、水(G)が40質量%以上であれば、瑞々(みずみず)しい使用感があることが分かった。
【0069】
[実施例16]
実施例16は、抗酸化性、保湿、肌の張り等を改善する薬効成分の作用が期待できるものであり、他の実施例と同様に、水中油型乳化化粧料として伸びの良さなどの使用感及び安定性が良好なものであった。
これらのことから、各実施例は、いずれも日焼け止め化粧料として所期した優れた効果を奏するものであることが分かる。
【0070】
[実施例17]
実施例17は、非イオン性界面活性剤(E)の配合量が総量として5質量%以内であり良好な使用感のものであったが、同配合量が5質量%を超えると、べとつき感は増すようであった。