(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】幹細胞性の向上におけるナノ秒パルス電場の用途
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0735 20100101AFI20221109BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20221109BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221109BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20221109BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20221109BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20221109BHJP
A61K 35/32 20150101ALI20221109BHJP
A61K 35/35 20150101ALI20221109BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C12N5/0735
C12N5/0775
C12N15/12
C12N5/077
C12M3/00 Z
A61K35/545
A61K35/32
A61K35/35
A61P43/00 101
(21)【出願番号】P 2021506337
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 CN2019099746
(87)【国際公開番号】W WO2020030037
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】201810909901.0
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5, Yiheyuan Road, Haidian District, Beijing 100871, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】葛 子鋼
(72)【発明者】
【氏名】寧 通
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲ジュエ▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 佳青
(72)【発明者】
【氏名】国 晋松
(72)【発明者】
【氏名】李 可佳
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/100727(WO,A2)
【文献】Ning, T. et al.,Nanosecond pulsed electric fields enhance chondrogenesis of mesenchymal stem cells (MSCS) partially via phosphorylation of P38-MAPK,Osteoarthritis and Cartilage,2016年,Vol. 24,p. S170:284
【文献】Yamamoto, Y. et al.,Consideration of pulse-width effects of nanosecond pulsed electric fields application on cancer cell ,IEEE Conference Proceedings ,2017年,Vol. 2017 ,pp. 1-4
【文献】Zhu, S. et al.,Time-dependent effect of electrical stimulation on osteogenic differentiation of bone mesenchymal stromal cells cultured on conductive nanofibers,J. Biomed. Mater Re.s A,2017年,Vol. 105(12),pp. 3369-3383
【文献】Weaver, J. C. et al.,A brief overview of electroporation pulse strength-duration space: a region where additional intracellular effects are expected,Bioelectrochemistry,2012年,Vol. 87,pp. 236-243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00- 5/28
C12M 3/00- 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞性を増強させ、幹細胞性遺伝子発現量を向上させ、メチル化遺伝子発現量を減少させ、及び/又は細胞
中DNAメチル化レベルを低下させるための方法であって、細胞に電場を印加することにより細胞に電気ショックを与えるステップを含み、前記電場は、ナノ秒パルス電場であり、
前記ナノ秒パルス電場のパルス幅は、1~300nsの間であり、電界強度は、1kV/cm~30kV/cmの間であり、
前記細胞は、
胚性幹細胞
または間葉系幹細胞であ
り、
前記幹細胞性遺伝子が、OCT4、NANOGまたはSOX2であり、メチル化遺伝子がDNMT1である、方法。
【請求項2】
前記電気ショックの回数は、1~1000回であり、前記電気ショックの周波数は、1~1000Hzである、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
間葉系幹細胞
が骨細胞又は脂肪細胞に分化する能力を向上させるための方法であって、前記間葉系幹細胞にナノ秒パルス電場を印加することにより前記間葉系幹細胞に電気ショックを与えるステップを含
み、前記ナノ秒パルス電場のパルス幅は、1~300nsの間であり、電界強度は、1kV/cm~30kV/cmの間である、方法。
【請求項4】
前記電気ショックの回数は、1~1000回であり、前記電気ショックの周波数は、1~1000Hzである、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記電場は、エレクトロポレーションキュベットにより印加される、請求項1又は
3に記載の方法。
【請求項6】
前記電場は、導電性フィルムにより印加される、請求項1又は
3に記載の方法。
【請求項7】
前記導電性フィルムは、ポリ-L-乳酸(PLLA)及び多層カーボンナノチューブ(WCNT)のブレンド注入又は静電紡糸により作製される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記導電性フィルムは、ブレンド注入で作製されるものであり
:
1)ポリ-L-乳酸を溶媒に完全に溶解するまで溶解させ
;
2)多層カーボンナノチューブを同じ溶媒に分散させ
;
3)2)の多層カーボンナノチューブ混合物を超音波処理
し、ポリ-L-乳酸の最終濃度が1~50% w/vになるように
1)のポリ-L-乳酸溶液に加え
;
4)超音波処理後、溶液を平板上に注ぎ、静置し
;
5)平板に形成された膜を剥離し
;および
6)膜をオーブンに入れて処理し、溶媒
を完全に揮発
させ、所望の導電性フィルムを得る
、
ことを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリ-L-乳酸の分子量は、1万~100万ダルトンの間であり、固有粘度は、1~20dL/gである、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
請求項1又は
3に記載の方法により処理されて得られた細胞。
【請求項11】
請求項
10に記載の細胞を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
【0002】
本願は、発明の名称が「幹細胞性の向上におけるナノ秒パルス電場の用途」、2018年8月10日に中国特許庁へ提出された出願番号201810909901.0である中国特許出願に基づき優先権を主張し、その全内容は全体として、援用により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、パルス電場による生物学的処理の技術に関し、特にナノ秒パルス電場により細胞、特に幹細胞を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0004】
幹細胞の分化誘導は、再生医学における重要な研究方向であるが、より良い臨床効果を得るために、幹細胞の誘導効率を高める必要がある。幹細胞の分化誘導効率を向上させるために、例えば、物理的刺激、化学分子、サイトカインなどの様々な刺激手段が使用されている。電気信号は、非常に重要な物理的刺激として、細胞内カルシウムイオンレベル、イオンチャネル、その他の関連するシグナル伝達経路を調節することにより、幹細胞の神経分化、骨芽細胞分化、および心筋細胞分化などを促進することができる。しかし、電気信号の生物学的効果は弱く、電場を長時間印加する必要があり、作用時間が数十分間から数日間であり、臨床的応用に不利である。
【0005】
ナノ秒パルス電場(nanosecond pulsed electric fields、nsPEF)は、パルス幅、電界強度および瞬間電力を正確に制御することができる、近年開発された最先端の物理技術であり、従来の電場よりも強力な生物学的効果およびより短い作用時間を有する。ただし、この分野では、ナノ秒パルス電場のさらに多い応用を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の要約
【0007】
発明者は、従来の電界の電界強度が「百V/cm」よりも低く、パルス幅が一般にマイクロ秒またはミリ秒よりも高いため、細胞膜の外側にのみ作用できることを研究で発見した。しかも、ナノ秒パルス電界のパルス幅はナノ秒(ns)レベルに達することができ、電界強度はkV/cmレベルに達することができ、且つ細胞膜内のオルガネラに作用することができる。さらに、発明者は、nsPEFを幹細胞に印加することにより、幹細胞の幹細胞性を大幅に高め、誘導を受ける能力をさらに改善できることを予期せず発見し、本発明を完成させた。
【0008】
第1の態様において、本発明は、幹細胞性の増強、幹細胞性遺伝子発現量の向上、細胞メチル化遺伝子発現量の減少及び/又は細胞メチル化レベルの低下における電場の使用を提供する。
【0009】
好ましくは、前記電場は、ナノ秒パルス電場(nanosecond pulsed electric fields、nsPEF)である。
【0010】
特に、前記電場は、細胞に印加されて細胞に電気ショックを与える。
【0011】
ある実施形態において、前記細胞は、幹細胞であり、好ましくは、多能性幹細胞、単能性幹細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞、IPS細胞又は間葉系幹細胞である。
【0012】
他の実施形態において、前記ナノ秒パルス電場のパルス幅は、1~300nsの間であり、及び/又は、電界強度は、1kV/cm~30kV/cmの間である。
【0013】
他の実施形態において、前記パルス幅の範囲は、10ns~150ns、20ns~100ns、30ns~80ns、40ns~70ns、50~60nsの間であり、例えば、1ns、2ns、3ns、4ns、5ns、6ns、7ns、8ns、9ns、10ns、15ns、20ns、25ns、30ns、35ns、40ns、45ns、50ns、55ns、60ns、65ns、70ns、75ns、80ns、85ns、90ns、95ns、100ns、105ns、110ns、115ns、120ns、125ns、130ns、135ns、140ns、145ns、150ns、155ns、160ns程度である。
【0014】
他の実施形態において、前記電界強度は、1kV/cm、2kV/cm、3kV/cm、4kV/cm、5kV/cm、6kV/cm、7kV/cm、8kV/cm、9kV/cm、10kV/cm、11kV/cm、12kV/cm、13kV/cm、14kV/cm、15kV/cm、16kV/cm、17kV/cm、18kV/cm、19kV/cm、20kV/cm、21kV/cm、22kV/cm、23kV/cm、24kV/cm、25kV/cm、26kV/cm、27kV/cm、28kV/cm、29kV/cm、30kV/cm程度である。
【0015】
他の実施形態において、前記電気ショックの回数は、1~1000回であり、例えば、10~900回、20~800回、30~700回、40~600回、50~500回、60~400回、70~300回、80~200回、90~100回であり、具体的には、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90及び100回であり、及び/又は、前記電気ショックの周波数は、1~1000Hzであり、例えば、10~900Hz、20~800Hz、30~700Hz、40~600Hz、50~500Hz、60~400Hz、70~300Hz、80~200Hz、90~100Hzであり、具体的には、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100Hz、200Hz、300Hz、400Hz、500Hz、600Hz、700Hz、800Hz、900Hz、1000Hz程度である。
【0016】
第2の態様において、本発明は、幹細胞性を増強させ、幹細胞性遺伝子発現量を向上させ、メチル化遺伝子発現量を減少させ、及び/又は細胞メチル化レベルを低下させるための方法であって、電場を細胞に印加することにより細胞に電気ショックを与えるステップを含み、前記電場は、ナノ秒パルス電場であることが好ましい方法を提供する。
【0017】
前記細胞は、幹細胞であることが好ましく、多能性幹細胞、単能性幹細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞、IPS細胞又は間葉系幹細胞であることがより好ましい。
【0018】
ある実施形態において、前記ナノ秒パルス電場のパルス幅は、1~300nsの間であり、及び/又は、電界強度は、1kV/cm~30kV/cmの間である。
【0019】
好ましくは、前記パルス幅の範囲は、10ns~150ns、20ns~100ns、30ns~80ns、40ns~70ns、50~60nsの間であり、例えば、1ns、2ns、3ns、4ns、5ns、6ns、7ns、8ns、9ns、10ns、15ns、20ns、25ns、30ns、35ns、40ns、45ns、50ns、55ns、60ns、65ns、70ns、75ns、80ns、85ns、90ns、95ns、100ns、105ns、110ns、115ns、120ns、125ns、130ns、135ns、140ns、145ns、150ns、155ns、160ns程度である。
【0020】
また、電界強度は、1kV/cm、2kV/cm、3kV/cm、4kV/cm、5kV/cm、6kV/cm、7kV/cm、8kV/cm、9kV/cm、10kV/cm、11kV/cm、12kV/cm、13kV/cm、14kV/cm、15kV/cm、16kV/cm、17kV/cm、18kV/cm、19kV/cm、20kV/cm、21kV/cm、22kV/cm、23kV/cm、24kV/cm、25kV/cm、26kV/cm、27kV/cm、28kV/cm、29kV/cm、30kV/cm程度であることが好ましい。
【0021】
他の実施形態において、前記電気ショックの回数は、1~1000回であり、例えば、10~900回、20~800回、30~700回、40~600回、50~500回、60~400回、70~300回、80~200回、90~100回であり、具体的には、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90及び100回であり、及び/又は、前記電気ショックの周波数は、1~1000Hzであり、例えば、10~900Hz、20~800Hz、30~700Hz、40~600Hz、50~500Hz、60~400Hz、70~300Hz、80~200Hz、90~100Hzであり、具体的には、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100Hz、200Hz、300Hz、400Hz、500Hz、600Hz、700Hz、800Hz、900Hz、1000Hz程度である。
【0022】
他の実施形態において、前記電場は、エレクトロポレーションキュベットにより印加される。
【0023】
他の実施形態において、前記電場は、導電性フィルムにより印加され、好ましくは、前記導電性フィルムは、PLLA(ポリ-L-乳酸)とWCNT(多層カーボンナノチューブ)のブレンド注入又は静電紡糸により作製されるものである。
【0024】
ある具体的な実施形態において、前記導電性フィルムは、ブレンド注入にて作製され、具体的には、例えば、ポリ-L-乳酸を溶媒(例えば、クロロホルム)に完全に溶解するまで溶解させ、同時に多層カーボンナノチューブ(例えば、カルボキシル化カーボンナノチューブ)を同じ溶媒に分散させ、超音波(例えば、ウォーターバス超音波)処理後、ポリ-L-乳酸の最終濃度が1~50% w/vになるよう上記ポリ-L-乳酸溶液に加え、次いで、再度超音波処理後、溶液を平板(例えば、ガラスプレート)上に注ぎ、静置(好ましくは、一晩静置)した後、平板に形成された膜を剥離し、さらに膜をオーブン(例えば、真空オーブン)に入れて処理し、溶媒が完全に揮発した(好ましくは、35℃温度で)ことを確認し、所望の導電性フィルムを得る。
【0025】
他の具体的な実施形態において、前記ポリ乳酸の分子量は、1万~100万ダルトンの間であり、その固有粘度は、1~20dL/gである。
【0026】
第3の態様において、本発明は、間葉系幹細胞が軟骨細胞、骨細胞又は脂肪細胞に分化する能力を向上させるための方法であって、前記間葉系幹細胞にナノ秒パルス電場を印加して電気ショックを与えることを含む方法を提供する。
【0027】
ある実施形態において、前記ナノ秒パルス電場のパルス幅は、1~300nsの間であり、及び/又は、電界強度は、1kV/cm~30kV/cmの間であり、好ましいパルス幅の範囲は、10ns~150ns、20ns~100ns、30ns~80ns、40ns~70ns、50~60nsの間であり、例えば、1ns、2ns、3ns、4ns、5ns、6ns、7ns、8ns、9ns、10ns、15ns、20ns、25ns、30ns、35ns、40ns、45ns、50ns、55ns、60ns、65ns、70ns、75ns、80ns、85ns、90ns、95ns、100ns、105ns、110ns、115ns、120ns、125ns、130ns、135ns、140ns、145ns、150ns、155ns、160ns程度であり、好ましい電界強度は、1kV/cm、2kV/cm、3kV/cm、4kV/cm、5kV/cm、6kV/cm、7kV/cm、8kV/cm、9kV/cm、10kV/cm、11kV/cm、12kV/cm、13kV/cm、14kV/cm、15kV/cm、16kV/cm、17kV/cm、18kV/cm、19kV/cm、20kV/cm、21kV/cm、22kV/cm、23kV/cm、24kV/cm、25kV/cm、26kV/cm、27kV/cm、28kV/cm、29kV/cm、30kV/cm程度である。
【0028】
他の実施形態において、前記電気ショックの回数は、1~1000回であり、例えば、10~900回、20~800回、30~700回、40~600回、50~500回、60~400回、70~300回、80~200回、90~100回であり、具体的には、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90及び100回であり、及び/又は、前記電気ショックの周波数は、1~1000Hzであり、例えば、10~900Hz、20~800Hz、30~700Hz、40~600Hz、50~500Hz、60~400Hz、70~300Hz、80~200Hz、90~100Hzであり、具体的には、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100Hz、200Hz、300Hz、400Hz、500Hz、600Hz、700Hz、800Hz、900Hz、1000Hz程度である。
【0029】
他の実施形態において、前記電場は、エレクトロポレーションキュベットにより印加される。
【0030】
他の実施形態において、前記電場は、導電性フィルムにより印加されるものであり、好ましくは、前記導電性フィルムは、PLLA(ポリ-L-乳酸)とWCNT(多層カーボンナノチューブ)のブレンド注入又は静電紡糸により作製されるものである。
【0031】
ある具体的な実施形態において、前記導電性フィルムは、ブレンド注入にて作製され、具体的には、例えば、ポリ-L-乳酸を溶媒(例えば、クロロホルム)に完全に溶解するまで溶解させ、同時に多層カーボンナノチューブ(例えば、カルボキシル化カーボンナノチューブ)を同じ溶媒に分散させ、超音波(例えば、ウォーターバス超音波)処理後、ポリ-L-乳酸の最終濃度が1~50% w/vになるように上記ポリ-L-乳酸溶液に加え、次いで、再度超音波処理後、溶液を平板(例えば、ガラスプレート)上に注ぎ、静置(好ましくは、一晩静置)した後に、平板に形成された膜を剥離し、さらに膜をオーブン(例えば、真空オーブン)に入れて処理し、溶媒が完全に揮発した(好ましくは、35℃温度で)ことを確認し、所望の導電性フィルムを得る。
【0032】
他の具体的な実施形態において、前記ポリ-L-乳酸の分子量は、1万~100万ダルトンの間であり、その固有粘度は、1~20dL/gである。
【0033】
第4の態様において、本発明は、第2及び第3の態様に係る方法により処理して得られる細胞を提供する。
【0034】
第5の態様において、本発明は、第4の態様に係る細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0035】
本発明は、ナノ秒パルス電場が幹細胞の幹細胞性を向上させることができ、且つ前記幹細胞性の向上が複数の幹細胞タイプに適用可能であり、しかも、幹細胞性の向上がそれらの誘導を受けて分化を行う能力をさらに促進することを初回に発見している。従って、本発明の技術案は、幹細胞の活力及び分化の潜在能力を高め、幹細胞の再生医学における幹細胞のより広く効率な応用を促進するために計り知れない価値がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1(A)は、ナノ秒パルス電場の装置を示し、(B)は、エレクトロポレーションキュベットの側面図を示し、(C)は、エレクトロポレーションキュベットの上面図を示し、(D)は、細胞実験で使用されるエレクトロポレーションキュベット及びその電界強度シミュレーションを示し、(E)は、異なる電気ショック条件下での細胞生存への影響を示す。
【0037】
【
図2】
図2は、ナノ秒パルス電場でブタ骨髄間葉系幹細胞を刺激した後の幹細胞性遺伝子及びメチル化関連遺伝子の検出結果を示す。
【0038】
【
図3】
図3は、ナノ秒パルス電場でブタ骨髄間葉系幹細胞を刺激した後の細胞全体のメチル化レベルの検出結果を示す。
【0039】
【
図4】
図4は、ナノ秒パルス電場で刺激され、軟骨分化に誘導された後に、アルシアンブルー染色(A)、GAGの半定量(B)、並びにCOLII、ACAN及びSox9遺伝子の発現(C)を示す。
【0040】
【
図5】
図5は、ナノ秒パルス電場で刺激され、骨芽細胞分化を誘導した後のアリザリンレッドの半定量結果を示す。
【0041】
【
図6】
図6は、ナノ秒パルス電場で刺激され、脂肪細胞分化を誘導した後のオイルレッドO半定量結果を示す。
【0042】
【
図7】
図7は、ヒト胚性幹細胞がナノ秒パルス電場で刺激された後の幹細胞性遺伝子OCT4、NANOG及びSOX2の検出結果を示す。
【0043】
【
図8】
図8は、導電性フィルムの実物画像(A)及び走査型電子顕微鏡画像(B)を示す。
【0044】
【
図9】
図9は、エレクトロポレーションキュベット及び導電性フィルムによる間葉系幹細胞への刺激が幹細胞性遺伝子発現に与える影響の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、実施例を通じてさらに理解されることができるが、これらの実施例は、本発明を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。現在知られているか、又はさらに開発された本発明の変更は、本明細書に記載され、以下に保護請求される本発明の範囲内にあると見なす。
【0046】
定義
【0047】
「幹細胞性」という用語は、幹細胞が未分化状態を維持する能力を意味する。幹細胞は、継続的に自分自身を更新しながら、1つまたは複数の細胞の運命付けへ分化する潜在能力を維持し、さらに追加誘導を受けて分化するための能力を維持する。幹細胞的幹細胞性は、形態学的観察または細胞の幹細胞性遺伝子を検出することによって検出することができる。「幹細胞性遺伝子」という用語は、「幹細胞性マーカー遺伝子」又は「幹細胞性関連遺伝子」とも呼ばれ、幹細胞の状態に関連する遺伝子を指し、これらの遺伝子の発現は、幹細胞の幹細胞性の維持に有益である。通常の幹細胞性遺伝子は、Oct4、Nanog、Sox2などを含む。
【0048】
さらに、幹細胞の幹細胞性は、細胞内で低下されるメチル化レベルによっても特徴付けることができ、メチル化レベルの低下は、メチル化遺伝子の発現量のダウンレギュレーションにより達成することができる。従って、幹細胞の幹細胞性は、さらに細胞内でのメチル化遺伝子の低発現(発現量低下)によって特徴づけることができる。本開示では、「メチル化関連遺伝子」という用語は、「メチル化遺伝子」とも呼ばれ、細胞メチル化を促進することにより細胞メチル化レベルを向上させる遺伝子を指し、例えば、メチルトランスフェラーゼ遺伝子、より具体的には、例えば、Dnmt1がある。
【0049】
「電気ショック」という用語は、本明細書で「電気刺激」又は「電場刺激」とも呼ばれ、目的の対象、例えば、細胞(幹細胞を含み)に特定の回数及び周波数で一定のパルス幅及び電界強度を有する電場(又は電気パルス)を印加することを意味する。ある実施形態において、電気ショックは、専用装置により施される。ある具体的な実施形態において、エレクトロポレーションキュベットにより施される。他の具体的な実施形態において、導電性フィルム(又は、導電性膜とも呼ばれる)により施される。
【0050】
導電性フィルムは、電場を印加する機能を実現するとともに、従来の方法で作製することができれば、先行技術で知られている任意の材料および構造を採用することができる。候補案としては、Zhu S、 Jing W、 Hu X、 Huang Z、 Cai Q、 Ao Y、 Yang X. 2017. Time-dependent effect of electrical stimulation on osteogenic differentiation of bone mesenchymal stromal cells cultured on conductive nanofibers. J Biomed Mater Res Part A 2017:105A:3369-3383にナノファイバー(nanofiber)及びその製造方法を開示しており、全体として援用により本開示に組み込まれる。
【0051】
ある実施形態において、導電性フィルムは、ポリ-L-乳酸(PLLA)及び多層カーボンナノチューブ(WCNT)のブレンド注入又は静電紡糸により作製され、作製された導電性フィルムは、表面が滑らかであり、且つ抵抗がPBSに近い。
【0052】
ある実施形態において、処置する細胞は、導電性フィルムに播種され、導電性フィルムに電気ショックを直接に行うが、先に細胞懸濁液を調製している必要はない。
【0053】
他の実施形態において、電気ショックのパルス幅は、1~300nsの間であり、好ましいパルス幅の範囲は、10ns~150ns、20ns~100ns、30ns~80ns、40ns~70ns、50~60nsの間であり、より具体的には、例えば、1ns、2ns、3ns、4ns、5ns、6ns、7ns、8ns、9ns、10ns、15ns、20ns、25ns、30ns、35ns、40ns、45ns、50ns、55ns、60ns、65ns、70ns、75ns、80ns、85ns、90ns、95ns、100ns、105ns、110ns、115ns、120ns、125ns、130ns、135ns、140ns、145ns、150ns、155ns、160ns程度である。
【0054】
ある実施形態において、電界強度の範囲は、1kV/cm~30kV/cmであり、好ましい電界強度は、1kV/cm、2kV/cm、3kV/cm、4kV/cm、5kV/cm、6kV/cm、7kV/cm、8kV/cm、9kV/cm、10kV/cm、11kV/cm、12kV/cm、13kV/cm、14kV/cm、15kV/cm、16kV/cm、17kV/cm、18kV/cm、19kV/cm、20kV/cm、21kV/cm、22kV/cm、23kV/cm、24kV/cm、25kV/cm、26kV/cm、27kV/cm、28kV/cm、29kV/cm、30kV/cm程度である。
【0055】
上記パルス幅及び電界強度値は、数値自体以外に、ある実施形態において、電気パルス印加用設備自体の精度などのために、印加されるパルス幅は該数値に基づいて一定の上下浮動があり、前記浮動は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%であってもよいため、これらの実施形態において、前記パルス幅及び電界強度値は、同様に該数値の周りの上下の浮動値も含み、さらに、このような浮動は、本発明で数値後の「程度」により具現化することもできることを説明する必要がある。
【0056】
「ナノ秒パルス電場」という用語では、ナノ秒は10億分の1秒であり、持続時間が数ナノ秒から数十ナノ秒のパルスはナノ秒パルスと呼ばれる。ナノ秒パルス電界の主な特徴は、高出力、低熱量であるため、腫瘍の治療中に熱がほとんど発生しなく、しかも、細胞膜を通過して細胞内のオルガネラに作用し、さらに、細胞の生物学的機能に影響を与えることができる。
【0057】
長パルスによる細胞膜のエレクトロポレーションキュベット効果と異なり、ナノ秒パルスは、非常に高い電力(数十億ワット)、非常に短い持続時間(ナノ秒)及び高い電界強度(kV/cm)を発生するため、細胞膜が完全に帯電する前に細胞に穿入して細胞内構造に作用することができる。ナノ秒パルスの持続時間は細胞膜の充電時間よりも短いため、細胞膜にほとんど影響を与えず、細胞膜のエレクトロポレーションキュベット効果を引き起こしない。
【実施例】
【0058】
実施例
【0059】
材料及び方法
【0060】
機器
【0061】
【0062】
【0063】
骨髓間葉系幹細胞の抽出及び培養
【0064】
試薬:DMEM (Gibco);DMEM 高グルコース培養液(Gibco); トリプシン(Trypsin、Invitrogen);ウシ胎児血清(FBS、Gibco);デキサメタゾン(dexamethasone、Life Technologies);TGF-β3(Peprotech);ピルビン酸ナトリウム(Life Technologies);ビタミン C(Vc、Sigma);ITS(Insulin Transferrin Selenium premix、Life Technologies);プロリン(国薬集団);グリセロリン酸ナトリウム(Sigma);ファストグリーン(Amresco);アルカリフォスファターゼ(ALP)キット(南京建城生物工程研究所);TritonX-100(Sigma);骨髓間葉系幹細胞培養液:ピペットで滅菌培養フラスコにDMEM ストック溶液 160mL、溶融FBS 40mLを加え、さらに1000×PS 200 μLを加える。全過程において滅菌後のクリーンベンチで操作し、無菌的な環境を維持する。BD MatrigelTM matrix(BD Biosciences社、 354277)、 mTeSR1 Complete Kit(Stemcell社、05850)
【0065】
手順:
【0066】
(1)ブタ骨髄間葉系幹細胞の抽出
【0067】
本実験は、ブタ骨髄間葉系幹細胞を使用した。実験用ブタは、北京阜外病院動物実験室から採用された。動物免許は、北京阜外病院動物倫理審査を通過し、いずれの研究過程中にも動物実験は北京大学動物倫理委員会の関連規則に準拠していた。
【0068】
豚足を75%アルコールに20分間浸入し、クリーンベンチに移し、電動ドリルで骨髄腔を開いた。洗浄液が透明になるまで骨髄をPBSで培養皿に洗い流した。培養皿内の液体を収集して15mLの遠心チューブに移し、1000rpmの速度で遠心機にて10min遠心し、細胞を収集した。
【0069】
(2)細胞培養
【0070】
沈澱した細胞塊を骨髄間葉系幹細胞培養液に懸濁した後、細胞を培養し、初日に培地の半交換を行い、その後、3日ごとにPBSで洗浄し、培地を交換した。培養中に顕微鏡下で細胞を撮影して記録した。
【0071】
(3)細胞継代
【0072】
細胞が80%満たされたら、トリプシン 2mLを細胞培養皿に加え、インキュベーターに入れて3分間消化した。骨髄間葉細胞の懸濁を顕微鏡で観察した後、体積で2倍量のトリプシンを含む細胞培養液を培養皿に加え、15mLの遠心チューブに移し、冷却遠心機にて1000rpmの回転速度で5分間遠心した。細胞ペレットを収集し、血球計数器でカウントし、培地に再懸濁した。5000個/cm2の細胞密度で細胞を培養し、週2回培地交換した。
【0073】
(4)細胞凍結保存
【0074】
継代された骨髄間葉細胞をトリプシンで消化し、遠心後に上澄みを捨て、凍結保存液を加えて凍結保存チューブに吸引した。凍結保存チューブをプログラム機能付きクーラーボックスに入れ、-20℃で3時間静置し、-80℃の低温冷蔵庫で一晩置いた後、液体窒素タンクに入れて長期保存した。
【0075】
細胞を蘇生させる時に、凍結保存チューブを37℃の水浴槽で速く振って氷を溶かした。その後、実験では、第5世代の初代骨髄間葉系幹細胞を使用した。
【0076】
ヒト胚性幹細胞系H9の培養
【0077】
(1)プレーティング:
【0078】
BD MatrigelTM matrix(BD Biosciences社、354277)を使用して6ウェルプレートにプレーティングし、そのプロトコルに従って予備冷却されたDMEM/F-12を使用して希釈し、希釈された基底膜マトリックを6ウェルプレートに各ウェルあたり1mLセットし、培養皿を軽く振って、培養皿の表面を均一に覆い、よく混合し、室温で1hインキュベートした。
【0079】
(2)培養:
【0080】
mTeSR1 Complete Kit(Stemcell社、05850)培地を使用してヒト胚性幹細胞系H9を培養し、毎日培地を交換し、次の継代まで成長状態を評価及びモニタリングした。
【0081】
(3)継代:
【0082】
DMEM/F-12で洗浄し、ディスパーゼ(dispase)を使用して37℃で4~7分間程度消化し、ディスパーゼを吸引し、次いで培養皿をDMEM/F-12で軽く洗浄し、コロニーをセロロジカルピペット又はセルスクレーパーで剥がし、収集して遠心し、再懸濁してよく混合し、1:6から1:10の分配比率で継代した。
【0083】
エレクトロポレーションキュベットによる電気刺激の印加
【0084】
(1)電気パルス発生装置
【0085】
電気パルス発生装置は、当業者に周知の任意の方法で接続および組み合わせることができ、本発明の実施例で使用されるナノ秒パルス電場装置の構成要素は、高電圧直流電源、同軸伝送ケーブル、高電圧プローブ及び細胞刺激用エレクトロポレーションキュベット(BTX)(エレクトロポレーションキュベットは、市販されている任意の型番のエレクトロポレーションキュベットを使用することもできる)を含む。ここで、高電圧直流電源は、刺激電場を与え、同軸伝送ケーブルは、電気エネルギーを圧縮でき、高電圧プローブによりナノ秒パルス電場を形成し、ナノ秒レベルの電場で負荷エレクトロポレーションキュベットに作用した。本装置は、パルス幅が100ナノ秒のパルス電場を構築した。高電圧直流電源の出力電圧は、オシロスコープで読み取ることができ、出力電圧を変更することによりエレクトロポレーションキュベット内での異なるナノ秒パルス電界強度を調整して制御することができる。
【0086】
(2)電気刺激、並びに誘導及び/又は分析
【0087】
血球計数器を使用して細胞(ブタ骨髄間葉系幹細胞又はヒト胚性幹細胞)をカウントし、細胞をPBSに懸濁し、10万~150万/mlの細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液500μL~800μLを採取してエレクトロポレーションキュベットに入れ、実験群は、特定のパラメーターのナノ秒パルス電場によって刺激され、電気刺激終了後、低速遠心で細胞を収集し、それぞれ軟骨、骨芽細胞、脂質生成の誘導(以下、詳しく説明)を使用してブタ骨髄間葉系幹細胞に約2週間の軟骨(pellet culture)、脂質生成、骨芽細胞の誘導培養を行い、同時に細胞が電気刺激された4時間以内に、電気刺激後の細胞の一部を採取して必要な分析及び検出、例えば、実施例で行った幹細胞性遺伝子検出(この検出は、ヒト胚性幹細胞及ブタ骨髄間葉系幹細胞を使用)、DNAの全体的なメチル化レベル検出(ブタ骨髄間葉系幹細胞)を行った。
【0088】
導電性フィルムによる電気刺激の印加
【0089】
実施例で使用される導電性フィルムは、分子量が10万であり、固有粘度が2.7dL/gであるポリ-L-乳酸及びWCNT(多層カーボンナノチューブ)を原料として、ブレンド注入法により作製された。具体的な手順は、以下の通りである。即ち、1gポリ乳酸をクロロホルム5mLに溶解させ、完全に溶解するまで8時間溶解し、同時にカルボキシル化カーボンナノチューブ30mgをクロロホルム5mLに分散させ、水浴で30分間超音波処理した後、ポリ-L-乳酸の最終濃度が10%w/vになるようにポリ-L-乳酸のクロロホルム溶液に加え、次いで、再度20分間超音波処理した後に、溶液をガラスプレートに注ぎ、一晩放置して剥がし、さらに膜を35℃の真空オーブンに1日入れることにより、溶媒が完全に揮発するようにし、所望の導電性フィルムを得た。該導電性フィルムは、表面が滑らかであり、抵抗がPBSに近い。
【0090】
導電性フィルムを使用するナノ秒パルス電場装置の構成要素は、高電圧直流電源、同軸伝送ケーブル、高電圧プローブ、導電性シート及び細胞刺激用導電性フィルムを含む。高電圧直流電源は、刺激電場を与え、同軸伝送ケーブルは、電気エネルギーを圧縮でき、高電圧プローブによりナノ秒パルス電場を形成し、導電性フィルムの両側の導電性シートを介してナノ秒レベルの電場を導電性フィルムに作用した。本試験で使用される装置は、パルス幅が100ナノ秒のパルス電場を構築した。高電圧直流電源の出力電圧は、オシロスコープで読み取ることができ、出力電圧を変更することにより導電性フィルム上での異なるナノ秒パルス電界強度を調整して制御することができる。
【0091】
導電性フィルム電気ショックを使用する具体的な手順は、以下の通りである。ブタ骨髄間葉系幹細胞、細胞が80%満たされたら、トリプシン2mLを細胞培養皿に加え、インキュベーターに入れて3分間消化した。骨髄間葉細胞の懸濁を顕微鏡で観察した後、体積で2倍量のトリプシンを含む細胞培養液を培養皿に加え、同時に15mLの遠心チューブに移し、冷却遠心機にて1000rpmの回転速度で5分間遠心した。細胞ペレットを収集し、血球計数器でカウントし、培地に再懸濁し、50万~400万個/mLの細胞密度になり、50μL採取して導電性フィルムに均一に滴下し、常温で3~12時間インキュベートして培地を加えた。週2回培地交換した。電気刺激中に、培地をPBSバッファーと交換し、両側に導電性プレートをセットし、特定のパラメーターのナノ秒パルス電場刺激を印加した。電気刺激終了後、成長培地に変えて培養を続け、指定された時点で細胞を消化し、次の試験を行った。
【0092】
軟骨分化誘導:
【0093】
軟骨誘導培地の処方:High glucose DMEM(Gibco)、10ng/mL TGF-β3(R&D Systems、Minneapolis、MN)、10-7Mデキサメタゾン(D4902、Sigma)、50μg/mLアスコルビン酸(A5960、Sigma)、1mMピルビン酸ナトリウム(P2256、Sigma)、4mMプロリン(P5607、Sigma)、1%(v/v)ITS(41400045、Gibco)。
【0094】
培養手順:骨髄間葉系幹細胞をトリプシンで消化してカウントし、培養液を捨て、軟骨分化誘導培養液を使用して2.5×105/mLの細胞懸濁液を調製し、1mL吸引して15mLの遠心チューブに入れ、500gの条件下、低速で5分間遠心し、次いで、幹細胞ペレットによる小球培養を行い、3日ごとに培養液を交換し、14日まで培養した。
【0095】
脂肪細胞分化誘導:
【0096】
脂肪細胞分化誘導培地の処方:
【0097】
A液-分化液:175mL骨髄間葉系幹細胞脂肪細胞分化誘導培地 A液基礎培地、20mLウシ胎児血清、2mLペニシリン-ストレプトマイシン、2mLグルタミン、400μLインスリン、200μL IBMX、200μLロシグリタゾン、200μLデキサメタゾン。
【0098】
B液-維持液:175mL骨髄間葉系幹細胞脂肪細胞分化誘導培地 B液基礎培地、20mL ウシ胎児血清、2mLペニシリン-ストレプトマイシン、2mLグルタミン、400μLインスリン。
【0099】
培養手順:
【0100】
骨髄間葉系幹細胞を37℃、5%CO2のインキュベーターで培養した。細胞のコンフルエンスが80%~90%に達すると、0.25%トリプシン-0.04%EDTAを使用して消化した。消化された間葉系幹細胞を2×104細胞/cm2の細胞密度で6ウェルプレートに播種し、各ウェルあたり2mL完全培地を加えた。細胞を37℃、5% CO2のインキュベーターで培養した。細胞のコンフルエンスが100%になるか、又は過剰融合になるまでに3日ごとに培地交換した。
【0101】
間葉系幹細胞用完全培地を注意深く吸引し、骨髄間葉系幹細胞脂肪細胞分化誘導培地A液2mLを6ウェルプレートに加えた。誘導の3日後、6ウェルプレートからA液を吸引し、骨髄間葉系幹細胞脂肪細胞分化誘導培地B液2mLを加えた。24時間後、B液を吸引し、A液を交換して誘導を行った。
【0102】
A液とB液を交互に3~5回(12~20日)作用した後、脂肪滴が十分に大きく丸くなるまでB液を使用して4~7日間培養を維持し続けた。B液による培養維持期間では、2~3日おきに新鮮なB液を交換する必要がある。
【0103】
骨芽細胞分化誘導
【0104】
骨芽細胞分化誘導培地:DMEM培地で調製し、各成分の濃度はそれぞれ10%FBS、100nMデキサメタゾン、10mM β-グリセロリン酸ナトリウム、50μg/mLビタミンCである。
【0105】
培養手順:骨髄間葉系幹細胞をトリプシンで消化してカウントし、細胞懸濁液濃度を50,000個/mLに希釈し、細胞懸濁液100μLを吸引して96ウェルプレートに移した。細胞が約70%に成長すると、培養液を捨て、PBSで3回洗浄し、骨芽細胞分化誘導培養液を加えて骨髄間葉系幹細胞骨芽細胞分化を誘導し、3日ごとに培養液を交換した。
【0106】
軟骨、骨芽細胞及び脂質生成の検出
【0107】
(1)軟骨分化の検出
【0108】
A、遺伝子検出:COL I、COL II、COL X、SOX 9、ACANの遺伝子発現を検出した。COL II、SOX9、ACANは、軟骨分化に有利する機能遺伝子であり、COL 1、 COLXは、軟骨分化に不利する肥大遺伝子である。
【0109】
B、組織学的検査:4%パラホルムアルデヒドで細胞ペレットを固定し、アガロースに包埋した後、脱水・透明化、パラフィン包埋、切片を行い、次いで細胞外マトリックスをアルシアンブルーで染色し、同時に細胞形態をHE染色法で染色した。
【0110】
C、半定量的検出-グリコサミノグリカンGAG定量法:細胞ペレットをプロテイナーゼKにて56℃で一晩消化し、次いで、90℃で10分間加熱し、カチオン染料DMMBを使用してGAGを30分間錯体化させ、錯体分解液を使用して沈澱を分解し、656nmの波長における吸光度を検出し、細胞外マトリックスGAGの含有量を算出した。
【0111】
(2)骨芽細胞分化誘導の検出:
【0112】
アリザリンレッドS染色法:アリザリンレッドのpHを4.0~4.2に調整し、室温で1時間染色した後、PBSで15分間インキュベートし、上澄みを捨て、PBSで3回洗浄し、上澄みを捨て、ヘキサデシルクロリドを加えて室温で30分間静置した。上澄みを吸引し、紫外線分光光度計を使用し、サンプルの波長562nmにおける吸光度を検出し、ヘキサデシルクロリド溶液で調整し、同時にアリザリンレッドを含まない単純な細胞の上澄みの吸光度を測定し、各サンプルあたり3回繰り返し、平均値及び標準偏差を計算した。
【0113】
(3)脂肪細胞分化誘導の検出:オイルレッドO染色を1時間で行い、PBSで2回洗浄し、さらにイソプロパノールを加えて抽出し、490nmで半定量的に検出した。
【0114】
幹細胞性遺伝子及びメチル化遺伝子の検出
【0115】
試薬:天根生化科技北京有限公司から購入されるTRNzol トータルRNA抽出試薬(DP405)、FastQuant RT Kit(with gDNase) (KR106)及びSuperReal PreMix Plus(SYBR Green)(FP205);イソプロパノール、クロロホルムは、北京試薬工場から購入された。
【0116】
手順:
【0117】
(1)抽出RNA及び逆転写:Tiangen社製のDP405を使用してRNAを抽出し、次いで、Tiangen公司製のKR106キットを使用してプロトコルに従って逆転写を行った。
【0118】
(2)Real-time PCRの検出:Tiangen社製のFP205キットを使用してリアルタイム定量PCRを行った。Oct4、CARM1、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、Mll1、Mll2、Nanog、PRMT5、Sox2などの遺伝子の発現レベルを検出した。
【0119】
DNAメチル化レベルの検出
【0120】
試薬:MethylFlash Global DNA Methylation (5-mC) ELISA Easy Kit (p-1030)(Epigentek社)
【0121】
検出方法:キットのプロトコルに従って、標準曲線を作成し、サンプルのDNAメチル化度を検出した。
【0122】
実施例
【0123】
実施例1 電気刺激の準備
【0124】
ナノ秒パルス電場を使用して細胞を刺激する場合には、最も重要なパラメーターは、パルス幅及び電界強度であり、実験の目的を達成し、細胞活性を確保するには、パルス幅及び電界強度を適切な範囲内に制御する必要がある(J.C. Weaverら、「A brief overview of electroporation pulse strength-duration space: A region where additional intracellular effects are expected」,Bioelectrochemistry,87(2012)236-243; Tadej Kotnikら、Electroporation-based applications in biotechnology, Trends in Biotechnology, 33(8), 2015.8)。本実施例では、エレクトロポレーションキュベットにより細胞に電気ショックを行い(
図1A~D)、パルス幅を1ns~300ns範囲の間に調整することにより、電界強度が1kV/cm~30kV/cm範囲の間に調整され、パルス幅と電界強度を組み合わせて電気ショックを行ったところ、上記範囲内で、細胞の生存に明らかな悪影響を及ぼさないこと(
図1E)ことを示し、これは、ナノ秒パルス電場パルス幅及び電界強度が細胞の生存に与える影響への理解と一致した(J.C. Weaverら、「A brief overview of electroporation pulse strength-duration space: A region where additional intracellular effects are expected」,Bioelectrochemistry,87(2012)236-243; Tadej Kotnikら、Electroporation-based applications in biotechnology, Trends in Biotechnology, 33(8), 2015.8)。
【0125】
後の試験では、2つのパラメーターを組み合わせることにより細胞に電気刺激を行い、試験では、必要に応じて刺激の回数を選択し、回数範囲が1~1000回の間であり、周波数が1~1000Hzの間であり、温度が室温であり、又は具体的に20~37℃範囲内での適切な温度を選択した。複数の条件を組み合わせるといずれも異なる程度の効果を生じて、ブタ骨髄間葉系幹細胞では、効果のよいパラメーターは、以下の3つの群(A、B及びC群)を含み、便宜上で、後の実施例で上記パラメーターの組み合わせを使用する場合には、A群、B群又はC群が代わりに直接使用されることがある。
【0126】
A群:パルス幅10ns、電界強度20kV/cm;
【0127】
B群:パルス幅100ns、電界強度10kV/cm;
【0128】
C群:パルス幅60ns、電界強度5kV/cm。
【0129】
刺激回数が5回、周波数1Hz、温度が室温である。
【0130】
ヒト胚性幹細胞の刺激実験では、同様に上記1ns~300nsのパルス幅の範囲、及び1kV/cm~30kV/cmの電界強度範囲で調整され、異なるパラメーターの組み合わせにより細胞を刺激し、実施例4では、具体的に、10ns+5kV/cm、10ns+10kV/cm、10ns+20kV/cm、100ns+5kV/cm、100ns+10kV/cm及び100ns+20kV/cmという6つの組み合わせを構築し、このような6つの条件の刺激下で、標的遺伝子の発現を検出した。
【0131】
なお、上記具体的なパラメーター組み合わせは、部分的に好ましい実施案にすぎず、上記ナノ秒パルス電場を印加する条件範囲内で、実際に複数の適切なパラメーターの組み合わせが存在し、異なるタイプの幹細胞については、その最も適切な条件も異なり、異なる目標細胞に応じて具体的なパラメーターの組み合わせを設定する必要もある。しかし、当業者は、ナノ秒パルスが印加される条件範囲を明確に知っており、これは、本開示においてさらに支持されているため、当業者は、本開示に基づいて必要なパラメーターの組み合わせを得る能力を有することは理解すべきである。
【0132】
実施例2 ナノ秒パルス電場刺激による間葉系幹細胞の幹細胞性の増強
【0133】
1、ナノ秒パルス電場による幹細胞性遺伝子向上の促進
【0134】
電気信号刺激は幹細胞(例えば、間葉系幹細胞)の分化を促進する可能性があることが知られており、その理由は一般に、電気信号が細胞分化に関連する信号または経路を活性化し、さらに幹細胞が複数の組織細胞に分化する能力を促進できるためであると推測されているが、幹細胞の分化メカニズムは非常に複雑であるため、外部刺激が幹細胞の分化能力を高める理由はまだよくわかっていない。発明者は、ナノ秒パルス電場刺激を受けた後(実験を5回繰り返し、0.5時間~2時間電気刺激した後に細胞を収集し)、これらの幹細胞性関連遺伝子の発現を検出し、幹細胞性を維持するために非常に重要な通常の遺伝子の発現量が大幅に増加したことを予期せず発見した。
図2A-Cに示すように、電場を印加しない対照群と比較しては、OCT4遺伝子の発現量はほぼ3倍増加し、NANOG及びSOX2の発現量も有意に向上したことが分かった。これは、間葉系幹細胞がナノ秒パルス電場によって刺激された後、幹細胞性が向上されていることを意味する。
【0135】
DNAメチル化は、細胞の幹細胞性維持及び分化における運命に重要な役割を果たすことが知られており、例えば、細胞の幹細胞性が強いほど、DNAメチル化のレベルが通過に高くなり、DNAメチル化の降低では、細胞運命への分化をもたらし、しかも、メチル化遺伝子の発現は、細胞のメチル化状態と密接に関連する。ナノ秒パルス電場によって刺激された間葉系幹細胞の幹細胞性の増強をさらに理解するために、次いで、細胞中のメチル化関連遺伝子の発現を検出したところ、細胞メチル化レベルと密接に関連する遺伝子DNMT1の発現量及びタンパク質発現レベルが有意に低減したことを示した(
図2D-H)。しかしながら、DNMT3a及びDNMT3bは影響を受けないため、電気ショックがメチル化に与える影響はDNMT1の発現を特異的に影響を与えることによって達成されることが明らかになる。
【0136】
細胞DNAのメチル化状態をより直接に分析するために、次いでMethylFlash Global DNA Methylation(5-mC)ELISA Easy Kitを使用して刺激された細胞内でのDNA全体のメチル化レベルを検出したところ、ナノ秒パルス電場は、DNAの全体的なメチル化レベルを40%~80%低下させた(
図3)ことを示した。
【0137】
以上の結果より、ナノ秒パルス電場刺激は、幹細胞の幹細胞性を向上させることができ、つまり、本発明は、初回に当分野でナノ秒パルス電場が細胞幹細胞性を改善できることを発見および証明することを示した。
【0138】
実施例3 電気ショックを受けた間葉系幹細胞の軟骨、骨芽細胞及び脂肪細胞の分化能の顕著な向上
【0139】
本実施例は、ナノ秒パルス電場によって刺激された間葉系幹細胞分化能力の変化を検出した。まず、軟骨分化能については、14日目にアルシアンブルー染色を行ったところ、ナノ秒パルス電場によって予備処理された後、さらに軟骨細胞分化誘導培養を行って、細胞外マトリックスに有意に増加したことを示した(
図4A)。
【0140】
その後、Dimethylmethylene Blue Assay(DMMB)を使用してグリコサミノグリカンを定量的に検出すると、GAGの含有量が1.5倍程度に向上されたことが分かり(
図4B)、さらに軟骨機能を有意に促進できる遺伝子COL II、ACAC及びSOX 9の発現を検出し、これらの2つの遺伝子の発現が有意に向上するとともに(
図4C)、同時にCOL I、 COL Xの発現を有意に影響を与えないことが分かった(結果は示していない)。これは、間葉系幹細胞が軟骨に分化する能力が有意に向上されることが明らかになる。
【0141】
次いで、ナノ秒パルス電場によって間葉系幹細胞が刺激された後、骨芽細胞分化能の変化を研究した。ナノ秒パルス電場によって予備処理された後、さらに骨芽細胞分化誘導培養を行い、誘導培地のみを使用するのと比較して、骨芽細胞分化誘導効率は、有意に1.5倍程度向上され、実験を3回(n=3)繰り返した(
図5)。
【0142】
ナノ秒パルス電場によって予備処理された後、脂肪細胞分化誘導培養を行った後(誘導培地のみの使用よりも)、脂肪細胞分化誘導効率は、有意に向上し、実験を3回(n=3)を繰り返した(
図6)。
【0143】
以上の結果より、ナノ秒パルス電場によって刺激された間葉幹細胞の幹細胞性の向上は分化能の増強にも直接につながることを示した。これは、ナノ秒パルス電場によって刺激された幹細胞が幅広い実用的な応用の見通しを持っていることも確認されている。
【0144】
実施例4 ナノ秒パルス電場による胚性幹細胞の幹細胞性の向上
【0145】
他の幹細胞タイプの幹細胞性を増強する効果に対するナノ秒パルス電場の影響を研究するために、さらにヒト胚性幹細胞に異なるパルス幅及び電界強度の組み合わせを使用してナノ秒パルス処理を行い、具体的には、10ns+5kV/cm、10ns+10kV/cm、10ns+20kV/cm、100ns+5kV/cm、100ns+10kV/cm和100ns+20kV/cmという6つの組み合わせを構築した。結果は、パルス幅100ns、電界強度10kV/cmの条件下で、ナノ秒パルス電場がOCT4、NANOGの発現レベルの向上を有意に促進することができ、パルス幅10ns、電界強度5kV/cmの条件下で、NANOG及びSOX2遺伝子の発現量を有意に向上させることもでき(
図7A-C)、以上の結果は、前記胚性幹細胞の幹細胞性がナノ秒パルス電場によって刺激された後に効果的に増強されることを示した。
【0146】
実施例5 導電性フィルムにより電気刺激を加えると幹細胞性を効果的に向上させることができる。
【0147】
現在、エレクトロポレーションキュベットによるナノ秒パルス電場の印加の主な制限は、エレクトロポレーションキュベットに以下の不利な制限があり、即ち、1回のみ作用するが、複数の時点で連続的に作用することはできず、電場が作用する細胞の数は限られ、エレクトロポレーションキュベットが懸濁した単一の細胞のみに作用し、凝集したか又は付着した細胞に作用しないため、電気ショックの前に細胞を懸濁するまで消化する必要があり、これは、細胞の状態に影響を与える可能性があり、体内の組織などに作用することはできない。
【0148】
そこで、発明者は、電場印加手段を改良し、エレクトロポレーションキュベットの代わりに導電性フィルムを使用した(
図8)。本実施例は、ブタ骨髄間葉細胞への電場印加に対する導電性フィルムとエレクトロポレーションキュベットの効果を比較した。
【0149】
100ns、10kV/cmのパラメーターの電気パルスを使用してエレクトロポレーションキュベットの細胞懸濁液及び導電性フィルム上に播種されたブタ骨髄間葉系幹細胞をそれぞれ刺激し、幹細胞性遺伝子Nanog及びOCT 4の発現を検出した。結果は、導電性フィルム上に直接播種された細胞への電気ショックとエレクトロポレーションキュベットによる細胞懸濁液への電気ショックの両方は、いずれも幹細胞性遺伝子の発現を効果的に向上させることができ、導電性フィルムによる電気ショック後の向上は、さらに高くなり、特にNanog遺伝子発現量の向上は、さらに有意になる(
図9では、**は、p<0.01 非常な有意差を示し、*は、p<0.05、有意差を示す)ことを示した。電気ショック效果の利点に加えて、導電性フィルム電気ショックを使用すると、細胞を消化して懸濁液を調製する必要がないため、コスト及び時間を節約する一方で、細胞の活力を最大限に保持し、細胞が電気ショックを受けた後、さらに、その後の複数の処理を実施することもでき、例えば、さらに電気ショック後に導電性フィルムに付着した細胞を短時間培養してから電気ショックなどを継続することもでき、操作の柔軟性を大幅に向上させた。これは、導電性フィルムによるナノ秒パルス電場の印加が非常に良好な適用の見通しを持っていることを示した。