(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】半導体スーパジャンクションパワーデバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652K
(21)【出願番号】P 2021551598
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2019123424
(87)【国際公開番号】W WO2021103097
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】201911202240.9
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519152663
【氏名又は名称】蘇州東微半導体股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】▲ごーん▼ ▲軼▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 磊
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲願▼林
(72)【発明者】
【氏名】王 睿
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/085752(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109755241(CN,A)
【文献】特表2020-532120(JP,A)
【文献】特表2005-536048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0189586(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104465381(CN,A)
【文献】特開昭62-254468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型ドレイン領域と、前記n型ドレイン領域の上に位置するn型ドリフト領域と、複数のスーパジャンクションMOSFETセルからなるスーパジャンクションMOSFETセルアレイとを含む半導体スーパジャンクションパワーデバイスであって、前記スーパジャンクションMOSFETセルは、
前記n型ドリフト領域の頂部に位置するp型ボディ領域と、
前記p型ボディ領域の下方に位置するp型柱状ドープ領域と、
前記p型ボディ領域内に位置するn型ソース領域と、
前記p型ボディ領域の上に位置し、ゲート誘電体層、ゲート及びn型フローティングゲートを含むゲート構造とを含み、
前記ゲート及び前記n型フローティングゲートは前記ゲート誘電体層の上に位置し、かつ横方向において、前記ゲートは前記n型ソース領域に近い側に位置し、前記n型フローティングゲートは前記n型ドリフト領域に近い側に位置し、前記ゲートは容量結合によって、前記n型フローティングゲートに作用し、
前記スーパジャンクションMOSFETセルアレイにおいて、少なくとも1つの前記スーパジャンクションMOSFETセルの前記n型フローティングゲートは前記ゲート誘電体層によって、前記p型ボディ領域と隔離され、かつ少なくとも1つの前記スーパジャンクションMOSFETセルの前記n型フローティングゲートは1つの当該n型フローティングゲートの下方に位置する前記ゲート誘電体層における開口によって前記p型ボディ領域に接触してpn接合ダイオードを形成する、
半導体スーパジャンクションパワーデバイス。
【請求項2】
前記ゲートは前記n型フローティングゲートの上まで延伸する、
請求項1に記載の半導体スーパジャンクションパワーデバイス。
【請求項3】
前記ゲートは前記n型フローティングゲートの上まで延伸し、かつ前記n型フローティングゲートの前記n型ドリフト領域に近い側の側壁を被覆する、
請求項1に記載の半導体スーパジャンクションパワーデバイス。
【請求項4】
前記開口は前記n型フローティングゲートの下方に位置し、かつ前記n型ドリフト領域側に近接する、
請求項1に記載の半導体スーパジャンクションパワーデバイス。
【請求項5】
少なくとも1つの前記スーパジャンクションMOSFETセルのゲートが前記n型ソース領域と電気的に接続されている、
請求項1に記載の半導体スーパジャンクションパワーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は2019年11月29日に中国国家知識産権局に出願され、出願番号が201911202240.9の中国特許出願の優先権を主張し、上述の出願の全ての内容は引用により本願に援用される。
【0002】
本願は半導体スーパジャンクションパワーデバイスの技術分野に属し、例えば逆回復速度が調整可能な半導体スーパジャンクションパワーデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の半導体スーパジャンクションパワーデバイスの断面構造は
図1に示すように、ドレインコンタクト金属層58によってドレインに接続されたn型ドレイン領域50と、n型ドレイン領域50の上に位置するn型ドリフト領域51と、n型ドリフト領域51の頂部に位置するp型ボディ領域52と、p型ボディ領域52内に位置するn型ソース領域53と、p型ボディ領域の下方に位置するp型柱状ドープ領域59と、p型ボディ領域52内に位置し、かつn型ソース領域53及びn型ドリフト領域51との間に介在する電流チャネルと、当該電流チャネルのオン及びオフを制御し、ゲート誘電体層54及びゲート55を含むゲート構造とを含み、そのうち、n型ソース領域53及びp型ボディ領域52はソースコンタクト金属層57によってソースに接続される。
【0004】
関連技術の半導体スーパジャンクションパワーデバイスがオフの時に、逆方向電流は半導体スーパジャンクションパワーデバイス内に寄生されたボディダイオードに流れ、この時にボディダイオードの電流はマイノリティキャリアが注入される現象が存在し、これらのマイノリティキャリアは半導体スーパジャンクションパワーデバイスが再びオンになった時に逆回復を行い、大きな逆回復電流をもたらし、逆回復時間が長い。関連技術において、一般的に、電子照射、深い準位再結合中心等の寿命制御技術を用いて、半導体スーパジャンクションパワーデバイスの逆回復速度を向上させ、当該方法の欠点はプロセス難易度が上がり、製造コストが上昇し、かつ半導体スーパジャンクションパワーデバイスの逆回復速度を正確に制御することができないことである。
【発明の概要】
【0005】
本願は、関連技術における半導体スーパジャンクションパワーデバイスの逆回復速度を正確に制御することができないという技術的問題を解決するために、逆回復速度が調整可能な半導体スーパジャンクションパワーデバイスを提供する。
【0006】
本発明の実施例に係る半導体スーパジャンクションパワーデバイスは、
n型ドレイン領域と、前記n型ドレイン領域の上に位置するn型ドリフト領域と、複数のスーパジャンクションMOSFETセルからなるスーパジャンクションMOSFETセルアレイとを含む半導体スーパジャンクションパワーデバイスであって、
前記スーパジャンクションMOSFETセルは、
前記n型ドリフト領域の頂部に位置するp型ボディ領域と、
前記p型ボディ領域の下方に位置するp型柱状ドープ領域と、
前記p型ボディ領域内に位置するn型ソース領域と、
前記p型ボディ領域の上に位置し、ゲート誘電体層、ゲート及びn型フローティングゲートを含むゲート構造とを含み、
前記ゲート及び前記n型フローティングゲートは前記ゲート誘電体層の上に位置し、かつ横方向において、前記ゲートは前記n型ソース領域に近い側に位置し、前記n型フローティングゲートは前記n型ドリフト領域に近い側に位置し、前記ゲートは容量結合によって、前記n型フローティングゲートに作用し、
前記スーパジャンクションMOSFETセルアレイにおいて、少なくとも1つの前記スーパジャンクションMOSFETセルの前記n型フローティングゲートは前記ゲート誘電体層によって、前記p型ボディ領域と隔離され、かつ少なくとも1つの前記スーパジャンクションMOSFETセルの前記n型フローティングゲートは1つの当該n型フローティングゲートの下方に位置する前記ゲート誘電体層における開口によって前記p型ボディ領域に接触してpn接合ダイオードを形成する。
【0007】
好ましくは、本願の半導体スーパジャンクションパワーデバイスにおいて、前記ゲートは前記n型フローティングゲートの上まで延伸する。
【0008】
好ましくは、本願の半導体スーパジャンクションパワーデバイスにおいて、前記ゲートは前記n型フローティングゲートの上まで延伸し、かつ前記n型フローティングゲートの前記n型ドリフト領域に近い側の側壁を被覆する。
【0009】
好ましくは、本願の半導体スーパジャンクションパワーデバイスにおいて、前記開口は前記n型フローティングゲートの下方に位置し、かつ前記n型ドリフト領域側に近接する。
【0010】
好ましくは、本願の半導体スーパジャンクションパワーデバイスにおいて、少なくとも1つの前記スーパジャンクションMOSFETセルのゲートが前記n型ソース領域と電気的に接続されている。
【0011】
本発明の実施例に係る半導体スーパジャンクションパワーデバイスは、pn接合ダイオードが形成されたスーパジャンクションMOSFETセルの数を制御することによって、半導体スーパジャンクションパワーデバイスの逆回復速度を容易かつ正確に制御することができ、これにより半導体スーパジャンクションパワーデバイスにより広い応用を有させる。同時に、pn接合ダイオードが形成されたMOSFETセルの数を調整する場合、ゲート誘電体層における開口を形成するための1枚のレチクルを修正すればよく、これにより半導体スーパジャンクションパワーデバイスの製造コストを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下実施例を説明するために必要な図面を簡単に紹介する。
【
図1】関連技術の半導体スーパジャンクションパワーデバイスの断面構造模式図である。
【
図2】本願に係る半導体スーパジャンクションパワーデバイスの第1実施例の断面構造模式図である。
【
図3】本願に係る半導体スーパジャンクションパワーデバイスの第2実施例の断面構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本願の実施例における図面を参照し、具体的な実施形態によって、本願の技術案を完全に説明する。同時に、明細書の図面に列挙された模式図は、本願に記載の前記層及び領域のサイズを拡大したものであり、列挙された図形の大きさは実際の寸法を表すものではない。明細書に列挙された実施例は明細書の図面に示された領域の特定の形状に限定されるものではなく、製造によるずれ等の得られた形状を含む。
【0014】
図2は本願に係る半導体スーパジャンクションパワーデバイスの第1実施例の断面構造模式図であり、
図2に示すように、本発明の実施例に係る半導体スーパジャンクションパワーデバイスは、n型ドレイン領域20と、n型ドレイン領域20の上に位置するn型ドリフト領域21と、複数のスーパジャンクションMOSFETセルからなるスーパジャンクションMOSFETセルアレイとを含み、
図2に2つのスーパジャンクションMOSFETセルが例示的に示されている(スーパジャンクションMOSFETセル200及びスーパジャンクションMOSFETセル201)。
【0015】
本発明の実施例のスーパジャンクションMOSFETセルは、n型ドリフト領域21の頂部に位置するp型ボディ領域22と、p型ボディ領域22の下方に位置し、隣り合うn型ドリフト領域21との間に電荷バランスを形成し、半導体スーパジャンクションパワーデバイスの耐圧を向上させるために用いられるp型柱状ドープ領域29と、p型ボディ領域22内に位置するn型ソース領域23と、p型ボディ領域22の上に位置し、ゲート誘電体層24、n型フローティングゲート25及びゲート26を含むゲート構造とを含み、ゲート26及びn型フローティングゲート25はゲート誘電体層24の上に位置し、かつ横方向においてn型フローティングゲート25はn型ドリフト領域21に近い側に位置し、ゲート26はn型ソース領域23に近い側に位置し、かつn型フローティングゲート25の上まで延伸し、ゲート26及びn型フローティングゲート25は絶縁誘電体層27によって隔離され、ゲート26は容量結合によって、n型フローティングゲート25に作用する。絶縁誘電体層27は、一般的にシリカである。
【0016】
本発明の実施例のスーパジャンクションMOSFETセルアレイにおいて、少なくとも1つのスーパジャンクションMOSFETセルのn型フローティングゲート25はゲート誘電体層24によって、p型ボディ領域22と隔離され(
図2におけるスーパジャンクションMOSFETセル201のように)、かつ少なくとも1つのスーパジャンクションMOSFETセルのn型フローティングゲート25は1つの当該n型フローティングゲート25の下方に位置するゲート誘電体層24における開口28によってp型ボディ領域22に接触してpn接合ダイオードを形成する(
図2におけるスーパジャンクションMOSFETセル200のように)。
【0017】
本発明の実施例において、横方向においてゲート26はn型ソース領域23に近い側に位置し、n型フローティングゲート25はn型ドリフト領域21に近い側に位置し、つまり横方向において、n型フローティングゲート25はn型ドリフト領域に近接するように設置され、ゲート26はn型ソース領域23に近接するように設置される。なお、ゲート26の全部はn型ソース領域23に近い側に位置してもよく、つまりゲート26はn型ソース領域23に近い側のみに位置してもよく、ゲート26の一部がn型ソース領域23に近い側に位置し、他の一部はn型フローティングゲート25の上まで延伸してもよく(
図2に示すように)、又はゲート26がn型フローティングゲート25の上まで延伸し、かつn型フローティングゲート25のn型ドリフト領域21に近い側の側壁を被覆してもよい(
図3に示すように)。
図3は本願に係る半導体スーパジャンクションパワーデバイスの第2実施例の断面構造模式図であり、
図3では、
図2におけるスーパジャンクションMOSFETセル200のゲート26がn型ドリフト領域21側に向かってn型フローティングゲート25の上まで延伸し、かつn型フローティングゲート25のn型ドリフト領域21に近い側の側壁を被覆する構造のみが例示的に示されている。
【0018】
ゲート26がn型ドリフト領域21側に向かって延伸することにより、ゲート26がn型フローティングゲート25を被覆する面積を増大させることができ、これによりゲート26のn型フローティングゲート26に対する容量結合率を増大させることができる。
【0019】
本発明の実施例の半導体スーパジャンクションパワーデバイスは、順方向遮断状態にある時に、n型ドレイン領域20に高電圧が印加され、スーパジャンクションMOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25とp型ボディ領域22とによって形成されたpn接合ダイオードが順方向にバイアスされ、スーパジャンクションMOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25は正電荷が充填され、これによりスーパジャンクションMOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25の下の電流チャネルの閾値電圧Vht1が低減される。好ましくは、ゲート誘電体層24に位置する開口28はn型フローティングゲート25の下方に位置し、かつn型ドリフト領域21側に近接し、つまり横方向において、開口28はゲート誘電体層24のn型ドリフト領域21により近い領域に位置し、これによりMOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25はより容易に正電荷が充填される。
【0020】
本発明の実施例の半導体スーパジャンクションパワーデバイスは順方向遮断状態及び順方向オン状態にある時に、ドレイン‐ソース間電圧Vdsが0Vより大きく、スーパジャンクションMOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25の下の電流チャネルの閾値電圧Vht1がスーパジャンクションMOSFETセル200全体の閾値電圧Vthに与える影響が低く、スーパジャンクションMOSFETセル200は依然として高閾値電圧を有する。本発明の実施例の半導体スーパジャンクションパワーデバイスがオフの時に、ソース‐ドレイン電圧Vsdが0Vより大きい場合、スーパジャンクションMOSFETセル200におけるn型フローティングゲート25の下の電流チャネルの閾値電圧Vht1がスーパジャンクションMOSFETセル200全体の閾値電圧Vthに与える影響が非常に大きく、スーパジャンクションMOSFETセル200に低閾値電圧Vthを有させることで、スーパジャンクションMOSFETセル200の電流チャネルを低ゲート電圧(又は0V電圧)で導通させ、これによりスーパジャンクションMOSFETセル200に流れる逆方向電流を増加させ、半導体スーパジャンクションパワーデバイスに寄生されたボディダイオードに流れる電流を減少させ、半導体スーパジャンクションパワーデバイスの逆回復速度を向上させることができる。
【0021】
本発明の実施例の半導体スーパジャンクションパワーデバイスのスーパジャンクションMOSFETセルアレイにおいて、ゲート誘電体層24における開口28の数を制御することにより、つまりpn接合ダイオードが形成されたスーパジャンクションMOSFETセルの数を制御することにより、半導体スーパジャンクションパワーデバイスの逆回復速度を容易かつ正確に制御することができ、半導体スーパジャンクションパワーデバイスにより広い応用を有させる。同時に、pn接合ダイオードが形成されたスーパジャンクションMOSFETセルの数を調整する場合、ゲート誘電体層24における開口28を形成するための1枚のレチクルを修正すればよく、これにより半導体スーパジャンクションパワーデバイスの製造コストを大幅に低下させることができる。
【0022】
本発明の実施例の半導体スーパジャンクションパワーデバイスのスーパジャンクションMOSFETセルアレイにおいて、少なくとも1つのスーパジャンクションMOSFETセルのゲート26をn型ソース領域23と電気的に接続させることができ、つまり当該部分のゲート26がソース電圧と接続され、これにより半導体スーパジャンクションパワーデバイスのゲート電荷を低減することができる。