IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7173659スイッチングテーブル及びそのバックグラウンドでの継続的最適化によるモジュラマルチレベル直列/並列変換器(MMSPC)の制御
<>
  • 特許-スイッチングテーブル及びそのバックグラウンドでの継続的最適化によるモジュラマルチレベル直列/並列変換器(MMSPC)の制御 図1
  • 特許-スイッチングテーブル及びそのバックグラウンドでの継続的最適化によるモジュラマルチレベル直列/並列変換器(MMSPC)の制御 図2
  • 特許-スイッチングテーブル及びそのバックグラウンドでの継続的最適化によるモジュラマルチレベル直列/並列変換器(MMSPC)の制御 図3
  • 特許-スイッチングテーブル及びそのバックグラウンドでの継続的最適化によるモジュラマルチレベル直列/並列変換器(MMSPC)の制御 図4
  • 特許-スイッチングテーブル及びそのバックグラウンドでの継続的最適化によるモジュラマルチレベル直列/並列変換器(MMSPC)の制御 図5
  • 特許-スイッチングテーブル及びそのバックグラウンドでの継続的最適化によるモジュラマルチレベル直列/並列変換器(MMSPC)の制御 図6
  • 特許-スイッチングテーブル及びそのバックグラウンドでの継続的最適化によるモジュラマルチレベル直列/並列変換器(MMSPC)の制御 図7
  • 特許-スイッチングテーブル及びそのバックグラウンドでの継続的最適化によるモジュラマルチレベル直列/並列変換器(MMSPC)の制御 図8
  • 特許-スイッチングテーブル及びそのバックグラウンドでの継続的最適化によるモジュラマルチレベル直列/並列変換器(MMSPC)の制御 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】スイッチングテーブル及びそのバックグラウンドでの継続的最適化によるモジュラマルチレベル直列/並列変換器(MMSPC)の制御
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20221109BHJP
【FI】
H02M7/49
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021520405
(86)(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2019025146
(87)【国際公開番号】W WO2020078580
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】102018125728.7
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】エードゥアルト シュペヒト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ゲッツ
(72)【発明者】
【氏名】トマス カチェトル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ジーモン
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-019264(JP,A)
【文献】特表2012-525108(JP,A)
【文献】特表2018-521625(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015112512(DE,A1)
【文献】特表2015-518629(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013125(WO,A1)
【文献】特開2007-274796(JP,A)
【文献】特開2014-050197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0044520(US,A1)
【文献】Z. Li, R. Lizana, A. V. Peterchev, S. M. Goetz,“Predictive Control of Modular Multilevel Series/Parallel Converter for Battery Systems”,2017 IEEE Energy Conversion Congress and Exposition,2017年10月,p.5685-p.5691
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレベル変換器のスイッチング状態の制御(300、600)のための方法であって、
前記マルチレベル変換器(200)は、複数のモジュール(100)を有し、
前記複数のモジュールの各モジュールは、第一の側の少なくとも1つの端子及び第二の側の少なくとも1つの端子と、少なくとも2つの制御可能スイッチと、少なくとも1つのエネルギー貯蔵手段とを有し、
前記第一の側の前記少なくとも1つの端子と前記第二の側の前記少なくとも1つの端子との間の第一の接続において、前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵手段は、前記少なくとも2つの制御可能スイッチの第一のものと直列に配置され、及び
前記第一の側の前記少なくとも1つの端子と前記第二の側の前記少なくとも1つの端子との間の第二の接続において、前記少なくとも2つの制御可能スイッチの第二のものは、配置され、
前記制御(300)は、リアルタイム部(320、606)とオフライン部(310、602)とに分けられ、
前記リアルタイム部では、各時間ステップについて、それぞれの電圧レベル(325)は、変調器(322)によってそれぞれの電圧需要(324)に配分され、及び第一のスイッチングテーブル(420)内の全スイッチのそれぞれの全体的スイッチング状態は、スケジューラ(323、410)によって前記それぞれの電圧レベルについて特定され、且つ前記それぞれの全体的スイッチング状態は、全スイッチに制御信号(306、404)として渡され、
前記オフライン部では、第二のスイッチングテーブル(312、313、520)は、最適化手段(311、510)によって継続的に連続して計算され、前記第二のスイッチングテーブルは、費用関数の最小化に従って得られ、
前記費用関数は、前記複数のモジュールの所定のそれぞれのモジュールスイッチング状態から形成される全体的スイッチング状態を少なくとも前記マルチレベル変換器の全てのエネルギー貯蔵手段(109)の均一な放電、及び/又は最小オン状態損失、及び/又は前記エネルギー貯蔵手段内の最小損失、及び/又は最小の全体的損失に関して評価し、
前記マルチレベル変換器の全てのエネルギー貯蔵手段の現在の電荷状態は、前記最適化手段に連続的に提供され、
総費用関数は、前記費用関数と、以下の表:電流リップル、前記マルチレベル変換器の効率、前記マルチレベル変換器の前記エネルギー貯蔵手段の経年劣化、電磁適合性、歪みのない電流/電圧プロファイル、前記それぞれのモジュールのモジュール温度、前記モジュールの温度変化、スイッチングエラー、オン状態損失、フェイルセイフ機能、特にフェイルセイフ機能を最大化するための前記複数のモジュールの特定のモジュールの標的を定めた保存、前記複数のモジュールの個々のモジュールの特定された脆弱性又は異なる限度の補償、前記マルチレベル変換器によって駆動される電気機械の回転速度、出力周波数、電源供給システム周波数、相電流からの少なくとも1つの状態変数による少なくとも1つの制約(301、302、303、801、802、803)とから形成され、
前記費用関数又は前記それぞれの少なくとも1つの制約に影響を与え、且つそれに固有のそれぞれの時間枠内でのみ変化する前記それぞれの状態変数について、前記総費用関数における関連する項は、前記それぞれの時間枠が経過した後にのみ新たに計算される、方法。
【請求項2】
前記リアルタイム部において、前記第一のスイッチングテーブル内の全スイッチの前記それぞれの全体的状態は、特定され、及び前記オフライン部において、前記第二のスイッチングテーブルは、最適化手段によって継続的に連続して計算され、前記第一及び第二のスイッチングテーブルは、ある時点で相互に異なり得、前記計算の完了後、前記計算された第二のスイッチングテーブルは、前記第一のスイッチングテーブルに置き換わり、且つそれ以降、前記第一のスイッチングテーブルとして使用され、及び前記最適化手段は、新しい第二のスイッチングテーブルの前記計算を開始する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
全ての可能なモジュールスイッチング状態の総計から、前記所定のモジュールスイッチング状態は、基本的スイッチング状態からの前記複数のモジュールの全モジュールの並列相互接続から得ることができるモジュールスイッチング状態から形成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のモジュールの幾つかのモジュール(211、212、213、214、215、216、221、222、223、224、225、226、231、232、233、234、235、236)は、直列に接続されて、AC電圧のそれぞれの位相を形成する少なくとも1つの位相部(210、220、230)を形成する、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第一のスイッチングテーブル(323)は、所定の期間後、前記新たに計算された第二のスイッチングテーブル(312、313)によって置き換えられる、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マルチレベル変換器の複数の代替的な全体的スイッチング状態が存在する場合、前記スケジューラ(323)は、所定のルールに従って選択を行う、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記リアルタイム部(320)において、機械調整装置(321)は、前記変調器(322)の上流に連続して配置され、且つ前記マルチレベル変換器に接続された電気機械(202)の実際の及び所望の相電流間の差に従って前記変調器(322)に事前定義を適用する、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記変調器(322)は、以下のリスト:PWM生成、シグマ-デルタ変調、最近接レベル変調、パルス密度変調、スペクトル調整に従って少なくとも1つのスイッチング変調を実行する、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
マルチレベル変換器の全体的スイッチング状態の制御(300、600)のためのシステムであって、
前記マルチレベル変換器は、複数のモジュール(100)を有し、各モジュールは、第一の側の少なくとも1つの端子及び第二の側の少なくとも1つの端子と、少なくとも2つの制御可能スイッチと、少なくとも1つのエネルギー貯蔵手段とを有し、
前記第一の側の前記少なくとも1つの端子と前記第二の側の前記少なくとも1つの端子との間の第一の接続において、前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵手段は、前記少なくとも2つの制御可能スイッチの第一のものと直列に配置され、及び
前記第一の側の前記少なくとも1つの端子と前記第二の側の前記少なくとも1つの端子との間の第二の接続において、前記少なくとも2つの制御可能スイッチの第二のものは、配置され、
前記制御は、リアルタイムモジュール(320、606)とオフライン部(310、602)とに分けられ、
前記リアルタイムモジュールは、少なくとも1つの変調器(322)とスケジューラ(323、410)とを有し、
前記変調器は、各時間ステップについて、それぞれの電圧レベル(325)をそれぞれの電圧需要に配分するように構成され、及び
前記スケジューラは、前記それぞれの電圧レベルについて第一のスイッチングテーブル(420)内の全スイッチのそれぞれの全体的スイッチング状態を特定し、且つ前記それぞれの全体的スイッチング状態を制御信号として全スイッチのコントローラに渡すように設計され、
前記オフラインモジュールは、最適化手段(311、510)を有し、前記最適化手段は、費用関数を最小化することにより、第二のスイッチングテーブル(312、313、520)を継続的に連続して計算するように設計され、
前記費用関数は、前記複数のモジュールの所定のそれぞれのモジュールスイッチング状態から形成される全体的スイッチング状態を前記マルチレベル変換器の全てのエネルギー貯蔵手段(109)の均一な放電、及び/又は最小オン状態損失、及び/又は前記エネルギー貯蔵手段内の最小損失、及び/又は最小の全体的損失に関して評価し、
前記マルチレベル変換器の全てのエネルギー貯蔵手段の現在の電荷状態は、前記最適化手段に連続的に提供され、
全体的システムの少なくとも1つの状態変数に割り当てられる少なくとも1つのセンサ(614)をさらに有し、
前記全体的システムは、前記マルチレベル変換器と、前記マルチレベル変換器の全スイッチの前記コントローラと、前記マルチレベル変換器の出力電圧をタップオフする電子消費装置とを含み、
前記費用関数のための制約(301、302、303、801、802、803)は、前記少なくとも1つのセンサによって提供される少なくとも1つの測定変数により、前記少なくとも1つの状態変数によって形成され、及び
総費用関数は、前記制約と共に前記費用関数から得られ、前記少なくとも1つの状態変数は、以下の表:電流リップル、前記マルチレベル変換器の効率、前記マルチレベル変換器の前記エネルギー貯蔵手段の経年劣化、電磁適合性、歪みのない電流/電圧プロファイル、前記それぞれのモジュールのモジュール温度、スイッチングエラー、オン状態損失、フェイルセイフ機能、特にフェイルセイフ機能を最大化するための前記複数のモジュールの特定のモジュールの標的を定めた保存、前記複数のモジュールの個々のモジュールの特定された脆弱性又は異なる限度の補償、前記マルチレベル変換器によって駆動される電気機械の回転速度、出力周波数、電源供給システム周波数、相電流から得られ、
前記費用関数又は前記それぞれの少なくとも1つの制約に影響を与え、且つそれに固有のそれぞれの時間枠内でのみ変化する前記それぞれの状態変数について、前記総費用関数における関連する項は、前記それぞれの時間枠が経過した後にのみ新たに計算される、システム。
【請求項10】
前記リアルタイムモジュールにおいて、前記変調器は、前記第一のスイッチングテーブル内の全スイッチの前記それぞれの全体的状態を特定するように構成され、及び前記オフラインモジュールにおいて、前記最適化手段は、前記第二のスイッチングテーブルを継続的に連続して計算するように構成され、前記第一及び第二のスイッチングテーブルは、ある時点で相互に異なり得、前記計算の完了後、前記計算された第二のスイッチングテーブルは、前記第一のスイッチングテーブルに置き換わり、且つそれ以降、前記第一のスイッチングテーブルとして使用され、及び前記最適化手段は、新しい第二のスイッチングテーブルの前記計算を開始する、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
全ての可能なモジュールスイッチング状態の総計から、前記所定のモジュールスイッチング状態は、基本的スイッチング状態からの前記複数のモジュールの全モジュールの並列相互接続から得ることができるモジュールスイッチング状態から形成される、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記リアルタイムモジュールは、前記マルチレベル変換器に接続された電気機械(202)の実際の及び所望の相電流間の差(305)に従って前記変調器に事前定義を適用するように設計された機械調整装置(321)をさらに有する、請求項9~11の何れか一項に記載のシステム。
【請求項13】
請求項9~12の何れか一項に記載のシステムを含み、且つ請求項1~の何れか一項に記載の方法を実行するように構成されるモジュラマルチレベル変換器(200)であって、それぞれのモジュール(100)は、8つのスイッチ(101、102、103、104、105、106、107、108)を有し、4つのハーフブリッジは、前記8つのスイッチからそれぞれ配置され、それぞれのモジュールにおいて、前記第一の2つのハーフブリッジは、前記第一の側の前記少なくとも2つの端子(111、112)に並列に相互接続され、前記第二の2つのハーフブリッジは、前記第二の側の前記少なくとも2つの端子(113、114)に並列に相互接続され、及び前記それぞれのモジュールの前記第一の側及び前記第二の側のそれぞれのハーフブリッジのそれぞれのローサイドスイッチ及びハイサイドスイッチ間に電気接続がある、モジュラマルチレベル変換器(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチレベル変換器、特にモジュラマルチレベル変換器の全体的スイッチング状態、すなわち全スイッチのスイッチング状態の制御のための方法に関する。さらに、このスイッチング制御を実装するためのシステムが特許請求される。
【背景技術】
【0002】
少ない数の電源スイッチを有する従来のパワーエレクトロニクスシステムにおいて、DC電圧から所定の周波数のAC電圧を得るために、入力及び出力電圧が通常2~3という少ないレベル間で切り替えられて、平均して所望の変数が得られる。それに対して、現代的なマルチレベル変換器は、複数の電子スイッチを介して相互に接続される、例えばコンデンサ又はエネルギーセル等のエネルギー貯蔵手段のダイナミック可変構成によってAC電圧を生成するスキームに従って動作する。この場合、従来のパワーエレクトロニクスシステムよりかなり多くの電子スイッチ、例えば電力半導体スイッチが使用され、それにより、マルチレベル変換器の実現可能な全体的スイッチング状態及びそれに関連する出力電圧のごく細かい段階又はレベルでの多様性を形成することが可能となる。同時に、異なる全体的スイッチング状態で同じ電圧レベルを実現するための高い自由度が存在し、マルチレベル変換器のコントローラは、常に全スイッチに固有の状態を割り当てなければならない。
【0003】
原理的には、例えば本出願人名義の独国特許出願公開第10 2015 112 512 A1号明細書の文献において示されているように、個々のモジュールに基づくマルチレベル変換器のそれぞれの設計を規定することが可能である。個々のモジュールで構成されるスイッチング素子の回路配置に応じて、同様に構成されるエネルギー貯蔵手段の相互接続に関係する全てのスイッチング状態を、追加的に接続される構造的に同じ個々のモジュールに関係なく実現できる。
【0004】
この意味での中央のマルチレベル変換器は、S.M.Goetz、A.V.Peterchev及びT.WeyhによってIEEE Transactions on Power Electronics,vol.30,no.1,pp.203-215,Jan.2015の“Modular Multi-level Converter With Series and Parallel Module Connectivity:Topology and Control”並びに米国特許第9,502,960 B2号明細書及び独国特許出願第公開10 2016 112 250 A1号明細書の文献で説明されているモジュラマルチレベル変換器MMSPCである。この変換器は、例えば、R.Marquardtによって独国特許出願公開第101 03 0301 A1号明細書において説明されており、本発明が同様に適用可能な従来のモジュラマルチレベル変換器とは、追加的に並列状態が存在する点で異なり、それにより、MMSPCは、位相部において、モジュール統合エネルギー値を像部のほとんどいかなる所望の電気的直列-並列回路構成でも生成し、ダイナミックに変更できる。さらに、バイパスと呼ばれるバイパス状態も、通常、あるモジュールのエネルギー貯蔵手段をバイパスするために利用可能である。一般に、モジュラマルチレベル変換器において、モジュールスイッチング状態、すなわち個々のモジュールのスイッチのスイッチング状態は、以下の各項目で個別に説明できる:並列、直列、バイパス、スイッチオフ。1つの応用は、モジュラ多相マルチレベル変換器によって代表され、これは、各々の場合に複数のモジュールが位相部に配置され、従ってそれぞれの位相部が多相AC電圧のそれぞれの位相を提供する。
【0005】
モジュラマルチレベル変換器の制御における基本的な問題は、高い自由度、すなわち当初同じ電圧を形成する異なるスイッチング又はモジュール状態の多様性である。モジュール状態の総計は、マルチレベル変換器の出力レベルを決める。マルチレベル変換器の動作では、スケジューラと呼ばれるスイッチング制御の制御ユニットが常に全モジュールの状態を規定し、積極的に制御しなければならない。このような状態特定及び全モジュールの全スイッチへの割当は、1kHz~1MHzのクロック周波数で行われ、これは、毎秒1000~100万回に対応する。
【0006】
先行技術では、所望の電圧を生成するためにそれぞれのモジュール状態を選択するための様々な方法が開示されている。これらの方法の1つには、いわゆるルックアップテーブル、すなわちスイッチングテーブルの使用が含まれ、ここでは、切り替えられるモジュール状態が規定されており、それによって計算の複雑さの軽減及び実装の容易さという利点が得られる。この点において、例えば、国際公開第2015/193439 A1号パンフレットの文献は、その制御にスイッチングテーブルの利用を含むことができる多相電力変換器を記載している。このような方法の不利な点は、スイッチングテーブルが提供する最適な相互接続が、あったとしても特定の時点に限られることである。それぞれのモジュールにおける個々のエネルギーセル又は貯蔵手段の放電が異なるため、マルチレベル変換器の出力におけるそれぞれの所望の電圧レベルのための常に新しい最適なスイッチング状態が生じ、スイッチングテーブルが形成されて保存されると、それに従って割り当てられる全体的なスイッチング状態は、動作持続時間が長くなるにつれて、最適な全体的スイッチング状態から一層離れる。
【0007】
マルチレベル変換器の全てのエネルギー貯蔵手段の現在の状態及び/又は例えばエネルギー貯蔵手段の均等な負荷等、他の可能な制約に従って数学的最適化を特定するオンライン最適化方法がここで有利であろう。純粋な数学的最適化のために、原則として、全ての可能なスイッチング状態、例えば1つのモジュールにつき少なくとも5つのスイッチング状態のある10のMMSPC様モジュールの場合、全体で510及び従ってほぼ10、すなわち1つの時間ステップにつき1,000万であり得るスイッチング状態を計算し、相互に対して重み付けしなければならない。従って、この点に関する最善の解を求めるために、将来の特定の数の時間ステップを計算しなければならない。M個の時間ステップの場合、(510通りの選択肢がある。すでにほぼ1021通りの選択肢のある2つの時間ステップの計算のみで高性能コンピュータの限界(毎秒1015回演算)をはるかに超える。従って、これまでの既存の方法において、このような膨大な計算の複雑さに対処できるものはなかった。それに対して、ヒューリスティック方式では、実際に、複雑さに応じて解にオンラインで到達し得るが、これらは、常に最適な全体的スイッチング状態からの特定の乖離もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の背景に鑑み、本発明の目的は、オンラインで、すなわちマルチレベル変換器の動作中にリアルタイムで、それぞれ電圧需要について、所定の制約に応じてマルチレベル変換器のそれぞれの最適な全体的スイッチング状態を計算し、それをマルチレベル変換器のコントローラに提供する、マルチレベル変換器の全スイッチのスイッチング状態の制御のための方法を提供することである。さらに、この方法を実行するように構成された対応するシステムを提供することも意図される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を実現するために、マルチレベル変換器の全体的スイッチング状態の制御のための方法であって、マルチレベル変換器は、少なくとも1つのモジュールを有し、少なくとも1つのモジュールは、第一の側の少なくとも1つの端子及び第二の側の少なくとも1つの端子と、少なくとも2つの制御可能スイッチと、少なくとも1つのエネルギー貯蔵手段とを有する、方法が提供される。1つの実施形態において、第一の側の少なくとも1つの端子と第二の側の少なくとも1つの端子との間の第一の接続において、少なくとも1つのエネルギー貯蔵手段は、少なくとも2つの制御可能スイッチの第一のものと直列に配置され、及び第一の側の少なくとも1つの端子と第二の側の少なくとも1つの端子との間の第二の接続において、少なくとも2つの制御可能スイッチの第二のものが配置される。この実施形態により、少なくとも1つのモジュールの第一及び第二の端子間において、エネルギー貯蔵手段を直列に接続できるか、又はそれを迂回できるか、又は電線を完全に中断できる。別の実施形態において、少なくとも1つのモジュールは、第一の側の少なくとも2つの端子と、第二の側の少なくとも2つの端子とを有する。少なくとも1つのエネルギー貯蔵手段は、第一の側又は第二の側の少なくとも2つの端子間に直接配置され、少なくとも2つの制御可能スイッチの第一のものは、第一の側の第一の端子と第二の側の第一の端子との間に配置され、少なくとも2つの制御可能スイッチの第二のものは、第一の側の第二の端子と第二の側の第二の端子との間に配置される。この実施形態により、少なくとも2つのスイッチの閉状態で、少なくとも1つのモジュールのエネルギー貯蔵手段は、別のモジュールと並列に接続でき、エネルギー貯蔵手段の直列接続又はバイパスは、他のスイッチング状態によってさらに可能となる。本発明による方法の場合、マルチレベル変換器の制御は、リアルタイム部とオフライン部とに分けられる。リアルタイムは、以下では、特に対応する制御部が、制御に必要な全体的スイッチング状態を生成するための制御ループの一部として必ず必要であり、従って最大処理時間を一切超えずに全体的スイッチング状態の生成を遅らせないようにしなければならないものと解釈される。それに対して、オフラインは、特に一定に確定された既知の最大処理持続時間を有していなくてもよく、且つ/又はリアルタイム部より大幅に低速、例えば少なくとも10倍低速、好ましくは少なくとも100倍低速で処理し、従って例えばリアルタイム部の処理に関して同時及び/又は非同期的に処理する制御部を指す。各時間ステップ中、リアルタイム部では、それぞれの電圧レベルは、変調器によってそれぞれの電圧需要に配分され、及び第一のスイッチングテーブル内において、マルチレベル変換器の全スイッチのそれぞれの全体的スイッチング状態は、スケジューラによってそれぞれの電圧レベルについて特定され、且つそれぞれの全体的スイッチング状態は、全スイッチに制御信号として渡される。オフライン部では、第二のスイッチングテーブルは、最適化手段によって継続的に連続して計算され、前記第二のスイッチングテーブルは、それぞれの全体的スイッチング状態をそれぞれの電圧レベルに割り当てる。第二のスイッチングテーブルは、費用関数の最小化に従って得られ、費用関数は、複数のモジュールの所定のそれぞれのモジュールのスイッチング状態から形成される全体的スイッチング状態を少なくともマルチレベル変換器の全てのエネルギー貯蔵手段の均一な放電に関して、且つ/又は最小スイッチング損失、及び/若しくは最小オン状態損失、及び/若しくはエネルギー貯蔵手段内の最小損失、及び/若しくは最小の全体的損失に関して評価する。最後に、マルチレベル変換器の全てのエネルギー貯蔵手段の現在の電荷状態は、最適化手段に連続的に提供される。第一及び第二のスイッチングテーブルは、ある時点において相互に異なるか又は同じであり得る。
【0010】
本発明による方法の1つの実施形態において、リアルタイム部において、第一のスイッチングテーブルの全スイッチのそれぞれの全体的状態は、特定され、及びオフライン部において、第二のスイッチングテーブルは、最適化手段によって継続的に連続して計算され、第一及び第二のスイッチングテーブルは、ある時点で相互に異なり得る。計算の完了後、計算された第二のスイッチングテーブルは、第一のスイッチングテーブルに置き代わり、且つそれ以降、第一のスイッチングテーブルとして使用され、そこから、最適化手段は、新しい第二のスイッチングテーブルの計算を開始する。
【0011】
本発明による方法は、いわゆるシャドウメモリ方式と同様に、複数のスイッチングテーブルを使用でき、リアルタイム部は、1つ又は複数のテーブルで動作するが、オフライン、すなわち非同期部は、他のテーブルで動作し、テーブルは、特定の時点において、例えば単純に本発明による方法を実行するシステムの計算ユニット中のメモリアドレスを切り替えることによって取り換えられる。
【0012】
しかしながら、代替的に、他の実施形態では、原理的に、オフライン部は、リアルタイム部のスイッチングテーブルに直接作用することもできるが、できる限り一貫性を保持するために常に少なくとも1つの全体的状態のエントリを取り換えるべきである。リアルタイム部は、この少なくとも1つの第一のスイッチングテーブルに読取りとしてのみアクセスする。
【0013】
本発明による方法は、最適化の問題の場所を、先行技術によりこれまでスイッチングの技術的方法が行われていた制御のリアルタイム部の変調器から、最適化手段が費用関数に基づいて最善の第二のスイッチングテーブルを求めるオフライン部に変えることにより、前述の目的を実現する。変調器は、従って、その必然的に速い速度を保持することにより、スケジューラと共に、利用可能とされた第一のスイッチングテーブルに従い、マルチレベル変調器において、それぞれの電圧需要に対応するマルチレベル変換器の出力電圧が得られるような全体的スイッチング状態をもたらすことができる。その間、それと並行して最適化が行われ、これに必要な計算がそれぞれ終了した後、新しい第一のスイッチングテーブル、すなわちマルチレベル変換器により表されることになるそれぞれの電圧レベルについてのそれぞれの全体的スイッチング状態における相互接続の新たなパラメータ化がスケジューラにとって利用可能となる。この第一のスイッチングテーブルに基づいて、イベントのその後の工程中、スケジューラは、従って、マルチレベル変換器のための全体的スイッチング状態の選択を行う。
【0014】
パラメータ化又は第一のスイッチングテーブル若しくは第二のスイッチングテーブルは、それぞれルックアップテーブルとも呼ばれ、それぞれのモジュールにおけるスイッチ位置の組合せを、マルチレベル変換器の出力において表されることになる所与のN個のモジュールの通常(2N+1)の電圧レベルの各々に割り当て、それぞれのモジュール内で組み合わされるそれぞれのスイッチ位置は、それぞれのモジュールスイッチング状態と呼ばれる。それぞれのモジュールのそれぞれのモジュールスイッチング状態は、実質的に常に、それぞれのモジュールに含まれるエネルギー貯蔵手段がマルチレベル変換器の別のエネルギー貯蔵手段とどのように相互接続されるかを含む。第一のスイッチングテーブルから、スケジューラは、変調器によって数値化され、それに送信された電圧レベルについて、それぞれのモジュールスイッチング状態により規定されるか又は規定され得る全体的スイッチング状態を求める。これに関して、8個のスイッチを有する例示的なモジュールの場合(図1及びそれに関連する説明を参照されたい)、5つのモジュールスイッチング状態の合計が規定され、そのため、8個のスイッチは、表1に示されるスイッチ位置をとる。モジュールスイッチング状態は、以下の通りである:正の極性の直列相互接続の「s+」、負の極性の直列相互接続の「s-」、並列相互接続の「p」、正の極性のバイパスの「b+」、負の極性のバイパスの「b-」。この場合、正又は負の極性とは、モジュールの第一の側の2つの端子の何れの極性がモジュールの第二の側の2つの端子に切り替わるかを指す。バイパス又はモジュールバイパスの場合、これは、モジュールのハーフブリッジに配置された、エネルギー貯蔵手段の負の端子に電気的に接続される、より低いモジュールバスバーとして認識可能なハイサイド接続を通したスイッチング又はエネルギー貯蔵手段の正の端子に電気的に接続された上側モジュールバスバーとしても認識可能なローサイド接続を通したスイッチングと等しい。これに関するさらに詳細な説明は、図1に関する図の説明に示される。
【0015】
【表1】
【0016】
スケジューラとは別に且つスケジューラと同時に又はそれと並列に、最適化手段は、新しい第二のスイッチングテーブルを計算し、それを行うなかで、費用関数を最小化することによって少なくとも1つの数学的に説明される目標を実現するために、システムの現在の状態を考慮に入れる。例えば、モジュール間の電荷のバランスを取る、すなわち長い動作持続時間にわたり、全モジュール又はそれぞれのモジュールに含まれる全てのエネルギー貯蔵手段ができるだけ同じ電荷を送達するか又は得る目標のために、それぞれのモジュールの又はそれに含まれるそれぞれのエネルギー貯蔵手段の電荷の現在の状態は、最適化手段が、何れのモジュールが電力を特に高い程度まで送達するか又は得ることが意図されるかを決定できるようにするために重要であり、このモジュールは、動作中、例えば好ましくは直列接続「s+」又は「s-」となることが意図される。
【0017】
最適化手段は、好ましくは、新しい第二のスイッチングテーブルを特定するために数値的最適化を用いる。この目的のために、最適化の問題は、有利には、最小化される費用関数が、少なくとも1つの目標が距離及び/又は加算変数として数学的に公式化される少なくとも1つの項を有する数学的問題として公式化され、目標は、正確に距離及び/又は加算変数が最適になったときに近付けられるか又は達成される。最適とは、通常、最小と理解される。加算変数の最大化が可能である場合、この数学的最大化は、-1を乗じることによる最小化に変えることができる。特定の境界条件もこれに加えることができる。さらに、任意選択により、それぞれの計数逓倍率が設けられる追加の目標に対応する追加の項も少なくとも1つの項に数学的に関連付けることができる。例えば、それぞれマルチレベル変換器により生成可能な電圧レベルについて、最適化手段は、従って、費用関数のそれぞれの最小値に対応する全体的スイッチング状態を計算し、この全体的スイッチング状態を第二のスイッチングテーブルに保存する。特定の状況では、複数の全体的スイッチング状態が費用関数の同じ最小値をもたらし、同様に第二のスイッチングテーブル内に保存されることも可能である。この場合、全体的スイッチング状態は、マルチレベル変換器の全スイッチのスイッチ位置又は所望若しくは所定の電圧レベルを提供するために設定されることになるか若しくは設定される全てのモジュールスイッチング状態の総計に対応する。それぞれのスイッチングテーブル、すなわち第一のスイッチングテーブル又は第二のスイッチングテーブルは、従って、少なくとも1つの全体的スイッチング状態を各電圧レベルに又は少なくとも1つのモジュールスイッチング状態を各モジュールに割り当てる。第一のスイッチングテーブルは、スケジューラによって読取りとしてのみアクセスされるが、有利には、最適化手段によっては、書込みとしてのみアクセスされるため、特に現在特定された第二のスイッチングテーブルを第一のスイッチングテーブルに移行するなかで、スケジューラ及び最適化手段の両方は、比較的大きい同期費用を生じさせることなく、並列して非同期的に処理することができる。
【0018】
本発明による方法の1つの実施形態において、第一のスイッチングテーブルは、所定の時間後、新たに計算された第二のスイッチングテーブルによって置き換えられる。これは、第一のスイッチングテーブルが、最適化手段が新しい第二のスイッチングテーブルの計算を終えた途端ではなく、所定の時間が経過した後にのみ上書きされることを意味する。この所定の時間は、例えば、一定の間隔によって形成できるが、乱数発生器によってランダムにも形成できる。さらに、限定されている可能性のあるコンピューティングリソースによって特定でき、且つ/又は改善された第一のスイッチングテーブルをスケジューラが利用できるようにする必要性によって形成できる。
【0019】
マルチレベル変換器の全てのエネルギー貯蔵手段の電荷の現在の状態の評価は、費用関数に影響を与える可能性があり、その主要なタスクは、それぞれのエネルギー貯蔵手段の放電をできるだけ均一にすることである。これにより、有利には、全体的な放電能力が最大化され、またそれぞれのエネルギー貯蔵部の寿命全体も長くなる。その代わりに又はそれと共に、費用関数への寄与は、例えば、半導体のスイッチング損失及び/若しくは個々のモジュールの隣接モジュールとの並列相互接続の場合の抵抗損失の結果として、且つ/又はエネルギー貯蔵手段及び/若しくは半導体の抵抗損失(オン状態損失)の結果として生じるような損失の評価により形成できる。第二のスイッチングテーブルのこの点についての最適化及びその後の第一のスイッチングテーブルの最適化に関する説明は、後述する。
【0020】
本発明による方法の別の実施形態において、複数のモジュールは、直列に接続されて、AC電圧のそれぞれの位相を形成する少なくとも1つの位相部を形成する。それぞれの位相部は、2つの中性点を介してそれぞれの位相部の始点で接続できる。それらのそれぞれの位相部終点において、それぞれの位相部に終端を置くそれぞれのモジュールは、それらのそれぞれの第二の側でのそれらの端子において短絡でき、まさにその位置において、多相電気機械又はAC電圧電源供給システム装置の動作のためのそれぞれの位相を形成できる。多相電気機械は、例えば、電気自動車を駆動できる。
【0021】
前述のように、8個のスイッチを有する例示的モジュールは、5通りのモジュールスイッチング状態を有する。複数のこのような例示的モジュールが連結されて位相部を形成する場合、例えばそれぞれ6個の例示的モジュールが合計3個の位相部を形成する場合、それぞれの位相部内のそれぞれの最後の例示的モジュールは、4つのモジュールスイッチング状態のみを有し、これは、その場合、モジュールスイッチング状態「s-」及び「b-」が同じスイッチングセットを生成するからである。従って、各位相部又は各位相部につき6つのモジュールの例の各位相について、55*4=12500通りのスイッチング状態が得られる。それぞれの位相部がそれらのそれぞれの位相部の始点で接続されて2つの中性点を形成すると、3つの位相は、もはや相互に独立しなくなり、合計12500の可能なモジュールスイッチング状態が、例示的モジュールにより構成されるマルチレベル変換器について得られる。しかしながら、例示的モジュール間の相互接続の全ての組合せが好都合であるわけではない。この点に関して、例えば、同時にモジュールスイッチング状態「s+」又は「s-」を有する隣接する例示的モジュールを相互に接続することは、合理的ではない。従って、全ての可能なモジュールスイッチング状態の総計を、それぞれの位相部内で相互に接続されるモジュールの実装可能なモジュールスイッチング状態のより小さい群に減らす方法を以下に説明する。
【0022】
損失を縮小するために、それぞれの位相部を、相互に並列に接続された大きい群のモジュールに分け、バイパスを避けることが有利である。従って、本発明による方法のまた別の実施形態では、全ての可能なモジュールスイッチング状態の総計から、割り当てられた又は割当可能なモジュールスイッチング状態は、基本的なスイッチング状態の全モジュールの並列相互接続によって得ることができるモジュールスイッチング状態から形成される。しかしながら、これは、原則的に、最適化のためのモジュールスイッチング状態の組合せのためのあらゆる可能性を使用する可能性を制限しない。しかしながら、並列相互接続によって得られるモジュールスイッチング状態のみが使用される場合、隣接モジュールに関する基本的スイッチング状態は、従って、並列モジュールスイッチング状態「p」である。図2に関する説明から明らかであるように、N-1個の負の及びN個の正の電圧レベルlがあり、l∈(-N+1,...,N)である。所望の電圧レベルlを得るために、l個のモジュールを直列接続しなければならない。この場合、正の電圧レベルの場合の全ての可能なモジュールスイッチング状態の数nl≧0は、
【数1】
により与えられ、負の電圧レベルの場合の全ての可能なモジュールスイッチング状態の数nl<0は、
【数2】
である。
【0023】
実装可能な電圧レベルに関する全ての可能なモジュールスイッチング状態の総数ntotは、
【数3】
により与えられる。
【0024】
モジュールに欠陥が生じると、並列モジュールスイッチング状態は、このモジュールについて不可能となり、バイパス「b+」又は「b-」に置き換えられる。しかしながら、これにより、位相部内の可能なモジュールスイッチング状態の総数ntotが減ることはない。
【0025】
位相部内のN=6個のモジュールの配置の場合、例えば図2の3相マルチレベル変換器の場合、実装可能なモジュールスイッチング状態の総数は、ntot=95である。これらのモジュールスイッチング状態は、全て(ntot×N)マトリクスAに保存される。
A=(amj)、ただし、amj∈{s+,s-,p,b+,b-} (4)
【0026】
マトリクスAは、それぞれのライン又は行mが、位相部の全てのj∈{1,...,N}個のモジュールに関するモジュールスイッチング状態のそれぞれのセットを示すように確立される。従って、それぞれの列jは、位相部のj番目のモジュールに関するモジュールスイッチング状態を含む。マトリクスAに記憶されるモジュールスイッチング状態のみが、第二のスイッチングテーブルをさらに最適化するために、すなわち費用関数を最小化するために利用可能である。
【0027】
本発明による方法の別の実施形態において、総費用関数は、費用関数と、以下の表:電流リップル、マルチレベル変換器の効率、それぞれのエネルギー貯蔵手段の経年劣化、電磁適合性、歪みのない電流/電圧プロファイル、それぞれのモジュールのモジュール温度、特にそれぞれのモジュール負荷に関するステートメントとしてのそれぞれのモジュールの温度変化(時間に関するモジュール温度の一次導関数)、スイッチングエラー、オン状態損失、フェイルセイフ機能、特にフェイルセイフ機能を最大化するための特定のモジュールの標的を定めた保存、個々のモジュールの特定された脆弱性又は異なる限度の補償、マルチレベル変換器によって駆動される電気機械の回転速度、出力周波数、電源供給システム周波数、相電流からの少なくとも1つの状態変数による少なくとも1つの制約とから形成される。費用関数のためのまた別の変数も想定可能である。
【0028】
上記のリストからの一部の選択又は組合せは、例えば、第一に全モジュールを同じモジュール温度にすべきであり、第二に電流リップルを最小にすべきであるという制約を表す。それぞれのモジュールの個々のモジュール温度t(単位[K])は、それぞれのモジュールにおけるそれぞれの温度センサにより最適化手段に報告される。全モジュール温度の総計により、K=3位相部、k∈{a,b,c}及びN=6モジュールの3相マルチレベル変換器の例について、(K×N)マトリクスTとしてのk番目の位相部についてj∈{1,...,N}が得られる。
T=(tkj)、ただし、tkj∈[230,340] (5)
【0029】
電流リップルは、それぞれの相電流I(単位[A])に依存し、K=3位相部の例では、結果は、以下の通りとなる。
I=(I)、ただし、I∈[-200,200]及びk∈{a,b,c} (6)
【0030】
これらの2つの制約に加えて、考慮すべき第三の制約は、前述の損失縮小であり、その結果、モジュールスイッチング状態は、式(4)のマトリクスAにより示される。最後に、本発明によれば、費用関数は、マルチレベル変換器の全てのエネルギー貯蔵手段の均一な放電により影響を受け、これは、本明細書においてSOCと呼ぶものとし、これは、「電荷状態」の略語であり(単位はなく、%で示される)、本明細書では、前述の例について、結果は、(K×N)マトリクスとなる。
SOC=(sockj)、ただし、SOCkj∈[0,100] (7)
【0031】
これらの変数の全てが総費用関数G(SOC,T,I,A)により組み合わされる。
【0032】
マルチレベル変換器の全てのNtot=KNのエネルギー貯蔵手段の均一な放電のみに集中する単純なアルゴリズムの例として、それぞれのモジュールiに関するモジュール電流I及びそれぞれのモジュールiに関する電荷状態SOCにより、以下の費用関数が得られる。
【0033】
【数4】
【0034】
式(8)の費用関数の最適化から、有利には、その電荷状態が平均電荷状態SOCmeanより高いモジュールの放電と、その荷電状態がSOCmeanより低いモジュールの充電とを可能にする第二のスイッチングテーブルが導かれる。
【0035】
マルチレベル変換器の効率にのみ集中する単純なアルゴリズムの別の例として、それぞれのモジュールiに関するモジュール電流Iにより、以下の費用関数が得られる。
【0036】
【数5】
【0037】
正確には、図1において説明されるそれぞれのモジュールを有するモジュラマルチレベル変換器の場合、抵抗損失は、有利には、隣接モジュールの並列相互接続の結果として減少する。このモジュールマルチレベル変換器の効率は、従って、それぞれのモジュール電流の二乗
【数6】
の最小化により最大化でき、これは、抵抗損失に直接比例する。
【0038】
本発明による方法のさらに別の実施形態において、それぞれの少なくとも1つの制約に影響を与え、且つそれに固有のそれぞれの時間枠内でのみ変化するそれぞれの状態変数について、総費用関数における関連する項は、それぞれの時間枠が経過した後にのみ新たに計算される。本発明によれば、総費用関数Gの計算では、従って、それぞれの状態変数が、時間がたつと異なる変化を示すという点が考慮される。幾つかの状態変数、例えばモジュール温度又は電荷状態は、最適化手段が新たな第二のスイッチングテーブルを計算するために時間を必要とするよりもゆっくりと変化するため、関連する制約も、再び最適化手段において、それぞれの時間枠が経過した後に変化が生じた場合にのみ新たに評価されなければならない。例えば、マルチレベル変換器のエネルギー貯蔵手段の高い熱容量及び高い電気的キャパシタンスにより、モジュール温度及び電荷状態は、何れもゆっくりとのみ変化し、1秒の時間枠でほとんど大きく変化しない。従って、総費用関数の最適化のために、項は、この点において、この時間枠内で新たに計算しなくてよい。それに対して、それぞれのモジュールを流れる電流は、スイッチング周波数により予め決められる時間枠内で変化し、それぞれの相電流に依存する。従って、有利には、例えば1秒の時間枠内の、前述の例の総費用関数G(SOC,T,I,A)のための最適化手段の本解決策のスペースは、現在の温度Tpres及び現在の電荷状態SOCpresの固定値によって制約される。この時間枠内で最適化手段により実行されることになる最適化、すなわち最小スイッチング損失に関する全ての可能なスイッチング状態から、事前に選択されたモジュールスイッチング状態の変化Aによる総費用関数G(SOCpres,Tpres,I,A)の最小値を求めることは、従って、有利には、相電流Iに限定される。
time frame(I,A)=G(SOCpres,Tpres,I,A) (10)
【0039】
スイッチング損失に関する最適化は、正確には、スイッチングステップにつき最大で1モジュールのみがそのモジュールスイッチング状態を変化させたときに最大となる。相電流の電流方向のみが最適化アルゴリズムに影響を与える場合、最適化アルゴリズムは、1だけ高い電圧レベル又は1だけ低い電圧レベルの何れかが選択されるか否か及び対応する相電流が正であるか又は負であるかを決定しなければならないことに限定できる。これらの状況の全てがまとまり、位相部のモジュールのntotモジュールスイッチング状態の各々について、後続のモジュールスイッチング状態の正確に1つの最適セットがあるという結果が得られ、これは、必要な出力電圧及び相電流の方向に依存する。前述の例について、位相部に配置されたモジュールに沿った相電流の分布は、従って、モジュールスイッチング状態に応じて推定され、総費用関数Gtime frame(I,A)は、式(10)に従って計算される。総費用関数を最適化する最適モジュールスイッチング状態は、その後、次のスイッチングステップとしてそれぞれのモジュールスイッチング状態に割り当てられ、前記モジュールスイッチング状態は、それぞれ電圧レベル及び電流方向に依存する。モジュールスイッチング状態の4つのそれぞれの最適セットは、それらのそれぞれの行番号m∈{1,2,...,ntot}と共に、以下により示される(ntot×2×2)マトリクスB内のマトリクスAに入力される。
B=(shpq)、ただし、Shpq∈{1,2,...,ntot} (11)
【0040】
このマトリクスBの行h∈{1,2,...,ntot}は、それぞれの位相の全モジュールに関する現在のモジュールスイッチング状態又はマトリクスA内のそれらの行位置を表す。指数p=1は、必要な電圧レベルIが現在の電圧レベルより低い場合に選択され、そうでなければp=2が選択される。負の相電流の場合、指数q=1が選択され、そうでなければq=2が選択される。例えば、位相部のそれぞれのモジュールのN=6個のモジュールスイッチング状態を有するマトリクスAの、モジュールスイッチング状態40の現在のセット、すなわち行40を考慮するものとし、電圧需要は、現在の出力電圧より低く、相電流の現在の電流方向は、正とする。その後、入力S40,1,2がマトリクスB内で選択される。この例の3つの位相に関するそれぞれのマトリクスB、B、Bは、マトリクスAと共に、第二のスイッチングテーブルを表すか、又はスケジューラへの移行時に第一のスイッチングテーブルを表し、それに従ってマルチレベル変換器が制御される。
【0041】
最適化問題の公式化されたタスクに応じて、マトリクスB又は3相の場合にはそれぞれのマトリクスB、B、Bの上記の寸法を適用することが可能であり、それにより上の例の場合に(ntot×2×2)マトリクスが得られる。上の例では、電流方向のみ又はそれぞれの相電流の符号のみを考慮すれば十分であるが、より複雑な分割も想定可能である。相電流の例では、従って、その結果として式(11)における指数kにより指定される寸法が延ばされることになる。分割は、例えば、電流振幅に応じて実行できる。従って、例えば-150A未満、-150A~-100A、-100A~-50A、-50A~0A、0A~50A、50A~100A、100A~150A及び150A超の分割を使用することができる。代替的な各範囲への分割も本発明の意味において同様に想定可能である。
【0042】
前述の3相マルチレベル変換器の例に関して、本発明による方法を実行する最適化アルゴリズムは、例えば、Zynq(登録商標)-7000@Xilinx(登録商標)チップ上の3相マルチレベル変換器の制御の一部として実装でき、これは、プログラマブルArtix(登録商標)-7ロジックでのデュアルコアARM(登録商標)Cortex(登録商標)-A9プロセッサを有する。図3でも説明されるように、スケジューラ又はスイッチングコントローラがプログラマブルロジック上で実装される一方、それと並列して最適化アルゴリズムがCortex(登録商標)-A9上で実装される。必要なパラメータ、ここでは温度及び電荷の状態は、AXIフルインタフェースを介してCortex(登録商標)-A9に転送され、それが最も近い接最適モジュールスイッチング状態又はマトリクスA内のその行番号を3つのマトリクスB、B、B(上の例においてそれぞれ各位相a、b及びcにつき1つ)内に保存し、これをマトリクスAと共に新しい第二のスイッチングテーブルとしてプログラマブルロジック上のスケジューラに送信する。従って、その時点でのこの第一のスイッチングテーブルは、その時点でのそれぞれの新たに計算又は最適化された第二のスイッチングテーブルにより、規則的に、ただしスケジューラが動作するものよりはるかに大きいタイムスケールで上書きされる。従って、スケジューラにそれ以上の計算負荷がかからず、それぞれの最も近いモジュールスイッチング状態(shpq)a、(shpq)b、(shpq)cを必要な電圧レベル(l、l、l)及び相電流(I、I、I)に応じて選択するのみでよい。従って、各位相a、b、cについての選択のそれぞれの結果S、S、Sは、マトリスクAのそれぞれの行であり、モジュールスイッチング状態がそれに保存される。従って、スイッチングコントローラ及び最適化アルゴリズムの並列処理により、例えばkHz以上のオーダの高速スイッチング周波数が可能となり、それは、最適スイッチングテーブルの計算が非同期的に行われ、例えばヘルツのオーダのより大きい時間スケールで進む。
【0043】
しかしながら、本発明による方法を実行する最適化アルゴリズム及びスイッチングコントローラを共通のデジタル信号プロセッサ(DSP)上に実装し、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)又はその他等の別のロジックを使用しないことも想定可能である。この場合、スケジューラは、固定された、リアルタイムにイネーブルされるスケジューリング、すなわち保証された最大遅延及び保証された最大デッドラインで信号処理装置上において慣例的な逐次的プロセスとして動作し、それによって例えば電源供給システム調整又は機械調整の所定の最小レート又は反応時間が順守される。電源供給システム又は機械調整及びスケジューラは、例えば、それぞれの中断によって要求できる。それと並行して、最適化は、別のプロセス又はスレッドとして、大幅により長いデッドラインで又は全くデッドラインを設けずにほとんど独立して動作する。第一のスイッチングテーブルは、スケジューラによって読取りのみとしてアクセスされ、最適化アルゴリズムが前記第一のスイッチングテーブルに短時間にわたり書込み又はコピーのためにアクセスすることから、両方のプロセス又はスレッドの、主に原因となる分離を実現できる。任意選択により複数のコアを有する1つの同じプロセッサは、スケジューラの又はリアルタイム部で動作する他のプロセッサ、例えば電源供給システム又は機械調整の休止中に最適化アルゴリズムを実行でき、その際、スケジューラ又は前記他のプロセスは、不利な影響を受けない。スケジューラは、例えば、メモリからの対応する最も近いモジュールスイッチング状態の純粋な入力値依存読取り及びプロセッサのI/Oユニットへの直接転送として表すことができる。
【0044】
本発明による方法の別の実施形態において、第一のスイッチングテーブルの、それぞれの電圧レベルに応じてマルチレベル変換器で各々設定されるモジュールスイッチング状態を有する行は、変調器によって提供されるそれぞれの電圧レベルのマッピングによってアクセスされ、この行は、スイッチングテーブルを含むメモリ内の行の内容を指すアドレスとしても使用できる。マッピングのための別のパラメータは、例えば、電流方向であり得る。スケジューラへの入力変数から第一のスイッチングテーブル内のモジュールスイッチング状態を見つけるためのアドレシング仕様へのこの直接的変換は、任意選択によりプログラム可能であり得る専用のロジックが利用できない場合に有利である。マッピングは、ビット単位のロジック演算、ビット単位の連鎖、和及び/若しくは差並びに/又は2の倍数による乗算及び/若しくは2の倍数による除算によって行われる。このようにして、出力されるべきモジュールスイッチング状態のアドレスの計算は、浮動小数点算術ユニット又は複雑な飛越し命令を必要としない単純な算術演算により表すことができ、これは、本発明による方法により提供されるマッピングの場合、入力変数自体が、有利には、第一のスイッチングテーブル内のアドレス又は行を形成するからである。このようなアドレス形成の一例を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
本発明による方法の別の実施形態において、マルチレベル変換器の複数の代替的な全体的スイッチング状態が存在する場合、スケジューラは、所定のルールに従って選択を行う。スケジューラは、この選択を例えばランダムに又は所定のルールに従って行う。このような所定のルールは、例えば、厳密に過去の使用頻度に応じて選択を行うように規定され得る。
【0047】
本発明による方法のまた別の実施形態において、リアルタイム部において、機械調整装置は、変調器の上流に連続して配置され、且つマルチレベル変換器に接続された電気的機械の実際の及び所望の相電流間の差に従って変調器に事前定義を適用する。リアルタイム部の機械調整装置の正確な配置は、図3から明らかである。代替的に、AC電圧電源供給システム調整のための機器も、マルチレベル変換器がAC電圧電源供給システム機器として動作する場合、ここに含めることができる。しかしながら、電気的機械がマルチレベル変換器によって駆動される場合、トルク又は回転速度要求に関する事前定義が機械調整装置によって行われることが意図される。
【0048】
本発明による方法の別の実施形態において、変調器は、以下のリスト:PWM生成、シグマ-デルタ変調、最近接レベル変調、パルス密度変調、スペクトル調整に従って少なくとも1つのスイッチング変調を実行する。これらは、先行技術から知られるスイッチング変調の方法である。本発明による方法のある実施形態は、このようなスイッチング変調を、最適化アルゴリズムによる障害を受けずに、変調器によってリアルタイム部で実行できるようにする。
【0049】
さらに、マルチレベル変換器の全体的スイッチング状態の制御のためのシステムであって、マルチレベル変換器は、少なくとも1つのモジュールを有する、システムが特許請求される。この少なくとも1つのモジュールは、第一の側の少なくとも1つの端子及び第二の側の少なくとも1つの端子と、少なくとも2つの制御可能スイッチと、少なくとも1つのエネルギー貯蔵手段とを有する。第一の側の少なくとも1つの端子と第二の側の少なくとも1つの端子との間の第一の接続において、少なくとも1つのエネルギー貯蔵手段は、少なくとも2つの制御可能スイッチの第一のものと直列に配置され、及び第一の側の少なくとも1つの端子と第二の側の少なくとも1つの端子との間の第二の接続において、少なくとも2つの制御可能スイッチの第二のものが配置される。この実施形態により、少なくとも1つのモジュールの第一及び第二の端子間において、エネルギー貯蔵部を直列に接続できるか、又はそれを迂回できるか、又は電線を完全に中断できる。第二の構成では、少なくとも1つのモジュールは、第一の側の少なくとも2つの端子と、第二の側の少なくとも2つの端子とを有する。少なくとも1つのエネルギー貯蔵手段は、第一の側又は第二の側の少なくとも2つの端子間に直接配置され、少なくとも2つの制御可能スイッチの第一のものは、第一の側の第一の端子と第二の側の第一の端子との間に配置される。少なくとも2つの制御可能スイッチの第二のものは、第一の側の第二の端子と第二の側の第二の端子との間に配置される。本発明によるシステムにおいて、制御は、リアルタイムモジュールとオフラインモジュールとに分割され、リアルタイムモジュールは、少なくとも1つの変調器とスケジューラとを有する。変調器は、各時間ステップについて、それぞれの電圧レベルを電圧需要に配分する。スケジューラは、それぞれの電圧レベルについて、第一のスイッチングテーブル内の全スイッチのそれぞれの全体的スイッチング状態を特定し、且つそれぞれの全体的スイッチング状態を制御信号として全スイッチに渡す。オフラインモジュールは、最適化手段を含み、最適化手段は、第二のスイッチングテーブルを費用関数に従って継続的に連続して計算する。費用関数は、複数の所定のモジュールスイッチング状態から形成される全体的スイッチング状態をマルチレベル変換器の全てのエネルギー貯蔵手段の均一な放電に関して評価し、マルチレベル変換器の全てのエネルギー貯蔵手段の現在の電荷状態は、最適化手段に連続的に提供される。この目的のために、システムは、リアルタイムモジュール及びオフラインモジュールのためのそれぞれ少なくとも1つのコンピューティングユニットを提供する。
【0050】
本発明によるシステムの別の構成では、リアルタイムモジュールにおいて、変調器は、第一のスイッチングテーブル内の全スイッチのそれぞれの全体的状態を特定するように構成される。オフラインモジュールにおいて、最適化手段は、第二のスイッチングテーブルを継続的に連続して計算するように構成され、第一及び第二のスイッチングテーブルは、相互に異なり得、計算の完了後、計算された第二のスイッチングテーブルは、第一のスイッチングテーブルに置き代わり、且つそれ以降、第一のスイッチングテーブルとして使用され、及び最適化手段は、新しい第二のスイッチングテーブルの計算を開始する。
【0051】
本発明によるシステムのまた別の構成では、全ての可能なモジュールスイッチング状態の総計から、所定のモジュールスイッチング状態は、基本的スイッチング状態からの複数のモジュールの全モジュールの並列相互接続から得ることができるモジュールスイッチング状態から形成される。
【0052】
本発明によるシステムの別の構成では、システムは、全体的システムの少なくとも1つの状態変数に割り当てられる少なくとも1つのセンサをさらに有し、全体的システム全体は、マルチレベル変換器と、マルチレベル変換器の全体的スイッチング状態のコントローラと、マルチレベル変換器の出力電圧をタップオフする電子消費装置とを含み、費用関数のための制約は、少なくとも1つのセンサによって提供される少なくとも1つの測定変数により、少なくとも1つの状態変数によって形成され、及び総費用関数は、前記制約と共に費用関数から得られ、少なくとも1つの状態変数は、以下の表:電流リップル、マルチレベル変換器の効率、それぞれのエネルギー貯蔵手段の経年劣化、電磁適合性、歪みのない電流/電圧プロファイル、それぞれのモジュールのモジュール温度、特にモジュール負荷に関するステートメントとしてのそれぞれのモジュールの温度変化(時間に関するモジュール温度の一次導関数)、スイッチングエラー、オン状態損失、フェイルセイフ機能、特にフェイルセイフ機能を最大化するための特定のモジュールの標的を定めた保存、個々のモジュールの特定された脆弱性又は異なる限度の補償、マルチレベル変換器によって駆動される電気機械の回転速度、出力周波数、電源供給システム周波数、相電流から得られる。
【0053】
本発明によるシステムのまた別の構成では、システムのリアルタイムモジュールは、電気機械の実際の及び所望の相電流間の差に従って変調器に事前定義を適用するように設計された機械調整装置をさらに有する。
【0054】
最後に、本発明によるシステムを備えるモジュラマルチレベル変換器であって、本発明による方法を実行するように設計され、それぞれのモジュールは、少なくとも4つのスイッチ(並列接続を有さないマルチレベル変換の場合に十分である)及び1つの好ましい実施形態では8つのスイッチ(並列接続によるマルチレベル変換器に対応する)を有する、モジュラマルチレベル変換器が特許請求される。少なくとも4つのスイッチを有する本発明によるマルチレベル変換器の場合、少なくとも1つのハーフブリッジがそれぞれの側に配置される。8つのスイッチを有する本発明によるマルチレベル変換器の場合、4つのハーフブリッジが8つのスイッチから配置され、それぞれのモジュールにおいて、第一の2つのハーフブリッジは、第一の側の少なくとも2つの端子に並列に相互接続され、第二の2つのハーフブリッジは、右側の少なくとも2つの端子に並列に相互接続され、及びそれぞれのモジュールの第一の側及び第二の側のそれぞれのハーフブリッジのそれぞれのローサイドスイッチ及びハイサイドスイッチ間に電気接続がある。
【0055】
本発明の他の利点及び構成は、説明文及び添付の図面から明らかである。
【0056】
言うまでもなく、上述の特徴及び今後説明されるそれらは、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれの明示された組合せでだけでなく、他の組合せ又はそれら単独で使用できる。
【0057】
図面は、相関し、網羅的な方法で説明され、同一の構成要素には同じ参符号が付与されている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】先行技術によるモジュラマルチレベル変換器のモジュールの回路を概略的に示す。
図2】先行技術によるモジュラ3相マルチレベル変換器に関する回路を示す。
図3】本発明による方法の1つの実施形態における、マルチレベル変換器の制御のリアルタイム及びオフライン部への本発明による制御部変更に関するブロック図を概略的に示す。
図4】本発明による方法の1つの実施形態におけるスケジューラの入力及び出力に関するブロック図を概略的に示す。
図5】本発明による方法の1つの実施形態における最適化手段に関するブロック図を概略的に示す。
図6】本発明によるシステムの1つの構成におけるハードウェアの物理的セットアップを概略的に示す。
図7】本発明によるシステムの別の構成におけるデジタル信号プロセッサのユニットへの分割を概略的に示す。
図8】本発明による方法の1つの実施形態における、スケジューラへの入力変数の第一のスイッチングテーブルの行へのマッピングによるアドレス形成中のシーケンスを概略的に示す。
図9】本発明による方法の1つの実施形態における、スケジューラへの入力変数の第一のスイッチングテーブルの行へのマッピングによる別のアドレス形成中のシーケンスを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、先行技術による直列/並列相互接続が可能なモジュラマルチレベル変換器のモジュール100の回路を概略的に示す。この配置には、各々が2つのスイッチ、「S1」101及び「S2」102、並びにそれぞれ「S3」103及び「S4」104、並びにそれぞれ「S5」105及び「S6」106、並びにそれぞれ「S7」107及び「S8」108を有する4つのハーフブリッジ、エネルギー貯蔵手段109及びコンデンサ110がある。それぞれのスイッチ101、102、103、104、105、106、107、108は、本来的に存在するボディダイオードを有するMOSFETの回路記号により表される。2つのハーフブリッジ101、102及び105、106並びにそれぞれ103、104及び107、108は、それらのそれぞれの低電圧側スイッチ102及び106並びにそれぞれ104及び108、並びに関連する高電圧側スイッチ101及び105並びにそれぞれ103及び107間に相互に接続される。モジュール100は、2つの第一の、ここでは左側の端子111及び112と、2つの第二の、ここでは右側の端子113及び114とを有する。それぞれのモジュールスイッチング状態に応じて、すなわち同じ時点でのモジュール100のスイッチのスイッチング状態に応じて、モジュール100及びそれぞれ又はエネルギー貯蔵手段109は、構造的に同じ別のモジュールと相互接続して、従ってエネルギー貯蔵手段109の直列相互接続若しくは並列相互接続又はバイパスを実現できる。正の極性の直列相互接続のための「s+」として指定される第一のモジュールスイッチング状態は、スイッチ101及び106並びにまたスイッチ103及び108の直列接続によって形成される。負の極性の直列相互接続のための「s-」として指定される第二のモジュールスイッチング状態は、スイッチ102及び105並びにまたスイッチ104及び107の直列接続によって形成される。並列相互接続のための「p」として指定される第三のモジュールスイッチング状態は、スイッチ101及び105並びにまたスイッチ104及び108の直列接続により形成される。低電圧側のスイッチを通したバイパス又はモジュールバイパスのための「b+」として指定される第四のモジュールスイッチング状態は、スイッチ102及び106並びにまたスイッチ104及び108の直列接続によって形成される。高電圧側のスイッチを通したバイパス又はモジュールバイパスのための「b-」として指定される第五のモジュールスイッチング状態は、スイッチ101及び105並びにまたスイッチ103及び107の直列接続により形成される。モジュール100内のそれぞれのスイッチ位置での全モジュールスイッチング状態は、表1に挙げられている。
【0060】
図2は、先行技術によるモジュラ3相マルチレベル変換器200に関する回路を概略的に示す。3つの位相の各々は、それぞれの場合に6つの図1の設計のモジュール100で形成される。第一の位相は、モジュール211、212、213、214、215、216を有する第一の位相部210によって形成され、第二の位相は、モジュール221、222、223、224、225、226を有する第二の位相部220によって形成され、第三の位相は、モジュール231、232、233、234、235、236を有する第三の位相部230によって形成される。それぞれの位相部始点は、モジュール211、221、231により与えられ、それぞれの位相部の終点はモジュール216、226、236により与えられる。それぞれの位相部210、220、230のそれぞれの位相部終点に形成される3つの位相は、電気的機械202を駆動し、これは、例えば、電気自動車の走行用モータであり得る。それぞれの位相部210、220、230のそれぞれの位相部始点において、モジュール211、221及び231は、2つの中性点201を介して接続される。それぞれの位相部210、220、230の6つ全てのモジュール100が直列に相互接続されている「s+」の場合、それぞれの位相部210、220、230内のそれぞれのエネルギー貯蔵手段109は、直列回路を形成し、6倍のモジュール電圧が得られる。位相ごとのモジュール数をNとすると、従ってモジュール電圧のN倍の位相電圧を得ることができる。各位相の最後のモジュール216、226、236は、それぞれ短絡され、そのため、これらのモジュール216、226、236は、並列モジュールスイッチング状態「p」に切り替えられないようになっており、それによって各モジュール216、226、236のそれぞれのエネルギー貯蔵手段109の短絡が回避される。これらの最後のモジュール216、226、236の基本的状態は、常にモジュールスイッチング状態「b-」により形成され、これは、モジュールスイッチング状態「s-」に対応する。従って、モジュールマルチレベル変換器200によりN-1個の負の電圧ステップのみを形成できる。反対側では、それぞれのモジュール211、221、231のエネルギー貯蔵手段109は、原則として2つの中性点201を介して並列に相互接続される。その結果、位相部210、220、230内の3つの位相は、相互に依存する。全モジュール100のバイパスにより確立されるゼロ値と共に、マルチレベル変換器内にN個のモジュールがあるとすると、代表的な電圧レベルの数Lは、下式の通りとなる。
L=N+(N-1)+1=2N (1)
【0061】
図3は、本発明による方法の1つの実施形態における、マルチレベル変換器の制御のオフライン部310及びリアルタイム部320への本発明による分割に関するブロック図300を概略的に示す。オフライン部310は、最適化手段311を含み、これは、ハードウェア技術の点でARM(登録商標)Cortex(登録商標)-A9プロセッサ上に実装できる。リアルタイム部320は、ハードウェア技術の点でオフライン部310の実装とは別にプログラム可能ロジック上で実装でき、変調器322及びスケジューラ323並びに任意選択により機械調整装置321を含む。最適化手段311は、入力として、それぞれのセンサから、例えばそれぞれのエネルギー貯蔵手段の電荷状態301に関する、又はそれぞれのモジュール温度302に関する、又はスイッチングエラー303に関する測定変数を受け取る。それぞれの電圧レベルのための全ての可能なモジュールスイッチング状態の総計から、最適化手段上で実行される最適化アルゴリズムは、損失を最小化するために、基本的スイッチング状態からの全モジュールの並列相互接続から得ることができるモジュールスイッチング状態を求め、これらを各位相部jについて個別にマトリクスA 313に書き込む。さらに、それぞれのマトリクスA 313のこれらのモジュールスイッチング状態について、費用関数、例えば式(10)により、最適化アルゴリズムが位相部のためのモジュールスイッチング状態のそれぞれの最善の最近接セット(位相部jの各モジュールを含む)を求め、そのマトリクスA 313内の行番号を(ntot×2×2)マトリクスB 312に書き込む。マトリクスA 313内の行番号は、設定電圧及び電流方向に応じて、マトリクスB 312の要素内に保存される。毎回上方若しくは下方への1電圧レベルの変化又は上方若しくは下方への1電流レベルの変化のみが考慮されるため、2×2の寸法が得られる。電流に関する寸法が延長された場合、マトリクスB 312も長くなる。マトリクスA 313及びB 312は、第二のスイッチングテーブルを形成し、これは、リアルタイム部でのプロセスに関して非同期的に、第一のスイッチングテーブルとしてスケジューラ323により利用可能とされる。従って、最適化アルゴリズムは、リアルタイムでイネーブルされなくてよく、これにより有利にはリソースが保護される。リアルタイム部320では、機械調整321を任意選択により配置でき、これは、それぞれのセンサからの入力として、例えば接続された電気機械の回転速度304に関する又は個々の相電流305に関する測定変数を受け取る。マルチレベル変換器がAC電圧電源供給システムデバイスとして使用される場合、回転速度304の代わりに電源供給システムの周波数が関わる。機械調整321は、それぞれの変数の実際の値を設定点値と継続的に比較して、各位相部a、b、cについて別々に、変調器322にそれぞれの差に対応する電圧需要(v 、v 、v )324を適用する。変調器322は、スイッチング変調を実行し、これは、例えば、パルス幅変調PWM、若しくはシグマ-デルタ変調、若しくは最近接レベル変調、若しくはパルス密度変調、若しくはスペクトル調整又は他の何れかの想定可能な変調によって実現でき、そこから得られる数値化された電圧レベル(l、l、l)325を、表されるべき出力電圧としてスケジューラ323に通信する。最後に、それぞれ通信された電圧レベルのための第一のスイッチングテーブル内において、スケジューラは、モジュールスイッチング状態のそれぞれのセット(S、S、S)306を特定し、それを実行のためにマルチレベル変換器に送信する。
【0062】
図4は、本発明による方法の1つの実施形態における、入力変数401、402、403、420及びスケジューラ410の出力変数としてマルチレベル変換器により実行されるべき全体的スイッチング状態404に関するブロック図400を概略的に示す。入力変数401、402、403、420として、スケジューラ410には、例えば、マルチレベル変換器のモジュールによって表されることのできる電圧レベルに数量化された新しい電圧需要401及び/又は電流需要402が提供される。さらに、スイッチングステップで以前に実現された全体的スイッチング状態403が入力される。純粋な読取りプロセス405では、スケジューラは、それぞれ望まれる電圧レベルについて関連するモジュールスイッチング状態がその中に保存されている第一のスイッチングテーブル420を参照する。よりよい最適化の結果又は現在の全体的スイッチング状態への適用のために、例えば異なる電流振幅及び/又は電流方向について最適化された別の寸法を第一のスイッチングテーブル420に追加できる。さらに、ある電圧需要のための最善の最も近い全体的スイッチング状態の選択は、存在する最後の全体的スイッチング状態403にも関係付けることができ、これは、例えば、存在するこの最後の全体的スイッチング状態403から進めて、スイッチング損失を回避し、モジュールスイッチング状態をできるだけ変化させずに新しい全体的スイッチング状態404に到達することが有利であるからである。従って、第一のスイッチングテーブルは、さらなる寸法だけ延長される。これらの寸法の1つは、例えば、特定のモジュールスイッチング状態が切り替えられるそれぞれの電流により、例えば出力状態が「全モジュールスイッチング状態をバイパス」の電流0Aについて、出力状態が「直列接続されるそれぞれの位相部端のモジュールとは別に、全モジュールスイッチング状態をバイパス」の電流0Aについて又は出力状態が「全モジュールスイッチング状態を直列相互接続」の電流500Aについて付与され得る。原理的に、第一のスイッチングテーブルの寸法は、これが利用可能な演算時間及び/又はメモリスペースにより可能である限り、想定可能な全ての制約について延長できる。
【0063】
図5は、本発明による方法の1つの実施形態における、最適化手段510に関するブロック図500を概略的に示す。最適化手段510は、複数の電流ステップについて、モジュールスイッチング状態により生成可能な全ての電圧ステップを計算し、プロセス中の主要な計算負荷を負担する。しかしながら、これは、ハードウェア技術の点で専用コンピューティングユニット上に実装されるため、これは、存在する(第一の)スイッチングテーブルに基づいて、それが最適化手段510から新たに計算されたその(第二の)スイッチングテーブル520を受け取るまで動作するスケジューラの実装に不利な影響を与えない。最適化手段510は、各全体的スイッチング状態の費用関数に従って最適化されるモジュールスイッチング状態を求め、これらを保存プロセス502によって第二のスイッチングテーブル520内に記録する。全体的スイッチング状態は、有利には、利用可能な計算時間及び/又はメモリスペースのみを限界として、できるだけ多くの測定変数により定義できる。測定変数は最適化手段510への入力501を形成し、例えば以下のリストか得られる:電荷状態、エラー状態、モジュール間の物理的違い、変調の程度、位相角cosφ、電気的周波数、リーク電流及び/又は個々のモジュールからの他の電流取出し。
【0064】
図6は、本発明によるシステムの1つの構成における、ハードウェアの物理的セットアップ600を概略的に示し、このセットアップは、物理的に分離された2つの計算ユニットへの分割を例示する。最適化手段を有するオフライン部602は、マイクロコントローラ、若しくはマイクロプロセッサ、若しくはデジタル信号プセッサ(DSP)、若しくはALUベースの計算アーキテクチャ又はその組合せ上に実装される。少なくとも1つの変調器及びスケジューラを有するリアルタイム部606は、任意選択によりプログラム可能であり得る論理回路、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、又はCPLD(コンプレックスプログラマブルロジックデバイス)、又はゲートアレイ又はPLA(プログラマブルロジックアレイ)上に実装される。オフライン部602及びリアルタイム部606の両方は、第一及び第二のスイッチングテーブルを含む共通メモリ604にアクセスし、オフライン部602によるアクセスは、書込みで行われ、リアルタイム部606によるアクセスは、読取りで行われる。第一及び第二のスイッチングテーブルがより大きい寸法を有する場合、ダイナミックメモリをここに含めることができる。その代替案として、特に第一及び第二のスイッチングテーブルがより小さい寸法を有する場合、高速スタティックメモリ、例えばフリップフロップベースのメモリ又はベクトルレジスタを含めることができる。次のスイッチングステップのためのそれぞれのモジュールスイッチング状態のマルチレベル変換器への通信612は、制御バスを介して行われる。少なくとも1つのそれぞれの電流センサ614は、マルチレベル変換器のそれぞれのモジュール608に配置される。任意選択により、例えばそれぞれの温度センサ又はそれぞれのモジュール電圧センサ等のさらに別のセンサをそれぞれのモジュール608に配置することもできる。それぞれのセンサ614は、それらの測定変数610をセンサ信号として(個々の信号として又はバス、例えば制御バスの物理的回帰チャネルを介してまとめて)それぞれオフライン部602及びリアルタイム部606に通信する。
【0065】
図7は、本発明によるシステムの別の構成における、デジタル信号プロセッサ(DSP)700のユニットへの分割を概略的に示す。DSP 700は、少なくとも1つのCPUコア706、RAMメモリ704、フラッシュメモリ708、周辺バスコントローラ710、例えばICのSPI、GPIOマルチプレクサ712、DMAコントローラ714、ハードウェアPIコントローラ716及びスケジューラ718を含む。これらのユニット間の通信は、メモリバス702を介して行われる。本発明による方法を実行する最適化アルゴリズム及びスイッチングコントローラは、共通デジタル信号プロセッサ700上に実装され、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)又はその他を使用しない。この場合、スケジューラは、信号プロセッサ700上で、一定の、リアルタイムでイネーブルされるスケジューリングにより、すなわち保証された最大遅延及び保証された最大デッドラインで慣例的な逐次的プロセスとして動作し、それによって例えば電源供給システム調整又は機械調整の所定の最小レート又は反応時間が順守される。電源供給システム又は機械調整及びスケジューラは、例えば、それぞれの中断によって要求できる。それと並行して、最適化は、かなり長いデッドライン又は全くデッドラインを設けずに、ほとんど独立して別のプロセス又はスレッドとして実行される。第一のスイッチングテーブルは、スケジューラによって読取りでのみアクセスされ、最適化アルゴリズムは、前記第一のスイッチングテーブルに短時間にわたり書込み又はコピーのためにアクセスすることから、プロセス及びスレッドの両方の主に原因となる分離を実現できる。任意選択により複数のコアを有する1つの同じプロセッサは、スケジューラの又はリアルタイム部で動作する他のプロセッサ、例えば電源供給システム又は機械調整の休止中に最適化アルゴリズムを実行でき、その際、スケジューラ又は前記他のプロセスは、不利な影響を受けない。スケジューラは、例えば、メモリからの対応する最も近いモジュールスイッチング状態の純粋な入力値依存読取り及びプロセッサのI/Oユニットへの直接転送として表すことができる。最適化を分離した後に残っているスケジューリング部は、比較的小さく、要求の低いものであることがわかる。メインタスクを構成するのは、変調器が新しい入力変数を提供するたびに、個々のモジュールの、提供される入力変数に関連する又はそれに最も近いモジュールスイッチング状態の値、例えば必要な電圧レベル又は単純化された方法では単に電圧を1段階分増減させ、且つ例えば電流の方向が、第一のスイッチングテーブルを有するメモリ704、708から得られ、I/Oユニットに転送されて、モジュールに対して、それらにそれぞれ割り当てられるモジュールスイッチング状態を直接又は好ましくはバスを介して転送されるようにすることである。簡潔さのために、スケジューラは、プロセッサの専用ハードウェアユニット内に含めることができ、このユニットは、CPUコア706の支援を受けずにスケジューリングタスクを実現する。この目的のために、専用ユニットは、内部プロセッサバス702により、第一のスイッチングテーブルを有するメモリ704、708及びI/Oユニット、例えばGPIO 712又は周辺バスユニット710にアクセスできなければならない。CPUコア706は、従って、調整、変調及び最適化を実行できる。
【0066】
図8は、本発明による方法の1つの実施形態における、アドレス形成中のシーケンス800を概略的に示し、ここで、スケジューラの、全体的スイッチング状態を含むメモリ領域のメモリアドレスが入力変数801、802、803のマッピングによって参照され、モジュールスイッチング状態及び従って全体的スイッチング状態は、入力変数に応じて最適化されることが意図される。現在の全体的スイッチング状態と別の入力変数との組合せにより形成されるメモリアドレスは、そのままで保存されず、その二値により、最も近い全体的スイッチング状態を有するメモリアドレスへの参照をすでに形成している。第一の入力変数801として、例えば現在の全体的スイッチング状態がビット組合せとして利用でき、これは、例として後述する別の入力変数802及び803と共にメモリアドレスを形成し、これは、好ましくは、分別されて、すなわちその二値の大きさに応じて列挙される。第二の入力変数802は、例えば、変調器により提供される数量化された電圧レベルにより形成でき、これは、現在の電圧値が1ステップだけ増大されることが意図される場合にビット値「1」を担持し、現在の電圧レベルが1ステップだけ減少されることが意図される場合にビット値「0」を有する。第三の入力変数803は、例えば、次のスイッチングステップ中に必要な電流の方向によって形成でき、これは、電流の方向が第モジュールの第一の側から第二の側に向かう場合にビット値「1」を担持し、電流の方向がモジュールの第二の側から第一の側に向かう場合にビット値「0」を有する。しかしながら、入力変数803は、ごく一般的に、好ましくは高速に変化可能な入力変数のために、任意の数の別の入力変数を表すことも意図される。ビットコンカチネーションモジュール810において、3つの入力変数が結合されてビットのコンカチネーションが形成される。リンクモジュール812において、前記コンカチネーションがメモリセルサイズ、すなわち個々の全体的システム状態、すなわちマルチレベル変換器の全モジュール状態を保存するのに必要なメモリスペースのサイズ(単位[バイト])とリンクされる。最後に、メモリ内の第一のスイッチングテーブルの位置の始まりの始点アドレスが加算モジュール814内に加えられる。結果806は、マルチレベル変換器上で第一のスイッチングテーブルから最も近い全体的スイッチング状態を実装するために、直接飛越しアドレスとして機能する。
【0067】
図9は、本発明による方法の1つの実施形態における、スケジューラへの入力変数922、802、803の第一のスイッチングテーブルの行へのマッピングによる別のアドレス形成中のシーケンス900を概略的に示す。図8と比較して、第一の入力変数922は、絶対値として又は変調器920による最後の電圧需要の相対値として符号化される数量化された電圧需要である。変調器920への入力は、例えば、電源供給システム又は機械調整装置910により通信される、数量化されていない、例えば連続的な電圧需要912である。相対的電圧需要を使用することにより、現在の全体的スイッチング状態と最も近い全体的スイッチング状態との間に幾つの電圧ステップがあるかを制御できる。最適化の計算の複雑さが極めて高いことにより、ここでは、チェックすべき代替案の数も前述のように非常に効率的に減らすことができる。高速スイッチング変調の場合、通常、少ない数のスイッチングステップのみが必要である。比較的大きい変更が必要となるのは、頻繁に急激な電圧変化が生じるときに限られる。頻繁な比較的大きい電圧ステップにより、さらにスイッチング損失も増大し、これは、複数のモジュールを必然的に切り替えなければならないからであり、他方では、1つの電圧レベルのみの変化は、1つのみ又は少ない数のモジュール状態の変化で実現できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9