(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】充電制御装置、充電管理システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60L 53/68 20190101AFI20221109BHJP
B60L 53/67 20190101ALI20221109BHJP
H02J 7/00 20060101ALN20221109BHJP
H02J 13/00 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
B60L53/68
B60L53/67
H02J7/00 P
H02J13/00 311R
(21)【出願番号】P 2018139673
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】石井 忠俊
(72)【発明者】
【氏名】島岡 厚一
(72)【発明者】
【氏名】松澤 茂雄
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-066245(JP,A)
【文献】特開平10-174305(JP,A)
【文献】特開2006-320081(JP,A)
【文献】特開2011-253257(JP,A)
【文献】特開2014-038048(JP,A)
【文献】特開2014-099950(JP,A)
【文献】特開2014-103780(JP,A)
【文献】特開2014-230336(JP,A)
【文献】特開2015-061496(JP,A)
【文献】特開2015-107041(JP,A)
【文献】特開2016-134160(JP,A)
【文献】国際公開第2012/120976(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035481(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/00
H02J 7/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電対象である複数の電気自動車のそれぞれに対して充電可能な複数の充電器を含む充電装置に適用する充電制御装置であって、
電力供給の制約条件に基づいて、前記充電装置の充電制御を実行するための
前記複数の充電器のそれぞれを識別する識別情報を含む、前記充電対象に対する充電終了時刻、充電必要時間、充電停止時間を示す第1充電指示を受信する受信手段と、
前記
第1充電指示に基づいて
、前記識別情報に対応する前記充電器に対して、前記第1充電指示に応じた充電制御を前記制約条件に基づく指定の範囲内で行う充電スケジューリングを実行する制御手段と
を具備し、
前記制御手段は、前記第1充電指示の後に前記受信手段により受信された充電バランスの変更を指示する第2充電指示に応じて、前記充電スケジューリングの設定を変更し、変更後の前記充電スケジューリングの設定に基づいて、前記指定の範囲内で前記充電器に対する充電制御をする充電制御装置。
【請求項2】
前記第2充電指示は、先着優先充電の指示、平均的充電の指示、あるいは新たな充電設備の稼働情報の何れかを示し、
前記制御手段は、前記第2充電指示の指示に応じて、前記充電スケジューリングの設定を変更する請求項1記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記充電スケジューリングに基づいて実行した前記充電装置の充電実績を示す充電実績情報を作成する、請求項1又は2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記充電実績情報は、前記電気自動車の1台毎の充電開示時刻、充電終了時刻、充電時間、及び充電電力推定値を含む、請求項3に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
複数の前記充電器によるそれぞれの充電時間及び充電電力量を1個のメータのみによる電力測定値を使用して推定し、この推定した充電時間及び充電電力量に基づいて、前記電気自動車に対する充電終了した充電器を認識して前記充電スケジューリングの設定を変更する請求項1記載の充電制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の充電制御装置、認証装置、充電管理装置のそれぞれがネットワークを介して接続した充電管理システムにおいて、
前記認証装置は、
充電装置の識別情報及び電気自動車の使用者の識別情報との照合情報を作成する手段と、
前記照合情報を前記充電管理装置に送信する手段と、
を含み、
前記充電管理装置は、
前記照合情報を受信する手段と、
前記照合情報及び電力供給の制約条件に基づいて、
前記充電装置毎に充電制御を実行させるための充電コマンドを前記充電制御装置に送信する手段と、
前記充電装置における前記電気自動車に対する充電量に応じた課金情報を前記照合情報と対応づけて蓄積する手段と、
を含む、充電管理システム。
【請求項7】
前記認証装置は、
無線通信機能を含む端末装置により構成されており、
前記充電装置の識別情報を読み込み、
前記電気自動車の使用者として認証された識別情報を記憶し、
前記照合情報を作成し、
前記照合情報を前記充電管理装置に送信する、請求項6に記載の充電管理システム。
【請求項8】
前記充電管理装置は、
前記充電制御装置から送信される、充電スケジューリングに基づいて実行した充電実績を、前記使用者の識別情報毎に示す充電実績情報を受信する手段と、
前記充電実績情報をデータベースに蓄積する手段と、
を含む、請求項6又は7のいずれか1項に記載の充電管理システム。
【請求項9】
前記充電制御装置は、
前記充電コマンドと自身が作成する充電実績情報との差に基づいて、前記充電装置と前記電気自動車との接続異常を検知する、請求項8に記載の充電管理システム。
【請求項10】
前記充電制御装置は、
前記充電コマンドと自身が作成する充電実績情報との差に基づいて、前記電気自動車に対する満充電又は充電中断による充電終了又は
前記電気自動車と前記充電器とを接続するケーブルの外しを検知する、請求項8又は9に記載の充電管理システム。
【請求項11】
前記充電制御装置は、
前記充電コマンドと全電力測定値に有意な差が生じたときに、充電器一つのみに電気を流すことをすべての充電器に対して行うことで充電器一つずつの
電力量を測定し、充電実績情報を作成することにより、充電終了した充電器を識別する、請求項8から10のいずれか1項に記載の充電管理システム。
【請求項12】
充電対象である複数の電気自動車のそれぞれに対して充電可能な複数の充電器を含む充電装置に適用する充電制御方法であって、
電力供給の制約条件に基づいて、前記充電装置に対する充電制御
を実行するための前記複数の充電器のそれぞれを識別する識別情報を含む、前記充電対象に対する充電終了時刻、充電必要時間、充電停止時間を示す第1充電指示を受信する処理と、
前記
第1充電指示に基づいて、
前記識別情報に対応する前記充電器に対して、前記第1充電指示に応じた充電制御を前記制約条件に基づく指定の範囲内で行う充電スケジューリングを実行する処理と、
前記第1充電指示の後に前記受信する処理により受信された充電バランスの変更を指示する第2充電指示に応じて、前記充電スケジューリングの設定を変更し、変更後の前記充電スケジューリングの設定に基づいて、前記指定の範囲内で前記充電器に対する充電制御をする処理
を実行する充電制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載の充電制御方法による各処理を、コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば電気自動車に適用する充電制御装置、充電管理システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題等を要因として、電気自動車(以下、EVと表記する場合がある)の普及が推進されている。EVの普及には、充電設備の設置や、充電時間の確保などの条件を満たすことが要求される。
【0003】
一般的に、工場や大規模店舗等の事業所では、多数のEVを対象として、駐車場のスペースに充電設備を設置することが可能である。また、EVの使用者である事業所の従業員は、EVを使用しない勤務中に、当該EVに充電するための充電時間を確保することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5931644号公報
【文献】特開2017-139961号公報
【文献】特開2016-134160号公報
【文献】特開2015-107041号公報
【文献】特許第6129701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
事業所は、電力会社からのデマンドレスポンス(DR)要請や、電力会社との契約電力等の電力供給の制約条件下で、複数のEVを対象とした充電の管理を行うことが必要となる。
【0006】
そこで、目的は、電力供給の制約条件下で、複数のEVを対象とした充電の管理を実現できる充電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の充電制御装置は、電気自動車を充電対象として充電を実行する充電装置に適用する充電制御装置であって、受信手段及び制御手段を具備する。前記受信手段は、電力供給の制約条件に基づいて、前記充電装置の充電制御を実行するための前記複数の充電器のそれぞれを識別する識別情報を含む、前記充電対象に対する充電終了時刻、充電必要時間、充電停止時間を示す第1充電指示を受信する。前記制御手段は、前記第1充電指示に基づいて、前記識別情報に対応する前記充電器に対して、前記第1充電指示に応じた充電制御を前記制約条件に基づく指定の範囲内で行う充電スケジューリングを実行する。前記制御手段は、前記第1充電指示の後に前記受信手段により受信された充電バランスの変更を指示する第2充電指示に応じて、前記充電スケジューリングの設定を変更し、変更後の前記充電スケジューリングの設定に基づいて、前記指定の範囲内で前記充電器に対する充電制御をする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に関する充電管理システムの構成を説明するためのブロック図。
【
図2】実施形態に関する充電装置の周辺部の一例を説明するための図。
【
図3】実施形態に関する充電装置の構成を説明するためのブロック図。
【
図4】実施形態に関する充電制御装置の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、実施形態を説明する。
[システム構成]
図1は、本実施形態の充電管理システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、システム1は、クラウド上の充電管理装置10、例えばインターネットであるネットワーク11、及び複数(m個)の充電装置12を有する構成である。
【0010】
充電管理装置10は、ネットワーク11に接続されて、充電装置12との間で情報を交換するクラウドサーバである。充電装置12は、後述するように、1個の充電制御装置に対してn個の充電器を有する(
図2を参照)。事業所には、m個の充電制御装置が設置される(
図3を参照)。n個の充電器は、複数のEV15-1~15-nに対する充電を行うための設備である。
【0011】
充電管理装置10は、ネットワーク11を介して、事業所の電力供給の管理を行う上位システム14からデマンドレスポンス(DR)要請や、事業所から電力会社との契約電力量に基づいたデマンドコントロール(DC)指示を受ける。充電管理装置10は、DR/DC指示による電力供給の制約条件に基づいて、後述するように、充電装置12に対する充電制御に関する充電コマンドを発行する。ここで、電力供給の制約条件とは、事業所において消費可能な合計電力(電力会社からの受電電力)の上限値を超えないという条件である。
【0012】
上位システム14はクラウドサーバ(リソースアグリゲータのシステム及び事業所の電力中央監視・指令システム)である。
【0013】
さらに、充電管理装置10は、ネットワーク11を介して、EV15-1~15-nの各ユーザのスマートフォン(スマホ)13と接続する。本実施形態では、EV15-1~15-nの各ユーザは、事業所に勤務する従業員とする。スマホ13は、後述するように、従業員(ユーザ)が一種の認証装置として使用されるものであり、従業員(ユーザ)IDや充電器IDを充電管理装置10に送信する。なお、スマホ13は、無線通信機能を有し、当該認証装置として機能するものであれば、他の通信端末や情報端末でも良い。
【0014】
電力装置16は、後述する電力線160を経由して、充電装置12に充電用電力を供給するための電源であり、電力会社から供給される電力の受電設備や、事業所に設置された太陽光発電装置(PV)、コジェネレーション装置、蓄電装置及び電力メータ等も含む。
【0015】
図2は、実施形態に関する充電装置12の周辺部の一例を示す図である。
図2に示すように、充電装置12は、事業所内に施設20と共に設置された、駐車スペース21に設けられた複数の充電器(充電スタンド)32を含む。駐車スペース21は、従業員が使用する駐車場である。施設20とは、例えば工場、ビル、店舗等である。
【0016】
各充電器32-1~32-n(ここではn=3)はそれぞれ、EV15-1~15-n(n=3)とケーブルを介して接続するためのコンセントを含む。各充電器32-1~32-3は、充電を実行する。なお、本実施形態では、例えば8台の充電器32-1~32-8や、16台の充電器32-1~32-16が設置される。
【0017】
充電装置12は、各充電器32-1~32-3を制御する充電制御装置30を含む。充電制御装置30は、後述するように、エッジコンピュータを含む分電盤(
図3を参照)、及び通信部31を有する。充電制御装置30は、通信部31によりネットワーク11を介して充電管理装置10に含まれる通信部に接続し、後述する充電コマンドや各種の情報等を交換する。
【0018】
スマホ13は、通信部130、認証部131、QRコード(登録商標)取り込み部132、及び照合情報作成部133を含む。通信部130は、無線通信機能によりネットワーク11に接続して、各種の情報を交換する。スマホ13は、内蔵するマイクロプロセッサ及びアプリケーションにより、認証部131、QRコード取り込み部132、及び照合情報作成部133の各機能を実現する。
【0019】
認証部131は、充電装置12を使用して電力料金を支払う支払者を特定する認証情報を生成する。本実施形態では、電力料金の支払者として、充電装置12を使用できる事業所の従業員とする。認証部131は、特定された従業員の従業員IDを出力する。QRコード取り込み部132は、各充電器32-nに添付されたQRコードを読み込む。QRコードは、当該充電器32-nを識別する充電器IDを示すデータである。なお、QRコードの代わりに、充電器IDを示す文字列や画像であっても良い。
【0020】
照合情報作成部133は、認証部131から出力される従業員IDと、読み込まれたQRコードに対応する充電器IDとの照合情報を作成する。スマホ13は、通信部130によりネットワーク11を介して、充電管理装置10に対して当該照合情報(日付や時刻を含む)を送信する。充電管理装置10は、当該照合情報の受信に基づいて、後述する充電コマンドを生成して充電制御装置30に送信する。
【0021】
図3は、実施形態に関する充電装置12の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、充電装置12は、前述したように、事業所に設置されて、充電対象として複数のEV15-1~15-n(例えばn=8)に対する充電を行うための設備である。充電装置12は、充電制御装置30を構成し、充電器32-1~32-n(n=8)を含む分電盤を有する。
【0022】
充電器32-1~32-nはそれぞれ、EV15-1~15-nとケーブルを介して接続するコンセントを含む。なお、ケーブルは充電器に含まれていてもユーザが持ち込んでもよい。
充電器32-1~32-nは、当該コンセントから充電用電力を出力する。充電器32-1~32-nにはそれぞれ、充電器IDを示すQRコードが添付されている。
【0023】
充電制御装置(分電盤)30は、エッジコンピュータ33、電力線160に接続する電力測定用のメータ35、コンタクタ36-1~36-n、及び充電器32-1~32-nを含む。
【0024】
エッジコンピュータ33は、いわばEVをVPP(Virtual Power Plant)として扱う機能を実現するコントローラであり、後述するように、充電管理装置10から送信される充電コマンドに基づいて、充電制御を指定の範囲内で行う充電スケジューリングを実行する。エッジコンピュータ33は、充電スケジューリングを実行する充電スケジューラ機能(ソフトウェア)を有する。
【0025】
充電コマンドは充電の開始指示又は抑制指示を含み、例えば充電終了時刻、充電必要時間、充電停止時間等の指定の範囲を含む。充電管理装置10は、例えば、DR要請の単位時間毎(例えば30分毎)に充電コマンドをエッジコンピュータ33に送信する。
【0026】
ここで、電力装置16からの充電用電力は、電力線160を介して充電制御装置30に入力される。充電用電力は、コンタクタ36-1~36-nを経由して、充電器32-1~32-nの各コンセントまたはケーブルから出力される。
【0027】
エッジコンピュータ33は、コンタクタ36-1~36-nのそれぞれを、充電用電力の供給/停止を切替えるスイッチとして制御する。エッジコンピュータ33は、コンタクタ36-1~36-nを制御し、メータ35からの電力測定値を使用して、後述するソフトセンサ処理を実行する。
[作用効果]
次に、
図4のフローチャートを参照して、本実施形態の充電制御装置30の動作を説明する。
【0028】
まず、
図2に示すように、事業所に出勤した従業員(EVのユーザ)は、EV15-nを駐車スペース21に駐車して、充電器32-nのコンセントにケーブルを介して接続する。ここで、従業員は、自身のスマホ13から、前述した照合情報を、いわばEV充電開始通知として充電管理装置10に送信する。当該照合情報は、充電器32-nに添付されたQRコードに対応する充電器ID、従業員ID及び日付と時刻データを含む。
【0029】
充電管理装置10は、スマホ13からのEV充電通知に応じて、当該充電器IDで識別される1台毎の充電器32-nに対応する充電コマンドを、例えばDR要請の単位時間毎(例えば30分毎)に充電制御装置30のエッジコンピュータ33に送信する。なお、前述したように、充電装置12は、充電対象として、例えば8台分のEV15-1~15-n(n=8)に対する充電を行うための設備として、充電器32-1~32-n(n=8)を有する。
【0030】
ここで、充電管理装置10は、スマホ13からのEV充電通知があっても、例えば充電器とEVとの接続ミス等が発生した場合には、充電開始処理を実行しない。充電管理装置10は、EV充電通知を無効にして、従業員のスマホ13にその旨を通知する。ここで、充電管理装置10は、例えば、充電装置12からの充電実績と充電コマンドとの差(充電開始時刻等)に基づいて、ケーブル外れ等による充電器とEVとの接続ミス(接続異常)の発生を検知できる。また、充電装置12は、エッジコンピュータ33が検知した値(充電実績)と、制御値との差に基づいて、ケーブル外れ等による充電器とEVとの接続ミスの発生を検知できる。
【0031】
充電装置12は、充電が終了するまで充電を継続する。ここで、EVは満充電になると、例えば自動的に充電を終了する。結果として、充電器への電流が流れなくなり、充電装置12は充電終了となる。
【0032】
図4に示すように、エッジコンピュータ33は、充電管理装置10から送信される充電コマンドを取得する(S1)。充電コマンドは充電の開始指示又は抑制指示を含み、例えば充電終了時刻、充電必要時間、充電停止時間等の指定の範囲、及び充電器IDを含む。
【0033】
次に、エッジコンピュータ33は、充電装置12の充電バランス観点による充電スケジューリングに基づいた新たな充電コマンドを、充電管理装置10から受信した場合(S2のYES)、充電スケジューリングの設定を見直す処理を実行する(S3)。この場合、新たな充電コマンドとしては、例えば各充電器32-nにおいて接続したEV15-nについて、先着優先的に充電を指示するものである。また、新たな充電コマンドとしては、例えば各充電器32-nにおいて、平均的充電を指示するものである。エッジコンピュータ33は、充電スケジューリングの設定を変更する。また、エッジコンピュータ33は、充電管理装置10から送信される充電コマンドに含まれる充電器IDに基づいて、新たな充電設備の稼働情報を取得した場合には(S7のYES)、充電スケジューリングの設定を見直す処理を実行する(S3)。エッジコンピュータ33は、設定に基づいて、充電制御を指定の範囲内で行う充電スケジューリングを実行する(S4)。
【0034】
エッジコンピュータ33は、充電スケジューリングにより、前述した事業所の電力供給の制約条件を満たすように、充電器毎の充電制御を実行する(S5)。具体例として、例えば6台の充電器32-n(n=1-6)を使用して、6台のEV15-n(n=1-6)を充電する場合とする。1台の充電器32-nは、例えば3時間で1台のEV15-nに対する充電完了できる場合、同時に充電する充電器を3台に抑制すると、6時間(3時間×3台を2回行う)で充電完了となる。
【0035】
エッジコンピュータ33は、取得する充電コマンド(例えば30分毎)に応じて、各充電器32-nを抑制台数に至るまで、順番にオンし、例えば1時間経過したらオフする制御を行う。但し、1台の充電器32-nにおいて、充電開始後に1時間経過しても、空の充電器がある場合には、充電を継続する。このような充電スケジューリングにより、各充電器32-nが順次充電完了して、例えば充電の開始時刻が事業所の定時より早く、又は遅くなる充電器32-nが混在する場合には、定時から例えば5時間で6台分のEV15-nに対して充電完了することが可能となる。
【0036】
ここで、エッジコンピュータ33は、充電コマンドとして、DR要請に伴う充電抑制指示(充電停止時間を含む)を受信した場合には、全ての充電器32-nをオフにして、当該DR要請に対応するまで充電を停止することになる。即ち、エッジコンピュータ33は、
コンタクタ36-nを開(オフ)にすることにより、充電器32-nへの充電用電力の供給を停止する。
【0037】
エッジコンピュータ33は、充電管理装置10からDR対応処理後に送信される充電コマンド又は指示された充電停止時間が経過すると、充電スケジューリングを再開する。即ち、エッジコンピュータ33は、コンタクト36-nを閉(オン)にすることにより、充電器32-nへの充電用電力供給を再開する。
【0038】
ここで、エッジコンピュータ33は、DR対応前の充電制御状態を継続するか、又は充電制御状態をリセットして充電スケジューリングを再起動する。但し、充電スケジューリングを再起動した場合、前述の具体例において、3台の充電器32-nが充電完了する順番が入れ替わる可能性がある。
【0039】
これにより、充電管理装置10は、例えば、上位システム14からの下げDRの要請に対応する下げDC指示に応じた充電管理を実行できる。また、充電管理装置10は、充電可能電力量の平滑化を実現できる。さらに、充電管理装置10は、事業所の電力需要の減少(契約電力との余裕増大)分に対応する上げDC指示に応じた充電管理を実行できる。
【0040】
また、エッジコンピュータ33は、後述するソフトセンサ処理により消費電力量が0になる充電器32-nを検出すると、受電不要の設備として認識する(S6のYES)。この場合でも、エッジコンピュータ33は、充電スケジューリングを見直す処理を実行する(S3)。この場合、エッジコンピュータ33は、コンタクタ36-nを開(オフ)にすることにより、当該充電器32-nへの充電用電力の供給を停止してもよい。
【0041】
この場合、エッジコンピュータ33は、新たに充電設備として使用することとなった充電器を含めた充電スケジューリングを実行することになる。
【0042】
エッジコンピュータ33は、充電器32-nの1台毎に充電実績を認識し、当該充電実績情報を充電管理装置10に通知する(S8)。充電実績情報は、充電開示時刻、充電終了時刻、充電時間、充電電力量等を含む。ここで、前述したように、スマホ13は、認証部131で特定された従業員の従業員IDを保持し、QRコード取り込み部132により各充電器32-nに添付されたQRコードを読み込む。スマホ13は、従業員IDとQRコードに対応する充電器IDとの照合情報を作成し、当該照合情報(日付や時刻を含む)を充電管理装置10に対して送信する。
【0043】
これにより、充電管理装置10は、充電実績情報と前述したようにスマホ13から別途受信する照合情報とを対応付けて、データベースに蓄積する。また、充電管理装置10は、従業員毎に対応付けられた充電器に対して、エッジコンピュータ33を介して充電指示を行うことが可能となる。さらに、充電管理装置10は、例えば、従業員向けの課金情報(EVの充電量に対応する料金)や、EVの充電状況を含むログ情報等の生成に利用できる。
【0044】
ここで、本実施形態のエッジコンピュータ33は、ソフトセンサ処理により、当該充電実績情報に含まれる、EV毎の充電時間及び充電電力量を測定する。ソフトセンサ処理は、各EVの充電時間及び充電電力量を測定するための各センサ(複数の子メータ)を用意することなく、1個のメータ(親メータ)35のみを使用して、複数の存在しないセンサの出力を推定する処理である。
【0045】
エッジコンピュータ33は、コンタクタ36-1~36-nをスイッチとして制御し、各充電器32-nを介して各EV15-nに対する充電用電力の供給/停止を切替える。エッジコンピュータ33は、1個のメータ35からの電力測定値を使用して、EV毎の充電時間及び充電電力量を測定するソフトセンサ処理を実行する。
【0046】
ここで、充電電力量を1分毎に測定すれば、電力変動を1分毎に判定できる。一方、測定したい時にソフトセンサ処理を実行すると、電力線160に対する開閉回数が膨大となり、機械式開閉器であるコンタクタ36-1~36-nの寿命が短縮するため、充電用電力の供給/停止の切替え回数を減少させることが望ましい。
【0047】
そこで、本実施形態では、エッジコンピュータ33は、メータ35を使用した電力量の測定を、充電スケジューリングの間隔より短く、かつ、受電時間(充電時間)を検出できる精度に合わせた時間間隔で実行する。但し、エッジコンピュータ33は、電力線160に対する開閉をしていないのに全体電力量が変動した場合には、ソフトセンサ処理を実行して、受電不要の充電器32-nの識別と受電時間を認識する。
【0048】
また、受電時間(充電時間)を検出できる精度に合わせた時間間隔が充電スケジューリングの間隔と同じ場合には、更に電力線160に対する開閉回数を減少できる。エッジコンピュータ33は、次の充電スケジュールによる電力線160の開閉直前で、電力量を測定し、電力量が想定より少なければ、受電不要の充電器32-nの識別と個数を認識できる。
【0049】
次に、エッジコンピュータ33は、ソフトセンサ処理を実行して、コンタクタ36-1~36-nを順に1個ずつ開(オフ)とした場合に、電力量が想定通りに変動しない充電器32-nに接続しているEV15-nを認識できる。即ち、エッジコンピュータ33は、当該充電器32-nが充電終了機器であることを認識できる。なお、エッジコンピュータ33は、受電終了の充電器32-nが判明した場合には(S6のYES)、前述したように、充電スケジュールの見直し処理を実行する(S3)。
【0050】
以上のように本実施形態の充電制御装置によれば、電力供給の制約条件に基づいて充電管理を行う充電管理装置(サーバ)からの充電コマンドに従って、複数のEVに対して充電制御を指定の範囲内で行う充電スケジューリングを実行できる。従って、複数のEVを対象とした適切な充電管理の仕組みを実現することができる。
【0051】
特に、本実施形態の充電制御装置を、EVの使用者である多数の従業員が勤務する事業所の充電管理システムに適用することにより、契約電力量、DR/DC、PV発電量等の電力供給の制約条件に基づいて、1台毎のEVに対する1日当たりの充電処理を適切に管理することが可能となる。
【0052】
この場合、充電管理システムとしては、EV毎の充電実績情報を、従業員ID及び充電器IDと対応付けてデータベースに蓄積できる。このデータベースに蓄積された情報を利用して、EV毎の充電状況や、従業員毎のEVの使用状況、あるいは充電器毎の利用状況等を分析することが可能となる。
【0053】
さらに、充電管理システムとしては、例えば、各EVに対する充電を適宜抑制できるため、事業所の契約電力量に応じた電力料金の増大を招くような事態を抑制できる。また、EVを使用しない従業員の1日の勤務中に、駐車場に駐車中のEVに充電することができるため、従業員の出勤時に充電が集中するような事態を回避できる。
【0054】
さらに、従業員は自宅にEVの充電設備を設置する必要性がないため、充電設備に関する阻害要因を解消できるため、EV普及を促進することができる。これにより、従来のガソリン使用の自動車を利用する場合の通勤手当を抑制できると共に、CO2削減等の環境改善に貢献できる。また、事業所内において、EVの充電用として、PV発電等の再生エネルギーの使用量を増大させることにより、RE(Renewable Energy)100と呼ばれる国際的目標の達成に貢献できる。
【0055】
なお、本実施形態において、充電器毎に電力仕様が異なる場合は、例えば、スマホに当該電力仕様の情報を組み込むことが望ましい。前述したように、充電制御装置は、充電コマンドから、EVが接続されて充電可能な充電器のIDを認識できる。一方、充電制御装置は、当該EVのIDを認識する必要はない。
【0056】
さらに、充電制御装置は、従業員IDを含み、従業員毎(EV毎)の充電実績を示す充電実績情報を作成して充電管理装置10に送信する。これにより、従業員が属する組織や、従業員毎に課金や充電量の報告を行うことができる。
【0057】
この場合、例えば、スマホに個人課金の仕組み(例えば、クレジットカード登録と料金回収機能との連携)が組み込まれていれば、月締め等で自動課金・自動回収を行うことができる。また、福利厚生による手当てやクーポン及び無料クーポンの量(電力量、充電時間、走行距離などに基づいてシステム内で変換する)を、スマホ13からシステムに送信すれば、課金時に反映させることも可能である。
【0058】
さらに、本実施形態の充電制御装置を適用する充電管理システムであれば、電池交換型のEVの充電管理にも適用できる。電池交換型のEVの場合には、電池をEV間でシェアすることが可能であり、駐車場においてEVから取り外した電池を充電する際には、電池の充電計画を予測し易い側面がある。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…充電管理システム、10…充電管理装置、11…ネットワーク、
12…充電装置、13…スマートフォン(スマホ)、14…上位システム、
15-1~15-n…電気自動車(EV)、16…電力装置、
20…施設、21…駐車スペース、30…充電制御装置、31…通信部、
32-1~32-n…充電器、33…エッジコンピュータ、160…電力線。