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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】点検用覗き窓
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20221109BHJP
   B01D 47/00 20060101ALI20221109BHJP
   B03C 3/82 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B01J19/00 G
B01D47/00 Z
B03C3/82
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018198091
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020065949
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】596032177
【氏名又は名称】住友金属鉱山エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】小南 雅広
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-153488(JP,A)
【文献】特開2004-166970(JP,A)
【文献】特開平05-245649(JP,A)
【文献】特開平05-288686(JP,A)
【文献】実開平06-028799(JP,U)
【文献】実開昭52-061584(JP,U)
【文献】特開平10-249140(JP,A)
【文献】実開平05-045042(JP,U)
【文献】実開昭63-046887(JP,U)
【文献】特開2015-019690(JP,A)
【文献】特開平01-115895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 3/00-3/08、19/00
B01D 47/00
B03C 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻部によって外部環境から遮蔽された内部空間内において、気体又は液体、或いは、それらの両方からなる処理対象物を処理する工程が行われるタンク型の工業設備において、前記外殻部に設置する点検用覗き窓であって、
筒状の本体部分の一方の端部にある外側開口部から外側に向けて張り出す外向きのフランジと、前記本体部分の他方の端部にある内側開口部において内側に向けて張り出す内向きのフランジと、を有する、筒状窓枠部と、
前記外側開口部を閉止することができて、尚且つ、開閉可能な接合態様で、前記外向きのフランジに設置されている、透明な外窓と、
前記内側開口部を閉止することができて、尚且つ、開閉可能に前記内向きのフランジに設置されている、内扉と、
を備える、点検用覗き窓。
【請求項2】
前記筒状窓枠部の内部に前記内扉の開閉動作を行う空気圧式ダンパーを備える請求項1に記載の点検用覗き窓。
【請求項3】
前記外窓と前記内扉と前記筒状窓枠部の内壁に囲まれている空間内の気圧を調整可能な吸排気部を備える、請求項1又は2に記載の点検用覗き窓。
【請求項4】
前記内扉は、その表面に開閉機構接合用片部が形成されていて、
前記開閉機構接合用片部は、前記内扉の表面に直交する方向を長径とする長孔が形成されていて、
前記内扉はその表面に平行に配置されている支持軸が前記長孔に挿入される態様で、前記筒状窓枠部の内部に設置されていて、
前記内側開口部を開放する時には、前記内扉は、前記長孔の長軸方向に沿って水平移動した後に、前記支持軸を始点に旋回することによって開放され、
前記内側開口部を閉止する時には、前記内扉は、前記支持軸を始点に、開放する時とは逆向きに旋回した後に、前記長孔の長軸方向に沿って開放する時とは逆向きに水平移動して前記内側開口部を閉止する、請求項1から3のいずれかに記載の点検用覗き窓。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の点検用覗き窓が外殻部に設置されている、電気集塵機。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の点検用覗き窓が外殻部に設置されている、洗浄塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵機や洗浄塔等、各種の気体や液体をその内部に滞留若しくは通過させる状態で運転される工業設備の外殻部に設置する点検用覗き窓に関する。より詳しくは、本発明は、上記工業設備の外殻部に設置することにより、運転中の同設備内の状態を、同設備の運転を継続したまま、外部から目視等により観察することができる点検用覗き窓に関する。
【背景技術】
【0002】
電気集塵機や洗浄塔等の内部を運転中に点検するために、これらの工業設備には、通常点検用覗き窓が設置されている。従来、この点検用覗き窓は、透明アクリル製やガラス製等のブラインドフランジ等、透明な窓を通して設備内の状態を視認する構造の物が広く採用されている。旧来の多くの上記工業設備においては、このような透明な点検窓を通して、運転中の設備の内部を目視等により確認することが行われている。
【0003】
しかしながら、電気集塵機や洗浄塔等、設備内部を様々な種類のダストを含むガスや洗浄水等が通過する工業設備においては、運転開始後短期間のうちに、点検用の透明な覗き窓の内面が汚染されて視認性が低下してしまうことが問題となっていた。点検用覗き窓の視認性を回復するためには、結局、覗き窓の内面を清掃するために設備の運転を一時的に停止せざるを得ず、運転中の設備内部の状態を、運転を停止することなく観察するという本来の機能が発揮しえなくなってしまうという事態がしばしば生じていた。
【0004】
これに対して、覗き窓を構成する透明ガラスの内面をスリガラス状の凹凸面とすることで、ガラス内面への付着物の剥離を促進しようとする覗き窓(特許文献1)等、透明ガラスの表面加工により、付着物による視認性の低下を防止することを企図した覗き用点検窓が開発されている。又、一方で、パージ用の気体を内側からガラス窓に吹き付けて、付着物を吹き飛ばすことにより汚染を防ぐことを企図した覗き窓(特許文献2参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-157860号公報
【文献】特開2004-101036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、設備内部を、様々な種類のダストを含むガスや洗浄水等が大量に通過する電気集塵機や洗浄塔等の工業設備においては、透明な窓の内表面へのダスト等の付着や堆積を、特許文献1におけるような窓の内面の表面加工処理のみによって十分に回避することは実際には極めて困難であった。
【0007】
又、特許文献2のように付着物をパージ用の気体の吹きつけによって回避する機構については、当該機構自体の設置費が嵩む上、設置対象とする工業設備の機構上、本来の当該設備内での反応促進を阻害する、或いは、安全性に問題が生じる等の理由により、そのような気体を導入する機構の付加が、そもそも不可能な場合も多くある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて考案されたものであり、電気集塵機や洗浄塔等、各種の気体や液体をその内部に滞留させた状態で運転される工業設備全般において広く適用可能な点検用覗き窓であって、当該設備の運転中における透明な窓へのダスト等の付着と堆積を十分に抑制することができる、点検用覗き窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、点検用覗き窓を、点検時に内部の視認性を確保するための透明な外窓と、非点検時において外窓を設備内部から遮蔽する内扉とが、筒状の窓枠に並置されている二重遮蔽構造の覗き窓とすることにより、簡易な構造でありながら、内部視認用の透明な窓へのダスト等の付着や堆積を、十分に長期に亘って抑制することができることに想到し、本発明を完成させるに至った。より、具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 工業設備の外殻部に設置する点検用覗き窓であって、筒状窓枠部と、前記筒状窓枠部の外側開口部を閉止することができる透明な外窓と、前記筒状窓枠部の内側開口部を閉止することができて、尚且つ、開閉可能に設置されている、内扉と、を備える、点検用覗き窓。
【0011】
(1)の発明においては、電気集塵機や洗浄塔等に代表される工業設備の外殻部に設置する点検用覗き窓を、透明な外窓及び内扉が、筒状の筒状窓枠部の両端に連接されている構造であり、少なくともいずれか一方を閉止しておくことにより、上記工業設備の気密性を保持することができる二重遮蔽構造の点検用覗き窓とした。通常、上記工業設備において、運転開始直後は、設備コンディションも良く、特に内部を頻繁且つ詳細に見る必要性は低い。長期間運転し、内部状態を確認したい時点に至る頃には覗き窓が汚染されてしまっていて、点検に必要な視認性が損なわれてしまっているということが問題となっていた。この問題に対し、上記のような二重構造の点検用覗き窓とすることにより、点検実施時以外には内扉を閉止しておくことにより、透明な外窓の汚染を長期に亘って防止することができる。
【0012】
又、(1)の点検用覗き窓によれば、上記工業設備の運転中においても、運転を中段することなく外窓の清掃や交換を安全に行うことができる。そして、更には、筒状窓枠部の空間内に、記録用のカメラや、内部の視認性を向上させるための照明を設置すること、及び、必要に応じてそれらを取り外すことが可能であり、上記工業設備の稼働率、点検作業の作業性及び点検の精度を、有意に向上させることができる。
【0013】
又、(1)の点検用覗き窓によれば、外形を構成する筒状窓枠部に窓と扉が設置されていることを最小限の構成とする単純な構造である。よってこの発明にかかる点検用覗き窓は、既設の工業設備においても、マンホール等を利用して後付けでの設置が可能であり汎用性にも優れるものである。
【0014】
(2) 前記筒状窓枠部の内部に前記内扉の開閉動作を行う空気圧式ダンパーを備える(1)に記載の点検用覗き窓。
【0015】
(2)の発明においては、(1)の点検用覗き窓を、更に内扉の開閉動作を行う空気圧式ダンパーを備えるものとした。内扉の開閉動作を行う開閉機構を空気圧式のダンパーとすることにより、例えば、電動式の開閉機構の作動等に起因する引火等の危険性を回避することができる。又、閉止時の扉の押し付け圧を調整することにより、密閉の度合いが高まるので、気密性をより確実に高めることができる。尚、この開閉機構は、内扉が閉止されている状態において、工業設備の内部から遮断されている筒状窓枠部の内部に設置されているため、特段の防汚対策が不要であり、この点において保守性にも優れる構造である。
【0016】
(3) 前記外窓と前記内扉と前記筒状窓枠部の内壁に囲まれている空間内の気圧を調整可能な吸排気部を備える(1)又は(2)に記載の点検用覗き窓。
【0017】
(3)の点検用覗き窓によれば、上記の工業設備の内圧に応じて、筒状窓枠部内部空間の気圧を調整することにより、例えば、集塵機等のように、上記内圧が負圧であれば、筒状窓枠部内部空間の気圧を正圧に維持して圧力差によって内扉を適切に押さえつけて必要な気密性を高い精度で保持することができる。又、必要に応じて、筒状窓枠部内部空間の気圧と工業設備の内圧との圧力差をなくす方向に調整することにより、内扉の開閉が容易に行えるように調整することもできる。
【0018】
(4) 前記内扉は、その表面に開閉機構接合用片部が形成されていて、前記開閉機構接合用片部は、前記内扉の表面に直交する方向を長径とする長孔が形成されていて、前記内扉はその表面に平行に配置されている支持軸が前記長孔に挿入される態様で、前記筒状窓枠部の内部に設置されていて、前記内側開口部を開放する時には、前記内扉は、前記長孔の長軸方向に沿って水平移動した後に、前記支持軸を始点に旋回することによって開放され、前記内側開口部を閉止する時には、前記内扉は、前記支持軸を始点に開放する時とは逆向きに旋回した後に、前記長孔の長軸方向に沿って開放する時とは逆向きに水平移動して前記内側開口部を閉止する、(1)から(3)のいずれかに記載の点検用覗き窓。
【0019】
(4)の点検用覗き窓によれば、内扉の閉止時の閉運動の最後に、開口部に対し内扉の全面に均一な垂直方向の力をかけながら開口部に押し付けることができる。これにより、(1)から(3)のいずれかに記載の点検用覗き窓の内扉閉止時における上記工業設備の気密性をより高い精度で保持することができる。
【0020】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の点検用覗き窓が外殻部に設置されている、電気集塵機。
【0021】
(5)の発明によれば、電気集塵機に(1)から(4)のいずれかの点検用覗き窓を設置することにより、当該電気集塵機の保守容易性と稼働率を向上させて、当該電気集塵機が設置されている各種の製造プラントの生産性の向上に寄与することができる。
【0022】
(6) (1)から(4)のいずれかに記載の点検用覗き窓が外殻部に設置されている、洗浄塔。
【0023】
(6)の発明によれば、洗浄塔に(1)から(4)のいずれかの点検用覗き窓を設置することにより、当該洗浄塔の保守容易性と稼働率を向上させて、当該洗浄塔が設置されている各種の製造プラントの生産性の向上に寄与することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電気集塵機や洗浄塔等、各種の気体や液体をその内部に滞留させた状態で運転される工業設備全般において広く適用可能な点検用覗き窓であって、当該設備の運転中における透明な窓へのダスト等の付着と堆積を十分に抑制することができる、点検用覗き窓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の点検用覗き窓の全体構成(内扉閉止時)を模式的に示す断面図(図2のA-A断面)である。
図2】本発明の点検用覗き窓の全体構成を模式的に示す正面図である。
図3】本発明の点検用覗き窓の全体構成(内扉開放時)を模式的に示す断面図(図2のA-A断面)である。
図4】本発明の点検用覗き窓の内扉の開閉動作の説明に供する図面である。
図5】本発明の点検用覗き窓の内扉の開閉動作の他の実施形態の説明に供する図面である。
図6】本発明の一実施形態である点検用覗き窓を設置した洗浄塔の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<点検用覗き窓>
本発明の点検用覗き窓は、工業設備の外壁等、その外殻部に設置されて用いられる点検用覗き窓である。尚、本発明の点検用覗き窓の主たる設置対象となる工業設備は、より詳しくは、「タンク型の工業設備」である。そして、本明細書における「タンク型の工業設備」とは、気体及び/又は液体を内部に滞留させた状態で運転する工業設備であって、外壁等の外殻部によって外部環境から遮蔽された内部空間内において、上記の気体又は液体、或いは、それらの両方からなる処理対象物を処理する工程が行われる工業設備全般を含む概念である。尚、上記同様の機能を有する「槽」、「塔」等であれば、その外形にかかわらず、本明細書における「タンク型の工業設備」である。このような「タンク型の工業設備」の具体例として、工業炉等から排出される排ガス中のダストを洗浄液により湿式分離する洗浄塔や、或いは、そのような排ガスからイオン化されたダストを電気エネルギーによって分離回収する電気集塵機を挙げることができる。
【0027】
上述の「タンク型の工業設備」の点検用窓として好適に用いることができる本発明の点検用覗き窓10は、図1及び図2に示すように、筒状の筒状窓枠部3と、この筒状窓枠部3の両端に形成されている2箇所の開口部を閉止することができる態様で設置されている外窓1及び内扉2とを必須の構成要件とする。上記2つの開口部を閉止するための部分のうち、少なくとも内扉2は、必要に応じて開閉可能な構造で設置されている。
【0028】
上記の構成からなる点検用覗き窓10は、設置対象とする工業設備の外殻部6に形成されている点検用の開口部に、筒状窓枠部3を隙間無く係合させて設置することにより、当該工業設備の外殻部に求められる気密性を維持したまま、点検用の覗き窓としての機能を発揮することができる。尚、本明細書においては、このように工業設備の外殻部6に形成されていて、当該設備の内部空間を視認可能に外殻部6を貫通して形成されている開口部のことを、点検用の開口部と総称するのとする。
【0029】
図1に示すように、点検用覗き窓10において、外窓1は、筒状窓枠部3の一方の端部(工業設備への設置時において最外面側となることが想定されている側の端部)にある外側開口部31を被覆してこれを閉止することができる態様で接合されている。この外窓1による外側開口部31の閉止の精度については、点検用覗き窓10が設置されている工業設備が、外窓1を閉止した状態において、同設備に対して要求される気密性を維持することができる程度の精度であればよい。
【0030】
又、外窓1は、開閉可能な態様で、筒状窓枠部3に接合されていることが好ましい。これにより、筒状窓枠部3の内部空間の開閉構造部分等の保守作業や、カメラやライト等、点検に必要な追加機器の設置作業を任意の望ましいタイミングで容易に行うことができる。
【0031】
外窓1の筒状窓枠部3の開閉可能な接合態様の具体例として、図1及び図2に示すように外窓1の外周に沿って設けられたボルト孔11を通した外窓固定用ボルト111による筒状窓枠部3のフランジ部分等へのボルト固定を好ましい接合態様の一例として挙げることができる。又、上記の接合態様に合せて、更に、図1及び図2に示すように、外窓1のボルト孔11の内側に円周状に複数設けられたボルト収納開口12の内部に配した窓枠部固定用ボルト121によって、筒状窓枠部3を工業設備の外殻部6のフランジ部分等にボルト固定する構造とすることがより好ましい。かかる接合構造により、外窓1の筒状窓枠部3への接合と、筒状窓枠部3の工業設備の外殻部6への接合を、それぞれ独立した接合構造とし、これにより、外窓1の開閉或いは交換の作業と、点検用覗き窓10全体(筒状窓枠部3)の交換作業とを、それぞれ必要なタイミングで独立して行うことができる。
【0032】
外窓1の材料としては、先ず光学的な特性として、透明性を有することが求められる。より具体的には、上記のように外側開口部31を被覆して閉止した状態においても、内扉2が開放されていれば、点検用覗き窓10を通して、当該工業設備内の処理対象物(汚染ガス等)や、各種の内部充填物等の状態を視認可能な程度の透光性を有するものであればよい。又、その他、使用条件に応じて必要とされる耐熱性、耐薬品性、その他の耐候性を有する透明な板材からなるものであればよい。例えば、所定サイズに切断形成された一般的なアクリル樹脂性の透明な板材、或いは、所望の耐熱性を有する耐熱ガラス板等を、外窓1を形成する材料として好ましく用いることができる。
【0033】
図1に示すように、点検用覗き窓10において、内扉2は、筒状窓枠部3の他方の端部(工業設備への設置時において内部空間側となることが想定されている側の端部)にある内側開口部32を被覆してこれを閉止することができる態様で接合されている。この内扉2による内側開口部32の閉止の精度は、点検用覗き窓10が設置されている工業設備が内扉2を閉止した状態において、同設備に対して要求される気密性を維持することができる程度の精度であればよい。
【0034】
更に、内扉2は、任意の必要なタイミングにおいて、適宜開閉可能な態様で筒状窓枠部3に接合されている。内扉2を、点検時にのみ開放することで、上述の通り、外窓1の視認性を長期に亘って保持しながら、点検時には工業設備の内部を視認により或いは筒状窓枠部3内に設置した撮影機器等により観察することができる。
【0035】
そして、内扉2には、点検用覗き窓10の外部からの操作によって、これを開閉することができる開閉機構が備えられていることが好ましい。この開閉機構は、特定構造の機構には限定はされず、空気圧式や油圧式のダンパー、或いは、電動式のダンパー等、各種の公知の機構を用いて構成することができる。但し、このような開閉機構は、図1に示すような態様で、内扉2を筒状窓枠部3の内側開口部32の外縁に押しつけることによって閉止することができて、図3に示すような旋回運動により内扉2を開放することができる空気圧式ダンパー4の伸縮による開閉機構であることが好ましい。
【0036】
内扉2の設置構造については、図4に示すように、支持軸23を回旋軸とした回旋により閉止と開放が行えるように支持軸23が支持用の孔に挿入された状態で内扉が適切な位置で開閉可能に支持されている設置構造であることが好ましい。この支持軸23を挿入するための孔は、図4に示すように、内扉2の上端部近傍に立設されている開閉機構接合用片部21に形成されていて、内扉2の表面に直交する方向を長径とする長孔22であることが好ましい。
【0037】
内扉2の設置構造を、支持軸23が内扉の一部である長孔22に挿入される態様で、筒状窓枠部3の内部において開閉可能に支持されている設置構造とすることにより、図4(a)~(d)に示すような開閉動作が可能となる。具体的に、内側開口部32を開放する時には、先ず内扉2の重心位置Gよりも上部の位置Pにおいて内扉2を引っ張ることにより、内扉2を長孔22の長軸方向に沿って水平移動させる(図4(a)~(b))。支持軸23が長孔22の端まで達した後に、引き続き内扉2を引っ張ることにより、支持軸23を旋回軸として内扉2を旋回させて内扉2を開放させる(図4(c)~(d))。又、内側開口部32を閉止する時は、内扉2は、支持軸23を旋回軸として開放時とは逆向きに旋回した後に、長孔22の長軸方向に沿って開放時とは逆向きに水平移動して内側開口部32を閉止する。この閉止閉運動の最後の段階(図4(b)~(a))において、内扉2は内側開口部32に対し垂直に押し付けられるので、均一な圧力での安定した押し付けが可能となる。このような開閉動作によれば、上述の通り、点検用覗き窓10の内扉2の閉止時における工業設備の気密性をより高い精度で保持することができる。
【0038】
内扉2の材料としては、設置対象とする工業設備の処理対象や運転条件に応じて必要とされる耐熱性、耐薬品性、その他の耐候性を有するものであれば、各種の金属、或いは、強化樹脂等からなる汎用的な板材やそれを適切に加工した材料を適宜選択することできる。排ガスを処理する大型の電気集塵機の場合であれば、所定サイズに切断形成された金属製或いは樹脂製の各種の板材を、内扉2を形成する材料として好ましく用いることができる。
【0039】
筒状窓枠部3は、開口部の外縁が円形である円筒形であってもよいし、或いは、開口部の外縁が正方形等任意の多角形形状である筒形であってもよい。
【0040】
筒状窓枠部3の外側開口部31は、図1、2に示すように外向きのフランジを有する形状であることが好ましい。このような形状とすることにより、閉止時の気密性に関する要求に応えながら、外窓1の設置を容易に行うことができる。
【0041】
筒状窓枠部3の内側開口部32は、図1、2に示すように外縁から内側に張り出す形状のフランジを有する形状であることが好ましい。このような形状とすることにより、閉止時の気密性に関する要求に応えながら、内扉2の設置を容易に行うことができる。
【0042】
又、筒状窓枠部3を形成する材料は、内扉2と同様の材料を用いることができる。上記同様、使用条件に応じて必要とされる耐熱性、耐薬品性、その他の耐候性を有する材料を適宜選択して用いることができる。
【0043】
又、点検用覗き窓10は、筒状窓枠部3の両端に接合されている外窓1と内扉2とによって内側開口部32及び外側開口部31とを閉止することによって形成することができる気密性を有する筒状窓枠部3の内部空間の気圧を、任意の所望の気圧に調整することができる吸排気部5を備えることが好ましい。吸排気部5は、例えば、筒状窓枠部3の内部空間の気圧を所望の気圧に調整することができるポンプやコンプレッサー等の吸排気装置と、配管やホースのような流送装置、及び、手動或いは自動バルブ等の流路の開閉装置等によって構成することができる。
【0044】
上記において説明した開閉構造により、外窓1及び内扉2の閉止時における筒状窓枠部3の内部空間の気密性を十分に高めた上で、この空間内の内圧を高く保持してエアシール効果を発現させることにより、点検用覗き窓10を設置した部分における設置対象の工業設備の気密性を更に向上させることもできる。
【0045】
ここで、点検用覗き窓10の設置対象とする工業設備が集塵機である場合、機器内部が負圧で運転されるケースが多いので、内扉2を図1~3に示すような内開きの設置態様とすることにより、内扉2の閉止時には、この負圧に起因する圧力差で内扉2による内側開口部32の外縁への密着強度を高めることができるため、これにより、上記の気密性をより高い水準で保持することができる。
【0046】
そして、この場合、内扉2の開放時には、吸排気部5の動作により、工業設備内部との圧力差をなくして、開閉に要する力を最小化して開閉動作の円滑性を高め、開放のための動力の省力化も実現できる。
【0047】
一方、点検用覗き窓10の設置対象とする工業設備が、その機器内部を正圧とした状態で運転される設備である場合であれば、上記同様の開閉構造を保持したまま、内側扉2を、外側開口部31の内側(機器内部側)に配置する構造とし、機器内部からの正圧により、内側扉2が外側開口部31の外縁(例えば内向きのフランジ)に押しつけられる構造とすることが好ましい。これにより、機器内部が負圧である上記の場合と同様に、内側扉2の内側開口部32の外縁への密着強度を高めて気密性を高い水準で保持することができる(図5参照)。
【0048】
又、点検用覗き窓10に、予め、筒状窓枠部3の内部空間の滞留ガスをパージするための吸排気ノズルと、分析用サンプリング口とを設置しておけば、外窓1を開放する際、開放前に十分な安全の確保と確認をすることができる。又、必要に応じて、不活性ガスを吸気して、滞留ガスを安全なガスに置換することもできる。尚、空気以外の不活性ガス等を供給する場合は、加圧装置の代わりにボンベを用いてもよい。
【0049】
<洗浄塔(湿式スクラバー)への適用例>
以下、点検用覗き窓10の実施形態の一例として、洗浄塔(湿式スクラバー)への適用例について説明する。点検用覗き窓10は、以下に例示する実施形態に限定されることなく、電気集塵等、各種の気体や液体をその内部に滞留させた状態で運転される工業設備全般において広く適用可能であり、以下に説明する具体例と同様の効果を広く享受することができるものである。
【0050】
図6は、外殻部に点検用覗き窓10が設置されている洗浄塔(湿式スクラバー)100の模式的な側面図である。点検用覗き窓10を備える洗浄塔(湿式スクラバー)100における内部の観察は目視によるものでもよいし、例えば、点検用覗き窓10の筒状窓枠部3の内部空間に設置したカメラによって撮影された映像を確認する態様によるものであってもよい。尚、点検用覗き窓10の設置位置は監視目的に応じて設置可能な場所を適宜選択すればよく特に限定はされない。
【0051】
例えば、洗浄塔(湿式スクラバー)100の運転中に、内部の充填物等の状況を定期的且つ継続的に観察し、洗浄水等の水量や処理対象ガスの風量の調整変更等の対応を、適切な態様で適切な時期に実施することにより、長期に亘って操業の安全性を維持することができる。点検用覗き窓10を設置した洗浄塔(湿式スクラバー)100においては、この点検用覗き窓10を通して、上記のような定期的且つ継続的な観察を安全且つ十分に行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 外窓
11 ボルト孔
111 外窓固定用ボルト
12 ボルト収納開口
121 窓枠部固定用ボルト
2 内扉
21 開閉機構接合用片部
22 長孔
23 支持軸
3 筒状窓枠部
31 外側開口部
32 内側開口部
4 空気圧式ダンパー
5 吸排気部
6 外殻部
10 点検用覗き窓
100 洗浄塔(湿式スクラバー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6