(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】紙製品の製造中にパルプスラリの排水性能を高める方法およびその方法から製造される製品
(51)【国際特許分類】
D21H 21/10 20060101AFI20221109BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20221109BHJP
D21H 17/37 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
D21H21/10
D21H11/18
D21H17/37
(21)【出願番号】P 2018538522
(86)(22)【出願日】2015-10-12
(86)【国際出願番号】 US2015055155
(87)【国際公開番号】W WO2017065740
(87)【国際公開日】2017-04-20
【審査請求日】2018-10-12
(32)【優先日】2015-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518126384
【氏名又は名称】ソレニス テクノロジーズ、エル.ピー.
(73)【特許権者】
【識別番号】514158855
【氏名又は名称】ユー ピー エム キュンメネ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハリントン、ジョン、シー.
(72)【発明者】
【氏名】ルスヴァルディ、ケート、マリット
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、フシャン
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/154937(WO,A1)
【文献】特表2013-508568(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02319984(EP,A1)
【文献】特表2008-545892(JP,A)
【文献】特開平08-081896(JP,A)
【文献】特開2012-214943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/00 - 27/42
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと(b)少なくとも1つの会合性重合体とをパルプスラリに添加する段階を備える、パルプスラリの排水性能を高めるための方法であって、
前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと前記少なくとも1つの会合性重合体は、前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロース対前記少なくとも1つの会合性重合体が、2:1から10:1までの重量比で添加され、
前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースおよび前記少なくとも1つの会合性重合体の活性固形物が、前記パルプスラリの乾燥パルプの重量に基づいて、0.01重量%から1重量%の範囲で前記パルプスラリ中に存在し、
前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースは、カチオン電荷を有する誘導体化されたミクロ開繊化セルロースであり、任意の他のカチオン性添加剤とは別々に添加される、
方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと前記少なくとも1つの会合性重合体とを前記パルプスラリに添加する段階より前に、前記パルプスラリが抄紙機のウエットエンドに存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと前記少なくとも1つの会合性重合体が、混合物を形成するべく、前記パルプスラリに添加され、次に前記混合物を抄紙機に導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと前記少なくとも1つの会合性重合体の活性固形物が、前記パルプスラリの乾燥パルプの重量に基づいて
、0.01wt%か
ら0.5wt%までの範囲で前記パルプスラリに存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと前記少なくとも1つの会合性重合体の活性固形物が、前記パルプスラリの乾燥パルプの重量に基づいて
、0.01wt%か
ら0.15wt%までの範囲で前記パルプスラリに存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記会合性重合体は、数式(I)
【数I】
を有するアニオン性共重合体であって、
Bは1または複数のエチレン性不飽和非イオン性単量体を含む非イオン性重合体セグメントであり、Fは1または複数のエチレン性不飽和アニオン性単量体を含むアニオン性重合体セグメントであり、B:Fのモル百分率比は
、95:5か
ら5:95までの範囲内である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(a)セルロースパルプ、(b)少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと(c)少なくとも1つの会合性重合体とを備える、紙製品であって、
前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと前記少なくとも1つの会合性重合体は、前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロース対前記少なくとも1つの会合性重合体が、2:1から10:1までの重量比であり、
前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースおよび前記少なくとも1つの会合性重合体の活性固形物が、前記セルロースパルプの重量に基づいて、0.01重量%から1重量%の範囲で存在し、
前記少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースは、カチオン電荷を有する誘導体化されたミクロ開繊化セルロースである、
紙製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[参照による組み込みの宣言]
本願は、2015年10月12日に出願された米国特許出願第14/880,873号に基づく優先権を主張する。その全体がこれにより、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
[連邦支援の研究開発に関する記述]
当てはまらない。
【0002】
ここに開示される、および/または特許請求される1または複数の発明の概念は、概して、(a)少なくとも1つのミクロ開繊化セルロース(microfibrillated cellulose)と(b)少なくとも1つの会合性重合体または少なくとも1つの分岐または架橋共重合体とをパルプスラリに添加する段階により紙製品の製造中にパルプスラリの排水性能を高める方法に関する。この添加は、パルプスラリが繊維マットになる脱水段階の前に起こる。
【背景技術】
【0003】
抄紙機の排水性能を高めることは、製紙プロセスの最も重要なパラメータの1つである。製紙プロセスにおいて使用される抄紙機の生産性は、成形ワイヤ上の紙繊維(すなわち、「パルプスラリ」、「パルプ原料(pulp stock)」または「完成紙料(furnish)」)を含むスラリからの排水率により一般的に決定される。パルプスラリからの排水率はまた、単に「排水性能」と呼ばれる。排水率の性能が高まると、特定の時間枠内で製造されることが可能である紙の面積およびトン数の両方の観点から、製紙工場の生産性も高まる。向上した排水性能は、(i)抄紙機が速く動くことを可能にし得、(ii)製紙プロセスのドライエンドにおいて水を除去するべく必要とされる蒸気の量を減らし得、および/または(iii)より重い坪量を有する紙が製造されることを可能にし得る。 最近では、製紙プロセスのための排水性能を向上させるべく様々な試みがある。例えば、米国特許第4,388,150号、第4,753,710号および第5,185,206号は、(「微粒子」または「無機微粒子」と呼ばれる)無機材料と従来の高分子量水溶性の重合体に比べて向上した歩留りおよび排水効果を提供するための高分子量水溶性の天然または合成系重合体との組み合わせを使用することを説明している。
【0004】
米国特許第7,250,448号および第7,396,874号は、製紙プロセスにおいて、向上した歩留りおよび排水性能を提供するべく会合性重合体を生成するおよび/または使用する方法を開示している。これらの会合性重合体は、多数の異なる方法により作成され得る。
【0005】
米国特許第5,167,766号、第5,171,808号、第5,274,055号、第6,310,157号、第7,250,448号は、製紙プロセスにおいて、向上した歩留りおよび排水性能を提供するべく分岐または架橋(共)重合体を生成するおよび/または使用する方法を開示している。これらの分岐または架橋(共)重合体は、多数の異なる方法により作成され得る。
【0006】
米国特許第6,395,134号、第6,391,156号、第6,524,439号は、製紙プロセス中に、上で参照した無機微粒子と分岐または架橋重合体の組み合わせをパルプスラリに添加することにより、製紙プロセスについての歩留りおよび排水性能がさらに高められることを開示している。
【0007】
米国特許第6,602,994号および8,764,939号ならびに、国際公開WO2013/072550号および国際公開WO2012/098296号は、随意に、カチオン性重合体と共に排水向上剤として、様々な改質セルロース系重合体を使用することを開示している。特に、それらに開示されているのは、パルプスラリの排水性能を高めるための(ナノ開繊化された(nanofibrillated)カルボキシメチルセルロースとも呼ばれる)ミクロ開繊化されたカルボキシメチルセルロースの使用および/または製造である。
【0008】
しかしながら、パルプスラリの排水性能になされてきた全ての向上にも関わらず、製紙プロセスの全体の生産性を高めるべくさらなる向上の必要性が依然として存在する。(a)少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと(b)少なくとも1つの会合性重合体または少なくとも1つの分岐または架橋共重合体とをパルプスラリに添加することは、パルプスラリの排水性能を高め、それは製紙プロセスのための高められた生産性をもたらし得ることが、予期せず発見された。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念は、その応用に関して、以下の説明に記載されるあるいは図面に示される構造の詳細および構成要素または段階または方法の構成に限定されないことを理解されたい。ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念は、他の実施形態が可能であるまたは様々な仕方で実施あるいは実行されることが可能である。また、本明細書に採用される表現法および用語法は、説明目的のためのものであり、限定とみなされるべきではないことを理解されたい。
【0010】
特に本明細書に定義されない限り、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念に関連して使用される技術用語は、当業者により一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、特に文脈により必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0011】
本明細書に言及される全ての特許、公開された特許出願および非特許文献が、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念が関係する当業者の技術レベルを示している。本出願の任意の一部に参照される全ての特許、公開された特許出願および非特許文献が、各個々の特許または文献が参照により組み込まれることが具体的におよび個々に示される場合と同じ程度でそれらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0012】
本明細書に開示される物品および/または方法の全ては、本開示を考慮すると、過度の実験をせずに作成され得、実行され得る。ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の物品および方法は、好適な実施形態の観点から説明されているが、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に説明される物品および/または方法に、および段階に、または方法の段階の順序に、変形が適用されてよいことが当業者には明らかであろう。ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念を授けられる当業者に明らかである、全てのそのような同様の代替および修正は、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の精神、範囲および概念内であるとみなされる。
【0013】
本開示に従って利用されるとき、以下の用語は、特に示されない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0014】
「comprising(備える、有する、含む)」という用語と共に使用される場合の「a」または「an」という単語の使用は、「one(1つ)」を意味してよいが、「one or more(1または複数)」、「at least one(少なくとも1つ)」および「one or more than one(1または1より多い)」の意味とも矛盾していない。本開示は、代替物および「and/or(および/または)」のみを指す定義を支援するが、代替物が相互に排他的である場合にのみ、その代替物を指すことが明示的に示されない限り、「or(または)」という用語の使用は、「and/or(および/または)」を意味するべく使用される。本出願全体を通して、「about(約)」という用語は、値が、定量化デバイス、値を決定するべく採用されている方法、または調査対象間に存在するばらつきについての誤差の本質的なばらつきを含むことを示すべく使用される。限定としてではないが、例えば、「about(約)」という用語が利用される場合、指定値は、プラスマイナス12パーセントまたは11パーセントまたは10パーセントまたは9パーセントまたは8パーセントまたは7パーセントまたは6パーセントまたは5パーセントまたは4パーセントまたは3パーセントまたは2パーセントまたは1パーセント異なってよい。「at least one(少なくとも1つ)」という用語の使用は、1ならびに1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含むがそれらに限定されない、1より多い任意の量を含むと理解されるであろう。「at least one(少なくとも1つ)」という用語は、それが付される用語によって、100または1000またはそれより多くまで拡大してよい。加えて、より低いまたはより高い範囲も満足のいく結果を生成し得るので、100/1000という量は、限定とみなされない。加えて、「at least one of X,Y,and Z(X、YおよびZのうちの少なくとも1つ)」という用語の使用は、Xのみ、Yのみ、およびZのみ、ならびにX、YおよびZの任意の組み合わせを含むと理解されるであろう。序数についての用語法(すなわち、「first(第1)」、「second(第2)」、「third(第3)」、「fourth(第4)」など)の使用は、2またはそれより多い項目間を区別する目的のためのみであり、特に記載されない限り、任意の順序あるいは順番あるいは別のまたは任意の添加の順番を超える1つの項目に対する重要性を示唆することは意図されない。
【0015】
本明細書に使用されるように、「comprising(備える、有する、含む)」(ならびに「comprise(備える、有する、含む)」および「comprises(備える、有する、含む)」のようなcomprisingの任意の形態)、「having(有する)」(ならびに「have(有する)」および「has(有する)」のようなhavingの任意の形態)、「including(含む)」(ならびに「includes(含む)」および「include(含む)」のようなincludingの任意の形態)、または「containing(含む)」(ならびに「contains(含む)」および「contain(含む)」のようなcontainingの任意の形態)という単語は、包含的またはオープンエンドであり、追加的な、挙げられていない要素または方法の段階を除外しない。本明細書で使用される「or combinations thereof(またはこれらの組み合わせ)」という用語は、当該用語に先行する列挙された項目のあらゆる並べ替えおよび組み合わせを指す。例えば、「A,B,C,or combinations thereof(A、B、Cまたはこれらの組み合わせ)」は、A、B、C、AB、AC,BCまたはABCのうちの少なくとも1つ、および特定の文脈において順番が重要である場合はさらにBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABを含むことが意図される。この例を続けると、明示的に含まれるのは、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどのような1または複数の項目または用語の繰り返しを含む組み合わせである。当業者は、特に文脈から明らかでない限り、典型的に、任意の組み合わせの項目または用語の数に制限はないことを理解するであろう。
【0016】
本明細書で使用される「substantially(実質的に)」という用語は、続いて説明される事象または状況が、完全に起こること、または、続いて説明される事象または状況が、大部分またはかなりの程度において起こることを意味する。例えば、特定の事象または状況に関連付けられる場合、「substantially(実質的に)」という用語は、続いて説明される事象または状況が、少なくとも80%の割合で、または少なくとも85%の割合で、または少なくとも90%の割合で、または少なくとも95%の割合で起こることを意味する。
【0017】
「microfibrillated cellulose(ミクロ開繊化セルロース)」という用語は、当業者に知られており、文献内に十分に説明されているが、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の目的のために、ミクロ開繊化セルロースは、両方ともセルロース原材料に由来する、分離したセルロースのミクロ開繊および/またはセルロースのミクロ開繊束のいずれかの形態のミクロ開繊から成るセルロースとして定義される。
【0018】
ミクロ開繊のアスペクト比は、典型的に高く、個々のミクロ開繊の長さは、1マイクロメートルより長くてよく、直径は、数平均直径が典型的に20nmより小さい、約5から60nmの範囲内であってよい。ミクロ開繊束の直径は、1ミクロンより大きくてよいが、しかしながら通常1より小さい。
【0019】
非限定的な一例において、ミクロ開繊化セルロースは、少なくとも部分的にナノセルロースを備えてよい。ナノセルロースは主に、100nmより小さい直径およびミクロン範囲内またはそれより短くてよい長さを有する、ナノサイズの開繊を備えてよい。最小のミクロ開繊は、元素開繊(elemental fibrils)と呼ばれるものと同様であり、その直径は典型的に2から4nmである。もちろん、ミクロ開繊およびミクロ開繊束の大きさおよび構造は、ミクロ開繊化セルロースを生成する方法に加え、使用される原材料による。それにもかかわらず、当業者は、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の文脈において「microfibrillated cellulose(ミクロ開繊化セルロース)」の意味を理解するであろうことが予期される。
【0020】
本明細書に使用されるように、「microfibrillated cellulose(ミクロ開繊化セルロース)」は、「microfibrillar cellulose(ミクロ開繊のセルロース)」、「nanofibrillated cellulose(ナノ開繊化セルロース)」、「nanofibril cellulose(ナノ開繊セルロース)」、「nanofibers of cellulose(セルロースのナノファイバー)」、「nanoscale fibrillated cellulose(ナノスケールの開繊化セルロース)」、「microfibrils of cellulose(セルロースのミクロ開繊)」および/または単に「MFC」として交換可能に使用され得る。追加的に、本明細書に使用されるように、「microfibrillated cellulose(ミクロ開繊化セルロース)」と交換可能である、上に列挙された用語は、完全にミクロ開繊化されたセルロースまたは実質的にミクロ開繊化されたが、本明細書に説明されるおよび/または特許請求されるような、ミクロ開繊化セルロースの利点を妨げないレベルの量の非ミクロ開繊化セルロースを依然として含むセルロースを指してよい。
【0021】
本明細書に使用されるように、「copolymer(共重合体)」という用語は、2またはそれより多い異なる単量体単位を備える重合体組成物として定義される。
【0022】
本明細書に使用されるように、「associative polymer(会合性重合体)」または「associative copolymer(会合性共重合体)」という用語は、ジブロック重合体界面活性剤およびトリブロック重合体界面活性剤から選択される有効な量の少なくとも1つの乳化界面活性剤により提供される1または複数の重合体として定義され、ジブロック界面活性剤またはトリブロック界面活性剤対単量体の比は、少なくとも約0.03であり、pHは約2から約7まで調整され、追加的な架橋剤はシステムに添加されず、当該会合性重合体は、0.75より大きい0.01M NaClで決定されるハギンス定数(k')を有し、175Paより大きい4.6Hzにおける1.5wt.%活性重合体溶液の貯蔵弾性率(G')を有する。
【0023】
本明細書に使用されるような「branched or crosslinked copolymer(分岐または架橋共重合体)」というフレーズは、少なくとも1つの非イオン性単量体、少なくとも1つのイオン性単量体および分岐または架橋剤を備える1または複数の共重合体を対象とする。
【0024】
本明細書に使用されるような「active(活性)」および「active solids(活性固形物)」という用語は、関数である組成物(例えば、添加剤、反応物および/または生成物)の不揮発性重量百分率として定義される。典型的に、活性固形物または単に「actives(活性)」は、組成物の製造業者により示される。本明細書に説明される例における材料のための(例えば、ミクロ開繊化セルロース、会合性重合体および/または分岐または架橋共重合体のための)活性固形分が必要な場合に提供される。特に、ミクロ開繊化セルロースのための活性固形分は、周知の均質化法を使用してミクロ開繊化セルロースを形成する場合に、続いてせん断を行う乾燥セルロースの量である。追加的に、会合性重合体または分岐または架橋共重合体のための活性固形分は、組成物または最終生成物内の重合系重合体の量である。しかしながら、1または複数の会合性重合体または分岐または架橋共重合体のための活性固形分は、例えば、同じく組成物または最終生成物内に存在している界面活性剤に起因して、組成物または最終生成物内の不揮発性材料の全体量に対応しない。
【0025】
次に、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念をみてみると、それらの特定の実施形態は、紙製品を製造する方法を対象とし、その方法は製紙プロセス中にパルプスラリの排水性能を予期せず高めることが発見された。ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の特定の他の実施形態は、ここに開示されるおよび/または特許請求される方法により製造された1または複数の紙製品を対象とする。
【0026】
一実施形態において、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念は、(a)少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと(b)少なくとも1つの会合性重合体または少なくとも1つの分岐または架橋共重合体とをパルプスラリに添加する段階を備える、紙製品を製造する方法を対象とする。紙製品は、紙、板紙および/または厚紙から成る群から選択されてよい。紙製品はまた、当業者によって決定されるような、開示されるおよび/または特許請求される1または複数の方法により製造される任意の他の紙製品であってよい。
【0027】
パルプスラリは、例えば、木質材料、植物系材料および/またはリサイクル紙製品を含むがそれらに限定はされない、様々なソースから得られるパルプを備えてよい。一実施形態において、パルプスラリは、木材源から得られるパルプを備える。パルプスラリは、機械プロセス、熱機械プロセス、化学熱機械プロセス、および/または化学プロセスのうちの少なくとも1つを使用して得られるパルプを備えてよい。化学プロセスは、例えば、クラフトプロセスおよび/または亜硫酸法を含んでよいがそれらに限定はされない。
【0028】
ミクロ開繊化セルロース
少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースは、例えば、(a)硬材および/または軟材のような木質原材料、(b)農作物残さ、草、藁、樹皮、穎花、野菜、綿、トウモロコシ、小麦、オート麦、ライ麦、大麦、米、亜麻、大麻、マニラ麻、サイザル麻、ケナフ、ジュート、ラミー、バガス、竹、アシ、藻類、菌類、および/またはこれらの組み合わせのような植物系原材料、および/または(c)例えば、それらに限定はされないが、新聞紙および/または他の紙製品からのリサイクル繊維を含む、それらに限定はされないが、1または複数のセルロース含有原材料から形成されてよい。
【0029】
一実施形態において、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースは、コットンリンタから生成される。コットンリンタは、概してより高い純度のセルロースを含み、それらの繊維内により高い分子量のセルロースを有する。別の実施形態において、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースは、木材パルプから生成される。木材パルプは、機械プロセスおよび/または化学プロセスにより生成されてよい。一実施形態において、木材パルプは、リグニンの少なくとも一部および木材パルプ源由来の他の不純物が除去されるようなクラフトパルププロセスにより生成される。
【0030】
一実施形態において、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースを生成するべく使用される木材パルプは、軟木からのものである。概して、軟木の繊維は、硬木および/またはリサイクル紙製品の繊維より高い分子量を有する。
【0031】
少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースは、当業者に知られているであろうような多糖類の粒径を減らす任意の方法により生成されてよい。しかしながら、多糖類内に高いアスペクト比を保持しつつ粒径を減らすための方法が好ましい。特に、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースは、研削、超音波処理、均質化、衝突混合機、熱、蒸気爆発、加圧‐減圧サイクル、凍結融解サイクル、衝撃、(ディスクグラインダのような)研削、ポンピング、混合、超音波、マイクロ波爆発および/または粉砕から成る群から選択される方法により生成されてよい。これらの様々な組み合わせが、その後に均質化が続く粉砕などで使用されてもよい。一実施形態において、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースは、1または複数のセルロース含有原材料中のセルロース繊維の結晶領域の一部が開繊化されるように、1または複数のセルロース含有原材料に水性懸濁液中で十分な量のせん断を行うことにより形成される。
【0032】
一実施形態において、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースは、本明細書に後に説明される会合性重合体の1または複数の存在下で、上記に挙げた方法のいずれかにより生成されてよい。代替的におよび/または追加的に、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースは、本明細書で後に説明される会合性重合体の1または複数と混ぜ合わせるより前に、上記に挙げた方法のいずれかにより生成されてよい。
【0033】
ミクロ開繊化セルロースは、(例えば、ゲル形態またはゼラチンの形態の)分散体、希釈した分散体および/または懸濁液中のうちの少なくとも1つの形態であってよい。
【0034】
誘導体化されたミクロ開繊化セルロース
一実施形態において、ミクロ開繊化セルロースは、誘導体化されたミクロ開繊化セルロースであってよく、誘導体化されたミクロ開繊化セルロースのミクロ開繊化セルロース繊維は、アニオン電荷および/またはカチオン電荷を有する。誘導体化されたミクロ開繊化セルロースは、(a)ミクロ開繊化セルロースを誘導体化することおよび/または(b)既に誘導体化されたセルロースを開繊化することにより生成されてよい。別の実施形態において、1または複数のセルロース含有原材料のセルロースは、実質的に同時に開繊化および誘導体化され得る。
【0035】
誘導体化されたセルロース(または誘導体化されたミクロ開繊化セルロース)の官能基化度は、置換度または「DS」と呼ばれ、それはセルロース鎖のβ‐アンヒドログルコース単位あたりの官能基化の平均数である。換言すれば、本明細書に使用されるような、官能基化度は、セルロース上に存在するアニオン性置換基および/またはカチオン性置換基の量であり、置換度は、セルロース鎖のβ‐アンヒドログルコース単位あたりのアニオン性置換基および/またはカチオン性置換基の平均数である。誘導体化されたセルロースおよび/または誘導体化されたミクロ開繊化セルロースのDSを決定する方法が、米国特許第6,602,992号に開示されており、それは、これにより、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
誘導体化されたセルロースのDSは、約0.02から0.5まで、または約0.03から約0.4まで、または約0.05から約0.35まで、または約0.1から約0.35まで、または約0.1から約0.25までの範囲内であってよい。特定の理論に縛られることは意図しないが、(i)この範囲より下のDS値は、開繊化中にせん断するべくセルロースの感受性を高めるための官能基化の不十分な密度を提供し、(ii)この範囲より上のDS値は、ほとんどまたは完全に水溶性のセルロースを提供し、それにより分散体の形成を妨げることが予測される。
【0037】
任意の適切なプロセスが置換基をセルロース上に配置するべく使用されてよい。本明細書に使用されるように、「derivatization process(誘導体化プロセス)」は、一般的なプロセスを指し、これによりセルロース(またはミクロ開繊化セルロース)は、約0.02から0.5まで、または約0.03から約0.4まで、または約0.05から約0.35まで、または約0.1から約0.35まで、または約0.1から約0.25までの範囲内のDSが達成されるように、アニオン性置換基および/またはカチオン性置換基をその上に有するべく変更される。誘導体化プロセスは、(i)セルロースとアニオン性置換基および/またはカチオン性置換基との間の共有結合の形成をもたらす化学反応および/または(ii)物理吸着に起因してよい。
【0038】
非限定的な一実施形態において、1または複数のセルロース含有原材料のセルロースは、アニオン性ミクロ開繊化セルロースおよび/またはカチオン性ミクロ開繊化セルロースを生成するように、セルロース繊維の開繊化より前に全体的な電荷をセルロース繊維に与えるべく誘導体化されてよい。特定の理論に縛られることは意図しないが、アニオン電荷またはカチオン電荷のいずれかを有する誘導体化されたセルロースは、(i)せん断に必要とするエネルギーがより小さく、それによりミクロ開繊化による影響を受けやすい、および/または(ii)繊維の一部の結晶化度における破壊を引き起こす所与のセルロース繊維上の同様に帯電した部分間の静電反発力を生成し、それによりセルロース繊維のミクロ開繊化を促進することが予測される。
【0039】
一実施形態において、セルロースは、1または複数の誘導体化試薬の添加より前に塩基によって処理される。非限定的な一例において、塩基は水酸化ナトリウムであってよい。特定の理論に縛られることは意図しないが、塩基によるセルロースの処理は、セルロース内の繊維束を膨張させ、それは次に、官能基化され得るセルロース繊維の一部を露出することが予測される。時間、温度および塩基の量は、誘導体化されたミクロ開繊化セルロースを形成するべくせん断するためのセルロースの官能基化およびその後の感受性に影響し得る全ての要因である。
【0040】
一実施形態において、少なくとも1つの反応性カチオン性誘導体化試薬によってセルロースを処理することにより、セルロースのためのカチオン電荷が得られてよい(すなわち、1または複数のカチオン性置換基がセルロースに添加されてよい)。カチオン性誘導体化試薬は、例えば、2‐ジメチルアミノエチルクロリド、2‐ジエチルアミノエチルクロリド、3‐ジメチルアミノプロピルクロリド、3‐ジエチルアミノプロピルクロリド、3‐クロロ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドおよびこれらの組み合わせを含んでよいがそれらに限定はされない。一実施形態において、カチオン性誘導体化試薬は、3‐クロロ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドである。
【0041】
一実施形態において、酸化剤によってセルロースを直接酸化させることにより、セルロースのためのアニオン電荷が得られてよい(すなわち、1または複数のアニオン性置換基がセルロースに添加されてよい)。酸化は、概してセルロースのβ‐アンヒドログルコース単位のC‐6位で起こる。一実施形態において、酸化剤は、水溶性または1または複数の有機溶媒に溶けるものであってよい。
【0042】
酸化剤は、1または複数のN‐オキシドであり得る。N‐オキシドは、例えば、2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐1‐イルオキシル、さもなければ単に「TEMPO」と呼ばれるものであり得るがそれに限定はされない。
【0043】
別の実施形態において、セルロースのためのアニオン電荷は、例えば、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ブロモ酢酸、ジブロモ酢酸、これらの塩および/またはこれらの組み合わせを含むがそれらに限定はされない、1または複数のアニオン性誘導体化試薬とセルロース懸濁液の反応により得られてよい。一実施形態において、アニオン性誘導体化試薬はクロロ酢酸である。一実施形態において、誘導体化されたセルロースは、カルボキシメチルセルロースである。カルボキシメチルセルロースを生成するための方法の一例が、上記で参照により本明細書にその全体が組み込まれた米国特許第6,602,994号に開示されている。
【0044】
上述のミクロ開繊化セルロースの実施形態のいずれか1つの活性固形物の総量が、乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の約0.2から約20lbs.(90.7184gから9.0718kg)または乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の約0.3から約15lbs.(136.0777gから6.8038kg)または乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の約0.4から約10lbs.(181.4369gから4.5359kg)または乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の約0.5から約5lbs.(226.7961gから2.2679kg)の範囲内でパルプスラリに添加されてよい。
【0045】
会合性重合体
1または複数の会合性重合体は、以下の数式Iにより表される水溶性共重合体であってよい。
【数I】
【0046】
数式Iを参照すると、Bは、1または複数のエチレン性不飽和非イオン性単量体の重合から形成される非イオン性重合体セグメントであり、Fは、1または複数のエチレン性不飽和アニオン性単量体および/またはエチレン性不飽和カチオン性単量体の重合から形成されるアニオン性重合体セグメント、カチオン性重合体セグメントまたはアニオン性重合体セグメントおよびカチオン性重合体セグメントの組み合わせであり、「co」は、2またはそれより多い単量体成分の不特定の構成を有する重合体システムについての表示である。非イオン性単量体、アニオン性単量体および/またはカチオン性単量体の1種類より多くが数式I内に存在してよいことも理解されるべきである。
【0047】
数式I内の重合体セグメントBを形成するエチレン性不飽和非イオン性単量体は、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N‐メチルアクリルアミドのようなN‐アルキルアクリルアミド、N,N‐ジメチルアクリルアミドのようなN,Nジアルキルアクリルアミド、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、N‐ビニルメチルアセトアミド、N‐ビニルホルムアミド、N‐ビニルメチルホルムアミド、ビニルアセテート、N‐ビニルピロリドン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび/またはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはこれらの任意の組み合わせであり得るがそれらに限定はされない。
【0048】
一実施形態において、数式I内の非イオン性重合体セグメントBは、代替的にまたは追加的に、より高い疎水性を有する1または複数の非イオン性単量体を備え得、「より高い疎水性」は、水溶液内で低下した溶解性を有する非イオン性単量体を示すべく使用される。非限定的な一例において、「より高い疎水性」の非イオン性単量体は、非イオン性単量体が水に溶けないような水溶液内の低下した溶解性を有してよい。これらの「より高い疎水性」の非イオン性単量体は、当業者により認識されるであろうように「重合性界面活性剤」および/または「サーフマ」とも呼ばれる。
【0049】
重合性界面活性剤(または「サーフマ」)は、例えば、(a)ペンダント芳香族基および/またはアルキル基および/または(b)数式CH2=CR'CH2OAmRにより表されるエーテルのうちの少なくとも1つを有するアルキルアクリルアミドおよび/またはエチレン性不飽和単量体を含んでよいがそれらに限定はされず、数式において(i)R'は水素またはメチル基であり(ii)Aは例えば、これらに限定はされないが、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドのような1または複数のポリエーテルを備える重合体であり(iii)mはポリエーテル重合度であり(iv)Rは例えば、これらに限定はされないが、ビニルアルコキシレート、アリルアルコキシレート、アリルフェニルポリオールエーテルスルフェートおよび/またはこれらの組み合わせから成る群から選択される疎水性基であってよい。非限定的な一例において、重合性界面活性剤は、メチルメタクリレート、スチレン、t‐オクチルアクリルアミドおよび/またはClariant社(ドイツ、フランクフルト)からEmulsogen(登録商標)APG2019として市販されているアリルフェニルポリオールエーテルスルフェートのうちの少なくとも1つであってよい。
【0050】
一実施形態において、数式IのFは、1または複数のエチレン性不飽和アニオン性単量体の重合から形成されるアニオン性重合体セグメントである。アニオン性単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミドグリコール酸、2‐アクリルアミド‐2‐メチル‐1‐プロパンスルホン酸、3‐アリロキシ‐2‐ヒドロキシ‐1‐プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンホスホン酸および/またはこれらの組み合わせの遊離酸および塩を含んでよいがそれらに限定はされない。
【0051】
一実施形態において、数式IのFは、1または複数のエチレン性不飽和カチオン性単量体の重合から形成されるカチオン性重合体セグメントである。カチオン性単量体は、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのようなジアリルジアルキルアンモニウムハライド、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレートおよび/または塩およびそれらの4級塩のようなジアルキルアミノアルキル化合物の(メタ)アクリレート、N,N‐ジメチルアミノエチルアクリルアミドおよび/または塩およびそれらの4級塩のようなN,N‐ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよび/またはこれらの組み合わせの遊離塩基または塩を含んでよいがそれらに限定はされない。
【0052】
Fの組成物によって、会合性重合体は、非イオン性の、カチオン性の、アニオン性のまたは(カチオン電荷もアニオン電荷も含む)両性の水溶性共重合体であり得る。
【0053】
一実施形態において、会合性重合体は、アニオン性共重合体であってよく、Bは関連する上記実施形態のいずれか1つに定義されるように、非イオン性重合体セグメントであり、Fは上記に定義されるように、アニオン性重合体セグメントである。非イオン性単量体対アニオン性単量体(すなわちB:F)のモル比は、約95:5から約5:95まで、または約75:25から約25:75まで、または約65:35から約35:65まで、または約60:40から約40:60までの範囲内であってよい。その際、BおよびFのモル百分率は合計100%となる必要がある。非イオン性単量体および/またはアニオン性単量体の1種類より多くが、それらのそれぞれのセグメントであるBおよびF内に存在してよいことが理解されるべきである。
【0054】
アニオン性共重合体の物理的特徴は、(i)0.01M NaClの0.0025wt%から0.025wt%の間で決定されるそれらのハギンス定数(k')が、0.75より大きい、または0.9より大きい、または1.0より大きい、および(ii)4.6Hzにおける1.5wt%活性重合体溶液の貯蔵弾性率(G')が、175Paより大きい、または190Paより大きい、または195Paより大きい、または205Paより大きい、という点で固有である。
【0055】
一実施形態において、会合性重合体はアニオン性共重合体であり、非イオン性重合体セグメントのBは、アクリルアミドの重合単量体を備え、アニオン性重合体セグメントのFは、アクリル酸の重合塩(または遊離酸)を備え、非イオン性重合体セグメント対アニオン性重合体セグメント(B:F)のモル百分率比は、約75:25から約25:75までである。
【0056】
別の実施形態において、会合性重合体は、カチオン性共重合体であってよく、Bは関連する上記実施形態のいずれか1つに説明されるように、非イオン性重合体セグメントであり、Fは上述のように、カチオン性重合体セグメントである。非イオン性単量体対カチオン性単量体(すなわちB:F)のモル比は、約99:1から50:50まで、または約95:5から50:50まで、または約95:5から約75:25まで、または約90:10から約65:35まで、または約85:15から約60:40まで、または約80:20から約50:50までの範囲内であってよい。その際、BおよびFのモル百分率は合計100%となる必要がある。非イオン性単量体および/またはカチオン性単量体の1種類より多くが、それらのそれぞれのセグメントであるBおよびF内に存在してよいことが理解されるべきである。
【0057】
さらに別の実施形態において、会合性重合体は両性共重合体であってよく、Bは関連する上記実施形態のいずれか1つに説明されるように、非イオン性重合体セグメントであり、Fは個々に上述のように、1または複数のエチレン性不飽和アニオン性単量体およびエチレン性不飽和カチオン性単量体の重合から形成されるアニオン性重合体セグメントおよびカチオン性重合体セグメントの組み合わせである。両性共重合体内のアニオン性単量体、カチオン性単量体および非イオン性単量体の各々の最少量は、両性共重合体を形成するべく使用される単量体の総量の1%である。非イオン性単量体、アニオン性単量体またはカチオン性単量体の最大量は、両性共重合体を形成するべく使用される単量体の総量の98%である。一実施形態において、アニオン性単量体、カチオン性単量体および非イオン性単量体のいずれかの最少量は、両性共重合体を形成するべく使用される単量体の総量の5%または7%または10%である。その際、アニオン性単量体、カチオン性単量体および非イオン性単量体のモル百分率は、合計100%となる必要がある。非イオン性単量体、アニオン性単量体および/またはカチオン性単量体の1種類より多くがそれらのそれぞれのセグメントであるBおよびF内に存在してよいことが理解されるべきである。
【0058】
カチオン性共重合体および両性共重合体の物理的特徴は、(i)0.01M NaClの共重合体の0.0025wt%から0.025wt%の間で決定されるそれらのハギンス定数(k')が、0.5より大きい、または0.6より大きい、または0.9より大きい、または1.0より大きい、および(ii)6.3Hzにおける1.5wt.%活性重合体溶液の貯蔵弾性率(G')が、10Paより大きい、または25Paより大きい、または50Paより大きい、または100Paより大きい、または175Paより大きい、または200Paより大きい、という点で固有である。
【0059】
ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の一態様において、数式Iにより表されるような、会合性重合体を構成する1または複数の水溶性共重合体は、逆エマルション(油中水型)重合技術により調製される。それらの各々がこれにより、その全体が参照により組み込まれる、例えば、米国特許第3,284,393号ならびに再発行米国特許第28,474号および28,576号に説明されているように、そのような技術は当業者に知られている。
【0060】
逆エマルション(油中水型)重合プロセスは、(1)1または複数のエチレン性不飽和非イオン性単量体、エチレン性不飽和カチオン性単量体および/またはエチレン性不飽和アニオン性単量体の水溶液を調製すること(これらの非限定的な例が上述されている)、(2)逆単量体エマルションを形成するべく、適切な乳化界面活性剤または乳化界面活性剤の混合物を含む炭化水素液と当該水溶液を接触させること、(3)逆単量体エマルションに遊離ラジカル重合を行うこと、および随意に、(4)水に添加される場合に、エマルションの反転を高めるべく1または複数のブレーカ界面活性剤(breaker surfactants)を添加することを概して備える。
【0061】
エマルションの重合は、当業者に知られている任意の手法で実行されてよい。開始は、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物、ジラウリルペルオキシドのような有機過酸化物等を含む様々な熱開始剤によってもたらされてよい。重合はまた、「酸化還元(redox)」すなわち酸化還元のペアに影響を受けてよい。酸化剤は、例えば、ジラウリルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシドおよび/または過酸化水素のような過酸化物を含み得るがそれらに限定はされず、還元剤は、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムおよび/または硫酸銅のような遷移金属を含み得るがそれらに限定はされない。重合はまた、光化学照射プロセス、照射により、またはコバルト60線源による電離放射線により、もたらされてよい。
【0062】
好適な開始剤は、油溶性の熱開始剤である。典型的な非限定的な例は、2,2'-アゾビス‐(2,4‐ジメチルペンタンニトリル)、2,2'‐アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'‐アゾビス‐(2,‐メチルブタンニトリル)、1,1'‐アゾビス‐(シクロヘキサンカルボニトリル)、ベンゾイルペルオキシドおよびジラウリルペルオキシドを含む。
【0063】
当業者に知られている連鎖移動剤のいずれかが分子量を調整するべく使用されてよい。それらは、例えば、イソプロパノールのような低級アルキルアルコール、アミン、メルカプトエタノールのようなメルカプタン、亜リン酸エステル、チオ酸、アリルアルコール等を含むが、これらに限定はされない。
【0064】
水相はまた、所望のように従来の添加剤を備えてよい。例えば、混合物は、上述のようなキレート剤、pH調整剤、開始剤、連鎖移動剤および/または他の従来の添加剤を含んでよい。水溶性共重合体の調製のために、水溶液のpHは、2から7まで、または3から7まで、または4から6までの範囲内である。
【0065】
炭化水素液は、直鎖炭化水素、分岐鎖炭化水素、飽和環状炭化水素、芳香族炭化水素および/またはこれらの組み合わせを備えてよい。
【0066】
逆エマルションを形成するべく使用される乳化界面活性剤または乳化界面活性剤の混合物は、結果として生じる会合性重合体に影響を与える。逆エマルション(油中水型)重合プロセスで使用されるエマルション界面活性剤は概して当業者に知られている。そのような界面活性剤は、典型的に、全体的な組成に依存する親水性親油性バランス(HLB)の値の範囲を有する。1または複数の乳化界面活性剤の選択および量は、重合のための逆単量体エマルションをもたらすべく選択される。エマルション界面活性剤の1または複数は、特定のHLB値を得るべく選択される。
【0067】
一実施形態において、乳化界面活性剤または乳化界面活性剤の混合物は、本明細書で「1または複数の第1乳化界面活性剤」とも呼ばれる、少なくとも1つのジブロック重合体界面活性剤および/またはトリブロック重合体界面活性剤を備えてよい。必要な量で使用される場合、ジブロック重合体乳化界面活性剤およびトリブロック重合体乳化界面活性剤は、それらの各々が本明細書にその全体が参照により組み込まれる、例えば、国際公開WO03/050152号ならびに米国特許第7,250,448号および第7,396,874号に開示されているような固有の特徴を有する別個の重合体および/または共重合体をもたらす。
【0068】
ジブロック重合体界面活性剤およびトリブロック重合体界面活性剤は、例えば、Croda社(デラウェア州、ニューカッスル)から入手可能なハイパーマ(Hypermer)(登録商標)B246SFのような脂肪酸およびポリエチレンオキシドのポリエステル誘導体に基づくジブロック共重合体およびトリブロック共重合体、ポリイソブチレン無水コハク酸およびポリエチレンオキシドに基づくジブロック共重合体およびトリブロック共重合体、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドとエチレンジアミンの反応生成物、および/またはこれらの組み合わせを含み得るがそれらに限定はされない。
【0069】
一実施形態において、ジブロック重合体界面活性剤およびトリブロック重合体界面活性剤は、脂肪酸およびポリエチレンオキシドのポリエステル誘導体に基づく。別の実施形態において、乳化界面活性剤は、少なくとも1つのトリブロック重合体界面活性剤を備え、少なくとも1つのトリブロック重合体界面活性剤は、2つの疎水性領域および1つの親水性領域を備え、すなわち、トリブロック重合体界面活性剤は、「疎水性‐親水性‐疎水性」構造を備える。
【0070】
使用されるジブロック重合体界面活性剤および/またはトリブロック重合体界面活性剤の量は、(重量パーセントに基づいて)会合性重合体を形成するべく使用される単量体の量に依存する。ジブロック重合体界面活性剤および/またはトリブロック重合体界面活性剤対単量体の比は、約3対100、または約4対100、または約5対100、または約6対約100である。
【0071】
一実施形態において、本明細書で「第2乳化界面活性剤」と呼ばれる、1または複数の追加的な乳化界面活性剤が、前に説明された「第1乳化界面活性剤」とともに添加され得る。「第2乳化界面活性剤」は、例えば、商標名アトラス(Atlas)(登録商標)G‐946でCroda社(デラウェア州、ニューカッスル)から市販されているソルビタンモノオレートのようなソルビタン脂肪酸エステル、エトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物および/またはプロピレンオキシド付加物、長鎖アルコールまたは脂肪酸のエチレンオキシド付加物および/またはプロピレンオキシド付加物、混合エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、アルカノールアミド、スルホサクシネートおよびこれらの組み合わせを含み得るがそれらに限定はされない。(重量パーセントに基づく)第2乳化界面活性剤対単量体の比は、約3対約100、または約4対約100、または約5対約100、または約6対約100である。
【0072】
ブレーカ界面活性剤は、反転を促進するべくエマルションに添加され得る追加的な界面活性剤である。ブレーカ界面活性剤は、例えば、エチレンオキシド(EO)/プロピレンオキシド(PO)ジブロック(AB)およびトリブロック(ABAまたはBAB)共重合体、エトキシル化アルコール、アルコールエトキシレート、ソルビタンのエトキシル化エステル、脂肪酸のエトキシル化エステル、エトキシル化脂肪酸エステルおよびソルビトールおよび脂肪酸のエトキシル化エステル、およびこれらの組み合わせを含み得るがそれらに限定はされない。
【0073】
逆エマルションの重合は、当業者に知られている任意の手法で実行されてよい。そのような例は、例えば、Allcock and Lampe,Contemporary Polymer Chemistry,(Englewood Cliffs,N.J.,PRENTICE-HALL,1981),chapters 3-5を含む、多くの参照文献で見られ得るがそれらに限定はされない。
【0074】
会合性重合体は、水溶液、乾燥固形粉末および/または分散体の形態として、上述の逆エマルション(油中水型)重合プロセスにより生成される独自のエマルション形態を含む多数の物理的形態でパルプスラリに提供されてよい。一実施形態において、会合性重合体または会合性重合体エマルションは、0.1から1wt%の活性会合性重合体の水溶液を備える会合性重合体の希釈溶液を生成するべく希釈される。
【0075】
会合性重合体は、凝集を達成するのに有効な任意の量でパルプスラリに添加されてよい。一実施形態において、上述のような、1または複数の会合性重合体の量は、乾燥パルプのトンあたりの1または複数の活性会合性重合体の0.05lbs.(22.6796g)より大きい、または乾燥パルプのトンあたりの1または複数の活性会合性重合体の約0.02から約2lbs.(9.0718gから907.1847g)、または乾燥パルプのトンあたりの活性会合性重合体の約0.05から約1lbs.(22.6796gから453.5923g)の量でパルプスラリに添加されてよい。
【0076】
分岐または架橋共重合体
分岐または架橋共重合体は、少なくとも1つの非イオン性単量体、少なくとも1つのイオン性単量体および少なくとも1つの分岐または架橋剤の1または複数の共重合体であってよい。さらに、1または複数のイオン性単量体は、アニオン性単量体および/またはカチオン性単量体のうちの少なくとも1つであってよい。同じ分岐または架橋共重合体内でのアニオン性単量体とカチオン性単量体の両方の使用は、両性の材料をもたらす。分岐または架橋共重合体は、典型的に、アニオン性、カチオン性および/または非イオン性であり得るエチレン性不飽和単量体の重合により形成される。当業者に知られている他の重合方法が使用され得るが、逆エマルション重合は、典型的に、これらの材料を調製するべく使用される。
【0077】
1または複数の分岐または架橋共重合体を調製するのに使用される1または複数のエチレン性不飽和非イオン性単量体は、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N‐ジアルキルアクリルアミド、N‐アルキルアクリルアミド、N‐ビニルメタアセトアミド、N‐ビニルメチルホルムアミド、N‐ビニルピロリドンおよび/またはこれらの組み合わせを含むがそれらに限定はされない。
【0078】
1または複数の分岐または架橋共重合体を調製するのに使用される1または複数のアニオン性単量体は、例えば、2‐アクリルアミド‐2‐プロパン‐スルホン酸のような、炭素原子数1から6のアルキル基である、アクリル酸、メタクリル酸、2‐アクリルアミド‐2‐アルキルスルホン酸およびそれらのアルカリ塩および/またはこれらの組み合わせを含むがそれらに限定はされない。一実施形態において、1または複数のアニオン性単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸および/またはこれらの組み合わせの塩または酸であり得る。塩を備える1または複数のアニオン性単量体は、カチオンとしてナトリウムを有してよい。
【0079】
1または複数の分岐または架橋共重合体を調製するのに使用される1または複数のカチオン性単量体は、例えば、アクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリルアミド‐プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3‐アクリルアミド‐プロピルトリメチルアンモニウム‐2‐ヒドロキシプロピルアクリレートメトスルフェート、トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートメトスルフェート、1‐トリメチルアンモニウム‐2‐ヒドロキシプロピル‐メタクリレートメトスルフェート、メタクリロキシエチルトリ‐メチルアンモニウムクロリドおよび/またはこれらの組み合わせの遊離塩基または塩を含むがそれらに限定はされない。
【0080】
1または複数の分岐または架橋共重合体を構成するこれらのエチレン性不飽和アニオン性単量体、エチレン性不飽和カチオン性単量体およびエチレン性不飽和非イオン性単量体は、3種類の単量体が任意の比で存在する状態で、アニオン性共重合体、カチオン性共重合体および/または両性共重合体を形成するべく重合されてよい。一実施形態において、アクリルアミドは、非イオン性単量体である。
【0081】
1または複数の分岐または架橋共重合体を形成するための単量体の重合は、架橋組成物を形成するための少なくとも1つの多官能性架橋剤の存在下で行われてよい。多官能性架橋剤は、少なくとも2つの二重結合、または1つの二重結合および反応基、または2つの反応基を有する分子を備える。少なくとも2つの二重結合を含む多官能性架橋剤は、例えば、N,N‐メチレンビスアクリルアミド、N,N‐メチレンビスメタクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、N‐ビニルアクリルアミド、ジビニルベンゼン、トリアリルアンモニウム塩、N‐メチルアリルアクリルアミドおよび/またはこれらの組み合わせを含むがそれらに限定はされない。少なくとも1つの二重結合および少なくとも1つの反応基を含む多官能性架橋または分岐剤は、例えば、グリシジルアクリレート、アクロレイン、メチロールアクリルアミドおよび/またはこれらの組み合わせを含むがそれらに限定はされない。少なくとも2つの反応基を含む多官能性分岐剤は、例えば、グリオキサールのようなアルデヒド、ジエポキシ化合物、エピクロロヒドリンおよび/またはこれらの組み合わせを含むがそれらに限定はされない。架橋剤は、架橋組成物を確かなものとするべく十分な量で使用される。1または複数の分岐または架橋共重合体の非限定的な例が、米国特許第5,171,808号および第5,167,766号に開示されている。
【0082】
パルプスラリに1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の会合性重合体を添加する方法
一実施形態において、上述の1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の会合性重合体は、製紙プロセス中にパルプスラリの排水性能を高めるべく抄紙機のウエットエンドより前におよび/またはその間にパルプスラリに添加されてよい。特定の一実施形態において、上述の1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の会合性重合体は、脱水段階の前にパルプスラリに添加され、これによりパルプスラリが繊維マットになる。概して、歩留りおよび排水向上剤が、(「パルプ原料(pulp stock)」とも呼ばれる)パルプスラリが「薄い原料(thin stock)」として知られている、その最大希釈レベルの状態である、抄紙機の形成部の近くで、パルプスラリに添加される。
【0083】
1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび/または1または複数の会合性重合体は、1つの供給点で添加されてよい、または、1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび/または会合性重合体が2またはそれより多い別々の供給点に同時に供給されるように、分割して供給されてよい。パルプスラリへの典型的な添加点は、ファンパンプの前、ファンパンプの後、プレッシャスクリーンの前および/またはプレッシャスクリーンの後の1または複数の供給点を含む。
【0084】
1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の会合性重合体は、抄紙機上の同じおよび/または異なる点でパルプスラリに添加され得る。それらがパルプスラリに別々に添加される場合、1または複数のミクロ開繊化セルロースは、1または複数の会合性重合体の前におよび/または後に添加され得る。それらが抄紙機上の同じ点でパルプスラリに添加される場合、1または複数のミクロ開繊化セルロースは、1または複数の会合性重合体と混ぜ合わせる前に、上述の実施形態のいずれかにより生成され得る。代替的におよび/または追加的に、1または複数のミクロ開繊化セルロースは、1または複数のミクロ開繊化セルロースと1または複数の会合性重合体の両方をパルプスラリに添加するより前に、上述の会合性重合体の1または複数の存在下で、上述の実施形態のいずれか1つにより生成され得る。
【0085】
1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の会合性重合体は、1または複数のミクロ開繊化セルロース対1または複数の会合性重合体の比が、1または複数のミクロ開繊化セルロース対1または複数の会合性重合体の活性固形物ベースで、約1:10から約10:1まで、または約1:5から約5:1まで、または約1:5から約2:1までの範囲内でパルプスラリに添加され得る。
【0086】
抄紙機に加えられる1または複数のミクロ開繊化セルロースと1または複数の会合性重合体の両方の活性固形物の総量は、乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の0.2から20lbs.(90.7184gから9.0718kg)または乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の約0.3から約15lbs.(136.0777gから6.8038kg)または乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の約0.4から約10lbs.(181.4369gから4.5359kg)または乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の約0.5から5lbs.(226.7961gから2.2679kg)の範囲内である。
【0087】
一実施形態において、1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の会合性重合体は、約10:1から約1:10までの比でパルプスラリに添加される。1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の会合性重合体の活性固形物の総量は、乾燥パルプの重量に基づいて、約0.01から約0.50wt%までの範囲内で添加されてよい。
【0088】
一実施形態において、1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の会合性重合体は、約5:1から約2:1までの比でパルプスラリに添加される。1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の会合性重合体の活性固形物の総量は、乾燥パルプの重量に基づいて、約0.01から約0.15wt%までの範囲内で添加されてよい。
【0089】
さらに別の実施形態において、上述の1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の会合性重合体が、パルプスラリが厚い原料である点で、抄紙機内のパルプスラリに添加され得ることが実現可能である。
【0090】
ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念は、様々なパルプ完成紙料の種類および質に敏感である。当業者は、印刷および筆記の用途のために使用されるアルカリ不含の紙のための典型的な完成紙料が、紙製品の包装用に使用されるリサイクルの完成紙料と比べた場合、比較的小さいアニオン電荷を通常有することを知っている。アルカリ不含の紙の完成紙料は、例えば、それらに限定はされないが、一般的にアニオン電荷を有するアニオントラッシュ、リグニンおよび/または粘着性異物のような混入物のほとんどない繊維を含む。一方でリサイクルの完成紙料は、通常かなりの量のこれらの同じ混入物を含む。したがって、リサイクルの完成紙料は、アルカリ不含の紙の完成紙料に比べて製紙プロセスおよび紙製品自体の性能を高めるべく、より大量のカチオン性添加剤を含み得る。したがって、本発明の最も有用な1または複数の実施形態は、完成紙料の質および最終生成物などのそのような製紙の重要な要因により得る。
【0091】
1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の分岐または架橋共重合体をパルプスラリに添加する方法
一実施形態において、上述の1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の分岐または架橋共重合体は、製紙プロセス中にパルプスラリの排水性能を高めるべく抄紙機のウエットエンドより前におよび/またはその間にパルプスラリに添加されてよい。特定の一実施形態において、上述の1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の分岐または架橋共重合体は、脱水段階の前にパルプスラリに添加され、これによりパルプスラリが繊維マットになる。概して、歩留りおよび排水向上剤が、(「パルプ原料(pulp stock)」とも呼ばれる)パルプスラリが「薄い原料(thin stock)」として知られている、その最大希釈レベルの状態である、抄紙機の形成部の近くで、パルプスラリに添加される。
【0092】
1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび/または1または複数の分岐または架橋共重合体は、1つの供給点で添加されてよい、または、1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび/または1または複数の分岐または架橋共重合体が2またはそれより多い別々の供給点に同時に供給されるように、分割して供給されてよい。パルプスラリへの典型的な添加点は、ファンパンプの前、ファンパンプの後、プレッシャスクリーンの前および/またはプレッシャスクリーンの後の1または複数の供給点を含む。
【0093】
1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の分岐または架橋共重合体は、抄紙機上の同じおよび/または異なる点でパルプスラリに添加され得る。それらがパルプスラリに別々に添加される場合、1または複数のミクロ開繊化セルロースは、1または複数の分岐または架橋共重合体の前におよび/または後に添加され得る。それらが抄紙機上の同じ点でパルプスラリに添加される場合、1または複数のミクロ開繊化セルロースは、1または複数の分岐または架橋共重合体と混ぜ合わせる前に、上述の実施形態のいずれかにより生成され得る。代替的におよび/または追加的に、1または複数のミクロ開繊化セルロースは、ミクロ開繊化セルロースと1または複数の分岐または架橋共重合体の両方をパルプスラリに添加するより前に、上述の分岐または架橋共重合体の1または複数の存在下で、上述の実施形態のいずれか1つにより生成され得る。
【0094】
1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の分岐または架橋共重合体は、1または複数のミクロ開繊化セルロース対1または複数の分岐または架橋共重合体の比が、1または複数のミクロ開繊化セルロース対1または複数の分岐または架橋共重合体の活性固形物ベースで、約1:10から約10:1まで、または約1:5から約5:1まで、または約1:5から約2:1までの範囲内でパルプスラリに添加され得る。
【0095】
抄紙機に加えられる1または複数のミクロ開繊化セルロースと1または複数の分岐または架橋共重合体の両方の活性固形物の総量は、乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の0.2から20lbs.(90.7184gから9.0718kg)または乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の約0.3から約15lbs.(136.0777gから6.8038kg)または乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の約0.4から約10lbs.(181.4369gから4.5359kg)または乾燥パルプのトンあたりの活性固形物の約0.5から5lbs.(226.7961gから2.2679kg)の範囲内である。
【0096】
一実施形態において、1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の分岐または架橋共重合体は、約10:1から約1:10までの比でパルプスラリに添加される。1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の分岐または架橋共重合体の活性固形物の総量は、乾燥パルプの重量に基づいて、約0.01から約0.50wt%までの範囲内で添加されてよい。
【0097】
一実施形態において、1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の分岐または架橋共重合体は、約5:1から約2:1までの比でパルプスラリに添加される。1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の分岐または架橋共重合体の活性固形物の総量は、乾燥パルプの重量に基づいて、約0.01から約0.15wt%までの範囲内で添加されてよい。
【0098】
さらに別の実施形態において、上述の1または複数のミクロ開繊化セルロースおよび1または複数の分岐または架橋共重合体が、パルプスラリが厚い原料である点で、抄紙機内のパルプスラリに添加され得ることが実現可能である。
【0099】
ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念は、様々なパルプ完成紙料の種類および質に敏感である。当業者は、印刷および筆記の用途のために使用されるアルカリ不含の紙のための典型的な完成紙料が、紙製品の包装用に使用されるリサイクルの完成紙料と比べた場合、比較的小さいアニオン電荷を通常有することを知っている。アルカリ不含の紙の完成紙料は、例えば、それらに限定はされないが、一般的にアニオン電荷を有するアニオントラッシュ、リグニンおよび/または粘着性異物のような混入物のほとんどない繊維を含む。一方でリサイクルの完成紙料は、通常かなりの量のこれらの同じ混入物を含む。したがって、リサイクルの完成紙料は、アルカリ不含の紙の完成紙料に比べて製紙プロセスおよび紙製品自体の性能を高めるべく、より大量のカチオン性添加剤を含み得る。したがって、本発明の最も有用な1または複数の実施形態は、完成紙料の質および最終生成物などのそのような製紙の重要な要因により得る。
【0100】
追加的な添加剤
(a)少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと(b)少なくとも1つの会合性重合体または少なくとも1つの分岐または架橋共重合体に加えて、1または複数の追加的な添加剤が、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースおよび/または少なくとも1つの会合性重合体または少なくとも1つの分岐または架橋共重合体より前に、同時に、および/またはその後に、パルプスラリに添加され得る。
【0101】
1または複数の追加的な添加剤は、例えば、澱粉、従来の凝集剤、アルミニウム源および/またはこれらの組み合わせを含み得るがそれらに限定はされない。
【0102】
本発明の方法に使用され得る澱粉は、カチオン性および両性の澱粉を含む。適切な澱粉は、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦、米、タピオカ等に由来する澱粉を含む。カチオン性は、カチオン基の導入により、両性は、アニオン基のさらなる導入により与えられる。例えば、カチオン性澱粉は、例えば、ジメチルアミノエタノールおよび3‐クロロ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドのような第3級アミンとまたは第4級アンモニウム化合物と澱粉を反応させることにより得られてよい。カチオン性澱粉は、約0.01から約1.0まで、より好ましくは約0.01から約0.10まで、より好ましくは約0.02から0.04までのカチオン性置換度(D.S.)すなわち、アンヒドログルコース単位あたりのヒドロキシル基と置換されるカチオン基の平均数を好ましくは有する。
【0103】
従来の凝集剤は、アニオン性重合体、カチオン性重合体または非イオン性重合体であり得る。一実施形態において、従来の凝集剤は、例えば、(i)アニオン性単量体またはカチオン性単量体および(ii)非イオン性単量体を備える共重合体であり得るがそれらに限定はされない。従来の凝集剤の共単量体は、任意の比で存在してよい。これらの重合体は、懸濁重合、分散重合および逆エマルション重合を含む様々な合成プロセスにより提供され得るがそれらに限定されない。一実施形態において、従来の凝集剤は、アクリルアミドの線状カチオン性共重合体または線状アニオン性共重合体であってよい。結果として生じる共重合体は、非イオン性、カチオン性、アニオン性または両性であり得る。
【0104】
アルミニウム源は、例えば、ミョウバン(硫酸アルミニウム)、ポリアルミニウムスルフェート、ポリアルミニウムクロリドおよび/またはアルミニウムクロロハイドレートであり得るがそれらに限定はされない。
【0105】
例
以下の例は、逆エマルション(油中水型)重合プロセスを使用して会合性重合体を形成する可能な方法を示す。追加的に、以下の例は、(1)少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースおよび少なくとも1つの会合性重合体をパルプスラリに添加することの結果として生じるパルプスラリの高められた排水性能、および(2)少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと少なくとも1つの分岐または架橋共重合体とをパルプスラリに添加することの結果として生じるパルプスラリの高められた排水性能を示す。これらの例は、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の単なる例示であり、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念を本明細書に開示される特定の化合物、プロセス、状態または適用に限定するものとして解釈されるべきではない。
【0106】
分岐または架橋剤を用いない逆エマルション(油中水型)重合プロセスの例
パラフィン油の油相(156.2gのエクソール(Exxsol)(登録商標)D80油、エクソン社、テキサス州、ヒューストンから入手可能)および乳化界面活性剤(5gのアトラス(Atlas)(登録商標)G‐946および、10gのハイパーマ(Hypermer)(登録商標)B246SF、Croda社、デラウェア州、ニューカッスル)が、上部に機械攪拌機、温度計、窒素散布管および凝縮器が備え付けられた適切な反応フラスコに充填された。次に油相の温度が40℃に調整された。
【0107】
水相が別々に調製され、それは、水中に50wt%のアクリルアミド溶液(134.5g)、アクリル酸(68.9g)、脱イオン化された水(42.2g)およびVersenex(登録商標)80(ダウケミカル社)キレート溶液(0.7g)を備えた。次に水相は、水中に水酸化ナトリウム溶液の添加(45.4g、50wt%)によって、pH5.4に調整された。中和後の水相の温度は、40℃であった。
【0108】
次に水相は、油相に充填され、それと同時に、安定した油中水型エマルションを得るべく、ホモジナイザで混合された。次にこのエマルションは、4枚羽根のガラス攪拌機で混合され、同時に60分間窒素が散布された。窒素散布の間、エマルションの温度は、57±1℃に調整された。その後、散布は中断され、窒素のブランケットが実装された。
【0109】
重合は、エクソール(Exxsol)(登録商標)D80(0.75g)にジラウリルペルオキシド(LP)の1wt%溶液を添加することにより開始された。これは、全単量体ベースで10ppmのLPとして、最初のLP充填に相当した。追加の10ppmのLPが60分後に添加され、次に20ppmのLPが90分後に添加された。供給の過程の間、バッチ温度は57±1℃で維持された。180分後、次に、トルエン(0.085g)中に3wt%の2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)溶液が充填された。これは、全単量体ベースで100ppmの第2のAIBN充填に相当する。次にバッチが62±1℃で2時間維持された。次にバッチは室温まで冷却され、1.5%のアトラス(Atlas)(登録商標)G‐1086(Croda社、デラウェア州、ニューカッスル)および0.5%のテトロニック(Tetronic)(登録商標)1301(BASF社、ニュージャージ州、マウントオリーブ)を備えるブレーカ界面活性剤が添加された。結果として生じる共重合体は、365Paの6.3Hzで測定された1.5wt.%活性重合体溶液に対して貯蔵弾性率(G')を有した。
【0110】
少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースおよび少なくとも1つの会合性重合体によって処理されるパルプスラリの排水性能
ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の性能を評価するべく、数回の排水テストが、パルプスラリに添加される少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースおよび少なくとも1つの会合性重合体を有するパルプスラリの向上した排水性能を示すために実行された。
【0111】
パルプスラリは、硬材および軟材の乾燥された市販のラップパルプから調製され、それらは別々に精製され、次に、水性媒体中に約70wt%の硬材対約30wt%の軟材の比で組み合わされた。水性媒体は、地元の硬水と代表的な硬度となるよう脱イオン化された水の混合物を備えた。無機塩が、CaCO3として75ppmの総アルカリ度およびCaCO3として100ppmの硬度をもつ水性媒体を提供するべく十分な量で添加された。Minerals Technologies社(パレスチナ、ベツレヘム)から入手可能な沈降炭酸カルシウム、Albacar(登録商標)5970が、80%の繊維および20%の沈降炭酸カルシウムの増量剤を含む最終的なパルプスラリを提供するべく代表的な重量パーセントでパルプスラリに導入された。
【0112】
ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の排水活動は、AB Akribi Kemikonsulter社(スウェーデン、スンツヴァル)から入手可能な動的排水性試験機(Dynamic Drainage Analyser)のテスト機器の修正版を利用して決定された。修正版は、機械のミキシングチャンバおよびろ過材をより小さい試料の体積も断面積も有するもので置き換えることから成った。具体的に、0.5%の整合性で250mLの試料の体積および47mmのろ過断面の直径(60メッシュスクリーン)が、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースおよび少なくとも1つの会合性重合体によって処理されたパルプスラリに対する全てのテストのために使用された。
【0113】
修正されたテストデバイスは、各テストについて分離媒体の底部に400mbarの真空を適用し、真空の適用と真空破壊点との間の時間、すなわち、気液界面が厚くなった繊維マットを通過した時間を電子的に測定した。この値は、排水時間として報告された。より少ない排水時間が好ましい。
【0114】
パルプスラリへの様々な添加剤が、乾燥パルプに対する活性固形物ベースで添加された。表1および表2は、パルプスラリに添加された各添加剤および、乾燥パルプに対する活性固形物ベースに基づいて、トンあたりポンド(lb/ton)のそれらのそれぞれの量を示す。比較例(すなわち、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースおよび少なくとも1つの会合性重合体を含まないパルプスラリ)が、実験例(すなわち、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースおよび少なくとも1つの会合性重合体を含むパルプスラリ)から表内に明確にされている。
【0115】
表1および表2のテスト試料が以下のように調製された。
【0116】
第1に、カチオン性澱粉(イリノイ州、ディケイタのTate and Lyle社から入手可能な100%の活性固形物を有するSta-Lok(登録商標)400)の10lb/ton(活性固形物)すなわち、「第1添加剤」が、上述のパルプスラリに添加された。
【0117】
第2に、硫酸アルミニウム(メリーランド州、ボルチモアのDelta Chemical社から入手可能な50%の強度)の5lb/ton(活性固形物)すなわち、「第2添加剤」が、次にパルプスラリに添加された。
【0118】
第3に、以下の表1および表2に特定されるように、例えば、ミクロ開繊化セルロースおよび会合性重合体を含む追加的な添加剤が、「第3」、「第4」、「第5」の添加剤としてパルプスラリに添加された。添加剤は、記載された順番で順次に添加され、次の添加剤の続いての添加の前に10秒間混合された。
【0119】
最後に、示された成分を含むパルプスラリは、前に説明された修正された動的排水性試験機のテスト機器を使用して排水測定が行われた。各段階の間に、パルプスラリは1200rpmで10秒間混合された。
【0120】
それらの商品名またはプレースホルダ名により表に示されるように、添加され得る添加剤は以下の通りである。
【0121】
パフォーム(Perform)(登録商標)PC8179、Solenis社(デラウェア州、ウィルミントン)から市販されている40%の活性固形物カチオンポリアクリルアミド。
【0122】
パフォーム(Perform)(登録商標)SP7200およびパフォーム(Perform)(登録商標)SP7202、Solenis社(デラウェア州、ウィルミントン)からのアニオン電荷の会合性重合体。
【0123】
CS‐1は、以下の表3にさらに定義される、UPM Kymmene社(フィンランド、ヘルシンキ)からのカチオン性置換ミクロ開繊化セルロースである。
【0124】
追加的に、表に示されるように、添加剤はASMC‐1、ASMC‐2またはASMC‐3のうちの1つであってもよく、それらは、様々な置換度(「D.S.」)をもつアニオン性置換ミクロ開繊化セルロース(「ASMC」)である。特に、ASMC‐1は、約0.1から約0.15までの範囲内のD.S.を有し、ASMC‐2は、約0.16から約0.24までの範囲内のD.S.を有し、ASMC‐3は、約0.16から0.24までの範囲内のD.S.を有する。ASMC‐1、ASMC‐2およびASMC‐3は、ASMC‐1が0.8mmol COOH/gの電荷を有し、ASMC‐2が1.0mmol COOH/gの電荷を有し、ASMC‐3が1.0COOH/gの電荷を有するように、カルボキシル基によってそれぞれ変えられた。特に示されない限り、ASMC‐1、ASMC‐2およびASMC‐3は、ゲル形態で提供された。
【表1】
【0125】
表1のデータは、向上した排水性能をもたらす会合性重合体(パフォーム(PerForm)(登録商標)SP7202)とミクロ開繊化セルロースとの間の強力な相互作用を明示する。実験(Run)11から18は、会合性重合体、パフォーム(PerForm)(登録商標)SP7202と組み合わせて添加されたアニオン性ミクロ開繊化セルロース、ASMC‐2およびASMC‐3の排水が、会合性重合体、パフォーム(PerForm)(登録商標)SP7202のみが添加された実験番号2を含む、比較実験1から10の排水と比べて向上していることを明示する。実験19から22は、カチオン性凝集剤、パフォーム(PerForm)(登録商標)PC8179の代わりに、カチオン性置換ミクロ開繊化セルロース、CSを利用し、実験番号2を上回る向上を明示する。実験27から29における、カチオン性置換ミクロ開繊化セルロース、CSの添加はまたパルプスラリの排水を向上させる。
【0126】
パフォーム(PerForm)(登録商標)PC8179およびCS‐1が同時に添加される場合、実験30から34におけるより高い値の排水時間は、全体の完成紙料の電荷が変化したことの結果である。カチオン性添加剤の増加レベルによって、前に完成紙料に添加されたカチオン性澱粉およびミョウバンに加えて、システムの電荷がゼロに向かう正味アニオン電荷から増加する、すなわち正味カチオン電荷になる。例えば、パフォーム(PerForm)(登録商標)PC8179(40%の活性固形物カチオンポリアクリルアミド)およびCS‐1(カチオン性ミクロ開繊化セルロース)が同時に添加される場合、完成紙料は自己分散を起こし得、それはわずかに増加した排水時間をもたらす。しかしながら、実験11から29に示されるように、カチオン性ミクロ開繊化セルロースのみが使用される場合および/またはカチオン性ミクロ開繊化セルロースが別のカチオン性添加剤(例えば、パフォーム(PerForm)(登録商標)PC8179)とは別々に添加される場合、排水時間は、概して対応する比較例より低い値である。
【表2】
【0127】
表2のデータは、会合性重合体とミクロ開繊化セルロースとの間の相互作用に起因する、会合性重合体、パフォーム(PerForm)(登録商標)SP7202ならびに様々な物理形態およびグレードのミクロ開繊化セルロースを備えるパルプスラリの強力な排水効率を明示する。2.5%のゲル形態のアニオン性置換ミクロ開繊化セルロースは、15%の粉末形態のアニオン性置換ミクロ開繊化セルロースと著しい差異はないことを示した。
【0128】
別の一連の排水調査が、例1および例2に特定されているような同じテスト手順を使用して行われ、添加剤は、(a)異なる置換度(DS)および固形分を有する3つのカチオン性ミクロ開繊化セルロースのうちの1つおよび(b)Solenis社(デラウェア州、ウィルミントン)から入手可能な会合性重合体、パフォーム(Perform)(登録商標)SP7202である。
【0129】
3つのカチオン性ミクロ開繊化セルロースが表3に示され、(上に記載されているように)カチオン性澱粉(イリノイ州、ディケイタのTate and Lyle社から入手可能な100%の活性固形物を有するSta-Lok(登録商標)400)の10lb/ton(活性固形物)すなわち、「第1添加剤」および、硫酸アルミニウム(メリーランド州、ボルチモアのDelta Chemical社から入手可能な50%の強度)の5lb/ton(活性固形物)すなわち、「第2添加剤」をまた備えるパルプスラリに添加される添加剤の量が、表4に示される。パルプスラリに添加される、表3からのカチオン性ミクロ開繊化セルロースおよび会合性重合体の量がまた、乾燥パルプに対する活性固形物ベースに基づいて、トンあたりポンド(lb/ton)で表4に明示される。
【表3】
【0130】
表3のカチオン性ミクロ開繊化セルロースはそれぞれ、ミクロ開繊化セルロースに化学物質のグリシジルトリアルキルアンモニウムクロリド(GTAC)によるアンモニウム含有基を導入することにより調製された。
【表4】
【0131】
表4のデータは、向上した排水性能をもたらす3つのカチオン性ミクロ開繊化セルロースと会合性重合体との間の強力な相互作用を明示する。実験2から4は、0.5lb/tonのレベルでの3つのカチオン性ミクロ開繊化セルロースの排水が、対照プログラム実験番号1を上回って向上していることを示す。実験5から7および8から10は、それぞれ1lb/tonおよび2lb/tonまでミクロ開繊化セルロースのレベルが増加して、排水効果がさらに向上していることを示す。
【0132】
少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと少なくとも1つの分岐または架橋共重合体とによって処理されるパルプスラリの排水性能
追加的に、ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の性能をさらに評価するべく、数回の排水テストが、パルプスラリに添加される少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと少なくとも1つの分岐または架橋共重合体とを有するパルプスラリの向上した排水性能を示すために実行された。
【0133】
パルプスラリが、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと少なくとも1つの分岐または架橋共重合体によって処理されるパルプスラリの排水性能に関する実験について上述と同じ手法で調製された。
【0134】
ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の発明の概念の排水活動は、AB Akribi Kemikonsulter社(スウェーデン、スンツヴァル)から入手可能な(高さ15cmおよび直径10cmの)標準の動的排水性試験機のミキシングチャンバを除き、上記と同じテスト手順を使用した。このミキシングチャンバによるより大きな表面積は、前の例より速い排水時間を提供する。
【0135】
標準の動的排水性試験機は、各テストについて分離媒体の底部に400mbarの真空を適用し、真空の適用と真空破壊点との間の時間、すなわち、気液界面が厚くなった繊維マットを通過した時間を電子的に測定した。この値は、排水時間として報告された。より少ない排水時間が好ましい。
【0136】
パルプスラリへの様々な添加剤が、乾燥パルプに対する活性固形物ベースで添加された。表5は、パルプスラリに添加された各添加剤および、乾燥パルプに対する活性固形物ベースに基づいて、トンあたりポンド(lb/ton)のそれらのそれぞれの量を示す。比較例(すなわち、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと少なくとも1つの分岐または架橋共重合体とを含まないパルプスラリ)が、実験例(すなわち、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと少なくとも1つの分岐または架橋共重合体とを含むパルプスラリ)から表5に明確にされている。
【0137】
表5のテスト試料が以下のように調製された。
【0138】
第1に、カチオン性澱粉(イリノイ州、ディケイタのTate and Lyle社から入手可能な100%の活性固形物を有するSta-Lok(登録商標)400)の10lb/ton(活性固形物)すなわち、「第1添加剤」が、上述のパルプスラリに添加された。
【0139】
第2に、硫酸アルミニウム(メリーランド州、ボルチモアのDelta Chemical社から入手可能な50%の強度)の5lb/ton(活性固形物)すなわち、「第2添加剤」が、次にパルプスラリに添加された。
【0140】
第3に、以下の表5に特定されるように、例えば、少なくとも1つのミクロ開繊化セルロースと少なくとも1つの分岐または架橋共重合体とを含む追加的な添加剤が、「第3」および「第4」の添加剤としてパルプスラリに添加された。添加剤は、記載された順番で順次に添加され、次の添加剤の続いての添加の前に10秒間混合された。
【0141】
最後に、示された成分を含むパルプスラリは、前に説明された修正された動的排水性試験機のテスト機器を使用して排水測定が行われた。各段階の間に、パルプスラリは1200rpmで10秒間混合された。
【0142】
それらの商品名またはプレースホルダ名により表に示されるように、添加され得る添加剤は以下の通りである。
【0143】
上述のような、約0.16から約0.24までの範囲内のD.S.および1.0mmol COOH/gの電荷を有するアニオン性置換ミクロ開繊化セルロースASMC‐2。
【0144】
BASF社(ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン)から入手可能な市販の分岐または架橋共重合体、Telioform(登録商標)M100。
【0145】
パフォーム(Perform)(登録商標)PC8179、Solenis社(デラウェア州、ウィルミントン)から市販されている40%の活性固形物カチオンポリアクリルアミド。
【0146】
【0147】
表5のデータは、アニオン性ミクロ開繊化セルロースと分岐または架橋共重合体との間の強力な排水の相互作用を明示する。
【0148】
したがって、製紙プロセス中にパルプスラリの排水性能を高める方法が本明細書に開示される。ここに開示されるおよび/または特許請求される1または複数の概念の実施形態が示され、説明されているが、本明細書の1または複数の発明の概念から逸脱することなく、はるかに多くの修正が可能であることは当業者に明らかであろう。