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特許7173678画面適応化装置、画面適応化方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】画面適応化装置、画面適応化方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0484 20220101AFI20221109BHJP
   G06F 3/14 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G06F3/0484
G06F3/14 360A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019024800
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020135139
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 真悟
(72)【発明者】
【氏名】荒田 琢也
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】モハマド アヌアルッディン ビン アハマドン
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190899(JP,A)
【文献】特開2010-211483(JP,A)
【文献】特開2017-151505(JP,A)
【文献】特開平11-045176(JP,A)
【文献】特開2020-004113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/048-3/04895
G06F 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が入力機能と出力機能を有する複数の画面を切り替えて動作するシステムにおける、各画面の入力データ項目と出力データ項目とを示す画面構成情報、前記入力データ項目に対する利用者の入力履歴情報、および前記利用者の操作による画面遷移履歴情報を取得する情報取得部と、
前記画面遷移履歴情報の中から、前記入力データ項目への値の入力が行われることなく同じ画面に戻ってきた特定遷移パスを抽出し、抽出された前記特定遷移パスに基づいて、前記システムにおける前記画面間の遷移と、各画面の前記入力データ項目または前記出力データ項目との少なくとも一部の更新について判断する更新部と、
を備える画面適応化装置。
【請求項2】
前記更新部は、前記入力履歴情報及び前記画面遷移履歴情報に基づいて、前記特定遷移パスに含まれる前記画面のうち前記出力データ項目が参照されたと推定される画面である彷徨い目的画面を特定する、
請求項1に記載の画面適応化装置。
【請求項3】
前記更新部は、前記特定遷移パスに含まれる前記画面のうち、遷移前及び遷移後が同一の他の前記画面である画面を前記彷徨い目的画面と推定する、
請求項2に記載の画面適応化装置。
【請求項4】
前記更新部は、前記画面構成情報及び前記入力履歴情報に基づいて、前記入力データ項目への入力が行われた画面の前記出力データ項目と、前記入力データ項目への入力が行われた前記画面が前記特定遷移パスの終端の画面である場合における前記彷徨い目的画面の前記出力データ項目とを参照データ項目として、前記入力データ項目への入力が行われたときに前記出力データ項目が参照データ項目であった確率をそれぞれ計算し、計算された前記確率に基づいて、前記システムにおける前記画面間の遷移と、各画面の前記入力データ項目または前記出力データ項目との少なくとも一部の更新について判断する、
請求項2又は請求項3に記載の画面適応化装置。
【請求項5】
前記更新部は、高頻度を表す所定の条件を満たす前記確率の前記入力データ項目及び前記参照データ項目の組合せを特定し、特定した前記入力データ項目の入力が行われる第一の前記画面と特定した前記参照データ項目を出力データ項目に含む第二の前記画面とが異なる場合に、第一の前記画面の前記出力データ項目に第二の前記画面の前記出力データ項目を追加する、第一の前記画面と第二の前記画面とを統合する、又は、第一の前記画面と第二の前記画面との間の遷移を追加すると判断する、
請求項4に記載の画面適応化装置。
【請求項6】
前記更新部は、計算された前記確率に基づいて、一つの前記画面において値が入力される複数の前記入力データ項目それぞれの前記参照データ項目が異なると判断した場合、当該画面を複数の前記入力データ項目それぞれの値を入力する画面に分離すると判断する、
請求項4に記載の画面適応化装置。
【請求項7】
前記更新部は、前記システムにおける前記画面間の遷移から、前記画面遷移履歴情報に基づいて表示されなかったことが検出された前記画面を削除すると判断する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の画面適応化装置。
【請求項8】
前記入力履歴情報、および前記画面遷移履歴情報は、前記利用者の情報を含み、
前記更新部は、前記利用者又は前記利用者の属性ごとに処理を行う、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の画面適応化装置。
【請求項9】
少なくとも一部が入力機能と出力機能を有する複数の画面を切り替えて動作するシステムにおける、各画面の入力データ項目と出力データ項目とを示す画面構成情報、前記入力データ項目に対する利用者の入力履歴情報、および前記利用者の操作による画面遷移履歴情報を取得する情報取得ステップと、
前記画面遷移履歴情報の中から、前記入力データ項目への値の入力が行われることなく同じ画面に戻ってきた特定遷移パスを抽出し、抽出された前記特定遷移パスに基づいて、前記システムにおける前記画面間の遷移と、各画面の前記入力データ項目または前記出力データ項目との少なくとも一部の更新について判断する更新ステップと、
を有する画面適応化方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の画面適応化装置として機能させることプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画面適応化装置、画面適応化方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力需給管理システムなどの各種の業務システムでは、オペレータが複数の画面を切り替えながら、情報の入出力や確認を行って業務を遂行する。一般的に、業務を遂行するときの画面遷移は、開発の初期段階で検討され、設計される。そのため、システムのリリース時点では、無駄な画面遷移は含まれていないと考えられている。しかし、システムがリリースされた後の現実の運用においては、制度変更などの外的要因やオペレータの習熟度などのために、設計者が想定していなかったユースケースが発生することがある。このような想定外のユースケースでは、画面遷移が冗長化する場合がある。冗長な画面遷移はオペレータのストレスを増加させる可能性があり、ひいてはヒューマンエラーの発生確率が高まる可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-110362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、利用者の負荷を低減するように画面を変更することができる画面適応化装置、画面適応化方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の画面適応化装置は、情報取得部と、更新部とを持つ。情報取得部は、少なくとも一部が入力機能と出力機能を有する複数の画面を切り替えて動作するシステムにおける、各画面の入力データ項目と出力データ項目とを示す画面構成情報、前記入力データ項目に対する利用者の入力履歴情報、および前記利用者の操作による画面遷移履歴情報を取得する。更新部は、前記画面遷移履歴情報の中から、前記入力データ項目への値の入力が行われることなく同じ画面に戻ってきた特定遷移パスを抽出し、抽出された前記特定遷移パスに基づいて、前記システムにおける前記画面間の遷移と、各画面の前記入力データ項目または前記出力データ項目との少なくとも一部の更新について判断する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の画面遷移個別化装置のコンテキストダイアグラム。
図2】実施形態の画面遷移個別化システムの構成を示すブロック図。
図3】実施形態の画面遷移図。
図4】実施形態の画面操作履歴を示す図。
図5】実施形態の画面遷移個別化装置におけるデータフロー図。
図6】実施形態の画面遷移個別化装置の処理を示すフロー図。
図7】実施形態の通常操作及び彷徨い操作を示す図。
図8】実施形態の画面訪問頻度及び画面訪問確率を示す図。
図9】実施形態の遷移発生頻度及び遷移発生確率を示す図。
図10】実施形態のデータ参照頻度を示す図。
図11】実施形態のデータ参照確率を示す図。
図12】実施形態の画面の表示項目補充を示す図。
図13】実施形態の画面の統合を示す図。
図14】実施形態の画面の分割を示す図。
図15】実施形態の分割された画面の遷移を表す図。
図16】実施形態の遷移の追加を示す図。
図17】一人目の利用者のイベントログの一部を示す図。
図18】一人目の利用者の画面訪問頻度及び画面訪問確率を示す図。
図19】一人目の利用者の遷移発生頻度及び遷移発生確率を示す図。
図20】一人目の利用者のデータ参照頻度を示す図。
図21】一人目の利用者のデータ参照確率を示す図。
図22】一人目の利用者の画面遷移の変更を示す図。
図23】一人目の利用者の画面遷移の変更の効果を示す図。
図24】二人目の利用者のイベントログの一部を示す図。
図25】二人目の利用者の画面訪問頻度及び画面訪問確率を示す図。
図26】二人目の利用者の遷移発生頻度及び遷移発生確率を示す図。
図27】二人目の利用者のデータ参照頻度を示す図。
図28】二人目の利用者のデータ参照確率を示す図。
図29】二人目の利用者の画面遷移の変更を示す図。
図30】二人目の利用者の画面遷移の変更の効果を示す図。
図31】三人目の利用者のイベントログの一部を示す図。
図32】三人目の利用者の画面訪問頻度及び画面訪問確率を示す図。
図33】三人目の利用者の遷移発生頻度及び遷移発生確率を示す図。
図34】三人目の利用者のデータ参照頻度を示す図。
図35】三人目の利用者のデータ参照確率を示す図。
図36】三人目の利用者の画面遷移の回数の比較を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の画面適応化装置、画面適応化方法及びプログラムを、図面を参照して説明する。画面適応化装置は、利用者の操作により行われた画面遷移のログデータに機械学習を適用することによって、画面遷移の冗長箇所を検出する。画面遷移は、グラフ理論を使用して表すことができる。グラフ理論を使用した場合、各頂点は画面に相当し、頂点間のパスは画面遷移に相当する。冗長箇所は、パスの集合で表される。画面適応化装置は、冗長箇所のグラフを所定のアルゴリズムで探索する。画面適応化装置は、この探索の結果、冗長箇所の画面において入出力するデータの一覧を得る。画面適応化装置は、現在の画面遷移に対して、得られた冗長箇所内のデータを特定画面に集約する、又は、冗長箇所の遷移を低減するような遷移を追加するような変更を判断する。この変更により、不要な画面遷移を削減することができる。従って、リリース後のユースケースを考慮した画面遷移の冗長箇所の特定と改善を行うことが可能となる。
【0008】
図1は、画面遷移個別化装置5のコンテキストダイアグラムである。画面遷移個別化装置5は、画面適応化装置の一例である。画面遷移個別化装置5は、利用者個別に画面遷移を改善する。情報システムΣは、少なくとも一部が入力機能と出力機能を有する複数の画面を切り替えて動作する。画面遷移個別化装置5は、情報システムΣの開発環境から画面遷移図を取得し、情報システムΣの運用環境から利用者Uの画面操作履歴を取得する。画面遷移個別化装置5は、画面操作履歴の分析結果に基づいて利用者Uに個別化された画面遷移図を生成し、生成された画面遷移図を情報システムΣの開発環境に提供する。情報システムΣは、任意のシステムとすることができる。利用者Uは、例えば、情報システムΣのオペレータである。
【0009】
図2は、画面遷移個別化システム1の構成を示すブロック図である。画面遷移個別化システム1は、情報処理装置3と、画面遷移個別化装置5とを有する。情報処理装置3と、画面遷移個別化装置5とは、ネットワーク7を介して接続される。情報処理装置3は、例えば、情報システムΣの業務に用いられる端末である。図2では、1台の情報処理装置3を示しているが、情報処理装置3の台数は任意である。
【0010】
情報処理装置3は、通信部31と、入力部32と、表示部33と、記憶部34と、処理部35とを備える。通信部31は、ネットワーク7を介して他の装置とデータを送受信する。入力部32は、利用者の操作による入力を行うインタフェースである。表示部33は、画像を表示するディスプレイである。記憶部34は、表示画面情報及び操作履歴情報を含む各種情報を記憶する。処理部35は、予め記憶部34に記憶される表示画面情報に基づいて、表示部33に画面を表示する。処理部35は、利用者が入力部32により画面に入力したデータ値を用いて、情報システムΣの業務に関する処理を実行する。処理部35は、データ値を入力するために利用者が行った操作の履歴を示す操作履歴情報を記憶部34に記憶する。
【0011】
例えば、情報システムΣは、電力系統におけるシステムであり、情報処理装置3は、そのシステムの管理運用端末である。情報処理装置3は、複数のデータ項目の値を用いて電力の需要予測を行う機能を有する。表示画面情報は、各画面の画面識別子と、画面データとを示す。画面識別子は、画面を一意に特定する情報である。画面データは、需要予測に用いるデータ項目の値を入力するための画面を表示させるためのデータである。画面には、次に表示する遷移先の画面を選択する1以上のボタン等も含まれる。ボタンには、遷移先の画面へのリンクが埋め込まれる。あるいは、表示画面情報に、画面間の遷移の情報が含まれてもよい。また、画面には、予め設定されたデータ項目の値、又は、他の画面において利用者が入力したデータ項目の値の表示も含まれ得る。画面において値を入力するデータ項目を入力データ項目、画面において値を表示するデータ項目を出力データ項目とも記載する。表示画面情報は、システムの開発環境から提供される。
【0012】
利用者は、処理部35が表示部33に表示した画面に、入力部32を用いて、入力データ項目の値及び遷移先の画面選択を入力するか、入力データ項目の値を入力せずに、遷移先の画面選択を入力する。処理部35は、入力データ項目の値が入力された場合は記憶部34にその値を記憶する。処理部35は、入力された画面選択に応じた次の画面を表示部33に表示する。一方で、処理部35は、操作履歴情報を記憶部34に書き込む。操作履歴情報は、入力データ項目に対する利用者の入力履歴情報と、利用者の操作による画面遷移履歴情報を含む。例えば、操作履歴情報は、利用者の操作に基づいて処理部35が表示した画面の画面識別子と、表示された画面において利用者が値を入力した入力データ項目と、利用者の操作に基づく画面間の遷移とを含んだレコードを時系列で並べた情報を含む。処理部35は、需要予測に必要なデータ項目の値の入力が終了すると、記憶部34に記憶した各データ項目の値を用いて需要予測を行う。
【0013】
画面遷移個別化装置5は、通信部51と、記憶部52と、情報取得部53と、検出部54(更新部)と、分析部55(更新部)と、更新部56とを備える。通信部51は、ネットワーク7を介して他の装置とデータを送受信する。記憶部52は、画面構成情報を記憶する。画面構成情報は、複数の画面それぞれを識別する画面識別子と、各画面の入力データ項目と、各画面の出力データ項目とを示す情報である。本実施形態では、画面構成情報として、情報システムΣの開発環境から取得した画面遷移図を用いる。画面遷移図は、各画面の画面識別子と、各画面の入力データ項目と、各画面の出力データ項目と、とり得る画面間の遷移とを含む情報である。
【0014】
情報取得部53は、画面構成情報と、この画面構成情報の画面が利用されたとき操作履歴情報とを記憶部52から取得する。なお、情報取得部53は、表示画面情報を情報処理装置3から取得して画面構成情報として用いてもよく、情報処理装置3から取得した表示画面情報を用いて画面構成情報を生成してもよい。
【0015】
検出部54は、情報取得部53が取得した画面操作履歴情報に基づいて、彷徨い操作を特定し、彷徨い開始画面、彷徨い終了画面及び彷徨い目的画面を検出する。利用者は、ある画面sにおいて入力データ項目の値を入力するために必要なデータ値を参照するため、別の画面s’を表示するよう操作を行う場合がある。彷徨い操作は、この画面sから画面s’へ移動し、再び画面sへ戻ってくるまでの操作である。つまり、彷徨い操作は、入力データ項目の値の入力が行われることなく、同一の画面sが1以上の他の画面を表示させた後に再び表示されるまでの遷移を指示する操作である。最初に表示させた画面sは、彷徨い開始画面であり、再び表示させた画面sは、彷徨い終了画面である。彷徨い開始画面から彷徨い終了画面に遷移するまでの画面遷移(特定遷移パス)を彷徨いと記載する。彷徨い開始画面は、彷徨い始めの操作が行われた画面である。彷徨い終了画面は、彷徨いの終端画面、すなわち、彷徨い操作の最後の操作により表示された画面である。画面s’は、彷徨い終了画面において入力データ項目に値を入力するために出力データ項目が参照されたと推定される彷徨い目的の画面である。以下では、彷徨い目的の画面を、彷徨い目的画面とも記載する。彷徨い目的の画面s’は、彷徨い操作において表示させた画面の中から、遷移前及び遷移後が同一の他の画面であることを条件に用いて特定することができる。彷徨い操作以外の画面遷移の操作を、通常操作とする。彷徨い終了画面において行われた彷徨いを終了する操作は、通常操作である。
【0016】
分析部55は、画面構成情報及び画面操作履歴情報に基づいて、画面訪問頻度、画面訪問確率、遷移発生頻度、遷移発生確率、データ参照頻度及びデータ参照確率を計算する。画面訪問頻度は、各画面が表示された回数である。画面訪問確率は、各画面が表示された確率である。遷移発生頻度は、各画面遷移が発生した回数である。遷移発生確率は、各画面遷移が発生した確率である。データ参照頻度は、入力データ項目の値が入力されたときに他のデータ項目が参照データ項目となった回数である。データ参照確率は、入力データ項目の値が入力されたときに他のデータ項目が参照データ項目となった確率である。彷徨い終了画面以外の画面の入力データ項目の場合、その入力データ項目の値が入力された画面の出力データ項目が参照データ項目である。彷徨い終了画面の入力データ項目の場合、彷徨い終了画面の出力データ項目と彷徨い目的画面の出力データ項目とが参照データ項目である。分析部55は、入力データ項目と参照データ項目との組合せ別に、データ参照頻度及びデータ参照確率を計算する。
【0017】
更新部56は、抽出された彷徨い(特定遷移パス)に基づいて画面間の遷移と、各画面の入力データ項目または出力データ項目との少なくとも一部の更新について判断する。更新部56は、この判断に従って、画面遷移図を変更する。具体的には、更新部56は、高頻度を表す所定の条件を満たすデータ参照確率の入力データ項目及び参照データ項目の組合せを特定する。更新部56は、特定した入力データ項目の値を入力する画面と、特定した参照データ項目を出力データ項目に含む画面とが異なる場合に、その入力データ項目の値を入力する画面から参照データ項目を参照するための操作を低減するように画面遷移図を変更する。例えば、更新部56は、特定した参照データ項目が彷徨い目的画面の出力データ項目に含まれる場合に、特定した入力データ項目の値を入力する画面の出力データ項目に、彷徨い目的画面における出力データ項目を追加する。更新部56は、特定した入力データ項目の値を入力する画面と彷徨い目的画面とを統合してもよい。あるいは、更新部56は、特定した入力データ項目の値を入力する画面と、彷徨い目的画面との間の遷移を追加してもよい。また、更新部56は、データ参照確率に基づいて、一つの画面において値が入力される複数の入力データ項目それぞれの参照データ項目が異なると判断した場合、その画面を複数の入力データ項目それぞれの値を入力する画面に分離する。また、更新部56は、画面操作履歴情報に基づいて表示されなかった画面を検出し、検出した画面及びその画面への遷移を画面遷移図から削除する。
【0018】
なお、情報処理装置3と画面遷移個別化装置5とは、統合された装置であってもよい。例えば、情報処理装置3が、画面遷移個別化装置5の記憶部52と、情報取得部53と、検出部54と、分析部55と、更新部56とを有してもよい。また、画面遷移個別化装置5が、情報処理装置3の記憶部34及び処理部35を有してもよい。また、情報処理装置3及び画面遷移個別化装置5のそれぞれを、ネットワークに接続される複数のコンピュータ装置により実現してもよい。この場合、情報処理装置3の各機能部、及び、画面遷移個別化装置5の各機能部を、複数のコンピュータ装置のいずれにより実現するかは任意とすることができる。また、一つの機能部を、複数台のコンピュータ装置により実現してもよい。
【0019】
続いて、画面遷移個別化装置5が用いるデータ及び処理の詳細を説明する。
図3は、情報システムΣの画面遷移図STDの例を示す図である。画面遷移個別化装置5は、画面遷移図STDを画面構成情報として用いる。画面遷移図STDは、以下の(1)~(6)を含む。
【0020】
(1)有向グラフG=(S,T) (各ノードs∈Sは画面、各アークt∈T(⊆S×S)は遷移を表す)
(2)開始画面の集合SS(⊆S)
(3)終了画面の集合ES(⊆S)
(4)画面に配置されるデータ項目の全体集合D
(5)ある画面sに配置される入力データ項目の集合In:S→D
(6)ある画面sに配置される出力データ項目の集合Out:S→D
【0021】
図4は、ある利用者の画面操作履歴Lの例を示す図である。情報システムΣは、案件単位で利用されるものとする。画面操作履歴は、案件識別子CIDと、操作識別子EIDと、時刻τと、画面識別子SIDと、値が更新された入力データ項目の集合D’(⊆In(s))とを対応づけたレコード情報を1以上含む。案件識別子CIDは、案件を一意に識別する情報である。操作識別子EIDは、利用者の操作に従って行われた画面遷移を一意に識別する情報である。具体的には、操作識別子EIDは、画面sにおける操作によって行われた有向グラフGの遷移(アーク)tを特定する。時刻τは、操作識別子EIDで特定される遷移tの操作が画面sに行われた時刻を示す。時刻τは、遷移tの操作が行われた時刻を示す。時刻τは、操作が行われた順序を示す情報として用いられる。画面識別子SIDは、操作が行われた画面sを一意に識別する情報である。集合D’は、画面sにおいて利用者の操作により値が更新された入力データ項目を示す。
【0022】
図5は、画面遷移個別化装置5におけるデータフロー図である。画面遷移個別化装置5が有する機能は、彷徨い操作の識別機能F1、画面操作履歴の分析機能F2、及び、画面遷移図の生成機能F3の3つに大別できる。
【0023】
彷徨い操作の識別機能F1は、情報取得部53及び検出部54により実現される。情報取得部53は、情報システムΣの開発環境から取得した画面遷移図STDのうち利用者Uが用いる画面遷移図STDと、利用者Uの画面操作履歴Lとを取得する。検出部54は、画面操作履歴Lを用いて、通常操作と彷徨い操作を識別し、彷徨い目的の画面を検出する。通常操作と彷徨い操作とが区別された画面操作履歴Lを、画面操作履歴Lとする。
【0024】
画面操作履歴の分析機能F2は、分析部55により実現される。分析部55は、利用者Uの画面遷移図STD及び画面操作履歴Lに基づいて、画面訪問頻度SF,画面訪問確率SP、遷移発生頻度TF,遷移発生確率TP、データ参照頻度DF及びデータ参照確率DPを算出する。
【0025】
画面遷移図の生成機能F3は、更新部56によって実現される。更新部56は、画面操作履歴の分析機能F2によって求められた情報に基づいて、画面遷移図STDを利用者Uに個別化した画面遷移図STDを生成する。
【0026】
図6は、画面遷移個別化装置5の処理を示すフロー図である。画面遷移個別化装置5は、利用者ごとに図6に示す処理を行う。画面遷移個別化装置5は、彷徨い操作の識別機能F1によりステップS1~ステップS3の処理を行い、画面操作履歴の分析機能F2によりステップS5~ステップS9の処理を行い、画面遷移図の生成機能F3によりステップS10~ステップS22の処理を行う。
【0027】
まず、彷徨い操作の識別機能F1の処理を説明する。画面遷移個別化装置5の情報取得部53は、記憶部52から利用者の画面遷移図STDを示す画面構成情報を読み込む(ステップS1)。さらに、情報取得部53は、記憶部52から利用者の画面操作履歴L(図3)を読み込む(ステップS2)。検出部54は、画面操作履歴Lが示す操作に含まれる彷徨い操作を識別する(ステップS3)。
【0028】
図7は、ある案件に関連する画面操作履歴Lから得られた通常操作及び彷徨い操作の例を示す図である。画面遷移図STDにおける符号M1の画面遷移及び符号M3の画面遷移は通常操作によるものであり、符号M2の画面遷移は彷徨い操作によるもの(彷徨い)である。彷徨い操作M2の彷徨い開始画面は、DemandForecastExecutionScreen画面であり、彷徨い目的の画面は、CustomerEditScreen画面である。
【0029】
画面遷移図((S,T),D,In,Out)と、i番目(iは1以上の整数)の案件に関する画面操作履歴L[i]に対し、彷徨い操作、通常操作及び彷徨い目的の画面は以下のように定義され、求められる。なお、(S,T),D,In,Outはそれぞれ、画面遷移図STDにおける有向グラフG=(S,T)、画面に配置されるデータ項目の全体集合D、画面に配置される入力データ項目の集合In、画面に配置される入力データ項目の集合Outである。また、j(jは1以上の整数)は、操作順である。
【0030】
L[i][j]は、以下の(a1)及び(a2)を満たすとき、彷徨い始めの操作という。
(a1) L[i][j]の画面sに値を更新した入力データ項目がない。つまりD=φである。
(a2) L[i][j]の一つ後の操作L[i][j+1]の画面s(j+1)が、L[i][j]の一つ前の操作L[i][j-1]の画面s(j-1)である。つまりs(j+1)=s(j-1)である。
【0031】
L[i][j]が彷徨い始めの操作である場合、L[i][k]は、以下の(b1)及び(b2)を満たすとき、彷徨い終わりの操作という。
(b1) L[i][k]の画面sは、彷徨い始めと同じ画面sである。つまりs=sである。
(b2) L[i][j]からL[i][k]までの間に、画面sと同じ画面をもつ操作はない。つまり、∀l∈(j,k):s≠sである。
【0032】
上記により特定された彷徨い始めの操作L[i][j]から彷徨い終わりの操作L[i][k]の直前までの各操作を彷徨い操作e(j≦l<k,lは整数)という。また、彷徨い操作でない操作を通常操作という。彷徨い終わり操作は、彷徨い操作ではなく、通常操作である。
【0033】
彷徨い始めの操作がL[i][j]、彷徨い終わりの操作がL[i][k]である場合に、L[i][l]の画面sは以下の(c1)及び(c2)を満たすとき、彷徨い目的の画面と推定できる。
(c1) L[i][l]の一つ後の操作L[i][l+1]の画面s(l+1)が、L[i][l]の一つ前の操作L[i][l-1]の画面s(l-1)である。
(c2) L[i][l]からL[i][l+1]までの全ての操作L[i][m](m∈(l,k))に対して、一つ後の操作[i][m+1]の画面s(m+1)は、一つ前の操作[i][m-1]の画面s(m-1)ではない。
【0034】
検出部54は、画面操作履歴Lに、検出した彷徨い始めの操作、彷徨い終わりの操作、彷徨い操作、通常操作、彷徨い開始画面、彷徨い終了画面及び彷徨い目的の画面の情報を付加し、画面操作履歴Lとする。
【0035】
次に、画面操作履歴の分析機能F2の処理を説明する。図6に示すように、ステップS1~ステップS3の処理の後、分析部55は、画面遷移図STD及び画面操作履歴Lを用いて、画面訪問頻度SF(SF:S→N)、画面訪問確率SP(SP:S→[0,1])、遷移発生頻度TF(TF:T→N)、遷移発生確率TP(TP:T→[0,1])、データ参照頻度DF(DF:D×D→N)及びデータ参照確率DP(DP:D×D→[0,1])を算出する(ステップS4~ステップS9)。なお、Nは自然数全体の集合を表す。
【0036】
分析部55は、各画面sの画面訪問頻度SFであるSF(s)を算出する(ステップS4)。SF(s)は、画面操作履歴Lが示す操作において画面sを訪問した回数であり、以下のように定義される。
【0037】
SF(s)=|{L[i][j]∈L|L[i][j]の画面=s}|
【0038】
分析部55は、各画面sの画面訪問確率SPであるSF(s)を算出する(ステップS5)。SP(s)は、画面操作履歴Lが示す操作において画面sを表示した確率であり、以下のように定義される。
【0039】
SP(s)=SP(s)/maxs’∈S0{SF(s’)}
【0040】
なお、maxは最大値を表す。また、maxの添え字中のS0は、Sを表す。つまり、上記の式における右辺の分母は、画面遷移図STDに含まれる各画面sの画面訪問頻度SFのうち最大の値を示す。
【0041】
分析部55は、各遷移tの遷移発生頻度TFであるTF(t)を算出する(ステップS6)。TF(t)は、画面操作履歴Lが示す操作において遷移tが発生した回数であり、以下のように定義される。
【0042】
TF(t)=|{L[i][j]∈L|(L[i][j]の画面,L[i][j+1]の画面)=t}|
【0043】
分析部55は、各遷移tの遷移発生確率TPであるTP(t)を算出する(ステップS7)。TP(t)は、画面操作履歴Lが示す操作において遷移tが発生した確率であり、以下のように定義される。
【0044】
TP(t)=TP(t)/maxt’∈T0{TF(t’)}
【0045】
なお、maxの添え字中のT0は、Tを表す。つまり、上記式における右辺の分母は、画面遷移図STDに含まれる各遷移tの遷移発生頻度TFのうち最大の値を示す。
【0046】
分析部55は、入力データ項目din及び参照データ項目doutについてのデータ参照頻度DFであるデータ参照頻度DF(din,dout)を算出する(ステップS8)。DF(din,dout)は、データ項目dinへ値を入力する時、参照データとなるデータ項目doutを参照した回数である。通常操作の場合、データ項目dinと同じ画面の出力データ項目を参照データ項目とする。ただし彷徨い終わりの操作の場合、彷徨い目的の画面の出力データ項目も参照データとする。DF(din,dout)は、以下のように定義される。
【0047】
DF(din,dout)=|{L[i][j]∈L
(i)L[i][j]が通常操作の場合、dinはL[i][j]において更新された入力データ項目、かつ、doutはL[i][j]の画面の出力データ項目、
(ii)L[i][j]が彷徨い終わりの操作の場合、dinはL[i][j]において更新された入力データ項目、かつ、doutは、L[i][j]の画面及び画面操作履歴Lにおける彷徨い目的の画面の出力データ項目)}|
【0048】
分析部55は、各入力データ項目din及び参照データ項目doutの組合せについてのデータ参照確率DPであるデータ参照確率DP(din,dout)を算出する(ステップS9)。DP(din,dout)は、データ項目dinへ値を入力する時、参照データとなるデータ項目doutを参照した確率であり、以下のように定義される。
【0049】
DP(din,dout)=DF(din,dout)/max(din’,dout’)∈D0×D0{TF(din’,dout’)}
【0050】
なお、maxの添え字中のdin’、dout’、D0はそれぞれ、din,dout、Dを表す。つまり、上記式における右辺の分母は、画面操作履歴Lから得られる全ての入力データ項目din及び参照データ項目doutの組合せそれぞれのデータ参照頻度DFのうち最大の値を示す。
【0051】
通常操作と彷徨い操作を区別した画面操作履歴Lについての画面訪問頻度SFL*、画面訪問確率SPL*,遷移発生頻度TFL*及び遷移発生確率TPL*も上記の画面訪問頻度SF、画面訪問確率SPL*,遷移発生頻度TFL*及び遷移発生確率TPL*と同様に定義され、計算される。なお、これらの添え字のL*は、Lを表す。
【0052】
図8は、画面訪問頻度SFL*及び画面訪問確率SPL*の例を示す図である。図9は、遷移発生頻度TFL*及び遷移発生確率TPL*の例を示す図である。遷移tの(x1,x2)は、画面x1から画面x2への遷移を示す。図10は、データ参照頻度DFの例を示す図である。図11は、データ参照確率DPの例を示す図である。図10及び図11において、左側の各行の見出しがdinを示し、上側の各列の見出しがdoutを示す。
【0053】
次に、画面遷移図の生成機能F3の処理を説明する。図6に示すように、ステップS4~ステップS9の処理の後、更新部56は、分析機能F2によって画面操作履歴Lから求められた情報に基づいて画面遷移図STDを変更する。すなわち、更新部56は、分析部55により算出された情報が条件C1~条件C6のいずれかに一致する場合、画面遷移図STDに対して、一致する条件に対応した変更を行う(ステップS10~ステップS21)。更新部56は、条件C1~条件C6を満たすものがなくなるまで、ステップS10~ステップS21の処理を繰り返して画面遷移図STDを変更する。
【0054】
更新部56は、分析部55により算出された情報が条件C1を満たす否かを判断する(ステップS10)。更新部56は、条件C1を満たす情報があると判断した場合、画面の表示項目の補充を行う(ステップS11)。条件C1は、画面操作履歴Lが示す操作において、画面sのデータ項目dinへ値を入力する時、別画面s’のデータ項目doutの参照が頻繁に生じるという条件である。別画面s’は、彷徨い目的の画面である。条件C1は、閾値w1<DP(din,dout)と表される。更新部56は、DP(din,dout)が条件C1を満たしていると判断した場合、画面sに、Out(s’)を追加する。
【0055】
図12は、画面の表示項目補充の例を示す図である。図12(a)に示すように、画面遷移図STDにおいて、画面sの入力データ項目の集合はIn(s)、出力データ項目の集合はOut(s)であり、画面s’の入力データ項目の集合はIn(s’)、出力データ項目の集合はOut(s’)である。画面sの入力データ項目の集合In(s)に含まれるデータ項目dinへ値を入力する時、別画面s’の出力データ項目の集合Out(s’)に含まれるデータ項目doutの参照が頻繁に生じる場合、DP(din,dout)は条件C1を満たす。この場合、図12(b)に示すように、更新部56は、画面sの出力データ項目の集合Out(s)に、別画面s’の出力データ項目の集合Out(s)を加える。すなわち、Out(s)←Out(s)∪Out(s’)とする。
【0056】
なお、更新部56は、所定の条件に合致する場合には、表示項目補充を行わないようにしてもよい。所定の条件は、例えば、表示項目補充を行ったと仮定したときの集合Out(s”)に含まれる出力データ項目の数が閾値を超える場合、又は、集合In(s”)に含まれる入力データ項目の数と集合Out(s”)に含まれる出力データ項目の数との合計数が閾値を超える場合である。
【0057】
図6の処理において、更新部56は、条件C1を満たす情報がないと判断した場合、分析部55により算出された情報が条件C2を満たすか否かを判断する(ステップS12)。更新部56は、条件C2を満たす情報があると判断した場合、画面の統合を行う(ステップS13)。条件C2は、画面操作履歴Lが示す操作において、画面sのデータ項目dinへ値を入力する時、別画面s’のデータ項目doutの参照が頻繁に生じるという条件である。条件C2は、閾値w2<DP(din,dout)と表される。更新部56は、DP(din,dout)が条件C2を満たしていると判断した場合、画面sと画面s’を統合して画面s”とする。
【0058】
図13は、画面の統合の例を示す図である。図13(a)に示すように、画面遷移図STDにおいて、画面sの入力データ項目の集合はIn(s)、出力データ項目の集合はOut(s)であり、画面s’の入力データ項目の集合はIn(s’)、出力データ項目はOut(s’)である。画面sの入力データ項目の集合In(s)に含まれるデータ項目dinへ値を入力する時、別画面s’の出力データ項目の集合Out(s’)に含まれるデータ項目doutの参照が頻繁に生じる場合、DP(din,dout)は条件C2を満たす。この場合、図13(b)に示すように、更新部56は、画面sと画面s’を統合した画面s”を生成する。画面s”の入力データ項目の集合In(s”)←In(s)∪In(s’)であり、出力データ項目の集合Out(s”)←Out(s)∪Out(s’)である。
【0059】
なお、更新部56は、所定の条件に合致する場合には、画面の統合を行わないようにしてもよい。所定の条件は、例えば、画面の統合を行ったと仮定したときの集合In(s”)に含まれる入力データ項目の数が閾値を超える場合、集合Out(s”)に含まれる出力データ項目の数が閾値を超える場合、又は、集合In(s”)に含まれる入力データ項目の数と集合Out(s”)に含まれる出力データ項目の数との合計数が閾値を超える場合である。
【0060】
図6の処理において、更新部56は、条件C2を満たす情報がないと判断した場合、分析部55により算出された情報が条件C3を満たすか否かを判断する(ステップS14)。更新部56は、条件C3を満たす情報があると判断した場合、画面の分割を行う(ステップS15)。条件C3は、画面sに二つの入力データ項目din1と入力データ項目din2があり、入力データ項目din1へ値を入力する操作と入力データ項目din2へ値を入力する操作が独立しているという条件である。条件C3は、(∀dout∈Out(s):DFL*(din1,dout)+DFL*(din2,dout)=SFL*(s)-α)と表される。αは0、又は、所定の小さな正の値である。更新部56は、条件C3を満たしていると判断した場合、画面sを、入力データ項目din1の値を設定する画面s1と入力データ項目din2の値を設定する画面s2とに分割する。
【0061】
図14は、画面の分割の例を示す図である。図14(a)に示すように、画面sの入力データ項目の集合はIn(s)、出力データ項目の集合はOut(s)である。In(s)には、入力データ項目din1と入力データ項目din2が含まれる。画面sにおいて入力データ項目din1へ値を入力する操作と入力データ項目din2へ値を入力する操作とが独立している場合、条件C3を満たす。この場合、図14(b)に示すように、更新部56は、画面sを、入力データ項目din1の値を設定する画面s1と入力データ項目din2の値を設定する画面s2とに分割する。画面s1の出力データ項目の集合Out(s1)及び画面s2の出力データ項目の集合Out(s2)は、画面sの出力データ項目の集合Out(s)とする。すなわち、画面s1の入力データ項目をdin1、出力データ項目をOut(s)とし、画面s2の入力データ項目をdin2、出力データ項目をOut(s)とする。
【0062】
図15は、分割された画面s1及びs2の遷移の例を示す図である。画面sの分割前、画面遷移図STDにおいて、画面sは画面sa及び画面sそれぞれと両方向の遷移(sa,s)、(s,sa)、(s,s)、(s,s)を有する。この場合、更新部56は、図15(a)に示すように、画面s1は、画面s2、画面sa及び画面sそれぞれとの両方向の遷移(sa,s1)、(s1,sa)、(s1,s)、(s,s1)、(s1,s2)、(s2,s1)を有し、画面s2は、画面s1、画面sa及び画面sそれぞれとの両方向の遷移(s1,s2)、(s2,s1)、(sa,s2)、(s2,sa)、(s2,s)、(s,s2)を有するように画面遷移図STDを変更する。あるいは、更新部56は、図15(b)に示すように、画面s1は、画面sa及び画面s2それぞれと両方向の遷移(sa,s1)、(s1,sa)、(s1,s2)、(s2,s1)を有し、画面s2は、画面s1及び画面sそれぞれと両方向の遷移(s1,s2)、(s2,s1)、(s2,s)、(s,s2)を有するように画面遷移図STDを変更してもよい。
【0063】
分割前に画面saから画面sへの遷移(sa,s)があり、画面sから画面saへの遷移(s,sa)がない場合、更新部56は、分割後、図15(a)における遷移(s1,sa)、(s2,sa)を生成せず、図15(b)における遷移(s1,sa)を生成しない。分割前に画面sから画面sへの遷移(s,s)があり、画面sから画面sへの遷移(s,s)がない場合、更新部56は、分割後、図15(a)における遷移(s,s1)、(s,s2)を生成せず、図15(b)における遷移(s,s2)を生成しない。更新部56は、画面s1と画面s2の間については両方向の遷移を生成してもよく、画面s1から画面s2への一方向の遷移を生成してもよい。
【0064】
図6の処理において、更新部56は、条件C3を満たす情報がないと判断した場合、分析部55により算出された情報が条件C4を満たすか否かを判断する(ステップS16)。更新部56は、条件C4を満たす情報があると判断した場合、画面の削除を行う(ステップS17)。条件C4は、画面操作履歴Lが示す操作において、画面sに一度もアクセスがないという条件である。条件C4は、(SF(s)=0)と表される。更新部56は、条件C4を満たしていると判断した場合、画面遷移図STDから画面sを削除するよう変更を行う。更新部56は、画面sへの遷移を有していた他の画面から、画面sへの遷移を削除する。
【0065】
更新部56は、条件C4を満たす情報がないと判断した場合、分析部55により算出された情報が条件C5を満たすか否かを判断する(ステップS18)。更新部56は、条件C5を満たす情報があると判断した場合、遷移を追加する(ステップS19)。条件C5は、画面操作履歴Lが示す操作において、画面sにおいてデータ項目dinへ値を入力する時、別画面s’のデータ項目doutの参照が時々生じるという条件である。条件C5は、(0<DP(din,dout)<閾値w5<1)と表される。閾値w5<閾値w1,閾値w2である。更新部56は、画面sから画面s’への遷移と、画面s’から画面sへの遷移とを追加するように画面遷移図STDを変更する。
【0066】
図16は、遷移の追加の例を示す図である。図16(a)に示すように、画面遷移図STDにおいて、画面sの入力データ項目の集合はIn(s)、出力データ項目の集合はOut(s)であり、画面s’の入力データ項目の集合はIn(s’)、出力データ項目の集合はOut(s’)である。画面sの入力データ項目の集合In(s)に含まれるデータ項目dinへ値を入力する時、別画面s’の出力データ項目の集合Out(s’)に含まれるデータ項目doutの参照が時々生じる場合、DP(din,dout)は条件C5を満たす。この場合、図16(b)に示すように、更新部56は、遷移Tに画面sから画面s’への遷移(s,s’)と、画面s’から画面sへの遷移(s’,s)を追加する。これは、画面遷移図STDへのリンクの新設を意味する。
【0067】
更新部56は、条件C5を満たす情報がないと判断した場合、分析部55により算出された情報が条件C6を満たすか否かを判断する(ステップS20)。更新部56は、条件C6を満たす情報があると判断した場合、遷移を削除する(ステップS21)。条件C6は、画面操作履歴Lが示す操作において、遷移tが一度も生じないという条件である。条件C6は、(TF(t)=0)と表される。更新部56は、画面遷移図STDから条件C6を満たす遷移tを削除する変更を行う。
【0068】
更新部56は、条件C1~条件C6を満たすものがなくなるまでステップS10~ステップS21の処理を繰り返して変更された画面遷移図STDを、画面遷移図STDとして記憶部52に書き込む(ステップS22)。更新部56は、画面遷移図STDを情報システムΣの開発環境に出力する。情報システムΣの開発環境は、情報処理装置3が記憶する表示画面情報を画面遷移図STDに従って変更する。なお、更新部56が、情報処理装置3が記憶する表示画面情報を画面遷移図STDに従って変更してもよい。
【0069】
なお、上記実施形態において、画面遷移個別化装置5は、利用者個別に画面遷移を個別化したが、同一の画面遷移図を利用しているという条件下で、個別化する単位を任意とすることができる。例えば、情報システムΣを導入している企業や団体の単位でもよく、利用者の属性の単位でもよく、案件の単位でもよい。利用者の属性は、例えば、所属部署や地域などである。情報取得部53は、個別化する単位に属する利用者の画面遷移図及び画面操作履歴を取得する。
【0070】
なお、条件C1~C6の判定の順序を変更してもよい。また、条件C1~C6のうち一部の判定を行ってもよい。また、更新部56は、ステップS11、ステップS13、ステップS15、ステップS17、ステップS19及びステップS21の全て又は一部において、処理の実行可否を問い合わせるための問い合わせ画面を画面遷移個別化装置5の図示しない表示部に表示してもよい。更新部56は、表示した問い合わせ画面に対応して画面遷移個別化装置5の図示しない入力部により処理の実行可が入力された場合に、実行可否の問い合わせた対象の処理を実行し、実行不可が入力された場合はその処理を実行しない。更新部56は、この問い合わせ画面を情報処理装置3の表示部33に表示してもよい。更新部56は、情報処理装置3から利用者が入力部32により入力した実行可否を受信する。
【0071】
続いて、画面遷移個別化装置5の適用事例を説明する。適用対象の情報システムΣは、給電システムである。この給電システムは毎日、需要予測や市場状況に応じて、電力の需給量を決める機能を提供する。画面遷移個別化装置5が、給電システムのこの機能(案件に相当)を利用するために、3人の利用者が給電システムの装置を操作したときの画面操作履歴を用いて画面遷移を個別化した結果と効果を以下に示す。給電システムのカスタマイズがされていないオリジナルの画面遷移図は、図3に示すものと同様である。以下では、ユーザ名xxxの利用者を利用者xxxと記載する。
【0072】
まず、一人目の利用者desmvの画面遷移個別化について説明する。
図17は、利用者desmvのイベントログの一部を示す図である。イベントログは、時刻(Time)と、利用者名(UserName)と、利用者識別子(UserID)と、画面(Screen)と、入力データ項目へ入力された値(InputData)とを含む。情報取得部53は、このイベントログから、図4に示す画面操作履歴情報と同等の情報を得る。分析部55は、利用者desmvのイベントログを用いて、画面訪問頻度SFL*(s)、画面訪問確率SPL*(s)、遷移発生頻度TFL*、遷移発生確率TPL*、データ参照頻度DF、及び、データ参照確率DPを算出する。
【0073】
図18は、利用者desmvの画面訪問頻度SFL*(s)及び画面訪問確率SPL*(s)を示す。図19は、利用者desmvの遷移発生頻度TFL*及び遷移発生確率TPL*を示す。図20は、利用者desmvのデータ参照頻度DFを示し、図21は、利用者desmvのデータ参照確率DPを示す。
【0074】
図21に示すように、利用者desmvのデータ参照確率DP(DemandForcast, WeatherConditions)=0.8となった。更新部56は、DP(DemandForcast, WeatherConditions)=0.8>w1=0.5であるため、条件C1を満たすと判断する。これは、画面DemandForcastExecutionScreenの入力データ項目DemandForcastの値を入力するために、画面CustomerEditScreenの出力データ項目WeatherConditionsの値を頻繁に参照していることを意味する。従って、更新部56は、図6に示すステップS11の処理を行う。すなわち、更新部56は、画面DemandForcastExecutionScreenに、画面CustomerEditScreenのデータ項目を補充する。図22は、この変更を行った画面遷移図を示す図である。図22では、画面DemandForcastExecutionScreenに、画面CustomerEditScreenの出力データ項目だけでなく、入力データ項目についても補充を行っている。
【0075】
図23は、画面遷移の変更の効果を示す図である。同図は、1日当たりの画面遷移の回数の変化を示す。改善前のシステムでは、通常操作による画面遷移は平均6.2回、彷徨い操作による画面遷移は平均9.2回発生していた。改善後は、彷徨いによる画面遷移は0回、通常操作による画面遷移は5回となった。このように、彷徨い操作による画面遷移は9.2回、通常操作による画面遷移は1.2回削減することができた。削減率は67.5%である。
【0076】
次に、二人目の利用者abbの画面遷移個別化について説明する。
図24は、利用者abbのイベントログの一部を示す図である。情報取得部53は、このイベントログから、図4に示す画面操作履歴情報と同等の情報を得る。分析部55は、利用者abbのイベントログを用いて、画面訪問頻度SFL*(s)、画面訪問確率SPL*(s)、遷移発生頻度TFL*、遷移発生確率TPL*、データ参照頻度DF、及び、データ参照確率DPを算出する。
【0077】
図25は、利用者abbの画面訪問頻度SFL*(s)及び画面訪問確率SPL*(s)を示す。図26、利用者abbの遷移発生頻度TFL*及び遷移発生確率TPL*を示す。図27は、利用者abbのデータ参照頻度DFを示し、図28は、利用者abbのデータ参照確率DPを示す。
【0078】
図27に示すように、利用者abbのデータ参照確率DP(DemandForcast, WeatherConditions)=0.4となった。更新部56は、DP(DemandForcast, WeatherConditions)=0.4>w3=0.3であるため、条件C3を満たすと判断する。これは画面DemandForcastExecutionScreenの入力データ項目DemandForcastの値を入力するために、画面CustomerEditScreenの出力データ項目WeatherConditionsの値を頻繁に参照していることを意味する。従って、更新部56は、図6に示すステップS15の処理を行う。すなわち、更新部56は、画面DemandForcastExecutionScreenと画面CustomerEditScreenとの間に両方向の遷移を加える。図29は、この変更を行った画面遷移図を示す図である。
【0079】
図30は、画面遷移の変更の効果を示す図である。同図は、1日当たりの画面遷移の回数の変化を示す。同図に示すように、従来は彷徨い操作による画面遷移が平均4.9回であり、通常操作による画面遷移が平均5.5回行われていた。改善後は、彷徨い操作による画面遷移は2回、通常操作による画面遷移は5回となった。このように、彷徨い操作は2.9回、通常操作は0.5回の画面遷移の削減に成功した。削減率は、33%であった。
【0080】
次に、三人目の利用者accの画面遷移個別化について説明する。
図31は、利用者accのイベントログの一部を示す図である。情報取得部53は、このイベントログから、図4に示す画面操作履歴情報と同等の情報を得る。分析部55は、利用者accのイベントログを用いて、画面訪問頻度SFL*(s)、画面訪問確率SPL*(s)、遷移発生頻度TFL*、遷移発生確率TPL*、データ参照頻度DF、及び、データ参照確率DPを算出する。
【0081】
図32は、利用者accの画面訪問頻度SFL*(s)及び画面訪問確率SPL*(s)を示す。図33、利用者accの遷移発生頻度TFL*及び遷移発生確率TPL*を示す。図34は、利用者accのデータ参照頻度DFを示し、図35は、利用者abbのデータ参照確率DPを示す。
【0082】
図35に示すように、利用者accは他の画面からのデータ参照を行っていないため、通常操作のみで操作できていることがわかる。通常操作も画面CustomerEditScreenへ寄り道するケースとしないケースに分けられる。
【0083】
図36は、利用者accが画面CustomerEditScreenに寄り道するケースとしないケースの画面遷移の回数の比較を示す。利用者accについては、図33に示すとおり2種類の通常操作が存在するが、画面遷移個別化装置5の条件C1から条件C6には当てはまらないため、画面遷移を現状のまま維持する。
【0084】
上記の適用事例から、画面遷移を利用者個別に利用者の負荷を低減するように改善することができたことがわかる。
【0085】
上述した実施形態における情報処理装置3の処理部35及び画面遷移個別化装置5の各部の機能はコンピュータで実現される。その場合、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるものであってもよい。
【0086】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、検出部54、分析部55及び更新部56を持つことにより、利用者が使用している画面遷移を利用者の負荷を低減するように改善することができる。本実施形態は、画面遷移を持つシステムへ広く適用することが可能である。例えば、画面遷移個別化装置5が記憶部34及び処理部35を有し、インターネットを介して各ユーザの情報処理装置3としての端末に各種サービスを提供するための画面を表示させる場合などにも適用可能である。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
1…画面遷移個別化システム、3…情報処理装置、5…画面遷移個別化装置、31…通信部、32…入力部、33…表示部、34…記憶部、35…処理部、51…通信部、52…記憶部、53…情報取得部、54…検出部、55…分析部、56…更新部
図1
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