(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】表面検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20221109BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20221109BHJP
G06T 7/00 20170101ALN20221109BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G01B11/30 A
G06T7/00 610B
(21)【出願番号】P 2018066621
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】樫原 一男
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-109106(JP,A)
【文献】特開2010-223597(JP,A)
【文献】特開平09-189513(JP,A)
【文献】特開2004-117204(JP,A)
【文献】特開2006-275529(JP,A)
【文献】特開平10-010053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G03B 15/00
G06T 1/00 - G06T 1/40
G06T 3/00 - G06T 3/60
G06T 5/00 - G06T 5/50
G06T 7/00 - G06T 7/90
G06T 9/00 - G06T 9/40
H04N 5/222- H04N 5/257
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下高さ方向または水平方向に延びる複数のライン状光源が間隔を隔てて平行に並んで設けられ、かつ前記複数のライン状光源からの照明が検査対象面において縞模様をなす複数の帯状の照明映り込み部として表れるように前記検査対象面を照明するための照明装置と、
前記検査対象面における前記複数の帯状の照明映り込み部を撮像可能に前記検査対象面に対向する撮像手段と、
この撮像手段により撮像された撮像画像における前記複数の帯状の照明映り込み部の輪郭として、前記検査対象面の凹状の欠陥に対応
し、かつ前記照明映り込み部の帯の両側に位置する一対の膨出部、または凸状の欠陥に対応
し、かつ前記照明映り込み部の帯の両側に位置する一対の窪み部を検出する処理を実行可能なデータ処理手段と、
を備えている、表面検査装置であって、
前記データ処理手段は、前記撮像画像における前記
一対の膨出部または前記
一対の窪み部を検出した場合には、この検出された
一対の膨出部または
一対の窪み部に対応する欠陥の程度を評価する評価処理を実行可能であり、
この評価処理においては、
前記
一対の膨出部については、前記
一対の膨出部に外接する第1の矩形枠が仮想設定され、かつこの第1の矩形枠の2つの横辺のそれぞれの中点から縦辺の中点に向かう2つの直線の夾角としての広がり角φ1が求められ、
前記
一対の窪み部については、2本の対角線が前記
一対の窪み部の輪郭に近似的に沿うようにして前記
一対の窪み部を囲む第2の矩形枠が仮想設定され、かつ前記2本の対角線の交差角としての広がり角φ2が求められ、
前記広がり角φ1,φ2は、前記
一対の膨出部または前記
一対の窪み部に対応する欠陥の程度を評価するためのパラメータとして用いられるように構成されていることを特徴とする、表面検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば自動車の塗装面などの所望の検査対象面のいわゆる凹凸検査を行なうのに用いられる表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の塗装面の検査の手法としては、たとえば特許文献1,2に記載されているように、自動車の塗装面に蛍光灯またはLED光源などを用いた照明装置から光を照射させた上で、照明映り込み部を検査員が目視によって観察する手法があり、これが多用されている。前記塗装面に凹状または凸状の欠陥がある場合、照明映り込み部の輪郭の一部は、膨出部または窪み部となる。検査員は、そのような膨出部や窪み部を観察することにより、欠陥の有無や欠陥の程度を判断する。
ただし、このような検査員による検査作業は、作業効率が悪いばかりか、欠陥の判断結果にバラツキを生じ易いといった不具合がある。
【0003】
このような不具合を解消する手段としては、検査対象面を撮像手段によって撮像し、この撮像画像に基づいて、欠陥の検出や、その大きさの判断処理などをデータ処理化することが考えられる。ところが、従来においては、構成が簡易であって、低コストであり、しかも自動車の完成ラインの表面検査に適するようなものは、提案されていないのが実情であった。
【0004】
なお、従来においては、たとえば特許文献3に示すような表面検査装置が提案されている。
この表面検査装置においては、本願の
図7に示すように、照明装置3Eから検査対象面90への光照射領域が、撮像カメラ8により撮像される。検査対象面90の凸部91および凹部92には、影93a,93bが形成されるが、この影93a,93bの長さLnを測定することにより、凸部91の高さ、ならびに凹部92の深さ(いずれもLn・tanα)を求めている。ところが、凸部91および凹部92は、実際には、検査対象面90において一定の面積を占める平面視2次元形状であるのが通例である。したがって、前記した処理によって、凸部91および凹部92のそれぞれの一部の高さを求めるだけでは、それら凸部91および凹部92の全体のサイズを適切に評価することは難しい。評価を信頼性の高いものとするには、
図7に示した方向とは交差する方向においても、同様な検査を行なうことが望まれる。ただし、これでは照明装置3Eや撮像カメラ8の向きを大きく変更する必要がある他、全体のデータ処理量は膨大となって、所要時間が長期化し、効率のよい検査は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表平10-509238号公報
【文献】国際公開WO2013/118898号公報
【文献】特開2005-274256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、装置構成を簡易とし、かつ低コスト化が可能であるとともに、検査結果の信頼性なども優れたものとすることが可能な表面検査装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される表面検査装置は、上下高さ方向または水平方向に延びる複数のライン状光源が間隔を隔てて平行に並んで設けられ、かつ前記複数のライン状光源からの照明が検査対象面において縞模様をなす複数の帯状の照明映り込み部として表れるように前記検査対象面を照明するための照明装置と、前記検査対象面における前記複数の帯状の照明映り込み部を撮像可能に前記検査対象面に対向する撮像手段と、この撮像手段により撮像された撮像画像における前記複数の帯状の照明映り込み部の輪郭として、前記検査対象面の凹状の欠陥に対応し、かつ前記照明映り込み部の帯の両側に位置する一対の膨出部、または凸状の欠陥に対応し、かつ前記照明映り込み部の帯の両側に位置する一対の窪み部を検出する処理を実行可能なデータ処理手段と、を備えている、表面検査装置であって、前記データ処理手段は、前記撮像画像における前記一対の膨出部または前記一対の窪み部を検出した場合には、この検出された一対の膨出部または一対の窪み部に対応する欠陥の程度を評価する評価処理を実行可能であり、この評価処理においては、前記一対の膨出部については、前記一対の膨出部に外接する第1の矩形枠が仮想設定され、かつこの第1の矩形枠の2つの横辺のそれぞれの中点から縦辺の中点に向かう2つの直線の夾角としての広がり角φ1が求められ、前記一対の窪み部については、2本の対角線が前記一対の窪み部の輪郭に近似的に沿うようにして前記一対の窪み部を囲む第2の矩形枠が仮想設定され、かつ前記2本の対角線の交差角としての広がり角φ2が求められ、前記広がり角φ1,φ2は、前記一対の膨出部または前記一対の窪み部に対応する欠陥の程度を評価するためのパラメータとして用いられるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、検査員の目視による作業を不要とし、人的な検査ミスや、過誤の判断結果が発生することを好適に防止し得ることは勿論のこと、次のような効果がさらに得られる。
すなわち、検査対象面の撮像画像において、照明映り込み部の輪郭の膨出部または窪み部が検出された場合には、これらの2次元形状の特徴を示す数値として前記広がり角φ1,φ2が求められ、かつこの値に基づいて欠陥の程度が評価されるために、たとえば膨出部の膨出高さのみ、または窪み部の深さのみを測定し、膨出部または窪み部の原因となっている欠陥を評価する手段と比較すると、欠陥の評価の適正化を図ることが可能である。また、検査対象面の同一箇所を、異なる角度から照明して撮像するような煩わしさもなくすことが可能である。したがって、装置構成を簡易なものとして、低コスト化を図り、またデータ処理制御を容易なものとしつつ、信頼性の高い表面検査結果を得ることが可能である。
【0011】
さらに、前記構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、膨出部および窪み部の前記した所定の広がり角φ1,φ2の大きさと、検査対象面に存在する欠陥の大きさとは、かなり正確に対応した関係にあり、このことは本発明者の試験により確認されている。したがって、前記した広がり角φ1,φ2を用いることにより、検査の精度をより高めることが可能である。また、前記した広がり角φ1,φ2は、比較的簡易な画像データ処理により、適切かつ迅速に求めることができる。したがって、プログラムソフトなどのコストを低減する上でも好ましく、また処理の所要時間も一層短いものとすることが可能である。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る表面検査装置の一例を示す概略説明図である。
【
図2】
図1に示す表面検査装置の各機器のハード構成の一例を示す概略ブロック図である。
【
図3】(a)は、
図1に示す表面検査装置における照明装置の要部概略側面図であり、(b)は、
図1に示す自動車の側面に表われる複数の照明映り込み部を模式的に示す説明図である。
【
図4】(a)~(c)は、撮像画像における膨出部についての画像処理の一例を示す説明図である。
【
図5】(a)~(c)は、撮像画像における窪み部についての画像処理の一例を示す説明図である。
【
図6】
図1に表面検査装置において実行されるデータ処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】(a),(b)は、従来技術の一例を示す要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1に示す表面検査装置Aは、たとえば自動車の完成検査ラインに設置されており、検査対象面としての自動車4の外面を照明するための照明装置3、複数の撮像端末1、および情報管理端末2を備えている。複数の撮像端末1は、本発明でいう撮像手段の具体例に相当し、情報管理端末2は、本発明でいうデータ処理手段の具体例に相当する。
【0016】
照明装置3は、ライン状光源30が自動車4の配置箇所の左右両側に適当な間隔で起立して並べられた構成である。ただし、
図3(a)に示すように、ライン状光源30の一部を、略水平方向に延びるように設けた構成とすることもできる。ライン状光源30としては、たとえば直管状の蛍光灯またはLED光源などが用いられている。このため、
図3(b)に模式的に示すように、自動車4の外面には、ライン状光源30からの照明が映り込んだ複数条の照明映り込み部5(白色部分)が縞模様の状態に表われる。
図3(b)では、照明映り込み部5が全て直線状に示されているが、自動車4の外面の曲面領域においては、照明映り込み部5はそれに対応して湾曲したライン状となる。また、
図1では、省略しているが、ライン状光源30の背後には、リフレクタが適宜設けられ、自動車4の外面への光の照射効率が高められている。
【0017】
撮像端末1は、たとえばiPad(登録商標)などのタブレット型の多機能端末を用いて構成されており、その基本的なハード構成自体は、既存のタブレット型の多機能端末と同様である。具体的には、この撮像端末1は、CPUなどを用いて構成されたデータ処理部10、Wi-Fiなどの無線通信が可能な通信回路11、ROMやRAMなどを有する記憶部12、液晶表示器などを利用した表示部13、タッチパネル方式の操作部14、撮像部15(カメラ部)、およびスピーカ16を具備しており、かつこれらが互いにバス接続された構成である。好ましくは、記憶部12には、情報管理端末2と同様に、表面検査実行用のプログラムデータDaがインストールされており、情報管理端末2を用いることなく、この撮像端末1を単体で使用するだけであっても、後述するデータ処理を実行し、自動車4の外面の表面検査を行なうことが可能とされている。
【0018】
複数の撮像端末1は、照明装置3による自動車4への照明を妨げない配置で、自動車4の外面を撮像可能に設けられている。
図1では、2つの撮像端末1のみを示しているが、実際には、自動車4の検査対象の外面の全域を撮像可能なように、さらに多くの撮像端末1が設けられている。各撮像端末1において撮像された画像のデータは、無線通信によって情報管理端末2に送信可能である。
【0019】
情報管理端末2は、たとえばデスクトップあるいはノート型などのパーソナルコンピュータであり、複数の撮像端末1や照明装置3の制御、および各種の情報管理を行なうものであるが、各撮像端末1から送信されてきた撮像画像のデータに基づき、自動車4の外面
についての後述する凹凸検査処理も実行可能である。この情報管理端末2は、
図2(b)に示すように、データ処理部20、通信回路21、記憶部22、表示部23、操作部24、およびスピーカ25を具備している。記憶部22には、表面検査実行用のプログラムデータDaがインストールされており、情報管理端末2は、後述するようなデータ処理を実行可能な構成とされている。
【0020】
次に、表面検査装置Aにおいて実行されるデータ処理手順の一例を、
図6に示すフローチャートを参照しつつ説明し、併せてその作用を説明する。
【0021】
まず、表面検査を行なうには、照明装置3がオンとされ、自動車4の外面が照明されている状態において、撮像端末1による撮像を開始させることにより、その撮像画像のデータを、情報管理端末2に送信させる。好ましくは、照明装置3のオンや、撮像端末1による撮像開始動作は、情報管理端末2からの遠隔操作により行なれる。情報管理端末2においては、撮像端末1から前記した撮像画像のデータを受信すると、これを白黒2値化画像に変換する(S1:YES,S2)。このことにより、撮像画像は単純化され、撮像画像における照明映り込み部5の輪郭が鮮明になる。
【0022】
自動車4の外面のうち、照明映り込み部5の輪郭に相当する箇所に欠陥があり、かつこの欠陥が凹状である場合には、
図3(b)に示すように、照明映り込み部5には、その輪郭が部分的に膨出した膨出部50が形成される。この場合、
図4(a)に示すように、撮像画像Ia中に
一対の膨出部50
(以降は、単に膨出部50と称する)の画像が含まれるが、前記の2値化処理により、同図(b)に示すように、膨出部50の単純化・明確化が図られる。一方、自動車4の外面の欠陥が凸状である場合には、
図5(a)に示すように、撮像画像Iaの照明映り込み部5には、
一対の窪み部51
(以降は、単に窪み部51と称する)が形成された状態となる。同図(b)に示すように、この窪み部51も、前記の2値化処理により単純化・明確化される。
【0023】
次いで、撮像画像Iaにおいて、照明映り込み部5の輪郭に歪みがあるか否か、具体的には、膨出部50または窪み部51が存在するか否かの検出処理が実行される(S3)。たとえば、膨出部50は、楕円形またはこれに近い画像の検索処理により検出可能であり、窪み部51は、中央部が両端部よりも細く括れた形状の画像の検索処理により検出可能である。
【0024】
膨出部50または窪み部51が検出された場合には、これらの2次元形状としての特徴を示す数値(後述の広がり角φ1,φ2)を求めるための処理(数値化処理)が実行される。
具体的には、膨出部50が検出された場合には、
図4(c)に示すように、膨出部50に外接するようにして、この膨出部50を囲む第1の矩形枠6Aを仮想設定する(S4:YES,S5)。その後は、第1の矩形枠6Aの2つの横辺のそれぞれの中点Pa,Pbから縦辺の中点Pcに向かう2つの直線Laの夾角としての広がり角φ1を求める(S6)。第1の矩形枠6Aの横辺の長さをa、縦辺の長さをhとすると、広がり角φ1は、次の式で求められる。
広がり角φ1=2・tan
-1(h/a)
【0025】
一方、前記した2値化処理の対象が窪み部51である場合、
図5(c)に示すように、窪み部51を囲む第2の矩形枠6Bを仮想設定する(S4:NO,S10)。ただし、この第2の矩形枠6Bは、2本の対角線Lbが、窪み部51の輪郭に近似的に沿うものである。その後は、2本の対角線Lbの交差角としての広がり角φ2を求める(S11)。膨出部50の場合と同様に、第2の矩形枠6Bの横辺の長さをa、縦辺の長さをhとすると、広がり角φ2は、次の式で求められる。
広がり角φ2=2・tan
-1(h/a)
広がり角φ2を求める式は、広がり角φ1を求める式と同じである。
【0026】
前記した広がり角φ1,φ2を算出した後には、これらの値に基づき、膨出部50または窪み部51を生じさせている自動車4の表面の欠陥のランク付けが行なわれる(S7)。このランク付けにおいては、広がり角φ1,φ2の値が、予め定められた複数の閾値と比較される。一方、自動車4の表面の欠陥のサイズが大きいほど、広がり角φ1,φ2は大きくなる。したがって、たとえば広がり角φ1,φ2がかなり大きく、所定の最大許容値を超える角度であれば、欠陥は、最低のランク1に該当する欠陥であるとされ、NGとされる。広がり角φ1,φ2が徐々に小さくなるに連れて、欠陥のランクは、ランク2,3,4…と上がっていく。ただし、具体的なランク数、各ランクの具体的な範囲の内容は限定されない。
【0027】
前記したような一連の検査処理は、予め指定された領域の全体について完了するまで繰り返される(S8:NO,S1)。したがって、膨出部50や窪み部51が検出される都度、その原因である欠陥のランク付けがなされる。一方、膨出部50や窪み部51が検出されない場合には、凹凸状の欠陥は、存在しないと判断される。指定領域の全体の検査が完了した場合には、その検査結果が、表示部23に画面表示される(S8:YES,S9)。
【0028】
情報管理端末2は、複数の撮像端末1のそれぞれから送信されてきた撮像画像のデータに基づく表面検査処理を順次実行し、複数の撮像端末1がそれぞれ担当する撮像領域の全ての検査結果が、表示部23に集約して表示されるようになっている。
ただし、これとは異なり、複数の撮像端末1のそれぞれにおいて、表面検査の処理が個別に行なわれた上で、その検査結果が情報管理端末2に送信され、情報管理端末2においてそれらの内容が一括して画面表示されるといった構成とすることもできる。
【0029】
前記した検査処理に際し、照明装置3、自動車4、および撮像端末1の三者の相対的な位置、または向きが一定のままであると、撮像画像における照明映り込み部5の位置も一定となるため、そのままでは照明映り込み部5の輪郭から離れた箇所の欠陥を検出することは困難である。したがって、そのようなことを防止する手段として、前記した三者の相対的な位置、あるいは向きを変更し、または変更させつつ、自動車4の外面の各部が順次撮像されることとなる。
【0030】
前記した一連のデータ処理によれば、自動車4の外面の凹凸検査は、撮像端末1により撮像された撮像画像に基づいて適切に行なわれる。このため、検査員の目視による作業とは異なり、検査ミス、検査結果のバラツキなどを適切に防止または抑制することが可能であり、検査のリードタイムも短くすることが可能である。
【0031】
また、照明映り込み部5の膨出部50または窪み部51に対応する欠陥を評価する手段として、
図4(c)および
図5(c)に示した広がり角φ1,φ2を用いているが、これら広がり角φ1,φ2は、膨出部50または窪み部51の横幅、または縦幅などの1次元的なサイズを示すものではなく、膨出部50の二次元形状としての特徴を適切に示すものであって、既述したように、実際の欠陥のサイズにかなり正確に対応する。したがって、たとえば膨出部50または窪み部51の横幅のみ、あるいは縦幅のみに基づいて欠陥のサイズを判断するといった処理と比較すると、欠陥の評価をより正確に行なうことが可能である。その一方、広がり角φ1,φ2は、比較的簡易な画像データ処理によって求めることが可能であるため、表面検査処理の時間短縮を、より促進することができる。プログラムソフトも廉価にすることができる。
さらに、撮像端末1は、それ単独で表面検査を行なうことが可能な機能を有している。このため、この撮像端末1を、たとえばオフライン上での自動車単品の表面検査に用いる
といったことも可能であり、利便性に優れる。
【0032】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る表面検査装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0033】
上述の実施形態では、膨出部または窪み部の2次元形状としての特徴を示す数値として、所定の広がり角φ1,φ2を用いたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、
図4(c)および
図5(c)に示した第1および第2の矩形枠6A,6Bの縦辺の長さhと横辺の長さaとの比、またはこれを適宜補正した数値などを用いてもよい。
【0034】
撮像手段は、照明映り込み部を撮像可能な機能を有するものであればよく、撮像用途に特化したような撮像カメラを用いることもできる。なお、上述の実施形態のように、撮像端末を可搬・多機能型の端末とし、かつそれ単体で表面検査が可能な構成(撮像端末のデータ処理部が、本発明でいうデータ処理手段に相当する構成)とすれば、たとえば自動車製造ラインの様々な場所に撮像端末を携帯し、表面検査を臨機応変に行なうことが可能となり、便利である。撮像作業は、人手によって行なわれてもよい。
検査対象面は、自動車の外面に限らず、自動車以外の様々な面をその検査対象とすることが可能である。塗装面に限らず、これ以外のたとえばプレス面なども、検査対象とすることができることは勿論である。照明装置は、照明映り込み部を発生させ得るように、検査対象面を照明可能であればよい。
【符号の説明】
【0035】
A 表面検査装置
φ1,φ2 広がり角
1 撮像端末(撮像手段)
2 情報管理端末(データ処理手段)
3 照明装置
5 照明映り込み部
50 膨出部
51 窪み部
6A,6B 第1および第2の矩形枠