(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】鉄道車両の荷物棚
(51)【国際特許分類】
B61D 37/00 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
B61D37/00 F
(21)【出願番号】P 2018042630
(22)【出願日】2018-03-09
【審査請求日】2021-02-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 道夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(72)【発明者】
【氏名】中村 征広
(72)【発明者】
【氏名】青木 盛人
(72)【発明者】
【氏名】田遠 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】讃井 英人
(72)【発明者】
【氏名】伊東 隼
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001881(JP,A)
【文献】特開平09-132139(JP,A)
【文献】米国特許第05441326(US,A)
【文献】特開2012-011963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 37/00
B60R 7/08-7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の長手方向に沿って伸び、複数の荷棚受と、それら荷棚受により支持されると共に前記長手方向に沿ってつなげられる複数の荷棚板から構成される鉄道車両の荷物棚において、
前記荷棚板の上面に、液体の拡散を制限するための複数の堰が、前記長手方向に沿って所定間隔を空けて設けられ、
前記堰は、前記長手方向における断面が、なだらかな台形をなし、両端の緩い傾斜部と、中央の平坦部とを含むことを特徴とする鉄道車両の荷物棚。
【請求項2】
鉄道車両の長手方向に沿って伸び、複数の荷棚受と、それら荷棚受により支持されると共に前記長手方向に沿ってつなげられる複数の荷棚板から構成される鉄道車両の荷物棚において、
前記荷棚板の上面に、液体の拡散を制限するための複数の堰が、前記長手方向に沿って所定間隔を空けて設けられ、
前記堰は、前記荷棚板と別体に形成されると共に、ネジにより前記荷棚受に固定されるように構成され、
前記堰には、前記ネジが収容される凹部と前記凹部の中心にネジ孔が形成され、前記堰が前記ネジにより前記荷棚受に締め付けられた状態で前記ネジの頭部が前記凹部の中に没入することを特徴とする鉄道車両の荷物棚。
【請求項3】
請求項
2に記載の鉄道車両の荷物棚において、
前記堰は、前記荷物棚の前記長手方向と直交する方向に伸びる対称軸を中心に対称形状をなし、
前記凹部と前記ネジ孔は、前記対称軸から前記長手方向へ所定距離だけ変位して配置されることを特徴とする鉄道車両の荷物棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される発明は、鉄道車両の荷物棚に係り、特に詳しくは、荷物棚の上にこぼれた液体の拡散に対処できるようにした構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両において、底部が板材よりなる荷物棚は既に知られている。例えば、下記の特許文献1には、複数の荷棚受と、それらにより支持される荷棚板から構成される荷物棚が記載されている。この荷物棚において、荷棚板は、その全長に渡り一様な断面形状を有する長尺な前側及び後側枠部材と、それらの間に緩衝材を介して挟まれる棚板部材とを備える。そして、荷棚受の上側に荷棚板の前側及び後側枠部材が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように底部が板材よりなる荷物棚では、上面の水密性が確保されているため、荷物棚の上に荷物等から飲物等の液体がこぼれると、荷棚板が液体の受皿となってしまう。しかも、車両が加減速することにより、液体が荷棚板の上面を長手方向へ拡散し、別の荷物を汚すおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、荷物棚の上にこぼれた液体の拡散範囲を制限することを可能とした鉄道車両の荷物棚を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、鉄道車両の長手方向に沿って伸び、複数の荷棚受と、それら荷棚受により支持されると共に前記長手方向に沿ってつなげられる複数の荷棚板から構成される鉄道車両の荷物棚において、前記荷棚板の上面に、液体の拡散を制限するための複数の堰が、前記長手方向に沿って所定間隔を空けて設けられることを特徴とする。
【0007】
上記発明の構成によれば、荷棚板の上面が、鉄道車両の長手方向に沿って所定間隔を空けて設けられた複数の堰により仕切られるので、荷棚板の上面に液体がこぼれても、隣り合う堰の間で液体の移動が止められる。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記堰は、前記長手方向において、座席一列分の前後方向スペースの境界に対応して配置されることを特徴とする。
【0009】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、堰が、座席一列分の前後方向スペースの境界に対応して配置されるので、座席一列分の範囲に対応して荷棚板の上面での液体の移動が止められる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記荷棚板は、前記鉄道車両の窓側へ向けて下降するように所定角度をもって傾斜するように配置され、前記堰は、前記荷棚板の傾斜方向下部に配置されることを特徴とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用に加え、荷棚板が、鉄道車両の窓側へ向けて下降するように傾斜して配置され、堰が荷棚板の傾斜方向下部に配置されるので、荷物が堰に閊えることなく荷棚板の窓側へ案内される。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記堰は、前記長手方向における断面が、なだらかな台形をなし、両端の緩い傾斜部と、中央の平坦部とを含むことを特徴とする。
【0013】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の作用に加え、堰の断面がなだらかな台形をなし、その両端の緩い傾斜部が荷物棚の長手方向へ向いているので、荷物棚の上で堰に対する荷物の摺動が許容される。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記堰は、前記荷棚板と別体に形成されると共に、ネジにより前記荷棚受に固定されるように構成され、前記堰には、前記ネジが収容される凹部と前記凹部の中心にネジ孔が形成され、前記堰が前記ネジにより前記荷棚受に締め付けられた状態で前記ネジの頭部が前記凹部の中に没入することを特徴とする。
【0015】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の作用に加え、堰が荷棚受に締め付けられた状態でネジの頭部が凹部の中に没入しているので、堰の上を荷物が摺動してもネジの頭部が荷物に干渉しない。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記堰は、前記荷物棚の前記長手方向と直交する方向に伸びる対称軸を中心に対称形状をなし、前記凹部と前記ネジ孔は、前記対称軸から前記長手方向へ所定距離だけ変位して配置されることを特徴とする。
【0017】
上記発明の構成によれば、請求項5に記載の発明の作用に加え、堰において凹部とネジ孔が対称軸から変位して配置されるので、隣り合う荷棚板の境目に堰の対称軸を整合させることにより、堰をネジにより片方の荷棚受に締め付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、荷物棚の上にこぼれた液体の拡散範囲を所定間隔に制限することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、荷物棚の上にこぼれた液体の拡散範囲を座席一列分の前後方向スペースに制限することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、荷物を容易に荷物棚に載せることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加え、荷物棚の上で液体の拡散を制限しながら荷物の移動の自由度を確保することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加え、ネジとの接触による荷物の損傷を防止することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明の効果に加え、隣り合う荷棚板の境目でも堰を荷棚受に対し固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係り、鉄道車両の内部の一部を示す平面図。
【
図2】第1実施形態に係り、荷物棚の一部を示す斜視図。
【
図3】第1実施形態に係り、
図1の鎖線楕円(S1)で示す部分を拡大して示す平面図。
【
図4】第1実施形態に係り、
図3の境目部分を示すA-A線断面図。
【
図5】第1実施形態に係り、荷物棚の一部を示す
図3のC-C線断面図。
【
図6】第1実施形態に係り、堰の外観を示す斜視図。
【
図9】第1実施形態に係り、堰を示す
図7のD-D線断面図。
【
図10】第1実施形態に係り、堰を示す
図7のE-E線断面図。
【
図11】第2実施形態に係り、荷物棚の一方の端の部分を示す平面図。
【
図12】第2実施形態に係り、荷物棚の一部を示す
図11のF-F線断面図。
【
図13】第2実施形態に係り、堰の外観を示す斜視図。
【
図15】第2実施形態に係り、堰を示す
図14のG-G線断面図。
【
図16】別の実施形態に係り、荷物棚の一部を示す
図5に準ずる断面図。
【
図17】別の実施形態に係り、荷物棚の一部を示す
図5に準ずる断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下、鉄道車両の荷物棚を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1に、鉄道車両1の内部の一部を平面図により示す。
図2に、荷物棚2の一部を斜視図により示す。
図1、
図2に示すように、鉄道車両1の内部窓側には、その長手方向F1に沿って伸びる荷物棚2が設けられる。この荷物棚2は、鉄道車両1の長手方向F1(荷物棚2の長手方向でもある)に沿って伸び、複数の荷棚受3(
図3、
図4参照)と、それら荷棚受3により支持されると共に前記長手方向F1に沿ってつなげられた複数の荷棚板5から構成される。
【0027】
互いにつなげられた複数の荷棚板5の上面、すなわち荷物棚2の上には、荷物棚2の上にこぼれた液体(例えば、荷物棚2の上に載せられた荷物等から漏れた液体)の拡散を制限するための複数の堰6が設けられる。これら複数の堰6は、前記長手方向F1に沿って所定の間隔D1(
図1、
図2参照)を空けて設けられる。
【0028】
ここで、
図1に示すように、各堰6は、前記長手方向F1において、座席一列分の前後方向スペースSP1の境界に対応して荷棚板5の上に配置される。これにより、荷物棚2の上が、座席一列分の前後方向スペースSP1に対応して前後二つの堰6により仕切られることになる。
【0029】
先ず、荷棚受3と荷棚板5の構成について説明する。
図3に、
図1の鎖線楕円S1で示す部分(隣り合う荷棚板5,5の境目部分)を拡大して平面図により示す。
図4に、
図3の境目部分をA-A線断面図により示す。
【0030】
図3、
図4に示すように、境目部分には、一対をなす第1荷棚受3A及び第2荷棚受3Bよりなる荷棚受3が設けられる。これら荷棚受3の構造は周知であることから、その説明を省略する。
【0031】
また、
図1に示すように、荷棚板5は、前記長手方向F1において所定の長さを有する。
図3、
図4に示すように、荷棚板5は、鉄道車両1の窓側に位置する金属製の窓側板材51と、同車両1の通路側に位置する金属製の通路側板枠52とから構成される。窓側板材51及び通路側板枠52とも、前記長手方向F1に沿って所定の長さを有する。窓側板材51と通路側板枠52は、それらの端部が互いに連結される。荷棚受3と荷棚板5の組み付け構造は周知であることから、その説明を省略する。
【0032】
上記のように荷物棚2が鉄道車両1に設けられた状態において、
図4に示すように、荷棚板5は、鉄道車両1の窓側へ向けて下降するように水平方向に対し所定角度θ1をもって傾斜するように配置される。このように荷棚板5が傾斜することから、荷物棚2の上にこぼれた液体は、荷物棚2の奥側(窓側)へ流れて集合することになる。
【0033】
次に、堰6の構成について詳しく説明する。
図5に、荷物棚2の一部を
図3のC-C線断面図により示す。
図6に、堰6の外観を斜視図により示す。
図7に、堰6を平面図により示す。
図8に、堰6を側面図により示す。
図9に、堰6を
図7のD-D線断面図により示す。
図10に、堰6を
図7のE-E線断面図により示す。
【0034】
図1~
図4に示すように、各堰6は、荷棚板5の傾斜方向下部、すなわち荷物棚2の奥側(窓側)にて上面が水平をなすように配置される。この実施形態では、各堰6は、荷棚板5とは別体に形成されると共に、
図3~
図5に示すように、ネジ11により荷棚受3に固定される。
図5、
図10に示すように、各堰6は、前記長手方向F1における断面がなだらかな台形をなし、左右両端の緩い傾斜部6aと、中央の平坦部6bとを含む。また、各堰6は、
図8において、左側下辺部が先へ向けて傾斜し、右側下角部が円弧状をなしている。ここで、左側下辺部が先へ向けて傾斜するのは、窓側板材51の傾斜面に沿わせるためである。右側下角部が円弧状をなすのは、窓側板材51の曲面に沿わせるためである。各堰6には、ネジ11が収容される二つの凹部6cと各凹部6cの中心にネジ孔6dが形成される。また、堰6の内側には、補強用のリブ6eが形成される。
図5に示すように、堰6がネジ11により荷棚受3(第1荷棚受3A)に締め付けられた状態では、ネジ11の頭部が凹部6cの中に没入するように配置される。また、この凹部6cの中には、ネジ11の頭部を埋めるように樹脂等よりなるシール材12が充填される。
図5に示すように、この実施形態では、隣り合う荷棚板5,5(窓側板材51,51)の上面が互いに同じ高さに(面一をなすように)配置された状態を想定している。この状態において、
図5に示すように、堰6の外縁部分にも、窓側板材51との間に樹脂よりなるシール材12が充填される。このシール材12により堰6と窓側板材51との隙間から液体が漏れることを防ぐことができる。
【0035】
この実施形態において、
図1に示すように、堰6は、前記長手方向F1の全長に渡り点在し、
図7に示すように、堰6の外形は、前記長手方向F1と直交する方向に伸びる対称軸L1を中心に対称形状をなしている。そして、二つの凹部6cとその中のネジ孔6dは、堰6の対称軸L1から前記長手方向F1へ所定距離D2だけ変位して配置される。
【0036】
以上説明したこの実施形態における鉄道車両1の荷物棚2によれば、荷棚板5の上面が、鉄道車両1の長手方向F1に沿って所定の間隔D1だけ空けて設けられた複数の堰6により仕切られるので、荷棚板5(荷物棚2)の上に液体がこぼれても、隣り合う堰6,6の間で液体の移動が止められる。このため、荷物棚2の上にこぼれた液体の拡散範囲を所定の間隔D1に制限することができる。この結果、荷物棚2の上に液体がこぼれても、荷物棚2の広い範囲で液体により荷物が汚れることを未然に防止することができる。すなわち、一ヵ所にこぼれた液体によって他の乗客の荷物を汚すことがないようにすることができる。
【0037】
この実施形態によれば、堰6が、座席一列分の前後方向スペースSP1の境界に対応して配置されるので、座席一列分の範囲に対応して荷棚板5の上面での液体の移動が止められる。このため、荷物棚2の上にこぼれた液体の拡散範囲を座席一列分の前後方向スペースSP1に制限することができる。
【0038】
この実施形態によれば、荷棚板5が、鉄道車両1の窓側へ向けて下降するように傾斜して配置され、二つの堰6が荷棚板5の傾斜方向下部に配置されるので、荷物が堰6に閊えることなく荷棚板5の窓側へ案内される。このため、荷物を容易に荷物棚2に載せることができる。
【0039】
この実施形態によれば、堰6の断面がなだらかな台形をなし、その両端の緩い傾斜部6aが荷物棚2の長手方向F1へ向いているので、荷物棚2の上で堰6に対する荷物の摺動が許容される。このため、荷物棚2の上で液体の拡散を制限しながら、荷物の移動の自由度を確保することができる。
【0040】
この実施形態によれば、堰6が荷棚受3に締め付けられた状態でネジ11の頭部が凹部6cの中に没入しているので、堰6の上を荷物が摺動しても、ネジ11の頭部が荷物に干渉しない。このため、ネジ11との接触による荷物の損傷を防止することができる。また、凹部6cにシール材12が充填されるので、凹部6cに汚れや液体が溜まることを防止することができる。
【0041】
この実施形態では、堰6において凹部6cとネジ孔6dが対称軸L1から変位して配置されるので、隣り合う荷棚板5,5の境目に堰6の対称軸L1を整合させることにより、堰6をネジ11により片方の第1荷棚受3Aに締め付けることが可能となる。このため、隣り合う荷棚板5,5の境目でも堰6を第1荷棚受3Aに対し固定することができる。
【0042】
<第2実施形態>
次に、鉄道車両の荷物棚を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し異なった点を中心に説明する。この実施形態では、堰の配置と形状の点で第1実施形態と異なる。
図11に、荷物棚2の一方の端の部分を平面図により示す。
図12に、荷物棚2の一部を
図11のF-F線断面図により示す。
図13に、堰16の外観を斜視図により示す。
図14に、堰16を平面図により示す。
図15に、堰16を
図14のG-G線断面図により示す。
【0044】
この実施形態では、
図11~
図15に示すように、堰16は荷物棚2の長手方向F1における両端に配置され、荷物棚2の中間範囲に配置される第1実施形態の堰6とは形状が異なる。この実施形態の堰16は、第1実施形態の堰6をその対称軸L1に沿って二分割したような形状を有する。また、その二つの凹部16cとその中のネジ孔16dは、二分割された面に対応する側面16fから前記長手方向F1へ所定距離D2だけ変位して配置される。この堰16の側面16fは、平坦面をなし、荷棚板5(窓側板材51)の端面と面一をなす。また、この堰16の内側にも補強用のリブ16eが形成される。
【0045】
以上説明したようにこの実施形態における鉄道車両1の荷物棚2によれば、堰16において凹部16cとネジ孔16dが、二分割された面に対応する側面16fから変位して配置される。従って、荷棚板5の端面に堰16の側面16fを整合させることにより、堰16をネジ11により荷棚板5の端部に締め付けることが可能となる。このため、荷棚板5の端部でも、堰16を荷棚板5からはみ出ることなく固定することができる。この実施形態のその他の作用及び効果は、第1実施形態のそれと同等である。
【0046】
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0047】
(1)前記第1実施形態では、
図5に示すように、隣り合う荷棚板5,5(窓側板材51,51)の上面が互いに同じ高さに(面一をなすように)配置された状態を想定したが、
図16、
図17に示すように、隣り合う荷棚板5,5(窓側板材51,51)の上面が異なる高さに配置された状態を想定することもできる。
図16、
図17は、それぞれ荷物棚2の一部を
図5に準ずる断面図により示す。
図16に示す場合は、右側の窓側板材51の上面が左側の窓側板材51の上面より高くなっている場合を想定する。この場合は、堰6を固定するネジ11は、右側の第1荷棚受3Aに固定されることから、左側の窓側板材51と堰6の外縁部との間にできる隙間をシール材12によりシールしている。一方、
図17に示す場合は、右側の窓側板材51の上面が左側の窓側板材51の上面より低くなっている場合を想定する。この場合は、堰6と右側の窓側板材51との間にできる隙間に補完材21を介在させ、堰6を右側の第1荷棚受3Aにネジ11で固定し、右側の窓側板材51と堰6の外縁部との間にできる隙間をシール材12によりシールしている。
【0048】
(2)前記各実施形態では、堰6,16を荷棚板5と別体に形成したが、それら堰6,16と外観を同じくする堰を荷棚板と一体に形成することもできる。この場合、荷棚板に対し堰を固定する工程を省略することができる。
【0049】
(3)前記各実施形態において、堰6,16の形状や配置は一例であり、堰の形状や配置を適宜変更することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、鉄道車両、特には優等列車の荷物棚に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 鉄道車両
2 荷物棚
3 荷棚受
3A 第1荷棚受
3B 第2荷棚受
5 荷棚板
6 堰
6a 傾斜部
6b 平坦部
6c 凹部
6d ネジ孔
11 ネジ
16 堰
16c 凹部
16d ネジ孔
16f 側面
51 窓側板材
F1 長手方向
D1 間隔
D2 所定距離
SP1 前後方向スペース
θ1 所定角度
L1 対称軸