(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】鉄道車両の台車交換設備
(51)【国際特許分類】
B61F 5/00 20060101AFI20221109BHJP
B61D 15/00 20060101ALI20221109BHJP
B61J 1/10 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B61F5/00 D
B61D15/00 D
B61J1/10 B
(21)【出願番号】P 2018215239
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 幸治
(72)【発明者】
【氏名】木澤 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 雅
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-261571(JP,A)
【文献】特開2007-290601(JP,A)
【文献】特開2004-268837(JP,A)
【文献】特開2010-241304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/00
B61D 15/00
B61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線レール上の鉄道車両の車体を支える車体支持設備と、前記本線レールと直線状に配置可能に形成された台車支持用レールと、前記台車支持用レールの周囲に形成された第1テーブルと、前記台車支持用レールの側部において前記本線レールよりも低い床面上で前記本線レールと交差する方向へ向けて配置された側線レールと、ピット内に収納され前記台車支持用レールと前記第1テーブルとを前記本線レールと前記側線レールとの間で水平回転させる回転装置と、前記回転装置に搭載され前記台車支持用レールを前記本線レールと前記側線レールとの間で昇降させる第1昇降装置と、を備えた鉄道車両の台車交換設備であって、
前記ピット内には、前記第1テーブルを前記台車支持用レールと分離して前記本線レールと前記側線レールとの間で昇降させる第2昇降装置を備えたこと
、
前記第1テーブルは略円盤状に形成され、その外周側には、当該第1テーブルと水平方向で分離し、かつ、当該第1テーブルと略同一テーブル面を形成しつつ一体的に昇降する第2テーブルを備え、前記第2昇降装置は、前記第2テーブルを当接離間可能に支持すること、
前記第2テーブルを前記本線レールの高さまで上昇させた状態で、前記第2テーブルを下方から支持する落下止め装置を備えたこと、
前記第1テーブルには、前記台車支持用レールを下方から支持する第1支持部を備え、前記第2テーブルには、前記第1テーブルを下方から支持する第2支持部を備えたことを特徴とする鉄道車両の台車交換設備。
【請求項2】
請求項
1に記載された鉄道車両の台車交換設備において、
前記側線レールの延長上には、水平方向へ回転する補助テーブルを備えたことを特徴とする鉄道車両の台車交換設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両を編成状態としたままで、台車交換や、車体下部の検査、修繕を行う際、車体と台車とを分離又は接続する作業に用いる鉄道車両の台車交換設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両の台車交換設備が、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された台車交換設備(台車振替設備)は、
図11に示すように、本線レール上の車両(鉄道車両)Wの車体W1を支える車体支持装置101と、本線レールに直線状に接続した台車支持用レール102と、この台車支持用レールの側部において、本線レールよりも低い位置の実質的に床の高さにおいて、該本線レールの方向に対して角度を付けて配置した側線レール103と、台車支持用レール102を本線レールと側線レールとの間で昇降させる昇降装置104と、台車支持用レール102を本線レールと側線レールとの間で回転させるものであって、昇降装置104に載っている第1の回転装置105と、第1の回転装置105および昇降装置104を設置するピット106を実質的に覆うものであって、ピット106に支えられており、第1の回転装置105の回転によって回転する第2の回転装置107とからなる車両の台車振替設備100である。
上記台車振替設備100によれば、本線レールを走行して入車してきた車両Wの台車W2が台車支持用レール102に載ると台車W2の走行を停止させ、この状態で車体W1を車体支持装置101で支え、次に、昇降装置104を作動させて台車支持用レール102を下降させて台車W2を車体W1から外し、次に、この台車支持用レール102を第1の回転装置105で回転させて側線レール103に一致させ、この状態で台車W2を側線レール103に引き出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記台車振替設備100の第2の回転装置107は、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時の足場となっており、その安全性を確保するため、台車支持用レール102とともに回転し、第1の回転装置105および昇降装置104を設置するピット106を実質的に覆うものであって、ピット106に支えられている。そのため、第2の回転装置107は、側線レール103と同一の高さに、常時位置している。その結果、本線レールに対する側線レール103の高低差によって、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時の足場高さが決まり、作業者の身長や車両の種類等に応じた足場高さの調整が困難であり、作業効率や安全性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、台車交換や、車体下部の検査、修繕を行う際に、車体と台車との分離又は接続を行う作業時の足場高さを調整でき、作業効率や安全性を向上できる鉄道車両の台車交換設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両の台車交換設備は、以下の構成を備えている。
(1)本線レール上の鉄道車両の車体を支える車体支持設備と、前記本線レールと直線状に配置可能に形成された台車支持用レールと、前記台車支持用レールの周囲に形成された第1テーブルと、前記台車支持用レールの側部において前記本線レールよりも低い床面上で前記本線レールと交差する方向へ向けて配置された側線レールと、ピット内に収納され前記台車支持用レールと前記第1テーブルとを前記本線レールと前記側線レールとの間で水平回転させる回転装置と、前記回転装置に搭載され前記台車支持用レールを前記本線レールと前記側線レールとの間で昇降させる第1昇降装置と、を備えた鉄道車両の台車交換設備であって、
前記ピット内には、前記第1テーブルを前記台車支持用レールと分離して前記本線レールと前記側線レールとの間で昇降させる第2昇降装置を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明においては、ピット内には、第1テーブルを台車支持用レールと分離して本線レールと側線レールとの間で昇降させる第2昇降装置を備えたので、第1テーブルと台車支持用レールとを上下方向で離間するように、第1テーブルを独自に昇降させることができる。そのため、台車支持用レールと第1テーブルとを本線レールの高さに上昇させ、台車を台車支持用レールに入車させた上で、台車支持用レールをその位置で停止させたまま、第1テーブルを任意の高さまで下降させることができる。その結果、台車交換や、車体下部の検査、修繕を行う際に、車体と台車との分離又は接続を行う作業時の足場として第1テーブルを使用でき、その高さを任意に調整できる。
よって、本発明によれば、台車交換や、車体下部の検査、修繕を行う際に、車体と台車との分離又は接続を行う作業時の足場高さを調整でき、作業効率や安全性を向上できる鉄道車両の台車交換設備を提供することができる。
【0008】
(2)(1)に記載された鉄道車両の台車交換設備において、
前記第1テーブルは略円盤状に形成され、その外周側には、当該第1テーブルと水平方向で分離し、かつ、当該第1テーブルと略同一テーブル面を形成しつつ一体的に昇降する第2テーブルを備え、前記第2昇降装置は、前記第2テーブルを当接離間可能に支持することを特徴とする。
【0009】
本発明においては、第1テーブルは略円盤状に形成され、その外周側には、当該第1テーブルと水平方向で分離し、かつ、当該第1テーブルと略同一テーブル面を形成しつつ一体的に昇降する第2テーブルを備え、第2昇降装置は、第2テーブルを当接離間可能に支持するので、台車交換や、車体下部の検査、修繕を行う際に、第1テーブルと第2テーブルとを、車体と台車との分離又は接続を行う作業時の足場として広く使用でき、第2昇降装置によって両者の高さを一体的に調整できる。また、第1テーブルのテーブル面と第2テーブルのテーブル面とが、常に1つの平面を形成することができる。そのため、車体と台車との分離又は接続を行う作業時に、作業効率や安全性をより一層向上できる。
また、第2テーブルは、第1テーブルと水平方向で分離しているので、回転装置は、台車支持用レール及び第1テーブルを水平回転させるだけでよい。また、第2昇降装置は、第2テーブルを当接離間可能に支持するので、第2昇降装置を回転装置及び第1昇降装置から離間して独立にピット内へ配置でき、その構造を簡素化させることができる。そのため、回転装置と第1昇降装置と第2昇降装置とをそれぞれ簡素化して、それらをピット内にコンパクトに収納することができる。
その結果、台車交換設備のコンパクト化、簡素化を図りつつ、車体と台車との分離又は接続を行う作業時の足場を広くして、より一層作業効率や安全性を向上できる。
【0010】
(3)(2)に記載された鉄道車両の台車交換設備において、
前記第2テーブルを前記本線レールの高さまで上昇させた状態で、前記第2テーブルを下方から支持する落下止め装置を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、第2テーブルを本線レールの高さまで上昇させた状態で、第2テーブルを下方から支持する落下止め装置を備えたので、鉄道車両の台車が本線レールから台車支持用レールに入車する際に、第2テーブルに掛かる荷重を落下止め装置によって受け止めることができる。そのため、第2昇降装置に対する負荷を軽減させ、第2昇降装置のコンパクト化を図ることができる。
その結果、第2昇降装置のコンパクト化を図りつつ、車体と台車との分離又は接続を行う作業時の足場を広くして、より一層作業効率や安全性を向上できる。なお、落下止め装置は、本線レールの床下方に備えることが好ましい。鉄道車両の荷重を、落下止め装置へ直接的に伝達することができるからである。
【0012】
(4)(3)に記載された鉄道車両の台車交換設備において、
前記第1テーブルには、前記台車支持用レールを下方から支持する第1支持部を備え、前記第2テーブルには、前記第1テーブルを下方から支持する第2支持部を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明においては、第1テーブルには、台車支持用レールを下方から支持する第1支持部を備え、第2テーブルには、第1テーブルを下方から支持する第2支持部を備えたので、鉄道車両の台車が本線レールから台車支持用レールに入車する際に、台車支持用レール及び第1テーブルに掛かる荷重を、第2テーブルを介して落下止め装置によって受け止めることができる。そのため、第1昇降装置及び回転装置に対する負荷を軽減させ、第1昇降装置及び回転装置のコンパクト化を図ることができる。
その結果、第1昇降装置及び回転装置のコンパクト化を図りつつ、車体と台車との分離又は接続を行う作業時の足場を広くして、より一層作業効率や安全性を向上できる。なお、第1支持部及び第2支持部は、それぞれレール下方に配置することが好ましい。
【0014】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両の台車交換設備において、
前記側線レールの延長上には、水平方向へ回転する補助テーブルを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明においては、側線レールの延長上には、水平方向へ回転する補助テーブルを備えたので、鉄道車両の車体を車体支持設備によって支持した状態で、分離した台車を補助テーブルへ移動させ、簡単に搬出することができる。また、修理後の台車を補助テーブルに載置して、台車支持用レールに移動させ、車体と接続することができる。その結果、台車交換時における作業効率をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、台車交換や、車体下部の検査、修繕を行う際に、車体と台車との分離又は接続を行う作業時の足場高さを調整でき、作業効率や安全性を向上できる鉄道車両の台車交換設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両の台車交換設備の斜視図である。
【
図2】
図1に示す鉄道車両の台車交換設備の平面図である。
【
図6】
図1に示す鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業(車両の入車時)の説明図である。
【
図7】
図1に示す鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業(テーブル下降時)の説明図である。
【
図8】
図1に示す鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業(台車切り離し時)の説明図である。
【
図9】
図1に示す鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業(台車下降時)の説明図である。
【
図10】
図1に示す鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業(台車搬出時)の説明図である。
【
図11】特許文献1に記載された鉄道車両の台車振替設備である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態に係る鉄道車両の台車交換設備について、図面を参照しながら詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る鉄道車両の台車交換設備の全体構成を説明し、その後、本鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業の方法について説明する。
【0019】
<鉄道車両の台車交換設備の全体構成>
まず、本実施形態に係る鉄道車両の台車交換設備の全体構成について、
図1~
図5を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る鉄道車両の台車交換設備の斜視図を示す。
図2に、
図1に示す鉄道車両の台車交換設備の平面図を示す。
図3に、
図2に示すA-A断面図を示す。
図4に、
図3のピット部拡大図を示す。
図5に、
図2に示すB-B断面図を示す。
【0020】
図1~
図5に示すように、本実施形態に係る鉄道車両の台車交換設備10には、本線レール1上の鉄道車両Wの車体W1を支える車体支持設備2と、本線レール1と直線状に接続可能に形成された台車支持用レール3と、台車支持用レール3の周囲に形成された第1テーブル4と、台車支持用レール3の側部において本線レール1よりも低い床面上で本線レール1と交差する方向へ向けて配置された側線レール5と、ピットP内に収納され台車支持用レール3と第1テーブル4とを本線レール1と側線レール5との間で水平回転させる回転装置6と、回転装置6に搭載され台車支持用レール3を少なくとも本線レール1と側線レール5との間で昇降させる第1昇降装置7と、を備えている。また、ピットP内には、第1テーブル4を台車支持用レール3と分離して少なくとも本線レール1と側線レール5との間で昇降させる第2昇降装置8を備えている。
【0021】
車体支持設備2は、本線レール1上の鉄道車両Wを編成状態としたままで、車体W1を下方から支える一対の支持設備であって、鉄道車両Wの左右両側に配置されている。車体支持設備2には、門型のフレーム部21と、フレーム部21の上端で前後移動可能に装着された昇降部22と、昇降部22に連結され車体W1を上下動可能に支持する車体支持部23とを備えている。昇降部22には、車体W1を上下方向へ移動させるジャッキ機能を備えている。車体支持部23には、車体W1の下端と当接する受け軸部231と、受け軸部231を左右方向へ進退させるモータ駆動部232とを備えている。
【0022】
台車支持用レール3は、台車W2の車輪を載せる一対の長尺状レール部材であって、各種台車に対応できる長さに形成されている。各台車支持用レール3は、長尺状に形成された2個の枠体31に締結され、それぞれの枠体31の前後端には、第1テーブル4に上方から当接する鍔部32が形成されている。
【0023】
第1テーブル4は、外周縁が平面視で略円盤状に形成されたテーブル部材である。第1テーブル4の内周側には、一対の台車支持用レール3を包囲し、各台車支持用レール3が上下方向に貫通する一対の長尺状通孔41が形成されている。長尺状通孔41は、その前後端が第1テーブル4の外周縁に隣接するように形成されている。長尺状通孔41に隣接する第1テーブル4の外周縁上端には、台車支持用レール3と接続する接続レール43が形成されている。第1テーブル4の長尺状通孔41には、各台車支持用レール3の鍔部32の下端に当接し、台車支持用レール3を下方から支持する第1支持部42が形成されている。第1支持部42は、台車支持用レール3の下方に配置されている。
【0024】
第1テーブル4の外周側には、第1テーブル4と水平方向で分離し、かつ、第1テーブル4と略同一テーブル面を形成しつつ昇降する第2テーブル9を備えている。第2テーブル9は、外縁が平面視で略矩形状(例えば、正方形)に形成されたテーブル部材である。第2テーブル9の中央部には、第1テーブル4が上下方向に貫通する円状通孔91が形成されている。第2テーブル9の円状通孔91には、第1テーブル4の外周縁下端に当接し、第1テーブル4を下方から支持する第2支持部92が形成されている。第2テーブル9には、本線レール1と台車支持用レール3とを接続する第1接続レール93が形成されている。第2支持部92は、第1接続レール93の下方に配置されている。また、第2テーブル9には、側線レール5と台車支持用レール3とを接続する第2接続レール94が形成されている。
【0025】
側線レール5は、車体支持設備2に支持された車体W1の下方を、車体W1から分離された台車W2が通過できる高さに形成された床面51上に、本線レール1と直交する方向へ向けて設置されている。側線レール5の延長上には、水平方向へ回転する補助テーブル5Tを備えている。補助テーブル5Tのテーブル面は、側線レール5が形成された床面と略同一面上に形成されている。補助テーブル5Tは、外周縁が平面視で円盤状に形成され、その上面には、側線レール5に接続する補助レール5T1が形成されている。補助テーブル5Tは、手動で回転させても、図示しない駆動装置によって回転させてもよい。
【0026】
回転装置6には、ピットP底面に配置される基台61と、基台61の中央上端に形成された回転軸部62と、基台61の側方上端に形成されたベアリング式の受け部63と、回転軸部62とベアリング式の受け部63とによって水平回転可能に支持された回転台64と、回転台64を回転軸部62を中心に回転させるモータ駆動部65と、回転台64に所定の回転位置でロッド先端部661が係止するロッド係止部66と、を備えている。モータ駆動部65は、ギヤ651を介して回転台64を回転させる。モータ駆動部65とロッド係止部66とは、基台61に装着されている。回転台64の外周側上端には、第1テーブル4の下端に当接する支柱67が設置され、回転台64の内周側上端には、第1昇降装置7が設置されている。
【0027】
第1昇降装置7には、台車支持用レール3の枠体31に連結され上下動する昇降筒71と、昇降筒71をネジ軸の回転によって上下動させる第1ネジ駆動機構72と、昇降筒71を上下方向に案内する案内部73と、を備えている。第1ネジ駆動機構72と案内部73とは、回転台64に装着されている。第1ネジ駆動機構72は、モータ駆動によってネジ軸を回転させ、昇降筒71に連結されたナット部を上下動させる機構である。
【0028】
第2昇降装置8には、第2テーブル9の前後方向の下端を当接離間可能に支持し上下動する一対のテーブル支持部81と、各テーブル支持部81をネジ軸の回転によって上下動させる一対の第2ネジ駆動機構82と、を備えている。各第2ネジ駆動機構82は、第2テーブル9の前後端に隣接して配置された本線レール1を支持する支持フレーム部11に装着されている。テーブル支持部81は、支持フレーム部11に上下方向へ案内されている。第2ネジ駆動機構82は、モータ駆動によってネジ軸を回転させ、テーブル支持部81に連結されたナット部を上下動させる機構である。
【0029】
なお、前述したように、第2テーブル9の円状通孔91には、第1テーブル4の外周縁下端に当接し、第1テーブル4を下方から支持する第2支持部92が形成されている。そのため、第2昇降装置8のテーブル支持部81を昇降させると、第1テーブル4と第2テーブル9とが一体で昇降する。
【0030】
本線レール1の支持フレーム部11には、第2テーブル9を本線レール1の高さまで上昇させた状態で、第2テーブル9の前後方向の下端を下方から支持する一対の落下止め装置9Rを備えている。各落下止め装置9Rは、本線レール1の床下方に配置されている。落下止め装置9Rには、前後方向へ進退するロッド部9R1と、ロッド部9R1に連結されたシリンダ部9R2とを備えている。ロッド部9R1は、前進したとき、第2テーブル9の下端に当接して第2テーブル9を支持し、その落下を防止する。また、ロッド部9R1は、後退したとき、第2テーブル9の下降を可能とする。
【0031】
<台車交換作業の方法>
次に、本鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業の方法について、
図6~
図10を用いて説明する。
図6に、
図1に示す鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業(車両の入車時)の説明図を示す。
図7に、
図1に示す鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業(テーブル下降時)の説明図を示す。
図8に、
図1に示す鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業(台車切り離し時)の説明図を示す。
図9に、
図1に示す鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業(台車下降時)の説明図を示す。
図10に、
図1に示す鉄道車両の台車交換設備における台車交換作業(台車搬出時)の説明図を示す。
【0032】
図6に示すように、はじめに、台車支持用レール3と第1テーブル4と第2テーブル9とを本線レール1の高さまで上昇させた状態で、本線レール1上の鉄道車両Wの台車W2が、台車支持用レール3に入車する位置まで走行させる。このとき、第1昇降装置7と第2昇降装置8とは、いずれも上昇端まで上昇し、また、落下止め装置9Rは、ロッド部9R1が前進して第2テーブル9を下方から支持している(
図4を参照)。台車W2が、台車支持用レール3に入車したら停車させ、車体支持設備2の車体支持部23を車体W1の下端と当接する位置に進出させる。その後、車体支持部23を僅かに上昇させて、車体W1の荷重を車体支持設備2によって受け止める。
【0033】
次に、
図7に示すように、台車W2を載せた台車支持用レール3は、本線レール1の高さに保持した状態で、第1テーブル4と第2テーブル9とを同一テーブル面を維持しつつ、任意の高さまで下降させる。任意の高さは、第1テーブル4と第2テーブル9とを、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時の足場として使用する最適な高さである。このとき、落下止め装置9Rを解除して、第2昇降装置8の下降動作を可能とさせる(
図4を参照)。なお、第2昇降装置8は、第1テーブル4と第2テーブル9とを側線レール5の高さより低い位置まで下降させることもできる。
【0034】
次に、
図8に示すように、第1テーブル4と第2テーブル9とを、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時の足場として使用し、車体W1と台車W2との切り離し作業を行う。この場合、第1テーブル4と第2テーブル9とを広く足場として使用できるので、作業効率や安全性が向上する。
【0035】
次に、
図9に示すように、車体W1と台車W2との切り離し作業が完了した後に、台車W2を載せた台車支持用レール3と第1テーブル4と第2テーブル9とをそれぞれ側線レール5の高さまで下降させる。なお、第1テーブル4と第2テーブル9とを側線レール5の高さより低い位置まで下降させた場合には、それらを側線レール5の位置まで上昇させる。
【0036】
次に、
図10に示すように、回転装置6を水平回転させて、台車支持用レール3に載っている台車W2の前後方向を側線レール5のレール方向に一致させた上で、台車W2を側線レール5を経由して補助テーブル5T上に移動させる。このとき、台車支持用レール3と第1テーブル4とが水平回転し、第2テーブル9は静止している。その後、補助テーブル5Tに移動した台車W2を、クレーン等を用いて検査、修理箇所に搬送する。
【0037】
なお、台車W2を分離した車体W1の下部は、台車支持用レール3と第1テーブル4と第2テーブル9とを
図8に示す高さに上昇させて、これらを足場として検査、修理を行うことができる。また、検査、修理が完了した台車W2は、上述した手順と逆の手順で搬入し車体W1と接続させることができる。
したがって、以上の台車交換作業の方法によれば、台車交換や、車体下部の検査、修繕を行う際に、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時の足場高さを調整でき、作業効率や安全性を向上できる。
【0038】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両の台車交換設備10によれば、ピットP内には、第1テーブル4を台車支持用レール3と分離して本線レール1と側線レール5との間で昇降させる第2昇降装置8を備えたので、第1テーブル4と台車支持用レール3とを上下方向で離間するように、第1テーブル4を独自に昇降させることができる。そのため、台車支持用レール3と第1テーブル4とを本線レール1の高さに上昇させ、台車W2を台車支持用レール3に入車させた上で、台車支持用レール3をその位置で停止させたまま、第1テーブル4を任意の高さまで下降させることができる。その結果、台車交換や、車体下部の検査、修繕を行う際に、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時の足場として第1テーブル4を使用でき、その高さを任意に調整できる。
よって、本実施形態によれば、台車交換や、車体下部の検査、修繕を行う際に、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時の足場高さを調整でき、作業効率や安全性を向上できる鉄道車両の台車交換設備10を提供することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、第1テーブル4は略円盤状に形成され、その外周側には、当該第1テーブル4と水平方向で分離し、かつ、当該第1テーブル4と略同一テーブル面を形成しつつ一体的に昇降する第2テーブル9を備え、第2昇降装置8は、第2テーブル9を当接離間可能に支持するので、台車交換や、車体下部の検査、修繕を行う際に、第1テーブル4と第2テーブル9とを、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時の足場として広く使用でき、第2昇降装置8によって両者の高さを一体として調整できる。また、第1テーブル4のテーブル面と第2テーブル9のテーブル面とが、常に1つの平面を形成することができる。そのため、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時に、作業効率や安全性をより一層向上できる。
【0040】
また、第2テーブル9は、第1テーブル4と水平方向で分離しているので、回転装置6は、台車支持用レール3及び第1テーブル4を水平回転させるだけでよい。また、第2昇降装置8は、第2テーブル9を当接離間可能に支持するので、第2昇降装置8を回転装置6及び第1昇降装置7から離間して独立にピットP内へ配置でき、その構造を簡素化させることができる。そのため、回転装置6と第1昇降装置7と第2昇降装置8とをそれぞれ簡素化して、それらをピットP内にコンパクトに収納することができる。
その結果、台車交換設備10のコンパクト化、簡素化を図りつつ、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時の足場を広くして、より一層作業効率や安全性を向上できる。
【0041】
また、本実施形態によれば、第2テーブル9を本線レール1の高さまで上昇させた状態で、第2テーブル9を下方から支持する落下止め装置9Rを備えたので、鉄道車両Wの台車W2が本線レール1から台車支持用レール3に入車する際に、第2テーブル9に掛かる荷重を落下止め装置9Rによって受け止めることができる。そのため、第2昇降装置8に対する負荷を軽減させ、第2昇降装置8のコンパクト化を図ることができる。
その結果、第2昇降装置8のコンパクト化を図りつつ、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時の足場を広くして、より一層作業効率や安全性を向上できる。なお、落下止め装置9Rは、本線レール1の床下方に備えることが好ましい。鉄道車両Wの荷重を、落下止め装置9Rへ直接的に伝達することができるからである。
【0042】
また、本実施形態によれば、第1テーブル4には、台車支持用レール3を下方から支持する第1支持部42を備え、第2テーブル9には、第1テーブル4を下方から支持する第2支持部92を備えたので、鉄道車両Wの台車W2が本線レール1から台車支持用レール3に入車する際に、台車支持用レール3及び第1テーブル4に掛かる荷重を、第2テーブル9を介して落下止め装置9Rによって受け止めることができる。そのため、第1昇降装置7及び回転装置6に対する負荷を軽減させ、第1昇降装置7及び回転装置6のコンパクト化を図ることができる。
その結果、第1昇降装置7及び回転装置6のコンパクト化を図りつつ、車体W1と台車W2との分離又は接続を行う作業時の足場を広くして、より一層作業効率や安全性を向上できる。なお、第1支持部42及び第2支持部92は、それぞれレール下方に配置することが好ましい。
【0043】
また、本実施形態によれば、側線レール5の延長上には、水平方向へ回転する補助テーブル5Tを備えたので、鉄道車両Wの車体W1を車体支持設備2によって支持した状態で、分離した台車W2を補助テーブル5Tへ移動させ、簡単に搬出することができる。また、修理後の台車W2を補助テーブル5Tに載置して、台車支持用レール3に移動させ、車体W1と接続することができる。その結果、台車交換時における作業効率をより一層向上させることができる。
【0044】
以上、本実施形態の鉄道車両の台車交換設備10を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、第2テーブル9と第1テーブル4とを水平方向で分離して形成したが、第2テーブル9を廃止して、第1テーブル4のみにしてもよい。この場合、第2昇降装置8のテーブル支持部81は、第1テーブル4の下端に摺接させ、第1テーブル4が台車支持用レール3とともに水平回転可能に形成する。また、本実施形態では、補助テーブル5Tは、昇降しない構成となっているが、側線レール5と検査、修理箇所へ案内する地上レール(図示しない)との間で昇降可能に形成することによって、台車W2をクレーンによらずに検査、修理箇所へ搬送することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 本線レール
2 車体支持設備
3 台車支持用レール
4 第1テーブル
5 側線レール
5T 補助テーブル
6 回転装置
7 第1昇降装置
8 第2昇降装置
9 第2テーブル
9R 落下止め装置
10 台車交換設備
42 第1支持部
92 第2支持部
P ピット
W 鉄道車両
W1 車体
W2 台車