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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】車両用非接触受電システム
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/33 20060101AFI20221109BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20221109BHJP
   G01R 31/56 20200101ALI20221109BHJP
   H02H 3/16 20060101ALI20221109BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20221109BHJP
   G01R 31/50 20200101ALN20221109BHJP
【FI】
H02H3/33
G01R31/52
G01R31/56
H02H3/16
H02J50/12
G01R31/50
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018244632
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020108258
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 統公
(72)【発明者】
【氏名】杉山 義信
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184363(JP,A)
【文献】特開2011-196810(JP,A)
【文献】特開2008-113546(JP,A)
【文献】特開2015-012716(JP,A)
【文献】特開2009-022126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/33
H02H 3/16
H02J 50/12
G01R 31/50
G01R 31/52
G01R 31/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から磁界を通じて非接触で受電するように構成された受電部と、
前記受電部によって受電された交流電力を整流するように構成された整流回路と、
前記整流回路の直流出力側に接続される直流電力線対と、
アース用部材と、
前記直流電力線対と前記アース用部材との間に電気的に接続される一対のバイパスコンデンサと、
電力線対を流れる電流の差分を検出するように構成された零相変流器とを備え、
前記受電部は、
受電コイルと、
前記受電コイルの一端及び他端にそれぞれ接続され、前記受電コイルとともに直列共振回路を形成する第1及び第2のキャパシタとを含み、
前記零相変流器は、前記整流回路と前記一対のバイパスコンデンサとの間の前記直流電力線対を流れる電流の差分を検出するように配置される、車両用非接触受電システム。
【請求項2】
前記アース用部材は、前記受電部、前記整流回路、及び前記直流電力線対を収容する導電性の筐体であり、
前記一対のバイパスコンデンサ及び前記零相変流器は、前記筐体内に設けられる、請求項1に記載の車両用非接触受電システム。
【請求項3】
前記直流電力線対に接続される電気機器をさらに備え、
前記アース用部材は、前記電気機器を収容する導電性の第1の筐体であり、
前記一対のバイパスコンデンサは、前記電気機器を前記直流電力線対に接続する電力線対と前記第1の筐体との間に電気的に接続され、
前記受電部、前記整流回路、及び前記直流電力線対は、導電性の第2の筐体に収容されており、
前記第1の筐体は、前記第2の筐体と電気的に接続されている、請求項1に記載の車両用非接触受電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触受電システムに関し、特に、送電装置から磁界を通じて非接触で受電するように構成された受電部を備える非接触受電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013-252040号公報(特許文献1)は、送電装置の第1コイルと、車両に搭載される第2コイルとが磁気結合することにより、送電装置から車両へ非接触で給電する非接触給電システムを開示する。このシステムでは、第2コイルの両端部に接続される一対の電気経路を流れる電流の差分を検出する零相変流器が設けられ、零相変流器の検出結果に応じて漏電(地絡)の有無が診断される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-252040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送電装置から非接触で受電する受電部の両端は、共振により高電圧になるため、特許文献1のように、受電部の両端に接続される一対の電気経路に零相変流器を設けると、耐圧性を確保するために零相変流器が大型化する。また、上記のように零相変流器を設けると、零相変流器のアンバランス時に受電部の共振特性に悪影響を与えたり、零相変流器の発熱が問題となる可能性もある。
【0005】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、送電装置から磁界を通じて非接触で受電するように構成された受電部を備える非接触受電システムにおいて、零相変流器によって共振特性に影響を与えることなく受電部の地絡を検出し、かつ零相変流器の小型化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の非接触受電システムは、送電装置から磁界を通じて非接触で受電するように構成された受電部と、受電部によって受電された交流電力を整流するように構成された整流回路と、整流回路の直流出力側に接続される直流電力線対と、アース用部材と、直流電力線対とアース用部材との間に電気的に接続される一対のバイパスコンデンサと、電力線対を流れる電流の差分を検出するように構成された零相変流器とを備える。零相変流器は、整流回路と一対のバイパスコンデンサとの間の直流電力線対を流れる電流の差分を検出するように配置される。
【0007】
この非接触受電システムでは、零相変流器は、整流回路と一対のバイパスコンデンサとの間の直流電力線対を流れる電流の差分を検出するように配置される。受電部が地絡(受電部とアース用部材との間の絶縁抵抗が低下)すると、受電部、アース用部材、バイパスコンデンサ、直流電力線対の一方、及び整流回路を通じて回路が形成される。これにより、直流電力線対を流れる電流にアンバランスが生じるため、上記のように配置された零相変流器によって受電部の地絡を検出することができる。この零相変流器は、高電圧かつ高周波の受電部の両端における電流の差分を検出するものではないので、受電部の両端に接続される電力線対に零相変流器を配置する場合に比べて耐圧性を抑えることができ、また、受電部の共振特性に影響を与えることもない。したがって、この非接触受電システムによれば、零相変流器によって共振特性に影響を与えることなく受電部の地絡を検出し、かつ零相変流器を小型化することができる。
【0008】
アース用部材は、受電部、整流回路、及び直流電力線対を収容する導電性の筐体であり、一対のバイパスコンデンサ及び零相変流器は、筐体内に設けられてもよい。
【0009】
また、非接触受電システムは、直流電力線対に接続される電気機器をさらに備えてもよい。そして、アース用部材は、電気機器を収容する導電性の第1の筐体であり、一対のバイパスコンデンサは、電気機器を直流電力線対に接続する電力線対と第1の筐体との間に電気的に接続されてもよい。受電部、整流回路、及び直流電力線対は、導電性の第2の筐体に収容され、第1の筐体は、第2の筐体と電気的に接続されてもよい。
【0010】
受電部は、受電コイルと、受電コイルの一端及び他端にそれぞれ接続されて受電コイルとともに直列共振回路を形成する第1及び第2のキャパシタとを含んでもよい。
【0011】
このような構成の受電部において受電コイルが地絡すると、たとえば、低周波の電圧を所定点に印加して電圧レベルの変化を検出することにより地絡を検出する公知の地絡検出器では、第1及び第2のキャパシタによってACカップリングされた受電コイルの地絡を検出することはできない。上記の非接触受電システムによれば、このような構成の受電部であっても、上記の零相変流器を用いて受電コイルの地絡を検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の非接触受電システムによれば、零相変流器によって共振特性に影響を与えることなく受電部の地絡を検出し、かつ零相変流器の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態1に従う非接触受電システムが適用される電力伝送システムの全体構成図である。
図2】受電コイルが地絡した場合に生じる地絡電流の経路を示した図である。
図3】車両ECUにより実行される受電コイルの地絡判定処理の手順を示すフローチャートである。
図4】受電コイルの地絡部を流れる地絡電流と、零相電流検出回路によって検出される零相電流値との比較結果を示す図である。
図5】実施の形態2に従う非接触受電システムが適用される電力伝送システムの全体構成図である。
図6図5に示した受電装置において、受電コイルが地絡した場合に生じる地絡電流の経路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
[実施の形態1]
<非接触受電システムの構成>
図1は、本開示の実施の形態1に従う非接触受電システムが適用される電力伝送システムの全体構成図である。図1を参照して、電力伝送システムは、受電装置100と、送電装置200とを備える。受電装置100は、蓄電装置300に蓄えられた電力を用いて走行可能な車両10に搭載され、受電装置100によって受電された電力は、蓄電装置300に蓄えられる。
【0016】
たとえば、受電装置100は、車体の下面に配置され、送電装置200は、地面に配置される。そして、受電装置100が送電装置200に対向するように送電装置200に対して車両10の位置合わせが行なわれた状態で、送電装置200から受電装置100へ磁界を通じて非接触で電力が伝送される。
【0017】
受電装置100は、受電部110と、フィルタ回路115と、整流回路120と、キャパシタ125と、ノイズ除去回路130と、チョークコイル135と、筐体140とを含む。
【0018】
受電部110は、受電コイル111と、キャパシタ112,113とを含む。キャパシタ112は、受電コイル111の一端に接続され、キャパシタ113は、受電コイル111の他端に接続される。受電コイル111及びキャパシタ112,113は、直列に接続されて直列共振回路を形成する。受電部110は、送電装置200の送電部225から出力される電力(交流)を、磁界を通じて非接触で受電する。受電コイル111及びキャパシタ112,113によって形成される共振回路の共振強度を示すQ値は、100以上であることが好ましい。
【0019】
フィルタ回路115は、受電部110と整流回路120との間に設けられ、受電部110による受電時に発生する高調波ノイズを抑制する。この例では、フィルタ回路115は、キャパシタ116とインダクタ117,118とを含む二次LCフィルタによって構成されているが、フィルタ回路115の構成はこれに限定されるものではない。
【0020】
整流回路120は、受電部110によって受電された交流電力を整流して直流電力線対L1へ出力する。整流回路120は、たとえば4つのダイオードから成るダイオードブリッジ回路を含んで構成される。キャパシタ125は、整流回路120の出力側に設けられ、直流電力線対L1の電圧を平滑化する。
【0021】
ノイズ除去回路130は、バイパスコンデンサ132,134を含む。バイパスコンデンサ132は、直流電力線対L1の負極線と筐体140との間に接続される。バイパスコンデンサ134は、直流電力線対L1の正極線と筐体140との間に接続される。ノイズ除去回路130は、直流電力線対L1に重畳されているコモンモードノイズを除去するものである。
【0022】
チョークコイル135は、直流電力線対L1に設けられ、このチョークコイル135も、直流電力線対L1に重畳されているコモンモードノイズを除去する。チョークコイル135は、たとえば、リング状のフェライトコアに互いに逆向きに巻回される2つのコイルを含んで構成される。
【0023】
筐体140は、受電装置100の筐体であり、金属等の導電性の部材(たとえばアルミ)によって構成される。筐体140は、車両10のボディアース500に接続されており、アース用部材として機能する。
【0024】
受電装置100は、零相変流器150と、零相電流検出回路160とをさらに含む。零相変流器150は、整流回路120とノイズ除去回路130との間において、直流電力線対L1の一方(正極線)を流れる電流と、直流電力線対L1の他方(負極線)を流れる電流との差分を検出するように構成される。零相変流器150は、たとえば、円形の鉄心にコイルを巻き付けて構成され、直流電力線対L1を取り囲むように配置される。
【0025】
零相電流検出回路160は、終端抵抗162と、フィルタ164と、ピークホールド回路166とを含む。フィルタ164は、零相変流器150の出力に含まれる高周波ノイズを除去する。ピークホールド回路166は、零相変流器150の出力のピーク値を示す電圧信号を出力するように構成される。すなわち、零相電流検出回路160は、零相変流器150によって検出された直流電力線対L1の差分電流のピーク値(以下「零相電流値」と称する。)に相当する電圧を出力する。
【0026】
車両10には、蓄電装置300と、車両ECU(Electronic Control Unit)410と、通信部420と、報知部430とがさらに搭載されている。蓄電装置300は、再充電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置300は、たとえば、リチウムイオン電池或いはニッケル水素電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を含んで構成される。なお、リチウムイオン二次電池は、リチウムを電荷担体とする二次電池であり、電解質が液体の一般的なリチウムイオン二次電池のほか、固体の電解質を用いた所謂全固体電池も含み得る。蓄電装置300は、受電装置100によって受電された電力を蓄え、図示しない車両駆動装置(インバータ及び駆動モータ等)へ電力を供給する。
【0027】
車両ECU410は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリ(RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory))と、各種信号を入出力するためのI/F装置とを含んで構成される(いずれも図示せず)。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、CPUによって実行される処理が記されている。
【0028】
車両ECU410は、たとえば、車両10の走行制御や蓄電装置300の充電制御等を実行する。また、車両ECU410は、零相変流器150によって検出される零相電流の検出値(電圧信号)を零相電流検出回路160から受信し、受電コイル111の地絡の有無を判定する。この地絡判定については、後ほど詳しく説明する。車両ECU410によって実行される各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0029】
通信部420は、送電装置200との間で無線通信を行なうための通信I/Fである。通信部420と送電装置200の通信部240との間で無線通信が行なわれることによって、車両ECU410と送電装置200の送電ECU230との間で各種情報のやり取りを行なうことが可能になる。
【0030】
報知部430は、車両ECU410からの要求に従って、ユーザへ所定の報知を行なうように構成される。報知部430の例としては、表示装置、スピーカー、ランプ(たとえば警告ランプ)等が挙げられる。ユーザへの報知方法は任意であり、表示装置への表示(文字や画像等)で知らせてもよいし、スピーカーにより音(音声を含む)で知らせてもよいし、所定のランプを点灯(又は点滅)させてもよい。
【0031】
一方、送電装置200は、AC/DCコンバータ210と、インバータ215と、フィルタ回路220と、送電部225と、送電ECU230と、通信部240とを含む。
【0032】
AC/DCコンバータ210は、商用系統電源等の交流電源600から受ける交流電力を直流電力に変換してインバータ215へ供給する。AC/DCコンバータ210は、たとえば力率改善(PFC(Power Factor Correction))回路であるが、力率改善機能を有しない整流器を採用してもよい。
【0033】
インバータ215は、AC/DCコンバータ210から受ける直流電力を、所定の周波数(たとえば数十kHz)の送電電力に変換する。インバータ215によって生成された送電電力は、フィルタ回路220を通じて送電部225へ供給される。インバータ215は、たとえば単相フルブリッジ回路を含んで構成される。
【0034】
フィルタ回路220は、インバータ215と送電部225との間に設けられ、インバータ215から発生する高調波ノイズを抑制する。この例では、フィルタ回路220は、インダクタ221,222とキャパシタ223とを含む二次LCフィルタによって構成されているが、フィルタ回路220の構成はこれに限定されるものではない。
【0035】
送電部225は、送電コイル226と、キャパシタ227,228とを含む。キャパシタ227は、送電コイル226の一端に接続され、キャパシタ228は、送電コイル226の他端に接続される。送電コイル226及びキャパシタ227,228は、直列に接続されて直列共振回路を形成する。送電部225は、インバータ215により生成される送電電力(交流電力)をフィルタ回路220を通じて受け、送電部225の周囲に生成される磁界を通じて、受電装置100の受電部110へ非接触で送電する。送電コイル226及びキャパシタ227,228によって形成される共振回路のQ値も、100以上であることが好ましい。
【0036】
送電ECU230は、CPUと、メモリ(RAM及びROM)と、各種信号を入出力するためのI/F装置とを含んで構成される(いずれも図示せず)。送電ECU230は、送電装置200における各種機器の制御を行なう。たとえば、送電ECU230は、送電装置200から受電装置100への電力伝送の実行時に、所定の周波数を有する送電電力をインバータ215が生成するようにインバータ215のスイッチング制御を行なう。各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0037】
通信部240は、車両10との間で無線通信を行なうための通信I/Fである。通信部240と車両10の通信部420との間で無線通信が行なわれることによって、送電ECU230と車両10の車両ECU410との間で各種情報のやり取りを行なうことが可能になる。
【0038】
この電力伝送システムにおいては、送電装置200において、インバータ215からフィルタ回路220を通じて送電部225へ、所定の周波数を有する交流電力が供給される。送電部225へ交流電力が供給されると、送電コイル226と受電コイル111との間に形成される磁界を通じて、送電コイル226から受電コイル111へエネルギー(電力)が移動する。受電部110へ移動したエネルギー(電力)は、フィルタ回路115及び整流回路120を通じて蓄電装置300へ供給される。
【0039】
<受電コイル111の地絡検出>
上記のような非接触受電システムにおいて、零相変流器を用いて受電コイル111の地絡(受電コイル111と筐体140との間の絶縁抵抗の低下)を検出する場合に、仮に受電コイル111の両端に接続される電力線対に零相変流器を設けるものとすると、以下のような問題が生じる。
【0040】
受電コイル111の両端は、キャパシタ112,113とともに構成される共振回路が高周波で共振することによって高電圧(たとえば数kV)になる。このため、受電コイル111の両端に接続される電力線対に零相変流器を設けると、耐圧性を確保するために零相変流器が大型化する。また、上記箇所に零相変流器を設けると、零相変流器のアンバランス時に共振特性に悪影響を与えたり、零相変流器の発熱が問題となり得る。
【0041】
そこで、本実施の形態1に従う非接触受電システムでは、上述のように、零相変流器150は、整流回路120とノイズ除去回路130との間の直流電力線対L1に配置され、直流電力線対L1の一方(正極線)を流れる電流と、直流電力線対L1の他方(負極線)を流れる電流との差分を検出する。直流電力線対L1間の電圧は、蓄電装置300の電圧と同等であり、数百Vレベルである。したがって、受電コイル111の両端に接続される電力線対に零相変流器を設ける場合に比べて、零相変流器150の耐電圧を下げることができ、零相変流器150を小型化することができる。また、零相変流器150は、直流電力線対L1に配置されるので、受電部110の共振特性に悪影響を与えることはなく、また、零相変流器150の発熱も抑制することができる。
【0042】
図2は、受電コイル111が地絡した場合に生じる地絡電流の経路を示した図である。図2を参照して、受電コイル111のキャパシタ113側の端部(以下「地絡部170」とする)において地絡(受電コイル111と筐体140との間の絶縁抵抗の低下)が生じたものとする。
【0043】
地絡部170において地絡が生じると、地絡部170と筐体140との間に地絡抵抗172が生じる。そうすると、地絡部170から、地絡抵抗172、筐体140、バイパスコンデンサ132、直流電力線対L1の負極線、整流回路120、フィルタ回路115、及び受電部110のキャパシタ113を通じた回路が形成され、図中の太線で示される地絡電流が流れる。これにより、直流電力線対L1の負極線を流れる電流の大きさと、直流電力線対L1の正極線を流れる電流の大きさとに差が生じ、その差分を零相変流器150により検出することによって、受電コイル111の地絡を検出することができる。
【0044】
なお、上記のような蓄電装置や受電装置等の電気システムを備える車両においては、電気システムの所定点(たとえば蓄電装置の負極等)にカップリングコンデンサを介して低周波の電圧を印加し、当該電圧のレベルの変化を検出することによって電気システムの地絡(絶縁抵抗の低下)を検出する地絡検出器が設けられることも多い。しかしながら、このような地絡検出器では、上記のように受電部110のキャパシタ112,113によってACカップリングされた受電コイル111の地絡を検出することはできない。本実施の形態1に従う非接触受電システムは、上記のような地絡検出器では検出することができない受電コイル111の地絡を、零相変流器150を用いて検出することができる。
【0045】
図3は、車両ECU410により実行される受電コイル111の地絡判定処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、受電装置100による送電装置200からの受電に伴なって開始され、所定周期毎に繰り返し実行される。
【0046】
図3を参照して、車両ECU410は、零相電流検出回路160から零相電流値(零相電流の検出値)を取得する(ステップS10)。次いで、車両ECU410は、零相電流値が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS20)。この所定値は、受電コイル111が地絡していると判定するためのしきい値であり、たとえば、地絡保護に関する規格値等に基づいて決定される。零相電流値が所定値よりも小さいときは(ステップS20においてNO)、以降の一連の処理は実行されずにリターンへと処理が移行される。
【0047】
ステップS20において零相電流値が所定値以上であると判定されると(ステップS20においてYES)、車両ECU410は、受電コイル111において地絡が生じているものと判定する(ステップS30)。そして、車両ECU410は、送電装置200からの送電の停止を指示する送電停止指令を、通信部420を通じて送電装置200へ送信する(ステップS40)。その後、車両ECU410は、受電コイル111の地絡が生じたことを示すアラームを出力するように報知部430を制御する(ステップS50)。
【0048】
図4は、受電コイル111の地絡部170を流れる地絡電流と、零相電流検出回路160によって検出される零相電流値との比較結果を示した図である。図4を参照して、横軸は地絡抵抗を示し、縦軸は電流を示す。そして、線k1は、地絡部170を流れる地絡電流値を示し、線k2は、零相電流検出回路160によって検出される零相電流値を示す。なお、しきい値Athは、図3のステップS20における所定値に相当する。
【0049】
図示されるように、地絡電流値と零相電流値とは略同等であり、零相電流検出回路160によって受電コイル111の地絡を精度よく検出できていることが理解できる。
【0050】
以上のように、この実施の形態1においては、零相変流器150は、整流回路120とノイズ除去回路130との間の直流電力線対L1を流れる電流の差分を検出するように配置される。受電コイル111が地絡すると、受電コイル111、筐体140、バイパスコンデンサ132、直流電力線対L1の負極線、及び整流回路120を通じて回路が形成される。これにより、直流電力線対L1を流れる電流にアンバランスが生じるため、上記のように配置された零相変流器150によって受電コイル111の地絡を検出することができる。
【0051】
そして、この零相変流器150は、高電圧かつ高周波の受電コイル111の両端における電流の差分を検出するものではないので、受電コイル111の両端に接続される電力線対に零相変流器を配置する場合に比べて耐圧性を抑えることができ、また、受電部110の共振特性に影響を与えることもない。したがって、この実施の形態1によれば、零相変流器150によって共振特性に影響を与えることなく受電コイル111の地絡を検出し、かつ零相変流器150を小型化することができる。
【0052】
また、この実施の形態1では、受電部110において、受電コイル111及びキャパシタ112,113は、直列に接続されて直列共振回路を形成する。このような構成の受電部110において受電コイル111が地絡した場合、たとえば、低周波の電圧を所定点に印加して電圧レベルの変化を検出することにより地絡を検出する公知の地絡検出器では、キャパシタ112,113によってACカップリングされた受電コイル111の地絡を検出することはできない。この実施の形態1によれば、このような構成の受電部110であっても、零相変流器150を用いて受電コイル111の地絡を検出することができる。
【0053】
[実施の形態2]
図5は、実施の形態2に従う非接触受電システムが適用される電力伝送システムの全体構成図である。図5を参照して、この電力伝送システムは、図1に示した実施の形態1における電力伝送システムにおいて、受電装置100に代えて受電装置100Aを含む。そして、車両10には、電力変換装置700と、補機負荷800とがさらに搭載される。
【0054】
受電装置100Aは、図1に示した受電装置100において、ノイズ除去回路130と、チョークコイル135とを含まないものである。
【0055】
電力変換装置700は、電力線対L2を通じて直流電力線対L1に接続される。電力変換装置700は、DC/DCコンバータ710と、ノイズ除去回路720,740と、チョークコイル730とを含む。
【0056】
DC/DCコンバータ710は、蓄電装置300又は受電装置100Aから電力線対L2を通じて直流電力の電圧を受け、低圧の補機電圧に変換して補機負荷800へ出力する。DC/DCコンバータ710は、たとえば、インバータと、絶縁トランスと、整流器とを含んで構成される。補機負荷800は、車両10に搭載される各種補機及び補機バッテリを総括して示したものである。
【0057】
ノイズ除去回路720は、バイパスコンデンサ722,724を含む。バイパスコンデンサ722は、電力線対L2の正極線と筐体750との間に接続される。バイパスコンデンサ724は、電力線対L2の負極線と筐体750との間に接続される。ノイズ除去回路720は、電力線対L2から受ける直流電力に重畳されているコモンモードノイズを除去するものである。
【0058】
チョークコイル730は、電力線対L2においてノイズ除去回路720とノイズ除去回路740との間に設けられる。このチョークコイル730も、電力線対L2に重畳されているコモンモードノイズを除去する。ノイズ除去回路740は、電力線対L2においてチョークコイル730とDC/DCコンバータ710との間に設けられる。ノイズ除去回路740は、ノイズ除去回路720と同様に一対のバイパスコンデンサを含み、DC/DCコンバータ710から発生するコモンモードノイズを除去する。
【0059】
筐体750は、電力変換装置700の筐体であり、金属等の導電性の部材(たとえばアルミ)によって構成される。筐体750は、車両10のボディアース500に接続されており、アース用部材として機能する。受電装置100Aの筐体140もボディアース500に接続されていることから、筐体750は、受電装置100Aの筐体140と電気的に接続されている。
【0060】
この実施の形態2に従う非接触受電システムにおいても、受電装置100Aに設けられる零相変流器150を用いて受電コイル111の地絡を検出することができる。
【0061】
図6は、図5に示した受電装置100Aにおいて、受電コイル111が地絡した場合に生じる地絡電流の経路を示した図である。図6を参照して、図2のケースと同様に、受電コイル111のキャパシタ113側の端部(地絡部170)において地絡が生じたものとする。
【0062】
地絡部170において地絡が生じると、地絡部170と筐体140との間に地絡抵抗172が生じる。そうすると、地絡部170から、地絡抵抗172、筐体140、ボディアース500、筐体750、ノイズ除去回路720のバイパスコンデンサ724、電力線対L2の負極線、直流電力線対L1の負極線、整流回路120、フィルタ回路115、及び受電部110のキャパシタ113を通じた回路が形成され、図中の太線で示される地絡電流が流れる。
【0063】
これにより、直流電力線対L1の負極線を流れる電流の大きさと、直流電力線対L1の正極線を流れる電流の大きさとに差が生じ、その差分を零相変流器150により検出することによって、受電コイル111の地絡を検出することができる。
【0064】
そして、この実施の形態2に従う非接触受電システムにおいても、零相変流器150は、直流電力線対L1に配置されている。したがって、零相変流器150の耐電圧を下げることができ、零相変流器150を小型化することができる。また、零相変流器150は、直流電力線対L1に配置されるので、受電部110の共振特性に悪影響を与えることはなく、また、零相変流器150の発熱も抑制することができる。
【0065】
なお、特に図示しないが、この実施の形態2においても、図3に示したフローチャートに従って、車両ECU410により受電コイル111の地絡判定処理が実行される。
【0066】
以上のように、この実施の形態2によっても、実施の形態1と同様に、零相変流器150によって共振特性に影響を与えることなく受電コイル111の地絡を検出し、かつ零相変流器150を小型化することができる。また、キャパシタ112,113によってACカップリングされた受電コイル111の地絡を、零相変流器150を用いて検出することができる。
【0067】
なお、上記の実施の形態2では、DC/DCコンバータ710とノイズ除去回路720とを含む電力変換装置700が車両10に搭載され、電力変換装置700の筐体750とノイズ除去回路720とが地絡電流の経路の一部を構成するものとしたが、地絡電流の経路の一部を構成する装置は、このような電力変換装置700に限定されるものではない。上記のような地絡電流の経路の一部を構成できる装置であればよく、たとえば、ノイズ除去用のバイパスコンデンサを有するモータ駆動用のインバータ等を含む装置も、本開示の実施の形態例となり得る。
【0068】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
10 車両、100,100A 受電装置、110 受電部、111 受電コイル、112,113,116,125,223,227,228 キャパシタ、115,220 フィルタ回路、117,118,221,222 インダクタ、120 整流回路、130,720,740 ノイズ除去回路、132,134,722,724 バイパスコンデンサ、135,730 チョークコイル、140,750 筐体、150 零相変流器、160 零相電流検出回路、162 終端抵抗、164 フィルタ、166 ピークホールド回路、170 地絡部、172 地絡抵抗、200 送電装置、210 AC/DCコンバータ、215 インバータ、225 送電部、226 送電コイル、230 送電ECU、240,420 通信部、300 蓄電装置、410 車両ECU、430 報知部、500 ボディアース、600 交流電源、700 電力変換装置、710 DC/DCコンバータ、800 補機負荷、L1 直流電力線対、L2 電力線対。
図1
図2
図3
図4
図5
図6