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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20221109BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221109BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221109BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221109BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20221109BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J35/04 301L
B01J37/02 301C
B01J37/02 301L
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
F01N3/28 301Q
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019236035
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104477
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲東 聖次
(72)【発明者】
【氏名】鎮西 勇夫
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昂大
(72)【発明者】
【氏名】島野 紀道
(72)【発明者】
【氏名】二橋 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 満克
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 敬
(72)【発明者】
【氏名】秋山 草多
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】内藤 功
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-150793(JP,A)
【文献】特開2005-111336(JP,A)
【文献】特開2012-096201(JP,A)
【文献】特開2008-023451(JP,A)
【文献】国際公開第2007/145152(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/175142(WO,A1)
【文献】VLAIC, G. et al,Journal of Catalysis,2000年02月15日,Vol.190,pp.182-190,<DOI:10.1006/jcat.1999.2731>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/73
B01D 53/86 - 53/96
F01N 3/00
F01N 3/02
F01N 3/04 - 3/38
F01N 9/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に形成された二層構造の触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒コート層が、排ガス流れ方向の上流側の上流部と下流側の下流部からなり、前記下流部の一部の上に前記上流部の一部又は全部が形成されており、
前記上流部が、透過型電子顕微鏡観察により測定された平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、且つ粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるRh微粒子と、Ptを含み、
前記下流部がRhを含む、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記上流部における前記Rh微粒子の含有量が、前記上流部のRh微粒子及び前記下流部のRhの合計含有量に対して1.0重量%以上45重量%以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記上流部が、酸素吸蔵能を有するOSC材をさらに含む、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれており、これらの有害成分は排ガス浄化用触媒によって浄化されてから大気中に放出されている。従来、この排ガス浄化用触媒には、CO、HCの酸化とNOxの還元とを同時に行う三元触媒が用いられており、三元触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を触媒金属として用いたものが広く用いられている。
【0003】
近年、排ガス規制が厳しくなる一方で、資源リスクの観点から排ガス浄化用触媒に用いられる貴金属量は低減させることが求められている。貴金属の中でもRhはNOx還元活性を担っており、Rhを高活性化することにより、排ガス規制に対応しつつ、貴金属量を低減することが期待できる。
【0004】
排ガス浄化用触媒において、貴金属の使用量を低減させる一つの方法として、貴金属を担体上に微細な粒子として担持して利用する方法が知られている。例えば、特許文献1には、酸化物担体に貴金属粒子を担持させて貴金属担持触媒とする工程と、還元雰囲気中で貴金属担持触媒を加熱処理して、貴金属の粒径を所定の範囲に制御する工程とを含む触媒の製造方法が開示されている。特許文献1の実施例には、酸化物担体上の貴金属粒子の粒径を2.8nm以上3.8nm以下の範囲に制御することができたことが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、酸化物担体に貴金属微粒子を担持させた触媒に対して、還元剤を作用させて小粒径の貴金属微粒子を肥大化させ、該貴金属微粒子の最小粒径を1nm以上にする工程を有する、触媒の製造方法が開示されている。特許文献2の実施例には、酸化物担体上の貴金属微粒子の粒径を3.0nm以上4.1nm以下に制御できたことが記載されている。
【0006】
また、触媒の効果を最大限に発揮するための触媒コート層の構造や、触媒金属の添加位置の検討も行われている。例えば、特許文献3には、排ガスが流通するセル構造の基材と、基材のセル壁面に形成されている触媒層とからなる触媒コンバーターであって、前記触媒層が、基材において排ガスの流れ方向の上流側に配された第1の触媒層と、排ガスの流れ方向の下流側に配された第2の触媒層とから構成されており、第1の触媒層が、ロジウムを含有し、第2の触媒層がパラジウム又は白金を含有する触媒コンバーターが開示されている。
【0007】
しかし、粒径を制御したRh微粒子を用いた従来の触媒には、Rh微粒子が触媒反応中に凝集して劣化してしまい、触媒の耐久性が十分でない場合があった。触媒の耐久性を向上させることができれば、Rhを有効活用することができるため、Rhの使用量を低減することができる。また、粒径を制御したRh微粒子を用いた従来の触媒では、Rhをより活性化させるための添加位置について十分に検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-147256号公報
【文献】特開2007-38085号公報
【文献】特開2014-151306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の通り、粒径を制御したRh微粒子を用いた従来の排ガス浄化用触媒には、触媒の耐久性が十分でない場合があり、また、Rhをより活性化させるための添加位置について改善の余地があった。それ故、本発明は、Rhの活性が向上した排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、平均粒径及び粒径の標準偏差σを特定の範囲内に制御したRh微粒子を触媒コート層の上流部に用いることにより、Rhをより活性化させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)基材と、該基材上に形成された二層構造の触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒コート層が、排ガス流れ方向の上流側の上流部と下流側の下流部からなり、前記下流部の一部の上に前記上流部の一部又は全部が形成されており、
前記上流部が、透過型電子顕微鏡観察により測定された平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、且つ粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるRh微粒子と、Ptを含み、
前記下流部がRhを含む、排ガス浄化用触媒。
(2)前記上流部における前記Rh微粒子の含有量が、前記上流部のRh微粒子及び前記下流部のRhの合計含有量に対して1.0重量%以上45重量%以下である、前記(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
(3)前記上流部が、酸素吸蔵能を有するOSC材をさらに含む、前記(1)又は(2)に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、Rhの活性が向上した排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の排ガス浄化用触媒の第1の実施形態を示す断面模式図である。
図2図2は、本発明の排ガス浄化用触媒の第2の実施形態を示す断面模式図である。
図3図3は、実施例1及び比較例1~4の触媒について、リッチ、リーン繰り返し雰囲気のNOx浄化率を示すグラフである。
図4図4は、上流部のRh含有量の割合と、リッチ、リーン繰り返し雰囲気のNOx浄化率及びNOx50%浄化温度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材上に形成された触媒コート層を有する。触媒コート層は、排ガス流れ方向の上流側の上流部と下流側の下流部からなる二層構造を有し、下流部の一部の上に上流部の一部又は全部が形成されている。すなわち、下流部は、上流部に被覆されていない単層部分を有する。
【0016】
図1に、本発明の排ガス浄化用触媒の第1の実施形態を示す。図1に示されるように、排ガス浄化用触媒10は、基材11と、基材11上に形成された二層構造の触媒コート層14を有する。触媒コート層14は、上流部12と下流部13からなり、下流部13の一部の上に上流部12の一部が形成されている。図1において、矢印は排ガス流れ方向を示す。
【0017】
ここで、触媒コート層について、上流部は、排ガス流れ方向の上流側端面から所定の範囲に形成されている。本発明の排ガス浄化用触媒においては、上流部は下流部の一部の上に形成されているため、上流部が下流側端面まで形成されることはない。すなわち、上流部のコート幅は上流側端面から基材全長の100%未満の長さである。一方、下流部は、少なくとも下流側端面から形成されていればよく、基材全長にわたって形成されていてもよい。すなわち、下流部のコート幅は下流側端面から基材全長の100%以下の長さである。下流部が基材全長にわたって形成されている場合、下流部の一部の上に上流部の全部が形成されている。
【0018】
図2に、本発明の排ガス浄化用触媒の第2の実施形態を示す。図2に示されるように、排ガス浄化用触媒20において、触媒コート層24は、上流部22と下流部23からなり、下流部23の一部の上に上流部22の全部が形成されている。この排ガス浄化用触媒20においては、基材21上に、下層の下流部23が形成され、下流部23の一部の上に上層の上流部22が形成されている。図2において、矢印は排ガス流れ方向を示す。
【0019】
触媒コート層の上流部のコート幅は、上流側端面から基材全長の好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、特に好ましくは50%以下の長さの範囲であるが、例えば40%以下、30%以下の範囲であってもよい。
【0020】
触媒コート層の下流部のコート幅は、前記の通り、下流側端面から基材全長の100%以下の長さであり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下の長さの範囲であるが、例えば60%以下、40%以下の長さの範囲であってもよい。触媒コート層の下流部のコート幅は、好ましくは、下流側端面から基材全長の60%以上100%以下の長さの範囲である。
【0021】
本発明の排ガス浄化用触媒の触媒コート層において、上流部の一部又は全部が下流部の一部の上に重なっている。下流部の上に上流部が重なっている部分の幅は、基材全長の好ましくは10%以上60%以下、より好ましくは10%以上40%以下の長さの範囲である。
【0022】
本発明の排ガス浄化用触媒に用いる基材としては、特に限定されずに、一般的に用いられている多数のセルを有するハニカム形状の材料を使用することができる。基材の材質としては、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の耐熱性を有するセラミックス材料や、ステンレス鋼等の金属箔からなるメタル材料が挙げられるが、コストの観点からコージェライトが好ましい。
【0023】
触媒コート層の上流部は、平均粒径及び粒径の標準偏差σが特定の範囲内に制御されたロジウム(Rh)微粒子(以下、粒径制御Rh微粒子とも記載する)を触媒金属として含む。この粒径制御Rh微粒子は、平均粒径が比較的小さいため、有意に大きな比表面積を示し、高い触媒活性を有する。また、この粒径制御Rh微粒子は、粒径分布が狭く、粗大粒子及び微細粒子の割合が少ないため、高い耐久性及び高い触媒活性を有する。この粒径制御Rh微粒子を触媒コート層の上流部に用いることにより、排ガスが最初に通過する上流部においてNOx浄化能が向上し、排ガスがその後通過する下流部においてもRhをNOxの浄化のために有効活用することができ、排ガス浄化用触媒におけるRhの使用量を低減することができる。
【0024】
粒径制御Rh微粒子は、平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下である。本発明において、粒径制御Rh微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察において撮影した画像を元に、直接に投影面積円相当径を計測し、集合数100以上の粒子群を解析することによって得られた個数平均粒子径である。
【0025】
粒径制御Rh微粒子の平均粒径を1.0nm以上とすることにより、触媒反応中に凝集して粗大化する要因となると考えられる粒径1.0nm未満の微細粒子の割合を低減することができるため、Rh微粒子の劣化を抑制し、触媒の耐久性を向上させることができる。一方、粒径制御Rh微粒子の平均粒径を2.0nm以下とすることにより、Rh微粒子の表面積を大きくすることができ、触媒活性を高くすることができる。粒径制御Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.1nm以上、より好ましくは1.2nm以上である。また、粒径制御Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.9nm以下であり、より好ましくは1.8nm以下であり、特に好ましくは1.6nm以下である。粒径制御Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.1nm以上1.9nm以下であり、より好ましくは1.2nm以上1.8nm以下である。
【0026】
粒径制御Rh微粒子は、透過型電子顕微鏡観察により測定された粒径の標準偏差σが、0.8nm以下である。粒径制御Rh微粒子は、粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるため、粒径分布がシャープであり、微細粒子及び粗大粒子の含有割合が低い。微細粒子が少ないことにより、触媒反応中のRh微粒子の凝集が抑制されるため、Rhの劣化が抑制され、触媒の耐久性が向上する。また、粗大粒子が少ないことにより、Rh微粒子の表面積が大きくなり、触媒活性が向上する。
【0027】
粒径制御Rh微粒子の粒径の標準偏差σは、好ましくは0.7nm以下であり、より好ましくは0.6nm以下であり、特に好ましくは0.5nm以下である。粒径制御Rh微粒子の粒径は単分散であってもよいが、標準偏差σが0.2nm以上、0.3nm以上又は0.4nm以上であっても、本発明の効果を奏することができる。
【0028】
粒径制御Rh微粒子は、特に粒径1.0nm未満の微細粒子の割合が低減されている。粒径1.0nm末満の微細粒子の割合が少ないことにより、触媒反応中のRh微粒子の凝集が抑制されるため、Rhの劣化が抑制され、触媒の耐久性が向上する。粒径制御Rh微粒子は、粒径1.0nm未満のRh微粒子の存在割合が、Rh微粒子の全重量に対して、好ましくは5重量%以下である。この値は、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下又は0.1重量%以下であってよく、これを全く含まなくてもよい。
【0029】
好ましい実施形態において、粒径制御Rh微粒子は、透過型電子顕微鏡によって測定したときに、平均粒径が1.2nm以上1.8nm以下であり、且つ粒径1.0nm未満のRh微粒子の存在割合が、Rh微粒子の全重量に対して5.0重量%以下である。
【0030】
触媒コート層の上流部における粒径制御Rh微粒子の含有量は、基材容量に対して、好ましくは0.01g/L以上0.5g/L以下であり、より好ましくは0.05g/L以上0.2g/L以下である。上流部における粒径制御Rh微粒子の含有量が0.01g/L以上0.5g/L以下であると、触媒の高いNOx浄化能及び高い低温活性を両立することができる。
【0031】
触媒コート層の上流部における粒径制御Rh微粒子の含有量は、上流部の粒径制御Rh微粒子及び下流部のRhの合計含有量に対して、好ましくは1.0重量%以上45重量%以下であり、より好ましくは1.0重量%以上40重量%以下である。上流部における粒径制御Rh微粒子の含有量が1.0重量%以上45重量%以下であると、触媒の高いNOx浄化能及び高い低温活性を両立することができる。
【0032】
触媒コート層の上流部は、前記の粒径制御Rh微粒子に加えて白金(Pt)を触媒金属として含む。触媒コート層の上流部がPtを含むことにより、上流部において排ガス中のHCを十分に浄化することができ、Rhを含む下流部において、HCの被毒を抑えた状態でNOxを浄化することができる。
【0033】
触媒コート層の上流部におけるPtの含有量は、基材容量に対して、好ましくは0.01g/L以上10g/L以下であり、より好ましくは0.1g/L以上5g/L以下である。下流部におけるPtの含有量が0.01g/L以上10g/L以下であると、排ガス中のHCを十分に浄化することができる。
【0034】
触媒コート層の上流部は、Rh及びPt以外の触媒金属を含んでいてもよい。触媒金属としては、例えば、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)及びイリジウム(Ir)等の白金族貴金属を用いることができる。
【0035】
触媒コート層の上流部は、好ましくは酸素吸蔵能を有するOSC材を含む。OSC材は酸素吸蔵能を有する無機材料であり、リーン排ガスが供給された際に酸素を吸蔵し、リッチ排ガスが供給された際に吸蔵した酸素を放出し、排ガスの雰囲気変動を吸収・緩和して、理論空燃比付近に保つことを可能としている。三元触媒は理論空燃比付近でCO、HC、NOx等の有害成分を高効率で浄化する。したがって、触媒コート層の上流部がOSC材を含むことにより、排ガスが最初に通過する上流部においてこれらの有害成分を効率的に浄化することができる。
【0036】
OSC材としては、特に限定されずに、例えば、酸化セリウム(セリア:CeO)や該セリアを含む複合酸化物(例えば、セリア-ジルコニア(ZrO)複合酸化物(CZ又はZC複合酸化物))等が挙げられる。前記のOSC材の中でも、高い酸素吸蔵能を有しており、且つ比較的安価であるため、セリア-ジルコニア(CeO-ZrO)複合酸化物を用いることが好ましい。セリア-ジルコニア複合酸化物は、Ce及びZr以外の金属元素の酸化物を含んでいてもよい。Ce及びZr以外の金属元素としては、希土類元素(ただし、Ceを除く)が好ましい。希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等を挙げることができる。これらのうち、Y、La、Pr、Nd、及びEuから選択される1種以上が好ましく、Y及びLaがより好ましい。好ましくは、セリア-ジルコニア複合酸化物は、ランタナ(La)及びイットリア(Y)との複合酸化物の形態で用いる。セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリアとジルコニアとの混合割合は、好ましくは重量基準でCeO/ZrO=0.2以上9.0以下である。
【0037】
触媒コート層の上流部におけるOSC材の含有量は、基材容量に対して、好ましくは10g/L以上80g/L以下であり、より好ましくは20g/L以上60g/L以下である。上流部におけるOSC材の含有量が10g/L以上80g/L以下であると、上流部において高いNOx浄化能を確保することができる。
【0038】
触媒コート層の上流部は、前記の触媒金属及びOSC材の他に、任意の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されずに、例えば金属酸化物等が挙げられる。触媒コート層の上流部が他の成分を含む場合、その含有量は、基材容量に対して、好ましくは80g/L以下であり、より好ましくは60g/L以下である。
【0039】
金属酸化物に含まれる金属としては、例えば、周期律表の3族、4族及び13族から選択される1種以上の金属やランタノイド系の金属が挙げられる。金属酸化物が2種以上の金属の酸化物から構成されるとき、2種以上の金属酸化物の混合物、2種以上の金属を含む複合酸化物、又は1種以上の金属酸化物と、1種以上の複合酸化物との混合物のいずれであってもよい。
【0040】
金属酸化物は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)から選択される1種以上の金属の酸化物であってよく、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlから選択される1種以上の金属の酸化物である。金属酸化物としては、アルミナ(Al)又はAl及びランタナ(La)の複合酸化物を用いることが好ましい。
【0041】
触媒コート層の上流部において、粒径制御Rh微粒子及びPtは、好ましくは担体粒子上に担持されている。担体粒子としては、特に限定されずに、例えば、前記のOSC材及び他の金属酸化物を用いることができる。好ましい実施形態において、粒径制御Rh微粒子はOSC材上に担持されている。また、別の好ましい実施形態において、Ptはアルミナ(Al)又はAl及びランタナ(La)の複合酸化物上に担持されている。担持方法は、含浸担持法、吸着担持法及び吸水担持法等の一般的な担持法を利用することができる。
【0042】
粒径制御Rh微粒子を担体粒子上に担持して用いる場合、粒径制御Rh微粒子の担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば5重量%以下、3重量%以下、1重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、又は0.2重量%以下である。また、Rh微粒子の担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.05重量%以上、0.07重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上である。
【0043】
粒径制御Rh微粒子を担体粒子上に担持して用いる場合、担体粒子を、予め所定の粒径分布に制御されたRh微粒子前駆体を含有するRh微粒子前駆体分散液と接触させ、次いで焼成することによって、粒径制御Rh微粒子を担体粒子上に担持することができる。
【0044】
Rh微粒子前駆体分散液は、例えば、以下のいずれかの方法によって製造することができる。
(1)反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器中で、Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを反応させる方法(方法1)、及び
(2)Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを混合して反応させた後、高速ミキサー中で撹拌処理する方法(方法2)。
【0045】
方法1では、Rh化合物(例えば、Rhの無機酸塩)の酸性溶液と、塩基性溶液(例えば、含窒素有機化合物の水溶液)とを反応させる際に、反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器を用いることにより、得られる分散液中に含まれるRh微粒子前駆体(例えばRhの水酸化物)の粒径及び粒径分布を制御することができる。
【0046】
反応器が有するクリアランス調節部材は、例えば、2枚の平板、平板と波状板との組み合わせ、細管等であってよい。反応場のクリアランスは、所望の粒径及び粒径分布に応じて適宜設定することができる。反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器としては、例えば、適当なクリアランス調節部材を有するマイクロリアクター等を用いることができる。
【0047】
方法2では、Rh化合物(例えば、Rhの無機酸塩)の酸性溶液と、塩基性溶液(例えば、含窒素有機化合物の水溶液)との反応によって、大粒径の粒子として生成したRh微粒子前駆体を高速ミキサー中で撹拌処理して、強い剪断力を与えて分散することにより、分散後のRh微粒子前駆体の平均粒径及び粒径分布を制御することができる。
【0048】
以上のようにして調製したRh微粒子前駆体分散液を担体粒子と接触させ、次いで焼成することによって、粒径制御Rh微粒子を担体粒子に担持することができる。
【0049】
一方、Ptを担体粒子上に担持して用いる場合、Ptの担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば10重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下である。また、Ptの担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.05重量%以上、0.07重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.5重量%以上である。
【0050】
触媒コート層の下流部は、触媒金属としてロジウム(Rh)を含む。本発明の排ガス浄化用触媒においては、排ガス中の有害成分の一部が、粒径制御Rh微粒子及びPtを含む上流部で効率的に浄化されるため、下流部のRhの使用量を低減することができる。特に、排ガス中のNOxについては、上流部に粒径制御Rh微粒子を用いることにより、上流部において少ないRh使用量で効率的に浄化されるため、下流部におけるRh使用量も低減することができる。
【0051】
触媒コート層の下流部において、Rhは、好ましくはRh微粒子の形態で用いる。Rh微粒子の平均粒径は特に限定されずに、通常0.5nm以上5.0nm以下であり、好ましくは1.0nm以上2.0nm以下である。
【0052】
触媒コート層の下流部のRhとしては、前記の粒径制御Rh微粒子を用いることが好ましい。触媒コート層の下流部に粒径制御Rh微粒子を用いることにより、触媒のNOx浄化能をさらに向上させることができる。よって、好ましい実施形態において、触媒コート層の上流部は前記の粒径制御Rh微粒子及びPtを含み、触媒コート層の下流部は前記の粒径制御Rh微粒子を含む。
【0053】
触媒コート層の下流部におけるRhの含有量は、基材容量に対して、好ましくは0.01g/L以上1.0g/L以下であり、より好ましくは0.1g/L以上0.4g/L以下である。下流部におけるRhの含有量が0.01g/L以上1.0g/L以下であると、触媒の高いNOx浄化能及び高い低温活性を両立することができる。
【0054】
触媒コート層の上流部の粒径制御Rh微粒子及び下流部のRhの合計含有量は、基材容量に対して、好ましくは0.01g/L以上1.0g/L以下であり、より好ましくは0.1g/L以上0.5g/L以下である。
【0055】
触媒コート層の下流部は、Rh以外の触媒金属を含んでいてもよい。触媒金属としては、例えば、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)等の白金族貴金属を用いることができる。
【0056】
触媒コート層の下流部は、好ましくはOSC材を含む。下流部がOSC材を含むことにより、下流部における高いNOx浄化能を確保することができる。
【0057】
OSC材としては、特に限定されずに、例えば、酸化セリウム(セリア:CeO)や該セリアを含む複合酸化物(例えば、セリア-ジルコニア(ZrO)複合酸化物(CZ又はZC複合酸化物))等が挙げられる。前記のOSC材の中でも、高い酸素吸蔵能を有しており、且つ比較的安価であるため、セリア-ジルコニア(CeO-ZrO)複合酸化物を用いることが好ましい。セリア-ジルコニア複合酸化物は、Ce及びZr以外の金属元素の酸化物を含んでいてもよい。Ce及びZr以外の金属元素としては、希土類元素(ただし、Ceを除く)が好ましい。希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等を挙げることができる。これらのうち、Y、La、Pr、Nd、及びEuから選択される1種以上が好ましく、La及びNdがより好ましい。好ましくは、セリア-ジルコニア複合酸化物は、ランタナ(La)及び酸化ネオジム(Nd)との複合酸化物の形態で用いる。セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリアとジルコニアとの混合割合は、好ましくは重量基準でCeO/ZrO=0.2以上9.0以下である。
【0058】
触媒コート層の下流部におけるOSC材の含有量は、基材容量に対して、好ましくは1g/L以上80g/L以下であり、より好ましくは5g/L以上50g/L以下である。触媒コート層の下流部におけるOSC材の含有量が10g/L以上80g/L以下であると、下流部において高いNOx浄化能を確保することができる。
【0059】
触媒コート層の下流部は、前記の触媒金属及びOSC材の他に、任意の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されずに、例えば金属酸化物等が挙げられる。触媒コート層の下流部が他の成分を含む場合、その含有量は、基材容量に対して、好ましくは100g/L以下であり、より好ましくは80g/L以下である。
【0060】
金属酸化物に含まれる金属としては、例えば、周期律表の3族、4族及び13族から選択される1種以上の金属やランタノイド系の金属が挙げられる。金属酸化物が2種以上の金属の酸化物から構成されるとき、2種以上の金属酸化物の混合物、2種以上の金属を含む複合酸化物、又は1種以上の金属酸化物と、1種以上の複合酸化物との混合物のいずれであってもよい。
【0061】
金属酸化物は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)から選択される1種以上の金属の酸化物であってよく、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlから選択される1種以上の金属の酸化物である。金属酸化物としては、アルミナ(Al)又はAl及びランタナ(La)の複合酸化物や、イットリア(Y)、ランタナ(La)及びジルコニア(ZrO)の複合酸化物を用いることが好ましい。
【0062】
触媒コート層の下流部において、Rhは、好ましくは担体粒子上に担持されている。担体粒子としては、特に限定されずに、例えば、前記のOSC材及び他の金属酸化物を用いることができる。好ましい実施形態において、触媒コート層の下流部のRhは、OSC材以外の金属酸化物上に担持されている。担持方法は、含浸担持法、吸着担持法及び吸水担持法等の一般的な担持法を利用することができる。
【0063】
Rhを担体粒子上に担持して用いる場合、Rhの担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば5重量%以下、3重量%以下、1重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、又は0.2重量%以下である。また、Rhの担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.05重量%以上、0.07重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上である。
【0064】
本発明の排ガス浄化用触媒は、当業者に公知の方法によって基材上に触媒コート層の成分を含むスラリーをコートすることにより、製造することができる。一実施形態において、例えば、Rh、OSC材及び金属酸化物を含むスラリーを公知の方法を用いて下流側端面から所定の範囲にわたりコートして、所定の温度及び時間にて乾燥及び焼成することにより、基材上に触媒コート層の下流部を形成する。次いで、粒径制御Rh微粒子、Pt、OSC材及び金属酸化物を含むスラリーを公知の方法を用いて基材の上流側端面から所定の範囲にわたりコートし、所定の温度及び時間にて乾燥及び焼成することにより、上流部を形成する。
【実施例
【0065】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0066】
<触媒の調製>
使用原料
材料1:Al:4重量%-La複合化Al
材料2:ZC(OSC材):21重量%-CeO、72重量%-ZrO、1.7重量%-La、5.3重量%-Nd複合酸化物
材料3:ZC(OSC材):30重量%-CeO、60重量%-ZrO、5重量%-La、5重量%-Y複合酸化物
材料4:ZY:6重量%-La、10重量%-Y複合化ZrO
材料5:Pt/Al:Ptが材料1に担持された材料
材料6:粒径制御Rh分散液
材料7:Rh/ZY:Rhが材料4に担持された材料
材料8:粒径制御Rh/ZC:材料6のRhが材料3に担持された材料
材料9:ビーカー法Rh分散液
材料10:Rh/ZC:Rhが材料3に担持された材料
材料11:粒径制御Rh/ZY:材料6のRhが材料4に担持された材料
材料12:ビーカー法Rh/ZC:材料9のRhが材料3に担持された材料
基材:875cc(400セル四角 壁厚4mil)のコージェライトハニカム基材
【0067】
材料5~材料12は以下のようにして調製した。
【0068】
材料5:Pt/Al
硝酸Pt溶液と材料1とを接触させた後、焼成することにより、担持量3重量%のPtが材料1に担持された材料5を得た。
【0069】
材料6:粒径制御Rh分散液
イオン交換水110mL中に硝酸Rh(III)110gを加えて溶解し、Rh化合物の酸性溶液(pH1.0)を調製した。
【0070】
有機塩基溶液として、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(濃度175g/L、pH14)を準備した。
【0071】
クリアランス調節部材としての2枚の平板を有する反応器(マイクロリアクター)を用い、クリアランスが10μmに設定された反応場に、前記のRh化合物の酸性溶液及び有機塩基溶液を導入する手法により、両液を水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)と硝酸Rh(RN)とのモル比(TEAH/RN)が18となる条件で反応させて、Rh微粒子前駆体分散液を調製した。得られたRh微粒子前駆体分散液のpHは14であった。また、得られたRh微粒子前駆体分散液に含まれるRh微粒子前駆体のメジアン径(D50)を動的光散乱法(DLS)によって測定したところ、2.0nmであった。
【0072】
材料7:Rh/ZY
硝酸Rh溶液と材料4とを接触させた後、焼成することにより、担持量0.9重量%のRhが材料4に担持された材料を得た。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は0.70nmであった。
【0073】
材料8:粒径制御Rh/ZC
材料6と材料3とを接触させた後、焼成することにより、担持量0.45重量%のRhが材料3に担持された材料8を得た。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は1.40nmであり、粒径の標準偏差σは0.48nmであった。この粒径制御Rh微粒子の粒径分布において、1.0nm未満の微細粒子の割合は、材料12のビーカー法Rhと比較して少なかった。
【0074】
材料9:ビーカー法Rh分散液
クリアランス調節部材を有する反応器を用いずに、Rh化合物の酸性溶液と有機塩基溶液との反応をビーカー中で行った以外は材料6の調製と同様にして、材料9を調製した。
【0075】
材料10:Rh/ZC
硝酸Rh溶液と材料3とを接触させた後、焼成することにより、担持量0.45重量%のRhが材料3に担持された材料を得た。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は0.70nmであった。
【0076】
材料11:粒径制御Rh/ZY
材料6と材料4とを接触させた後、焼成することにより、担持量0.9重量%のRhが材料4に担持された材料11を得た。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は1.40nmであり、粒径の標準偏差σは0.48nmであった。
【0077】
材料12:ビーカー法Rh/ZC
材料8の調製と同様にして、材料9のRhが材料3に担持された材料12を調製した。透過型電子顕微鏡によって測定したRh微粒子の平均粒径は1.42nmであり、粒径の標準偏差σは0.94nmであった。
【0078】
実施例1
蒸留水に材料1、材料2、材料7及びAl系バインダーを攪拌しながら投入し、これらの材料が懸濁したスラリー1を調製した。次に、調製したスラリー1を下流側端面から基材へ流し込み、ブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面に材料をコーティングした。コート幅は基材全長の80%に調整した。また、コート量は、基材容量に対して材料1が25g/L、材料2が15g/L、材料7が50g/Lになるようにした。最後に、120℃の乾燥機で2時間乾燥した後、電気炉で500℃にて2時間焼成し、触媒コート層の下流部を調製した。
【0079】
同様に、蒸留水に材料5、材料8及びAl系バインダーを攪拌しながら投入し、これらの材料が懸濁したスラリー2を調製した。下流部が形成された基材にスラリー2を上流側端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面に材料をコーティングした。コート幅は基材全長の40%に調整した。また、コート量は、基材容量に対して材料5が30g/L、材料8が40g/Lとなるようにした。最後に、120℃の乾燥機で2時間乾燥した後、電気炉で500℃にて2時間焼成し、触媒コート層の上流部を調製した。
【0080】
実施例2及び3
スラリー1及び2のRh量をそれぞれ表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2及び3の触媒を調製した。
【0081】
比較例1
上流部の材料8を材料3に置き換え、スラリー2のRh量を表1に示す通りに変更したた以外は実施例1と同様にして、比較例1の触媒を調製した。
【0082】
比較例2
下流部の材料7を材料11に置き換えた以外は比較例1と同様にして、比較例2の触媒を調製した。
【0083】
比較例3
上流部の材料8を材料10に置き換えた以外は実施例1と同様にして、比較例3の触媒を調製した。
【0084】
比較例4
上流部の材料8を材料12に置き換えた以外は実施例1と同様にして、比較例4の触媒を調製した。
【0085】
比較例5及び6
スラリー1及び2のRh量をそれぞれ表1に示す通りに変更した以外は比較例3と同様にして、比較例5及び6の触媒を調製した。
【0086】
表1に、実施例1~3及び比較例1~6の触媒の上流部及び下流部の組成並びに貴金属量を示す。なお、貴金属量は、基材容量に対する貴金属量(g/基材1L)である。
【0087】
【表1】
【0088】
<耐久試験>
調製した各触媒について、実際のエンジンを用いて耐久試験を実施した。具体的には、耐久試験は、各触媒をV型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温900℃で46時間にわたり、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより行った。
【0089】
<性能評価>
NOx浄化率
触媒入りガス温度350℃で、空燃比(A/F)14.4、14.8の排ガスを交互に供給し、Ga=28g/sでのNOx浄化率を評価した。2分経過時から60秒間のNOx浄化率を平均し、算出した。
NOx50%浄化温度
実施例1~3及び比較例1の触媒について、耐久試験を行った各排ガス浄化用触媒をL型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、空燃比(A/F)=14.4の排ガスを供給し、Ga=35g/sの条件において、触媒床温200~600℃(20℃/分)で昇温した。NOx浄化率50%の際の温度(NOx50%浄化温度)を測定し、低温活性を評価した。この値が低い程、低温活性に優れる。
【0090】
表2に、実施例1及び比較例1~4の触媒について、上流部及び下流部のRh量並びにRh微粒子の詳細を示す。なお、表2において、Rh微粒子のRh種とは、材料の調製に用いた原料を意味する。また、図3に、実施例1及び比較例1~4の触媒について、リッチ、リーン繰り返し雰囲気のNOx浄化率を示す。
【0091】
【表2】
【0092】
図3に示されるように、Rh微粒子として粒径制御Rh微粒子及び平均粒径が本発明の特定の範囲外であるRh微粒子を用いたいずれの触媒においても、下流部のRh微粒子の一部を上流部に添加することにより、下流部のみに添加した場合と比較してNOx浄化率が高くなる傾向があった(実施例1及び比較例1~3)。このNOx浄化率の上昇幅は、粒径制御Rh微粒子を用いた場合の方が、平均粒径が本発明の特定の範囲外であるRh微粒子を用いた場合よりも大きかった。よって、実施例の触媒におけるNOx浄化能向上効果は、Rh微粒子の粒径及び添加位置を制御することにより得られる特異的なものであることが示された。また、Rh微粒子の平均粒径を制御するだけでなく、粒径の標準偏差σを所定の範囲内に制御して、微細粒子を低減することによっても、NOx浄化能が向上することが示された(実施例1及び比較例4)。
【0093】
図4に、上流部及び下流部のRhの合計含有量に対する上流部のRh含有量の割合と、リッチ、リーン繰り返し雰囲気のNOx浄化率及びNOx50%浄化温度の関係を示す。図4において、NOx浄化率については、実施例1~3及び比較例1、3、5~6の測定結果を示し、NOx50%浄化温度については、実施例1~3及び比較例1の測定結果を示す。図4に示されるように、上流部のRh含有量の割合が増加すると、実施例の触媒及び比較例の触媒のいずれにおいても、NOx浄化率が高くなったが、粒径制御Rh微粒子を用いた実施例の触媒は、比較例の触媒よりもNOx浄化率が有意に高かった。ただし、上流部のRh含有量の割合が40%程度まで増加すると、比較例の触媒に対する実施例の触媒のNOx浄化率の上昇幅が小さくなる傾向があった。また、上流部のRh含有量の割合が増加し、下流部のRh含有量の割合が減少すると、NOx50%浄化温度が高くなり、触媒の低温活性が悪化する傾向があった。よって、上流部の粒径制御Rh微粒子の含有量には、高いNOx浄化能及び高い低温活性を両立するという観点から好ましい範囲があり、1.0重量%以上45重量%以下の範囲が好ましい。
【符号の説明】
【0094】
10 排ガス浄化用触媒
11 基材
12 上流部
13 下流部
14 触媒コート層
20 排ガス浄化用触媒
21 基材
22 上流部
23 下流部
24 触媒コート層
図1
図2
図3
図4