(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】封止用シート
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20221109BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20221109BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20221109BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C08J5/18 CEZ
C08J5/18 CFC
H01L23/30 R
H01L21/56 R
(21)【出願番号】P 2018041968
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】土生 剛志
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐作
(72)【発明者】
【氏名】飯野 智絵
(72)【発明者】
【氏名】大原 康路
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-142247(JP,A)
【文献】特開2012-028404(JP,A)
【文献】特開2000-252309(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169747(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0103298(US,A1)
【文献】特開2017-098353(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107039361(CN,A)
【文献】特開2014-179593(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0117653(KR,A)
【文献】特開2014-175459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
H01L 23/29
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子に接触する一方面と、前記一方面と
厚み方向に間隔を隔てて対向し、基材に接触する他方面とを有する封止用シートであり、
前記封止用シートの硬化物である硬化体シートの前記他方面の最大高さRzが、4μm以上、
9μm以下であることを特徴とする、封止用シート。
【請求項2】
電子素子に接触する一方面と、前記一方面と
厚み方向に間隔を隔てて対向し、基材に接触する
他方面とを有する封止用シートであり、
前記封止用シートの硬化物である硬化体シートの前記他方面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが、4μm以上、25μm以下であることを特徴とする、封止用シート。
【請求項3】
前記硬化体シートの前記他方面の粗さ曲線要素の平均長さRSmの、前記硬化体シートの前記他方面の最大高さRzに対する比(RSm/Rz)が、0.5以上、1以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の封止用シート。
【請求項4】
熱硬化性成分と、無機フィラーとを含有し、
前記無機フィラーは、
第1フィラーと、
前記第1フィラーの平均フィラー径より小さい平均フィラー径を有する第2フィラーとを含有し、
前記第2フィラーの前記第1フィラー100質量部に対する配合部数が、50質量部以上、100質量部未満であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の封止用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、封止用シートにより、複数の電子素子(電子デバイス)を埋め込んで封止することが知られている。
【0003】
例えば、熱硬化後の表面粗さが0.3μm以上である第1の面を有する電子デバイス封止用シートが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に記載の電子デバイス封止用シートでは、第1の面に対向する第2の面が、電子デバイスに接触して封止する一方、第1の面は、レーザーマーキングされて、文字情報や図形情報などの情報がマーキングされる。
【0005】
そして、特許文献1に記載の電子デバイス封止用シートでは、熱硬化後において、第1の面が上記した表面粗さを有するので、上記した情報の視認性が良好となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、電子デバイス封止用シートは、第1の面がダイシングテープに接触した後、複数の電子デバイスを個片化するように、ダイシング(個片化)される。その際、ダイシングされた電子デバイス封止用シートの第1の面が、意図せずに、ダイシングテープから離間して、電子デバイス封止用シートが電子デバイスとともに飛んで(シート飛びが発生、または、デバイス飛びが発生して)しまうという不具合がある。
【0008】
一方、ダイシング後には、電子デバイス封止用シートは、ピックアップ装置などによって、第1の面をダイシングテープから意図的に剥離(離間)して、別の箇所に搬送する必要がある。
【0009】
本発明は、加工時には、基材との接触を確保しつつ、搬送時には、基材から確実に剥離することのできる封止用シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(1)は、電子素子に接触する一方面と、前記一方面と前記厚み方向に間隔を隔てて対向し、基材に接触する他方面とを有する封止用シートであり、前記封止用シートの硬化物である硬化体シートの前記他方面の最大高さRzが、4μm以上、15μm以下である、封止用シートを含む。
【0011】
本発明(2)は、電子素子に接触する一方面と、前記一方面と前記厚み方向に間隔を隔てて対向し、基材に接触する他方面とを有する封止用シートであり、前記封止用シートの硬化物である硬化体シートの前記他方面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが、4μm以上、25μm以下である、封止用シートを含む。
【0012】
本発明(3)は、前記硬化体シートの前記他方面の粗さ曲線要素の平均長さRSmの、前記硬化体シートの前記他方面の最大高さRzに対する比(RSm/Rz)が、0.5以上、1以下である、(1)または(2)に記載の封止用シートを含む。
【0013】
本発明(4)は、熱硬化性成分と、無機フィラーとを含有し、前記無機フィラーは、第1フィラーと、前記第1フィラーの平均フィラー径より小さい平均フィラー径を有する第2フィラーとを含有し、前記第2フィラーの前記第1フィラー100質量部に対する配合部数が、50質量部以上、100質量部未満である、(1)~3のいずれか一項に記載の封止用シートを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の封止用シートでは、封止用シートの硬化物である硬化体シートの他方面の最大高さRzまたは粗さ曲線要素の平均長さRSmが、上記した上限以下であるので、硬化体シートの加工時には、硬化体シートと基材との接触を確保することができる。そのため、硬化体シートを、電子素子を封止しながら、それらを確実に取り扱うことができる。
【0015】
一方、硬化体シートの他方面の最大高さRzまたは粗さ曲線要素の平均長さRSmが、上記した下限以上であるので、硬化体シートの搬送時には、硬化体シートを基材から確実に剥離することができる。
【0016】
そのため、この硬化体シートは、取扱性および搬送性の両方に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の封止用シートの一実施形態である半導体素子封止用シートの断面図を示す。
【
図2】
図2A~
図2Cは、
図1に示す半導体素子封止用シートを用いて、半導体素子を封止して、半導体素子パッケージ集合体を製造する方法の工程図を示し、
図2Aが、複数の半導体素子と半導体素子封止用シートとをそれぞれ準備する工程、
図2Bが、半導体素子封止用シートを、複数の半導体素子に対して対向配置する工程、
図2Cが、半導体素子封止用シートによって、複数の半導体素子を封止して、半導体素子パッケージ集合体を得る工程を示す。
【
図3】
図3A~
図3Cは、
図2Cに示す半導体素子パッケージ集合体を個片化して、半導体素子パッケージを得る工程を示す。
図3Aが、半導体素子パッケージ集合体を第1剥離シートから基材に転写する工程、
図3Bが、半導体素子パッケージ集合体を切断する工程、
図3Cが、半導体素子パッケージを基材から引き上げる工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の封止用シートの一実施形態である半導体素子封止用シートを、
図1~
図3Cを参照して説明する。
【0019】
この半導体素子封止用シート1は、基板2に実装されている電子素子の一例としての半導体素子3(
図2A参照)を封止するための封止用シートである。
【0020】
また、半導体素子封止用シート1は、後述する半導体素子パッケージ集合体14(
図2C参照)および半導体素子パッケージ4(
図3C参照)を製造するための部品であって、半導体素子パッケージ集合体14および半導体素子パッケージ4そのものではなく、半導体素子封止用シート1は、半導体素子3、および、半導体素子3を実装する基板2を含まず、具体的には、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0021】
なお、半導体素子封止用シート1は、半導体素子3を封止した後の硬化体シート5(
図2C参照)ではなく、つまり、半導体素子3を封止する前のシートである。
【0022】
図1に示すように、半導体素子封止用シート1は、厚み方向に直交する方向(面方向)に延びる略板形状(フィルム形状)を有する。また、半導体素子封止用シート1は、厚み方向一方側に位置する一方面の一例としての第1面6と、第1面6と厚み方向に対向する他方面の一例としての第2面7とを備える。第1面6および第2面7は、ともに平坦面を有しており、互いに平行する。
【0023】
第1面6は、半導体素子封止用シート1における厚み方向一方側に位置する面(下面)であって、
図2Cに示すように、半導体素子封止用シート1が半導体素子3を封止するときに、半導体素子3および基板2に接触する接触面(厚み方向一方面)である。
【0024】
第2面7は、半導体素子封止用シート1が半導体素子3を封止するときに、半導体素子3と接触することなく、基板2の実装面8(後述)と厚み方向に間隔を隔てて対向配置される対向面(厚み方向他方面)(上面)である。また、
図3Aに示すように、第2面7(
図3A参照。ただし、
図3Aでは、第1面6および第2面7が上下反転されている)は、半導体素子パッケージ集合体14(後述)がダイシングテープ30に転写されるときに、ダイシングテープ30に接触する接触面である。
図3Cに示すように、さらには、第2面7は、半導体素子パッケージ4(後述)が、ダイシングテープ30から剥離する剥離面でもある。
【0025】
半導体素子封止用シート1の材料は、例えば、熱硬化性成分と、無機フィラーとを含む封止組成物である。
【0026】
熱硬化性成分は、半導体素子封止用シート1(封止組成物)において、無機フィラーを互いに結合させるバインダー成分であって、熱によって硬化して、封止組成物の硬度を向上させる。
【0027】
熱硬化性成分は、例えば、封止樹脂(主剤)、硬化剤および硬化促進剤を含む。
【0028】
封止樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビニルエステル樹脂、シアノエステル樹脂、マレイミド樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。封止樹脂としては、耐熱性などの観点から、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0029】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などの3官能以上の多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。これらエポキシ樹脂は、単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0030】
好ましくは、2官能エポキシ樹脂の単独使用が挙げられ、具体的には、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の単独使用が挙げられる。
【0031】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、10g/eq.以上、好ましくは、100g/eq.以上であり、また、例えば、300g/eq.以下、好ましくは、250g/eq.以下である。
【0032】
エポキシ樹脂の軟化点は、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上であり、また、例えば、110℃以下、好ましくは、90℃以下である。
【0033】
エポキシ樹脂の割合は、封止組成物において、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。また、エポキシ樹脂の割合は、熱硬化性成分において、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0034】
硬化剤は、加熱によって、上記した封止樹脂(主剤)を硬化させる成分(好ましくは、エポキシ樹脂硬化剤)である。硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂などのフェノール樹脂が挙げられる。
【0035】
硬化剤の割合は、封止樹脂がエポキシ樹脂であり、硬化剤がフェノール樹脂であれば、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂中の水酸基の合計が、例えば、0.7当量以上、好ましくは、0.9当量以上、例えば、1.5当量以下、好ましくは、1.2当量以下となるように、調整される。具体的には、硬化剤の配合部数は、封止樹脂100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、75質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0036】
硬化促進剤は、加熱によって、封止樹脂の硬化を促進する触媒(熱硬化触媒)(好ましくは、エポキシ樹脂硬化促進剤)であって、例えば、有機リン系化合物、例えば、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)などのイミダゾール化合物などが挙げられる。好ましくは、イミダゾール化合物が挙げられる。硬化促進剤の配合部数は、封止樹脂100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下である。
【0037】
無機フィラーは、半導体素子封止用シート1の強度を向上させる無機粒子である。無機フィラーの材料としては、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素などの無機化合物が挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、シリカが挙げられる。
【0038】
無機フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、略球形状、略板形状、略針形状、不定形状などが挙げられる。好ましくは、略球形状が挙げられる。
【0039】
無機フィラーの最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径)Mは、例えば、50μm以下、好ましくは、20μm以下、より好ましくは、10μm以下であり、また、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上である。なお、平均粒子径Mは、例えば、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められた粒度分布に基づいて、D50値(累積50%メジアン径)として求められる。
【0040】
また、無機フィラーは、第1フィラーと、第1フィラーの最大長さの平均値M1より小さい最大長さの平均値M2を有する第2フィラーとを含むことができる。
【0041】
第1フィラーの最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径)M1は、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0042】
第2フィラーの最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径)M2は、例えば、1μm未満、好ましくは、0.8μm以下であり、また、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.1μm以上である。
【0043】
第1フィラーの最大長さの平均値の、第2フィラーの最大長さの平均値に対する比(M1/M2)は、例えば、2以上、好ましくは、5以上であり、また、例えば、50以下、好ましくは、20以下である。
【0044】
第1フィラーおよび第2フィラーの材料は、ともに同一あるいは相異っていてもよい。好ましくは、第1フィラーおよび第2フィラーの材料は、ともに同一、具体的には、シリカである。
【0045】
さらに、無機フィラーは、その表面が、部分的あるは全体的に、シランカップリング剤などで表面処理されていてもよい。好ましくは、表面処理されていない第1フィラーと、表面処理されている第2フィラーとの併用が挙げられる。
【0046】
無機フィラー(第1フィラーおよび第2フィラーの併用であれば、それらの総量)の割合は、半導体素子封止用シート1(封止組成物)中、例えば、50質量%以上、好ましくは、50質量%超過、より好ましくは、55質量%以上、さらに好ましくは、60質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、例えば、90質量%以下、好ましくは、85質量%以下、より好ましくは、75質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下、とりわけ好ましくは、70質量%未満である。
【0047】
無機フィラーの割合が上記した下限を上回ると、半導体素子封止用シート1の靱性を確保することができる。
【0048】
一方、無機フィラーの割合が上記した上限を下回ると、半導体素子封止用シート1が脆くなることを抑制し、半導体素子3を確実に封止することができる。
【0049】
無機フィラーが上記した第1フィラーと第2フィラーとを含む場合には、第1フィラーの割合は、封止組成物中、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%超過であり、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0050】
無機フィラーが上記した第1フィラーと第2フィラーとを含む場合には、第2フィラーの配合部数は、第1フィラー100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、45質量部以上、より好ましくは、50質量部以上、さらに好ましくは、50質量部超過であり、また、例えば、100質量部未満、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下、さらに好ましくは、60質量部以下である。
【0051】
第2フィラーの配合部数が上記した下限を上回れば、あるいは、上記した上限を下回れば、比較的大きな第1フィラー間の隙間を、第2フィラーによって効率的に充填して、半導体素子封止用シート1を熱プレスするときの流動性を低減させることができ、ひいては、半導体素子封止用シート1および硬化体シート5のそれぞれの第2面7の表面状態が、半導体素子封止用シート1から硬化体シート5となるときに、大きく変動することを抑制することができる。さらには、第2フィラーの配合部数が上記した下限を上回れば、あるいは、上記した上限を下回れば、硬化体シート5の第2面7に所望の表面状態(後述する最大高さRz、平均長さRSmなど)を付与する。
【0052】
なお、封止組成物に、熱可塑性樹脂、顔料、シランカップリング剤などの添加剤を適宜の割合で添加することもできる。
【0053】
熱可塑性樹脂は、加熱時の硬化体シート5における柔軟性を向上させる成分である。
【0054】
熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂(6-ナイロンや6,6-ナイロンなど)、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂(PETなど)、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体などが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0055】
熱可塑性樹脂として、好ましくは、封止樹脂(好ましくは、エポキシ樹脂)との分散性を向上させる観点から、アクリル樹脂が挙げられる。
【0056】
アクリル樹脂としては、例えば、直鎖または分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、その他のモノマー(共重合性モノマー)とをモノマー成分とし、モノマー成分を重合することにより得られるアクリル系ポリマーなどが挙げられる。
【0057】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、へプチル、シクロヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、テトラデシル、ステアリル、オクタデシル、ドデシルなどの炭素数1~20のアルキル基が挙げられる。好ましくは、炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
【0058】
その他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーなどが挙げられる。
【0059】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、例えば、10万以上、好ましくは、30万以上であり、また、例えば、100万以下、好ましくは、80万以下である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトフラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値に基づいて測定される。
【0060】
熱可塑性樹脂の割合(固形分割合)は、封止組成物の熱硬化を阻害しないように調整されており、具体的には、封止組成物に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上、より好ましくは、3.5質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。
【0061】
なお、熱可塑性樹脂は、適宜の溶媒で希釈されて調製されていてもよい。
【0062】
顔料としては、例えば、カーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。顔料の平均粒子径は、例えば、0.001μm以上、例えば、1μm以下である。顔料の割合は、封止組成物に対して、例えば、0.1質量%以上、また、例えば、2質量%以下である。
【0063】
シランカップリング剤は、無機フィラーの表面を処理(表面処理)するために配合される。シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどの3-グリシドキシジアルキルジアルコキシシラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどの3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。好ましくは、3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。シランカップリング剤の配合割合は、無機フィラー100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0064】
封止組成物を調製するには、熱硬化性成分と、無機フィラーと、必要により、添加剤とを配合して、それらを混合する。
【0065】
次に、半導体素子封止用シート1の製造方法を説明する。
【0066】
半導体素子封止用シート1を製造するには、例えば、封止組成物を溶媒(例えば、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチルなど)に溶解および/または分散させて、ワニスを調製し、これを、
図1に示すように、第1剥離シート16に塗布し、乾燥させる。これによって、半導体素子封止用シート1を、第1剥離シート16に支持された状態で、製造する。その後、第2剥離シート17を、半導体素子封止用シート1に対して第1剥離シート16の反対側に配置する。つまり、半導体素子封止用シート1を、第1剥離シート16および第2剥離シート17で厚み方向に挟み込んだ状態で、製造する。半導体素子封止用シート1の第1面6および第2面7のそれぞれは、第1剥離シート16および第2剥離シート17のそれぞれに接触している。
【0067】
第1剥離シート16および第2剥離シート17のそれぞれは、可撓性を有し、面方向に延びるシート形状を有する。第1剥離シート16および第2剥離シート17の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどの樹脂、例えば、ステンレスなどの金属などが挙げられ、好ましくは、樹脂が挙げられる。また、第1剥離シート16および第2剥離シート17の表面(半導体素子封止用シート1に接触する接触面)は、剥離処理が施されていてもよい。第1剥離シート16および第2剥離シート17のそれぞれの厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0068】
また、第2剥離シート17の表面(詳しくは、第2面7に接触する面)は、その形状(表面における凹凸形状など)が後述する硬化体シート5の第2面7にある程度転写される関係上、以下の範囲を有する。具体的には、第2剥離シート17の表面の最大高さRzは、例えば、4.0μm以上、好ましくは、4.5μm以上、より好ましくは、5.0μm以上であり、また、例えば、15.0μm以下、好ましくは、10.0μm以下である。第2剥離シート17の表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmは、例えば、4.0μm以上、好ましくは、4.5μm以上であり、また、例えば、25.0μm以下、好ましくは、10.0μm以下である。また、第2剥離シート17の表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmの、第2剥離シート17の表面の最大高さRzに対する比(RSm/Rz)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.3以上、より好ましくは、0.5以上、さらに好ましくは、0.5超過、さらには、0.7以上、さらには、0.9以上であり、また、例えば、1.1以下、好ましくは、1以下である。
【0069】
第2剥離シート17の表面の最大高さRzおよび粗さ曲線要素の平均長さRSmは、後述する硬化体シート5の第2面7におけるそれらと同一の方法(後述)により算出される。
【0070】
他方、ワニスを調製せず、混練押出によって、封止組成物から半導体素子封止用シート1を製造することもできる。第1剥離シート16および第2剥離シート17は、押出後の半導体素子封止用シート1に配置される。
【0071】
半導体素子封止用シート1における熱硬化性成分は、例えば、Bステージ(完全硬化ではない半硬化)である。Bステージは、熱硬化性成分が、液状であるAステージと、完全硬化したCステージとの間の状態であって、硬化およびゲル化がわずかに進行し、圧縮弾性率がCステージの弾性率よりも小さい状態である。
【0072】
これにより、半導体素子封止用シート1を、第1面6および第2面7のそれぞれが、第1剥離シート16および第2剥離シート17で支持(保護)された状態で、製造する。
【0073】
半導体素子封止用シート1の厚みは、特に限定されず、例えば、100μm以上であり、また、例えば、2000μm以下である。
【0074】
次に、この半導体素子封止用シート1を用いて、複数の半導体素子3を封止し、続いて、複数の半導体素子3を個片化するように、硬化体シート5および基板2を切断して、半導体素子パッケージ4を製造する方法を説明する。
【0075】
半導体素子パッケージ4を製造する方法は、複数の半導体素子3を準備する工程(
図2A参照)、半導体素子封止用シート1を準備する工程(
図1および
図2A参照)、半導体素子封止用シート1によって複数の半導体素子3を封止して、半導体素子封止用シート1から硬化体シート5を調製するとともに、半導体素子パッケージ集合体14を得る工程(
図2Bおよび
図2C参照)、半導体素子パッケージ集合体14をダイシングテープ30に配置する工程(
図3A参照)、半導体素子パッケージ集合体14を切断加工する工程(
図3B参照)、および、半導体素子パッケージ4をダイシングテープ30から剥離する工程(
図3Bおよび
図3C参照)を備える。
【0076】
この方法では、
図2Aに示すように、まず、半導体素子3を準備する。
【0077】
半導体素子3は、例えば、半導体チップであり、面方向に延びる略平板形状を有する。半導体素子3としては、特に限定されない。半導体素子3の厚み方向一方面(下面)には、端子(図示せず)が設けられている。
【0078】
半導体素子3は、基板2の実装面8(上面)(後述)に実装されている。具体的には、半導体素子3は、例えば、基板2に対してフリップチップ実装されている。
【0079】
また、半導体素子3は、基板2において、面方向に互いに間隔を隔てて複数配置されている。
【0080】
基板2は、面方向に延びる略平坦形状を有する実装基板である。また、基板2は、複数の半導体素子3を実装する実装面8(上面)と、実装面8と厚み方向に間隔を隔てて配置される対向面9とを有する。
【0081】
実装面8は、面方向に沿う平面を有する。また、実装面8は、平面視において、複数の半導体素子3全部を囲む大きさを有する。つまり、基板2の実装面8は、平面視において、複数の半導体素子3と重複する重複領域11と、複数の半導体素子3と重複せず、基板2から露出する露出領域12とを有する。実装面8は、重複領域11において、半導体素子3の端子(図示せず)に対応する基板端子(図示せず)を備える。
【0082】
対向面9は、実装面8に平行しており、面方向に沿う平面を有する。
【0083】
この方法では、別途、
図1および
図2Aに示すように、半導体素子封止用シート1を準備する。具体的には、
図1の矢印および仮想線で示すように、第1剥離シート16を、半導体素子封止用シート1の第1面6から剥離する。
【0084】
図2Aの矢印および
図2Bで示すように、その後、半導体素子封止用シート1を、その第1面6が、半導体素子3の厚み方向他方面(上面)に接触するように、複数の半導体素子3に配置する。
【0085】
図2Bに示すように、次いで、半導体素子封止用シート1によって複数の半導体素子3を封止する。
【0086】
例えば、下板および上板を備える平板プレス(図示せず)を用いて、半導体素子封止用シート1を加熱および加圧して、半導体素子封止用シート1で複数の半導体素子3を封止する。
【0087】
また、上記した加熱によって、半導体素子封止用シート1は、熱硬化する。具体的には、一旦、軟化後、半導体素子封止用シート1の封止組成物が完全硬化する(Cステージ化する)。
【0088】
加熱条件は、封止組成物が完全硬化する条件である。具体的には、加熱温度が、例えば、85℃以上、好ましくは、100℃以上であり、また、例えば、125℃以下、好ましくは、110℃以下である。加熱時間が、例えば、10分間以上、好ましくは、30分間以上であり、また、例えば、300分間以下、好ましくは、180分間以下である。圧力は、特に限定されず、例えば、0.1MPa以上、好ましくは0.5MPa以上であり、また、例えば、10MPa以下、好ましくは、5MPa以下である。
【0089】
半導体素子封止用シート1は、一旦軟化して、複数の半導体素子3を埋設する。換言すれば、複数の半導体素子3が半導体素子封止用シート1に埋め込まれる。
【0090】
半導体素子封止用シート1の第1面6は、半導体素子3の上面および周側面を被覆するとともに、実装面8における露出領域12に接触する。
【0091】
これによって、複数の半導体素子3が半導体素子封止用シート1によって封止される。また、基板2における露出領域12は、半導体素子封止用シート1によって接触(密着)されている。
【0092】
なお、第2面7では、第2剥離シート17との接触状態が継続している。
【0093】
なお、複数の半導体素子3を封止し、基板2の露出領域12に接触する半導体素子封止用シート1は、すでに加熱により熱硬化(完全硬化)(Cステージ)状態となっている。そのため、半導体素子封止用シート1は、硬化体シート5となる。硬化体シート5は、半導体素子封止用シート1の硬化物である。
【0094】
図2Cの矢印および仮想線で示すように、その後、第2剥離シート17を硬化体シート5の第2面7から剥離する。つまり、第2面7を露出させる。
【0095】
その後、半導体素子封止用シート1(あるいは硬化体シート5)は、熱硬化をより一層進行させたい場合には、平板プレスから下ろし、別の加熱炉に投入する。
【0096】
硬化体シート5の第2面7の最大高さRzは、4μm以上であり、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、6μm以上、さらに好ましくは、7μm以上、とりわけ好ましくは、8μm以上であり、また、15μm以下、好ましくは、10μm以下、より好ましくは、9μm以下である。
【0097】
第2面7の最大高さRzは、JIS B 0651(2001)に基づいて、算出される。
【0098】
第2面7の最大高さRzは、第2剥離シート17の表面形状(表面状態)、無機フィラーの種類、形状、配合割合(第1フィラーおよび第2フィラーの配合割合を含む)、半導体素子封止用シート1の硬化条件(加熱条件など)などに応じて、決定される。
【0099】
第2面7の最大高さRzが上記した上限を上回れば、第2面7にダイシングテープ30を接触させ、その後、複数の半導体素子3を個片化するように、硬化体シート5をダイシングする際、硬化体シート5が、意図せずに、半導体素子3とともに、ダイシングテープ30から離間してしまう。
【0100】
一方、第2面7の最大高さRzが上記した下限を下回れば、硬化体シート5とダイシングテープ30との密着力が過度に高くなり、そのため、硬化体シート5を備える半導体素子パッケージ4を、ピックアップ装置36などでダイシングテープ30から引き上げることができない。
【0101】
硬化体シート5の第2面7の粗さ曲線要素の平均長さRSmは、4μm以上であり、好ましくは、4.2以上、より好ましくは、4.4μm以上であり、また、25μm以下、好ましくは、20μm以下、より好ましくは、15μm以下、さらに好ましくは、10μm以下、とりわけ好ましくは、5μm未満、さらには、4.9μm以下、さらには、4.8μm以下、さらには、4.7μm以下である。
【0102】
第2面7の粗さ曲線要素の平均長さRSmは、JIS B 0651(2001)に基づいて、算出される。
【0103】
第2面7の粗さ曲線要素の平均長さRSmは、第2剥離シート17の表面形状(表面状態)、無機フィラーの種類、形状、配合割合(第1フィラーおよび第2フィラーの配合割合を含む)、半導体素子封止用シート1の硬化条件(加熱条件など)などに応じて、決定される。
【0104】
第2面7の粗さ曲線要素の平均長さRSmが上記した上限を上回れば、第2面7にダイシングテープ30を接触させ、その後、複数の半導体素子3を個片化するように、硬化体シート5をダイシングする際、硬化体シート5が、意図せずに、半導体素子3とともに、ダイシングテープ30から離間してしまう。
【0105】
一方、第2面7の粗さ曲線要素の平均長さRSmが上記した下限を下回れば、硬化体シート5とダイシングテープ30との密着力が過度に高くなり、そのため、硬化体シート5を備える半導体素子パッケージ4を、ピックアップ装置36などでダイシングテープ30から引き上げることができない。
【0106】
また、硬化体シート5の第2面7の平均長さRSmの、最大高さRzに対する比(RSm/Rz)は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.3以上、より好ましくは、0.5以上、さらに好ましくは、0.5超過、さらには、0.7以上、さらには、0.9以上であり、また、例えば、1.1以下、好ましくは、1以下である。
【0107】
上記した比が上記した下限以上、上限以下であれば、第2面7にダイシングテープ30を接触させ、その後、複数の半導体素子3を個片化するように、硬化体シート5をダイシングする際、硬化体シート5が、意図せずに、半導体素子3とともに、ダイシングテープ30から離間してしまうことを抑制しながら、硬化体シート5を備える半導体素子パッケージ4を、確実に、ピックアップ装置36などでダイシングテープ30から引き上げることができる。
【0108】
また、硬化体シート5は、半導体素子3を確実に封止できる靱性を有しており、具体的には、硬化体シート5の25℃における引張貯蔵弾性率E’は、例えば、1GPa以上、好ましくは、5GPa以上であり、また、例えば、20GPa以下、好ましくは、10GPa以下、より好ましくは、5GPa以下である。硬化体シート5の25℃の引張貯蔵弾性率E’は、モード:引張、走査温度:0~260℃、周波数:1Hz、昇温速度:10℃/分で動的粘弾性測定を実施して求められる。
【0109】
硬化体シート5の引張貯蔵弾性率E’が上記した下限以上であれば、硬化体シート5の半導体素子3に対する優れた封止性を確保することができる。硬化体シート5の引張貯蔵弾性率E’が上記した上限以下であれば、硬化体シート5が、その硬度に基づいてダイシングテープ30から意図せずに剥離することを抑制することができる。
【0110】
これにより、基板2、複数の半導体素子3および硬化体シート5を備える半導体素子パッケージ集合体14を得ることができる。
【0111】
なお、
図2Cに示す半導体素子パッケージ集合体14は、
図3Cに示し、次に説明する切断後の半導体素子パッケージ4ではなく、具体的には、基板2および硬化体シート5を切断する前であり、複数の半導体素子3が個片化される前であり、つまり、複数の半導体素子3を有する。
【0112】
その後、半導体素子パッケージ集合体14をダイシングテープ30に配置する。具体的には、まず、
図3Aの仮想線および矢印で示すように、半導体素子パッケージ集合体14を、第2剥離シート17から基材の一例としてのダイシングテープ30に移し替える。つまり、半導体素子パッケージ集合体14を、第2剥離シート17からダイシングテープ30に転写する。
【0113】
具体的には、
図2Cの矢印で示すように、まず、第2剥離シート17を、硬化体シート5の第2面7から剥離する。続いて、
図3Aに示すように、半導体素子パッケージ集合体14を上下反転して、ダイシングテープ30に対して対向配置する。このとき、第2面7を、ダイシングテープ30の感圧接着面(粘着面)31に接触させる。
【0114】
ダイシングテープ30は、支持板32と、支持板32に支持される感圧接着層33とを厚み方向に順に備える。
【0115】
支持板32は、面方向に沿う板形状を有する。支持板32の材料としては、靱性を有する材料が挙げられ、例えば、第1剥離シート16および第2剥離シート17で例示した樹脂、金属が挙げられ、好ましくは、樹脂が挙げられる。
【0116】
感圧接着層33は、支持板32の一面(主面)に配置されており、面方向に沿うシート形状を有する。感圧接着層33は、ダイシングテープ30における感圧接着面31を形成する。感圧接着層33の材料としては、アクリル系感圧接着剤などの感圧接着剤が挙げられる。
【0117】
ダイシングテープ30は、後述するダイシングにおいて半導体素子パッケージ集合体14(半導体素子パッケージ4)が剥離することなく支持する一方、切断後の半導体素子パッケージ4が所望の条件(あるいは所望のタイミング)で剥離することを許容する剥離接着性を有する。ダイシングテープ30の封止樹脂に対する剥離接着力(25℃)は、例えば、0.01N/5mm以下、好ましくは、0.03N/5mm以上であり、また、例えば、0.07N/5mm以下、好ましくは、0.05N/5mm以下である。
【0118】
その後、
図3Bに示すように、半導体素子パッケージ集合体14を、複数の半導体素子3のそれぞれに対応して、個片化する。半導体素子パッケージ集合体14は、第2面7がダイシングテープ30に支持される状態で、個片化される。つまり、複数の半導体素子3を備える半導体素子パッケージ集合体14が、単数の半導体素子3を備える半導体素子パッケージ4に個片化されて、複数の半導体素子パッケージ4が得られる。
【0119】
図3Bに示すように、複数の半導体素子3のそれぞれの周囲の硬化体シート5および基板2を、例えば、ダイシングソー(あるいはダイシングブレード)25などの切断装置によって、切断(ダイシング)する。ダイシングソー25は、例えば、基板2の対向面9から硬化体シート5の第2面7に向かって、基板2および硬化体シート5に進入する。
【0120】
その後、個片化された半導体素子パッケージ4を、ピックアップ装置(図示せず)などを用いて、別の箇所に搬送する。
【0121】
例えば、把持部35および押圧部34を備えるピックアップ装置36によって、半導体素子パッケージ4を、ダイシングテープ30から引き上げる。
【0122】
把持部35としては、例えば、吸引機構(図示せず)を備えるヘッドなどが挙げられる。
【0123】
押圧部34としては、例えば、厚み方向に延びる針部材などが挙げられる。
【0124】
ピックアップ装置36は、押圧部34が各半導体素子パッケージ4を下側から上側(ダイシングテープ30から半導体素子パッケージ4に向かう方向)に向かって押し上げた後、把持部35が硬化体シート5の対向面9に接触して、図示しない移動装置による上側への移動によって、半導体素子パッケージ4における硬化体シート5の対向面8と、ダイシングテープ30の感圧接着面31(感圧接着層33の表面)とを離間させる。
【0125】
そして、この半導体素子封止用シート1では、半導体素子封止用シート1では、半導体素子パッケージ5の第2面7の最大高さRzまたは粗さ曲線要素の平均長さRSmが、上記した上限以下であるので、硬化体シート5の加工時、具体的には、硬化体シート5を切断加工するときには、硬化体シート5とダイシングテープ30との接触を確保することができる。つまり、硬化体シート5の切断加工時に、硬化体シート5がダイシングテープ30に確実に感圧固定される。換言すれば、硬化体シート5がダイシングテープ30から飛び出すこと(シート飛びの発生)(あるいは、硬化体シート5が半導体素子3とともに飛び出す素子飛び)(またはチップ飛び)を抑制することができる。そのため、硬化体シート5を、半導体素子3を封止しながら、ダイシングテープ30で支持しながら、それらを確実に取り扱うことができる。
【0126】
一方、硬化体シート5の第2面7の最大高さRzまたは粗さ曲線要素の平均長さRSmが、上記した下限以上であるので、硬化体シート5の搬送時、具体的には、半導体素子パッケージ4をピックアップ装置36により引き上げるときには、硬化体シート5をダイシングテープ30から確実に剥離して、所望の箇所に搬送することができる。
【0127】
そのため、この硬化体シート5は、ダイシングテープ30で支持されながら、その後、ダイシングテープ30から確実に剥離される。
【0128】
その結果、硬化体シート5は、搬送性および取扱性の両方に優れる。
【0129】
<変形例>
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【0130】
図示しないが、半導体素子封止用シート1により、単数の半導体素子3を封止することもできる。この場合には、単数の半導体素子3を封止した硬化体シート5を、ダイシングテープ30で固定(密着)しながら、半導体素子3に対応するように、硬化体シート5および基板2を、ダイシングソー25などで、外形加工する。
【0131】
また、一実施形態では、封止用シートの一例として半導体素子封止用シート1を挙げて、電子素子の一例としての半導体素子3を封止しているが、これに限定されず、例えば、図示しないが、他の電子素子を封止する電子素子封止用シートであってもよい。この場合には、電子素子封止用シートを用いて、電子素子を封止して、電子素子パッケージ集合体および電子素子パッケージを順次製造することができる。
【実施例】
【0132】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0133】
実施例および比較例で使用した各成分、シートなどを以下に示す。
【0134】
エポキシ樹脂:新日鐵化学社製のYSLV-80XY(ビスフェノールF型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂)、エポキシ当量200g/eq.軟化点80℃)
硬化剤:群栄化学社製のLVR-8210DL(ノボラック型フェノール樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、水酸基当量:104g/eq.、軟化点:60℃)
硬化促進剤:四国化成工業社製の2PHZ-PW(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール)、エポキシ樹脂硬化促進剤
第1フィラー:デンカ社製のFB-8SM(球状溶融シリカ粉末(無機フィラー)、平均粒子径15μm)
第2フィラー:アドマテックス社製のSC220G-SMJ(平均粒径0.5μm)を3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製の製品名:KBM-503)で表面処理した無機フィラー。SC220G-SMJ 100質量部に対して1質量部のシランカップリング剤で表面処理した無機フィラー。
【0135】
熱可塑性樹脂:根上工業社製のHME-2006M、カルボキシル基含有のアクリル酸エステルコポリマー、重量平均分子量:60万、固形分濃度20質量%のメチルエチルケトン溶液
顔料:三菱化学社製の#20(カーボンブラック)
シランカップリング剤:信越化学社製のKBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
RF2:品番(RF2・PET75csAM8U)(第2剥離シート、最大高さRz8.8μm、平均長さRSm4.5μm、アイム工業株式会社製)
EXP:品番(EXP-LCM-01)(第2剥離シート、最大高さRz4.7μm、平均長さRSm4.5μm、開成工業株式会社製)
SHP:品番(PET-75-SHP-A0)(第2剥離シート、最大高さRz2.2μm、平均長さRSm2.7μm、株式会社フジコー製)
U70:品番(U70-50-280-150)(第2剥離シート、最大高さRz4μm、平均長さRSm4.5μm、帝人フィルムソリューション社製)
MRA:品番(MRA38)(第2剥離シート、最大高さRz2.4μm、平均長さRSm1.5μm、三菱樹脂株式会社製)
NT:品番(NT-01)(第2剥離シート、最大高さRz18.5μm、平均長さRSm127.6μ、株式会社きもと社製)
【0136】
実施例1~5および比較例1~3
表1に記載の配合処方に従い、各成分をメチルエチルケトンに溶解および分散させ、ワニスを得た。ワニスの固形分濃度は、80質量%であった。
【0137】
ワニスを第1剥離シート16の表面に塗布した後、110℃で、5分間乾燥させた。これにより、厚み260μmの半導体素子封止用シート1を製造した。その後、半導体素子封止用シート1の第2面7に、第2剥離シート17を配置した。
【0138】
その後、半導体素子封止用シート1を、150℃で、1時間加熱して、硬化体シート5を調製した。
【0139】
[物性]
硬化体シート5について、下記の物性を評価した。その結果を表1に記載する。
【0140】
(最大高さRz、および、粗さ曲線要素の平均長さRSm)
硬化体シート5の第2面7について、最大高さsz、および、粗さ曲線要素の平均長さRSmを測定した。また、硬化体シート5の第2面7の平均長さRSmの、最大高さRzに対する比(RSm/Rz)を算出した。
【0141】
具体的には、Lasertec社製の共焦点顕微鏡(OPTELICS H300)を用いて、上記した各項目を測定した。
【0142】
(引張貯蔵弾性率E’)
硬化体シート5を、縦0.1cm、横5cmに外形加工して、25℃における引張貯蔵弾性率E’を求めた。
【0143】
測定装置および測定条件の詳細は、以下の通りである。
【0144】
測定装置:固体粘弾性測定装置(形式:RSA-G2、ティー・エイ・インスツルメンツ社製)
モード:引張
走査温度:0~260℃
周波数:1Hz
歪み:0.05%
昇温速度:10℃/分
[硬化体シートの評価]
硬化体シート5について、下記の項目を評価した。その結果を表1に記載する。
【0145】
(シート飛び試験、および、ピックアップ試験)
硬化体シート5を、ダイシングテープ30(NBD-5172K、日東電工株式会社製)に貼り合わせて、続いて、ダイシングソー25(ダイシングブレード、ブレード幅200μm幅、直径54mm、DFD6361、Disco株式会社製)を用いて、ダイシングソー25の移動速度30mm/sec、回転数40000rpm、PKGサイズ2mm×2mm、水量1.5L/minで、ダイシング(切断加工)した。
【0146】
そして、下記の基準に従って、硬化体シート5がダイシングテープ30から飛び出したこと(シート飛び)を評価した。
○:硬化体シート5をダイシングしているときに、硬化体シート5がダイシングテープ30から全く剥離しなかった(シート飛びが生じなかった)。
△:シート飛びが、10%以下の割合で、発生した。
×:シート飛びが、10%超過、100%以下の割合で、発生した。
【0147】
その後、把持部35および押圧部34を備えるピックアップ装置36(SPA-300、新川株式会社製)を用いて、10個の半導体素子パッケージ4をダイシングテープ30から剥離することを試みた。
【0148】
そして、剥離できた半導体素子パッケージ4の数により、下記の基準に従って評価した。
◎:10個全部の半導体素子パッケージ4を、ピックアップ装置36によって、ダイシングテープ30から剥離できた。
○:7個以上、9個以下の半導体素子パッケージ4を、ピックアップ装置36によって、ダイシングテープ30から剥離できた。
△:5個以上、6個以下の半導体素子パッケージ4を、ピックアップ装置36によって、ダイシングテープ30から剥離できた。
×:1個以上4個以下の半導体素子パッケージ4を、ピックアップ装置36によって、ダイシングテープ30から剥離できた、あるいは、10個全部の半導体素子パッケージ4を、ピックアップ装置36によって、ダイシングテープ30から剥離できなかった。
【0149】
【0150】
表1中、特記しない場合には、数値は、配合部数である。
【符号の説明】
【0151】
1 半導体素子封止用シート(封止用シートの一例)
3 半導体素子(電子素子の一例)
5 硬化体シート
6 第1面(一方面の一例)
7 第2面(他方面の一例)
30 ダイシングテープ(基材の一例)
Rz 最大高さ
RSm 粗さ曲線要素の平均長さ