(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】作業支援装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20221109BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20221109BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2018050971
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【氏名又は名称】別所 公博
(74)【代理人】
【識別番号】100206782
【氏名又は名称】佐藤 彰洋
(72)【発明者】
【氏名】阪上 真
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-184884(JP,A)
【文献】特開2007-164756(JP,A)
【文献】特開2005-301821(JP,A)
【文献】特開2002-351532(JP,A)
【文献】特開昭63-041975(JP,A)
【文献】特開2017-068431(JP,A)
【文献】特開2002-279019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0125757(US,A1)
【文献】特開2016-092047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の生産のための複数の作業工程にそれぞれ配置される作業者を支援する作業支援装置であって、
前記作業者別に、
製造時における該作業者が要因となって発生した不具合に係わる
作業不具合情報、および製品の出荷後に判明した作業者が要因となって発生した不具合に係わる市場不具合情報を、不具合関連情報
として記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記不具合関連情報を基に、前記不具合の要因となった作業者を支援するための支援情報を提供可能な情報提供部と、
を備え、
前記情報提供部は、前記支援情報として、不具合の要因となった前記作業者に対して、前記作業者が要因となって発生した前記不具合に係わる前記不具合関連情報に対応付けられてあらかじめ記憶された教育カリキュラムを示す情報が提供可能である、
作業支援装置。
【請求項2】
前記情報提供部は、前記支援情報として、前記作業者を新たに配置すべき作業工程を示す情報が提供可能である、
請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記情報提供部は、前記作業者が従事する作業工程とは異なる作業工程で該作業者の行った作業をリカバリー可能であった場合に、前記支援情報として、前記異なる作業工程に新たに配置すべき作業者を示す情報が提供可能である、
請求項1または2に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記情報提供部は、前記支援情報として、前記作業者が作業を行ううえで有用とする情報が提供可能である、
請求項1~3の何れか1項に記載の作業支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の生産のための複数の作業工程にそれぞれ配置される作業者を支援する作業支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、製品の不具合要因の迅速な特定が求められている。不具合要因を特定するための方法として、製造情報、出荷情報、修理履歴等をデータベースに記録して、不具合発生時に、不具合発生した機器に基づいて、発生した不具合の共通性を確認し、不具合要因を予測する方法が知られている。例えば、製造機器を識別するコード、部品を識別するコード、作業者を識別するコード、出荷後の設置先情報、修理履歴をデータベースに格納し、不具合発生時に、各識別コードの共通性から、不具合要因を予測する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、製造ロット番号に識別番号を関連付けしてデータベースに格納し、製造不良要因を予測する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-327231号公報
【文献】特開2010-182284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品の不具合要因は、製造用の機器の他に、製造に携わる作業者である場合がある。不具合要因が作業者であった場合、その作業者を要因とする不具合が高頻度に発生する恐れがある。このことから、不具合の発生を抑制するうえでは、不具合要因となった作業者への対応も重要である。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、その目的は、作業者を要因とする不具合の発生をより抑制可能に作業を支援する作業支援装置を提供することに在る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業支援装置は、製品の生産のための複数の作業工程にそれぞれ配置される作業者を支援することを前提とし、作業者別に、製造時における該作業者が要因となって発生した不具合に係わる作業不具合情報、および製品の出荷後に判明した作業者が要因となって発生した不具合に係わる市場不具合情報を、不具合関連情報として記憶する記憶部と、記憶部に記憶された不具合関連情報を基に、不具合の要因となった作業者を支援するための支援情報を提供可能な情報提供部と、を備え、情報提供部は、支援情報として、不具合の要因となった作業者に対して、作業者が要因となって発生した不具合に係わる不具合関連情報に対応付けられてあらかじめ記憶された教育カリキュラムを示す情報が提供可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業者を要因とする不具合の発生をより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る作業支援装置を用いて構築された生産管理システムの構成例を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る作業支援装置の機能構成例を示す図である。
【
図3】製造管理情報DBの構成例を説明する図である。
【
図4】工程管理情報DBの構成例を説明する図である。
図3に示すB部の詳細を示す図である。
【
図5】作業者管理情報DBの構成例を説明する図である。
【
図6】カリキュラム管理情報DBの構成例を説明する図である。
【
図7】支援管理情報DBの構成例を説明する図である。
【
図8】教育カリキュラム提供処理の例を示すフローチャートである。
【
図9】情報収集処理の例を示すフローチャートである。
【
図10】情報選択処理の例を示すフローチャートである。
【
図11】配置特定処理の例を示すフローチャートである。
【
図12】支援情報特定処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る作業支援装置の各実施の形態を、図を参照して説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る作業支援装置を用いて構築された生産管理システムの構成例を示す図である。
【0011】
本実施の形態1に係る作業支援装置12は、製品の製造のために複数に分割された各作業工程にそれぞれ配置される作業者が適切な作業を行えるように支援するためのものである。この作業支援装置12を用いて構築された生産管理システム1は、
図1に示すように、作業システム部11、情報収集部13、演算部14、記憶部15、及び制御部16を更に備え、各部11~16をネットワーク17に接続する形で構築されている。
【0012】
作業システム部11は、作業者が作業を行う製造現場に設けられたシステムであり、製造現場での各作業者が行った作業の内容を表す情報を収集し、記憶部15に送信する。この作業システム部11としては、周知の技術を用いることができる(例えば、特許文献1参照)。このことから、詳細な説明は省略する。
【0013】
情報収集部13は、製造現場以外で発生した製品に係わる情報の収集に用いられる。この情報収集部13は、例えばネットワーク17を介した通信が可能な情報処理装置である。この情報処理装置の代表例はパーソナルコンピュータである。
【0014】
演算部14は、記憶部15に記憶された各種情報を用いた解析を行い、不具合要因を推定、或いは特定する。推定、或いは特定された不具合要因を表す情報は記憶部15に保存される。不具合要因としては作業者も対象となっている。
【0015】
記憶部15は、生産管理システム1で共有する各種情報の格納に用いられる。記憶部15は、具体的には、例えばDB(DataBase)サーバ、及びストレージを備えた1つのシステムである。
【0016】
制御部16は、生産管理システム1全体を制御する情報処理装置である。制御部16は、ネットワーク17を介して作業システム部11、作業支援装置12、演算部14を制御する。
【0017】
作業支援装置12は、生産現場で働く作業者の支援のために設置された1台以上の情報処理装置である。記憶部15に格納された各種情報を用いて、作業者が適切に作業を行ううえで有用な情報を提供する。ここでは、作業支援装置12は1台の情報処理装置により実現されていると想定する。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態1に係る作業支援装置の機能構成例を示す図である。本実施の形態1に係る作業支援装置12は、
図2に示すように、機能構成として、通信部201、制御部202、カリキュラム提供部203、配置支援部204、支援情報提供部205、及び記憶部206を備えている。
【0019】
通信部201は、ネットワーク17を介した通信を可能にする。通信部201は、具体的には、例えばNIC(Network Interface Card)である。制御部202は、作業支援装置12全体を制御する。この制御部202は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びハードディスク装置により実現される。より具体的には、制御部202は、作業支援装置12が備えるリソースを使用しつつ、ハードディスク装置に格納されたオペレーティングシステムを含むプログラムをCPUが実行することにより実現される。
【0020】
カリキュラム提供部203、配置支援部204、及び支援情報提供部205は何れも、作業者が適切な作業を行うことを支援するための情報提供を行うための機能である。これらは、作業支援装置12が備えるリソースを使用しつつ、ハードディスク装置に格納された対応するアプリケーション・プログラムをCPUが実行することにより実現される。
【0021】
記憶部206は、各種情報の格納に用いられる。記憶部206は、具体的には、例えばハードディスク装置、ディスクアレイ等のストレージである。この記憶部206には、
図2に示すように、製造管理情報DB211、工程管理情報DB212、作業者管理情報DB213、カリキュラム管理情報DB214、及び支援管理情報DB215が構築されている。これらDB211~215は、基本的は記憶部15からコピーしたものである。
【0022】
図3は、製造管理情報DB211の構成例を説明する図である。製造管理情報DB211に格納される製造管理情報は、製造する製品毎、作業工程毎に収集される情報である。1レコードに格納される製造管理情報は、
図3に示すように、製造に係わる製造情報、作業不具合情報、出荷先情報、及び市場不具合情報を含む。
図3において、空欄は、情報が存在しないことを表している。これは、後述する
図4~
図7でも同様である。
【0023】
製造情報は、
図3に示すように、生産機器ID情報、生産部品情報、作業者ID(IDentifier)情報、及び工程ID情報を含む。これらは、作業システム部11が収集し、記憶部15上の製造管理情報DBに保存される。
【0024】
生産機器ID情報は、製造される製品にそれぞれ割り当てられる、製品を一意に特定可能とする識別情報である。生産部品情報は、製品の製造に用いられた部品を一意に特定可能とする識別情報である。作業者ID情報は、作業者を一意に特定可能な識別情報である。工程ID情報は、作業者ID情報によって特定される作業者が製品の製造のために作業した作業工程を一意に示す識別情報である。この製造情報により、製造された製品毎、作業工程毎に、製品の製造に携わった作業者を特定することができる。
【0025】
作業不具合情報は、作業者を要因にして発生した不具合の内容を表す情報であり、製造時に作業システム部11によって生成される。出荷先情報は、製品の出荷先を表す情報である。市場不具合情報は、製品の出荷後に判明した、作業者を要因とする不具合の内容を表す情報である。この2つの不具合情報を製造情報と関連付けることにより、製品毎、作業工程毎に、作業者を要因として判明した不具合を確認することができる。このことから、製造管理情報は、作業者別に、その作業者が要因となって発生した不具合を示す情報、及びその不具合に係わる情報をまとめたものとなっている。
【0026】
市場不具合情報は、情報収集部13によって記憶部15上の製造管理情報DBに登録される情報である。以降、特に断らない限り、不具合情報は、作業不具合情報、及び市場不具合情報の両方を含む意味で用いる。これは、不具合でも同様である。
【0027】
図4は、工程管理情報DB212の構成例を説明する図である。工程管理情報DB212に格納される工程管理情報は、製造する製品の種類毎、作業工程毎に収集される情報である。1レコードに格納される工程管理情報は、
図4に示すように、工程ID情報、前工程ID情報、後工程ID情報、作業種別情報、単位作業時間情報、難易度情報、リカバリー情報、及び生産機器情報を含む。
【0028】
工程ID情報は、対応する作業工程を一意に示す識別情報である。前工程ID情報は、工程ID情報が示す作業工程の直前に位置する作業工程の識別情報である。後工程ID情報は、工程ID情報が示す作業工程の直後に位置する作業工程の識別情報である。作業種別情報は、工程ID情報が示す作業工程で作業者が行う作業の種別を示す情報である。
図4中に表記の「切削」は、製品の製造のために切削作業を作業者が行うことを意味する。単位作業時間情報は、1製品の作業に要すると想定された作業時間を示す情報である。難易度情報は、作業内容の難易度を表す情報である。その難易度は、例えば1~5の5段階で表される。
【0029】
リカバリー情報は、作業者が不適切な作業を行った場合に、適切な作業を行ったように対応するリカバリーが可能な後工程を示す情報である。生産機器情報は、製造される製品毎に割り当てられる識別情報であり、上記生産機器ID情報とは異なる。
【0030】
図5は、作業者管理情報DB213の構成例を説明する図である。作業者管理情報DB213に格納される作業者管理情報は、作業者毎に収集される情報である。1レコードに格納される作業者管理情報は、
図5に示すように、氏名情報、作業者ID情報、現作業工程情報、過去作業工程情報を含む。
【0031】
氏名情報は、作業者の氏名を示す情報である。作業者ID情報は、上記のように、作業者を一意に特定可能な識別情報である。現作業工程情報は、作業者が現在、配置されている作業工程に係わる情報であり、工程ID情報、及び従事開始情報を含む。工程ID情報は、作業工程を一意に特定可能な識別情報であり、従事開始情報は、工程ID情報が示す作業工程に配置された年月日を示す情報である。
【0032】
過去作業工程情報は、作業者が過去に配置された作業工程毎に、従事工程情報を有する。従事工程情報は、過去に従事した作業工程での評価を確認可能にする情報であり、
図5に示すように、工程ID情報、従事期間情報、及び従事結果情報を含む。従事期間情報は、工程ID情報が示す作業工程に従事していた期間を示す情報である。従事結果情報は、その作業工程に従事していた際の評価を示す情報である。
図5中に表記の「良」「不可」は、評価を秀、優、良、可、不可、の5段階で表した場合のものである。この評価は、生産現場の管理者による評価であっても良いが、不具合の発生頻度、その不具合の程度等により、自動的に行った評価であっても良い。
【0033】
図6は、カリキュラム管理情報DB214の構成例を説明する図である。このカリキュラム管理情報DB214に格納されるカリキュラム管理情報は、不具合の要因となった作業者に対し、必要と思われる教育カリキュラムに沿った教育を行うための情報である。1レコードに格納されるカリキュラム管理情報は、
図6に示すように、工程ID情報、作業不具合情報、市場不具合情報、生産機器情報、及び保存先情報を含む。
【0034】
保存先情報は、作業者に提示すべき教育カリキュラムの情報を格納したファイルの保存先を示す情報である。それにより、各カリキュラム情報は、作業工程毎に、生産機器情報が示す製品で判明した不具合に応じて、提示すべき教育カリキュラムの情報を格納したファイルを取得可能にする情報となっている。
【0035】
図7は、支援管理情報DB215の構成例を説明する図である。この支援管理情報DB215に格納される支援管理情報は、不具合の要因となった作業者に対し、適切な作業を行ううえで有用と想定される支援情報を提供するための情報である。1レコードに格納される支援管理情報は、
図7に示すように、工程ID情報、従事期間情報、類似作業経験情報、生産機器情報、従事評価情報、及び保存先情報を含む。
【0036】
新たに配置された作業工程での作業に慣れるには或る程度の時間が必要である。作業に慣れるまでの間に様々な情報を提示することは、作業者を混乱させる恐れがある。本実施の形態1では、そのために、様々な情報の提示を回避する期間を設けている。従事期間情報は、その期間を示す情報である。
【0037】
従事評価情報は、作業者が同じ作業工程に従事している間の評価を示す情報である。この評価情報は、後述するように、製造管理情報DB211を参照することにより、自動的に生成される。
【0038】
保存先情報は、作業者に提示すべき情報を格納したファイルの保存先を示す情報である。それにより、本実施の形態1では、作業者に提示する支援情報は、作業工程別に、作業の評価結果に応じて選択するようにしている。
【0039】
カリキュラム提供部203、配置支援部204、及び支援情報提供部205は、上記各DB211~214を1つ以上参照し、情報提供を行う。以降、各部203~205の動作、及び提供する情報について詳細に説明する。
【0040】
カリキュラム提供部203は、記憶部206上の製造管理情報DB211、及びカリキュラム管理情報DB214を参照し、不具合の要因となった作業者に対して提示すべき教育カリキュラムを提示可能にする。作業者に対して提示すべき教育カリキュラムの特定は、例えば制御部16、或いは情報収集部13からの指示により行われる。
【0041】
その指示は、通信部201によって受信され、通信部201から制御部202に出力される。この結果、制御部202は、カリキュラム提供部203を制御し、作業者に対して提示すべき教育カリキュラムの特定を行わせる。
【0042】
図8は、教育カリキュラム提供処理の例を示すフローチャートである。この教育カリキュラム提供処理は、例えば記憶部206に格納されているアプリケーション・プログラムをCPUが実行することにより実現される処理であり、制御部202からの指示によって実行される形となる。この教育カリキュラム提供処理をCPUが実行することにより、カリキュラム提供部205の機能の一部が実現される。ここではカリキュラム提供部205が処理を実行する主体と想定し、説明を行う。
【0043】
先ず、S801では、カリキュラム提供部205は、製造管理情報DB211を参照し、作業者毎に、その作業者を要因として発生した不具合情報を収集する情報収集処理を実行する。次のS802では、カリキュラム提供部205は、不具合を発生させた要因とされた作業者毎に、その作業者に提示すべき教育カリキュラムを選択する情報選択処理を実行する。その後、この教育カリキュラム提供処理が終了する。
【0044】
図9は、情報収集処理の例を示すフローチャートである。次に
図9を参照して、情報収集処理について詳細に説明する。ここでも処理を実行する主体はカリキュラム提供部203を想定する。
【0045】
S901では、カリキュラム提供部203は、製造管理情報DB211のなかで参照するレコードを管理するための変数である第1ポインタに値を設定する。この値は、設定された期間に応じて特定される値である。それにより、本実施の形態1では、その期間前から現在までの間に発生した不具合のみを、その期間前から順次、確認するようになっている。以降、この期間は、「調査期間」と表記する。
【0046】
S902では、カリキュラム提供部203は、第1ポインタの値が示すレコードを製造管理情報DB211から読み出す。次に、S903では、カリキュラム提供部203は、読み出したレコードに製造管理情報が無いか否か判定する。確認すべき製造管理情報を全て確認していた場合、第1ポインタの値は製造管理情報が格納されていないレコードを指す値となる。このことから、確認すべき製造管理情報を全て確認した場合、S903の判定はYESとなり、ここで情報収集処理が終了する。一方、確認すべき製造管理情報が残っている場合、S903の判定はNOとなってS904に移行する。
【0047】
S904では、カリキュラム提供部203は、読み出した製造管理情報中の作業者ID情報が最初のものか否か、つまりこれまで読み出した製造管理情報に格納されていなかったものか否か判定する。読み出した製造管理情報中の作業者ID情報がこれまで出現していない作業者ID情報であった場合、S904の判定はYESとなってS906に移行する。一方、読み出した製造管理情報中の作業者ID情報が既に出現している作業者ID情報あった場合、S904の判定はNOとなってS905に移行し、カリキュラム提供部203は、第1ポインタの値を更新、例えば第1ポインタの値をインクリメントする。その後は上記S902に戻り、カリキュラム提供部203はレコードの読み出しを行う。
【0048】
S902~S905で形成される処理ループを実行することにより、これまでに出現していない作業者ID情報、及び工程ID情報が特定される。S906以降では、特定した作業者ID情報を用いて、その作業者ID情報を含むレコードに格納されている作業不具合情報、或いは市場不具合情報を確認するための処理が行われる。ここでは、特定した作業者ID情報は以降「対象作業者ID情報」、対象作業者ID情報によって特定される作業者は「対象作業者」とそれぞれ表記する。
【0049】
S906では、カリキュラム提供部203は、第2ポインタに値を設定する。この第2ポインタは、第1ポインタと同様に、製造管理情報DB211のなかで参照するレコードを管理するための変数である。このとき、第2ポインタに設定される値は、第1ポインタに次に設定すべき値である。
【0050】
次に、S907では、カリキュラム提供部203は、第2ポインタの値が示すレコードを製造管理情報DB211から読み出す。続いて、S908では、カリキュラム提供部203は、読み出したレコードに製造管理情報が無いか否か判定する。確認すべき製造管理情報を全て確認していた場合、製造管理情報が格納されていないレコードの読み出しを行うことから、S908の判定はYESとなって上記S905に移行する。一方、製造管理情報が格納されているレコードの読み出しを行った場合、S908の判定はNOとなってS909に移行する。
【0051】
S909では、カリキュラム提供部203は、読み出した製造管理情報中の作業者ID情報が対象作業者ID情報と同じか否か判定する。それらが一致する場合、S909の判定はYESとなってS910に移行する。それらが一致しない場合、S909の判定はNOとなってS912に移行する。
【0052】
S910では、カリキュラム提供部203は、読み出した製造管理情報中に不具合情報があるか否か判定する。その製造管理情報中に作業不具合情報、及び市場不具合情報のうちの少なくとも一方が存在する場合、S910の判定はYESとなってS911に移行する。その製造管理情報中に作業不具合情報、及び市場不具合情報の何れも存在しない場合、S910の判定はNOとなってS912に移行する。
【0053】
S911では、カリキュラム提供部203は、製造管理情報中に存在する不具合情報の保存を行う。例えばカリキュラム提供部203は、初めて出現した不具合情報は保存し、既に出現している不具合情報はその数をインクリメントする。このような保存方法により、作業者毎に、不具合情報の種類、種類別の不具合情報の数、つまりその作業者が要因となって発生した全ての不具合を確認することができる。
【0054】
作業者は、調査期間内に作業工程の配置を変更される可能性がある。配置の変更前後の作業工程における作業内容が類似しているとは限らない。このことから、本実施の形態1では、対象作業者ID情報を格納した製造管理情報中の工程ID情報を確認し、工程ID情報がそれまで製造管理情報に格納されていた工程ID情報と異なる場合、それまで保存していた情報を破棄するようにしている。それにより、作業者に対し、現在、配置されている作業工程での作業をより適切に行えるように支援するための教育カリキュラムを提示するようにしている。
【0055】
S912では、カリキュラム提供部203は、第2ポインタの値を更新、例えばその値をインクリメントする。その後は上記S907に戻る。それにより、新たな対象作業者ID情報が確認される度に、対象作業者ID情報が示す対象作業者を要因とする不具合情報が全て抽出されることとなる。
【0056】
図10は、情報選択処理の例を示すフローチャートである。次に
図10を参照して、
図8に示す教育カリキュラム提供処理内でサブルーチン処理として実行される情報選択処理について詳細に説明する。
【0057】
作業者毎に抽出された不具合情報は、例えば2次元以上の配列変数の複数の要素に代入されて保存される。そのため、S1001では、カリキュラム提供部203は、その配列変数のなかで参照する要素を管理するための変数であるポインタに値、例えば1を設定する。次に、S1002では、カリキュラム提供部203は、ポインタの値が示す複数の要素から情報を読み出す。
【0058】
S1002の次に移行するS1003では、カリキュラム提供部203は、読み出した要素に情報が無いか否か判定する。確認すべき情報を全て確認していた場合、ポインタの値は情報が格納されていない要素を指す値となることから、S1003の判定はYESとなってS1006に移行する。一方、確認すべき情報が残っている場合、S1003の判定はNOとなってS1004に移行する。
【0059】
S1004では、カリキュラム提供部203は、保存されていた工程ID情報、不具合情報の種類、及び種類別の不具合情報の数を参照して検索キーを決定し、決定した検索キーを用いたカリキュラム管理情報DB214の検索により、対象ファイルを取得して保存する。次に、S1005では、カリキュラム提供部203は、ポインタの値を更新する。その後は上記S1002に戻る。
【0060】
一方、S1003の判定がYESとなって移行するS1006では、カリキュラム提供部203は、作業者毎に、提示すべき教育カリキュラムの結果を示す表示用データを生成し、例えば情報収集部13に送信させる。この送信は、表示用データ、情報収集部13のアドレスを制御部202に渡し、送信を依頼することで実現される。その依頼により、制御部202は、通信部201を用いて、アドレスを送信先アドレスとし、表示用データをデータ部に格納したパケットをネットワーク17上に出力させる。
【0061】
保存する対象ファイルは、検索キーによりカリキュラム管理情報DB214から抽出されるレコードに格納されている保存先情報によって指定されるファイルである。表示用データは、例えばこのファイルに格納されている教育カリキュラムを作業者毎にまとめる形で生成される。それにより、情報収集部13に表示用データを表示させた場合、作業者を管理する立場の管理者は、不具合の要因となった作業者毎に、その作業者に対して適切な教育を行ううえで有用な教育カリキュラムを確認することができる。提示された教育カリキュラム、或いはその教育カリキュラムを参考に決定した別の教育カリキュラムに沿った教育を作業者に対して実施することにより、作業者は、不具合を発生させない、或いはその発生頻度がより小さい作業を行えるようになる。このことから、教育カリキュラムは作業者を支援する情報である。
【0062】
S1004での検索キーの決定は、例えば不具合情報の種類、及びその数から、不具合情報の種類別に悪影響の程度を評価し、評価した程度が最大となる不具合情報の種類を特定して行うことが考えられる。或いは不具合情報の種類別に、閾値を設定し、閾値を超える程度の不具合情報の種類毎に検索キーを決定することが考えられる。
【0063】
作業者は、作業に慣れるに従い、1製品に対する作業をより短時間に行えるようになるのが普通である。このことから、1製品に対する作業時間を計時するようにして、計時した作業時間を教育カリキュラムの選択に反映させるようにしても良い。
【0064】
例えばこれまで従事していない作業内容の作業に配置された作業者の大部分は、従事する期間が長くなるに従い、作業時間は短くなり、不具合の発生頻度は下がる。このことから、作業時間の全体的な推移と共に、不具合の発生頻度の推移を確認し、この確認結果を検索キーの決定に反映させても良い。そのような検索キーの決定を行うようにした場合、作業者にとって特に必要な教育、例えば作業上のノウハウ、チェックポイント、作業効率化のための練習方法、等を学ばせる教育のためのカリキュラムをタイムリーに提供できるようになる。単位作業時間情報が表す時間より作業時間が長く、且つ不具合の発生頻度が比較的に低いような作業者には、作業の効率化を重視した教育を行うことができる。このようなことから、計時した作業時間を教育カリキュラムの選択に反映させるようにした場合、より適切な教育カリキュラムの提供に有用である。
【0065】
なお、本実施の形態1では、作業者を区別していないが、作業者を分類し、教育カリキュラムの提供に反映させるようにしても良い。例えば従事期間の長さにより作業者を分類するようにしても良い。
【0066】
何の作業にも従事したことのない、或いは従事した期間が短い初心者のような作業者と、比較的に長い期間、作業に従事した経験を有する熟練者のような作業者とでは、同じ不具合を発生させたとしても、必要な教育内容が異なる場合が多い。また、現在、配置された作業に従事している期間は短くとも、種別の異なる他の作業を経験している作業者は、経験を通して活かせるノウハウを蓄積している可能性があり、初心者のような作業者とは云えない場合がある。このようなことから、作業者にとってより有用な教育カリキュラムを提供するためには、作業者を適切に分類し、その分類結果を教育カリキュラムの選択に反映させることが望ましい。
【0067】
次に、配置支援部204について説明する。不具合の要因となった作業者は、配置されている作業工程での作業が不得手である可能性がある。不具合の発生を抑制するためには、作業者に不得手な作業を行わせないことが望ましい。このことから、配置支援部204は、不具合の要因となった作業者をより望ましい作業工程に配置させるのを支援するようになっている。
【0068】
配置支援部204は、記憶部206上の製造管理情報DB211、工程管理情報DB212、及び作業者管理情報DB213を参照し、不具合の要因となった作業者にとってより望ましいと推定される作業工程を特定する。より望ましい作業工程の特定は、カリキュラム提供部203と同様に、例えば制御部16、或いは情報収集部13からの指示により行われる。その指示により、制御部202は、配置支援部204を制御し、不具合の要因となって作業者にとってより望ましい作業工程の特定を行わせる。
【0069】
配置支援部204は、例えば記憶部206に格納されているアプリケーション・プログラムをCPUが実行することにより実現される。CPUは、制御部16、或いは情報収集部13からの指示により、そのアプリケーション・プログラムを実行する。不具合の要因となった作業者にとってより望ましい作業工程の特定を指示された場合、そのアプリケーション・プログラムにより、CPUは、より望ましい作業工程を特定するための配置支援処理を実行する。
【0070】
この配置支援処理は、
図8に示す教育カリキュラム提供処理において、S802の情報選択処理の代わりに、
図11に示す配置特定処理を実行する形となっている。このことから、
図11を参照し、配置特定処理についてのみ詳細に説明する。処理を実行する主体は配置支援部204とする。
【0071】
上記のように、
図9に示す情報収集処理の実行により作業者毎に抽出された不具合情報は、2次元以上の配列変数の複数の要素に代入されて保存される。このことから、先ず、S1101では、配置支援部204は、配列変数のなかで参照する要素を管理するための変数であるポインタに値、例えば1を設定する。次に、S1102では、配置支援部204は、ポインタの値が示す複数の要素から情報を読み出す。
【0072】
S1102の次に移行するS1103では、配置支援部204は、読み出した要素に情報が無いか否か判定する。確認すべき情報を全て確認していた場合、ポインタの値は情報が格納されていない要素を指す値となることから、S1103の判定はYESとなってS1104に移行する。一方、確認すべき情報が残っている場合、S1103の判定はNOとなってS1105に移行する。
【0073】
S1105では、配置支援部204は、保存されていた不具合情報の種類、及び種類別の不具合情報の数を用いて評価を行う。この評価は、作業者の作業工程の配置を変更させるべきか否かを判断するうえで指標とするものであり、例えば不具合の程度、発生頻度を考慮し、総合的に行われる。評価結果は、数値で表され、数値が大きくなるほど評価結果は低くなる。評価方法自体は、特に限定されるものではない。
【0074】
次に、S1106では、配置支援部204は、評価結果が閾値以上か否か判定する。この閾値は、作業工程の配置を変更する必要性の有無の判定用に設定された値である。このことから、評価結果が閾値以上であった場合、S1106の判定はNOとなり、作業者の配置変更を行う必要性はないとして、S1107に移行する。評価結果が閾値未満であった場合、S1106の判定はYESとなってS1108に移行する。
【0075】
S1107では、配置支援部204は、ポインタの値を更新する。その後は上記S1102に戻る。このようなことから、S1102、S1103、S1105~S1107で形成される処理ループの実行により、配置を変更すべき作業者が抽出される。
【0076】
S1108では、配置支援部204は、新たな配置先の候補となる作業工程を抽出するために、工程管理情報DB212、及び作業者管理情報DB213の検索を行う。この検索は、例えば、先ず、対象作業者が過去に従事し、その従事結果が「良」以上であり、且つ配置の変更が可能な作業工程を確認するために行う。その確認の結果、対象となる作業工程が存在しなければ、現在、従事している作業工程と同じ種別の作業であり、且つ難易度がより低い作業工程、或いは過去に従事し、その従事結果が「良」以上である作業工程と同じ種別の作業であり、且つ配置の変更が可能な作業工程を確認するための検索を行う。
【0077】
対象作業者の配置変更により、新たな配置先の作業工程に従事している作業者は、対象作業者が従事している作業工程に新たに配置される。その作業者が、新たに配置される作業工程での作業を適切に行えるとあまり期待できないことがあり得る。例えば作業者に、より難易度の高い同じ種別の作業、或いは未経験の種別の作業を行う作業工程に従事させるのは、不具合の発生を抑制するうえで望ましくはない。このことから、本実施の形態1では、配置変更に伴い、配置を変更される作業者を考慮し、配置の変更が可能な作業工程か否かの確認を行うようにしている。
【0078】
S1108に続くS1109では、配置支援部204は、新たな配置先の候補となる作業工程が有ったか否か判定する。その候補を1つ以上、抽出できた場合、S1109の判定はYESとなってS1110に移行する。その候補を抽出できなかった場合、S1109の判定はNOとなってS1111に移行する。
【0079】
S1110では、配置支援部204は、抽出された、新たな配置先の候補に係わる情報を保存する。保存する情報は、候補として抽出された作業工程の工程ID情報、抽出された作業工程に現在、配置されている作業者の作業者ID情報、等である。情報の保存が終了した後は上記S1107に移行する。
【0080】
上記のように、作業工程のなかには、後段の作業工程でのリカバリーが可能なものがあり得る。リカバリーが可能な作業工程に、そのリカバリーを行えると期待できる作業者を配置できれば、不具合の発生の回避、或いは大きな抑制も期待できる。このことから、S1111以降では、リカバリーが可能な作業工程を想定し、その作業工程に配置可能な作業者を特定するための処理が行われる。ここでは、混乱を避けるために、リカバリーが可能な作業工程を「リカバリー工程」、そのリカバリー工程への配置が望ましい作業者を「対象者」と表記する。
【0081】
S1111では、配置支援部204は、対象作業者が従事している作業工程はリカバリーが可能か否か判定する。
図5に示すように、その作業工程の工程ID情報を格納した工程管理情報中のリカバリー情報として工程ID情報が格納されていた場合、S1111の判定はYESとなってS1113に移行する。リカバリー情報が存在しない場合、S1111の判定はNOとなってS1112に移行する。
【0082】
S1112では、配置支援部204は、対象作業者の新たな配置先として望ましい作業工程はないと決定する。それにより、その配置先に係わる情報は保存しない。このことから、その後は上記S1107に移行する。
【0083】
S1113では、配置支援部204は、リカバリー工程に配置可能な対象者の検索を行う。この検索は、リカバリー工程に過去に従事するか、或いはリカバリー工程と同じ種別の作業に従事した経験を有し、その従事結果が「優」以上であり、且つ配置の変更が可能な作業工程に従事している作業者を抽出するために行う。この検索によって抽出された作業者が対象者の候補である。
【0084】
S1113に続くS1114では、配置支援部204は、対象者の候補が存在するか否か判定する。検索により対象者の候補を抽出できた場合、S1114の判定はYESとなってS1115に移行する。対象者の候補を抽出できなかった場合、S1114の判定はNOとなって上記S1112に移行する。
【0085】
S1115では、配置支援部204は、抽出できた対象者の候補に係わる情報を保存する。保存する情報は、対象者の候補毎に、作業者ID情報、現在、従事している作業工程の工程ID情報、リカバリー工程の工程ID情報、リカバリー工程に現在、従事している作業者の作業者ID情報、等である。そのような情報の保存が終了した後、上記S1107に移行する。
【0086】
上記S1103の判定がYESとなって移行するS1104では、配置支援部204は、保存した情報を処理結果として、例えば情報収集部13に表示させるための処理を行う。その後、この配置特定処理が終了する。
【0087】
処理結果を確認することにより、管理者は、不具合の発生をより抑制することが期待できる作業者の配置、つまり不具合の要因となった作業者のより望ましい配置先、或いは、リカバリー工程への配置が望ましい作業者をより容易に特定できる。従って、処理結果は、不具合の発生を抑制するうえで非常に有用な情報である。このため、結果として、不具合の要因となった作業者を支援することができる。
【0088】
なお、本実施の形態1では、不具合の要因となった作業者を対象に、新たな配置先として望ましいと推測される作業工程を提示するようにしているが、不具合の発生の要因となった作業者以外を対象としても良い。これは、例えば作業者を新しい作業工程に配置する場合に、その作業工程が作業者にとって望ましいか否かの確認に応用することが可能だからである。
【0089】
上記のように、作業者は、作業に慣れるに従い、1製品に対する作業をより短時間に行えるようになるのが普通である。このことから、配置変更の必要性の有無の判定に、計時した作業時間を用いるようにしても良い。
【0090】
例えば作業時間が短くなる傾向であり、且つ不具合の発生頻度も下がる傾向にある作業者は、今後も作業内容の改善が期待できる。不具合の発生頻度が許容範囲内となるまでの期間も予測することができる。このようなことから、作業時間を考慮することにより、今後、適切な作業を行えるようになる可能性の高い作業者の配置変更をより回避することができる。言い換えれば、適切な作業を行えるようになるのを期待できない、そうなるまでに長い期間を要すると予想されるといった作業者のみを対象とする配置変更をより高精度に行えるようになる。
【0091】
最後に、支援情報提供部205について説明する。不具合の要因となった作業者にとっては、不具合を発生させない作業を行うのを支援する支援情報、例えば作業上の注意事項、作業を行ううえでのノウハウ等は有用である可能性が高い。このことから、支援情報提供部205は、不具合の要因となった作業者がより適切な作業を行えるように、その作業者に提供すべき支援情報の提供を通して、作業者を支援するようになっている。
【0092】
支援情報提供部205は、記憶部206上の製造管理情報DB211、作業者管理情報DB213、及び支援管理情報DB215を参照し、不具合の要因となった作業者に提供すべき支援情報を特定する。提供すべき支援情報の特定は、カリキュラム提供部203、及び配置支援部204と同様に、例えば制御部16、或いは情報収集部13からの指示により行われる。その指示により、制御部202は、支援情報提供部205を制御し、不具合の要因となって作業者にとって有用と思われる支援情報の特定を行わせる。
【0093】
支援情報提供部205も、例えば記憶部206に格納されているアプリケーション・プログラムをCPUが実行することにより実現される。CPUは、制御部16、或いは情報収集部13からの指示により、そのアプリケーション・プログラムを実行する。不具合の要因となった作業者にとって有用と思われる支援情報の特定を指示された場合、そのアプリケーション・プログラムにより、CPUは、有用と思われる支援情報を特定するための支援情報提供処理を実行する。
【0094】
この支援情報提供処理は、
図8に示す教育カリキュラム提供処理において、S802の情報選択処理の代わりに、
図12に示す支援情報特定処理を実行する形となっている。このことから、
図12を参照し、支援情報特定処理についてのみ詳細に説明する。処理を実行する主体は支援情報提供部205とする。
【0095】
上記のように、
図9に示す情報収集処理の実行により作業者毎に抽出された不具合情報は、2次元以上の配列変数の複数の要素に代入されて保存される。このことから、先ず、S1201では、支援情報提供部205は、配列変数のなかで参照する要素を管理するための変数であるポインタに値、例えば1を設定する。次に、S1202では、支援情報提供部205は、ポインタの値が示す複数の要素から情報を読み出す。
【0096】
S1202の次に移行するS1203では、支援情報提供部205は、読み出した要素に情報が無いか否か判定する。確認すべき情報を全て確認していた場合、ポインタの値は情報が格納されていない要素を指す値となることから、S1203の判定はYESとなってS1204に移行する。一方、確認すべき情報が残っている場合、S1203の判定はNOとなってS1205に移行する。
【0097】
S1205では、支援情報提供部205は、対象作業者の作業者ID情報をキーに、作業者管理情報DB213の検索を行う。次に、S1206では、支援情報提供部205は、検索によって抽出されたレコードに格納されている作業者管理情報中の現作業工程情報、及び過去作業工程情報を参照し、作業者として作業を始めてからの期間がX週間未満か否か判定する。作業者としての従事期間がX週間未満であった場合、S1206の判定はYESとなってS1207に移行する。その従事期間がX週間以上であった場合、S1206の判定はNOとなってS1208に移行する。
【0098】
S1207では、支援情報提供部205は、支援管理情報DB215を参照し、配置された作業工程の作業と類似する作業の経験の有無に応じて支援情報を選択し保存する。その後はS1211に移行する。保存する情報には、他に、作業者ID情報、工程ID情報、等が含まれる。
【0099】
上記のように、新たに配置された作業工程での作業に慣れるには或る程度の時間が必要である。作業に慣れるまでの間に様々な情報を提示することは、作業者を混乱させる恐れがある。このことから、本実施の形態1では、
図7に示すように、支援管理情報中の従事期間情報が示す期間以上、従事していない作業者には、発生させた不具合とは無関係に、配置された作業工程での作業を適切に行えるように想定した支援情報を提供するようにしている。提供する支援情報は、配置された作業工程の作業と類似する作業の経験の有無により異ならせている。これは、通常、経験の有無により、作業者にとって有用な支援情報も異なるからである。
【0100】
S1208では、支援情報提供部205は、保存されていた不具合情報の種類、及び種類別の不具合情報の数を用いて評価を行う。この評価は、作業者にとってより有用な支援情報を選択するための指標とする評価であり、例えば不具合の程度、発生頻度を考慮し、総合的に行われる。評価結果は、
図7に示すように、例えば秀、優、良、可、不可の5段階で表される。評価方法自体は、特に限定されるものではない。
【0101】
S1208に続くS1209では、支援情報提供部205は、評価結果に応じて支援情報を選択し保存する。選択する支援情報は、対象作業者が従事する作業工程の工程ID情報、評価結果と同じ内容の従事評価情報を有する支援管理情報中の保存先情報によってアクセス可能なファイルに格納されている支援情報である。保存する情報には、他に、作業者ID情報、工程ID情報、等が含まれる。
【0102】
続くS1210では、支援情報提供部205は、ポインタの値を更新する。その後は上記S1202に戻る。それにより、対象作業者毎に、提供すべき支援情報が特定され、その支援情報を含む各種情報が保存される。
【0103】
上記S1203の判定がYESとなって移行するS1204では、支援情報提供部205は、保存した情報を処理結果として、例えば情報収集部13に表示させるための処理を行う。その後、この支援情報特定処理が終了する。
【0104】
なお、本実施の形態1では、作業者を要因とする不具合か否かの判断を演算部14に自動的に行わせているが、その判断は管理者等の担当者に行わせるようにしても良い。また、教育カリキュラムに沿った教育の対象となりうる作業者、新たな配置先の提示対象となりうる作業者、支援情報の提示対象となりうる作業者については、予め設定しても良い。作業者に提示する情報としては、教育カリキュラム、新たな配置先、支援情報以外の情報であっても良い。結果的に作業者を支援し、不具合の発生頻度等をより抑制するのが期待できる情報は、作業者への提示対象とすることが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 生産管理システム、11 作業システム部、12 作業支援装置、13 情報収集部、14 演算部、15、206 記憶部、16、202 制御部、17 ネットワーク、201 通信部、203 カリキュラム提供部、204 配置支援部、205 支援情報提供部、211 製造管理情報DB、212 工程管理情報DB、213 作業者管理情報DB、214 カリキュラム管理情報DB、215 支援管理情報DB。