(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】地図情報生成装置、自動運転システム、および自動運転制御情報生成装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20221109BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20221109BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/00 X
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2018077852
(22)【出願日】2018-04-13
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綿引 智章
(72)【発明者】
【氏名】住澤 紹男
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】志野 達弥
(72)【発明者】
【氏名】出川 勝彦
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-083446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G08G 1/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の自動運転制御に用いる地図情報を生成する地図情報生成装置であって、
前記車両の現在位置を取得する位置取得部と、
前記車両の前記現在位置から目的地までの走行予定経路を記述した経路情報を取得する経路情報取得部と、
高精度地図情報を取得する地図情報取得部と、
前記車両の現在位置と前記経路情報とに基づいて、前記地図情報取得部が取得した高精度地図情報から所望の地図情報を取得して出力する地図情報生成部と、
前記走行予定経路を構成する道路のレーンのうち前記車両が走行することを推奨する推奨レーンを示す推奨レーン情報であって、前記車両の現在位置から第1距離の範囲にある推奨レーン情報を取得する推奨レーン情報取得部と、を備え、
前記地図情報生成部は、
(i)前
記第1距離の範囲の前記経路情報
および前記推奨レーン情報と、
(ii)前記車両の現在位置から前記第1距離よりも短い第2距離の範囲の第1地図情報
であって、前記経路情報で示される経路に沿った前記第2距離の範囲の第1地図情報と
、(iii)前記車両の現在位置から前記第2距離よりも短い第3距離を半径とする範囲の第2地図情報と、を生成
し、
前記第1地図情報は、前記経路に沿った道路の区画線と地物の情報を含み、
前記第2地図情報は、前記経路に沿った地物以外の、前記第3距離を半径とする範囲の地物の情報を含み、
前記地図情報生成部は、さらに、第1時点よりも時間的に後の第2時点においては、前記第2時点で生成した情報のうち前記第1時点で生成した情報に含まれる情報を出力せず、前記第2時点で新たに生成した情報のみ出力する、地図情報生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地図情報生成装置と、
前記地図情報生成装置から前記第1距離の範囲の経路情報と前記第2距離の範囲の第1地図情報とを受信し、前記車両の自動運転を制御する自動運転制御装置と、
を備える自動運転システム。
【請求項3】
請求項
2において、
前記自動運転制御装置は、前記経路情報を前記車両の走行計画を立てる際に用い、前記第1地図情報を前記車両の走行時制御の際に用いる、自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地図情報生成装置、自動運転システム、および自動運転制御情報生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両を自動運転する技術が盛んに開発されている。自動運転においては、車両の現在位置を判定することが重要である。車両の現在位置は一般に、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)によって車両の現在座標を特定し、さらにセンサによって車両の方位を特定することにより、判定することができる。
【0003】
GNSSを用いたナビゲーション技術においては、地図情報をデータベース(DB)等の記憶部に記憶するとともに、ユーザが目的地を入力することにより、記憶部に記憶した地図情報に基づいて入力した目的地までの経路案内ルートを探索する。
【0004】
例えば、特許文献1は、「高度運転支援システムによる制御に対応可能なルート探索を実行すること」を課題として、「車両が高度運転支援制御により走行する高度運転支援制御許容区間の情報を含む地図情報を記憶する記憶部と、車両の現在位置情報を取得する取得部と、現在位置情報で示される位置から目的地までの経路を探索する探索部と、目的地までの経路の変更入力を受け付ける入力受付部と、ユーザが車両を運転可能か否かを判定する判定部を備え、探索部は、高度運転支援制御許容区間において、変更入力を受け付けた場合であって、判定部が車両のユーザが車両を運転不可能であると判定しているときには、高度運転支援制御許容区間以外への経路の変更を実行しない」という技術を開示している(特許文献1の要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、高精度地
図ECU(地図情報生成装置)は、自動運転ECU(自動運転制御装置)から取得したIVI(In-Vehicle Infotainment)地図経路情報に基づいて、高精度経路に変換し、それに対応する高精度地図情報を自動運転制御装置に出力する。この高精度地図情報は、自動運転制御装置側において、走行計画の生成、走行時制御、および走行時の周辺情報の提供などの処理に用いられる。
【0007】
特許文献1のように複数の硬度運転支援制御を実行する場合、走行計画を生成するために取得する経路情報(例えば、ノードとリンクの情報)の範囲と、走行時の制御を行うために取得する経路沿いの情報(経路沿いの、地図情報、区画線情報、および地物情報など)の範囲とは同程度の範囲(例えば、車両から数km先までの範囲)となる。
【0008】
しかしながら、走行計画を生成するために取得する経路情報と走行時の制御を行うために取得する経路沿いの情報とを同程度の範囲で取得するとデータ量が過大となり、自動運転制御装置側の処理の負荷も大きくなってしまうという課題がある。
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、出力する地図情報の容量を削減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題を鋭意検討した結果、経路情報(ノードとリンクの情報)は走行計画生成のためには比較的広範囲に必要であるものの、経路沿いの情報は自動走行で必要な分の情報量で充分であり、経路情報と同程度の範囲までは必要ないことを突き止めた。また、走行時の周辺情報に関してはさらに範囲を狭めても自動運転制御には影響しないことが判明した。
【0010】
本開示による地図情報生成装置は、車両の自動運転制御に用いる地図情報を生成する地図情報生成装置であって、車両の現在位置から第1距離の範囲の経路情報と、車両の現在位置から第1距離よりも短い第2距離の範囲の第1地図情報とを生成し、出力する。
【0011】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、高精度地
図ECUから出力される地図情報の容量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る自動運転システム1の構成例を示す図である。
【
図2】推奨レーンの候補ごとに優先度を付与した例を示す図である。
【
図3】経路情報変換部17が推奨レーンの優先度をセットする手順を説明する図である。
【
図4】本実施形態による地図情報出力部16の内部構成例を示す図である。
【
図5】本実施形態における情報出力(送信)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<自動運転システムの構成例>
図1は、本実施形態に係る自動運転システム1の構成例を示す図である。この自動運転システム1は、詳細経路情報や高精度地図情報などを生成して出力する高精度マップECU10(HD MAP ECU:地図情報生成装置)と、自動運転に関する各種制御を司る自動運転ECU20(AD ECU:自動運転制御装置)と、通信モジュール30とを備えて構成される。高精度マップECU10は、自動運転の対象とされる車両(図示せず)に搭載され、その経路に関する情報を生成する経路生成装置として機能する演算制御部である。
【0015】
高精度マップECU10と自動運転ECU20とは、例えば周知の通信規格であるイーサネット(Ethernet)により接続され得る。また、自動運転ECU20及び通信モジュール30は、図示しない外部機器と、例えばCAN、LIN、MOST、FlexRay等の通信規格、又はこれらの組合せにより接続可能とされている。列記された通信規格は一例であり、これに限定されるものではない。
【0016】
自動運転ECU20は、自動運転のためのIVI(In-Vehicle Infotainment)経路情報を高精度マップECU10に向けて出力するともに、IVI経路情報及び高精度地図情報に基づいて高精度マップECU10において生成される詳細経路情報(走行予定経路)を利用して自動運転制御を実行する制御部である。IVI経路情報は、車両に搭載されたナビゲーションシステム(図示せず)において生成され、現在地と目的地との間の経路に沿った複数の地点の緯度及び経度に関する情報等を含む。
【0017】
高精度マップECU10は、一例として、ジャイロ/加速度センサ11と、GNSSレシーバ12と、地図更新部13と、高精度地図情報記憶部14と、自車位置推定部15と、地図情報出力部16と、経路情報変換部17と、を備えている。
【0018】
ジャイロ/加速度センサ11は、車両の角速度、加速度、及び/又は速度を計測する検知器である。GNSSレシーバ12は、GNSSシステムから車両の絶対位置座標を取得する受信機である。地図更新部13は、外部から通信モジュール30を介して高精度地図の更新データを受信して、高精度地図情報を更新する。高精度地図情報記憶部14は、更新された高精度地図情報を記憶するデータ保持部である。
【0019】
自車位置推定部15(ロケータ)は、GNSSレシーバ12が取得した車両の絶対位置座標に基づき、車両の現在の絶対位置を推定するとともに、ジャイロ/加速度センサ11が取得した角速度、加速度、車速などの情報を用いて、絶対位置座標を基準とする車両の相対位置を推定する。相対位置は、絶対位置よりも精度の高い車両位置を表すとともに、GNSSを介して間欠的に取得する座標を補完する役割も有している。そして、自車位置推定部15は、算出した車両の位置を高精度地図情報記憶部14に記憶された高精度地図情報を用いて補正するマップマッチング処理を実行し、補正した車両の位置(自車位置)を地図情報出力部16に出力するとともに、車両の位置(自車位置)、車両の方位、センサの検知情報、走行道路情報、および走行レーン情報を自動運転ECU20に出力する。なお、自車位置推定部15は、自動運転ECU20から、自動運転対象の車両に関する車両情報や、車両に搭載されたカメラで撮影された撮像情報(カメラ認識結果)も受信し、相対位置の推定に用いることもできる。
【0020】
地図情報出力部16は、高精度地図情報記憶部14から読み出された高精度地図情報、自車位置推定部15で推定された車両の現在位置(自車位置)と、経路情報変換部17で得られた走行予定経路(詳細経路情報)および推奨レーン情報とに基づいて、高精度地図情報記憶部14を参照し、走行計画を立てるために用いられる経路情報と、走行時制御のために用いられる経路沿い地図情報と、周辺地図情報とを生成し、自動運転ECU(自動運転制御装置)20に出力する。地図情報出力部16の詳細については後述する。ここで、経路情報は、自車位置から目的地までの経路のうち所定範囲内(例えば、7km)の詳細経路情報および推奨レーン情報を含んでいる。経路沿い地図情報は、求められた経路沿いの所定範囲内(例えば、自車位置前方2kmの経路沿い)に存在する道路区間線情報、標識情報、地物情報などを含む地図情報である。また、周辺地図情報は、自車位置の周囲(例えば半径200m以内)に存在する標識情報、地物情報などを含む地図情報である。
【0021】
経路情報変換部17は、自動運転ECU20から取得されたIVI経路情報(第1経路情報)と、高精度地図情報記憶部14から得られた高精度地図情報に含まれるリンク/ノードデータとの間でデータマッチングを行い、その結果に従って、IVI経路情報よりも高精度な経路情報である詳細経路情報(第2経路情報:走行予定経路)を生成し、自動運転ECU20に出力する。経路情報変換部17は、更に自車位置推定部15から車両の位置に関する情報も取得し、詳細経路情報に車両の位置に関する情報を反映させる。そして、経路情報変換部17は、車両が走行することを推奨するレーンを示す推奨レーン情報を生成して出力する。推奨レーン情報は、推奨レーンごとに算出されたレーンの優先度がペア情報として含む。ここでいう優先度とは、走行予定経路の目的地に到達するために車両が走行することがどの程度望ましいかを表す情報である。推奨レーンの候補を特定する処理については後述する。
【0022】
<推奨レーン情報生成処理>
上述のように、経路情報変換部17は、詳細経路情報を生成する処理の他、自車が走行することが推奨されるレーンを示す情報を生成し、地図情報出力部16に送信する。推奨レーン情報を生成する際には、推奨レーンの候補ごとに優先度が付与される。
図2は、推奨レーンの候補ごとに優先度を付与した例を示す図である。例えば、走行予定経路が
図2左図のように与えられ、実際の道路は
図2右図のように構成されていると仮定する。走行予定経路の目的地は分岐路の先に存在する。目的地に到達するためには、分岐路に向かって車両が走行することが望ましいので、分岐路へ向かうレーンは優先度が高くセットされている。分岐路から離れるにしたがって優先度が下がる。分岐路を過ぎると目的地に到達できない場合、分岐路以降のレーンの優先度は最も低くセットされる。目的地に到達できるか否かは、例えば車両が走行する距離が所定範囲内で目的地に到達できるか否かを基準として判定することができる。
【0023】
図3は、経路情報変換部17が推奨レーンの優先度をセットする手順を説明する図である。ここでは
図2右図のような道路を車両が走行している場面を想定する。高精度地図情報記憶部14は、レーンをリンクの接続関係によって記述する高精度地図情報を記憶している。
図2右図の道路が
図3左図のように記述されており、車両は分岐路の先にある目的地に向かっているものとする。
【0024】
経路情報変換部17で算出される詳細経路情報(走行予定経路)は、車両の現在位置から目的地へ向かう経路を所定距離分(例えば、7km分)記述している。走行予定経路は必ずしも最短経路(以下ではこれをメインパスと呼ぶ)のみを記述しているとは限らず、最短経路から分岐する分岐路(以下ではこれをサブパスと呼ぶ)を併せて記述している場合がある。したがって例えば
図3左図のように、目的地に到達することができないレーンも、走行予定経路のなかに含まれる場合がある。経路情報変換部17は、レーン推奨情報生成処理において、メインパスとサブパスの集合のなかから、推奨レーンを判定する。
【0025】
経路情報変換部17は、まず車両の現在位置から目的地までの走行予定経路に含まれる全てのレーンの優先度を初期化する(ステップ(1))。例えば全てのレーンを優先度「低」にセットする。
【0026】
経路情報変換部17は、目的地に到達することができないレーンの優先度を最も低くセットする(ステップ(2))。
図3においては優先度「×」とした。目的地に到達できるか否かの判定基準は上述の通りである。
【0027】
経路情報変換部17は、目的地に対して直接接続されているレーンの優先度を最も高くセットする(ステップ(3))。
図3においては優先度「高」とした。ここでいう「直接接続されている」とは、他のレーンを介することなくそのレーン自体が目的地に接続されていることである。以下においても同様である。
【0028】
経路情報変換部17は、1つ前のステップにおいて優先度を最も高くセットしたレーンに対して直接接続されているレーンの優先度を、最も高くセットする(ステップ(4))。経路情報変換部17は、自車の現在位置に到達するまでステップ(4)を繰り返し実施する。以上の手順により、
図2右図および
図3右図のように、推奨レーンの候補と各候補の優先度がセットされる。経路情報変換部17は、推奨レーンとその優先度を出力する。例えば高精度地図が記述しているレーンIDと優先度をペアにして出力すればよい。
【0029】
<地図情報出力部の構成例>
図4は、本実施形態による地図情報出力部16の内部構成例を示す図である。地図情報出力部16は、推奨レーン情報取得部161と、経路情報取得部162と、位置取得部163と、地図情報取得部164と、地図情報生成部165と、を備えている。
【0030】
推奨レーン情報取得部161は、経路情報変換部17から推奨レーン情報を取得する。経路情報取得部162は、経路情報変換部17から、詳細経路情報を走行経路として取得する。位置取得部163は、自車位置推定部15から自車の現在位置の情報を取得する。
地図情報取得部164は、地図情報生成部165からの指令に基づいて、高精度地図情報記憶部14から必要な地図情報を取得する。
【0031】
地図情報生成部165は、自動運転ECU20側で走行計画を立てるために必要な情報である、推奨レーン情報を含む経路情報に関しては、現在位置の情報、走行予定経路の情報、および推奨レーン情報と、を用いて、第1距離先までの経路情報(一例として、7km先までの経路情報であるが、7kmには限定されない)および推奨レーン情報を生成する。具体的には、現在位置から目的地までの経路を特定し、そのうち現在位置から第1距離先までのリンクとノードの情報(ノードの位置情報、およびリンクの長さ情報)が経路情報として生成される。また、自動運転ECU20側でどのレーンを走行すれば良いか決定するための推奨レーン情報が経路情報に含められる。
【0032】
また、地図情報生成部165は、走行時の制御を可能にするための情報として、走行経路沿いの地図情報であって、自車位置からを特定し、第1距離よりも短い第2距離先(一例として、2km先であるが、これに限定されない)までの地図情報を特定して取得するように地図情報取得部164に指令を出す。そして、地図情報生成部165は、地図情報取得部164から当該指令に応答して該当する地図情報を取得する。この経路沿い地図情報は、例えば、経路沿いの道路の区画線情報(区画線の位置、長さなど)、経路沿いの地物の情報(地物の種類、位置など)、経路沿いの標識の情報(標識の種別、位置など)を含む情報である。なお、地物とは、例えば、国土地理院の定義に従った物の概念であり、天然と人工にかかわらず、地上にあるすべての物の概念のことで、河・山・植物・橋・鉄道・建築物・行政界など、実世界に存在するものに与えられるものを意味している。
【0033】
さらに、地図情報生成部165は、自車位置の周辺(第2距離よりも短い第3距離を半径とする範囲:一例として半径200mの範囲であるが、これに限定はされない)の地図情報を取得するように地図情報取得部164に指令を出す。そして、地図情報生成部165は、地図情報取得部164から当該指令に応答して該当する地図情報を取得する。周辺の地図情報は、例えば、自車の周囲200mに存在する地物(地物の種類、位置など)、標識の情報(標識の種類、位置など)、走行経路とは関係ない近辺道路の情報、反対走行車線の情報、後方の走行する他の車両の情報などを含む情報である。
【0034】
また、地図情報出力部16は、走行中の自車に関し、経路情報、経路沿い地図情報、および周辺地図情報を自動運転ECU20に出力(送信)する場合、前回出力した情報と今回生成した情報との差分のみを自動運転ECU20に出力するようにしてもよい。
【0035】
<差分情報の送信について>
図5は、本実施形態における情報出力(送信)の一例を示す図である。時刻T1に自車がノードAとノードBとの間を走行しているとき(
図5左図参照)には、地図情報出力部16は、車が位置するリンクの始点となるノードAから7km先までに含まれるノードまでの経路情報と、ノードAから2km先(例えば、ノードCまで)の経路沿い地図情報(経路沿いの標識情報や地物情報等はノード間のリンクに紐づけられている)と、自車の位置から半径200mの周辺地図情報とを出力する。なお、周辺地図情報は、必ずしもリンクと紐づけられた情報ではなく、自車位置の半径200mの範囲内に存在する地物等の情報が取得され、出力される。そして、時刻T2(T2>T1)に自車がノードBとノードCとの間を走行しているとき(
図5右図参照)には、地図情報出力部16は、自車が位置するリンクの始点となるノードBから7km先までに含まれるノードまでの経路情報と、ノードBから2kmに含まれるノードDまでの経路沿い地図情報と、自車の位置から半径200mの周辺地図情報とを出力するのではなく、時刻T2において時刻T1で取得できなかった情報のみ、即ち、時刻T2に取得する情報のうち時刻T1で取得できた情報を時刻T2に取得する情報から差し引いて得られる情報(差分情報)を出力するようにする。
図5右図の例では、経路沿い地図情報の関しては、ノードCとノードBの間のリンクに紐づけられた地物などの情報が出力されることになる。
【0036】
なお、上記
図5の説明では、自車が走行する経路のリンクの始点となるノードから経路情報の取得範囲(7km)および経路沿い地図情報の取得範囲(2km)を決定しているが、自車の現在位置から情報取得範囲を決定してもよい。また、上記
図5の説明では、経路情報取得範囲(7km)に含まれるノードまでを経路情報の取得範囲、経路沿い地図情報取得範囲(2km)に含まれるノードまでを経路沿い地図情報の取得範囲としているが、自車の現在位置から7kmや2kmまでを情報取得範囲としてもよい。また、自車の現在位置から7kmや2kmがある2つのノード間のリンク上にある場合に、当該リンクの終点のノードまでを情報の取得範囲としてもよい。また、推奨レーン情報を含む経路情報(7km分)については差分で情報を出力しなくてもよい。
【0037】
<まとめ>
(i)以上のように、本実施形態では、地図情報を自動運転ECU20に出力する場合、推奨レーン情報を含む経路情報については自車位置から7kmの範囲で出力するが、経路沿い地図情報については2kmの範囲のみを出力する。また、周辺環境(周辺地図情報)については、自車位置の半径200mの範囲のみを出力する。すなわち、経路情報出力距離>経路沿い地図情報出力距離>周辺地図情報出力距離の関係を満たしている。経路はある程度長い距離を必要とするため、比較的長い距離の範囲で情報出力するが、自動運転制御において自車の自動走行で必要になってくる地図/周辺環境の情報のような細かい情報は経路情報よりも短い距離の範囲で十分である。このようにすることにより、処理すべきデータ量を削減することできる。このため、高精度マップECU10および自動運転ECU20の処理の負荷を軽減できるようになる。
【0038】
(ii)本実施形態では、地図情報生成装置(高精度地
図ECU)は、車両の現在位置から目的地までの間の第1距離の範囲(例えば、現在位置から7km)の経路情報と、車両の現在位置から第1距離よりも短い第2距離(例えば、現在位置から2km)の範囲の第1地図情報とを生成して出力する。このように、経路情報よりも地図情報の生成範囲を狭くすることにより、自動運転制御装置側に送信すべきデータの量を削減することができる。
【0039】
また、第1地図情報は、現在位置から目的地までの経路に沿った場所の地図情報(経路沿いの情報に限定される)である。これにより、車両の走行制御に必要不可欠な情報を過不足なく出力することができる。
【0040】
さらに、地図情報生成装置は、車両の現在位置から第2距離よりも短い第3距離(例えば、現在位置から200m)を半径とする範囲の第2地図情報を生成して出力する。第2地図情報は、走行経路沿いの地図情報に限定されるものではなく、車両の前後・左右の全方向に存在する地物の情報を含んでいる。これにより、自動運転ECU側では車両の周囲環境を把握することができる。また、この周囲環境の情報(第2地図情報)は第1地図情報よりもさらに細かい(詳細な)情報(経路とは無関係な建物や道路等の情報も含む)であるため、経路沿いの地図情報よりもデータ量を削減している。
【0041】
また、本実施形態において、自動運転ECU側に出力する情報を更新する場合、前回(T1の時点)出力した情報に含まれる情報は出力(送信)せず、今回(T2の時点)新たに生成した情報のみを出力(送信)する(ここでは、「差分情報のみの送信処理」と呼ぶこととする)。これによりさらに出力すべきデータの量を削減することができる。差分情報のみの送信処理は、経路情報(推奨レーン情報を含む)、第1地図情報、および第2地図情報の全てに適用してもよいし、第1地図情報、および第2地図情報の一方、あるいは両方にのみ適用してもよい。
【0042】
なお、本実施形態による地図情報生成装置(高精度地
図ECU)は、車両の自動運転制御に用いる情報を生成する自動運転制御情報生成装置と呼ぶことも可能である。この場合、自動運転制御情報生成装置は、車両の現在位置を取得する位置取得部と、車両の走行計画を立てる際に用いる第1種情報と、車両の走行制御の際に用いる第2種情報とを生成して出力する自動運転制御情報生成部(地図情報生成部165に相当)と、を備えている。そして、自動運転情報生成部は、車両の現在位置から第1距離の範囲の第1種情報(経路情報)と、車両の現在位置から第1距離よりも短い第2距離の範囲の第2種情報(経路沿い地図情報)とを生成して、自動運転ECUに出力する。このように、送信すべき情報の種類に応じて、生成すべき範囲(車両の現在位置からどこまで生成するか)を異ならしめることにより、出力されるデータ量を削減し、高精度地
図ECUおよび自動運転ECUにおける処理の負荷を軽減することができる。
【0043】
(iii)変形例について
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0044】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 自動運転システム
10 高精度地
図ECU
20 自動運転ECU
30 通信モジュール
11 ジャイロ/加速度センサ
12 GNSSレシーバ
13 地図更新部
14 高精度地図情報記憶部
15 自車位置推定部
16 地図情報出力部
17 経路情報変換部