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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221109BHJP
   F26B 3/30 20060101ALI20221109BHJP
   F26B 23/04 20060101ALI20221109BHJP
   F26B 13/10 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B41J2/01 121
F26B3/30
F26B23/04 B
F26B13/10 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018133242
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020012566
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆治
(72)【発明者】
【氏名】清水 潤一
(72)【発明者】
【氏名】森園 修
【審査官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-214328(JP,A)
【文献】特開2015-056381(JP,A)
【文献】特開2015-081701(JP,A)
【文献】特開2010-154793(JP,A)
【文献】特開2013-208446(JP,A)
【文献】特開2006-150633(JP,A)
【文献】特開2016-055476(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0094034(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 13/10
B41J 2/01
F26B 3/30
F26B 23/04
B41F 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に沿って印刷媒体を搬送する搬送機構と、
前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、
前記印刷部に対して前記搬送方向の下流側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられる加熱用のランプと、
前記ランプに対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向に沿って抜き差し可能に前記ランプを保持する保持部材と、
前記ランプに対して鉛直下側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向において前記ランプと対向する受け止め部材と
を備え、
前記受け止め部材は、前記印刷媒体と鉛直方向で対向しない位置に配置されている、印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記保持部材は、前記ランプに電力を供給するための第1コネクタ構造を有し、
前記ランプは、第2コネクタ構造を有しており、前記第1コネクタ構造および前記第2コネクタ構造が鉛直方向において互いに嵌合されて前記保持部材によって保持され、
前記受け止め部材は、前記第1コネクタ構造および前記第2コネクタ構造による電気的な接続が遮断された状態で前記ランプに接触する高さ位置に設けられている、印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記高さ位置は、前記第1コネクタ構造が前記第2コネクタ構造から抜けきっていない状態で、前記ランプが前記受け止め部材と接触する高さ位置である、印刷装置。
【請求項4】
所定の搬送方向に沿って印刷媒体を搬送する搬送機構と、
前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、
前記印刷部に対して前記搬送方向の下流側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられる加熱用のランプと、
前記ランプに対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向に沿って抜き差し可能に前記ランプを保持する保持部材と、
前記ランプに対して鉛直下側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向において前記ランプと対向する受け止め部材と
を備え、
前記ランプは、
前記印刷媒体に沿って延在する棒状部と、
前記棒状部から湾曲しつつ鉛直上側に向かって延びる湾曲部と
を有しており、
前記受け止め部材は前記湾曲部と鉛直方向において対向する、印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の印刷装置であって、
前記ランプは複数設けられており、
前記複数のランプは所定の配列方向に沿って並んでおり、
前記受け止め部材は、前記配列方向に沿って延びる棒状の形状を有しており、前記複数のランプと鉛直方向において対向する、印刷装置。
【請求項6】
所定の搬送方向に沿って印刷媒体を搬送する搬送機構と、
前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、
前記印刷部に対して前記搬送方向の下流側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられる加熱用のランプと、
前記ランプに対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向に沿って抜き差し可能に前記ランプを保持する保持部材と、
前記ランプに対して鉛直下側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向において前記ランプと対向する受け止め部材と、
前記ランプおよび前記保持部材を収納し、鉛直下側に開口する筐体と、
前記筐体の側壁の鉛直下側の端部に取り付けられ、前記受け止め部材を前記筐体に固定する金属製のブラケットと
を備え、
前記ブラケットは、
前記筐体の側壁に対して内側に取り付けられる内側壁と、
前記内側壁から前記筐体の内側に突出し、前記受け止め部材を支持する支持部材と
を有し、
前記内側壁の前記側壁とは反対側の第1面における表面粗さは、前記内側壁の前記側壁側の第2面よりも小さい、印刷装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の印刷装置であって、
前記受け止め部材は、チタン、タングステン、モリブデンおよび石英ガラスの少なくともいずれか一つを含む、印刷装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の印刷装置であって、
前記ランプに流れる電流または前記ランプに印加される電圧を測定するセンサと、
前記センサによって測定される測定値が基準値よりも小さいときに、前記ランプが駆動不可であると判断する制御部と
を備える、印刷装置。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷装置であって、
前記ランプは複数設けられ、
前記印刷装置は、
前記複数のランプへそれぞれ電力を供給する複数の駆動回路を備え、
前記制御部は、前記複数のランプの少なくともいずれか一つのランプに対して第1電力を供給し、前記複数のランプの他のランプに対して前記第1電力よりも小さい第2電力を供給するように、前記複数の駆動回路を制御する、印刷装置。
【請求項10】
請求項9に記載の印刷装置であって、
前記複数のランプは、電力が大きいほどピーク波長が短い赤外線を照射するハロゲンランプであり、
前記第1電力は、前記ランプが、前記第2電力が供給されるときよりも、前記印刷媒体の吸収波長に近いピーク波長の赤外線を照射する電力である、印刷装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一つに記載の印刷装置であって、
前記印刷媒体に対して鉛直上側から気体を供給する給気ファンと、
前記給気ファンから前記印刷媒体の上を流れた気体を吸引して外部の排気設備に排気するための吸引口と、
ファン制御部と
を備え、
前記ファン制御部は、
前記搬送機構を動作させて一連の印刷処理を行う印字期間と、前記搬送機構を停止させて印刷処理を中断する非印字期間との両方において、前記給気ファンを回転させる、印刷装置。
【請求項12】
所定の搬送方向に沿って印刷媒体を搬送する搬送機構と、
前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、
前記印刷部に対して前記搬送方向の下流側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられる加熱用のランプと、
前記ランプに対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向に沿って抜き差し可能に前記ランプを保持する保持部材と、
前記ランプに対して鉛直下側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向において前記ランプと対向する受け止め部材と、
前記印刷媒体に対して鉛直上側から気体を供給する給気ファンと、
前記給気ファンから前記印刷媒体の上を流れた気体を吸引して外部の排気設備に排気するための吸引口と、
ファン制御部と
を備え、
前記ファン制御部は、
前記搬送機構を動作させて一連の印刷処理を行う印字期間と、前記搬送機構を停止させて印刷処理を中断する非印字期間との両方において、前記給気ファンを回転させ、
前記ファン制御部は、前記非印字期間における前記給気ファンの回転速度が、前記印字期間における前記給気ファンの回転速度よりも低くなるように、前記給気ファンを制御する、印刷装置。
【請求項13】
所定の搬送方向に沿って印刷媒体を搬送する搬送機構と、
前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、
前記印刷部に対して前記搬送方向の下流側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられる加熱用のランプと、
前記ランプに対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向に沿って抜き差し可能に前記ランプを保持する保持部材と、
前記ランプに対して鉛直下側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向において前記ランプと対向する受け止め部材と、
前記印刷媒体に対して鉛直上側から気体を供給する給気ファンと、
前記給気ファンから前記印刷媒体の上を流れた気体を吸引して外部の排気設備に排気するための吸引口と、
前記搬送機構を動作させて一連の印刷処理を行う印字期間と、前記搬送機構を停止させて印刷処理を中断する非印字期間との両方において、前記給気ファンを回転させるファン制御部と
前記非印字期間における前記給気ファンの回転速度が入力されるユーザインターフェースと
を備える、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット印刷装置には、印刷媒体に付着したインクを乾燥させる加熱手段が設けられる(例えば特許文献1)。例えば特許文献1では、加熱手段としてヒートローラが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-51826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
赤外線を照射するランプを加熱手段として印刷装置に設けることが考えられる。より具体的には、印刷媒体に対して鉛直上側にランプを設けることが考えられる。これにより、ランプは印刷媒体の印刷面(インクが付着した面)に対して赤外線を照射することができ、より効果的に印刷媒体上のインクを乾燥させることができる。
【0005】
このような印刷装置において、もしランプが印刷媒体に落下すると、ランプが印刷媒体の印刷面に接触してインクを乱してしまう。また、この場合には、印刷処理を中断する必要があった。
【0006】
そこで、本願は、ランプが落下しても印刷媒体に接触する可能性を低減できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
印刷装置の第1の態様は、所定の搬送方向に沿って印刷媒体を搬送する搬送機構と、前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、前記印刷部に対して前記搬送方向の下流側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられる加熱用のランプと、前記ランプに対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向に沿って抜き差し可能に前記ランプを保持する保持部材と、前記ランプに対して鉛直下側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向において前記ランプと対向する受け止め部材とを備え、前記受け止め部材は、前記印刷媒体と鉛直方向で対向しない位置に配置されている
【0008】
印刷装置の第2の態様は、第1の態様にかかる印刷装置であって、前記保持部材は、前記ランプに電力を供給するための第1コネクタ構造を有し、前記ランプは、第2コネクタ構造を有しており、前記第1コネクタ構造および前記第2コネクタ構造が鉛直方向において互いに嵌合されて前記保持部材によって保持され、前記受け止め部材は、前記第1コネクタ構造および前記第2コネクタ構造による電気的な接続が遮断された状態で前記ランプに接触する高さ位置に設けられている。
【0009】
印刷装置の第3の態様は、第2の態様にかかる印刷装置であって、前記高さ位置は、前記第1コネクタ構造が前記第2コネクタ構造から抜けきっていない状態で、前記ランプが前記受け止め部材と接触する高さ位置である。
【0011】
印刷装置の第の態様は、所定の搬送方向に沿って印刷媒体を搬送する搬送機構と、前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、前記印刷部に対して前記搬送方向の下流側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられる加熱用のランプと、前記ランプに対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向に沿って抜き差し可能に前記ランプを保持する保持部材と、前記ランプに対して鉛直下側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向において前記ランプと対向する受け止め部材とを備え、前記ランプは、前記印刷媒体に沿って延在する棒状部と、前記棒状部から湾曲しつつ鉛直上側に向かって延びる湾曲部とを有しており、前記受け止め部材は前記湾曲部と鉛直方向において対向する。
【0012】
印刷装置の第の態様は、第1から第のいずれか一つの態様にかかる印刷装置であって、前記ランプは複数設けられており、前記複数のランプは所定の配列方向に沿って並んでおり、前記受け止め部材は、前記配列方向に沿って延びる棒状の形状を有しており、前記複数のランプと鉛直方向において対向する。
【0013】
印刷装置の第の態様は、所定の搬送方向に沿って印刷媒体を搬送する搬送機構と、前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、前記印刷部に対して前記搬送方向の下流側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられる加熱用のランプと、前記ランプに対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向に沿って抜き差し可能に前記ランプを保持する保持部材と、前記ランプに対して鉛直下側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向において前記ランプと対向する受け止め部材と、前記ランプおよび前記保持部材を収納し、鉛直下側に開口する筐体と、前記筐体の側壁の鉛直下側の端部に取り付けられ、前記受け止め部材を前記筐体に固定する金属製のブラケットとを備え、前記ブラケットは、前記筐体の側壁に対して内側に取り付けられる内側壁と、前記内側壁から前記筐体の内側に突出し、前記受け止め部材を支持する支持部材とを有し、前記内側壁の前記側壁とは反対側の第1面における表面粗さは、前記内側壁の前記側壁側の第2面よりも小さい。
【0014】
印刷装置の第の態様は、第1から第のいずれか一つの態様にかかる印刷装置であって、前記受け止め部材は、チタン、タングステン、モリブデンおよび石英ガラスの少なくともいずれか一つを含む。
【0015】
印刷装置の第の態様は、第1から第のいずれか一つの態様にかかる印刷装置であって、前記ランプに流れる電流または前記ランプに印加される電圧を測定するセンサと、前記センサによって測定される測定値が基準値よりも小さいときに、前記ランプが駆動不可であると判断する制御部とを備える。
【0016】
印刷装置の第の態様は、第の態様にかかる印刷装置であって、前記ランプは複数設けられ、前記印刷装置は、前記複数のランプへそれぞれ電力を供給する複数の駆動回路を備え、前記制御部は、前記複数のランプの少なくともいずれか一つのランプに対して第1電力を供給し、前記複数のランプの他のランプに対して前記第1電力よりも小さい第2電力を供給するように、前記複数の駆動回路を制御する。
【0017】
印刷装置の第10の態様は、第の態様にかかる印刷装置であって、前記複数のランプは、電力が大きいほどピーク波長が短い赤外線を照射するハロゲンランプであり、前記第1電力は、前記ランプが、前記第2電力が供給されるときよりも、前記印刷媒体の吸収波長に近いピーク波長の赤外線を照射する電力である。
【0018】
印刷装置の第11の態様は、第1から第10のいずれか一つの態様にかかる印刷装置であって、前記印刷媒体に対して鉛直上側から気体を供給する給気ファンと、前記給気ファンから前記印刷媒体の上を流れた気体を吸引して外部の排気設備に排気するための吸引口と、ファン制御部とを備え、前記ファン制御部は、前記搬送機構を動作させて一連の印刷処理を行う印字期間と、前記搬送機構を停止させて印刷処理を中断する非印字期間との両方において、前記給気ファンを回転させる。
【0019】
印刷装置の第12の態様は、所定の搬送方向に沿って印刷媒体を搬送する搬送機構と、前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、前記印刷部に対して前記搬送方向の下流側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられる加熱用のランプと、前記ランプに対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向に沿って抜き差し可能に前記ランプを保持する保持部材と、前記ランプに対して鉛直下側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向において前記ランプと対向する受け止め部材と、前記印刷媒体に対して鉛直上側から気体を供給する給気ファンと、前記給気ファンから前記印刷媒体の上を流れた気体を吸引して外部の排気設備に排気するための吸引口と、ファン制御部とを備え、前記ファン制御部は、前記搬送機構を動作させて一連の印刷処理を行う印字期間と、前記搬送機構を停止させて印刷処理を中断する非印字期間との両方において、前記給気ファンを回転させ、前記ファン制御部は、前記非印字期間における前記給気ファンの回転速度が、前記印字期間における前記給気ファンの回転速度よりも低くなるように、前記給気ファンを制御する。
【0020】
印刷装置の第13の態様は、所定の搬送方向に沿って印刷媒体を搬送する搬送機構と、前記印刷媒体に印刷処理を行う印刷部と、前記印刷部に対して前記搬送方向の下流側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられる加熱用のランプと、前記ランプに対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向に沿って抜き差し可能に前記ランプを保持する保持部材と、前記ランプに対して鉛直下側、かつ、前記印刷媒体に対して鉛直上側に設けられ、鉛直方向において前記ランプと対向する受け止め部材と、前記印刷媒体に対して鉛直上側から気体を供給する給気ファンと、前記給気ファンから前記印刷媒体の上を流れた気体を吸引して外部の排気設備に排気するための吸引口と、前記搬送機構を動作させて一連の印刷処理を行う印字期間と、前記搬送機構を停止させて印刷処理を中断する非印字期間との両方において、前記給気ファンを回転させるファン制御部と、前記非印字期間における前記給気ファンの回転速度が入力されるユーザインターフェースとを備える
【発明の効果】
【0021】
印刷装置の第1の態様によれば、加熱用のランプによって印刷媒体およびインクを乾燥させることができる。しかも、受け止め部材が設けられている。よって、ランプが保持部材から落ちたとしてもランプは受け止め部材に接触する。したがって、ランプが印刷媒体と衝突する可能性を低減できる。しかも、ランプからの光を、受け止め部材によって遮られることなく、印刷媒体に照射できる。よって、効率的に印刷媒体を加熱できる。
【0022】
印刷装置の第2の態様によれば、受け止め部材はランプへの電力の供給が遮断された状態でランプと接触する。よって、ランプから受け止め部材へ伝達される熱量を低減でき、当該熱に起因した受け止め部材の劣化を低減することができる。
【0023】
印刷装置の第3の態様によれば、受け止め部材がランプと接触する状態で、第2コネクタ構造が第1コネクタ構造から抜けきっていない。これによれば、ランプの水平面における変位(移動)は第1コネクタ構造および第2コネクタ構造の物理的な干渉によって阻害されるので、受け止め部材はランプを受け止めやすい。つまり、ランプが受け止め部材から落下する可能性を低減できる。
【0024】
印刷装置の第の態様によれば、ランプからの光を、受け止め部材によって遮られることなく、印刷媒体に照射できる。よって、効率的に印刷媒体を加熱できる。
【0025】
印刷装置の第の態様によれば、受け止め部材が棒状部と鉛直方向で対向する比較構造に比べて、受け止め部材をより高い位置に設けることができる。
【0026】
印刷装置の第の態様によれば、受け止め部材が複数のランプのいずれとも対向する。よって、複数のランプのいずれが保持部材から落ちても、受け止め部材はそのランプと接触する。よって、そのランプが印刷媒体に落下する可能性を低減できる。
【0027】
印刷装置の第の態様によれば、内側壁の第1面にはランプからの赤外線が照射され得る。第1面の表面粗さは小さいので、赤外線を反射しやすく、印刷媒体への赤外線の光量を向上できる。また第2面の表面粗さが大きいので、製造コストを低減できる。
【0028】
印刷装置の第の態様によれば、耐熱性が高いので、高温のランプと接触しても問題が生じにくい。
【0029】
印刷装置の第の態様によれば、駆動不可のランプを検出できる。
【0030】
印刷装置の第の態様によれば、第1電力が供給されたランプによって赤外線を照射しつつ、低い消費電力で全てのランプをチェックできる。
【0031】
印刷装置の第10の態様によれば、効果的に印刷媒体を加熱できる。
【0032】
印刷装置の第11の態様によれば、非印字期間でも給気ファンを回転させている。よって、非印字期間において排気設備が駆動していたとしても、印刷媒体が吸引口に吸い込まれることを抑制できる。
【0033】
印刷装置の第12の態様によれば、非印字期間における回転速度が低いので、消費電力を低減できる。
【0034】
印刷装置の第13の態様によれば、作業員は、排気設備の吸引力に応じた回転速度を入力できる。

【0035】
本願明細書に開示される技術に関する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】印刷システムの構成の一例を概略的に示す図である。
図2】加熱部の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図3】加熱部の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図4】加熱部の電気的な構成の一例を概略的に示す図である。
図5】ランプ、保持部材および受け止め部材の構成の一例を概略的に示す図である。
図6】ランプおよび反射板の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図7】ランプが保持部材からずり落ちる様子の一例を概略的に示す図である。
図8】ランプが保持部材からずり落ちる様子の一例を概略的に示す図である。
図9】ランプの姿勢を説明するための平面図である。
図10】印刷システムの動作の一例を示す図である。
図11】印刷処理の実行可否の判断処理の一例を示すフローチャートである。
図12】ランプ制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
図13】給気部および排気部の駆動を停止したときの様子の一例を概略的に示す図である。
図14】印刷システムの動作の一例を概略的に示す図である。
図15】印刷システムの動作の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0038】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0039】
また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置と方向とを意味する用語が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の方向とは関係しないものである。
【0040】
また、以下に記載される説明において、「第1の」、または、「第2の」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0041】
第1の実施の形態.
<印刷システムの全体構成の概要>
図1は、印刷システム100の構成の一例を概略的に示す図である。印刷システム100は、印刷装置10と、給紙部20と、排紙部30とを備えている。
【0042】
給紙部20は、印刷媒体の一例たるロール状の連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持し、印刷装置10に対して連続紙WPを巻き出して供給する。印刷装置10は、インクの液滴を吐出して画像を形成するインクジェット式の印刷装置であり、連続紙WPの表面に対して印刷を行う。排紙部30は、印刷装置10において印刷された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る。
【0043】
<印刷装置の概要>
印刷装置10は、搬送機構1と、印刷部2と、加熱部3と、ヒートローラ4と、給気部5と、排気部6と、制御部7とを備えている。
【0044】
搬送機構1は、給紙部20から供給される連続紙WPを搬送方向D1に沿って搬送する。搬送機構1は、例えば、駆動ローラ11、搬送ローラ12および駆動ローラ13を有している。駆動ローラ11は給紙部20からの連続紙WPを取り込む。駆動ローラ11によって給紙部20から巻き出された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ12に沿って下流側に搬送される。印刷装置10は、その最下流に、駆動ローラ13を備えている。駆動ローラ11と駆動ローラ13との間には、上流側から印刷部2と、加熱部3と、ヒートローラ4とが設けられている。
【0045】
印刷部2は連続紙WPに対して印刷処理を行う。印刷部2は、例えば、6個のインクジェットヘッド21を備えている。具体的には、印刷部2は、上流側から順に、ブラック(K)用のインクジェットヘッド21と、シアン(C)用のインクジェットヘッド21と、マゼンタ(M)用のインクジェットヘッド21と、イエロー(Y)用のインクジェットヘッド21とを備えている。下流側の残りの2つのインクジェットヘッド21はオプション用のインクジェットヘッドであり、例えば、他の色のインク用のインクジェットヘッド、または、連続紙WPの光沢を出すためのインク用のインクジェットヘッド等である。各インクジェットヘッド21は、連続紙WPの搬送方向において所定間隔を隔てて配置されている。また、各インクジェットヘッド21は、連続紙WPの印刷面(表面)側に対向して、複数個のノズルを形成している。このインクジェットヘッド21が吐出するインクの液滴は、例えば水性顔料である。
【0046】
加熱部3は印刷部2に対して搬送方向D1の下流側、かつ、連続紙WPに対して鉛直上側に設けられている。加熱部3は直下に位置する連続紙WPへと赤外線を照射することで連続紙WPを加熱して、連続紙WPの印刷面に付着したインクを乾燥させる。
【0047】
図1の例では、連続紙WPに対して加熱部3とは反対側において、反射板8が設けられている。反射板8はその反射面が連続紙WPを向くように設けられている。加熱部3から連続紙WPを透過した赤外線は反射板8で反射されて、再び連続紙WPへと照射される。これにより、連続紙WPで吸収される赤外線の量を増大することができ、連続紙WPをより効率的に加熱することができる。
【0048】
ヒートローラ4は、加熱部3に対して搬送方向D1の下流側に設けられている。ヒートローラ4は、熱源を内蔵し、外周面に巻き付けられた連続紙WPを加熱して印刷面に付着したインクを乾燥させる。このインクが乾燥して連続紙WP上に定着することで、印刷処理が実質的に完了する。なお、ヒートローラ4は搬送機構1の構成要素の一つである、ともいえる。また、加熱部3のみでインクを十分に乾燥させることができる場合には、ヒートローラ4は設けられなくても構わない。
【0049】
給気部5は給気ファン51を有している。図1の例では、給気部5は加熱部3に隣接して設けられている。この給気ファン51の回転により、加熱部3の外部から加熱部3の内部を通って鉛直下側へと気体(例えば空気)を流して、連続紙WP上に当該気体を供給する(いわゆるダウンフロー)。つまり、図1の例では、加熱部3の内部空間が給気経路として機能する。これによって、加熱部3の内部を冷却しつつ、連続紙WPを搬送ローラ12側に押圧することができる。
【0050】
連続紙WPの印刷面上のインクは加熱部3によって加熱されるので、加熱部3の直下にはインクから蒸発した成分(例えば水蒸気)が含まれる。つまり、加熱部3から連続紙WP上に供給される気体には蒸発成分が含まれることになる。
【0051】
排気部6はこの蒸発成分を含んだ気体を外部へ排気する。排気部6は排気管61と吸引部62とを有している。図1の例では、排気管61の一端は吸引部62に連結されており、他端は加熱部3に連結されている。吸引部62は排気ファン621を有しており、排気ファン621が回転することで、連続紙WP上の気体を加熱部3の内部および排気管61を介して吸引する。吸引部62は、印刷システム100が設置された工場の排気設備200へと気体を排気する。排気設備200には、適宜に他の装置からの排気管が連結されていてもよい。給気部5および排気部6のより詳細な一例については第3の実施の形態で述べる。
【0052】
印刷システム100は、制御部7によって統括的に制御される。制御部7のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部7は、制御回路であって、各種演算処理を行う演算処理部(例えばCPU)、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアおよびデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。制御部7のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって処理が進行する。なお制御部7が実行する各種機能の一部または全部は専用のハードウェア回路で実行されてもよい。
【0053】
図1の例では、印刷装置10には、ユーザインターフェース9が設けられている。ユーザインターフェース9は制御部7に接続されている。ユーザインターフェース9は例えば通知装置および入力装置を有している。通知装置は作業員に対して通知内容を通知することができる。通知装置は例えば液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどのディスプレイである。この場合、制御部7は通知内容をディスプレイに表示することで、通知内容を作業員に対して通知する。入力装置は、作業員によって入力された入力情報を制御部7に出力する。入力装置は例えばマウスおよびキーボードなどの入力装置である。
【0054】
<加熱部>
図2は、加熱部3の構成の一例を概略的に示す断面図であり、図3は、加熱部3の構成の一例を示す平面図である。図3は、鉛直下側から加熱部3を見た図を示している。加熱部3は、筐体31と、加熱用のランプ32と、保持部材33と、受け止め部材34とを備えている。筐体31は、鉛直下側に向かって開口する略箱形の形状を有している。以下では、筐体31において鉛直下側に開口する開口部を開口部31aと呼ぶ。
【0055】
ランプ32は筐体31内に収納されている。ランプ32は、赤外線を照射するランプである。赤外線は、約0.7[μm]以上約1000[μm]以下の波長帯域を有する光である。より具体的には、赤外線として、近赤外線(約0.7[μm]以上約2.5[μm]以下の波長帯域)または中赤外線(約2.5[μm]以上約4[μm])を照射するランプ32を採用することができる。このようなランプ32として、例えばハロゲンランプを採用することができる。なおランプ32としては、ハロゲンランプに限らず、赤外線を照射可能な任意の光源を採用してもよい。
【0056】
ランプ32から照射される赤外線は筐体31の開口部31aを介して連続紙WPの印刷面に照射される。ランプ32と連続紙WPとの間隔は例えば数十[mm](より具体的には22[mm])程度に設定され得る。この赤外線の照射によって、連続紙WPが加熱されて、その印刷面に付着したインクが乾燥する。
【0057】
図3に例示するように、筐体31内には、複数のランプ32が設けられてもよい。図3の例では、各ランプ32は平面視において(つまり鉛直方向に沿って見て)、長尺状の形状を有している。各ランプ32はその長手方向が、連続紙WPの幅方向D2に沿うように配置される。各ランプ32の長さは連続紙WPの幅よりも長くなるように設定されるとよい。これにより、連続紙WPの幅方向D2の全域に亘って赤外線を照射することができる。複数のランプ32は搬送方向D1において間隔を隔てて並んで配列されている。図3の例では、6本のランプ32が並んでいる。
【0058】
図2を参照して、保持部材33は、ランプ32を筐体31内に固定するための部材である。保持部材33は筐体31内においてランプ32に対して鉛直上側に設けられている。保持部材33は鉛直方向に沿って抜き差し可能にランプ32を保持する。より具体的な一例として、保持部材33はコネクタ構造33aを有している。
【0059】
一方でランプ32は、コネクタ構造33aと鉛直方向において嵌合するコネクタ構造32aを有している。図2の例では、ランプ32はその両側において鉛直上側へと湾曲しており、その両端においてコネクタ構造32aを有している。つまり、ランプ32は、棒状部321と、湾曲部322と、コネクタ構造32aとを有している。棒状部321は幅方向D2に沿って延びる部分であり、例えば略円柱形状を有している。一対の湾曲部322は、棒状部321の両端から互いに遠ざかるにつれて鉛直上側に湾曲する部分である。コネクタ構造32aは一対の湾曲部322の先端の各々に連結される。要するに、ランプ32は搬送方向D1に沿って見て、略U字状の形状を有しており、その両端においてそれぞれコネクタ構造32aが設けられている。
【0060】
コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aが互いに嵌合することにより、ランプ32は保持部材33によって機械的に保持されることとなる。
【0061】
コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aは、ランプ32へ電力を供給するためのコネクタとしても機能する。コネクタ構造32aはランプ32の発光素子(例えばフィラメント)に電気的に接続される。図2の例示では、保持部材33は基板35に実装されている。基板35はその厚み方向が鉛直方向に沿うように設けられている。この基板35は固定部材331を介して筐体31に固定される。固定部材331は例えば板状の形状を有しており、その一部が筐体31の内周面に接触しており、その接触部において、固定部材331が筐体31に対して固定されている。固定部材331と筐体31との固定方法としては、任意の方法を採用することができる。
【0062】
基板35には、ランプ32に電力を供給する駆動回路351(図4参照)、および、駆動回路351を制御するランプ制御部352(図4参照)等が実装されている。図4は、加熱部3の電気的な構成の一例を概略的に示す図である。駆動回路351は、基板35に形成される配線パターンを介してコネクタ構造33aと電気的に接続される。よって、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aが互いに接続されることにより、駆動回路351がランプ32と電気的に接続される。
【0063】
ここでは6本のランプ32が設けられているので、それぞれに対応して6つの駆動回路351が設けられている。駆動回路351は1対1でランプ32に接続されており、ランプ32へと個別に電力を供給する。
【0064】
駆動回路351は例えばDC-DCコンバータなどの電力変換回路であって、ランプ制御部352の制御下でランプ32へと電力を供給する。ランプ32はその電力に基づいて赤外線を照射する。例えばランプ32がハロゲンランプである場合には、駆動回路351から発光素子(例えばタングステンなどのフィラメント)へと電流が流れることにより、当該発光素子が昇温する。これにより、発光素子が白熱化して赤外線を照射する。
【0065】
ランプ制御部352は例えば制御部7と同様である。すなわち、ランプ制御部352は、制御回路であって、各種演算処理を行う演算処理部(例えばCPU)、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアおよびデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。ランプ制御部352のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって処理が進行する。なおランプ制御部352が実行する各種機能の一部または全部は専用のハードウェア回路で実行されてもよい。
【0066】
コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aは、例えばバナナプラグおよびソケットなど、弾性力によって相互に固定されるコネクタ構造であってもよい。コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aは、係止構造等は有しておらず、コネクタ構造32aに対する鉛直下側の力のみによってコネクタ構造32aをコネクタ構造33aから引き抜くことが可能である。つまり、ランプ32に対して鉛直下側の力のみを印加することにより、ランプ32を保持部材33から取り外すことが可能である。
【0067】
なお、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aは鉛直方向において互いに抜き差し可能であればよく、その具体的な内部構造としては種々の構造を採用できる。図2の例では、コネクタ構造32aは鉛直上側に開口する雌型のコネクタ構造であり、コネクタ構造33aは鉛直下側に延びる雄型のコネクタ構造である。例えば雌型のコネクタ構造32aは、バナナプラグと同様の技術的思想により形成される構造を有していてもよい。図5は、ランプ32、保持部材33および受け止め部材34の一例を概略的に示す図である。例えばコネクタ構造32aは筒状の金属板32bを有しており、金属板32bはその中心軸が鉛直方向に沿うように配置される。この金属板32bはランプ32の発光素子と電気的に接続される。また、この金属板32bには、鉛直方向に沿って延びるスリットの複数が周方向に並んで形成される。この金属板32bのうち、スリットの相互間に位置する板部は、その鉛直方向の両端に対して中央部分が内側に膨らむ弧状の形状を有している。この金属板32bはその中央部分が外側に押されることで弾性変形する。
【0068】
一方で、雄型のコネクタ構造33aは、鉛直下側に向かうにしたがって拡径した導電性の棒状部材33bを有している。棒状部材33bは例えば金属によって形成される。この棒状部材33bは、基板35上の駆動回路351と電気的に接続される。コネクタ構造33aの棒状部材33bがコネクタ構造32aの金属板32bの内部に挿入されることで、金属板32bは棒状部材33bによって押し広げられる。この金属板32bと棒状部材33bとの接触により、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aが互いに電気的に接続される。また金属板32bの弾性力により、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aが互いに機械的に固定される。
【0069】
以上のように、保持部材33はランプ32を保持するとともに、駆動回路351をランプ32に電気的に接続させる。
【0070】
図2および図3の例では、筐体31内には反射板36が設けられている。この反射板36はランプ32の鉛直上側および側方を覆う。図6は、ランプ32および反射板36の構成の一例を概略的に示す断面図である。図6の例では、反射板36の断面は直線的な略波状に構成されている。この反射板36も固定部材331を介して筐体31に固定される。ランプ32は反射板36の凹部に収容されている。反射板36は、ランプ32から鉛直上側および側方に照射された赤外線を反射することができる。反射板36の反射面は、その反射光が連続紙WPへ向かうように調整されるとよい。これにより、連続紙WPに照射される赤外線の光量を増大することができ、より効率よく連続紙WPを加熱できる。
【0071】
図2を参照して、受け止め部材34はランプ32に対して鉛直下側、かつ、連続紙WPに対して鉛直上側に設けられている。つまり、受け止め部材34はランプ32と連続紙WPとの間の高さ位置に設けられている。また受け止め部材34は鉛直方向においてランプ32と対向するように設けられる。受け止め部材34は後に詳述するブラケット37を介して筐体31に固定される。
【0072】
受け止め部材34は、後に詳述するように、保持部材33からずり落ちたランプ32と接触する。ランプ32は例えば400度~700度程度まで昇温するので、受け止め部材34は、耐熱性を有する材料によって形成される。当該材料としては、例えば、チタン、タングステンまたはモリブデン、石英ガラス等の材料を採用することができる。これによれば、受け止め部材34が高温のランプ32と接触しても問題が生じにくい。石英ガラスだと、光を透過するのでそれ自体の温度上昇も回避できる。
【0073】
図2に例示するように、受け止め部材34は複数(例えば2つ)設けられてもよい。図2では、2つの受け止め部材34として受け止め部材34aおよび受け止め部材34bが示されている。以下では、2つの受け止め部材34を区別する場合には、受け止め部材34aおよび受け止め部材34bを用いて説明し、これらを区別する必要がない場合には、受け止め部材34を用いて説明する。
【0074】
受け止め部材34は例えば棒状の形状を有しており、複数のランプ32の配列方向(ここでは搬送方向D1)に沿って延在している。受け止め部材34の断面は例えば略円形状を有している。この受け止め部材34は複数のランプ32の全てと鉛直方向において対向している。つまり、受け止め部材34は、複数のランプ32のうち搬送方向D1の一方端に位置するランプ32から他方端に位置するランプ32までの領域に跨って延在している(図3参照)。
【0075】
受け止め部材34aおよび受け止め部材34bは互いに同程度の高さ位置に設けられており、ランプ32の長手方向(ここでは幅方向D2)において互いに向かい合っている。より具体的には、受け止め部材34aおよび受け止め部材34bは平面視においてランプ32の幅方向D2における中心に対して互いに反対側に位置している。さらに具体的に説明すると、受け止め部材34aおよび受け止め部材34bは平面視において連続紙WPの外側に位置しており、連続紙WPとは鉛直方向において対向していない。これによれば、ランプ32からの赤外線が受け止め部材34によって遮られることなく、連続紙WPに照射される。よって、より効果的に連続紙WPを加熱することができる。
【0076】
受け止め部材34はランプ32の湾曲部322と鉛直方向において対向する位置に設けられていてもよい(図5も参照)。これによれば、受け止め部材34をランプ32の棒状部321と対向する位置に設けられる構造(以下、比較構造と呼ぶ)に比して、次の点で望ましい。例えばランプ32と受け止め部材34との間の鉛直方向における間隔H1を一定として考えれば、比較構造に比べて、受け止め部材34をより高い位置に設けることができる。つまり、比較構造に比べて、加熱部3を小型化できる。あるいは、比較構造に比べて、受け止め部材34としてより断面積の大きな棒状部材を採用することができる。断面積の大きな棒状部材は耐久性に優れている。
【0077】
図2および図3に例示するように、受け止め部材34はブラケット37を介して筐体31に固定される。ブラケット37は例えば赤外線についての高い反射性を有する金属(例えば、アルミやステンレスである。これらの金属を採用した場合、95~98%の高い反射率を有することが可能である。)によって形成され、取付部材371と、一対の支持部材372と、一対の弾性部材373とを有している。取付部材371は、内側壁3711と、外側壁3712と、連結底部3713とを有している。内側壁3711は筐体31の側壁312のうち搬送方向D1に略平行な側壁312の内側に位置している。以下では、この側壁312を取付対象壁312と呼ぶ。外側壁3712は取付対象壁312の外側に位置している。連結底部3713は取付対象壁312に対して鉛直下側に位置し、内側壁3711と外側壁3712とを連結する。要するに、取付部材371は略U字状の断面を有している。取付部材371は例えばねじ止め等の取り付け方法によって筐体31に取り付けられる。
【0078】
内側壁3711の内周面にはランプ32からの赤外線が照射され得るので、この内周面の表面粗さは小さいことが望ましい。内周面の反射率が高まるからである。より具体的には、この内周面は鏡面加工されていることが望ましい。これによれば、赤外線は内側壁3711の内周面において高い反射率で反射し、連続紙WPに照射され得る。
【0079】
内側壁3711の外周面(取付対象壁312側の面)の表面粗さは内周面に比して大きくてもよい。これによれば、取付部材371の製造コストを低減できる。同様に、外側壁3712および連結底部3713の表面粗さも内側壁3711の内周面に比して大きくてもよい。これによっても、取付部材371の製造コストを低減できる。
【0080】
一対の支持部材372は内側壁3711から筐体31の内側に突出している。より具体的には、一対の支持部材372の各々は、例えば内側壁3711に設けられた突起板に対してナットおよびボルトにより、内側壁3711に固定される。支持部材372は板状の形状を有しており、その厚み方向が搬送方向D1に沿うように設けられている。支持部材372には、厚み方向に沿って自身を貫通する貫通孔が形成されている。受け止め部材34はその両端において一対の支持部材372の貫通孔を貫通している。これにより、支持部材372は受け止め部材34を支持することができる。なお支持部材372の貫通孔は受け止め部材34の断面よりも充分に広く形成されていてもよく、この場合、受け止め部材34は支持部材372の貫通孔を遊挿する。
【0081】
一対の弾性部材373は一対の支持部材372の互いに反対側の面にそれぞれ連結されている。弾性部材373は、第1板部3731と、第2板部3732とを有している。第1板部3731はその厚み方向が搬送方向D1に沿うように設けられており、受け止め部材34の端部と接触している。第2板部3732は第1板部3731から支持部材372へと延びており、第1板部3731と支持部材372とを連結する。支持部材372および弾性部材373は同じ材料で一体に構成されていてもよい。一対の弾性部材373は受け止め部材34を互いに反対側から搬送方向D1に沿って押圧しており、受け止め部材34を搬送方向D1において位置決めしている。また弾性部材373は熱膨張により受け止め部材34が伸びた場合に、その熱膨張を吸収するように弾性変形することができる。
【0082】
このようなブラケット37を用いることで、受け止め部材34が設けられていない加熱部3に対して、容易に受け止め部材34を取り付けることができる。
【0083】
このような印刷システム100において、例えば搬送機構1の駆動等により振動が生じると、ランプ32が保持部材33からずり落ちる場合がある。例えば数十から百[Hz]程度の振動によってランプ32は保持部材33からずり落ち得る。
【0084】
本実施の形態においては、受け止め部材34が設けられている。したがって、ランプ32が保持部材33からずり落ちた場合には、ランプ32は受け止め部材34の上に落下する。これにより、ランプ32が連続紙WPと接触する可能性を低減することができる。よって、ランプ32と連続紙WPとの接触によって連続紙WP上のインクが乱れる可能性を低減できる。また、ランプ32と連続紙WPとの接触によって連続紙WPの印刷処理を中断する可能性を低減できる。
【0085】
また図2の例では、2つの受け止め部材34aおよび受け止め部材34bはランプ32の長手方向の中心に対して互いに反対側に設けられている。これによれば、ランプ32の重心に対して互いに反対側の2点でランプ32を受け止めることができる。よって、ランプ32が受け止め部材34の上で安定しやすく、連続紙WPの上に落下する可能性をさらに低減することができる。
【0086】
また受け止め部材34は複数のランプ32のいずれとも鉛直方向において対向する。よって、複数のランプ32のいずれが保持部材33から落ちても、受け止め部材34はそのランプ32と接触する。よって、そのランプ32が連続紙WPに落下する可能性を低減できる。
【0087】
<受け止め部材の高さ位置>
受け止め部材34が設けられる高さ位置は、ランプ32よりも低く、連続紙WPよりも高ければよいものの、以下では、より好ましい高さ位置について述べる。
【0088】
図7および図8は、受け止め部材34の高さ位置を説明するための図である。図5も参照して説明する。図5においては、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aが互いに電気的に接続されており、コネクタ構造33aはコネクタ構造32aに対して十分に奥まで挿入されている。コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aが互いに電気的に接続されているので、ランプ32への電力の供給が可能である。ランプ32に電力が供給されることで、ランプ32は赤外線を照射する。図5の例では、この赤外線の照射の一例を模式的に矢印で示している。
【0089】
この正常状態では、受け止め部材34はランプ32から離れており、ランプ32に接触していない。したがって、正常状態においてランプ32の熱は受け止め部材34に伝達されにくい。この正常状態では、鉛直方向におけるランプ32と連続紙WPとの間隔H2は例えば数十[mm](例えば22[mm])程度である。
【0090】
この正常状態で大きな振動等が生じると、自重によりランプ32がずり落ち得る。つまり、コネクタ構造32aがコネクタ構造33aからずり落ち得る。コネクタ構造32aがコネクタ構造33aからずり落ちても棒状部材33bが金属板32bに接触している限りは、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aの電気的な接続は維持される。コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aの電気的な接続は図7に示す臨界状態まで維持される。この臨界状態では、間隔H2は例えば十数[mm](例えば12[mm])程度である。この臨界状態においても、受け止め部材34はランプ32とは接触していない。
【0091】
ランプ32が図7の臨界状態からさらにずり落ちると、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aの電気的な接続が遮断され、ランプ32への電力の供給が停止する。そしてランプ32の落下に伴って、いずれランプ32は受け止め部材34に接触する(図8参照)。言い換えれば、受け止め部材34は、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aが互いに電気的に接続されていない非接続状態でランプ32と接触する高さ位置に設けられている。この非接続状態では、間隔H2は例えば数[mm](例えば5~10[mm])程度である。
【0092】
比較のために、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aが互いに電気的に接続された接続状態で、ランプ32が受け止め部材34と接触する場合を考察する。この場合、ランプ32への電力の供給が維持されるので、ランプ32から受け止め部材34に伝達される熱量は大きい。したがって、受け止め部材34には熱による劣化が生じやすい。
【0093】
これに対して上述の例では、ランプ32への電力の供給が停止した状態で、受け止め部材34がランプ32と接触する。よって、ランプ32から受け止め部材34へ伝達される熱量を低減でき、受け止め部材34の劣化を低減できる。
【0094】
図8の例では、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aの電気的な接続は遮断されているものの、コネクタ構造32aはコネクタ構造33aからは抜けきっていない。つまり、コネクタ構造33aの棒状部材33bの先端はコネクタ構造32aの内部に位置している。
【0095】
比較のために、コネクタ構造32aがコネクタ構造33aから完全に引き抜かれた状態でランプ32が受け止め部材34に接触する場合について考察する。コネクタ構造32aがコネクタ構造33aから完全に引き抜かれれば、ランプ32は水平面において変位(移動)し得る。具体的には、ランプ32は平面視において斜めに回転し得る。図9は、ランプ32の姿勢を説明するための平面図である。図9の例示では、ランプ32が平面視において回転した状態を二点鎖線で示している。この状態では、ランプ32は受け止め部材34aと受け止め部材34bとの間から連続紙WPの上に落下し得る。
【0096】
これに対して、上述の例では、コネクタ構造32aがコネクタ構造33aから抜けきっていない状態で受け止め部材34がランプ32と接触する。これによれば、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aが互いに物理的に干渉し合うので、ランプ32の水平面内における変位(例えば回転)が実質的に阻害される。よって、受け止め部材34はランプ32を受け止めやすい。つまり、ランプ32は受け止め部材34aと受け止め部材34bとの間からほとんど落下しない。したがって、ランプ32の落下による連続紙WPのインクの乱れ、あるいは、印刷処理の中断をほぼ回避することができる。
【0097】
第2の実施の形態.
第2の実施の形態にかかる印刷システム100の構成の一例は第1の実施の形態と同様である。さて、ランプ32が保持部材33からずり落ちて駆動回路351との接続が遮断されると、そのランプ32を駆動することはできない。そこで第2の実施の形態では、駆動できないランプ32を検出する技術について述べる。なお第2の実施の形態において、必ずしも受け止め部材34が設けられる必要はない。
【0098】
<センサ>
図4に例示するように、ランプ32に流れる電流を測定するセンサ353が設けられている。ここでは複数のランプ32が設けられているので、複数のランプ32に1対1で対応して複数のセンサ353が設けられる。センサ353は例えばシャント抵抗を有している。センサ353は基板35に実装されてもよい。センサ353の測定結果はランプ制御部352に出力される。ランプ制御部352は、各センサ353によって測定された各ランプ32の電流をフィードバックして各駆動回路351を制御してもよい。なおランプ制御部352は制御部7と通信可能に接続されている。
【0099】
さて、ランプ32がハロゲンランプである場合、ランプ32から照射される赤外線のスペクトルはランプ32のフィラメントの温度に応じて変化する。具体的には、温度が高いほど赤外線のピーク波長は短くなる。つまり、ランプ32から照射される赤外線のピーク波長は、ランプ32に供給される電力が大きいほど短くなる。
【0100】
連続紙WPの加熱に適した波長(つまり連続紙WPでの吸収率の高い波長)は、連続紙WPの材質などの諸条件によって相違する。ランプ制御部352は、より加熱に適したスペクトルで赤外線を照射させるべく、各駆動回路351を制御してランプ32に電力を供給するとよい。ここでは一例として、各ランプ32に供給すべき電力の値は、制御部7からランプ制御部352に通知されるものとする。
【0101】
複数のランプ32の全体から照射される赤外線の光量(以下、全体光量と呼ぶ)は乾燥に必要な値以上であればよい。乾燥に必要な全体光量は、連続紙WPの厚みおよび連続紙WP上のインクの付着量などの諸条件によって相違する。必要以上に大きな光量で赤外線を照射することは、消費電力等の観点で望ましくないので、ランプ制御部352は、乾燥に必要な値以上あって当該値に近い全体光量でランプ32から赤外線を照射すべく、各駆動回路351を制御してランプ32に電力を供給するとよい。
【0102】
また加熱部3において推奨される電力範囲が設定されている場合もある。このような場合では、ランプ制御部352は加熱部3の全体の電力がその電力範囲内となるように、各駆動回路351を制御するとよい。
【0103】
ところで、この全体光量(つまり全体の電力)を調整するためには、複数のランプ32に供給する電力を一律に調整するのではなく、ランプ32に電力を供給する本数を調整することが望ましい。なぜなら、電力を一律に調整すれば、加熱に適したスペクトルでの赤外線の照射が困難となるからである。そこで、加熱に適したスペクトルで赤外線を照射可能な所定の電力を必要な本数のランプ32に供給しつつ、全体光量が十分な値以上となる範囲で、1つ以上のランプ32への電力の供給を実質的に停止するとよい。ここでは一例として、電力の供給を実質的に遮断するランプ32の本数は、制御部7からランプ制御部352に通知されるものとする。なお以下では、実質的に電力の供給を停止するランプ32を休止ランプ32とも呼ぶ。
【0104】
消費電力の低減という意味では、休止ランプ32に対する電力の供給は完全に停止することが望ましい。しかしながら、第2の実施の形態では、この休止ランプ32へも若干の電力を供給する。この点について以下に詳述する。
【0105】
保持部材33からの落下等により、そのランプ32を駆動できなくなるので、駆動不可のランプ32を検出すべく、センサ353を利用する。すなわち、ランプ32が保持部材33からずり落ちると、コネクタ構造32aおよびコネクタ構造33aの電気的な接続がいずれ遮断され、駆動回路351とランプ32との電気的な接続が遮断される。駆動回路351がランプ32に電力を供給している場合には、この落下によって、ランプ32へ流れる電流は零に変化する。この電流を測定することにより、駆動不可のランプ32を検出することができる。なお電流の正常値から零への変化の検出により、ランプ32が落下したと判断してもよい。
【0106】
ランプ制御部352は全てのランプ32に対して電力を供給すべく、駆動回路351を制御する。具体的には、加熱に適したスペクトルで赤外線を照射可能となる第1電力を、n本のランプ32に供給しつつ、第1電力よりも小さい第2電力を残りのランプ32に供給する。ここでいう「n本」は全体光量が連続紙WPの乾燥に必要な値以上となる最小限の本数である。第2電力はランプ32の接続/非接続が検出できる程度の電力であればよく、例えば第1電力の3~10[%]程度の範囲内の電力である。
【0107】
なお第1電力および第2電力は次のようにも説明できる。ここで、連続紙WPにおいて吸収率の高い波長を吸収波長と呼ぶ。第1電力は、ランプ32が吸収波長に近いピーク波長を有する赤外線を照射可能な電力である、とも説明でき、第2電力は、ランプ32が、第1電力が供給されるときよりも、吸収波長から遠いピーク波長を有する赤外線をランプ32が照射可能な電力である、とも説明できる。
【0108】
複数のランプ32に対して適宜に第1電力および第2電力をそれぞれ供給しているときに、各センサ353によって測定される電流が基準値よりも小さいときには、その電流に対応するランプ32は駆動不可であると判断することできる。当該基準値は、第2電力がランプ32に適切に供給された状態でランプ32に流れる電流の下限値よりも小さい正の値に設定される。
【0109】
図10は、印刷装置10の動作の一例を示す図である。まず、制御部7は印刷処理に先立って、ランプ制御部352へとチェック信号CS1を出力する。チェック信号CS1はランプ32が駆動可能かどうかのチェックを指示する信号である。ランプ制御部352はこのチェック信号CS1の入力に応答して、全てのランプ32に第2電力を供給すべく、全ての駆動回路351を制御する。
【0110】
ランプ制御部352は全てのランプ32に第2電力を供給するように全ての駆動回路351を制御した状態で、各センサ353によって測定された電流値を受け取る。ランプ制御部352は各ランプ32に適切に電流が流れているか否かを当該電流値に基づいて判断する。具体的には、ランプ制御部352は、センサ353によって測定された電流値が基準値よりも大きいか否かをランプ32ごとに判断する。ランプ制御部352はその判断結果を示すステータス信号ST1を制御部7へと出力する。
【0111】
制御部7はステータス信号ST1に基づいて印刷処理の実行の可否を判断する。制御部7は、例えば、ランプ32のうち少なくとも一つの電流値が基準値よりも小さいときに印刷処理が実行不可であると判断する。つまり、電流値が基準値よりも小さいときには、そのランプ32を適切に駆動できないので、制御部7は印刷処理が実行不可であると判断する。制御部7は、ランプ32を駆動できないエラーが生じていることを、ユーザインターフェース9の通知装置に通知させてもよい。通知装置がディスプレイである場合には、制御部7はエラーをディスプレイに表示する。作業員はディスプレイによってエラーを確認することができ、必要な対処を行うことができる。
【0112】
一方で、制御部7は全ての電流値が基準値よりも大きいときには、全てのランプ32を駆動可能であるので、印刷処理が実行可能であると判断する。制御部7は印刷処理が実行可能であると判断したときに、印刷装置10の各構成を制御して印刷処理を開始する。例えば制御部7はランプ制御部352へと照射指示信号LS1を出力する。この照射指示信号LS1には、各ランプ32に供給すべき第1電力の値、および、第1電力を供給すべきランプ32の本数(あるいは、さらに休止ランプ32の本数)が指定されている。
【0113】
ランプ制御部352はこの照射指示信号LS1の入力に応答して、ランプ32に電力を供給すべく駆動回路351を制御する。ランプ制御部352は、例えば、3本のランプ32に100[%]の第1電力を供給し、残りの3本のランプ32に6[%]の第2電力を供給すべく、各駆動回路351を制御する。第1電力が供給された3本のランプ32が実質的に赤外線を照射して、連続紙WPを加熱する。
【0114】
制御部7は、搬送機構1を制御して連続紙WPを搬送方向D1に沿って搬送させつつ、印刷部2を制御して連続紙WPの印刷面にインクを付着させる。またヒートローラ4が設けられている場合には、制御部7はヒートローラ4を制御して連続紙WPを加熱する。これにより、実質的な印刷処理が実行される。
【0115】
ランプ制御部352はこの印刷処理中において、例えば所定期間ごとに最新のステータス信号ST1を制御部7へと出力する。
【0116】
制御部7はステータス信号ST1の入力のたびに、ステータス信号ST1に基づいて印刷処理の続行の可否を判断する。制御部7は全てのランプ32の電流値が基準値よりも大きいときに、印刷処理を続行し、いずれか一つの電流値が基準値よりも小さいときに、印刷処理を停止する。このとき、制御部7はエラーをユーザインターフェース9の通知装置に通知させてもよい。
【0117】
以上のように、加熱部3によれば、第1電力が供給されたランプ32によって実質的に赤外線を照射しつつ、低い消費電力で全てのランプ32をチェックすることができる。
【0118】
なお上述の例では、センサ353は、ランプ32に流れる電流を測定しているものの、ランプ32に印加される電圧を測定してもよい。センサ353によって測定される測定値が基準値よりも小さいときに、そのランプは駆動不可であると判断できる。
【0119】
<印刷処理の可否判断の他の一例>
上述の例では、制御部7はランプ32の電流値の少なくともいずれか一つが基準値よりも小さいときに、印刷処理が実行不可であると判断した。しかるに、必ずしもこれに限らない。図11は、印刷処理の実行(続行)可否の判断処理の一例を示すフローチャートである。制御部7はランプ制御部352からステータス信号ST1が入力されるたびに、このフローチャートを実行する。
【0120】
まずステップS1にて、制御部7は電流値が基準値よりも小さいランプ32があるか否か、すなわち、駆動不可のランプ32があるか否かを、ステータス信号ST1に基づいて判断する。駆動不可のランプ32がないときには、ステップS2にて、制御部7は印刷処理が実行可能であると判断する。
【0121】
駆動不可のランプ32があるときには、ステップS3にて、制御部7は駆動可能なランプ32の本数が駆動すべきランプ32の本数以上であるか否かを判断する。つまり、制御部7は、電流値が基準値よりも大きなランプ32の本数が、乾燥に必要なランプ32の本数以上であるか否かを判断する。駆動可能なランプ32の本数が駆動すべきランプ32の本数以上であるときには、ステップS2にて、制御部7は印刷処理が実行可能であると判断する。
【0122】
上述の例では、3本のランプ32を駆動するので、駆動可能なランプ32の本数が3本以上あるときには、制御部7は印刷処理が実行可能であると判断する。つまり、いくつかのランプ32が駆動不可であったとしても、残りのランプ32で必要な全体光量を満足できる場合には、ランプ制御部352はその残りのランプ32を適宜に駆動して、必要な全体光量での赤外線の照射を実現するのである。
【0123】
一方で、駆動可能なランプ32の本数が駆動すべきランプ32の本数未満であるときには、制御部7は印刷処理が実行不可であると判断する。つまり、駆動可能なランプ32の本数が必要本数に満たないので、制御部7は印刷処理が実行不可であると判断する。このとき、制御部7は印刷処理を停止し、ユーザインターフェース9の通知装置にエラーを通知させてもよい。
【0124】
以上のように、本動作によれば、たとえいくつかのランプ32が保持部材33からずり落ちたとしても、残りのランプ32で全体光量を満足できる場合には、印刷処理が実行される。よって、印刷処理の停止頻度を低減することができる。
【0125】
<ランプのローテーション駆動>
1以上のランプ32に第2電力を供給し、残りのランプ32に第1電力を供給する場合には、第1電力を供給するランプ32を例えば所定時間ごとに変更してもよい。これによれば、赤外線を照射するランプ32が所定時間ごとに変更されるので、各ランプ32の寿命を延ばすことができる。
【0126】
図12は、ランプをローテーションさせる際のランプ制御部352の動作の一例を示すフローチャートである。ランプ制御部352は、印刷処理中において第2電力を供給する休止ランプ32が存在するときに、このフローチャートを実行する。逆に言えば、ランプ制御部352は駆動可能なランプ32の全てに対して第1電力を供給しているときには、このフローチャートは実行しない。
【0127】
ステップS11にて、ランプ制御部352は所定時間が経過したかどうかを判断する。所定時間の経過は例えばタイマ回路によって測定される。所定時間が経過していないときには、ランプ制御部352は再びステップS11を実行する。
【0128】
所定時間が経過したときには、ステップS12にて、ランプ制御部352は、第1電力を供給するランプ32を変更する。例えば、5本のランプ32に第1電力を供給し、1本のランプ32に第2電力を供給する場合、第2電力を供給するランプ32をステップS12のたびに所定の順序で変更する。第2電力を供給するランプ32が複数本ある場合には、その複数本のランプ32の全てをステップS12のたびに変更してもよく、あるいは、ステップS12のたびに一つずつ変更してもよい。要するに、ステップS12において、第2電力が供給されていたm本のランプ32に対して第1電力を供給し、その替わりに、第1電力が供給されていたm本のランプ32に対して第2電力を供給すればよい。つまり、第1電力を供給する対象と第2電力を供給する対象とを交換する。これによれば、駆動対象のランプ32を変更することができ、バランスよくランプ32を駆動することができる。
【0129】
次にステップS13にて、ランプ制御部352はランプ32の照射を終了するか否かを判断する。照射を終了すると判断したときには、ランプ制御部352は全ての駆動回路351の制御を終了する。照射を終了しないと判断したときには、ランプ制御部352はステップS11を再び実行する。
【0130】
なお印刷処理中においてランプ32が保持部材33からずれ落ちて駆動不可となった場合には、ランプ制御部352はそのランプ32を除いた残りのランプ32においてローテーション駆動を行えばよい。
【0131】
第3の実施の形態.
第3の実施の形態では、印刷装置10における給排気について述べる。第3の実施の形態にかかる印刷システム100の構成の一例は第1の実施の形態と同様である。ただし、必ずしも受け止め部材34が設けられる必要はない。
【0132】
給気部5は第1の実施の形態でも述べたように、加熱部3の内部空間を経由して連続紙WPの上に気体を供給する(いわゆるダウンフロー)。図2の例示では、給気部5および加熱部3は一体に構成されている。具体的には、筐体31の外側には外筐体38が取り付けられている。例えば筐体31の天井311は水平面に対して傾斜しており、その鉛直上側の一端部が外筐体38の天井面に固定されている。給気部5の給気ファン51は外筐体38の側壁と筐体31の側壁との間の空間に収納されている。
【0133】
給気ファン51が収容される空間を形成する外筐体38の側壁および筐体31の側壁には、それぞれ貫通孔38bおよび貫通孔31bが設けられている。給気ファン51の回転に伴って、気体が外筐体38の外部から貫通孔38bおよび貫通孔31bを介して筐体31の内部へと供給される。筐体31の内部に供給された気体は天井311に衝突して鉛直下側へと流れる。筐体31の内部には、上述のように基板35、固定部材331、反射板36およびランプ32が設けられている。しかるに、これらは、筐体31の内部空間を上側空間と下側空間とに仕切るものではなく、上側空間および下側空間は互いに連通している。例えば基板35、固定部材331および反射板36の各々には、自身を貫通する貫通孔が形成されていてもよい。例えば反射板36には、図3および図6に示されるように、ランプ32の相互間において鉛直方向に沿って反射板36を貫通する貫通孔36aが形成されている。この貫通孔36aは気体を吹き出す吹き出し口として機能する。
【0134】
貫通孔36aから吹き出された気体は筐体31の開口部31aから連続紙WP上に供給される。当該気体によって連続紙WPは搬送ローラ12側に押圧される。また気体が加熱部3の内部空間を経由するので、加熱部3の内部を冷却することができる。これにより、加熱部3の内部に設けられた駆動回路351およびランプ制御部352などの電子部品を高温から保護することができる。
【0135】
連続紙WP上のインクが蒸発するので、その蒸発成分は連続紙WP上の気体に含まれることになる。当該蒸発成分を含んだ気体は排気部6へと吸引される(図1参照)。排気部6は例えば排気管61と吸引部62とを有している。吸引部62は排気ファン621を有している。
【0136】
排気管61の一端は吸引部62に連結され、他端は外筐体38に連結される。図2および図3の例では、外筐体38と筐体31との間の空間の一部が排気経路の一部として機能する。図3を参照して、開口部31aに対して搬送方向D1の両側において、それぞれ、複数の吸引口38aが形成されている(図6も参照)。複数の吸引口38aは、例えば、幅方向D2に長い長尺状の形状を有している。これらの吸引口38aは外筐体38と筐体31との間の空間に連通している。この吸引口38aは、給気ファン51から連続紙WPの上を流れた気体を吸引して外部の排気設備200に排気するための吸引口である。
【0137】
筐体31の開口部31aから供給された気体は連続紙WP上に供給された後、搬送方向D1の両側の吸引口38aから吸引されて、外筐体38と筐体31との間の空間を介して排気管61の内部および吸引部62を経由して、排気設備200へと排気される。
【0138】
排気設備200においても吸引機構(ファン)を有しており、この排気設備200は給気部5および排気部6の駆動の有無によらず駆動する。つまり、排気設備200は給気部5および排気部6とは連動せずに独立して駆動する。
【0139】
このような印刷装置10において、給気部5の給気ファン51および排気部6の排気ファン621を停止させた場合、排気設備200は駆動しているので、連続紙WP上の気体は吸引口38aへと吸引される。これに伴って、連続紙WPが吸引口38aに吸い込まれ得る。図13は、給気部5および排気部6の駆動を停止したときの様子の一例を概略的に示す図である。図13の例では、連続紙WPが加熱部3の直下において浮き上がっている。またこのとき、筐体31内が負圧となるので、ランプ32には鉛直下側の力が作用する。これにより、ランプ32が保持部材33からずり落ちやすい。
【0140】
さて、印刷システム100においては、印刷単位ごとに印刷を行うべく、印刷単位の一連の印刷処理が行われた後、一旦、印刷処理が中断され、次の印刷単位の一連の印刷処理が行われる。ここでいう印刷単位とは、連続して印刷処理を行う必要がある一連の処理を意味する。例えば、搬送機構1を駆動して印刷処理を開始してから搬送機構1の駆動を停止して印刷処理を停止するまでの処理を印刷単位と把握することができる。以下では、一連の印刷処理を行う期間を印字期間T1と呼び、印刷処理を中断する期間を非印字期間T2と呼ぶ。
【0141】
非印字期間T2においては印刷処理が行われないので、インクの蒸発成分も生じない。よって従来では、制御部7は非印字期間T2において給気ファン51および排気ファン621の回転を停止していた。しかしながら、給気ファン51の回転を停止すると、上述の問題が生じる。
【0142】
そこで、制御部7は非印字期間T2においても給気部5の給気ファン51を回転させ続ける。なお制御部7は給気ファン51を制御するファン制御部として機能できる。図14は、印刷システム100の動作の一例を概略的に示す図である。まず作業員が印刷システム100に対して電源を投入する。具体的には、作業員は印刷システム100に設けられた電源スイッチを切り替えることで、電源を投入する。制御部7はこの電源投入に応答して給気部5の給気ファン51を制御して、給気ファン51の回転を開始する。これにより、加熱部3の開口部31aから連続紙WPへと気体を供給できる。これにより、連続紙WPを搬送ローラ12側に押圧できるので、たとえ排気設備200が駆動していたとしても、吸引口38aへの連続紙WPの吸い込みを回避できる。
【0143】
次に制御部7は、印刷単位の印刷処理が終了すると印刷処理を中断し、再び次の印刷単位の印刷処理を実行する。以後、制御部7はこの動作を繰り返す。全ての印刷処理が終了すると、作業員は印刷システム100に対する電源を遮断する。具体的には、作業員は電源スイッチを切り替えて電源を遮断する。
【0144】
このような動作において、制御部7は印字期間T1のみならず非印字期間T2においても、給気部5の給気ファン51を回転させ続けている。これにより、非印字期間T2においても、連続紙WPを搬送ローラ12側に押圧することができる。よって、非印字期間T2における吸引口38aへの連続紙WPの吸い込みを回避することができる。非印字期間T2において筐体31内には負圧が生じないので、その負圧によってランプ32に作用する鉛直下側の力を回避できる。
【0145】
制御部7は作業員による電源遮断に応答して給気ファン51の回転を停止させる。このとき、排気設備200が駆動していれば、連続紙WPは吸引口38aに吸い込まれて筐体31内に負圧が増大し、その負圧に起因してランプ32に鉛直下側の力が作用し得る。しかしながら、非印字期間T2における負圧を回避できるので、負圧に起因してランプ32に鉛直下側の力が発生する頻度を低減することができ、ランプ32の落下を抑制することができる。なお、作業員は連続紙WPを取り外した状態で電源を遮断してもよい。これによれば、電源遮断時の連続紙WPの吸い込みも回避できる。
【0146】
<回転速度>
印字期間T1において連続紙WPからの蒸発成分(例えば水蒸気)を適切に排気できるように、給気ファン51および排気ファン621の回転速度が設定される。一方で、非印字期間T2においては、印刷処理が行われないので蒸発成分が生じない。よって、非印字期間T2において排気の必要性は小さい。非印字期間T2においては、連続紙WPを搬送ローラ12側に押圧できればよく、そのための気体の流量は印字期間T1に比して小さくてもよい。
【0147】
そこで、制御部7は非印字期間T2における給気ファン51および排気ファン621の回転速度が、それぞれ印字期間T1における給気ファン51および排気ファン621の回転速度よりも低くなるように、給気ファン51および排気ファン621を制御する。これにより、印刷装置10の消費電力を低減することができ、また給気ファン51および排気ファン621の寿命を長くすることができる。さらには、給気ファン51および排気ファン621による騒音も低減できる。
【0148】
なお、非印字期間T2においては排気のための吸引力は小さくてもよいので、制御部7は非印字期間において排気ファン621を停止させてもよい。
【0149】
さて、非印字期間T2において排気設備200による連続紙WPの吸引口38aへの吸い込みを回避するためには、排気設備200における吸引力に応じた回転速度で給気ファン51を回転させる必要がある。しかしながら、排気設備200の吸引力は、印刷システム100が設定される工場によって相違する。したがって、非印字期間T2における給気ファン51の回転速度を、印刷システム100の設置前に予め設定することは難しい。
【0150】
そこで、非印字期間T2における給気ファン51の回転速度を作業員によって設定可能となるように印刷システム100を構成する。より具体的には、ユーザインターフェース9は、非印字期間T2における給気ファン51の回転速度の入力を受け付ける。例えば制御部7は、非印字期間T2における給気ファン51の回転速度を設定するための設定用画面をユーザインターフェース9のディスプレイに表示する。例えば当該設定用画面には、回転速度として複数の数値のうち一つを選択するためのボタンが表示される。これら複数の数値のいずれもが、印字期間T1において採用される給気ファン51の回転速度よりも低い。設定用画面の各ボタンには、回転速度の高低の情報が示されてもよい。例えば、「高」、「中」および「低」をそれぞれ示す3つのボタンが表示されてもよい。
【0151】
作業員はユーザインターフェース9の入力装置を用いて一つのボタンを選択する(例えばクリックする)。具体的には、作業員は排気設備200の吸引力に応じたボタンを選択する。例えば排気設備200の吸引力が大きい場合には、作業員は「高」のボタンを選択し、当該吸引力が小さい場合には、作業員は「低」のボタンを選択する。制御部7は、選択されたボタンの種類を記憶媒体に記憶する。
【0152】
制御部7は非印字期間T2においては、作業員によって設定された回転速度で回転するように給気ファン51を制御する。図15は、印刷装置10の動作の一例を概略的に示す図である。制御部7は、非印字期間T2においては、給気ファン51の回転速度を、印字期間T1における回転速度よりも低減させる。具体的には、制御部7は、作業員によって指定された回転速度(つまり記憶媒体に記憶された回転速度)で給気ファン51を回転させる。これによって、より低消費電力で給気ファン51を駆動することができ、給気ファン51の寿命を延ばすことができる。また給気ファン51による騒音を低減できる。
【0153】
なお上述の例では、ユーザインターフェース9は、給気ファン51の回転速度として選択可能な複数の数値に対応した複数のボタンを表示し、作業員による選択入力を受け付けた。しかるに、ユーザインターフェース9は、給気ファン51の回転速度の数値そのものの入力を受け付けてもよい。例えば設定用画面には、数値を入力するための入力枠が表示される。作業員は入力装置を用いて、この入力枠を選択して、その入力枠内に数値を入力する。制御部7は、入力された数値を記憶媒体に記憶する。制御部7は非印字期間T2において、作業員によって入力された回転速度で回転するように給気ファン51を制御する。
【0154】
以上のように、印刷装置10においては、ユーザインターフェースが非印字期間T2における回転速度の入力を受け付ける。よって、作業員は排気設備200の吸引力に応じた回転速度を入力することができる。
【0155】
なお、制御部7は非印字期間T2において印字期間T1における回転速度よりも低い回転速度で排気ファン621を回転させてもよい。非印字期間T2における排気ファン621の回転速度は作業員によって設定されてもよい。すなわち、制御部7は、排気ファン621の回転速度を設定する設定用画面をユーザインターフェース9のディスプレイに表示してもよい。
【0156】
<以上に記載された実施の形態における変形例について>
以上、実施の形態が説明されたが、この印刷装置10はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上述した実施例では、印刷媒体として連続紙WPを採用したが、印刷媒体は連続紙WPに限定されるものではない。例えば、印刷媒体は枚葉用紙(単票用紙)であってもよい。印刷媒体として連続紙WPを例示したが、本発明は紙以外のフィルムなどの印刷媒体であっても適用できる。
【0157】
また上述した実施例では、印刷システム100は、印刷媒体の一方面のみに印刷を行っている。しかしながら、印刷システム100は、印刷装置10よりも下流側に表裏を反転させる反転機構を設け、その下流側にも新たに印刷装置10を設けてもよい。これによれば、印刷媒体に対して両面印刷を行うことができる。
【0158】
また、上述した実施例においては、インクの液滴を吐出するインクジェット方式によって印刷処理を行っていたが、印刷処理の手法はこれに限定されるものではなく、凸版印刷、グラビア印刷を含む凹版印刷、または、レーザー印刷などであってもよい。
【0159】
以上のように、印刷装置は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0160】
1 搬送機構
2 印刷部
7 ファン制御部(制御部)
9 ユーザインターフェース
10 印刷装置
31 筐体
32 ランプ
33 保持部材
34 受け止め部材
37 ブラケット
321 棒状部
32a 第1コネクタ構造(コネクタ構造)
322 湾曲部
33a 第2コネクタ構造(コネクタ構造)
51 給気ファン
351 駆動回路
352 制御部(ランプ制御部)
353 センサ
372 支持部材
3711 内側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15