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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】改質システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
C01B3/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018142861
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020019661
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】行本 敦弘
(72)【発明者】
【氏名】立花 晋也
(72)【発明者】
【氏名】松原 亘
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-505646(JP,A)
【文献】特開2004-203722(JP,A)
【文献】特開2013-197037(JP,A)
【文献】特開2013-103909(JP,A)
【文献】特表2008-512336(JP,A)
【文献】特開昭53-116294(JP,A)
【文献】特開昭62-228035(JP,A)
【文献】国際公開第2005/018035(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03309121(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン及び二酸化炭素を含むメタン含有ガスから改質ガスを製造するための改質システムであって、
前記メタン含有ガスの供給源と、
前記メタン含有ガスの改質により前記改質ガスを生成させるための改質装置であって、第1改質装置、及び前記第1改質装置とは異なる第2改質装置を少なくとも含む改質装置と、
前記供給源から前記改質装置に前記メタン含有ガスを供給するためのメタン含有ガス供給系統であって、前記第1改質装置に前記メタン含有ガスを供給するための第1メタン含有ガス供給系統、及び前記第2改質装置に前記メタン含有ガスを供給するための第2メタン含有ガス供給系統、を含むメタン含有ガス供給系統と、
前記第1改質装置に供給される前記メタン含有ガスに水蒸気を追加的に供給するための追加水蒸気供給系統と、
前記第1改質装置で生成した前記改質ガスを前記第2改質装置に供給するための第1改質ガス排気系統と、
前記第1改質装置又は前記第2改質装置の少なくとも一方の改質装置へのガスの供給量を調整するための供給量調整装置と
前記改質装置に供給されるガスの情報、前記改質装置から排気されるガスの情報、及び前記改質に使用される改質触媒の温度の情報に基づいて、前記改質装置において炭素が析出する可能性を判断するための判断部と、前記可能性が予め定められた閾値よりも高いと判断された場合に前記供給量調整装置を制御するための制御部と、を備える演算装置と、
を備え
前記改質装置は、さらに、前記第1改質装置及び前記第2改質装置とは異なる第3改質装置を含み、
前記メタン含有ガス供給系統は、さらに、前記第3改質装置に前記メタン含有ガスを供給するための第3メタン含有ガス供給系統を含み、
前記改質システムは、前記第1改質装置及び前記第2改質装置で生成した前記改質ガスを前記第3改質装置に供給するための第2改質ガス排気系統を備え、
前記第3改質装置は、前記改質ガスの流れ方向で最も下流側に配置されており、
前記改質システムは、さらに、前記第2改質装置に供給される前記メタン含有ガスに水蒸気を追加的に供給するための第2追加水蒸気供給系統を備えることを特徴とする、改質システム。
【請求項2】
前記予め定められた閾値が、カーボン活性Ac=1であることを特徴とする、請求項1に記載の改質システム。
【請求項3】
前記メタン含有ガス供給系統は、
少なくとも前記第1改質装置及び前記第2改質装置に供給される前記メタン含有ガスが流れる共有供給系統と、
前記共有供給系統に接続される前記第1メタン含有ガス供給系統と、
前記共有供給系統に接続される前記第2メタン含有ガス供給系統と、
を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の改質システム。
【請求項4】
前記追加水蒸気供給系統は、前記第1メタン含有ガス供給系統に接続されることを特徴とする、請求項3に記載の改質システム。
【請求項5】
前記改質システムは、前記改質装置に供給する水蒸気の物質量を、前記改質装置に供給するガス中の固体炭素析出成分に含まれる炭素の物質量で除した値が2.5以下になるように構成されることを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の改質システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は改質システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題への関心の高まりから、二酸化炭素の有効利用が求められている。そこで、天然ガス、メタン発酵ガス等に含まれるメタンの改質に二酸化炭素を使用する試みがなされている。例えば、二酸化炭素を使用してメタンを改質する技術が知られている。また、二酸化炭素を使用したメタンの改質の際に、水蒸気を併用する改質技術も知られている。
【0003】
二酸化炭素及び水蒸気を用いたメタンの改質技術に関して、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、メタンと二酸化炭素と水蒸気とを含むガスを用いて、メタンの改質を行うことが記載されている(特に、段落0026参照)。また、このガスでは、水蒸気の物質量に対する炭素の物質量比(S/C)は3.2になっている(同段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-338206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二酸化炭素を利用したメタンの改質では、メタンと二酸化炭素の反応により水素が生成するほか、メタンの熱分解により、固体の炭素と水素とを生成させる反応が生じる。固体の炭素が改質触媒に析出すると、改質触媒とガスとの接触が妨げられ、触媒反応効率が低下する。また、改質反応器の圧力損失上昇へとつながり、ガス圧の低下は後流プロセスへ影響を及ぼす。また、改質反応が内部で生じる細孔の内外を繋ぐ流路に炭素が析出すると、細孔が閉塞され改質触媒が破壊される可能性がある。そこで、炭素の析出を十分に抑制することが好ましい。
【0006】
炭素の析出を抑制するためには、例えば、改質反応に使用される水蒸気の化学両論比量よりも多くの水蒸気を使用することが考えられる。しかし、水蒸気使用量の増加により、消費エネルギが増大する。そのため、水蒸気の使用量をできるだけ抑制しながら、炭素の析出を十分に抑制することが好ましい。
【0007】
これらの課題に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、炭素析出の抑制と消費エネルギの削減とを両立させた改質システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一実施形態に係る改質システムは、
メタン及び二酸化炭素を含むメタン含有ガスから改質ガスを製造するための改質システムであって、
前記メタン含有ガスの供給源と、
前記メタン含有ガスの改質により前記改質ガスを生成させるための改質装置であって、第1改質装置、及び前記第1改質装置とは異なる第2改質装置を少なくとも含む改質装置と、
前記供給源から前記改質装置に前記メタン含有ガスを供給するためのメタン含有ガス供給系統であって、前記第1改質装置に前記メタン含有ガスを供給するための第1メタン含有ガス供給系統、及び前記第2改質装置に前記メタン含有ガスを供給するための第2メタン含有ガス供給系統、を含むメタン含有ガス供給系統と、
前記第1改質装置に供給される前記メタン含有ガスに水蒸気を追加的に供給するための追加水蒸気供給系統と、
前記第1改質装置で生成した前記改質ガスを前記第2改質装置に供給するための第1改質ガス排気系統と、
前記第1改質装置又は前記第2改質装置の少なくとも一方の改質装置へのガスの供給量を調整するための供給量調整装置と、
前記改質装置に供給されるガスの情報、前記改質装置から排気されるガスの情報、及び前記改質に使用される改質触媒の温度の情報に基づいて、前記改質装置において炭素が析出する可能性を判断するための判断部と、前記可能性が予め定められた閾値よりも高いと判断された場合に前記供給量調整装置を制御するための制御部と、を備える演算装置と、
を備え
前記改質装置は、さらに、前記第1改質装置及び前記第2改質装置とは異なる第3改質装置を含み、
前記メタン含有ガス供給系統は、さらに、前記第3改質装置に前記メタン含有ガスを供給するための第3メタン含有ガス供給系統を含み、
前記改質システムは、前記第1改質装置及び前記第2改質装置で生成した前記改質ガスを前記第3改質装置に供給するための第2改質ガス排気系統を備え、
前記第3改質装置は、前記改質ガスの流れ方向で最も下流側に配置されており、
前記改質システムは、さらに、前記第2改質装置に供給される前記メタン含有ガスに水蒸気を追加的に供給するための第2追加水蒸気供給系統を備えることを特徴とする。
【0009】
上記(1)の構成によれば、追加水蒸気供給系統により第1改質装置に水蒸気を追加的に供給することで、第1改質装置での炭素析出を抑制しつつ、改質システムの全体として水蒸気量を削減できる。また、第2改質装置には、第1改質装置で生成した改質ガス中の水素と未反応の水蒸気及びメタンとが供給される。これにより、水素の分圧を高めてメタンの熱分解を抑制し、第2改質装置での炭素析出を抑制できる。また、上記(1)の構成によれば、第1改質装置及び第2改質装置に備えられる改質触媒の経時劣化に伴って触媒性能が改質装置毎に異なる場合であっても、改質装置毎にメタン含有ガスの供給量を調整でき、炭素析出を抑制できる。また、上記(1)の構成によれば、ガスの各情報に基づいて炭素析出の可能性を判断して、その判断に基づいて第1改質装置又は第2改質装置の少なくとも一方への炭素含有ガスの供給量を制御できる。これにより、改質装置での炭素析出を十分に抑制できる。また、上記(1)の構成によれば、3つ以上の改質装置を設置でき、改質ガスの生成量を増加できる。さらに、上記(1)の構成によれば、3つ以上の改質装置を設置した場合に、追加水蒸気供給系統により第1改質装置及び第2改質装置に水蒸気を追加的に供給することで、第1改質装置及び第2改質装置での炭素析出を抑制しつつ、改質システムの全体として水蒸気量を削減できる。また、最も下流側に配置された第3改質装置には、上流側の第1改質装置及び第2改質装置の双方で生成した改質ガスが供給される。このため、第3改質装置への水素供給量を増やすことができ、水蒸気を追加的に供給しなくても、炭素析出を抑制できる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記予め定められた閾値が、カーボン活性Ac=1であることを特徴とする。
【0014】
)幾つかの実施形態では、上記(1)又はの構成において、
前記メタン含有ガス供給系統は、
少なくとも前記第1改質装置及び前記第2改質装置に供給される前記メタン含有ガスが流れる共有供給系統と、
前記共有供給系統に接続される前記第1メタン含有ガス供給系統と、
前記共有供給系統に接続される前記第2メタン含有ガス供給系統と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
上記()の構成によれば、共有供給系統から分岐して、第1メタン含有ガス供給系統及び第2メタン含有ガス供給系統を形成できる。これにより、メタン含有ガスの供給源から分岐部まで、メタン含有ガスが流れる系統を1つのみにすることができる。この結果、第1メタン含有ガス供給系統及び第2メタン含有ガス供給系統のそれぞれを独立して直接供給源に接続する場合と比べて、配管の設置面積を減らすことができ、設置面積を削減できる。
【0016】
)幾つかの実施形態では、上記()の構成において、
前記追加水蒸気供給系統は、前記第1メタン含有ガス供給系統に接続されることを特徴とする。
【0017】
上記()の構成によれば、第1改質装置に水蒸気を追加的に供給できる。
【0022】
)幾つかの実施形態では、上記(1)~()の何れか1の構成において、
前記改質システムは、前記改質装置に供給する水蒸気の物質量を、前記改質装置に供給するメタン含有ガス中の炭化水素に含まれる炭素の物質量で除した値が2.5以下になるように構成されることを特徴とする。
【0023】
上記()の構成によれば、水蒸気量を削減できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、炭素析出の抑制と消費エネルギの削減とを両立させた改質システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る改質システムの系統図である。
図2】反応管の中心付近及び管壁付近において生じる反応について、改質ガス流れの最上流の改質装置の入口部からの距離に対するカーボン活性を示すグラフである。
図3】本発明の第2実施形態に係る改質システムの系統図である。
図4図3に示す改質システムで行われる制御を示すフローチャートである。
図5】本発明の第3実施形態に係る改質システムの系統図である。
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、以下に実施形態として記載されている内容又は図面に記載されている内容は、あくまでも例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、任意に変更して実施することができる。また、各実施形態は、2つ以上を任意に組み合わせて実施することができる。さらに、各実施形態において、共通する部材については同じ符号を付すものとし、説明の簡略化のために重複する説明は省略する。
【0027】
また、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0028】
図1は、本発明の第1実施形態に係る改質システム100の系統図である。改質システム100は、メタン、二酸化炭素及び水蒸気を含むメタン含有ガスから改質ガスを製造するためのものである。改質システム100は、供給源10と、改質装置1と、メタン含有ガス供給系統11と、追加水蒸気供給系統13と、改質ガス排気系統12aとを備える。
【0029】
供給源10は、改質装置1に供給されるメタン含有ガスの供給源となるものである。供給源10は、例えば、天然ガス等のメタンを含むガスに二酸化炭素(及び必要に応じて水蒸気)を混合することで構成される。また、メタン含有ガスがメタン発酵ガスである場合は、メタン含有ガス中に二酸化炭素が含まれるため、そのままでも良いが、さらに二酸化炭素(及び必要に応じて水蒸気)を混合しても良い。以下の例では、説明の簡略化のために、固体の炭素析出の原因化合物として、メタン含有ガスに含まれるメタン、及び、改質により生成する一酸化炭素のみを考慮して、炭素析出の可能性が判断される。
【0030】
なお、天然ガスを用いる場合等、メタン含有ガスには、例えばエタン、プロパン等の炭素数2以上の炭化水素が含まれる場合がある。この場合、その炭化水素に起因して炭素が析出する可能性がある。そこで、この場合には、炭化水素(エタン、メタン等)から固体の炭素が析出する反応を検討し、この反応を考慮した炭素析出の可能性(例えば後記するカーボン活性)を検討すればよい。また、例えばプレリフォーマ(図示しない)によって、エタン、プロパン等の炭素数2以上の炭化水素をメタン等に変換し、変換されたメタン等を供給源10で用いてもよい。
【0031】
改質装置1は、供給源10のメタン含有ガスの改質により改質ガスを生成させるためのものである。改質ガスは、水素及び一酸化炭素を含む。また、改質ガスは、未反応のメタン含有ガスを含んでもよい。改質装置1は、改質に使用される改質触媒(図示しない)を備え、改質触媒にメタン含有ガスが接触することで、メタン含有ガスの改質が行われる。なお、改質触媒の具体的な種類は特に制限されず、任意の改質触媒を使用できる。また、改質は、図示しない加熱装置により加熱しながら行われる。改質温度は、例えば500℃以上900℃以下とすることができる。
【0032】
改質装置1は、改質装置1a(第1改質装置)と、改質装置1aとは異なる改質装置1b(第2改質装置)と、改質装置1a及び改質装置1bとは異なる改質装置1cとを少なくとも含む。これらのうち、改質装置1cは、改質ガスの流れ方向で最も下流側に配置される。
【0033】
改質装置1a,1b,1cは、それぞれ、上記の改質触媒を触媒層として収容した1本以上の反応管1a1,1b1,1c1を備える。そして、メタン含有ガスは、反応管1a1,1b1,1c1をそれぞれ流れることで、改質触媒とメタン含有ガスとの接触が行われる。改質装置1a,1b,1cを備えることで、3つの改質装置1を設置でき、改質ガスの生成量を増加できる。
【0034】
メタン含有ガス供給系統11は、供給源10から改質装置1にメタン含有ガスを供給するためのものである。メタン含有ガス供給系統11は、改質装置1aにメタン含有ガスを供給するためのメタン含有ガス供給系統11aと、改質装置1bにメタン含有ガスを供給するためのメタン含有ガス供給系統11bと、改質装置1cにメタン含有ガスを供給するためのメタン含有ガス供給系統11cとを含む。
【0035】
また、メタン含有ガス供給系統11は、改質装置1a,1b,1cに供給されるメタン含有ガスが流れる共有供給系統11fを含む。そして、上記のメタン含有ガス供給系統11a,11b,11cは、いずれも、共有供給系統11fに接続される。即ち、共有供給系統11fは、メタン含有ガス供給系統11のうち、供給源10から分岐部11qまでの部分を表す。
【0036】
上記のメタン含有ガス供給系統11a(第1メタン含有ガス供給系統)は、供給源10と分岐部11qとの間にある分岐部11pから改質装置1aの入口部11rまでの部分である。また、上記のメタン含有ガス供給系統11b(第2メタン含有ガス供給系統)は、分岐部11qから改質装置1bの入口部11sまでの部分である。さらには、上記のメタン含有ガス供給系統11cは、分岐部11qから改質装置1cの入口部11tまでの部分である。
【0037】
このような共有供給系統11fを備えることで、共有供給系統11fから分岐して、メタン含有ガス供給系統11a,11bを少なくとも形成できる。これにより、メタン含有ガスの供給源10から分岐部11pまで、メタン含有ガスが流れる系統を1つのみにすることができる。この結果、メタン含有ガス供給系統11a(第1メタン含有ガス供給系統)及びメタン含有ガス供給系統11b(第2メタン含有ガス供給系統)のそれぞれを独立して直接供給源10に接続する場合と比べて、配管の設置面積を減らすことができ、設置面積を削減できる。
【0038】
追加水蒸気供給系統13は、改質装置1aに供給されるメタン含有ガスに水蒸気を追加的に供給するためのものである。ここで、メタン含有ガスには、上記のように適宜水蒸気が含まれてもよい。メタン含有ガスに水蒸気が含まれる場合には、改質装置1aに供給される水蒸気は、メタン含有ガスに含まれる水蒸気と、追加水蒸気供給系統13により供給された水蒸気とを含む。一方で、メタン含有ガスに水蒸気が含まれない場合には、改質装置1aに供給される水蒸気は、追加水蒸気供給系統13により供給された水蒸気とを含む。いずれの場合においても、メタン含有ガスに水蒸気が追加されるため、本明細書では、メタン含有ガスに水蒸気が含まれる場合及び含まれない場合の双方を考慮し、水蒸気を「追加的に供給」というものとする。
【0039】
以下の記載においては、説明の簡略化のために、メタン含有ガスに水蒸気が含まれる場合を中心に説明する。ただし、上記のように、メタン含有ガスには、水蒸気は含まれなくてもよい。
【0040】
改質システム100では、メタン含有ガス供給系統11を通じて供給されるメタン含有ガスに含まれる水蒸気に加え、追加水蒸気供給系統13を通じて供給される水蒸気も、改質装置1aに供給される。なお、図示しないが、追加水蒸気供給系統13は、水蒸気の供給量を制御するための追加水蒸気供給量調整装置を備える。
【0041】
追加水蒸気供給系統13は、メタン含有ガス供給系統11aに接続される。即ち、追加水蒸気供給系統13は、分岐部11pから改質装置1aの入口部11rまでの間に形成されるメタン含有ガス供給系統11a(メタン含有ガス供給系統11)に接続される。追加水蒸気供給系統13がメタン含有ガス供給系統11aに接続されることで、改質装置1aに水蒸気を追加的に供給できる。なお、追加水蒸気供給系統13は、例えば改質装置1aに接続されるようにしてもよい。
【0042】
改質ガス排気系統12a(第1改質ガス排気系統)は、改質装置1aで生成した改質ガスを改質装置1bに供給するためのものである。改質ガス排気系統12aは、上記のメタン含有ガス供給系統11bに接続される。
【0043】
さらに、改質システム100は、改質装置1a,1bで生成した改質ガスを改質装置1cに供給するための改質ガス排気系統12bを備える。改質ガス排気系統12bを流れる改質ガスは、改質装置1bで生成した改質ガスのほか、上記の改質ガス排気系統12aを通じて改質装置1bに供給された改質ガスを含む。
【0044】
また、改質システム100は、改質装置1a,1b,1cで生成した改質ガスを改質システム100の外部に抜き出すための改質ガス排気系統12cを備える。改質ガス排気系統12cを流れる改質ガスは、改質装置1cで生成した改質ガスのほか、上記の改質ガス排気系統12bを通じて改質装置1cに供給された改質ガスを含む。
【0045】
改質システム100は、システム全体として、改質装置1に供給する水蒸気の物質量を、改質装置1に供給するメタン含有ガス中の炭化水素に含まれる炭素の物質量で除した値(以下S/Cという)が例えば2.5以下、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.1以下、また、その下限は、例えば1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上(上記の例では具体的には2)になるように構成される。なお、ここでいう固体炭素析出成分は、炭素を含む成分であって、改質装置1での改質条件下、含まれる炭素を固体炭素として析出させ得る成分のことをいう。固体炭素析出成分は、例えば、メタン含有ガスに含まれるメタン、エタン、プロパン等の炭化水素のほか、一酸化炭素等を含む。固体炭素析出の有無は、メタン含有ガスの組成及び平衡反応を計算することで、判断することができる。
【0046】
改質装置1に供給されるメタン含有ガスにおいては、S/Cは例えば1.5である。なお、ここでは、メタン含有ガスに含まれる炭化水素は、上記のように説明の便宜のためにメタンのみである。そして、S/C=1.5のガスが、改質装置1a,1b,1cに等流量で供給される。なお、メタン含有ガスのS/Cは1.5に限定されるものではなく、メタン含有ガスに水蒸気が含まれない場合には、S/Cは0になる。
【0047】
そして、改質ガス流れで1段目(最上流)である改質装置1aに対しては、追加水蒸気供給系統13を通じて、追加的に水蒸気の供給が行われる。追加量は特に制限されないが、例えば、改質装置1に供給されるガス(メタン含有ガス及び追加的に供給された水蒸気を含む)のS/Cが2以上5以下(好ましくは2以上4以下、より好ましくは2以上3以下、特に好ましくは3)になる量である。このようにすることで、供給源10から供給されるメタン含有ガスに含まれる水分量を少なくしても(水分量が0でもよい)、上記の追加水蒸気供給系統13を通じて水蒸気を追加することで、改質装置1aでの水蒸気量を増やすことができる。これにより、水蒸気(水)の分圧を高めることができ、改質装置1aでの炭素析出を抑制できる。
【0048】
一方で、改質装置1b,1cでは、本発明の一実施形態では、水蒸気の追加は行われない。従って、改質装置1bに供給されるガス(改質装置1aからの改質ガス及びメタン含有ガスを含む)のS/Cは例えば2程度、改質装置1cに供給されるガス(改質装置1a,1bからの改質ガス及びメタン含有ガスを含む)のS/Cは例えば1.5程度である。ただし、メタン含有ガスに水分が含まれない場合には、上記の追加水蒸気供給系統13により供給された水蒸気であって改質装置1aから排出された未反応の水蒸気により、S/Cが決定される。そのため、S/Cは、上記の値よりも小さくなる。
【0049】
そして、上記のように、3つの改質装置1a,1b,1cに分散させてメタン含有ガスを供給し、1段目のみに水蒸気を追加供給することで、1段目は高S/C(例えばS/C=3)とし、全体システムとしては、S/Cを低下させることができる(例えばS/C=2)。そのため、上記のように、メタン含有ガスのS/Cを低くしつつ、改質装置1aに対してのみ水蒸気を供給することで、システム全体のS/Cを2.5以下にできる。これにより、炭素析出を抑制し、かつ、水蒸気量を削減できる。
【0050】
ここで、各改質装置1での炭素析出は、主として、以下の3つの式(1)~(3)により進行すると考えられる。
【0051】
CH→C(固体)+2H ・・・・式(1)
2CO→C(固体)+CO ・・・・式(2)
CO+H→C(固体)+HO ・・・・式(3)
【0052】
そのため、水蒸気(水)の分圧を高めることで、式(3)の逆反応を促して、炭素析出を抑制できる。
【0053】
一方で、2段目である改質装置1bに対しては、水蒸気を追加的に供給してもよいが、上記の例では追加的な水蒸気供給は行われない。これは、1段目の改質装置1aにおいて生成した改質ガスが改質装置1bに供給されるため、水蒸気量が少なくても炭素析出が抑制されるためである。即ち、詳細は後記するが、改質装置1bでは水素が多いため、上記の式(1)の正反応が進行しにくく、これにより、炭素析出が抑制される。
【0054】
なお、水素が多いため、上記の式(3)の正反応が進行する可能性もある。しかし、改質装置1bにはメタン含有ガスに含まれる水蒸気が供給されるため、水蒸気の分圧が高くなっている。そのため、式(3)の正反応は進行しにくく、式(3)の正反応に由来する炭素析出は抑制される。
【0055】
そして、3段目である(改質ガス流れで最下流)改質装置1cに対しても、水蒸気を追加的に供給してもよいが、上記の例では追加的な水蒸気供給は行われない。これは、3段目の改質装置1cには1段目の改質装置1a及び2段目の改質装置1bからの改質ガスが供給されるため、水素の分圧が他の改質装置1と比べて最も高くなっているためである。そのため、3段目の改質装置1cに対しても水蒸気を追加供給せずとも、炭素析出を抑制できる。
【0056】
なお、改質装置1cには、1段目の改質装置1a及び2段目の改質装置1bでの改質により生成した一酸化炭素が供給されるため、改質装置1a,1bと比べて一酸化炭素の分圧が高くなる。そのため、上記の式(2)の正反応が進行する可能性もある。しかし、改質装置1cにはメタン含有ガスに含まれる二酸化炭素が供給されるため、二酸化炭素の分圧が高くなっている。そのため、式(2)の正反応は進行しにくく、式(2)の正反応に由来する炭素析出は抑制される。
【0057】
これらの点について、本発明者らは、炭素析出の可能性を表す指標を導入し、その指標に基づく炭素析出の可能性について検討を行った。
【0058】
改質装置1での炭素析出は、上記のように、上記の式(1)~(3)により進行すると考えられる。そして、式(1)の平衡定数K、式(2)の平衡定数K、式(3)の平衡定数Kは、それぞれ以下のとおりである。なお、Tは絶対温度(K)を表す。なお、炭素析出の可能性を判断するに際して上記式(1)~(3)以外の反応を考慮する場合には、例えば、触媒手帳(ズードケミー触媒社、2001年発行)に記載の平衡定数を参照し、その平衡定数の数値に合致するように調整した式を導出することで、上記式(1)~(3)以外の反応を考慮した式を得ることができる。
【0059】
=exp{(-16520+12.25TlogT-15.62T)/(1.9872T)}
=exp{(40800-41.7T)/(1.9872T)}
=exp{(30550-4.48TlogT-18.74T)/(1.9872T)}
【0060】
上記式(1)~(3)に示すように、正反応が進めば、固体の炭素が析出する。そこで、改質装置において炭素が析出する可能性を判断するため、本明細書では一例として、平衡的に固体の炭素が生成するかの指標であるカーボン活性の大きさについて検討した。カーボン活性は、上記式(1)~(3)毎に決定される値であり、以下の式(4)~(6)により計算される。なお、Acは式(1)のカーボン活性、Acは式(2)のカーボン活性、Acは式(3)のカーボン活性を表し、K、K、Kは、上記の平衡定数を表し、Pは、Pの文字の右下に添えられている気体の分圧を表す。
【0061】
Ac=K×{(PCH4)/(PH2 )} ・・・式(4)
Ac=K×{(PCO )/(PCO2)} ・・・式(5)
Ac=K×{(PCO×PH2)/(PH2O)} ・・・式(6)
【0062】
カーボン活性Ac、Ac、Ac(以下、これらを区別せずにいうときは単に「カーボン活性」又は「カーボン活性Ac」という)が1以上であると、上記式(1)~(3)の正反応が進行し易くなる。このため、固体の炭素が析出し易くなる。一方で、カーボン活性が1未満であると、上記式(1)~(3)の逆反応が進行し易くなる。このため、固体の炭素が析出しにくくなる。そこで、改質装置1毎に上記のカーボン活性を算出することで、改質装置1での炭素析出の可能性を判断できる。
【0063】
なお、改質装置1毎に炭素析出の可能性を判断できれば、上記のカーボン活性(名称の異同を問わない)のほか、他の任意の指標を使用することもできる。
【0064】
図2は、反応管1a1、反応管1b1及び反応管1c1の中心付近((a)、(c)及び(e))及び管壁付近((b)、(d)及び(f))において生じるそれぞれの反応について、改質ガス流れの最上流の改質装置1aの入口部11rからの距離(触媒層長さ)に対するカーボン活性Ac,Ac,Acを示すグラフである。ただし、便宜上、改質ガス排気系統12a,12bの長さが考慮していない。(a)及び(b)は上記(1)におけるカーボン活性Ac、(c)及び(d)は上記(2)におけるカーボン活性Ac、(e)及び(f)は上記(3)におけるカーボン活性Acを示す。
【0065】
また、各グラフにおいて、実線で示すグラフは上記改質システム100における反応(実施例)である。従って、改質装置1aに供給されるガス(メタン含有ガス(S/C=1.5)及び追加水蒸気を含む)のS/Cは3であり、改質装置1b,1cに供給されるメタン含有ガスのS/Cは1.5である。また、改質システム100へ供給されるガス全体のS/Cは2.0となり、CO/CH(モル比)=0.6に設定している。一方で、破線で示すグラフは、改質装置1a,1b,1cの合計容積を有する1つの改質装置1にS/C=2、CO/CH(モル比)=0.6のメタン含有ガスを流したときの反応(比較例)である。二酸化炭素がメタン含有ガスに含まれることで、上記式(2)の逆反応が進み、炭素析出が抑制される。
【0066】
図2(a)(b)に示すように、実施例(図2(a)の実線)では、ガスの合流部である改質装置1aと改質装置1bとの境、及び、改質装置1bと改質装置1cとの境において、ガス濃度が変化し、各組成の分圧が変化し、一時的にカーボン活性Acが上昇する。例えば、上記式(1)の反応(CH→C(固体)+2H)に関しては、改質装置1b,1cの入口部11s,11tにおいてメタン濃度が上昇し、水素濃度が低下することで、PCH4/(PH2 )の値が増加し、一時的にカーボン活性Acは上昇する。しかし、カーボン活性Acの値は全域で1未満であり、炭素の析出が抑制されている。
【0067】
一方で、比較例としては、S/C=2、CO/CH=0.6とすると、例えば、改質装置1aと改質装置1bとの境において、カーボン活性Acは1以上である(図2(b)の破線)。そのため、例えば改質装置1aにおいて、炭素が析出しやすい状況となっている。さらに、例えば、改質装置1bと改質装置1cとの境においても、カーボン活性Acは1以上である(図2(b)の破線)。そのため、例えば改質装置1bにおいても、炭素が析出しやすい状況となっている。
【0068】
なお、改質装置1aの入口部11rからの距離が短い部分ではカーボン活性Acの値が1を超えている。ただし、この部分ではメタン含有ガスは供給直後であり、改質装置1aの温度は比較的低い。そのため、反応速度が小さいことと、上記式(3)のHO分圧が大きいことによる炭素析出抑制効果により、カーボン活性Acの大きさによらず炭素は析出しにくい。
【0069】
また、改質装置1aから出た改質ガスが改質装置1bに入ると、カーボン活性Acは上昇する。しかし、この場合であっても、カーボン活性Acは1を超えず、炭素析出が抑制される。改質装置1bから出た改質ガスが改質装置1cに入った場合においても同様であり、カーボン活性Acは1を超えず、炭素析出が抑制される。
【0070】
さらに、上記のように、反応管1a1,1b1,1c1には、外部から熱が供給される。そのため、管壁付近では管の中心付近と比べて温度が高く、上記(1)の正反応が進行し易い。しかし、図2(b)に示すように、この場合であっても、カーボン活性Acは1を超えないため、炭素析出が抑制される。
【0071】
また、図2(c)(d)に示すように、改質装置1aの入口部11rからの距離が長くなるにつれてカーボン活性が上昇し、炭素析出の可能性が高まる。しかし、この場合においても、カーボン活性が1を超えないため、反応管1a1,1b1,1c1の中心(図2(c))及び管壁(図2(d))のいずれにおいても、式(2)の正反応の起因する炭素析出が抑制される。
【0072】
さらに、図2(e)(f)に示すように、改質装置1aの入口部11rからの距離が長くなるにつれてカーボン活性が上昇し、炭素析出の可能性が高まる。しかし、この場合においても、カーボン活性が1を超えないため、反応管1a1,1b1,1c1の中心(図2(e))及び管壁(図2(f))のいずれにおいても、式(3)の正反応の起因する炭素析出が抑制される。
【0073】
上記のように、改質システム100では、1段目の改質装置1aでは、追加的に供給された水蒸気の存在下、メタン含有ガスを用いた改質が行われる。改質装置1aで生じた改質ガスは、後段の改質装置1bに供給される。そして、改質装置1bでは、改質装置1aから供給された改質ガスの存在下、供給源10から供給されたメタン含有ガスを用いた改質が行われる。さらに後段の改質装置1cにおいても同様である。従って、改質装置1b,1cに対して水蒸気を追加的に供給しなくても、改質装置1b,1cでの炭素析出を抑制できる。
【0074】
このような改質システム100によれば、追加水蒸気供給系統13により改質装置1aに水蒸気を追加的に供給することで、改質装置1aでの炭素析出を抑制しつつ、改質システム100の全体として水蒸気量を削減できる。ちなみに、実線で示す改質システム100へ供給されるガス全体のS/Cは2.0であり、比較例の3.2よりも低い。また、改質装置1bには、改質装置1aで生成した改質ガス中の水素と未反応の水蒸気及びメタンとが供給される。これにより、水素の分圧を高めてメタンの熱分解を抑制し、改質装置1bでの炭素析出を抑制できる。改質装置1cについても同様である。
【0075】
なお、上記の改質システム100において、さらに、改質装置1bに供給されるメタン含有ガスに水蒸気を追加的に供給するための第2追加水蒸気供給系統(図示しない)が備えられるようにしてもよい。即ち、改質ガス流れで最下流の改質装置1以外(上記の例では改質装置1c以外)に水蒸気を追加的に供給してもよい。
【0076】
このようにすることで、3つ以上の改質装置1を設置した場合に、2つの追加水蒸気供給系統により改質装置1a,1bに水蒸気を追加的に供給することで、改質装置1a,1bでの炭素析出を抑制しつつ、改質システム100の全体として水蒸気量を削減できる。また、最も下流側に配置された改質装置1cには、上流側の改質装置1a,1bの双方で生成した改質ガスが供給される。このため、改質装置1cへの水素供給量を増やすことができ、水蒸気を追加的に供給しなくても、炭素析出を抑制できる。
【0077】
図3は、本発明の第2実施形態に係る改質システム200の系統図である。改質システム200では、上記の改質システム100において、改質装置1での炭素析出の可能性を判断し、その判断に基づいて各改質装置1へのメタン含有ガスの供給量を制御することで、炭素析出の抑制が行われている。
【0078】
改質システム200は、改質装置1へのメタン含有ガスの供給量を調整するための供給量調整装置21を備える。このような供給量調整装置21を備えることで、改質装置1a及び改質装置1bに備えられる改質触媒の経時劣化に伴って触媒性能が改質装置1毎に異なる場合であっても、改質装置1毎にメタン含有ガスの供給量を調整でき、炭素析出を抑制できる。
【0079】
改質システム200は、改質装置1aへのメタン含有ガスの供給量を調整するための供給量調整装置21aと、改質装置1bへのメタン含有ガスの供給量を調整するための供給量調整装置21bと、改質装置1cへのメタン含有ガスの供給量を調整するための供給量調整装置21cと、を備える。供給量調整装置21は例えば開度調整バルブである。そして、供給量調整装置21aの開度調整はモータ21a1の駆動により行われる。また、供給量調整装置21bの開度調整はモータ21b1の駆動により行われる。さらに、供給量調整装置21cの開度調整はモータ21c1の駆動により行われる。モータ21a1,21b1,21c1の駆動制御は、破線で示す電気信号線で接続された演算制御装置50(後記する)により行われる。
【0080】
なお、例えば並列に接続される改質装置1が2つのみの場合等には、一方の改質装置1への供給量を調整するための供給量調整装置を1つのみ設け、当該供給量調整装置により一方の改質装置への供給量を調整することで、他方の改質装置への供給量を調整するようにしてもよい。
【0081】
改質システム200は、改質装置1に供給されるガス(メタン含有ガス及び水蒸気を含む)の状態(ガス組成、温度、圧力等を含む)に関する情報を取得するためのセンサ22を備える。具体的には、改質システム200は、改質装置1aに供給されるガスの情報を取得するためのセンサ22aと、改質装置1bに供給されるガスの情報を取得するためのセンサ22bと、改質装置1cに供給されるガスの情報を取得するためのセンサ22cとを備える。センサ22により取得されたガス情報は、破線で示す電気信号線を通じて、演算制御装置50(後記する)に入力される。
【0082】
さらに、改質システム200は、改質装置1から排気されるガス(改質ガスを含む)の状態(ガス組成、温度、圧力等を含む)に関する情報を取得するためのセンサ23を備える。具体的には、改質システム200は、改質装置1aから排気されるガスの情報を取得するためのセンサ23aと、改質装置1bから排気されるガスの情報を取得するためのセンサ23bと、改質装置1cから排気されるガスの情報を取得するためのセンサ23cとを備える。センサ23により取得されたガス情報は、破線で示す電気信号線を通じて、演算制御装置50(後記する)に入力される。
【0083】
また、改質システム200は、触媒層の温度を検知するための温度センサ31a,31b,31c,32a,32b,32c,33a,33b,33c(以下、これらを纏めて温度センサ31~33という)を備える。温度センサ31~33により取得された温度の情報は、図3において破線矢印で示す電気信号線を通じて、演算制御装置50(後記する)に入力される。
【0084】
改質装置1aは、反応管1a1の触媒層入口温度を測定するための温度センサ31aと、反応管1a1の触媒層軸方向中間温度を測定するための温度センサ31bと、反応管1a1の触媒層出口温度を測定するための温度センサ31cとを備える。これらの温度センサ31a,31b,31cは、いずれも、反応管1a1の管中心付近(上記図2(a)(c)(e)での測定位置と同じ)での触媒温度を測定するようになっている。
【0085】
さらに、改質装置1bは、反応管1b1の触媒層入口温度を測定するための温度センサ32aと、反応管1b1の触媒層軸方向中間温度を測定するための温度センサ32bと、反応管1b1の触媒層出口温度を測定するための温度センサ32cとを備える。これらの温度センサ32a,32b,32cは、いずれも、反応管1b1の管中心付近(上記図2(a)(c)(e)での測定位置と同じ)での触媒温度を測定するようになっている。
【0086】
そして、改質装置1cは、反応管1c1の触媒層入口温度を測定するための温度センサ33aと、反応管1c1の触媒層軸方向中間温度を測定するための温度センサ33bと、反応管1c1の触媒層出口温度を測定するための温度センサ33cとを備える。これらの温度センサ33a,33b,33cは、いずれも、反応管1c1の管中心付近(上記図2(a)(c)(e)での測定位置と同じ)での触媒温度を測定するようになっている。
【0087】
改質システム200は、演算制御装置50(演算装置)を備える。演算制御装置50は、情報取得部51と、判断部52と、制御部53とを備える。これらのうち、情報取得部51は、センサ22,23によって取得されたガス情報、及び、温度センサ31~33によって取得された温度を演算制御装置50が取得するためのものである。
【0088】
また、判断部52は、改質装置1に供給されるガスの情報、改質装置1から排気されるガスの情報、及び、改質に使用される改質触媒の温度(触媒層の温度)の情報に基づいて、改質装置1において炭素が析出する可能性(炭素析出の可能性)を判断するためのものである。ここでいう炭素析出の可能性は、上記の各情報に基づいて決定される数値化された指標である。具体的には、炭素析出の可能性は、例えば上記のカーボン活性により表すことができる。
【0089】
さらに、制御部53は、炭素析出の可能性が予め定められた閾値よりも高いと判断された場合に供給量調整装置21を制御するためのものである。ここでいう閾値は、例えば実験、試運転、理論式に基づく計算等により予め決定された値である。閾値は、炭素析出の可能性が例えばカーボン活性である場合には、例えば1である。
【0090】
なお、演算制御装置50は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、I/F(InterFace)、制御回路等を備え、ROMに格納されている所定の制御プログラムがCPUによって実行されることにより具現化される。
【0091】
図4は、図3に示す改質システム200で行われる制御を示すフローチャートである。この制御は、上記の図3に示す演算制御装置50によって行われる。そのため、図4の説明は、上記の図3を併せて参照しながら行う。
【0092】
まず、情報取得部51は、センサ22,23により、改質装置1に供給されるガスの情報、及び、改質装置1から排気されるガスの情報を取得する(ステップS1)。さらに、情報取得部51は、温度センサ31~33により、反応管1a1,1b1,1c1の改質触媒の温度(触媒層の温度)の情報を取得する(ステップS1)。そして、判断部52は、取得された各情報に基づいて、改質装置1ごとに炭素析出の可能性を表す指標を決定する(ステップS2)。
【0093】
具体的には、判断部52は、まず、改質装置1毎のカーボン活性を算出する。即ち、判断部52は、改質触媒の温度に基づき、式(1)の平衡定数K、式(2)の平衡定数K、式(3)の平衡定数Kを算出する。これらの算出は、温度の測定部位(上記の例では合計9か所)毎に行われる。次いで、判断部52は、算出された平衡定数K、K、Kと、各測定部位の温度と、センサ23により測定される入口条件(ガス組成、温度、圧力等)とに基づき、反応速度解析を行う。この反応速度解析により、温度の各測定部位におけるガス組成を算出できる。そして、判断部52は、ガス組成から各成分の分圧を決定し、決定された分圧と、上記の平衡定数K、K、Kとを用いて、上記の式(4)~(6)に沿ってカーボン活性Ac、Ac、Acを算出する。
【0094】
そして、判断部52は、算出されたカーボン活性Ac、Ac、Acを予め定められた閾値(ここでは例えば1)とそれぞれ比較し、改質装置1の温度測定部位毎に、炭素析出の可能性を判断する(ステップS3)。1以上となるカーボン活性を含む改質装置1は炭素析出の可能性が高いと判断され、1未満となるカーボン活性を含む改質装置1は炭素析出の可能性が低いと判断される。
【0095】
制御部53は、炭素析出の可能性が低いと判断された改質装置1については、流量調整を行わず、引き続きガス情報の取得が行われる(ステップS3のNO)。一方で、炭素析出の可能性が高いと判断された改質装置1については(ステップ3のYES)、その改質装置1に接続される供給量調整装置21を調整して、メタン含有ガスの供給量を調整する(ステップS4)。具体的には、1を超えたカーボン活性を含む改質装置1について、カーボン活性が1未満となるようにメタン含有ガスの供給量が調整される。
【0096】
例えば、通常、水蒸気量を多くするか又はメタン量を少なくすれば(双方でもよい)、炭素析出が抑制される。そこで、例えば改質装置1aでは、追加水蒸気供給系統13による水蒸気量を多くしたり、メタン含有ガスの供給量を減らしたりすることができる。また、例えば、改質装置1b,1cでは、メタン含有ガスの供給量を少なくしてメタンの供給量を抑制することで、水蒸気に対するメタンの量を相対的に減らすことができる。これにより、改質装置1b,1cにおいても炭素析出が抑制される。
【0097】
以上の改質システム200によれば、ガスの各情報に基づいて炭素析出の可能性を判断して、その判断に基づいて改質装置1a,1b,1cの少なくとも一方への炭素含有ガスの供給量を制御できる。これにより、改質装置1での炭素析出を十分に抑制できる。
【0098】
図5は、本発明の第3実施形態に係る改質システム300の系統図である。改質システム300は、改質装置1を5つ備えたものである。即ち、改質システム300は、上記の改質装置1a,1b,cに加え、メタン含有ガスの改質により改質ガスを生成させるための改質装置1d,1eを備える。改質装置1dには、改質触媒を収容した反応管1d1が備えられる。改質装置1e(第3改質装置)には、改質触媒を収容した反応管1e1が備えられる。
【0099】
改質システム300では、改質装置1cに接続されるメタン含有ガス供給系統11cは、共有供給系統11fから分岐部11uで分岐して形成される。メタン含有ガス供給系統11cは、改質装置1cの入口部11tに接続される。また、改質装置1dに接続されるメタン含有ガス供給系統11dは、共有供給系統11fから分岐部11vで分岐して形成される。メタン含有ガス供給系統11dは、改質装置1dの入口部11wに接続される。さらに、共有供給系統11fの分岐部11vと改質装置1eの入口部11xとの間には、メタン含有ガス供給系統11e(第3メタン含有ガス供給系統)が形成される。
【0100】
また、改質システム300は、改質装置1cから排気された改質ガスを後段の改質装置1dに供給するための改質ガス排気系統12cと、改質装置1dから排気された改質ガスを後段の改質装置1eに供給するための改質ガス排気系統12d(第2改質ガス排気系統)と、改質装置1eから排気された改質ガスを外部に抜き出すための改質ガス排気系統12eとを備える。
【0101】
改質システム300においても、上記の改質システム100,200と同様に、改質ガス流れの最上流側の改質装置1aに対してのみ、水蒸気が追加的に供給される。そして、他の改質装置1に対しては水蒸気は供給されない。そのため、全ての改質装置1に水蒸気を追加的に供給する場合と比べて、水蒸気量を削減できる。
【0102】
また、改質システム300においても、上記の改質システム100と同様、改質装置1b,1c,1dに供給されるメタン含有ガスのそれぞれに水蒸気を追加的に供給するための第2追加水蒸気供給系統(図示しない)が備えられるようにしてもよい。即ち、改質ガス流れで最下流の改質装置1e以外に水蒸気を追加的に供給してもよい。
【0103】
このようにすることで、上記の改質システム100と同様に、炭素析出を抑制しつつ、改質システム300の全体として水蒸気量を削減できる。
【符号の説明】
【0104】
1,1a,1b,1c,1d,1e 改質装置
1a1,1b1,1c1,1d1,1e1 反応管
10 供給源
11,11a,11b,11c,11d,11e メタン含有ガス供給系統
11f 共有供給系統
11p,11q,11u,11v 分岐部
11r,11s,11t,11w,11x 入口部
12a,12b,12c,12d,12e 改質ガス排気系統
13 追加水蒸気供給系統
21,21a,21b,21c 供給量調整装置
21a1,21b1,21c1 モータ
22,22a,22b,22c,23,23a,23b,23c センサ
31a,31b,31c,32a,32b,32c,33a,33b,33c 温度センサ,
50 演算制御装置
51 情報取得部
52 判断部
53 制御部
100,200,300 改質システム
図1
図2
図3
図4
図5