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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20221109BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H01L21/302 102
H01L21/302 101G
H01L21/304 643A
H01L21/78 S
H01L21/68 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018152758
(22)【出願日】2018-08-14
(65)【公開番号】P2020027900
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山銅 英之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敏行
(72)【発明者】
【氏名】山岸 桂子
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-085925(JP,A)
【文献】特開2007-281051(JP,A)
【文献】特開2008-060220(JP,A)
【文献】特開2000-133639(JP,A)
【文献】特開2015-073028(JP,A)
【文献】国際公開第2009/047900(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/304
H01L 21/301
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にデバイスが形成されたウエーハをプラズマエッチングするウエーハの加工方法であって、
該ウエーハより大径のサブストレートに該ウエーハの一方の面側を固定し、該ウエーハの外側で該サブストレートの外周縁が露出したウエーハユニットを形成するウエーハユニット形成ステップと、
該ウエーハのプラズマエッチングされる被加工面を洗浄するウエーハ洗浄ステップと、
該ウエーハの該被加工面が洗浄された該ウエーハユニットの露出した該サブストレートを、搬送ユニットで保持し、プラズマエッチング装置のエッチングチャンバーに搬入する搬入ステップと、
該ウエーハユニットが搬入された該エッチングチャンバー内のプラズマ化した処理ガスで、該ウエーハの被加工面をプラズマエッチングするプラズマエッチングステップと、
該プラズマエッチングステップを実施後、該ウエーハユニットを該エッチングチャンバーから搬出する搬出ステップと、
を備え
該搬入ステップでは、該搬送ユニットが該ウエーハユニットにおける該サブストレートの該ウエーハの外側で露出した外周縁を保持するウエーハの加工方法。
【請求項2】
該搬出ステップでは、該搬送ユニットが該ウエーハユニットにおける該サブストレートの該ウエーハの外側で露出した外周縁を保持する請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該プラズマエッチングステップは、該処理ガスが該エッチングチャンバーに供給される前にプラズマ化されるリモートプラズマ加工である請求項1又は請求項2に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスが形成されたウエーハをプラズマエッチングにより溝を形成して分割したり、レーザー加工溝の熱影響層をプラズマエッチングにより除去してチップ化した際の抗折強度を向上させたりするウエーハの加工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の加工方法のプラズマエッチングでは、プラズマエッチング用の減圧チャンバーにウエーハを搬入し、プラズマ化したガスによってエッチングを行う。このとき、加工するウエーハの表面に僅かながらも異物が付着していると、プラズマエッチングが正常に行われないため、ウエーハの露出面(表面)を洗浄したりして清浄にしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-37546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウエーハを搬送する際に搬送パッドなどがウエーハの露出面(表面)に接触すると、異物が清浄にした露出面に付着する原因となる。そこで、従来の構成では、ウエーハの露出面と反対側の下面(裏面)を支持してウエーハを搬送し、プラズマエッチング装置のチャックテーブルは、保持面からピンが進退し、ウエーハの下面を支持する搬送パッドからウエーハを受け渡されるような複雑な構造を要していた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、プラズマエッチング装置のチャックテーブルに複雑な構造を要することなく、簡易的な機構でウエーハの露出面への異物の付着を防止できるウエーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、表面にデバイスが形成されたウエーハをプラズマエッチングするウエーハの加工方法であって、該ウエーハより大径のサブストレートに該ウエーハの一方の面側を固定し、該ウエーハの外側で該サブストレートの外周縁が露出したウエーハユニットを形成するウエーハユニット形成ステップと、該ウエーハのプラズマエッチングされる被加工面を洗浄するウエーハ洗浄ステップと、該ウエーハの該被加工面が洗浄された該ウエーハユニットの露出した該サブストレートを、搬送ユニットで保持し、プラズマエッチング装置のエッチングチャンバーに搬入する搬入ステップと、該ウエーハユニットが搬入された該エッチングチャンバー内のプラズマ化した処理ガスで、該ウエーハの被加工面をプラズマエッチングするプラズマエッチングステップと、該プラズマエッチングステップを実施後、該ウエーハユニットを該エッチングチャンバーから搬出する搬出ステップと、を備え、該搬入ステップでは、該搬送ユニットが該ウエーハユニットにおける該サブストレートの該ウエーハの外側で露出した外周縁を保持するものである。
また、この構成において、該搬出ステップでは、該搬送ユニットが該ウエーハユニットにおける該サブストレートの該ウエーハの外側で露出した外周縁を保持してもよい。
【0008】
この構成によれば、ウエーハを大径のサブストレートに固定し、ウエーハの外周で露出したサブストレートを保持して搬送することで、チャックテーブルの保持面に進退ピンを設置する必要もなく、簡易的な機構でウエーハの露出面に異物を付着させることなく加工することができる。
【0009】
また、この構成において、該プラズマエッチングステップは、該処理ガスが該エッチングチャンバーに供給される前にプラズマ化されるリモートプラズマ加工を実施するステップであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明のウエーハの加工方法では、ウエーハを大径のサブストレートに固定し、ウエーハの外周で露出したサブストレートを保持して搬送することで、チャックテーブルの保持面に進退ピンを設置する必要もなく、簡易的な機構でウエーハの露出面に異物を付着させることなく加工することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の加工対象であるウエーハの構成例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、ウエーハユニットの構成例を示す斜視図である。
図4図4は、洗浄ユニットの構成例を示す側面図である。
図5図5は、搬送装置とプラズマエッチング装置との構成例を示す図である。
図6図6は、搬送装置の搬送ユニットを示す部分拡大図である。
図7図7は、ウエーハユニットが搬入されたプラズマエッチング装置と搬送装置との構成例を示す図である。
図8図8は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の手順を示すフローチャートである。
図9図9は、改質層を形成するために用いられるレーザー加工装置の構成例を示す側面図である。
図10図10は、実施形態3にウエーハの加工方法の加工対象であるウエーハの構成例を示す斜視図である。
図11図11は、レーザー加工溝を形成するために用いられるレーザー加工装置の構成例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
[実施形態1]
実施形態1に係るウエーハの加工方法について説明する。図1は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の加工対象であるウエーハの構成例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係るウエーハの加工方法の手順を示すフローチャートである。加工対象であるウエーハ2は、図2に示すように、例えばシリコンを母材とする円板状の半導体ウエーハや、サファイア、SiC(炭化ケイ素)などを母材とする光デバイスウエーハである。ウエーハ2の表面2Aには複数の分割予定ライン3が格子状に形成され、複数の分割予定ライン3によって区画された複数の領域にそれぞれIC、LSI等のデバイス4が形成されている。
【0014】
実施形態1に係るウエーハの加工方法は、ウエーハ2が搬入されたプラズマエッチング装置のエッチングチャンバーにプラズマ化した処理ガスを供給し、該ウエーハ2の裏面(被加工面)2Bをプラズマエッチングするものであり、プラズマエッチングによりウエーハ2の裏面2Bを除去したり、ゲッタリング層として機能する歪み層を形成したりする。例えば、形成した歪み層は、ウエーハ2に含有される銅(Cu)などの金属を主とする不純物を捕捉して、金属汚染によるデバイス4の破壊を防止する。実施形態1のウエーハの加工方法は、図2に示すように、ウエーハユニット形成ステップST11と、ウエーハ洗浄ステップST12と、搬入ステップST13と、プラズマエッチングステップST14と、搬出ステップST15とを備える。次に、各ステップについて説明する。
【0015】
(ウエーハユニット形成ステップST11)
図3は、ウエーハユニットの構成例を示す斜視図である。まず、図3に示すウエーハユニット6を形成する。ウエーハユニット6は、上記したウエーハ2と、このウエーハ2を支持するサブストレート7と、これらウエーハ2の表面(一方の面)2A側をサブストレート7に固定する接着剤8とを備える。サブストレート7は、ウエーハ2よりも大きい径を有する円形の板状体であり、プラズマエッチングの耐性を有する材料(例えばガラスやセラミックス)で形成されている。また、本実施形態では、サブストレート7は紫外線透過性を有している。サブストレート7は、ウエーハ2よりも大きいものであれば円形に限るものではなく多角形であってもよい。
【0016】
接着剤8は、紫外線の照射によって粘着力が低下するものである。接着剤8が表面2A側に塗られたウエーハ2は、該表面2Aを下方に向けてサブストレート7上の中央部に積層される。これにより、ウエーハ2の外側でサブストレート7の外周縁7Aが露出したウエーハユニット6が形成される。このウエーハユニット6では、ウエーハ2の裏面2Bが露出しており、この裏面2Bが被加工面となる。
【0017】
(ウエーハ洗浄ステップST12)
次に、図4に示す洗浄ユニット10を用いて、ウエーハ2の裏面2Bを洗浄する。図4は、洗浄ユニットの構成例を示す側面図である。洗浄ユニット10は、図4に示すように、ウエーハユニット6を保持する保持テーブル11と、保持テーブル11の上方に配置されて該保持テーブル11に保持されたウエーハユニット6のウエーハ2の裏面2Bに洗浄液(例えば水や薬液)13を供給する洗浄液ノズル12とを備えている。
【0018】
保持テーブル11は、円板状に形成されて上面の中央部にポーラスセラミック等から形成された保持面11Aを備え、この保持面11Aが図示しない吸引手段に連通されている。これにより、保持テーブル11は、保持面11Aに載置されたウエーハユニット6を吸引することで該ウエーハユニット6を保持する。また、保持テーブル11は、鉛直方向と平行な軸心11Bの回りに回転自在に構成される。
【0019】
洗浄液ノズル12は、ノズル開口12Aが保持テーブル11の中央上方に位置する作動位置と、保持テーブル11から外れた退避位置とに移動自在に構成されており、洗浄液供給源(不図示)に接続されている。作動位置に位置付けられたノズル開口12Aから洗浄液13をウエーハ2に供給しつつ、保持テーブル11を回転させることにより、供給された洗浄液13はウエーハ2の裏面2B上を縁部に向けて流れる。このため、被加工面であるウエーハ2の裏面2Bが洗浄される。なお、洗浄ユニット10は、保持テーブル11の周囲に洗浄後の洗浄液を受ける水受け部(不図示)を備えた構成とするのが好ましい。
【0020】
(搬入ステップST13)
次に、搬送装置20を用いて、洗浄後のウエーハユニット6をプラズマエッチング装置30に搬入する。図5は、搬送装置とプラズマエッチング装置との構成例を示す図である。図6は、搬送装置の搬送ユニットを示す部分拡大図である。図7は、ウエーハユニットが搬入されたプラズマエッチング装置と搬送装置との構成例を示す図である。
【0021】
搬送装置20は、図5に示すように、載置テーブル21と、この載置テーブル21に載せられたウエーハユニット6を保持して搬送する搬送ユニット22と、この搬送ユニット22を上下方向に移動させる上下移動機構23と、搬送ユニット22を水平方向に移動させる水平移動機構24とを備える。載置テーブル21は、上面が載置面となる平坦なテーブルである。
【0022】
搬送ユニット22は、図6に示すように、吸引アーム220と、吸引アーム220に連結される支持アーム221と、吸引アーム220の端部に下方に向けて取り付けられた吸引パッド(搬送パッド)222とを備える。吸引パッド222には、吸引路223を介して開閉弁224及び吸引ポンプ(吸引源)225とが接続されている。吸引ポンプ225を駆動させると共に開閉弁224を開放することにより、吸引パッド222は、ウエーハユニット6におけるサブストレート7の露出した外周縁7Aを吸引してウエーハユニット6を保持する。上下移動機構23は、搬送ユニット22の支持アーム221に連結されて、搬送ユニット22を上下方向に移動させる。水平移動機構24は、上下移動機構23の状態に連結されて、搬送ユニット22を上下移動機構23と共に水平方向に移動させる。
【0023】
一方、プラズマエッチング装置30は、図5に示すように、ウエーハユニット6を保持する静電吸着テーブル31と、ガスを噴出するガス供給ヘッド32と、静電吸着テーブル31及びガス供給ヘッド32を内部に収容したエッチングチャンバー33とを備えている。本実施形態では、プラズマエッチング装置30は、プラズマ化したエッチングガスや不活性ガスをガス供給ヘッド32からエッチングチャンバー33内に導入するリモートプラズマ方式のプラズマエッチング装置である。
【0024】
静電吸着テーブル31は、例えば、アルミナ等のセラミック又は酸化チタン等の誘電体で形成された保持面が平坦なテーブルである。静電吸着テーブル31の内部には、電圧が印加されることにより電荷を発生する金属板等で構成される電極31Aが配設されており、この電極31Aは、電圧印加ユニット34に接続されている。電圧印加ユニット34が、電極31Aに直流電圧を印加することで、電荷の分極による静電吸着力を静電吸着テーブル31の保持面とウエーハユニット6(図7)との間に発生させてウエーハユニット6を保持する。
【0025】
ガス供給ヘッド32は、エッチングチャンバー33の上部に軸受け35を介して昇降自在に配設されている。ガス供給ヘッド32の内部には、ガス供給路32Aが設けられており、このガス供給路32Aは、静電吸着テーブル31と対向してガス供給ヘッド32の下面に開口する複数のガス吐出口32Bと連通している。また、ガス供給路32Aの上流側には、エッチングチャンバー33の外部に設けられたプラズマ発生部36とガス供給源37とが直列に接続されている。
【0026】
ガス供給源37は、例えば、複数のエッチングガスと不活性ガスとをそれぞれ別個に蓄えており、複数のエッチングガスや不活性ガスを所望の流量比で混合してプラズマ発生部36に導く。プラズマ発生部36は、混合されたエッチングガスや不活性ガス(混合ガス)に高周波電圧を加えるための電極と、この電極に高周波電源とを備えて構成され、該混合ガスに高周波電圧を作用させることで、混合ガス中のエッチングガスや不活性ガスをプラズマ化(代表的には、ラジカル化又はイオン化)できる。なお、ガス供給源37の数やガスの種類は、被加工物(ウエーハ2)の種類等に応じて任意に変更できる。
【0027】
エッチングチャンバー33の側壁には、ウエーハユニット6を搬送(搬入または搬出)するための開口33Aと、この開口33Aを開閉するためのゲート33Bとが設けられている。また、エッチングチャンバー33の下部には排気管38が接続されており、この排気管38には排気装置39が接続されている。この排気装置39を作動させることにより、エッチングチャンバー33の内部を所定の真空度まで減圧することができる。また、プラズマエッチング装置30は、不図示の制御部を備えており、各ガスの流量比や吐出量、高周波電等の条件が制御される。
【0028】
この搬入ステップST13では、プラズマエッチング装置30は、エッチングチャンバー33のゲート33Bを移動して開口33Aを開放し、搬送装置20は、搬送ユニット22でウエーハユニット6を保持した状態で、上下移動機構23及び水平移動機構24を駆動させてウエーハユニット6を載置テーブル21から静電吸着テーブル31まで搬入する。本実施形態では、搬送ユニット22は、ウエーハユニット6におけるサブストレート7の露出した外周縁7Aを吸引パッド222で吸引して保持するため、ウエーハ2の裏面2Bに吸引パッド222が接触することがなく、清浄したウエーハ2の裏面2Bに吸引パッド222を介して異物が付着ことを防止できる。
【0029】
(プラズマエッチングステップST14)
プラズマエッチング加工を実施する場合、図7に示すように、ウエーハ2の裏面2B側を上に向けて、ウエーハユニット6を静電吸着テーブル31上に載置する。そして、電圧印加ユニット34のスイッチ34Aを閉じることにより、静電吸着テーブル31の電極31Aに直流電圧を印加して、静電吸着テーブル31の保持面とウエーハユニット6との間に誘電分極現象を発生させる。これにより、静電吸着テーブル31の保持面とウエーハユニット6との間に静電吸着力が発生するため、ウエーハユニット6が静電吸着テーブル31上で吸着保持される。
【0030】
次に、エッチングチャンバー33を密閉空間とした後、排気装置39を駆動することによってエッチングチャンバー33内を排気して所定の圧力まで減圧する。そして、ガス供給源37に蓄えられたエッチングガスや不活性ガスを所望の流量比で混合してプラズマ発生部36に導く。このプラズマ発生部36は、混合されたエッチングガスや不活性ガスに高周波電圧を加えることで、これらエッチングガスや不活性ガスはプラズマ化(代表的には、ラジカル化又はイオン化)される。プラズマ化されたエッチングガスや不活性ガスは、ガス供給路32Aを通じてガス吐出口32Bからウエーハ2に向けて吐出されることにより、ウエーハ2の裏面2B(被加工面)の全体に供給されて該裏面2Bをプラズマエッチング加工する。
【0031】
本実施形態では、プラズマ化した不活性ガスをウエーハ2に供給することにより、ウエーハ2の裏面2Bにゲッタリング層として機能する歪み層が形成される。プラズマエッチング装置30は、プラズマ化した不活性ガスをウエーハ2の裏面2Bに衝突させて、裏面2B全体の表層に結晶欠陥、歪みを付与することで歪み層を形成する。歪み層は、ウエーハ2に含有される銅(Cu)などの金属を主とする不純物を捕捉して、デバイス4の不純物による金属汚染を抑制する所謂ゲッタリング層としての機能を発揮する。また、歪み層は、機械的加工により形成される歪みより、プラズマエッチングで形成されるため、圧倒的に薄く、抗折強度への影響が小さい。また、本実施形態では、リモートプラズマ方式のプラズマエッチング装置30を用いるため、プラズマ化した不活性ガス中のイオンがガス供給路32Aの内面に衝突してエッチングチャンバー33内に到達することを抑制できたり、エッチングチャンバー33内のラジカルの濃度を高くできるため、より効率的なプラズマエッチング加工を実現できる。
【0032】
(搬出ステップST15)
プラズマエッチング加工が終了すると排気装置39を停止するとともに、エッチングチャンバー33内に所定のガス(空気)を流入させてエッチングチャンバー33内を大気圧とする。この状態でエッチングチャンバー33のゲート33Bを移動して開口33Aを開放する。搬送装置20は、上下移動機構23及び水平移動機構24を駆動させて搬送ユニット22をエッチングチャンバー33内に進入させる。そして、搬送ユニット22は、ウエーハユニット6吸引して保持した状態で上下移動機構23及び水平移動機構24を駆動させてウエーハユニット6を静電吸着テーブル31から載置テーブル21まで搬出する。本実施形態では、搬入ステップST13と同様に、搬送ユニット22は、ウエーハユニット6におけるサブストレート7の露出した外周縁7Aを吸引パッド222で吸引して保持するため、ウエーハ2の裏面2Bに吸引パッド222が接触することがなく、清浄したウエーハ2の裏面2Bに吸引パッド222を介して異物が付着ことを防止できる。
【0033】
本実施形態では、プラズマエッチング加工によって、ウエーハ2の裏面2Bにゲッタリング層として機能する歪み層を形成しているため、この歪み層が形成されたウエーハ2(ウエーハユニット6)に対して、更に加工(例えば分割予定ライン3に沿った切削など)を実施することにより、ゲッタリング層を備えたデバイスチップに分割することができる。
【0034】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係るウエーハの加工方法について説明する。図8は、実施形態2に係るウエーハの加工方法の手順を示すフローチャートである。実施形態2では、ウエーハユニット形成ステップST11の前に、ウエーハ2に対して前加工ステップST10を実施する点で異なっている。ウエーハ2及びウエーハユニット6の構成は実施形態1と同一である。また、他のステップの手順についても実施形態1と同様である。
【0035】
(前加工ステップST10)
実施形態2では、前加工ステップST10として、ウエーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線を分割予定ライン3に沿って照射することにより、ウエーハ2の内部に改質層9を形成する。図9は、改質層を形成するために用いられるレーザー加工装置の構成例を示す側面図である。ウエーハユニット6のウエーハ2の内部には、図9に示すレーザー加工装置40を用いて、分割予定ライン3に沿った改質層9が形成される。改質層とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった変質領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。
【0036】
レーザー加工装置40は、ウエーハ2を保持する保持テーブル41と、レーザー光線42Aをウエーハ2に向けて照射する照射ヘッド42と、照射ヘッド42に隣接して配置されて保持テーブル41上のウエーハ2を撮像する撮像部(不図示)とを備える。ウエーハ2は、表面2Aに保護テープ15が貼着された状態で該保護テープ15を介して保持テーブル41に保持される。このため、ウエーハ2の裏面2B(被加工面)に向けてレーザー光線42Aが照射される。
【0037】
照射ヘッド42は、レーザー光線を発振する発振器(不図示)と、発振されたレーザー光線を集光する集光器(不図示)とを備える。発振器は、ウエーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線を発振する。なお、発振器は、ウエーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線だけでなく、ウエーハ2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を発振できるように構成されていてもよい。
【0038】
撮像部は、照射ヘッド42に対するウエーハ2の配置状況及びウエーハ2への加工状況などを撮像するカメラである。撮像部は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、ウエーハ2に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されている。
【0039】
図9に示すように、保持テーブル41上にウエーハ2を保持してウエーハ2の裏面2Bを露出する。撮像部は、ウエーハ2の裏面2B側から赤外線を透過して分割予定ライン3を撮像する。これによりレーザー光線の照射位置のアライメントが実行される。ウエーハ2の分割予定ライン3を検出し、照射ヘッド42のアライメントを実行すると、所定の分割予定ライン3の一端(図9の右端)を照射ヘッド42の直下に位置付ける。そして、照射ヘッド42の集光器からウエーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線42Aを照射しつつ、保持テーブル41と照射ヘッド42とを相対的に移動させる。照射ヘッド42の照射位置が分割予定ライン3の他端(図9の左端)の位置に達したら、レーザー光線42Aの照射を停止するとともに保持テーブル41の移動を停止する。実施形態2では、分割予定ライン3に対して、レーザー光線42Aは、集光点をウエーハ2の裏面2Bを含んでウエーハ2の厚み方向に異ならせて複数回照射されることが好ましい。この結果、ウエーハ2の内部には、分割予定ライン3に沿って裏面2Bから内部に向けて連続した改質層9が形成される。なお、この改質層9は、裏面2Bから表面2Aに至ってもよい。すべての分割予定ライン3に沿って改質層9が形成されると、前加工ステップST10を終了する。
【0040】
そして、上記したウエーハユニット形成ステップST11、ウエーハ洗浄ステップST12、搬入ステップST13を経た後、プラズマエッチングステップST14を実行する。プラズマエッチングステップST14では、図7に示すように、プラズマ化されたエッチングガス及び不活性ガスが、ガス供給路32Aを通じてガス吐出口32Bからウエーハ2に向けて吐出されることにより、ウエーハ2の裏面2B(被加工面)の全体に供給されて該裏面2Bをプラズマエッチング加工する。
【0041】
本実施形態では、プラズマ化されたエッチングガス及び不活性ガスは、ウエーハ2の裏面2Bに露出した改質層9をエッチングして、改質層9に形成された溝の表面を除去しつつ該溝をウエーハ2の表面2Aに向けて進行させる。このため、ウエーハ2は、改質層9に形成された溝の進行によって分割予定ライン3に沿って分割される。
【0042】
この実施形態2においても、搬入ステップST13及び搬出ステップST15において、搬送ユニット22は、ウエーハユニット6におけるサブストレート7の露出した外周縁7Aを吸引パッド222で吸引して保持するため、ウエーハ2の裏面2Bに吸引パッド222が接触することがなく、清浄したウエーハ2の裏面2Bに吸引パッド222を介して異物が付着ことを防止できる。
【0043】
[実施形態3]
図10は、実施形態3にウエーハの加工方法の加工対象であるウエーハの構成例を示す斜視図である。実施形態3では、ウエーハ100は、図10に示すように、例えばシリコン、サファイア、SiC(炭化ケイ素)などを母材とする基板102を有する半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。ウエーハ100は、基板102の表面102Aに機能層105が積層されて、デバイス104が形成されている。このデバイス104が形成されている側をウエーハ100の表面100Aとし、反対側を裏面100Bとする。機能層105は、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low-k膜)により構成されている。この低誘電率絶縁体被膜(Low-k膜)は、プラズマエッチングに対して耐性を有する膜である。
【0044】
デバイス104は、表面102Aの交差する複数の分割予定ライン103で区画された各領域にそれぞれ形成されている。デバイス104を構成する回路は、機能層105により支持されている。また、ウエーハ100は、分割予定ライン103の少なくとも一部において、基板102の表面102A側に図示しない金属膜とTEG(Test Element Group)とのうち少なくとも一方が形成されている。TEGは、デバイス104に発生する設計上や製造上の問題を見つけ出すための評価用の素子である。
【0045】
実施形態3では、実施形態2と同様に、ウエーハユニット形成ステップST11の前に、ウエーハ100に対して前加工ステップST10を実施する点で実施形態1と異なっている。また、上記ウエーハ100を備えたウエーハユニット6は、ウエーハ100の裏面100B側を、接着剤8を介してサブストレート7に配置する点で実施形態1と構成を異にする。すなわち、実施形態3では、ウエーハ100の表面100Aが被加工面となる。他のステップの手順については実施形態1と同様である。
【0046】
(前加工ステップST10)
実施形態3では、前加工ステップST10として、ウエーハ2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を分割予定ライン103に沿って照射することにより、ウエーハ100の表面100Aに存在する機能層105を除去すると共に、分割予定ライン103に沿ってレーザー加工溝108を形成する。図11は、レーザー加工溝を形成するために用いられるレーザー加工装置の構成例を示す側面図である。レーザー加工装置の構成は、発振されるレーザー光線の波長が異なるが、その他は実施形態2のレーザー加工装置とほとんど同一である。
【0047】
図11に示すように、保持テーブル41上に保護テープ15を介して、ウエーハ100を保持してウエーハ100の表面100Aを露出する。撮像部は、ウエーハ100の表面100A側から分割予定ライン103を撮像する。これによりレーザー光線の照射位置のアライメントが実行される。ウエーハ100の分割予定ライン103を検出し、照射ヘッド42のアライメントを実行すると、所定の分割予定ライン3の一端(図11の右端)を照射ヘッド42の直下に位置付ける。そして、照射ヘッド42の集光器からウエーハ100に対して吸収性を有する波長のレーザー光線42Bを照射しつつ、保持テーブル41と照射ヘッド42とを相対的に移動させる。照射ヘッド42の照射位置が分割予定ライン3の他端(図11の左端)の位置に達したら、レーザー光線42Bの照射を停止するとともに保持テーブル41の移動を停止する。実施形態3では、分割予定ライン3に対して、レーザー光線42Bは、集光点をウエーハ100の表面100A(機能層105)に合わせて照射されるため、ウエーハ100の表面100Aには、分割予定ライン103に沿って機能層105が除去されると共に、レーザー加工溝108が形成される。すべての分割予定ライン103に沿ってレーザー加工溝108が形成されると、前加工ステップST10を終了する。
【0048】
ところで、前加工ステップST10として、ウエーハ100に対して吸収性を有する波長のレーザー光線42Bを照射すると、レーザー加工溝108を形成される一方で、レーザー加工溝108にレーザー光線42Bの加熱に伴う熱影響層が生じることがある。この熱影響層は、デバイスチップに分割した際に抗折強度の低下の原因となりうる問題がある。また、レーザー光線42Bの照射によって、機能層105やTEGが除去された際に、これらの除去屑(デブリ)が残存することがある。この除去屑は、洗浄ステップST12によって、ほとんど除去されるが一部が残存して品質の低下を招くことも想定される。
【0049】
このため、上記したウエーハユニット形成ステップST11、ウエーハ洗浄ステップST12、搬入ステップST13を経た後、プラズマエッチングステップST14を実行する。このプラズマエッチングステップST14では、図7に示すように、プラズマ化されたエッチングガス及び不活性ガスが、ガス供給路32Aを通じてガス吐出口32Bからウエーハ100の表面100A(被加工面:図10)の全体に供給されて該表面100Aをプラズマエッチング加工する。
【0050】
本実施形態では、プラズマ化されたエッチングガス及び不活性ガスにより、ウエーハ100の表面100Aに形成されたレーザー加工溝108の熱影響層や、レーザー加工溝108に残存した除去屑をエッチングして除去することができる。このため、デバイスチップに分割した際のデバイスチップの品質の向上と、抗折強度の向上を実現することができる。
【0051】
この実施形態3においても、搬入ステップST13及び搬出ステップST15において、搬送ユニット22は、ウエーハユニット6におけるサブストレート7の露出した外周縁7Aを吸引パッド222で吸引して保持するため、ウエーハ100の表面100Aに吸引パッド222が接触することがなく、清浄したウエーハ100の表面100Aに吸引パッド222を介して異物が付着ことを防止できる。
【0052】
また、前加工ステップS10として、ウエーハ2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を分割予定ライン103に沿って照射(レーザ加工)する前に、水溶性樹脂をウエーハ2の表面2Aに被覆し、レーザー加工で発生するデブリのデバイス104への付着を防止するステップを追加してもよい。この水溶性樹脂の被覆は、ウエーハ洗浄ステップST12において、レーザー加工後にデブリと共に水で洗浄して除去される。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記した各実施形態では、搬入ステップST13及び搬出ステップST15において、搬送ユニット22は、ウエーハユニット6におけるサブストレート7の露出した外周縁7Aを吸引パッド222で吸引して保持する構成としたが、例えば、サブストレート7の露出した外周縁7Aをエッジクランプで把持する構成としてもよい。また、上記した各実施形態では、プラズマ化したエッチングガスや不活性ガスをガス供給ヘッド32からエッチングチャンバー33内に導入するリモートプラズマ方式のプラズマエッチング装置30を用いる構成を説明したが、これに限るものではなく、エッチングチャンバー内でエッチングガスや不活性ガスをプラズマ化するプラズマエッチング装置を用いた構成としても良い。
【符号の説明】
【0054】
2、100 ウエーハ
2A、100A 表面(一方の面、被加工面)
2B、100B 裏面(一方の面、被加工面)
3、103 分割予定ライン
4、104 デバイス
6 ウエーハユニット
7 サブストレート
7A 外周縁
9 改質層
10 洗浄ユニット
11 保持テーブル
12 洗浄液ノズル
20 搬送装置
22 搬送ユニット
220 吸引アーム
222 吸引パッド
30 プラズマエッチング装置
32 ガス供給ヘッド
33 エッチングチャンバー
36 プラズマ発生部
37 ガス供給源
40 レーザー加工装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11