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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】予測システム
(51)【国際特許分類】
   F16D 7/02 20060101AFI20221109BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20221109BHJP
   B64F 5/60 20170101ALI20221109BHJP
【FI】
F16D7/02 E
B64D45/00 A
B64F5/60
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018155113
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2019039560
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】15/683,400
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500107762
【氏名又は名称】ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】エリック ハリントン
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド ジー.ヒル
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル ギャラガー
(72)【発明者】
【氏名】コーリー エム.クランドル-セイバート
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター バーガー
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー マイケル メイヤー
(72)【発明者】
【氏名】アルテミオ,ペレス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ユニヤ エス.ビショップ
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-121658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 7/02
B64D 45/00
B64F 5/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールランプ機構を備えたトルクリミッタであって、前記ボールランプ機構が、第1および第2のプレートと、前記第1および第2のプレートの内側面にそれぞれ設けられた相補的な凹部内に配置可能なボール要素と、を備えた、トルクリミッタと、
前記トルクリミッタの状態を感知するように配置されたセンサと、
前記センサに連結される処理システムであって、前記センサの測定値を処理し、処理された前記測定値を基に、前記トルクリミッタの前記状態が劣化または故障インシデントを示すかどうかを計算し、計算結果を基にアクションを行うべきかどうかを決定するように構成された処理システムと、
を備え
前記処理システムは、前記第1のプレートの前記内側面と前記第2のプレートの前記内側面との間の距離が、第1の閾値を超過するか、または第2の閾値に到達するかに基づいて、それぞれ、前記トルクリミッタの前記状態が前記劣化または故障インシデントを示すことを計算する、予測システム。
【請求項2】
前記トルクリミッタ及び前記センサが取り付けられるハウジングをさらに備え
前記センサは、前記第1のプレートの外側面と、前記センサとの間の距離を感知するように構成され、前記処理システムは、前記劣化または故障インシデントが発生しているときに、その感知した距離から、前記第1のプレートの前記内側面と前記第2のプレートの前記内側面との間の距離を計算するように構成される、請求項1に記載の予測システム。
【請求項3】
前記センサは少なくとも1つ以上の近接センサを備える、請求項1に記載の予測システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つ以上の近接センサは、光学センサ、電磁センサ、ホール効果センサ、線形可変差動変成器(LVDT)センサ、及び容量センサのうちの少なくとも1つ以上を備える、請求項1に記載の予測システム。
【請求項5】
前記処理システムは、コントローラ及び予測的な保守コンピュータのうちの少なくとも1つ以上を備える、請求項1に記載の予測システム。
【請求項6】
前記アクションは保守の手配を備える、請求項1に記載の予測システム。
【請求項7】
入力シャフトが連結される第1のプレートと、出力シャフトが連結される第2のプレートと、前記第1のプレート及び前記第2のプレートの内側面にそれぞれ設けられた相補的な凹部内に配置可能なボール要素と、を備えたボールランプ機構のための予測システムであって、
前記入力シャフト及び前記出力シャフトの長手軸に沿って定義された長さの、前記第1のプレートの前記内側面と前記第2のプレートの前記内側面との間の距離を感知するように配置されたセンサと、
前記センサに連結される処理システムであって、前記センサの測定値を処理し、処理された前記測定値を基に、前記第1のプレートの前記内側面と前記第2のプレートの前記内側面との間の前記距離が劣化または故障インシデントを示すかどうかを計算し、計算結果を基にアクションを行うべきかどうかを決定するように構成された処理システムと、
を備え
前記処理システムは、前記第1のプレートの前記内側面と前記第2のプレートの前記内側面との間の距離が、第1の閾値を超過するか、または第2の閾値に到達するかに基づいて、それぞれ、前記距離が前記劣化または故障インシデントを示すことを計算する、予測システム。
【請求項8】
前記ボールランプ機構及び前記センサが取り付けられるハウジングをさらに備え
前記センサは、前記第1のプレートの外側面と、前記センサとの間の距離を感知するように構成され、前記処理システムは、前記劣化または故障インシデントが発生しているときに、その感知した距離から、前記第1のプレートの内側面と前記第2のプレートの内側面との間の距離を計算するように構成される、請求項に記載の予測システム。
【請求項9】
前記センサは少なくとも1つ以上の近接センサを備える、請求項に記載の予測システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つ以上の近接センサは、光学センサ、電磁センサ、ホール効果センサ、線形可変差動変成器(LVDT)センサ、及び容量センサのうちの少なくとも1つ以上を備える、請求項に記載の予測システム。
【請求項11】
前記処理システムは、コントローラ及び予測的な保守コンピュータのうちの少なくとも1つ以上を備える、請求項に記載の予測システム。
【請求項12】
前記アクションは保守の手配を備える、請求項に記載の予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の説明はトルクリミッタに関し、より詳細には、航空機作動システムの健全性監視に関する。
【背景技術】
【0002】
作動システムの予防保守は、航空会社が業務効率の向上を目指しているため、例えば、航空機技術を含む様々な分野でますます重要になってきている。この目標を達成する方法の1つに、故障が生じる前に故障を予測可能な予測システムがある。現在、オンコンディションサービスでは予定外の修理が発生し、部品及び整備員がすぐには手配できないため、潜在的な遅延が生じている。一方、予測システムにより、作業員は(例えば、部品の入手及び作業可能な整備員の確保によって)修理の手配を事前に行うことができ、これにより、航空機が使用可能な状態に戻るのに必要な時間は削減される。事前の計画により、修理時間より前に部品を発注することができるため、作業員またはサービスセンタの在庫を削減することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、トルクリミッタの健全性を監視する予測システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様によれば、トルクリミッタ、トルクリミッタの状態を感知するように配置されたセンサ、及び処理システムを含む予測システムが提供される。処理システムは、センサに連結され、センサの測定値を処理し、処理された測定値を基に、トルクリミッタの状態が劣化または故障インシデントを示すかどうかを計算し、計算結果を基にアクションを行うべきかどうかを決定するように構成される。
【0005】
追加的または代替的な実施形態によれば、トルクリミッタはボールランプ機構(ball-ramp mechanism)を備える。
【0006】
追加的または代替的な実施形態によれば、トルクリミッタ及びセンサはハウジングに取り付けられる。
【0007】
追加的または代替的な実施形態によれば、センサは少なくとも1つ以上の近接センサを含む。
【0008】
追加的または代替的な実施形態によれば、少なくとも1つ以上の近接センサは、光学センサ、電磁センサ、ホール効果センサ、線形可変差動変成器(LVDT)センサ、及び容量センサのうちの少なくとも1つ以上を含む。
【0009】
追加的または代替的な実施形態によれば、処理システムは、コントローラ及び予測的な保守コンピュータ(prognostic maintenance computer)のうちの少なくとも1つ以上を含む。
【0010】
追加的または代替的な実施形態によれば、処理システムは、トルクリミッタの状態が第1の閾値を超過するか、または第2の閾値に到達するかに基づいて、それぞれ、当該状態が劣化または故障インシデントを示すことを計算する。
【0011】
追加的または代替的な実施形態によれば、アクションは保守の手配を含む。
【0012】
本開示の別の態様によれば、ボールランプ機構と共に使用される予測システムが提供される。ボールランプ機構は、入力シャフトが連結される第1のプレートと、出力シャフトが連結される第2のプレートと、第1のプレート及び第2のプレートの相補的な凹部内に配置可能なボール要素とを含む。予測システムは、入力シャフト及び出力シャフトの長手軸に沿って定義された寸法の、第1のプレートと第2のプレートとの間の距離を感知するように配置されたセンサならびに処理システムを含む。処理システムはセンサに連結され、センサの測定値を処理し、処理された測定値を基に、第1のプレートと第2のプレートとの間の距離が劣化または故障インシデントを示すかどうかを計算し、計算結果を基にアクションを行うべきかどうかを決定するように構成される。
【0013】
追加的または代替的な実施形態によれば、ボールランプ機構及びセンサはハウジングに取り付けられる。
【0014】
追加的または代替的な実施形態によれば、センサは少なくとも1つ以上の近接センサを含む。
【0015】
追加的または代替的な実施形態によれば、少なくとも1つ以上の近接センサは、光学センサ、電磁センサ、ホール効果センサ、線形可変差動変成器(LVDT)センサ、及び容量センサのうちの少なくとも1つ以上を含む。
【0016】
追加的または代替的な実施形態によれば、処理システムは、コントローラ及び予測的な保守コンピュータのうちの少なくとも1つ以上を含む。
【0017】
追加的または代替的な実施形態によれば、処理システムは、第1のプレートと第2のプレートとの間の距離が第1の閾値を超過するか、または第2の閾値に到達するかに基づいて、それぞれ、当該距離が劣化または故障インシデントを示すことを計算する。
【0018】
追加的または代替的な実施形態によれば、アクションは、トルクリミッタの劣化を示すトルクリミッタの状態を基に保守を手配することを含む。
【0019】
本開示のさらに別の態様によれば、トルクリミッタの予測システムの動作方法が提供される。方法は、トルクリミッタの状態を感知することと、トルクリミッタの状態が劣化または故障インシデントを示すかどうかを計算することと、計算結果を基にアクションを行うべきかどうかを決定することとを含む。
【0020】
追加的または代替的な実施形態によれば、トルクリミッタはボールランプ機構を含み、状態はボールランプ機構のプレート間の距離を含む。
【0021】
追加的または代替的な実施形態によれば、計算は、距離が第1の閾値を超過して第2の閾値に到達しないことを計算することと、距離が第1の閾値を超過して第2の閾値に到達しないことを基に、状態が劣化インシデントを示すことを決定することとを含む。
【0022】
追加的または代替的な実施形態によれば、計算は、距離が第2の閾値に到達することを計算することと、距離が第2の閾値に到達することを基に、状態が故障インシデントを示すことを決定することとを含む。
【0023】
追加的または代替的な実施形態によれば、アクションを行うべきかどうかの決定結果を基に、アクションを行うことをさらに備える。
【0024】
これら及び他の利点及び特徴は、図面と併せて以下の説明からより明らかになる。
【0025】
本開示と見なされる主題は、本明細書の最後にある特許請求の範囲において具体的に指摘され明確に請求される。本発明の前述のおよび他の特長ならびに利点は、添付図面と併せることにより、以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】実施形態による、航空機の一部を部分的に切り取った平面図である。
図1B】代替的な実施形態による、航空機の一部を部分的に切り取った平面図である。
図2図1A及び図1Bの航空機のトルクリミッタと共に使用する予測システムの模式図である。
図3図2の予測システムの処理システムの模式図である。
図4図2及び図3の予測システム及び処理システムの動作の図である。
図5図2及び図3の予測システム及び処理システムの動作の図である。
図6図2及び図3の予測システム及び処理システムの動作の図である。
図7】実施形態による、予測システムの動作方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
これら及び他の利点及び特徴は、図面と併せて以下の説明からより明らかになる。
【0028】
以下に説明するように、トルクリミッタまたは別の適切な類似機構と共に使用され得る予測システムが提供される。予測システムがトルクリミッタと共に使用される場合及びトルクリミッタがボールランプ機構として提供される場合、予測システムは、スプリング式ボールランプ機構を使用して、利用可能なシステムトルクの変化を経時的に監視するセンサを含む。センサは、動力駆動ユニットまたはアクチュエータ内の駆動系に沿った様々な箇所に配置することができる。通常の状態では、ボールランプ機構は、プレートを互いに対して動かすことなく、一方のシャフトから他方のシャフトにトルクを伝えることができる。しかしながら、トルクが所定の値を超過すると、ボールランプ機構のボールがプレートのポケット内を上昇し、プレートを押し離す。従来の応用では、ボールランプ機構は、プレートが押し離されるインシデントの後に視覚的な表示を提供する。この視覚的な表示には手動確認が必要であり、これには時間がかかり、一部の場合、周辺のパネルを取り除く必要がある。しかしながら、予測システムでは、センサがプレート間相対運動を継続的に監視し、プレート間相対運動を示す信号を処理システムに送信することができる。処理システムはその後、構成部品の経時的な摩耗及び他の類似問題を考慮しながら、過負荷制限を超過することなく、プレート間相対運動が所定の閾値より大きいかどうかを判定することができる。さらに、処理システムはこの決定を基にアクションを行うことができ、これによって、過負荷状態を回避または予防することができる。
【0029】
図1A図1B図2及び図3を参照すると、例えば、ボールランプ機構または航空機30の別の類似機構などのトルクリミッタと共に使用される予測システム10(図2及び図3を参照)が提供されている。
【0030】
図1A及び図1Bの例示的な場合では、航空機30は、機体31及び機体31から外側に延びる翼32を含む。翼32はスラットまたはフラップなどの1つ以上の飛行制御面33を含み、これらは翼32の後縁に沿って配置されており、様々な飛行操作を実行するために翼32の主平面に対して旋回可能である。飛行制御面33の旋回は制御ユニット34によって駆動され、制御ユニット34はドライブトレイン35及び一連の直線または回転アクチュエータ36を介して飛行制御面33に連結されている。旋回に動力を供給するためのトルクは制御ユニット34で生成され、アクチュエータ36から分離し得る(図1Aを参照)または一体化し得る(図1Bを参照)1つ以上のトルクリミッタ37を通じてドライブトレイン35に沿って伝達される。
【0031】
各トルクリミッタ37は、外部の問題が発生した場合に、航空機構造に過度の負荷が加えられることを防止することによって動作する。多くの場合、アクチュエータ36は、浸食もしくはギア摩耗を引き起こす水の浸入または、誤った保守により、設計パラメータを超過し、内部重量が損失した結果、故障する。この故障により、アクチュエータ36を動かすか、または応答させるために高い入力トルクが必要となる。最終的に、必要なトルクがトルクリミッタ37の閾値を超過するまで、この問題は悪化する。
【0032】
従来のトルクリミッタシステムには、トリップインシデントの視覚的な表示を提供するトリップしたスプリング式インジケータが含まれる。しかしながら、このトリップ表示には確認が必要であり、このような確認は通常、1つ以上の航空機パネルを取り外した後に行われる。本明細書に説明するように、必ずしも完全なトリップインシデントのレベルまで上昇しなくてもトルクリミッタ37の状態を感知するセンサが提供される。このような状態は、一度感知または検出されると、以前の飛行データ及び他の情報と比較して、保守が必要かどうかの判断に役立てられ得る。
【0033】
図2に示すように、例示的な場合では、トルクリミッタ37をボールランプ機構40として提供してよい。ボールランプ機構40は、図1A及び図1Bのドライブトレイン35の構成部品となり得る入力シャフト41及び出力シャフト42を含む。ボールランプ機構40はさらに、入力シャフト41が連結される第1のプレート43、出力シャフト42が連結される第2のプレート44、第1のプレート43及び第2のプレート44の相補的な凹部430及び440内にそれぞれ配置可能なボール要素45、及び、ボール要素45の両側で第1のプレート43を第2のプレート44に向かって付勢するスプリング式アセンブリ46を含む。
【0034】
正常な動作中、ボール要素45は相補的な凹部430及び440内に固定され、これにより、入力シャフト41から第1のプレート43、ボール要素45、第2のプレート44及び最終的には出力シャフト42にトルクを伝達することができる。しかしながら、例えば、対応するアクチュエータ36が腐食しているが過度には腐食していない結果として、ボールランプ機構40に高いトルクが加えられた場合には、ボール要素45は、実際には凹部430及び440を離れることなく、凹部430及び440からわずかに外側に平行移動(translate)することがある。これは、第1のプレート43及び第2のプレート44をわずかに押し離す効果があるが、依然として入力シャフト41から出力シャフト42へのトルク伝達が可能である。例えば、対応するアクチュエータ36が過度に腐食したり、潤滑性が低下したり、ギアまたはベアリングが過度に摩耗したり、異物(例えば、砂、埃等)が混入した結果として、ボールランプ機構40に過剰なトルクが加えられた場合には、または、別の関連する構成部品もしくは関連のない構成部品が劣化した場合には、ボール要素45は、凹部430及び440から完全に外れて平行移動することがある。これは、第1のプレート43及び第2のプレート44を押し離す効果があり、入力シャフト41から出力シャフト42へのトルク伝達を妨げる。
【0035】
予測システム10は、少なくとも1つ以上のセンサ(本明細書では以降、「センサ」と呼ぶ)11、処理システム12、正常時に互いに対して固定できるようトルクリミッタ37/ボールランプ機構40及びセンサ11が取り付けられるハウジング13を含む。センサ11は、光学センサ、電磁センサ、ホール効果センサ、線形可変差動変成器(LVDT)センサ、及び容量センサのうちの少なくとも1つ以上として提供されてよい。いずれの場合でも、センサ11は、トルクリミッタ37、より詳細には、ボールランプ機構40の状態を感知するように配置される。実施形態によれば、センサ11が第1のプレート41と第2のプレート42との間の第2の距離D2(図4図6を参照)を効果的に感知できるよう、センサ11は第1のプレート41とセンサ11との間の第1の距離D1(図4図6を参照)を感知し得る。ここで、第1の距離D1及び第2の距離D2は、入力シャフト41及び出力シャフト42の長手軸に沿って定義された寸法に沿って延びてよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0036】
引き続き図2を参照し、図3を追加で参照すると、処理システム12はセンサ11に連結され、場合によっては、制御ユニット34及び航空機30の飛行制御コンピュータ(FCC)301の少なくとも1つ以上に連結される。処理システムは、センサ11の測定値を処理し、第1のプレート41と第2のプレート42との間の第2の距離D2がドライブトレイン35(図1A及び図1Bを参照)、アクチュエータ36(図1A及び図1Bを参照)及びボールランプ機構40のうちの少なくともいずれか1つ以上の劣化または故障インシデントを示すかどうかを、処理された測定値を基に計算し、計算結果を基にアクションを行うべきかどうかを決定するように構成される。この目的のために、処理システム12は、コントローラ120及び予測的な保守コンピュータ(prognostic maintenance computer)121の少なくとも1つ以上を含むか、またはそれらのうちの少なくとも1つ以上が提供されてよい。いずれの場合でも、処理システム12は、中央処理装置(CPU)などのプロセッサ122、メモリユニット123、及び、プロセッサ122のセンサ11との通信、および該当する場合には、制御ユニット34及びFCC301との通信を可能にするネットワークユニット124、を含んでよい。メモリユニット123は、ボールランプ機構40からの、または他のボールランプ機構からの履歴センサ測定値11を少なくとも反映するデータ及び実行可能命令を内部に記憶する。プロセッサ122によって実行される場合、実行可能命令はプロセッサ122及び処理システム12の全体に本明細書に説明する動作を行わせる。
【0037】
ここで、処理システム12の例示的な動作を図4図6を参照して説明する。
【0038】
図4に示すように、ボールランプ機構40は通常、凹部430及び440に固定されたボール要素45により動作を行う。このように、センサ11は、ボール要素45が凹部430及び440に固定されているために第2の距離D2が短いと推測するのに十分な程度、センサ11と第1のプレート43との間の第1の距離D1が大きいことを感知する。
【0039】
図5に示すように、ボールランプ機構40はトルクを伝達することができるが、ボール要素45が凹部430及び440からわずかに外側に平行移動しているため、正常には動作を行っていない。したがって、センサ11は、センサ11と第1のプレート43との間の第1の距離D1が、図4の第1の距離D1と比較して減少していることを感知し、これにより、ボール要素45は固定されていないが、凹部430及び440から完全には外れていないため、第2の距離D2がそれに応じて増加していると推測することができる。
【0040】
図6に示すように、ボール要素45が凹部430及び440から完全に外れているため、ボールランプ機構40はトルクを伝達することができない。したがって、センサ11は、センサ11と第1のプレート43との間の第1の距離D1が、図5の第1の距離D1と比較して減少していることを感知し、これにより、ボール要素45が凹部430及び440から完全に外れているため、第2の距離D2がそれに応じて図5の第2の距離D2と比較して増加していると推測することができる。
【0041】
図5に示す場合では、ボールランプ機構40の第1のプレート43と第2のプレート44との間の第2の距離D2が第1の閾値を超過するが、第2の閾値には到達しないことに起因して、トルクリミッタ37の状態はトルクの増加を示すが、トルクの過負荷を必ずしも示すわけではない。この場合、処理システム12は、ボールランプ機構40の構造的特徴及びメモリユニット123の履歴データに少なくとも従って、第1の閾値を事前に定義し、その状態がドライブトレイン35、アクチュエータ36またはトルクリミッタ37/ボールランプ機構40に何らかの劣化インシデントがあることを示すという結論に従ってアクションを行ってよい。このようなアクションには、遠隔パネルの取り外し及び検査が不要になるよう、問題のトルクリミッタ37の位置を特定すること、ならびに、コントローラ120を介して加えられるトルクを減少させるよう制御ユニット34に命令することと、予測的な保守コンピュータ121を介して保守を手配すること(例えば、検査または修理のスケジューリング、部品の発注など)とのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0042】
図6に示す場合では、トルクリミッタ37の状態は、ボールランプ機構40の第1のプレート43と第2のプレート44との間の第2の距離D2が第2の閾値に到達するか、または実質的に到達する(第2の閾値を超過することはできない)ことによるトルクの過負荷を示す。この場合、処理システム12は、ドライブトレイン35、アクチュエータ36、トルクリミッタ37またはボールランプ機構40に何らかの故障インシデントが発生したことを示す結論に従ってアクションを行ってよい。このようなアクションには、遠隔パネルの取り外し及び検査が不要になるよう、問題のトルクリミッタ37の位置を特定すること、コントローラ120を介して加えられるトルクを減少または中止するよう制御ユニット34に命令すること、予測的な保守コンピュータ121を介して保守を手配すること(例えば、検査または修理のスケジューリング、部品の発注など)を含んでよい。
【0043】
図7を参照すると、上記のようなトルクリミッタのための予測システムの動作方法が提供される。図7に示すように、方法は、ボールランプ機構のプレート間の距離などのトルクリミッタの状態を感知すること(ブロック701)、トルクリミッタの状態が劣化または故障インシデントを示すかどうかを計算すること(ブロック702)、計算結果を基にアクションを行うべきかどうかを決定すること(ブロック703)、ブロック703の決定結果を基にアクションを行うこと(ブロック704)を含む。
【0044】
実施形態によると、ブロック702の計算は、距離が第1の閾値を超過して第2の閾値に到達しないことを計算すること(ブロック701)、距離が第1の閾値を超過して第2の閾値に到達しないことを基に、状態が劣化インシデントを示すことを決定すること(ブロック7022)、距離が第2の閾値に到達することを計算すること(ブロック7023)及び距離が第2の閾値に到達することを基に、状態が故障インシデントを示すことを決定すること(ブロック7024)を含んでよい。
【0045】
さらなる実施形態によれば、劣化インシデントの場合、アクションには、遠隔パネルの取り外し及び検査が不要になるよう、問題のトルクリミッタの位置を特定すること、ならびに、コントローラを介して加えられるトルクを減少させるよう制御ユニットに命令することと、予測的な保守コンピュータを介して保守を手配すること(例えば、検査または修理のスケジューリング、部品の発注など)とのうちの少なくとも1つを含んでよい。一方、故障インシデントの場合、アクションには、遠隔パネルの取り外し及び検査が不要になるよう、問題のトルクリミッタの位置を特定すること、コントローラを介して加えられるトルクを減少させるよう制御ユニットに命令すること及び予測的な保守コンピュータを介して保守を手配すること(例えば、検査または修理のスケジューリング、部品の発注など)を含んでよい。
【0046】
本開示は、限定した数の実施形態のみに関連して詳細に提供されるが、本開示は、このように開示された実施形態に限定されないことは容易に理解されるべきである。むしろ、本開示は、本明細書には記載されていないが、本開示の趣旨及び範囲に相応する任意の数の変形、変更、置換または等価構成を組み込むように修正することができる。追加的には、本開示の様々な実施形態が記載されているが、例示的な実施形態(複数可)は、記載された例示的な態様のうちの一部のみを含み得ることが理解されるべきである。したがって、本開示は、上述の説明によって限定されるとみなされるべきではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7