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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】屋根
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/36 20060101AFI20221109BHJP
   E04D 3/362 20060101ALI20221109BHJP
   E04D 3/363 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
E04D3/36 T
E04D3/362 C
E04D3/363 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018157674
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020029756
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 吉久
(72)【発明者】
【氏名】花井 大介
(72)【発明者】
【氏名】分部 孝彦
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-129708(JP,A)
【文献】特開2016-205120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の屋根材が軒棟方向と前記軒棟方向と直交する横方向とに並んでいる屋根であって、
前記各屋根材は、矩形の板部と、前記板部の前記軒棟方向と平行な一方の端部に設けられた嵌合部と、前記板部の前記軒棟方向と平行な他方の端部に設けられた被嵌合部とを備え、前記嵌合部の軒棟方向の寸法及び前記被嵌合部の軒棟方向の寸法はそれぞれ前記板部の軒棟方向の寸法よりも短く形成されており、
前記横方向で隣接している二つの前記屋根材は、一方の前記屋根材の前記嵌合部と他方の前記屋根材の前記被嵌合部とが嵌合しており、
前記軒棟方向で隣接している二つの前記屋根材は、棟側の前記屋根材の前記板部の軒側端部が、軒側の前記屋根材の前記板部の棟側端部の表面側に重ねられており、
前記棟側の前記屋根材の前記嵌合部の軒側端部と、前記軒側の前記屋根材の前記嵌合部の棟側端部とは前記軒棟方向に並んで配置されており、
前記棟側の前記屋根材の前記被嵌合部の軒側端部と、前記軒側の前記屋根材の前記被嵌合部の棟側端部とは前記軒棟方向に並んで配置されており、
前記嵌合部の前記軒側端部と前記棟側端部及び前記被嵌合部の前記軒側端部と前記棟側端部とを覆うキャップを備え
前記キャップは、前記嵌合部及び前記被嵌合部に装着されている装着部と、前記装着部から前記横方向に突出する押さえ部とを備え、
前記押さえ部は、前記棟側の前記屋根材の前記板部の前記軒側端部を前記軒側の前記屋根材の前記板部の前記棟側端部の表面側に圧着している
屋根。
【請求項2】
請求項1において、
少なくとも、前記棟側の前記屋根材の前記被嵌合部の軒側端面と、前記軒側の前記屋根材の前記被嵌合部の棟側端面とが突付けられている
屋根。
【請求項3】
請求項1において、
前記棟側の前記屋根材の前記嵌合部の軒側端面と、前記軒側の前記屋根材の前記嵌合部の棟側端面との間に間隙を有し、
前記棟側の前記屋根材の前記被嵌合部の軒側端面と、前記軒側の前記屋根材の前記被嵌合部の棟側端面との間に間隙を有している
屋根。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項において、
前記棟側の屋根材は、前記板部の軒側先端部に前記板部の裏面側に断面への字状に折り曲げられた折り曲げ部を備え、
前記折り曲げ部が前記軒側の屋根材の前記板部の棟側端部の表面側に重ねられている
屋根。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項において、
前記棟側の屋根材の前記板部の軒側端部の裏面と、前記軒側の屋根材の前記板部の棟側端部の表面との間に防水材を設けている
屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根に関する。詳しくは、本発明は、複数の屋根材を軒棟方向及び軒棟方向と直交する横方向とに並設して形成される屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の屋根材を軒棟方向及び軒棟方向と直交する横方向とに並設することにより、屋根を形成することが行われている。このような屋根材の一例として、特許文献1には金属製の縦葺屋根材が提案されている。この縦葺屋根材は鋼板等の金属板を成形して形成されるものであって、矩形板状の屋根材本体と、屋根材本体の一方の長手方向の端部に設けられた上ハゼと、屋根材本体の他方の長手方向の端部に設けられた下ハゼとを備えて形成されている。上ハゼ及び下ハゼは屋根材本体の長手方向の全長にわたって設けられている。
【0003】
このような縦葺屋根材にあって、軒棟方向で隣接する二枚の縦葺屋根材は、軒側の縦葺屋根材の屋根材本体の棟側端部の上に、棟側の縦葺屋根材の屋根材本体の軒側端部を重ね、軒側の縦葺屋根材の上ハゼの棟側端部に、棟側の縦葺屋根材の上ハゼの軒側端部を嵌め込み、軒側の縦葺屋根材の下ハゼの棟側端部に、棟側の縦葺屋根材の下ハゼの軒側端部を嵌め込むことによって、接続される。また横方向で隣接する二枚の縦葺屋根材は、一方の縦葺屋根材の下ハゼに他方の縦葺屋根材の上ハゼを上から嵌め込むことにより接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-205120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような縦葺屋根材で屋根を形成する場合、各縦葺屋根材のコーナー部分では、二つの上ハゼと二つの下ハゼとが嵌合されるため、四枚の金属板が重なることになり、上下に重ねる縦葺屋根材の間に隙間が生じやすくなり、屋根の防水性や外観が低下しやすかった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、防水性や外観の低下が生じにくい屋根を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る屋根の一態様は、複数の屋根材が軒棟方向と前記軒棟方向と直交する横方向とに並んでいる屋根である。前記各屋根材は、矩形の板部と、前記板部の前記軒棟方向と平行な一方の端部に設けられた嵌合部と、前記板部の前記軒棟方向と平行な他方の端部に設けられた被嵌合部とを備えている。前記嵌合部の軒棟方向の寸法及び前記被嵌合部の軒棟方向の寸法はそれぞれ前記板部の軒棟方向の寸法よりも短く形成されている。前記横方向で隣接している二つの前記屋根材は、一方の前記屋根材の前記嵌合部と他方の前記屋根材の前記被嵌合部とが嵌合している。前記軒棟方向で隣接している二つの前記屋根材は、棟側の前記屋根材の前記板部の軒側端部が、軒側の前記屋根材の前記板部の棟側端部の表面側に重ねられている。前記棟側の前記屋根材の前記嵌合部の軒側端部と、前記軒側の前記屋根材の前記嵌合部の棟側端部とは前記軒棟方向に並んで配置されており、前記棟側の前記屋根材の前記被嵌合部の軒側端部と、前記軒側の前記屋根材の前記被嵌合部の棟側端部とは前記軒棟方向に並んで配置されている。前記嵌合部の前記軒側端部と前記棟側端部及び前記被嵌合部の前記軒側端部と前記棟側端部とを覆うキャップを備える。前記キャップは、前記嵌合部及び前記被嵌合部に装着されている装着部と、前記装着部から前記横方向に突出する押さえ部とを備える。前記押さえ部は、前記棟側の前記屋根材の前記板部の前記軒側端部を前記軒側の前記屋根材の前記板部の前記棟側端部の表面側に圧着している。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、嵌合部と被嵌合部の重なりを少なくすることができ、防水性や外観の低下が生じにくくて施工しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、屋根に係る一実施形態を示す一部の斜視図である。
図2図2は、屋根材に係る一実施形態を示す斜視図である。
図3図3Aは、折り曲げ部に係る一実施形態を示す側面図である。図3Bは、折り曲げ部に係る別の一実施形態を示す側面図である。
図4図4は、屋根に係る一実施形態を示す一部の分解断面図である。
図5図5Aは、キャップに係る一実施形態を示す平面図である。図5Bは、キャップに係る一実施形態を示す正面図である。
図6図6Aは、屋根の施工手順の一例を示す説明図である。図6Bは、屋根の施工手順の他の一例を示す説明図である。
図7図7Aは、屋根の施工方法に係る一実施形態を示す一部の分解斜視図である。図7Bは、屋根の施工方法に係る一実施形態を示す一部の断面図である。
図8図8は、屋根に係る一実施形態を示す一部の平面図である。
図9図9は、屋根材に係る一実施形態を示す斜視図である。
図10図10は、屋根の施工方法に係る一実施形態を示す一部の分解斜視図である。
図11図11は、屋根材に係る変形例を示す一部の斜視図である。
図12図12は、屋根に係る変形例を示す一部の平面図である。
図13図13は、屋根の施工方法に係る変形例を示し、図12のA-A部分の断面図である。
図14図14Aは、キャップに係る一実施形態を示す正面図である。図14Bは、キャップに係る一実施形態を示す正面図である。
図15図15は、キャップに係る一実施形態を示す斜視図である。
図16図16A及び図16Bは、キャップに係る一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
[実施形態1]
(屋根の概要)
本実施形態の屋根は、図1に示すように、屋根下地100に複数の金属製の縦葺用の屋根材10を敷設して形成される縦葺屋根である。複数の屋根材10は、軒棟方向Xに並ぶように設置される。また他の複数の屋根材10は、軒棟方向と直交する横方向Yに並ぶように設置される。横方向Yで隣接する二枚の屋根材10a、10bは、嵌合により接続されている。また軒棟方向Xで隣接する二枚の屋根材10a、10cは、縦継ぎにより接続されている。また本実施形態の屋根は、キャップ20を備えている。
【0012】
ここで、「軒棟方向」とは、屋根勾配に沿った方向を意味し、いわゆる水流れ方向に平行な方向である。また、「横方向」とは、軒棟方向に直交する方向のうちの水平面上の方向を意味し、本実施形態では桁行方向に該当する。
【0013】
屋根下地100は、屋根材10の下地となる部分である。本実施形態の屋根は鉄骨造や木造等により構成されており、屋根下地100は、複数の横架材110と、野地板120と、下葺材130とを備えている。
【0014】
複数の横架材110は、横方向に沿って架け渡された構造材であり、例えば、母屋,梁,桁等により構成される。各横架材110は、横方向に延びている。複数の横架材110は、軒棟方向に一定のピッチで並んでおり、棟側の横架材110ほど上方に位置するように配置されている。
【0015】
野地板120は、複数の横架材110の上方に配置される。野地板120は、例えば、樹脂発泡材等の芯材を金属板で挟んだサンドイッチパネルや、木質板等により構成される。野地板120は、屋根面に対応する部分の全面にわたって配置されている。
【0016】
下葺材130は、防水性を有しており、屋内側への浸水を防ぐ。下葺材130は、野地板120の全面にわたって敷設される。下葺材130は、例えば、アスファルトルーフィングや、改質ゴムアスファルトルーフィング等の防水シートにより構成される。
【0017】
なお、例えば、建物が木造の場合、屋根下地100は、野地板120を下方から支持する複数の垂木を含む。複数の垂木は、各々の長手方向が軒棟方向に平行に配置されると共に、横方向に一定の間隔をおいて配置され、野地板120と横架材(母屋)との間に配置される。
【0018】
(屋根材)
本実施形態において、複数の屋根材10の各々はすべて同じ構造である。各屋根材10は、金属板を曲げ加工することで形成されており、例えば、ロールフォーミングを用いて成型される。屋根材10を構成する金属板としては、例えば、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板,ガルバリウム鋼板(登録商標),エスジーエル(登録商標)鋼板等により構成される。屋根材10は、例えば、1.0m以上4.0m以下に形成されており、可搬性に優れている。屋根材10は、図2に示すように、板部11と、嵌合部12と、被嵌合部13とを備えている。
【0019】
板部11は、屋根材10の主体を構成する部分である。板部11は、軒棟方向に延びており、その長手方向が軒棟方向Xに平行となるような平面視略矩形状に形成されている。板部11は、屋根下地100に載るようにして設置される。板部11は、幅方向が横方向Yに平行に設置される。板部11は、屋根下地100上に複数の屋根材10が設置された状態において、雨水等が流通する流路を構成する。
【0020】
板部11の軒側端部は軒側接続部15として形成されている。軒側接続部15はほぼ平板状に形成されている。また板部11の軒側接続部15の軒側先端部は折り曲げ部14として形成されている。折り曲げ部14は、図3A及び図3Bに示すように、板部11の裏面側に向かって断面への字状に折り曲げられて形成されている。折り曲げ部14は、いわゆるヘミング折りにより、金属板が2枚重ねになって形成されていてもよい。図3Aに示す例では、金属板が一枚の部分に屈曲部分14aを設けて折り曲げ部14を形成している。図3Bに示す例では、金属板が二枚の部分に屈曲部分14aを設けて折り曲げ部14を形成している。板部11の棟側端部は棟側接続部16として形成されている。棟側接続部16は平板状に形成されている。
【0021】
図4に示すように、嵌合部12は、板部11の幅方向の端部のうちの一方の端部から立ち上げられた内側板部121と、内側板部121の上端部から横方向に延出した天板部122と、天板部122の外側の端部から下方に延出した外側板部123とを備え、内側板部121と天板部122と外側板部123とは一体に形成されている。
【0022】
内側板部121は、上下方向の中間部分に内側段部124を有している。内側段部124は、上方が内側に位置するように段状に形成されている。また、外側板部123は、上下方向の中間部分に外側段部125を有している。外側段部125は、上方が外側に位置するように段状に形成されている。また外側板部123の下端部からは敷き込み片126が延出している。
【0023】
被嵌合部13は、嵌合部12に対して上方から被せることで、嵌合部12に嵌合するように構成されている。被嵌合部13は、嵌合部12を上方から覆うように形成されている。被嵌合部13は、板部11の横方向の端部のうち、嵌合部12が設けられた側の端部とは反対側に設けられている。被嵌合部13は、板部11の横方向の一方の端部から上方に立ち上げられた内側板部131と、内側板部131の上端部から横方向に延出した天板部132と、天板部132の外側の端部から下方に延出した外側板部133とを備えている。
【0024】
内側板部131は、上下方向の中間部分に内側引掛け部134を有している。内側引掛け部134は、上方が内側に位置するように段状に形成されており、嵌合部12の外側段部125が引掛け可能に構成されている。また、外側板部133は、上下方向の中間部分に外側引掛け部136を有している。外側引掛け部136は、上方が外側に位置するように段状に形成されており、嵌合部12の内側段部124が引掛け可能に構成されている。
【0025】
嵌合部12及び被嵌合部13は、それぞれ、板部11の長手方向(軒棟方向Xと同方向)に沿って長く形成されている。嵌合部12の長手方向の寸法は、板部11の長手方向の寸法よりも短く形成されている。被嵌合部13の長手方向の寸法は、板部11の長手方向の寸法よりも短く形成されている。嵌合部12の長手方向の寸法と被嵌合部13の長手方向の寸法とは同じである。嵌合部12の棟側端面12bと、被嵌合部13の棟側端面13bとは、横方向Yと平行な方向で一直線上に位置している。
【0026】
板部11の棟側接続部16の棟側先端は棟側端面12b及び棟側端面13bよりも棟側に突出している。棟側端面12bよりも棟側には切欠部41が形成されている。また棟側端面13bよりも棟側にも切欠部41が形成されている。各切欠部41は棟側接続部16の棟側先端の側方にそれぞれ位置している。
【0027】
また嵌合部12の軒側端面12aと、被嵌合部13の軒側端面13aとは、横方向Yと平行な方向で一直線上に位置している。板部11の軒側接続部15の軒側先端は軒側端面12a及び軒側端面13aよりも軒側に突出している。軒側端面12aよりも軒側には切欠部42が形成されている。軒側端面13aよりも軒側にも切欠部42が形成されている。各切欠部42は軒側接続部15の軒側先端の側方にそれぞれ位置している。
【0028】
図2に示すように、嵌合部12の棟側端部127には孔部128が設けられている。孔部128は天板部122を上下に貫通して形成されている。孔部128は平面視で丸孔または、長丸孔に形成されている。
【0029】
被嵌合部13の棟側端部137には孔部138が設けられている。孔部138は天板部132を上下に貫通して形成されている。孔部138は平面視で丸孔に形成されている。
【0030】
また敷き込み片126の表面には長手方向に沿って長い突条部129が突出して形成されており、突条部129の外側において、敷き込み片126の軒側端部には表裏に貫通する留孔111が設けられている。また棟側接続部16の被嵌合部13側の側端部には表裏に貫通する留孔112が設けられている。留孔112は棟側端面13bよりも棟側に位置している。
【0031】
(キャップ)
本実施形態において、複数のキャップ20の各々はすべて同じ構造であるが、異なる構造のキャップ20を使用してもよい。
【0032】
図4図5A及び図5Bに示すように、キャップ20はキャップ本体30とパッキン31とを備えている。キャップ本体30は、鋼板などの金属板を曲げ加工等することで形成されている。パッキン31はEPDMなどのエラストマーやゴムなどの弾性体の成形品である。パッキン31はキャップ本体30の裏面に貼り付けて設けられている。パッキン31はポリエチレンフォームなどで形成される定形材であってもよい。
【0033】
キャップ20は、装着部21と押さえ部22とを備えている。装着部21は一対の対向する脚部210と、各脚部210の上端間を連結する連結部211とを備えている。連結部211の中央には厚み方向に貫通する固定孔212が設けられている。押さえ部22は各脚部210の下端から側方に向かって突出して設けられている。各押さえ部22は互いに反対向きに突出している。各押さえ部22の棟側先端は、軒側に向かって下り傾斜するように形成されている。
【0034】
(施工方法)
本実施形態の屋根は、複数の屋根材10を横方向Yで一列並べて施工した後、その棟側に、別の複数の屋根材10を横方向Yで並べて施工される。軒棟方向X及び横方向Yにおいて、屋根材10を並べる枚数は、特に限定されず、2つ以上であればよい。図6Aは10個の屋根材10を上記手順で施工する場合を示しており、複数の屋根材10は(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(7)→(8)→(9)→(10)の順で施工される。
【0035】
上記方法を詳述する。まず、一つの屋根材10aを屋根下地100に載置する。次に、別の一つの屋根材10bを上記屋根材10aの横で屋根下地100に載置する。ここで、横方向Yで隣接する屋根材10は嵌合により接続される。すなわち、一方の屋根材10aの嵌合部12に他方の屋根材10bの被嵌合部13を上側から嵌め込んで嵌合する。このとき、被嵌合部13の内側引掛け部134が嵌合部12の外側段部125に引っかかり、被嵌合部13の外側引掛け部136が嵌合部12の内側段部124に引っかかる。このようにして、横方向Yで隣り合う屋根材10を接続しながら、複数の屋根材10を一列に並べて施工する。また嵌合状態の嵌合部12と被嵌合部13とは、孔部128と孔部138とが上下に重なっている。
【0036】
次に、図7Aに示すように、一列に並べた上記複数の屋根材10の棟側端部16の表面に防水材40を設ける。防水材40はEPDMなどのエラストマーやゴムなどで形成されている。また防水材40はポリエチレンフォームなどで形成される定形材であってもよい。
【0037】
また防水材40は長尺で細長いテープに形成されている。そして、防水材40は両面粘着テープや接着剤などで棟側接続部16の表面に貼り付けて設けられる。この場合、防水材40は横方向Yと略平行に長く設けられる。また防水材40は、嵌合された状態の嵌合部12と被嵌合部13との棟側(すなわち、棟側切欠部41の部分)を通って連続して設けられる。
【0038】
次に、防水材40を設けた屋根材10の棟側に、別の複数の屋根材10を横方向Yに一列に並べて施工していく。ここで、軒側の屋根材10aの棟側接続部16の上に、棟側の屋根材10cの軒側接続部15を重ねる。また折り曲げ部14が軒側の屋根材10aの棟側接続部16の表面側に重ねられる。また防水材40の表面に軒側接続部15が密着し、表裏(上下)に重なった軒側接続部15と棟側接続部16との間に防水材40が介在することになる。さらに、軒側の屋根材10aの嵌合部12の棟側端面12bと、棟側の屋根材10cの嵌合部12の軒側端面12aとが突付けられ、軒側の屋根材10aの被嵌合部13の棟側端面13bと、棟側の屋根材10cの被嵌合部13の軒側端面13aとが突付けられる。また、図7Bに示すように、棟側の屋根材10cの敷き込み片126の軒側端部と軒側の屋根材10aの棟側接続部16の棟側端部とが重なり、留孔111と留孔112とが上下に重なる。そして、留孔111と留孔112とにビス等の固定具113を差し込んで、固定具113を野地板120にまで挿入する。これにより、棟側の屋根材10cの嵌合部12の横方向Yの位置決めがされる。このようにして、軒棟方向Xで隣接する屋根材10を接続しつつ、横方向Yで隣り合う屋根材10も接続しながら、複数の屋根材10を横方向Yで一列に並べてさらに施工する。
【0039】
次に、キャップ20を取り付ける。キャップ20は、図8に示すように、嵌合された状態の嵌合部12と被嵌合部13とが軒棟方向Xで隣接して突付けられた部分を覆うようにして、嵌合部12の外側に被せて取り付けられる。すなわち、嵌合部12同士の突き付け部分及び被嵌合部13同士の突付け部分において、装着部21の下側の空間(一対の脚部210と連結部211で囲まれる空間)に、嵌合された状態の嵌合部12と被嵌合部13とが嵌め込まれる。また被嵌合部13の外面にはキャップ20のパッキン31が密着する。このようにして嵌合部12同士の突付け部分及び被嵌合部13同士の突付け部分に生じている僅かな隙間をキャップ20の装着部21及びパッキン31で覆うことができ、上記僅かな隙間からの水の浸入を少なくして屋根の防水性を向上させることができる。またキャップ20の押さえ部22は、装着部21を嵌め込んだ位置の側方に配置され、押さえ部22の裏面のパッキン31が軒側接続部15の表面に密着している。
【0040】
この後、固定孔212からドリルビスなどの固定具213を挿入し、嵌合された嵌合部12の孔部128と被嵌合部13の孔部138とを通して屋根下地100にまでねじ込むことにより、キャップ20が固定される。このように固定具213を挿入する前に、孔部128と孔部138を先孔として形成しておくことで、固定具213の斜め打ちが生じにくく、施工性が向上する。また固定具213の固定により装着部21が被嵌合部13を嵌合部12の方に押圧すると共に、押さえ部22が軒側接続部15を棟側接続部16の方に押圧する。このようにして複数の上記突付け部分のそれぞれにキャップ20を取り付けることにより、上記僅かな隙間が塞がれると共に隣接する屋根材10が強固に接続され、複数の屋根材10と複数のキャップ20とを備えた屋根が形成される。なお、キャップ20の固定は固定具213を用いなくてもよく、例えば、嵌合部12と被嵌合部13とが軒棟方向Xで突付けられた部分にキャップ20を被せるだけでもよい。
【0041】
そして、本実施形態の屋根では、上記のようにしてキャップ20を取り付けると、装着部21におけるパッキン31が被嵌合部13の外面に密着することになり、上記突付け部分の僅かな間隙からの雨水等の浸入を低減することができて、屋根の防水性が向上する。また押さえ部22におけるパッキン31が屋根材10の表面に密着することになり、屋根の防水性が向上する。さらに、押さえ部22で棟側の屋根材10cの板部11の軒側端部を軒側の屋根材10aの板部11の棟側端部の表面側に圧着することになり、棟側の屋根材10cと軒側の屋根材10aとの密着性及びこれら屋根材10と防水材40との密着性が高まって、屋根の防水性が向上する。すなわち、キャップ20を取り付けることにより、軒側接続部15の口開き(軒側接続部15が上に変形して棟側接続部16との間に隙間が生じること)が発生しにくくなり、屋根材10の接続部分の防水性が向上する。さらに、防水性の向上だけでなく、キャップ20で屋根材10を押えることにより、口開きによる屋根材10の破壊を低減することができ、縦継ぎ部(軒側接続部15と棟側接続部16の接続部分)の耐風圧性能が向上する。
【0042】
[実施形態2]
(屋根の概要)
本実施形態において、複数の屋根材10を施工して形成される屋根の外観は、図1に示す実施形態1と同様である。
【0043】
(屋根材)
本実施形態において、複数の屋根材10の各々はすべて同じ構造である。各屋根材10は、実施形態1とほぼ同様に形成され、図9に示すように、板部11と、嵌合部12と、被嵌合部13とを備えている。
【0044】
本実施形態において、板部11は、軒側端部の構造と棟側端部の構造とを除いて、実施形態1と同様に形成されている。板部11の軒側端部は軒側接続部15として形成されている。軒側接続部15は平板状に形成されている。また板部11の軒側接続部15の軒側端部には、軒側引っ掛け片17が設けられている。軒側引っ掛け片17は軒側接続部15の軒側端部から軒側接続部15の裏面側に折り返すように突出して形成されている。板部11の棟側端部は棟側接続部16として形成されている。棟側接続部16は平板状に形成されている。また板部11の棟側接続部16の棟側端部には、棟側引っ掛け片18が設けられている。棟側引っ掛け片18は棟側接続部16の棟側端部から棟側接続部16の表面側に折り返すように突出して形成されている。
【0045】
本実施形態において、嵌合部12と被嵌合部13とは、実施形態1と同様に形成されている。ここで、嵌合部12の軒側端面12aと、被嵌合部13の軒側端面13aと、棟側接続部16の棟側先端は、横方向Yと平行な方向で一直線上に位置している。板部11の軒側接続部15の軒側先端は軒側端面12a及び軒側端面13aよりも軒側に突出している。軒側端面12aよりも軒側には切欠部42が形成されている。軒側端面13aよりも軒側にも切欠部42が形成されている。各切欠部42は軒側接続部15の軒側先端の側方にそれぞれ位置している。
【0046】
(キャップ)
本実施形態において、複数のキャップ20は実施形態1と同様である。
【0047】
(施工方法)
本実施形態の屋根は、二つの手順で施工することが可能である。
【0048】
一つ目は、実施形態1で説明した施工手順と同様である。すなわち、複数の屋根材10を横方向Yで一列並べて施工した後、その棟側に、別の複数の屋根材10を横方向Yで並べて施工していく方法である。二つ目は、複数の屋根材10を軒棟方向Xで一列並べて施工した後、その横に、別の複数の屋根材10を軒棟方向Xで並べて施工していく方法である。軒棟方向X及び横方向Yにおいて、屋根材10を並べる枚数は、特に限定されず、2つ以上であればよい。図6Aは10個の屋根材10を上記一つ目の手順で施工する場合を示しており、図6Bは10個の屋根材10を上記一つ目の手順で施工する場合を示している。それぞれの場合において、複数の屋根材10は(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)→(7)→(8)→(9)→(10)の順で施工される。
【0049】
一つ目の施工手順を詳述する。図10に示すように、まず、一つの屋根材10aを屋根下地100に載置する。次に、別の一つの屋根材10bを上記屋根材10aの横で屋根下地100に載置する。このとき、実施形態1と同様にして、横方向Yで隣接する屋根材10は嵌合により接続される。
【0050】
次に、屋根材10の棟側に、別の複数の屋根材10を横方向Yに一列に並べて施工していく。ここで、軒側の屋根材10aの棟側接続部16の上に、棟側の屋根材10cの軒側接続部15を重ねる。また軒側の屋根材10aの棟側引っ掛け片18と、棟側の屋根材10cの軒側引っ掛け片17とを引っ掛ける。この場合、軒側引っ掛け片17を棟側引っ掛け片18と軒側の屋根材10aの棟側接続部16との間に差し入れるようにする。さらに、軒側の屋根材10aの嵌合部12の棟側端部と、棟側の屋根材10cの嵌合部12の軒側端部との間、及びに軒側の屋根材10aの被嵌合部13の棟側端部と、棟側の屋根材10cの被嵌合部13の軒側端部との間に、間隙45が設けられる。このようにして、軒棟方向Xで隣接する屋根材10を接続しつつ、横方向Yで隣り合う屋根材10も接続しながら、複数の屋根材10を横方向Yで一列に並べてさらに施工する。
【0051】
次に、キャップ20を取り付ける。キャップ20は、図10に示すように、嵌合された状態の嵌合部12と被嵌合部13とが軒棟方向Xで隣接した部分を覆うようにして、被嵌合部13の外側に被せて取り付けられる。すなわち、軒棟方向Xで対向する嵌合部12の間及び軒棟方向Xで対向する被嵌合部13の間に形成された間隙45を覆うようにして、装着部21の下側の空間(一対の脚部210と連結部211で囲まれる空間)に、嵌合された状態の嵌合部12と被嵌合部13とが嵌め込まれる。また被嵌合部13の外面にはキャップ20のパッキン31が密着する。このようにして隙間45をキャップ20の装着部21及びパッキン31で覆うことができ、隙間45からの水の浸入を少なくして屋根の防水性を向上させることができる。またキャップ20の押さえ部22は、装着部21を嵌め込んだ位置の側方に配置され、押さえ部22の裏面のパッキン31が軒側接続部15の表面に密着している。
【0052】
この後、実施形態1と同様にして、固定孔212からドリルビスなどの固定具213を挿入し、間隙45を通して屋根下地100にまでねじ込むことにより、キャップ20が固定される。また固定具213の固定により装着部21が被嵌合部13を嵌合部12の方に押圧すると共に、押さえ部22が軒側接続部15を棟側接続部16の方に押圧して圧着する。このようにして複数の間隙45の部分のそれぞれにキャップ20を取り付けることにより、隙間45が塞がれると共に隣接する屋根材10が強固に接続され、複数の屋根材10と複数のキャップ20とを備えた屋根が形成される。なお、キャップ20の固定は固定具213を用いなくてもよく、例えば、嵌合部12と被嵌合部13とが軒棟方向Xで隣接した部分にキャップ20を被せるだけでもよい。
【0053】
二つ目の方法を詳述する。まず、一つの屋根材10aを屋根下地100に載置する。次に、別の一つの屋根材10cを上記屋根材10aの棟側で屋根下地100に載置する。ここで、軒側の屋根材10aの棟側接続部16の上に、棟側の屋根材10cの軒側接続部15が重ねられる。また軒側の屋根材10aの棟側引っ掛け片18と、棟側の屋根材10cの軒側引っ掛け片17とを引っ掛ける。この場合、軒側引っ掛け片17を棟側引っ掛け片18と軒側の屋根材10aの棟側接続部16との間に差し入れるようにする。さらに、軒側の屋根材10aの嵌合部12の棟側端部と、棟側の屋根材10cの嵌合部12の軒側端部との間、及びに軒側の屋根材10aの被嵌合部13の棟側端部と、棟側の屋根材10cの被嵌合部13の軒側端部との間に、間隙45が設けられる。このようにして、軒棟方向Xで隣接する屋根材10を接続しながら、軒棟方向Xに沿って複数の屋根材10を一列に並べて施工する。
【0054】
次に、軒棟方向Xに沿って一列に並べた上記複数の屋根材10の横に、別の複数の屋根材10を軒棟方向Xに沿って一列に並べて施工していく。ここで、横方向Yで隣接する屋根材10は嵌合により接続される。すなわち、一方の屋根材10aの嵌合部12に他方の屋根材10bの被嵌合部13を上側から嵌め込んで嵌合する。このとき、被嵌合部13の内側引掛け部134が嵌合部12の外側段部125に引っかかり、被嵌合部13の外側引掛け部136が嵌合部12の内側段部124に引っかかる。このようにして、横方向Yで隣接する屋根材10を接続しつつ、軒棟方向Xで隣り合う屋根材10も接続しながら、複数の屋根材10を軒棟方向Xに一列に並べてさらに施工する。
【0055】
次に、上記と同様にしてキャップ20を取り付けることにより、複数の屋根材10と複数のキャップ20とを備えた屋根が形成される。
【0056】
このように本実施形態(実施形態2)では、軒棟方向Xで隣り合う嵌合部12及び被嵌合部13の間に間隙45を設けることにより、軒棟方向Xで隣り合う屋根材10の施工位置に誤差が生じても間隙45の範囲で屋根材10を軒棟方向Xで移動させることができ、誤差を吸収することができ、しかも、このようにして誤差を吸収しても、間隙45がキャップ20で覆われるために、防水性が低下しにくい。
【0057】
また、上記のようにしてキャップ20を取り付けると、装着部21におけるパッキン31が被嵌合部13の外面に密着することになり、上記間隙45からの雨水等の浸入を低減することができて、屋根の防水性が向上する。また押さえ部22におけるパッキン31が屋根材10の表面に密着することになり、屋根の防水性が向上する。さらに、押さえ部22で棟側の屋根材10cの板部11の軒側端部を軒側の屋根材10aの板部11の棟側端部の表面側に圧着することになり、棟側の屋根材10と軒側の屋根材10と密着性が高まって、屋根の防水性が向上する。すなわち、キャップ20を取り付けることにより、棟側引掛け片18と軒側引掛け片17との引掛けが外れにくくなり、軒側接続部15の口開き(軒側接続部15が上に変形して棟側接続部16との間に隙間が生じること)が発生しにくくなり、屋根材10の接続部分の防水性が向上する。さらに、防水性の向上だけでなく、キャップ20で屋根材10を押えることにより、口開きによる屋根材10の破壊を低減することができ、縦継ぎ部(軒側接続部15と棟側接続部16の接続部分)の耐風圧性能が向上する。
【0058】
また軒側の屋根材10aの棟側引っ掛け片18と、棟側の屋根材10cの軒側引っ掛け片17とを引っ掛けることにより、軒側の屋根材10aと棟側の屋根材10cとを接続するので、防水材を使用しなくても接続部分の防水性を確保することができる。なお、必要であれば、防水材を使用してもよい。また、棟側引掛け片18と、軒側引掛け片17とを引掛けることにより、軒側接続部15の口開きが発生しにくくなり、屋根材10の接続部分の防水性が向上する。さらに、防水性の向上だけでなく、棟側引っ掛け片18と軒側引っ掛け片17とを引っ掛けることにより、口開きによる屋根材10の破壊を低減することができ、縦継ぎ部(軒側接続部15と棟側接続部16の接続部分)の耐風圧性能が向上する。
【0059】
さらに、軒棟方向Xに複数の屋根材10を並べて施工した後に横方向Yに複数の屋根材10を並べて施工する方法と、横方向Yに複数の屋根材10を並べて施工した後に軒棟方向Xに複数の屋根材10を並べて施工する方法のいずれの手順でも施工することができ、施工の手順の制限が少なくて施工が行いやすい。
【0060】
[変形例]
(屋根材の変形例)
実施形態1及び2では、軒棟方向Xにおける板部11の寸法よりも、軒棟方向Xにおける嵌合部12及び被嵌合部13の寸法が短く形成されていればよく、これにより、軒棟方向Xで隣接する屋根材10の嵌合部12同士が重ならないようにすることができるとともに、軒棟方向Xで隣接する屋根材10の被嵌合部13同士も重ならないようにすることができる。したがって、曲げ加工により形成された嵌合部12同士や被嵌合部13同士を重ね合わせる必要がなく、屋根材10の施工性が向上する。
【0061】
また防水材40は施工現場で屋根材10に貼り付けるだけでなく、工場で貼り付けてもよい。この場合、防水材40を棟側接続部16の表面に貼り付けると共に、防水材40の端部が棟側切欠部41から突出するようにする。そして、横方向で屋根材10を隣接して配置した際に、防水材40の端部が重なって配置される。
【0062】
(実施形態1の屋根材10の変形例)
実施形態1の屋根材10において、隣接する屋根材10の重なる部分を少なくするために、及び軒棟方向Xで隣接する屋根材10の接続部分(縦継ぎ部)の防水性をより向上させるために、屋根材10を施工する前に、予め、屋根材10の一部を切除(プレカット)してもよい。例えば、図11に示すように、図2の屋根材10において、屋根材10の軒側端部を切除している。被嵌合部13側の切除部分(実線と想像線で囲まれる部分)46は、被嵌合部13側の切欠部42の周辺に沿って、板部11の一部と内側板部131の一部がそれぞれ切除されている。嵌合部12側の切除部分(実線と想像線で囲まれる部分)47は、嵌合部12側の切欠部42の周辺に沿って、板部11の一部と天板部122の一部と、外側板部123の一部と、敷き込み片126の一部とがそれぞれ切除されている。
【0063】
このような屋根材10は、実施形態1と同様に施工される。ここで、横方向Yで隣接する屋根材10は嵌合部12と被嵌合部13との嵌合により接続される。軒棟方向Xで隣接する屋根材10は、被嵌合部13同士が突付けられて施工されるが、嵌合部12同士は切除部分47が形成されているため、内側板部121以外は突付けられず、間隙45が形成されている。また図12に示すように、切除部分46及び47には、その軒側端部において防水材40が露出されているとともに、防水材40よりも軒側において、軒側の屋根材10の棟側接続部16が露出している。
【0064】
そして、上記と同様にして、被嵌合部13の外側にはキャップ20がはめ込まれて取り付けられてるが、図13に示すように、キャップ20のパッキン31が切除部分46及び47から露出する防水材40及び棟側接続部16の表面に密着する。これにより、実施形態1のキャップ20による効果に加えて、パッキン31と防水材40との密着により、隣接する屋根材10の接続部分の防水性が確保される。
【0065】
(キャップの変形例)
キャップ本体30は、屋根材10を形成する金属板よりも厚い金属板を加工して形成することができるが、図14Aのように、屋根材10を形成する金属板と同種の金属板(共材)を用いてキャップ本体30を形成してもよい。この場合、キャップ本体30と屋根材10との材料の共通化が図れてコストを低減することができる。
【0066】
また、キャップ20は樹脂製等であってもよい。
【0067】
また、キャップ20の外側に装着する化粧部材50をさらに備えていてもよい。この場合、化粧部材50はキャップ20の外面にほぼ沿った形状に形成され、図14Bに示すように、装着部カバー部51と、一対の押さえ部カバー部52とを有している。そして、化粧部材50は、キャップ20を固定具213で固定した後、装着部カバー部51を装着部21に嵌め込んでキャップ20に取り付けられる。このようにして化粧部材50で、固定具213の頭部を含むキャップ20の外面を覆うことができ、屋根の外観を向上させることができる。
【0068】
また、化粧部材50の裏面(キャップ20側の面)の全面または縁部にパッキンを設けてもよく、この場合、化粧部材50の裏面のパッキンがキャップ20の外面に密着して、防水性が向上する。なお、化粧部材50の裏面にパッキンを設けた場合は、上記実施形態1及び2よりもキャップ20の大きさをやや小さめにするのが好ましい。
【0069】
また、図15に示すように、キャップ本体30は、固定孔212の周辺において、連結部211の表面に凹部215を設けてもよい。凹部215は固定孔212を全周にわたって設けられている。このような凹部215を設けた場合には、固定具213の頭部が凹部215内に収まって、固定具213が目立ちにくくなり、屋根の外観を向上させることができる。
【0070】
また図16A及び図16Bに示すように、キャップ20に蓋55を設けるようにしてもよい。この蓋55は固定孔212を上方から覆うものである。蓋55はキャップ20の連結部211の長手方向の一端に取り付けられている。そして、図16Aのように、蓋55を回転させて固定孔212を見えるようにした状態で、固定孔212に固定具213を挿入した後、図16Bのように、蓋55を装着部210の上に被せて固定孔212及び固定具213を覆うようにする。これにより、固定孔212及び固定具213に雨水が直接作用しにくくなって、防水性が向上する。
【0071】
[まとめ]
本実施形態は以下の特徴を有する。
【0072】
第1の態様は、複数の屋根材(10)が軒棟方向(X)と軒棟方向(X)と直交する横方向(Y)とに並んでいる屋根である。各屋根材(10)は、矩形の板部(11)と、板部(11)の軒棟方向(X)と平行な一方の端部に設けられた嵌合部(12)と、板部(11)の軒棟方向(X)と平行な他方の端部に設けられた被嵌合部(13)とを備える。嵌合部(12)の軒棟方向(X)の寸法及び被嵌合部(13)の軒棟方向(X)の寸法はそれぞれ板部(11)の軒棟方向(X)の寸法よりも短く形成されている。横方向(Y)で隣接している二つの屋根材(10a、10b)は、一方の屋根材(10a)の嵌合部(12)と他方の屋根材(10b)の被嵌合部(13)とが嵌合している。軒棟方向(X)で隣接している二つの屋根材(10a、10c)は、棟側の屋根材(10c)の板部(11)の軒側端部が、軒側の屋根材(10a)の板部11の棟側端部の表面側に重ねられている。棟側の屋根材(10c)の嵌合部(12)の軒側端部と、軒側の屋根材(10a)の嵌合部(12)の棟側端部とは軒棟方向(X)に並んで配置されている。棟側の屋根材(10c)の被嵌合部(13)の軒側端部と、軒側の屋根材(10a)の被嵌合部(13)の棟側端部とは軒棟方向(X)に並んで配置されている。嵌合部(12)の軒側端部と棟側端部及び被嵌合部(13)の前記軒側端部と前記棟側端部とを覆うキャップ(20)を備える。
【0073】
この場合、軒棟方向(X)で隣接する嵌合部(12)同士及び被嵌合部(13)同士を嵌合しないために、嵌合部(12)同士の接続部分及び被嵌合部(13)同士の接続部分に嵌合による隙間が生じにくくなり、防水性や外観の低下が生じにくい。
【0074】
第2の態様は、第1の態様において、少なくとも、棟側の屋根材(10c)の被嵌合部(13)の軒側端面(13a)と、軒側の屋根材(10a)の被嵌合部(13)の棟側端面(13b)とが突付けられている。
【0075】
この場合、嵌合部(12)同士の突付け部分と被嵌合部(13)同士の突付け部分で生じる僅かな隙間をキャップ(20)で覆うことができ、防水性や外観の低下が生じにくい。
【0076】
第3の態様は、第1の態様において、棟側の屋根材(10c)の嵌合部(12)の軒側端面(12a)と、軒側の屋根材(10a)の嵌合部(12)の棟側端面(12b)との間に間隙(45)を有する。棟側の屋根材(10c)の被嵌合部(13)の軒側端面(13a)と、軒側の屋根材(10a)の被嵌合部(13)の棟側端面(13b)との間に間隙(45)を有している。
【0077】
この場合、間隙(45)により、軒棟方向(X)で隣接する屋根材(10)の施工位置の誤差や寸法誤差を吸収することができ、防水性や外観の低下が生じにくい。
【0078】
第4の態様は、第1ないし3のいずれか一つの態様において、各キャップ(20)は、突付け部分を覆って嵌合部(12)及び被嵌合部(13)に装着されている装着部(21)と、装着部(21)から横方向(Y)に突出する押さえ部(22)とを備える。押さえ部(22)は、棟側の屋根材(10c)の板部(11)の軒側端部を軒側の屋根材(10a)の板部(11)の棟側端部の表面側に圧着している。
【0079】
この場合、キャップ(20)で棟側の屋根材(10c)と軒側の屋根材(10a)の接続強度を高めることができ、防水性を向上させることができる。
【0080】
第5の態様は、第1ないし4のいずれか一つの態様において、棟側の屋根材(10c)は、板部(11)の軒側先端部に板部(11)の裏面側に断面への字状に折り曲げられた折り曲げ部(14)を備える。折り曲げ部(14)が軒側の屋根材(10a)の板部(11)の棟側端部の表面側に重ねられている。
【0081】
この場合、折り曲げ部(14)により軒側の屋根材(10a)と棟側の屋根材(10c)の重ね合わせ部分に水が浸入しにくくなり、防水性が向上する。
【0082】
第6の態様は、第1ないし5のいずれか一つの態様において、棟側の屋根材(10c)の板部(11)の軒側端部の裏面と、軒側の屋根材(10a)の板部(11)の棟側端部の表面との間に防水材(40)を設けている。
【0083】
この場合、防水材(40)により軒側の屋根材(10a)と棟側の屋根材(10c)の重ね合わせ部分に水が浸入しにくくなり、防水性が向上する。
【符号の説明】
【0084】
10 屋根材
11 板部
12 嵌合部
12a 軒側端面
12b 棟側端面
13 被嵌合部
13a 軒側端面
13b 棟側端面
14 折り曲げ部
20 キャップ
21 装着部
22 押さえ部
40 防水材
45 間隙
X 軒棟方向
Y 横方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16